(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095487
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】表示媒体、処理装置、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
G09F 9/302 20060101AFI20240703BHJP
G09F 9/46 20060101ALI20240703BHJP
G09F 19/14 20060101ALI20240703BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G09F9/302 C
G09F9/46 Z
G09F19/14
G06F3/14 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060040
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2022212402の分割
【原出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】598138327
【氏名又は名称】株式会社ドワンゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 快勢
【テーマコード(参考)】
5B069
5C094
【Fターム(参考)】
5B069BA05
5B069HA16
5C094AA01
5C094CA20
5C094DA03
(57)【要約】
【課題】省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示する。
【解決手段】表示媒体1は、複数のセルCのそれぞれに青領域Bを有する第1のレイヤL1と、複数のセルCのそれぞれに赤領域Rと緑領域Gを有する第2のレイヤL2を備える。所定方向から視認した際、第2のセルC2の赤領域Rおよび緑領域Gのそれぞれは、所定方向において第1のセルC1の青領域Bに隣接するように配置される。表示媒体1は、所定方向上に位置する第1の視点に、赤領域R、緑領域Gおよび青領域Bで第1のコンテンツを表示し、緑領域Gと青領域Bが重複する方向上に位置する第2の視点に、赤領域Rで第2のコンテンツを表示し、赤領域Rと青領域Bが重複する方向上に位置する第3の視点に、緑領域Gで第3のコンテンツを表示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健常者および少数色覚特性保持者が視認可能なコンテンツを表示する表示媒体であって、
前記表示媒体は、
透明部材で形成され、複数のセルを有し、前記複数のセルのそれぞれに青領域を有する第1のレイヤと、
透明部材で形成され、複数のセルを有し、前記複数のセルのそれぞれに赤領域と緑領域を有する第2のレイヤを備え、
前記第1のレイヤの第1のセルと、前記第1のレイヤの前記第1のセルに対応する前記第2のレイヤの第2のセルを重ねた状態を、所定方向から視認した際、前記第2のセルの赤領域および緑領域のそれぞれは、所定方向において前記第1のセルの青領域に隣接するように配置され、
前記所定方向上に位置する第1の視点に、赤領域、緑領域および青領域で第1のコンテンツを表示し、
緑領域と青領域が重複する方向上に位置する第2の視点に、赤領域で第2のコンテンツを表示し、
赤領域と青領域が重複する方向上に位置する第3の視点に、緑領域で第3のコンテンツを表示する
表示媒体。
【請求項2】
前記第1のセルの青領域、前記第2のセルの赤領域および前記第2のセルの緑領域は、それぞれ、複数の画素を備え、
各領域の複数の画素のうち、前記第1のセルおよび前記第2のセルで表示する色の赤、緑および青の各値に対応する数の画素が、それぞれ赤、緑または青で着色され、それ以外の画素が赤、緑および青以外の色で着色される
請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
緑錐体欠損または赤錐体欠損の少数色覚特性保持者が、視点を変えて、前記第2のコンテンツおよび前記第3のコンテンツを繰り返し見ることにより、コンテンツの構図を視認できる
請求項1に記載の表示媒体。
【請求項4】
請求項1に記載の表示媒体の前記第1のセルと前記第2のレイヤのセルの各画素に色を割り当てる処理装置であって、
前記第1のセルの青領域、前記第2のセルの赤領域および前記第2のセルの緑領域は、それぞれ、複数の画素を備え、
前記第1のコンテンツにおいて、前記第1のセルおよび前記第2のセルで表示する色の赤緑青の各値を算出する算出部と、
各領域の複数の画素のうち、算出された赤、緑および青の各値に対応する数の画素に、それぞれ赤、緑または青を割り当て、それ以外の画素に赤、緑および青以外の色を割り当てる割り当て部
を備える処理装置。
【請求項5】
前記割り当て部は、
青領域の複数の画素のうち、算出された青の値に対応する数の画素に、青を割り当て、それ以外の画素に青赤緑以外の色を割り当て、
赤領域の複数の画素のうち、算出された赤の値に対応する数の画素に、赤を割り当て、それ以外の画素に青赤緑以外の色を割り当て、
緑領域の複数の画素のうち、算出された緑の値に対応する数の画素に、緑を割り当て、それ以外の画素に青赤緑以外の色を割り当てる。
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記赤の値に対応する数は、赤の値が取りうる値域を、前記赤領域が備える画素数+1で段階分けした際の、前記赤の値に対応する段階の値である
請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の処理装置として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示媒体、処理装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
色を感じる3つの細胞である赤錐体、緑錐体および青錐体により、人は、色を感じることができる。一方、いずれかの錐体が欠損している、または機能していないことにより、少数色覚特性が生じる場合がある。一般的に少数色覚特性保持者は、赤または/および緑の色の認識が苦手である。例えば、赤地に緑の文字がある場合、あるいは緑地に赤の文字がある場合、少数色覚特性保持者は文字を全く認識できない場合がある。
【0003】
このような状況を鑑みて、少数色覚特性の有無に関わらず、見やすい色を使ってデザインするユニバーサルデザインが普及している。ユニバーサルデザインでは、少数色覚特性保持者が見えづらい赤と緑を使わないなど、いくつかの指標がある。
【0004】
また、複数の方向に、それぞれ異なるコンテンツを表示する表示媒体が知られている(特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6374625号公報
【特許文献2】特許第6758447号公報
【特許文献3】特許第6764990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらユニバーサルデザインでは、利用可能な色が制限されることから、任意の色でコンテンツを表現することができない。
【0007】
任意の色でコンテンツを表現しようとすると少数色覚特性保持者は見えづらいので、健常者向けに任意の色で表現したコンテンツと、少数色覚特性保持者に好適な色で表現したコンテンツを併記することも考えられる。しかしながら、カラーバリエーションを変えて、同一の内容のコンテンツ併記するために、広いスペースが必要となる。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の表示媒体は、健常者および少数色覚特性保持者が視認可能なコンテンツを表示する表示媒体に関する。表示媒体は、透明部材で形成され、複数のセルを有し、前記複数のセルのそれぞれに青領域を有する第1のレイヤと、透明部材で形成され、複数のセルを有し、前記複数のセルのそれぞれに赤領域と緑領域を有する第2のレイヤを備え、前記第1のレイヤの第1のセルと、前記第1のレイヤの前記第1のセルに対応する前記第2のレイヤの第2のセルを重ねた状態を、所定方向から視認した際、前記第2のセルの赤領域および緑領域のそれぞれは、所定方向において前記第1のセルの青領域に隣接するように配置される。表示媒体は、前記所定方向上に位置する第1の視点に、赤領域、緑領域および青領域で第1のコンテンツを表示し、緑領域と青領域が重複する方向上に位置する第2の視点に、赤領域で第2のコンテンツを表示し、赤領域と青領域が重複する方向上に位置する第3の視点に、緑領域で第3のコンテンツを表示する。
【0010】
