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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095477
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】皮膚用乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240703BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/06
A61Q19/00
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022212954
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】柚口 耕二
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC081
4C083AC082
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC392
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD641
4C083AD642
4C083BB13
4C083BB32
4C083BB36
4C083CC03
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】優れた乳化安定性を発揮するだけでなく、塗布時にコクのある使用感が得られるにもかかわらず、肌上での延展性が良好で、かつ、塗布後の肌にべたつき感が残らない皮膚用乳化組成物を提供。
【解決手段】成分A:ミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸、成分B:多価アルコール、成分C:抱水性油剤、並びに成分D:炭素数14~18の高級アルコールを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、下記成分B、下記成分C、並びに下記成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物。
成分A:ミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸
成分B:多価アルコール
成分C:抱水性油剤
成分D:炭素数14~18の高級アルコール
【請求項2】
前記成分Aに対する前記成分Cの含有量の比(成分C/成分A)が、20~60である請求項1に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項3】
さらに、下記成分Eを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚用乳化組成物。
成分E:(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
【請求項4】
さらに、下記成分Fを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚用乳化組成物。
成分F:室温で液状の油剤(ただし、前記成分Cおよび前記成分Dを除く。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
皮膚用乳化組成物に採用される乳化技術は、化粧品、医薬部外品、医薬品等の製品で広く利用されている。これらの製品では、乳化状態をより安定化させるために、微細で均一な乳化滴をもつ水中油型乳化組成物の形態とすることが求められている。
【0002】
このような微細な水中油型乳化物を得る方法としては、D相乳化法が一般的に知られている。D相乳化とは、乳化剤(界面活性剤)を含んだ多価アルコール溶液に油相を添加して乳化する方法であり、これによって多価アルコール中油型乳化組成物が得られる。次に、当該多価アルコール中油型乳化組成物を水相に混合することで微細な水中油型乳化組成物が得られる。
【0003】
前述したD相乳化法によって得られた微細な水中油型乳化組成物は、乳化安定性が良好となる以外にも、肌上での延展性が良く、べたつかずに瑞々しい使用感を発揮させることが可能となる。その一方で、コクのある使用感、より詳細には、塗布時に適度な抵抗感があり、濃厚クリームのような厚みのある剤を塗布しているかのような使用実感が得られ難いといった課題がある。
【0004】
これまでにもD相乳化方法を利用した試みとして、界面活性剤を含有せずに、グリチルリチン酸または塩等の水溶性有効成分と、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーと、ムコ多糖と、コラーゲンとを含有する多価アルコール中油型エマルションへと調製する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、当該試みでは、界面活性剤が配合されないため、界面活性剤を用いた多価アルコール中油型組成物と比べて、乳化安定性に劣り、塗布時の感触が軽く、コクのある使用感が得られ難いという課題があった。
【0005】
また、乳化安定性を高める試みとして、コエンザイムQ10と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する多価アルコール中油型組成物へと調製する技術も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、このようなポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた多価アルコール中油型組成物では、コクのある使用感をある程度発揮させることができる反面、肌上での延展性が悪く、べたつきを感じ易いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-091783号公報
【特許文献2】特開2007-209251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上記技術に鑑みてされたものであり、優れた乳化安定性を発揮するだけでなく、塗布時にコクのある使用感が得られるにもかかわらず、肌上での延展性が良好で、かつ、塗布後の肌にべたつき感が残らない皮膚用乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分A、下記成分B、下記成分C、並びに下記成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物を提供する。
