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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009540
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240116BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 655D
H01L29/78 655G
H01L29/78 652C
H01L29/78 652P
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/91 B
H01L29/91 D
H01L29/91 F
H01L29/91 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111146
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 和貴
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ダイオードの定常損失が増加しない、半導体装置を提供する。
【解決手段】トランジスタ部70と、ダイオード部80と、トランジスタ部とダイオード部80の隣接する部分の境界部90と、を備える半導体装置100であって、半導体基板10に設けられた第1導電型のドリフト領域18と、ドリフト領域よりも半導体基板のおもて面側に設けられた第2導電型のアノード領域19と、ダイオード部において、半導体基板のおもて面に設けられたトレンチコンタクト部20とを備える。半導体基板の深さ方向において、トレンチコンタクト部の底部と同一の深さにおけるアノード領域のドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード部を備える半導体装置であって、
半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域よりも前記半導体基板のおもて面側に設けられた第2導電型のアノード領域と、
前記ダイオード部において、前記半導体基板のおもて面に設けられたトレンチコンタクト部と
を備え、
前記半導体基板の深さ方向において、前記トレンチコンタクト部の底部と同一の深さにおける前記アノード領域のドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である半導体装置。
【請求項2】
前記アノード領域は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ドーピング濃度のピークを有し、
前記トレンチコンタクト部の底部は、前記半導体基板の深さ方向において、前記アノード領域のドーピング濃度のピークよりも前記おもて面側にある、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記アノード領域は、前記半導体基板の深さ方向における前記トレンチコンタクト部の前記底部と同一の深さにおいて、前記ドーピング濃度の正の傾きを有する、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ドーピング濃度の前記正の傾きは、4E16cm-3/μm以上である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記アノード領域は、前記半導体基板の深さ方向において0.6μm以上、3.0μm以下の厚みを有し、ドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である平坦部を有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トレンチコンタクト部の下端の深さは、前記半導体基板のおもて面から0.3μm以上、0.6μm以下である、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トレンチコンタクト部の底部の下方において、トレンチの延伸方向に選択的に設けられ、前記アノード領域よりもドーピング濃度が高い第2導電型のダイオードプラグ領域を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ダイオード部は、前記半導体基板の裏面において前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高い第1導電型のカソード領域を備え、
前記カソード領域は、第1導電型の第1カソード部と第2導電型の第2カソード部とを含む、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
トランジスタ部をさらに備え、前記トランジスタ部は、
前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりも高ドーピング濃度である第1導電型のエミッタ領域と、
前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
を有し、
前記アノード領域のドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度より低い、請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記アノード領域の下端は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ベース領域の下端と同一深さである、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記アノード領域の下端は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ベース領域の下端よりも深い、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記トランジスタ部において、前記トレンチコンタクト部の底部にトレンチの延伸方向に延伸して設けられ、前記アノード領域よりもドーピング濃度が高い第2導電型のトランジスタプラグ領域を有する、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記トランジスタ部において、前記半導体基板のおもて面側に前記アノード領域を有し、前記半導体基板の裏面側に第2導電型のコレクタ領域を有する境界部をさらに備え、
前記境界部は、前記半導体基板のおもて面に設けられた前記トレンチコンタクト部を有する、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記境界部において、
前記トランジスタ部と隣接するメサ部において、前記トレンチコンタクト部の底部に、トレンチの延伸方向に延伸して設けられた第2導電型のトランジスタプラグ領域を有し、
前記ダイオード部と隣接するメサ部において、前記トレンチコンタクト部の底部に、トレンチの延伸方向に選択的に設けられた第2導電型のダイオードプラグ領域を有する、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記境界部は、ゲート電位とは異なる電位に設定された1つ以上のダミートレンチ部を有する、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項16】
