(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095442
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】表示装置及び表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 13/383 20180101AFI20240703BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20240703BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240703BHJP
H04N 13/307 20180101ALI20240703BHJP
H04N 13/194 20180101ALI20240703BHJP
G02B 30/10 20200101ALN20240703BHJP
【FI】
H04N13/383
G09G5/36 500
G09G5/00 550C
G09G5/00 555D
H04N13/307
H04N13/194
G02B30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212730
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨沢 一成
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃
(72)【発明者】
【氏名】上原 利範
【テーマコード(参考)】
2H199
5C061
5C182
【Fターム(参考)】
2H199BA19
2H199BA48
2H199BB04
2H199BB08
2H199BB52
2H199BB59
5C061AA06
5C061AB12
5C061AB14
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA26
5C182AA28
5C182AB08
5C182AC46
5C182BA14
5C182BA56
5C182BC14
5C182BC22
5C182BC25
5C182BC26
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】より新しい時点でのユーザの視点に対応した画像を出力できる表示装置等を提供する。
【解決手段】端末10は、所定方向に並ぶ複数の画素を有し、画像を出力する表示部15と、当該画像を視認するユーザの視線に関する情報を周期的に取得する取得部11と、第1時点での当該情報に基づいてサーバ20から与えられた画像群データを記憶する記憶部13と、当該第1時点よりも後の第2時点での当該情報に基づいて、当該視線に対応した表示データを当該画像群データから選択して当該表示部に表示させる表示制御部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並ぶ複数の画素を有し、画像を出力する表示部と、
前記画像を視認するユーザの視線に関する情報を周期的に取得する取得部と、
第1時点での前記情報に基づいて外部の情報処理装置から与えられた画像群データを記憶する記憶部と、
前記第1時点よりも後の第2時点での前記情報に基づいて、前記視線に対応した表示データを前記画像群データから選択して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える
表示装置。
【請求項2】
前記表示データは、ユーザの右目と左目の各々に対して個別の画像を視認させて立体視を成立させる画像データであり、
前記表示部は、ユーザの右目と左目の各々に対して個別の画像を出力する視差形成部を有する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記情報は、前記表示部の画像表示面に対するユーザの視線の基準角度を示す情報を含み、
前記画像群データは、前記第1時点での前記基準角度に対応した画像データと、前記第1時点での前記基準角度にそれぞれ異なる誤差角度を加算又は減算した角度に対応した画像データと、を含み、
前記表示制御部は、前記画像群データに含まれる複数の画像データから、前記右目に対応する第1画像データと、前記左目に対応する第2画像データと、を個別に選択して前記第1画像データと前記第2画像データを統合した前記表示データを前記表示部に表示させる、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記外部の情報処理装置と通信を行う通信部を備え、
前記取得部は、第1周期で前記情報を取得し、
前記情報は、前記第1周期よりも長い第2周期で前記外部の情報処理装置に送信され、
前記画像群データは、前記第2周期で前記外部の情報処理装置から与えられる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記第1時点よりも後の複数の時点で取得された複数の前記情報の各々が示す視線角度同士の差に基づいて前記第2時点での前記情報を導出する、
請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
表示装置と、
前記表示装置と通信可能に設けられたサーバと、を備える表示システムであって、
前記表示装置は、
所定方向に並ぶ複数の画素を有し、画像を出力する表示部と、
前記画像を視認するユーザの視線に関する情報を周期的に取得する取得部と、
第1時点での前記情報に基づいて前記サーバから与えられた画像群データを記憶する記憶部と、
前記第1時点よりも後の第2時点での前記情報に基づいて、前記視線に対応した表示データを前記画像群データから選択して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備え、
前記サーバは、
前記画像群データを含み、3以上の視線角度の各々に対応した画像データを含む元データを記憶する記憶部と、
前記情報に基づいて前記元データから前記画像群データのもとになる抽出要素画像群を生成する抽出部と、を備える、
表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置によって出力されるユーザの視線位置情報に基づいてサーバから表示画像を提供する表示システムが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、サーバが画像を提供する提供時点での視線位置情報と、提供された画像を表示装置が出力する出力時点と、の間に生じるタイムラグによって、出力時点でのユーザの視線に画像が対応しなくなることがあった。このため、より新しい時点でのユーザの視線に対応可能な画像を出力できる仕組みが求められていた。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、より新しい時点でのユーザの視点に対応した画像を出力できる表示装置及び表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による表示装置は、所定方向に並ぶ複数の画素を有し、画像を出力する表示部と、前記画像を視認するユーザの視線に関する情報を周期的に取得する取得部と、第1時点での前記情報に基づいて外部の情報処理装置から与えられた画像群データを記憶する記憶部と、前記第1時点よりも後の第2時点での前記情報に基づいて、前記視線に対応した表示データを前記画像群データから選択して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表示システムの主要構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、表示システムの主要機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、表示システムの主要な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、自然環境下におけるヒトによる立体物の視認の仕組みを示す概略図である。
【
図5】
図5は、3D画像の出力及びユーザによる3D画像の視認の仕組みを示す概略図である。
【
図6】
図6は、3Dを実現するために用意される画像の撮像方法の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、3Dを実現するために用意される画像の撮像方法の一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、オブジェクトOB側から見た撮像装置の並びの例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、視差画像データの内容の一例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、部分画像データの内容を示す概略図である。
【
図11】
図11は、m=n=4である場合の複数の画像データを示す概略図である。
【
図13】
図13は、要素画像データの一例を示す概略図である。
【
図15】
図15は、画像群データの構成例を示す概略図である。
【
図16】
図16は、表示システムで行われる情報処理の流れを概略的に示すタイムチャートである。
【
図17】
図17は、画像群データExt(θ1°)に含まれる複数の画像データと、第1時点の視線情報(θ1°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR1及び第2視差画像GL1と、の関係の一例を示す概略図である。
【
図18】
図18は、第1時点の視線情報(θ1°)が示すX方向の角度(θx1)と、当該第1時点でのユーザの目の位置と、の関係の一例を示す概略図である。
【
図19】
図19は、画像群データExt(θ1°)に含まれる複数の画像データと、第1時点の視線情報(θ1°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR1及び第2視差画像GL1と、第2時点の視線情報(θ3°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR3及び第2視差画像GL3と、の関係の一例を示す概略図である。
【
図20】
図20は、第1時点の視線情報(θ1°)が示す視線角度(θx1)及び当該第1時点でのユーザの目の位置と、第2時点の視線情報(θ3°)が示す視線角度(θx3)及び当該第2時点でのユーザの目の位置と、の関係の一例を示す概略図である。
【
図21】
図21は、ユーザの視線情報が示すY方向の角度を示す概略図である。
【
図22】
図22は、画像群データExt(θ1°)に含まれる複数の画像データと、第1時点の視線情報(θ1°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR1及び第2視差画像GL1と、第2時点の視線情報(θ4°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR4及び第2視差画像GL4と、の関係の一例を示す概略図である。
