(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095380
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240703BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/44
A61K8/46
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212644
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】田中 静磨
(72)【発明者】
【氏名】久知良 桃花
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB051
4C083AB342
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC661
4C083AC692
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB05
4C083BB11
4C083CC05
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】塗布中にみずみずしい感触を維持しつつ、塗布中の肌なじみの早さが向上され、また塗布後の滑らかさも向上された新規な水中油型乳化化粧料組成物を提供する。
【解決手段】水中油型乳化化粧料組成物であって、水、油分、アニオン性界面活性剤、高級アルコール、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み:
式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型乳化化粧料組成物であって、
水、油分、アニオン性界面活性剤、高級アルコール、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み:
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR1の少なくとも一部が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記アニオン性界面活性剤が、N-アシルメチルタウリン塩、N-アシルグルタミン酸塩、及びリン酸エステル塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記アニオン性界面活性剤が、N-アシルメチルタウリン塩を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記高級アルコールが、炭素数16以上の直鎖状高級アルコールを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
αゲルを形成している、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオン性界面活性剤、特にN-アシルメチルタウリン塩系界面活性剤が配合されている水中油型乳化化粧料が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ぬめり感を感じることなくみずみずしい良好な感触や肌への浸透感、柔軟効果が得られ、経時安定性も良好な水中油型乳化化粧料として、N-アシルメチルタウリン塩等のアニオン性界面活性剤を含む水中油型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなアニオン性界面活性剤(特に、N-アシルメチルタウリン塩系界面活性剤)を用いた水中油型乳化化粧料組成物は、塗布中にみずみずしい感触を有している一方で、塗布中の肌なじみの早さ及び塗布後の滑らかさといった使用感において、依然として改善する余地がある。
【0006】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、塗布中にみずみずしい感触を維持しつつ、塗布中の肌なじみの早さが向上され、また塗布後の滑らかさも向上された新規な水中油型乳化化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0008】
〈態様1〉
水中油型乳化化粧料組成物であって、
水、油分、アニオン性界面活性剤、高級アルコール、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み:
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
〈態様2〉
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR
1の少なくとも一部が、メチル基である、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様5〉
前記式(1)において、R
2及びR
3の少なくとも一方が、メチル基である、態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
前記アニオン性界面活性剤が、N-アシルメチルタウリン塩、N-アシルグルタミン酸塩、及びリン酸エステル塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
前記アニオン性界面活性剤が、N-アシルメチルタウリン塩を含む、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様8〉
前記高級アルコールが、炭素数16以上の直鎖状高級アルコールを含む、態様1~7のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様9〉
αゲルを形成している、態様1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布中にみずみずしい感触を維持しつつ、塗布中の肌なじみの早さが向上され、また塗布後の滑らかさも向上された新規な水中油型乳化化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
《水中油型乳化化粧料組成物》
本発明の水中油型乳化化粧料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、
水、油分、アニオン性界面活性剤、高級アルコール、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み:
【化3】
式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
である。
【0012】
本発明の組成物は、塗布中にみずみずしい感触を維持しつつ、従来よりも塗布中の肌なじみの早さが向上され、しかも塗布後の滑らかさも向上されている。
