IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 柳下技研株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図1
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図2
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図3
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図4
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図5
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図6
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図7
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図8
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図9
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図10
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図11
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図12
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図13
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図14
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図15
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図16
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図17
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図18
  • 特開-アキシャルギャップモータ 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095453
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/24 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212755
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】595020012
【氏名又は名称】柳下技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直史
(72)【発明者】
【氏名】大川 由夫
(72)【発明者】
【氏名】大倉 周士
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621BB10
5H621GA04
5H621GA13
5H621JK11
(57)【要約】
【課題】密閉構造のアキシャルギャップモータの内部で生じた熱を外部に効率的に放出することができるアキシャルギャップモータを提供すること。
【解決手段】アキシャルギャップモータ10において、ステータ70は、環状に形成された基部と基部からロータの回転軸が位置する方向へ向かって突出する複数の突出部を含む巻線保持部71と、電線が環状に配置された複数の電線構造体73を含み、各電線構造体73は、各突出部の外周部に接して配置され、各突出部へ電線構造体73が配置されて構成されるコイルは、互いに結線されて巻線を構成し、巻線保持部71は、非磁性体であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で形成されており、ステータ70は、モータケース12の内面と接した状態でモータケース12内に配置されている。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップモータであって、
ロータ及びステータと、
前記ロータ及び前記ステータを格納する、密閉構造に形成されたモータケースと、
を含み、
前記ステータは、環状に形成された基部と前記基部から前記ロータの回転軸が位置する方向へ向かって突出する複数の突出部を含む巻線保持部と、電線が環状に配置されて空芯コイルとして構成される電線構造体を含み、
各前記電線構造体は、各前記突出部の外周部に接して配置され、互いに結線されて巻線を構成し、
前記巻線保持部は、非磁性体であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で形成されており、
前記巻線保持部は、前記モータケースの内面と接した状態で前記モータケース内に配置されている、
アキシャルギャップモータ。
【請求項2】
前記モータケースは、相対的に上側に位置する上側モータケースと、相対的に下側に位置する下側モータケースで構成され、
