(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095426
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240703BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/45 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/894
A61K8/34
A61K8/45
A61K8/86
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212707
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭太
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA162
4C083AB032
4C083AC061
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC781
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD022
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD352
4C083AD392
4C083CC05
4C083DD33
4C083DD44
4C083EE06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来に比べて、塗布中における伸びの良さやみずみずしさ及び塗布後のしっとりさも向上された水中油型乳化化粧料組成物を提供する。
【解決手段】(A)水相と(B)油相と(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを含む水中油型乳化化粧料組成物であり、(A)水相には1価のアルコール及び2価のグリコールの配合量が合計で1~35質量%であり、1価のアルコール単独では1~15質量%、2価のグリコール単独では1~20質量%の範囲、(B)油相1~50質量%、(C)を組成物全体に対して0.2~5質量%、をそれぞれ含み、かつ(P)成分として、下記式(1)で表される構造を有するポリマーを更に含み、ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、ことを特徴とする組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水相と(B)油相と(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを含む、水中油型乳化化粧料組成物であり、
(A)水相には1価のアルコール及び2価のグリコールの配合量が合計で1~35質量%であり、1価のアルコール単独では1~15質量%、2価のグリコール単独では1~20質量%の範囲、
(B)油相 1~50質量%、
(C)を組成物全体に対して0.2~5質量%、
をそれぞれ含み、かつ
(P)成分として、下記式(1)で表される構造を有するポリマーを更に含み、
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR1の少なくとも一部が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオキシアルキレン変性シリコーンが、PEG-12ジメチコンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
(D)成分としてイオン性界面活性剤を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記イオン性界面活性剤が、スルホコハク酸ジエステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アシルメチルタウリン塩、アシルタウリン塩等から選ばれる1種又は2種以上を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(E)成分として更に高分子増粘剤を0.05~1.0質量%の濃度として含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記高分子増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、カルボキシビニルポリマーの誘導体、及びアクリル酸系増粘剤からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ナノディスクが形成されている、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノディスクの長径が20nm~1000nmの範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、ナノディスクを形成可能な界面活性剤やそれを用いた乳化組成物等が、開発されてきた。
【0003】
「ナノディスク」とは、両親媒性物質により形成されるベシクル(ラメラ液晶球状閉鎖体)を前駆体とした平板状のラメラ液晶閉鎖体であり、閉鎖体内部に水溶性成分を内包せず、エッジ部分に親油基を有するものをいう。ナノディスクは、油を含まない組成においては前駆体であるベシクルとして存在し、油を添加して乳化を行うことでベシクルがナノディスクに構造変化(以下「転移」ともいう)する。
【0004】
このようなナノディスクは、1価アルコール及び2価アルコールを含む水性成分とポリオキシアルキレン変性シリコーンとを混合してベシクルを形成させたベシクル水分散液に、油分を添加し、強い攪拌力を加えながら分散することによって得られる。ナノディスクは、乳化状態において油水界面に吸着した状態で存在し、乳化安定性に寄与する。
【0005】
ここで、ベシクルを形成する両親媒性物質がシリコーン系界面活性剤である場合には「シリコーンナノディスク」と呼ばれる。このようなナノディスクを形成可能な界面活性剤を含む水中油型乳化化粧料組成物は、みずみずしくて、塗布後にしっとりするといった使用感が得られる。