【0013】
理論に限定されるものではないが、これは、主に、本発明のポリマーの特性、すなわち式(1)で示す特有の構造、特定の範囲の数平均分子量(10,000以下)、及び特定の範囲のIOB(Inorganic Organic Balance)値(0.4~1.8)に由来するものと推測する。
【0014】
また、特定の構造をもつ本発明ポリマーは、両親媒性であり、水相に溶解する傾向があるものの、疎水的な性質も有するため、これを含む本発明の組成物は、親油性である肌に触れたときに、のアニオン性界面活性剤(例えば、N-アシルメチルタウリン塩等)によって形成された乳化粒子と肌とのなじみを促進できると考えられる。また、特定の構造をもつ本発明ポリマーと、N-アシルメチルタウリン塩等のアニオン性界面活性剤によって形成された乳化粒子との相互作用によって、本発明の組成物の塗布後の滑らかさを向上させることができると考えられる。
【0015】
〈水〉
本発明の組成物が水中油型であるため、水(又は水相)は連続相である。本発明の組成物に用いられる水として、特に制限はなく、例えば、化粧料、及び医薬部外品において使用される水であってよい。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0016】
本発明の組成物において、水の含有量は特に限定されず、組成物全体に対して、例えば30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、また90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0017】
〈油分〉
本発明の組成物は、油分を含む。本発明の組成物において、油分を含む油相は分散相である。
【0018】
油分として、特に限定されず、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、シリコーン油、高級脂肪酸、合成エステル油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
より具体的には、液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(「ジメチコン」とも称する)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の各種変性ポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
これらの油分は、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
【0027】
本発明の組成物において、油分の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は5.0質量%以下であってよい。
【0028】
〈アニオン性界面活性剤〉
本発明の組成物は、アニオン性界面活性剤を含む。
【0029】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N‐ステアロイル‐N‐メチルタウリンナトリウム、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);リン酸エステル塩(POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸、セチルリン酸カリウム等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE-アルキルエーテルカルボン酸;POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等を使用することができる。これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。これらのうち、特に後述する高級アルコールとαゲルを形成できるアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0030】
より具体的には、アニオン性界面活性剤は、例えば、N-アシルメチルタウリン塩、N-アシルグルタミン酸塩、及びリン酸エステル塩からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。更に具体的には、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアロイルメチルタウリン塩、ラウロイルメチルタウリン塩、ミリストイルメチルタウリン塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩、N-ミリストイル-L-グルタミン酸塩、N-ステアロイル-L-グルタミン酸塩、セチルリン酸塩等を好適に使用することができる。特に、化粧料にみずみずしい使用感をより向上させる観点から、アニオン性界面活性剤は、特にステアロイルメチルタウリン塩を含むことが好ましい。なお、これらのアニオン性界面活性剤の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の組成物において、アニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.0質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
【0032】
〈高級アルコール〉
本発明の組成物は、高級アルコールを含む。高級アルコールとは、炭素数6以上の一価アルコールの総称である。本発明において、高級アルコールは、室温(25℃)で固形のアルコールであってよい。また、高級アルコールは、本発明の組成物において、乳化を安定感させ、かつ/又は、本発明の組成物にコク感を付与することができる。
【0033】
本発明において、高級アルコールとしては、上述したアニオン性界面活性剤とαゲル構造を形成できるものが好ましい。また、高級アルコールとしては、例えば、直鎖状高級アルコール、分岐状高級アルコール、又はそれらの混合物を用いてよい。更に、本発明において、高級アルコールは、炭素数16以上の直鎖状飽和高級アルコールを含むことが好ましい。なお、高級アルコールの炭素数の上限値は、特に限定されず、例えば、30以下、28以下、又は24以下であってよい。また、高級アルコールとして、飽和のものであってもよく、不飽和のものであってもよいが、飽和のものが好ましい。
【0034】
より具体的には、高級アルコールとして、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの高級アルコールは、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
【0035】
