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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095421
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/39
A61K8/86
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212699
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭太
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB012
4C083AB032
4C083AB051
4C083AB232
4C083AB352
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC061
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC272
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC622
4C083AC712
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD432
4C083AD492
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB11
4C083CC05
4C083DD05
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】塗布中に伸び及びみずみずしさが向上された新規な水中油型乳化化粧料組成物を提供する。
【解決手段】水中油型乳化化粧料組成物であって、水、油分、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、脂肪酸及び/又はその塩、並びに下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型乳化化粧料組成物であって、
水、油分、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、脂肪酸及び/又はその塩、並びに下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
【化1】
前記式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、mが2以上であり、かつRの少なくとも一部が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R及びRの少なくとも一方が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ノニオン界面活性剤が、モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記高級アルコールが、炭素数16以上の直鎖状高級アルコールを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
αゲルが形成されている、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤の乳化安定性を保つ目的で、高級脂肪族アルコールと親水性界面活性剤とが形成するαゲルを用いた水中油型乳化組成物が用いられており、特に、化粧料として用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、容易に製造できるαゲルを含む水中油型乳化組成物が開示されている。より具体的には、特許文献1の水中油型乳化組成物の製造方法は、A)モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルと、(B)前記(A)とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、(C)油分と、を含む油相と、(D)水を含む水相の一部(第1水相)とを、70℃以上の温度で乳化してO/W乳化物である乳化パーツを調製し、この乳化パーツを10~35℃の残りの主水相(第2水相)と攪拌しながら混合することにより冷却することを含み、前記乳化パーツ中における水性溶媒が15質量%以下であることを特徴とする。特許文献1の製造方法によって得られたO/W乳化組成物の乳化粒子界面にはαゲルが形成されている。
【0004】
なお、一般的に、αゲルとは、水との共存下において、界面活性剤と高級アルコールとが形成する2分子膜の積層構造を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-193168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなαゲルを含む水中油型乳化化粧料組成物は、滑らかでしっとりするといった使用感はあるが、塗布中の伸びの良さやみずみずしさやといった使用感において、依然として改善する余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、塗布中に伸び及びみずみずしさが向上された新規な水中油型乳化化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0009】
〈態様1〉
水中油型乳化化粧料組成物であって、
水、油分、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、脂肪酸及び/又はその塩、並びに下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
【化1】
前記式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
〈態様2〉
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である、
態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記式(1)において、mが2以上であり、かつRの少なくとも一部が、メチル基である、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様5〉
