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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095517
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】シャワー装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162465
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022211337
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】八板 遼平
(72)【発明者】
【氏名】中島 平裕
(72)【発明者】
【氏名】関 大輝
(72)【発明者】
【氏名】陳 祖河
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132FA03
2D132FB01
2D132FC02
2D132FD01
2D132FJ01
2D132FJ07
2D132FJ22
2D132FJ23
(57)【要約】
【課題】使用者がリラックスした状態で、長時間シャワーを浴び続けることができるシャワー装置を提供する。
【解決手段】本発明は、使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置(1)であって、シャワーヘッド本体(4)と、このシャワーヘッド本体の下方に立っている使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水を形成するように、シャワーヘッド本体に、間隔を空けて設けられた複数の散水部(10)と、を有し、各散水部は、吐出された湯水が広がりながら落下するように構成されていることを特徴としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置であって、
シャワーヘッド本体と、
このシャワーヘッド本体の下方に立っている使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水を形成するように、上記シャワーヘッド本体に、間隔を空けて設けられた複数の散水部と、を有し、
上記各散水部は、吐出された湯水が下方に向けて広がりながら落下するように構成されていることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
上記各散水部は、吐出された湯水が、上記各散水部から所定距離落下した位置で互いに合流し、使用者の身体の周囲に水膜を形成するように構成されている請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
上記各散水部は、吐出された湯水によって囲まれる空間が、下方に向けて窄まるように向けられている請求項1又は2に記載のシャワー装置。
【請求項4】
上記シャワーヘッド本体は環状に構成されている請求項1又は2に記載のシャワー装置。
【請求項5】
上記各散水部は、吐出された湯水が正弦波状に往復振動するように構成され、これにより、吐出された湯水は下方に向けて広がりながら落下する請求項1又は2に記載のシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関し、特に、使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-15192号公報(特許文献1)には、シャワー装置が記載されている。このシャワー装置は、円盤状に構成され、天井に取り付けて使用される。円盤状のシャワー装置の周縁部には多数の散水孔が円周上に並べて設けられており、各散水孔から線状に湯水が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-15192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、単に洗体を行うだけでなく、使用者が上方から落下するシャワー吐水を比較的長い時間、リラックスした状態で浴びることができ、シャワーを浴びている時間を楽しむことにより、疲労回復や、ストレス解消効果を得ることができるシャワー装置の開発を行っている。特許文献1記載のシャワー装置においては、円盤状に構成されたシャワーヘッドの周縁部に散水孔が並べて配置されているため、シャワーヘッドの中央下方に立っている使用者の顔には、直接シャワー吐水が掛かりにくい。このため、シャワーを浴びている使用者は、息苦しさを感じることが比較的少なく、長時間シャワーを浴び続けることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のシャワー装置においては、円周上に間隔を空けて並べられた各散水孔から線状のシャワー吐水が為されているので、シャワーを浴びている使用者の身体に着水する吐水の面積は狭く、使用者の身体を吐水された湯水で十分に包み込むことができない。このため、浴室内の気温が低い場合等には、使用者が外気温の影響を受け、シャワーを浴びている間に寒さを感じてしまい、長時間シャワーを浴び続けることができないという問題がある。
【0006】
これに対し、特許文献1記載のシャワー装置において、散水孔の数を大幅に増大させたり、使用者の周囲全体に膜状の吐水を行うことによって、使用者の身体を湯水で包み込むことが考えられる。しかしながら、このようにシャワー吐水を行った場合、使用者の頭部の周囲がシャワー吐水によって覆われ、浴びている湯水の熱気が頭部の周囲に籠もり、使用者が暑さや、息苦しさを感じてしまうという問題が起こる。このため、使用者がリラックスした状態で、長時間シャワーを浴び続けることが難しいという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、使用者がリラックスした状態で、長時間シャワーを浴び続けることができるシャワー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置であって、シャワーヘッド本体と、このシャワーヘッド本体の下方に立っている使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水を形成するように、シャワーヘッド本体に、間隔を空けて設けられた複数の散水部と、を有し、各散水部は、吐出された湯水が下方に向けて広がりながら落下するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置であるため、使用者はシャワーヘッド本体を手で保持することなく、シャワーを浴びることができる。