【0006】
例えば、特許文献1では、乳化安定性が向上し、使用性も良好な水中油型乳化組成物が開示されている。より具体的には、特許文献1の組成物は、(A)水相と(B)油相と(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを含む水中油型乳化組成物であり、(A)水相には1価のアルコール及び2価のグリコールの配合量が合計で1~35質量%であり、1価のアルコール単独では1~15質量%、2価のグリコール単独では1~20質量%の範囲、(B)油相 1~50質量%、(C)を組成物全体に対して 0.2~5質量%、をそれぞれ含むことを特徴とする水中油型乳化組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなナノディスクを形成可能な界面活性剤を含む水中油型乳化化粧料組成物の使用感について、依然として改善する余地がある。
【0009】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、従来よりも更に塗布中における伸びの良さやみずみずしさ及び塗布後のしっとりさが向上された新規な水中油型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0011】
〈態様1〉
(A)水相と(B)油相と(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを含む、水中油型乳化化粧料組成物であり、
(A)水相には1価のアルコール及び2価のグリコールの配合量が合計で1~35質量%であり、1価のアルコール単独では1~15質量%、2価のグリコール単独では1~20質量%の範囲、
(B)油相 1~50質量%、
(C)を組成物全体に対して0.2~5質量%、
をそれぞれ含み、かつ
(P)成分として、下記式(1)で表される構造を有するポリマーを更に含み、
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
〈態様2〉
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR
1の少なくとも一部が、メチル基である、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様5〉
前記式(1)において、R
2及びR
3の少なくとも一方が、メチル基である、態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
前記ポリオキシアルキレン変性シリコーンが、PEG-12ジメチコンである、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
(D)成分としてイオン性界面活性剤を更に含む、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様8〉
前記イオン性界面活性剤が、スルホコハク酸ジエステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アシルメチルタウリン塩、アシルタウリン塩等から選ばれる1種又は2種以上を含む、態様7に記載の組成物。
〈態様9〉
(E)成分として更に高分子増粘剤を0.05~1.0質量%の濃度として含む、態様1~8のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様10〉
前記高分子増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、カルボキシビニルポリマーの誘導体、及びアクリル酸系増粘剤からなる群より選択される少なくとも1つを含む、態様9に記載の組成物。
〈態様11〉
ナノディスクが形成されている、態様1~10のいずれか一項に記載の組成物
〈態様12〉
油水界面にラメラ状のナノディスクが吸着している、態様1~11のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様13〉
前記ナノディスクの長径が20nm~1000nmの範囲である、態様11又は12に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来に比べて、塗布中における伸びの良さやみずみずしさ及び塗布後のしっとりさが向上された新規な水中油型乳化組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
《水中油型乳化化粧料組成物》
本発明の水中油型乳化化粧料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、
(A)水相と(B)油相と(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを含む水中油型乳化組成物であり、
(A)水相には1価のアルコール及び2価のグリコールの配合量が合計で1~35質量%であり、1価のアルコール単独では1~15質量%、2価のグリコール単独では1~20質量%の範囲、
(B)油相 1~50質量%、
(C)を組成物全体に対して0.2~5質量%、
をそれぞれ含み、かつ
(P)成分として、下記式(1)で表される構造を有するポリマーを更に含み、
【化3】
式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物
である。
【0015】
本発明の組成物は、従来の水中油型乳化組成物(例えば、特許文献1の水中油型乳化組成物)に比べて、更にみずみずしくて、塗布中における伸びの良さや塗布後のしっとりさも向上された。
【0016】
理論に限定されるものではないが、成分(P)としての特定の構造をもつ本発明ポリマーは、両親媒性であり、水相に溶解する傾向があるものの、疎水的な性質も有するため、例えばナノディスクを形成可能な界面活性剤との親和性もよく、皮膚との親和性もよいと考えられる。これによって、特定の構造をもつ本発明ポリマーを含む組成物は、親油性である肌に触れたときに、ナノディスクを形成可能な界面活性剤で形成される乳化粒子(シリコーンナノディスク)と肌とのなじみを促進し、塗布時の伸びの良さが改善されたと考えられる。また、特定の構造をもつ本発明ポリマーとナノディスクを形成可能な界面活性剤との何らかの相互作用によって、化粧料組成物の全体のみずみずしさや塗布後のしっとりさも向上させることができると考えられる。