成分A:ミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸
成分B:多価アルコール
成分C:抱水性油剤
成分D:炭素数14~18の高級アルコール
【0009】
上記成分Aに対する上記成分Cの含有量の比(成分C/成分A)が、20~60であることが好ましい。
【0010】
本発明の皮膚用乳化組成物は、下記成分Eを含有することが好ましい
成分E:(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
【0011】
本発明の皮膚用乳化組成物は、下記成分Fを含有することが好ましい
成分F:室温で液状の油剤(ただし、上記成分Cおよび上記成分Dを除く。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚用乳化組成物は、上記構成要件を満たすことにより、優れた乳化安定性を発揮することができるという効果を奏する。また、本発明の皮膚用乳化組成物は、塗布時にコクのある使用感が得られるにもかかわらず、肌上での延展性が良好で、かつ、塗布後の肌にべたつき感が残らないという使用実感に各段に優れた効果を発揮する。なお、本発明において「コクのある使用感」とは、塗布時に適度な抵抗感があり、濃厚クリームのような厚みのある剤を塗布しているかのような使用実感が得られることを言う。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚用乳化組成物は、下記成分A、下記成分B、下記成分C、並びに下記成分Dを含有する。
成分A:ミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸
成分B:多価アルコール
成分C:抱水性油剤
成分D:高級アルコール
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
[成分A]
上記成分Aは、ミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸である。ミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸とは、アスコルビン酸の2位の位置にグリセリル基、3位の位置にミリスチル基が結合したアスコルビン酸誘導体である。なお、上記成分Aは、アスコルビン酸の2位の位置にミリスチル基、3位の位置にグリセリル基が結合したミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸とは構造が相違する。
【0016】
本発明において上記成分Aは、驚くべきことに、本発明の必須構成成分と組み合わせることにより、乳化させることが可能となるだけでなく、格段に優れた乳化安定性を発揮させることができる。また、汎用されている界面活性剤を用いた皮膚用乳化組成物と比べて、肌上での延展性が良好で、塗布後の肌にべたつき感が残らない皮膚用乳化組成物を調製することができる。
【0017】
本発明において上記成分Aは、市販品を用いることもできる。上記成分Aの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0018】
なお、本発明の皮膚用乳化組成物中の成分Aの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、乳化安定性を高める観点、並びに、肌上での延展性が良好で、べたつき感を抑える観点から、組成物100質量%中、0.01質量%~0.2質量%であることが好ましく、0.02質量%~0.12質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Aの含有量は、純分に換算した量である。
【0019】
[成分B]
上記成分Bは、多価アルコールである。本発明においては、上記成分Bを用いることにより、優れた乳化安定性をより一層高めることができる。上記成分Bとしては、例えば、2価のアルコール、3価以上のアルコール等が挙げられる。なお、本明細書において、上記2価のアルコールを「成分B1」、上記3価以上のアルコールを「成分B2」と称することがある。
【0020】
上記成分B1とは、炭化水素の2個の水素を水酸基で置換したアルコール類の総称である。具体的な上記成分B1としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これら成分B1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記成分B1の中でも、乳化安定性を高める観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオールおよび1,2-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオールおよび1,2-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0022】
上記成分B2とは、炭化水素の3個以上の水素を水酸基で置換したアルコール類の総称である。具体的な上記成分B2としては、例えば、グリセリン(濃グリセリン)、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、グルコース、マルトース、マルチトール、スクロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、グルコシルトレハロース等が挙げられる。これら成分B2は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記成分B2の中でも、乳化安定性を高める観点から、グリセリン(濃グリセリン)、ソルビトール、ジグリセリンおよびポリグリセリンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、グリセリン(濃グリセリン)、ソルビトールおよびジグリセリンから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0024】
本発明において上記成分Bは、市販品を用いることもできる。上記成分Bの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0025】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Bの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、乳化安定性をより一層高める観点から、組成物100質量%中、1.0質量%~30質量%であることが好ましく、6.0質量%~25質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0026】