また、複数の散水部がシャワーヘッド本体に間隔を空けて設けられているので、シャワーヘッド本体の近傍では、各散水部から吐出された湯水の間に隙間があり、シャワー吐水によって囲まれた空間内に熱気が籠もるのを抑制することができる。このため、長時間シャワーを浴びている使用者が、暑さや、息苦しさを感じるのを抑制することができる。また、各散水部から吐出された湯水は広がりながら落下するので、シャワーヘッド本体の下方に立っている使用者の身体に対し、広い面積で着水するとともに、着水した 湯水は身体表面でさらに広がり、湯水によって身体を十分に包み込むことができる。この結果、気温が低い状態であっても、シャワーを浴びている使用者は寒さを感じにくく、長時間シャワーを浴び続けることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、各散水部は、吐出された湯水が、各散水部から所定距離落下した位置で互いに合流し、使用者の身体の周囲に水膜を形成するように構成されている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、各散水部から吐出された湯水が、各散水部から所定距離落下した位置で互いに合流するので、湯水が合流する位置までは、シャワー吐水によって囲まれた空間の内外で通気性を確保することができ、熱気が籠もるのを抑制することができる。また、吐出された湯水が合流する位置よりも下方では、使用者の身体を湯水で十分に包み込むことができ、使用者の身体を十分に温めることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、各散水部は、吐出された湯水によって囲まれる空間が、下方に向けて窄まるように向けられている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、吐出された湯水によって囲まれる空間が、下方に向けて窄まっているので、湯水によって囲まれた空間の上部では、十分な通気性が確保できる。一方、湯水によって囲まれた空間の下部では、この空間が小さくなるため、空間内の保温性を確保しやすく、比較的少量の湯水で使用者を包み込むことができ、節水しながら、使用者を十分に温めることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、シャワーヘッド本体は環状に構成されている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、シャワーヘッド本体が環状に構成されているので、シャワー吐水によって囲まれた空間内の空気が、シャワーヘッド本体の内側を通って外部に流出し、シャワー吐水によって囲まれた空間内に熱気が籠もるのを抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、各散水部は、吐出された湯水が正弦波状に往復振動するように構成され、これにより、吐出された湯水は下方に向けて広がりながら落下する。
【0017】
このように構成された本発明によれば、隣接する散水部の間隔を広く開けた場合でも着水した湯水により使用者の身体を十分に包み込むことができ、吐水の勢いを維持しながら節水することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシャワー装置によれば、使用者がリラックスした状態で、長時間シャワーを浴び続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態によるシャワー装置をシャワー室に設置した状態を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態によるシャワー装置のシャワーヘッド本体を拡大して示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態によるシャワー装置に備えられている流体素子の斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6】本発明の第1実施形態によるシャワー装置のシャワーヘッド本体から吐出されるシャワーを浴びている使用者を模式的に示す図である。
図7】本発明の第1実施形態によるシャワー装置に備えられている散水部の変形例によるノズル全体を示す斜視図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う部分拡大断面図である。
図9図7のIX-IX線に沿う部分拡大断面図である。
図10】本発明の第2実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
図11】本発明の第3実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
図12】本発明の第4実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
図13】本発明の第5実施形態によるシャワー装置を示す斜視図である。
図14】本発明の第5実施形態によるシャワー装置において、シャワーヘッド本体の上部材を取りはずした状態を示す斜視図である。
図15】本発明の第5実施形態によるシャワー装置に備えられているシャワーヘッド本体の断面図である。
図16】本発明の第5実施形態によるシャワー装置における散水部の取り付け構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるシャワー装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置をシャワー室に設置した状態を示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置のシャワーヘッド本体を拡大して示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のシャワー装置1は、シャワー室2の側壁面2aに対して固定されている。また、シャワー装置1は、シャワーヘッド本体4と、このシャワーヘッド本体4を側壁面2aに対して取り付けるための支持部材6と、を有する。