本発明の組成物において、高級アルコールの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.5質量%以下であってよい。
【0036】
また、本発明の組成物において、高級アルコールの含有量と、上述したアニオン性界面活性剤の含有量との関係は、特に限定されないが、例えば、より安定なαゲルを形成させる観点から、以下の範囲であることが好ましい。すなわち、本発明の組成物において、アニオン性界面活性剤100質量部に対して、高級アルコールの含有量は、例えば、100質量部以上、200質量部以上、300質量部以上、400質量部以上、500質量部以上、600質量部以上、又は700質量部以上であってよく、また、2000質量部以下、1500量部以下、又は1000量部以下であってよい。
【0037】
〈本発明のポリマー〉
本発明の組成物は、以下に説明する本発明のポリマーを含む。本発明のポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する:
【化4】
【0038】
式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。なお、本発明において、炭素数1~4のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、これらのアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲノ基等が挙げられる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また、mが2以上である場合、すなわち、複数のR1が存在する場合、各々のR1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、特に、R1の少なくとも一部は、メチル基であることが好ましい。R1の少なくとも一部がメチル基である場合には、例えば、本発明の組成物の使用感を向上させる観点から好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R3は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方は、メチル基であることが好ましい。
【0046】
式(1)において、Aは、炭素数2~4のアルキレン基である。より具体的には、Aは例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等であってよいが、これらに限定されない。特に、Aは、下記式(2)で表されることが好ましい:
【化5】
【0047】
式(2)において、R4は、炭素数1又は2のアルキル基である。より具体的には、R4は、メチル基又はエチル基であってよい。
【0048】
式(1)において、m及びnは、それぞれの構成単位の平均付加モル数を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、より具体的には、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、又は10以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、12以下、10以下、又は5.0以下であってよい。
【0049】
また、式(1)において、mは、1.0以上14以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましい。また、式(1)において、nは、2.0以上34以下であることが好ましく、6.0以上12以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m+nは、4.0以上、4.5以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は12以下であってよい。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m:nは、1:10~10:1であってよい。
【0052】
本発明のポリマーは、数平均分子量は、10,000以下である。より具体的には、本発明のポリマーの数平均分子量は、例えば、10,000以下、5,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、2,000以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってよく、また130以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は500以上であってよい。また、本発明のポリマーの数平均分子量は、300以上3,500以下であることが好ましく、500以上1,200以下であることがより好ましい。
【0053】
本発明のポリマーのIOB値は、0.4~1.8である。より具体的には、本発明のポリマーのIOB値は、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、又は0.7以上であってよく、また1.8以下、1.6以下、1.4以下、又は1.2以下であってよい。また、本発明のポリマーのIOB値は、0.7以上1.2以下であることが好ましい。
【0054】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。なお、IOB値の決定方法については、実施例に記載の方法を参照できる。
【0055】
本発明のポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0056】
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、各構成単位に対応するエポキシドを付加重合することによって行ったよい。また、付加重合は、ブロック重合であってもよく、ランダム重合であってもよいが、ランダム重合であることが好ましい。
【0057】
また、本発明のポリマーの製造方法は、上記の付加重合によって得られたポリマーに対して、更にハロゲン化アルキルと反応させることを更に含んでよい。ハロゲン化アルキルとの反応を介して、得られたポリマーの分子内の水酸基は、アルキル基によって封鎖されて、その結果ポリマー全体の疎水性を所望のとおりに調整することができる。本発明において、ポリマーの分子内において、アルキル基による水酸基の封鎖率は、例えば30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、又は55%以上であってよく、また60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、又は55%以下であってよい。なお、アルキル基による水酸基の封鎖率は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0058】
