(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095384
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20240703BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212652
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】駒井 亮太
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA112
4C083AB232
4C083AB282
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC622
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD332
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD632
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD32
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】塗布中の肌なじみの早さが向上され、また、塗布後の滑らかさ及びしっとりさも向上された新規な油中水型乳化化粧料組成物を提供する。
【解決手段】油中水型乳化化粧料組成物であって、
界面活性剤、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、油分、及び水を含み、
式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、ポリマーのIOB値が、0.4~1.8であり、かつ界面活性剤のHLB値が、3.0以上8.0以下である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型乳化化粧料組成物であって、
界面活性剤、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、油分、及び水を含み、
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8であり、かつ
前記界面活性剤のHLB値が、3.0以上8.0以下である、
組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR1の少なくとも一部が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又はジイソステアリン酸PEG-8を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
有機変性粘土鉱物を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化化粧料組成物は、従来から使用されている。しかしながら、油中水型乳化物は必然的に比較的多量の油分を含有していることから、皮膚に塗布した際に油っぽさを感じるといった使用感の問題を有している。このような油中水型乳化化粧料組成物における使用感を改善するための研究は多数行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、乳化安定性が確保でき、かつ油っぽくないといった優れた使用性を有し、なおかつ肌なじみの良好な油中水型乳化化粧料を開示している。より具体的には、特許文献1の化粧料は、(A)20~30質量%の油分、(B)HLB=5~10の脂肪酸エステル、(C)HLB=1~4の非イオン性界面活性剤、(D)有機変性粘土鉱物、及び(E)水を含有し、前記(A)油分の10質量%以上を揮発性炭化水素油が占め、シリコーン油を含まないことを特徴とする、油中水型乳化化粧料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油中水型乳化化粧料組成物は、塗布中の肌なじみの早さ、並びに塗布後の滑らかさ及びしっとりさといった使用感について、依然として改善する余地がある。
【0006】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、塗布中の肌なじみの早さが向上され、また、塗布後の滑らかさ及びしっとりさも向上された新規な油中水型乳化化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0008】
〈態様1〉
油中水型乳化化粧料組成物であって、
界面活性剤、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、油分、及び水を含み、
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8であり、かつ
前記界面活性剤のHLB値が、3.0以上8.0以下である、
組成物。
〈態様2〉
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR
1の少なくとも一部が、メチル基である、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様5〉
前記式(1)において、R
2及びR
3の少なくとも一方が、メチル基である、態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
前記界面活性剤が、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1つを含む、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
前記界面活性剤が、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又はジイソステアリン酸PEG-8を含む、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様8〉
有機変性粘土鉱物を更に含む、態様1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布中の肌なじみの早さが向上され、また、塗布後の滑らかさ及びしっとりさも向上された新規な油中水型乳化化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
《油中水型乳化化粧料組成物》
本発明の油中水型乳化化粧料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、
界面活性剤、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、油分、及び水を含み、
【化3】
式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、
ポリマーのIOB値が、0.4~1.8であり、かつ
界面活性剤のHLB値が、3.0以上8.0以下である、
組成物
である。
【0012】
本発明の組成物は、従来に比べて、塗布中の肌なじみの早さ、並びに塗布後の滑らかさ及びしっとりさが向上されている。
【0013】
理論に限定されるものではないが、これは、主に、本発明のポリマーの特性、すなわち式(1)で示す特有の構造、特定の範囲の数平均分子量(10,000以下)、及び特定の範囲のIOB(Inorganic Organic Balance)値(0.4~1.8)に由来するものと推測する。
【0014】
また、特定の構造をもつ本発明ポリマーは、両親媒性であり、水相に溶解する傾向があるものの、疎水的な性質も有するため、本発明の組成物の塗布中における肌なじみの早さの向上並びに塗布後の滑らかさ及びしっとり感の向上ができたと考えられる。