前記巻線保持部は、前記上側モータケースの内面に接して配置される上側巻線保持部と、前記下側モータケースの内面に接して配置される下側巻線保持部で構成され、
前記電線構造体の上側部分は前記上側巻線保持部の前記突出部の前記外周部に接して配置され、
前記電線構造体の下側部分は前記下側巻線保持部の前記突出部の前記外周部に接して配置されている、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
アキシャルギャップモータの前記回転軸が延在する方向における前記モータケースの寸法は、前記ロータ及び前記ステータを格納するために必要十分な寸法として規定されており、
前記上側モータケースの下部と前記下側モータケースの上部は、相対的に直径が大きく形成された拡径部として構成されており、
前記ステータは前記上側モータケース及び前記下側モータケースの前記拡径部の内面に接して配置され、
前記上側モータケースの拡径部の上面には、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部が前記上側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されており、
前記下側モータケースの拡径部の下面には、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部が前記下側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されている、
請求項2に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
前記巻線保持部は、アルミニウム合金で形成されており、
前記モータケースは、前記巻線保持部を構成する前記アルミニウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金で形成されている、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアキシャルギャップモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータとステータとが回転軸に沿う方向において空隙を有するように対向して配置されたアキシャルギャップモータ(「アキシャルギャップ型モータ」とも呼ばれる)が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-116033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防塵及び/または防水のため、アキシャルギャップモータを密閉構造にすると、ステータを構成する電線から発生する熱がモータの外部に放出されにくいという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、密閉構造のアキシャルギャップモータの内部で生じた熱を効率的に外部に放出することができるアキシャルギャップモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、アキシャルギャップモータであって、ロータ及びステータと、前記ロータ及び前記ステータを格納する、密閉構造に形成されたモータケースと、を含み、前記ステータは、環状に形成された基部と前記基部から前記ロータの回転軸が位置する方向へ向かって突出する複数の突出部を含む巻線保持部と、電線が環状に配置されて空芯コイルとして構成される電線構造体を含み、各前記電線構造体は、各前記突出部の外周部に接して配置され、互いに結線されて巻線を構成し、前記巻線保持部は、非磁性体であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で形成されており、前記巻線保持部は、前記モータケースの内面と接した状態で前記モータケース内に配置されている、アキシャルギャップモータである。
【0007】
従来、アキシャルギャップモータに限らず、モータのステータコアは、磁気回路を形成するために鉄などの強磁性体で構成されている。あるいは、例えば、Fe-Si系合金粒子で形成される圧粉磁心で構成される場合もある。これに対して、第一の発明は、複数の電線構造体が結線されて構成される巻線を保持し、巻線が放出する熱を効果的に放熱するために、非磁性体であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で形成された巻線保持部を含む。そして、電線構造体は巻線保持部の突出部と接し、巻線保持部はモータケースの内面と接した状態でモータケース内に配置されるから、ステータの電線において発生した熱は、巻線保持部及びモータケースを介して効率よく外部に放出される。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記モータケースは、相対的に上側に位置する上側モータケースと、相対的に下側に位置する下側モータケースで構成され、前記巻線保持部は、前記上側モータケースの内面に接して配置される上側巻線保持部と、前記下側モータケースの内面に接して配置される下側巻線保持部で構成され、前記電線構造体の上側部分は前記上側巻線保持部の前記突出部の前記外周部に接して配置され、前記電線構造体の下側部分は前記下側巻線保持部の前記突出部の前記外周部に接して配置されている、アキシャルギャップモータである。
【0009】
第二の発明の構成によれば、ステータの電線において発生した熱は、上側巻線保持部及び上側モータケースの経路と、下側巻線保持部及び下側モータケースの双方の経路によって、効率的に外部に放出される。
