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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095386
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/06
A61K8/891
A61K8/86
A61Q19/00
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212654
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】前田 遥香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB052
4C083AB172
4C083AB332
4C083AB352
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC262
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC712
4C083AC912
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD222
4C083AD262
4C083AD332
4C083AD412
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC14
4C083DD32
4C083EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塗布中の滑らかさが向上され、また、塗布後のきしみ感が改善された新規な油中水型乳化化粧料組成物を提供する。
【解決手段】油中水型乳化化粧料組成物であって、水、シリコーン油、特定構造の高分子量ポリエーテル変性シリコーン、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、前記高分子量ポリエ-テル変性シリコーンが、分子中にポリオキシアルキレン基を40質量%以上含有し、前記高分子量ポリエ-テル変性シリコーンの分子量が30,000以上であり、前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型乳化化粧料組成物であって、
水、
シリコーン油、
下記式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーン、及び
【化1】
下記式(1)で表される構造を有するポリマー
【化2】
を含み、
前記式(1’)において、X、X、及びXは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基及び一般式:-CO(CO)(CO)R’(式中、R’は、水素原子、アシル基、及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される基であり、またaは5~50の整数であり、bは5~50の整数である)で示されるポリオキシアルキレン基からなる群から選択される基であり(但し、X、X、及びXのうち、少なくとも1つはポリオキシアルキレン基であり)、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、それぞれ独立して、メチル基又はフェニル基であり、pは、50~1000の整数であり、かつqは、1~40の整数であり、
前記高分子量ポリエ-テル変性シリコーンが、分子中にポリオキシアルキレン基を40質量%以上含有し、
前記高分子量ポリエ-テル変性シリコーンの分子量が30,000以上であり、
前記式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化3】
前記式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、mが2以上であり、かつRの少なくとも一部が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R及びRの少なくとも一方が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
HLB値が2~5のシリコーン界面活性剤(但し、前記式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーンに該当するものを除く)を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の分野では、肌に対し、油分及び油溶性成分のみならず、水分及び水溶性成分を付与することができる油中水型乳化化粧料組成物が使用されている。そして、化粧料の使用性等を改良するために、油中水型乳化化粧料において、様々な乳化効果を有する界面活性剤が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、のびが軽く、しっとりとし、かつべたつきがない独特の感触を有する乳化化粧料が開示されている。より具体的には、特許文献1の化粧料は、(I)シリコーン油および/または非極性油分の1種または2種以上と、(II)下記式1で示される高分子量ポリエーテル変性シリコーンの1種または2種以上と、(III)水と、を配合することを特徴とする乳化化粧料である:
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-268831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特定のポリオキシアルキレン基含有率をもつ高分子量ポリエーテル変性シリコーンを含む油中水型乳化化粧料組成物は、肌に塗布する際に滑らかさが足りなかったり、また塗布した後にきしみ感(皮膜残留感)を感じてしまったりする場合がある。このため、このような高分子量ポリエーテル変性シリコーンを含む油中水型乳化化粧料の使用感について、依然として改善する余地がある。
【0006】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、塗布中の滑らかさが向上され、また、塗布後のきしみ感が改善された新規な油中水型乳化化粧料組成物を提供することである。
【0007】
なお、本発明において、「きしみ感」とは、化粧料組成物を肌に塗布した後に、指先で触るとひっかかるような皮膜残留感を感じることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0009】
〈態様1〉
油中水型乳化化粧料組成物であって、
水、
シリコーン油、
下記式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーン、及び
【化2】
下記式(1)で表される構造を有するポリマー
【化3】
を含み、