前記式(1)において、R及びRの少なくとも一方が、メチル基である、態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
前記ノニオン界面活性剤が、モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルを含む、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
前記高級アルコールが、炭素数16以上の直鎖状高級アルコールを含む、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様8〉
αゲルが形成されている、態様1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布中に伸び及びみずみずしさが向上された新規な水中油型乳化化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
《水中油型乳化化粧料組成物》
本発明の水中油型乳化化粧料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、
水、油分、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、脂肪酸及び/又はその塩、並びに下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
【化3】
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物
である。
【0013】
本発明の組成物は、従来よりも塗布中に伸び及びみずみずしさが向上されている。
【0014】
理論に限定されるものではないが、これは、主に、本発明のポリマーの特性、すなわち式(1)で示す特有の構造、特定の範囲の数平均分子量(10,000以下)、及び特定の範囲のIOB(Inorganic Organic Balance)値(0.4~1.8)に由来するものと推測する。
【0015】
また、特定の構造をもつ本発明ポリマーは、両親媒性であり、水相に溶解する傾向があるものの、疎水的な性質も有するため、これを含む本発明の組成物は、親油性である肌に触れたときに、αゲル乳化粒子と肌とのなじみを促進し、塗布時の伸びも改善されると考えられる。また、特定の構造をもつ本発明ポリマーとαゲル乳化粒子との何らかの相互作用によって、本発明の組成物全体のみずみずしさを向上させることができると考えられる。
【0016】
また、本発明の組成物において、αゲルの構造中に脂肪酸及び/又はその塩が組み込まれることができるため、本発明の組成物は、通常のノニオン乳化組成物の場合に比べて、コク感があって、しっとりの使用感も得られると考えられる。よって、本発明の組成物は、水中油型αゲル乳化化粧料組成物であることができる。
【0017】
〈水〉
本発明の組成物が水中油型であるため、水(又は水相)は連続相である。本発明の組成物に用いられる水として、特に制限はなく、例えば、化粧料、及び医薬部外品において使用される水であってよい。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0018】
本発明の組成物において、水の含有量は特に限定されず、組成物全体に対して、例えば30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、また95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0019】
〈油分〉
本発明の組成物は、油分を含む。油分としては、特に限定されず、通常、化粧品、医薬品等に用いられる油分であれば何れも用いることができる。
【0020】
固形油分としては、一般に化粧料や皮膚外用剤に用いられる室温(25℃)において固体の油分が挙げられる。具体的に示すとすれば、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化脂、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂;ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ルナセラ、オゾケライト等の炭化水素系ワックス;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)等の脂肪酸グリセリルエーテル;アセトグリセライド、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド等の脂肪酸グリセリド等が挙げられる。これらの固形油分は、それぞれ単独ないしは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0021】
また、液状油分としては、一般に化粧料や皮膚外用剤に用いられる室温において液体の油分が挙げられる。具体的に示すとすれば、例えば、アボカド油、月見草油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の液体油脂;オクタン酸セチル、セチル2-エチルヘキサノエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エチルラウレート、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、アセトグリセライド、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリカプリリン、トリオクタン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等のエステル油;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、ポリブテン、水添ポリブテン、水添ポリデセン等の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン(「ジメチコン」とも称する)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の各種変性ポリシロキサン等のシリコーン油が挙げられる。また、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、及び4,4-ジアリールブタジエン誘導体等の紫外線吸収剤として使用できる油分も液体油分の例として挙げられるが、これらに限定されない。これらの液状油分は、それぞれ単独ないしは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0022】
