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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095496
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】再生吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20240703BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240703BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240703BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20240703BHJP
【FI】
B01J20/34 G
B01J20/26 D
B09B3/70 ZAB
B09B101:67
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095750
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2022212137
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】504182314
【氏名又は名称】トータルケア・システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】小林 信弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】安村 宜之
【テーマコード(参考)】
4D004
4G066
【Fターム(参考)】
4D004AA06
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA06
4D004CA34
4D004CA40
4D004CA42
4D004CC03
4D004CC12
4D004DA03
4D004DA09
4D004DA20
4G066AA34D
4G066AA43D
4G066AC17B
4G066BA28
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA13
4G066EA05
4G066GA11
4G066GA31
4G066GA35
4G066GA37
(57)【要約】
【課題】使用後の吸水性樹脂から、使用前の吸水性樹脂により近い、吸水倍率等の吸水性能を備える再生吸水性樹脂を製造する。
【解決手段】使用済の吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を、酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程(5)と、を含む、再生吸水性樹脂の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、
前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、
前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、
前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む、再生吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
以下の式(1)にて表される洗浄度が10以上となるように、前記酸処理工程(2)、前記水洗浄工程(3)および前記中和工程(4)が実施される、請求項1に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
洗浄度={(水洗浄工程前の分散液のゲル濃度)/(酸処理工程中の分散液のゲル濃度)}×{(中和工程前の分散液のゲル濃度)/(水洗浄工程中の分散液のゲル濃度)} (1)
【請求項3】
前記再生吸水性樹脂の含水率が、5~30重量%である、請求項1または2に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記水洗浄工程(3)にて使用される前記水は、導電率が50mS/cm以下の水である、請求項1~3のいずれか1項に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、吸収性物品には、吸水性樹脂だけでなく、屎尿等の吸収を助ける目的で多量のパルプ成分も使用されている。現在、使用後の吸収性物品は、その殆どが焼却処理されている。しかしながら、資源保護や環境保護の観点からは、使用済の吸収性物品に含まれるパルプ成分および/または吸水性樹脂を分離回収して、再生パルプ成分および/または再生吸水性樹脂を製造し、これらを再利用することが望ましい。
【0003】
使用済の吸収性物品からパルプ成分および吸水性ポリマーを分離回収する既存の方法としては、例えば、特許文献1に記載された、使用済の吸収性物品(衛生用品)を離解して水に分散させる工程と、吸収性物品に含まれるパルプ成分(繊維)および吸水性ポリマー(吸水性樹脂)を分離回収する工程とを含む方法が知られている。
【0004】
一方、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂は、吸水性能が低下している。よって、上記吸水性樹脂を再生吸水性樹脂として再利用するためには、当該吸水性樹脂を、その吸収性能を回復して再生する必要がある。
【0005】
上記吸水性樹脂を再生し、再生吸水性樹脂を製造する従来の方法として、例えば、以下に示す方法を挙げることができる。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂の分散液に対して、遷移金属塩単独または遷移金属塩とアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩との混合物を添加する脱水処理工程、酸処理工程およびアルカリ処理工程を、この順で実施する方法(特許文献2)。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂に対して、当該吸水性樹脂のPHを変化させる操作、温度を変化させる操作及び親水性有機溶剤に接触させる操作から選択される、吸収した被吸収液を排出する環境に置く操作を実施する方法(特許文献3)。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂を多価金属塩水溶液で処理する工程、および、当該多価金属塩水溶液で処理された吸水性樹脂をアルカリ金属塩水溶液で処理する工程を含む方法(特許文献4)。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂を酸により不活性化する工程、当該酸により不活性化された吸水性樹脂に対してアルカリ金属イオン供給源を添加して、湿潤状態における高吸水性リサイクルポリマーを形成する工程、および、当該湿潤状態における高吸水性リサイクルポリマーを乾燥する工程を含む方法(特許文献5)。
【0006】
上に挙げた方法のうち、特に特許文献2に記載の方法は、特許文献1等に記載の既存の方法で運用されているシステムを流用できる可能性があり、早期の実用化が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-150976号公報
【特許文献2】特開2003-225645号公報
【特許文献3】特開2003-326161号公報
【特許文献4】特開2013-198862号公報
【特許文献5】特開2019-135046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の方法には、製造される再生吸水性樹脂の吸水倍率等の吸水性能の回復の面にて改善の余地がある。本発明の課題は、使用後の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、吸水倍率等の吸水性能がより回復しており、吸水倍率等の吸水性能の面において、使用前の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂により近い再生吸水性樹脂を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特許文献2に記載の方法において、上記酸処理工程と、上記アルカリ処理工程の間に、酸処理工程にて得られた吸水性樹脂を水洗浄する工程を備えることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の一形態は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む、再生吸水性樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、使用後の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、吸水倍率等の吸水性能がより回復した、吸水倍率等の吸水性能の面において、使用前の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂により近い再生吸水性樹脂を得ることができる、との効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法の一例を構成する各工程の態様を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法の2つの例のそれぞれにおける、酸処理工程中、水洗浄工程前、水洗浄工程中および中和工程前のゲル分散液の態様およびそれに基づく洗浄度の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0014】
〔1.用語の定義〕
[1-1.吸水性樹脂]
本明細書において「吸水性樹脂」とは、NWSP 241.0.R2(15)により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、かつ、NWSP 270.0.R2(15)により規定される水可溶成分(Ext)が70重量%以下である高分子ゲル化剤をいう。
【0015】
なお、「NWSP」は「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表す。NWSPは、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)とが、不織布及びその製品の評価法を米国および欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。特に断りのない限り、本明細書ではNWSPに準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0016】
本明細書において「吸水性樹脂」とは、全量(100重量%)が当該吸水性樹脂のみである態様に限定されず、添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、使用済の吸収性物品に含まれている態様の吸水性樹脂だけでなく、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法を構成する各工程に供される吸水性樹脂、すなわち、再生吸水性樹脂の製造方法における中間体を含んでも良く、当該製造方法にて得られる再生吸水性樹脂を含んでも良い。また、前記中間体である吸水性樹脂は、その内部に水が取り込まれた含水ゲルの状態となり得る。よって、前記吸水性樹脂は、含水ゲルの状態である吸水性樹脂を含んでも良い。前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含む。
【0017】
[1-2.使用済の吸収性物品]
本明細書において「吸収性物品」とは、吸水性樹脂を構成材料として含み、吸液性を備える物品を意味する。前記「吸収性物品」は、吸水性樹脂以外の構成材料として、一般に、パルプ、不織布、プラスチック等を含む。前記吸収性物品は、特に限定されず、例えば、紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等の衛生材料を挙げることができる。
【0018】
本明細書において「使用済の吸収性物品」とは、液体を吸収した状態の吸収性物品を意味する。前記液体としては、特に限定されず、例えば、屎尿、血液、汗等の体液、生理食塩水等を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、後述する破砕工程により破砕された使用済の吸収性物品もまた、「使用済の吸収性物品」に包含される。
【0020】
[1-3.その他]
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。「ポリ・・・系吸水性樹脂」とは、「・・・」に記載された単量体(モノマー)由来の構成単位(繰り返し単位)を有する高分子(ポリマー)を主成分とする吸水性樹脂を意味する。具体的には、総単量体(架橋剤を除く)に対する「・・・」に記載された単量体のモル比率が、好ましくは50~100モル%、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは90~100モル%、特に好ましくは実質100モル%の吸水性樹脂を意味する。ここで、前記「総単量体(架橋剤を除く)」は、吸水性樹脂の原料である全ての単量体(架橋剤を除く)のモル数を意味する。
【0021】
本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」又は「L」と表記する場合がある。
【0022】
〔2.再生吸水性樹脂の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む。
【0023】
以下、前記再生吸水性樹脂の製造方法を構成する各工程について詳述する。なお、以下の説明において、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法の一例を構成する各工程の態様を示す模式図である図1を適宜参照する。
【0024】
[2-1.脱水工程]
本発明の一実施形態における脱水工程(1)は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂を多価金属塩で処理する工程である。ここで、「多価金属塩で処理」とは、多価金属塩と接触させて、前記使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂に吸収された液体の少なくとも一部を排出(脱水)させることを意味する。
【0025】
前記脱水工程(1)において、前記多価金属塩で処理、すなわち多価金属塩と接触させる方法としては、例えば、使用済吸収性物品または使用済吸水性樹脂と、多価金属塩を含有する水溶液とを接触させる方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、使用済吸収性物品または使用済吸水性樹脂を、多価金属塩を含有する水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。また、使用済吸収性物品または使用済吸水性樹脂を、攪拌下にて、多価金属化合物を含む水溶液と接触させることが好ましい。
【0026】
前記脱水工程(1)に供される吸水性樹脂は、使用済の吸収性物品から予め分離された吸水性樹脂であっても良く、使用済の吸収性物品に含まれている態様の吸水性樹脂であっても良い。使用済の吸収性物品に含まれている態様の吸水性樹脂を前記脱水工程(1)に供するとは、使用済の吸収性物品、または後述の破砕工程により破砕された使用済の吸収性物品をそのまま前記脱水工程(1)に供することを意味する。その場合、その後、前記多価金属塩で処理された使用済の吸収性物品から吸水性樹脂を分離することにより、多価金属塩で処理された吸水性樹脂を得ることができる。また、使用済の吸収性物品から予め分離された吸水性樹脂は、例えば、後述の破砕工程および/または分離工程によって得られた吸水性樹脂であり得る。