半導体装置の製造方法であって、
半導体基板に第1導電型のドリフト領域を形成する段階と、
前記ドリフト領域よりも前記半導体基板のおもて面側に第2導電型のアノード領域を設ける段階と、
前記半導体基板のおもて面にトレンチコンタクト部を設ける段階と
を備え、
前記半導体基板の深さ方向において、前記トレンチコンタクト部の底部と同一の深さにおける前記アノード領域のドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記アノード領域の一部に更にイオン注入することにより、前記アノード領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のベース領域を形成する段階を更に備える、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記アノード領域を形成する段階は、1又は複数回のイオンを注入する段階を有し、
前記1又は複数回のイオンを注入する段階における加速電圧は、100KeV以上、650KeV以下である、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記1又は複数回のイオンを注入する段階は、第1加速電圧でイオン注入する段階と、第2加速電圧でイオン注入する段階を有し、
前記第1加速電圧は前記第2加速電圧より低く、
前記第1加速電圧で注入されるイオンのドーズ量は、前記第2加速電圧で注入されるイオンのドーズ量よりも多い、請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「n型不純物濃度は、半導体基板12の上面(図2の上端の位置)から深い位置に進むにしたがって上昇し、ピラー領域24内で極大値A1となる。」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2015-090917号公報
[特許文献2] 国際公開第2016/030966号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンタクトトレンチ部を形成した場合に、ダイオードの定常損失Vfが増加しないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、ダイオード部を備える半導体装置であって、半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板のおもて面側に設けられた第2導電型のアノード領域と、前記ダイオード部において、前記半導体基板のおもて面に設けられたトレンチコンタクト部とを備え、前記半導体基板の深さ方向において、前記トレンチコンタクト部の底部と同一の深さにおける前記アノード領域のドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である半導体装置を提供する。
【0005】
上記半導体装置において、前記アノード領域は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ドーピング濃度のピークを有し、前記トレンチコンタクト部の底部は、前記半導体基板の深さ方向において、前記アノード領域のドーピング濃度のピークよりも前記おもて面側にあってよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置において、前記アノード領域は、前記半導体基板の深さ方向における前記トレンチコンタクト部の前記底部と同一の深さにおいて、前記ドーピング濃度の正の傾きを有してよい。
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記ドーピング濃度の前記正の傾きは、4E16cm-3/μm以上であってよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置において、前記アノード領域は、前記半導体基板の深さ方向において0.6μm以上、3.0μm以下の厚みを有し、ドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である平坦部を有してよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、前記トレンチコンタクト部の下端の深さは、前記半導体基板のおもて面から0.3μm以上、0.6μm以下であってよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記トレンチコンタクト部の底部の下方において、トレンチの延伸方向に選択的に設けられ、前記アノード領域よりもドーピング濃度が高い第2導電型のダイオードプラグ領域を有してよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記半導体基板の裏面において前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高い第1導電型のカソード領域を備え、前記カソード領域は、第1導電型の第1カソード部と第2導電型の第2カソード部とを含んでよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、トランジスタ部をさらに備え、前記トランジスタ部は、前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりも高ドーピング濃度である第1導電型のエミッタ領域と、前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域とを有し、前記アノード領域のドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度より低くてよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、前記アノード領域の下端は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ベース領域の下端と同一深さであってよい。
【0014】
上記いずれかの半導体装置において、前記アノード領域の下端は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ベース領域の下端よりも深くてよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、前記トランジスタ部において、前記トレンチコンタクト部の底部にトレンチの延伸方向に延伸して設けられ、前記アノード領域よりもドーピング濃度が高い第2導電型のトランジスタプラグ領域を有してよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記トランジスタ部において、前記半導体基板のおもて面側に前記アノード領域を有し、前記半導体基板の裏面側に第2導電型のコレクタ領域を有する境界部をさらに備え、前記境界部は、前記半導体基板のおもて面に設けられた前記トレンチコンタクト部を有してよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置において、前記境界部において、前記トランジスタ部と隣接するメサ部において、前記トレンチコンタクト部の底部に、トレンチの延伸方向に延伸して設けられた第2導電型のトランジスタプラグ領域を有し、前記ダイオード部と隣接するメサ部において、前記トレンチコンタクト部の底部に、トレンチの延伸方向に選択的に設けられた第2導電型のダイオードプラグ領域を有してよい。