【0015】
また、特に本発明の組成物が有機変性粘土鉱物を更に含むことによってコク感を有する場合には、特定の構造をもつ本発明ポリマーによって、塗布中のコク感を維持しながら、本発明の組成物の塗布時における肌なじみの早さの向上並びに塗布後の滑らかさ及びしっとり感の向上ができたと考えられる。
【0016】
〈界面活性剤〉
本発明の組成物は、HLB値が3.0以上8.0以下の界面活性剤を含む。なお、本発明において、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値は、グリフィン法によって定義することができる。
【0017】
本発明の組成物において、界面活性剤は、HLB値が3.0以上8.0以下の界面活性剤であって、特に、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0018】
より具体的には、HLB値が3.0以上8.0以下のポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB値:3.8)、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシジメチコン(HLB値:3.0)、及びPEG-10ジメチコン(HLB値:4.5)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
HLB値が3.0以上8.0以下のソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、トリイソステアリン酸PEG-4ソルビタン(HLB値:3.0)等が挙げられるが、これには限定されない。
【0020】
HLB値が3.0以上8.0以下のポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、ジイソステアリン酸PEG-8(HLB値:6.0)、ジイソステアリン酸PEG-12(HLB値:7.0)、及びジオレイン酸PEG-8(HLB値:5.0)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
HLB値が3.0以上8.0以下のグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(HLB値:4.0)、及びステアリン酸グリセリル(HLB値:4.0~6.0)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
HLB値が3.0以上8.0以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油(HLB値:6.0)、及びPEG-10水添ヒマシ油(HLB値:7.0)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
これらの界面活性剤は、単独で又は2種類以上で配合されてよいが、より安定な乳化系を形成させる観点からは、2種類以上で配合されることが好ましい。例えば、本発明に係る界面活性剤は、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又はジイソステアリン酸PEG-8を含むことができ、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びジイソステアリン酸PEG-8を含むことが好ましい。
【0024】
本発明の組成物において、HLB値が3.0以上8.0以下の界面活性剤の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、又は2.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、又は2.0質量%以下であってよい。
【0025】
なお、本発明の効果を損なわない限り、本発明の組成物は、HLB値が3.0以上8.0以下の界面活性剤の以外に、その他の界面活性剤を更に含んでよい。
【0026】
〈本発明のポリマー〉
本発明の組成物は、以下に説明する本発明のポリマーを含む。本発明のポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する:
【化4】
【0027】
式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。なお、本発明において、炭素数1~4のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、これらのアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲノ基等が挙げられる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また、mが2以上である場合、すなわち、複数のR1が存在する場合、各々のR1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、特に、R1の少なくとも一部は、メチル基であることが好ましい。R1の少なくとも一部がメチル基である場合には、例えば、本発明の組成物の使用感を向上させる観点から好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R3は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方は、メチル基であることが好ましい。
【0035】
式(1)において、Aは、炭素数2~4のアルキレン基である。より具体的には、Aは例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等であってよいが、これらに限定されない。特に、Aは、下記式(2)で表されることが好ましい:
【化5】
【0036】
式(2)において、R4は、炭素数1又は2のアルキル基である。より具体的には、R4は、メチル基又はエチル基であってよい。
【0037】
式(1)において、m及びnは、それぞれの構成単位の平均付加モル数を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、より具体的には、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、又は10以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、12以下、10以下、又は5.0以下であってよい。
【0038】
また、式(1)において、mは、1.0以上14以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましい。また、式(1)において、nは、2.0以上34以下であることが好ましく、6.0以上12以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m+nは、4.0以上、4.5以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は12以下であってよい。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m:nは、1:10~10:1であってよい。
【0041】
