(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095382
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20240703BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/145 C
H03H9/145 D
H03H9/25 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212650
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA14
5J097BB02
5J097DD04
5J097DD14
5J097DD22
5J097DD29
5J097EE08
5J097FF04
5J097FF05
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA02
5J097HA03
5J097KK03
5J097KK09
(57)【要約】
【課題】IDT電極を含む共振子の共振特性に発生する不要波のリップルを、より抑制する。
【解決手段】弾性波装置1では、IDT電極3と圧電性基板2の一部とを含む共振子10は、複数の領域A1~A13を有する。複数の領域A1~A13は、中央領域A7と、第1ギャップ領域A4と、第2ギャップ領域A10と、第1エッジ領域A5と、第2エッジ領域A9と、第1中間領域A6と、第2中間領域A8と、を含む。第1中間領域A6は、中央領域A7と第1エッジ領域A5との間に位置している。第2中間領域A8は、中央領域A7と第2エッジ領域A9との間に位置している。第1中間領域A6及び第2中間領域A8では、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅く第1エッジ領域A5及び第2エッジ領域A9よりも弾性波の音速が速い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられているIDT電極と、を備え、
前記IDT電極は、
第1バスバーと、
第1方向において前記第1バスバーに対向している第2バスバーと、
前記第1バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第1バスバーから前記第2バスバーに向かって延びている複数の第1電極指と、
前記第2バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第2バスバーから前記第1バスバーに向かって延びている複数の第2電極指と、を有し、
前記IDT電極では、
前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが、前記第1方向に交差する第2方向において、互いに離隔して並んでおり、
前記第1バスバー及び前記第2バスバーの各々は、
開口部と、
前記第1方向において前記開口部よりも前記複数の第1電極指及び前記複数の第2電極指側に位置している内側バスバー部と、
前記第1方向において前記開口部から見て前記内側バスバー部とは反対側に位置している外側バスバー部と、
前記第1方向において前記内側バスバー部と前記外側バスバー部とを連結している連結部と、を含み、
前記複数の第1電極指の先端縁の包絡線と複数の第2電極指の先端縁の包絡線との間の領域を交差領域とするとき、
前記IDT電極と前記圧電性基板の一部とを含む共振子は、前記圧電性基板の厚さ方向からの平面視で、前記第1方向において互いに異なる複数の領域を有し、
前記複数の領域は、
前記第1方向における前記IDT電極の前記交差領域の中央部を含み、前記複数の第1電極指の中央部と前記複数の第2電極指の中央部とを含む中央領域と、
前記第1バスバーと前記複数の第2電極指との間のギャップを含む第1ギャップ領域と、
前記第2バスバーと前記複数の第1電極指との間のギャップを含む第2ギャップ領域と、
前記複数の第2電極指の先端部を含む第1エッジ領域と、
前記複数の第1電極指の先端部を含む第2エッジ領域と、
前記中央領域と前記第1エッジ領域との間に位置している第1中間領域と、
前記中央領域と前記第2エッジ領域との間に位置している第2中間領域と、を含み、
前記第1ギャップ領域及び前記第2ギャップ領域では、前記中央領域よりも弾性波の音速が速く、
前記第1中間領域及び前記第2中間領域では、前記中央領域よりも弾性波の音速が遅く前記第1エッジ領域及び前記第2エッジ領域よりも弾性波の音速が速い、
弾性波装置。
【請求項2】
前記第2エッジ領域では、
前記複数の第1電極指のうち少なくとも1つの第1電極指の前記先端部が、第1太幅部を含み、
前記第2方向における前記第1太幅部の幅は、前記第2方向における、前記少なくとも1つの第1電極指の中央部の幅よりも広く、
前記第1エッジ領域では、
前記複数の第2電極指のうち少なくとも1つの第2電極指の前記先端部が、第2太幅部を含み、
前記第2方向における前記第2太幅部の幅は、前記第2方向における、前記少なくとも1つの第2電極指の中央部の幅よりも広い、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記第1エッジ領域は、
前記複数の第2電極指のうち少なくとも1つの第2電極指の前記先端部に重なる第1質量付加膜の少なくとも一部を含み、
前記第2エッジ領域は、
前記複数の第1電極指のうち少なくとも1つの第1電極指の前記先端部に重なる第2質量付加膜の少なくとも一部を含む、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項4】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられているIDT電極と、を備え、
前記IDT電極は、
第1バスバーと、
第1方向において前記第1バスバーに対向している第2バスバーと、
前記第1バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第1バスバーから前記第2バスバーに向かって延びている複数の第1電極指と、
前記第2バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第2バスバーから前記第1バスバーに向かって延びている複数の第2電極指と、を有し、
前記IDT電極では、
前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが、前記第1方向に交差する第2方向において、互いに離隔して並んでおり、
前記第1バスバー及び前記第2バスバーの各々は、
開口部と、
前記第1方向において前記開口部よりも前記複数の第1電極指及び前記複数の第2電極指側に位置している内側バスバー部と、
前記第1方向において前記開口部から見て前記内側バスバー部とは反対側に位置している外側バスバー部と、
前記第1方向において前記内側バスバー部と前記外側バスバー部とを連結している連結部と、を含み、
前記複数の第1電極指の先端縁の包絡線と複数の第2電極指の先端縁の包絡線との間の領域を交差領域とするとき、
前記IDT電極と前記圧電性基板の一部とを含む共振子は、前記圧電性基板の厚さ方向からの平面視で、前記第1方向において互いに異なる複数の領域を有し、
前記複数の領域は、
前記第1方向における前記IDT電極の前記交差領域の中央部を含み、前記複数の第1電極指の中央部と前記複数の第2電極指の中央部とを含む中央領域と、
前記第1バスバーと前記複数の第2電極指との間のギャップを含む第1ギャップ領域と、
前記第2バスバーと前記複数の第1電極指との間のギャップを含む第2ギャップ領域と、
前記複数の第2電極指の先端部を含む第1エッジ領域と、
前記複数の第1電極指の先端部を含む第2エッジ領域と、
前記中央領域と前記第1エッジ領域との間に位置している第1中間領域と、
前記中央領域と前記第2エッジ領域との間に位置している第2中間領域と、を含み、
前記複数の第2電極指のうち少なくとも1つの第2電極指は、
前記中央領域において第1厚さ及び第1幅を有し、
前記第1エッジ領域において前記第1厚さ及び第2幅を有し、
前記第1中間領域において第2厚さ及び前記第1幅を有し、
前記複数の第1電極指のうち少なくとも1つの第1電極指は、
前記中央領域において前記第1厚さ及び前記第1幅を有し、
前記第2エッジ領域において前記第2厚さ及び前記第1幅を有し、
前記第2中間領域において前記第2厚さ及び前記第1幅を有し、
前記第2厚さが前記第1厚さよりも厚く、
前記第2幅が前記第1幅よりも広い、
弾性波装置。
【請求項5】
前記第1中間領域及び前記第2中間領域では前記中央領域よりも弾性波の音速が遅く前記第1エッジ領域及び前記第2エッジ領域よりも弾性波の音速が速い、
請求項4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記圧電性基板は、
圧電層と、