【0018】
上記いずれかの半導体装置において、前記境界部は、ゲート電位とは異なる電位に設定された1つ以上のダミートレンチ部を有してよい。
【0019】
本発明の第2の態様においては、半導体装置の製造方法であって、半導体基板に第1導電型のドリフト領域を形成する段階と、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板のおもて面側に第2導電型のアノード領域を設ける段階と、前記半導体基板のおもて面にトレンチコンタクト部を設ける段階とを備え、前記半導体基板の深さ方向において、前記トレンチコンタクト部の底部と同一の深さにおける前記アノード領域のドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である、半導体装置の製造方法を提供する。
【0020】
上記半導体装置の製造方法において、前記アノード領域の一部に更にイオン注入することにより、前記アノード領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のベース領域を形成する段階を更に備えてよい。
【0021】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記アノード領域を形成する段階は、1又は複数回のイオンを注入する段階を有してよく、前記1又は複数回のイオンを注入する段階における加速電圧は、100KeV以上、650KeV以下であってよい。
【0022】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記1又は複数回のイオンを注入する段階は、第1加速電圧でイオン注入する段階と、第2加速電圧でイオン注入する段階を有してよく、前記第1加速電圧は前記第2加速電圧より低くてよく、前記第1加速電圧で注入されるイオンのドーズ量は、前記第2加速電圧で注入されるイオンのドーズ量よりも多くてよい。
【0023】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】半導体装置100の上面図の一例を示す。
図2A図1におけるa-a'断面の一例を示す。
図2B図1におけるb-b'断面の一例を示す。
図2C図1におけるc-c'断面の一例を示す。
図3A】比較例のドーピング濃度のプロファイルの一例を示す。
図3B】実施例の半導体装置100におけるドーピング濃度のプロファイルの一例を示す。
図3C】実施例と比較例とのVf変化率の一例を示す。
図3D】実施例の半導体装置100におけるドーピング濃度のプロファイルの一例を示す。
図4図1におけるa-a'断面の変形例を示す。
図5】半導体装置100の別の実施例における上面図の一例を示す。
図6】半導体装置100の製造方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」、「おもて」、「裏」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0027】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0028】
本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。半導体基板の深さ方向をZ軸と称する場合がある。なお、本明細書において、Z軸方向に半導体基板を視た場合について平面視と称する。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0029】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
【0030】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0031】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0032】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。
【0033】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0034】
図1は、半導体装置100の上面図の一例を示す。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70とダイオード部80とを備える半導体チップである。例えば、半導体装置100は、逆導通IGBT(RC-IGBT:Reverse Conducting IGBT)である。本例のトランジスタ部70は、ダイオード部80と隣接する部分において、境界部90を含む。
【0035】
トランジスタ部70は、半導体基板10の裏面側に設けられたコレクタ領域22を半導体基板10の上面に投影した領域である。コレクタ領域22については後述する。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。
【0036】
ダイオード部80は、半導体基板10の裏面に設けられたカソード領域82を半導体基板10の上面に投影した領域である。カソード領域82は、第1導電型を有する。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。ダイオード部80は、半導体基板10の上面においてトランジスタ部70と隣接して設けられた還流ダイオード(FWD:Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。
【0037】
図1においては、半導体装置100のエッジ側であるチップ端部周辺の領域を示しており、他の領域を省略している。例えば、本例の半導体装置100のY軸方向の負側の領域には、エッジ終端構造部が設けられてよい。エッジ終端構造部は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。なお、本例では、便宜上、Y軸方向の負側のエッジについて説明するものの、半導体装置100の他のエッジについても同様である。エッジ終端構造部はトランジスタ部70およびダイオード部80を備えた活性領域を取り囲むように設けられてよい。
【0038】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10は、シリコン基板である。
【0039】
本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21において、ゲートトレンチ部40と、ダミートレンチ部30と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ウェル領域17と、アノード領域19と、トレンチコンタクト部20とを備える。おもて面21については後述する。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。