【
図23】
図23は、第1時点の視線情報(θ1°)が示す視線角度(θy1)及び当該第1時点でのユーザの目の位置と、第2時点の視線情報(θ4°)が示す視線角度(θy4)及び当該第2時点でのユーザの目の位置と、の関係の一例を示す概略図である。
【
図24】
図24は、実施形態で採用可能な表示部の具体的形態の一例を示す概略断面図である。
【
図25】
図25は、変形例の表示システムで行われる情報処理の流れを概略的に示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、表示システム1の主要構成を示すブロック図である。表示システム1は、端末10と、サーバ20と、を備える。端末10は、取得部11と、通信部12と、記憶部13と、表示制御部14と、表示部15と、を有する。サーバ20は、演算部21と、記憶部22と、通信部23と、を有する。なお、以下では、画像や画像を処理することについて各画像を個別の具体的な画像イメージとして視覚化して説明しているが、実際には画像は画像信号(画像データ)であり、画像処理はサーバや端末内のソフトウェアまたはハードウェアによる信号処理(データ処理)によってなされるもので、各画像処理のために実際に画像を逐一視覚化する必要がないことは言うまでもない。
【0010】
端末10は、表示部15によって出力される画像をユーザが視認することを想定された表示装置である。以下、単に出力と記載した場合、特筆しない限り、ユーザによる画像の視認を想定した表示出力をさす。端末10は、例えばスマートフォンのような携帯端末であるが、これに限られるものでない。端末10は、携帯可能又は据え置きの表示端末であってよい。以下、単にユーザと記載した場合、特筆しない限り、表示部15によって出力される画像を視認するヒトをさす。
【0011】
取得部11は、ユーザの視線情報を取得する。具体的には、取得部11は、例えば撮像部11aを有する。撮像部11aは、画像表示面15aに対向するユーザの顔を撮像する。撮像部11aによる画像の撮像範囲(画角等)は、表示部15の画像表示面15a(
図24等参照)に対面するユーザの顔の位置を想定して設定されている。具体的には、撮像部11aは、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサのような撮像素子を構成に含み、当該撮像素子によって画像データを生成する。以下、単に視線情報と記載した場合、特筆しない限り、ユーザの視線情報をさす。
【0012】
取得部11は、さらに、画像データを解析する演算処理を行うための回路を構成に含む。当該回路は、例えば端末10にSoC(System on a Chip)として設けられた回路であるが、これに限られるものでなく、取得部11のための専用の回路であってもよい。取得部11は、撮像部11aによって撮像された画像データに含まれるユーザの顔画像における目(右目、左目)の位置に基づいて、視線情報を取得する演算処理を行う。視線情報は、少なくとも、ユーザが表示部15に対してどの角度で視線を向けているのかを示す情報を含む。
【0013】
視線情報を取得するための演算処理として、例えばOpenCVが挙げられるが、これに限られるものでなく、ヒトの顔画像に含まれる二つの目の位置及び向きを特定可能な他の演算処理が採用されてもよい。
【0014】
通信部12及び通信部23は、外部の情報処理装置と通信を行う。具体的には、通信部12及び通信部23は、NIC(Network Interface Controller)として機能するための回路を有する。通信部12と通信部23とは、同一の通信プロトコルで互いにデータ送受信可能に設けられる。通信部12と通信部23との間の通信経路は、例えば無線であるが、有線であってもよいし、無線と有線とが混在していてもよい。また、当該通信経路は、インターネット等、公共の情報通信網を含んでいてもよいし、専用の通信経路であってもよい。
【0015】
実施形態では、取得部11が取得した視線情報が通信部12を介してサーバ20に送信され、通信部23によって受信される。また、実施形態では、視線情報に基づいて生成された抽出要素画像群(例えば、後述する抽出要素画像群22b、
図13参照)が通信部23を介してサーバ20から送信され、通信部12によって受信される。当該抽出要素画像群は、後述する視差画像群Ext(
図15等参照)のもとになるデータである。その詳細は後述する。
【0016】
記憶部13は、通信部12による通信を介してサーバ20から送信された抽出要素画像群等、表示出力に関わる各種のデータを記憶する。記憶部13は、画像データを記憶可能な記憶装置を有する。当該記憶装置は、例えばRAM(Random Access Memory)として機能する半導体素子又はフラッシュメモリのような半導体素子であるが、これに限られるものでなく、同様に機能する他の構成であってもよい。
【0017】
表示制御部14は、記憶部13に記憶された抽出要素画像群を展開して視差画像群を生成し、当該視差画像群に基づいて、表示部15による出力内容を制御する。表示制御部14が奏する機能は、例えば端末10にSoCとして設けられた回路の一機能であってもよいし、表示制御部14専用に設けられた回路が有する機能であってもよい。表示部15は、表示制御部14の制御下で、画像の出力を行う。表示部15は、例えば透過型の液晶ディスプレイであるが、これに限られるものでなく、同様に機能する他の方式によるディスプレイであってもよい。
【0018】
サーバ20は、端末10と通信可能に設けられた情報処理装置である。演算部21は、サーバ20の動作に関する各種の処理を行う。サーバ20は、例えばCPU(Central Processing Unit)として機能する回路を構成に含み、当該CPUが記憶部22から処理内容に応じたプログラム等を読み出して実行処理する。ここでいうプログラム等は、いわゆるソフトウェア・プログラム及び当該ソフトウェア・プログラムの実行処理に際して読み出される各種の情報を含む。
【0019】
記憶部22は、各種のデータを記憶する。記憶部22は、SSD(Solid State DRIVE)、HDD(Hard Disk Drive)その他の記憶装置を少なくとも1つ以上有する。記憶部22は、要素画像群22aと、抽出プログラム22pと、を記憶する。要素画像群22aは、端末10の表示部15によって表示される画像の元になる画像データである。要素画像群22aは、複数の視線に対応する画像データを含む。抽出プログラム22pは、演算部21によって実行処理されるプログラム等である。抽出プログラム22pを実行処理した演算部21は、抽出部25(
図2参照)として機能する。
【0020】
図2は、表示システム1の主要機能構成を示すブロック図である。抽出部25は、取得部11が取得した視線情報に基づいて、要素画像群22aから抽出要素画像群22bを生成する。
【0021】
図3は、表示システム1の主要な処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、端末10の取得部11が、第1周期で視線情報を取得する(ステップS11)。また、ステップS11の処理で取得された視線情報が、端末10からサーバ20へ送信される(ステップS12)。ステップS12の処理による視線情報の送信は、ステップS11が行われる周期である第1周期よりも長い第2周期で行われる。すなわち、ステップS11の処理が第1周期で繰り返し行われることで取得される複数タイミングの各々の視線情報の一部が端末10からサーバ20へ送信される。言い換えれば、係る複数タイミングの各々の視線情報の全てが端末10からサーバ20へ送信されるわけでない。
【0022】
以下、ある時点で行われた1回のステップS12の処理後の処理の流れについて説明する。サーバ20は、ステップS12の処理で送信された視線情報を受信する(ステップS23)。サーバ20の演算部21は、要素画像群22aに含まれる一部のデータを、ステップS23の処理で得られた視線情報が示すユーザの視線に対応した抽出要素画像群22bとして抽出する(ステップS24)。また、ステップS24の処理で生成された抽出視差画像群22bが、サーバ20から端末10へ送信される(ステップS25)。以下、ステップS24の処理で抽出要素画像群22bの生成のために参照された視線情報を、第1時点での視線情報とする。
【0023】
端末10は、ステップS25の処理で送信された抽出要素画像群22bを受信する(ステップS16)。端末10は、ステップS16の処理で得られた抽出要素画像群22bを記憶部13に一時的に記憶する(ステップS17)。端末10の表示制御部14は、ステップS16の処理で得られた抽出要素画像群22bから再現された視差画像群Extに含まれる一対の視差画像を、第1時点よりも後の第2時点で得られた視線情報が示すユーザの視線に対応した表示データとしてから選択する(ステップS18)。第2時点で得られた視線情報とは、第1周期で繰り返されるステップS11の処理で得られた視線情報であって、ステップS17の処理の元になったステップS12の処理で送信された視線情報(第1時点の視線情報)よりも後の時点で行われたステップS11の処理で得られた視線情報である。表示部15は、ステップS18の処理で選択された表示データに対応した出力を行う(ステップS19)。
【0024】
以下、表示システム1による処理の流れに関する各種の事項について、より詳細に説明する。まず、実施形態で表示部15によって出力される画像の理論的背景について、
図4と
図5を参照して説明する。
【0025】
図4は、自然環境下におけるヒトによる立体物の視認の仕組みを示す概略図である。
図4等で示す右目ERと左目ELは、一人のヒトであるユーザの右目と左目である。
【0026】
一般的に、ユーザによる対象物FBの視認は、光源SUから発せられた光が対象物FBによって反射されて右目ER、左目ELに到達することで成立する。また、立体視は、ヒトの右目と左目で視認する像にずれがあることによって成立している。例えば、
図4に示す対象物FBの点P1では、右目ERに向かう反射光L11と、左目ELに向かう反射光L12と、の両方が生じている。ここで、反射光L11と、反射光L12と、は同一でない。また、対象物FBの点P2では、左目ELに向かう反射光L22が生じているが、右目ERに向かう反射光は生じていない。このような、対象物FBの各所における光の反射の度合いや差異によって、ユーザによる対象物FBの立体視が成立している。
【0027】
上記した立体視の仕組みに基づき、立体視が成立するように右目ERに到達する光及び左目ELに到達する光を制御することで、人為的に立体像を視認させることができる。
【0028】
図5は、インテグラルイメージング方式の3D画像(立体像)の出力及びユーザによる当該3D画像の視認の仕組みを示す概略図である。例えば、
図5に示す3D再現オブジェクトVFBが、
図4に示す対象物FBの3D画像であるとする。また、
図5に示す仮想点VP1が、