【0022】
シャワーヘッド本体4は、全体として楕円形の環状の部材であり、この楕円形の環に沿って、複数の散水部が間隔を空けて設けられている。
また、支持部材6は、側壁面2aの上部から概ね水平方向に延びるように取り付けられた部材であり、シャワーヘッド本体4を所定の高さに支持するように構成されている。さらに、支持部材6の内部には給水路(図示せず)が設けられており、この給水路を通って供給された湯水がシャワーヘッド本体4内に流入し、各散水部から吐出される。
【0023】
なお、本実施形態において、シャワーヘッド本体4は、側壁面2aから延びる支持部材6を介して側壁面2aに固定されているが、天井面から延びる支持部材を介してシャワーヘッド本体を天井面に固定しても良い。或いは、シャワー室等の床面から柱状の構造物を立ち上げておき、この構造物により、使用者の上方の比較的高い位置にシャワーヘッド本体4を固定しても良い。また、シャワーヘッド本体は、支持部材を介さず、側壁面又は天井面に直接固定されていても良い。本明細書において、「側壁面又は天井壁面に対して固定されるシャワーヘッド本体」には、シャワーヘッド本体を支持部材を介して固定する態様、及びシャワーヘッド本体を側壁面又は天井面に直接固定する態様が含まれるものとする。
【0024】
なお、シャワー装置1は、使用時においては各散水部から吐水が為され、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように構成されている。また、環状のシャワーヘッド本体4に沿って散水部が設けられているため、各散水部により、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者の頭部を取り囲むようにシャワー吐水が形成される。即ち、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者から見て、吐水が使用者の身体に前面、背面、左右側面から着水し、シャワー吐水により使用者の頭部が取り囲まれる。
【0025】
次に、図2を参照して、シャワーヘッド本体4の内部構造を説明する。
上述したように、シャワーヘッド本体4は、全体として楕円形の環状に構成されている。このシャワーヘッド本体4の内部には、環状の形態に沿って延びる給水通路4aが設けられている。支持部材6の内部に形成された給水路(図示せず)を通って供給された湯水は、シャワーヘッド本体4内の給水通路4aに流入し、シャワーヘッド本体4全体に供給される。
【0026】
さらに、シャワーヘッド本体4には、給水通路4aに沿って、所定の間隔で散水部取付凹部4bが複数設けられている。これらの散水部取付凹部4bは鉛直方向に延びる円筒形の窪みであり、給水通路4aと連通するように形成されると共に、シャワーヘッド本体4の下面に向けて開口している。即ち、シャワーヘッド本体4の給水通路4a内を流れる湯水は、散水部取付凹部4bに流入する。
【0027】
また、各散水部取付凹部4bには、散水部保持部材8が夫々嵌め込まれている。散水部保持部材8は円柱形の部材であり、各散水部取付凹部4bの中に水密的に取り付けられている。さらに、各散水部保持部材8の中には、散水部である流体素子10が保持されている。この流体素子10は、散水部保持部材8の下面から湯水を吐出するように、散水部保持部材8によって保持されている。また、流体素子10は散水部保持部材8によって斜め下方に向けて保持されており、流体素子10は、楕円形のシャワーヘッド本体4の中心に向かって、斜め下方に向けて湯水を吐出する。なお、散水部保持部材8は、散水部取付凹部4bに対し着脱自在に構成されている。
【0028】
次に、図3乃至図5を参照して、シャワー装置1に備えられている散水部である流体素子10の構成を説明する。
図3は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置に備えられている流体素子の斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図であり、図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
【0029】
図3に示すように、流体素子10は概ね薄い直方体状の部材であり、その正面側の端面には長方形の吐水口10aが設けられ、背面側の端部には鍔部10bが形成されている。さらに、流体素子10の周囲を一周するように、鍔部10bと平行に溝10cが設けられている。この溝10cにはOリング(図示せず)が嵌め込まれ、散水部保持部材8との間の水密性が確保される。
【0030】
図4に示すように、流体素子10の内部には、長手方向に貫通するように長方形断面の通路が形成されている。この通路は、上流側から順に、給水通路12a、渦列通路12b、整流通路12cとして形成されている。
給水通路12aは、流体素子10背面側の流入口10dから延びる断面積一定の長方形断面の直線状の通路である。
渦列通路12bは、給水通路12aの下流側に、給水通路12aに連なるように(段差なく)設けられた長方形断面の通路である。即ち、給水通路12aの下流端と、渦列通路12bの上流端は、同一の寸法形状を有している。渦列通路12bの対向する一対の壁面(両側壁面)は、下流側に向けて流路断面積が渦列通路12b全体に亘って縮小するようにテーパして構成されている。即ち、渦列通路12bは下流側に向けて細く、次第に幅が狭くなるように構成されている。
【0031】
整流通路12cは、渦列通路12bと連通するように下流側に設けられた長方形断面の通路であり、断面積一定で直線状に形成されている。この整流通路12cにより、渦列通路12bによって導かれた渦列を含む湯水が整流され、吐水口10aから吐出される。この整流通路12cの流路断面積は、渦列通路12bの下流側端部の流路断面積よりも小さく構成されており、渦列通路12bと整流通路12cの間には段部14が形成されている。この段部14の表面である段部壁面は、渦列通路12bの中心軸線に対して直交する方向に向けられている。
【0032】
一方、図5に示すように、給水通路12a、渦列通路12b、及び整流通路12cの高さ方向に対向する壁面(天井面及び床面)は、全て同一平面上に設けられている。即ち、給水通路12a、渦列通路12b、及び整流通路12cの高さは全て同一で、一定である。