前記式(1’)において、X、X、及びXは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基及び一般式:-CO(CO)(CO)R’(式中、R’は、水素原子、アシル基、及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される基であり、またaは5~50の整数であり、bは5~50の整数である)で示されるポリオキシアルキレン基からなる群から選択される基であり(但し、X、X、及びXのうち、少なくとも1つはポリオキシアルキレン基であり)、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、それぞれ独立して、メチル基又はフェニル基であり、pは、50~1000の整数であり、かつqは、1~40の整数であり、
前記高分子量ポリエ-テル変性シリコーンが、分子中にポリオキシアルキレン基を40質量%以上含有し、
前記高分子量ポリエ-テル変性シリコーンの分子量が30,000以上であり、
前記式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
〈態様2〉
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化4】
前記式(1)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である、
態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記式(1)において、mが2以上であり、かつRの少なくとも一部が、メチル基である、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様5〉
前記式(1)において、R及びRの少なくとも一方が、メチル基である、態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
HLB値が2~5のシリコーン界面活性剤(但し、前記式(1')で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーンに該当するものを除く)を更に含む、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布中の滑らかさが向上され、また、塗布後のきしみ感が改善された新規な油中水型乳化化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。また、以下の説明では、特に断りがない限り、「式(1)」又は「式(2)」等の文言は、先行技術文献中の式ではなく、いずれも本発明に関わる化学式を指すものである。
【0012】
《油中水型乳化化粧料組成物》
本発明の油中水型乳化化粧料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、
水、
シリコーン油、
下記式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーン、及び
【化5】
下記式(1)で表される構造を有するポリマー
【化6】
を含み、
式(1’)において、X、X、及びXは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基及び一般式:-CO(CO)(CO)R’(式中、R’は、水素原子、アシル基、及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される基であり、またaは5~50の整数であり、bは5~50の整数である)で示されるポリオキシアルキレン基からなる群から選択される基であり(但し、X、X、及びXのうち、少なくとも1つはポリオキシアルキレン基であり)、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、それぞれ独立して、メチル基又はフェニル基であり、pは、50~1000の整数であり、かつqは、1~40の整数であり、
高分子量ポリエ-テル変性シリコーンが、分子中にポリオキシアルキレン基を40質量%以上含有し、
高分子量ポリエ-テル変性シリコーンの分子量が30,000以上であり、
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物
である。
【0013】
本発明の組成物は、上記式(1)で表す本発明のポリマーを含むことによって、上記式(1’)で表す高分子量ポリエーテル変性シリコーンを含んでいる場合においても、塗布中の滑らかさが向上され、そして塗布後のきしみ感も改善されている。
【0014】
理論に限定されるものではないが、これは、主に、本発明のポリマーの特性、すなわち式(1)で示す特有の構造、特定の範囲の数平均分子量(10,000以下)、及び特定の範囲のIOB(Inorganic Organic Balance)値(0.4~1.8)に由来するものと推測する。
【0015】
また、特定の構造をもつ本発明ポリマーは、両親媒性であり、水相に溶解する傾向があるものの、疎水的な性質も有するため、肌及び上記式(1’)で表す高分子量ポリエーテル変性シリコーンの両方との親和性がよい。このため、本発明の組成物の使用性(例えば、塗布中の滑らかさ及び塗布後のきしみ感)は、従来に比べて改善できると考えられる。
【0016】
〈水〉
本発明の組成物は、水を含む。本発明の組成物に用いられる水として、特に制限はなく、例えば、化粧料、及び医薬部外品において使用される水であってよい。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0017】
本発明の組成物において、水の含有量は特に限定されず、組成物全体に対して、例えば5.0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、又は60質量%以上であってよく、また、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。また、本発明の組成物を高内水相の油中水型乳化化粧料組成物を調製させる観点から、水の含有量の下限は、組成物全体に対して、例えば、50質量%以上、又は60質量%以上であることが好ましい。
【0018】
〈シリコーン油〉
本発明の組成物は、シリコーン油を含む。
【0019】