本発明のポリマーは、数平均分子量は、10,000以下である。より具体的には、本発明のポリマーの数平均分子量は、例えば、10,000以下、5,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、2,000以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってよく、また130以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は500以上であってよい。また、本発明のポリマーの数平均分子量は、300以上3,500以下であることが好ましく、500以上1,200以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明のポリマーのIOB値は、0.4~1.8である。より具体的には、本発明のポリマーのIOB値は、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、又は0.7以上であってよく、また1.8以下、1.6以下、1.4以下、又は1.2以下であってよい。また、本発明のポリマーのIOB値は、0.7以上1.2以下であることが好ましい。
【0043】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。なお、IOB値の決定方法については、実施例に記載の方法を参照できる。
【0044】
本発明のポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0045】
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、各構成単位に対応するエポキシドを付加重合することによって行ったよい。また、付加重合は、ブロック重合であってもよく、ランダム重合であってもよいが、ランダム重合であることが好ましい。
【0046】
また、本発明のポリマーの製造方法は、上記の付加重合によって得られたポリマーに対して、更にハロゲン化アルキルと反応させることを更に含んでよい。ハロゲン化アルキルとの反応を介して、得られたポリマーの分子内の水酸基は、アルキル基によって封鎖されて、その結果ポリマー全体の疎水性を所望のとおりに調整することができる。本発明において、ポリマーの分子内において、アルキル基による水酸基の封鎖率は、例えば30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、又は55%以上であってよく、また60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、又は55%以下であってよい。なお、アルキル基による水酸基の封鎖率は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0047】
本発明のポリマーの特徴の一つとして、高い水溶性及び高い脂溶性を兼備することである。
【0048】
本発明のポリマーの水への溶解度は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり得る。
【0049】
また、本発明のポリマーの脂溶性の指標として、例えばオリーブ油への溶解度を用いることができる。本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度は、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、又は1.00質量%以上であり得る。なお、本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度の上限値は特に限定されず、例えば10質量%以下であってよい。
【0050】
本発明の組成物において、本発明のポリマーの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0051】
〈油分〉
本発明の組成物は、油分を含む。本発明の組成物において、油分を含む油相は、連続相である。
【0052】
本発明において、油分として、特に限定されず、例えば、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、脂肪酸、及び油脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、水添ポリデセン、水添ポリイソブテン、オレフィンオリゴマー、揮発性炭化水素油(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、ウンデカン、トリデカン等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(「ジメチコン」とも称する)、メチルフェニルポリシロキサン(「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン」とも称する)、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度までのジオルガノポリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン,テトラメチルテトラフェニルテトラシクロシロキサン等の環状シロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン,ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,ガム状ジメチルポリシロキサン等の環状シロキサン溶液、トリメチルシロキシケイ酸等,トリメチルシロキシケイ酸の環状シロキサン溶液等、炭素原子数6~50のアルキル基を有するジオルガノポリシロキサン,アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等の変性シリコーンオイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン(トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル)、セチル2-エチルヘキサノエート、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸ポリプロピレングリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等のトリエステル油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
油脂としては、例えば、カカオ脂、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、米ヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
これらの油分は、単独で又は2種類以上を配合してよい。
【0059】
本発明の組成物において、油分の含有量は、特に限定されず、例えば、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよく、また、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0060】
〈水〉
本発明の組成物は、水を含む。本発明の組成物において、水を含む水相は、分散相である。
【0061】
本発明の組成物に用いられる水として、特に制限はなく、例えば、化粧料、及び医薬部外品において使用される水であってよい。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0062】
本発明の組成物において、水の含有量は特に限定されず、組成物全体に対して、例えば5.0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、又は60質量%以上であってよく、また90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。また、本発明の組成物を高内水相の油中水型乳化化粧料組成物を調製させる観点から、水の含有量の下限は、組成物全体に対して、例えば、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であることが好ましい。