【0010】
第三の発明は、第二の発明の構成において、アキシャルギャップモータの前記回転軸が延在する方向における前記モータケースの寸法は、前記ロータ及び前記ステータを格納するために必要十分な寸法として規定されており、前記上側モータケースの下部と前記下側モータケースの上部は、相対的に直径が大きく形成された拡径部として構成されており、前記ステータは前記上側モータケース及び前記下側モータケースの前記拡径部の内面に接して配置され、前記上側モータケースの拡径部の上面には、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部が前記上側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されており、前記下側モータケースの拡径部の下面には、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部が前記下側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されている、アキシャルギャップモータである。
【0011】
第三の発明の構成によれば、上側環状突出部と下側環状突出部の存在によって、上側モータケース及び下側モータケースの表面積が大きくなるから、一層効果的に、ステータの電線によって発生した熱を外部に放出することができる。しかも、上側環状突出部と下側環状突出部は、回転軸が延在する方向と直行する方向には突出せず、回転軸方向の寸法も所定の制限があるから、アキシャルギャップモータ全体の寸法には影響を与えない。
【0012】
第四の発明は、第一の発明乃至第三の発明のいずれかの構成において、前記巻線保持部は、アルミニウム合金で形成されており、前記モータケースは、前記巻線保持部を構成する前記アルミニウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金で形成されているアキシャルギャップモータである。
【0013】
第四の発明の構成によれば、前記モータケースは、巻線保持部を構成する前記アルミニウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金で形成されているから、ステータの電線から巻線保持部に伝導してきた熱が渋滞することなくモータケースに伝導する。これにより、一層効果的に、ステータの電線によって発生した熱を外部に放出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、密閉構造のアキシャルギャップモータの内部で生じた熱を外部に効率的に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るアキシャルギャップモータを示す側面図である。
図2】アキシャルギャップモータを上方から視た斜視図である。
図3】アキシャルギャップモータを下方から視た斜視図である。
図4】アキシャルギャップモータの分解側面図である。
図5】アキシャルギャップモータの分解斜視図である。
図6】回転軸を示す斜視図である。
図7】磁石保持部を示す図である。
図8】上側巻線保持部を示す図である。
図9】下側巻線保持部を示す図である。
図10】上側モータケースを示す図である。
図11】上側モータケースを示す図である。
図12】下側モータケースを示す図である。
図13】下側モータケースを示す図である。
図14】下側巻線保持部と電線構造体を示す図である。
図15】ステータを示す図である。
図16】下側モータケース、及び、ステータの分解図である。
図17】下側モータケース、及び、ステータの分解図の断面図である。
図18】アキシャルギャップモータを上方から視た斜視図の断面図である。
図19】アキシャルギャップモータを下方から視た斜視図の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0017】
図1図2及び図3に示すように、アキシャルギャップモータ10の外部は、主としてモータケース12で構成される。モータケース12は、上側モータケース20と下側モータケース30で構成される。本明細書において、上側モータケース20が位置する方向を「上側」と呼び、下側モータケース30が位置する方向を「下側」と呼ぶ。上側モータケース20と下側モータケース30の関係において、上側モータケース20は相対的に上側に位置し、下側モータケース30は相対的に下側に位置する。上側モータケース20と下側モータケース30が係合して、密閉構造のモータケース12が構成される。密閉構造により、防塵及び防水機能が実現する。
【0018】
モータケース12の回転軸の長手方向に沿った方向(図1の矢印z方向。以下、「回転軸方向」と呼ぶ。)及び周方向(図1の矢印y方向。回転軸方向に直行する方向である。)の寸法(外部形状及び内部形状)は、後述のロータ50A及び50B(図4及び図5参照)、及び、ステータ70(図4及び図5参照)を格納するために必要十分な寸法として規定されている。
【0019】
上側モータケース20及び下側モータケース30の素材は、熱伝導率が鉄よりも高い素材が選択される。具体的には、上側モータケース20及び下側モータケース30は、アルミニウム合金で形成されている。上側モータケース20及び下側モータケース30を形成するアルミニウム合金は、例えば、2000系であり、さらに具体的には、例えば、A2017(T4)である。