前記圧電層に接合されている支持基板を更に備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記第2方向は、前記第1方向に直交する方向である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に弾性波装置に関し、より詳細には、IDT電極を備える弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、圧電膜と、圧電膜上に設けられたIDT電極と、を備える弾性波装置を開示している。
【0003】
特許文献1に開示された弾性波装置では、IDT電極は、第1のバスバーと、第1のバスバーと隔てられて配置された第2のバスバーと、第1のバスバーに基端が電気的に接続されており、先端が第2のバスバーに向かって延ばされている複数本の第1の電極指と、第2のバスバーに基端が接続されており、先端が第1のバスバーに向かって延ばされている複数本の第2の電極指と、を有する。
【0004】
第1のバスバー及び第2のバスバーの各々は、開口部と、内側バスバー部と、外側バスバー部と、を有する。
【0005】
特許文献1の
図9に開示された弾性波装置では、第2の電極指の先端に1つの太幅部が設けられている。この第2の電極指の太幅部が設けられている部分の近傍において、第1の電極指には太幅部は設けられていない。また、この弾性波装置では、第1の電極指の先端に1つの太幅部が設けられている。この第1の電極指の太幅部が設けられている部分の近傍において、第2の電極指には太幅部は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IDT電極の電極指の先端に太幅部が設けられた弾性波装置では、IDT電極を含む共振子の共振特性に発生する不要波のリップルを、より抑制することが必要となることがある。
【0008】
本発明の目的は、IDT電極を含む共振子の共振特性に発生する不要波のリップルを、より抑制することが可能な弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る弾性波装置は、圧電性基板と、IDT電極と、を備える。前記IDT電極は、前記圧電性基板上に設けられている。前記IDT電極は、第1バスバーと、第2バスバーと、複数の第1電極指と、複数の第2電極指と、を有する。前記第2バスバーは、第1方向において前記第1バスバーに対向している。前記複数の第1電極指は、前記第1バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第1バスバーから前記第2バスバーに向かって延びている。前記複数の第2電極指は、前記第2バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第2バスバーから前記第1バスバーに向かって延びている。前記IDT電極では、前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが、前記第1方向に交差する第2方向において、互いに離隔して並んでいる。前記第1バスバー及び前記第2バスバーの各々は、開口部と、内側バスバー部と、外側バスバー部と、連結部と、を含む。前記内側バスバー部は、前記第1方向において前記開口部よりも前記複数の第1電極指及び前記複数の第2電極指側に位置している。前記外側バスバー部は、前記第1方向において前記開口部から見て前記内側バスバー部とは反対側に位置している。前記連結部は、前記第1方向において前記内側バスバー部と前記外側バスバー部とを連結している。前記複数の第1電極指の先端縁の包絡線と複数の第2電極指の先端縁の包絡線との間の領域を交差領域とするとき、前記IDT電極と前記圧電性基板の一部とを含む共振子は、前記圧電性基板の厚さ方向からの平面視で、前記第1方向において互いに異なる複数の領域を有する。前記複数の領域は、中央領域と、第1ギャップ領域と、第2ギャップ領域と、第1エッジ領域と、第2エッジ領域と、第1中間領域と、第2中間領域と、を含む。前記中央領域は、前記第1方向における前記IDT電極の前記交差領域の中央部を含み、前記複数の第1電極指の中央部と前記複数の第2電極指の中央部とを含む。前記第1ギャップ領域は、前記第1バスバーと前記複数の第2電極指との間のギャップを含む。前記第2ギャップ領域は、前記第2バスバーと前記複数の第1電極指との間のギャップを含む。前記第1エッジ領域は、前記複数の第2電極指の先端部を含む。前記第2エッジ領域は、前記複数の第1電極指の先端部を含む。前記第1中間領域は、前記中央領域と前記第1エッジ領域との間に位置している。前記第2中間領域は、前記中央領域と前記第2エッジ領域との間に位置している。前記第1ギャップ領域及び前記第2ギャップ領域では、前記中央領域よりも弾性波の音速が速い。前記第1中間領域及び前記第2中間領域では、前記中央領域よりも弾性波の音速が遅く前記第1エッジ領域及び前記第2エッジ領域よりも弾性波の音速が速い。
【0010】
本発明の別の一態様に係る弾性波装置は、圧電性基板と、IDT電極と、を備える。前記IDT電極は、前記圧電性基板上に設けられている。前記IDT電極は、第1バスバーと、第2バスバーと、複数の第1電極指と、複数の第2電極指と、を有する。前記第2バスバーは、第1方向において前記第1バスバーに対向している。前記複数の第1電極指は、前記第1バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第1バスバーから前記第2バスバーに向かって延びている。前記複数の第2電極指は、前記第2バスバーに接続されており、前記第1方向において前記第2バスバーから前記第1バスバーに向かって延びている。前記IDT電極では、前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが、前記第1方向に交差する第2方向において、互いに離隔して並んでいる。前記第1バスバー及び前記第2バスバーの各々は、開口部と、内側バスバー部と、外側バスバー部と、連結部と、を含む。前記内側バスバー部は、前記第1方向において前記開口部よりも前記複数の第1電極指及び前記複数の第2電極指側に位置している。前記外側バスバー部は、前記第1方向において前記開口部から見て前記内側バスバー部とは反対側に位置している。前記連結部は、前記第1方向において前記内側バスバー部と前記外側バスバー部とを連結している。前記複数の第1電極指の先端縁の包絡線と複数の第2電極指の先端縁の包絡線との間の領域を交差領域とするとき、前記IDT電極と前記圧電性基板の一部とを含む共振子は、前記圧電性基板の厚さ方向からの平面視で、前記第1方向において互いに異なる複数の領域を有する。前記複数の領域は、中央領域と、第1ギャップ領域と、第2ギャップ領域と、第1エッジ領域と、第2エッジ領域と、第1中間領域と、第2中間領域と、を含む。前記中央領域は、前記第1方向における前記IDT電極の前記交差領域の中央部を含み、前記複数の第1電極指の中央部と前記複数の第2電極指の中央部とを含む。前記第1ギャップ領域は、前記第1バスバーと前記複数の第2電極指との間のギャップを含む。前記第2ギャップ領域は、前記第2バスバーと前記複数の第1電極指との間のギャップを含む。前記第1エッジ領域は、前記複数の第2電極指の先端部を含む。前記第2エッジ領域は、前記複数の第1電極指の先端部を含む。前記第1中間領域は、前記中央領域と前記第1エッジ領域との間に位置している。前記第2中間領域は、前記中央領域と前記第2エッジ領域との間に位置している。前記複数の第2電極指のうち少なくとも1つの第2電極指は、前記中央領域において第1厚さ及び第1幅を有し、前記第1エッジ領域において前記第1厚さ及び第2幅を有し、前記第1中間領域において第2厚さ及び前記第1幅を有する。前記複数の第1電極指のうち少なくとも1つの第1電極指は、前記中央領域において前記第1厚さ及び前記第1幅を有し、前記第2エッジ領域において前記第2厚さ及び前記第1幅を有し、前記第2中間領域において前記第2厚さ及び前記第1幅を有する。前記第2厚さが前記第1厚さよりも厚く、前記第2幅が前記第1幅よりも広い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様に係る弾性波装置は、不要波のリップルを、より抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る弾性波装置の一部の平面図である。
【
図2】
図2は、同上の弾性波装置に関し、
図1のX1-X1線断面図である。
【
図3】
図3は、同上の弾性波装置に関し、
図1のX2-X2線断面図である。
【
図4】
図4は、同上の弾性波装置に関し、
図1のY1-Y1線断面図である。
【
図5】
図5は、同上の弾性波装置に関し、
図1のY2-Y2線断面図である。
【
図6】
図6は、同上の弾性波装置に関する寸法説明図である。
【
図7】
図7は、同上の弾性波装置において弾性波伝搬方向(第2方向)に伝搬する弾性波の音速の第1方向における速度分布の模式的な説明図である。
【
図8】
図8Aは、同上の弾性波装置におけるIDT電極の第1電極指の斜視図である。
図8Bは、同上の弾性波装置におけるIDT電極の第2電極指の斜視図である。
【
図9】
図9は、同上の弾性波装置における共振子のインピーダンス-周波数特性図である。
【
図10】
