(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095405
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】蛍光検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240703BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61B1/00 511
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212678
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】里村 裕明
(72)【発明者】
【氏名】保坂 智也
【テーマコード(参考)】
2G043
4C161
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043EA01
2G043HA05
2G043KA01
2G043LA02
4C161AA24
4C161CC06
4C161DD01
4C161FF46
4C161NN01
4C161NN05
4C161QQ02
4C161QQ04
4C161QQ09
4C161WW12
4C161WW13
4C161WW17
(57)【要約】
【課題】検査対象に励起光を照射するとともに検査対象から発せられる蛍光を集光するのに好適なスコープを備える蛍光検出装置を提供する。
【解決手段】蛍光検出装置100は、励起光γ
0を生成する光源34、被検体1の腹腔1a内に少なくとも一部が挿入されるスコープ10であり、光源34から出力される励起光を導光して被検体の腹腔内の組織に向けて射出する送光用光ファイバ12と、励起光の照射により組織から発せられる蛍光γを導光する少なくとも1つの受光用光ファイバ13と、を有するスコープ、スコープにより集光された蛍光を検出する検出器35を備える。スコープが、送光用光ファイバ12と独立に受光用光ファイバ13を有することで、送光用光ファイバ12の出射端面で反射される励起光を検出することなく、受光用光ファイバ13により導光される蛍光を検出することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を生成する光源と、
被検体の腹腔内に少なくとも一部が挿入されるスコープであり、前記光源から出力される前記励起光を導光して前記被検体の腹腔内の組織に向けて射出する第1光ファイバと、前記励起光の照射により前記組織から発せられる蛍光を導光する少なくとも1つの第2光ファイバと、を有するスコープと、
前記スコープにより集光された蛍光を検出する検出器と、
を備える蛍光検出装置。
【請求項2】
前記第1光ファイバは、さらにガイド光を導光して、前記励起光に重ねて射出する、請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2光ファイバは、前記第1光ファイバの周囲に配置される複数の第2光ファイバを含む、請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記スコープにより集光された蛍光を前記複数の第2光ファイバのそれぞれにより導光される蛍光ごとに検出する、請求項3に記載の蛍光検出装置。
【請求項5】
前記検出器による検出結果を解析して、前記複数の第2光ファイバの汚れを検出する解析部をさらに備える、請求項4に記載の蛍光検出装置。
【請求項6】
前記検出器による検出結果を解析して、前記蛍光の発光分布を決定する解析部をさらに備える、請求項4に記載の蛍光検出装置。
【請求項7】
前記スコープを前記光源に光接続するケーブルをさらに備える、請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項8】
前記スコープの少なくとも一部は絶縁部材を用いて形成される、請求項1に記載の蛍光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内に薬剤を投与し、生体組織に励起光を照射することにより生体組織内から薬剤が発する蛍光を受光することで生体組織内の病原を検出する方法が知られている。例えば特許文献1には、光学視管を用いて熱侵襲を受けた部位に励起光、例えば青色光を照射し、それにより発せられる緑色の自家蛍光を受光することで、白色光で照明した際には視認不可能な熱侵襲の内部領域を映し出すことができる医療用システムが開示されている。斯かる医療用システムの光学視管は、照明光を伝送するための1つのライトガイド、光学像を伝送するための複数のレンズを具備する1組のリレーレンズから構成される。
特許文献1 国際公開第2020/174666号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様においては、励起光を生成する光源と、被検体の腹腔内に少なくとも一部が挿入されるスコープであり、前記光源から出力される前記励起光を導光して前記被検体の腹腔内の組織に向けて射出する第1光ファイバと、前記励起光の照射により前記組織から発せられる蛍光を導光する少なくとも1つの第2光ファイバと、を有するスコープと、前記スコープにより集光された蛍光を検出する検出器と、を備える蛍光検出装置が提供される。
