IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シャワー装置 図1
  • 特開-シャワー装置 図2
  • 特開-シャワー装置 図3
  • 特開-シャワー装置 図4
  • 特開-シャワー装置 図5
  • 特開-シャワー装置 図6
  • 特開-シャワー装置 図7
  • 特開-シャワー装置 図8
  • 特開-シャワー装置 図9
  • 特開-シャワー装置 図10
  • 特開-シャワー装置 図11
  • 特開-シャワー装置 図12
  • 特開-シャワー装置 図13
  • 特開-シャワー装置 図14
  • 特開-シャワー装置 図15
  • 特開-シャワー装置 図16
  • 特開-シャワー装置 図17
  • 特開-シャワー装置 図18
  • 特開-シャワー装置 図19
  • 特開-シャワー装置 図20
  • 特開-シャワー装置 図21
  • 特開-シャワー装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095519
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】シャワー装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162467
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022211339
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】八板 遼平
(72)【発明者】
【氏名】中島 平裕
(72)【発明者】
【氏名】関 大輝
(72)【発明者】
【氏名】陳 祖河
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132FA03
2D132FB01
2D132FC02
2D132FD01
2D132FJ01
2D132FJ07
2D132FJ17
2D132FJ22
2D132FJ23
(57)【要約】
【課題】シャワーヘッド本体をコンパクトに維持しながら、使用者の顔を避けつつ、十分な水量で使用者の身体にシャワー吐水を当てることができるシャワー装置を提供する。
【解決手段】本発明は、使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置(1)であって、シャワーヘッド本体(4)と、このシャワーヘッド本体に設けられた複数の散水部(10)と、を有し、第1の散水部(10A)は、鉛直方向に向けられた第1の着水平面(P1)の一方の面に湯水を着水させるように構成され、第2の散水部(10B)は、第1の着水平面の他方の面に湯水を着水させるように構成され、第1の散水部から吐出され、第1の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度(α1)は、第2の散水部から吐出され、第1の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度(α2)よりも大きいことを特徴としている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置であって、
シャワーヘッド本体と、
このシャワーヘッド本体に設けられ、上記シャワーヘッド本体の下方に立っている使用者に向けて、使用者を取り囲むように斜め下方にシャワー吐水を行う複数の散水部と、を有し、
上記複数の散水部のうちの第1の散水部は、上記シャワーヘッド本体の下方で鉛直方向に向けられた仮想的な第1の着水平面の一方の面に湯水を着水させるように構成され、上記複数の散水部のうちの第2の散水部は、上記第1の着水平面の他方の面に湯水を着水させるように構成され、
上記第1の散水部から吐出され、上記第1の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度は、上記第2の散水部から吐出され、上記第1の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度よりも大きいことを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
上記複数の散水部のうちの第3の散水部は、鉛直方向に向けられ、且つ上記第1の着水平面と直交する第2の着水平面の一方の面に湯水を着水させるように構成され、上記複数の散水部のうちの第4の散水部は、上記第2の着水平面の他方の面に湯水を着水させるように構成され、上記第2の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度と、上記第2の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度は略同一である請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
上記第3の散水部から吐出され、上記第2の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度、及び上記第4の散水部から吐出され、上記第2の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度は、上記第2の散水部から吐出され、上記第1の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度よりも大きい請求項2記載のシャワー装置。
【請求項4】
上記第1の散水部は、膜状に湯水を吐出させるように構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載のシャワー装置。
【請求項5】
上記第1の散水部は、上記第2の散水部よりも水平に近い角度で湯水を吐出するように、上記シャワーヘッド本体に設けられている請求項1乃至3の何れか1項に記載のシャワー装置。
【請求項6】
上記第1の散水部は、湯水を吐出する角度を変更できるように、角度調整可能に構成されている請求項5記載のシャワー装置。
【請求項7】
上記シャワーヘッド本体は、環状に構成され、内部に環状通路が設けられた環状部と、この環状部に連結され、内部に複数の分配通路が設けられた湯水供給部と、を有し、上記環状通路には、上記各分配通路を介して複数箇所から湯水が流入する請求項1記載のシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関し、特に、使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-15192号公報(特許文献1)には、シャワー装置が記載されている。このシャワー装置は、円盤状に構成され、天井に取り付けて使用される。円盤状のシャワー装置の周縁部には多数の散水孔が円周上に並べて設けられており、各散水孔から線状に湯水が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-15192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、単に洗体を行うだけでなく、使用者が上方から落下するシャワー吐水を比較的長い時間、リラックスした状態で浴びることができ、シャワーを浴びている時間を楽しむことにより、疲労回復や、ストレス解消効果を得ることができるシャワー装置の開発を行っている。ここで、シャワー装置の使用者の顔に直接シャワー吐水が掛かると、使用者は息苦しさを感じやすく、長時間シャワーを浴び続けることが難しくなる。特許文献1記載のシャワー装置においては、円盤状に構成されたシャワーヘッドの周縁部に散水孔が並べて配置されているため、散水孔を配置する円周を大きくすることにより、使用者の顔には直接シャワー吐水が当たりにくくなる。しかしながら、円周を大きくすると、吐出された湯水は、使用者の身体の周囲を直接落下してしまい、使用者は十分な水量を浴びることができなくなる。
【0005】