図10は、比較例に係る弾性波装置における共振子のインピーダンス-周波数特性図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る弾性波装置において弾性波伝搬方向(第2方向)に伝搬する弾性波の音速の第1方向における速度分布の模式的な説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る弾性波装置の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態1~3等において参照する
図1~7、8A、8B、11及び12は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0014】
(実施形態1)
(1)概要
実施形態1に係る弾性波装置1は、
図1に示すように、圧電性基板2と、IDT(Interdigital Transducer)電極3と、を備える。IDT電極3は、圧電性基板2上に設けられている。「圧電性基板2上に設けられている」とは、圧電性基板2上に直接的に設けられている場合と、圧電性基板2上に間接的に設けられている場合と、を含む。弾性波装置1は、圧電性基板2上に設けられている2つの反射器8(
図1では、1つの反射器8のみ図示してある)を更に備える。実施形態1に係る弾性波装置1は、1ポート型弾性波共振子であるが、これに限らない。
図1では、IDT電極3及び反射器8にドットのハッチングを付してあるが、これらのハッチングは、断面を表すものではなく、IDT電極3及び反射器8と圧電性基板2との関係を分かりやすくするために付してあるにすぎない。
【0015】
(2)詳細
以下、実施形態1に係る弾性波装置1について、
図1~7、8A及び8Bを参照して、より詳細に説明する。
【0016】
(2.1)圧電性基板
圧電性基板2は、
図2及び3に示すように、圧電性基板2の厚さ方向D0において互いに対向する第1主面21及び第2主面22を有する。ここにおいて、「対向する」とは物理的ではなく幾何学的に対向することを意味する。圧電性基板2の厚さ方向D0からの平面視で、圧電性基板2の外縁は、例えば、矩形状である。
【0017】
圧電性基板2は、圧電性を有する。実施形態1に係る弾性波装置1では、圧電性基板2は、圧電基板である。圧電基板の材料は、例えば、リチウムタンタレートであるが、これに限らず、例えば、リチウムニオベイト、酸化亜鉛又は窒化アルミニウムであってもよい。圧電基板は、リチウムタンタレート基板の場合、例えば、50°YカットX伝搬リチウムタンタレート基板である。圧電基板が、例えば、YカットX伝搬リチウムタンタレート基板の場合、弾性波装置1は、ラブ波を弾性波として利用することにより、SH波を主成分とするモードをメインモードとして使用することができる。なお、圧電基板の単結晶材料、カット角については、例えば、弾性波装置1の要求仕様(通過特性、減衰特性、温度特性及び帯域幅等のフィルタ特性)等に応じて、適宜、決定すればよい。圧電基板は、リチウムニオベイト基板の場合、例えば、128°Y-Xのリチウムニオベイト基板である。
【0018】
(2.2)IDT電極
IDT電極3は、導電性を有する。IDT電極3の材料は、例えば、アルミニウム、銅、白金、金、銀、チタン、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、マグネシウム、鉄又はこれらの金属のいずれかを主体とする合金等である。また、IDT電極3は、これらの金属又は合金からなる複数の金属膜を積層した構造を有していてもよい。
【0019】
IDT電極3は、
図1に示すように、第1バスバー4と、第2バスバー5と、複数の第1電極指6と、複数の第2電極指7と、を有する。
【0020】
IDT電極3では、第1バスバー4と第2バスバー5とは、圧電性基板2の厚さ方向D0に直交する第1方向D1において対向し合っている。つまり、第2バスバー5は、第1方向D1において第1バスバー4に対向している。
【0021】
第1バスバー4及び第2バスバー5は、第1方向D1に直交する第2方向D2を長手方向とする長尺状である。第2方向D2は、圧電性基板2の厚さ方向D0にも直交する。
【0022】
複数の第1電極指6は、第1バスバー4に接続されており、第1方向D1において第1バスバー4から第2バスバー5側に延びている。より詳細には、複数の第1電極指6は、第1バスバー4から第1バスバー4の長手方向に直交する方向に沿って延びている。
図1の例では、複数の第1電極指6は、互いの長さが同じである。IDT電極3では、複数の第1電極指6と第2バスバー5とは離れており、第1方向D1において対向する第1電極指6と第2バスバー5との間にギャップ31が形成されている。上述のメインモードの弾性波の波長をλとしたときに、第1方向D1におけるギャップ31の長さL31は、例えば、0.5λ以下である。
【0023】
複数の第2電極指7は、第2バスバー5に接続されており、第1方向D1において第2バスバー5から第1バスバー4側に延びている。より詳細には、複数の第2電極指7は、第2バスバー5から第2バスバー5の長手方向に直交する方向に沿って延びている。
図1の例では、複数の第2電極指7は、互いの長さが同じである。IDT電極3では、複数の第2電極指7と第1バスバー4とは離れており、第1方向D1において対向する第2電極指7と第1バスバー4との間にギャップ32が形成されている。上述の弾性波の波長をλとしたときに、第1方向D1におけるギャップ32の長さL32は、例えば、0.5λ以下である。
【0024】
IDT電極3では、複数の第1電極指6と複数の第2電極指7とが、第1方向D1に直交する第2方向D2において、1本ずつ交互に互いに離隔して並んでいる。したがって、第2方向D2において隣り合う第1電極指6と第2電極指7とは離れている。IDT電極3では、第1電極指6と第2電極指7との対数は、一例として100対である。つまり、IDT電極3は、一例として、100本の第1電極指6と、100本の第2電極指7と、を有している。IDT電極3は、交差領域30(
図6参照)において、弾性波を励振する。交差領域30は、複数の第1電極指6の先端縁の包絡線36と複数の第2電極指7の先端縁の包絡線37との間の領域である。弾性波の伝搬方向は、第2方向D2に沿った方向である。IDT電極3と圧電性基板2の一部とを含む共振子10の特性は、例えば、IDT電極3の電極指ピッチ、第1方向D1におけるIDT電極3の交差領域30の幅W30(以下、交差幅W30ともいう)、圧電性基板2の材料等を適宜変えることによって変えることができる。IDT電極3の電極指ピッチは、複数の第1電極指6のうち隣り合う2つの第1電極指6の中心線間の距離、又は、複数の第2電極指7のうち隣り合う2つの第2電極指7の中心線間の距離で定義される。
【0025】
以下、第1バスバー、第2バスバー、複数の第1電極指6及び複数の第2電極指7について、より詳細に説明する。
【0026】
第1バスバー4は、複数の開口部40(以下、第1開口部40ともいう)と、内側バスバー部42(以下、第1内側バスバー部42ともいう)と、外側バスバー部41(以下、第1外側バスバー部41ともいう)と、複数の連結部43(以下、第1連結部43ともいう)と、含む。複数の第1開口部40は、例えば、第2方向D2において等間隔で並んでいる。第1内側バスバー部42は、第1方向D1において複数の第1開口部40よりも複数の第1電極指6及び複数の第2電極指7側に位置している。第1外側バスバー部41は、第1方向D1において複数の第1開口部40から見て第1内側バスバー部42とは反対側に位置している。つまり、第1外側バスバー部41は、第1方向D1において複数の第1電極指6が存在する側とは反対側に位置している。複数の第1連結部43は、第1方向D1において第1内側バスバー部42と第1外側バスバー部41とを連結している。複数の第1連結部43は、例えば、第2方向D2において等間隔で並んでいる。複数の第1連結部43のうち第2方向D2において隣り合う2つの第1連結部43の間には、複数の第1開口部40のうち1つの第1開口部40が位置している。要するに、第1バスバー4では、第2方向D2において複数の第1連結部43と複数の第1開口部40とが1つずつ交互に並んでいる。
図1の例では、複数の第1連結部43は、複数の第1電極指6に一対一に対応し、対応する第1電極指6と第1方向D1において並んでいるが、これに限らない。つまり、第1連結部43の数及び複数の第1連結部43の位置は、上述の例に限らない。
【0027】
また、複数の第1開口部40の各々の開口形状は、矩形状であるが、これに限らない。上述の弾性波の波長をλとしたときに、第1方向D1における第1内側バスバー部42の幅W42(
図6参照)は、例えば、0.5λ以下である。また、第1方向D1における第1連結部43の長さL43は、例えば、1.0λ以上である。
【0028】