【0004】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本実施形態に係る蛍光検出装置の概略構成を示す。
【
図3】スコープ、ケーブル、及び検出器(
図1内の部分C)の接続構成を概略的に示す。
【
図6】蛍光検出装置及び腹腔鏡装置の使用状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0007】
図1に、本実施形態に係る蛍光検出装置100の概略構成を示す。蛍光検出装置100は、検査対象に励起光γ
0を照射するとともに検査対象から発せられる蛍光γを集光するのに好適なスコープ10を備える装置である。ここで、薬剤2として、例えばインドシアニングリーン(ICG)を採用することができる。ICGは、例えば近赤外光(波長約790nm)を照射すると蛍光(波長820~840nm)を発する薬剤であり、生体の窓の波長領域(波長650~900nm)で利用できるため、例えば肝機能検査、循環機能検査、乳癌等の疾患におけるセンチネルリンパ節の同定、血管及び組織の血流評価等の生体検査に好適である。特に、蛍光検出装置100は、腹腔鏡装置200と併用可能な装置であり、スコープ10、ケーブル20、及び装置本体30を備える。
【0008】
図2に、スコープ10の断面構造の一例を示す。スコープ10は、被検体1の腹腔1a内に少なくとも一部が挿入されて、光源34から出力される励起光γ
0(及びガイド光γ
g)を導光して腹腔1a内の組織に照射するとともに、励起光γ
0の照射により組織内の薬剤2が発する蛍光γを集光する光学視管である。スコープ10は、チューブ11,11a、送光用光ファイバ12、受光用光ファイバ13、及びコネクタ14を含む。
【0009】
チューブ11,11aは、送光用光ファイバ12及び受光用光ファイバ13の先端を長手軸の一端面(すなわち、先端面)上に位置合わせして、それらを拘束する管状部材である。チューブ11は、例えば内径600μm及び軸長300mmを有し、完全防水及びオートクレーブ滅菌可能なSUS管を採用してよい。チューブ11aは、例えば内径200μm及び軸長300mmを有するSUS管を採用してよい。チューブ11,11aは、チューブ11aがチューブ11内に配置される二重管を構成し、チューブ11a内に送光用光ファイバ12が拘束され、チューブ11aとチューブ11との間に少なくとも1つの受光用光ファイバ13が拘束される。チューブ11,11aによる光ファイバの拘束についてはさらに後述する。
【0010】
送光用光ファイバ12は、第1光ファイバの一例であり、光源34から出力される励起光γ0を導光し、被検体1の腹腔1a内の組織に向けて射出するための光学部材である。なお、近赤外波長域の励起光γ0の照射箇所を視認できるように、さらに可視光波長域のガイド光γgを導光して、励起光γ0に重ねて射出してもよい。送光用光ファイバ12は、一例として直径200μmの光ファイバを採用してよい。また、石英ガラス、他成分ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲナイドガラス、プラスチック等の素材から形成された光ファイバであってよい。また、マルチモードファイバ(MMF)、シングルモードファイバ(SMF)、ダブルクラッドファイバ(DCF)、フォトニック結晶ファイバ(PCF)等の光ファイバであってよい。
【0011】
受光用光ファイバ13は、第2光ファイバの一例であり、励起光γ0の照射により組織内の薬剤2から発せられる蛍光を集光して、検出器35に送るための光学部材である。受光用光ファイバ13は、1つに限らず複数であってよく、特に送光用光ファイバ12の周囲に配置される複数の光ファイバ(それぞれ受光用光ファイバ13a~13gと表す)を含んでよい。本実施形態では、一例として7とする。受光用光ファイバ13は、一例として直径200μmの光ファイバを採用してよい。その素材及び構造は、送光用光ファイバ12と同様である。
【0012】
スコープ10の長手軸に直交する断面上で、送光用光ファイバ12は、チューブ11aにより周囲が被覆されてその内部に拘束され、複数の受光用光ファイバ13a~13gは、チューブ11,11aの間に互いに当接又はわずかな離間距離を介して周方向に配列されて拘束される。受光用光ファイバ13a~13g及びチューブ11,11aのサイズを上記のとおり選んだことで、特にチューブ11の内径を送光用光ファイバ12及び受光用光ファイバ13a~13gの直径の約3倍に選んだことで、送光用光ファイバ12を中央に配置し、7つの受光用光ファイバ13a~13gをチューブ11,11aの間の空間に稠密に配置することができる。なお、チューブ11,11aの間の空間に樹脂等の部材を充填して受光用光ファイバ13a~13gを拘束してもよい。このように送光用光ファイバ12及び複数の受光用光ファイバ13a~13gを拘束したチューブ11,11aの先端が被検体1の腹腔1a内に差し込まれ、基端がコネクタ14に固定される。
【0013】
コネクタ14は、チューブ11の基端に設けられ、これをケーブル20の把持部24に着脱可能に固定するための部材である。
【0014】