本開示の一態様の処理装置は、上記表示媒体の前記第1のセルと前記第2のレイヤのセルの各画素に色を割り当てる処理装置に関する。前記第1のセルの青領域、前記第2のセルの赤領域および前記第2のセルの緑領域は、それぞれ、複数の画素を備え、処理装置は、前記第1のコンテンツにおいて、前記第1のセルおよび前記第2のセルで表示する色の赤緑青の各値を算出する算出部と、各領域の複数の画素のうち、算出された赤緑青の各値に対応する数の画素に、赤緑または青を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる割り当て部を備える。
【0011】
本開示の一態様は、上記処理装置として、コンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る表示媒体の側面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る表示媒体の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係るセルの側面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係るセルのペアの色領域の上面図である(その1)。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態に係るセルのペアの色領域の上面図である(その2)。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態に係る表示媒体を製造するための出力データを生成する処理装置の機能ブロックを説明する図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態に係る表示媒体に割り当てる色を決定する処理を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態に係るセルの側面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態に係るセルのペアの色領域の上面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態に係る表示媒体に割り当てる色を決定する処理を説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、第3の実施の形態に係る表示媒体の斜視図である。
【
図12】
図12は、第3の実施の形態に係る表示媒体のセルの一例を説明する図である。
【
図13】
図13は、第3の実施の形態に係る表示媒体において遮蔽される画素および露出する画素の一例を説明する図である。
【
図14】
図14は、第3の実施の形態に係る表示媒体を製造するための出力データを生成する処理装置の機能ブロックを説明する図である。
【
図15】
図15は、第4の実施の形態に係る表示媒体の斜視図である。
【
図16】
図16(a)は、第4の実施の形態に係る表示媒体に用いられるパーティションの正面図であって、
図16(b)は、右側面図である。
【
図17】
図17は、第4の実施の形態に係る表示媒体に用いられるパーティションの断面図である。
【
図18】
図18は、処理装置に用いられるコンピュータのハードウエア構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0015】
(表示媒体)
本開示の実施の形態に係る表示媒体は、健常者および少数色覚特性保持者が視認可能なコンテンツを表示する。表示媒体は、それぞれ異なる方向に、健常者および少数色覚特性保持者が視認しやすいコンテンツを表示する。
【0016】
少数色覚特性保持者は、正常とされる他の大勢の人とは色が異なって見えてしまう、または感じてしまう者で、医学的に、色盲、色弱または色覚異常者と称される場合もある。多くの人は、色を知覚するための3種の錐体を有する。少数色覚特性保持者は、3種の錐体のうちの特定の一つの錐体、あるいは複数の錐体が欠損しているため、他の多くの人と異なる色覚特性を有する。
【0017】
本開示の実施の形態に係る表示媒体が表示するコンテンツは、表示媒体上の複数の画素のそれぞれに与えられた色で表現される。
【0018】
複数の画素のうち第1の視点から見える画素で、RGB(Red:赤、Green:緑、Blue:青)の3原色で表現可能な第1のコンテンツを表示する。複数の画素のうち第2の視点から見える画素で、第1のコンテンツの赤色成分を抽出した第2のコンテンツを表示する。複数の画素のうち第3の視点から見える画素で、第1のコンテンツの緑色成分を抽出した第3のコンテンツを表示する。
【0019】
健常者が第1のコンテンツを視認する。さらに緑錐体欠損または赤錐体欠損の少数色覚特性保持者が、視点を変えて、第2のコンテンツおよび第3のコンテンツのそれぞれを繰り返し見ることにより、本開示の実施の形態に係る表示媒体は、健常者のみならず、少数色覚特性保持者に、コンテンツの構図を視認させることを可能とする。
【0020】
本開示の実施の形態に係る表示媒体を製造するために用いられる処理装置は、印刷機などの表示媒体を製造するための製造装置に入力される出力データとして、表示媒体の各画素に与えられる色を指定する。
【0021】
ここで本開示の実施の形態に係る表示媒体は複数のセルを備え、各セルは、複数の画素を備える。
【0022】
処理装置は、算出部および割り当て部を備える。
【0023】
算出部は、赤緑青の3原色で表現可能な第1のコンテンツにおいて、所定セルで表示する色の赤緑青の各値を算出する。
【0024】
割り当て部は、所定セル内の第1の視点から見える画素で、赤緑青の各値の色を表示し、所定セル内の第2の視点から見える画素で、赤の値の色を表示し、所定セル内の前記第3の視点から見える画素で、緑の値の色を表示するように、所定セル内の各画素に色を割り当てる。
【0025】
発明者は、少数色覚特性保持者が色の認識が苦手であるものの、カラーバリエーションの異なる複数のコンテンツを見ることで、コンテンツ中の構図を把握し、コンテンツを理解することができるという知見を得た。また少数色覚特性には、複数の種類があるものの、多くの少数色覚特性保持者は、赤系統のコンテンツと緑系統のコンテンツを表示することで、コンテンツ中の構図を把握することができるという知見を得た。
【0026】
そこで表示媒体は、3つの方向に3つの異なるコンテンツを表示可能であるので、ある方向に、健常者が視認しやすいコンテンツを表示するとともに、それ以外の2つの方向に、少数色覚特性保持者が構図を把握可能な赤系統のコンテンツと緑系統のコンテンツを表示する。健常者が視認しやすいコンテンツは、RGBで形成されるコンテンツである。赤系統のコンテンツは、RGBで形成されるコンテンツのうち、赤色成分が抜き出され、赤色の濃淡で表現されるコンテンツである。緑系統のコンテンツは、RGBで形成されるコンテンツのうち、緑色成分が抜き出され、緑色の濃淡で表現されるコンテンツである。なお、赤系統のコンテンツまたは緑系統のコンテンツは、色の三原色の赤または緑そのものではなく、色相、明度または彩度などが変更されても良い。
【0027】
少数色覚特性保持者は、表示媒体を視認する方向を切り換えて、あるいは、表示媒体の方向を切り換えて、赤系統のコンテンツと緑系統のコンテンツを順に繰り返し見ることにより、赤の濃淡または緑の濃淡から、コンテンツにおける構図、具体的には濃淡の切り換え部分を把握することが可能になる。
【0028】
このような表示媒体は、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示することができる。
【0029】
また表示媒体が表示する赤系統のコンテンツと緑系統のコンテンツは、それぞれRGBで形成されるコンテンツから各色成分を抜き出して生成されるので、表示媒体の同じ位置に、コンテンツにおける構図が現れる。表示媒体を視認する方向を切り換えて、あるいは、表示媒体の方向を切り換えることにより、同じ位置に赤の濃淡または緑の濃淡を視認できるので、赤の濃淡の残像または緑の濃淡の残像と相まって、コンテンツにおける構図を把握することが可能になる。
【0030】
また本開示の実施の形態で説明する省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示する表示媒体の具体例として、第1の実施の形態から第4の実施の形態において説明する。ここでは、4つの実施の形態で表示媒体を説明するが、これに限らない。異なる方向に異なるコンテンツを表示可能な表示媒体おいて、健常者が見やすいRGB(赤緑青)で形成されるコンテンツと、R(赤)の成分から生成される赤系統のコンテンツと、G(緑)の成分から生成される緑系統のコンテンツを表示しても良い。
【0031】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る表示媒体1を説明する。第1の実施の形態に係る表示媒体1は、非特許文献2に記載の表示媒体の構成を有する。
【0032】
表示媒体1は、
図1に示すように、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2を有する。
図1および