第2バスバー5は、複数の開口部50(以下、第2開口部50ともいう)と、内側バスバー部52(以下、第2内側バスバー部52ともいう)と、外側バスバー部51(以下、第2外側バスバー部51ともいう)と、複数の連結部53(以下、第2連結部53ともいう)と、含む。複数の第2開口部50は、例えば、第2方向D2において等間隔で並んでいる。第2内側バスバー部52は、第1方向D1において複数の第2開口部50よりも複数の第1電極指6及び複数の第2電極指7側に位置している。第2外側バスバー部51は、第1方向D1において複数の第2開口部50から見て第2内側バスバー部52とは反対側に位置している。つまり、第2外側バスバー部51は、第1方向D1において複数の第2電極指7が存在する側とは反対側に位置している。複数の第2連結部53は、第1方向D1において第2内側バスバー部52と第2外側バスバー部51とを連結している。複数の第2連結部53は、例えば、第2方向D2において等間隔で並んでいる。複数の第2連結部53のうち第2方向D2において隣り合う2つの第2連結部53の間には、複数の第2開口部50のうち1つの第2開口部50が位置している。要するに、第2バスバー5では、第2方向D2において複数の第2連結部53と複数の第2開口部50とが1つずつ交互に並んでいる。
図1の例では、複数の第2連結部53は、複数の第2電極指7に一対一に対応し、対応する第2電極指7と第1方向D1において並んでいるが、これに限らない。つまり、第2連結部53の数及び複数の第2連結部53の位置は、上述の例に限らない。
【0029】
また、複数の第2開口部50の各々の開口形状は、矩形状であるが、これに限らない。上述の弾性波の波長をλとしたときに、第1方向D1における第2内側バスバー部52の幅W52(
図6参照)は、例えば、0.5λ以下である。また、第1方向D1における第2連結部53の長さL53は、例えば、1.0λ以上である。
【0030】
複数の第1電極指6の各々は、
図1に示すように、基端部66(以下、第1基端部66ともいう)、中央部60(以下、第1中央部60ともいう)、中間部63(以下、第1中間部63ともいう)及び先端部61(以下、第1先端部61ともいう)を有する。複数の第1電極指6の各々では、第1基端部66、第1中央部60、第1中間部63及び第1先端部61が、第1方向D1において、第1バスバー4側から、第1基端部66、第1中央部60、第1中間部63及び第1先端部61の順に並んでいる。また、複数の第2電極指7の各々は、
図1に示すように、基端部76(以下、第2基端部76ともいう)、中央部70(以下、第2中央部70ともいう)、中間部73(以下、第2中間部73ともいう)及び先端部71(以下、第2先端部71ともいう)を有する。複数の第2電極指7の各々では、第2基端部76、第2中央部70、第2中間部73及び第2先端部71が、第1方向D1において、第2バスバー5側から、第2基端部76、第2中央部70、第2中間部73及び第2先端部71の順に並んでいる。
【0031】
複数の第1電極指6の各々の第1先端部61は、太幅部62(以下、第1太幅部62ともいう)を含む。
図6に示すように、第2方向D2における第1太幅部62の幅W62は、第2方向D2における第1中央部60の幅W60よりも広い。
図2及び4に示すように、第1中間部63は、圧電性基板2上に設けられているベース部分64と、ベース部分64上に設けられている質量付加部分65と、を含む。ベース部分64の材料は、第1基端部66、第1中央部60及び第1先端部61の材料と同じである。複数の第1電極指6の各々では、ベース部分64、第1中央部60及び第1太幅部62が、第1厚さt0(
図8A参照)を有する。質量付加部分65の材料は、ベース部分64の材料と同じ材料でもよいし異なる材料でもよい。
図1に示すように、第1電極指6の第1中央部60は、第1電極指6において、第1中間部63と、第2方向D2から見て第2電極指7の第2中間部73に重なる領域と、の間に位置している部分である。第1電極指6の第1基端部66は、第1方向D1において第1中央部60と第1バスバー4との間の部分である。
図6に示すように、第2方向D2における第1基端部66の幅W66は、第2方向D2における第1中央部60の幅W60と同じである。複数の第1電極指6の各々では、第1方向D1において、第1中央部60の長さL60が、第1太幅部62の長さL62及び第1中間部63の長さL63よりも長い。第1方向D1において第1太幅部62の長さL63は、1.5λ未満であるのが好ましい。複数の第1電極指6の各々では、
図8Aに示すように、第1中間部63の第2厚さt1が、第1太幅部62及び第1中央部60の第1厚さt0よりも厚い。
【0032】
また、
図1の例では、複数の第1電極指6は、互いの第1中央部60の幅W60が同じである。また、複数の第1電極指6は、互いの第1先端部61の第1太幅部62の幅W62が同じである。複数の第1電極指6の各々は、第1方向D1に沿った中心線を基準として線対称な形状である。第1太幅部62の形状は、矩形状であるが、これに限らず、例えば、六角形状、円形状等であってもよい。
【0033】
図1の例では、第2方向D2における複数の第1開口部40の各々の開口幅は、例えば、第2方向D2において隣り合う2つの第1電極指6の第1中央部60間の距離と同じである。第2方向D2において隣り合う2つの第1開口部40間の距離は、例えば、第1電極指6の第1中央部60の幅W60と同じである。
【0034】
複数の第2電極指7の各々の第2先端部71は、太幅部72(以下、第2太幅部72ともいう)を含む。
図6に示すように、第2方向D2における第2太幅部72の幅W72は、第2方向D2における第2中央部70の幅W70よりも広い。
図3及び5に示すように、第2中間部73は、ベース部分74と、ベース部分74に積層されている質量付加部分75と、を含む。ベース部分74の材料は、第2基端部76、第2中央部70及び第2先端部71の材料と同じである。複数の第2電極指7の各々では、ベース部分74、第2中央部70及び第2太幅部72が、第1厚さt0(
図8B参照)を有する。質量付加部分75の材料は、ベース部分74の材料と同じ材料でもよいし異なる材料でもよい。第2電極指7の第2中央部70は、第2電極指7において、第2中間部73と、第2方向D2から見て第1電極指6の第1中間部63に重なる領域と、の間に位置している部分である。第2電極指7の第2基端部76は、第1方向D1において第2中央部70と第2バスバー5との間の部分である。
図6に示すように、第2方向D2における第2基端部76の幅W76は、第2方向D2における第2中央部70の幅W70と同じである。複数の第2電極指7の各々では、第1方向D1において、第2中央部70の長さL70は、第2太幅部72の長さL72及び第2中間部73の長さL73よりも長い。第1方向D1において第2太幅部72の長さL73は、1.5λ未満であるのが好ましい。複数の第2電極指7の各々では、
図8Bに示すように、第2中間部73の第2厚さt1が、第2太幅部72及び第2中央部70の第1厚さt0よりも厚い。
【0035】
また、
図1の例では、複数の第2電極指7は、互いの第2中央部70の幅W70が同じである。また、複数の第2電極指7は、互いの第2先端部71の第2太幅部72の幅W72が同じである。複数の第2電極指7の各々は、第1方向D1に沿った中心線を基準として線対称な形状である。第2太幅部72の形状は、矩形状であるが、これに限らず、例えば、六角形状、円形状等であってもよい。
【0036】
第2方向D2における複数の第2開口部50の各々の開口幅は、例えば、第2方向D2において隣り合う2つの第2電極指7の第2中央部70間の距離と同じである。第2方向D2において隣り合う2つの第2開口部50間の距離は、例えば、第2電極指7の第2中央部70の幅W70と同じである。
【0037】
実施形態1に係る弾性波装置1は、IDT電極3において、ピストンモードを形成することにより横モードリップルを抑制する構造を有する。この点については、
図5を参照して説明する。
【0038】
弾性波装置1においてIDT電極3と圧電性基板2の一部とを含む共振子10は、圧電性基板2の厚さ方向D0からの平面視で、
図7の左側に示すように、第1方向D1に並んでいる複数(13個)の領域A1~A13を含んでいる。13個の領域A1~A13は、圧電性基板2及びIDT電極3それぞれにおいて互いに異なる部分を含んでいる。
図7の右側には、13個の領域A1~A11を伝搬する弾性波の速度(音速)を模式的に示してある。
【0039】
弾性波装置1の共振子10では、上述の13個の領域A1~A13は、第1方向D1におけるIDT電極3の交差領域30の中央部を含む中央領域A7を含む。中央領域A7は、複数の第1電極指6の第1中央部60と複数の第2電極指7の第2中央部70とを含む。中央領域A7は、複数の第1電極指6の第1中央部60と複数の第2電極指7の第2中央部70とが第2方向D2において重なる領域である。中央領域A7では、電極指幅(第1電極指6の第1中央部60の幅W60又は第2電極指の第2中央部70の幅W70)を上記電極指ピッチの2分の1の値で除した値(デューティ比)は、例えば、0.5である。
【0040】
弾性波装置1の共振子10では、上述の13個の領域A1~A13は、第1方向D1の両端それぞれに位置する2つの領域A1、A13を含む。領域A1(以下、第1外側バスバー領域A1ともいう)は、第1バスバー4の第1外側バスバー部41を含む。領域A13(以下、第2外側バスバー領域A13ともいう)は、第2バスバー5の第2外側バスバー部51を含む。第1外側バスバー領域A1及び第2外側バスバー領域A13では、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅くなる。
【0041】
弾性波装置1の共振子10では、上述の13個の領域A1~A13のうち第1方向D1の両端それぞれから数えて2番目に位置する2つの領域A2、A12を含む。領域A2(以下、第1連結領域A2ともいう)は、第1バスバー4の複数の第1連結部43と複数の第1開口部40とを含む。領域A12(以下、第2連結領域A12ともいう)は、第2バスバー5の複数の第2連結部53と複数の第2開口部50とを含む。第1連結領域A2及び第2連結領域A12では、第1外側バスバー領域A1、第2外側バスバー領域A13及び中央領域A7よりも弾性波の音速が速い。
【0042】
弾性波装置1の共振子10では、上述の13個の領域A1~A13のうち第1方向D1の両端それぞれから数えて3番目に位置する2つの領域A3、A11を含む。領域A3(以下、第1内側バスバー領域A3ともいう)は、第1バスバー4の第1内側バスバー部42を含む。領域A11(以下、第2内側バスバー領域A11ともいう)は、第2バスバー5の第2内側バスバー部52を含む。第1内側バスバー領域A3及び第2内側バスバー領域A11では、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅くなる。
【0043】
弾性波装置1では、上述の13個の領域A1~A13のうち第1方向D1の両端それぞれから数えて4番目に位置する2つの領域A4、A10を含む。領域A4(以下、第1ギャップ領域A4ともいう)は、複数のギャップ32と、複数の第1電極指6の各々において第2方向D2で複数のギャップ32に重なる部分と、を含む。領域A10(以下、第2ギャップ領域A10ともいう)は、複数のギャップ31と、複数の第2電極指7の各々において第2方向D2で複数のギャップ31に重なる部分と、を含む。第1ギャップ領域A4及び第2ギャップ領域A10では、第1内側バスバー領域A3、第2内側バスバー領域A11及び中央領域A7よりも弾性波の音速が速い。
【0044】
弾性波装置1の共振子10では、上述の13個の領域A1~A13のうち第1方向D1の両端それぞれから数えて5番目に位置する領域A5、A9を含む。領域A5(以下、第1エッジ領域A5ともいう)は、複数の第2電極指7の各々の第2太幅部72と、複数の第1電極指6の各々において第2方向D2で複数の第2太幅部72に重なる部分と、を含む。領域A9(以下、第2エッジ領域A9ともいう)は、複数の第1電極指6の第1太幅部62と、複数の第2電極指7の各々において第2方向D2で複数の第1太幅部62に重なる部分と、を含む。第1エッジ領域A5及び第2エッジ領域A9では、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅くなる。弾性波装置1の共振子10では、交差領域30が、第1バスバー4側の第1端と、第2バスバー側の第2端と、を有しており、第1エッジ領域A5は、交差領域30の第1端に対応し、第2エッジ領域A9は、交差領域30の第2端に対応する。
【0045】
弾性波装置1では、中央領域A7から見て第1バスバー4側に、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅くなる低音速領域(第1エッジ領域A5及び第1内側バスバー領域A3)が存在し、第2バスバー5側に、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅くなる低音速領域(第2エッジ領域A9及び第2内側バスバー領域A11)が存在する。また、弾性波装置1の共振子10では、第1方向D1において、低音速領域の外側に、中央領域A7よりも弾性波の音速が速い高音速領域(第1連結領域A2及び第2連結領域A12)が存在している。したがって、弾性波装置1では、ピストンモードを形成することが可能となる。
【0046】
弾性波装置1の共振子10では、上述の13個の領域A1~A13のうち第1方向D1の両端それぞれから数えて6番目に位置する領域A6、A8を含む。領域A6(以下、第1中間領域A6ともいう)は、複数の第2電極指7の各々の第2中間部73と、複数の第1電極指6の各々において第2方向D2で各第2中間部73に重なる部分と、を含む。領域A8(以下、第2中間領域A8ともいう)は、複数の第1電極指6の第1中間部63と、複数の第2電極指7の各々において第2方向D2で各第1中間部63に重なる部分と、を含む。
【0047】
第1中間領域A6及び第2中間領域A8では、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅い。弾性波装置1の共振子10は、中央領域A7での弾性波の音速をV0とし、第1中間領域A6及び第2中間領域A8の各々での弾性波の音速をV1とし、第1エッジ領域A5及び第2エッジ領域A9の各々での弾性波の音速をV2とすると、V0>V1>V2となる。
【0048】
上述のように、第1中間部63及び第2中間部73の各々の第2厚さt1は、第1中央部60及び第2中央部70の各々の第1厚さt0よりも厚い。共振子10の周波数特性における横モードリップルの発生を抑制する観点で、第1中間部63及び第2中間部73の各々の第2厚さt1は、第1中央部60及び第2中央部70の各々の第1厚さt0の2倍未満であることが好ましい。
【0049】
弾性波装置1の共振子10では、[IDT電極3のうち中央領域A7に存在する部分の単位長さ当たりの質量]<[IDT電極3のうち第1エッジ領域A5及び第2エッジ領域A9の各々に存在する部分の単位長さ当たりの質量]<[IDT電極3のうち第1中間領域A6及び第2中間領域A8の各々に存在する部分の単位長さ当たりの質量]という条件を満たしている。この条件について、
図8A及び8Bを参照して説明する。
図8Aでは、第1厚さt0[m]及び第1幅x0[m]を有する第1中央部60の密度をm0[kg/m
3]としてある。また、
図8Bでは、第1厚さt0[m]及び第1幅x0[m]を有する第2中央部70の密度をm0[kg/m
3]としてある。また、
図8Aでは、第2厚さt1[m]及び第1幅x0[m]を有する第1中間部63に関して、ベース部分64の密度をm0[kg/m
3]とし、質量付加部分65の密度をm1[kg/m
3]としてある。また、
図8Bでは、第2厚さt1[m]及び第1幅x0[m]を有する第2中間部73に関して、ベース部分74の密度をm0[kg/m
3]とし、質量付加部分75の密度をm1[kg/m
3]としてある。また、
図8Aでは、第1厚さt0[m]及び第2幅x1[m]を有する第1太幅部62に関して、密度をm0[kg/m
3]としてある。また、
図8Bでは、第1厚さt0[m]及び第2幅x1[m]を有する第2太幅部72に関して、密度をm0[kg/m
3]としてある。また、各単位長さは、第1方向D1(交差幅方向)の長さであり、1としている。
図8A及び8Bで示したパラメータを使って上記条件を書き直すと、式(1)のようになる。
【数1】
【0050】
式(1)をm0・x0・t0で規格化すると、式(2)のようになる。
【数2】
【0051】
弾性波装置1の共振子10では、式(2)の条件を満たすことにより、V0<V1<V2(つまり、V0>V1>V2)の条件が成立する。
【0052】
また、各領域A1~A13それぞれの音速は、圧電性基板2のパラメータ(材料、オイラー角及び厚さ等)、IDT電極3のパラメータ(材料、厚さ及び電極指ピッチ等)を用いて、有限要素法によるシミュレーションを行うことにより、求めることができる。
【0053】
(2.3)反射器
各反射器8は、圧電性基板2上に設けられている。より詳細には、各反射器8は、圧電性基板2の第1主面21上に設けられている。各反射器8は、第2方向D2においてIDT電極3の両側に1つずつ配置されている。
【0054】
各反射器8は、隣り合うIDT電極3側からの弾性波を反射する。各反射器8は、短絡グレーティングである。各反射器8は、複数の電極指9を有する。各反射器8では、複数の電極指9の第1方向D1の一端同士が短絡されており、他端同士が短絡されている。
図1では、図面を見やすくするために、反射器8の電極指9の数を減らして描いてある。また、電極指9の長さ及び幅も実物とは異なる。各反射器8は、IDT電極3は、導電性を有する。IDT電極3の材料は、例えば、アルミニウム、銅、白金、金、銀、チタン、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、マグネシウム、鉄又はこれらの金属のいずれかを主体とする合金等である。また、IDT電極3は、これらの金属又は合金からなる複数の金属膜を積層した構造を有していてもよい。各反射器8の厚さは、例えば、300nmである。
【0055】
(3)弾性波装置の特性
図9は、実施形態1に係る弾性波装置1の一実施例でのインピーダンスの周波数特性である。
図9において、横軸は周波数であり、縦軸は弾性波装置1のインピーダンス〔dB〕である。ここでのインピーダンス〔dB〕は、弾性波装置1のインピーダンスをZとした場合、20×log
10|Z|で求められる値である。