上述の構成により、スコープ10は、その長手軸の先端を被検体1の腹腔1a内に挿入して先端から励起光γ0を出力し、先端から励起光γ0の照射により組織内の薬剤2が発する蛍光γを集光することができる。ここで、スコープ10は、励起光γ0に重畳して可視光波長域のガイド光γgを出力して、腹腔1a内の組織に照射してもよい。それにより、スコープ10の先端を腹腔1a内の関心箇所に接近させてその関心箇所のみを検査することができる。
【0015】
また、スコープ10が、光源34から出力される励起光γ0を導光して腹腔1a内の組織に向けて射出する送光用光ファイバ12と独立に、励起光γ0の照射により組織から発せられる蛍光γを集光して検出器35に導光する受光用光ファイバ13を有することで、送光用光ファイバ12の射出端面で反射される励起光γ0を受光することなく、受光用光ファイバ13により集光される蛍光γを検出器35で検出することが可能となる。
【0016】
ケーブル20は、スコープ10を装置本体30に接続して、送光用光ファイバ12及び受光用光ファイバ13(13a~13g)をそれぞれ光源34及び検出器35に光接続するための器具である。ケーブル20は、フレキシブルチューブ21、送光用光ファイバ22及び受光用光ファイバ23、及び把持部24を含む。
【0017】
フレキシブルチューブ21は、送光用光ファイバ22及び受光用光ファイバ23を束ねてそれらを内部に保持する可撓性の管状部材である。フレキシブルチューブ21は、例えば直径5mm及び長さ300cmを有するシース付SUS管であってよい。フレキシブルチューブ21の一端は、スコープ10のコネクタ14に接続され、感電防止のために樹脂(例えば、ABS樹脂)のような絶縁部材を用いて形成される。フレキシブルチューブ21の他端は、装置本体30のコネクタ29に接続される。
【0018】
送光用光ファイバ22及び受光用光ファイバ23は、先述の送光用光ファイバ12及び受光用光ファイバ13と同様に構成される。なお、受光用光ファイバ23は、受光用光ファイバ13と同数の光ファイバ(受光用光ファイバ23a~23gと表す)を含む。
【0019】
把持部24は、ケーブル20の一端に設けられ、スコープ10を操作するユーザがこれを把持してスコープ10を操作するための部材である。把持部24の外表面を形成する手持ち部分は、ポリエチレンのような汎用プラスチック、ポリカーボネート或いはポリエーテルエーテルケトン(所謂、エンジニアリング・プラスチック)のような熱可塑性樹脂、フェノールのような熱硬化性樹脂等の絶縁部材を用いて形成してよい。スコープ10のコネクタ14が着脱可能に把持部24に固定される。
【0020】
なお、把持部24の側面には、防水性のモメンタリスイッチ(SW)24aが設けられている。ユーザがSW24aを手指で押す及び離すことで、励起光γ0の生成の開始及び停止を操作することができる。
【0021】
上述の構成により、ケーブル20の把持部24にスコープ10のコネクタ14を適切に接続し、ケーブル20の基端を装置本体30のコネクタ29に適切に接続すると、送光用光ファイバ22及び受光用光ファイバ23(23a~23g)が、それぞれスコープ10の送光用光ファイバ12及び受光用光ファイバ13(13a~13g)と同軸上に位置決めされるとともに、それぞれ装置本体30の光ファイバ32,33(33a~33g)と同軸上に位置決めされる。それにより、スコープ10の送光用光ファイバ12が光源34(励起光源34a及びガイド光源34b)に光学的に接続(光接続ともいう)され、受光用光ファイバ13が検出器35に光接続される。
【0022】
装置本体30は、筐体31内に各種機能装置を備えるユニットであり、光源34、検出器35、制御演算装置36、記録装置37、入出力装置38、及び通信装置39を含む。なお、これらの機能装置は、互いに通信線を介して通信可能に接続されている。
【0023】
なお、筐体31は、光源34等の機能装置を収容する。前面には、フレキシブルチューブ21が接続されるコネクタ29が樹脂(例えば、ポリカーボネート)のような絶縁部材を介して固定されている。背面には電源コネクタ(不図示)が固定され、これを介して商用電源(AC100V)から電力が各機能装置に送られる。なお、筐体31は、フレームグランドとして接地される。背面には、さらにユニバーサルシリアルバス(USB)、デジタルビジュアルインタフェース(DVI)-D、DVI―I等のコネクタが設けられている。
【0024】
また、筐体31の前面にエアーを内部に取り込むための吸気口が設けられ、背面にはエアーを送り出すための排気口が設けられ、ファン(不図示)を稼働することで前面から背面に向かってエアーが筐体内を流れることで各機能装置が冷却される。また、筐体31の前面に、動作中であること、異常が発生したこと等を光で知らせるランプ(不図示)、音声で知らせるスピーカ(不図示)が設けられている。その他、筐体31の前面にレーザkeyスイッチ、レーザ緊急停止ボタン、及び起動スイッチ(それぞれ不図示)、筐体31の背面にACインレットのスイッチ、レーザインターロック、及び等電位化端子(それぞれ不図示)が設けられている。
【0025】