本発明において、シリコーン油としては、特に限定されず、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン(「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン」とも称する)、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度までのジオルガノポリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン,テトラメチルテトラフェニルテトラシクロシロキサン等の環状シロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン,ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,ガム状ジメチルポリシロキサン等の環状シロキサン溶液、トリメチルシロキシケイ酸等,トリメチルシロキシケイ酸の環状シロキサン溶液等、炭素原子数6~50のアルキル基を有するジオルガノポリシロキサン,アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等の変性シリコーンオイルが挙げられる。本発明の組成物において、これらのシリコーン油は、1種類単独で含まれてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0020】
本発明の組成物において、シリコーン油の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、5.0質量%以上、8.0質量%以上、又は10質量%以上であってよく、また、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下であってよい。
【0021】
なお、本発明の組成物において、シリコーン油を含む油相は連続相である。油相は、シリコーン油のみから構成されていてもよく、シリコーン油と他の任意油性成分とから構成されていてもよい。よって、油相におけるシリコーン油の含有量は、油相全体に対して、例えば、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は100質量%であってよい。
【0022】
〈高分子量ポリエーテル変性シリコーン〉
本発明の組成物は、下記式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーンを含む:
【化7】
【0023】
式(1’)において、X、X、及びXは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基及び一般式:-CO(CO)(CO)R’(式中、R’は、水素原子、アシル基、及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される基であり、またaは5~50の整数であり、bは5~50の整数である)で示されるポリオキシアルキレン基からなる群から選択される基である(但し、X、X、及びXのうち、少なくとも1つはポリオキシアルキレン基である)。
【0024】
ここで、R’がアシル基である場合の具体例として、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、アクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、炭素数1~4のアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。また、R’が炭素数1~4のアルキル基である場合の具体例には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基等含まれる。
【0025】
また、式(1’)におけるポリオキシアルキレン基の数について、増粘効果を向上させる観点から、a及びbは、5以上の整数であることが好ましく、更には、a及びbは、それぞれ独立して、8以上、10以上、12以上、15以上、又は17以上の整数であることが好ましい。また、化粧料組成物の使用感(特にべたつきのなさ)を向上させる観点から、a又はbは、50以下の整数であることが好ましく、更には、a及びbは、それぞれ独立して、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、又は20以下の整数であることが好ましい。
【0026】
また、1分子中のポリオキシアルキレン基の含有量は40質量%以上であり、更には、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上であることが好ましく、また70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下であってよい。
【0027】
ポリオキシアルキレン基の含有量が40質量%未満の場合には、シリコーン油以外の油分(例えば非極性炭化水素油)が存在する場合には、それに対する乳化能が低下し、また、化粧料組成物の使用感(特にべたつきのなさ)を向上させる観点から、ポリオキシアルキレン基の含有量は70質量%以下であることが好ましい。
【0028】
式(1’)において、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、それぞれ独立して、メチル基又はフェニル基である。
【0029】
式(1’)において、pは、50~1000の整数であり、qは、1~40の整数である。増粘効果を向上させる観点からは、pは、50以上、100以上、300以上、500以上、又は800以上の整数であることが好ましく、また、qは、1以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、又は35以上の整数であることが好ましい。また、化粧料組成物の使用感(特にべたつきのなさ)を向上させる観点から、pは、1000以下、800以下、500以下、300以下、又は100以下の整数であることが好ましく、また、qは、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下の整数であることが好ましい。
【0030】
本発明において、高分子量ポリエーテル変性シリコーンは、分子量30,000以上のポリエーテル変性シリコーンを指す。より具体的には、式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーンの分子量は30,000以上であり、40,000以上、又は50,000以上であることが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンの分子量が30000以上である場合、シリコーン油以外の油分(例えば非極性炭化水素油)が存在する場合には、それに対する乳化能を維持できる観点から好ましい。
【0031】