【0017】
本発明の組成物において、ナノディスクが形成されていてよい。本発明に係るナノディスクは、油を含まない組成においてはナノディスクの前駆体であるベシクルとなっている。このベシクルは自発ベシクルではない。自発ベシクルとは溶液の平衡状態、すなわち極めて長期間一定温度、一定圧力において保存した溶液がベシクル分散状態であることを指す。本発明のベシクルは、溶液の平衡状態が平板状のラメラ液晶と水の2相共存溶液である。この状態に強い撹拌力を与え分散するとベシクルになる。ベシクルの状態において油を添加して乳化を行うことで、ベシクルがナノディスクに構造変化する。更に分散剤としてイオン性界面活性剤を添加すると長期間にわたってこの状態を維持することが可能になる。
【0018】
また、本発明の組成物は、その特有の組成によって、油水界面にラメラ状のナノディスクが吸着している態様を有し得る。更に、本発明の組成物において、形成されたナノディスクの長径は、例えば20nm~1000nmの範囲であってよい。なお、本発明において、ナノディスクが形成されているか否かは、例えば凍結レプリカ電子顕微鏡(FF-TEM)によって観察することで判断することができ、その結果によりナノディスクの長径は確認することができる。
【0019】
〈(A)水相〉
本発明の組成物は、水相を有する。水相においては、1価のアルコール及び2価のグリコールの配合量が水相中で合計が1~45質量%、好ましくは1~35質量%であれば良いが、1価のアルコール単独では1~15質量%、2価のグリコール単独では1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0020】
また、1価のアルコールはエチルアルコールが好ましい。2価のグリコールは、ジプロピレングリコール及び/又はブチレングリコールであってよく、特にジプロピレングリコールが好ましい。より好ましくは以下の[式1]を満たすエチルアルコール及びジプロピレングリコール濃度を上限として配合することが好ましい。
【数1】
【0021】
エチルアルコール単独の配合量、ジプロピレングリコール単独の配合量、エチルアルコール及びジプロピレングリコールの合計配合量が1質量%未満であるとベシクルが生成しないか構造が乱れて乳化できなくなる場合があり、エチルアルコール単独の配合量が15質量%を超える場合やジプロピレングリコール単独の配合量が20質量%を超える場合、更にエチルアルコール及びジプロピレングリコールの配合比が上記[式1]の範囲外である場合や上記[式1]の範囲内であっても合計量が35質量%を超えるとベシクル膜が柔軟になりすぎるかベシクルがミセルへ転移してしまい安定化効果が得られない場合がある。
【0022】
〈(B)油相〉
本発明の組成物は、油相を有する。
【0023】
油相に配合できる油分としては、特に限定されるものではないが、シリコーン油(例えば、ジメチコン(「ジメチルポリシロキサン」とも称する)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等);炭化水素油(例えば、水添ポリデセン、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等);エステル油(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、セチル-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-へプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-へプチルウンデシル、アジピン酸ジ-2-へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルチミン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等)が挙げられる。また、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、及び4,4-ジアリールブタジエン誘導体等の紫外線吸収剤として使用できる油分も例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の組成物において、油相は、組成物全体に対して、1~50質量%であることが好ましい。また、油相中のシリコーン油の含有量は50質量%以下が好ましい。50質量%を超えて含むと高温で乳化粒子が合一することがある。
【0025】
〈(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーン〉
リオキシアルキレン変性シリコーンはジメチコンのメチル基の一部をポリエチレングリコールで置換した水溶性のシリコーン系界面活性剤である。乳化作用、分散作用、浸透作用に優れ、化粧料の分野で多用されており、下記一般式(I)で表される:
【化4】
式(I)において、R
1~R
7は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~6のアルキル基である。A
1~A
3は、それぞれ独立して、少なくとも1つが式:-(CH
2)
a-(C
2H
4O)
b-(C
3H
6O)
c-R
8(式中、R
8は水素又は炭素数1~6のアルキル基であり、aは1~6、bは0~50、cは0~50の整数であり、b+cは少なくとも5以上であるポリオキシアルキレン基であり)で表され、その他のAは、水素又は炭素数1~6のアルキル基である。pは、1~200、qは、0~50の整数である。
【0026】
(C)成分としてのポリオキシアルキレン変性シリコーンの中でも、特にPEG-12ジメチコン(上記式(I)においてcが0、bが12である)が好ましい。
【0027】
PEG-12ジメチコンは、市販品としては、DOWSIL ES-5373(ダウ・東レ社製)、SH3772M,SH3773M,SH3775M(いずれもダウコーニングシリコーン社製)、IM-22(WackerChemical社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