【0040】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40と、ダミートレンチ部30と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ウェル領域17と、アノード領域19およびトレンチコンタクト部20の上方に設けられている。また、ゲート金属層50は、ゲートトレンチ部40およびウェル領域17の上方に設けられている。
【0041】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。エミッタ電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウムを含む合金、例えば、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。ゲート金属層50の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウムを含む合金、例えば、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、アルミニウムまたはアルミニウムを含む合金等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
【0042】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、層間絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上方に設けられる。層間絶縁膜38は、図1では省略されている。層間絶縁膜38には、トレンチコンタクト部20、コンタクトホール55およびコンタクトホール56が貫通して設けられている。
【0043】
トレンチコンタクト部20は、層間絶縁膜38の上面から半導体基板10の深さ方向に延伸して設けられる。トレンチコンタクト部20は、底部および側部を有する。トレンチコンタクト部20は、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続する。トレンチコンタクト部20は、トレンチ延伸方向に延伸して設けられている。本例のトレンチコンタクト部20は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30に沿ってストライプ状に配置されている。
【0044】
トレンチコンタクト部20は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の各領域の上面に形成される。トレンチコンタクト部20は、Y軸方向両端に設けられたウェル領域17の上方には設けられていない。このように、層間絶縁膜には、1又は複数のトレンチコンタクト部20が形成されている。1又は複数のトレンチコンタクト部20は、延伸方向に延伸して設けられてよい。
【0045】
トレンチコンタクト部20は、ダイオード部80において、アノード領域19の上方に設けられる。トレンチコンタクト部20は、境界部90において、コンタクト領域15およびアノード領域19の上面に設けられる。いずれのトレンチコンタクト部20も、Y軸方向両端に設けられたウェル領域17の上方には設けられていない。
【0046】
コンタクトホール55は、ゲート金属層50とトランジスタ部70内のゲート導電部とを接続する。コンタクトホール55の内部には、バリアメタルを介してタングステン等で形成されたプラグが形成されてもよい。
【0047】
コンタクトホール56は、エミッタ電極52とダミートレンチ部30内のダミー導電部とを接続する。コンタクトホール56の内部には、バリアメタルを介してタングステン等で形成されたプラグが形成されてもよい。
【0048】
接続部25は、エミッタ電極52またはゲート金属層50等のおもて面側電極と、半導体基板10とを電気的に接続する。一例において、接続部25は、ゲート金属層50とゲート導電部との間に設けられる。接続部25は、エミッタ電極52とダミー導電部との間にも設けられている。接続部25は、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料である。本例の接続部25は、N型の不純物がドープされたポリシリコン(N+)である。接続部25は、酸化膜等の絶縁膜等を介して、半導体基板10のおもて面21の上方に設けられる。
【0049】
ゲートトレンチ部40は、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分41と、2つの延伸部分41を接続する接続部分43を有してよい。
【0050】
接続部分43は、少なくとも一部が曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分41の端部を接続することで、延伸部分41の端部における電界集中を緩和できる。ゲートトレンチ部40の接続部分43において、ゲート金属層50がゲート導電部と接続されてよい。
【0051】
ダミートレンチ部30は、エミッタ電極52と電気的に接続されたトレンチ部である。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板10のおもて面21においてU字形状を有してよい。即ち、ダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分31と、2つの延伸部分31を接続する接続部分33を有してよい。
【0052】
本例のトランジスタ部70は、1つのゲートトレンチ部40と1つのダミートレンチ部30を繰り返し配列させた構造を有する。即ち、本例のトランジスタ部70は、1:1の比率でゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30を有している。例えば、トランジスタ部70は、2本の延伸部分41の間に1本の延伸部分31を有する。また、トランジスタ部70は、2本の延伸部分31の間に1本の延伸部分41を有する。
【0053】
但し、ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は本例に限定されない。ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は、2:3であってもよく、2:4であってもよい。また、トランジスタ部70は、全てのトレンチ部をゲートトレンチ部40として、ダミートレンチ部30を有さなくてもよい。
【0054】
ウェル領域17は、後述するドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられた第2導電型の領域である。ウェル領域17は、半導体装置100のエッジ側に設けられるウェル領域の一例である。ウェル領域17は、一例としてP+型である。ウェル領域17は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲で形成される。ウェル領域17の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域17に形成される。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域17に覆われてよい。