本発明において、上記式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーンとして、好ましい具体例としては、PEG/PPG-19/19、即ち、ジメチコンのメチル基の一部をポリオキシアルキレン基で置換した構造を有し、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の平均重合度が各々19である化合物、を挙げることができる。当該化合物は、上記式(1’)において、R、R、R、R、R、R10、及びR11はがメチル基であり、a=19かつb=19である化合物に相当する(但し、ポリオキシアルキレン基におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基の結合順序は限定されず、交互に結合していてもよく、少なくとも一部がポリオキシエチレンブロック及び/又はポリオキシプロピレンブロックを形成していてもよい。また、R’は水素原子であることが好ましい)。
【0032】
本発明の組成物において、上記式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、1.0質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、又は1.3質量%以上であってよく、また30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8.0質量%以下、5.0質量%以下、又は2.0質量%以下であってよい。
【0033】
〈本発明のポリマー〉
本発明の組成物は、以下に説明する本発明のポリマーを含む。本発明のポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する:
【化8】
【0034】
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。なお、本発明において、炭素数1~4のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、これらのアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲノ基等が挙げられる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また、mが2以上である場合、すなわち、複数のRが存在する場合、各々のRは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、特に、Rの少なくとも一部は、メチル基であることが好ましい。Rの少なくとも一部がメチル基である場合には、例えば、本発明の組成物の使用感を向上させる観点から好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R及びRの少なくとも一方は、メチル基であることが好ましい。
【0042】
式(1)において、Aは、炭素数2~4のアルキレン基である。より具体的には、Aは例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等であってよいが、これらに限定されない。特に、Aは、下記式(2)で表されることが好ましい:
【化9】
【0043】
式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である。より具体的には、Rは、メチル基又はエチル基であってよい。
【0044】
式(1)において、m及びnは、それぞれの構成単位の平均付加モル数を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、より具体的には、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、又は10以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、12以下、10以下、又は5.0以下であってよい。
【0045】
また、式(1)において、mは、1.0以上14以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましい。また、式(1)において、nは、2.0以上34以下であることが好ましく、6.0以上12以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m+nは、4.0以上、4.5以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は12以下であってよい。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m:nは、1:10~10:1であってよい。
【0048】
本発明のポリマーは、数平均分子量は、10,000以下である。より具体的には、本発明のポリマーの数平均分子量は、例えば、10,000以下、5,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、2,000以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってよく、また130以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は500以上であってよい。また、本発明のポリマーの数平均分子量は、300以上3,500以下であることが好ましく、500以上1,200以下であることがより好ましい。
【0049】
本発明のポリマーのIOB値は、0.4~1.8である。より具体的には、本発明のポリマーのIOB値は、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、又は0.7以上であってよく、また1.8以下、1.6以下、1.4以下、又は1.2以下であってよい。また、本発明のポリマーのIOB値は、0.7以上1.2以下であることが好ましい。
【0050】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。なお、IOB値の決定方法については、実施例に記載の方法を参照できる。
【0051】
本発明のポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0052】
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、各構成単位に対応するエポキシドを付加重合することによって行ったよい。また、付加重合は、ブロック重合であってもよく、ランダム重合であってもよいが、ランダム重合であることが好ましい。
【0053】
また、本発明のポリマーの製造方法は、上記の付加重合によって得られたポリマーに対して、更にハロゲン化アルキルと反応させることを更に含んでよい。ハロゲン化アルキルとの反応を介して、得られたポリマーの分子内の水酸基は、アルキル基によって封鎖されて、その結果ポリマー全体の疎水性を所望のとおりに調整することができる。本発明において、ポリマーの分子内において、アルキル基による水酸基の封鎖率は、例えば30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、又は55%以上であってよく、また60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、又は55%以下であってよい。なお、アルキル基による水酸基の封鎖率は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0054】
