(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095501
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】護岸構造物及び護岸構造
(51)【国際特許分類】
E02B 3/14 20060101AFI20240703BHJP
E02B 3/16 20060101ALI20240703BHJP
E02D 25/00 20060101ALI20240703BHJP
B09B 1/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E02B3/14 301
E02B3/16 A
E02D25/00
B09B1/00 F ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105417
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2022211444
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594067368
【氏名又は名称】ワールドエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592242822
【氏名又は名称】三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木原 一禎
(72)【発明者】
【氏名】井上 まどか
(72)【発明者】
【氏名】和木 多克
(72)【発明者】
【氏名】西 和宏
【テーマコード(参考)】
2D118
4D004
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118AA24
2D118BA03
2D118BA05
2D118CA02
2D118DA05
2D118FA06
2D118FA10
2D118FB12
2D118GA01
4D004AA32
4D004AA46
4D004BB04
(57)【要約】
【課題】目地構造の遮水工を適切に設置する。
【解決手段】護岸構造物は、海底地盤上に設置される護岸構造を構成する護岸構造物であって、設置状態において水平面に沿った第1方向に延びた形状の本体部と、本体部の第1方向の両端に配置され、第1方向と直交し水平面に沿った第2方向に突出して設けられるウイング部とを備え、ウイング部は、本体部のうち設置状態における上下方向の全体に亘って第2方向に突出した形状である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底地盤上に設置される護岸構造を構成する護岸構造物であって、
設置状態において水平面に沿った第1方向に延びた形状であり、前記第1方向の両端に平面状の妻面を有する本体部と、
前記本体部の前記第1方向の両端に配置され、前記第1方向と直交し前記水平面に沿った第2方向に突出して設けられるウイング部と
を備え、
前記ウイング部は、前記本体部の前記妻面を設置状態における上下方向の全体に亘って前記第2方向に拡張するように設けられる
護岸構造物。
【請求項2】
前記ウイング部は、前記第1方向の外側に配置される平面状の外側面を有し、
前記外側面は、前記妻面と面一状態となるように配置される
請求項1に記載の護岸構造物。
【請求項3】
前記妻面及び前記外側面は、前記上下方向の上端に前記第2方向に沿った上辺をそれぞれ有し、前記外側面の上辺は、前記妻面の上辺の延長線上に配置される
請求項2に記載の護岸構造物。
【請求項4】
前記ウイング部は、前記本体部から前記第2方向の両側に突出する
請求項1に記載の護岸構造物。
【請求項5】
前記ウイング部は、前記本体部から前記第2方向の一方側に突出する
請求項1に記載の護岸構造物。
【請求項6】
海底地盤上に前記妻面及び前記ウイング部同士が対向するように複数並んで配置される請求項1から5のいずれか一項に記載の護岸構造物と、
隣り合う前記護岸構造物同士の間に配置され、前記第2方向に間隔を空けて配置される目地材と前記目地材の間に配置され前記構造物同士の間を封止する遮水工とを有し、前記遮水工が前記第2方向に2重に設けられる目地構造と
を備える護岸構造。
【請求項7】
前記目地構造は、少なくとも一部が対向する前記ウイング部同士の間に配置される
請求項6に記載の護岸構造。
【請求項8】
前記目地構造は、前記第2方向に隣り合う2つの前記遮水工の間に配置される前記目地材が、2つの前記遮水工の間で共有される
請求項6に記載の護岸構造。
【請求項9】
前記第1方向に対向する前記ウイング部のそれぞれに設けられ、前記ウイング部及び前記護岸構造物の前記本体部の上面と面一状態でありかつ前記ウイング部及び前記本体部の第2方向の側面に接するように配置された上部床を更に備える
請求項6に記載の護岸構造。
【請求項10】
前記上部床は、前記第2方向の一方側の前記ウイング部にそれぞれ設けられる