本発明では、優れた乳化安定性をより一層高める観点から、上記成分Bの総量に対する上記成分B1の量の質量比(成分B1の量/成分Bの総量)は、0.005~0.95の範囲を満たし調製することが好ましく、0.02~0.8の範囲を満たし調製することがより好ましい。
【0027】
本発明では、優れた乳化安定性をより一層高める観点から、上記成分Bの総量に対する上記成分B2の量の質量比(成分B2の量/成分Bの総量)は、0.05~0.99の範囲を満たし調製することが好ましく、0.2~0.98の範囲を満たし調製することがより好ましい。
【0028】
本発明では、優れた効果を発揮させるには、上記成分Bの総量に対する上記成分B1の量の質量比、若しくは、上記成分Bの総量に対する上記成分B2の量の質量比の何れか一方を満たし調製すればよいが、優れた乳化安定性をより顕著に発揮させるには、上記成分Bの総量に対する上記成分B1の量の質量比、並びに、上記成分Bの総量に対する上記成分B2の量の質量比の双方を満たし調製することがより好ましい。
【0029】
なお、本発明においては、乳化安定性をより一層高める観点から、上記成分Aに対する上記成分Bの含有量の比(成分B/成分A)は、50~800の範囲を満たし調製することが好ましく、65~700の範囲を満たし調製することがより好ましく、90~650の範囲を満たし調製することが最も好ましい。
【0030】
[成分C]
上記成分Cは、抱水性油剤である。抱水性油剤とは、自重と等量以上(100%以上)の抱水力を有する油剤であり、50℃で自重と等量以上の水を抱え込むことができる油剤である。本発明において、抱水力とは、50℃の油剤がどの程度の量の水を抱え込むことができるかを示す指標であり、以下のとおり評価される。すなわち、50℃に加熱した試料(油剤)10gを撹拌しながら、上記試料に50℃の水を徐々に添加し、試料から水が分離し始めるまで水を加える。水が分離し始めるまでに添加した水の質量(水が分離しない最大量)を測定し、「添加した水の質量」とした。下記式に従い、得られた「添加した水の質量」を「試料の初期質量(10g)」で除し、100倍して「抱水力(50℃)」(単位:質量%)とする。
抱水力(50℃)(単位:質量%)=(添加した水の質量)/(試料の初期質量(10g))×100
なお、上記撹拌は、特に限定されないが、ディスパーミキサーを用い、3000rpmの条件で行うことができる。
【0031】
本発明においては、上記抱水力を満たす成分を用いることにより、優れた乳化安定性をより一層高めることができるだけでなく、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さないという使用実感において優れた効果を発揮させることができる。上記成分Cとしては、例えば、ダイマー酸エステル、アシルアミノ酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル(ただし、ダイマー酸エステルを除く)、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。なお、本明細書において、上記ダイマー酸エステルを「成分C1」、上記アシルアミノ酸エステルを「成分C2」、上記フィトステロール脂肪酸エステル(ただし、ダイマー酸エステルを除く)を「成分C3」、上記ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを「成分C4」と称することがある。
【0032】
抱水力を有する具体的な上記成分C1としては、例えば、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)等が挙げられる。これら成分C1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記成分C1の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)およびダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)およびダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0034】
抱水力を有する具体的な上記成分C2としては、例えば、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル等が挙げられる。これら成分C2は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記成分C2の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)およびラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)およびラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0036】
抱水力を有する具体的な上記成分C3としては、例えば、オレイン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル等が挙げられる。これら成分C3は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記成分C3の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、オレイン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリルおよびマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0038】
抱水力を有する具体的な上記成分C4としては、例えば、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル等が挙げられる。これら成分C4は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記成分C4の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチルおよびテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルおよびテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0040】