なお、本発明の組成物に含まれる脂肪酸類は、含有量の計算関係で、ここでいう「油分」に分類されず、後述する「脂肪酸及び/又はその塩」の項目で説明する。
【0023】
本発明の組成物において、油分の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、例えば1.0質量%以上、5.0質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってよく、また、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0024】
〈ノニオン界面活性剤〉
本発明の組成物は、ノニオン界面活性剤を含む。
【0025】
本発明において、ノニオン界面活性剤は、後述する高級アルコール等と共に、水相中にαゲルを形成し得るものであることが好ましく、特に限定されず、例えば、モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルを含んでよい。
【0026】
モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステル(「POE(0-60)グリセリルモノ分岐脂肪酸エステル」ともいう)は、オキシエチレン基の平均付加モル数が0~60であるポリオキシエチレングリセリルエーテルの分岐脂肪酸モノエステル体であり、分岐脂肪酸としては、炭素数が16~24、好ましくは炭素数16~20の飽和分岐脂肪酸が挙げられる。なお、分岐の位置は特に制限されない。POEは、ポリオキシエチレン基を意味し、その平均付加モル数は0~60、好ましくは5~60である。本発明の組成物において、モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルを一種以上用いることができる。
【0027】
好適なモノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルの一例としては、例えば、下記一般式(I)のものが挙げられる:
【化4】
【0028】
式(I)において、Rは炭素数が16~24、好ましくは炭素数16~20の飽和分岐脂肪酸からOH基を除いた残基である。a、b及びcは、それぞれ0又は正の整数であり、a+b+c=0~60、好ましくは5~60である。
【0029】
モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルは公知の方法で容易に合成可能であるが、ノニオン界面活性剤として市販されているものを用いれば簡便であり、例えば、EAMALEX GWIS-100シリーズ、日本エマルジョン(株)等が挙げられる。
【0030】
また、モノ分岐鎖脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルとしては親水性であるものが好ましく、特にHLB値6以上のものが好ましい。なお、本発明においては、モノ分岐脂肪酸POE(0-60)グリセリンエステルとともに、モノステアリン酸POEグリセリンエステル等の、直鎖脂肪酸型ノニオン界面活性剤を組み合わせて使用することができる。また、本発明において、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値は、グリフィン法(すなわち、HLB値=グリセリン部の分子量×20/総分子量)によって定義することができる。
【0031】
本発明の組成物において、ノニオン界面活性剤の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.2質量%以上、1.4質量%以上、1.6質量%以上、1.8質量%以上、2.0質量%以上、2.2質量%以上、又は2.4質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0032】
〈高級アルコール〉
本発明の組成物は、高級アルコールを含む。高級アルコールとは、炭素数6以上の一価アルコールの総称である。本発明において、高級アルコールは、室温(25℃)で固形のアルコールであってよい。また、高級アルコールは、本発明の組成物において、乳化を安定感させ、かつ/又は、本発明の組成物にコク感を付与することができる。
【0033】
本発明おいて、高級アルコールとしては、ノニオン界面活性剤とαゲル構造を形成できるものであることが好ましく、例えば、直鎖状高級アルコール、分岐状高級アルコール、又はそれらの混合物を用いてよい。また、本発明において、高級アルコールは、炭素数16以上の直鎖状高級アルコールを含むことが好ましい。なお、高級アルコールの炭素数の上限値は、特に限定されず、例えば、30以下、28以下、又は24以下であってよい。また、高級アルコールとして、飽和のものであってもよく、不飽和のものであってもよいが、飽和のものが好ましい。
【0034】
より具体的には、高級アルコールとして、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、本発明の組成物では、αゲルの形成の上では、バチルアルコール等を添加することが好ましい。すなわち、本発明の組成物では、ベヘニルアルコールとバチルアルコールとの組み合わせを添加することが好ましい。
【0035】
本発明の組成物において、高級アルコールの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.0質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
【0036】
〈脂肪酸及びその塩〉
本発明の組成物は、脂肪酸及び/又はその塩を含む。脂肪酸及び/又はその塩は、上述したノニオン界面活性剤と高級アルコールとが水相中で形成しているαゲル構造中に組み込むことができる。言い換えれば、本発明の組成物において、脂肪酸及び/又はその塩は、ノニオン界面活性剤と高級アルコールと共にαゲル構造を形成することができる。
【0037】
よって、本発明の組成物に用いられる脂肪酸として、αゲル構造を形成できるものが好ましく、例えば、炭素数12以上、14以上又は16以上の高級脂肪酸であることが好ましい。また、本発明の組成物に用いられる脂肪酸の炭素数の上限は特に限定されず、例えば24以下、又は22以下であってよい。また、これらの高級脂肪酸は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。
【0038】