請求項9に記載の護岸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、護岸構造物及び護岸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
管理型護岸等の護岸構造は、対象区域を囲うように複数の構造物(ケーソン、L型ブロック等)が配置され、隣り合う構造物同士の間に目地構造が配置される構造である(例えば、特許文献1参照)。管理型護岸構造においては、対象区域に投入する土砂、建設残土、廃棄物等の投入物の流出及び保有水の浸出を防ぐため、目地構造の鉛直遮水工を2重に配置する構造が採用されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような護岸構造において、波浪や地震等の作用外力の関係で、構造物が小さくスリムな断面になる場合がある。その場合、目地構造の鉛直遮水工を2重に配置することが困難となる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、目地構造の鉛直遮水工を適切に設置することが可能となる管理型護岸構造物及び護岸構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る護岸構造物は、海底地盤上に設置される護岸構造を構成する護岸構造物であって、設置状態において水平面に沿った第1方向に延びた形状であり、前記第1方向の両端に平面状の妻面を有する本体部と、前記本体部の前記第1方向の両端に配置され、前記第1方向と直交し前記水平面に沿った第2方向に突出して設けられるウイング部とを備え、前記ウイング部は、前記本体部の前記妻面を設置状態における上下方向の全体に亘って前記第2方向に拡張するように設けられる。
【0007】
上記の護岸構造物において、前記ウイング部は、前記第1方向の外側に配置される平面状の外側面を有し、前記外側面は、前記妻面と面一状態となるように配置されてもよい。
【0008】
上記の護岸構造物において、前記妻面及び前記外側面は、前記上下方向の上端に前記第2方向に沿った上辺をそれぞれ有し、前記外側面の上辺は、前記妻面の上辺の延長線上に配置されてもよい。
【0009】
上記の護岸構造物において、前記ウイング部は、前記本体部から前記第2方向の両側に突出してもよい。
【0010】
上記の護岸構造物において、前記ウイング部は、前記本体部から前記第2方向の一方側に突出してもよい。
【0011】
本開示に係る護岸構造は、海底地盤上に前記妻面及び前記ウイング部同士が対向するように複数並んで配置される、上記の護岸構造物と、隣り合う前記護岸構造物同士の間に配置され、前記第2方向に間隔を空けて配置される目地材と前記目地材の間に配置され前記構造物同士の間を封止する遮水工とを有し、前記遮水工が前記第2方向に2重に設けられる目地構造とを備える。
【0012】
上記の護岸構造において、前記目地構造は、少なくとも一部が対向する前記ウイング部同士の間に配置されてもよい。
【0013】
上記の護岸構造において、前記目地構造は、前記第2方向に隣り合う2つの前記遮水工の間に配置される前記目地材が、2つの前記遮水工の間で共有されてもよい。
【0014】
上記の護岸構造において、前記第1方向に対向する前記ウイング部のそれぞれに設けられ、前記ウイング部及び前記護岸構造物の前記本体部の上面と面一状態でありかつ前記ウイング部及び前記本体部の第2方向の側面に接するように配置された上部床を更に備えてもよい。
【0015】
上記の護岸構造において、前記上部床は、前記第2方向の一方側の前記ウイング部にそれぞれ設けられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、目地構造の遮水工を適切に設置することが可能となる護岸構造物及び護岸構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る護岸構造物の一例を示す図(斜視図)である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る護岸構造物の一例を示す図(側面図)である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る護岸構造物の一例を示す図(平面図)である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る護岸構造の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る護岸構造の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る護岸構造の構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る護岸構造の構成を示す平面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る護岸構造の構成を示す平面図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る護岸構造物の構成を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る護岸構造物の構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る護岸構造及び護岸構造物の構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る構造物及び構造物の建造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