上記成分Cの中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より一層良好な使用実感を発揮させる観点から、ダイマー酸エステル、アシルアミノ酸エステルおよびフィトステロール脂肪酸エステル(ただし、ダイマー酸エステルを除く)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)およびマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0041】
本発明において上記成分Cは、市販品を用いることもできる。上記成分Cの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0042】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Cの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から組成物100質量%中、0.5質量%~15.0質量%であることが好ましく、1.0質量%~8.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0043】
本発明においては、乳化安定性を更に一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより一層良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より一層良好な使用実感を発揮させる観点から、上記成分Aに対する上記成分Cの含有量の比(成分C/成分A)は、5~120の範囲を満たし調製することが好ましく、10~80の範囲を満たし調製することがより好ましく、20~60の範囲を満たし調製することが最も好ましい。
【0044】
[成分D]
上記成分Dは、炭素数14~18の高級アルコールである。本発明においては、上記成分Dを用いることにより、優れた乳化安定性をより一層高める以外にも、塗布時にコクのある使用感が得られる皮膚用乳化組成物を調製することができる。
【0045】
上記成分Dとして、例えば、炭素数14~18の直鎖飽和高級アルコール、炭素数14~18の直鎖不飽和高級アルコール等が挙げられる。なお、本明細書において、上記炭素数14~18の直鎖飽和高級アルコールを「成分D1」、上記炭素数14~18の直鎖不飽和高級アルコールを「成分D2」と称することがある。
【0046】
具体的な上記成分D1としては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール等が挙げられる。これら成分D1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0047】
具体的な上記成分D2としては、例えば、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0048】
上記成分Dの中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、塗布時にコクのある使用感を発揮させる観点から、上記成分D1である炭素数14~18の直鎖飽和高級アルコールを用いることが好ましく、中でも、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびセテアリルアルコールから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0049】
本発明において上記成分Dは、市販品を用いることもできる。上記成分Dの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0050】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Dの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、塗布時にコクのある使用感を発揮させる観点から、組成物100質量%中、0.5質量%~7.0質量%であることが好ましく、1.0質量%~5.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Dの含有量は、純分に換算した量である。
【0051】
本発明においては、乳化安定性をより一層高め、塗布時にコクのある使用感を発揮させる観点、更には、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、上記成分Aに対する上記成分Dの含有量の比(成分D/成分A)は、5~120の範囲を満たし調製することが好ましく、10~80の範囲を満たし調製することがより好ましく、15~60の範囲を満たし調製することが最も好ましい。
【0052】
加えて、上記した乳化安定性や使用実感といった本発明特有の効果を最大限に発揮させる観点から、上記成分Aに対する上記成分B、上記成分Cおよび上記成分Dの総量の含有量の比((成分B+成分C+成分D)/成分A)は、50~1000の範囲を満たし調製することが好ましく、100~900の範囲を満たし調製することがより好ましく、130~800の範囲を満たし調製することが最も好ましい。
【0053】
[成分E]
本発明の皮膚用乳化組成物には、さらに成分Eとして、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含有することが好ましい。本発明においては、上記成分Eを用いることで、優れた乳化安定性を更に一層高めることができる。また、格段に優れた乳化安定性を有することから、肌上での延展性、更には、塗布後の肌にべたつき感が残らないという使用実感においても各段に優れた効果を発揮させることができる。なお、上記「VP」とは、ビニルピロリドンの略であり、ビニルピロリドンを意味する。
【0054】
本発明において上記成分Eは、市販品を用いることもできる。上記成分Eの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0055】
なお、本発明の皮膚用乳化組成物中の成分Eの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、格段に優れた乳化安定性を発揮させる観点、更には、格別に良好な使用実感を発揮させる観点から、組成物100質量%中、0.1質量%~1.5質量%であることが好ましく、0.3質量%~1.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Eの含有量は、純分に換算した量である。