図4に示す点P1に対応する位置であり、ユーザの右目ER及び左目ELの焦点であるとする。また、
図5に示す仮想点VP2が、
図4に示す点P2に対応する位置であるとする。
【0029】
3D再現オブジェクトVFBをユーザに視認させる3D出力を行いたい場合、少なくとも、光VL11を右目ERに到達させ、光VL12,VL22を左目ELに到達させる必要がある。光VL11は、反射光L11に対応する光である。光VL12は、反射光L12に対応する光である。光VL22は、反射光L22に対応する光である。ここでは、説明を簡略化する目的で、光VL11,VL12,VL22に関する説明に特化し、3D再現オブジェクトVFBをユーザに視認させるために必要な他の光の射線については説明を省略する。
【0030】
図5では、画像表示パネルDP及び視差形成部Parによって、点VO11から光VL11が出力され、点VO12から光VL12が出力され、点VO22から光VL22が出力される例を示している。これによって、ユーザは、3D再現オブジェクトVFBを視認できる。
【0031】
なお、単純な表示装置では、点VO11からの出力を左目ELでも視認でき、点VO12,VO22からの出力を右目ERでも視認できてしまうことから、3D再現オブジェクトVFBのような3D画像の出力が成立しなくなる。そこで、
図5に示す例では、点VO11からの出力を左目ELから視認できなくし、点VO12,VO22からの出力を右目ERから視認できなくする構成として、視差形成部Parが設けられている。
【0032】
より具体的には、
図4において第1方向DXに並ぶユーザに対して第3方向DZに位置する対象物FBと実質的に同様の3D再現オブジェクトVFBをユーザに視認させるインテグラルイメージング方式の3D表示を実現するためには、ユーザの右目ERと左目ELとの並びに対する画像表示パネルDPからの光の出射方向を
図4に示す状態に対応させる必要がある。以下、ユーザの右目ERと左目ELと、画像表示パネルDPのような表示装置と、の位置関係に係る説明において、右目ERと左目ELとの並び方向をX方向とする。X方向は、
図4に示す第1方向DXに対応する。また、ユーザと表示装置(例えば、画像表示パネルDP、端末10)との対向方向をZ方向とする。Z方向は、
図4に示す第3方向DZに実質的に対応する。また、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。Y方向は、
図4に示す第2方向DYに対応する。第2方向DYは、第1方向DX及び第3方向DZに直交する。
【0033】
図6及び
図7は、インテグラルイメージング方式及び視差方式を含む3D表示を実現するために用意される画像の撮像方法の一例を示す概略図である。
図6及び
図7では、撮像対象であり、表示システム1による3D画像の出力による再現の対象を、オブジェクトOBとして示している。オブジェクトOBは、オブジェクトOB1と、オブジェクトOB2とを含む。なお、オブジェクトOBはあくまで説明のために例示されている撮像対象に過ぎず、実施形態で出力可能な画像の元になる撮像対象はオブジェクトOBに限られるものでなく、撮像可能なあらゆるモノであってよい。
【0034】
上記3D表示の出力では、異なる位置にいる複数のユーザの各視点や一人のユーザの視点移動にも柔軟に対応できるよう、X方向及びY方向の両方について複数の画像データが準備される。従って、
図6及び
図7に示すように、X方向及びY方向に並ぶ複数の撮像装置Cx(1),…,Cx(m),Cy(1),…,Cy(n)によるオブジェクトOBの撮像が行われ、3Dの出力の大元となる画像データが生成される。より具体的には、各撮像装置により元画像が撮像され、それら複数の元画像を上記撮像装置Cx(1),…,Cx(m),Cy(1),…,Cy(n)の並びに合わせて並べた元画像群が生成される。
【0035】
なお、
図6に示す撮像装置Cx(1),…,Cx(m)と、
図7に示す撮像装置Cy(1),…,Cy(n)と、は個別の撮像装置の列を示すものでなく、X方向及びY方向にマトリクス状に配置されてオブジェクトOBと対向する複数の撮像装置を示している。言い換えれば、
図6に示すようなX方向に並ぶ撮像装置Cx(1),…,Cx(m)が、
図7に示すように、Y方向に撮像装置Cy(1),…,Cy(n)だけ並んでいる。
【0036】
図6に示す撮像装置Cx(1),…,Cx(m)のmは、X方向に並ぶ撮像装置の数を示す。また、
図7に示す撮像装置Cy(1),…,Cy(n)のnは、Y方向に並ぶ撮像装置の数を示す。m,nは3以上の自然数である。mとnとは同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、
図6及び
図7に示す(C-1),(C),(C+1)は、X方向及びY方向の撮像装置の並びにおいて中間点付近に配置されている撮像装置を抜粋的に示すことを目的に記載されたものであり、それ以上に特段の意味はない。なお、
図6及び
図7のように、撮像装置Cx(C)が存在する撮像装置の並びでは、m,nが奇数であることになるが、3Dの出力に対応した画像データの生成のための撮像に用いられる撮像装置の並び数は奇数に限られるものでなく、X方向及びY方向の少なくとも一方について偶数であってもよい。
【0037】
図8は、オブジェクトOB側から見た撮像装置の並びの例を示す概略図である。
図8に示すように、実施形態では、オブジェクトOB側から見た場合、複数の撮像装置がマトリクス状に並んでいる。
図8においてX方向に並ぶ撮像装置の数は、mであり、
図6に対応している。
図8においてY方向に並ぶ撮像装置の数は、nであり、
図7に対応している。実施形態における複数の撮像装置を区別したい場合、
図8に示すX方向の座標の番号(1からmのいずれか)と、Y方向の座標の番号(1からnのいずれか)と、によって区別できる。例えば、撮像装置Cx(1)かつ撮像装置Cy(1)である撮像装置は、
図8において左上角に位置する撮像装置になる。なお、
図8はあくまで複数の撮像装置の配置を分かりやすく示すことを目的とした概略図であり、複数の撮像装置の向き等の詳細な態様を反映したものでない。実際には、複数の撮像装置の各々のフォーカスはオブジェクトOB側に向いている。
【0038】
図9は、要素画像群22aの内容の一例を示す概略図である。要素画像群22aは、
図5で説明したインテグラルイメージング方式の3D表示に対応した画像データであって、元画像群を加工して得られる。
図9に示すように、要素画像群22aは、二次元的に配置された複数の要素画像Aを含む。
【0039】
より具体的には、
図9に示す要素画像群22aは、マトリクス状に配置されたH×Vの要素画像Aを含む。H,Vは3以上の自然数である。本形態においては、当該H、Vは、上記撮像装置Cx、Cyにて撮像された画像のx方向の画素数及びy方向の画素数に等しい。換言すると、各元画像はH×Vの画素データから構成されており、また、要素画像群22aは、撮像装置の画素数に等しいH×V個の要素画像Aを有する。また、
図9では、Hブロック(block)並ぶ要素画像AのX方向の位置と、Vブロック(block)並ぶ要素画像AのY方向の位置と、の組み合わせによる座標系(A(h,v))で要素画像Aの各々の位置を示している。hは、H以下の自然数である。vは、V以下の自然数である。例えば、A(1,1)の符号は、X方向の一端側かつY方向の一端側に配置された要素画像Aを示す。A(H,V)の符号は、X方向の他端側かつY方向の他端側に配置された要素画像Aを示す。
【0040】
図9では、要素画像群22aがマトリクス状に配置されたH×Vの要素画像Aを含む例を示しているが、要素画像群22aが含む要素画像Aの二次元配置は、マトリクス状に限定されるものでなく、例えばY方向に隣り合う要素画像Aの行の一方においてX方向に並ぶ要素画像Aの数と、他方においてX方向に並ぶ要素画像Aの数と、が異なっていてもよい。
【0041】
要素画像Aについてより詳細に説明する。
図10は、1つのある要素画像A(h,v)の内容を示す概略図である。
図10に示すように、要素画像A(h,v)は、X方向にm、Y方向にnの画素データがマトリクス状に配置された画像データである。以下、(X,Y)=(α,β)の座標系は、要素画像A(h,v)に含まれる画素データの位置を示す。αはm以下の自然数である。βはn以下の自然数である。例えば、(X,Y)=(1,1)の画素データと記載した場合、
図10においてX=1であり、かつ、Y=1である画素データをさす。(X,Y)=(m,n)の画素データと記載した場合、
図10においてX=mであり、かつ、Y=nである画素データをさす。
図10に示す要素画像A(h,v)におけるX方向、Y方向の各々の画素の並び数(m,n)は、
図8を参照して説明した複数の撮像装置のX方向、Y方向の各々の並び数(m,n)に対応する。なお、元画像群のうち一部の元画像のみを抽出して要素画像群を生成する場合は、要素画像A(h,v)におけるX方向、Y方向の各々の画素の並び数(m,n)は、
図8を参照して説明した複数の撮像装置のX方向、Y方向の各々の並び数(m,n)よりも小さくなる。
【0042】
要素画像A(h,v)に含まれる(X,Y)=(α,β)の画素データは、X方向に並ぶ撮像装置Cx(1),…,Cx(m)(
図6参照)のうち、Cx(α)に位置し、かつ、Y方向に並ぶ撮像装置Cy(1),…,Cy(n)(
図7参照)のうち、Cy(β)に位置する撮像装置によって撮像された元画像に含まれる画素データである。
【0043】
図6及び
図7を参照して説明した、X方向及びY方向にマトリクス状に配置されてオブジェクトOBと対向する複数の撮像装置の各々は、X方向にH、Y方向にVの画素データがマトリクス状に配置された画像データを生成する。すなわち、係る複数の撮像装置の各々は、係る画像データを生成可能な撮像素子を有する。
図9に示す要素画像A(1,1)は、係る複数の撮像装置の各々によって生成された複数の元画像の各々に含まれるH×Vの画素データのうち、X方向の一端側かつY方向の一端側に配置された画素データを含む。
【0044】
例えば、要素画像A(1,1)(
図9参照)に含まれる画素データのうち、(X,Y)=(1,1)の画素データ(
図10参照)は、撮像装置Cx(1)(
図6参照)に位置し、かつ、撮像装置Cy(1)(
図7参照)に位置する撮像装置によって撮像された元画像に含まれるH×Vの画素データのうち、X方向の一端側かつY方向の一端側に配置された画素データである。また、例えば、要素画像A(1,1)(
図9参照)に含まれる画素データのうち、(X,Y)=(m,n)の画素データ(
図10参照)は、撮像装置Cx(m)(
図6参照)に位置し、かつ、撮像装置Cy(n)(
図7参照)に位置する撮像装置によって撮像された元画像に含まれるH×Vの画素データのうち、X方向の一端側かつY方向の一端側に配置された画素データである。
【0045】
また、要素画像A(H,V)(
図9参照)に含まれる画素データのうち、(X,Y)=(1,1)の画素データ(
図10参照)は、撮像装置Cx(1)(
図6参照)に位置し、かつ、撮像装置Cy(1)(