【0020】
図2に示すように、上側モータケース20において直径が他の部分よりも大きく構成されている拡径部20cには、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部22が上側モータケース20の回転軸方向の寸法を超えない範囲において形成されている。図2に示すように、複数の上側環状突出部22は、同心円状に形成されている。
【0021】
図3に示すように、下側モータケース30において直径が他の部分よりも大きく構成されている拡径部30bには、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部32が下側モータケース30の回転軸方向の寸法を超えない範囲において形成されている。図3に示すように、複数の下側環状突出部32は、同心円状に形成されている。
【0022】
下側環状突出部32は、拡径部30bを貫通する貫通孔30bs及びその周辺部分において、途切れている。貫通孔30bsには、外部の電源からステータ70(図4及び図5参照)に電力を供給するリード線(図示せず)が配置される。リード線を配置した状態の貫通孔30bsは、例えば、シリコンパテを使用して隙間が閉鎖され、モータケース12の密閉構造が維持されるようになっている。
【0023】
図4及び図5を参照して、アキシャルギャップモータ10(以下、「モータ10」と呼ぶ。)を構成する部品について説明する。モータ10は、主な構成要素として、ステータ70及びロータ50A及び50Bを備える。ステータ70は環状に形成されており、ロータ50A及び50Bは円盤状に構成されている。ロータ50A及び50Bは、円柱状をなす回転軸60(図6参照)に固定され、ステータ70の回転軸方向における両側、すなわち、上下に配置されている。ロータ50A及び50B、及び、ステータ70は、モータケース12に格納される。回転軸60は、モータケース12に対して回転可能に支持されている。
【0024】
ステータ70は、巻線保持部71及び電線構造体73で構成される。巻線保持部71は、相対的に上側に位置する上側巻線保持部72と、相対的に下側に位置する下側巻線保持部74で構成される。上側巻線保持部72と下側巻線保持部74は、それらの間に電線構造体73を挟んだ状態で、ステータ固定用ネジ76で互いに接続され、固定される。ステータ固定用ネジ76は、非磁性体の材料で形成され、具体的には、例えば、チタンで形成される。
【0025】
上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74は、非磁性体であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で形成されている。具体的には、上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74は、アルミニウム合金で形成されている。上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74を構成するアルミニウム合金は、熱伝導率が大きい材料が望ましく、例えば、2000系であり、さらに具体的には、例えば、A2017(T4)である。上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74は、絶縁性を確保する処理として、アルマイトコーティングがなされている。
【0026】
なお、本実施形態とは異なり、上側モータケース20及び下側モータケース30を形成するアルミニウム合金と、上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74を構成するアルミニウム合金とを異なる種類のアルミニウム合金としてもよい。具体的には、上側モータケース20及び下側モータケース30を形成するアルミニウム合金として、上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74を構成するアルミニウム合金を形成するアルミニウム合金の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有するものを採用してもよい。例えば、上側モータケース20及び下側モータケース30を形成するアルミニウム合金として2017(O)を採用し、上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74を構成するアルミニウム合金として2017(T4)を採用してもよい。
【0027】
ロータ50Aは、磁石51A及び上側磁石保持部52Aで構成される。磁石51Aは上側磁石保持部52Aに固定される。ロータ50Bは、磁石51B及び下側磁石保持部52Bで構成される。磁石51Bは下側磁石保持部52Bに固定される。
【0028】
磁石保持部52A及び52Bは、磁性を有する材料で、略円盤状に形成され、中央部に貫通孔を有する。磁石保持部52A及び52Bを構成する材料は、例えば、フェライト系の材料であり、さらに具体的には、例えば、SUS430である。
【0029】