【0027】
前述の使用済の吸収性物品から吸水性樹脂を分離する方法は、特に限定されず、既知の方法を使用することができる。上記既知の方法として、例えば、以下に示す破砕工程および/または分離工程を含む方法を挙げることができる。
【0028】
前記破砕工程は、使用済の吸収性物品を破砕する工程である。前述の破砕は、撹拌、切断、裁断、破砕等の物理的な力で行われる。前述の破砕は、使用済の吸収性物品を水中(水溶液中)に浸漬した状態で行われてもよい。また、後述する分離工程で吸水性樹脂の分離を容易にするため、前述の破砕は、前記使用済の吸収性物品を撹拌しながら当該吸収性物品を破砕してもよい。
【0029】
前記分離工程は、破砕された使用済の吸収性物品を、吸水性樹脂を含む各構成材料に分離して、少なくとも当該吸水性樹脂を回収する工程である。前記分離工程において、前記吸水性樹脂以外の各構成材料を回収してもよい。なお、前記分離工程にて回収される吸水性樹脂は、含水ゲルの状態の吸水性樹脂である。
【0030】
前述の各構成材料を分離させる方法としては、特に限定されず、例えば、スクリーンを使用して各構成材料を分離し回収する方法、水中に分散した状態の前記破砕した吸収性物品から、各々の構成材料の比重の違いを利用して、各構成材料を分離し回収する方法が挙げられる。また、例えば、前記破砕工程として水中で吸収性物品を破砕して、水中に分散した状態の前記の破砕した吸収性物品を調製すると同時に、前記分離工程を実施することも可能である。
【0031】
前記使用済の吸収性物品は、前記脱水工程(1)または当該脱水工程(1)の前に前記破砕工程を実施する場合の当該破砕工程の前に、洗浄および/または殺菌されていてもよい。前述の洗浄および/または殺菌は、高温高圧下の環境下に置くことにより、前記使用済の吸収性物品に含まれる有害菌を死滅させても良く、あるいは、薬剤を用いて当該有害菌を死滅させても良い。薬剤を使用する場合、その薬剤は所望の清浄さを得られる限り特に限定されない。前記薬剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素等の消毒薬を溶かした水溶液、並びに、オゾン水、並びに、過酸化水素水、並びに、電解水(酸性電解水)等を例示することができる。ここで、前記薬剤を使用して洗浄および/または殺菌を実施した場合、前記吸水性樹脂と前記薬剤とを含む溶液(分散液)を得ることができる。また、特に、オゾン水および/または過酸化水素水を使用して、前述の洗浄および/または殺菌を実施する場合は、前述の洗浄および/または殺菌を酸性条件下で実施することが好ましい。さらに、前述の洗浄および/または殺菌において、撹拌翼を有する槽内で実施すること、および/または、前記溶液を対流させたりして、前記吸収性物品と前記薬剤とを効率良く混合することが好ましい。
【0032】
前述の洗浄および/または殺菌の後は、前記液体から、例えば、ろ過操作等の公知の方法により、洗浄および/または殺菌された吸収性物品を分離する。分離された吸収性物品は、前記脱水工程(1)または当該脱水工程(1)の前に前記破砕工程を実施する場合の当該破砕工程に供することができる。
【0033】
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含む。前記重合体は、特に限定されず、例えば、橋かけポリ(メタ)アクリル酸塩系重合体、イソブチレン/マレイン酸塩系共重合体、デンプン/ポリアクリル酸塩系共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)/ポリアクリル酸塩系共重合体、デンプン/ポリアクリロニトリル共重合体(加水分解してニトリル基をカルボン酸塩にしている)、橋かけカルボキシメチルセルロース(セルロースにカルボキシメチル基を結合させたもの)等を挙げることができる。前記吸水性樹脂は、橋かけ構造を有する三次元架橋体であり得る。前記吸水性樹脂は、好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの三次元架橋体である。
【0034】
前記吸水性樹脂は、カルボキシル基(-C(=O)OH)および中和されたカルボキシル基(-C(=O)OとAからなる基、A:カチオン)を備える。ここで、前記A:カチオンは、1価のカチオンであり、例えば、ナトリウムイオン(Na)等のアルカリ金属イオンである。よって、前記吸水性樹脂は、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩で部分的に中和されたカルボキシル基を備える重合体であり得る。
【0035】
使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂(以下、「使用済の吸水性樹脂」と称する)は、液体(屎尿等)を吸収して膨潤状態となっている。ここで、「使用済の吸水性樹脂」は、脱水工程(1)に供される吸水性樹脂である。膨潤状態の吸水性樹脂は、解離したAが生じる浸透圧と解離したカルボキシル基(C(=O)O)の静電反発により液体(屎尿等)を吸収し、保持している。前記浸透圧は、吸水性樹脂内部のイオン濃度[A、C(=O)O-]が、吸水性樹脂の外部に存在する前記液体のイオン濃度より高いために、吸水性樹脂の内部と外部の濃度差を解消する方向に作用する。言い換えると、前記浸透圧は、外部の液体が吸水性樹脂の内部に入り込む、すなわち吸水性樹脂が外部の液体を吸収し、保持するように作用する。一方、前記静電反発は、吸水して膨潤状態となった吸水性樹脂内部において、解離したカルボキシル基同士が反発して、当該解離したカルボキシル基間の距離を広げる方向に作用する。よって、前記解離したカルボキシル基間に隙間が発生し、その隙間に外部の液体が入り込む。また、同時に、当該解離したカルボキシル基と外部の液体を構成する分子(例えば、水分子)との間に静電引力が生じ、当該外部の液体を構成する分子が当該隙間にトラップされる。従って、前記静電反発は、吸水性樹脂が、外部の液体を吸収し、保持するように作用する。その結果、当該液体は、前記「使用済の吸水性樹脂」に吸収されており、かつ、保持されている。ここで、膨潤状態の吸水性樹脂が、多価金属イオンと接触する場合、図1の「脱水工程」の前後の構造式に示すように、複数の解離したカルボキシル基同士の間が、多価金属イオン(例えば、Ca2+)を介してイオン架橋される。前記イオン架橋することにより、膨潤状態の吸水性樹脂は収縮し、その結果、当該膨潤状態の吸水性樹脂が吸収していた液体は放出される。従って、「使用済の吸水性樹脂」は、前記多価金属塩で処理される際に、多価金属イオンと接触し、その結果、吸収している液体を放出して脱水される。以下、前述の膨潤状態の吸水性樹脂が吸収していた液体を放出させる操作を、「脱水操作」と称する。
【0036】
前記多価金属塩としては、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等が使用できる。
【0037】
前記アルカリ土類金属塩としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの群より選択される1種以上の水溶性の塩が使用できる。好ましいアルカリ土類金属塩の例示物質としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられ、中でも塩化カルシウムがより好ましい。
【0038】
前記遷移金属塩としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の水溶性の塩が挙げられる。前記遷移金属塩としては、吸水性ポリマーに取り込まれるものであれば、無機酸塩、有機酸塩、錯体等を問わず用いられる。そのうち、費用や入手容易性等の点から、前記遷移金属塩としては、無機酸塩または有機酸塩が好ましい。前記無機酸塩としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩;塩化コバルト、硫酸コバルト、燐酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト塩;塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩;塩化銅、硫酸銅等の銅塩などが挙げられる。前記有機酸塩類としては、例えば、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等が挙げられる。
【0039】
前記多価金属塩の使用量は、前記使用済の吸水性樹脂1g(固形分)あたり、好ましくは4.5~17mmol、より好ましくは5.0~14mmol、さらに好ましくは5.5~12mmolである。前記多価金属塩の使用量が少な過ぎる場合、前記使用済の吸水性樹脂の脱水が不十分となるおそれがある。前記多価金属塩の使用量が多すぎる場合、多価金属イオンが使用済の吸水性樹脂に取り込まれないまま処理液中に残るので、多価金属塩の浪費につながり、処理費用が増大する。前記多価金属塩の使用量が前述の好ましい範囲内であることにより、前記使用済の吸水性樹脂を十分に脱水させ、かつ、処理費用が過剰に増大することを好適に防止できる。
【0040】
前記多価金属塩による処理における処理時間は、多価金属イオンが使用済の吸水性樹脂に取り込まれるのに十分な時間であれば特に限定されず、好ましくは5分~3時間、より好ましくは10分~2時間、さらに好ましくは15分~1時間である。前記多価金属塩による処理における処理時間が短すぎると、使用済の吸水性樹脂の脱水性が不十分となり、内部に液体成分が多く残ってしまう。前記多価金属塩による処理における処理時間が長すぎると、使用済の吸水性樹脂に取り込まれる多価金属イオンの量は飽和するので、その値を超える処理時間は経済的に好ましくない。前記多価金属塩による処理における処理時間は、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂が、後述の、脱水工程(1)における分散液から取り出された状態である場合、使用済の吸収性物品または使用済の吸水性樹脂に対して多価金属塩の添加を開始した時点から、多価金属塩で処理された吸水性樹脂を取り出す操作を行うまでの時間を意味する。また、前記多価金属塩による処理における処理時間は、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂が、後述の脱水工程(1)における分散液中に存在したままの状態である場合、当該脱水工程(1)における分散液を酸処理工程(2)に供するまでの時間を意味する。
【0041】
前記多価金属塩による処理における反応温度は、多価金属イオンが使用済の吸水性樹脂に取り込まれる温度であれば特に限定されない。前記多価金属塩による処理における反応温度は、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~60℃、さらに好ましくは15~40℃である。前記反応温度は、前記多価金属塩と、前記使用済の吸収性物品または使用済の吸水性樹脂とを含む混合物、例えば水溶液の温度を意味する。
【0042】
前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂は、脱水された水等の液体を含む分散液(以下、「脱水工程(1)における分散液」と称する)中に存在する状態となる。前記脱水工程(1)にて得られる前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂は、脱水工程(1)における分散液中に存在したままの状態でもあり得る。また、前記脱水工程(1)にて得られる前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂は、前記脱水工程(1)における分散液から取り出された状態であり得る。ここで、使用済の吸収性物品に対して、前記脱水操作を行った場合には、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂を取り出す操作としては、例えば、前述の分離操作または破砕操作と分離操作を使用することができる。また、使用済の吸水性樹脂に対して、前記脱水操作を行った場合には、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂を取り出す操作としては、例えば、ろ過操作等の公知の方法を使用することができる。
【0043】
[2-2.酸処理工程]
本発明の一実施形態における酸処理工程(2)は、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する工程である。ここで、前記「酸性物質で処理する」とは、通常、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液を、前記酸性物質と接触させて酸処理することを意味する。
【0044】
前記酸処理工程(2)において、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂に対して分散溶媒を添加して分散液(以下、「酸処理工程(2)における分散液」とも称する)を調製した後、当該酸処理工程(2)における分散液に対して酸性物質を添加することにより、前記酸処理工程(2)における分散液中の前記吸水性樹脂を、前記酸性物質と接触させ、当該酸性物質で酸処理してもよい。また、前記酸処理工程(2)における分散液の調製と前記酸性物質の添加を同時に行うことにより、前記酸処理工程(2)における分散液中の前記吸水性樹脂を、前記酸性物質と接触させ、当該酸性物質で酸処理してもよい。前記酸処理工程(2)における分散液の調製と前記酸性物質の添加を同時に行うとは、当該酸性物質を含む溶液に前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を添加して、前記酸処理工程(2)における分散液を調製すると共に、当該酸処理工程(2)における分散液中の前記吸水性樹脂と前記酸性物質とを接触させることを意味する。前記分散溶媒および前記酸性物質を含む溶液における溶媒は、前記酸処理工程(2)における分散液を調製することができる溶媒であれば特に限定されず、例えば、水を使用することができる。
【0045】
なお、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂が、前記脱水工程(1)における分散液中に存在したままの状態である場合、当該脱水工程(1)における分散液に対して、前記酸性物質を添加することにより、前記脱水工程(1)における分散液中の前記吸水性樹脂を、前記酸性物質と接触させ、当該酸性物質で処理してもよい。
【0046】
前記酸処理工程(2)においては、前記酸性物質を含む溶液を攪拌させながら、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を添加して、当該酸性物質と当該多価金属塩で処理された吸水性樹脂とを接触させることがより好ましい。
【0047】
前記酸処理工程(2)において、図1の「酸処理工程」の前後の構造式に示すように、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質(例えば、塩酸)で処理することにより、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂中の解離したカルボキシル基(C(=O)O)と、前記多価金属イオン(例えば、Ca2+)との結合を解離させる。その結果、前記多価金属イオンが当該多価金属塩で処理された吸水性樹脂から離脱し、遊離酸状態のカルボキシル基(C(=O)OH)を有する吸水性樹脂が得られる。
【0048】
前記酸性物質としては、特に限定されず、例えば、無機酸および/または有機酸が使用できる。
【0049】