光源34は、励起光γ0等を生成する装置であり、励起光源34a及びガイド光源34bを有する。励起光源34aは、励起光γ0として近赤外光(例えば、波長785nm)を出力するレーザダイオード(例えば、40mW可変)を採用する。ガイド光源34bは、ガイド光γgとして可視光(可視光波長域の光であり、例えば波長520nmの緑色光)を出力するレーザダイオード(例えば、10mW可変)を採用する。ここで、近赤外光は視認困難であるため、励起光γ0の照射箇所を視認できるように光源34は可視光を含むガイド光γgを励起光γ0に重畳して出力する。光源34は、励起光γ0の強度、励起光源34aの温度、電源の異常等を検出し、それらの検出結果を制御演算装置36に送信する。
【0026】
励起光源34a及びガイド光源34bは、励起光γ0及びガイド光γgをそれぞれ光ファイバ32a,32bに送り出し、光ファイバカプラ(不図示)を介してそれらを合波し、光ファイバ32を介してそれらをケーブル20の送光用光ファイバ22に送り込む。なお、励起光源34a及びガイド光源34bは、制御演算装置36から送信される駆動信号に従って励起光γ0及びガイド光γgを生成する。ここで、励起光源34aは、励起光γ0を周期的に出力(オンオフ)してもよい。
【0027】
検出器35は、蛍光γを検出する装置である。検出器35は、スコープ10(受光用光ファイバ13a~13g)により集光された蛍光γをケーブル20の受光用光ファイバ23(23a~23g)及び装置本体30の光ファイバ33(33a~33g)を介して受光する。本実施形態においては特に、検出器35は、複数の受光用光ファイバ13a~13gのそれぞれにより導光される蛍光ごとに検出する。検出器35は、複数組の光学フィルタ(不図示)及び検出器35a~35hを有する。
【0028】
光学フィルタは、腹腔1a内の組織に励起光γ0を照射した際に組織の表面で反射して蛍光γとともにスコープ10により集光される励起光γ0をカットするバンドパスフィルタである。光学フィルタは、検出器35a~35hのそれぞれの前段に配置される。
【0029】
検出器35a~35gは、蛍光γの強度を測定する光センサであり、検出器35hは、蛍光γをスペクトル分解して波長(或いは周波数)ごとに蛍光強度を測定する分光器である。本実施形態では、検出器35a~35gの数は複数の受光用光ファイバ13a~13gと同数である。光センサとして、例えばフォトダイオードを採用することができる。分光器は、例えば感度波長範囲500~1100nm及び波長分解能2.5~3.5nmを有する。
【0030】
図3に、
図1内の部分Cに位置するスコープ10、ケーブル20、及び検出器35の接続構成を概略的に示す。スコープ10がケーブル20を介して装置本体30に接続されると、スコープ10の受光用光ファイバ13a~13gが、それぞれ、ケーブル20の受光用光ファイバ23a~23g及び装置本体30内の光ファイバ33a~33gを介して、検出器35a~35gに光接続される。それにより、受光用光ファイバ13a~13gにより集光された蛍光γがそれぞれ検出器35a~35gに導光され、それぞれの強度が独立に検出される。さらに、光ファイバ33a~33gにより導光される蛍光γは光ファイバカプラ(不図示)を介して分波され、光ファイバ33hにより検出器35hに導光されてスペクトル分光される。検出器35a~35hによる蛍光γの検出結果は、制御演算装置36に送信される。
【0031】
検出器35(35a~35h)は、制御演算装置36から送信される駆動信号に従って、すなわち励起光γ0の周期的なオンオフに応じて照射中(オン信号時)及び非照射中(オフ信号時)の検出データを交互に取得する。検出結果は、制御演算装置36に送信される。制御演算装置36により、オン信号時及びオフ信号時の検出データをそれぞれ積算し、積算されたそれらの検出データの差分を算出することにより、外乱光に由来するノイズをキャンセルすることができる。
【0032】
制御演算装置36は、各機能装置を制御するとともに検出器35による蛍光γの検出結果を用いて蛍光状態を解析するコンピュータデバイスであり、中央処理装置(CPU)を有する。CPUは、専用プログラムを実行することにより、制御演算装置36に制御演算機能を発現させる。制御演算装置36の機能構成については後述する。なお、専用プログラムは、例えば、ROM(不図示)に記憶され、それをCPUが読み出す、或いはCD-ROM等の記憶媒体に記憶され、それをCPUが読み取り装置(不図示)を用いて読み出してRAMに展開することで起動される。
【0033】
記録装置37は、検出器35による蛍光γの検出結果及び制御演算装置36による蛍光状態の解析結果等の各種データを非一時的記憶媒体(不図示)に記録するデバイスである。記録装置37は、さらに、腹腔鏡装置200により撮影される被検体1の腹腔1a内の撮影画像(すなわち、腹腔鏡画像)を記録してもよい。非一時的記憶媒体は、例えば、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ等の有形な記憶媒体を含む。記録装置37は、装置本体30内に組み込まれているとするが、これに限らず、例えばSCSI、SATA等のインタフェース或いはネットワークを介して通信可能に装置本体30外に配置されてもよい。
【0034】