【0056】
本発明においては、乳化安定性を更に一層高める観点から、上記成分Aに対する上記成分Dの含有量の比(成分E/成分A)は、0.1~80の範囲を満たし調製することが好ましく、0.5~60の範囲を満たし調製することがより好ましく、1~40の範囲を満たし調製することが最も好ましい。
【0057】
[成分F]
本発明の皮膚用乳化組成物には、さらに成分Fとして、上記成分Cおよび上記成分D以外の室温で液状の油剤を含有することが好ましい。本発明においては、上記成分Fを用いることで、優れた乳化安定性をより一層高めることができるだけでなく、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感が残らないという格段に優れた使用実感を発揮させることができる。なお、本明細書において「室温で液状」とは、1~30℃の温度範囲で流動性がある性状をいう。
【0058】
上記成分Fとしては、例えば、室温で液状である、油脂、炭化水素油、脂肪酸エステル油等が挙げられる。本発明において上記成分Fは、室温で液状である、油脂、炭化水素油および脂肪酸エステル油から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、本明細書において、上記室温で液状である油脂を「成分F1」、上記室温で液状である炭化水素油を「成分F2」、上記室温で液状である脂肪酸エステル油を「成分F3」と称することがある。
【0059】
具体的な上記成分F1としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、大豆油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ククイナッツ油、小麦胚芽油、月見草油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ホホバ種子油、アボカド油等が挙げられる。これら成分F1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0060】
上記成分F1の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、オリーブ油、ホホバ種子油、マカデミアナッツ油、ゴマ油、コメヌカ油、月見草油およびアボカド油から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、オリーブ油、ホホバ種子油およびマカデミアナッツ油から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0061】
具体的な上記成分F2としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。これら成分F2は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記成分F2の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、スクワラン、流動パラフィン、軽質イソパラフィンおよび流動イソパラフィンから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、スクワラン、流動パラフィンおよび軽質イソパラフィンから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0063】
上記成分F3においては、室温で液状である、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油等が挙げられる。
【0064】
具体的な室温で液状のモノエステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル等の直鎖脂肪酸と低級アルコールとのモノエステル油;カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル等の直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのモノエステル油;カプリル酸プロピルヘプチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノール酸オクチルドデシル等の直鎖脂肪酸と分岐アルコールとのモノエステル油;2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、イソステアリン酸ヘキシル等の分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのモノエステル油;ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシル等の分岐脂肪酸と分岐アルコールとのモノエステル油等が挙げられる。これら室温で液状のモノエステル油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記室温で液状のモノエステル油の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸セチルおよびイソステアリン酸イソステアリルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸セチルおよびイソステアリン酸イソステアリルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0066】
具体的な室温で液状のジエステル油としては、例えば、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等の脂肪酸と多価アルコールとのジエステル油;コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルヘキシル等の二塩基酸のジエステル油;炭酸ジカプリリル等の炭酸のジエステル油等が挙げられる。これら室温で液状のジエステル油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0067】