【0055】
メサ部71は、半導体基板10のおもて面21と平行な面内において、トレンチ部に隣接して設けられたメサ部である。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板10の部分であって、半導体基板10のおもて面21から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。各トレンチ部の延伸部分を1つのトレンチ部としてよい。即ち、2つの延伸部分に挟まれる領域をメサ部としてよい。
【0056】
メサ部71は、トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30またはゲートトレンチ部40の少なくとも1つに隣接して設けられる。メサ部71は、半導体基板10のおもて面21において、ウェル領域17と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15とを有する。メサ部71では、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が延伸方向において交互に設けられている。
【0057】
ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21側に設けられた第2導電型の領域である。ベース領域14は、一例としてP-型である。ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21において、メサ部71のY軸方向における両端部に設けられてよい。なお、図1は、当該ベース領域14のY軸方向の一方の端部のみを示している。
【0058】
エミッタ領域12は、半導体基板10のおもて面21に設けられ、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型の領域である。本例のエミッタ領域12は、一例としてN+型である。エミッタ領域12のドーパントの一例はヒ素(As)である。エミッタ領域12は、メサ部71のおもて面21において、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に延伸して設けられてよい。
【0059】
また、エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接している。
【0060】
コンタクト領域15は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。本例のコンタクト領域15は、メサ部71のおもて面21に設けられている。コンタクト領域15は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に設けられてよい。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40と接する。
【0061】
境界部90は、トランジスタ部70に設けられ、ダイオード部80と隣接する領域である。境界部90は、エミッタ領域12を有さなくてよい。一例において、境界部90のトレンチ部は、ダミートレンチ部30である。本例の境界部90は、X軸方向における両端がダミートレンチ部30となるように配置されている。境界部90において、ダミートレンチ部30の少なくとも1つは、ゲート電位とは異なる電位に設定されてよい。
【0062】
メサ部91は、境界部90に設けられている。メサ部91は、半導体基板10のおもて面21において、コンタクト領域15を有する。本例のメサ部91は、Y軸方向の負側において、ベース領域14およびウェル領域17を有する。
【0063】
メサ部92は、境界部90に設けられている。メサ部92は、半導体基板10のおもて面21において、アノード領域19を有する。本例のメサ部92は、Y軸方向の負側において、アノード領域19およびウェル領域17を有する。
【0064】
メサ部81は、ダイオード部80において、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に設けられる。メサ部81は、半導体基板10のおもて面21において、アノード領域19を有する。本例のメサ部81は、Y軸方向の負側において、アノード領域19およびウェル領域17を有する。
【0065】
アノード領域19は、第2導電型の領域である。アノード領域19のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも低くてよい。本例のアノード領域19は、一例としてP--型である。本例のアノード領域19は、メサ部91のおもて面21に設けられている。アノード領域19は、メサ部81を挟んだ2本のダミートレンチ部30の一方から他方まで、X軸方向に設けられてよい。アノード領域19は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のアノード領域19は、ダミートレンチ部30と接する。
【0066】
本例のアノード領域19のドーピング濃度は、1E16cm-3以上、1E17cm-3以下であってよい。なお、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E16cm-3は1×1016cm-3を意味する。アノード領域19は、半導体基板10の深さ方向において、ドーピング濃度のピークを有していてよい。また、半導体基板10の深さ方向において、アノード領域19の下端は、ベース領域14の下端と同一の深さであってよく、ベース領域14の下端よりも深い位置にあってもよい。アノード領域19の厚さは、半導体基板10の深さ方向において、0.6μm以上、3μm以下であってよい。
【0067】
図2Aは、図1におけるa-a'断面の一例である。a-a'断面は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、後述するダイオードプラグ領域83を通過しないXZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上方に形成される。
【0068】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
【0069】
コレクタ領域22は、トランジスタ部70において、半導体基板10の裏面23に設けられる。コレクタ領域22は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のコレクタ領域22は、一例としてP+型である。
【0070】
カソード領域82は、ダイオード部80において、半導体基板10の裏面23に設けられる。カソード領域82は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型の領域である。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。
【0071】