入出力装置38は、ユーザ入力を受信して制御演算装置36に送るとともに、検出器35による蛍光γの検出結果、制御演算装置36による蛍光状態の解析結果等の各種データをユーザに向けて出力するためのデバイスである。入出力装置38は、筐体31の前面に設けられた入力パネルから又は筐体31の背面のインタフェースを介してキーボード、マウス、タッチパネル(いずれも不図示)等の外部デバイスから、ユーザ入力を受信することができる。また、入出力装置38は、各種データを筐体31の背面のインタフェースを介して外部のモニタ装置40に送信し、その表示画面41に表示させることができる。
【0035】
通信装置39は、外部装置、特に腹腔鏡装置200と通信するためのデバイスであり、USB、DVI-D、DVI―I等のケーブルを介して腹腔鏡装置200に接続され、後述する腹腔鏡画像等の各種データを受信することができる。受信した各種データは、入出力装置38、これを介して制御演算装置36等に送信される。
【0036】
図4に、制御演算装置36が専用プログラムを実行することにより発現する機能構成を示す。制御演算装置36は、制御部36a、解析部36b、表示部36c、及び記録部36dを含む。
【0037】
制御部36aは、光源34等の機能装置の動作を制御するユニットである。制御部36aは、SW24aを介したユーザ入力に応答して駆動信号を生成し、光源34及び検出器35に送信する。ここで、駆動信号は、周期的にオン信号及びオフ信号を繰り返すように生成される。それにより、光源34(特に、励起光源34a)は励起光γ0を周期的に生成(オンオフ)し、検出器35は励起光γ0の照射中(オン信号時)及び非照射中(オフ信号時)の検出データを交互に取得することで、外乱光に由来するノイズをキャンセルすることができる。
【0038】
なお、制御部36aは、ユーザが後述する腹腔鏡画像を介して励起光γ0が照射されていることが分かるように、励起光γ0が照射されているときと照射されていないときとでガイド光γgの色、強度、明るさ、広がり、ビーム形状、及び発光パターンのいずれか1つを含む発光パラメータを変更してよい。例えば、励起光γ0が照射されると、ガイド光γgの色を緑からより明るい色(例えば、オレンジ色)に、強度をより強く、明るさをより明るく、広がりを狭く、ビーム形状を丸から×又は+に、発光パターンを一定間隔に点滅するパターンに変更してよい。
【0039】
解析部36bは、検出器35による蛍光γの検出結果を処理して組織の蛍光状態を解析するユニットである。ここで、蛍光状態は、蛍光γのスペクトル及び強度、並びに蛍光γのスペクトル及び強度の時間変化のうちの少なくとも1つを含む。なお、薬剤2は、例えば血液と結合して異なる蛍光スペクトルを呈することが知られており、蛍光γを発する際の場所或いは薬剤2が位置する組織に応じて蛍光スペクトルの形状が変わることが予想される。そこで、解析部36bは、蛍光γのスペクトル形状を解析して蛍光γを発する腹腔1a内の場所或いは組織、すなわち薬剤2が位置する腹腔1a内の場所或いは組織を特定してもよい。
【0040】
解析部36bは、検出器35a~35gによる蛍光γの検出結果(すなわち、蛍光強度)を処理して、受光用光ファイバ13a~13gの汚れを検出する。ここで、解析部36bは、検出器35a~35gによりそれぞれ検出された蛍光強度I1~I7の中から優位に小さい蛍光強度を特定する。優位に小さいか否かは、例えば、予め定められた閾値より小さいか否かにより判断することができる。また、蛍光強度I1~I7の平均からそれらの標準偏差など予め定められた閾値を超えて小さいか否かより判断することができる。解析部36bは、蛍光強度I1~I7のうちのいずれかが優位に小さいと特定すると対応する受光用光ファイバ13a~13gを特定し、表示部36cを介してモニタ装置40の表示画面41に表示する。例えば、
図5に示すように特定された受光用光ファイバ(本例では受光用光ファイバ13d)にバツのマークが表示される。それにより、ユーザは、表示された受光用光ファイバ13a~13gの先端に汚れが付着して蛍光γの集光率が低下したと判断し、スコープ10を腹腔1aから取り出して洗浄することができる。
【0041】
また、解析部36bは、検出器35a~35gによる蛍光γの検出結果(すなわち、蛍光強度)を解析して、蛍光γの発光分布を決定する。ここで、解析部36bは、検出器35a~35gによりそれぞれ検出された蛍光強度I1~I7の値を相互に比較して、最も大きい強度、2番目に大きい強度、3番目に大きい強度を特定し、その結果を表示部36cを介してモニタ装置40の表示画面41に表示する。
【0042】
図5に、蛍光強度の解析結果の表示45aの一例を示す。表示45aにおいては、中央に送光用光ファイバ12により導光される励起光γ
0の強度を表すマーク、その周囲に受光用光ファイバ13a~13gにより導光される蛍光γの強度を表す7つのマークが表示される。送光用光ファイバ12のマークは例えば色を変えることで励起光γ
0の強度を表示する。受光用光ファイバ13a~13gのマークは、解析部36bによる解析結果に従って最も蛍光強度の大きい受光用光ファイバのマークを最濃色、2番目に蛍光強度の大きい受光用光ファイバのマークを若干薄い色、3番目に蛍光強度の大きい受光用光ファイバのマークをさらに薄い色、それ以外を白色で表示する。本例では、ユーザは、受光用光ファイバ13aの蛍光強度が最も大きく、受光用光ファイバ13b、13gの蛍光強度が次いで大きく、スコープ10の先端から受光用光ファイバ13a側に蛍光γを発する源、すなわち薬剤2が位置すると判断することができ、スコープ10の先端をその方向に移動させて蛍光γをより効率良く集光することができる。