より具体的には、本発明の組成物に用いられる脂肪酸として、例えば、イソステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明において、脂肪酸塩としては、特にアルカリ金属塩、例えばカリウム塩又はナトリウム塩を用いることができる。なお、脂肪酸塩は、脂肪酸石鹸とも称する。
【0040】
より具体的には、脂肪酸塩(脂肪酸石鹸)は、例えば、イソステアリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、ベヘン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、ラウリン酸モノエタノールアミン、ミリスチン酸モノエタノールアミン、パルミチン酸モノエタノールアミン、及びステアリン酸モノエタノールアミン等からなる群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これらに限定されない。
【0041】
また、本発明の組成物において、脂肪酸塩は、脂肪酸塩の脂肪酸部分の基となる脂肪酸と中和剤(アルカリ剤)を別個に添加して系内に共存させ、当該アルカリ剤による脂肪酸の鹸化により生成されてよい。ここで、アルカリ剤としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、塩基性アミノ酸、ほう砂、アンモニア、タウリン塩、n-メチルタウリン塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の組成物において、脂肪酸及び/又はその塩の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。なお、本発明において、「脂肪酸及び/又はその塩の含有量」とは、脂肪酸が単独で含まれる場合には、「脂肪酸の含有量」、脂肪酸塩が単独で含まれる場合には「脂肪酸塩の含有量」、脂肪酸とその塩との両方が含まれる場合には、「脂肪酸及び脂肪酸塩の含有量の合計」を意味する。なお、脂肪酸塩として、脂肪酸塩の脂肪酸部分の基となる脂肪酸と中和剤を別個に添加して組成物を調製する場合には、当量で反応させた場合には得られた脂肪酸塩の量を「脂肪酸及び/又はその塩の含有量」として計算し、脂肪酸塩の脂肪酸部分の基となる脂肪酸の残量がある場合には、その残量と得られた脂肪酸塩の量との合計を「脂肪酸及び/又はその塩の含有量」として計算する。
【0043】
また、本発明の組成物において、脂肪酸塩が含まれる場合には、脂肪酸塩をそのまま添加してもよく、脂肪酸塩の脂肪酸部分の基となる脂肪酸と中和剤(アルカリ剤)を別個に添加してもよいが、後者の方が好ましい。また、後者の場合には、添加する脂肪酸の量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また、5.0質量%以下、4.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。なお、アルカリ剤の添加量は、特に限定されず、添加される脂肪酸の量に合わせて適宜調整してよい。
【0044】
本発明の組成物において、脂肪酸及び/又はその塩の含有量と、ノニオン界面活性剤の含有量の合計を100質量部とする場合には、高級アルコールの含有量は、特に限定されず、例えば、1.0質量部以上、5.0質量部以上、又は10質量部以上であってよく、また、500質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
【0045】
また、本発明の組成物において、油分の含有量と、ノニオン界面活性剤の含有量、高級アルコールの含有量、並びに脂肪酸及び/又はその塩の含有量の合計含有量との比は、本発明の効果が損なわれない範囲で設定すればよく、特に制限されるものではない。例えば、より安定なαゲル乳化粒子を得る観点からは、100質量部の油分の合計に対して、ノニオン界面活性剤の含有量、高級アルコールの含有量、並びに脂肪酸及び/又はその塩の含有量の合計質量部が、5.0質量以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、又は35質量部以上であってよい。また、使用感を向上させる観点からは、100質量部の油分の合計に対して、ノニオン界面活性剤の含有量、高級アルコールの含有量、並びに脂肪酸及び/又はその塩の含有量の合計質量部が、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、又は50質量部以下であってよい。
【0046】
〈本発明のポリマー〉
本発明の組成物は、以下に説明する本発明のポリマーを含む。本発明のポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する:
【化5】
【0047】
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。なお、本発明において、炭素数1~4のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、これらのアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲノ基等が挙げられる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また、mが2以上である場合、すなわち、複数のRが存在する場合、各々のRは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、特に、Rの少なくとも一部は、メチル基であることが好ましい。Rの少なくとも一部がメチル基である場合には、例えば、本発明の組成物の使用感を向上させる観点から好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R及びRの少なくとも一方は、メチル基であることが好ましい。
【0055】
式(1)において、Aは、炭素数2~4のアルキレン基である。より具体的には、Aは例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等であってよいが、これらに限定されない。特に、Aは、下記式(2)で表されることが好ましい:
【化6】
【0056】
式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である。より具体的には、Rは、メチル基又はエチル基であってよい。
【0057】