本発明のポリマーの特徴の一つとして、高い水溶性及び高い脂溶性を兼備することである。
【0055】
本発明のポリマーの水への溶解度は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり得る。
【0056】
また、本発明のポリマーの脂溶性の指標として、例えばオリーブ油への溶解度を用いることができる。本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度は、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、又は1.00質量%以上であり得る。なお、本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度の上限値は特に限定されず、例えば10質量%以下であってよい。
【0057】
本発明の組成物において、本発明のポリマーの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよい。また、本発明のポリマーの含有量は、特に、組成物全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、本発明のポリマーの含有量の上限値は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよく、これらのうち、特に3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分を更に含んでよい。以下では、本発明の組成物に含み得るその他の成分について説明する。なお、本発明は、これらの成分に限定されることはない。
【0059】
〈その他の成分〉
(HLB値が2~5のシリコーン界面活性剤)
本発明の組成物は、HLB値が2~5のシリコーン界面活性剤を更に含むことができる。但し、HLB値が2~5のシリコーン界面活性剤は、上述した式(1’)で表される高分子量ポリエーテル変性シリコーンに該当するものを除く。
【0060】
なお、本発明において、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値は、グリフィン法を用いて定義できる。
【0061】
また、本発明において、「シリコーン界面活性剤」とは、分子内にシリコーン構造(疎水性部分)と親水性部分とを有する非イオン性の界面活性剤である。
【0062】
シリコーン界面活性剤としては、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基分岐型ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
より具体的には、HLB値が2~5のシリコーン界面活性剤として、例えば、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-3ジメチコン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の組成物において、HLB値が2~5のシリコーン界面活性剤が含まれる場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、又は0.7質量%以上であってよく、また、2.0質量%以下、1.5質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0065】
(シリコーン油以外の油分)
本発明の組成物は、上述したシリコーン油以外の油分を更に含むことができ、例えば、非極性炭化水素油及び低極性炭化水素油から選択される少なくとも1種の炭化水素油を更に含むことができる。
【0066】
非極性炭化水素油及び低極性炭化水素油は、常温(25℃)において液状の炭化水素油であって、一般に非極性油又は低極性油として知られたものでよい。化粧料分野では、例えば、水添ポリデセン、ミネラルオイル、流動パラフィン、イソパラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクワラン、スクワレン、水添ポリイソブテン等が非極性又は低極性の液状油として知られている。
【0067】
なお、本発明においては、非極性炭化水素油及び低極性炭化水素油から選択される少なくとも1種の炭化水素油を、包括的に「非極性炭化水素油」とも称し、便宜的に、「常温で液状でありIOB値が0.15以下の炭化水素油」と定義することができる。
【0068】
また、上記で定義した「非極性炭化水素油」には、上記の液状油に加えて、ステアリン酸ステアリル(IOB=0.08)、ミリスチン酸オクチルドデシル(IOB=0.09)、パルミチン酸オクチル(IOB=0.13)、2-エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、オクタン酸セチル(IOB=0.13)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.14)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.14)等のエステル油;軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等のパラフィン系油剤;α-オレフィンオリゴマー等の炭化水素系油剤等が含まれる。
【0069】
本発明の組成物において、シリコーン油以外の油分が含まれる場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、また、2.0質量%以下、1.5質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0070】
(アルコール成分)
本発明の組成物は、アルコール成分を更に含むことができる。本発明において、「アルコール成分」の定義には、低級アルコール及び多価アルコールの両方を含む。これらのアルコール成分は、水と混合することができ、水溶性成分とも称することができ、水と共に水相を構成することができる。また、一部のアルコール成分は、保湿の機能も有し、すなわち、保湿剤としても使用できる。
【0071】
本発明において、低級アルコールとは、炭素数5以下のアルコールを指し、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール等が例示される。
【0072】
本発明の組成物において、低級アルコールを含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、又は5.0質量%以下であってよい。
【0073】