前記無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸が挙げられる。前記無機酸としては、1種類の無機酸を用いても良いし、2種以上の無機酸からなる混合物を用いても良い。また、前記無機酸と後述する有機酸とを併用してもよい。前記有機酸としては、酸基、例えば、カルボキシル基、スルホ基等を有する有機物が挙げられる。具体的な前記有機酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、ペンタン酸、ブタン酸、プロピオン酸、グリコール酸、酢酸、蟻酸、スルホン酸等が挙げられる。前記スルホン酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0050】
前記酸性物質は、当該酸性物質を添加した後の前記分散液(以下、「反応液」とも称する)のpHが、好ましくは-1.00~3.0、より好ましくは0~2.8、さらに好ましくは0.5~2.5となるように、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂に添加される。ここで、前記反応液のpHは、前記酸性物質の添加量を調節することによって制御することができる。よって、前記酸処理工程(2)においては、前記反応液のpHが前述の好ましい範囲内となるような量の前記酸性物質を、前記酸処理工程(2)における分散液に対して添加することが好ましい。
【0051】
前記反応液のpHが小さいことは、当該反応液中に存在するプロトン(H)の濃度が大きいことを意味する。ここで、前述の解離の反応は、(COO)X+nH⇔nCOOH+Xn+(式中:Xは多価金属を意味し、nは、当該多価金属の価数を表す)の反応式で表される可逆反応である。前記反応液のpHが小さい場合、前記反応式における平衡が右側、すなわち解離側に偏り、前記反応液中に存在する遊離酸状態のカルボキシル基(-COOH)の量が多くなる。なお、前記解離の反応式における平衡は、言い換えると、カルボキシル基と多価金属イオンとの結合の平衡である。
【0052】
前記遊離酸状態のカルボキシル基は、後述の中和工程により、特定の中和率にて中和される。中和されたカルボキシル基は、屎尿等の液体を吸収する機能を有する。一方、多価金属イオンと結合してイオン架橋された状態のカルボキシル基は、前記中和工程を経た場合であっても、前記液体を吸収する機能を有さない。よって、前述の結合の解離が不十分である場合、後述の乾燥工程にて得られる再生吸水性樹脂の吸水性能の回復が不十分となり、当該再生吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがある。
【0053】
前記反応液のpHが、前述の範囲の上限値以下である場合、カルボキシル基と多価金属イオンとの結合の平衡が大きく解離側に偏るため、前述の結合の解離が十分に進行していることを意味する。よって、前記反応液のpHが、前述の範囲の上限値以下であることにより、前記再生吸水性樹脂における吸水性能の回復が十分であり、当該再生吸水性樹脂の吸水性能を好適に向上させることができる。また、前記反応液のpHが前述の範囲の下限値以上であることは、必要以上の酸性物質を使用することによるコストの過剰な増大を防止することができ、経済的に好ましい。
【0054】
前記反応液のpHの測定方法は、特に限定されず、例えば、市販のpH試験紙および/または市販のpHメーター等を使用して測定することができる。
【0055】
前記酸性物質による処理における反応温度は、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂のカルボキシル基と、多価金属イオンとの結合を解離できる温度であれば特に限定されない。前記酸性物質による処理における反応温度は、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは15~60℃である。前記酸性物質による処理における反応温度は、酸処理工程(2)における分散液の、酸性物質を添加する直前および添加後の温度(もしくは、酸性物質を添加する直前から酸処理工程の終了時までの間の温度)を意味する。
【0056】
前記酸処理工程(2)にて得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂は、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液中に存在したままの状態であってもよい。また、前記酸処理工程(2)にて得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂は、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液から取り出された状態であってもよい。この取り出された状態とは、後述する前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液に対して、分散溶媒の大部分を除去する操作を行った後の状態といえる。ここで、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を取り出す操作としては、特に限定されず、例えば、ろ過操作、遠心分離等の慣用の固液分離手段を使用することができる。前記ろ過操作の具体例としては、例えば、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液を100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を挙げることができる。
【0057】
なお、前記酸性物質による処理が終了した直後の酸処理工程(2)における分散液に含まれる不溶成分(ゲル)の濃度を、後述の洗浄度の算出における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」とする。また、後述の洗浄度を大きくするとの観点から、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液に対して、分散溶媒の少なくとも一部を除去する操作を行うことが好ましい。図1の酸処理工程に示すように、前記分散溶媒の少なくとも一部を除去する操作を行うことにより、前記酸性物質による処理により解離した多価金属イオン(例えば、Ca2+)が、除去された分散溶媒、すなわち排水と共に除去される。さらに、同様の観点から、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液に対して、分散溶媒の大部分を除去する操作、すなわち、ろ過操作、遠心分離等を行うことにより、前述の酸性物質で処理された吸水性樹脂を取り出す操作を行うことが特に好ましい。前記分散溶媒の少なくとも一部、または大部分を除去する方法としては、特に限定されず、例えば、デカンデーション、ろ過操作、遠心分離等の慣用の固液分離手段を使用することができる。なお、前記の酸性物質による処理が終了した直後とは、これら分散溶媒の除去操作を行う以前の段階であり、かつ該処理が終了した後のタイミングである。また、本明細書において、「分散溶媒の大部分を除去する」とは、通常、分散溶媒を除去して得られる吸水性樹脂の表面上に当該分散溶媒が目視で確認できない程度に除去することを意味する。なお、本発明における分散溶媒の少なくとも一部を除去する操作および分散溶媒の大部分を除去する操作は、分散溶媒と共に、当該分散溶媒に含まれる前記多価金属イオンを除去する操作である。ここで、一般に、分散溶媒の少なくとも一部または大部分を除去する方法の1つとしては、分散溶媒を蒸発させ、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液を蒸発乾固させる方法が考えられる。しかしながら、前述の分散溶媒を蒸発させる操作を実施した場合、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液において、前記多価金属イオンが濃縮され、かえって、後述の洗浄度は低下する。従って、前記分散溶媒の少なくとも一部を除去する操作および前記分散溶媒の大部分を除去する操作として、上述のデカンテーション等の液液分離操作および上述のろ過操作等の固液分離操作のような、分散溶媒を液体の状態で除去する操作を採用することが、多価金属イオンの除去の面から好ましい。
【0058】
前記再生吸水性樹脂の製造方法において、前述のとおり、前記酸性物質による処理が終了した後から後述の水洗浄工程(3)の直前までに、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂における可溶成分を除去する操作が実施され得る。ここで、前記可溶成分は、例えば、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の内部に取り込まれている(あるいは付随している)、前記分散溶媒に溶解している物質(イオン)等を挙げることができる。前記分散溶媒に溶解している物質(イオン)は、例えば、前記多価金属イオンである。前記分散溶媒に溶解している物質(イオン)等は、前記分散溶媒に溶解している溶液の状態にて除去され得る。前記可溶成分を除去する操作としては、公知の方法を採用することができ、例えば、デカンデーションおよび/またはろ過操作、遠心分離、ベルト濃縮等の方法を採用することができる。前記可溶成分を除去する操作を行うことによって、後述の洗浄度をさらに大きくすることができる。また、前記可溶成分には、前記多価金属イオンが含まれているため、前記可溶成分を除去する操作を行うことによって、残留している多価金属イオンの量がさらに減少した再生吸水性樹脂を製造することができる。なお、前記可溶成分を除去する操作と、前記分散溶媒の少なくとも一部を除去する操作および分散溶媒の大部分を除去する操作とは、例えば、デカンデーション、ろ過操作、遠心分離等の共通する方法で実施され得る。前記共通する方法で前記可溶成分を除去する操作が実施される場合、前記分散溶媒の少なくとも一部または大部分が除去されると共に、前記可溶成分が除去される。よって、前記共通する方法で前記可溶成分を除去する操作が実施される場合には、前記再生吸水性樹脂の製造方法において、前記分散溶媒の少なくとも一部を除去する操作または分散溶媒の大部分を除去する操作、および、前記可溶成分を除去する操作の双方の操作が実施されるとみなされる。
【0059】
前記分散溶媒の一部を除去する操作を行わず、かつ、前記可溶成分を除去する操作を行わない場合、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液がそのまま後述の水洗浄工程(3)に供される。前記分散溶媒の少なくとも一部を除去する操作を行う場合、当該分散溶媒の一部を除去する操作および前記可溶成分を除去する操作を行った後の分散液または当該分散溶媒の大部分を除去する操作および前記可溶成分を除去する操作を行うことにより得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂(分散溶媒を除去しているものの乾燥させていないため分散溶媒を含んでいる樹脂;ゲル状樹脂)が、後述の水洗浄工程(3)に供される。ここで、前記水洗浄工程(3)に供される、分散液または酸性物質で処理された吸水性樹脂が、前記水洗浄工程(3)における水と接触する直前のゲル分散液に該当する。よって、前記水洗浄工程(3)に供される、前記分散液または前記酸性物質で処理された吸水性樹脂における不溶成分濃度を、後述の洗浄度の算出における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」とする。
【0060】
[2-3.水洗浄工程]
本発明の一実施形態における水洗浄工程(3)は、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する工程である。
【0061】
前記水洗浄工程(3)は、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄することにより、当該前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の表面、当該吸水性樹脂の内部および/または当該吸水性樹脂の粒子間における隙間に存在する多価金属イオンを洗い流す工程である。
【0062】
前記再生吸水性樹脂に、前記多価金属イオンが残留している場合、当該再生吸水性樹脂の吸水倍率(例えば、無加圧吸水倍率(CRC))等の吸水性能が低下する恐れがある。よって、前記水洗浄工程(3)を実施することにより、前記再生吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンを除去するか、あるいは、その含有量を低減することができる。その結果、再生吸水性樹脂の吸水倍率等の吸水性能を向上させることができる。従って、本願発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法は、前記水洗浄工程(3)を備えることによって、前記使用済の吸水性樹脂から、吸水倍率等の吸水性能がより回復した、使用前の吸水性樹脂により近い吸水性能を備える再生吸水性樹脂を得ることができるとの効果を奏する。
【0063】
また、前記再生吸水性樹脂は、前記多価金属イオンが残留していることにより、吸水速度が低下する場合がある。よって、前記水洗浄工程(3)を実施することにより、前記再生吸水性樹脂の吸水速度をより向上させることができる場合がある。従って、本願発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法は、前記水洗浄工程(3)を備えることによって、前記使用済の吸水性樹脂から、吸水速度がより回復した、使用前の吸水性樹脂により近い吸水速度を備える再生吸水性樹脂を得ることができるとの効果を併せて奏する場合がある。なお、吸水速度は、例えば、本願の実施例で測定される「vortex」を用いて表される。
【0064】
前記水洗浄工程(3)における、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する操作(以下、「洗浄操作」と称する)は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。前記洗浄操作は、バッチ攪拌および/または連続かけ洗い等の様々な態様の洗浄操作であり得る。具体的には、前記洗浄操作として、例えば、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を、水中に浸漬して撹拌する操作、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂に対して、水の噴射またはシャワーなどを用いてかけ洗いを行う操作等を挙げることができる。また、前記洗浄操作は繰り返し行っても良い。前記洗浄操作を繰り返し行うことにより、洗浄効果が高くなり、より多量の前記多価金属イオンを前記酸性物質で処理された吸水性樹脂から除去することができる。
【0065】
前記洗浄操作に使用する水(洗浄水)の種類は、特に限定されず、例えば、脱イオン水、水道水、蒸留水などが使用できる。また、前記洗浄水は、導電率が低い水であることが好ましい。前記洗浄水の導電率は、当該洗浄水に含まれるイオン濃度に依存する。具体的には、前記洗浄水は、前記イオン濃度が低いほど、その導電率が低下する。ここで、導電率が低い、すなわちイオン濃度が低い水は、より多くの前記多価金属イオン等のイオンを取り込むことができる。よって、前記洗浄水として、導電率が低い水を使用することにより、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂から、前記酸処理工程(1)にて遊離した前記多価金属イオンをより効率的に除去することができる。前述の観点からは、前記洗浄水の導電率は、低ければ低いほうがよく、具体的には、50mS/cm以下であることが好ましく、25mS/cm以下であることがより好ましく、20mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0066】