図10は、比較例に係る弾性波装置のインピーダンスの周波数特性である。上記一実施例の構造パラメータは、下記の表1の通りである。弾性波の波長λは、一例として、4.48μmである。上記一実施例では、x1=1.41・x0とし、t1=1.33・t0とし、m0<m1<1.2・m0としてある。また、上記比較例は、上記一実施例において、各質量付加部分65、75を有していない点で、上記一実施例と相違する。
【0056】
【0057】
図9及び10の結果から、実施形態1に係る弾性波装置1では、比較例に係る弾性波装置と比べて、インピーダンス特性において共振点と反共振点との間に発生する不要波のリップル(横モードリップル)を抑制できることが分かる。
【0058】
(4)効果
実施形態1に係る弾性波装置1は、IDT電極3と圧電性基板2の一部とを含む共振子10が、領域A1~A13を有し、領域A1~A13が、中央領域A7、第1エッジ領域A5、第2エッジ領域A9、第1中間領域A6及び第2中間領域A8を含んでいる。実施形態1に係る弾性波装置1において、第1中間領域A6及び第2中間領域A8では、中央領域A7よりも弾性波の音速が遅く第1エッジ領域A5及び第2エッジ領域A9よりも弾性波の音速が速い。これにより、実施形態1に係る弾性波装置1では、不要波のリップルを、抑制することが可能となる。より詳細には、実施形態1に係る弾性波装置1は、第1中間領域A6及び第2中間領域A8を有していない場合と比べて、音速が異なる領域の数が増え、かつ、第2電極指7の先端部71で不要波のモード分布(横モード起因のモード分布)が抑制され、共振点と反共振点との間で発生する不要波のリップルが抑制される。これにより、実施形態1に係る弾性波装置1では、通過帯に発生する不要波のリップルが抑制される。
【0059】
また、実施形態1に係る弾性波装置1における第2エッジ領域A9では、複数の第1電極指6の各々の第1先端部61が、第1太幅部62を含む。複数の第1電極指6の各々において、第2方向D2における第1太幅部62の幅W62は、第2方向D2における中央部60の幅よりも広い。これにより、実施形態1に係る弾性波装置1は、第2エッジ領域A9の音速V2を中央領域A7の音速V1よりも遅くできる。また、実施形態1に係る弾性波装置1における第1エッジ領域A5では、複数の第2電極指7の各々の第2先端部71が、第2太幅部72を含む。複数の第2電極指7の各々において、第2方向D2における第2太幅部72の幅W72は、第2方向D2における中央部70の幅W70よりも広い。これにより、実施形態1に係る弾性波装置1は、第1エッジ領域A5の音速V2を中央領域A7の音速V1よりも遅くできる。
【0060】
また、実施形態1に係る弾性波装置1は、IDT電極3と圧電性基板2の一部とを含む共振子10が、領域A1~A13を有し、領域A1~A13が、中央領域A7、第1エッジ領域A5、第2エッジ領域A9、第1中間領域A6及び第2中間領域A8を含んでいる。実施形態1に係る弾性波装置1において、第1中間領域A6は、中央領域A7と第1エッジ領域A5との間に位置している。第2中間領域A8は、中央領域A7と第2エッジ領域A9との間に位置している。複数の第2電極指7の各々は、中央領域A7において第1厚さt0及び第1幅x0を有し、第1エッジ領域A5において第1厚さt0及び第2幅x1を有し、第1中間領域A6において第2厚さt1及び第1幅x0を有する。また、複数の第1電極指6の各々は、中央領域A7において第1厚さt0及び第1幅x0を有し、第2エッジ領域A9において第2厚さt1及び第1幅x0を有し、第2中間領域A8において第2厚さt1及び第1幅x0を有する。第2厚さt1が第1厚さt0よりも厚く、第2幅x1が第1幅x0よりも広い。これにより、実施形態1に係る弾性波装置1では、不要波のリップルを、抑制することが可能となる。より詳細には、実施形態1に係る弾性波装置1は、第1中間領域A6及び第2中間領域A8を有していない場合と比べて、音速が異なる領域の数が増え、かつ、第2電極指7の先端部71で不要波のモード分布(横モード起因のモード分布)が抑制され、共振点と反共振点との間で発生する不要波のリップルが抑制される。これにより、実施形態1に係る弾性波装置1では、通過帯に発生する不要波のリップルが抑制される。ここにおいて、実施形態1に係る弾性波装置1では、第1中間領域A6及び第2中間領域A8では中央領域A7よりも弾性波の音速が遅く第1エッジ領域A5及び第2エッジ領域A9よりも弾性波の音速が速い。これにより、実施形態1に係る弾性波装置1は、不要波のリップルを、より抑制することができる。
【0061】
(実施形態2)
実施形態2に係る弾性波装置1Aについて、
図11を参照して説明する。実施形態2に係る弾性波装置1Aに関し、実施形態1に係る弾性波装置1(
図1参照)と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
(1)構成
実施形態2に係る弾性波装置1Aは、実施形態1に係る弾性波装置1における各第2電極指7の太幅部72及び質量付加部分75を設ける代わりに、第1質量付加膜11を備えている。第1質量付加膜11は、圧電性基板2の第1主面21の一部と複数の第2電極指7の各々の先端部71と複数の第2電極指7のベース部分74とを覆っている。第1質量付加膜11は、誘電体膜である。第1質量付加膜11の材料は、例えば、酸化ケイ素を含む。
【0063】
実施形態2に係る弾性波装置1Aは、実施形態1に係る弾性波装置1における各第1電極指6の太幅部62及び質量付加部分65を設ける代わりに、第2質量付加膜12を備えている。第2質量付加膜12は、圧電性基板2の第1主面21の一部と複数の第1電極指6の各々の先端部61と複数の第1電極指6のベース部分64とを覆っている。第2質量付加膜12は、誘電体膜である。第2質量付加膜12の材料は、例えば、酸化ケイ素を含む。
【0064】
また、弾性波装置1Aでは、第1エッジ領域A5は、複数の第2電極指7の各々の先端部71に重なる第1質量付加膜11の少なくとも一部を含む。第2エッジ領域A9は、複数の第1電極指6の各々の先端部61に重なる第2質量付加膜12の少なくとも一部を含む。
【0065】
(2)効果
実施形態2に係る弾性波装置1Aは、第1エッジ領域A5が第1質量付加膜11の少なくとも一部を含むことにより、第1エッジ領域A5の音速V2を中央領域A7の音速V1よりも遅くできる。また、実施形態2に係る弾性波装置1Aは、第2エッジ領域A9が第2質量付加膜12の少なくとも一部を含むことにより、第2エッジ領域A9の音速V2を中央領域A7の音速V1よりも遅くできる。これにより、実施形態2に係る弾性波装置1Aは、不要波のリップルを抑制することが可能となる。
【0066】
(実施形態3)
実施形態3に係る弾性波装置1Bについて、
図12を参照して説明する。実施形態3に係る弾性波装置1Bに関し、実施形態1に係る弾性波装置1(
図1参照)と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
(1)構成
弾性波装置1Bでは、圧電性基板2が、圧電層20と、圧電層20に接合されている支持基板24と、を含む。支持基板24は、誘電体膜23を介して圧電層20に接合されているが、これに限らず、誘電体膜23を介さずに圧電層20に直接接合されていてもよい。圧電層20は、圧電性を有する。圧電層20の材料は、実施形態1で説明した圧電基板の材料と同じである。誘電体膜23の材料は、例えば、酸化ケイ素であるが、これに限らず、窒化ケイ素であってもよい。また、誘電体膜23の材料は、酸化ケイ素にフッ素又は炭素又はホウ素を加えた化合物であってもよい。支持基板24は、圧電層20を支持している。
【0068】
支持基板24の線膨張係数は、圧電層20の線膨張係数よりも小さい。圧電性基板2の厚さ方向D0からの平面視で、支持基板24の外縁は、矩形状である。圧電性基板2の厚さ方向D0からの平面視で、支持基板24の大きさは、圧電層20の大きさと同じである。支持基板24は、シリコン基板である。シリコン基板の厚さは、例えば、10λ以上180μm以下が好適である。シリコン基板の抵抗率は、例えば1kΩcm以上であり、2kΩcm以上であるのが好ましく、4kΩcm以上であるのが更に好ましい。支持基板24の厚さは、例えば、120μmである。支持基板24は、シリコン基板に限らず、例えば、窒化シリコン基板、サファイア基板又はスピネル基板であってもよい。
【0069】
また、実施形態3に係る弾性波装置1Bは、圧電性基板2上でIDT電極3と各反射器8とを覆っている第1保護膜13と、第1保護膜13を覆っている第2保護膜14と、を更に備える。第1保護膜13の材料は、例えば、酸化ケイ素である。第2保護膜14の材料は、例えば、窒化ケイ素である。なお、弾性波装置1Bは、第2保護膜14を備えていない構成であってもよい。また、弾性波装置1Bでは、第1保護膜13及び第2保護膜14それぞれの表面形状は、平坦状であるが、これに限らず、IDT電極3の形状に対応した凹凸が形成されていてもよい。
【0070】
実施形態3に係る弾性波装置1BのIDT電極3の形状は、実施形態1に係る弾性波装置1のIDT電極3(
図1参照)の形状と同じである。したがって、実施形態3に係る弾性波装置1Bの共振子10は、弾性波装置1の共振子10と同様、V0>V1>V2となる。
【0071】
(2)効果