図1から
図3は、本開示の実施形態に係る護岸構造物100の一例を示す図である。
図1は斜視図、
図2は側面図、
図3は平面図である。
図1から
図3に示す護岸構造物100は、海底地盤上に1つ以上配置されて護岸構造を構築する護岸構造物である。本実施形態において、護岸構造物100は、例えばハイブリッドケーソンである。護岸構造物100は、本体部10と、ウイング部20とを備える。
【0020】
本体部10は、例えば鋼材及び打設材料を用いて函状に形成される。本体部10は、内部に打設材料が充填されてもよい。本体部10は、壁部11及び底版部12を有する。壁部11及び底版部12は、例えば直方体状である。底版部12は、壁部11の底部に配置され、壁部11を支持する。
【0021】
以下、護岸構造物100の設置状態において水平面に平行であり壁部11の長手となる方向(長手方向)を第1方向D1と表記し、水平面に平行であり壁部11の短手となる方向(短手方向)を第2方向D2と表記する。また、護岸構造物100の設置状態において水平面に垂直な方向を上下方向D3と表記する。
【0022】
本体部10は、第1方向D1の両端に平面状の妻面11aを有する。妻面11aは、第1方向D1に垂直に設けられる。妻面11aは、上下方向D3の上端の辺である上辺11bを有する。上辺11bは、水平面に平行な直線状であり、第2方向D2に沿って形成される。
【0023】
ウイング部20は、壁部11の第1方向D1の両端部に配置され、壁部11から第2方向D2に突出して設けられる。
図1では、一例として、ウイング部20が壁部11から第2方向D2の両側に突出して設けられる構成が示されている。ウイング部20は、例えば板状であり、壁部11と一体で設けられる。具体的には、ウイング部20は、壁部11との間に隙間が形成されないように一体で設けられる。
【0024】
ウイング部20は、第1方向D1の外側に配置される外側面20aが平面状である。外側面20aは、壁部11の妻面11aと面一状態となっている。
【0025】
ウイング部20は、妻面11aを上下方向D3の全体に亘って第2方向D2に拡張するように設けられる。換言すると、ウイング部20が設けられることで、妻面11aが第2方向D2に広がった状態となる。外側面20aの上辺20bは、水平面に平行な直線状であり、第2方向D2に沿って形成される。外側面20aの上辺20bは、妻面11aの上辺11bの延長線上に配置される。したがって、上辺20bと、上辺11bとは、同一直線上に配置される。このように、ウイング部20は、妻面11aと同一の高さで第2方向D2に延びる部分が設けられるように設置される。
【0026】
本実施形態において、ウイング部20は、第1方向D1から見た場合、底版部12の幅(第2方向D2の寸法)に対応する寸法となるように第2方向D2の寸法が設定される。つまり、護岸構造物100を第1方向D1から見た場合、壁部11、底版部12及びウイング部20を含む部分が矩形状となっている。なお、ウイング部20の第2方向D2の寸法は、上記に限定されない。例えば、底版部12の幅よりも小さくてもよいし、底版部12の幅よりも大きくてもよい。
【0027】
図4は、本開示の実施形態に係る護岸構造200の一例を示す図である。
図4に示すように、護岸構造200は、護岸構造物100と、目地構造30とを備える。本実施形態において、護岸構造200は、例えば廃棄物の海面処分場を構成する管理型護岸である。護岸構造200は、所定の対象区域(埋め立て区域)Rを囲うように、当該対象区域Rの外周部に沿って設けられる。
【0028】
護岸構造物100は、海底地盤上に妻面11a及びウイング部20同士が対向するように第1方向D1に複数並んで配置される。この構成において、ウイング部20は、本体部10に対して第2方向D2の一方である対象区域R側と、第2方向D2の他方である海域S側との両側に突出した構成である。対象区域側に突出したウイング部20について、第1方向D1の寸法(厚さ)は、対象区域Rに投入される土砂、建設残土、廃棄物等の投入物及び保有水による荷重等に基づいて設定することができる。また、海域S側に突出したウイング部20について、第1方向D1の寸法(厚さ)は、波力及び船の衝撃力等に基づいて設定することができる。したがって、対象区域R側に突出するウイング部20と、海域S側に突出するウイング部20とで、第1方向D1の寸法が異なってもよい。
【0029】