磁石51A及び51Bは、希土類磁石であり、略円盤状に形成されており、中央部に貫通孔を有する。磁石51A及び51Bは、図4の矢印z1方向から視た平面視において、等間隔の角度において、複数の部分に分割されている。本実施形態において、磁石51A及び51Bは12の部分に分割されており、各部分の間には、溝が形成されている。希土類磁石は、例えば、ネオジウム・鉄・ボロンで形成されるボンド磁石である。磁石51A及び51Bの分割された各部分は、回転軸方向の一方の側に現れる磁極が周方向において交互に異なるように着磁されている。すなわち、磁石51A及び51Bは、回転軸方向の一方の側において、N極の部分、S極の部分、N極の部分というように、交互に異なる磁極の部分で構成される。また、磁石51A及び51Bにおいて分割された部分は、回転軸方向の一方の側に現れる磁極がN極である場合、その反対側である回転軸方向の他方の側に現れる磁極がS極となるように着磁されている。
【0030】
上側磁石保持部52Aはベアリング48Aの内面に圧入されて固定され、下側磁石保持部52Bはベアリング48Bの内面に圧入されて固定される。ベアリング48Aは上側モータケース20の内側に固定され、ベアリング48Bは下側モータケース30の内側に固定される。また、磁石保持部52A及び52Bは、回転軸60に固定される。回転軸60は、軸固定用チップ80及び軸固定ネジ82によって、回転可能な状態で下側カバー30に固定される。
【0031】
ステータ70の上側巻線保持部72は、上側モータケース20の内面に接して固定される。下側巻線保持部74は、下側モータケース30の内面に接して固定される。
【0032】
上側モータケース20と下側モータケース30とは、互いに固定され、Oリング46が上側モータケース20と下側モータケース30の接続部に配置されることによって、密着し、密閉構造を形成する。
【0033】
上側モータケース20の上方において、下側プロペラ固定用部材40がネジ43(図5参照)によって回転軸60に固定される。下側プロペラ固定用部材40と上側プロペラ固定用部材42との間にプロペラ(図示せず)を挟んだ状態で、ネジ44によって、下側プロペラ固定用部材40と上側プロペラ固定用部材42が固定され、プロペラも固定される。
【0034】
図6に示すように、回転軸60は、第一部60a、第二部60b、第三部60c及び第四部60dが一体に形成されて構成される。第一部60aには、切欠き部62aが形成され、下側プロペラ固定用部材40との関係で位置決めする。第二部60bと第三部60cに亘って、切欠き部62bが形成され、上側磁石保持部52Aとの関係で位置決めする。第三部60cと第四部60dに亘って、切欠き部62cが形成され、下側磁石保持部52Bとの関係で位置決めする。切欠き部62a、62b及び62cは、周方向において、図6に示されている位置の反対側にも形成されている。
【0035】
図7は、上側磁石保持部52Aを示す図である。なお、下側磁石保持部52Bは、上側磁石保持部52Aと同一構造であるから、説明を省略する。図7(a)及び(b)に示すように、上側磁石保持部52Aは、円盤状の磁石保持本体部52bと、円筒部52aが一体に形成されて構成される。上側磁石保持部52Aの中央部は、貫通孔52sとして構成されており、貫通孔52sを画する内壁が、回転軸60と係合する。図7(c)及び(d)に示すように、磁石保持本体部52bの内側には、複数の線状突出部52dが放射状に形成されており、磁石51Aの分割された部分間の溝と係合し、磁石51Aを固定することができるように構成されている。また、突起52cが、回転軸60の切欠き62b(図6参照)と係合し、互いに位置決めされる。
【0036】
図8は、上側巻線保持部72を示す図である。図8(a)は上側巻線保持部72を上方から視た平面図であり、図8(b)は上側巻線保持部72を下方から視た底面図であり、図8(c)は上側巻線保持部72を上方から視た斜視図である。
【0037】
上側巻線保持部72は、環状に形成された基部72aと基部72aから回転軸60(図5参照)へ向って突出する複数の突出部72bを含む。基部72aと複数の突出部72bは、一体に構成される。詳細には、図8(b)に示すように、突出部72bは基部72aの内面72a2から回転軸60へ向かって延在する。突出部72bは、回転軸60に接しない。
【0038】
上側巻線保持部72の中央部は、空間72sとなっている。本実施形態において、突出部72bは12個形成されており、周方向に等角度間隔(本実施形態では30度間隔)に設けられている。また、複数の突出部72bは、隣り合う突出部72bと周方向において離間している。また、各突出部72bの外周形状は全て同じ形状である。
【0039】
突出部72bは、2種類存在し、1種類の突出部72bは、本体部72b1と係合用環状溝部72b2が一体に形成され、略中央部が貫通空間72b3として構成される。係合用環状溝部72b2は、本体部72b1から下方に陥没しており、後述の下側巻線保持部74の突出部74bと係合するための構成である。もう1種類の突出部72bは、本体部72b1にネジ穴72b4が形成されて構成される。ネジ穴72b4は、ステータ固定用ネジ76を介して、後述の下側巻線保持部74の突出部74bと係合するための構成である。貫通空間72b3の存在によって、貫通空間72b3が存在しない場合に比べて、上側巻線保持部72の重量を軽減することができる。
【0040】
図9は、下側巻線保持部74を示す図である。図9(a)は下側巻線保持部74を下方から視た底面図であり、図9(b)は下側巻線保持部74を上方から視た平面図であり、図9(c)は下側巻線保持部74を上方から視た斜視図である。
【0041】