実施形態3に係る弾性波装置1Bは、実施形態1に係る弾性波装置1と同様、不要波のリップルを抑制することが可能となる。また、実施形態3に係る弾性波装置1Bは、圧電性基板2が圧電層20と圧電層20に接合されている支持基板24とを含むので、良好なメインモードの特性が得られ、横モードに起因したリップルのレベルが相対的に小さくなる。これにより、実施形態3に係る弾性波装置1Bは、共振点と反共振点との間に発生する不要波のリップルを抑制することが可能となる。
【0072】
また、実施形態3に係る弾性波装置1Bは、圧電層20に接合されている支持基板24を備えることにより、温度特性が改善され、横モードリップルの温度依存性が改善される。
【0073】
また、弾性波装置1Bでは、圧電層20が支持基板24に支持されているので、弾性波装置1において圧電性基板2を構成している圧電基板と比べて圧電層20の厚さを薄くしてもよい。弾性波装置1Bでは、圧電層20の厚さを3.5λ以下とすることにより、Q値を向上させることが可能となる。この場合、支持基板24では、圧電層20を伝搬する弾性波の音速よりも、圧電層20を伝搬するバルク波の音速が高速である。ここにおいて、支持基板24を伝搬するバルク波は、支持基板24を伝搬する複数のバルク波のうち最も低音速なバルク波である。また、弾性波装置1Bでは、誘電体膜23が、低音速膜を兼ねることができる。低音速膜は、圧電層20を伝搬するバルク波の音速よりも、低音速膜を伝搬するバルク波の音速が低速となる膜である。低音速膜の厚さは、2.0λ以下であることが望ましい。弾性波装置1Bでは、低音速膜の厚さを2.0λ以下とすることにより、膜応力を低減することができ、その結果、弾性波装置1Bの製造時に支持基板24の元になるウェハの反りを低減することが可能となり、良品率の向上及び特性の安定化が可能となる。
【0074】
上記の実施形態1~3等は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態等は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、弾性波装置1、1Bにおいて、複数の第1電極指6のうち少なくとも1つの第1電極指6が、太幅部62及び中間部63を有していればよく、複数の第1電極指6の全部が太幅部62及び中間部63を有することは必須ではない。また、弾性波装置1、1Bにおいて、複数の第2電極指7のうち少なくとも1つの第2電極指7が、太幅部72及び中間部73を有していればよく、複数の第2電極指7の全部が太幅部72及び中間部73を有することは必須ではない。
【0076】
また、弾性波装置1、1Bでは、圧電性基板2の厚さ方向D0からの平面視で、質量付加部分65、75の形状が矩形状に限らず、円形状であってもよい。この場合、質量付加部分65、75の各々は、円柱状である。また、圧電性基板2の厚さ方向D0からの平面視で、質量付加部分65、75の直径は、例えば、中央部60、70の幅W60、W70以下である。
【0077】
また、弾性波装置1、1Bでは、第1電極指6の先端部61に含まれる太幅部62は、第1電極指6の長手方向において第1電極指6の先端部61の少なくとも一部に形成されていればよい。第2電極指7の先端部71に含まれる太幅部72は、第2電極指7の長手方向において第2電極指7の先端部71の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0078】
また、弾性波装置1、1A、1Bでは、IDT電極3は、複数の第1電極指6と複数の第2電極指7とが第2方向D2において離隔して並んでいる構成であればよく、複数の第1電極指6と複数の第2電極指7とが交互に互いに離隔して並んでいない構成であってもよい。例えば、IDT電極3は、第1電極指6と第2電極指7とが1本ずつ離隔して並んでいる領域と、第1電極指6又は第2電極指7が第2方向D2において2つ並んでいる領域と、とが混在してもよい。
【0079】
また、IDT電極3は、正規型のIDT電極であるが、これに限らず、例えば、傾斜IDT電極であってもよい。したがって、第2方向D2は、第1方向D1に交差する方向であればよい。
【0080】
また、内側バスバー部42は、開口部40とギャップ32とを連通させるスリットを有していてもよい。つまり、内側バスバー部42は、第2方向D2において不連続であってもよい。また、内側バスバー部52は、開口部50とギャップ31とを連通させるスリットを有していてもよい。つまり、内側バスバー部52は、第2方向D2において不連続であってもよい。
【0081】
また、弾性波装置1、1A、1Bにおいて、反射器8は、短絡グレーティングに限らず、例えば、開放グレーティング、正負反射型グレーティング等であってもよい。また、弾性波装置1、1A、1Bにおいて、反射器8は、必須の構成要素ではない。
【0082】
また、弾性波装置1、1A、1Bにおける共振子10は、縦結合型共振子であってもよい。
【0083】
また、弾性波装置1、1A、1Bでは、IDT電極3が、圧電性基板2上に直接的に設けられているが、これに限らず、IDT電極3が、圧電性基板2上に間接的に設けられていてもよい。例えば、弾性波装置1、1A、1Bでは、IDT電極3が圧電性基板2上に誘電体膜を介して設けられていてもよい。
【0084】
また、弾性波装置1、1A、1Bでは、圧電性基板2上に1つのIDT電極3が設けられているが、IDT電極3の数は1つに限らず、複数であってもよい。つまり、弾性波装置1、1A、1Bは、複数のIDT電極3を備えてもよい。この場合、弾性波装置1、1A、1Bでは、例えば、複数のIDT電極3それぞれを含む複数の共振子10を有するラダー型フィルタ等であってもよい。
【0085】
また、弾性波装置1、1Aは、弾性波装置1Bと同様、圧電性基板2が、圧電層20と、圧電層20に接合されている支持基板24と、を含んでいてもよい。
【0086】
(態様)
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0087】
第1の態様に係る弾性波装置(1;1A;1B)は、圧電性基板(2)と、IDT電極(3)と、を備える。IDT電極(3)は、圧電性基板(2)上に設けられている。IDT電極(3)は、第1バスバー(4)と、第2バスバー(5)と、複数の第1電極指(6)と、複数の第2電極指(7)と、を有する。第2バスバー(5)は、第1方向(D1)において第1バスバー(4)に対向している。複数の第1電極指(6)は、第1バスバー(4)に接続されており、第1方向(D1)において第1バスバー(4)から第2バスバー(5)に向かって延びている。複数の第2電極指(7)は、第2バスバー(5)に接続されており、第1方向(D1)において第2バスバー(5)から第1バスバー(4)に向かって延びている。IDT電極(3)では、複数の第1電極指(6)と複数の第2電極指(7)とが、第1方向(D1)に交差する第2方向(D2)において、互いに離隔して並んでいる。第1バスバー(4)及び第2バスバー(5)の各々は、開口部(40、50)と、内側バスバー部(42、52)と、外側バスバー部(41、51)と、連結部(43、53)と、を含む。内側バスバー部(42、52)は、第1方向(D1)において開口部(40、50)よりも複数の第1電極指(6)及び複数の第2電極指(7)側に位置している。外側バスバー部(41、51)は、第1方向(D1)において開口部(40、50)から見て内側バスバー部(42、52)とは反対側に位置している。連結部(43、53)は、第1方向(D1)において内側バスバー部(42、52)と外側バスバー部(41、51)とを連結している。複数の第1電極指(6)の先端縁の包絡線(36)と複数の第2電極指(7)の先端縁の包絡線(37)との間の領域を交差領域(30)とするとき、IDT電極(3)と圧電性基板(2)の一部とを含む共振子(10)は、圧電性基板(2)の厚さ方向(D0)からの平面視で、第1方向(D1)において互いに異なる複数の領域(A1~A13)を有する。複数の領域(A1~A13)は、中央領域(A7)と、第1ギャップ領域(A4)と、第2ギャップ領域(A10)と、第1エッジ領域(A5)と、第2エッジ領域(A9)と、第1中間領域(A6)と、第2中間領域(A8)と、を含む。中央領域(A7)は、第1方向(D1)におけるIDT電極(3)の交差領域(30)の中央部を含み、複数の第1電極指(6)の中央部(60)と複数の第2電極指(7)の中央部(70)とを含む。第1ギャップ領域(A4)は、第1バスバー(4)と複数の第2電極指(7)との間のギャップ(32)を含む。第2ギャップ領域(A10)は、第2バスバー(5)と複数の第1電極指(6)との間のギャップ(31)を含む。第1エッジ領域(A5)は、複数の第2電極指(7)の先端部(71)を含む。第2エッジ領域(A9)は、複数の第1電極指(6)の先端部(61)を含む。第1中間領域(A6)は、中央領域(A7)と第1エッジ領域(A5)との間に位置している。第2中間領域(A8)は、中央領域(A7)と第2エッジ領域(A9)との間に位置している。第1ギャップ領域(A4)及び第2ギャップ領域(A10)では、中央領域(A7)よりも弾性波の音速が速い。第1中間領域(A6)及び第2中間領域(A8)では、中央領域(A7)よりも弾性波の音速が遅く第1エッジ領域(A5)及び第2エッジ領域(A9)よりも弾性波の音速が速い。