目地構造30は、隣り合う護岸構造物100同士の間に配置される。目地構造30は、目地材31と、遮水工32とを有する。目地材31は、第2方向D2に間隔を空けて配置される。遮水工32は、目地材31の間に配置され護岸構造物100同士の間を封止する。本実施形態において、目地構造30は、遮水工32が第2方向D2に2重に設けられた構成である。なお、目地材31及び遮水工32は、護岸構造物100の上下方向D3の全体に亘って形成される(
図2の一点鎖線部分参照)。
【0030】
本実施形態では、目地構造30において、妻面11aと外側面20aとの間に跨って目地構造30が形成されている。また、目地構造30において、第2方向D2に2重に設けられた2つの遮水工32が、対向するウイング部20同士の間に配置されている。対向するウイング部20同士の間に配置される遮水工32は、ウイング部20同士の間において、護岸構造物100同士の間を封止する。
【0031】
このように、ウイング部20により妻面11aを拡大することにより、遮水工32を配置可能な部位が妻面11a自体の範囲からウイング部20の外側面20aの範囲まで広がることになる。
図4では、目地構造30において、2つの遮水工32がウイング部20同士の間に配置された構成を示しているが、この構成に限定されない。
【0032】
図5及び
図6は、変形例に係る護岸構造の構成を示す平面図である。
図5に示す護岸構造200Aのように、護岸構造物100Aは、ウイング部20が本体部10に対して第2方向D2のうち対象区域R側に突出した構成とすることができる。また、
図6に示す護岸構造200Bのように、護岸構造物100Bは、ウイング部20が本体部10に対して第2方向D2のうち対象区域R側とは反対の海域S側に突出した構成とすることができる。このように、護岸構造物において、ウイング部20は、本体部10に対して第2方向D2の一方側に突出した構成とすることができる。
【0033】
図7は、変形例に係る護岸構造の構成を示す平面図である。
図7に示す護岸構造200Cにおいて、目地構造30Cは、第2方向D2に3つの目地材31が間隔を空けて配置される。この3つの目地材31のうち、隣り合う目地材31同士の間に遮水工32が配置される。つまり、目地構造30Cは、第2方向D2に隣り合う2つの遮水工32の間に配置される目地材31が、当該2つの遮水工32の間で共有された構成である。この構成により、目地材31の設置数及びコストを抑えつつ、遮水工32が第2方向D2に2重に配置することができる。
【0034】
図7に示す例では、護岸構造物100がウイング部20を有する構成を例に挙げて示しているが、ウイング部20が設けられな構成であってもよい。つまり、護岸構造物としてウイング部20が設けられない護岸構造物が用いられてもよい。この場合、第2方向D2の寸法が小さい護岸構造物であっても、遮水工32を第2方向D2に2重に配置することが容易となる。
【0035】
図8は、変形例に係る護岸構造の構成を示す平面図である。
図8に示す護岸構造200Dは、護岸構造200の構成に加えて、上部床40が設けられた構成となっている。上部床40は、例えば第1方向D1に対向する2組のウイング部20のうち第2方向D2の一方の側にウイング部20ごとに配置される。なお、上部床40は、第2方向D2の両側に配置されてもよい。上部床40は、例えばプレキャスト工法で形成された構成であってもよい。また、上部床40は、例えば鋼製であってもよいし、コンクリート製であってもよいし、鋼及びコンクリートのハイブリッド製であってもよい。上部床40の床版の床構造としては、例えば片持ち梁、二辺固定スラブ、三辺固定スラブ、四辺固定スラブ、ラーメン構造、フラットスラブ等が挙げられる。
【0036】
図9は、変形例に係る護岸構造物の構成を示す斜視図である。
図9に示すように、上部床40は、ウイング部20及び壁部11の両方に接するように配置される。上部床40は、ウイング部20及び壁部11の上面と面一状態となるように配置される。上部床40の第2方向D2の寸法は、ウイング部20の第2方向D2への突出部分の寸法と同一とすることができる。なお、上部床40の第2方向D2の寸法は、ウイング部20の第2方向D2への突出部分の寸法と同一でなくてもよい。すなわち上部床40は、ウイング20に対して第2方向D2に突出してもよい。また、ウイング20の方が上部床40よりも第2方向D2に突出する構成であってもよい。また、
図10に示す上部床40は、例えば矩形状としているが、この構成に限定されず、
図9に一点鎖線で示すように、例えば三角形状、多角形状等、他の形状であってもよい。
【0037】
図9に示す例において、上部床40は、支柱41、第1ストラット42及び第2ストラット43等の支持機構により支持された構成とすることができる。支柱41は、底版部12に固定され、上部床40を支持する。第1ストラット42は、壁部11に固定され、上部床40を支持する。第2ストラット43は、壁部11とウイング部20との間に設けられる。第2ストラット43は、例えば支柱41を支持することができる。
【0038】
図10は、変形例に係る護岸構造物の構成を示す斜視図である。
図10に示す護岸構造物100Eは、上記した護岸構造200Dに用いることができる。