下側巻線保持部74は、環状に形成された基部74aと基部74aから回転軸60へ向かって突出する複数の突出部74bを含む。基部74aと複数の突出部74bは、一体に構成される。詳細には、図9(b)に示すように、突出部74bは基部74aの内面74a2から回転軸60へ向かって延在する。突出部74bは、回転軸60に接しない。基部74aには、リード線(図示せず)を通すための貫通孔74asが形成されている。下側巻線保持部74の中央部は、空間74sとなっている。本実施形態において、突出部74bは12個形成されており、周方向に等角度間隔(本実施形態では30度間隔)に設けられている。また、突出部74bは、隣り合う突出部74bと周方向において離間している。また、各突出部74bの外周形状は全て同じ形状である。
【0042】
突出部74bは、2種類存在し、1種類の突出部74bは、本体部74b1と係合用環部74b2が一体に形成され、略中央部が貫通空間74b3として構成される。係合用環部74b2は、本体部74b1から上方に突出しており、上述の上側巻線保持部72の突出部72bと係合するための構成である。もう1種類の突出部74bは、本体部74b1にネジ穴74b4が形成されて構成される。ネジ穴74b4は、ステータ固定用ネジ76を介して上述の上側巻線保持部72の突出部72bと係合するための構成である。貫通空間74b3の存在によって、貫通空間74b3が存在しない場合に比べて、下側巻線保持部74の重量を軽減することができる。係合用環部74b2は、上側巻線保持部72の係合用環状溝部72b2と係合するように構成されている。具体的には、係合用環状溝部72b2の内側に係合用環部74b2が入り込み、上側巻線保持部72と下側巻線保持部74とが固定されるようになっている。
【0043】
図10及び図11は、上側モータケース20を示す図である。図10(a)は上側モータケース20の側面図、図10(b)は上側モータケース20を上方から視た平面図、図10(c)は上側モータケース20を下方から視た底面図である。図11(a)は上側モータケース20を下方から視た斜視図、図11(b)は上側モータケース20の中央を回転軸方向において切断した状態を示す断面図である。図10及び図11に示すように、上側モータケース20は、全体として扁平な円柱状に形成されている。
【0044】
図10(a)及び図11(b)に示すように、上側モータケース20の下部は拡径部20cとして構成されており、他の部分よりも直径が大きい。拡径部20cの上側には、拡径部20cよりも直径が小さい中間部20b、及び、中間部20bよりも直径が小さい上部20aが配置されている。拡径部20cの内側にはステータ70が、拡径部20cの内面と接する状態で配置される。中間部20bの内側には、ロータ50Aが配置される。
【0045】
図10(a)及び図10(b)に示すように、拡径部20cの直径d2は、中間部20bの直径d1よりも大きい。拡径部20の直径d2が中間部20bの直径d1を超える幅d3の部分の上面は、環状に構成された拡径部上面20caとなっている。
【0046】
図10(b)及び図11(b)に示すように、上側モータケース20の拡径部上面20caには、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部22が上側モータケース20の回転軸方向の寸法を超えない範囲において形成されている。具体的には、上側環状突出部22の高さh2は、中間部20bの高さh1を超えない範囲で形成されており、例えば、高さh2は高さh1の10%以上40%の範囲の高さであり、具体的には、25%の高さである。
【0047】
図10(c)及び図11に示すように、拡径部20cの内側には、環状の内周壁部にネジ20dが形成され、また、環状の拡径部内面20eが形成されている。
【0048】
図12及び図13は、下側モータケース30を示す図である。図12(a)は下側モータケース30の側面図、図12(b)は下側モータケース30を上方から視た平面図、図12(c)は下側モータケース20を下方から視た底面図である。図13(a)は下側モータケース30を上方から視た斜視図、図13(b)は下側モータケース30の中央を回転軸方向に切断した状態を示す断面図である。
【0049】
図12及び図13に示すように、下側モータケース30は、全体として扁平な円柱状に形成されている。図12(a)及び図13(b)に示すように、下側モータケース30は、下部30a、及び、下部30aの上側に位置する拡径部30bから構成されている。拡径部30bの内側にはステータ70が、拡径部30bの内面と接する状態で配置される。下部30aの内側には、ロータ50Bが配置される。
【0050】
拡径部30bの直径d12は、下部30aの直径d11よりも大きい。拡径部30bの直径d12が下部30abの直径d11を超える幅d13の部分の下面は、環状に構成された拡径部下面30baとなっている。
【0051】
図12(c)及び図13(b)に示すように、下側モータケース30の拡径部下面30baには、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部32が下側モータケース30の回転軸方向の寸法を超えない範囲において形成されている。具体的には、下側環状突出部32の高さh12は、下部30aの高さh11を超えない範囲で形成されており、例えば、高さh12は高さh11の10%以上40%の範囲の高さであり、具体的には、15%の高さである。
【0052】
図12(a)及び図13に示すように、拡径部30bの外周壁部には、ネジ30dが形成され、また、内側には環状の内面30eが形成されている。ネジ30dと、上側モータケース20のネジ20dが係合することによって、上側モータケース20と下側モータケース30が固定される。このとき、下側モータケース30の環状外周部30b1u(図12(a)参照)と上側モータケース20の環状外周部20cu(図10(c)参照)の間にOリング46が配置され、密閉構造を強化する。