自然界に存在する水は、通常、所定の量のイオンが溶け込んでおり、前述の好ましい上限値よりも高い導電率を備える。前記導電率が前述の好ましい上限値以下である洗浄水は、前記自然界に存在する水に対して、公知の精製方法を用いて、そのイオン濃度を低減させることにより、調製され得る。ここで、導電率がより低い洗浄水を調製するためには、前記精製方法における精製を繰り返して行う等の操作を行う必要があり、当該精製方法におけるコストが高くなり、その結果、前記再生吸水性樹脂の製造方法全体のコストが増大する。前記コストが過剰に増大することを防止するとの観点から、前記洗浄水の導電率は、0.01mS/cm以上であることが好ましく、0.05mS/cm以上であることがより好ましく、0.1mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0067】
洗浄操作時の温度としては、室温から100℃までの高温を適用することができる。ここで、洗浄操作時の温度とは、前記洗浄水の温度を意味する。また、前記洗浄操作において、洗浄水として高温のスチームを使用することもできる。前記洗浄操作時の温度は、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~60℃、さらに好ましくは15~40℃である。洗浄操作において、高温の洗浄水または高温のスチームを使用する場合には、洗浄効果だけでなく殺菌効果も期待できる。
【0068】
洗浄操作における処理時間は、10秒~30分であることが好ましく、30秒~25分であることがより好ましく、60秒~20分であることがさらに好ましい。前記洗浄操作における処理時間が短すぎると、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂からの前記多価金属イオンの除去が不十分となる恐れがある。前記洗浄操作における処理時間が長すぎると、前記洗浄水に取り込まれる前記多価金属イオンの量が飽和するので、経済的に好ましくない。よって、前記洗浄操作における処理時間が前述の好ましい範囲内であることによって、前記水洗浄工程(3)において、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂から、十分な量の前記多価金属イオンを効率的に除去することができる。
【0069】
前記洗浄操作後の吸水性樹脂は、前記洗浄水を含む分散液(以下、「水洗浄工程(3)における分散液」と称する)中に存在する状態となる。前記水洗浄工程(3)において、水洗浄工程(3)における分散液から分散溶媒である水(洗浄水)を除去する操作を行う。この際、図1の水洗浄工程に示すように、系中に残留している前記多価金属塩が、除去された水と共に除去される。前記水洗浄工程(3)における分散液から水(洗浄水)を除去する操作としては、特に限定されない。前記水で洗浄された吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量を減少させるとの観点からは、前記水洗浄工程(3)における分散液から水を可能な限り除去することが好ましい。前記水を除去する操作としては、例えば、ろ過操作、遠心分離等の慣用の固液分離手段を適用することができる。前記水を除去する操作の具体例としては、例えば、前記水洗浄工程(3)における分散液を100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を挙げることができる。
【0070】
なお、前記水洗浄工程(3)における洗浄操作後の分散液に含まれる不溶成分(ゲル)の濃度を、後述の洗浄度の算出における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」とする。また、前記再生吸水性樹脂の製造方法において、前記水による処理が終了した後から後述の中和工程(4)の直前までに、当該分散溶媒(水、洗浄水)の一部を除去する操作および前記可溶成分を除去する操作を行った後の分散液、若しくは、当該分散溶媒を大部分除去する操作および前記可溶成分を除去する操作が実施され得る。なお、前記の洗浄操作後とは、これら分散溶媒の除去操作を行う以前の段階であり、かつ洗浄操作が終了した後のタイミングである。
【0071】
水洗浄工程(3)における洗浄操作後の分散液を対象として、例えば、デカンデーション、スクリーン等を用いたろ過操作、遠心分離等を用いて水(洗浄水)を除去する操作および前記可溶成分を除去する操作を行うことにより得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂(水が除去されたものの乾燥していないために水を含んでいる樹脂;ゲル状の樹脂)が、後述の中和工程(4)に供される。ここで、前記中和工程(4)に供される前記水で洗浄された吸水性樹脂が、前記中和工程(4)におけるアルカリ金属塩と接触する直前のゲル分散液に該当する。よって、前記中和工程(4)に供される前記水で洗浄された吸水性樹脂における不溶成分濃度を、後述の洗浄度の算出における「中和工程前の分散液のゲル濃度」とする。
【0072】
[2-4.中和工程]
本発明の一実施形態における中和工程(4)は、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する工程である。
【0073】
前記中和工程(4)は、前記水で洗浄された吸水性樹脂に対して、アルカリ金属塩を添加する等により、前記水で洗浄された吸水性樹脂とアルカリ金属塩と接触させる工程である。前記中和工程(4)において、図1の「中和工程」の前後の構造式に示すように、前記水で洗浄された吸水性樹脂における一部の遊離酸状態のカルボキシル基が、前記アルカリ金属塩に由来するアルカリ金属イオンにより中和される。より詳細には、前記一部の遊離酸状態のカルボキシル基におけるプロトンが前記アルカリ金属イオンにより置換される。前述のとおり、アルカリ金属イオンにより中和されたカルボキシル基は、液体(屎尿等)を吸収する機能を備える。よって、前記中和工程(4)において、前記遊離酸状態のカルボキシル基の一部が中和されることにより、前記水で洗浄された吸水性樹脂の吸水性能を回復することができる。
【0074】
前記アルカリ金属塩としては、特に限定されず、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等を挙げることができる。前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの群から少なくとも1つ選択され得る。前記アルカリ金属塩は、1種類であっても良く、複数の種類のアルカリ金属塩の混合物であっても良い。前記アルカリ金属塩を添加する方法としては、アルカリ金属塩と水と混和して調製されるアルカリ金属塩の水溶液としてアルカリ金属塩を添加する方法であっても良く、単体として粉末状または顆粒状のアルカリ金属塩を添加する方法であっても良い。
【0075】
前記アルカリ金属塩の添加量は、前記水で洗浄された吸水性樹脂1g(固形分)あたり、好ましくは7~14mmol、より好ましくは8~13mmol、さらに好ましくは9~12mmolである。ここで、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂における、全カルボキシル基の数に対する中和されたカルボキシル基の数の割合(中和率)が、十分に高い、具体的には、70%程度である場合に、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂から得られる再生吸水性樹脂は、十分な吸水性能を備えることが知られている。前記アルカリ金属塩の添加量が前述の好ましい下限値以上であることにより、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂における中和率が70%程度となり、その結果、十分な吸水性能を備える再生吸水性樹脂を得ることができる。
【0076】
一方、得られる再生吸水性樹脂は、再生吸水性樹脂を取り扱う際の安全性の観点から、強アルカリ性となることを回避することが望ましい。前記アルカリ金属塩の添加量が前述の好ましい上限値以下であることによって、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂が強アルカリ性となることを回避することができる。その結果、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂から得られる再生吸水性樹脂が強アルカリ性となることを回避することができる。
【0077】
前記アルカリ金属塩による中和における処理時間は、前記水で洗浄された吸水性樹脂において、一部の遊離酸状態のカルボキシル基が当該アルカリ金属イオンにより中和されるために十分な時間であれば特に限定されない。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間は、好ましくは5分~2時間、より好ましくは10分~1時間、さらに好ましくは15分~45分である。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間が短すぎる場合、前記中和が不十分となり、得られる再生吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがある。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間が長すぎる場合、前記アルカリ金属塩を必要以上に使用することとなり、経済的に好ましくない。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間とは、前記水で洗浄された吸水性樹脂に対して、前記アルカリ金属塩の添加を開始した時点から、後述の乾燥工程に、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を供し、当該乾燥工程を開始するまでの時間を意味する。
【0078】
前記アルカリ金属塩による中和における反応温度は、前記水で洗浄された吸水性樹脂において、一部の遊離酸状態のカルボキシル基が当該アルカリ金属イオンにより中和されるために十分な温度であれば特に限定されない。前記アルカリ金属塩による中和における反応温度は、好ましくは5~90℃、より好ましくは10~80℃、さらに好ましくは15~70℃である。なお、アルカリ金属塩は、水溶液または粉末の形態として添加することができ、その結果、中和物は、分散液または含水ゲルの状態で得られる。前記アルカリ金属塩による中和における反応温度は、当該分散液または当該含水ゲルの温度を意味する。
【0079】
<洗浄度>
前記再生吸水性樹脂の製造方法において、以下の式(1)にて表される洗浄度が10以上となるように、前期酸処理工程(2)、前記水洗浄工程(3)および中和工程(4)が実施されることが好ましい。
洗浄度={(水洗浄工程前の分散液のゲル濃度)/(酸処理工程中の分散液のゲル濃度)}×{(中和工程前の分散液のゲル濃度)/(水洗浄工程中の分散液のゲル濃度)} (1)
前記式(1)において、「ゲル濃度」とは、各工程中や工程前での分散液中の不溶成分(ゲル)の濃度を示し、不溶成分とは、前記分散液中に存在する水に不溶な成分であり、例えば、吸水性樹脂である。以下、前記ゲルを含む分散液を、ゲル分散液とも称する。例えば、前記ゲル分散液が、吸水性樹脂である場合には、当該吸水性樹脂、すなわち当該ゲル分散液の大部分が前記不溶成分となる。
【0080】
前記ゲル濃度は、以下の式(2)で定義される。
【0081】
(ゲル濃度)=(ゲル分散液中の不溶成分重量)[g]/(ゲル分散液全体の重量)[g] (2)
ここで、前記ゲル分散液が、吸水性樹脂を含む分散液の形態である場合、当該ゲル分散液における不溶成分は、当該分散液を100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作により得られる吸水性樹脂である。また、前記ゲル分散液が、吸水性樹脂の形態である場合でも、100メッシュ金網に乗せて1分間放置する操作により得られる吸水性樹脂である(吸水性樹脂から滲み出る分散液を除くために行う)。具体的には、例えば、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂が、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液から取り出された状態である場合、得られる当該酸性物質で処理された吸水性樹脂を100メッシュ金網に乗せて1分間放置後、金網上にある吸水性樹脂の重量を前記不溶成分の重量として、前記「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」の算出を行う。同様に、前記水洗浄工程(3)にて得られる前記水で洗浄され分散液から取り出された吸水性樹脂の重量を100メッシュ金網に乗せて1分間放置後、金網上にある吸水性樹脂の重量を前記不溶成分の重量として、前記「中和工程前の分散液のゲル濃度」の算出を行う。一方、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂が、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液中に存在する状態の場合には、当該分散液を100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作により得られる吸水性樹脂の重量を、前記不溶成分の重量と仮定して、前記「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の算出を行う。
【0082】
前記式(1)における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」は、前記酸処理工程(2)における分散液全体の重量に対する不溶成分の重量の割合である。前記式(1)における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、前記水洗浄工程(3)に供される、前記分散液または前記酸性物質で処理された吸水性樹脂全体の重量に対する不溶成分の重量の割合である。前記式(1)における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」は、前記水洗浄工程(3)における分散液全体の重量に対する不溶成分の重量である。前記式(1)における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、前記中和工程(4)に供される前記水で洗浄された吸水性樹脂を含有する分散液全体の重量に対する不溶成分の重量の割合である。
【0083】
前記洗浄度とは、前記酸処理工程(2)における前記酸性物質による処理が終了した直後から前記中和工程(4)が開始する直前までの期間に、分散溶媒および可溶成分がゲル分散液から除去される量と相関する。なお、分散溶媒および可溶成分がゲル分散液から除去される量とは、例えば、ゲル分散液から可溶成分を含む分散溶媒が除去される場合には、当該可溶成分を含む分散溶媒の重量を意味する。ここで、前記酸性物質による処理により解離した前記多価金属イオンが、前記分散溶媒に含まれる。よって、前記洗浄度は、前記期間において、ゲル分散液から除去された前記多価金属イオンの量を表すパラメータである。従って、前記洗浄度が高いほど、得られる再生吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンが少なくなる。その結果、前記再生吸水性樹脂の吸水性能、特に吸水速度がより向上する。それゆえに、前記再生吸水性樹脂の吸水性能、特に吸水速度をより向上させるとの観点からは、前記洗浄度は高ければ高いほど好ましい。
【0084】