図7参照)に位置する撮像装置によって撮像された元画像に含まれるH×Vの画素データのうち、X方向の他端側かつY方向の他端に配置された画素データである。また、例えば、要素画像A(H,V)(
図9参照)に含まれる画素データのうち、(X,Y)=(m,n)の画素データ(
図10参照)は、撮像装置Cx(m)(
図6参照)に位置し、かつ、撮像装置Cy(n)(
図7参照)に位置する撮像装置によって撮像された元画像に含まれるH×Vの画素データのうち、X方向の他端側かつY方向の他端側に配置された画素データである。すなわち、各要素画像Aは、各撮像装置Cx、Cyによって撮像された画像データのうち、同じ座標位置にある画素データごとに集め、それを撮像装置の並び順に沿って並べることによって再構成される画像である。当該要素画像は、上記インテグラルイメージング方式の3D表示の画面表示に供する。
【0046】
従って、
図9に示す要素画像群22aに含まれる複数の要素画像Aの各々から(X,Y)=(α,β)の画素データを抽出し、抽出された画素データを複数の要素画像Aの並びに対応させて配置することで得られる画像データは、撮像装置Cx(α)に位置し、かつ、撮像装置Cy(β)に位置する撮像装置によって撮像された元画像に実質的に一致する。これは、かかる画素データの再集合により元画像が再現されると言い換えてもよい。要素画像群22aは、インテグラルイメージング方式の3D表示に用いられる要素画像Aの集合体である画像データであるものの、例えば上記のような考え方で、要素画像群22aから所定の位置にある撮像装置Cによって撮像された画像データ(すなわち元画像)の取得が可能となる。
図9では、係る考え方で生成された画像データの例として、画像G1,GL,GR,Gmを例示している。
【0047】
画像G1と、画像GLと、画像GRと、画像Gmと、はそれぞれ異なる位置からオブジェクトOBを撮像して生成された元画像に一致する。オブジェクトOBに対する撮像の位置及び角度が異なることで、画像G1と、画像GLと、画像GRと、画像Gmと、はそれぞれオブジェクトOB1,OB2の見え方が異なっている。すなわち、これらの画像データの間には視差が生じている。したがって、例えば画像GLをユーザの左目ELに視認させ、画像GRをユーザの右目ERに視認させることで、視差方式の3D表示を行える。すなわち、本実施形態においては、インテグラルイメージング方式に用いられる要素画像(群)の画像データを展開することで、最終的には視差方式による3D表示を実現する。かかる点に鑑み、以下、表示部の表示に供する上記のような画像(例えば、画像G1,GL,GR,Gm)と同様の考え方で利用される画像を視差画像Gとして記載することがある。
【0048】
以下、視差画像Gと記載した場合、要素画像群22aから抽出された画像データであって、かつ、
図6及び
図7を参照して説明した、X方向及びY方向にマトリクス状に配置されてオブジェクトOBと対向する複数の撮像装置のいずれかによって撮像された元画像に一致する画像データをさす。なお、上述の要素画像群22aは、上記各撮像装置から得られた元画像により生成する方法に替えて、1台のカメラの前にm×nのレンズを有するレンズアレイを具えた光学系から得られる画像に基づいても生成可能であるし、上記複数の撮像装置を仮想的に配置した仮想的な光学系を仮定した演算処理によって得ることも可能である。すなわち、例えば所定のオブジェクトOBを3D表示の対象とする場合、サーバ20は、予め準備して、あるいは演算処理により1又は複数の要素画像群22aを記憶部22に保存しておくことができる。
【0049】
ここで、複数の撮像装置の各々によって撮像された元画像gと、要素画像群22aと、抽出要素画像群22bと、視差画像Gとの関係について、m=n=4の場合を例として、
図11及び
図12を参照して説明する。すなわち、4×4×16台の撮像装置が、オブジェクトOB(
図6、
図7参照)に対してX方向及びY方向にマトリクス状に並んでいる場合を例とした説明を行う。
【0050】
図11は、m=n=4である場合の元画像群BFを示す概略図である。
図11では、説明を分かりやすくすることを目的として、各撮像装置によって撮像される元画像gが、X方向に3つの画素が並び、Y方向に3つの画素が並ぶ、いわゆる3×3=9の元画像gであるものとする。また、
図11及び
図14では、元画像gの各画素データが各段階でどのように集められるのかについての理解を助ける目的で、元画像gごとにパターンを付している。すなわち、パターンが異なる矩形は、異なる撮像装置によって撮像された元画像gによるものである。また、
図11及び
図12では、「1つの元画像gに含まれる画素データの位置」を区別する目的で、各元画像gに含まれる9つの矩形(画素イメージ)にそれぞれ異なる値を付している。例えば、「11」が付された矩形は、各元画像gで左上に位置する画素データを示す。
【0051】
図12は、
図11に示す画像データに対応する要素画像群22aを示す概略図である。
図12に示すX方向の座標h(1から3のいずれか)とY方向の座標v(1から3のいずれか)との組み合わせは、
図9及び
図10を参照して説明した要素画像A(h,v)の座標系(h,v)に当てはめることができる値を示す。例えば、
図12においてh=1であり、かつ、v=1である範囲に含まれる16の矩形は、要素画像A(1,1)に含まれる画素データを示す。係る要素画像A(1,1)に含まれる画素データは、
図11に示す元画像gの各々の「11」の画素データである。また、要素画像A(1,1)における画素データの並びは、
図11に示すX方向、Y方向の座標系、すなわち、複数の撮像装置の配置に対応する。
図11と
図12との対応関係が示すように、
図9及び
図10を参照して説明したのと同様、要素画像A(h,v)に含まれる画素データは、
図6から
図8を参照して説明した撮像装置の数及び配置に対応する。
【0052】
図3を参照して説明したステップS25の処理でサーバ20から端末10へ送信される要素画像データは、要素画像群22aの一部である抽出要素画像群22bである。以下、当該抽出要素画像群22bの生成について、
図12に対応した
図13を例として説明する。
【0053】
図13は、抽出要素画像群22bの一例を示す概略図である。
図13に示す抽出要素画像群22bは、
図12に示す要素画像A(h,v)のうち、太い枠線で囲われた部分に含まれる画素データの集合である。係る抽出要素画像群22bは、
図11における複数の撮像装置のX方向の座標(Cx(1から4のいずれか))と、Y方向の座標(Cy(1から4のいずれか))と、の組み合わせで表した場合、(Cx,Cy)=(2,2)、(3,2)、(2,3)及び(3,3)の視差画像Gに対応する。
【0054】
サーバ20は、ステップS24の処理(
図3参照)で、要素画像群22aから、抽出要素画像群22bを抽出する処理を行う。例えば、要素画像群22aが
図12に示すものであって、ステップS23の処理で得られた第1時点の視線情報が、
図12に示す太枠の範囲内に対応する視線情報である場合、サーバ20は、
図13に示す抽出要素画像群22bを抽出する。すなわち、要素画像群22aそのものはデータとしては著しく大きいのみならず、そのすべてが端末10における表示に供されるわけではない。そこで、サーバ20は第1時点の視線情報に基づいて、当該視線情報との関係で必要とされる要素画像群22aの一部のみを抽出して(選抜して)抽出要素画像群22bを生成し且つ端末10に送るのである。
【0055】
端末10は、ステップS16の処理(
図3参照)で得られた抽出要素画像群22bを展開して視差画像Gを生成する処理を行うことができる。
【0056】
図14は、
図13から生成された視差画像Gを含む視差画像群Extを示す概略図である。
図12と
図13との対応関係で説明したように、
図13に示す抽出要素画像群22bは、(Cx,Cy)=(2,2)、(3,2)、(2,3)及び(3,3)に対応する元画像gの画素データを含んでいる。従って、
図9及び
図10を参照して説明した画素データと元画像gとの関係から、端末10は、抽出要素画像群22bから、上記座標に対応する元画像gと同一の視差画像Gを生成できる。
【0057】
以上、
図11から
図14に示す分かりやすい例を用いて、抽出要素画像群22bがどのように構成されているか、係る抽出要素画像群22bから端末10が元画像に一致する視差画像をどのように生成するのか、を説明した。以下、抽出要素画像群22bから端末10によって再現された画像データ(視差画像群Ext(θ°))について、実際の態様により近いものを、
図15を参照して説明する。
【0058】
図15は、視差画像群Ext(θ°)の構成例を示す概略図である。
図15に示すように、視差画像群Ext(θ°)は、マトリクス状に配置されたp×qの視差画像Gを含む。p,qは3以上の自然数である。また、pは、H未満である。また、qは、V未満である。
図15では、pブロック(block)並ぶ視差画像GのX方向の位置と、qブロック(block)並ぶ視差画像GのY方向の位置と、の組み合わせによる座標系(G(φ,ψ))で視差画像群Ext(θ°)の各々の位置を示している。φは、p以下の自然数である。ψは、q以下の自然数である。例えば、G(1,1)の符号は、X方向の一端側かつY方向の一端側に配置された視差画像Gを示す。G(p,q)の符号は、X方向の他端側かつY方向の他端側に配置された視差画像Gを示す。
【0059】
視差画像群Ext(θ°)は、X方向の角度θx及びY方向の角度θyに基づいて要素画像群22aから抽出された抽出要素画像群22aを展開して生成されており、複数の視差画像Gを含む。角度θxは、上述したステップS12の処理(
図3参照)で端末10からサーバ20へ送信された視線情報が示すユーザの視線角度(θ°)のうち、X方向の基準となる角度である。角度θyは、上述したステップS12の処理(
図3参照)で端末10からサーバ20へ送信された視線情報が示すユーザの視線角度(θ°)のうち、Y方向の角度である。
【0060】
なお、後述する
図18、
図21等で示すように、表示部15(
図1、
図2参照)は、X方向及びY方向に直交する画像表示面15aを有し、画像表示面15aから画像を出力する。取得部11は、画像表示面15aに直交する基準軸、すなわち、Z方向に沿う基準軸に対する角度として、X方向の角度θx及びY方向の角度θyを導出する。
【0061】
図6に示す撮像装置Cx(1),…,Cx(m)は、それぞれ異なるX方向の撮像角度(θx(1),…,θx(m))から撮像を行う。また、
図7に示す撮像装置Cy(1),…,Cy(n)は、それぞれ異なるY方向の撮像角度(θy(1),…,θy(n))から撮像を行う。要素画像群22aは、Cx(α)に位置し、Cy(β)に位置する撮像装置によって撮像された元画像が、角度θxα及び角度θyβに対応する画像データであることを示す情報を含む。すなわち、(X,Y)=(α,β)の画素データは、角度θxα及び角度θyβに対応する画素データである。
図15に示す視差画像群Ext(θ°)は、ステップS24の処理で要素画像群22aから抽出され、ステップS25の処理でサーバ20から端末10へ送信された抽出要素画像群22bを展開して生成される。言い換えれば、当該抽出要素画像群22bは、