【0088】
この態様によれば、不要波のリップルを、より抑制することが可能となる。
【0089】
第2の態様に係る弾性波装置(1;1A;1B)では、第1の態様において、第2エッジ領域(A9)では、複数の第1電極指(6)のうち少なくとも1つの第1電極指(6)の先端部(61)が、第1太幅部(62)を含む。第2方向(D2)における第1太幅部(62)の幅(W62)は、第2方向(D2)における、上記少なくとも1つの第1電極指(6)の中央部(60)の幅(W60)よりも広い。第1エッジ領域(A5)では、複数の第2電極指(7)のうち少なくとも1つの第2電極指(7)の先端部(71)が、第2太幅部(72)を含む。第2方向(D2)における第2太幅部(72)の幅(W72)は、第2方向(D2)における、上記少なくとも1つの第2電極指(7)の中央部(70)の幅(W70)よりも広い。
【0090】
この態様によれば、複数の第1電極指(6)のうち少なくとも1つの第1電極指(6)の先端部(61)が第1太幅部(62)を含むことにより、第2エッジ領域(A9)の音速(V2)を中央領域(A7)の音速(V1)よりも遅くできる。また、この態様によれば、複数の第2電極指(7)のうち少なくとも1つの第2電極指(7)の先端部(71)が第2太幅部(72)を含むことにより、第1エッジ領域(A5)の音速(V2)を中央領域(A7)の音速(V1)よりも遅くできる。
【0091】
第3の態様に係る弾性波装置(1A)では、第1の態様において、第1エッジ領域(A5)は、複数の第2電極指(7)のうち少なくとも1つの第2電極指(7)の先端部(71)に重なる第1質量付加膜(11)の少なくとも一部を含む。第2エッジ領域(A9)は、複数の第1電極指(6)のうち少なくとも1つの第1電極指(6)の先端部(61)に重なる第2質量付加膜(12)の少なくとも一部を含む。
【0092】
この態様によれば、第1エッジ領域(A5)が第1質量付加膜(11)の少なくとも一部を含むことにより、第1エッジ領域(A5)の音速(V2)を中央領域(A7)の音速(V1)よりも遅くできる。また、この態様によれば、第2エッジ領域(A9)が第2質量付加膜(12)の少なくとも一部を含むことにより、第2エッジ領域(A9)の音速(V2)を中央領域(A7)の音速(V1)よりも遅くできる。
【0093】
第4の態様に係る弾性波装置(1;1B)は、圧電性基板(2)と、IDT電極(3)と、を備える。IDT電極(3)は、圧電性基板(2)上に設けられている。IDT電極(3)は、第1バスバー(4)と、第2バスバー(5)と、複数の第1電極指(6)と、複数の第2電極指(7)と、を有する。第2バスバー(5)は、第1方向(D1)において第1バスバー(4)に対向している。複数の第1電極指(6)は、第1バスバー(4)に接続されており、第1方向(D1)において第1バスバー(4)から第2バスバー(5)に向かって延びている。複数の第2電極指(7)は、第2バスバー(5)に接続されており、第1方向(D1)において第2バスバー(5)から第1バスバー(4)に向かって延びている。IDT電極(3)では、複数の第1電極指(6)と複数の第2電極指(7)とが、第1方向(D1)に交差する第2方向(D2)において、互いに離隔して並んでいる。第1バスバー(4)及び第2バスバー(5)の各々は、開口部(40、50)と、内側バスバー部(42、52)と、外側バスバー部(41、51)と、連結部(43、53)と、を含む。内側バスバー部(42、52)は、第1方向(D1)において開口部(40、50)よりも複数の第1電極指(6)及び複数の第2電極指(7)側に位置している。外側バスバー部(41、51)は、第1方向(D1)において開口部(40、50)から見て内側バスバー部(42、52)とは反対側に位置している。連結部(43、53)は、第1方向(D1)において内側バスバー部(42、52)と外側バスバー部(41、51)とを連結している。複数の第1電極指(6)の先端縁の包絡線(36)と複数の第2電極指(7)の先端縁の包絡線(37)との間の領域を交差領域(30)とするとき、IDT電極(3)と圧電性基板(2)の一部とを含む共振子(10)は、圧電性基板(2)の厚さ方向(D0)からの平面視で、第1方向(D1)において互いに異なる複数の領域(A1~A13)を有する。複数の領域(A1~A13)は、中央領域(A7)と、第1ギャップ領域(A4)と、第2ギャップ領域(A10)と、第1エッジ領域(A5)と、第2エッジ領域(A9)と、第1中間領域(A6)と、第2中間領域(A8)と、を含む。中央領域(A7)は、第1方向(D1)におけるIDT電極(3)の交差領域(30)の中央部を含み、複数の第1電極指(6)の中央部(60)と複数の第2電極指(7)の中央部(70)とを含む。第1ギャップ領域(A4)は、第1バスバー(4)と複数の第2電極指(7)との間のギャップ(31)を含む。第2ギャップ領域(A10)は、第2バスバー(5)と複数の第1電極指(6)との間のギャップ(32)を含む。第1エッジ領域(A5)は、複数の第2電極指(7)の先端部(71)を含む。第2エッジ領域(A9)は、複数の第1電極指(6)の先端部(61)を含む。第1中間領域(A6)は、中央領域(A7)と第1エッジ領域(A5)との間に位置している。第2中間領域(A8)は、中央領域(A7)と第2エッジ領域(A9)との間に位置している。複数の第2電極指(7)のうち少なくとも1つの第2電極指(7)は、中央領域(A7)において第1厚さ(t0)及び第1幅(x0)を有し、第1エッジ領域(A5)において第1厚さ(t0)及び第2幅(x1)を有し、第1中間領域(A6)において第2厚さ(t1)及び第1幅(x0)を有する。複数の第1電極指(6)のうち少なくとも1つの第1電極指(6)は、中央領域(A7)において第1厚さ(t0)及び第1幅(x0)を有し、第2エッジ領域(A9)において第2厚さ(t1)及び第1幅(x0)を有し、第2中間領域(A8)において第2厚さ(t1)及び第1幅(x0)を有する。第2厚さ(t1)が第1厚さ(t0)よりも厚く、第2幅(x1)が第1幅(x0)よりも広い。
【0094】
この態様によれば、不要波のリップルを、より抑制することが可能となる。
【0095】
第5の態様に係る弾性波装置(1;1B)は、第4の態様に基づく。第1中間領域(A6)及び第2中間領域(A8)では中央領域(A7)よりも弾性波の音速が遅く第1エッジ領域(A5)及び第2エッジ領域(A9)よりも弾性波の音速が速い。
【0096】
この態様によれば、不要波のリップルを、より抑制することができる。
【0097】
第6の態様に係る弾性波装置(1;1A;1B)では、第1~5の態様のいずれか一つにおいて、圧電性基板(2)は、圧電層(20)と、圧電層(20)に接合されている支持基板(24)と、を含む。
【0098】
この態様によれば、良好なメインモードの特性が得られ、横モードに起因したリップルのレベルが相対的に小さくなる。
【0099】
第7の態様に係る弾性波装置(1;1A;1B)では、第1~6の態様のいずれか一つにおいて、第2方向(D2)は、第1方向(D1)に直交する方向である。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、1B 弾性波装置
2 圧電性基板
21 第1主面
22 第2主面
23 誘電体膜
24 支持基板
3 IDT電極
30 交差領域
31 ギャップ
32 ギャップ
36 包絡線
37 包絡線
4 第1バスバー
40 開口部
41 外側バスバー部
42 内側バスバー部
5 第2バスバー
50 開口部(第2開口部)
51 外側バスバー部(第2外側バスバー部)
52 内側バスバー部(第2内側バスバー部)
6 第1電極指
60 中央部(第1中央部)
61 先端部(第1先端部)
62 太幅部(第1太幅部)
63 中間部(第1中間部)
64 ベース部分
65 質量付加部分
66 基端部(第1基端部)
7 第2電極指
70 中央部(第2中央部)
71 先端部(第2先端部)
72 太幅部(第2太幅部)
73 中間部(第2中間部)
74 ベース部分
75 質量付加部分
76 基端部(第2基端部)
8 反射器
9 電極指
10 共振子
11 第1質量付加膜
12 第2質量付加膜
13 第1保護膜
14 第2保護膜
D0 厚さ方向
D1 第1方向
D2 第2方向
A1 領域(第1外側バスバー領域)
A2 領域(第1連結領域)
A3 領域(第1内側バスバー領域)
A4 領域(第1ギャップ領域)
A5 領域(第1エッジ領域)
A6 領域(第1中間領域)
A7 領域(中央領域)
A8 領域(第2中間領域)
A9 領域(第2エッジ領域)
A10 領域(第2ギャップ領域)
A11 領域(第2内側バスバー領域)
A12 領域(第2連結領域)
A13 領域(第2外側バスバー領域)
L32 長さ
L43 長さ
L53 長さ
L60 長さ
L62 長さ
L63 長さ
L70 長さ
L72 長さ
L73 長さ
m0 密度
m1 密度
t0 第1厚さ
t1 第2厚さ
V0 音速
V1 音速
V2 音速
W30 交差幅
W41 幅
W42 幅
W51 幅
W52 幅
W60 幅
W62 幅
W66 幅
W70 幅
W72 幅
W76 幅
x0 第1幅
x1 第2幅