本発明のポリマーの特徴の一つとして、高い水溶性及び高い脂溶性を兼備することである。
【0059】
本発明のポリマーの水への溶解度は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり得る。
【0060】
また、本発明のポリマーの脂溶性の指標として、例えばオリーブ油への溶解度を用いることができる。本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度は、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、又は1.00質量%以上であり得る。なお、本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度の上限値は特に限定されず、例えば10質量%以下であってよい。
【0061】
本発明の組成物において、本発明のポリマーの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1. 0質量%以下であってよい。
【0062】
〈その他の成分〉
本発明の組成物は、目的とする用途に合わせて、上述した成分の他に、その他の成分を更に含んでよい。以下では例示的に説明するが、本発明はこれらの成分によって制限されることはない。
【0063】
(増粘性水溶性高分子)
本発明の組成物は、増粘性水溶性高分子を更に含んでよい。増粘性水溶性高分子を含むことによって、組成物の粘度を高めて分散物の安定性をさらに向上させることができる。また、一部の増粘性水溶性高分子は、保湿効果を有する保湿剤とすることもできる。
【0064】
本発明において、増粘性水溶性高分子として、特に限定されず、例えば、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等を挙げることができる。これらの増粘性水溶性高分子は、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
【0065】
本発明の組成物において、増粘性水溶性高分子を含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、又は0.1質量%以上であってよく、また、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は0.2質量%以下であってよい。
【0066】
(多価アルコール)
本発明の組成物は、多価アルコールを更に含んでよい。一部の多価アルコールは、保湿効果を有する保湿剤とすることもできる。
【0067】
多価アルコールとは、分子中に水酸基を2個以上もつアルコールである。本発明において、多価アルコールとして、特に限定されず、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、トレハロース、グルコース及びスクロース等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
【0068】
本発明の組成物において、多価アルコールを含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.5質量%以上、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、また、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0069】
本発明の組成物は、上述したその他の成分以外には、化粧料に添加し得る成分を、本発明の効果を損なわない範囲において、任意に添加することができる。かかる成分として、低級アルコール等の水性成分、その他の保湿剤、水溶性薬剤(例えば、アルブチン、アスコルビン酸グルコシド、トラネキサム酸、4-メトキシサリチル酸塩等)、油溶性薬剤(例えば、油溶性ビタミン類、油溶性植物抽出物等)、紫外線吸収剤、エデト酸ナトリウム等のキレート剤、クエン酸/クエン酸ナトリウム等のpH調整剤、パラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤、色素、染料、香料、その他の界面活性剤(例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
《本発明の組成物の製造方法》
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、公知の水中油型乳化化粧料の製造方法を用いてよい。例えば、油分を溶解させた油相を、水溶性成分を溶解させた水相に添加・攪拌することによって、行ってよい。この際、油相には、油分、及び高級アルコールを配合してよい。また、本発明のポリマーは、油分を乳化する前に添加されてもよく、油分を乳化した後に添加されてもよい。
【0071】
《本発明の組成物の態様及び用途》
本発明の組成物は、その特有の構成成分から、αゲルを用いた水中油型乳化化粧料組成物であり得る。言い換えれば、本発明の組成物は、αゲルを形成している態様であり得る。なお、αゲル乳化とは、水との共存下において、界面活性剤と高級アルコールとが形成する2分子膜の積層構造である。また、αゲルが形成されているか否かは、DSC(示査走査型熱量測定)により確認することができる。より具体的には、例えば、油分を乳化した乳化パーツを70℃以下に降温しながらDSC(示査走査型熱量測定)で測定すれば、発熱ピークが認められ、これは油相が水相中でαゲルを形成していることを示している。この際、発熱ピーク温度の測定は、例えばDSC(Q-2000,TA Instruments,USA)を用いて、1℃/分で降温させて測定してよい。
【0072】
本発明の組成物は、外皮に適用される化粧料、医薬品、及び医薬部外品に広く適用することが可能である。また、製品形態も任意であり、乳液、乳化ファンデーション、又は日焼け止めエマルジョン等の乳液状製品、スキンクリーム等のクリーム状の製品等が例示される。
【実施例0073】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
《合成例1及び2》
以下の合成例1及び2は、それぞれ下記式(3)で表される構造を有するポリマーを合成した:
【化6】
なお、式(3)において、[]内は、ランダム共重合体である。
【0075】
〈合成例1〉
合成例1:R1=H、R2=H、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー1
下記方法で合成を行い、ポリマー1を得た。
【0076】
メタノール128g及び触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後5時間攪拌した。オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、合成例1のポリマー1、2000gを得た。