図10に示す護岸構造物100Eのように、上部床40は、室部44により支持された構成とすることができる。室部44は、壁部11の一部を第2方向D2側に拡張した部分である。室部44は、壁部44a、44bを有する。なお、室部44は、壁部44a、44bのうちどちらか一方が設けられない構成であってもよい。また、
図10に示す上部床40についても、例えば矩形状としているが、この構成に限定されず、
図10に一点鎖線で示すように、例えば三角形状、多角形状等、他の形状であってもよい。
【0039】
図8から
図10に示す例では、護岸構造物100D、100Eにおいて、第1方向D1に対向するウイング部20のそれぞれに当該ウイング部20及び壁部11の上面と面一状態でありウイング部20及び壁部11に接する上部床40が設けられる。そのため、護岸構造物200Dにおいて護岸構造物100D、100Eの上面を作業用通路として使用する際、2台の作業用車両が対向して走行する場合、
図8の破線で示すように、上部床40を一方の作業用車両の待機場所として用いることができる。このため、護岸構造物100D、100Eの上面に対面車線を設けることなく、対向して走行する2台の作業用車両をすれ違わせることができる。したがって、護岸構造物100Dの第2方向D2の寸法を抑えつつ、当該護岸構造物100Dの上面を作業用通路として有効活用することができる。護岸構造物100D、100Eの上面が作業用通路として用いられる場合、当該護岸構造物100D、100Eの高さに対応した高さに上部床40を配置することができる。なお、上部床40は、作業車両等の待機場、駐車場、車両入替場として用いてもよいし、資材置き場、廃棄物ダンピングスペース等として用いてもよい。
【0040】
図11は、変形例に係る護岸構造及び護岸構造物の構成を示す側断面図である。
図11に示す護岸構造200Fは、埋め立て区域等の所定区域を囲うように設けられる。護岸構造物100Fは、上記した上部床40が所定区域側に配置される。また、当該護岸構造物100Fは、
図11に示すように、海域側に接岸床版50及び藻場床版60を配置することができる。
【0041】
接岸床版50は、海域側に設置され、作業船舶、通船等の接岸に用いることができる。接岸床版50は、朔望平均満潮面(H.W.L:Hight Water Level)以上の高さとなるように設置することができる。藻場床版60は、藻場の育成のための人工海中林として設置することができる。藻場床版60は、床版上に自然石が載置された状態で配置される。藻場床版60は、育成対象となる藻の種類に応じて高さ位置を設定することができる。藻場床版60は、海側に複数列(図中奥行方向に複数)設置してもよいし、複数段(図中上下方向に複数)に設置してもよい。
【0042】
なお、接岸床版50及び藻場床版60の平面形状は、例えば護岸法線に沿った矩形状、すなわち第2方向D2の寸法が均一の矩形状とすることができる。また、接岸床版50及び藻場床版60は、例えば1つの護岸構造物100Fにおいて第1方向D1の全体に亘って設けられてもよい。
【0043】
以上のように、本開示の第1態様に従えば、海底地盤上に設置される護岸構造を構成する護岸構造物であって、設置状態において水平面に沿った第1方向D1に延びた形状であり、第1方向D1の両端に平面状の妻面11aを有する本体部10と、本体部10の第1方向D1の両端に配置され、第1方向D1と直交し水平面に沿った第2方向D2に突出して設けられるウイング部20とを備え、ウイング部20は、本体部10の妻面11aを上下方向D3の全体に亘って第2方向D2に拡張するように設けられる護岸構造物が提供される。
【0044】
この構成によれば、ウイング部20により妻面11aが第2方向D2に拡大されることで、遮水工32を配置可能な部位が妻面11a自体の範囲からウイング部20の外側面20aの範囲まで広がることになる。このため、本体部10又は壁部11の第2方向D2の寸法を小さくする場合であっても、目地構造30の遮水工32を第2方向D2について2重に配置することができる。これにより、遮水工32を適切に配置可能となる護岸構造物100を提供することができる。
【0045】
本開示の第2態様に従えば、第1態様に従う護岸構造物において、ウイング部20は、第1方向D1の外側に配置される外側面20aを有し、外側面20aは、妻面11aと面一状態となるように配置される。
【0046】
この構成によれば、ウイング部20の外側面20aが妻面11aと面一状態となるように配置されるため、例えば第1方向D1の寸法等の条件を妻面11aに設置する場合と同様としてウイング部20に目地構造30を設置することができる。
【0047】
本開示の第3態様に従えば、第2態様に従う護岸構造物において、妻面11a及び外側面20aは、上下方向D3の上端に第2方向D2に沿った上辺11b、20bをそれぞれ有し、外側面20aの上辺20bは、妻面11aの上辺11bの延長線上に配置される。
【0048】
目地構造30において、目地材31及び遮水工32は、護岸構造物100の上下方向D3の全体に亘って形成される。第3態様に従う構成によれば、ウイング部20の外側面20aの上辺20bが妻面11aの上辺11bの延長線上に配置されるため、妻面11aとウイング部20の外側面20aとに跨って目地構造30を形成する場合においても、護岸構造物100の上下方向D3の全体に亘って適切に設置することができる。