図15に示す視差画像群Ext(θ°)を再現できるよう、要素画像群22aから抽出されている。
【0062】
例えば、角度θx=角度θxαであり、角度θy=角度θyβである場合、視差画像群Ext(θ°)は、以下の第1条件及び第2条件の両方に該当する元画像を含む。第1条件は、撮像装置Cx(1),…,Cx(m)のうち、Cx(α)を中心としてX方向に並ぶp個の撮像装置に含まれることである。第2条件は、撮像装置Cy(1),…,Cy(n)のうち、Cy(β)を中心としてY方向に並ぶq個の撮像装置に含まれることである。また、この場合、
図15に示す視差画像GCは、Cx(α)に位置し、Cy(β)に位置する撮像装置によって撮像された元画像である。この場合の例で示すように、視差画像群Ext(θ°)は、角度θx及び角度θyに対応する画像データを生成した撮像装置を中心として、X方向にp個の撮像装置、Y方向にq個の撮像装置によって撮像されたp×qの画像データを含む。あるいはまた、サーバにて抽出プログラム22pと協働してなる演算部(すなわち抽出部)は、要素画像群22aに対し、角度θx及び角度θyに対応する元画像の画素イメージと、当該元画像を中心として、X方向にp個の元画像、Y方向にq個の元画像の画素イメージを含むように画素データを抽出し、それらを並べて抽出要素画像群22bを生成する。
【0063】
なお、特定の元画像の撮像角度が角度θxや角度θyに一致するとは限らない。その場合、抽出部25(
図2参照)は、ステップS24の処理(
図3参照)において、撮像角度(θx1,…,θxm)のうち角度θxに最も近い撮像角度であって、かつ、撮像角度(θy1,…,θyn)のうち角度θyに最も近い撮像角度である元画像を視差画像GC(
図15参照)に対応する画像とみなして選択する。ただし、抽出部25は、撮像角度(θx1,…,θxm)のうち角度θxに最も近い撮像角度を角度θxとみなすわけでなく、撮像角度(θy1,…,θyn)のうち角度θyに最も近い撮像角度を角度θyとみなすわけでない。角度θx,θyと、視差画像GCを生成した撮像装置の撮像角度と、は個別に管理される。
【0064】
また、pが偶数である場合、p×qの画像データを含む視差画像群Ext(θ°)(
図15参照)における視差画像GCは、
図15に示すようにX方向の中心に位置するわけでなく、X方向の中心に対してX方向の一端側又は他端側に1つずれた位置を取ることになる。ここで、視差画像GCがX方向の一端側に位置する場合、視差画像群Ext(θ°)は、視差画像GCを生成した撮像装置を基準として、当該基準からX方向の一端側に連続して並ぶ{(p/2)-1}個の撮像装置と、当該基準からX方向の他端側に連続して並ぶ{(p/2)}個の撮像装置と、によって撮像された画像データを含む。また、視差画像GCがX方向の他端側に位置する場合、視差画像群Ext(θ°)は、視差画像GCを生成した撮像装置を基準として、当該基準からX方向の一端側に連続して並ぶ{(p/2)}個の撮像装置と、当該基準からX方向の他端側に連続して並ぶ{(p/2)-1}個の撮像装置と、によって撮像された画像データを含む。qが偶数である場合の視差画像GCと、視差画像群Extθ°に含まれるY方向のq個の画像データの並びについても同様の考え方が適用される。
【0065】
ここで、視差画像GCは、視差画像群Extのもとになる抽出要素画像群22bが抽出された時点(第1時点)での基準角度(θ°)に対応した画像データとして機能する。また、視差画像群Extに含まれる視差画像GC以外の画像データは、当該第1時点での当該基準角度にそれぞれ異なる誤差角度を加算又は減算した角度に対応した画像データとして機能する。
【0066】
実施形態では、例えば、m=32,n=32,H=246,V=432,p=16,q=5であるが、これらの具体的な値はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0067】
以下、
図3を参照して説明したステップS12の処理で端末10からサーバ20へ送信される視線情報が示す視線角度と、ステップS24の処理で要素画像群22aから抽出される抽出要素画像群22bから再現された視差画像群Extと、ステップS18の処理で視差画像群Extから選択される表示データと、の関係の一例について、
図16から
図23を参照して説明する。
【0068】
図16は、表示システム1で行われる情報処理の流れを概略的に示すタイムチャートである。
図16及び後述する
図25では、表示システム1で行われる情報処理の流れにおける起点となるタイミングをタイミングT1としている。
【0069】
まず、タイミングT1にステップS11の処理(
図3参照)が行われる。すなわち、タイミングT1に取得部11が視線情報を取得する。ここで、上述したように、ステップS11の処理は、第1周期で行われる。
図16及び
図25では、第1周期をタイミングT1,T2,T3,T4,T5,T6,…で示している。また、
図16及び
図25では、タイミングT1,T2,T3,T4,T5の各々で取得された視線情報を、θ1°,θ2°,θ3°,θ4°,θ5°として示している。θ1°,θ2°,θ3°,θ4°,θ5°はそれぞれ、上記した角度θxを示す情報及び角度θyを示す情報を含む(
図15参照)。
【0070】
また、ステップS12の処理(
図3参照)による端末10からサーバ20への視線情報の送信は、第2周期で行われる。
図16及び
図25では、第2周期をタイミングT1,T3,T5,…で示している。すなわち、第2周期は、第1周期よりもインターバルが長い。
図16及び
図25では、タイミングT1,T3,T5の各々で取得された視線情報(θ1°,θ3°,θ5°)がステップS12の処理で端末10からサーバ20へ送信されていることを、取得部11から抽出部25への二点鎖線の矢印で示している。
【0071】
ステップS24の処理(
図3参照)として説明したように、抽出部25は、ステップS12の処理で送信され、ステップS23の処理で受信した視線情報(θ1°)に基づいて、要素画像群22aから視差画像群Extのもとになる抽出要素画像群22bを生成する。抽出要素画像群22bは、ステップS25の処理でサーバ20から端末10へ送信される。係る抽出要素画像群22bの抽出及び送信は、ステップS23の処理が生じる度に行われる。
図16及び後述する
図25では、取得部11から表示制御部15に向かう矢印によって抽出要素画像群22bの送信が示されている。
【0072】
図16及び
図25では、タイミングT1に取得部11によって取得された視線情報(θ1°)に基づいて生成された抽出要素画像群22bから再現された視差画像群Extである視差画像群Ext(θ1°)と、タイミングT3に取得部11によって取得された視線情報(θ3°)に抽出要素画像群22bから再現された視差画像群Extである視差画像群Ext(θ3°)と、を例示している。視線情報に基づいた視差画像群Extの抽出は、視線情報の受信から第2周期の経過までに完了している。すなわち、次の視線情報の受信までに、前の視線情報に基づいた要素画像データの抽出は完了している。
【0073】
ステップS25の処理(
図3参照)によるサーバ20から端末10への抽出要素画像群22bの送信及びステップS16の処理による抽出要素画像群22bの受信は、第2周期又はそれに準じたインターバルで行われる。抽出要素画像群22bからの視差画像群Extの展開は、ステップS16の処理後、ステップS19の処理前までに行われる。
図15及び
図25では、視差画像群Ext(θ1°)の再現がタイミングT3前後に行われ、視差画像群Ext(θ3°)の再現がタイミングT5前後に行われている例を示している。
【0074】
なお、端末10が視差画像群Ext(θ1°)の展開を完了することと並行して、取得部11によるタイミングT3時点での視線情報(θ3°)の取得が行われている。ここで、視差画像群Ext(θ1°)のもとになる抽出要素画像群22bを要素画像群22aから抽出する際に参照された視線情報(θ1°)を第1時点(ここでは、タイミングT1)の視線情報とする。この場合、端末10は、当該第1時点の視線情報に基づいた視差画像群Ext(θ1°)のもとになる抽出要素画像群22bの受信を完了した時点で、取得部11によって当該第1時点よりも後の第2時点(ここでは、タイミングT3)の視線情報(θ3°)を取得している。つまり、この時点で視線はθ3にも関わらず、受信して展開した視差画像群Extの視線の中心は(θ1)のものであることがわかる。そこで、ステップS18の処理(
図3参照)で、表示制御部14は、当該第2時点の視線情報(θ3°)に基づいて、当該第1時点の視線情報に基づいた視差画像群Ext(θ1°)から、当該第2時点の視線情報(θ3°)に対応した視差画像Gを選択する。これによって、当該第1時点の視線情報に基づく視差画像群Extのうちから第2の視線情報、すなわち最新の視線情報を基にした適切な視差画像(第1視差画像GR3と第2視差画像GL3)が選択される。
【0075】
図16では、第1時点(ここでは、タイミングT1)の視線情報(θ1°)に基づく限り、視差画像群Ext(θ1°)において表示データを構成する視差画像として選択される画像データを、第1視差画像GR1と第2視差画像GL1として示している。また、ステップS18の処理で、当該第1時点よりも後の第2時点(ここでは、タイミングT3)の視線情報(θ3°)に基づいて選択される表示データを構成する視差画像として選択される画像データを、第1視差画像GR3と第2視差画像GL3として示している。係る選択は、タイミングT3とタイミングT4と間の期間に行われる。ステップS19の処理で、表示部15は、このようにして表示制御部14に選択された第1視差画像GR3と第2視差画像GL3とに基づいた表示データを、タイミングT4とタイミングT5との間の期間に表示する。すなわち、表示部15は、タイミングT1時点の視線情報に対応した視差画像群Ext(θ1°)から、タイミングT3時点の視点情報に対応した表示データD(θ3°)の出力を、まだ視差画像群Ext(θ3°)に基づいた出力を行えないタイミングT4時点で行える。
【0076】
続いて、端末10が視差画像群Ext(θ1°)のもとになる抽出要素画像群22bの受信を完了した後、取得部11によるタイミングT4時点での視線情報(θ4°)の取得が行われている。ここで、視差画像群Ext(θ1°)のもとになる抽出要素画像群22bを要素画像群22aから抽出する際に参照された視線情報(θ1°)を第1時点(ここでは、タイミングT1)の視線情報とする。この場合、端末10は、当該第1時点の視線情報に基づいた視差画像群Ext(θ1°)のもとになる抽出要素画像群22bの受信を完了した時点で、取得部11によって当該第1時点よりも後の第2時点(ここでは、タイミングT4)の視線情報(θ4°)を取得している。ステップS18の処理(
図3参照)で、表示制御部14は、当該第2時点の視線情報(θ4°)に基づいて、当該第1時点の視線情報に基づいた視差画像群Ext(θ1°)から、当該第2時点の視線情報(θ4°)に対応した視差画像Gを選択する。これによって、当該第1時点の視線情報に基づく視差画像群Extのうちから第2の視線情報、すなわち最新の視線情報を基にした適切な視差画像(第1視差画像GR4と第2視差画像GL4)が選択される。
