(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095494
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】シール材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20240703BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240703BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240703BHJP
B32B 25/02 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C09J7/38
C09J201/00
B32B25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091801
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2022211982
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】釜矢 雄介
(72)【発明者】
【氏名】請井 博一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 崇行
【テーマコード(参考)】
4F100
4H017
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AA08H
4F100AC03A
4F100AC03H
4F100AC04A
4F100AC04H
4F100AC05A
4F100AC05H
4F100AK51B
4F100AK52B
4F100AK73A
4F100AK73J
4F100AL02A
4F100AL02J
4F100AL09B
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4F100AR00A
4F100AR00B
4F100BA02
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4F100CA16A
4F100CA16G
4F100CA16H
4F100CA23A
4F100CA23H
4F100DJ02B
4F100JK06
4F100JK07
4F100JL14
4H017AA03
4H017AB17
4H017AC17
4J004AB01
4J004CB04
4J004CE01
4J004FA08
4J040CA081
4J040JA09
4J040JB09
(57)【要約】
【課題】被着体へ貼り付けられて高温環境に長期間曝された後の被着体からの引き剥がしの観点から有利である。
【解決手段】シール材1aは1~40mmの厚さtを有する。シール材1aは、表面部10eを有する。表面部10eは、シール材1aの厚さ方向における端面11を含み、かつ、300μmの厚さを有する。表面部10eは、500%の破断ひずみを有する。加えて、表面部10eは、引張力F
A[N/20mm]>粘着力F
B[N/20mm]の条件を満たす。引張力F
Aは、F
1・t
A・20/S
1と表される。粘着力F
Bは、シール材1aから作製された試験片を試験板に貼り付けた状態で試験片の環境温度を100℃に7日間保った後に、JIS Z 0237:2022に準拠して試験片を試験板から剥がして測定される90°引き剥がし粘着力[N/20mm]である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材であって、
前記シール材は、1~40mmの厚さを有し、
前記シール材は、前記シール材の厚さ方向における端面を含み、かつ、300μmの厚さを有する表面部を有し、
前記表面部は、500%以上の破断ひずみを有し、かつ、
引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件を満たし、
前記引張力FAは、前記表面部から作製された試験片に対してなされた引張試験における最大試験力F1[N]、前記試験片の断面積S1[mm2]、及び前記表面部の厚さtA[mm]によってF1・tA・20/S1と表され、
前記引張試験における前記試験片は、平面視で10mmの幅及び40mmの長さを有する長方形状であり、
前記引張試験におけるチャック間距離は、10mmであり、
前記引張試験における試験速度は、1000mm/分であり、
前記粘着力FBは、前記シール材から作製された試験片を試験板に貼り付けた状態で前記試験片の環境温度を100℃に7日間保った後に、日本産業規格(JIS) Z 0237:2022に準拠して前記試験片を試験板から剥がして測定される90°引き剥がし粘着力[N/20mm]である、
シール材。
【請求項2】
前記表面部は、前記引張試験において、1.5[N/20mm]以上の平均変化率を有し、
前記平均変化率は、前記引張試験において、試験力比が40%から60%の区間におけるひずみの変化量に対する引張力F[N/20mm]の変化量の比であり、
前記試験力比は、前記引張試験における最大試験力F1[N]に対する試験力F2[N]の比であり、
前記引張力Fは、前記試験力F2[N]、前記試験片の断面積S1[mm2]、及び前記表面部の厚さtA[mm]によってF2・tA・20/S1と表される、
請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記表面部は、前記引張試験において、1800%以下の特定ひずみを示し、
前記特定ひずみは、引張力F[N/20mm]をひずみの関数として表したグラフにおいて、第一直線と第二直線との交点に対応するひずみであり、
前記第一直線は、前記グラフにおけるひずみ比が20%及び30%である一対の点を通る直線であり、
前記第二直線は、前記グラフにおける前記ひずみ比が80%及び90%である一対の点を通る直線であり、
前記ひずみ比は、前記引張試験における前記破断ひずみに対する前記試験片のひずみの比であり、
前記引張力Fは、前記引張試験における試験力F2[N]、前記試験片の断面積S1[mm2]、及び前記表面部の厚さtA[mm]によってF2・tA・20/S1と表される、
請求項1に記載のシール材。
【請求項4】
前記シール材は、少なくとも2つの層を備えている、
請求項1に記載のシール材。
【請求項5】
前記シール材は、発泡体を備えている、
請求項1に記載のシール材。
【請求項6】
前記発泡体は、独立気泡構造を有する、
請求項5に記載のシール材。
【請求項7】
前記表面部は、フィラーを含有している、
請求項1に記載のシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、間隙を充填して止水性を発揮しうるシール材が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、独立気泡を有する発泡構造体の少なくとも一方の面に所定の粘着剤組成物の層を有する止水シール材が記載されている。その層は、所定のポリカーボネート構造を持つポリマーを含んでいる。この止水シール材にはタックがないので、止水シール材は直ちには接着しない。止水シール材の取り付け後には発泡構造体の反発力によって止水シール材が被着体に対して徐々に接着し、発泡構造体表面と被着体界面とのシール性が高められる。2枚のアクリル板で止水シール材の試料が挟まれた状態で止水試験がなされている。
【0004】
一方、被着体への貼り付けの後に引き剥がすことが想定された粘着シートが知られている。例えば、特許文献2には、実質的に接着面での伸張性延伸によって残渣及び破壊無く再び脱着し得る感圧接着ストリップが記載されている。この感圧接着ストリップは、マイクロバルーンで発泡された少なくとも一つの接着剤層及び少なくとも一つのキャリアBを含んでいる。接着剤層を形成する感圧接着剤Aは、少なくとも一種のポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロックコポリマーをベースとするエラストマー部分(a1)と、所定の粘着樹脂部分(a2)とを含んでいる。感圧接着剤Aは、任意選択的に、軟化樹脂部分(a3)を含んでいる。
【0005】
特許文献3には、表面に付着又は接着することができ、かつ、表面に損傷を与えることなく表面から剥離することができる接着取付アセンブリが記載されている。この接着取付アセンブリは、バッキングと、第1の接着性領域と、第2の接着性領域と、非接着性領域と、取付装置とを備えている。第1の接着性領域及び第2の接着性領域は、バッキングの第1の主平坦面上の領域である。非接着性領域は、例えば、第1の接着性領域と第2の接着性領域との間に配置されている。取付装置は、バッキングに隣接している。非接着性領域は、例えば、取付装置に隣り合っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-77463号公報