【0049】
本開示の第4態様に従えば、第1態様から第3態様のいずれかに従う護岸構造物において、ウイング部20は、本体部10から第2方向D2の両側に突出する。
【0050】
この構成によれば、本体部10のうち第2方向D2の両側において、ウイング部20同士の間に目地構造30を設置することができる。
【0051】
本開示の第5態様に従えば、第1態様から第3態様のいずれかに従う護岸構造物において、ウイング部20は、本体部10から第2方向D2の一方側に突出する。
【0052】
この構成によれば、本体部10のうち第2方向D2の一方側において、ウイング部20同士の間に目地構造30を設置することができる。この場合、第2方向D2の一方側としては、護岸構造の対象区域側又は海域側とすることができる。
【0053】
本開示の第6態様に従えば、海底地盤上に妻面11a及びウイング部20同士が対向するように第1方向D1に複数並んで配置される、第1態様から第5態様のいずれかに従う護岸構造物と、隣り合う護岸構造物同士の間に配置され、第2方向D2に間隔を空けて配置される目地材31と目地材31の間に配置され構造物同士の間を封止する遮水工32とを有し、遮水工32が第2方向D2に2重に設けられる目地構造30とを備える護岸構造が提供される。
【0054】
この構成によれば、隣り合う護岸構造物の間において、対向する妻面11a及びウイング部20同士の間に目地構造30を配置することができるため、目地構造30の遮水工32を第2方向D2に2重に配置することが容易となる。これにより、遮水工32を適切に配置可能となる。
【0055】
本開示の第7態様に従えば、第6態様に従う護岸構造において、目地構造30は、少なくとも一部が対向するウイング部20同士の間に配置される。
【0056】
この構成によれば、目地構造30の少なくとも一部が対向するウイング部20同士の間に配置されるため、本体部10の第2方向D2の寸法が小さい場合であっても、ウイング部20を利用することで遮水工32を2重に配置することが容易となる。このため、遮水工32を適切に配置することができる。
【0057】
本開示の第8態様に従えば、第6態様又は第7態様に係る護岸構造において、目地構造30Cは、第2方向D2に隣り合う2つの遮水工32の間に配置される目地材31が、2つの遮水工32の間で共有される。
【0058】
この構成によれば、第2方向D2に隣り合う2つの遮水工32の間に配置される目地材31が2つの遮水工32の間で共有されるため、目地材31の設置数及びコストを抑えつつ、遮水工32が第2方向D2に2重に配置することができる。
【0059】
本開示の第9態様に従えば、第6態様から第8態様のいずれかに係る護岸構造において、第1方向D1に対向するウイング部20のそれぞれに設けられ、ウイング部20及び護岸構造物100D、100Eの本体部10の上面と面一状態でありかつウイング部20及び本体部10の壁部11の第2方向D2の側面に接するように配置された上部床40を更に備える。
【0060】
この構成によれば、護岸構造物200Dにおいて護岸構造物100D、100Eの上面を作業用通路として使用する際、2台の作業用車両が対向して走行する場合、上部床40を一方の作業用車両の待機場所として用いることができる。このため、護岸構造物100D、100Eの上面に対面車線を設けることなく、対向して走行する2台の作業用車両をすれ違わせることができる。したがって、護岸構造物100Dの第2方向D2の寸法を抑えつつ、当該護岸構造物100Dの上面を作業用通路として有効活用することができる。
【0061】
本開示の第10態様に従えば、第9態様に係る護岸構造において、上部床40は、第2方向D2の一方側のウイング部20にそれぞれ設けられる。
【0062】
この構成によれば、上部床40が第2方向D2の一方側のウイング部20にそれぞれ設けることで、上部床40を第2方向D2の両側に配置することなく、上部床40の設置数を抑え、設置のための作業負担を低減することができる。
【0063】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態においては、構造物としてハイブリッドケーソンを例に挙げて説明したが、これに限定されず、RCケーソン、鋼製ケーソン等の他の種類のケーソンであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 本体部
11 壁部
11a 妻面
11b,20b 上辺
12 底版部
20 ウイング部
20a 外側面
30,30C 目地構造
31 目地材
32 遮水工
40 上部床
41 支柱
42 第1ストラット
43 第2ストラット
44 室部
50 接岸床版
60 藻場床版
100,100A,100B,100D,100E,100F 護岸構造物
200,200A,200B,200C,200D,200F 護岸構造
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 上下方向
R 対象区域
S 海域