式(1)において、m及びnは、それぞれの構成単位の平均付加モル数を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、より具体的には、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、又は10以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、12以下、10以下、又は5.0以下であってよい。
【0058】
また、式(1)において、mは、1.0以上14以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましい。また、式(1)において、nは、2.0以上34以下であることが好ましく、6.0以上12以下であることがより好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m+nは、4.0以上、4.5以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は12以下であってよい。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m:nは、1:10~10:1であってよい。
【0061】
本発明のポリマーは、数平均分子量は、10,000以下である。より具体的には、本発明のポリマーの数平均分子量は、例えば、10,000以下、5,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、2,000以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってよく、また130以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は500以上であってよい。また、本発明のポリマーの数平均分子量は、300以上3,500以下であることが好ましく、500以上1,200以下であることがより好ましい。
【0062】
本発明のポリマーのIOB値は、0.4~1.8である。より具体的には、本発明のポリマーのIOB値は、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、又は0.7以上であってよく、また1.8以下、1.6以下、1.4以下、又は1.2以下であってよい。また、本発明のポリマーのIOB値は、0.7以上1.2以下であることが好ましい。
【0063】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。なお、IOB値の決定方法については、実施例に記載の方法を参照できる。
【0064】
本発明のポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0065】
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、各構成単位に対応するエポキシドを付加重合することによって行ったよい。また、付加重合は、ブロック重合であってもよく、ランダム重合であってもよいが、ランダム重合であることが好ましい。
【0066】
また、本発明のポリマーの製造方法は、上記の付加重合によって得られたポリマーに対して、更にハロゲン化アルキルと反応させることを更に含んでよい。ハロゲン化アルキルとの反応を介して、得られたポリマーの分子内の水酸基は、アルキル基によって封鎖されて、その結果ポリマー全体の疎水性を所望のとおりに調整することができる。本発明において、ポリマーの分子内において、アルキル基による水酸基の封鎖率は、例えば30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、又は55%以上であってよく、また60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、又は55%以下であってよい。なお、アルキル基による水酸基の封鎖率は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0067】
本発明のポリマーの特徴の一つとして、高い水溶性及び高い脂溶性を兼備することである。
【0068】
本発明のポリマーの水への溶解度は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり得る。
【0069】
また、本発明のポリマーの脂溶性の指標として、例えばオリーブ油への溶解度を用いることができる。本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度は、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、又は1.00質量%以上であり得る。なお、本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度の上限値は特に限定されず、例えば10質量%以下であってよい。
【0070】
本発明の組成物において、本発明のポリマーの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、15質量%以下、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0071】
〈その他の成分〉
本発明の組成物は、上述した成分の他に、その他の成分を更に含んでよい。以下では例示的に説明するが、本発明はこれらの成分によって制限されることはない。
【0072】
(保湿剤)
本発明の組成物は、保湿剤を更に含んでよい。保湿剤として、特に限定されず、例えばグリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチルグリシン、グルコース、ソルビトール、及びマルチトールが挙げられる。
【0073】
本発明の組成物において、保湿剤を含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、8.0質量%以上、9.0質量%以上、又は10質量%以上であってよく、また、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0074】
(水溶性高分子)
本発明の組成物は、水溶性高分子を更に含んでよい。一部の水溶性高分子は、増粘剤として使用することもできる。
【0075】