【0043】
表示部36cは、検出器35による蛍光γの検出結果及び解析部36bによる蛍光状態の解析結果、検出条件等の各種情報をモニタ装置40の表示画面41に表示する表示制御を行う。また、表示部36cは、被検体1の腹腔1a内を撮影する腹腔鏡装置200から被検体1の腹腔1a内の撮影画像(腹腔鏡画像とも呼ぶ)を取得し、腹腔鏡画像とともに各種情報を表示する表示制御も行う。各種情報の画面表示についてはさらに後述する。
【0044】
記録部36dは、検出器35による蛍光γの検出結果及び解析部36bによる蛍光状態の解析結果、検出条件等の各種情報を、記録装置37を用いて記録するユニットである。また、記録部36dは、記録装置37に記録した各種データを読み出し、解析部36b等に送信する。
【0045】
図6に、腹腔鏡装置200と併用した蛍光検出装置100の使用状態を示す。腹腔鏡装置200は、本実施形態に係る蛍光検出装置100とは独立の装置であり、スコープ110、ケーブル120,121、及び装置本体130を備える。
【0046】
スコープ110は、被検体1の腹腔1a内に少なくとも一部が挿入されて、照明光Wを射出して腹腔1a内を照明するとともに、反射光を集光する光学視管である。スコープ110は、チューブ111、送光用光ファイバ及び受光用光ファイバ(不図示)、及びコネクタ114を含む。
【0047】
チューブ111は、送光用光ファイバ及び受光用光ファイバの先端を長手軸の一端面(すなわち、先端面)上に位置合わせして、それらを内部に支持する管状部材である。チューブ111の先端が被検体1の腹腔1a内に差し込まれ、基端がコネクタ114に固定される。
【0048】
送光用光ファイバ及び受光用光ファイバは、先述の送光用光ファイバ12及び受光用光ファイバ13と同様に構成される。送光用光ファイバは、光源131から出力される照明光(白色光)Wを腹腔1a内に送り出し、受光用光ファイバは、腹腔1a内から反射光を集光してカメラ132に送る。
【0049】
コネクタ114は、スコープ110の基端を支持する部材であり、ケーブル120,121の一端が着脱可能に固定される。コネクタ114にケーブル120を接続することにより、スコープ110内の送光用光ファイバが光源131に光接続され、コネクタ14にケーブル121を接続することにより、スコープ110内の受光用光ファイバがカメラ132に光接続される。
【0050】
ケーブル120,121は、スコープ110を装置本体130に接続して、スコープ110の送光用光ファイバ及び受光用光ファイバをそれぞれ光源131及びカメラ132に光接続するための器具である。ケーブル120,121は、フレキシブルであり、それぞれ、光源131から出力される照明光Wをスコープ110の送光用光ファイバに送り、スコープ110の受光用光ファイバに集光される反射光をカメラ132に送る。
【0051】
装置本体130は、筐体130a内に各種機能装置を備えるユニットであり、光源131、カメラ132、及び通信装置133を含む。なお、これらの機能装置は、互いに通信線を介して通信可能に接続されている。
【0052】
なお、筐体130aは、光源131等の機能装置を収容する。前面には、ケーブル120,121が接続されるコネクタが固定されている。背面には電源コネクタ(不図示)が固定され、これを介して商用電源(AC100V)から電力が各機能装置に送られる。背面には、さらにUSB、DVI-D、DVI―I等のコネクタが設けられている。
【0053】
光源131は、照明光Wを生成する装置であり、例えば白色光を出力するLEDを採用することができる。照明光Wは、ケーブル120を介してスコープ110に送られる。
【0054】
カメラ132は、腹腔1a内を撮影する装置であり、例えばCCDカメラを採用することができる。カメラ132は、スコープ110により集光された反射光をケーブル121を介して受光する。なお、カメラ132の前段に、励起光γ0及び蛍光γの波長域を含む近赤外光をカットする光学フィルタ(バンドパスフィルタ)を配置してもよい。得られた腹腔鏡画像は、通信装置133に送信される。
【0055】
通信装置133は、蛍光検出装置100と通信するためのデバイスであり、USB、DVI-D、DVI―I等のケーブルを介して蛍光検出装置100に接続され、腹腔鏡画像等の各種データを送信することができる。
【0056】
DVI-Dケーブル(不図示)等を用いて腹腔鏡装置200及び蛍光検出装置100を接続する。また、蛍光検出装置100にモニタ装置40を接続する。それにより、腹腔鏡装置200(カメラ132)で撮影された腹腔1a内の映像(すなわち、腹腔鏡画像)が蛍光検出装置100に送信され、蛍光検出装置100において処理された蛍光状態の解析結果等とともにモニタ装置40の表示画面41に表示することができる。
【0057】