【0077】
図16では、ステップS18の処理で、当該第1時点よりも後の第2時点(ここでは、タイミングT4)の視線情報(θ4°)に基づいて選択される表示データを構成する画像データとして選択される画像データを、第1視差画像GR4と第2視差画像GL4として示している。係る選択は、タイミングT4とタイミングT5と間の期間に行われる。ステップS19の処理で、表示部15は、このようにして表示制御部14に選択された第1視差画像GR4と第2視差画像GL4とに基づいた表示データを、タイミングT5とタイミングT6との間の期間に表示する。
【0078】
また、端末10が視差画像群Ext(θ3°)のもとになる抽出要素画像群22bの受信を完了することと並行して、取得部11によるタイミングT5時点での視線情報(θ5°)の取得が行われている。ここで、視差画像群Ext(θ3°)のもとになる抽出要素画像群22bを要素画像群22aから抽出する際に参照された視線情報(θ3°)を第1時点(ここでは、タイミングT3)の視線情報とする。この場合、端末10は、当該第1時点の視線情報に基づいた視差画像群Ext(θ3°)のもとになる抽出要素画像群22bの受信を完了した時点で、取得部11によって当該第1時点よりも後の第2時点(ここでは、タイミングT5)の視線情報(θ5°)を取得している。ステップS18の処理(
図3参照)で、表示制御部14は、当該第2時点の視線情報(θ5°)に基づいて、当該第1時点の視線情報に基づいた視差画像群Ext(θ3°)から、当該第2時点の視線情報(θ5°)に対応した表示データを選択する。これによって、当該第1時点の視線情報に基づく視差画像群Extのうちから第2の視線情報、すなわち最新の視線情報を基にした適切な視差画像(第1視差画像GR5と第2視差画像GL5)が選択される。
【0079】
図16では、第1時点(ここでは、タイミングT3)の視線情報(θ3°)に基づく限り、視差画像群Ext(θ3°)において表示データを構成する画像データとして選択される画像データを、第1視差画像GR3と第2視差画像GL3として示している。また、ステップS18の処理で、当該第1時点よりも後の第2時点(ここでは、タイミングT5)の視線情報(θ3°)に基づいて選択される表示データを構成する画像データとして選択される画像データを、第1視差画像GR5と第2視差画像GL5として示している。係る選択は、タイミングT5とタイミングT6と間の期間に行われる。ステップS19の処理で、表示部15は、このようにして表示制御部14に選択された第1視差画像GR5と第2視差画像GL5とに基づいた表示データを、タイミングT6以降の期間に表示する。このことにより、第2の視線情報に基にした適切な視差画像群Extを選択することができる。
【0080】
図示しないが、タイミングT6以降も表示システム1が動作し続ける場合、第1周期での取得部11による視線情報の取得、第2周期での視線情報の送受信、抽出部25による第1時点での視線情報に基づいた視差画像群Extのもとになる要素画像データの抽出、当該抽出要素画像群22bからの視差画像群Extの再現、表示制御部14による第2時点での視線情報に基づいた視差画像群Extからの表示データの選択及び表示部15による表示データの出力が繰り返し行われる。
【0081】
以下、視線情報と、視差画像群Extに含まれる表示データと、表示制御部14による表示データの選択と、のより詳細な事項について、
図17から
図23を参照して説明する。なお、説明の簡略化を目的として、タイミングT1の視線情報(θ1°)とタイミングT3の視線情報(θ3°)との間には、X方向の視線角度の変化のみあったものとする。
【0082】
図17は、視差画像群Ext(θ1°)に含まれる複数の視差画像(すなわち元画像)と、第1時点の視線情報(θ1°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR1及び第2画像視差GL1と、の関係の一例を示す概略図である。
図18は、第1時点の視線情報(θ1°)が示すX方向の角度(θx1)と、当該第1時点でのユーザの目の位置と、の関係の一例を示す概略図である。
【0083】
視差画像群Ext(θ1°)のような視差画像群Extは、
図15を参照して説明したように、X方向の角度θx及びY方向の角度θyを中心として複数の視差画像(すなわち元画像)を含む。
図17等では、視差画像群Ext(θ1°)のもとになる抽出要素画像群22bが抽出された時点(第1時点)でのX方向の角度θxを、角度θx1として示している。また、当該第1時点でのY方向の角度θyを、角度θy1として示している。また、当該中心をX方向に0°、Y方向に0°の角度とすると、
図17に示す視差画像群Extは、係る複数の画像データを含むことで、X方向に±12°、Y方向に±3.2°の角度範囲におけるユーザの視線をカバーしている。言い換えれば、実施形態の視差画像群Extは、当該第1時点のユーザの視線情報が示す視線角度を中心として、X方向に±12°、Y方向に±3.2°の角度範囲内でユーザが視線角度を変えて視認可能な画像を含んでいる。あるいはまた、サーバ20の抽出部25は、一対の視差画像データ(例えば、
図17に示す第1視差画像GR1と第2視差画像GL1)が常に当該位置となるように各視線情報に基づく抽出要素画像群22bを生成している、ともいえる。
【0084】
実施形態では、視線情報は、取得部11の撮像部11aによって撮像されたユーザの顔画像に含まれる右目ER及び左目ELが、表示部15の画像表示面15aを見ているものとして視線情報を導出する。すなわち、実施形態の取得部11は、端末10の設計によって予め定められた撮像部11aの配置及び画角と画像表示面15aとの位置関係に基づいて、ユーザの顔画像に含まれる右目ER及び左目ELの焦点が画像表示面15aに収束しているものとして視線情報を導出する。
【0085】
図18及び後述する
図20では、視差画像群Ext(θ1°)のもとになる抽出要素画像群22bが抽出された時点(第1時点)でのユーザの視線情報(θ1°)が示すX方向の角度θx1が、ユーザが表示部15の画像表示面15aにおけるX方向の中心点を見ている場合を例示している。また、
図18及び
図20では、この場合のユーザの右目ERの位置を右目ER1とし、当該ユーザの左目ELの位置を左目EL1としている。
【0086】
また、
図18及び
図20に示すように、ユーザの視線情報(θ1°)が示すX方向の角度θx1は、基準線と、Z方向と、の間の角度である。当該基準線は、右目ER1と左目EL1とのX方向の中間点CP(
図25参照)と、右目ER1と左目EL1との焦点と、を結ぶ直線である。当該基準線を中心として、焦点と右目ER1とを結ぶ直線と、焦点と右目ER1とを結ぶ直線と、の間には角度W°の開きがある。
図18及び
図20では、焦点と右目ER1とを結ぶ直線を、{(θ1+(W/2)}°の直線として示している。また、焦点と左目EL1とを結ぶ直線を、{(θ1-(W/2)}°の直線として示している。
【0087】
ここで、上記したように、視差画像群Extに含まれるX方向の中心に対応する画像は、ユーザの視線情報(θ1°)が示すX方向の角度θx1に対応している。一方、右目ER1の視線角度は、角度θx1でなく、{(θ1+(W/2)}°である。また、左目EL1の視線角度は、{(θ1-(W/2)}°である。このような、視線情報(θ1°)が示すX方向の角度θx1と、右目ER1及び左目EL1の各々の視線角度と、の関係を鑑みると、視差方式の3D画像をユーザに視認させるためには、右目ER1の視線角度と左目EL1の視線角度に個別に対応した出力を行う必要がある。従って、
図17等に示すように、右目ER1によって視認されることを想定して選択される第1視差画像GR1は、角度θx1に直接対応する位置の画像データではなく、角度θx1からX方向に一方側に所定角度(例えば、4.0°)ずれた位置の画像データである。また、左目EL1によって視認されることを想定して選択される第2視差画像GL1は、角度θx1に直接対応する位置の画像データではなく、角度θx1からX方向に他方側に所定角度(例えば、-4.0°)ずれた位置の画像データである。なお、実施形態の表示制御部14は、角度θx1から{(θ1±(W/2)}を導出可能なアルゴリズムが反映された回路又はプログラム等を保持する。
【0088】
図19は、視差画像群Ext(θ1°)に含まれる複数の視差画像(すなわち元画像)と、第1時点の視線情報(θ1°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR1及び第2画像視差GL1と、第2時点の視線情報(θ3°)に基づいて表示データとして選択される第1画像視差GR3及び第2画像視差GL3と、の関係の一例を示す概略図である。
図20は、第1時点の視線情報(θ1°)が示す視線角度(θx1)及び当該第1時点でのユーザの目の位置と、第2時点の視線情報(θ3°)が示す視線角度(θx3)及び当該第2時点でのユーザの目の位置と、の関係の一例を示す概略図である。
【0089】
上記したように、表示制御部14が第2時点の視線情報(θ3°)に対応した表示データを選択することによって、第1時点の視線情報(θ1°)に基づく限り表示されていたはずの表示データとは異なる表示データが選択されることがある。
図19では、第1視差画像GR1とは異なる第1視差画像GR3と、第2視差画像GL1とは異なる第2視差画像GL3と、が選択されている例を示している。
【0090】
図19及び
図20に示すように、第2時点の視線情報(θ3°)が示すX方向の角度θx3は、第1時点の視線情報(θ1°)が示すX方向の角度θx1に対してX方向にずれている。当然、角度θx3に対応したユーザの右目ERの位置である右目ER3の視線角度{(θ3+(W/2)}°も、右目ER1の視線角度{(θ1+(W/2)}°に対してずれている。また、角度θx3に対応したユーザの左目ELの位置である左目EL3の視線角度{(θ3-(W/2)}°も、左目EL1の視線角度{(θ1-(W/2)}°に対してずれている。第2時点の視線情報(θ3°)に基づいて表示データを選択する表示制御部14は、このようなX方向の視線角度のずれが反映された画像データを表示データとして選択する。これによって、表示制御部14は、第2時点の視線情報(θ3°)に対応した表示データとして、第1視差画像GR3と第2視差画像GL3を選択する。
【0091】
以上、第1時点の視線情報と第2時点の視線情報との間のX方向の視線角度のずれについて、
図17から
図20を参照して説明した。次に、第1時点の視線情報と第2時点の視線情報との間のY方向の視線角度のずれについて、
図21から
図23を参照して説明する。なお、説明の簡略化を目的として、タイミングT3視線情報(θ3°)とタイミングT4の視線情報(θ4°)との間には、Y方向の視線角度の変化のみあったものとする。
【0092】
図21は、ユーザの視線情報が示すY方向の角度を示す概略図である。