水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、カラギーナン、ペクチン、トウモロコシデンプン等);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム等);ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);アクリル酸系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本発明の組成物において、水溶性高分子を含む場合のその含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上10質量%以下、又は0.2質量%以上5.0質量%以下であってよい。
【0077】
(水溶性有効成分)
本発明の組成物は、水溶性有効成分を更に含んでよい。「水溶性有効成分」とは、水溶性であり、かつ皮膚に浸透させることによって機能を発揮する成分を指す。ここで、水溶性有効成分の機能とは、特に限定されず、皮膚に何等かの効果、特に有利効果(例えば、保湿効果、ハリ効果、美白効果、抗シワ効果、又は抗シミ効果等)をもたらす能力を意味する。
【0078】
水溶性有効成分として、例えば、アルコキシサリチル酸の金属イオンの塩(例えば、4-メトキシサリチル酸カリウム等)、トラネキサム酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、グリチルリチン酸ジカリウム、並びにビタミンB1及びビタミンB12等のイオン性ビタミンB群等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の組成物は、水溶性有効成分を含む場合の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.1質量%以上10質量%以下、又は0.5質量%以上5.0質量%以下であってよい。
【0080】
(その他の任意添加成分)
本発明の組成物は、上記成分の他に、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分、例えば、上述したノニオン界面活性剤以外の界面活性剤、キレート剤、低級アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、粉末成分、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。但し、これら例示に限定されるものでない。
【0081】
上述したノニオン界面活性剤以外の界面活性剤として、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等挙げられる。
【0082】
キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
pH調整剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム等の緩衝剤;アミノ酸(例えば、グリシン等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、ベントナイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸、酸化チタン、酸化亜鉛等);有機粉末(例えば、セルロース粉末等);無機顔料(例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等);有機顔料(例えば、アルミニウムレーキ等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
〈本発明の組成物の製造方法〉
本発明の組成物は、以下の方法によって製造することができるが、本発明はこの製法に限定されるものではない。
【0088】
例えば、特許文献1に開示されている「製造方法A」を用いてもよい。より具体的には、油相をホモゲナイザーで攪拌しながら第1水相及び第2水相を加え、70℃にて乳化し調製した水中油型エマルションをオンレーターに通過させて35℃まで冷却し、その後室温まで放冷して水中油型の乳化組成物を得ることができる。この際に、油相には、油分、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、並びに脂肪酸及び/又はその塩等の成分が配合されてよい。また、第2の水相には、水、本発明のポリマー、低級アルコール、水溶性高分子、及び水溶性有効成分等の成分を配合してよい。
【0089】
また、特許文献1に開示されている「製造方法B]を用いてもよい。より具体的には、油相及び第1水相をホモゲナイザーを用いて70℃で乳化して水中油型のエマルション(乳化パーツ)を得る。この乳化パーツを25℃の主水相(第2水相)にプロペラ攪拌機(250rpm)で攪拌しながら混合し、35℃±2℃の水中油型の乳化組成物を得ることができる。なお、この際の第1の水相と第2の水相は、それぞれ、上述した「製造方法A」と同じであってよい。
【0090】
〈本発明の組成物の用途〉
本発明の組成物は、外皮に適用される化粧料、医薬品、及び医薬部外品に広く適用することが可能である。また、製品形態も任意であり、乳化ファンデーションや日焼け止めエマルジョン等の乳液状製品、スキンクリーム等のクリーム状の製品等が例示される。
【実施例0091】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
《合成例1及び2》
以下の合成例1及び2は、それぞれ下記式(3)で表される構造を有するポリマーを合成した:
【化7】
なお、式(3)において、[]内は、ランダム共重合体である。
【0093】
〈合成例1〉
合成例1:R=H、R=H、R=CH、R=CH、m=2.0、及びn=6.0のポリマー1
下記方法で合成を行い、ポリマー1を得た。
【0094】
メタノール128g及び触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後5時間攪拌した。オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、合成例1のポリマー1、2000gを得た。
【0095】
以下では、得られたポリマー1に対して、各種の物性値を求めた。
【0096】
(数平均分子量)
得られたポリマー1の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により算出した。システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。このクロマトグラムからポリエチレングリコールを標準とし、数平均分子量を求めたところ、約530であった。