(C)成分の配合量はナノディスクの前駆体であるベシクルを形成し得る量であることが好ましく、組成物全体に対して0.2~5.0質量%であり、0.5~2.5質量%であるとより好ましい。配合量が0.2質量%より少ない量であると、ナノディスクによる効果が得られない場合があり、5.0質量%を超える量であるとナノディスクの安定性に劣る場合がある。
【0029】
本発明の組成物は、(C)成分の界面活性剤からなるナノディスクを含有するものであり得る。ナノディスクの前駆体であるベシクルの形成は、公知の方法によって行えばよく、たとえば、(A)水相と(C)成分を混合し、撹拌することで、水相中に(C)成分からなるベシクルを形成することができる。なお、ベシクルの平均粒子径は、30nm~150nm程度である。
【0030】
〈(P)本発明のポリマー〉
本発明のポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する:
【化5】
【0031】
式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。なお、本発明において、炭素数1~4のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、これらのアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲノ基等が挙げられる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また、mが2以上である場合、すなわち、複数のR1が存在する場合、各々のR1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、特に、R1の少なくとも一部は、メチル基であることが好ましい。R1の少なくとも一部がメチル基である場合には、例えば、本発明の組成物の使用感を向上させる観点から好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R3は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方は、メチル基であることが好ましい。
【0039】
式(1)において、Aは、炭素数2~4のアルキレン基である。より具体的には、Aは例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等であってよいが、これらに限定されない。特に、Aは、下記式(2)で表されることが好ましい:
【化6】
【0040】
式(2)において、R4は、炭素数1又は2のアルキル基である。より具体的には、R4は、メチル基又はエチル基であってよい。
【0041】
式(1)において、m及びnは、それぞれの構成単位の平均付加モル数を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、より具体的には、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、又は10以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、12以下、10以下、又は5.0以下であってよい。
【0042】
また、式(1)において、mは、1.0以上14以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましい。また、式(1)において、nは、2.0以上34以下であることが好ましく、6.0以上12以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m+nは、4.0以上、4.5以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は12以下であってよい。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m:nは、1:10~10:1であってよい。
【0045】
本発明のポリマーは、数平均分子量は、10,000以下である。より具体的には、本発明のポリマーの数平均分子量は、例えば、10,000以下、5,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、2,000以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってよく、また130以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は500以上であってよい。また、本発明のポリマーの数平均分子量は、300以上3,500以下であることが好ましく、500以上1,200以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明のポリマーのIOB値は、0.4~1.8である。より具体的には、本発明のポリマーのIOB値は、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、又は0.7以上であってよく、また1.8以下、1.6以下、1.4以下、又は1.2以下であってよい。また、本発明のポリマーのIOB値は、0.7以上1.2以下であることが好ましい。
【0047】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。なお、IOB値の決定方法については、実施例に記載の方法を参照できる。
【0048】
本発明のポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0049】
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、各構成単位に対応するエポキシドを付加重合することによって行ったよい。また、付加重合は、ブロック重合であってもよく、ランダム重合であってもよいが、ランダム重合であることが好ましい。
【0050】