上記室温で液状のジエステル油の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、セバシン酸ジエチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジイソプロピルおよび炭酸ジカプリリルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、セバシン酸ジエチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールおよびセバシン酸ジイソプロピルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0068】
具体的な室温で液状のトリエステル油としては、例えば、(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等の脂肪酸と多価アルコールとのトリエステル油等が挙げられる。これら室温で液状のトリエステル油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0069】
上記室温で液状のトリエステル油の中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよびトリイソパルミチン酸グリセリルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリルおよびトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0070】
上記成分Fの中でも、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、室温で液状である、油脂、炭化水素油およびトリエステル油から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、オリーブ油、スクワラン、(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリルおよびトリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0071】
本発明において上記成分Fは、市販品を用いることもできる。上記成分Fの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0072】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Fの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から組成物100質量%中、5.0質量%~40.0質量%であることが好ましく、8.0質量%~25.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0073】
本発明においては、乳化安定性をより一層高める観点、並びに、肌上での延展性をより良好にし、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感を発揮させる観点から、上記成分Aに対する上記成分Fの含有量の比(成分F/成分A)は、40~700の範囲を満たし調製することが好ましく、50~600の範囲を満たし調製することがより好ましく、60~500の範囲を満たし調製することが最も好ましい。
【0074】
加えて、上記した乳化安定性や使用感といった本発明特有の効果を最大限に発揮させる観点から、上記成分Dに対する上記成分Fの含有量の比(成分F/成分D)は、1~20の範囲を満たし調製することが好ましく、2~15の範囲を満たし調製することがより好ましく、3~10の範囲を満たし調製することが最も好ましい。
【0075】
本発明の皮膚用乳化組成物のpHは、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、乳化安定性の観点から、3.5~7.0であることが好ましい。pHが7.0を超えると、上記成分Aに起因する組成物の粘度低下が経時的に生じ易く、また、乳化粒子の凝縮によりクリーミングや分離を引き起こし易くなるため好ましくない。
【0076】
本発明において上記pH領域に調製することができるのであれば、pH調整剤を用いても、用いなくとも構わないが、pH調製剤により調製する場合には、例えば、クエン酸、乳酸、リン酸およびこれらの塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アルギニン等を用いることができる。
【0077】
本発明の皮膚用乳化組成物は、肌への刺激を低減させる観点、並びに、べたつき感がない良好な使用感を発揮させる観点から、実質的に上記成分A以外の界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0078】
本発明の皮膚用乳化組成物は、上記成分A以外の界面活性剤が無くとも安定性に良好な乳化組成物を調製できることから、上記成分A以外の界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明における界面活性剤とは、一つの分子内に親水基と親油基を持つ物質であり、乳化力、可溶化力、分散力に優れた物質である界面活性剤のことを意味する。
【0079】
なお、本発明における「実質的に上記成分A以外の界面活性剤を含有しない」とは、別途、乳化作用を発揮させるために界面活性剤を含有させることをしないという意味であり、各配合成分に含まれる少量の界面活性剤まで除外するものではない。即ち、本発明の皮膚用乳化組成物は、界面活性剤を含まないか、又は界面活性剤を含み且つ組成物100質量%中の界面活性剤の含有量が2質量%以下であることが好ましい。
【0080】
本発明の皮膚用乳化組成物の用途は、肌に適用することで優れた効果を発揮することができれば特に限定されないが、例えば、乳液、美容液、保湿化粧料、シワ抑制化粧料、たるみ抑制化粧料、アクネケア化粧料等のスキンケア化粧料として用いることが好ましい。また、本発明の皮膚用乳化組成物は、化粧料、医薬部外品、指定医薬部外品、雑貨等の形態をとり得る。
【0081】
本発明の皮膚用乳化組成物は、乳化安定性が良好、且つ、肌上での延展性が良く、塗布後の肌にべたつき感を残さず、より良好な使用実感が得られることから、例えば、リキッドファンデーション、化粧下地等のメイクアップ化粧料;日焼け止め化粧料等の化粧料としても用いることができる。
【0082】
本発明の皮膚用乳化組成物をメイクアップ化粧料の用途として用いる場合には、上記した成分の他に、例えば、無機粉体、有機粉体等を配合することが好ましい。
【0083】
上記無機粉体の形状、粒子径、粒子構造、表面処理の有無等は、メイクアップ効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、形状としては、例えば、板状、球状、針状等が挙げられる。粒子径としては、例えば、煙霧状、微粒子、顔料級等が挙げられる。粒子構造としては、例えば、無孔質、多孔質等が挙げられる。表面処理としては、例えば、シリコーン処理、フッ素処理、金属石鹸処理等の疎水化処理等が挙げられる。