【特許文献2】特開2018-138649号公報
【特許文献3】特表2019-534059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、止水シール材が被着体に対して十分に接着して発泡構造体表面と被着体界面とのシール性が高い状態となった後に止水シール材を引き剥がすことは想定されていない。加えて、特許文献1では、被着体に貼り付けた止水シール材が高温環境に長期間曝されることは想定されていない。特許文献2及び3では、シール材を被着体に貼り付けた後にシール材が高温環境に長期間曝されることは想定されていない。これらの技術は、高温環境に長期間曝された後のシール材の引き剥がしの観点から再検討の余地を有する。
【0008】
そこで、本発明は、被着体へ貼り付けられて高温環境に長期間曝された後の被着体からの引き剥がしの観点から有利なシール材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
シール材であって、
前記シール材は、1~40mmの厚さを有し、
前記シール材は、前記シール材の厚さ方向における端面を含み、かつ、
300μmの厚さを有する表面部を有し、
前記表面部は、500%以上の破断ひずみを有し、かつ、
引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件を満たし、
前記引張力FAは、前記表面部から作製された試験片に対してなされた引張試験における最大試験力F1[N]、前記試験片の断面積S1[mm2]、及び前記表面部の厚さtA[mm]によってF1・tA・20/S1と表され、
前記引張試験における前記試験片は、平面視で10mmの幅及び40mmの長さを有する長方形状であり、
前記引張試験におけるチャック間距離は、10mmであり、
前記引張試験における試験速度は、1000mm/分であり、
前記粘着力FBは、前記シール材から作製された試験片を試験板に貼り付けた状態で前記試験片の環境温度を100℃に7日間保った後に、日本産業規格(JIS) Z 0237:2022に準拠して前記試験片を試験板から剥がして測定される90°引き剥がし粘着力[N/20mm]である、
シール材を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記のシール材は、被着体へ貼り付けられて高温環境に長期間曝された後の被着体からの引き剥がしの観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係るシール材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、シール材の使用例を模式的に示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、シール材の引き剥がし方法の一例を示す側面図である。
【
図3B】
図3Bは、シール材の引き剥がし方法の一例を示す平面図である。
【
図4A】
図4Aは、引張試験における引張力F[N/20mm]をひずみの関数として表したグラフである。
【
図4B】
図4Bは、引張試験における引張力F[N/20mm]をひずみの関数として表したグラフである。
【
図5】
図5は、シール材の別の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態には限定されない。
【0013】
図1に示す通り、シール材1aは1~40mmの厚さtを有する。シール材1aは、表面部10eを有する。表面部10eは、シール材1aの厚さ方向における端面11を含み、かつ、300μmの厚さを有する部位である。換言すると、シール材1aの厚さ方向における端面11から300μmの範囲が表面部10eと定義される。表面部10eは、500%の破断ひずみを有する。加えて、表面部10eは、引張力F
A[N/20mm]>粘着力F
B[N/20mm]の条件を満たす。引張力F
Aは、表面部10eから作製された試験片に対してなされた引張試験における最大試験力F
1[N]、その試験片の断面積S
1[mm
2]、及び表面部10eの厚さt
A[mm]によってF
1・t
A・20/S
1と表される。この引張試験における試験片は、平面視で10mmの幅及び40mmの長さを有する長方形状である。引張試験におけるチャック間距離は、10mmである。引張試験における試験速度は、1000mm/分である。引張試験は、特に説明する部分を除き、例えば、日本産業規格(JIS) K6251に準拠してなされる。粘着力F
Bは、シール材1aから作製された試験片を試験板に貼り付けた状態で試験片の環境温度を100℃に7日間保った後に、JIS Z 0237:2022に準拠して試験片を試験板から剥がして測定される90°引き剥がし粘着力[N/20mm]である。
【0014】
図2に示す通り、シール材1aを用いてシール構造2を提供できる。例えば、被着体3aと被着体3bとの間でシール材1aが圧着されてシール構造2が得られる。シール構造2は、例えば、IPX7に適合した防水性を発揮しうる。シール構造2は、高温(例えば、100℃以上)の環境において長期間(例えば、168時間以上)曝されうる。加えて、シール材1aは、シール構造2の使用後に被着体3a及び被着体3bから引き剥がされて回収されうる。このことは、被着体3a及び被着体3bのリサイクルを促すことにつながり、環境保護の観点からも望ましい。
【0015】
例えば、シール材1aを被着体3aから引き剥がす場合に、
図3A及び
図3Bに示す通り、シール材1aが方向D
Pに引張られる。この場合、方向D
Pに沿って延びているシール材1aが被着体3aの表面となす鋭角は、例えば、5~70°である。
【0016】
本発明者らの検討によれば、被着体同士の間隙が大きい場合に両面粘着テープを用いてその間隙を充填することは、煩雑であり、実用的であるとは言い難い。このため、例えば、1~40mmの厚さを有するシール材を用いて被着体同士の間隙を充填することが考えられる。この場合、例えば、シール材によって止水性が発揮されるためには、シール材の厚さ方向における端面と被着面との間が水密な状態であることが必要である。このため、シール材の厚さ方向の端面の被着体に対する粘着力が大きいことが止水性の発揮のためには有利であると考えられる。一方、
図3A及び
図3Bに示す通り、被着体のリサイクルのために、被着体からシール材を引き剥がすことが考えられる。この場合、シール材の引き剥がしにおいてシール材が破断せず、かつ、被着体にシール材の一部が残存しないことが重要である。しかし、シール材が被着体に貼り付けられた状態でシール材が高温環境に長期間曝されると、被着体からシール材を引き剥がすときにシール材が破断しやすく、シール材の引き剥がしによる回収が煩雑になる場合がある。加えて、シール材の一部が被着体に残存しやすく、被着体に残存した粘着剤等が被着体のリサイクルの妨げとなることも懸念される。
【0017】
シール材1aは1~40mmの厚さを有するので、被着体同士の間隙が大きい場合にもその間隙を充填しやすい。シール材1aの表面部10eは、上記の通り、500%以上の破断ひずみを有し、かつ、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件を満たす。これにより、シール材1aが被着体に貼り付けられた状態でシール材1aが高温環境に長期間曝された後にシール材1aを被着体から引き剥がしても、シール材1aが破断しにくく、シール材1aの一部が被着体に残存しにくい。このため、シール材1aを回収しやすい。
【0018】
シール材1aの破断ひずみが500%以上であることにより、
図3Bに示すように、シール材1aを引き剥がすときにくびれが生じやすい。このようなくびれが生じることにより、被着体とシール材1aとの間の接着面積が減少するので、シール材1aの一部が被着体に残存しにくい状態でシール材1aが引き剥がされる。
【0019】
シール材1aにおいて、例えば、シール材1aの厚さ方向における両方の表面部10eが500%以上の破断ひずみを有し、かつ、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件を満たしている。シール材1aにおいて、シール材1aの厚さ方向における一方の表面部10eのみが500%以上の破断ひずみを有し、かつ、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件を満たしていてもよい。表面部10eが引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件を満たすか否かは、その表面部10eが試験板に接触するように試験片を貼り付けて粘着力FBを測定することによって決定される。