また、多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(例えば、1,2,6-へキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール(糖アルコールにも属する)等);6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール(いずれも糖アルコールにも属する)等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコール縮合体アルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトール、デンプン分解等還元アルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE-テトラハイドロフルフリルアルコール、POP-ブチルエーテル;POP・POE-ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテルリン酸;POP・POE-ペンタンエリスリトールエーテル、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0074】
本発明の組成物において、多価アルコールを含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、また、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0075】
(その他の任意成分)
上述したほかに、本発明組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、化粧料に通常用いられる他の任意成分、例えば、限定されないが、保湿剤、防腐剤、増粘剤、金属イオン封鎖剤、粉末成分、pH調整剤、紫外線吸収剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0076】
〈本発明の組成物の製造方法〉
本発明の組成物は、油中水型乳化化粧料の常法を用いて製造することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば、水相と油相を、必要に応じて加温し、水相を油相に徐々に添加して乳化機で乳化し、加熱した場合には室温まで放冷する等の方法がある。特に、本発明の組成物で固形油分を含まない態様では、加熱工程が不要となるため工程が簡略化できる。なお、本発明のポリマーは、例えば、予め水相に配合されてよい。
【0077】
〈本発明の組成物の用途〉
本発明の組成物は、様々な形態の化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、みずみずしい使用感触を持った乳液、クリーム、化粧下地、乳化ファンデーション等の形態として提供するのに適している。
【実施例0078】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
《合成例1及び2》
以下の合成例1及び2は、それぞれ下記式(3)で表される構造を有するポリマーを合成した:
【化10】
なお、式(3)において、[]内は、ランダム共重合体である。
【0080】
〈合成例1〉
合成例1:R=H、R=H、R=CH、R=CH、m=2.0、及びn=6.0のポリマー1
下記方法で合成を行い、ポリマー1を得た。
【0081】
メタノール128g及び触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後5時間攪拌した。オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、合成例1のポリマー1、2000gを得た。
【0082】
以下では、得られたポリマー1に対して、各種の物性値を求めた。
【0083】
(数平均分子量)
得られたポリマー1の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により算出した。システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。このクロマトグラムからポリエチレングリコールを標準とし、数平均分子量を求めたところ、約530であった。
【0084】
(重量平均分子量)
得られたポリマー1の重量平均分子量は、上記と同様にGPC計算によって求めて、約859であった。
【0085】
(多分散度)
上記で求めた数平均分子量及び重量平均分子量の結果から、ポリマー1の多分散度Mw/Mnは、1.62であった。
【0086】
(IOB値)
得られたポリマー1のIOB値は、以下のように求めたところ、1.1であった。
【0087】
より具体的には、ポリマー1において、有機性値として、炭素を20、iso分岐を-10にて計算した。また、無機性値は、水酸基を100、エーテル結合を20にて計算した。
・メタノール部位:(炭素数1、水酸基1)×1
有機性値:20
無機性値:100
・グリシドール部位:(炭素数3、iso分岐1、水酸基1、エーテル結合1)×2
有機性値:(60-10)×2=100
無機性値:(100+20)×2=240
・プロピレンオキシド部位:(炭素数3、iso分岐1、エーテル結合1)×6
有機性値:(60-10)×6=300
無機性値:20×6=120
以上、合計有機性値が420となる、合計無機性値が460となるため、IOB値が1.09となる。
【0088】
(曇点)
得られたポリマー1に対して、5wt%水溶液を調製し、85℃に加温後、冷却し、透明溶液となる温度は74℃であった。よって、ポリマー1の曇点は、74℃であることが分かった。
【0089】
(水酸基価)
得られたポリマー1の水酸基価は、JIS K-1557-1の測定方法に従い測定したところ、294であった。
【0090】
(水への溶解性)
得られたポリマー1の水への溶解性は、後述する「相溶性評価」の方法と同じように求めたところ、50質量%以上であった。
【0091】
(オリーブ油への溶解性)
得られたポリマー1のオリーブ油への溶解性は、以下のように求めた。すなわち、ポリマー1を、濃度が1.0wt%となるようオリーブ油と混合し、外観を確認した。均一であれば「〇」とした。この場合、ポリマー1のオリーブ油への溶解性は、1.0質量%であった。
【0092】
以上で測定したポリマー1の各種物性値は、下記の表1に示す。
【0093】
〈合成例2〉
合成例2:R=H及びCH、R=H及びCH、R=CH、R=CH、m=2.0、及びn=6.0のポリマー2
下記方法で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0094】