【0084】
具体的な上記無機粉体としては、例えば、酸化チタン、黒色酸化チタン、酸化亜鉛、群青、コンジョウ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、赤酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ、ケイ酸アルミニウム、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、硫酸バリウム、カオリン、窒化ホウ素、ベントナイト、ホウケイ酸(Ca/Al)、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化亜鉛被覆マイカ等が挙げられる。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0085】
上記無機粉体の含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、メイクアップ効果を付与する観点から、組成物100質量%中、0.50質量%~20質量%であることが好ましく、2.0質量%~15.0質量%であることがより好ましい。なお、上記無機粉体の含有量は、純分に換算した量である。
【0086】
上記有機粉体も無機粉体と同様に、メイクアップ効果を発揮できるのであれば特に限定されない。具体的な上記有機粉体としては、例えば、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、ポリエチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリウレタンパウダー、結晶セルロースパウダー、メタクリル酸-アクリロニトリル共重合体パウダー等が挙げられる。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0087】
上記有機粉体の含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、メイクアップ効果を付与する観点から、組成物100質量%中、0.1質量%~15.0質量%であることが好ましく、1.0質量%~10.0質量%であることがより好ましい。なお、上記有機粉体の含有量は、純分に換算した量である。
【0088】
一方、本発明の皮膚用乳化組成物を日焼け止め化粧料の用途として用いる場合には、上記した成分の他に、紫外線防御効果を発揮する、例えば、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等を配合することが好ましい。
【0089】
具体的な上記紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、サリチル酸エチレングリコール、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ポリシリコーン-15(ジメチコジエチルベンザルマロネート)、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、サリチル酸ホモメンチル、トリスビフェニルトリアジン、サリチル酸エチルヘキシル等が挙げられる。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0090】
上記紫外線吸収剤の含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、紫外線防御効果を発揮させる観点から、組成物100質量%中、2.0質量%~25.0質量%であることが好ましく、5.0質量%~20.0質量%であることがより好ましい。なお、上記紫外線吸収剤の含有量は、純分に換算した量である。
【0091】
具体的な上記紫外線散乱剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、酸化クロム、黒酸化鉄、酸化ジルコニウム、黄酸化鉄、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、セリサイト、紺青、カオリン、水酸化アルミニウム、群青、モンモリナイト、炭酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0092】
上記紫外線散乱剤の含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、紫外線防御効果を発揮させる観点から、組成物100質量%中、2.0質量%~25.0質量%であることが好ましく、4.0質量%~20.0質量%であることがより好ましい。なお、上記紫外線散乱剤の含有量は、純分に換算した量である。
【0093】
[その他成分]
本発明の皮膚用乳化組成物には、上記した成分の他に、例えば、上記した成分C以外の油剤;上記した成分D以外の増粘剤;保湿剤、香料、pH調整剤、皮膜形成剤、キレート剤、低級アルコール、アルカリ剤、ビタミン剤、収れん剤、酸化防止剤、防腐剤、着色料、植物発酵エキス、精製水等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0094】
本発明の皮膚用乳化組成物の性状は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、例えば、乳液状、クリーム状とすることが好ましい。
【0095】
本発明の皮膚用乳化組成物は、乳化剤型をとり得るのであれば、O/Wエマルション(水中油型)、W/Oエマルション(油中水型)、W/O/Wエマルション(水中油中水型)、O/W/Oエマルション(油中水中油型)の何れの形態であっても特に限定されないが、乳化安定性に優れ、格段に優れた使用感が得られる観点から、O/Wエマルション(水中油型)であることが好ましく、中でも、延展時の使用感を良好にする観点から、D相乳化法により調製したO/Wエマルション(水中油型)であることがより好ましい。なお、D相乳化法によるO/Wエマルション(水中油型)の調製方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて調製することができる。
【0096】
本発明の皮膚用乳化組成物を適用する部位は、特に限定されないが、一例として、顔(額、目元、目じり、頬、口元等)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、デコルテ、脇、背中等に用いることができる。