図2に示すように、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2は、XY平面に形成され、Z軸方向に平行に配設される。表示媒体1は、複数方向の光のそれぞれが、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2を通過する部分に基づいて、複数方向に対応する複数のコンテンツを表示する。第1のレイヤL1および第2のレイヤL2を通過した複数方向の光が入射する位置に設けられたそれぞれの視点において、それぞれのコンテンツが視認される。表示媒体1は、視点に入射する光が第1のレイヤL1を通過した部分の色と、第2のレイヤL2を通過した部分との色の組み合わせが、光の方向によって異なることにより、複数のコンテンツを表示する。表示媒体1は、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2によりも上方の、X軸方向において上方の3つの異なる視点に、コンテンツを表示する。
【0033】
第1の実施の形態において、複数のコンテンツのそれぞれを視認するための視点は、Z軸方向において、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2よりも上方に設けられる。X軸方向に視点をずらすことにより、ユーザは、複数のコンテンツを順次視認することができる。
【0034】
第1の実施の形態においてコンテンツを表示する際に用いられる所定方向の光は、少なくとも、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2に対して、視点と対向する方向から発せられる。視点が、Z軸方向において、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2よりも上方に設けられる場合、光は、Z軸方向において、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2よりも下方から発せられればよく、光源の位置は問わない。第2のレイヤL2よりもZ軸方向の下方から上方に向かう光は、例えば、任意の位置に設けられた光源からの光が、基材Mで反射した光であっても良いし、基材Mに設けられた光源からの光であっても良い。
【0035】
図1に示すように、第1のレイヤL1と第2のレイヤL2の間に、透明層Nが形成される。また第2のレイヤL2に対して透明層NとZ軸方向の反対方向に、基材Mが設けられる。Z軸方向において、基材M、第2のレイヤL2、透明層Nおよび第1のレイヤL1の順で、これらの部材が積層されて、表示媒体1が形成される。
【0036】
透明層Nは、光の色成分を吸収せずに、多くの光を透過させる材質で形成されるのが好ましい。透明層Nは、例えば、水、透明なプラスチック等の透明な材質で形成される。透明層Nは空気で形成されてもよい。換言すると、第1のレイヤL1と第2のレイヤL2は、所定距離離れて平行に配設されても良い。基材Mは、鏡、白い紙等であって、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2に与えられた色を視認しやすい部材で形成される。
【0037】
図1および
図2に示すように、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2は、それぞれ、透明部材で形成され、複数のセルCを有する。セルCの位置は、所定のセルの位置の定義によって、セルCの色領域に色を与える印刷機等が特定できればよく、セルCの位置は視認されなくても良い。例えば、隣接するCの間に、明確な線、仕切り、窪み等の区切りがなく、セルCは、物理的に区切られなくても良い。また隣接する2つのセルCの境界において、2つのセルの端部のそれぞれに同じ色または同じ無色が与えられるなど、セルCが視認できなくても良い。
【0038】
第1の実施の形態において、第1のレイヤL1の各セルCと、第2のレイヤL2の各セルCは、各レイヤを同様に区分して形成される。第1のレイヤL1の各セルCは、第2のレイヤL2の各セルCを、Z軸方向にずらした位置に形成される。より具体的には、
図2に示すように、本発明の実施の形態において、第1のレイヤL1の第1のセルC1は、第2のレイヤL2の第2のセルC2をZ軸方向にずらした位置に形成される。他のセルも同様である。第1の実施の形態において、第1のセルC1と第2のセルC2のように、Z軸方向にずらした位置に形成されるセルの関係を、「対応する」と呼ぶ。
【0039】
図1ないし
図3に示すように、第1のレイヤL1は、透明部材で形成され、複数のセルCを有し、複数のセルCのそれぞれに青領域Bを有する。第2のレイヤL2は、透明部材で形成され、複数のセルCを有し、複数のセルCのそれぞれに赤領域Rと緑領域Gを有する。第1の実施の形態において、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gが同形状を有する場合を説明する。
【0040】
図3を参照して、対応するセルCのペアを説明する。第1の実施の形態において、第1のセルC1と第2のセルC2のそれぞれの境界部分に、透明領域が設けられる、透明領域よりも内側部分に、色領域が設けられる。透明領域が設けられることにより、色領域を通過する光が、隣接するセルの色領域を通過しないように形成することができるので、各画素に割り当てる色の計算の負担が軽減される。色領域は、各レイヤにインクが塗布されることにより形成される。インクは、染料インクでも良いし、顔料インクでも良い。なお
図3においてハッチが入っていない部分は、インクが載らない透明部分である。
【0041】
第1のセルC1の色領域を通過する光が、第2のセルC2内を通過し、かつ、第2のセルC2の色領域を通過する光が、第1のセルC1内を通過するように、第1のセルC1および第2のセルC2の位置は設定される。第1の実施の形態において、対応するセルCのペアが、Z軸方向にずれる場合を説明するが、これに限らない。対応するCのペアが、斜め方向にずれる、具体的にはZ軸方向のみならずX軸方向にもずれても良い。
【0042】
第1の実施の形態において、第1のレイヤL1の第1のセルC1と、第1のレイヤL1の第1のセルC1に対応する第2のレイヤL2の第2のセルC2を重ねた状態を、所定方向から視認した際、第2のセルC2の赤領域Rおよび緑領域Gのそれぞれは、所定方向において第1のセルC1の青領域Bに隣接するように配置される。
【0043】
第1のレイヤL1の第1のセルC1は、中央部分に、青領域Bを有する。第2のレイヤL2の第2のセルC2は、青領域Bに対応する領域を挟んで左右それぞれに、赤領域Rと緑領域Gを有する。第1のレイヤL1の第1のセルC1と、第2のレイヤL2の第2のセルC2を重ねた状態を真上(Z軸方向の上方)から確認すると、
図4(a)のように、左から、赤領域R、青領域Bおよび緑領域Gが並んで配置される。赤領域Rの右端と青領域Bの左端が接する。青領域Bの右端と緑領域Gの左端が接する。
【0044】
第1の実施の形態において、青領域Bに対して左側に赤領域Rを設け、右側に緑領域Gを設ける場合を説明するが、これに限らない。青領域Bに対して左側に緑領域Gを設け、右側に赤領域Rを設けても良い。
【0045】
図3(a)に示すように、第2のセルC2の赤領域Rおよび緑領域Gのそれぞれが、第1のセルC1の青領域Bに隣接するように視認される第1の方向D1上に位置する視点、具体的には、表示媒体1の真上の位置を第1の視点とする。第1の視点からユーザは、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gをそれぞれ視認できる。表示媒体1は、第1の視点に、赤領域R、緑領域Gおよび青領域Bで第1のコンテンツを表示する。表示媒体1は、上方にRGB(Red:赤、Green:緑、Blue:青)の光の三原色で表現されるコンテンツを表示することができる。
【0046】
図3(b)に示すように、第2のセルC2の緑領域Gと第1のセルC1の青領域Bが重複する第2の方向D2上に位置する視点、具体的には、表示媒体1の左斜め上の位置を第2の視点とする。第2の視点からユーザは、赤領域Rを視認できる。緑領域Gは、青領域Bでマスクされる。青領域Bと緑領域Gの重畳領域は、赤、緑および青の全ての色を吸収し、黒を表示するので、ユーザは、青領域Bも緑領域Gも視認できない。表示媒体1は、第2の視点に、赤領域Rで第2のコンテンツを表示する。
【0047】
図3(c)に示すように、第2のセルC2の赤領域Rと第1のセルC1の青領域Bが重複する第3の方向D3上に位置する視点、具体的には、表示媒体1の右斜め上の位置を第3の視点とする。第3の視点からユーザは、緑領域Gを視認できる。赤領域Rは、青領域Bでマスクされる。青領域Bと赤領域Rの重畳領域は、赤、緑および青の全ての色を吸収し、黒を表示するので、ユーザは、青領域Bも赤領域Rも視認できない。表示媒体1は、第3の視点に、緑領域Gで第3のコンテンツを表示する。
【0048】
なお、第1の視点、第2の視点および第3の視点は、表示媒体1からZ軸方向の距離が同じで、X軸方向の位置が異なることが好ましい。
【0049】