ここで、前述の事項を、図2を参照して具体的に説明する。図2には、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法の2つの例のそれぞれにおける、酸処理工程中、水洗浄工程前、水洗浄工程中および中和工程前のゲル分散液の態様と、それに基づく洗浄度の算出方法が示されている。ここで、図2に記載の菱形は、各工程における前記ゲル分散液に含まれる多価金属塩イオンを表す。図2の上側に示される方法においては、酸処理工程中の分散液のゲル濃度は10%(0.1)であり、溶媒(分散溶媒)を除去することにより、水洗浄工程前の分散液のゲル濃度は20%(0.2)となっており、その後、洗浄水を添加することにより、水洗浄工程中の分散液のゲル濃度は5%(0.05)となり、続いて、溶媒(分散溶媒)を除去することにより、中和工程前の分散液のゲル濃度は20%(0.2)となっている。図2の右上の式に示すとおり、図2の上側に示される方法における前記洗浄度は8である。一方、図2の下側に示される方法においては、酸処理工程中のゲル分散液に対して、分散溶媒を除去する操作を行っておらず、水洗浄工程前の分散液のゲル濃度が10%(0.1)と、酸処理工程中の分散液のゲル濃度から変化していないこと以外は、図2の上側に示される方法と同一である。図2の右下の式に示すとおり、図2の上側に示される方法における前記洗浄度は4である。すなわち、図2の上側に示される方法:図2の下側に示される方法における、洗浄度の割合は、8:4=2:1である。また、図2に示すとおり、中和工程前のゲル分散液に含まれる多価金属イオンの量、すなわち前記菱形の数は、図2の上側に示される方法:図2の下側に示される方法=1:2となっている。よって、理論的には、洗浄度をn倍とした場合、中和工程前のゲル分散液に含まれる多価金属イオンの量、すなわち再生吸水性樹脂に残留する多価金属イオンの量は、nの逆数の1/n倍となると考えられる。以上のことからも、前記洗浄度が高いほど、得られる再生吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンが少なくなることが理解できる。
【0085】
具体的には、前記洗浄度は、好ましくは10以上であり、より好ましくは11以上であり、さらに好ましくは12以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、200以上である。また、前記洗浄度は、前記酸処理工程(2)および/または前記水洗浄工程(3)において使用される分散溶媒(例えば、洗浄水等)の使用量を多くした上で、分散溶媒および/または洗浄水をより多く除去することによって、高くすることができる。ここで、前記洗浄度を過剰に高くする場合、前記分散溶媒の使用量を過剰に多くする必要があり、コストが過剰に増大する。前記コストの過剰な増大を防止するとの観点からは、前記洗浄度は、好ましくは500以下であり、より好ましくは300以下であり、さらに好ましくは250以下である。また、前記コストの過剰な増大を防止するとの観点からは、前記洗浄度は、200以下であってもよい。
【0086】
なお、水洗浄工程(3)と中和工程(4)の間に、前述の吸水性樹脂水分散液(例えば、前記水洗浄工程(3)における分散液および/または前記中和工程(4)に供される前記水で洗浄された吸水性樹脂を含有する分散液、等)の固形分濃度増加を図るための濃縮工程を含んでいても良い。濃縮方法については特に限定されない。前記濃縮方法としては、例えば、ウエッジワイヤースクリーンのように通水が可能な固液分離機構を用い、前記吸水性樹脂水分散液の濃度増加が行えるものが好ましい。この濃縮工程を行うことで、中和工程(4)および/または乾燥工程(5)における処理効率および/または乾燥効率を向上させることが可能となる。
【0087】
[2-5.乾燥工程]
本発明の一実施形態における乾燥工程(5)は、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る工程である。
【0088】
前記乾燥工程(5)は、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を所望する含水率まで乾燥させて乾燥重合体である再生吸水性樹脂を得る工程である。前記含水率は、乾燥減量から算出される。前記乾燥減量とは、吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱する乾燥操作を行った際の重量変化を重量%で表した値である。具体的には、前記含水率は、以下の式(3)にて表される。
含水率[重量%]=[1-{(乾燥操作後の吸水性樹脂の重量[g])/(乾燥操作前の吸水性樹脂の重量[g])}]×100 (3)
前記式(3)にて、前記乾燥減量(重量%)は、{(乾燥操作後の吸水性樹脂の重量[g])/(乾燥操作前の吸水性樹脂の重量[g])}×100にて算出される。よって、前記含水率(重量%)は、100から前記乾燥減量を引いた値である。
【0089】
前記再生吸水性樹脂の含水率は、好ましくは5~30重量%、より好ましくは7~25重量%、更に好ましくは10~25重量%である。
【0090】
前記含水率が5重量%以上である前記再生吸水性樹脂は、含水率が5重量%未満の前記再生吸水性樹脂と比較して、吸水速度がさらに向上する。前述の含水率が特定の値以上であることにより、吸水性樹脂の吸水速度がさらに向上するとの効果は、使用前の吸水性樹脂と比較して、前記再生吸水性樹脂において顕著に現れる効果である。また、前記含水率が30重量%以下であることによって、前記再生吸水性樹脂に吸収され得る水、屎尿等の液体の量が増大し、吸水倍率がより向上する。
【0091】
前記再生吸水性樹脂の含水率は、具体的には、EDANA法(ERT430.2-02)の試料量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更した方法にて測定される。
【0092】
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させる方法は、特に限定されず、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥等が挙げられる。
【0093】
前記乾燥工程(5)における乾燥温度は、得られる再生吸水性樹脂の色調および乾燥効率の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは150~200℃である。
【0094】
ここで、例えば、熱風乾燥を採用して前記乾燥工程(5)を実施する場合には、前記乾燥温度は、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂に対して吹き付ける熱風の温度を意味する。また、上に挙げた乾燥させる方法のうち、熱風乾燥以外の方法を採用する場合には、前記乾燥温度は、加熱装置内部の温度を意味する。
【0095】
前記乾燥工程(5)における乾燥時間は、5分~120分であることが好ましく、10分~90分であることがより好ましく、15分~60分であることがさらに好ましい。前述の好ましい範囲内の乾燥温度にて、前述の好ましい乾燥時間かけて、前記中和された吸水性樹脂を乾燥させることにより、前述の好ましい範囲内の乾燥減量を好適に得ることができる。その結果、好ましい範囲の含水率を備える再生吸水性樹脂を好適に得ることができる。
【0096】
前記乾燥工程(5)において、再生吸水性樹脂を得る方法としては、前述の乾燥処理の結果得られる乾燥物をそのまま再生吸水性樹脂として回収する方法を挙げることができる。また、前記再生吸水性樹脂を得る別の方法としては、前記乾燥物に対して、粉砕および/または分級を行うことにより得られる吸水性樹脂を、再生吸水性樹脂として回収する方法を挙げることができる。前記粉砕の方法は特に限定されず、例えば、振動ミルを用いる粉砕する方法を採用することができる。前記分級の方法は特に限定されず、例えば、目開き600μmの篩と目開き300μmの篩を用いて、当該目開き600μmの篩を通過し、且つ当該目開き300μmの篩上に残る吸水性樹脂を、再生吸水性樹脂として回収する方法を採用することができる。
【0097】
得られた再生吸水性樹脂のカルシウム含有率(Ca含有率)は、1.1重量%以下であることが好ましい。そうすることで、前記得られた再生吸水性樹脂における、CRC等の吸水性能および/または吸水速度が向上し、その結果、使用前の吸水性樹脂により近い吸水性能を備える再生吸水性樹脂を得ることができる。前記得られた再生吸水性樹脂のカルシウム含有率は、好ましくは、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.15重量%以下、0.10重量%以下である。
〔3.再生吸水性樹脂〕
[再生吸水性樹脂の用途]
本発明の製造方法で製造された再生吸水性樹脂の用途としては、特に限定されず、好ましくは紙おむつ(幼児用、成人用)、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体として使用する用途が挙げられる。また、前記再生吸水性樹脂が吸水体として使用され得る吸収性物品のその他の例としては、例えば、保水材、土壌保水材、育苗用シート、種子コーティング材、吸湿剤、結露防止シート、ドリップ吸収材、鮮度保持材、プリンタインク吸収剤、使い捨てカイロ、水嚢、冷却用バンダナ、保冷剤、医療用廃液固化剤、歯科廃液処理剤、食品廃液固化剤、鉄鉱石スラリー取扱向上剤、泥土取扱性向上剤、残土固化材、原子力発電(放射線含有)廃液処理剤、水損防止廃液ゲル化剤、吸水土のう、災害用簡易トイレ、湿布材、化粧品用増粘剤、電気・電子材料通信ケーブル用止水材、ガスケットパッキング、肥料用徐放剤、各種徐放剤(空間除菌剤、芳香剤等)、脱臭剤、ペットシート、ネコ砂、創傷保護用ドレッシング材、結露防止用建築資材、油中水分除去剤、塗料、接着剤、アンチブロッキング剤、光拡散剤、アルカリ電池用セパレータ、艶消し剤、化粧板用添加剤、人工大理石用添加剤、トナー用添加剤等の樹脂用添加剤などが挙げられる。
【0098】
本発明の一実施形態は、以下の[1]~[4]に示す発明を含み得る。
【0099】
[1]使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、
前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、
前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、
前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む、再生吸水性樹脂の製造方法。
【0100】
[2]以下の式(1)にて表される洗浄度が10以上となるように、前記酸処理工程(2)、前記水洗浄工程(3)および前記中和工程(4)が実施される、[1]に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
洗浄度={(水洗浄工程前の分散液のゲル濃度)/(酸処理工程中の分散液のゲル濃度)}×{(中和工程前の分散液のゲル濃度)/(水洗浄工程中の分散液のゲル濃度)} (1)
[3]前記再生吸水性樹脂の含水率が、5~30重量%である、[1]または[2]に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【0101】
[4]前記水洗浄工程(3)にて使用される前記水は、導電率が50mS/cm以下の水である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【0102】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0103】
<評価方法>
後述の比較例1と実施例1~13にて得られた再生吸水性樹脂の吸水性能および含水率を、以下に示す方法にて評価した。
【0104】
[含水率]
吸水性樹脂(吸水剤)の含水率を、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定した。なお、本発明においては、試料量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定した。
【0105】
[無加圧吸水倍率(CRC)]
本発明の吸水性樹脂の「CRC」はCentrifuge Retention Capacityの略称であり、吸水性樹脂の0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。具体的には、以下に示す測定方法を用いて、吸水性樹脂の「CRC」を測定した。
【0106】
吸水性樹脂0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP-22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H-122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1-99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を、吸水性樹脂を用いずに行い、その時の袋の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、下に示す式(4)に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
CRC(g/g)=[{W1(g)-W0(g)}/{吸水性樹脂の質量(g)}]-1 (4)
[吸水速度]
0.90重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1000重量部に食品添加物である食用青色1号0.02重量部を添加し、液温を22℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mm、太さ(円筒の長さ方向に垂直な断面の直径)8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に、試料2.0gを投入し、当該試料(吸水性樹脂)のVortex(吸水速度:秒)を測定した。前記吸水速度の測定の終点は、JIS K 7224-1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、試料(吸水性樹脂粒子や吸水性樹脂粒子組成物など)が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間(Vortex:秒)を吸水速度(秒)として測定した。
【0107】
[Ca含有率]
分析の前処理として、マイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製、製品名:ETHOS UP)を用いて、吸水性樹脂を硝酸溶液(超高純度試薬 1.38 Ultrapure、関東化学社製)に溶解させ、これを測定サンプルとして用いた。前記吸水性樹脂に含まれるカルシウムイオンの定量を、前記測定サンプルを対象として、ICP発光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、iCAP 6500 Duo)を用いて、以下の条件にて行った。
測定モード:Axial(軸方向測光)
検出波長:317.9nm
RFパワー:1150W
ポンプ流量:50rpm
補助ガス:1L/min
ネブライザーガス:0.65L/min
クーラントガス:12L/min
添加ガス:0L/min
パージガス:5L/min
尚、検量は、カルシウム標準液(Ca1000、関東化学社製)用いた内部標準法(Y)で行った。また、標準用液の濃度調整および/または測定サンプルの濃度調整を行う場合には、純水製造装置(ADVANTEC社製 RF464BB)で得られた超純水を使用した。
【0108】
<製造例1:多価金属塩で処理された吸水性樹脂の製造>
大王製紙株式会社製の大人用紙おむつ「アテント」に、生理食塩水150gを加えて吸水性樹脂を膨潤させ、一晩放置して、模擬的に使用済紙おむつを作成した。
【0109】
容積10Lの容器内に、0.5重量%塩化カルシウム水溶液5000gを加えた。次に、前記使用済紙おむつをハサミで5cm角となるように裁断した。続いて、裁断された前記使用済紙おむつを、前記容器内に加えて分散液(1)を調製し、当該分散液(1)を30分間、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、撹拌して、裁断された紙おむつを液中に分散させた(使用済紙おむつ中の吸水性樹脂の脱水工程)。
【0110】
前記撹拌して裁断された紙おむつを液中に分散させた後、分散液(1)中に存在する前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂が脱水されていることを確認した。具体的には、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂が、裁断された前記使用済紙おむつに含まれる吸水性樹脂と比較して収縮していることを確認した。