コレクタ領域22とカソード領域82との境界は、トランジスタ部70とダイオード部80との境界である。即ち、本例の境界部90の下方には、コレクタ領域22が設けられている。また、詳細は後述するが、カソード領域82は、第1カソード部181および第2カソード部182を有してもよい。
【0072】
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23に形成される。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。
【0073】
ベース領域14は、ドリフト領域18の上方に設けられた第2導電型の領域である。ベース領域14のドーピング濃度は、アノード領域19のドーピング濃度より高くてよい。ベース領域14のドーピング濃度は、3E16cm-3以上、1E18cm-3以下であってよい。ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられてよい。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0074】
蓄積領域16は、ドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられる第1導電型の領域である。本例の蓄積領域16は、一例としてN型である。蓄積領域16は、トランジスタ部70に設けられ、ダイオード部80および境界部90には設けられていない。但し、蓄積領域16は、トランジスタ部70とダイオード部80の両方に設けられてよい。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、トランジスタ部70のオン電圧を低減できる。
【0075】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、おもて面21に設けられる。各トレンチ部は、おもて面21からドリフト領域18まで設けられる。エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15、蓄積領域16およびアノード領域19の少なくともいずれかが設けられる領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通したものに含まれる。
【0076】
ゲートトレンチ部40は、おもて面21に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0077】
ゲート導電部44は、半導体基板10の深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んでメサ部71側で隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0078】
ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、おもて面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミートレンチ部30は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0079】
層間絶縁膜38は、おもて面21に設けられている。層間絶縁膜38の上方には、エミッタ電極52が設けられている。層間絶縁膜38には、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続するための1又は複数のトレンチコンタクト部20が設けられている。コンタクトホール55およびコンタクトホール56もトレンチコンタクト部20と同様に、層間絶縁膜38を貫通して設けられてよい。
【0080】
トレンチコンタクト部20は、層間絶縁膜38を貫通してベース領域14またはアノード領域19まで到達する。トレンチコンタクト部20は、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続する。トレンチコンタクト部20の下端の深さは、半導体基板10のおもて面21から0.3μm以上、0.6μm以下であってよい。
【0081】
トランジスタプラグ領域73は、トランジスタ部70において、トレンチコンタクト部20の底部の下方に設けられる、ベース領域14よりもドーピング濃度が高い第2導電型の領域である。トランジスタプラグ領域73のドーピング濃度は、1E21cm-3以上、1E22cm-3以下であってよい。本例のトランジスタプラグ領域73は、一例としてP+型である。トランジスタプラグ領域73は、トレンチコンタクト部20の底部と側壁の一部を覆うように設けられてよい。
【0082】
トランジスタプラグ領域73のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度よりも高くてよい。また、トランジスタプラグ領域73のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度と同一であってよい。
【0083】
トランジスタプラグ領域73は、メサ部71およびメサ部91において、トレンチ延伸方向に連続して設けられる。即ち、トランジスタプラグ領域73は、メサ部71およびメサ部91において、ストライプ状に設けられる。トランジスタプラグ領域73を設けることにより、トランジスタ部70におけるトレンチコンタクト部20の底部の抵抗が低下し、ラッチアップ破壊を抑制することができる。
【0084】
図2Bは、図1におけるb-b'断面の一例である。b-b'断面は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、ダイオードプラグ領域83を通過するXZ面である。b-b'断面に含まれている構成は、ダイオードプラグ領域83を除いてa-a'断面と同一であってよい。
【0085】
ダイオードプラグ領域83は、ダイオード部80において、トレンチコンタクト部20の底部の下方に設けられる、アノード領域19よりもドーピング濃度が高い第2導電型の領域である。ダイオードプラグ領域83のドーピング濃度は、1E21cm-3以上、1E22cm-3以下であってよい。ダイオードプラグ領域83のドーピング濃度は、トランジスタプラグ領域73のドーピング濃度と同一でよい。本例のダイオードプラグ領域83は、一例としてP+型である。ダイオードプラグ領域83は、トレンチコンタクト部20の底部と側壁の一部を覆うように設けられてよい。
【0086】
ダイオードプラグ領域83は、メサ部81およびメサ部92において、トレンチ延伸方向に選択的に設けられる。即ち、ダイオードプラグ領域83は、メサ部81およびメサ部92において、ドット状に設けられる。ダイオードプラグ領域83は、トレンチ延伸方向において、等間隔となるように選択的に設けられてよい。
【0087】
ダイオードプラグ領域83を設けることにより、ダイオード部80におけるトレンチコンタクト部20の底部の抵抗が低下し、定常損失Vfを低下させることができる。後述するカソード領域82に第1カソード部181および第2カソード部182を設けた場合、定常損失Vfは上昇するが、第2カソード部182を有することによって上昇した定常損失Vfの値を、ダイオードプラグ領域83を追加することで低下させることにより、スイッチング損失を低減することができる。
【0088】