メタノール128gと触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム244gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル200gを温度80~130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ポリマー2、1820gを得た。塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が125であったことから、RとRにおけるメチル基と水素原子の割合(CH/H)は0.57であることが分かった。すなわち、ポリマー2の水酸基封鎖率が57%であった。
【0095】
上述したポリマー1の場合と同様に、得られたポリマー2に対して、各種の物性値を求めて、それぞれの結果は下記の表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
《実施例1~2及び比較例1》
以下の表2に示す処方に基づき、実施例1~2及び比較例1の組成物(油中水型クリーム)を、それぞれ調製した。調製された各組成物に対して、下記の評価方法に基づき、各種使用性を評価し、結果は表2に示す。なお、特に断りのない限り、表2及び表3の評価結果以外の数値は、配合量を表し、単位は質量%である。
【0098】
(塗布中の滑らかさの評価)
専門パネルが顔に各実施例の組成物試料を塗布し、塗布中の滑らかさ感触を、基準品組成物(比較例)と比較した。比較結果を下記のように分類する:
「-1」:基準品に対して劣る点が認められる;
「0」:基準品に対して向上又は改善されている感じはない;
「1」:基準品に対してわずかに向上又は改善されていると感じる;
「2」:基準品に対してある程度向上又は改善されていると感じる;
「3」:基準品に対して明らかに向上又は改善されていると感じる。
【0099】
(塗布後のきしみ感の評価)
専門パネルが顔に各実施例の組成物試料を塗布し、きしみ感の改善を、基準品組成物(比較例)と比較した。比較結果を下記のように分類する:
「-1」:基準品に対して劣る点が認められる;
「0」:基準品に対して向上又は改善されている感じはない;
「1」:基準品に対してわずかに向上又は改善されていると感じる;
「2」:基準品に対してある程度向上又は改善されていると感じる;
「3」:基準品に対して明らかに向上又は改善されていると感じる。
【0100】
【表2】
【0101】
表2から明らかなように、塗布中の滑らかさの評価及び塗布後のきしみ感の評価において、実施例1及び2の組成物は、いずれも比較例1の組成物(基準品)と比べて、明らかに向上又は改善されていると感じていることが分かった。
【0102】
《実施例3~8及び比較例2》
以下の表3に示す処方に基づき、実施例3~8及び比較例2の組成物(油中水型クリーム)を、それぞれ調製した。調製された各組成物に対して、上記の評価方法に基づき、各種使用性を評価し、結果は表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3から明らかなように、塗布中の滑らかさの評価及び塗布後のきしみ感の評価において、実施例3~8の組成物は、いずれも比較例2の組成物(基準品)と比べて、明らかに向上又は改善されていると感じていることが分かった。
【0105】
《処方例》
以下では、本発明の組成物の処方例を例示的に挙げる。なお、本発明は、以下の処方例によって何ら限定されるものではない。また、処方例中の「ポリマー1」及び「ポリマー2」は、それぞれ上述した「合成例1」及び「合成例2」で合成された「ポリマー1」及び「ポリマー2」である。
【0106】
〈処方例1 油中水型クリーム〉
配合成分 含有量(質量%)
水 残余
ジメチコン 7.5
エタノール 7.0
グリセリン 6.0
DPG 6.0
シクロメチコン 3.0
トリメチルシロキシケイ酸 3.0
ソルビトール 3.0
ポリマー1 2.0
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.0
塩化Na 1.0
ヒアルロン酸Na 0.01
セリシン 0.05
アセチルヒアルロン酸Na 0.01
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.7
PEG/PPG-19/19ジメチコン(イソパラフィン50%
溶液) 1.5
PEG-150 0.5
エチルヘキサン酸セチル 0.5
メタクリル酸メチルクロスポリマー 0.5
クエン酸Na 0.5
セルロースガム 0.2
クエン酸 0.05
EDTA-2Na 0.05
シリカ 0.015
ピロ亜硫酸Na 0.01
トコフェロール 0.003
ソルビン酸K 0.001
フェノキシエタノール 0.5
合計: 100
【0107】
〈処方例2 油中水型クリーム〉
配合成分 含有量(質量%)
水 残余
グリセリン 12
ジメチコン 9.0
DPG 7.0
エチルヘキサン酸セチル 3.0
水添ポリデセン 3.0
PEG-150 2.0
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.5
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.0
PEG/PPG-19/19ジメチコン(イソパラフィン50%
溶液) 2.0
塩化Na 1.0
ローズ水 0.1
ポリマー2 1.0
カニナバラ果実油 0.01
トウキ根エキス 0.01
アセチルヒアルロン酸Na 0.001
ヤグルマギク花エキス 0.01
クエン酸Na 0.4
イソステアリン酸 0.3
トコフェロール 0.15
クエン酸 0.1
EDTA-3Na 0.1
セルロースガム 0.1
温泉水 0.1
BHT 0.05
ピロ亜硫酸Na 0.02
フェノキシエタノール 0.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.1
香料 0.1
合計: 100
【0108】
〈処方例3 油中水型目元用美容液〉
配合成分 含有量(質量%)
水 残余
グリセリン 12
ジメチコン 10
DPG 8.0
キシリトール 4.0
BG 3.0
PEG-20 2.0
ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン 2.0
エリスリトール 1.5
PEG-150 1.0
トレハロース 1.0
塩化Na 1.0
ベタイン 1.0
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.5
ポリマー2 2.0
オタネニンジン根エキス 0.01
ゴレンシ葉エキス 0.01
PEG-10ジメチコン 0.1
PEG/PPG-19/19ジメチコン(イソパラフィン50%
溶液) 2.0
テアニン 0.2
EDTA-3Na 0.1
エチルヘキサン酸セチル 0.1
ピロ亜硫酸Na 0.01
BHT 0.001
トコフェロール 0.005
フェノキシエタノール 0.5
クロルフェネシン 0.1
合計: 100