【0063】
〈その他の成分〉
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分を更に含んでよい。以下では、本発明の組成物に含み得るその他の成分について説明する。なお、本発明は、これらの成分に限定されることはない。
【0064】
(有機変性粘土鉱物)
本発明の組成物は、有機変性粘土鉱物を更に含むことができる。本発明の組成物にコク感を付与させる観点から、有機変性粘土鉱物を含むことが好ましい。また、有機変性粘土鉱物は、乳化助剤としての機能も有し得る。
【0065】
有機変性粘土鉱物として、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、一般に下記式:
【化6】
(但し、X=Al、Fe(III)、Mn(III)、Cr(III);Y=Mg、Fe(II)、Ni、Zn、Li;Z=K、Na、Ca)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものを用いるのが好ましい。
【0066】
具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等がある)及びナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品ではダイモナイト:トピー工業(株)等がある)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
【0067】
ここで用いられる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記一般式で表されるものである。
【化7】
(式中、R
1は炭素数10~22のアルキル基またはベンジル基、R
2はメチル基または炭素数10~22のアルキル基、R
3及びR
4は炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xはハロゲン原子またはメチルサルフェート残基を表す)
【0068】
かかる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、更にはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのうち一種または二種以上が任意に選択される。
【0069】
有機変性粘土鉱物の代表的なものとしては、ジステアルジモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト:エレメンティス スペシャリティース社製)、およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティス スペシャリティース社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明の組成物において、有機変性粘土鉱物が含まれる場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、又は2.0質量%以上であってよく、また、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5.0質量%以下であってよい。
【0071】
(アルコール成分)
本発明の組成物は、アルコール成分を更に含むことができる。本発明において、「アルコール成分」の定義には、低級アルコール及び多価アルコールの両方を含む。これらのアルコール成分は、水と混合することができ、水溶性成分とも称することができ、水と共に水相を構成することができる。また、一部のアルコール成分は、保湿の機能も有し、すなわち、保湿剤としても使用できる。
【0072】
本発明において、低級アルコールとは、炭素数5以下のアルコールを指し、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール等が例示される。
【0073】
また、多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(例えば、1,2,6-へキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール(糖アルコールにも属する)等);6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール(いずれも糖アルコールにも属する)等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコール縮合体アルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトール、デンプン分解等還元アルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE-テトラハイドロフルフリルアルコール、POP-ブチルエーテル;POP・POE-ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテルリン酸;POP・POE-ペンタンエリスリトールエーテル、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0074】
これらのアルコール成分は、単独で又は2種類以上を配合してよい。
【0075】
本発明の組成物において、アルコール成分を含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.5質量%以上、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、また、40質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0076】
上述したほかに、本発明組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、化粧料に通常用いられる他の任意成分、例えば、限定されないが、防腐剤、その他の増粘剤、金属イオン封鎖剤、粉末成分、pH調整剤、紫外線吸収剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0077】
〈本発明の組成物の製造方法〉
本発明の組成物は、油中水型乳化化粧料の常法を用いて製造することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば、水相と油相を、必要に応じて加温し、水相を油相に徐々に添加して乳化機で乳化し、加熱した場合には室温まで放冷する等の方法がある。特に、本発明の組成物で固形油分を含まない態様では、加熱工程が不要となるため工程が簡略化できる。なお、本発明のポリマーは、例えば乳化後に配合されてよい。
【0078】
〈本発明の組成物の用途〉
本発明の組成物は、様々な形態の化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、みずみずしい使用感触を持った乳液、クリーム、化粧下地、乳化ファンデーション等の形態として提供するのに適している。
【実施例0079】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
《合成例1及び2》
以下の合成例1及び2は、それぞれ下記式(3)で表される構造を有するポリマーを合成した:
【化8】
なお、式(3)において、[]内は、ランダム共重合体である。
【0081】
〈合成例1〉
合成例1:R1=H、R2=H、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー1
下記方法で合成を行い、ポリマー1を得た。
【0082】