【0033】
次に、給水通路12aの下流側端部(給水通路12aと渦列通路12bの接続部近傍)には湯水衝突部16が形成されており、この湯水衝突部16は給水通路12aの流路断面の一部を閉塞するように設けられている。この湯水衝突部16は、給水通路12aの高さ方向に対向する壁面(天井面及び床面)を連結するように延びる三角柱状の部分であり、給水通路12aの幅方向の中央に、島状に配置されている。湯水衝突部16の断面は、二等辺三角形状に形成されており、その斜辺が給水通路12aの中心軸線と直交するように配置され、また、二等辺三角形の頂角の部分は下流側に向くように配置されている。
【0034】
この湯水衝突部16を設けることにより、その下流側にカルマン渦が生成され、吐水口10aから吐出される湯水が往復振動される。即ち、支持部材6の給水路(図示せず)から供給された湯水は、シャワーヘッド本体4内の給水通路4a(図2)に流入し、さらに、散水部保持部材8に保持された各流体素子10の流入口10dに流入する。各流体素子10の流入口10dから給水通路12aに流入した湯水は、その流路の一部を閉塞するように設けられた湯水衝突部16に衝突する。これにより、湯水衝突部16の下流側には、交互に反対回りのカルマン渦の渦列が形成される。この湯水衝突部16により形成されたカルマン渦は、テーパ状に先が細くなった渦列通路12bによって導かれながら成長し、整流通路12cに至る。
【0035】
渦列通路12bの下流側の整流通路12cに流入した湯水は、ここで整流される。この整流通路12cを経て吐水口10aから吐出される湯水は、吐水口10aにおける流速分布に基づいて曲げられ、流速の高い部分が図4における上下方向に移動するに従って、吐出方向が変化する。即ち、湯水の流速の高い部分が図4における吐水口10aの上端に位置する状態では、湯水は下方に向けて噴射され、流速の高い部分が吐水口10aの下端に位置する状態では、湯水は上方に向けて噴射される。このように、湯水衝突部16の下流側に交互にカルマン渦を発生させることにより、吐水口10aにおいて流速分布が発生して、噴流が偏向する。また、渦列の進行により流速の速い部分の位置が往復運動するため、噴射される湯水も概ね所定の振動平面(図4の紙面に平行な平面)内で正弦波状に往復振動する。
【0036】
ここで、図2に示すように、本実施形態において、各流体素子10は斜め下方に向けて取り付けられているため、流体素子10の吐水口10aから吐出された湯水は、概ね所定の振動平面内で扇状に広がりながら落下する。即ち、流体素子10の吐水口10aから吐出された湯水が正弦波状に往復振動することにより、一定時間当たりの吐水の軌跡が扇状に広がる。また、本実施形態において、各流体素子10は、その振動平面が、楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向(周方向)に向くように、シャワーヘッド本体4に取り付けられている。これにより、シャワーヘッド本体4の下方には、全体として、楕円形断面の筒状のシャワー吐水が形成され、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者の頭部が、シャワー吐水によって取り囲まれる。
【0037】
なお、流体素子10の吐水口10aから吐出された湯水は、下方に向かって約10°以上の角度で広がることが好ましい。この吐水の広がりが大きすぎる場合には、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者の身体に着水せずに落下して無駄になる水量が増加し、節水性が低下する。一方、吐水の広がりが小さすぎる場合には、使用者の身体に着水する面積が小さくなり、使用者の身体を包み込むために必要な流体素子10の数が多くなり、節水性が低下する。従って、流体素子10の吐水口10aから吐出される湯水の広がり角α(図4)は、約10°~約45°、より好ましくは約20°~約30°に設定する。また、流体素子10を設ける間隔は、吐水が扇状に広がりながら落下するものであるため約30~約200mm程度、好ましくは、約43~約167mmに設定する。
【0038】
次に、図6を参照して、本発明の第1実施形態によるシャワー装置1の作用を説明する。
図6は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置1のシャワーヘッド本体4から吐出されるシャワーを浴びている使用者を模式的に示す図である。
【0039】
上述したように、シャワーヘッド本体4に設けられた流体素子10から吐出される湯水は、正弦波状に往復振動しながら吐出される。このため、図6に示すように、各流体素子10から吐出された湯水は、概ね扇形に広がりながら落下する。また、上述したように、各流体素子10は、シャワーヘッド本体4の中心に向かって斜め下方に傾斜するように取り付けられている(図2)。このため、各流体素子10からのシャワー吐水によって囲まれる吐水空間Sは、下方に向けて窄まった形状になる。また、本実施形態のシャワー装置1では、シャワーヘッド本体4に設けられた流体素子10から湯水が正弦波状に往復振動しながら吐出されるため、流体素子10を設ける間隔を広く設定した場合でも、使用者の身体を包み込むことができ、吐水の勢いを維持しつつ節水効果を得ることができる。
【0040】
さらに、各流体素子10は、環状のシャワーヘッド本体4に沿って所定の間隔を空けて設けられている。このため、図6に示すように、各流体素子10から吐出された湯水の幅が十分に広がっていない領域(シャワーヘッド本体4近傍の領域)では、各流体素子10から吐出された湯水の間には隙間がある。これにより、各流体素子10からのシャワー吐水によって囲まれた吐水空間Sの中の空気は、各シャワー吐水の間の隙間を通って、吐水空間Sの外側へ流出することができる。また、本実施形態において、シャワーヘッド本体4は環状に構成されているので、吐水空間S内の空気は、シャワーヘッド本体4の内側を通って、シャワーヘッド本体4の上方へ流出することができる。このため、吐水空間Sの中に吐出された湯水の熱気が籠もることはなく、吐水空間S内は、快適な温度に維持される。
【0041】