【0020】
シール材1aの厚さtは、2mm以上であってもよいし、3mm以上であってもよいし、5mm以上であってもよい。厚さtは、35mm以下であってもよいし、30mm以下であってもよいし、25mm以下であってもよいし、20mm以下であってもよい。
【0021】
表面部10eの破断ひずみは、600%以上、700%以上、800%以上、900%以上、1000%以上、1100%以上、1200%以上、1300%以上、1400%以上、1500%以上、1600%以上、1800%以上、1900%以上、又は2000%以上であってもよい。
【0022】
表面部10eの破断ひずみは、例えば5000%以下である。これにより、シール材1aが被着体に貼り付けられた状態でシール材1aが高温環境に長期間曝された後にシール材1aを被着体から引き剥がすときに、シール材1aのひずみ量が大きくなりすぎることを防ぎやすい。表面部10eの破断ひずみは、4900%以下、4800%以下、4700%以下、4600%以下、4500%以下、4400%以下、4300%以下、4200%以下、4100%以下、又は4000%以下であってもよい。
【0023】
引張力FA[N/20mm]は、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件が満たされる限り特定の値に限定されない。引張力FA[N/20mm]は、例えば、10N/20mm以上であり、20N/20mm以上、25N/20mm以上、又は30N/20mm以上であってもよい。引張力FA[N/20mm]は、例えば100N/20mm以下であり、90N/20mm以下又は80N/20mm以下であってもよい。
【0024】
粘着力FB[N/20mm]は、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件が満たされる限り特定の値に限定されない。粘着力FB[N/20mm]は、例えば、5N/20mm以上であり、10N/20mm以上、12N/20mm以上、又は15N/20mm以上であってもよい。粘着力FB[N/20mm]は、例えば80N/20mm以下であり、75N/20mm以下又は70N/20mm以下であってもよい。
【0025】
引張力FA[N/20mm]から粘着力FB[N/20mm]を差し引いた差は、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件が満たされる限り、特定の値に限定されない。差FA-FBは、例えば0.5[N/20mm]以上であり、1.0[N/20mm]以上又は1.5[N/20mm]以上であってもよい。
【0026】
差FA-FBは、例えば60[N/20mm]以下であり、55[N/20mm]以下、50[N/20mm]以下、又は45[N/20mm]以下であってもよい。
【0027】
図4A及び
図4Bは、表面部10eから作製された試験片に対してなされた引張試験における、引張力F[N/20mm]をひずみの関数として表したグラフである。引張力Fは、引張試験における試験力F
2[N]、試験片の断面積S
1[mm
2]、及び表面部10eの厚さt
A[mm]によってF
2・t
A・20/S
1と表される。
【0028】
表面部10eは、引張試験において、例えば1.5[N/20mm]以上の平均変化率RAVを有する。これにより、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件が所望の状態で満たされやすい。このため、シール材1aが被着体に貼り付けられた状態でシール材1aが高温環境に長期間曝された後にシール材1aを被着体から引き剥がしても、シール材1aがより破断しにくい。
【0029】
平均変化率R
AVは、表面部10eから作製された試験片に対する引張試験において、試験力比が40%から60%の区間におけるひずみの変化量に対する引張力F[N/20mm]の変化量の比である。この場合、ひずみは、百分率で表記して得られる値ではなく、もとの長さに対する試験片の変形量の比をもとの長さを1として表記して得られる値である。
図4Aにおいて、引張力F
40は40%の試験力比に対応する引張力Fであり、引張力F
60は60%の試験力比に対応する引張力Fである。
図4Aにおいて点P
40及びP
60は、引張力F[N/20mm]をひずみの関数として表したグラフにおいて、それぞれ、引張力F
40及びF
60に対応している。点P
40及びP
60に対応するひずみをそれぞれε
a[%]及びε
b[%]と表す。平均変化率R
AVは、下記式(1)で表される。
R
AV=(F
60-F
40)/(ε
b-ε
a) 式(1)
【0030】
平均変化率RAVは、1.6[N/20mm]以上、1.7[N/20mm]以上、又は1.8[N/20mm]以上であってもよい。平均変化率RAVは、例えば15[N/20mm]以下であり、14[N/20mm]以下、13[N/20mm]以下、12[N/20mm]以下、10[N/20mm]以下、又は5[N/20mm]以下であってもよい。平均変化率RAVは、1.5[N/20mm]未満であってもよい。
【0031】
表面部10eは、引張試験において、例えば、2500%以下の特定ひずみε
Cを有する。
図4Bに示す通り、特定ひずみε
Cは、引張力F[N/20mm]をひずみの関数として表したグラフにおいて、第一直線L1と第二直線L2との交点Q
Cに対応するひずみである。第一直線L1は、上記のグラフにおけるひずみ比が20%及び30%である一対の点Q
20及びQ
30を通る直線である。ひずみ比は、引張試験における破断ひずみε
Bに対する試験片のひずみの比である。
図4Bにおいて、ε
20及びε
30は、それぞれ、20%及び30%のひずみ比に対応するひずみである。第二直線L2は、上記のグラフにおけるひずみ比が80%及び90%である一対の点Q
80及びQ
30を通る直線である。
図4Bにおいて、ε
80及びε
90は、それぞれ、80%及び90%のひずみ比に対応するひずみである。
【0032】
特定ひずみεCは、2400%以下、2300%以下、2200%以下、2100%以下、2000%以下、1900%以下、又は1800%以下であってもよい。特定ひずみεCは、望ましくは、1800%以下である。この場合、引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件が所望の状態で満たされやすい。このため、シール材1aが被着体に貼り付けられた状態でシール材1aが高温環境に長期間曝された後にシール材1aを被着体から引き剥がしても、シール材1aがより破断しにくい。
【0033】
特定ひずみεCは、例えば300%以上であり、400%以上、500%以上、600%以上、700%以上、800%以上、900%以上、1000%以上、1100%以上、又は1200%以上であってもよい。
【0034】
図4Bに示す通り、例えば、第二直線L2の傾きは、第一直線L1の傾きより大きい。第一直線L1の傾きは、例えば0.1~1[N/20mm]である。第二直線L2の傾きは、例えば2~8[N/20mm)]である。
【0035】
シール材1aにおいて端面11をなす材料の引張弾性率は特定の値に限定されない。その引張弾性率は、例えば6.5MPa未満である。この場合、シール材1aを用いたシール構造において端面11と被着面との間が水密な状態になりやすい。端面11をなす材料の引張弾性率は、望ましくは6.0MPa以下であり、より望ましくは5.5MPa以下である。
【0036】
図1に示す通り、シール材1aは、例えば、少なくとも2つの層を備えている。これにより、被着体同士の間隙が大きい場合でも、その間隙がシール材1aによって充填されやすい。
【0037】
図1に示す通り、シール材1aは、例えば、発泡体20を備えている。これにより、被着体同士の間隙が大きい場合でも、その間隙がシール材1aによって充填されやすい。加えて、シール材1aが被着体に貼り付けられた状態でシール材1aが高温環境に長期間曝された後にシール材1aを被着体から引き剥がしても、シール材1aがより破断しにくい。さらに、間隙に合わせて発泡体20が圧縮変形しうるので、シール材1aを用いて止水性を発揮するシール構造が得られやすい。
【0038】
発泡体20における構造は特定の構造に限定されない。発泡体20は、例えば、独立気泡構造を有している。この場合、シール材1aが被着体に貼り付けられた状態でシール材1aが高温環境に長期間曝された後にシール材1aを被着体から引き剥がしても、シール材1aがより破断しにくい。加えて、発泡体20の内部の液密性が高く、シール構造2が所望の止水性を発揮しやすい。
【0039】