上述の構成の腹腔鏡装置200及び蛍光検出装置100において、ユーザが、腹腔鏡装置200のスコープ110の長手軸の先端及び蛍光検出装置100のスコープ10の長手軸の先端をそれぞれ被検体1の腹腔1a内に挿入する。ここで、被検体1の腹部の外皮に円筒状のホルダを嵌め込み、それを介してスコープ110,10を腹腔1a内に挿入してもよい。次いで、ユーザが、腹腔鏡装置200の光源131を稼働して照明光Wを生成し、ケーブル120を介してスコープ110に送る。それにより、スコープ110の先端から照明光Wが射出されて腹腔1a内が照明され、これと同時にスコープ110により腹腔1a内からの反射光が集光され、ケーブル121を介してカメラ132に送られる。カメラ132は、反射光を受光することで腹腔1a内を撮影し、その映像は通信装置133により蛍光検出装置100に逐次送信され、蛍光検出装置100の通信装置39により受信され、入出力装置38により処理されてモニタ装置40の表示画面41上に逐次表示される。
【0058】
図7に、モニタ装置40の画面表示の一例を示す。モニタ装置40の表示画面41は、左に腹腔鏡画像を表示するエリア42、中央上に励起光γ
0が照射されていることを表示するエリア44、中央右に蛍光スペクトルのピーク値(蛍光強度)を表示するエリア43、右に蛍光スペクトルを表示するエリア45、下に検出条件等を表示するエリア47が配置されている。
【0059】
エリア42には、表示部36cにより、腹腔鏡装置200から送信された被検体1の腹腔1a内の腹腔鏡画像が表示される。ここで、スコープ10の先端からガイド光γgが射出されることで、ユーザは、表示画面41より、励起光γ0が照射されるスポットSpの位置及び拡がり、さらにスポットSpの形状より励起光γ0が照射される方向を確認することができる。
【0060】
中央上のエリア44には、表示部36cにより、一例として、励起光γ0が照射されていることを示す「レーザ照射中」が表示される。これにより、表示画面41より、スコープ10から励起光γ0がガイド光γgに重ねて射出され、腹腔1a内の組織に励起光γ0が照射されていることがわかる。なお、表示部36cは、例えば、励起光γ0の強度が閾値を超えた場合に、エリア44の表示「レーザ照射中」を赤色で表示する又は表示を点滅させてユーザに通知してもよい。また、例えば励起光γ0の強度に応じて大きくなる又は周期が速くなるビープ音を発することで、ユーザに音声通知してもよい。
【0061】
エリア43には、表示部36cにより、蛍光γの検出結果、特に蛍光スペクトルにおけるピーク強度(蛍光強度とも呼ぶ)が表示される。また、蛍光強度の時間変化がリアルタイムで表示される。一例として、蛍光強度がカラーバーで表示される、すなわち蛍光強度が大きくなるとバーが下から上に、青から赤に色調(グラデーション)を変えて延びる。
【0062】
エリア45には、表示部36cにより、蛍光γの検出結果が表示される。検出結果として、蛍光γのスペクトル(波長に対する強度分布であり、単に蛍光スペクトルともよぶ)及びそのピーク位置が表示される。また、エリア45の上側に、先述の蛍光強度の解析結果の表示45a(
図5参照)が含まれる。さらに、上のエリア46に、蛍光スペクトルのピーク位置の波長(ピーク波長ともいう)及び強度(ピーク強度ともいう)が表示される。また、蛍光スペクトル及びピーク強度の時間変化がリアルタイムで表示される。
【0063】
エリア47には、表示部36cにより、検出条件等が表示される。検出条件は、一例として、被検体1を特定するID番号、蛍光γを検出するのに使用しているスコープ10のID番号、励起光γ0を照射している照射時間(照射タイマとも呼ぶ)、励起光γ0の規格強度(光源34から受信した励起光γ0の強度でもよい)、ガイド光γgの規格強度、及び生体検査の年月日時分を含む。
【0064】
ユーザは、モニタ装置40(エリア42)に表示された腹腔鏡画像を見ながら蛍光検出装置100を操作することができる。特に、ユーザは、スコープ10の先端を腹腔1a内の関心箇所に接近させてその関心箇所に位置するスポットSp内に励起光γ0を照射し、それによりスポットSp内の組織内の薬剤2が発する蛍光γを集光して検査することができる。
【0065】
なお、表示部36cは、記録装置37により記録された腹腔鏡画像、蛍光γの検出結果、蛍光状態の解析結果、検出条件等の各種情報を記録部36dを介して読み出し、それらをモニタ装置40の表示画面41上に再生表示してもよい。
【0066】
図8に、蛍光検出方法のフローを示す。フロー開始に先立って、腹腔鏡装置200及び蛍光検出装置100は上述のとおり接続され、蛍光検出装置100にモニタ装置40が接続されているものとする。ここでは一例として、被検体1の血管に薬剤2を投与し、その薬剤2が腹腔1a内の組織を循環するのを評価する血管及び組織の血流評価における蛍光検出フローを説明する。
【0067】
ステップS2では、制御部36aは、
図7に示すように、腹腔鏡装置200により撮影された被検体1の腹腔1a内の映像(すなわち、腹腔鏡画像)を蛍光検出装置100に接続されたモニタ装置40の表示画面41(エリア42)に表示する。ここで、スコープ10の先端が向けられた腹腔1a内の位置、すなわち励起光γ
0の照射箇所(スポットSp)及び照射の向きを視認できるように、スコープ10の先端から可視光波長域のガイド光γ
gが出力されている。それにより、ユーザは、モニタ装置40に表示された腹腔鏡画像においてスポットSpの位置を確認し、スコープ10を動かしてその先端を腹腔1a内の関心箇所に向ける及び/又は近接させる。そして、ユーザは、SW24aをオンしてその関心箇所に励起光γ