一方、各流体素子10から吐出された湯水は水平方向に広がりながら落下するので、吐出された湯水は全体として、扁平な扇形形状を形成する。各流体素子10から吐出された扇形形状の湯水は、所定距離L落下した位置では互いに合流する。また、各流体素子10から吐出される扁平な扇形形状の湯水は、環状のシャワーヘッド本体4の接線方向に向けられているので、各流体素子10から吐出された扇形形状の湯水によって使用者の頭部や身体が取り囲まれ、使用者の身体の周囲に水膜が形成される。このため、吐水空間Sの、シャワーヘッド本体4の下方の所定距離Lよりも上方の部分は、各シャワー吐水の間に隙間があるため熱気逃がし空間として作用する。また、吐水空間Sの、シャワーヘッド本体4の下方の所定距離Lよりも下側の部分は、各流体素子10から吐出された湯水が合流し、身体を囲む水膜が形成されるので、熱気保持空間として作用する。なお、所定距離Lは、比較的小柄な使用者(例えば、身長150cm程度)の上半身にも着水させることができるように設定することが好ましい。
【0042】
このように、各流体素子10から吐出された湯水は、所定距離L落下した後、使用者の上半身に当たりながら、身体を覆うように水膜を形成するので、使用者の身体は湯水により十分に温められる。このため、シャワー室2内の気温が低い場合でも、使用者が寒さを感じることはなく、使用者は長い時間シャワーを浴び続けることができる。
【0043】
本発明の第1実施形態のシャワー装置によれば、シャワーヘッド本体4が側壁面2aに固定されているので、使用者はシャワーヘッド本体4を手で保持することなく、シャワーを浴びることができる。また、複数の散水部である流体素子10がシャワーヘッド本体4に間隔を空けて設けられているので、シャワーヘッド本体4の近傍では、各流体素子10から吐出された湯水の間に隙間があり、シャワー吐水によって囲まれた吐水空間S内に熱気が籠もるのを抑制することができる。このため、長時間シャワーを浴びている使用者が、暑さや、息苦しさを感じるのを抑制することができる。また、各流体素子10から吐出された湯水は広がりながら落下するので、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者の身体に対し、広い面積で着水するとともに、着水した湯水は身体表面でさらに広がり、湯水によって身体を十分に包み込むことができる。この結果、気温が低い状態であっても、シャワーを浴びている使用者は寒さを感じにくく、長時間シャワーを浴び続けることができる。
【0044】
また、本実施形態のシャワー装置によれば、各流体素子10から吐出された湯水が、各流体素子10から所定距離L落下した位置で互いに合流する(図6)ので、湯水が合流する位置までは、シャワー吐水によって囲まれた吐水空間Sの内外で通気性を確保することができ、熱気が籠もるのを抑制することができる。また、吐出された湯水が合流する位置よりも下方では、使用者の身体を湯水で十分に包み込むことができ、使用者の身体を十分に温めることができる。
【0045】
さらに、本実施形態のシャワー装置によれば、吐出された湯水によって囲まれる吐水空間Sが、下方に向けて窄まっているので、湯水によって囲まれた吐水空間Sの上部では、十分な通気性が確保できる。一方、湯水によって囲まれた吐水空間Sの下部では、この空間が小さくなり、空間内の保温性を確保しやすく、使用者を十分に温めることができる。
【0046】
また、本実施形態のシャワー装置によれば、シャワーヘッド本体4が環状に構成されているので、シャワー吐水によって囲まれた吐水空間S内の空気が、シャワーヘッド本体4の内側を通って外部に流出し、シャワー吐水によって囲まれた吐水空間S内に熱気が籠もるのを抑制することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、散水部が流体素子10により構成され、この流体素子10により、湯水が広がりながら落下するシャワー吐水が実現されていた。これに対して変形例として、湯水を吐出するノズルの構成により、湯水を広がりながら落下させる散水部を実現することもできる。
【0048】
図7乃至図9は、湯水が広がりながら落下するシャワー吐水を実現するためのノズルの一例を示す図である。図7は、ノズル全体を示す斜視図である。図8は、図7のVIII-VIII線に沿う部分拡大断面図であり、図9は、図7のIX-IX線に沿う部分拡大断面図である。
【0049】
図7に示すように、散水部であるノズル18は、全体として円柱形に形成されており、シャワーヘッド本体4の各散水部取付凹部4bに嵌め込んで使用することができる。図7乃至図9に示すように、円柱形のノズル18の中心軸線に沿って、円形断面の通路18aが形成されている。また、この円形断面の通路18aの先端には、ドーム形状(半球形状)の内壁面18bが形成されている。さらに、ノズル18の先端面にはV字型断面の溝18cが設けられており、この溝18cの最深部が、ドーム形状の内壁面18bの一部を切り欠いている。
【0050】
この構成により、シャワーヘッド本体4内の給水通路4aによって導かれた湯水はノズル18の通路18aに流入し、通路18aによって導かれた湯水は、内壁面18bに設けられた切欠から、V字型断面の溝18cの底に流出し、下方(図7乃至図9における上方)に向けて吐出される。これにより、図8に示すように、ノズル18から吐出される湯水Wは、円錐又は楕円錐状に広がりながら落下する。なお、本変形例においては、楕円錐の長軸が、楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向に向くように、各ノズル18がシャワーヘッド本体4に取り付けられている。また、本変形例においては、シャワーヘッド本体4にノズル18を取り付けることによりシャワーヘッド本体4に散水部を設けているが、シャワーヘッド本体4を構成する部材に直接ノズル孔を形成して散水部を設けることもできる。
【0051】
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の形状が、上述した第1実施形態とは異なっている。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。図10は、本発明の第2実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
【0052】