発泡体20は、例えば、半独立半連続気泡構造を有していてもよい。この場合、発泡体20は、圧縮変形前には連続気泡を含み、例えば50%以上の圧縮ひずみが生じるように発泡体20が圧縮変形されると、連続部が塞がることにより独立気泡の構造と同様な構造に変化する。発泡体20は、例えば、連続気泡構造を有していてもよい。
【0040】
発泡体20をなす材料は、特定の材料に限定されない。発泡体20は、例えば、ゴム発泡体であってもよいし、樹脂発泡体であってもよい。樹脂発泡体の例は、ウレタンフォーム、シリコーンフォームであってもよいし、アクリルフォームであってもよい。
【0041】
発泡体20は、望ましくは、ゴム発泡体である。この場合、シール構造2における発泡体20の圧縮ひずみが小さい場合でも、シール構造2が高い止水性を発揮しやすい。ゴム発泡体は、例えば、ゴム、発泡剤、及び架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させることにより得られる。
【0042】
ゴムは、例えば、オレフィン系エラストマーであってもよいし、スチレン系エラストマーであってもよいし、ブチル系エラストマーであってもよいし、塩化ビニル系エラストマーであってもよいし、天然ゴムであってもよい。オレフィン系エラストマーの例は、エチレン‐プロピレンゴム(EPM)及びエチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)である。スチレン系エラストマーは、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、スチレン‐ブタジエン‐スチレンゴム(SBS)、スチレン‐イソプレン‐スチレンゴム(SIS)、スチレン‐エチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンゴム(SEBS)、スチレン‐イソブチレン‐スチレンブロックゴム(SIBS)、及びスチレン‐イソプレン‐プロピレン‐スチレンゴムである。ブチル系エラストマーの例は、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテン、ポリイソプレンゴム、及びニトリルブタジエンゴム(NBR)である。塩化ビニル系エラストマーの例は、クロロプレンゴム及びクロロスルホン化ポリエチレンゴムである。
【0043】
ゴムは、望ましくはオレフィン系エラストマーであり、より望ましくはEPDMである。この場合、シール構造2における発泡体20の圧縮ひずみが小さい場合でも、シール構造2が高い止水性をより発揮しやすい。
【0044】
EPDMは、エチレン、プロピレン、及びジエン類の共重合によって得られるゴムであり、エチレン及びプロピレンに加えて、さらにジエン類を共重合させることにより、不飽和結合を導入して、架橋剤による架橋を可能としている。
【0045】
ジエン類の例は、5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン、1,4‐ヘキサジエン、及びジシクロペンタジエンである。これらジエン類は単独で使用されてもよいし、2種類以上のジエン類が併用されてもよい。ジエン類がジシクロペンタジエンを含む場合、架橋度の向上を図ることができる。
【0046】
EPDMは、望ましくは長鎖分岐を有する。EPDMに長い分岐鎖を導入する方法としては、特定の方法に制限されず、公知の方法が採用される。EPDMが長鎖分岐を有していれば、ゴム組成物を良好に発泡させることができる。
【0047】
EPDMにおけるジエン類の含有量(ジエン含有量)は、例えば1質量%以上であり、望ましくは2質量%以上であり、より望ましくは3質量%以上である。ジエン含有量は、例えば20質量%以下であり、望ましくは15質量%以下である。これにより、ゴム発泡体に表面収縮が生じにくく、かつ、ゴム発泡体に割れが生じにくい。
【0048】
発泡剤は、有機系発泡剤であってもよいし、無機系発泡剤であってもよい。
【0049】
有機系発泡剤の例は、アゾ系発泡剤、N‐ニトロソ系発泡剤、ヒドラジド系発泡剤、セミカルバジド系発泡剤、フッ化アルカン系発泡剤、トリアゾール系発泡剤、及びその他公知の有機系発泡剤である。アゾ系発泡剤の例は、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、及びアゾジアミノベンゼンなどのアゾ系発泡剤である。N‐ニトロソ系発泡剤の例は、N,N´‐ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)、N,N´‐ジメチル‐N,N´‐ジニトロソテレフタルアミド、及びトリニトロソトリメチルトリアミンである。ヒドラジド系発泡剤の例は、4,4´‐オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン‐3,3´‐ジスルホニルヒドラジド、2,4‐トルエンジスルホニルヒドラジド、p,p‐ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル、及びベンゼン‐1,3‐ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)である。セミカルバジド系発泡剤の例は、p-トルイレンスルホニルセミカルバジド及び4,4´‐オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)である。フッ化アルカン系発泡剤の例は、トリクロロモノフルオロメタン及びジクロロモノフルオロメタンである。トリアゾール系発泡剤の例は、5‐モルホリル‐1,2,3,4‐チアトリアゾールである。有機系発泡剤は、加熱膨張性の物質がマイクロカプセル内に封入された熱膨張性微粒子であってもよい。そのような熱膨張性微粒子として、例えば、マイクロスフェア(商品名、松本油脂社製)等の市販品を挙げることができる。
【0050】
無機系発泡剤の例は、炭酸水素塩、炭酸塩、亜硝酸塩、水素化ホウ素塩、無機アジ化物、及びその他の公知の無機系発泡剤である。炭酸水素塩の例は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムである。炭酸塩の例は、炭酸ナトリウム及び炭酸アンモニウムである。亜硝酸塩の例は、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸アンモニウムである。水素化ホウ素塩の例は、水素化ホウ素ナトリウムである。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0051】
発泡剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であり、望ましくは1質量部以上であり、より望ましくは10質量部以上である。発泡剤の配合量は、例えば50質量部以下であり、望ましくは30質量部以下である。
【0052】
架橋剤の例は、硫黄(S8)及び4、4’‐ジチオジモルホリン等の硫黄化合物、セレン、酸化マグネシウム、一酸化鉛、p‐キノンジオキシム、p、p’‐ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ‐p‐ジニトロソベンゼン等のキノイド化合物、ポリアミン、p‐ジニトロソベンゼン等のニトロソ化合物、有機過酸化物、樹脂、並びに安息香酸アンモニウム等のアンモニウム塩である。有機過酸化物の例は、ジクミルパーオキサイド、ジメチルジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、及びα,α´‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンである。樹脂の例は、アルキルフェノール‐ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン‐ホルムアルデヒド縮合物である。これら架橋剤は単独で使用されてもよいし、2種類以上の架橋剤が併用されてもよい。
【0053】
架橋剤は、望ましくは、硫黄(S8)及び硫黄化合物、キノイド化合物、又は有機過酸化物である。硫黄(S8)及び硫黄化合物は、優れた機械的強度及び発泡性の観点から有利である。キノイド化合物は、硫黄原子含有割合の低減、腐食性の低減、及び優れた発泡性の観点から有利である。有機過酸化物は、シール構造を実現するための対象物への密着性及び段差追従性等の向上の観点から有利である。
【0054】
架橋剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば0.05質量部以上であり、望ましくは0.5質量部以上であり、より望ましくは1質量部以上である。架橋剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば30質量部以下であり、望ましくは20質量部以下であり、より望ましくは10質量部以下である。
【0055】