図21に示す角度θy1は、第1時点での視線情報(θ1°)が示すY方向の角度である。また、視線情報(θ1°)と視線情報(θ3°)では、視線情報が示すY方向の角度が変化していない。従って、
図20から
図23では、角度θy1(=θy3)として示している。
【0093】
なお、実施形態ではユーザの右目ERと左目ELはX方向に並んでおり、Y方向には並ばない。実施形態では、右目ERと左目ELがY方向に同一の位置にあるものとして扱われる。
図21及び後述する
図23では、角度θy1(=θy3)に対応した右目ER及び左目ELの位置を、目E3として示している。
【0094】
図22は、視差画像群Ext(θ1°)に含まれる複数の視差画像(すなわち元画像)と、第1時点の視線情報(θ1°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR1及び第2視差画像GL1と、第2時点の視線情報(θ4°)に基づいて表示データとして選択される第1視差画像GR4及び第2視差画像GL4と、の関係の一例を示す概略図である。
図23は、第1時点の視線情報(θ1°)が示す視線角度(θy1)及び当該第1時点でのユーザの目の位置と、第2時点の視線情報(θ4°)が示す視線角度(θy4)及び当該第2時点でのユーザの目の位置と、の関係の一例を示す概略図である。
【0095】
上記したように、表示制御部14が第2時点の視線情報(θ4°)に対応した表示データを選択することによって、第1時点の視線情報(θ1°)に基づく限り表示されていたはずの表示データとは異なる表示データが選択されることがある。
図23では、第1視差画像GR1とは異なる第1視差画像GR4と、第2視差画像GL1とは異なる第2視差画像GL4と、が選択されている例を示している。
【0096】
図22及び
図23に示すように、第2時点の視線情報(θ4°)が示すY方向の角度θy4は、第1時点の視線情報(θ1°)が示すY方向の角度θy1に対してY方向にずれている。当然、角度θy4に対応したユーザの右目ER及び左目ELの位置である目E4も、目E3に対してずれている。第2時点の視線情報(θ4°)に基づいて表示データを選択する表示制御部14は、このようなY方向の視線角度のずれが反映された画像データを表示データとして選択する。これによって、表示制御部14は、第2時点の視線情報(θ4°)に対応した表示データとして、第1視差画像GR4と第2視差画像GL4を選択する。
【0097】
以上、第1時点の視線情報と第2時点の視線情報との間のX方向の視線角度のずれが生じた場合(
図17から
図20参照)と、第1時点の視線情報と第2時点の視線情報との間のY方向の視線角度のずれが生じた場合(
図21から
図23参照)と、を個別に説明したが、X方向の視線角度のずれとY方向の視線角度のずれの両方が同時に生じることも当然ありうる。その場合、両方のずれが反映された画像データの選択が行われる。
【0098】
また、
図16に示す視差画像群Ext(θ3°)における第1視差画像GR3及び第2視差画像GL3と、第1視差画像GR5及び第2視差画像GL5と、の関係も、
図17から
図23を参照して説明した第1時点の視線情報と第2時点の視線情報との間の視線角度のずれの関係に対応する。なお、第1時点の視線情報と第2時点の視線情報との間で視線角度にずれがない又は選択される画像データの変更が生じない程度に小さいずれであった場合、第1時点の視線情報に基づいて選択される画像データと、第2時点の視線情報に基づいて選択される画像データと、は同じになる。
【0099】
なお、第2時点の視線情報(θa°)に対応した右目ER、左目ELの視線角度{(θxa±(W/2)}や、当該視線情報(θa°)に対応したY方向の視線角度(θya)に完全一致で対応する画像データが、第1時点の視線情報(θb°)に対応した視差画像群Ext(θb°)に含まれるとは限らない。この場合、表示制御部14は、視差画像群Ext(θb°)に含まれる画像データのうち、求められた{(θxa±(W/2)}、(θya)に最も近い角度からの撮像で得られた画像データを選択する。
【0100】
次に、視差方式を用いた3D表示を成立させることができる表示部15の具体的形態の一例について、
図24を参照して説明する。
【0101】
図24は、実施形態で採用可能な表示部15の具体的形態の一例を示す概略断面図である。
図24に示すように、表示部15は、例えば、液晶パネル15bと、光源装置15cと、を有する。液晶パネル15bは、透過型の液晶ディスプレイパネルである。実施形態の画像表示面15aは、液晶パネル15bのパネル板面のうちユーザ側の一面である。
【0102】
液晶パネル15bは、例えばいわゆるアクティブマトリックス方式で実装された複数の画素Pixを有する。ここで、X方向に並ぶ複数の画素Pixのうち、一部を第1画像データ(例えば、第1視差画像GR3,GR4,GR5等)の出力に適用し、他の一部を第2画像データ(例えば、第2視差画像GL3,GL4,GL5等)の出力に適用することで、表示部15は、当該第1視差画像と当該第2視差画像を統合した表示データの出力を行える。
図16に示す表示データD(θ3°),D(θ4°),D(θ5°)及び後述する
図25に示す表示データD(θ4A°),D(θ5A°),D(θ6A°)は、このような考え方で第1視差画像と第2視差画像を統合した表示データである。
【0103】
表示制御部14は、係る表示データの出力が行われるように当該第1画像データと当該第2画像データを統合して表示部15に出力させる。
図24では、当該第1視差画像を出力する第1画素PixRと、当該第2視差画像を出力する第2画素PixLと、X方向に並ぶ3つの画素Pix周期で交互に配置されているが、このような第1画素PixRと第2画素PixLとの関係はあくまで一例であってこれに限られるものでない。第1画素PixRと第2画素PixLとの関係は、ユーザの右目ER及び左目ELと画像表示面15aとの距離Z1、右目ERと左目ELとの間の間隔ED2、画素Pixを透過する光の光源点LPと画素PixのZ方向の中間点との間の奥行きTh、各画素PixのピッチPD等の各種のパラメータに対応して適宜決定される。
【0104】
光源装置15cは、液晶パネル15bを挟んでユーザの反対側に設けられる。光源装置15cは、複数の光源点LPから液晶パネル15b側へ光を発する。言い換えれば、光源装置15cにおける複数の光源点LP間の範囲では、液晶パネル15b側へ向かう光は生じない。複数の光源点LPは、例えば個別に設けられたマイクロLED(Light Emitting Diode)のような複数の点光源であってもよいし、複数の光源点LPの位置に応じた複数の孔が設けられた遮光層を面光源と液晶パネル15bとの間に設けることで形成されたものであってもよい。
図24に示す構成では、X方向に所定間隔(ピッチLPP)をあけて配置された複数の光源点LPが、
図5を参照して説明した視差形成部Parと同様に機能する。
【0105】
図24に示すピッチLPPは、X方向に並ぶ画素Pix6つ分に対応するが、これはあくまで一例であってこれに限られるものでない。ピッチLPP及び各光源点LPのピッチLDは、上記した各種のパラメータの1つであり、ユーザに立体視を成立させることを想定した設計において適宜決定される。
【0106】
また、
図24では、液晶パネル15bと光源装置15cとの間にギャップAGが介在している。ギャップAGには、例えば液晶パネル15bと実質的に同様の屈折率n2を示す透光性部材(例えば、ガラス)が設けられているが、空間であってもよい。ただし、ギャップAGが空間である場合には、後述する屈折と同様の事象をギャップAGと液晶パネル15bとの間でも考慮することが望ましい。
【0107】
画像表示面15aと右目ER、左目ELとの間には、空気が介在することが想定される。ここで、空気の屈折率n1と、液晶パネル15bを構成する透光性基板(例えば、ガラス基板)の屈折率n2と、の相違に応じた屈折が生じる。
図24では、光源点LPから発せられて第2画素PixLを通過して画像表示面15aに向かう光の射線と画像表示面15aから左目ELに向かう光の射線と、の間で生じる屈折の発生点RE1と、光源点LPから発せられて第1画素PixRを通過して画像表示面15aに向かう光の射線と画像表示面15aから右目ERに向かう光の射線と、の間で生じる屈折の発生点RE2と、を示している。上記した各種のパラメータには、係る屈折率n1,n2も含まれる。
【0108】
また、液晶パネル15bを挟んでZ方向に対向するように偏光板Po1,Po2が設けられること等、上記した各種のパラメータには、より詳細な表示部15の具体的形態に対応した諸所的事項が含まれうる。
【0109】
また、上記した基準線は、右目ERと左目ELとの間の中間点CPと、画像表示面15aにおける右目ERと左目ELの焦点と、を結ぶ直線である。中間点CPと右目ERとのX方向の距離及び中間点CPと左目ELとのX方向の距離は、ともに間隔ED1である。間隔ED1は、間隔ED2の1/2である。
【0110】
一例として、屈折率n1=1.0とした場合、屈折率n2=1.5である。また、間隔ED2=62.5mm、間隔ED1=31.25mm、距離Z1=380mm、幅PD=0.0315mm、ピッチLPP=0.189mmである場合、奥行きTh=0.86mmとすることで、視差方式の3D表示を成立させることができる。
図24に示す奥行きThは、ギャップAGのZ方向の厚みTh1、液晶パネル15bと光源装置15cとの間の偏光板Po1のZ方向の厚みTh2、画素Pixに対して光源装置15c側に設けられるガラス基板の厚みに対応したZ方向の厚みTh3を含む。表示システム1は、設計に応じて定められた厚みTh2,Th3に応じて厚みTh1を適宜調節することで、より容易かつ高精度に奥行きThを設定できる。一例を挙げると、厚みTh2=0.1mm、厚みTh3=0.2mmの場合、ギャップAGの厚みTh1を0.56mmとすればよいことになる。また、光源点LPのX方向の中間位置を挟んでX方向に対向する第1画素PixRと第2画素PixLのうち片方と、当該中間位置と、の間のX方向の間隔は、例えば0.04725mmである。これらの具体的な数値はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、距離Z1や表示部15の具体的形態等に応じて適宜変更可能である。
【0111】
なお、実施形態における取得部11は、撮像部11aを有しているが、さらにユーザと画像表示面15aとのZ方向の間隔を示す情報を取得する測距部等を有していてもよい。その場合、距離Z1を当該測距部によって測定された値とし、表示制御部14が当該値に応じて第1画素PixRと第2画素PixLとのインターバルを調整するようにしてもよい。係る調整が行われる場合、Z方向の間隔の値と、係るインターバルと、の対応関係を示すデータが予め記憶部13等に記憶され、表示制御部14から参照可能とされている。
【0112】
(変形例)
次に、表示制御部14の処理内容の一部が実施形態と異なる変形例について、
図25を参照して説明する。変形例に係る説明では、実施形態と異なる部分について特筆し、実施形態と同様の事項については同じ符号を付して説明を省略する。