図10に示すように、本発明の第2実施形態によるシャワー装置に備えられたシャワーヘッド本体20は、長方形の環状に構成されている。この環状に構成されたシャワーヘッド本体20に沿って、複数の散水部が設けられており、使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水が形成される。各散水部から吐出される湯水は、扁平な扇形形状に広がりながら落下するように構成されている。また、扇形形状に広がる各シャワー吐水は、シャワーヘッド本体20の各辺と夫々平行に向けられており、各散水部から所定距離落下した位置で互いに合流し、使用者の身体の周囲に水膜を形成する。さらに、吐出される各シャワー吐水がシャワーヘッド本体20の中心へ向かうように、各散水部は斜め下方に向けて取り付けられており、吐出された湯水によって囲まれる吐水空間は、下方に向けて窄まるように構成されている。なお、シャワーヘッド本体20に設ける複数の散水部として、図3に例示した流体素子や、図7に例示したノズル等、任意の構成を採用することができる。
【0053】
次に、図11を参照して、本発明の第3実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の形状が、上述した第1実施形態とは異なっている。従って、ここでは、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。図11は、本発明の第3実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
【0054】
図11に示すように、本発明の第3実施形態によるシャワー装置に備えられたシャワーヘッド本体30は、2つの直線状のシャワーヘッド本体30a、30bから構成されている。この直線状に構成された各シャワーヘッド本体30a、30bに沿って、複数の散水部が設けられており、使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水が形成される。ここで、各散水部から吐出される湯水は、扁平な扇形形状に広がりながら落下するように構成されている。さらに、各シャワーヘッド本体30a、30bの中央部に設けられている散水部は、各シャワーヘッド本体30a、30bが延びる方向と平行な扇形形状のシャワー吐水を吐出する。これに対し、各シャワーヘッド本体30a、30bの端部付近に設けられた散水部は、各シャワーヘッド本体30a、30bが延びる方向に対して、ほぼ直角に向けられた扇形形状のシャワー吐水を吐出する。
【0055】
さらに、各シャワーヘッド本体30a、30bに設けられた散水部は、吐出されたシャワー吐水が互いに近づく方向に、斜め下方に向けて湯水を吐出する。このため、吐出された湯水によって囲まれる吐水空間は、下方に向けて窄まるように構成される。また、シャワーヘッド本体30a及び30bの端部付近に設けられた各散水部から吐出されるシャワー吐水は、所定距離落下した位置で互いに合流するように向けられている。このため、直線状に構成された2つのシャワーヘッド本体30a、30bから吐出されたシャワー吐水によって、2つのシャワーヘッド本体30a、30bの間に立っている使用者の頭部が取り囲まれる。なお、シャワーヘッド本体30に設ける複数の散水部として、図3に例示した流体素子や、図7に例示したノズル等、任意の構成を採用することができる。
【0056】
次に、図12を参照して、本発明の第4実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の形状が、上述した第1実施形態とは異なっている。従って、ここでは、本発明の第4実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。図12は、本発明の第4実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
【0057】
図12に示すように、本発明の第4実施形態によるシャワー装置に備えられたシャワーヘッド本体40は、湾曲して延びる2つのシャワーヘッド本体40a、40bから構成されている。これらのシャワーヘッド本体40a、40bは両端部が互いに近づくように湾曲して延びており、これに沿って、複数の散水部が設けられている。これにより、使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水が形成される。ここで、各散水部から吐出される湯水は、扁平な扇形形状に広がりながら落下するように構成されている。さらに、各シャワーヘッド本体40a、40bの中央部に設けられている散水部は、各シャワーヘッド本体40a、40bが延びる方向の接線方向に広がる扇形形状のシャワー吐水を吐出する。これに対し、各シャワーヘッド本体40a、40bの端部付近に設けられた散水部は、各シャワーヘッド本体40a、40bが延びる方向に対して、直角に近い角度で扇形形状のシャワー吐水を吐出する。
【0058】
さらに、各シャワーヘッド本体40a、40bに設けられた散水部は、吐出されたシャワー吐水が互いに近づく方向に、斜め下方に向けて湯水を吐出する。このため、吐出された湯水によって囲まれる吐水空間は、下方に向けて窄まるように構成される。また、シャワーヘッド本体40a及び40bの端部付近に設けられた各散水部から吐出されるシャワー吐水は、所定距離落下した位置で互いに合流するように向けられている。このため、湾曲して構成された2つのシャワーヘッド本体40a、40bから吐出されたシャワー吐水によって、2つのシャワーヘッド本体40a、40bの間に立っている使用者の頭部が取り囲まれる。なお、シャワーヘッド本体40に設ける複数の散水部として、図3に例示した流体素子や、図7に例示したノズル等、任意の構成を採用することができる。
【0059】
次に、図13乃至図16を参照して、本発明の第5実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の各散水部に湯水を供給する構造が上述した第1実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第5実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同一の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0060】