【0097】
(重量平均分子量)
得られたポリマー1の重量平均分子量は、上記と同様にGPC計算によって求めて、約859であった。
【0098】
(多分散度)
上記で求めた数平均分子量及び重量平均分子量の結果から、ポリマー1の多分散度Mw/Mnは、1.62であった。
【0099】
(IOB値)
得られたポリマー1のIOB値は、以下のように求めたところ、1.1であった。
【0100】
より具体的には、ポリマー1において、有機性値として、炭素を20、iso分岐を-10にて計算した。また、無機性値は、水酸基を100、エーテル結合を20にて計算した。
・メタノール部位:(炭素数1、水酸基1)×1
有機性値:20
無機性値:100
・グリシドール部位:(炭素数3、iso分岐1、水酸基1、エーテル結合1)×2
有機性値:(60-10)×2=100
無機性値:(100+20)×2=240
・プロピレンオキシド部位:(炭素数3、iso分岐1、エーテル結合1)×6
有機性値:(60-10)×6=300
無機性値:20×6=120
以上、合計有機性値が420となる、合計無機性値が460となるため、IOB値が1.09となる。
【0101】
(曇点)
得られたポリマー1に対して、5wt%水溶液を調製し、85℃に加温後、冷却し、透明溶液となる温度は74℃であった。よって、ポリマー1の曇点は、74℃であることが分かった。
【0102】
(水酸基価)
得られたポリマー1の水酸基価は、JIS K-1557-1の測定方法に従い測定したところ、294であった。
【0103】
(水への溶解性)
得られたポリマー1の水への溶解性は、後述する「相溶性評価」の方法と同じように求めたところ、50質量%以上であった。
【0104】
(オリーブ油への溶解性)
得られたポリマー1のオリーブ油への溶解性は、以下のように求めた。すなわち、ポリマー1を、濃度が1.0wt%となるようオリーブ油と混合し、外観を確認した。均一であれば「〇」とした。この場合、ポリマー1のオリーブ油への溶解性は、1.0質量%であった。
【0105】
以上で測定したポリマー1の各種物性値は、下記の表1に示す。
【0106】
〈合成例2〉
合成例2:R=H及びCH、R=H及びCH、R=CH、R=CH、m=2.0、及びn=6.0のポリマー2
下記方法で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0107】
メタノール128gと触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム244gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル200gを温度80~130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ポリマー2、1820gを得た。塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が125であったことから、RとRにおけるメチル基と水素原子の割合(CH/H)は0.57であることが分かった。すなわち、ポリマー2の水酸基封鎖率が57%であった。
【0108】
上述したポリマー1の場合と同様に、得られたポリマー2に対して、各種の物性値を求めて、それぞれの結果は下記の表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
《実施例1~12》
以下の表2に示す処方に基づき、実施例1~12の組成物(乳液)を、それぞれ調製し、下記の評価方法に基づき、使用性を評価し、結果は表2に示す。
【0111】
なお、特に断りのない限り、表2~表4中の数値は、配合量を表し、単位は質量%である。また、表2及び表3中の「その他の成分」の詳細は、表4に示す。
【0112】
(塗布中の伸びの良さの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「肌への伸びが良い」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が感じる;
「B」:10人中5~7人が感じる;
「C」:10人中3~4人が感じる;
「D」:10人中2人以下が感じる。
【0113】
(塗布中のみずみずしさの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「肌にみずみずしさを感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が感じる;
「B」:10人中5~7人が感じる;
「C」:10人中3~4人が感じる;
「D」:10人中2人以下が感じる。
【0114】
【表2】
【0115】
表2から明らかなように、実施例1~12の組成物は、いずれも、「塗布中の伸びの良さの評価」及び「塗布中のみずみずしさの評価」において、優れた結果が得られていることが分かった。
【0116】
なお、調製された各組成物では、αゲルが形成されていたことは、DSC(示査走査型熱量測定)により確認することができた。より具体的には、油分を乳化した乳化パーツを、1℃/分で、70℃以下に降温させて、DSC(Q-2000,TA Instruments,USA)を用いて、αゲルの形成による発熱ピークが確認できた。
【0117】
《比較例1~6》
以下の表3に示す処方に基づき、比較例1~6の組成物を、それぞれ調製し、上述した評価方法と同様に、使用性を評価し、結果は表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
表3から明らかなように、比較例1~6の組成物は、いずれも、「塗布中の伸びの良さの評価」及び「塗布中のみずみずしさの評価」において、上述した実施例1~12の場合に比べて劣っている結果が得られた。
【0120】
言い換えれば、実施例1~12の組成物は、従来に比べて、塗布中の伸びの良さが改善され、そして塗布中のみずみずしさも向上されていることが示唆された。
【0121】
【表4】
《処方例》
以下では、本発明の組成物の処方例を例示的に挙げる。なお、本発明は、以下の処方例によって何ら限定されるものではない。また、処方例中の「ポリマー1」及び「ポリマー2」は、それぞれ上述した「合成例1」及び「合成例2」で合成された「ポリマー1」及び「ポリマー2」である。
【0122】
〈処方例1〉
【表5】
【0123】
〈処方例2〉
【表6】
【0124】
〈処方例3〉
【表7】
【0125】
〈処方例4〉
【表8】
【0126】
〈処方例5〉
【表9】