架橋剤として、キノイド化合物及び有機過酸化物を併用してもよい。この場合、発泡体20の表面での架橋を十分になされやすい。キノイド化合物と有機過酸化物とを併用する場合において、有機過酸化物の配合割合は、キノイド化合物100質量部に対して、例えば1質量部以上であり、より望ましくは10質量部以上である。その配合割合は、キノイド化合物100質量部に対して、例えば100質量部以下であり、望ましくは50質量部以下である。
【0056】
ゴム組成物は、望ましくは、発泡助剤及び架橋助剤を含有する。発泡助剤の例は、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤、及び酸化亜鉛等の金属酸化物である。好ましくは、尿素系発泡助剤、金属酸化物が挙げられる。これら発泡助剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0057】
発泡助剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば0.5質量部以上であり、望ましくは1質量部以上である。その配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば20質量部以下であり、より望ましくは10質量部以下である。
【0058】
架橋助剤の例は、チアゾール類、チオウレア類、ジチオカルバミン酸類、グアニジン類、スルフェンアミド類、チウラム類、キサントゲン酸類、アルデヒドアンモニア類、及びアルデヒドアミン類である。これらの中でも、チアゾール類、チオウレア類、ジチオカルバミン酸類、又はチウラム類が架橋助剤として望ましく使用される。チアゾール類の例は、ジベンゾチアジルジスルフィド及び2‐メルカプトベンゾチアゾールである。チオウレア類の例は、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、及びジブチルチオウレアである。ジチオカルバミン酸類の例は、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、及びジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛である。グアニジン類の例は、ジフェニルグアニジン及びジ‐o‐トリルグアニジンである。スルフェンアミド類の例は、ベンゾチアジル‐2‐ジエチルスルフェンアミド及びN‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミドである。チウラム類の例は、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、及びテトラベンジルチウラムジスルフィドである。キサントゲン酸類の例は、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム及びイソプロピルキサントゲン酸亜鉛である。アルデヒドアンモニア類の例は、アセトアルデヒドアンモニア及びヘキサメチレンテトラミンである。アルデヒドアミン類の例は、n‐ブチルアルデヒドアニリン及びブチルアルデヒドモノブチルアミンである。
【0059】
架橋助剤はアルコール類であってもよい。アルコール類の例は、エタノール等の1価アルコール、エチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、並びにポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリオール(ポリオキシエチレングリコール)である。アルコール類として、望ましくは、ポリオールが使用される。この場合、ポリオールの数平均分子量は、例えば200以上であり、望ましくは300以上である。ポリオールの数平均分子量は、例えば10000以下であり、望ましくは5000以下である。
【0060】
これら架橋助剤は単独で使用されてもよいし、2種類以上の架橋助剤が使用されてもよい。
【0061】
架橋剤として、硫黄及び硫黄化合物が用いられる場合は、発泡体20の良好な発泡形状及び柔軟性を確保する観点から、架橋助剤として、チアゾール類、チオウレア類、ジチオカルバミン酸類、又はチウラム類が望ましく用いられる。
【0062】
架橋剤としてキノイド化合物が用いられる場合は、腐食性の低減の観点から、架橋助剤として、望ましくはアルコール類、より望ましくはポリオールが用いられる。特に、キノイド化合物としてp‐キノンジオキシムの誘導体が用いられる場合には、ポリエチレングリコールの使用が有利である。ポリオールとしてポリエチレングリコールを用いると、ゴム組成物を良好に架橋させることができ、優れた発泡性が確保されやすい。
【0063】
架橋助剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば0.01質量部以上であり、望ましくは0.02質量部以上であり、より望ましくは0.06質量部以上である。その配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば20質量部以下であり、望ましくは10質量部以下であり、より望ましくは5質量部以下である。
【0064】
ゴム組成物は、必要に応じて、滑材(加工助剤)、顔料、充填材、難燃剤、及び軟化剤等の添加物を含有していてもよい。
【0065】
滑材の例は、ステアリン酸、そのエステル類、ステアリン酸亜鉛等のステアリン系化合物、及びパラフィンである。これら滑材は単独で用いられてもよく、2種類以上の滑材が併用されてもよい。滑材の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であり、望ましくは1質量部以上である。その配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば20質量部以下であり、より望ましくは10質量部以下である。
【0066】
顔料の例は、カーボンブラックである。顔料は単独で用いられてもよく、2種類以上の顔料が併用されてもよい。顔料の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば1質量部以上であり、望ましくは2質量部以上である。その配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば50質量部以下であり、望ましくは30質量部以下である。
【0067】
充填材は、無機系充填材であってもよいし、有機系充填材であってもよいし、その他公知の充填材であってもよい。無機系充填材の例は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸及びその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、及びアルミニウム粉である。有機系充填材の例は、コルクである。これら充填材は単独で用いられてもよく、2種類以上の充填材が併用されてもよい。充填材の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば10質量部以上であり、望ましくは30質量部以上であり、より望ましくは50質量部以上である。その配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば300質量部以下であり、望ましくは200質量部以下である。
【0068】
難燃剤の例は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウム等の水酸化物である。これらの難燃剤は単独で用いられてもよく、2種類以上の難燃剤が併用されてもよい。難燃剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば5質量部以上であり、望ましくは10質量部以上であり、より望ましくは15質量部以上である。その配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば200質量部以下であり、望ましくは150質量部以下であり、より望ましくは100質量部以下である。
【0069】