図13は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置を示す斜視図である。図14は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置に備えられているシャワーヘッド本体の上カバーを取りはずした状態を示す斜視図である。図15は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置に備えられているシャワーヘッド本体の断面図である。図16は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置における散水部の取り付け構造を示す分解斜視図である。
【0061】
図13に示すように、本実施形態のシャワー装置51は、シャワー室の側壁面2aに対して固定されている。また、シャワー装置51は、シャワーヘッド本体52と、このシャワーヘッド本体52を側壁面2aに対して取り付けるための支持部材56と、を有する。
【0062】
シャワーヘッド本体52は、全体として楕円形の環状の部材であり、この楕円形の環に沿って、複数の散水部が間隔を空けて設けられている。また、シャワーヘッド本体52は、楕円環状の環状部52aと、この環状部52aの中心から放射状に延びる3本の湯水供給部52bから構成されている。
【0063】
環状部52aは楕円環状の部分であり、その下面には、間隔を空けて複数の散水部が設けられている。また、後述するように、環状部52aの内部には、各散水部に湯水を供給するための給水通路が設けられている。一方、各湯水供給部52bは、環状部52aの中心から放射状に延び、それらの先端が環状部52aに夫々接続されている。具体的には、1本の湯水供給部52bが環状部52aの中心から側壁面2aの方向に延び、側壁面2aの反対の方向には2本の湯水供給部52bが延びており、各湯水供給部52bの先端が環状部52aと夫々接続されている。また、各湯水供給部52bの先端と環状部52aが夫々接続される3つの点の間の長さは、ほぼ同一になるように構成されている。
【0064】
次に、支持部材56は、側壁面2aの上部から概ね水平方向に延びるように取り付けられた部材であり、シャワーヘッド本体52を所定の高さに支持するように構成されている。さらに、支持部材56はシャワーヘッド本体52の上面に接続されており、支持部材56の先端は、シャワーヘッド本体52中心の、3本の湯水供給部52bの結合部に連結されている。また、支持部材56の内部には給水路(図示せず)が設けられており、この給水路を通って供給された湯水がシャワーヘッド本体52の各湯水供給部52bに流入し、環状部52aの下面に設けられた各散水部から吐出される。
【0065】
なお、本実施形態においては、支持部材56の先端部にシャワーヘッド本体52が剛接されているが、変形例として、支持部材56とシャワーヘッド本体52の間にボールジョイント(図示せず)を設けておき、シャワーヘッド本体52を支持部材56に対して角度調整可能に固定することもできる。この場合、ボールジョイント(図示せず)は、支持部材56の先端と3本の湯水供給部52bの結合部の間に設けられ、ボールジョイントはシャワーヘッド本体52の重心の近傍に位置することになる。このため、シャワーヘッド本体52に作用する重力に基づきボールジョイントの回転中心に対して作用する力のモーメントは比較的小さくなり、ボールジョイントにより、シャワーヘッド本体52を容易に任意の角度位置に固定することができる。
【0066】
さらに、シャワーヘッド本体52は、上カバー53と、流路形成部材54と、下カバー55から構成されており、これらの上カバー53と流路形成部材54を結合することにより、シャワーヘッド本体52の各散水部に湯水を供給するための給水通路が形成される。
【0067】
図14に示すように、流路形成部材54は、環状の部分と、この環状の部分の中心から放射状に延びる3本の直線状の部分から構成されている。この環状の部分はシャワーヘッド本体52の環状部52aの一部を構成し、各直線状の部分は湯水供給部52bの一部を構成している。さらに、環状の部分には、環状に延びる環状通路54aが環状部52a内を一周するように形成され、各直線状の部分には分配通路54bが夫々形成されている。即ち、3本の分配通路54bは、シャワーヘッド本体52の中央から放射状に延び、それらの先端が環状通路54aに連通されている。このように、環状通路54aには、各分配通路54bを介して複数箇所から湯水が流入する。
【0068】
一方、環状通路54aに沿って、複数の連通孔54cが設けられており、これらの連通孔54cは、流路形成部材54の下面側に設けられた散水部取付凹部54d(図15)の中に連通している。これにより、シャワーヘッド本体52の環状部52aの中に形成された環状通路54aと、各散水部取付凹部54dが連通し、それらの中に取り付けられた流体素子10(図15)に湯水が供給される。
【0069】
次に、図15及び図16に示すように、流路形成部材54の下面側には、環状通路54aに沿って複数の散水部取付凹部54dが設けられている。そして、上述した第1実施形態と同様に、各散水部取付凹部54dは略円筒形に形成され、散水部である流体素子10を保持した散水部保持部材58が着脱自在に嵌め込まれている。流体素子10の構造は、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0070】
散水部保持部材58は、全体として略円柱状の部材であり、散水部である流体素子10を保持するように構成されている。散水部保持部材58は、中心軸線に対して所定角度傾斜するように、流体素子10を保持している。これにより、湯水はシャワーヘッド本体52から斜め下方に向けて吐出される。また、散水部保持部材58の外周には溝58aが設けられており、この溝58aにOリング(図示せず)を配置することにより、散水部保持部材58と散水部取付凹部54dの間の水密性が確保されている。
【0071】
さらに、図16に示すように、散水部保持部材58の外周面の2箇所には、装着用溝58bが設けられている(図16には1つのみ図示)。各装着用溝58bは鈎形に形成され、散水部保持部材58の上端から軸線方向に延びる軸線方向部と、この軸線方向部の下端から散水部保持部材58の円周方向に延びる円周方向部から構成されている。一方、散水部取付凹部54dの内壁面には、各装着用溝58bの軸線方向部に対応する位置に、2つの係合突起54eが設けられている(図16には1つのみ図示)。
【0072】