次に、各色領域において、第1のセルC1と第2のセルC2のペアで表現すべき色を表現する方法を説明する。第1のセルC1の青領域B、第2のセルC2の赤領域Rおよび第2のセルC2の緑領域Gは、それぞれ、複数の画素を備える。第1の実施の形態において、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gは、それぞれ同数かつ同形状の複数の画素を備える。第1の実施の形態において、複数の画素のうち、その領域の色で着色する色の数で、色の濃さを表現する。第1のセルC1の青領域Bに与えられる青、第2のセルC2の赤領域Rに与えられる赤、または第2のセルC2の緑領域Gに与えられる緑は、色の三原色の青、赤または緑であっても良いし、これらの色から色相、明度または彩度などが変更された色でも良い。
【0050】
第1のセルC1および第2のセルC2のペアで表現すべき色を、RGBの光の三原色に分解したときの値を算出する。各領域の複数の画素のうち、第1のセルC1および第2のセルC2で表示する色の赤、緑および青の各値に対応する数の画素が、それぞれ赤、緑または青で着色され、それ以外の画素が黒色で着色される。
【0051】
例えば、
図4および
図5に示すように、各色領域が12画素で表現される場合、各色領域は、着色する画素の数で0画素から12画素までの13階調で表現する。第1のセルC1および第2のセルC2のペアで表現すべき色が、0から255までの256階調で表現する。
【0052】
図4(a)は、RGB=(255,255,255)の場合を示す。
図4(a)では、各色領域の各画素は、その色領域の色で着色される。青領域Bの12の各画素は、青で着色される。赤領域Rの12の各画素は、赤で着色される。緑領域Gの12の各画素は、緑で着色される。
【0053】
図4(b)は、RGB=(255,0,255)の場合を示す。
図4(b)では、緑領域Gで表現すべき色がなく、青領域Bおよび赤領域Rの各画素は、その色領域の画素で着色される。青領域Bの12の画素は青で着色され、赤領域Rの12の画素は赤で着色され、緑領域Gの12の画素は黒で着色される。
【0054】
図5(a)ないし(c)は、それぞれ、RGB=(127,127,127)の場合を示す。この場合、各色領域において、半分がその領域の色で着色され、残り半分が黒で着色される。第1の実施の形態では、着色される領域はどのように決定されても良い。
【0055】
図5(a)は、黒領域を市松状に設ける。
図5(b)は、黒領域をY方向の半分に設ける。
図5(c)は、黒領域を各領域のX方向の一列に設ける。
図5に設ける例では、各色領域の黒領域が同様に設けられる場合を説明するがこれに限らない。例えば、青領域Bは
図5(a)のように、赤領域Rは
図5(b)のように、緑領域は
図5(c)のように設けるなど、任意の組み合わせで黒領域が設けられても良い。また黒領域に規則性は求められず、ランダムに設けられても良い。
【0056】
なお、第1の実施の形態において、赤緑または青で着色されない画素が、黒色で着色される場合を説明するが、これに限らない。赤緑または青で着色されない画素が、赤、緑および青以外の色(青でも赤でも緑でもない色)で着色されれば良い。
【0057】
表示媒体1は、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gで表現されるコンテンツのほか、赤領域Rで表現されるコンテンツと緑領域Gで表現されるコンテンツを表示する。健常者は、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gで表現されるコンテンツを視認する。緑錐体欠損または赤錐体欠損の少数色覚特性保持者は、視点を変えて、赤領域Rで表現される第2のコンテンツ、および緑領域Gで第3のコンテンツを繰り返し見ることにより、コンテンツの構図を視認できる。
【0058】
第1の実施の形態において少数色覚特性保持者は、表示媒体1に対する視点を、第2のコンテンツが見える視点と第3のコンテンツが見える視点との間で交互に変更することにより、具体的には、視点を、表示媒体1に対して左斜め上方向から右斜め上方向に変更することにより、赤領域Rと緑領域Gのそれぞれにおける構図に現れる濃淡から、構図を認識することができる。
【0059】
(処理装置)
図6を参照して、表示媒体1に与える色を決定する処理装置10を説明する。処理装置10は、入力画像データ11、セル色データ12および出力データ13の各データと、算出部16および割り当て部17の各機能を備える。各データは、メモリ902またはストレージ903等の記憶装置に記憶される。各機能は、CPU901に実装される。
【0060】
入力画像データ11は、表示媒体1が表示するコンテンツの画像である。入力画像データ11は、複数の画素を備え、各画素に所定の色を対応づける。
【0061】
セル色データ12は、表示媒体1が有する各セルのペアで表現すべき色のデータである。
【0062】
出力データ13は、製造装置で表示媒体1を形成する際に、各レイヤに印刷される色の値とその位置を対応づけるデータである。出力データ13は、セルのペア毎に、そのペアの第1のセルC1において、青色を着色する画素および黒色を着色する画素、第2のセルC2において、赤色を着色する画素、緑色を着色する画素および黒色を着色する画素を対応づける。
【0063】
算出部16は、RGBで表現する第1のコンテンツにおいて、あるセルのペアの第1のセルC1および第2のセルC2で表示する色の赤緑青(RGB)の各値を算出する。算出部16は、入力画像データ11の、処理対象のペアの位置に対応するRGBの値を、このペアの第1のセルC1および第2のセルC2で表示する色のRGBの値として算出する。算出部16は、各セルのペアについてRGBの値を算出して、セル色データ12に出力する。
【0064】
割り当て部17は、各セルのペアについて、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gの各領域に各色を割り当てる画素を決定して、出力データ13に出力する。割り当て部17は、処理対象のセルのペアについて、赤領域Rの複数の画素のうち、算出された赤の値に対応する数の画素に、赤を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。割り当て部17は、緑領域Gの複数の画素のうち、算出された緑の値に対応する数の画素に、緑を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。割り当て部17は、青領域Bの複数の画素のうち、算出された青の値に対応する数の画素に、青を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。
【0065】
算出部16は、処理対象のセルのペアについて、BRG=(150、50、100)と算出したとする。ここで、RGBの各値は、0-255の間の整数の値をとり、赤領域R、緑領域Gおよび青領域Bは、それぞれ12画素で形成されるとする。
【0066】
青の値に対応する数、具体的には青領域Bにおいて青に割り当てる画素数は、青の値が取りうる値域0-255を、青領域Bが備える画素数12+1で段階分けした際の、青の値に対応する段階の値である。
【0067】
Bの値150を、階調数256で割った値は、0.58となる。青領域Bの画素で表現可能な階調数13に、この値0.58を乗算した値は、7.54となる。従って、割り当て部17は、青領域Bの12画素のうち、8画素に赤を割り当て、それ以外の4画素に黒を割り当てる。なお、本開示は、小数点以下を四捨五入で整数化する。
【0068】
赤の値に対応する数、具体的には赤領域Rにおいて赤に割り当てる画素数は、赤の値が取りうる値域0-255を、赤領域Rが備える画素数12+1で段階分けした際の、赤の値に対応する段階の値である。
【0069】
Rの値50を、階調数256で割った値は、0.19となる。赤領域Rの画素で表現可能な階調数13に、この値0.19を乗算した値は、2.47となる。従って、割り当て部17は、赤領域Rの12画素のうち、2画素に赤を割り当て、それ以外の10画素に黒を割り当てる。
【0070】
緑の値に対応する数、具体的には緑領域Gにおいて緑に割り当てる画素数は、緑の値が取りうる値域0-255を、緑領域Gが備える画素数12+1で段階分けした際の、緑の値に対応する段階の値である。
【0071】
Gの値100を、階調数256で割った値は、0.39となる。緑領域Gの画素で表現可能な階調数13に、この値0.39を乗算した値は、4.68となる。従って、割り当て部17は、緑領域Gの12画素のうち、5画素に赤を割り当て、それ以外の7画素に黒を割り当てる。
【0072】
なお、青領域Bを8画素、赤領域Rを2画素、緑領域Gを5画素でそれぞれ着色し、それ以外の画素を黒で着色することにより、青赤緑の割合は、8:2:5となる。青赤緑の割合は、入力画像データ11から算出されたBRGの割合150:50:100に近似される。
【0073】