一方、使用者の上方に固定したシャワーヘッド本体から、斜め下方に向けてシャワー吐水を行うことにより、使用者の顔に直接シャワー吐水が当たるのを避けつつ、使用者の身体に十分な水量でシャワー吐水を当てることが可能になる。ここで、使用者の顔を避けつつ、使用者の身体にシャワー吐水を当てるには、鉛直な平面に対し、できるだけ大きな角度(直角に近い角度)でシャワー吐水が着水するように散水孔を配置する必要がある。しかしながら、使用者の上方に固定したシャワーヘッド本体から、大きな角度でシャワー吐水を着水させようとすると、シャワーヘッド本体が大型化するという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、シャワーヘッド本体をコンパクトに維持しながら、使用者の顔を避けつつ、十分な水量で使用者の身体にシャワー吐水を当てることができるシャワー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように固定されたシャワー装置であって、シャワーヘッド本体と、このシャワーヘッド本体に設けられ、シャワーヘッド本体の下方に立っている使用者に向けて、使用者を取り囲むように斜め下方にシャワー吐水を行う複数の散水部と、を有し、複数の散水部のうちの第1の散水部は、シャワーヘッド本体の下方で鉛直方向に向けられた仮想的な第1の着水平面の一方の面に湯水を着水させるように構成され、複数の散水部のうちの第2の散水部は、第1の着水平面の他方の面に湯水を着水させるように構成され、第1の散水部から吐出され、第1の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度は、第2の散水部から吐出され、第1の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度よりも大きいことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、第1の散水部から吐出された湯水の着水角度は、第2の散水部から吐出された湯水の着水角度よりも大きいため、シャワーヘッド本体の下方に第1の散水部の方を向いて使用者が立つことにより、シャワー吐水が使用者の顔に当たりにくくなる。一方、第2の散水部からの湯水の着水角度は小さくしても、シャワー吐水は使用者の顔には当たりにくいので、シャワーヘッド本体をコンパクトに構成することができる。これにより、シャワーヘッド本体をコンパクトに維持しながら、使用者の顔を避けつつ、十分な水量で使用者の身体にシャワー吐水を当てることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、複数の散水部のうちの第3の散水部は、鉛直方向に向けられ、且つ第1の着水平面と直交する第2の着水平面の一方の面に湯水を着水させるように構成され、複数の散水部のうちの第4の散水部は、第2の着水平面の他方の面に湯水を着水させるように構成され、第2の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度と、第2の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度は略同一である。
【0010】
使用者が第1の散水部の方を向いて立った場合、第3、第4の散水部から第2の着水平面に夫々着水する湯水は、使用者の側方に当たるので、使用者の周囲全体をシャワー吐水で取り囲むことができる。また、第3、第4の散水部から第2の着水平面に夫々着水する湯水の着水角度は略同一であるため、使用者は、シャワーヘッド本体の下方で立つべき方向を容易に認識することができ、適正にシャワー装置を使用することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、第3の散水部から吐出され、第2の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度、及び第4の散水部から吐出され、第2の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度は、第2の散水部から吐出され、第1の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度よりも大きい。
【0012】
使用者が第1の散水部の方を向いて立った場合、第3、第4の散水部から第2の着水平面に夫々着水する湯水は、使用者の側方に当たる。上記のように構成された本発明によれば、第3、第4の散水部から第2の着水平面に着水する湯水の着水角度は、第2の散水部から第1の着水平面に着水する湯水の着水角度よりも大きいので、シャワー吐水が使用者の顔の側面に当たるのも抑制することができる。この結果、使用者に与える圧迫感を軽減することができ、より長時間シャワーを浴びることが可能になる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第1の散水部は、膜状に湯水を吐出させるように構成されている。
【0014】
使用者が第1の散水部の方を向いて立った場合、第1の散水部から吐出された湯水が、使用者の正面に当たる。上記のように構成された本発明によれば、第1の散水部は膜状に湯水を吐出させるので、使用者の上半身に当たった湯水が顔に向けて飛散した場合でも、第1の散水部からの膜状の湯水により、飛散した湯水が顔に当たるのをブロックすることができる。この結果、使用者に与える圧迫感を軽減することができ、より長時間シャワーを浴びることが可能になる。
【0015】
本発明において、好ましくは、第1の散水部は、第2の散水部よりも水平に近い角度で湯水を吐出するように、シャワーヘッド本体に設けられている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、第1の散水部が第2の散水部よりも水平に近い角度で湯水を吐出することにより、第1の着水平面の一方の面に着水する湯水の着水角度を、第1の着水平面の他方の面に着水する湯水の着水角度よりも大きくしている。このため、着水角度が各散水部から吐出される湯水の水勢等の影響を受けにくく、第1の散水部から吐出された湯水の着水角度を確実に大きくすることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、第1の散水部は、湯水を吐出する角度を変更できるように、角度調整可能に構成されている。
【0018】
このように構成された本発明によれば、第1の散水部は、湯水を吐出する角度が変更可能に角度調整可能に構成されているので、シャワー装置を使用する使用者の身長や、好みに合わせて第1の散水部からの湯水の着水角度を変更することができ、より快適にシャワーを浴びることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、シャワーヘッド本体は、環状に構成され、内部に環状通路が設けられた環状部と、この環状部に連結され、内部に複数の分配通路が設けられた湯水供給部と、を有し、環状通路には、各分配通路を介して複数箇所から湯水が流入する。
【0020】
このように構成された本発明によれば、各分配通路を介して複数箇所から環状通路に湯水が流入するので、給水源から各散水部に至るまでに通過する給水通路の距離が均一化され、各散水部には、比較的均一な給水圧で湯水が供給される。この結果、各散水部から吐出される湯水の流量がより均一になり、使用者によるシャワーの浴び感が、より均一になる。また、各散水部に均一に湯水が供給されるので、第1の散水部及び第2の散水部から吐出された湯水の、着水平面に対する着水角度の関係を、シャワーヘッド本体への給水圧が低い場合でも設計値通りに維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシャワー装置によれば、シャワーヘッド本体をコンパクトに維持しながら、使用者の顔を避けつつ、十分な水量で使用者の身体にシャワー吐水を当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態によるシャワー装置をシャワー室に設置した状態を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態によるシャワー装置のシャワーヘッド本体を拡大して示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態によるシャワー装置に備えられている流体素子の斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6】本発明の第1実施形態によるシャワー装置のシャワーヘッド本体から吐出されるシャワーを浴びている使用者を模式的に示す側面図である。