軟化剤の例は、石油系オイル類、アスファルト類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類、及び粘付与剤である。石油系オイル類の例は、パラフィンオイル等のパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、乾性油類又は動植物油類、及びアロマ系プロセスオイルである。乾性油類又は動植物油類の例は、アマニ油である。有機酸エステル類の例は、フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル(DOP)及びフタル酸ジブチル(DBP)等のフタル酸エステル、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、及びアルキルスルホン酸エステルである。軟化剤として、望ましくは石油系オイル類又はアスファルト類が使用され、より望ましくはパラフィン系プロセスオイルが使用される。これら軟化剤は単独で用いられてもよく、2種類以上の軟化剤が併用されてもよい。軟化剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば5質量部以上であり、望ましくは10質量部以上である。その配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば300質量部以下であり、より望ましくは200質量部以下である。
【0070】
ゴム組成物は、その目的及び用途によって、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、防カビ剤、及び非ゴム系ポリマー等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0071】
シール材1aにおいて、表面部10eは、フィラーを含有していてもよいし、フィラーを含有していなくてもよい。表面部10eがフィラーを含有している場合、これにより、シール材1aのタックが所望の範囲に調整されやすい。フィラーの材料は特定の材料に限定されない。フィラーは、例えば、無機物を含んでいる。無機物の例は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、雲母、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、及びアルミニウムである。
【0072】
図1に示す通り、シール材1aは、例えば、接着層10をさらに備えている。接着層10は、例えば、粘着剤層である。接着層10は、例えば、ゴム系ポリマーを含んでいる。ゴム系ポリマーは、例えば、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマー等の合成ゴムである。
【0073】
熱可塑性エラストマーの例は、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ブチル系エラストマー、及び塩化ビニル系エラストマーである。オレフィン系エラストマーの例は、エチレン-プロピレンゴム(EPM)及びエチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)である。スチレン系エラストマーの例は、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、スチレン‐ブタジエン‐スチレンゴム(SBS)、スチレン‐イソプレン‐スチレンゴム(SIS)、スチレン‐エチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンゴム(SEBS)、スチレン‐イソブチレン‐スチレンブロックゴム(SIBS)、及びスチレン‐イソプレン‐プロピレン‐スチレンゴムである。ブチル系エラストマーの例は、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテン、ポリイソプレンゴム、及びニトリルブタジエンゴム(NBR)である。塩化ビニル系エラストマーの例は、クロロプレンゴム又はクロロスルホン化ポリエチレンゴムである。
【0074】
熱硬化性エラストマーの例は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、及びポリアミドゴムである。
【0075】
ゴム系ポリマーは、望ましくは熱可塑性エラストマーであり、より望ましくはスチレン系エラストマー又はブチル系エラストマーである。
【0076】
ゴム系ポリマーの重量平均分子量は、例えば3万以上であり、望ましくは5万以上であり、より望ましくは10万以上である。ゴム系ポリマーの重量平均分子量は、例えば500万以下であり、望ましくは300万以下であり、より望ましくは100万以下である。この場合、接着層10によって形成された面が所望の粘着力を有しやすい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて、ポリスチレン換算にて測定される。
【0077】
表面部10eがフィラーを含有している場合、接着層10におけるフィラーの含有量は特定の値に限定されない。例えば、接着層10において、フィラーの含有量は、ゴム系ポリマー100質量部に対して、例えば5質量部以上であり、望ましくは10質量部以上であり、より望ましくは20質量部以上である。フィラー10fの含有量は、ゴム系ポリマー100質量部に対して、例えば300質量部以下であり、望ましくは250質量部以下であり、より望ましくは200質量部以下である。接着層10は、フィラーを含有していなくてもよい。
【0078】
接着層10は、望ましくは、粘着付与剤をさらに含んでいる。これにより、例えば、接着層10によって形成された端面11が所望の粘着力を有しやすい。
【0079】
粘着付与剤は特定の物質に限定されない。粘着付与剤は、例えば所定の樹脂である。その樹脂の例は、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、及びエラストマー系粘着付与樹脂である。ロジン系粘着付与樹脂の例は、未変性ロジン、変性ロジン、ロジンフェノール系樹脂、及びロジンエステル系樹脂である。テルペン系粘着付与樹脂の例は、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、及び水素添加テルペン系樹脂である。炭化水素系粘着付与樹脂の例は、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、及びクマロンインデン系樹脂である。芳香族系炭化水素樹脂の例は、スチレン系樹脂及びキシレン系樹脂である。フェノール系粘着付与樹脂の例は、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂、レゾール、及びノボラックである。粘着付与剤は、望ましくは脂環族系環状炭化水素又は芳香族系炭化水素樹脂である。
【0080】
接着層10における粘着付与剤の含有量は特定の値に限定されない。例えば、接着層10において、粘着付与剤の含有量は、ゴム系ポリマー100質量部に対して、例えば5質量部以上であり、望ましくは10質量部以上であり、より望ましくは20質量部以上である。粘着付与剤の含有量は、ゴム系ポリマー100質量部に対して、例えば200質量部以下であり、望ましくは100質量部以下であり、より望ましくは80質量部以下である。
【0081】
接着層10の厚さは特定の値に限定されない。その厚さは、例えば50~400μmの厚さを有する。接着層10の厚さは、70μm以上であってもよく、80μm以上であってもよい。接着層10の厚さは、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよい。
【0082】
図1に示す通り、シール材1aは、例えば、一対の接着層10を備えており、接着層10同士の間に発泡体20が配置されている。シール材1aにおいて、表面部10eは、接着層10のみによって構成されていてもよいし、接着層10と、発泡体20の一部とによって形成されていてもよい。
【0083】
シール材1aは様々な観点から変更可能である。例えば、シール材1aは、
図5に示すシール材1bのように変更されていてもよい。シール材1bは、特に説明する部分を除き、シール材1aと同じ様に構成されている。シール材1aの構成要素と同一又は対応するシール材1bの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。シール材1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、シール材1bにもあてはまる。
【0084】
図5に示す通り、シール材1bは、1つの接着層10と、発泡体20とを備えている。接着層10は、シール材1bの厚さ方向における一方の端面11をなしている。発泡体20は、シール材1bの厚さ方向における他方の端面11をなしている。シール材1bにおいて、接着層10を含む表面部10eが500%以上の破断ひずみを有し、かつ、引張力F
A[N/20mm]>粘着力F
B[N/20mm]の条件を満たす。
【0085】
シール材1bにおいて、発泡体20の引張弾性率は特定の値に限定されない。発泡体20の引張弾性率は、例えば3MPa以下である。このような構成によれば、被着体同士の間にシール材1bが圧縮変形した状態で配置されることにより、発泡体20がなす端面11と被着体との間が水密な状態になりやすい。発泡体20の引張弾性率は、望ましくは2.5MPa以下であり、より望ましくは2MPa以下である。発泡体20の引張弾性率は、例えば0.5MPa以上である。