割り当て部17は、処理対象のセルのペアについて、赤緑または青を割り当てる画素数を決定すると、いずれの画素にその領域の色で着色するかを決定する。割り当て部17は、各領域の形状から、ランダムに、または所定の規則に従って、その領域の色を割り当てる画素を決定する。割り当て部17は、各セルのペアについて、各領域の色で着色する色の画素を特定して、出力データ13を生成する。
【0074】
図7を参照して、所定対象のセルのペアについて、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gのそれぞれの画素のうち、青、赤、緑または黒を割り当てる処理を説明する。
【0075】
まずステップS101において処理装置10は、入力画像データ11から、処理対象のセルのペアの位置の画素値を取得する。ステップS102において処理装置10は、ステップS101で取得した画素値を、RGBの値に分解する。
【0076】
ステップS103において処理装置10は、B値の最大値に対するB値の割合から、青領域Bのうち青に塗る画素の数を決定する。ステップS104において処理装置10は、青領域Bの画素のうち、ステップS103で決定した数の画素に青を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。
【0077】
ステップS105において処理装置10は、R値の最大値に対するR値の割合から、赤領域Rのうち赤に塗る画素の数を決定する。ステップS106において処理装置10は、赤領域Rの画素のうち、ステップS105で決定した数の画素に赤を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。
【0078】
ステップS106において処理装置10は、G値の最大値に対するG値の割合から、緑領域Gのうち緑に塗る画素の数を決定する。ステップS107において処理装置10は、緑領域Gの画素のうち、ステップS106で決定した数の画素に赤を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。
【0079】
処理装置10は、各セルのペアについて
図7に示す処理を繰り返し、各ペアにおける画素と色の対応関係を、出力データ13に出力する。出力データ13を、印刷機などの製造装置に入力することにより、各画素の適切な色が着色された第1のレイヤL1および第2のレイヤL2が出力される。基材M、第2のレイヤL2よび第3のレイヤから、表示媒体1が形成される。
【0080】
第1の実施の形態に係る表示媒体1は、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示することができる。
【0081】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る表示媒体1は、第1の実施の形態に係る表示媒体1と同様に、非特許文献2に記載の表示媒体の構成を有する。
【0082】
第1の実施の形態において、プリンタ等を用いて表示媒体1を生成する場合を説明したが、第1の実施の形態においてインクの透過性は問わず、染料インクでも顔料インクでも用いることができる。第2の実施の形態において、顔料インクなどの透過性のないインクを用いる場合の表示媒体1を説明する。顔料インクは透過性がないので、第1のレイヤL1の着色部を第2のレイヤL2の着色部に重なるように配置することが可能である。
【0083】
第1のレイヤL1の第1のセルC1は、中央部分に、青領域Bを有する。第2のレイヤL2の第2のセルC2は、青領域Bと重複するように、赤領域Rおよび緑領域Gを有する。第2の実施の形態において、青領域Bの中央より左側は赤領域Rと重複し、右側は緑領域Gと重複する。赤領域Rの右側の一部は、青領域Bと重複する。緑領域の左側の一部は、青領域Bと重複する。第2の実施の形態において第2のレイヤL2の赤領域Rおよび緑領域Gは、第1のレイヤL1の青領域Bよりも、幅広に(X方向に広く)形成される。
【0084】
図9(a)に、第1のレイヤL1と第2のレイヤL2のそれぞれの着色部分を説明する。
図9において上段は第1のレイヤL1の青領域を、下段は第2のレイヤL2の赤領域Rおよび緑領域Gを示す。上段と下段を結ぶ一点鎖線は、第1のレイヤL1と第2のレイヤを重ねたときの各色領域の対応位置を示す。
【0085】
図9(a)に示すように、青領域Bは6画素*2列=12画素を備え、赤領域Rおよび緑領域Gはそれぞれ、6画素*3列=18画素を備える。赤領域Rの最も右の列は、青領域Bの左側の列と重畳する。緑領域Gの最も左の列は、緑領域Gの右の列と重畳する。
【0086】
第2の実施の形態において、青領域Bに対して左側に赤領域Rを設け、右側に緑領域Gを設ける場合を説明するが、これに限らない。青領域Bに対して左側に緑領域Gを設け、右側に赤領域Rを設けても良い。
【0087】
図8(a)に示すように、第2のセルC2の赤領域Rおよび緑領域Gのそれぞれが、第1のセルC1の青領域Bに隣接するように視認される第1の方向D1上に位置する視点、具体的には、表示媒体1の真上の位置を第1の視点とする。第1の視点からユーザは、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gをそれぞれ視認できる。赤領域Rの左右方向の中央部分に青領域Bの左端が位置する。緑領域Gの左右方向の中央部分に青領域Bの右端が位置する。
【0088】
表示媒体1は、第1の視点に、赤領域R、緑領域Gおよび青領域Bで第1のコンテンツを表示する。表示媒体1は、上方にRGB(Red:赤、Green:緑、Blue:青)の光の三原色で表現されるコンテンツを表示することができる。
【0089】
図8(b)に示すように、第2のセルC2の緑領域Gと第1のセルC1の青領域Bが重複する第2の方向D2上に位置する視点、具体的には、表示媒体1の左斜め上の位置を第2の視点とする。第2の視点からユーザは、赤領域Rと青領域Bを視認できる。緑領域Gは、青領域Bでマスクされるので、ユーザは、緑領域Gを視認できない。表示媒体1は、第2の視点に、赤領域Rと青領域Bで第2のコンテンツを表示する。但し、少数色覚特定保持者は、青領域Bに反応できないので、赤領域Rで表示された第2のコンテンツを視認する。
【0090】
図8(c)に示すように、第2のセルC2の赤領域Rと第1のセルC1の青領域Bが重複する第3の方向D3上に位置する視点、具体的には、表示媒体1の右斜め上の位置を第3の視点とする。第3の視点からユーザは、緑領域Gと青領域Bを視認できる。赤領域Rは、青領域Bでマスクされるので、ユーザは、赤領域Rを視認できない。表示媒体1は、第3の視点に、緑領域Gと青領域Bで第3のコンテンツを表示する。但し、少数色覚特定保持者は、青領域Bに反応できないので、緑領域Bで表示された第3のコンテンツを視認する。
【0091】
第2の実施の形態に係る表示媒体1では、第1の実施の形態に係る表示媒体1と同様に、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示することができる。
【0092】
第1の実施の形態において、
図3(b)および(c)に示す第2の視点および第3の視点からは、青領域Bと緑領域G、または青領域Bと赤領域Rが重複する。第1の実施の形態において、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gは互いに同じ形状を有するので、これらが重複する視点はX方向の限定的な範囲となりで、ちょうど良い赤系統のコンテンツまた緑系統のコンテンツが見える位置が狭くなる。
【0093】
これに対し第2の実施の形態において、赤領域Rおよび緑領域Gは、青領域Bよりも広いので、青領域Bと緑領域G、または青領域Bと赤領域Rが重複する範囲は、X軸方向に広い範囲となり、ちょうど良い赤系統のコンテンツまた緑系統のコンテンツが見える位置が広くなる。例えば、青領域Bの2列が、赤領域Rの3列のうちの左側の2列または右側の2列に重複する方向上の視点が、第2の視点となる。同様に、青領域Bの2列が、緑領域Gの3列のうちの左側の2列または右側の2列に重複する方向上の視点が、第3の視点となる。
【0094】
従って、第2の実施の形態に係る表示媒体1は、第1の実施の形態に係る表示媒体1と比べて、赤系統のコンテンツと緑系統のコンテンツを視認する位置を調節しやすく、少数色覚特性保持者の負担が期待できる。
【0095】
第2の実施の形態において、各領域において青赤または緑が着色される画素の数、あるいは黒が着色される画素の数は、第1の実施の形態と同様に算出される。但し、第2の実施の形態では、第2の視点または第3の視点において、青領域Bと重なる赤領域Rまたは緑領域Gが可変である。視点の動く方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)の各列で、青赤または緑の各色が割り当てられる画素と、黒が割り当てられる画素の割合が同じにならなければならない。視線の動く方向は、少数色覚特性保持者向けの赤系のコンテンツを見るための第2の視点と、緑系のコンテンツを見るための第2の視点を結ぶ方向である。
【0096】