0を照射する。
【0068】
ステップS3では、制御部36aは、SW24aがオンされたか否かを判断する。制御部36aは、オンされたと判断した場合、ユーザがSW24aをオンしたものとしてステップS4に進み、オンされていないと判断した場合、ユーザがSW24aをオンしていないとしてステップS3を繰り返す。なお、ステップS4に移行することなく一定時間経過した場合又はステップS3を予め定めた回数繰り返した場合、ステップS2に戻ってもよい。
【0069】
ステップS4では、制御部36aは、光源34に駆動信号を送信して励起光γ
0を生成させ、ガイド光γ
gに重畳してスコープ10の先端から射出させてスポットSp内を照射する。このとき、
図7に示すように、表示画面41のエリア44に「レーザ照射中」が表示される。励起光γ
0の照射により、スポットSp内の組織内に位置する薬剤2が励起光γ
0を吸収して蛍光γを発する。薬剤2が発する蛍光γは、スコープ10の先端から集光されて検出器35に送られる。また、光源34は、励起光γ
0を生成すると同時にその強度の検出し、その検出結果を制御演算装置36(解析部36b)に送信する。
【0070】
ステップS5では、制御部36aは、検出器35を動作させて集光した蛍光スペクトルを検出する。それにより、蛍光スペクトルが一定時間ごとに検出され、その結果が制御演算装置36(解析部36b)に逐次送信される。
【0071】
ステップS6では、解析部36bが、検出器35による蛍光γの検出結果を用いて蛍光状態を解析する。蛍光状態は、一例として、蛍光スペクトル、そのピーク波長及びピーク強度、及びそれらの時間変化を含む。
【0072】
蛍光状態として、蛍光γのスペクトル形状を含んでもよい。解析部36bは、蛍光γのスペクトル形状を解析して蛍光γを発する場所或いは組織、すなわち薬剤が位置する場所或いは組織を特定してもよい。その結果は、次のステップS7で表示画面41に表示されてよい。
【0073】
ステップS7では、表示部36cが、蛍光γの検出結果及び蛍光状態の解析結果、検出条件等の各種情報をモニタ装置40の表示画面41に表示する。それにより、
図7に示すように、表示画面41のエリア43に蛍光強度が表示されるとともに、エリア45に蛍光スペクトルが表示され、エリア46に蛍光スペクトルのピーク波長及びピーク強度が表示される。これらの表示は、蛍光スペクトルが検出される都度、更新される(つまり、リアルタイムで表示される)。また、記録部36dが、蛍光スペクトルが検出される都度、蛍光γの検出結果及び蛍光状態の解析結果、励起光γ
0の強度を含む検出条件等の各種情報を検出時刻とともに記録装置37を用いて記録する。
【0074】
ステップS7が完了すると、ステップS2に戻る。
【0075】
蛍光検出フローは、ユーザが、例えば前面パネルのスイッチをオフすることで終了する。
【0076】
本実施形態に係る蛍光検出装置100は、励起光γ0を生成する光源34、被検体1の腹腔1a内に少なくとも一部が挿入されるスコープ10であり、光源34から出力される励起光γ0を導光して被検体1の腹腔1a内の組織に向けて射出する送光用光ファイバ12と、励起光γ0の照射により組織から発せられる蛍光γを導光する少なくとも1つの受光用光ファイバ13と、を有するスコープ10、スコープ10により集光された蛍光γを検出する検出器35を備える。スコープ10が、光源34から出力される励起光γ0を導光して腹腔1a内の組織に向けて射出する送光用光ファイバ12と独立に、励起光γ0の照射により組織から発せられる蛍光γを集光して検出器35に導光する受光用光ファイバ13を有することで、送光用光ファイバ12の出射端面で反射される励起光γ0を受光することなく、受光用光ファイバ13により導光される蛍光γを検出器35で検出することが可能となる。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0078】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0079】
1…被検体(患者)、1a…腹腔、2…薬剤、10…スコープ、11,11a…チューブ、12…送光用光ファイバ、13,13a~13g…受光用光ファイバ、14…コネクタ、20…ケーブル、21…フレキシブルチューブ、22…送光用光ファイバ、23,23a~23g…受光用光ファイバ、24…把持部、24a…スイッチ、29…コネクタ、30…装置本体、31…筐体、32,32a,32b,33,33a~33h…光ファイバ、34…光源、34a…励起光源、34b…ガイド光源、35,35a~35h…検出器、36…制御演算装置、36a…制御部、36b…解析部、36c…表示部、36d…記録部、37…記録装置、38…入出力装置、39…通信装置、40…モニタ装置、41…表示画面、42~47…エリア、45a…表示、100…蛍光検出装置、110…スコープ、111…チューブ、114…コネクタ、120,121…ケーブル、130…装置本体、130a…筐体、131…光源、132…カメラ、133…通信装置、200…腹腔鏡装置、Sp…スポット、W…照明光、γ…蛍光、γ0…励起光、γg…ガイド光。