また、本発明のポリマーの製造方法は、上記の付加重合によって得られたポリマーに対して、更にハロゲン化アルキルと反応させることを更に含んでよい。ハロゲン化アルキルとの反応を介して、得られたポリマーの分子内の水酸基は、アルキル基によって封鎖されて、その結果ポリマー全体の疎水性を所望のとおりに調整することができる。本発明において、ポリマーの分子内において、アルキル基による水酸基の封鎖率は、例えば30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、又は55%以上であってよく、また60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、又は55%以下であってよい。なお、アルキル基による水酸基の封鎖率は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0051】
本発明のポリマーの特徴の一つとして、高い水溶性及び高い脂溶性を兼備することである。
【0052】
本発明のポリマーの水への溶解度は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり得る。
【0053】
また、本発明のポリマーの脂溶性の指標として、例えばオリーブ油への溶解度を用いることができる。本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度は、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、又は1.00質量%以上であり得る。なお、本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度の上限値は特に限定されず、例えば10質量%以下であってよい。
【0054】
本発明の組成物において、本発明のポリマーの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、15質量%以下、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0055】
〈その他の成分〉
本発明の組成物は、上述した成分の他に、その他の成分を更に含んでよい。以下では例示的に説明するが、本発明はこれらの成分によって制限されることはない。
【0056】
((D)イオン性界面活性剤)
本発明の組成物は、(D)イオン性界面活性剤を更に含んでよい。イオン性界面活性剤を加えた場合、(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンからなるナノディスク含有組成物の安定性が改善される。
【0057】
本発明に用いられるイオン性界面活性剤は、前記(C)シリコーン系界面活性剤以外のものであって、且つイオン性を示せばよく、特に限定することなく用いることができる。
【0058】
(D)イオン性界面活性剤を含む場合のその配合量は、組成物全体に対して0.01~1.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.01~0.1質量%である。界面活性剤の配合量が少ないとナノディスクの安定化効果が十分に得られない場合があり、一方で配合量が多すぎると、ナノディスクの前駆体であるベシクルが可溶化されたり、ナノディスク形成を阻害する等、むしろ悪影響を及ぼすことがある。
【0059】
また、(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンとイオン性界面活性剤との配合量比が1:0.01~1:0.1であることが好ましい。
【0060】
本発明において配合できる(D)イオン性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤を配合できるが、アニオン性界面活性剤のクラフト点が低い場合(例えば室温より低温)はシリコーン系界面活性剤とアニオン性界面活性剤が混ざりやすくなり、相互作用することによりベシクルからナノディスクへの転移が阻害される。これはアニオン性界面活性剤が球状のミセルと呼ばれる会合体を形成する性質が高いため、ベシクルと共存すると球状の構造を維持する効果があり、ナノディスクへの転移を阻害するためである。
【0061】
本発明において配合できる(D)イオン性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤の中でもスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤が好ましい。スルホン酸塩型アニオン性界面活性剤としては、スルホコハク酸ジエステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アシルメチルタウリン塩、アシルタウリン塩等が挙げられる。
【0062】
本発明においては、特にN-アシルメチルタウリン塩をイオン性界面活性剤として配合することが好ましい。更に下記一般式(II)で表されるN-アシルメチルタウリン塩の中でもN-ステアロイル-N-メチルタウリン塩であることが好ましい。
【化7】
【0063】
((E)高分子増粘剤)
本発明の組成物は、(E)高分子増粘剤を更に含んでよい。
【0064】
(E)高分子増粘剤としてはカルボキシビニルポリマー又はその誘導体やアクリル酸系増粘剤が好ましい。中でもカルボキシビニルポリマー、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウムメタクリル酸べへネス-25)クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0065】
(E)高分子増粘剤はその製剤の求められる使用性に合わせて配合できるが、組成物全体に対して0.05~1.0質量%が好ましい。
【0066】
(シリコーンエラストマー)
本発明の組成物においては、随意に、シリコーンエラストマーを更に配合することができる。シリコーンエラストマーを化粧料等の組成物に添加すると、なめらかで上品な使用感を使用者に与えることができる。
【0067】