図2Cは、図1におけるc-c'断面の一例である。c-c'断面は、ダイオード部80において、トレンチコンタクト部20のX軸方向における幅の中央を通過するYZ面である。本例の半導体装置100は、c-c'断面において、半導体基板10、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0089】
第1カソード部181は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型の領域である。一例において、第1カソード部181は、N+型である。
【0090】
第2カソード部182は、半導体基板10の裏面23において、第1カソード部181と隣接して設けられる第2導電型の領域である。即ち、第2カソード部182は、第1カソード部181と直接接してよい。一例において、第2カソード部182は、P+型である。
【0091】
第1カソード部181は、第2カソード部182を形成するためのイオン注入工程によって、P型のドーパントがイオン注入された後にN型のドーパントで打ち返すことによって形成されてよい。反対に、第2カソード部182は、第1カソード部181を形成するためのイオン注入工程によって、N型のドーパントがイオン注入された後にP型のドーパントで打ち返すことによって形成されてよい。
【0092】
第1カソード部181および第2カソード部182は、互いに接触した境界を形成するように配置される。第1カソード部181および第2カソード部182は、任意の方向において、交互に配置されてよい。本例の第1カソード部181および第2カソード部182は、トレンチ延伸方向(例えば、Y軸方向)において交互に配列されるが、トレンチ配列方向(例えば、X軸方向)において交互に配列されてもよい。第1カソード部181および第2カソード部182は、上面視において、ストライプ状に配置されてよい。第1カソード部181および第2カソード部182の一方はドット状に形成されてもよい。
【0093】
本例のダイオード部80におけるカソード領域82は、互いに接触した境界を形成するように配置された第1カソード部181および第2カソード部182を有する。カソード領域82に第1カソード部181および第2カソード部182を設けることにより、サージ電圧が低下し、ダイオード部の逆回復時間を短くして、ダイオード損失Errを低減することができる。
【0094】
トレンチコンタクト部20の端部は、ダイオードプラグ領域83に覆われていてよい。トレンチコンタクト部20は、トレンチ延伸方向に延伸して設けられ、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30に沿ってストライプ状に配置されている。ダイオード部80に設けられるトレンチコンタクト部20は、選択的に設けられたダイオードプラグ領域の上方にドット状に設けられてよい。
【0095】
図3Aは、本例の半導体装置100におけるアノード領域19のドーピング濃度を表すグラフである。なお、図3Aから図3Dには、ダイオードプラグ領域83を含まない部分におけるドーピング濃度を表している。横軸が半導体基板10のおもて面21からの距離であり、縦軸がドーピング濃度である。また、グラフの上部に、一例として深さ0.6μmのトレンチコンタクト部20の模式図を表している。本例の半導体装置100は、ドーピング濃度のピーク位置Ppが比較例の半導体装置500よりも深い場所に位置している。
【0096】
即ち、本例の半導体装置100において、トレンチコンタクト部の底部は、ドーピング濃度のピーク位置Ppよりもおもて面21側にあってよい。ドーピング濃度のピーク位置Ppは、半導体基板10の深さ方向において、トレンチコンタクト部20の底部よりも0.5μm以上深くてよい。トレンチコンタクト部20の底部の深さ位置では、ドーピング濃度が正の傾きを有してよい。なお、本明細書において「ドーピング濃度の傾き」とは、おもて面21からの深さに対してドーピング濃度をプロットした曲線において、トレンチコンタクト部20の底部と同等の深さにおける当該曲線の接線の傾きのことであってよい。
【0097】
図3Bは、比較例の半導体装置500におけるアノード領域19のドーピング濃度を表すグラフである。横軸が半導体基板10のおもて面21からの距離、縦軸がドーピング濃度である。また、グラフの上部に、一例として深さ0.6μmのトレンチコンタクト部20の模式図を表している。図中、Pqは比較例の半導体装置500におけるドーピング濃度のピーク位置である。
【0098】
図3Cは、本例の半導体装置100と、比較例の半導体装置500とにおいて、トレンチコンタクト部20の深さを変化させた際のVfの変化率を表したグラフである。図中、白丸で表したものが比較例の半導体装置500におけるVfの変化率であり、バツ印で表したものが本例の半導体装置100におけるVfの変化率である。
【0099】
以降、図3Aから図3Cに基づいて、本例の有利な効果について説明する。
【0100】
図3Cを参照すると、比較例の半導体装置500においては、トレンチコンタクト部20の深さが深くなるにつれて、Vfの変化率が大きくなっていくのが分かる。即ち、トレンチコンタクト部の深さが深くなるにつれて、Vfが増加する。一方で、本例の半導体装置100においては、トレンチコンタクト部20の深さが一定以上深くなると、Vfの変化率が1に近づく。即ち、トレンチコンタクト部20の深さが深くなっても、Vfが増加しないという有利な効果を奏する。
【0101】
ここで、図3Aを参照すると、本例の半導体装置100においては、トレンチコンタクト部20の底部と同等の深さにおいて、ドーピング濃度の傾きが正になっていることが分かる。また、ドーピング濃度のピーク位置Ppがトレンチコンタクト部20の底部よりも深い位置に存する。
【0102】
本例においては、ドーピング濃度の傾きが4E16cm-3/μm以上である場合に、Vfの値の増加が抑制されることを見出した。なお、本例において、ドーピング濃度の傾きが4E16cm-3/μm以上となるトレンチコンタクト部20の底部の深さは、一例として0.3μm以上、0.6μm以下である。
【0103】
また、トレンチコンタクト部20の底部と同等の深さにおけるドーピング濃度の値も、Vfの変化率を決める要素である。本例においては、トレンチコンタクト部20の底部と同等の深さにおけるドーピング濃度が1E16cm-3以上、1E17cm-3以下である場合に、Vfの値の増加が抑制されやすくなる。
【0104】
一方で、図3Bを参照すると、比較例の半導体装置500においては、トレンチコンタクト部20の底部と同等の深さにおいて、ドーピング濃度の傾きが負になっていることが分かる。
【0105】
図3Dは、本例の別の実施例における、アノード領域19のドーピング濃度を表すグラフである。横軸が半導体基板10のおもて面21からの距離、縦軸がドーピング濃度である。また、グラフの上部に、一例として深さ0.6μmのトレンチコンタクト部20の模式図を表している。
【0106】
図3Dに示した実施例においては、ドーピング濃度がピークを有さず、実質的に平坦な領域である平坦部を有している。実質的に平坦な領域は、0.6μm以上、1.0μm以下の範囲において、ドーピング濃度のばらつきが10%以内であってよい。そして、当該平坦部が存在する深さの範囲に、トレンチコンタクト部20の底部が存している。当該平坦部におけるドーピング濃度は1E16cm-3以上、1E17cm-3以下であってよい。本実施例では、トレンチコンタクト部20の底部周辺において十分な量のドーピング濃度を確保することができるので、Vfの値を維持することができる。