【0077】
以下では、得られたポリマー1に対して、各種の物性値を求めた。
【0078】
(数平均分子量)
得られたポリマー1の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により算出した。システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。このクロマトグラムからポリエチレングリコールを標準とし、数平均分子量を求めたところ、約530であった。
【0079】
(重量平均分子量)
得られたポリマー1の重量平均分子量は、上記と同様にGPC計算によって求めて、約859であった。
【0080】
(多分散度)
上記で求めた数平均分子量及び重量平均分子量の結果から、ポリマー1の多分散度Mw/Mnは、1.62であった。
【0081】
(IOB値)
得られたポリマー1のIOB値は、以下のように求めたところ、1.1であった。
【0082】
より具体的には、ポリマー1において、有機性値として、炭素を20、iso分岐を-10にて計算した。また、無機性値は、水酸基を100、エーテル結合を20にて計算した。
・メタノール部位:(炭素数1、水酸基1)×1
有機性値:20
無機性値:100
・グリシドール部位:(炭素数3、iso分岐1、水酸基1、エーテル結合1)×2
有機性値:(60-10)×2=100
無機性値:(100+20)×2=240
・プロピレンオキシド部位:(炭素数3、iso分岐1、エーテル結合1)×6
有機性値:(60-10)×6=300
無機性値:20×6=120
以上、合計有機性値が420となる、合計無機性値が460となるため、IOB値が1.09となる。
【0083】
(曇点)
得られたポリマー1に対して、5wt%水溶液を調製し、85℃に加温後、冷却し、透明溶液となる温度は74℃であった。よって、ポリマー1の曇点は、74℃であることが分かった。
【0084】
(水酸基価)
得られたポリマー1の水酸基価は、JIS K-1557-1の測定方法に従い測定したところ、294であった。
【0085】
(水への溶解性)
得られたポリマー1の水への溶解性は、後述する「相溶性評価」の方法と同じように求めたところ、50質量%以上であった。
【0086】
(オリーブ油への溶解性)
得られたポリマー1のオリーブ油への溶解性は、以下のように求めた。すなわち、ポリマー1を、濃度が1.0wt%となるようオリーブ油と混合し、外観を確認した。均一であれば「〇」とした。この場合、ポリマー1のオリーブ油への溶解性は、1.0質量%であった。
【0087】
以上で測定したポリマー1の各種物性値は、下記の表1に示す。
【0088】
〈合成例2〉
合成例2:R1=H及びCH3、R2=H及びCH3、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー2
下記方法で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0089】
メタノール128gと触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム244gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル200gを温度80~130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ポリマー2、1820gを得た。塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が125であったことから、R2とR3におけるメチル基と水素原子の割合(CH3/H)は0.57であることが分かった。すなわち、ポリマー2の水酸基封鎖率が57%であった。
【0090】
上述したポリマー1の場合と同様に、得られたポリマー2に対して、各種の物性値を求めて、それぞれの結果は下記の表1に示す。
【0091】
【0092】
《実施例1~5及び比較例1》
以下の表2に示す処方を用いて、水中油型乳化化粧料組成物(乳液)を調製した。なお、特に断りのない限り、表2中の数値は、配合量を表し、単位は質量%である。
【0093】
得られた各組成物に対して、以下の基準に基づき、使用性(塗布中のみずみずしさ、肌なじみの早さ及び塗布後の滑らかさ)を評価した。それぞれの結果は表2に示す。
【0094】
〈塗布中のみずみずしさの評価〉
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した際の使用性を下記のように評価し、「塗布中のみずみずしさ」に関して、記のように分類する:
「A」:10人中8人以上がみずみずしさを感じる;
「B」:10人中5~7人がみずみずしさを感じる;
「C」:塗布中にみずみずしいと感じる人が10人中4人以下である。
【0095】
〈塗布中の肌なじみの早さの評価〉
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した際の使用性を下記のように評価し、「塗布中の肌なじみの早さ」に関して、記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が肌なじみが早いと感じる;
「B」:10人中5~7人が肌なじみが早いと感じる;
「C」:塗布中の肌なじみが早いと感じる人が10人中と4人以下である。
【0096】
〈塗布後の滑らかさの評価〉
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した際の使用性を下記のように評価し、「塗布後の滑らかさ」に関して、記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が滑らかと感じる;
「B」:10人中5~7人が滑らかと感じる;
「C」:塗布後の肌が滑らかと感じる人が10人中と4人以下である。
【0097】
なお、調製された各組成物では、αゲルが形成されていたことは、DSC(示査走査型熱量測定)により確認することができた。より具体的には、油分を乳化した乳化パーツを、1℃/分で、70℃以下に降温させて、DSC(Q-2000,TA Instruments,USA)を用いて、αゲルの形成による発熱ピークが確認できた。
【0098】
【0099】
表2の結果から明らかなように、実施例1~5の組成物は、いずれも、塗布中にみずみずしい感触を維持しつつ、比較例1の組成物に比べて、塗布中の肌なじみの早さが向上されており、しかも塗布後の滑らかさも向上されていることが分かった。
【0100】
《処方例》
以下では、本発明の組成物の処方例を例示的に挙げる。なお、本発明は、以下の処方例によって何ら限定されるものではない。また、処方例中の「ポリマー1」及び「ポリマー2」は、それぞれ上述した「合成例1」及び「合成例2」で合成された「ポリマー1」及び「ポリマー2」である。
【0101】
【0102】
【0103】