【実施例0086】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0087】
<実施例1>
ENEOSマテリアル社製のSBS樹脂TR-2003及び荒川化学工業社製の粘着付与剤アルコンM-115を、それぞれ、100質量部及び35質量部の配合割合で混練し、混合物を得た。この混合物を150℃及び4MPaの条件で熱プレスし、100μmの厚さを有する実施例1に係る粘着シートを得た。2枚の実施例1に係る粘着シートの間に、日東電工社製の発泡体No.6800を配置して積層体を得た。この発泡体は、独立気泡の構造を有するEPDM発泡体であり、10mmの厚さを有していた。この積層体を140℃のオーブンの中で2kPaの圧力をかけながら加熱し、2枚の実施例1に係る粘着シートと、発泡体とを接着させた。このようにして、実施例1に係るシール材を得た。
【0088】
<実施例2~5>
下記の点以外は実施例1と同様にして、実施例2~5に係るシール材を得た。SBS樹脂として、TR-2003の代わりに、クレイトン社製のSBS樹脂D1155を用いた。SBS樹脂及び粘着付与剤の配向割合を表1Aに示す通り調整して実施例2~5に係る粘着シートを得た。実施例1に係る粘着シートの代わりに実施例2~5に係る粘着シートを用いて、それぞれ、実施例2~5に係るシール材を作製した。
【0089】
<実施例6>
下記の点以外は実施例1と同様にして、実施例6に係るシール材を得た。SBS樹脂TR-2003、粘着付与剤アルコンM-115、及び丸尾カルシウム社製の重質炭酸カルシウムであるフィラーを、それぞれ、100質量部、35質量部、及び35質量部の配合割合で混練し、混合物を得た。この混合物を150℃及び4MPaの条件で熱プレスし、100μmの厚さを有する実施例6に係る粘着シートを得た。実施例1に係る粘着シートの代わりに実施例6に係る粘着シートを用いて実施例6に係るシール材を作製した。
【0090】
<実施例7>
下記の点以外は実施例1と同様にして、実施例7に係るシール材を得た。SBS樹脂として、TR-2003の代わりに、旭化成社製のSBS樹脂タフプレンAを用いた。タフプレンは登録商標である。粘着シートの厚さは300μmに調整した。実施例1に係る粘着シートの代わりに実施例7に係る粘着シートを用いて、実施例7に係るシール材を作製した。
【0091】
<実施例8>
下記の点以外は実施例7と同様にして、実施例8に係るシール材を得た。SBS樹脂タフプレンA、粘着付与剤アルコンM-115、及び丸尾カルシウム社製の重質炭酸カルシウムであるフィラーを、それぞれ、100質量部、45質量部、及び35質量部の配合割合で混練し、混合物を得た。この混合物を150℃及び4MPaの条件で熱プレスし、300μmの厚さを有する実施例8に係る粘着シートを得た。実施例7に係る粘着シートの代わりに実施例8に係る粘着シートを用いて実施例8に係るシール材を作製した。
【0092】
<実施例9>
発泡体として、No.6800の代わりに、日東電工社製の発泡体EE-1000を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例9に係るシール材を得た。発泡体EE-1000は、EPDM発泡体であり、連続気泡構造を有していた。発泡体EE-1000の厚さは10mmであった。
【0093】
<実施例10>
1枚の実施例4に係る粘着シートを発泡体の一方の面に接着させたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例10に係るシール材を得た。
【0094】
<実施例11>
発泡体として、No.6800の代わりに、日本発条社製のウレタンフォームであるスーパーシートHを用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例11に係るシール材を得た。スーパーシートHの厚さは10mmであった。
【0095】
<実施例12>
SBS樹脂及び粘着付与剤の配向割合を表1Bに示す通り調整したこと以外は実施例2と同様にして、実施例12に係る粘着シートを得た。実施例1に係る粘着シートの代わりに実施例12に係る粘着シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例12に係るシール材を作製した。
【0096】
<実施例13>
1枚の実施例4に係る粘着シートを発泡体の一方の面に接着させたこと以外は、実施例9と同様にして、実施例13に係るシール材を得た。
【0097】
<実施例14>
実施例4に係る粘着シートの代わりに、実施例12に係る粘着シートを用いたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例14に係るシール材を得た。
【0098】
<実施例15>
下記の点以外は実施例1と同様にして、実施例15に係るシール材を得た。TR-2003の代わりに、クレイトン社製のSEBS樹脂G1657を用いた。SEBS樹脂及び粘着付与剤の配向割合を表1Cに示す通り調整して実施例15に係る粘着シートを得た。実施例1に係る粘着シートの代わりに実施例15に係る粘着シートを用いて、実施例15に係るシール材を作製した。
【0099】
<実施例16>
粘着シートの厚さを200μmに変更したこと以外は、実施例15と同様にして、実施例16に係る粘着シートを得た。実施例1に係る粘着シートの代わりに実施例16に係る粘着シートを用いて、実施例16に係るシール材を作製した。
【0100】
<実施例17及び18>
SEBS樹脂及び粘着付与剤の配向割合を表1Cに示す通り調整したこと以外は、実施例16と同様にして、実施例17及び18に係る粘着シートを得た。実施例16に係る粘着シートの代わりに実施例17及び18に係る粘着シートを用いて、それぞれ、実施例17及び18に係るシール材を作製した。
【0101】
<実施例19>
SEBS樹脂及び粘着付与剤の配向割合を表1Cに示す通り調整し、かつ、粘着シートの厚さを300μmに変更したこと以外は、実施例16と同様にして、実施例19に係る粘着シートを得た。実施例16に係る粘着シートの代わりに実施例19に係る粘着シートを用いて、実施例19に係るシール材を作製した。
【0102】
<実施例20>
実施例4に係る粘着シートの代わりに実施例17に係る粘着シートを用いたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例20に係るシール材を作製した。
【0103】
<実施例21>
実施例4に係る粘着シートの代わりに実施例17に係る粘着シートを用いたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例21に係るシール材を得た。
【0104】
<実施例22>
実施例4に係る粘着シートの代わりに実施例18に係る粘着シートを用いたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例22に係るシール材を得た。
【0105】
<比較例1>
10mmの厚さを有する発泡体No.6800の厚さ方向の両端面に不織布を基材とするアクリル系両面粘着シートを貼り合わせて比較例1に係るシール材を得た。このアクリル系両面粘着シートの厚さは120μmであった。
【0106】
<比較例2>
アクリル系両面粘着シートの代わりに、基材レスのアクリル系両面粘着シートを用いたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2に係るシール材を得た。このアクリル系両面粘着シートの厚さは40μmであった。
【0107】
<比較例3>
下記の点以外は実施例2と同様にして、比較例3に係るシール材を得た。粘着シートの作製におけるSBS樹脂及び粘着付与剤の配合割合を表2に示す通りに調整して、比較例3に係る粘着シートを得た。実施例2に係る粘着シートの代わりに比較例3に係る粘着シートを用いて比較例3に係るシール材を作製した。
【0108】
<比較例4>
粘着シートの厚さが30μmとなるように粘着シートの作製条件を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4に係るシール材を得た。
【0109】
<比較例5及び6>
粘着シートの厚さが100μm及び200μmとなるように粘着シートの作製条件を調整したこと以外は、実施例8と同様にして、それぞれ、比較例5及び6に係るシール材を得た。
【0110】
<比較例7>
粘着シートの作製において、フィラーの添加量を160質量部に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、比較例7に係るシール材を得た。
【0111】
(引張試験)