【0053】
図14は、下側巻線保持部74に電線構造体73が配置された状態を示す図である。図14(a)及び(b)に示すように、電線構造体73は、突出部74bの本体部74b1の外周に接して配置される。
【0054】
電線が環状に配置されて、電線構造体73が形成される。なお、本明細書に添付の図において、個々の電線の記載は省略している。電線構造体73を構成する電線は、例えば、銅線であり、具体的には、エナメル線である。図14に示すように、電線構造体73は、突出部74bの外径と相似形に構成される。電線構造体73は、例えば、突出部74bと突出部72bとを係合した状態と同一の外形の成型用部材(図示せず)を準備し、その成型用部材に対して、電線を複数回数巻き付けた後、引き抜くことによって形成する。成型用部材に電線を複数回数巻き付けて、引き抜く前、あるいは、引き抜いた後に、ベークライト等の樹脂によって、電線を固定するようにしてもよい。電線構造体73は空芯コイルである。電線構造体73が各突出部74bの外周部に接して配置され、すべての電線構造体73が結線されて巻線を構成する。
【0055】
図15は、ステータ70を示す図である。図15(a)はステータ70を上方から視た平面図であり、図15(b)はステータ70を下方から視た底面図であり、図15(c)はステータ70を上方から視た斜視図である。図15(a)及び(c)に示すように、電線構造体73は、その内周面が、上側巻線保持部72の突出部72bの本体部72b1の外周面に接して配置される。また、図15(b)に示すように、電線構造体73は、その内周面が、下側巻線保持部74の突出部74bの本体部74b1の外周面に接して配置される。
【0056】
図16は、下側モータケース30と、ステータ70の分解斜視図である。図17は、下側モータケース30と、ステータ70の分解斜視断面図である。図16及び図17に示すように、電線構造体73は、上側巻線保持部72と下側巻線保持部74との間に配置される。
【0057】
図17に示すように、上側巻線保持部72の基部72aの厚さを厚さw1、下側巻線保持部74の基部74aの厚さを厚さw2とする。厚さw1と厚さw2は等しい。図17から理解できるように、上側巻線保持部72に電線構造体73が配置されると、回転軸方向において、電線構造体73の上面73cと外面72a1との間には、厚さw1だけの距離が確保される。同様に、下側巻線保持部74に電線構造体73が配置されると、回転軸方向において、電線構造体73の下面73dと外面74a1との間には、厚さw2だけの距離が確保される。このため、回転軸方向における磁石51A及び51Bの高さを規定することによって、電線構造体73の上面73cと磁石51Aとの間の空隙(ギャップ)、及び、電線構造体73の下面73dと磁石51Bとの間の空隙(ギャップ)を設計値と同一になることを確実にすることができる。
【0058】
電線構造体73は、上側巻線保持部72の突出部72bと下側巻線保持部74の突出部74bの双方に接して配置される。さらに具体的には、図17に示すように、電線構造体73の上側の部分を上側部73aとし、下側の部分を下側部73bとすれば、上側部73aの内周面は上側巻線保持部72の突出部72bの外周面と接し、電線構造体73の下側部73bの内周面は下側巻線保持部74の突出部74bの外周面と接する。
【0059】
図18はモータ10を上方から視た断面斜視図であり、図19はモータ10を下方から視た断面斜視図である。図18及び図19に示すように、ステータ70は、モータケース12の内面と接した状態でモータケース12内に配置される。上側巻線保持部72は上側モータケース20の内面に接し、下側巻線保持部74は下側モータケース30の内面に接するように構成されている。具体的には、上側巻線保持部72の外面72a1は上側モータケース20の拡径部内面20eと接し、下側巻線保持部74の外面74a1は下側モータケース30の拡径部内面30eと接し、上側巻線保持部72の外周面72a3及び下側巻線保持部74の外周面74a3は下側モータケース30の内周面30fと接する。
【0060】
図18及び図19に示すように、ステータ70の上記の構造により、電線構造体73と磁石51A及び磁石51Bとの間には、空隙(ギャップ)以外には磁束の障害となるものは存在しない。これにより、電線構造体73が空芯コイルであっても、モータ10の機能に十分な磁束を作用させることができる。なお、電線構造体73の詳細な構造は、例えば、米国特許US7045924B2(Asignee:Okayama Giken Co.,Ltd.,)に記載の技術を適用することができる。
【0061】
モータ10の上述の構成により、ステータ70の電線において発生した熱は、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74、モータケース12を介して、効率的に外部に放出される。
【0062】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
10 アキシャルギャップモータ
12 モータケース
20 上側モータケース
30 下側モータケース
70 ステータ
72 上側巻線保持部
73 電線構造体
74 下側巻線保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19