図7】本発明の第1実施形態によるシャワー装置のシャワーヘッド本体から吐出されるシャワーを浴びている使用者を模式的に示す正面図である。
図8】本発明の第1実施形態によるシャワー装置に備えられている散水部の変形例によるノズル全体を示す斜視図である。
図9図8のIX-IX線に沿う部分拡大断面図である。
図10図8のX-X線に沿う部分拡大断面図である。
図11】本発明の第2実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
図12】本発明の第3実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
図13】本発明の第3実施形態によるシャワー装置において、シャワーヘッド本体の内部に設けられている給水流路を示す図である。
図14】本発明の第3実施形態によるシャワー装置において、シャワーヘッド本体に設けられている散水部を拡大して示す断面図である。
図15】本発明の第3実施形態によるシャワー装置に備えられている散水部の変形例を示す斜視図である。
図16】本発明の第3実施形態によるシャワー装置に備えられている散水部の更なる変形例を示す斜視図である。
図17】本発明の第4実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
図18】本発明の第4実施形態によるシャワー装置において、シャワーヘッド本体の各散水部から吐出されたシャワー吐水が着水平面に着水する状態を模式的に示す図である。
図19】本発明の第5実施形態によるシャワー装置を示す斜視図である。
図20】本発明の第5実施形態によるシャワー装置において、シャワーヘッド本体の上部材を取りはずした状態を示す斜視図である。
図21】本発明の第5実施形態によるシャワー装置に備えられているシャワーヘッド本体の断面図である。
図22】本発明の第5実施形態によるシャワー装置における散水部の取り付け構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるシャワー装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置をシャワー室に設置した状態を示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置のシャワーヘッド本体を拡大して示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のシャワー装置1は、シャワー室2の側壁面2aに対して固定されている。また、シャワー装置1は、シャワーヘッド本体4と、このシャワーヘッド本体4を側壁面2aに対して取り付けるための支持部材6と、を有する。
【0025】
シャワーヘッド本体4は、全体として楕円形の環状の部材であり、この楕円形の環に沿って、複数の散水部が間隔を空けて設けられている。
また、支持部材6は、側壁面2aの上部から概ね水平方向に延びるように取り付けられた部材であり、シャワーヘッド本体4を所定の高さに支持するように構成されている。さらに、支持部材6の内部には給水路(図示せず)が設けられており、この給水路を通って供給された湯水がシャワーヘッド本体4内に流入し、各散水部から吐出される。
【0026】
なお、本実施形態において、シャワーヘッド本体4は、側壁面2aから延びる支持部材6を介して側壁面2aに固定されているが、天井面から延びる支持部材を介してシャワーヘッド本体を天井面に固定しても良い。或いは、シャワー室等の床面から柱状の構造物を立ち上げておき、この構造物により、使用者の上方の比較的高い位置にシャワーヘッド本体4を固定しても良い。また、シャワーヘッド本体は、支持部材を介さず、側壁面又は天井面に直接固定されていても良い。本明細書において、「側壁面又は天井壁面に対して固定されるシャワーヘッド本体」には、シャワーヘッド本体を支持部材を介して固定する態様、及びシャワーヘッド本体を側壁面又は天井面に直接固定する態様が含まれるものとする。
【0027】
なお、シャワー装置1は、使用時においては各散水部から吐水が為され、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者に上方からシャワー吐水を浴びせるように構成されている。また、環状のシャワーヘッド本体4に沿って散水部が設けられているため、各散水部により、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者の頭部を取り囲むようにシャワー吐水が形成される。即ち、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者から見て、吐水が使用者の身体に前面、背面、左右側面から着水し、シャワー吐水により使用者の頭部が取り囲まれる。
【0028】
次に、図2を参照して、シャワーヘッド本体4の内部構造を説明する。
上述したように、シャワーヘッド本体4は、全体として楕円形の環状に構成されている。このシャワーヘッド本体4の内部には、環状の形態に沿って延びる給水通路4aが設けられている。支持部材6の内部に形成された給水路(図示せず)を通って供給された湯水は、シャワーヘッド本体4内の給水通路4aに流入し、シャワーヘッド本体4全体に供給される。
【0029】
さらに、シャワーヘッド本体4には、給水通路4aに沿って、所定の間隔で散水部取付凹部4bが複数設けられている。これらの散水部取付凹部4bは鉛直方向に延びる円筒形の窪みであり、給水通路4aと連通するように形成されると共に、シャワーヘッド本体4の下面に向けて開口している。即ち、シャワーヘッド本体4の給水通路4a内を流れる湯水は、散水部取付凹部4bに流入する。
【0030】
また、各散水部取付凹部4bには、散水部保持部材8が夫々嵌め込まれている。散水部保持部材8は円柱形の部材であり、各散水部取付凹部4bの中に水密的に取り付けられている。さらに、各散水部保持部材8の中には、散水部である流体素子10が保持されている。この流体素子10は、散水部保持部材8の下面から湯水を吐出するように、散水部保持部材8によって保持されている。また、流体素子10は散水部保持部材8によって斜め下方に向けて保持されており、流体素子10は、楕円形のシャワーヘッド本体4の中心に向かって、斜め下方に向けて湯水を吐出する。なお、散水部保持部材8は、散水部取付凹部4bに対し着脱自在に構成されている。
【0031】
次に、図3乃至図5を参照して、シャワー装置1に備えられている散水部である流体素子10の構成を説明する。
図3は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置に備えられている流体素子の斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図であり、図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
【0032】
図3に示すように、流体素子10は概ね薄い直方体状の部材であり、その正面側の端面には長方形の吐水口10aが設けられ、背面側の端部には鍔部10bが形成されている。さらに、流体素子10の周囲を一周するように、鍔部10bと平行に溝10cが設けられている。この溝10cにはOリング(図示せず)が嵌め込まれ、散水部保持部材8との間の水密性が確保される。
【0033】
図4に示すように、流体素子10の内部には、長手方向に貫通するように長方形断面の通路が形成されている。この通路は、上流側から順に、給水通路12a、渦列通路12b、整流通路12cとして形成されている。