【0111】
次に、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂と、前記紙おむつのその他の構成材料との間の比重の違いを利用して、前記容器の底部から前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を分離回収した。回収した前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を、多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)とする。得られた多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)の固形分濃度は14.5質量%であった。
【0112】
<再生吸水性樹脂の製造>
[比較例1]
製造例1で得られた多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)50.0gと水道水334.7gを、反応容器に加え、分散液(2)を得た。前記分散液(2)に対して、攪拌速度:500rpm、分散液(2)の温度:25℃の条件下にて撹拌しながら、6M塩酸水溶液15.3gを徐々に加えた。その後、上と同一の条件下にて、15分間撹拌を続けた。その内容物の総重量は、後述で示す通り400gであった。その後、内容物(6M塩酸水溶液添加後の分散液(2))に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作(ろ過操作)を行うことにより、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)73.6gを得た。以上の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施した。
【0113】
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)を、前記反応容器とは別の容器に入れ、当該酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)をスパチュラで撹拌しながら、そこに炭酸ナトリウムの粉末3.10gを徐々に添加し、さらに2分間撹拌を続けた。前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が終了した後、20分間、温度:25℃の条件下にて、前記炭酸ナトリウ
ムの粉末が添加された前記酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)を放置した。その結果、中和された吸水性樹脂(1)を得た。前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が開始された時点から前記放置が終了する前の時間(中和における処理時間)は、約23分であった。以上の方法にて、中和工程を実施した。
【0114】
続いて、得られた中和された吸水性樹脂(1)をステンレス製バットの底面上に広げ、当該ステンレス製バットを、熱風の温度を180℃に設定した熱風循環オーブン内に入れた。その後、前記熱風循環オーブン内にて、中和された吸水性樹脂(1)に対して、乾燥時間を60分間として乾燥処理を行い、乾燥物(1)を得た。次いで、得られた乾燥物(1)を、振動ミルを用いて粉砕し、続いて、目開き600μmの篩と目開き300μmの篩を用いて分級して、当該目開き600μmの篩を通過し、且つ当該目開き300μmの篩上に残る比較用再生吸水性樹脂(1)を得た。以上の方法にて、乾燥工程を実施した。
【0115】
得られた比較用再生吸水性樹脂(1)の含水率は3.0重量%、CRCは31.2(g/g)、Vortex(吸水速度)は300(秒)以上であった。
【0116】
比較例1の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、50.0+334.7+15.3=400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、比較例1の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)であり、その重量は73.6gであった。よって、比較例1における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、73.6/400.0=0.184であった。比較例1における「水洗浄工程前のゲル分散液」は、不溶成分である酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)であった。よって、「水洗浄工程前のゲル分散液」における総重量と不溶成分の重量が同一であることから、比較例1における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、1であった。また、比較例1において、何も操作を行わない水洗浄工程を実施しているとみなして、「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」と「中和工程前の分散液のゲル濃度」を算出した。比較例1において、「水洗浄工程中のゲル分散液」と「中和工程前のゲル分散液」は、双方とも、不溶成分である酸性物質で処理され、ろ過された吸水性樹脂(1)であった。よって、比較例1において、「水洗浄工程中のゲル分散液」における総重量と不溶成分の重量と「中和工程前のゲル分散液」における総重量と不溶成分の重量はすべて同一であった。従って、比較例1において、「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」および「中和工程前の分散液のゲル濃度」は双方共に、1であった。以上のことから、比較例1における洗浄度は、(1/0.184)×(1/1)≒5.4であった。
【0117】
[実施例1]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)72.0gを得た。
【0118】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水40.0gを加えて分散液(3)を得た。前記分散液(3)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(3))の総重量は、後述で示す通り112gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作(ろ過操作)を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(1)76.1gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0119】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(1)を用いた以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(1)を得た。
【0120】
得られた再生吸水性樹脂(1)の含水率は3.0重量%、CRCは34.5(g/g)、Vortex(吸水速度)は300(秒)以上であった。
【0121】
実施例1の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例1の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)であり、その重量は72.0gであった。よって、実施例1における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、72.0/400.0=0.180であった。実施例1における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例1の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、72.0+40.0=112.0gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例1の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(1)であり、その重量は76.1gであった。よって、実施例1における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、76.1/112.0≒0.679であった。実施例1における「中和工程前のゲル分散液」は、不溶成分である水で処理された吸水性樹脂(1)であった。よって、「中和工程前のゲル分散液」における総重量と不溶成分の重量が同一であることから、実施例1における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、1であった。以上のことから、実施例1における洗浄度は、(1/0.18)×(1/0.679)≒1/0.122≒8.2であった。
【0122】
[実施例2]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)71.9gを得た。
【0123】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水83.0gを加えて分散液(4)を得た。前記分散液(4)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(4))の総重量は、後述で示す通り154.9gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(2)77.4gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0124】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(2)を用いた以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(2)を得た。
【0125】
得られた再生吸水性樹脂(2)の含水率は3.7重量%、CRCは42.1(g/g)、Vortex(吸水速度)は146(秒)であった。
【0126】
実施例2の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例2の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)であり、その重量は71.9gであった。よって、実施例2における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、71.9/400.0≒0.180であった。実施例2における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例2の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、71.9+83.0=154.9gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例2の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(2)であり、その重量は77.4gであった。よって、実施例2における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、77.4/154.9≒0.500であった。実施例2における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例2における洗浄度は、(1/0.18)×(1/0.500)≒1/0.09≒11.1であった。
【0127】
[実施例3]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)72.4gを得た。
【0128】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水318.0gを加えて分散液(5)を得た。前記分散液(5)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(5))の総重量は、後述で示す通り390.4gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(3)81.7gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0129】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(3)を用いた以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(3)を得た。
【0130】
得られた再生吸水性樹脂(3)の含水率は2.9重量%、CRCは46.1(g/g)、Vortex(吸水速度)は111(秒)であった。
【0131】
実施例3の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例3の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)であり、その重量は72.4gであった。よって、実施例3における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、72.4/400.0=0.181であった。実施例3における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例3の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、72.4+318.0=390.4gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例3の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(3)であり、その重量は81.7gであった。よって、実施例3における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、81.7/390.4≒0.209であった。実施例3における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例3における洗浄度は、(1/0.181)×(1/0.209)≒1/0.0378≒26.5であった。
【0132】
[実施例4]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)70.0gを得た。
【0133】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水714.0gを加えて分散液(6)を得た。前記分散液(6)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(6))の総重量は、後述で示す通り784.0gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(4)86.4gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0134】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(4)を用いた以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(4)を得た。
【0135】
得られた再生吸水性樹脂(4)の含水率は3.4重量%、CRCは45.7(g/g)、Vortex(吸水速度)は92(秒)であった。
【0136】