散水部保持部材58を装着する際には、まず、各係合突起54eが各装着用溝58bの軸線方向部の中に受け入れられるように、散水部保持部材58を散水部取付凹部54dに嵌め込む。次いで、散水部保持部材58を回動させることにより、各係合突起54eが各装着用溝58bの円周方向部に受け入れられ、散水部保持部材58を流路形成部材54に固定することができる。なお、本実施形態においては、各係合突起54eが各装着用溝58bの円周方向部の端に当接するまで散水部保持部材58を回動させることにより、散水部保持部材58に保持された流体素子10が適正な方向に向くように構成されている。
【0073】
なお、上述した第1実施形態と同様に、シャワーヘッド本体52に設けられた各流体素子10は、噴射される湯水の振動平面(図4の紙面に平行な平面)が楕円形の環状部52aの接線方向に向くように夫々取り付けられている。また、各流体素子10を設ける間隔は一定ではなく、各流体素子10から噴射される湯水により使用者が心地よく包み込まれるように、それらの間隔が調整されている。本実施形態においては、隣り合う流体素子10の間隔は、約43mm~約167mmに設定されている。好ましくは、各流体素子10の間隔は、約30mm~約200mmに設定する。これに対し、従来の典型的な円板状のオーバーヘッドシャワーでは、シャワーヘッド全体に、散水孔が約10mm~約30mm程度の間隔で均一に設けられている。
【0074】
次に、本発明の第5実施形態によるシャワー装置51の作用を説明する。
まず、使用者がシャワー装置51からの吐水を開始させる操作を行うと、シャワー装置51への湯水の供給が開始される。供給された湯水は支持部材56の内部に形成された給水通路(図示せず)を通って、シャワーヘッド本体52の中に流入する。シャワーヘッド本体52の中に流入した湯水は、3本の湯水供給部52bの結合部において3つに分岐される。即ち、シャワーヘッド本体52に供給された湯水は、図14に矢印で示すように、湯水供給部52bの中で3つの分配通路54bに分配され、各分配通路54bの先端から環状通路54aに流入する。
【0075】
各分配通路54bの先端から環状通路54aに入った湯水は、図14に矢印で示すように、2つに分岐して環状通路54aの中に両方向に流れ込み、環状通路54a全体に行き渡る。これにより、湯水は、環状通路54aに沿って設けられた各連通孔54cを通って各散水部取付凹部54dに流入する。散水部取付凹部54dに流入した湯水は、散水部取付凹部54dに嵌め込まれている散水部保持部材58で保持された流体素子10に流入する。各流体素子10に供給された湯水は、往復振動しながら吐出される。シャワーヘッド本体52から吐出される湯水の態様は、上述した第1実施形態(図6)と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
ここで、本実施形態においては、シャワーヘッド本体52に供給された湯水が3つの分配通路54bに分配された後、環状通路54aに流入する。このため、給水源から各流体素子に至るまでに通過する給水通路の距離が均一化され、各流体素子10には、比較的均一な給水圧で湯水が供給される。この結果、各流体素子10から吐出される湯水の流量がより均一になり、使用者によるシャワーの浴び感が、より均一になる。
【0077】
また、例えば、複数の流体素子10のうちの一部の流体素子10に供給される湯水の圧力が低い場合には、噴射される湯水が設計値通りの振幅で往復振動せず、隣り合う流体素子10からの吐水が十分に重なり合わない虞がある。また、流体素子10に供給される湯水の圧力が低い場合には、吐出される湯水の水勢が弱く、湯水が設計値通りの角度で使用者に着水できなくなる虞もある。本実施形態のシャワー装置51によれば、分配通路54bによって湯水を分配することにより、各流体素子10に比較的均一な給水圧で湯水を供給することができ、給水圧が低い場合でも、ほぼ設計値通りのシャワー吐水を行うことができる。
【0078】
なお、上述した本発明の第2乃至第4実施形態を示す図10乃至図12には、供給された湯水をシャワーヘッド本体に流入させる供給経路が図示されていないが、上記の第5実施形態のように、分配通路を使用してシャワーヘッド本体に湯水を供給することもできる。
【0079】
例えば、図10に示す第2実施形態においては、シャワーヘッド本体20の長辺の中点同士、短辺の中点同士を接続するように十字の分配通路(図示せず)を設けることができる。この場合には、支持部材から供給された湯水を十字の交点から流入させ、分配通路を通って矩形環状のシャワーヘッド本体20の4箇所から湯水を流入させるように本発明を構成するのが良い。これにより、給水源から各流体素子に至るまでに通過する給水通路の距離が均一化され、シャワーヘッド本体20に設けられた各散水部に比較的均一な給水圧で湯水を供給することができる。
【0080】
また、図11図12に示す第3、第4実施形態においては、前後2つに分離された各シャワーヘッド本体の中点同士を接続するように、前後方向に延びる分配通路(図示せず)を設けることができる。この場合には、支持部材から供給された湯水を分配通路の中点から流入させ、分配通路を通って各シャワーヘッド本体の中央から湯水を流入させるように本発明を構成するのが良い。これにより、給水源から各流体素子に至るまでに通過する給水通路の距離が均一化され、シャワーヘッド本体に設けられた各散水部に比較的均一な給水圧で湯水を供給することができる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 シャワー装置
2 シャワー室
2a 側壁面
4 シャワーヘッド本体
4a 給水通路
4b 散水部取付凹部
6 支持部材
8 散水部保持部材
10 流体素子(散水部)
10a 吐水口
10b 鍔部
10c 溝
10d 流入口
12a 給水通路
12b 渦列通路
12c 整流通路
14 段部
16 湯水衝突部
18 ノズル
18a 通路
18b 内壁面
18c 溝
20 シャワーヘッド本体
30 シャワーヘッド本体
30a、30b シャワーヘッド本体
40 シャワーヘッド本体
40a、40b シャワーヘッド本体
51 シャワー装置
52 シャワーヘッド本体
52a 環状部
52b 湯水供給部
53 上カバー
54 流路形成部材
54a 環状通路
54b 分配通路
54c 連通孔
54d 散水部取付凹部
54e 係合突起
55 下カバー
56 支持部材
58 散水部保持部材
58a 溝
58b 装着用溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16