給水通路12aは、流体素子10背面側の流入口10dから延びる断面積一定の長方形断面の直線状の通路である。
渦列通路12bは、給水通路12aの下流側に、給水通路12aに連なるように(段差なく)設けられた長方形断面の通路である。即ち、給水通路12aの下流端と、渦列通路12bの上流端は、同一の寸法形状を有している。渦列通路12bの対向する一対の壁面(両側壁面)は、下流側に向けて流路断面積が渦列通路12b全体に亘って縮小するようにテーパして構成されている。即ち、渦列通路12bは下流側に向けて細く、次第に幅が狭くなるように構成されている。
【0034】
整流通路12cは、渦列通路12bと連通するように下流側に設けられた長方形断面の通路であり、断面積一定で直線状に形成されている。この整流通路12cにより、渦列通路12bによって導かれた渦列を含む湯水が整流され、吐水口10aから吐出される。この整流通路12cの流路断面積は、渦列通路12bの下流側端部の流路断面積よりも小さく構成されており、渦列通路12bと整流通路12cの間には段部14が形成されている。この段部14の表面である段部壁面は、渦列通路12bの中心軸線に対して直交する方向に向けられている。
【0035】
一方、図5に示すように、給水通路12a、渦列通路12b、及び整流通路12cの高さ方向に対向する壁面(天井面及び床面)は、全て同一平面上に設けられている。即ち、給水通路12a、渦列通路12b、及び整流通路12cの高さは全て同一で、一定である。
【0036】
次に、給水通路12aの下流側端部(給水通路12aと渦列通路12bの接続部近傍)には湯水衝突部16が形成されており、この湯水衝突部16は給水通路12aの流路断面の一部を閉塞するように設けられている。この湯水衝突部16は、給水通路12aの高さ方向に対向する壁面(天井面及び床面)を連結するように延びる三角柱状の部分であり、給水通路12aの幅方向の中央に、島状に配置されている。湯水衝突部16の断面は、二等辺三角形状に形成されており、その斜辺が給水通路12aの中心軸線と直交するように配置され、また、二等辺三角形の頂角の部分は下流側に向くように配置されている。
【0037】
この湯水衝突部16を設けることにより、その下流側にカルマン渦が生成され、吐水口10aから吐出される湯水が往復振動される。即ち、支持部材6の給水路(図示せず)から供給された湯水は、シャワーヘッド本体4内の給水通路4a(図2)に流入し、さらに、散水部保持部材8に保持された各流体素子10の流入口10dに流入する。各流体素子10の流入口10dから給水通路12aに流入した湯水は、その流路の一部を閉塞するように設けられた湯水衝突部16に衝突する。これにより、湯水衝突部16の下流側には、交互に反対回りのカルマン渦の渦列が形成される。この湯水衝突部16により形成されたカルマン渦は、テーパ状に先が細くなった渦列通路12bによって導かれながら成長し、整流通路12cに至る。
【0038】
渦列通路12bの下流側の整流通路12cに流入した湯水は、ここで整流される。この整流通路12cを経て吐水口10aから吐出される湯水は、吐水口10aにおける流速分布に基づいて曲げられ、流速の高い部分が図4における上下方向に移動するに従って、吐出方向が変化する。即ち、湯水の流速の高い部分が図4における吐水口10aの上端に位置する状態では、湯水は下方に向けて噴射され、流速の高い部分が吐水口10aの下端に位置する状態では、湯水は上方に向けて噴射される。このように、湯水衝突部16の下流側に交互にカルマン渦を発生させることにより、吐水口10aにおいて流速分布が発生して、噴流が偏向する。また、渦列の進行により流速の速い部分の位置が往復運動するため、噴射される湯水も概ね所定の振動平面(図4の紙面に平行な平面)内で正弦波状に往復振動する。
【0039】
ここで、図2に示すように、本実施形態において、各流体素子10は斜め下方に向けて取り付けられているため、流体素子10の吐水口10aから吐出された湯水は、概ね所定の振動平面内で扇状に広がりながら落下する。即ち、流体素子10の吐水口10aから吐出された湯水が正弦波状に往復振動することにより、一定時間当たりの吐水の軌跡が扇状に広がる。また、本実施形態において、各流体素子10は、その振動平面が、楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向(周方向)に向くように、シャワーヘッド本体4に取り付けられている。これにより、シャワーヘッド本体4の下方には、全体として、楕円形断面の筒状のシャワー吐水が形成され、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者の頭部が、シャワー吐水によって取り囲まれる。
【0040】
なお、流体素子10の吐水口10aから吐出された湯水は、下方に向かって約10°以上の角度で広がることが好ましい。この吐水の広がりが大きすぎる場合には、シャワーヘッド本体4の下方に立っている使用者の身体に着水せずに落下して無駄になる水量が増加し、節水性が低下する。一方、吐水の広がりが小さすぎる場合には、使用者の身体に着水する面積が小さくなり、使用者の身体を包み込むために必要な流体素子10の数が多くなり、節水性が低下する。従って、流体素子10の吐水口10aから吐出される湯水の広がり角α(図4)は、約10°~約45°、より好ましくは約20°~約30°に設定する。また、流体素子10を設ける間隔は、吐水が扇状に広がりながら落下するものであるため約30~約200mm程度、好ましくは、約43~約167mmに設定する。
【0041】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の第1実施形態によるシャワー装置1の作用を説明する。
図6は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置1のシャワーヘッド本体4から吐出されるシャワーを浴びている使用者を模式的に示す側面図である。図7は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置1のシャワーヘッド本体4から吐出されるシャワーを浴びている使用者を模式的に示す正面図である。
【0042】
上述したように、シャワーヘッド本体4に設けられた流体素子10から吐出される湯水は、正弦波状に往復振動しながら吐出される。このため、図6及び図7に示すように、各流体素子10から吐出された湯水は、概ね扇形に広がりながら落下する。また、上述したように、各流体素子10は、シャワーヘッド本体4の中心に向かって斜め下方に傾斜するように取り付けられているため(図2)、各流体素子10から吐出されたシャワー吐水は、シャワーヘッド本体4の下方で鉛直方向に向けられた仮想的な着水平面に着水する。なお、本実施形態のシャワー装置1では、シャワーヘッド本体4に設けられた流体素子10から湯水が正弦波状に往復振動しながら吐出されるため、流体素子10を設ける間隔を広く設定した場合でも、使用者の身体を包み込むことができ、吐水の勢いを維持しつつ節水効果を得ることができる。
【0043】
具体的には、図6に示すように、本実施形態においては、複数の流体素子10のうちの第1の散水部である流体素子10Aから吐出されたシャワー吐水W1は、仮想的な第1の着水平面P1の一方の面上に、着水角度α1で着水する。なお、流体素子10Aは、その振動平面が楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向に向けられているので、流体素子10Aから吐出されたシャワー吐水は、第1の着水平面P1上に、概ね水平方向に向けられた線状に延びる着水領域を形成する。同様に、複数の流体素子10のうちの第2の散水部である流体素子10Bから吐出されたシャワー吐水W2は、第1の着水平面P1の他方の面(裏側の面)に、着水角度α2で着水する。また、流体素子10Bも、その振動平面が楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向に向けられているので、流体素子10Bから吐出されたシャワー吐水は、第1の着水平面P1上に、概ね水平方向に向けられた線状に延びる着水領域を形成する。なお、本明細書において、「着水角度」とは、シャワー吐水が上下方向に広がりながら落下している場合には、上下方向に広がっているシャワー吐水の上端と着水平面との間の角度を意味するものとする。