実施例4の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例4の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)であり、その重量は70.0gであった。よって、実施例4における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、70.0/400.0=0.175であった。実施例4における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例4の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、70.0+714.0=784.0gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例4の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(4)であり、その重量は86.4gであった。よって、実施例4における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、86.4/784.0≒0.110であった。実施例4における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例4における洗浄度は、(1/0.175)×(1/0.110)=1/0.01925≒51.9であった。
【0137】
[実施例5]
水道水の使用量を、934.7gに変更した以外は、比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)72.5gを得た。
【0138】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水665.0gを加えて分散液(7)を得た。前記分散液(7)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(7))の総重量は、後述で示す通り737.5gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(5)103.7gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0139】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(5)を用いた以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(5)を得た。
【0140】
得られた再生吸水性樹脂(5)の含水率は3.8重量%、CRCは47.5(g/g)、Vortex(吸水速度)は88(秒)であった。
【0141】
実施例5の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、50.0+934.7+15.3=1000.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例5の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)であり、その重量は72.5gであった。よって、実施例5における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、72.5/1000.0=0.0725であった。実施例5における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例5の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、72.5+665.0=737.5gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例5の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(5)であり、その重量は103.7gであった。よって、実施例5における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、103.7/737.5≒0.141であった。実施例5における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例5における洗浄度は、(1/0.0725)×(1/0.141)=1/0.01022≒98.1であった。
【0142】
[実施例6]
水道水の使用量を、1534.7gに変更した以外は、比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)72.4gを得た。
【0143】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水1670.0gを加えて分散液(8)を得た。前記分散液(8)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(8))の総重量は、後述で示す通り1742.4gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(6)153.3gを得た。以上の方法にて、水洗浄およびろ過操作工程を実施した。
【0144】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(6)を用いた以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(6)を得た。
【0145】
得られた再生吸水性樹脂(6)の含水率は2.6重量%、CRCは49.2(g/g)、Vortex(吸水速度)は85(秒)であった。
【0146】
実施例6の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、50.0+1534.7+15.3=1600.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例6の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)であり、その重量は72.4gであった。よって、実施例6における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、72.4/1600.0=0.04525であった。実施例6における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例6の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、72.4+1670.0=1742.4gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例6の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(6)であり、その重量は153.3gであった。よって、実施例6における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、153.3/1742.4≒0.0880であった。実施例6における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例6における洗浄度は、(1/0.04525)×(1/0.0880)≒1/0.00398≒251.2であった。
【0147】
[実施例7]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(8)67.8gを得た。
【0148】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(8)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水86.0gを加えて分散液(9)を得た。前記分散液(9)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(9))の総重量は、後述で示す通り153.8gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(7)73.5gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0149】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(7)を用いたこと、および、乾燥工程における乾燥時間を20分間に変更したこと以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(7)を得た。
【0150】
得られた再生吸水性樹脂(7)の含水率は12.6重量%、CRCは39.9(g/g)、Vortex(吸水速度)は75(秒)であった。
【0151】
実施例7の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例7の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(8)であり、その重量は67.8gであった。よって、実施例7における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、67.8/400.0=0.1695であった。実施例7における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例7の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、67.8+86.0=153.8gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例7の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(7)であり、その重量は73.5gであった。よって、実施例7における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、73.5/153.8≒0.478であった。実施例7における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例7における洗浄度は、(1/0.1695)×(1/0.478)≒1/0.0810≒12.3であった。
【0152】
[実施例8]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(9)72.9gを得た。
【0153】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(9)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水232.0gを加えて分散液(10)を得た。前記分散液(10)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(10))の総重量は、後述で示す通り304.9gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(8)77.5gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0154】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(8)を用いたこと、および、乾燥工程における乾燥時間を15分間に変更したこと以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(8)を得た。
【0155】
得られた再生吸水性樹脂(8)の含水率は17.5重量%、CRCは38.2(g/g)、Vortex(吸水速度)は53(秒)であった。
【0156】
実施例8の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例8の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(9)であり、その重量は72.9gであった。よって、実施例8における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、72.9/400.0=0.18225であった。実施例8における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例8の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、72.9+232.0=304.9gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例8の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(8)であり、その重量は77.5gであった。よって、実施例8における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、77.5/304.9≒0.254であった。実施例8における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例8における洗浄度は、(1/0.18225)×(1/0.254)≒1/0.0463≒21.6であった。
【0157】
[実施例9]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(10)72.2gを得た。
【0158】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(10)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水318.0gを加えて分散液(11)を得た。前記分散液(11)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(11))の総重量は、後述で示す通り390.2gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(9)81.1gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0159】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(9)を用いたこと、および、乾燥工程における乾燥時間を20分間に変更したこと以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(9)を得た。
【0160】
得られた再生吸水性樹脂(9)の含水率は27.3重量%、CRCは46.5(g/g)、Vortex(吸水速度)は70(秒)であった。
【0161】
実施例9の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例9の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(10)であり、その重量は72.2gであった。よって、実施例9における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、72.2/400.0=0.1805であった。実施例9における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例9の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、72.2+318.0=390.2gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例9の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(9)であり、その重量は81.1gであった。よって、実施例9における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、81.1/390.2≒0.208であった。実施例9における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例9における洗浄度は、(1/0.1805)×(1/0.208)≒1/0.0375≒26.7であった。