【0107】
なお、平坦部は複数のドーピング濃度のピークで形成されてよい。例えば、アノード領域19のドーピング濃度は、複数のドーピング濃度のピークを有していてよい。
【0108】
図4は、本例の別の実施例における、半導体装置100のa-a'断面を表した図である。図4については、図2Aとの相違点について特に説明する。
【0109】
図2Aにおいては、ベース領域14の下端の深さとアノード領域19の下端の深さは同一であった。これに対して図4では、ベース領域14の下端の深さよりもアノード領域19の下端の深さの方が深くなっている。このように、アノード領域19の深さを深くすることにより、ドーピング濃度のピーク位置Ppおよびトレンチコンタクト部20の底部の位置の深さを柔軟に変更することが可能になる。
【0110】
図5は、半導体装置100の変形例の上面である。本例の半導体装置100は、ダイオード部80を備えるが、トランジスタ部70を備えていない。本例のダイオード部80は、複数のダミートレンチ部30を備えるが、ゲートトレンチ部40を備えてもよい。本例の半導体装置100は、アノード電極53を備える。ダミートレンチ部30は、アノード電位に設定されてよい。
【0111】
アノード電極53は、金属を含む材料で形成される。アノード電極53の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウムを含む合金、例えば、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。アノード電極53は、アルミニウムまたはアルミニウムを含む合金等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。
【0112】
図6は、半導体装置100の製造方法を示したフローチャートである。当該製造方法は、ドリフト領域18を形成する段階S100と、アノード領域19を形成する段階S200と、ベース領域14を形成する段階S300と、トレンチコンタクト部20を形成する段階S400とを備える。
【0113】
アノード領域19を形成する段階S200において、半導体装置100のおもて面21側からイオンを注入することにより、アノード領域19を形成する。本例におけるイオン注入の際の加速電圧は、比較例におけるイオン注入の際の加速電圧よりも高い。本例におけるイオン注入の際の加速電圧は、100KeV以上、650KeV以下であってよい。比較例よりも高い加速電圧でイオンを注入することにより、おもて面21から比較例よりも深い位置にドーピング濃度のピークを形成することができる。
【0114】
また、イオンの注入は複数回行なわれてよい。イオンの注入は、第1加速電圧と、第2加速電圧とに分けて行なわれてよい。第1加速電圧は、第2加速電圧より低くてよい。この際、比較例の1回注入で注入されていたイオンのドーズ量と、複数回注入される場合の注入されるイオンのドーズ量の総和は同一であってよい。第1加速電圧で注入されるイオンのドーズ量は、第2加速電圧で注入されるイオンのドーズ量よりも多くてよい。
【0115】
一例では、第1加速電圧でイオンを注入した場合、ドーピング濃度のピーク位置は、アニール処理前においておもて面21から0.3μm以上、1.0μm以下となるようにしてよい。また、第2加速電圧でイオンを注入した場合、ドーピング濃度のピーク位置は、アニール処理前においておもて面21から0.8μm以上、1.5μm以下となるようにしてよい。一例として、400KeVの加速電圧でイオンを注入した場合、おもて面21から0.8μmの位置に配置でき、650KeVの加速電圧でイオンを注入した場合、ドーピング濃度のピークを、おもて面21から1.3μmの位置に配置できる。
【0116】
一例では、イオンの注入は、400KeVと650KeVとの2回に分けて行なわれてよい。また、400KeVの加速電圧で注入されるイオンのドーズ量の方が、650KeVの加速電圧で注入されるイオンのドーズ量よりも多くてよい。複数回の注入が行なわれることで、図3Dに示したような平坦な領域を有するドーピング濃度プロファイルを形成することができる。
【0117】
次に、段階S300において、半導体基板10の上面にマスクを行い、追加のイオン注入を行う事で、ベース領域14を選択的に形成する。マスクは、フォトレジストなどの任意のマスクであってよい。追加のイオン注入も、比較例よりも高い加速電圧で行われてよい。これにより、トランジスタ部70の一部領域のみにベース領域14を形成することが可能である。また、アノード領域19のドーピング濃度よりもベース領域14のドーピング濃度を高くすることができる。S300におけるイオン注入も、複数回行なわれてよい。
【0118】
次に、段階S400において、マスクを取り除き、層間絶縁膜38を形成した後、トレンチコンタクト部20を形成する。トレンチコンタクト部20を形成する段階と、層間絶縁膜38を形成する段階とは、順番が入れ替わってもよい。即ち、トレンチコンタクト部20を形成した後に、層間絶縁膜38を形成してもよい。
【0119】
その後、トレンチコンタクト部20の底部にイオンを注入することで、トランジスタプラグ領域73およびダイオードプラグ領域83を形成する。注入されるイオンは、一例ではBやBFである。
【0120】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0121】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0122】
10・・・半導体基板、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・ウェル領域、18・・・ドリフト領域、19・・・アノード領域、20・・・トレンチコンタクト部、21・・・おもて面、22・・・コレクタ領域、23・・・裏面、24・・・コレクタ電極、30・・・ダミートレンチ部、31・・・延伸部分、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・接続部分、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・延伸部分、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・接続部分、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、53・・・アノード電極、55・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、70・・・トランジスタ部、71・・・メサ部、73・・・トランジスタプラグ領域、80・・・ダイオード部、81・・・メサ部、82・・・カソード領域、181・・・第1カソード部、182・・・第2カソード部、83・・・ダイオードプラグ領域、90・・・境界部、91・・・メサ部、92・・・メサ部、100・・・半導体装置
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6