図9(b)ないし(c)は、それぞれ、RGB=(127,127,127)の場合を示す。この場合、各色領域において、半分がその領域の色で着色され、残り半分が黒で着色される。但し、第2の実施の形態において、各列で、各色が割り当てられる画素と、黒が割り当てられる画素の割合は同じである。これらの画素の割合が同じであれば、どのように設けられても良い。例えば、例えば、青領域Bは
図9(a)のように、赤領域Rおよび緑領域Gは
図9(c)のように設けるなど、任意の組み合わせで黒領域が設けられても良い。また黒領域に規則性は求められず、ランダムに設けられても良い。
【0097】
但し、
図5(c)に示すように、Y軸方向の各列において、色が与えられる画素数と黒が与えられる画素数に、ばらつきがあることは許されない、第2の視点から見た時に、その視点の位置によって赤系統のコンテンツの濃淡が変化し、同様に、第3の視点から見た時に、その視点の位置によって緑系統のコンテンツの濃淡が変化するからである。
【0098】
第2の実施の形態に係る表示媒体1に阿画得る色を決定する処理装置10は、
図6を参照して説明した通りである。但し、割り当て部17は、視点の動く方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)の各列で、青赤または緑の各色が割り当てられる画素と、黒が割り当てられる画素の割合が同じになる点が異なる。
【0099】
図10を参照して、所定対象のセルのペアについて、青領域B、赤領域Rおよび緑領域Gのそれぞれの画素のうち、青、赤、緑または黒を割り当てる処理を説明する。
【0100】
ステップS201およびステップS202の処理は、
図6のステップS101およびステップS102と同様である。
【0101】
ステップS203において処理装置10は、B値の最大値に対するB値の割合から、青領域Bのうち青に塗る画素の数を決定する。ステップS204において処理装置10は、青領域Bの画素のうち、ステップS203で決定した数の画素に青を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。このとき処理装置10は、視点を変更する方向に対して直交する方向の各画素グループにおいて、同一の数の画素に青を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。
【0102】
ステップS205において処理装置10は、R値の最大値に対するR値の割合から、赤領域Rのうち赤に塗る画素の数を決定する。ステップS206において処理装置10は、赤領域Rの画素のうち、ステップS105で決定した数の画素に赤を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。このとき処理装置10は、視点を変更する方向に対して直交する方向の各画素グループにおいて、同一の数の画素に赤を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。
【0103】
ステップS206において処理装置10は、G値の最大値に対するG値の割合から、緑領域Gのうち緑に塗る画素の数を決定する。ステップS207において処理装置10は、緑領域Gの画素のうち、ステップS206で決定した数の画素に赤を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。このとき処理装置10は、視点を変更する方向に対して直交する方向の各画素グループにおいて、同一の数の画素に緑を割り当て、それ以外の画素に黒を割り当てる。
【0104】
処理装置10は、各セルのペアについて
図7に示す処理を繰り返し、各ペアにおける画素と色の対応関係を、出力データ13に出力する。出力データ13を、印刷機などの製造装置に入力することにより、各画素の適切な色が着色された第1のレイヤL1および第2のレイヤL2が出力される。このとき、印刷機は、顔料インクなどの透過性のないインクで、第1のレイヤL1および第2のレイヤL2に所定の色を印刷する。基材M、第2のレイヤL2よび第3のレイヤから、表示媒体1が形成される。
【0105】
第2の実施の形態に係る表示媒体1は、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示することができる。また第2の実施の形態に係る表示媒体1は、第1の実施の形態に係る表示媒体1と比べて、赤系統のコンテンツまたは緑系統のコンテンツを見える範囲が広いので、ユーザにおける視点の調節の負担が軽減される。
【0106】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態および第2の実施の形態において、非特許文献2に記載の技術を用いて表示媒体を形成する場合を説明した。第3の実施の形態において、非特許文献1に記載の技術を用いて表示媒体100を形成する場合を説明する。
【0107】
第3の実施の形態に係る表示媒体100は、健常者および少数色覚特性保持者が視認可能なコンテンツを表示する。表示媒体100は、所定の仰角かつ方位角から、3つの方位角に対応する3つのコンテンツを表示する。
【0108】
図11に示すように、表示媒体100は、基材101と、基材101の上面にコンテンツの色を表現する着色部102を備える。基材101は、光を反射する面を有する。基材101は、紙などの薄いシート形状であっても良いし、立体形状であってもよい。基材101は、上面が平面であっても良いし、曲面であっても良い。
【0109】
基材101の上面は、複数のセルCに区分される。複数のセルは、隣接して設置されても良いし、互いに離れて設置されても良い。複数のセルCのそれぞれは、
図12に示すように、3つの方位角のそれぞれに対応する3つのサブセルK0、K1およびK2に区分される。サブセルK0は、方位角φ0に対応する。サブセルK1は、方位角φ1に対応する。サブセルK2は、方位角φ2に対応する。
【0110】
所定の方位角に対応する各サブセルK0、K1、およびK2に、突状部材T0、T1およびT2のそれぞれが形成される。突状部材T0は、サブセルK0に形成される。突状部材T1は、サブセルK1に形成される。突状部材T2は、サブセルK2に形成される。
【0111】
突状部材T0、T1およびT2は、光を遮蔽する部材で形成される。突状部材T0、T1およびT2は、所定の方位角方向の面、より具体的には、その突状部材が形成されるサブセルに対応する方位角に平行な面を有する。
【0112】
所定の仰角かつ方位角から、所定の方位角に対応するサブセルの着色部が観察される。
【0113】
例えばユーザが、表示媒体100上の座標xを、所定の仰角ω0かつ方位角φ0で観察した場合、表示媒体100上の座標xに対応する第1のコンテンツの座標の色値を確認できる。同様にユーザが、表示媒体100上の座標xを、所定の仰角ω1かつ方位角φ1で観察した場合、表示媒体100上の座標xに対応する第2のコンテンツの座標の色値を確認できる。さらにユーザが、表示媒体100上の座標xを、所定の仰角ω2かつ方位角φ2で観察した場合、表示媒体100上の座標xに対応する第3のコンテンツの座標の色値を確認できる。
【0114】
第3の実施の形態において、方位角φ0で第1のコンテンツを表示し、方位角φ2で第2のコンテンツを表示し、方位角φ3で第3のコンテンツを表示する場合を説明するが、これに限らない。方位角と表示するコンテンツとの対応付けは、適宜決定される。
【0115】
図12を参照して、座標xのセルCを説明する。セルCは、サブセルK0、サブセルK1およびサブセルK2を備える。サブセルK0に、方位角φ0の方向に平行な、3つの突状部材T0が配置される。サブセルK1に、方位角φ1の方向に平行な、2つの突状部材T1が配置される。サブセルK2に、方位角φ2の方向に平行な、3つの突状部材T2が配置される。
【0116】
突状部材Tは、所定の高さを有するので、ある仰角から表示媒体1を観察した際に、突状部材Tによって遮蔽される部分と遮蔽されない部分が生じる。ユーザは、方位角φ0から観察した場合、方位角φ0と平行な突状部材T0が形成されるサブセルK0の着色部102を視認可能で、それ以外のサブセルK1またはK2の着色部102を視認しづらい。ユーザは、方位角φ1から観察した場合、方位角φ1と平行な突状部材T1が形成されるサブセルK1の着色部102を視認可能で、それ以外のサブセルK0またはK2の着色部102を視認しづらい。ユーザは、方位角φ2から観察した場合、方位角φ2と平行な突状部材T2が形成されるサブセルK2の着色部102を視認可能で、それ以外のサブセルK0またはK1の着色部102を視認しづらい。
【0117】
このような第3の実施の形態に係る表示媒体100は、3つの方向に3つのコンテンツを表示することができる。表示媒体100は、方位角φ上の第1の視点に、赤緑青の3原色で表現可能な第1のコンテンツを表示することができる。表示媒体100は、方位角φ1上の第2の視点に、第1のコンテンツの赤色成分を抽出した第2のコンテンツを表示することができる。表示媒体100は、方位角φ2上の第3の視点に、第1のコンテンツの緑色成分を抽出した第3のコンテンツを表示することができる。