【0162】
[実施例10]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(11)69.7gを得た。
【0163】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(11)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水323.0gを加えて分散液(12)を得た。前記分散液(12)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(12))の総重量は、後述で示す通り392.7gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(10)76.7gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0164】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(10)を用いたこと、および、乾燥工程における乾燥時間を15分間に変更したこと以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(10)を得た。
【0165】
得られた再生吸水性樹脂(10)の含水率は13.7重量%、CRCは40.2(g/g)、Vortex(吸水速度)は59(秒)であった。
【0166】
実施例10の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例10の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(11)であり、その重量は69.7gであった。よって、実施例10における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、69.7/400.0=0.17425であった。実施例10における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例10の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、69.7+323.0=392.7gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例10の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(10)であり、その重量は76.7gであった。よって、実施例10における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、76.7/392.7≒0.195であった。実施例10における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例10における洗浄度は、(1/0.17425)×(1/0.195)≒1/0.0340≒29.4であった。
【0167】
[実施例11]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(12)70.5gを得た。
【0168】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(12)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水717.0gを加えて分散液(13)を得た。前記分散液(13)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(13))の総重量は、後述で示す通り787.5gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(11)84.1gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0169】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(11)を用いたこと、および、乾燥工程における乾燥時間を20分間に変更したこと以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(11)を得た。
【0170】
得られた再生吸水性樹脂(11)の含水率は6.1重量%、CRCは45.4(g/g)、Vortex(吸水速度)は80(秒)であった。
【0171】
実施例11の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例11の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(12)であり、その重量は70.5gであった。よって、実施例11における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、70.5/400.0=0.17625であった。実施例11における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例11の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、70.5+717.0=787.5gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例11の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(11)であり、その重量は84.1gであった。よって、実施例11における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、84.1/787.5≒0.107であった。実施例11における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例11における洗浄度は、(1/0.17625)×(1/0.107)≒1/0.0189≒53.1であった。
【0172】
[実施例12]
比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(13)73.0gを得た。
【0173】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(13)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水1117.0gを加えて分散液(14)を得た。前記分散液(14)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(14))の総重量は、後述で示す通り1190.0gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(12)84.0gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0174】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(12)を用いたこと、および、乾燥工程における乾燥時間を15分間に変更したこと以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(12)を得た。
【0175】
得られた再生吸水性樹脂(12)の含水率は17.9重量%、CRCは39.3(g/g)、Vortex(吸水速度)は51(秒)であった。
【0176】
実施例12の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、比較例1と同様、400.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例12の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(13)であり、その重量は73.0gであった。よって、実施例11における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、73.0/400.0=0.1825であった。実施例12における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例12の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、73.0+1117.0=1190.0gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例12の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(12)であり、その重量は84.0gであった。よって、実施例12における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、84.0/1190.0≒0.0706であった。実施例12における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例12における洗浄度は、(1/0.1825)×(1/0.0706)≒1/0.0129≒77.6であった。
【0177】
[実施例13]
水道水の使用量を、934.7gに変更した以外は、比較例1と同一の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施して、酸性物質で処理された吸水性樹脂(14)73.0gを得た。
【0178】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(14)を酸処理工程にて使用した反応容器に戻し、新たに水道水520.0gを加えて分散液(15)を得た。前記分散液(15)に対して、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。内容物(攪拌後の分散液(15))の総重量は、後述で示す通り593.0gであった。その後、前記内容物に対して、100メッシュステンレス金網を用いてろ過した後、当該ステンレス金網上にて得られた吸水性樹脂を1分間放置する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂(13)79.7gを得た。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0179】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)の代わりに、水で洗浄された吸水性樹脂(13)を用いたこと、および、乾燥工程における乾燥時間を15分間に変更したこと以外は、比較例1と同一の方法にて、中和工程と乾燥工程を実施した。その結果、再生吸水性樹脂(13)を得た。
【0180】
得られた再生吸水性樹脂(13)の含水率は18.5重量%、CRCは39.6(g/g)、Vortex(吸水速度)は50(秒)であった。
【0181】
実施例13の酸処理工程において、酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液の総重量は、50.0+934.7+15.3=1000.0gであった。また、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液における不溶成分は、実施例13の酸処理工程及びろ過操作にて得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(14)であり、その重量は73.0gであった。よって、実施例11における「酸処理工程中の分散液のゲル濃度」の値は、73.0/1000.0=0.073であった。実施例13における「水洗浄工程前の分散液のゲル濃度」は、比較例1と同様に、1であった。また、実施例13の水洗浄工程において、水洗浄工程(3)における分散液全体の重量の総重量は、73.0+520.0=593.0gであった。前記水洗浄工程(3)における分散液における不溶成分は、実施例13の水洗浄工程及びろ過操作にて得られた水で処理された吸水性樹脂(13)であり、その重量は79.7gであった。よって、実施例13における「水洗浄工程中の分散液のゲル濃度」の値は、79.7/593.0≒0.134であった。実施例12における「中和工程前の分散液のゲル濃度」は、実施例1と同様に、1であった。以上のことから、実施例12における洗浄度は、(1/0.073)×(1/0.134)≒1/0.00978≒102.2であった。
【0182】
[結果]
比較例1と実施例1~13について、製造条件を以下の表1に示す。また、得られた比較用再生吸水性樹脂(1)と再生吸水性樹脂(1)~(13)の特性である、含水率、CRC、vortex(吸水速度)およびCa含有率を評価した結果も、以下の表1に示す。
【表1】
比較例1における再生吸水性樹脂の製造方法は、水洗浄工程を含んでいない一方、実施例1~13における再生吸水性樹脂の製造方法は、水洗浄工程を含んでおり、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法に該当する。表1に示すとおり、実施例1~13にて製造された再生吸水性樹脂(1)~(13)は、比較例1にて製造された比較用再生吸水性樹脂(1)と比較して、Ca含有量が少なくなっており、吸水性能であるCRCの値が大きくなっている。
【0183】
以上の事項から、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法によれば、Ca2+等の多価金属イオンの残留量が減少し、CRC等の吸水性能に優れる再生吸水性樹脂を製造できることが分かった。すなわち、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法は、水洗浄工程を含むことにより、使用後の吸水性樹脂から、使用前の吸水性樹脂により近い吸水性能を備える再生吸水性樹脂を得ることができる、との効果を奏することが分った。
【0184】
また、表1に示すとおり、実施例1における洗浄度は、10未満である一方、実施例2~13における洗浄度は、10以上である。さらに、表1に示すとおり、実施例2~13にて製造された再生吸水性樹脂(2)~(13)は、実施例1にて製造された再生吸水性樹脂(1)と比較して、vortex(吸水速度)は大幅に向上している。
【0185】
また、洗浄度が10以上であり、かつ含水率が5~30重量%である実施例7~13にて製造された再生吸水性樹脂は、特にvortex(吸水速度)に優れている。
【0186】
以上の事項から、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法において、洗浄度が10以上となるように、酸処理工程、水洗浄工程および中和工程を実施することにより、吸水性能、特に吸水速度をより向上させることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明の一実施形態によれば、使用後の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、吸水倍率等の吸水性能がより回復した、吸水倍率等の吸水性能の面において、使用前の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂により近い再生吸水性樹脂を製造することができる。よって、本発明の一実施形態は、使用済の吸収性物品から吸水性能が十分に回復した吸水性樹脂を再生することに利用することができる。
図1
図2