シリコーンエラストマーとしては、例えば、シリコーンエラストマー(オルガノポリシロキサン)が挙げられる。シリコーンエラストマーには、例えば、シリコーンポリマーが三次元的に架橋した架橋型シリコーン(架橋型オルガノポリシロキサン)が含まれる。シリコーンエラストマーを用いると、べたつきを抑制すると共に、肌への塗布時のなめらかさ(スベスベ感)を得ることができる。
【0068】
本発明の組成物に適用可能なシリコーンエラストマーとしては、皮膚に適用可能なものであれば特に限定されない。シリコーンエラストマーの例としては、ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマー等が挙げられる。
【0069】
シリコーンエラストマーには、例えば、市販品を用いることができる。市販品は、シリコーンエラストマーと油性成分との混合物であってもよい。この市販品に含まれる油性成分は、皮膚に適用可能なものであれば特に限定されない。例えば、シリコーンエラストマーを含む市販品としては、シリコーンエラストマーとしてポリシリコーン-11を12質量%、及び油性成分としてジメチコンを88質量%含むGransil DMG-3(Grant社)、及びその他の製品KSG-16(信越化学工業)、Dow Corning(登録商標)9041Silicone Elastomer Blend(東レダウコーニング社)等を挙げることができる。
【0070】
本発明の組成物において、シリコーンエラストマーを含む場合のその含有量は、組成物の総量に対して0.1質量%以上であると好ましく、0.3質量%以上であるとより好ましい。
【0071】
(グリセリン)
化粧品として購入者から求められる「塗布した時のなめらかさ」を付与するためにグリセリンを更に配合することもできる。通常グリセリンを高配合するとべたつきが感じられ良好な使用性が得られない。本発明ではグリセリンを高配合してもべたつかず、なめらかな感触を得ることができる。
【0072】
〈本発明の組成物の製造方法〉
本発明に係る水中油型乳化組成物の製造方法は、(A)水相と(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンとを混合してベシクルを形成するベシクル形成工程を備える。また、前記工程によって得られたベシクル含有水溶液中にイオン性界面活性剤を添加する工程を加えることもできる。
【0073】
本発明に係る水中油型乳化組成物の製造方法においては、最初に、(A)水相と(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンとを混合してナノディスクの前駆体であるベシクルを形成する。ここで、(A)水相とは、水及び水性溶媒(1価のアルコール及び/又は2価のグリコール)を主な媒体としてなる処方であれば、特に限定されるものではなく、水又は水性溶媒の他、通常、化粧品に用いられる成分をナノディスクの安定性を損なわない範囲の配合量で配合しても構わない。
【0074】
上記(A)水相の構成成分である1価のアルコール及び/又は2価のグリコールに予め(C)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを溶解し、それを(A)水相の残りの構成成分である水に混合することで、水相中にポリオキシアルキレン変性シリコーンからなるナノディスクの前駆体であるベシクルが形成される。
【0075】
このナノディスクの前駆体であるベシクルを含む水性相に油を加えて撹拌することで、ナノディスクの前駆体であるベシクルが油水界面においてナノディスクに転移し吸着することで本発明は完成する。
【0076】
なお、(P)成分としての本発明のポリマーは、例えば、水相中に油を添加して乳化後の系内に添加されてもよい。
【0077】
〈本発明の組成物の用途〉
本発明に係る水中油型乳化組成物は、例えば、化粧料として好適に用いることができる。化粧料として用いる場合には、上記必須成分の他に、通常、医薬品、化粧品に用いられる成分の安定性を損なわない範囲の配合量で配合することができる。また、本ナノディスク含有組成物は通常の可溶化では配合できない量の油分を配合できるにも拘わらずべたつきが抑制されさっぱりした使用感が得られる。
【0078】
なお、他の処方成分は、予めベシクル形成前の水相中に配合してもよく、あるいはベシクル形成後の処方中に配合しても構わない。
【0079】
本発明に係る化粧料の用途は特に限定されないが、例えば、化粧水、スキンケア美容液、乳液、クリーム、ヘアクリーム、マッサージクリーム、メイク落としクリーム等として好適に使用することが可能である。
【実施例0080】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
《合成例1及び2》
以下の合成例1及び2は、それぞれ下記式(3)で表される構造を有するポリマーを合成した:
【化8】
なお、式(3)において、[]内は、ランダム共重合体である。
【0082】
〈合成例1〉
合成例1:R1=H、R2=H、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー1
下記方法で合成を行い、ポリマー1を得た。
【0083】
メタノール128g及び触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後5時間攪拌した。オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、合成例1のポリマー1、2000gを得た。
【0084】
以下では、得られたポリマー1に対して、各種の物性値を求めた。
【0085】
(数平均分子量)
得られたポリマー1の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により算出した。システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。このクロマトグラムからポリエチレングリコールを標準とし、数平均分子量を求めたところ、約530であった。
【0086】
(重量平均分子量)
得られたポリマー1の重量平均分子量は、上記と同様にGPC計算によって求めて、約859であった。
【0087】
(多分散度)
上記で求めた数平均分子量及び重量平均分子量の結果から、ポリマー1の多分散度Mw/Mnは、1.62であった。
【0088】
(IOB値)