【実施例0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0098】
実施例および比較例では、下記成分を用いた。
【0099】
[成分A]
ミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸:商品名「Amitose GMA」(株式会社成和化成社製)
【0100】
[成分B]
成分B1)1,3-ブチレングリコール:商品名「精製1,3-BG(B)」(日本リファイン株式会社製)
成分B1)プロパンジオール:商品名「Zemea Select プロパンジオール」(デュポンテートアンドライルバイオプロダクツ社製)
成分B1)1,2-ペンタンジオール:商品名「A-Leen 5(Green Pentanediol)」(Minasolve社製)
成分B2)グリセリン:商品名「局方濃グリセリン」(花王株式会社製)
【0101】
[成分C]
成分C1)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル):商品名「Plandool-S」(日本精化株式会社製)
成分C1)ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル):商品名「Plandool-G」(日本精化株式会社製)
成分C2)ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル):商品名「エルデュウ CL-202」(味の素株式会社製)
成分C3)マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル:商品名「Plandool-MAS」(日本精化株式会社製)
【0102】
[成分D]
成分D1)セチルアルコール:商品名「カルコール6870」(花王株式会社製)
成分D1)ステアリルアルコール:商品名「カルコール8688」(花王株式会社製)
成分D1)セテアリルアルコール:商品名「セトステアリルアルコール」(高級アルコール工業株式会社製)
成分D2)オレイルアルコール:商品名「NOVOL-LQ-(JP)」(クローダジャパン株式会社製)
【0103】
[成分E]
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー:商品名「ARISTOFLEX AVC」(クラリアントジャパン株式会社製)
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:商品名「PEMULEN TR-2 POLYMER」(Lubrizol社製)
【0104】
[成分F]
成分F1)オリーブ油:商品名「NIKKOL オリーブ油」(日光ケミカルズ株式会社製)
成分F2)スクワラン:商品名「NIKKOL シュガースクワラン」(日光ケミカルズ株式会社製)
成分F3)(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリル:商品名「Miglyol 829」(IOI OLEOCHEMICAL社製)
成分F3)トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン):商品名「MYRITOL GTEH」(BASFジャパン株式会社製)
【0105】
(試料の調製1)
表1~表3に記した組成に従い、実施例1~15および比較例1~5の皮膚用乳化組成物を常法に準じて調製し、下記評価に供した。結果を表1~表3に記す。なお、表中の配合量は、全ての純分換算した値である。
【0106】
(試験例1:乳化安定性の評価)
実施例および比較例の各試料を50mL容の透明ガラス容器に夫々封入し、50℃の恒温槽に3週間保管した。保管後の乳化系の状態を目視観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0107】
<乳化安定性の評価基準>
◎(非常に良好):製剤直後と全く変化が認められない
○(良好):僅かな減粘が認められるものの、ほとんど変化は認められない
△(不十分):明らかな減粘が認められる
×(不良):液状へと変化している、若しくは、分離している。
【0108】
上記試験例1の乳化安定性の評価において、「◎(非常に良好)」、「○(良好)」、「△(不十分)」の結果が得られた各試料について下記試験に供した。
【0109】
(試験例2:使用感の評価)
各実施例および各比較例で得られた皮膚用乳化組成物1gを手の甲へ塗布して使用試験を実施し、「塗布時の感触」、「延展性」、「延展後のべたつき」に関して官能評価を行い、下記1点~5点の評価点に従ってスコア付けをした。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合判断して決定した。
【0110】
「塗布時の感触」の評価は、塗布した際にコクのある使用感が得られるほど高得点とした。「延展性」の評価は、塗布した際の延び広がりが良いほど高得点とした。「延展後のべたつき」の評価は、延展後のべたつきを感じないほど高得点とした。
【0111】
下記5段階の評価基準に従って評価した。結果は、専門評価パネルの平均点を算出し、下記判定基準に従って判定を行った。
【0112】
<評価基準>
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0113】
<判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
表1および表2の結果からも明らかなように、本発明の必須構成成分を充足する実施例1~15では、乳化安定性、塗布時の感触、塗布時の延展性、並びに塗布後のべたつき感のなさにおいて非常に良好な結果が得られていることが分かる。すなわち、本発明の皮膚用乳化組成物は、乳化安定性に優れ、塗布時にコクのある使用感が得られるだけでなく、肌上での延展性に優れ、塗布後の肌にべたつき感が残らず、良好な使用実感が得られるという、これまでには発揮させることができなかった格別顕著な効果を奏するものであると言える。
【0118】
これに対して、本発明の必須構成成分を充足しない比較例1~5では、乳化安定性を十分に発揮できていないことが分かる。加えて、必須成分であるミリスチル2-グリセリルアスコルビン酸を、乳化作用を有する界面活性剤として汎用のステアリン酸ポリグリセリル-10に置き換えた比較例5では、本発明特有の効果である、塗布時にコクがあり、格段に優れた使用感が得られるだけでなく、肌上での延展性に優れ、べたつきのない使用感を発揮できないものであることが分かった。