【0044】
ここで、本実施形態において、第1の着水平面P1は、楕円形のシャワーヘッド本体4の長軸を含むように、即ち、シャワーヘッド本体4の前後方向の中央に鉛直に向けて設定されている。また、複数の流体素子10のうちの第1の散水部である流体素子10Aは、第1の着水平面P1の前方側であって、楕円形のシャワーヘッド本体4の短軸上に配置されている。一方、複数の流体素子10のうちの第2の散水部である流体素子10Bは、第1の着水平面P1の後方側であって、楕円形のシャワーヘッド本体4の短軸上に配置されている。
【0045】
即ち、第1の散水部である流体素子10Aと、第2の散水部である流体素子10Bは、シャワーヘッド本体4の中心を挟んで、前後方向の両端に夫々配置されている。そして、流体素子10Aから吐出されたシャワー吐水W1が第1の着水平面P1の一方の面に着水する着水角度α1は、流体素子10Bから吐出されたシャワー吐水W2が第1の着水平面P1の他方の面に着水する着水角度α2よりも大きくされている。なお、本実施形態においては、流体素子10Aのシャワーヘッド本体4への取付角度と、流体素子10Bのシャワーヘッド本体4への取付角度が異なっており、これにより、着水角度α1が着水角度α2よりも大きくされている。
【0046】
このように、流体素子10Aから吐出された湯水の着水角度α1は、流体素子10Bから吐出された湯水の着水角度α2よりも大きいため、シャワーヘッド本体4の下方に流体素子10Aの方を向いて使用者が立つことにより、シャワー吐水W1が使用者の顔に当たりにくくなる。なお、本実施形態においては、着水角度α1は、1°以上35°以下が好ましく、着水角度α2は、0°以上34°以下が好ましい。
【0047】
さらに、図7に示すように、本実施形態においては、複数の流体素子10のうちの第3の散水部である流体素子10Cから吐出されたシャワー吐水W3は、第1の着水平面P1と直交する第2の着水平面P2の一方の面上に、着水角度α3で着水する。なお、流体素子10Cは、その振動平面が楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向に向けられているので、流体素子10Cから吐出されたシャワー吐水は、第2の着水平面P2上に、概ね水平方向に向けられた線状に延びる着水領域を形成する。同様に、複数の流体素子10のうちの第4の散水部である流体素子10Dから吐出されたシャワー吐水W4は、第2の着水平面P2の他方の面(反対側の面)に、着水角度α4で着水する。また、流体素子10Dも、その振動平面が楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向に向けられているので、流体素子10Dから吐出されたシャワー吐水は、第2の着水平面P2上に、概ね水平方向に向けられた線状に延びる着水領域を形成する。
【0048】
ここで、本実施形態において、第2の着水平面P2は、楕円形のシャワーヘッド本体4の短軸を含むように、即ち、シャワーヘッド本体4の左右方向の中央に鉛直に向けて設定されている。また、複数の流体素子10のうちの第3の散水部である流体素子10Cは、第2の着水平面P2の図7における左側であって、楕円形のシャワーヘッド本体4の長軸上に配置されている。一方、複数の流体素子10のうちの第4の散水部である流体素子10Dは、第2の着水平面P2の図7における右側であって、楕円形のシャワーヘッド本体4の長軸上に配置されている。
【0049】
即ち、第3の散水部である流体素子10Cと、第4の散水部である流体素子10Dは、シャワーヘッド本体4の中心を挟んで、左右方向の両端に夫々配置されている。そして、流体素子10Cから吐出されたシャワー吐水W3が第2の着水平面P2の一方の面に着水する着水角度α3は、流体素子10Dから吐出されたシャワー吐水W4が第2の着水平面P2の他方の面に着水する着水角度α4と概ね同一にされている。なお、本実施形態においては、流体素子10Cのシャワーヘッド本体4への取付角度と、流体素子10Dのシャワーヘッド本体4への取付角度は同一であり、これにより、着水角度α3と着水角度α4が概ね同一にされている。なお、本実施形態においては、着水角度α3および着水角度α4は1°以上35°以内が好ましい。
【0050】
このように、流体素子10C、10Dから第2の着水平面P2に夫々着水する湯水の着水角度α3、α4は略同一であるため、使用者は、シャワーヘッド本体4の下方で立つべき方向を容易に認識することができ、適正にシャワー装置1を使用することができる。さらに、シャワー吐水W3、W4が、第2の着水平面P2に夫々着水する着水角度α3、α4は、シャワー吐水W2が第1の着水平面P1に着水する着水角度α2よりも大きくされている。
【0051】
なお、本実施形態においては、シャワーヘッド本体4の前後方向の両端に配置された2つの流体素子10A、10Bが、第1、第2の散水部とされているが、第1の着水平面P1の一方の面にシャワー吐水を着水させる任意の散水部を第1の散水部とし、第1の着水平面P1の他方の面にシャワー吐水を着水させる任意の散水部を第2の散水部とすることができる。また、本実施形態においては、シャワーヘッド本体4の左右方向の両端に配置された2つの流体素子10C、10Dが、第3、第4の散水部とされているが、第2の着水平面P2の一方の面にシャワー吐水を着水させる任意の散水部を第3の散水部とし、第2の着水平面P2の他方の面にシャワー吐水を着水させる任意の散水部を第4の散水部とすることができる。
【0052】
本発明の第1実施形態のシャワー装置1によれば、第1の散水部である流体素子10Aから吐出された湯水の着水角度α1は、第2の散水部である流体素子10Bから吐出された湯水の着水角度α2よりも大きいため、シャワーヘッド本体4の下方に流体素子10Aの方を向いて使用者が立つことにより、シャワー吐水W1が使用者の顔に当たりにくくなる。一方、流体素子10Bからの湯水の着水角度α2は小さくしても、シャワー吐水W2は使用者の顔には当たりにくいので、シャワーヘッド本体4をコンパクトに構成することができる。これにより、シャワーヘッド本体4をコンパクトに維持しながら、使用者の顔を避けつつ、十分な水量で使用者の身体にシャワー吐水を当てることができる。
【0053】
また、本実施形態のシャワー装置1によれば、使用者が第1の散水部である流体素子10Aの方を向いて立った場合、第3、第4の散水部である流体素子10C、10Dから第2の着水平面P2に夫々着水する湯水は、使用者の側方に当たるので、使用者の周囲全体をシャワー吐水で取り囲むことができる。また、流体素子10C、10Dから第2の着水平面P2に夫々着水する湯水の着水角度α3、α4は略同一であるため、使用者は、シャワーヘッド本体4の下方で立つべき方向を容易に認識することができ、適正にシャワー装置1を使用することができる。
【0054】
さらに、本実施形態のシャワー装置1によれば、使用者が第1の散水部である流体素子10Aの方を向いて立った場合、第3、第4の散水部である流体素子10C、10Dから第2の着水平面P2に夫々着水する湯水は、使用者の側方に当たる。本実施形態の構成によれば、流体素子10C、10Dから第2の着水平面P2に着水する湯水の着水角度α3、α4は、第2の散水部である流体素子10Bから第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α2よりも大きいので、シャワー吐水W3、W4が使用者の顔の側面に当たるのも抑制することができる。この結果、使用者に与える圧迫感を軽減することができ、より長時間シャワーを浴びることが可能になる。
【0055】
なお、上述した実施形態においては、散水部が流体素子10により構成され、この流体素子10により、湯水が広がりながら落下し、着水平面上に線状に延びる着水領域を形成していた。これに対して変形例として、湯水を吐出するノズルの構成により、湯水を広がりながら落下させる散水部を実現することもできる。