各実施例及び各比較例のシール材から粘着シートを含む300μmの厚さを有する部位(表面部)をスライスして試験片を作製し、引張試験を行った。試験片は、平面視で10mmの幅及び40mmの長さを有する長方形状であった。常温、1000mm/分の試験速度、及びチャック間距離10mmの条件で引張試験を行った。引張試験の他の条件は、JIS K6251に準拠して定めた。引張強度[MPa]、引張力FA、及び破断ひずみεB[%]を下記式(2)、(3)、及び(4)に基づいて求めた。結果を表1A、表1B、表1C、及び表2に示す。
引張強度[MPa]=最大試験力[N]/試験片の断面積[mm2] 式(2)
引張力FA[N/20mm]=20mm×試験片の厚さ[mm]×最大試験力[N]/試験片の断面積[mm2] 式(3)
破断ひずみεB[%]=100×試験片破断時のチャック間の距離[mm]/引張試験直前のチャック間の距離[mm] 式(4)
【0112】
上記の引張試験の結果に基づいて下記式(5)で決定される引張力Fをひずみ[%]の関数として表したグラフを作成した。このグラフに基づいて上記式(1)に従って平均変化率RAVを決定した。なお、平均変化率RAVの決定において、ひずみは、百分率で表記して得られる値ではなく、もとの長さに対する試験片の変形量の比をもとの長さを1として表記して得られる値を用いた。参考のために、式(1)を再掲する。加えて、このグラフから、ひずみ比が20%及び30%であるグラフ上の一対の点を通る直線と、ひずみ比が80%及び90%であるグラフ上の一対の点を通る直線との交点に対応する特定ひずみεCを求めた。結果を表1A、表1B、表1C、及び表2に示す。
引張力F=20mm×試験片の厚さ[mm]×試験力[N]/試験片の断面積[mm2]式(5)
RAV=(F60-F40)/(εb-εa) 式(1)
【0113】
実施例4に係る粘着シート及び実施例10で用いた発泡体から試験片を作製し、上記の引張試験と同様にして、引張試験を行った。引張試験によって得られた応力‐ひずみ曲線における5%から25%の区間における曲線の傾きを端面の引張弾性率と決定した。なお、実施例10における端面の引張弾性率は、発泡体によって形成された端面の引張弾性率である。
【0114】
(90°引き剥がし粘着力の測定)
各実施例及び各比較例のシール材を用いて試験片を作製した。試験片は、平面視において100mmの長さ及び20mmの幅を有する長方形状であった。この試験片を、SUS304製の1.5mmの厚さを有する試験板の上に置いて、試験片上を2kgのローラーを1往復させて貼り付けた。試験片の試験板への貼り付け後に試験片に荷重を付与せずに、100℃に保たれたオーブンの中で試験片を試験板とともに7日間保管した。その後、オーブンから試験片を取り出し、室温で1時間放冷させた後、JIS Z 0237:2022に準拠して90°引き剥がし粘着力FBを測定した。引き剥がしの速度は300mm/分に調節した。結果を表1A、表1B、表1C、及び表2に示す。
【0115】
(シール材の回収性の評価)
各実施例及び各比較例に係るシール材をSUS304製の1.5mmの厚さを有する板材の上に置いて、シール材上を2kgのローラーを1往復させ、シール材を板材に貼り付けた。100℃に保たれたオーブンの中で試験片を試験板とともに7日間保管した。その後、オーブンから試験片を取り出し、室温で1時間放冷させた後、シール材の表面部を手で掴んで約300mm/分の速度で板材から引き剥がした。この場合、下記の基準に従ってシール材の回収性を評価した。結果を表1A、表1B、表1C、及び表2に示す。
Good:シール材が破断せず、板材にシール材に起因する粘着剤の残存がない。
Not enough:シール材が破断すること及び/又は板材にシール材に起因する粘着剤が残存することが確認される。
【0116】
(止水性の評価)
各実施例及び各比較例に係るシール材を50mmの内径及び70mmの外形を有する円環状に打ち抜き、IPX7試験のための試験片を作製した。2枚のアクリル板の間に試験片を配置し、2枚のアクリル板の間の試験片の周囲にスペーサを配置して、試験片をアクリル板の厚み方向に所定の圧縮ひずみが生じさせた状態で固定した。アクリル板は、三菱ケミカル社製のアクリライトEXであり、10mmの厚みを有していた。このようにしてIPX7試験のためのサンプルを作製した。アクリライトは登録商標である。1mの高さまで水が入れられた水槽にこのサンプルを沈め30分間が経過したときにこのサンプルを取り出し、円環状の試験片の内部への水漏れの有無を確認して、IPX7の基準に適合するか否かを判断した。水漏れがない場合にIPX7の基準に適合すると評価できる。圧縮ひずみを変化させてIPX7試験を行い、IPX7の基準に適合するために必要な最低の圧縮率を求めた。結果を表1A、表1B、表1C、及び表2に示す。
【0117】
表1Aから表1Cに示す通り、各実施例に係るシール材の回収性は良好であった。一方、表2に示す通り、比較例に係るシール材の回収性は良好であるとは言い難かった。実施例と比較例との対比によれば、破断ひずみεBが500%以上であり、かつ、引張力FA>粘着力FBの条件が満たされていることにより、シール材が高温環境に長期間曝された後にシール材を被着体から引き剥がしやすいと理解される。比較例1では、破断ひずみεBが15%であり、シール材の回収性の評価においてシール材の破断が生じた。比較例2~7では、引張力FA>粘着力FBの条件が満たされておらず、シール材の回収性の評価においてシール材の一部が板材に残存した。
【0118】
本発明の第1側面は、
シール材であって、
前記シール材は、1~40mmの厚さを有し、
前記シール材は、前記シール材の厚さ方向における端面を含み、かつ、300μmの厚さを有する表面部を有し、
前記表面部は、500%以上の破断ひずみを有し、かつ、
引張力FA[N/20mm]>粘着力FB[N/20mm]の条件を満たし、
前記引張力FAは、前記表面部から作製された試験片に対してなされた引張試験における最大試験力F1[N]、前記試験片の断面積S1[mm2]、及び前記表面部の厚さtA[mm]によってF1・tA・20/S1と表され、
前記引張試験における前記試験片は、平面視で10mmの幅及び40mmの長さを有する長方形状であり、
前記引張試験におけるチャック間距離は、10mmであり、
前記引張試験における試験速度は、1000mm/分であり、
前記粘着力FBは、前記シール材から作製された試験片を試験板に貼り付けた状態で前記試験片の環境温度を100℃に7日間保った後に、日本産業規格(JIS) Z 0237:2022に準拠して前記試験片を試験板から剥がして測定される90°引き剥がし粘着力[N/20mm]である、
シール材を提供する。
【0119】
本発明の第2側面は、
前記表面部は、前記引張試験において、1.5[N/20mm]以上の平均変化率を有し、
前記平均変化率は、前記引張試験において、試験力比が40%から60%の区間におけるひずみの変化量に対する引張力F[N/20mm]の変化量の比であり、
前記試験力比は、前記引張試験における最大試験力F1[N]に対する試験力F2[N]の比であり、
前記引張力Fは、前記試験力F2[N]、前記試験片の断面積S1[mm2]、及び前記表面部の厚さtA[mm]によってF2・tA・20/S1と表される、
第1側面に係るシール材を提供する。
【0120】
本発明の第3側面は、
前記表面部は、前記引張試験において、1800%以下の特定ひずみを示し、
前記特定ひずみは、引張力F[N/20mm]をひずみの関数として表したグラフにおいて、第一直線と第二直線との交点に対応するひずみであり、
前記第一直線は、前記グラフにおけるひずみ比が20%及び30%である一対の点を通る直線であり、
前記第二直線は、前記グラフにおける前記ひずみ比が80%及び90%である一対の点を通る直線であり、
前記ひずみ比は、前記引張試験における前記破断ひずみに対する前記試験片のひずみの比であり、
前記引張力Fは、前記引張試験における試験力F2[N]、前記試験片の断面積S1[mm2]、及び前記表面部の厚さtA[mm]によってF2・tA・20/S1と表される、
第1側面又は第2側面に係るシール材を提供する。
【0121】
本発明の第4側面は、
前記シール材は、少なくとも2つの層を備えている、
第1側面~第3側面のいずれか1つに係るシール材を提供する。
【0122】
本発明の第5側面は、
前記シール材は、発泡体を備えている、
第1側面~第4側面のいずれか1つに係るシール材を提供する。
【0123】
本発明の第6側面は、
前記発泡体は、独立気泡構造を有する、
第5側面に係るシール材を提供する。
【0124】
本発明の第7側面は、
前記表面部は、フィラーを含有している、
第1側面~第6側面のいずれか1つに係るシール材を提供する。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】