メタノール128g及び触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後5時間攪拌した。オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、合成例1のポリマー1、2000gを得た。
【0083】
以下では、得られたポリマー1に対して、各種の物性値を求めた。
【0084】
(数平均分子量)
得られたポリマー1の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により算出した。システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。このクロマトグラムからポリエチレングリコールを標準とし、数平均分子量を求めたところ、約530であった。
【0085】
(重量平均分子量)
得られたポリマー1の重量平均分子量は、上記と同様にGPC計算によって求めて、約859であった。
【0086】
(多分散度)
上記で求めた数平均分子量及び重量平均分子量の結果から、ポリマー1の多分散度Mw/Mnは、1.62であった。
【0087】
(IOB値)
得られたポリマー1のIOB値は、以下のように求めたところ、1.1であった。
【0088】
より具体的には、ポリマー1において、有機性値として、炭素を20、iso分岐を-10にて計算した。また、無機性値は、水酸基を100、エーテル結合を20にて計算した。
・メタノール部位:(炭素数1、水酸基1)×1
有機性値:20
無機性値:100
・グリシドール部位:(炭素数3、iso分岐1、水酸基1、エーテル結合1)×2
有機性値:(60-10)×2=100
無機性値:(100+20)×2=240
・プロピレンオキシド部位:(炭素数3、iso分岐1、エーテル結合1)×6
有機性値:(60-10)×6=300
無機性値:20×6=120
以上、合計有機性値が420となる、合計無機性値が460となるため、IOB値が1.09となる。
【0089】
(曇点)
得られたポリマー1に対して、5wt%水溶液を調製し、85℃に加温後、冷却し、透明溶液となる温度は74℃であった。よって、ポリマー1の曇点は、74℃であることが分かった。
【0090】
(水酸基価)
得られたポリマー1の水酸基価は、JIS K-1557-1の測定方法に従い測定したところ、294であった。
【0091】
(水への溶解性)
得られたポリマー1の水への溶解性は、後述する「相溶性評価」の方法と同じように求めたところ、50質量%以上であった。
【0092】
(オリーブ油への溶解性)
得られたポリマー1のオリーブ油への溶解性は、以下のように求めた。すなわち、ポリマー1を、濃度が1.0wt%となるようオリーブ油と混合し、外観を確認した。均一であれば「〇」とした。この場合、ポリマー1のオリーブ油への溶解性は、1.0質量%であった。
【0093】
以上で測定したポリマー1の各種物性値は、下記の表1に示す。
【0094】
〈合成例2〉
合成例2:R1=H及びCH3、R2=H及びCH3、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー2
下記方法で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0095】
メタノール128gと触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム244gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル200gを温度80~130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ポリマー2、1820gを得た。塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が125であったことから、R2とR3におけるメチル基と水素原子の割合(CH3/H)は0.57であることが分かった。すなわち、ポリマー2の水酸基封鎖率が57%であった。
【0096】
上述したポリマー1の場合と同様に、得られたポリマー2に対して、各種の物性値を求めて、それぞれの結果は下記の表1に示す。
【0097】
【0098】
《実施例1~5及び比較例1》
以下の表2に示す処方に基づき、実施例1~5及び比較例1の組成物(油中水型乳化化粧料であるクリーム)を、それぞれ調製した。調製された各組成物に対して、下記の評価方法に基づき、各種使用性を評価し、結果は表2に示す。なお、特に断りのない限り、表2数値は、配合量を表し、単位は質量%である。
【0099】
〈塗布中の肌なじみの早さの評価〉
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した際の使用性を下記のように評価し、「塗布中の肌なじみの早さ」に関して、記のように分類する:
「A」:8名以上が、肌へのなじみが早いと回答した;
「B」:6~7名が、肌へのなじみが早いと回答した;
「C」:4~5名が、肌へのなじみが早いと回答した;
「D」:3名以下が、肌へのなじみが早いと回答した。
【0100】
〈塗布後の滑らかさの評価〉
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した際の使用性を下記のように評価し、「塗布後の滑らかさ」に関して、記のように分類する:
「A」:8名以上が、肌への塗布後になめらかさがあると回答した;
「B」:6~7名が、肌への塗布後になめらかさがあると回答した;
「C」:4~5名が、肌への塗布後になめらかさがあると回答した;
「D」:3名以下が、肌への塗布後になめらかさがあると回答した。
【0101】
〈塗布後のしっとりさの評価〉
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した際の使用性を下記のように評価し、「塗布後のしっとりさ」に関して、記のように分類する:
「A+」:10名が、肌への塗布後にしっとりさがあると回答した;
「A」:8~9名が、肌への塗布後にしっとりさがあると回答した;
「B」:6~7名が、肌への塗布後にしっとりさがあると回答した;
「C」:4~5名が、肌への塗布後にしっとりさがあると回答した;
「D」:3名以下が、肌への塗布後にしっとりさがあると回答した。
【0102】
〈塗布中のコク感の評価〉
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した際の使用性を下記のように評価し、「塗布中のコク感」に関して、記のように分類する:
「A」:8名以上が、肌への塗布中にコク感があると回答した;
「B」:6~7名が、肌への塗布中にコク感があると回答した;
「C」:4~5名が、肌への塗布中にコク感があると回答した;
「D」:3名以下が、肌への塗布中にコク感があると回答した。
【0103】
なお、「コク感」とは、試料を肌にタッチするときは伸びの重みを感じるが、試料を肌上で伸ばす場合は動きが滑らかであるという感触を指す。
【0104】
【0105】
表2の結果から明らかなように、実施例1~5の組成物は、いずれも、塗布中にみずみずしい感触を維持しつつ、比較例1の組成物に比べて、塗布中の肌なじみの早さが向上され、また、塗布後の滑らかさ及びしっとりさも向上されていることが分かった。
【0106】
また、表2の結果から明らかなように、実施例1~5の組成物は、本発明の特有の構成であるにもかかわらず、比較例1の組成物と同じように、塗布中のコク感において優れていることが分かった。
【0107】
《処方例》
以下では、本発明の組成物の処方例を例示的に挙げる。なお、本発明は、以下の処方例によって何ら限定されるものではない。また、処方例中の「ポリマー1」及び「ポリマー2」は、それぞれ上述した「合成例1」及び「合成例2」で合成された「ポリマー1」及び「ポリマー2」である。
【0108】
【0109】
【0110】