【0056】
図8乃至図10は、湯水が広がりながら落下するシャワー吐水を実現するためのノズルの一例を示す図である。図8は、ノズル全体を示す斜視図である。図9は、図8のIX-IX線に沿う部分拡大断面図であり、図10は、図8のX-X線に沿う部分拡大断面図である。
【0057】
図8に示すように、散水部であるノズル18は、全体として円柱形に形成されており、シャワーヘッド本体4の各散水部取付凹部4bに嵌め込んで使用することができる。図8乃至図10に示すように、円柱形のノズル18の中心軸線に沿って、円形断面の通路18aが形成されている。また、この円形断面の通路18aの先端には、ドーム形状(半球形状)の内壁面18bが形成されている。さらに、ノズル18の先端面にはV字型断面の溝18cが設けられており、この溝18cの最深部が、ドーム形状の内壁面18bの一部を切り欠いている。
【0058】
この構成により、シャワーヘッド本体4内の給水通路4aによって導かれた湯水はノズル18の通路18aに流入し、通路18aによって導かれた湯水は、内壁面18bに設けられた切欠から、V字型断面の溝18cの底に流出し、下方(図8乃至図10における上方)に向けて吐出される。これにより、図9に示すように、ノズル18から吐出される湯水Wは、円錐又は楕円錐状に広がりながら落下する。なお、本変形例においては、楕円錐の長軸が、楕円形のシャワーヘッド本体4の接線方向に向くように、各ノズル18がシャワーヘッド本体4に取り付けられている。また、本変形例においては、シャワーヘッド本体4にノズル18を取り付けることによりシャワーヘッド本体4に散水部を設けているが、シャワーヘッド本体4を構成する部材に直接ノズル孔を形成して散水部を設けることもできる。
【0059】
次に、図11を参照して、本発明の第2実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の形状、及びそれに設けられている散水部が、上述した第1実施形態とは異なっている。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。図11は、本発明の第2実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。
【0060】
図11に示すように、本発明の第2実施形態によるシャワー装置に備えられたシャワーヘッド本体20は、長方形の環状に構成されている。この環状に構成されたシャワーヘッド本体20に沿って、複数の散水部が設けられており、使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水が形成される。さらに、吐出される各シャワー吐水がシャワーヘッド本体20の中心へ向かうように、各散水部は斜め下方に向けて取り付けられており、吐出された湯水は、シャワーヘッド本体の下方で鉛直方向に向けられた仮想的な着水平面に着水する。
【0061】
ここで、本実施形態においては、長方形の環状に形成されたシャワーヘッド本体20の一方の長辺に設けられた第1の散水部は、長辺に沿って形成された細長いスリット状の吐水口11Aから構成されている。このようなスリット状の吐水口11Aから湯水を吐出させることにより、第1の散水部から吐出されるシャワー吐水は、薄い膜状の吐水となり、吐水の幅はほぼ一定のまま斜め下方に落下する。これに対して、シャワーヘッド本体20の他方の長辺、及び2つの短辺に設けられた第2、第3、第4の散水部は、流体素子10B、10C、10Dにより構成され、それらの振動平面は、シャワーヘッド本体20の各辺と平行に向けられている。なお、第2、第3、第4の散水部を、スリット状の吐水口により構成することもできる。
【0062】
さらに、シャワーヘッド本体20の一方の長辺に設けられた第1の散水部である吐水口11Aは、第1の着水平面P1の一方の面に膜状のシャワー吐水を着水させる。一方、シャワーヘッド本体20の他方の長辺に設けられた第2の散水部である流体素子10Bは、第1の着水平面P1の他方の面(裏側の面)にシャワー吐水を着水させる。さらに、シャワーヘッド本体20の一方の短辺に設けられた第3の散水部である流体素子10Cは、第2の着水平面P2の一方の面にシャワー吐水を着水させる。これに対し、シャワーヘッド本体20の他方の短辺に設けられた第4の散水部である流体素子10Dは、第2の着水平面P2の他方の面(裏側の面)にシャワー吐水を着水させる。
【0063】
なお、本実施形態において、第1の着水平面P1は、各短辺の中点を通るように鉛直に設定され、第2の着水平面P2は、各長辺の中点を通るように鉛直に設定されている。そして、吐水口11Aから第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α1は、流体素子10Bから第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α2よりも大きく設定されている。さらに、流体素子10Cから第2の着水平面P2に着水する湯水の着水角度α3は、流体素子10Dから第2の着水平面P2に着水する湯水の着水角度α4とほぼ同一に設定されている。また、流体素子10C、10Dから第2の着水平面P2に着水する湯水の着水角度α3、α4は、第2の散水部である流体素子10Bから第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α2よりも大きく設定されている。
【0064】
本実施形態のシャワー装置によれば、シャワーヘッド本体20の一方の長辺に設けられた第1の散水部が、細長いスリット状の吐水口11Aにより構成されている。このため、使用者が第1の散水部の方を向いて立った場合、第1の散水部から吐出された湯水が、使用者の正面に当たる。本実施形態のシャワー装置によれば、第1の散水部は膜状に湯水を吐出させるので、使用者の上半身に当たった湯水が顔に向けて飛散した場合でも、第1の散水部からの膜状の湯水により、飛散した湯水が顔に当たるのをブロックすることができる。この結果、使用者に与える圧迫感を軽減することができ、より長時間シャワーを浴びることが可能になる。
【0065】
次に、図12乃至図14を参照して、本発明の第3実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の形状、及びシャワーヘッド本体の散水部の構成が、上述した第1実施形態とは異なっている。従って、ここでは、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。図12は、本発明の第3実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。図13は、シャワーヘッド本体の内部に設けられている給水流路を示す図である。図14は、シャワーヘッド本体に設けられている散水部を拡大して示す断面図である。
【0066】
図12に示すように、本発明の第3実施形態によるシャワー装置に備えられたシャワーヘッド本体30は、2つの直線状のシャワーヘッド本体30a、30bから構成されている。この直線状に構成された各シャワーヘッド本体30a、30bに沿って、複数の散水部が設けられており、使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水が形成される。さらに、各シャワーヘッド本体30a、30bに設けられた散水部は、吐出されたシャワー吐水が互いに近づく方向に、斜め下方に向けられており、吐出された湯水は、シャワーヘッド本体30a、30bの間に鉛直方向に向けられた仮想的な第1の着水平面P1に着水する。また、各シャワーヘッド本体30a、30bに設けられた各散水部36から吐出されるシャワー吐水の角度は変更可能に構成されている。
【0067】