【0113】
図25は、変形例の表示システム1で行われる情報処理の流れを概略的に示すタイムチャートである。変形例の表示制御部14は、視差画像群Extのもとになる抽出視差画像群22bの生成で参照された第1時点よりも後の複数の時点で取得された複数の視線情報の各々が示す視線角度同士の差に基づいて、第2時点での視線情報を導出する。
【0114】
具体的には、表示制御部14は、例えば、取得部11によってタイミングT2に取得された視線情報(θ2°)と、タイミングT3に取得された視線情報(θ3°)と、の各々の視線情報の各々が示す視線角度同士の差に基づいて、第2時点(タイミングT4)の視線情報(θ4A°)を導出する。より具体的には、表示制御部14は、例えば、タイミングT2に取得された視線情報(θ2°)が示す視線角度から、タイミングT3に取得された視線情報(θ2°)が示す視線角度への変化のベクトル(方向及び度合い)を算出する。表示制御部14は、当該ベクトルが、タイミングT3からタイミングT4時点まで継続すると仮定して、第2時点(タイミングT4)の視線情報(θ4A°)を導出する。このように、表示制御部14は、第1周期で取得される複数の視線情報の各々が示す視線角度の差から当該ベクトルを算出することで、取得済みの最新の視線情報の次の視線情報を推定的に導出して第2の視線情報として採用できる。
【0115】
変形例の表示制御部14は、このようにして導出された第2時点の視線情報に対応した表示データを選択する。
図25では、第2時点(タイミングT4)の視線情報(θ4A°)に対応して、視差画像群Ext(θ1°)から第1視差画像GR4Aと第2視差画像GL4Aとが選択されている。これによって、変形例の表示部15は、タイミングT4時点の視点情報として推定的に導出された視線情報(θ4A°)に対応した表示データD(θ4A°)を出力できる。
【0116】
同様の考え方で、変形例の表示制御部14は、取得部11によってタイミングT3に取得された視線情報(θ3°)と、タイミングT4に取得された視線情報(θ4°)と、の各々の視線情報の各々が示す視線角度同士の差に基づいて、第2時点(タイミングT5)の視線情報(θ5A°)を導出する。また、変形例の表示制御部14は、取得部11によってタイミングT4に取得された視線情報(θ4°)と、タイミングT5に取得された視線情報(θ5°)と、の各々の視線情報の各々が示す視線角度同士の差に基づいて、第2時点(タイミングT6)の視線情報(θ6A°)を導出する。表示制御部14は、このようにして導出された第2時点の視線情報に対応した表示データを、最新の視差画像群Extから選択する。
図25では、第2時点(タイミングT5)の視線情報(θ5A°)に対応して、視差画像群Ext(θ1°)から第1視差画像GR5Aと第2視差画像GL5Aとが選択されている。また、2時点(タイミングT6)の視線情報(θ6A°)に対応して、視差画像群Ext(θ3°)から第1視差画像GR6Aと第2視差画像GL6Aとが選択されている。
【0117】
なお、視差画像群Extのもとになる抽出視差画像群22bの生成で参照された第1時点よりも後の複数の時点で取得された複数の視線情報の各々が示す視線角度同士の差に基づいた第2時点の視線情報の導出は、上記の方法に限られるものでない。例えば、3つ以上の視線情報の各々が示す視線角度同士に基づいてより長期的観点で導出されたベクトルによってもよいし、過去に検出された複数の視線情報に基づいてその先の視線情報の推定を行う既知の視線移動推定アルゴリズムの採用によるものであってもよい。以上、特筆した事項を除いて、変形例は、実施形態と同様である。
【0118】
以上説明したように、実施形態によれば、端末10は、所定方向(例えば、X方向)に並ぶ複数の画素(画素Pix)を有し、画像を出力する表示部(表示部15)と、当該画像を視認するユーザの視線に関する情報を周期的に取得する取得部(取得部11)と、第1時点での当該情報に基づいて外部の情報処理装置(サーバ20)から与えられた画像群データ(抽出視差画像群22b)を記憶する記憶部(記憶部13)と、当該第1時点よりも後の第2時点での当該情報に基づいて、当該視線に対応した表示データを当該画像群データから選択して当該表示部に表示させる表示制御部(表示制御部14)と、を備える。
【0119】
また、実施形態によれば、表示システム(表示システム1)は、表示装置(端末10)と、当該表示装置と通信可能に設けられたサーバ(サーバ20)と、を備える表示システムであって、当該表示装置は、所定方向(例えば、X方向)に並ぶ複数の画素(画素Pix)を有し、画像を出力する表示部(表示部15)と、当該画像を視認するユーザの視線に関する情報を周期的に取得する取得部(取得部11)と、第1時点での当該情報に基づいて外部の情報処理装置(サーバ20)から与えられた画像群データ(抽出視差画像群22b)を記憶する記憶部(記憶部13)と、当該第1時点よりも後の第2時点での当該情報に基づいて、当該視線に対応した表示データを当該画像群データから選択して当該表示部に表示させる表示制御部(表示制御部14)と、を備え、当該サーバは、当該画像群データを含み、3以上の視線角度の各々に対応した画像データを含む元データ(要素画像群22a)を記憶する記憶部(記憶部22)と、当該情報に基づいて当該元データから当該画像群データのもとになる要素画像データを抽出する抽出部(抽出部25)と、を備える。
【0120】
実施形態によれば、第1時点に基づいて与えられた画像群データから、当該第1時点よりも後の第2時点のユーザの視点に対応した視差画像を表示に供させることができる。従って、より新しい時点でのユーザの視点に対応した画像を出力できる。
【0121】
また、表示部(表示部15)が表示する表示データは、ユーザの右目(右目ER)と左目(左目EL)の各々に対して個別の画像を視認させて立体視を成立させる画像データであり、当該表示部は、ユーザの右目と左目の各々に対して個別の画像を出力する視差形成部を有する。これによって、3D画像を出力する表示装置において、第1時点に基づいて与えられた画像群データから、当該第1時点よりも後の第2時点のユーザの視点に対応した画像の出力を行える。従って、より新しい時点でのユーザの視点に対応した3D画像を出力できる。なお、
図24に示す構成では、当該視差形成部は、光源装置15cの形態によって成立している。
【0122】
また、ユーザの視線に関する情報は、表示部(表示部15)の画像表示面(画像表示面15a)に対するユーザの視線の基準角度(例えば、θ1°等)を示す情報を含み、画像群データ(視差画像群Ext)は、第1時点での基準角度に対応した画像データ(視差画像GC)と、当該第1時点での当該基準角度にそれぞれ異なる誤差角度を加算又は減算した角度に対応した画像データと、を含み、表示制御部(表示制御部14)は、当該画像群データに含まれる複数の画像データから、ユーザの右目(右目ER)に対応する第1画像データ(例えば、第1視差画像GR3等)と、ユーザの左目(右目ER)に対応する第2画像データ(例えば、第1視差画像GR3等)と、を個別に選択して当該第1画像データと当該第2画像データを統合した表示データ(例えば、表示データD(θ3°等)を当該表示部に表示させる。これによって、3D画像を出力する表示装置において、第1時点に基づいて与えられた画像群データから、当該第1時点よりも後の第2時点のユーザの右目と左目の各々に対応した画像に基づいた出力を行える。
【0123】
また、表示装置(端末10)は、外部の情報処理装置(サーバ20)と通信を行う通信部(通信部12)を備え、取得部(取得部11)は、第1周期でユーザの視線に関する情報を取得し、当該情報は、当該第1周期よりも長い第2周期で当該外部の情報処理装置に送信され、画像群データ(視差画像群Ext)は、当該第2周期で当該外部の情報処理装置から与えられる。これによって、当該表示装置と当該外部の情報処理装置との通信の頻度を第2周期に抑えつつ、第1周期で取得されるより新しいユーザの視点に対応した画像の出力を行える。
【0124】
また、表示制御部(表示制御部14)は、第1時点(例えば、タイミングT1)よりも後の複数の時点(例えば、タイミングT2,T3)で取得された複数のユーザの視線に関する情報の各々が示す視線角度同士の差に基づいて、第2時点(例えば、タイミングT4)での当該情報を導出する。これによって、より新しいユーザの視線として推定された視線に対応する画像の出力を行える。
【0125】
なお、要素画像群22a及び要素画像データの具体的形態は、
図13を参照して説明した形態に限られるものでない。要素画像群22a及び要素画像データの少なくとも一方は、例えば、
図6及び
図7を参照して説明したような複数の撮像装置の各々によって撮像された複数の画像データがそのまま保持された画像データの集合であってもよい。例えば、要素画像群22aが複数の撮像装置の各々によって撮像された複数の画像データがそのまま保持された画像データの集合であり、要素画像データが上記した実施形態と同様のものである場合、演算部21は、ステップS24の処理で、当該要素画像群22aから要素画像データを生成する処理を行うことで、当該要素画像データを当該視差画像データから抽出する。
【0126】
また、視差形成部Parとして機能する構成の形成方法は、上記した表示部15の形態によるものに限られない。例えば、視差形成部Parは液晶パネル15bとユーザとの間又は液晶パネル15bと面光源との間に設けられる視差バリアであってもよいし、液晶パネル15bとユーザとの間に設けられるレンチキュラーレンズであってもよい。また、液晶パネル15bとユーザとの間に視差形成部Parが設けられる場合、表示部15は、OLED(Organic Light EMITTING Diode)パネル等、自発光型の表示装置であってもよい。
【0127】
また、取得部が端末10の外部にあってもよい。例えば、端末10とは別個の表示装置であって、端末10による3D画像の出力によって再現される事物と同一の事物を2D又はより簡便な3Dで出力する表示装置がさらに設けられてもよい。この場合、係る別個の表示装置にさらに取得部11が設けられてもよく、端末10による出力が係る別個の表示装置に設けられた取得部11によって取得された視線に関する情報に対応してもよい。
【0128】
また、本開示によれば、3Dに限らず、視差形成部によって右目と左目との視差を生じさせる画像を出力することで再現可能なあらゆる3D画像の出力を行える。
【0129】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0130】
1 表示システム
10 端末
11 取得部
11a 撮像部
12,23 通信部
13,22 記憶部
14 表示制御部
15 表示部
20 サーバ
21 演算部
22a 要素画像群
25 抽出部
D(θ3°),D(θ4°),D(θ4A°),D(θ5°),D(θ5A°),D(θ6A°) 表示データ
ER 右目
EL 左目
Ext 視差画像群
GR1,GR3,GR4,GR4A,GR5,GR5A,GR6A 第1視差画像
GL1,GL3,GL4,GL4A,GL5,GL5A,GL6A 第2視差画像