得られたポリマー1のIOB値は、以下のように求めたところ、1.1であった。
【0089】
より具体的には、ポリマー1において、有機性値として、炭素を20、iso分岐を-10にて計算した。また、無機性値は、水酸基を100、エーテル結合を20にて計算した。
・メタノール部位:(炭素数1、水酸基1)×1
有機性値:20
無機性値:100
・グリシドール部位:(炭素数3、iso分岐1、水酸基1、エーテル結合1)×2
有機性値:(60-10)×2=100
無機性値:(100+20)×2=240
・プロピレンオキシド部位:(炭素数3、iso分岐1、エーテル結合1)×6
有機性値:(60-10)×6=300
無機性値:20×6=120
以上、合計有機性値が420となる、合計無機性値が460となるため、IOB値が1.09となる。
【0090】
(曇点)
得られたポリマー1に対して、5wt%水溶液を調製し、85℃に加温後、冷却し、透明溶液となる温度は74℃であった。よって、ポリマー1の曇点は、74℃であることが分かった。
【0091】
(水酸基価)
得られたポリマー1の水酸基価は、JIS K-1557-1の測定方法に従い測定したところ、294であった。
【0092】
(水への溶解性)
得られたポリマー1の水への溶解性は、後述する「相溶性評価」の方法と同じように求めたところ、50質量%以上であった。
【0093】
(オリーブ油への溶解性)
得られたポリマー1のオリーブ油への溶解性は、以下のように求めた。すなわち、ポリマー1を、濃度が1.0wt%となるようオリーブ油と混合し、外観を確認した。均一であれば「〇」とした。この場合、ポリマー1のオリーブ油への溶解性は、1.0質量%であった。
【0094】
以上で測定したポリマー1の各種物性値は、下記の表1に示す。
【0095】
〈合成例2〉
合成例2:R1=H及びCH3、R2=H及びCH3、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー2
下記方法で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0096】
メタノール128gと触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム244gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル200gを温度80~130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ポリマー2、1820gを得た。塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が125であったことから、R2とR3におけるメチル基と水素原子の割合(CH3/H)は0.57であることが分かった。すなわち、ポリマー2の水酸基封鎖率が57%であった。
【0097】
上述したポリマー1の場合と同様に、得られたポリマー2に対して、各種の物性値を求めて、それぞれの結果は下記の表1に示す。
【0098】
【0099】
《実施例1~14》
以下の表2に示す処方に基づき、実施例1~14の水中油型乳化化粧料組成物を、それぞれ調製し、下記の評価方法に基づき、使用性を評価し、結果は表2に示す。なお、特に断りのない限り、表2及び表3中の数値は、配合量を表し、単位は質量%である。
【0100】
また、調製された各実施例1~14の水中油型乳化化粧料組成物は、光学顕微鏡を用いて乳化されていることを確認できた。
【0101】
(塗布中の伸びの良さの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「肌への伸びが良い」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が感じる;
「B」:10人中5~7人が感じる;
「C」:10人中3~4人が感じる;
「D」:10人中2人以下が感じる。
【0102】
(塗布中のみずみずしさの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「肌にみずみずしさを感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が感じる;
「B」:10人中5~7人が感じる;
「C」:10人中3~4人が感じる;
「D」:10人中2人以下が感じる。
【0103】
(塗布後のしっとりさの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「肌にしっとりさを感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が感じる;
「B」:10人中5~7人が感じる;
「C」:10人中3~4人が感じる;
「D」:10人中2人以下が感じる。
【0104】
【0105】
表2から明らかなように、実施例1~14の水中油型乳化化粧料組成物は、いずれも、塗布中における伸びの良さの評価結果が優れており、また塗布中のみずみずしさ及び塗布後のしっとりさの評価結果も優れていることが分かった。
【0106】
《比較例1~6》
以下の表3に示す処方に基づき、比較例1~6の水中油型乳化化粧料組成物を、それぞれ調製し、上述した評価方法と同様に、使用性を評価し、結果は表3に示す。
【0107】
【0108】
表3から明らかなように、比較例1~6の組成物は、いずれも、「塗布中の伸びの良さの評価」、「塗布中のみずみずしさの評価」、及び「塗布後のしっとりさの評価」において、上述した実施例1~14の場合に比べて劣っている結果が得られた。
【0109】
言い換えれば、実施例1~14の組成物は、従来に比べて、塗布中における伸びの良さやみずみずしさ及び塗布後のしっとりさも向上されていることが示唆された。
【0110】
《処方例》
以下では、本発明の組成物の処方例を例示的に挙げる。なお、本発明は、以下の処方例によって何ら限定されるものではない。また、処方例中の「ポリマー1」及び「ポリマー2」は、それぞれ上述した「合成例1」及び「合成例2」で合成された「ポリマー1」及び「ポリマー2」である。また、処方例の表中の数値は、各成分の配合量(含有量)を表しており、単位は質量%である。
【0111】
【0112】