図13は、シャワーヘッド本体30aの一部を拡大して示す断面図である。図13に示すように、シャワーヘッド本体30aの内部には、第1の給水流路32及び第2の給水流路34が平行して設けられている。また、これらの給水流路には供給源から独立して湯水が供給され、第1の給水流路32を流れる湯水の流量と、第2の給水流路34を流れる湯水の流量を個別に変更できるように構成されている。なお、同様に、シャワーヘッド本体30bの内部にも第1の給水流路32及び第2の給水流路34が設けられている。
【0068】
図14は、シャワーヘッド本体30に設けられた散水部を拡大して示す断面図である。図14に示すように、シャワーヘッド本体30に設けられた散水部36は、第1の給水流路32に接続された第1ノズル36aと、第2の給水流路34に接続された第2ノズル36bと、第1ノズル36a及び第2ノズル36bを取り囲むように設けられたスリーブ36cと、を有する。
【0069】
第1ノズル36aは第1の給水流路32に接続され、第1の給水流路32から供給された湯水を噴射するように構成されている。第2ノズル36bは第2の給水流路34に接続され、第2の給水流路34から供給された湯水を噴射するように構成されている。スリーブ36cは、第1ノズル36a及び第2ノズル36bを取り囲むように配置されると共に、先端に向けて先細になっている。
【0070】
第1ノズル36a及び第2ノズル36bから噴射された湯水は、スリーブ36cの内壁面に当たって混合され、スリーブ36cから所定の方向に吐出される。そして、スリーブ36cから吐出される湯水の方向は、第1ノズル36aから噴射される湯水と、第2ノズル36bから噴射される湯水の流量比によって変化する。
【0071】
即ち、シャワーヘッド本体30の外側(シャワーヘッド本体30aにおいてはシャワーヘッド本体30bから遠い側)に設けられた第1ノズル36aから噴射される湯水の流量比が大きくなると、湯水は、より水平に近い方向で吐出されるようになる。逆に、第1ノズル36aから噴射される湯水の流量比が小さくなると、湯水は、より鉛直に近い方向で吐出されるようになる。本実施形態においては、湯水の供給源(図示せず)から第1の給水流路32及び第2の給水流路34に夫々供給される湯水の給水圧を変更することにより、第1ノズル36aと第2ノズル36bの流量比を変え、散水部36から吐出されるシャワー吐水の角度を変更可能としている。
【0072】
さらに、シャワーヘッド本体30のシャワーヘッド本体30aに設けられた散水部36のうちの第1の散水部である散水部36Aは、第1の着水平面P1の一方の面にシャワー吐水を着水させる。一方、シャワーヘッド本体30のシャワーヘッド本体30bに設けられた散水部36のうちの第2の散水部である散水部36Bは、第1の着水平面P1の他方の面(裏側の面)にシャワー吐水を着水させる。
【0073】
なお、本実施形態において、第1の着水平面P1は、シャワーヘッド本体30aとシャワーヘッド本体30bの中間を通るように鉛直に設定される。そして、本実施形態において、散水部36A、36Bから吐出される湯水の角度は変更可能であるが、散水部36Aから第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α1は、散水部36Bから第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α2よりも常に大きくなる。なお、本実施形態においては、散水部36A、36Bとも、湯水を吐出する角度を変更できるように構成されているが、第1の散水部のみ角度調整可能とすることもできる。
【0074】
本発明の第3実施形態のシャワー装置によれば、第1の散水部である散水部36Aが、湯水を吐出する角度が変更可能に構成されているので、シャワー装置を使用する使用者の身長や、好みに合わせて第1の散水部からの湯水の着水角度を変更することができ、より快適にシャワーを浴びることができる。
【0075】
また、上述した第3実施形態においては、2つのノズルから吐出される湯水の流量比を変更することにより、湯水を吐出する角度を変更していたが、変形例として、ノズル自体の角度を変更することにより、湯水を吐出する角度を変更可能に構成することもできる。
【0076】
図15に示す変形例においては、シャワーヘッド本体に設けられた散水板37に複数のノズル37aが設けられており、このノズル37aを設けた散水板37が所定の軸線37bを中心に回動可能に構成されている。また、散水板37の角度は、自動又は手動で変更可能に構成することができる。
【0077】
さらに、図16に示す変形例においては、外形が球面で構成された散水部38に複数のノズル38aが設けられており、このノズル38aを設けた散水部38が所定の球面の中心点を中心にピボット動可能に構成されている。また、散水部38の角度は、自動又は手動で変更可能に構成することができる。
【0078】
次に、図17及び図18を参照して、本発明の第4実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の形状及び散水部の構成が、上述した第1実施形態とは異なっている。従って、ここでは、本発明の第4実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。図17は、本発明の第4実施形態によるシャワー装置からのシャワー吐水を、使用者が浴びている状態を示す斜視図である。図18は、シャワーヘッド本体の各散水部から吐出されたシャワー吐水が着水平面に着水する状態を模式的に示す図である。
【0079】
図17に示すように、本発明の第4実施形態によるシャワー装置に備えられたシャワーヘッド本体40は、湾曲して延びる2つのシャワーヘッド本体40a、40bから構成されている。これらのシャワーヘッド本体40a、40bは両端部が互いに近づくように湾曲して延びており、これに沿って、複数の散水部が設けられている。これにより、使用者の頭部を取り囲むシャワー吐水が形成される。ここで、本実施形態においては、各散水部は、湯水を吐出するノズル42から構成されている。さらに、各シャワーヘッド本体40a、40bに設けられている各ノズル42は、吐出されたシャワー吐水が互いに近づく方向に、斜め下方に向けて湯水を吐出し、吐出された湯水は、シャワーヘッド本体の下方で鉛直方向に向けられた仮想的な第1の着水平面P1に着水する。
【0080】
即ち、シャワーヘッド本体40のシャワーヘッド本体40aに設けられたノズル42のうちの第1の散水部であるノズル42Aは、第1の着水平面P1の一方の面にシャワー吐水を着水させる。一方、シャワーヘッド本体40のシャワーヘッド本体40bに設けられたノズル42のうちの第2の散水部であるノズル42Bは、第1の着水平面P1の他方の面(裏側の面)にシャワー吐水を着水させる。なお、本実施形態において、第1の着水平面P1は、シャワーヘッド本体40aとシャワーヘッド本体40bの中間を通るように鉛直に設定される。
【0081】
ここで、上述した第1実施形態においては、第1の散水部である流体素子10Aと、第2の散水部である流体素子10Bの取り付け角度を異ならせることにより、第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α1が着水角度α2よりも大きくなるように構成されていた。これに対し、本実施形態においては、シャワーヘッド本体40aに設けられた第1の散水部であるノズル42Aと、シャワーヘッド本体40bに設けられた第2の散水部であるノズル42Bは同一の角度で取り付けられている。
【0082】
一方、本実施形態においては、シャワーヘッド本体40のシャワーヘッド本体40aに供給される湯水の給水圧が、シャワーヘッド本体40bに供給される湯水の給水圧よりも高く設定されている。このため、シャワーヘッド本体40aに設けられた第1の散水部であるノズル42Aから吐出されるシャワー吐水W1の水勢は、シャワーヘッド本体40bに設けられた第2の散水部であるノズル42Bから吐出されるシャワー吐水W2の水勢よりも強くなる。
【0083】