【0118】
なお、第3の実施の形態において、ユーザは、所定の方位角から見た時、その方位角に対応するサブセルの着色部102の各画素を確認でき、その方位角に対応しないサブセルの着色部102の各画素が確認できないのが理想的ではあるが、そうならない場合がある。
【0119】
図13に示すように、サブセルK1において突状部材T1が形成される場合を考える。ユーザが、突状部材T1と平行なω1方向から観察した場合、サブセルK1内のほぼ全部の画素を確認できる。しかしながら、サブセルK1内に観察されない画素である遮蔽部K1aが形成される。また方位角φ1に対応しないサブセルK2内に観察される画素である露出部K2bが形成されてしまう場合がある。そこで、後述の割り当て部117の処理において、視点毎に見える画素群を特定し、その特定された画素群で、その視点に表示するように色を割り当てる。
【0120】
次に、表示媒体100の各画素に色を割り当てる処理装置110を説明する。
【0121】
図14に示すように、処理装置110は、入力画像データ111、条件データ112、形状データ113、セル色データ114および出力データ115の各データと、算出部116および割り当て部117の各機能を備える。各データは、メモリ902またはストレージ903等の記憶装置に記憶される。各機能は、CPU901に実装される。
【0122】
入力画像データ111、セル色データ114および出力データ115は、
図6の入力画像データ11、セル色データ12および出力データ13と同様である。算出部116の処理は、
図6の算出部16の処理と同様である。
【0123】
条件データ112は、表示媒体100においてコンテンツを表示する方位角および仰角を特定するデータである。形状データ113は、表示媒体100の各サブセルに配置される突状部材の位置および高さを特定するデータである。
【0124】
割り当て部117は、処理対象のセル内の第1の視点から見える画素で、赤緑青の各値の色を表示し、処理対象のセル内の第2の視点から見える画素で、赤の値の色を表示し、処理対象のセル内の第3の視点から見える画素で、緑の値の色を表示するように、処理対象のセル内の各画素に色を割り当てる。ここで色を割り当てる対象となる画素は、処理対象のセル内の画素のうち、突状部材が形成されない画素である。
【0125】
割り当て部117は、処理対象のセル内の画素のうち、第1の視点から見える画素群、第2の視点から見える画素群および第3の画素から見える画素群をそれぞれ特定する。例えば
図13の例において、方位角φ1から見たときに見える画素は、サブセルK2内の露出部K2bを含み、サブセルK1内の遮蔽部K1aを含まない。
【0126】
割り当て部117は、それぞれの画素群で、処理対象のセルで表現すべきRGBの値と、そのRGBの値の赤および緑の値を表現できるように、各画素に色を割り当てる。このとき、各サブセルにおける輝度が同一になるように、各画素の色が最適化されても良い。
【0127】
処理装置110は、各セルについて各画素に色を割り当てる処理を繰り返し、各セルにおける画素と色の対応関係を、出力データ115に出力する。出力データ115を、印刷機などの製造装置に入力することにより、各画素の適切な色が着色された表示媒体100が出力される。印刷機は、突状部材も形成可能な3Dプリンタであっても良い。
【0128】
第3の実施の形態に係る表示媒体100は、第1または第2の実施の形態に係る表示媒体1と同様に、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示することができる。
【0129】
(技術A)
所定の仰角かつ3つの方位角に対応する3つの視点のそれぞれに対して、前記3つの方位角に対応する3つのコンテンツを表示可能な表示媒体であって、
前記表示媒体が表示するコンテンツは、複数の画素のそれぞれに与えられた色で表現され、
前記複数の画素のうち第1の視点から見える画素で、赤緑青の3原色で表現可能な第1のコンテンツを表示し、
前記複数の画素のうち第2の視点から見える画素で、前記第1のコンテンツの赤色成分を抽出した第2のコンテンツを表示し、
前記複数の画素のうち第3の視点から見える画素で、前記第1のコンテンツの緑色成分を抽出した第3のコンテンツを表示し、
緑錐体欠損または赤錐体欠損の少数色覚特性保持者が、視点を変えて、前記第2のコンテンツおよび前記第3のコンテンツを繰り返し見ることにより、コンテンツの構図を視認できる
表示媒体。
【0130】
(技術B)
所定の仰角かつ3つの方位角に対して、前記3つの方位角に対応する3つのコンテンツを表示可能な表示媒体であって、
光を反射する基材を備え、
前記基材を複数のセルに区分し、
前記複数のセルそれぞれを、前記3つの方位角のそれぞれに対応する3つのサブセルに区分し、
所定の方位角に対応する各サブセルに、光を遮蔽する、前記所定の方位角方向の面を有する突状部材が、形成され、
前記所定の仰角かつ方位角から、前記所定の方位角に対応するサブセルが観察され、 複数の画素のうち第1の視点から見える画素で、赤緑青の3原色で表現可能な第1のコンテンツを表示し、複数の画素のうち第2の視点から見える画素で、第1のコンテンツの赤色成分を抽出した第2のコンテンツを表示し、複数の画素のうち第3の視点から見える画素で、第1のコンテンツの緑色成分を抽出した第3のコンテンツを表示し、
少数色覚特性保持者が、視点を変えて、第2のコンテンツおよび第3のコンテンツを繰り返し見ることにより、コンテンツの構図を視認させる
表示媒体。
【0131】
(技術C)
技術Bに記載の表示媒体の各画素に色を割り当てる処理装置であって、
前記表示媒体は複数のセルを備え、
前記第1のコンテンツにおいて、所定セルで表示する色の赤緑青の各値を算出する算出部と、
前記所定セル内の前記第1の視点から見える画素で、前記赤緑青の各値の色を表示し、 前記所定セル内の前記第2の視点から見える画素で、前記赤の値の色を表示し、
前記所定セル内の前記第3の視点から見える画素で、前記緑の値の色を表示するように、
前記所定セル内の各画素に色を割り当てる割り当て部
を備える処理装置。
【0132】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態および第2の実施の形態において、非特許文献2に記載の技術を用いて表示媒体を形成する場合を説明した。第3の実施の形態において、非特許文献3に記載の技術を用いて表示媒体200を形成する場合を説明する。
【0133】
第4の実施の形態に係る表示媒体200は、健常者および少数色覚特性保持者が視認可能なコンテンツを表示する。表示媒体200は、所定の仰角かつ方位角から、3つの方位角に対応する3つのコンテンツを表示する。
【0134】
図15に示すように、表示媒体200は、基材201を備える。基材201は、紙などの薄いシート形状であっても良いし、立体形状であってもよい。基材201は、上面が平面であっても良いし、曲面であっても良い。
【0135】
基材101の上面は、複数のセルCに区分される。複数のセルは、隣接して設置されても良いし、互いに離れて設置されても良い。
【0136】
1つのセルCに、1つのパーティションPが設けられる。パーティションPは、基材201と交わる平面上に形成される面であって、3つの方向のそれぞれから表示媒体200を観察した際に露出する部分を有する。パーティションPは、表面に、複数の画素を有する。
【0137】
図16に示すように、パーティションPは、セルC上の点から、セルC上の空間を3つの方向毎に放射状に区分するように形成される。第4の実施の形態においてパーティションPは、表示媒体200の上方のX軸上の第1の視点、第2の視点および第3の視点を区分する。パーティションPは、セルCの外縁に接し、隣接するセルのパーティションと接続しないように設けられても良い。あるいはパーティションPは、隣接するセルCのパーティションと接続するように設けられても良い。
【0138】
パーティションPの骨格は、3つの方向の各方向上に仮想的に設けられる点を母点としたボロノイ図におけるボロノイ面の一部である。
【0139】
パーティションPの表面に複数の画素を有する。複数の画素のうち第1の視点から見える画素で、赤緑青の3原色で表現可能な第1のコンテンツを表示する。複数の画素のうち第2の視点から見える画素で、第1のコンテンツの赤色成分を抽出した第2のコンテンツを表示する。複数の画素のうち第3の視点から見える画素で、第1のコンテンツの緑色成分を抽出した第3のコンテンツを表示する。
【0140】
なお、視点と、その視点に対して表示するコンテンツの組み合わせは適宜設定される。例えば、第2の視点から見える画素で、緑色成分を抽出したコンテンツを表示し、第3の視点から見える画素で、赤色成分を抽出したコンテンツを表示しても良い。
【0141】
少数色覚特性保持者が、視点を変えて、第2のコンテンツおよび第3のコンテンツを繰り返し見ることにより、コンテンツの構図を視認させることができる。
【0142】
図17を参照して、パーティションPの形状を説明する。第4の実施の形態において、コンテンツを表示する方向上に仮想的に設けられる母点に対するボロノイ図が、仮想的に形成される。パーティションPは、ボロノイ図におけるボロノイ面を骨格に含む。パーティションPは、骨格であるボロノイ面に肉付けしたものである。パーティションPの表面は、ボロノイ面に平行な面を含む。
【0143】
図17に示す例において、3つの視点E1、E2およびE3が設けられる。各視点E1、E2およびE3からセルCの中心Csを視認する際の視線上に、母点H1、H2およびH3が設けられる。母点H1、H2およびH3は、セルCの中心Csを中心とする所定の半径の仮想球体上に設けられる。
【0144】
パーティションPは、2つの遮蔽部材W1およびW2を有する。遮蔽部材W1およびW2は、パーティションPが設置されたセルC上の空間を、3つの領域に区分する。
【0145】
遮蔽部材W1は、ボロノイ面Q1を骨格とし、厚みlの肉付けをしたものである。遮蔽部材W2は、ボロノイ面Q2を骨格とし、厚みlの肉付けをしたものである。また遮蔽部材W1の先端は、半径lとなる円状に形成する。
【0146】
遮蔽部材W1は、セルC上の空間を、視点E1に対応する空間A1と、視点E2に対応する空間A2に区分する。遮蔽部材W2は、セルC上の空間を、視点E2に対応する空間A2と、視点E2に対応する空間A3に区分する。
【0147】
パーティションPの表面のうち、3つの方向のうち所定の指定方向から表示媒体1を観察した際に露出する部分は、3つの指定方向のうち所定の指定方向以外の方向から表示媒体1を観察すると遮蔽される部分を有する。パーティションPの表面のある画素Fは、3つの方向のうちの1以上の方向に対して露出する場合でも、その他の指定方向からは見えない場合がある。パーティションPの表面は、露出する方向に対応するコンテンツの色を表現する。これにより表示媒体1は、複数の指定方向に対して、異なるコンテンツの一部を表現することが可能になるので、広色域かつ高輝度な複数のコンテンツを表示することができる。
【0148】
例えば
図17に示す例において、遮蔽部材W1の空間A1側の面は、視点E1から視認できる一方、視点E2または視点E3から視認できない部分を有する。遮蔽部材W1の空間A2側の面は、視点E2から視認できる一方、視点E1または視点E3からの視認できない部分を有する。遮蔽部材W2の空間A2側の面は、視点E2から視認できる一方、視点E1または視点E3から視認できない部分を有する。遮蔽部材W2の空間A3側の面は、視点E3から視認できる一方、視点E1または視点E2からの視認できない部分を有する。
【0149】
パーティションPが有する各面は、3つの方向のうちの1つの方向から視認しやすく、それ以外の2つの方向から視認しにくく形成される。パーティションPが有する各面は、1つの方向に対してコンテンツを形成する色を発する効果と、その方向以外から遮光する効果を両立する。これにより表示媒体200は、3つの方向に対して、異なるコンテンツを表示することができる。また表示媒体200は、3つの方向に対して色域が広く輝度の高いコンテンツを表示することができる。パーティションPの各面は、指定方向以外からの視線の影響が抑制されるので、指定方向から観察される面に、好適な色を与えることができる。
【0150】
次に、表示媒体200の各画素に色を割り当てる処理装置を説明する。処理装置は、
図14に示す第3の実施の形態に係る処理装置110と同様の構成を有する。
【0151】
条件データ112は、表示媒体200においてコンテンツを表示する方向を特定するデータである。形状データ113は、表示媒体200のパーティションPに関するパラメータ、具体的には厚みl、ボロノイ面を切る際の仮想半球の大きさ等のデータである。
【0152】
割り当て部117は、処理対象のセル内の第1の視点から見える画素で、赤緑青の各値の色を表示し、処理対象のセル内の第2の視点から見える画素で、赤の値の色を表示し、処理対象のセル内の第3の視点から見える画素で、緑の値の色を表示するように、処理対象のセル内の各画素に色を割り当てる。ここで色を割り当てる対象となる画素は、処理対象のセル内の画素のうち、突状部材が形成されない画素で、いずれかの視点から見える画素である。
【0153】
割り当て部117は、処理対象のセル内のパーティションPの画素のうち、第1の視点から見える画素群、第2の視点から見える画素群および第3の画素から見える画素群をそれぞれ特定する。
【0154】
割り当て部117は、それぞれの画素群で、処理対象のセルで表現すべきRGBの値と、そのRGBの値の赤および緑の値を表現できるように、各画素に色を割り当てる。
【0155】
処理装置110は、各セルについて各画素に色を割り当てる処理を繰り返し、各セルにおける画素と色の対応関係を、出力データ115に出力する。出力データ115を、印刷機などの製造装置に入力することにより、各画素の適切な色が着色された表示媒体200が出力される。印刷機は、パーティションPも形成可能な3Dプリンタであっても良い。
【0156】
第4の実施の形態に係る表示媒体200は、第1または第2の実施の形態に係る表示媒体1と同様に、省スペースで、健常者も少数色覚特性保持者も見えやすいコンテンツを表示することができる。
【0157】
(技術D)
3つの方向に、それぞれ異なる3つのコンテンツを表示する表示媒体であって、
複数の仮想的なセルを備える基材と、
前記セルに、前記基材と交わる平面上に形成される面であって、3つの方向のそれぞれから前記表示媒体を観察した際に露出する部分を有するパーティションを備え、
前記パーティションの骨格は、前記複数の方向の各方向上に仮想的に設けられる点を母点としたボロノイ図におけるボロノイ面の一部を含み、
複数の画素のうち第1の視点から見える画素で、赤緑青の3原色で表現可能な第1のコンテンツを表示し、複数の画素のうち第2の視点から見える画素で、第1のコンテンツの赤色成分を抽出した第2のコンテンツを表示し、複数の画素のうち第3の視点から見える画素で、第1のコンテンツの緑色成分を抽出した第3のコンテンツを表示し、
少数色覚特性保持者が、視点を変えて、第2のコンテンツおよび第3のコンテンツを繰り返し見ることにより、コンテンツの構図を視認させる
表示媒体。
【0158】
(技術E)
3つの方向に、それぞれ異なる3つのコンテンツを表示する表示媒体であって、
複数の仮想的なセルを備える基材と、
前記セルに、前記基材と交わる平面上に形成される面であって、3つの方向のそれぞれから前記表示媒体を観察した際に露出する部分を有するパーティションを備え、
前記パーティションは、前記セルの外縁に接するように設けられ、前記セルから、前記セル上の空間を前記3つの方向毎に放射状に区分し、
複数の画素のうち第1の視点から見える画素で、赤緑青の3原色で表現可能な第1のコンテンツを表示し、複数の画素のうち第2の視点から見える画素で、第1のコンテンツの赤色成分を抽出した第2のコンテンツを表示し、複数の画素のうち第3の視点から見える画素で、第1のコンテンツの緑色成分を抽出した第3のコンテンツを表示し、
少数色覚特性保持者が、視点を変えて、第2のコンテンツおよび第3のコンテンツを繰り返し見ることにより、コンテンツの構図を視認させる
表示媒体。
【0159】
上記説明した本実施形態の処理装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムが用いられる。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされたプログラムを実行することにより、処理装置10の各機能が実現される。なお処理装置110も、処理装置10と同様に、汎用的なコンピュータシステムが用いられる。
【0160】
なお、処理装置10は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また処理装置10は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0161】
処理装置10のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital VersatileDisc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば非一時的な(non-transitory)記録媒体である。
【0162】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0163】
1,100,200 表示媒体
10,110 処理装置
11,111 入力画像データ
12,114 セル色データ
13,115 出力データ
16,116 算出部
17,117 割り当て部
112 条件データ
113 形状データ
901 CPU
902 メモリ
903 ストレージ
904 通信装置
905 入力装置
906 出力装置
A 空間
B 青領域
C セル
G 緑領域
H 母点
K サブセル
L レイヤ
M 基材
N 透明層
P パーティション
R 赤領域
T 突状部材
W 遮蔽部材
φ 方位角