これにより、図18に示すように、ノズル42Aから吐出されたシャワー吐水W1は吐出方向に沿った直線Lに近い軌跡を辿って第1の着水平面P1に着水する。これに対し、ノズル42Bから吐出されたシャワー吐水W2は、吐出方向に沿った直線Lよりも大きく下方に外れて第1の着水平面P1に着水する。この結果、第1の散水部であるノズル42Aから吐出され、第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α1が、第2の散水部であるノズル42Bから吐出され、第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α2よりも大きくなる。
【0084】
また、本実施形態において、シャワーヘッド本体40のシャワーヘッド本体40aに供給される湯水の給水圧を変更可能とすることにより、第1の散水部であるノズル42Aから吐出され、第1の着水平面P1に着水する湯水の着水角度α1を変更できるように本発明を構成することもできる。
【0085】
次に、図19乃至図22を参照して、本発明の第5実施形態によるシャワー装置を説明する。
本実施形態のシャワー装置は、シャワーヘッド本体の各散水部に湯水を供給する構造が上述した第1実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第5実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同一の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0086】
図19は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置を示す斜視図である。図20は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置に備えられているシャワーヘッド本体の上カバーを取りはずした状態を示す斜視図である。図21は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置に備えられているシャワーヘッド本体の断面図である。図22は、本発明の第5実施形態によるシャワー装置における散水部の取り付け構造を示す分解斜視図である。
【0087】
図19に示すように、本実施形態のシャワー装置51は、シャワー室の側壁面2aに対して固定されている。また、シャワー装置51は、シャワーヘッド本体52と、このシャワーヘッド本体52を側壁面2aに対して取り付けるための支持部材56と、を有する。
【0088】
シャワーヘッド本体52は、全体として楕円形の環状の部材であり、この楕円形の環に沿って、複数の散水部が間隔を空けて設けられている。また、シャワーヘッド本体52は、楕円環状の環状部52aと、この環状部52aの中心から放射状に延びる3本の湯水供給部52bから構成されている。
【0089】
環状部52aは楕円環状の部分であり、その下面には、間隔を空けて複数の散水部が設けられている。また、後述するように、環状部52aの内部には、各散水部に湯水を供給するための給水通路が設けられている。一方、各湯水供給部52bは、環状部52aの中心から放射状に延び、それらの先端が環状部52aに夫々接続されている。具体的には、1本の湯水供給部52bが環状部52aの中心から側壁面2aの方向に延び、側壁面2aの反対の方向には2本の湯水供給部52bが延びており、各湯水供給部52bの先端が環状部52aと夫々接続されている。また、各湯水供給部52bの先端と環状部52aが夫々接続される3つの点の間の長さは、ほぼ同一になるように構成されている。
【0090】
次に、支持部材56は、側壁面2aの上部から概ね水平方向に延びるように取り付けられた部材であり、シャワーヘッド本体52を所定の高さに支持するように構成されている。さらに、支持部材56はシャワーヘッド本体52の上面に接続されており、支持部材56の先端は、シャワーヘッド本体52中心の、3本の湯水供給部52bの結合部に連結されている。また、支持部材56の内部には給水路(図示せず)が設けられており、この給水路を通って供給された湯水がシャワーヘッド本体52の各湯水供給部52bに流入し、環状部52aの下面に設けられた各散水部から吐出される。
【0091】
なお、本実施形態においては、支持部材56の先端部にシャワーヘッド本体52が剛接されているが、変形例として、支持部材56とシャワーヘッド本体52の間にボールジョイント(図示せず)を設けておき、シャワーヘッド本体52を支持部材56に対して角度調整可能に固定することもできる。この場合、ボールジョイント(図示せず)は、支持部材56の先端と3本の湯水供給部52bの結合部の間に設けられ、ボールジョイントはシャワーヘッド本体52の重心の近傍に位置することになる。このため、シャワーヘッド本体52に作用する重力に基づきボールジョイントの回転中心に対して作用する力のモーメントは比較的小さくなり、ボールジョイントにより、シャワーヘッド本体52を容易に任意の角度位置に固定することができる。
【0092】
さらに、シャワーヘッド本体52は、上カバー53と、流路形成部材54と、下カバー55から構成されており、これらの上カバー53と流路形成部材54を結合することにより、シャワーヘッド本体52の各散水部に湯水を供給するための給水通路が形成される。
【0093】
図20に示すように、流路形成部材54は、環状の部分と、この環状の部分の中心から放射状に延びる3本の直線状の部分から構成されている。この環状の部分はシャワーヘッド本体52の環状部52aの一部を構成し、各直線状の部分は湯水供給部52bの一部を構成している。さらに、環状の部分には、環状に延びる環状通路54aが環状部52a内を一周するように形成され、各直線状の部分には分配通路54bが夫々形成されている。即ち、3本の分配通路54bは、シャワーヘッド本体52の中央から放射状に延び、それらの先端が環状通路54aに連通されている。このように、環状通路54aには、各分配通路54bを介して複数箇所から湯水が流入する。
【0094】
一方、環状通路54aに沿って、複数の連通孔54cが設けられており、これらの連通孔54cは、流路形成部材54の下面側に設けられた散水部取付凹部54d(図21)の中に連通している。これにより、シャワーヘッド本体52の環状部52aの中に形成された環状通路54aと、各散水部取付凹部54dが連通し、それらの中に取り付けられた流体素子10(図21)に湯水が供給される。
【0095】
次に、図21及び図22に示すように、流路形成部材54の下面側には、環状通路54aに沿って複数の散水部取付凹部54dが設けられている。そして、上述した第1実施形態と同様に、各散水部取付凹部54dは略円筒形に形成され、散水部である流体素子10を保持した散水部保持部材58が着脱自在に嵌め込まれている。流体素子10の構造は、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0096】
散水部保持部材58は、全体として略円柱状の部材であり、散水部である流体素子10を保持するように構成されている。散水部保持部材58は、中心軸線に対して所定角度傾斜するように、流体素子10を保持している。これにより、湯水はシャワーヘッド本体52から斜め下方に向けて吐出される。また、散水部保持部材58の外周には溝58aが設けられており、この溝58aにOリング(図示せず)を配置することにより、散水部保持部材58と散水部取付凹部54dの間の水密性が確保されている。
【0097】
さらに、図22に示すように、散水部保持部材58の外周面の2箇所には、装着用溝58bが設けられている(図22には1つのみ図示)。各装着用溝58bは鈎形に形成され、散水部保持部材58の上端から軸線方向に延びる軸線方向部と、この軸線方向部の下端から散水部保持部材58の円周方向に延びる円周方向部から構成されている。一方、散水部取付凹部54dの内周面には、各装着用溝58bの軸線方向部に対応する位置に、2つの係合突起54eが設けられている(図22には1つのみ図示)。
【0098】
散水部保持部材58を装着する際には、まず、各係合突起54eが各装着用溝58bの軸線方向部の中に受け入れられるように、散水部保持部材58を散水部取付凹部54dに嵌め込む。次いで、散水部保持部材58を回動させることにより、各係合突起54eが各装着用溝58bの円周方向部に受け入れられ、散水部保持部材58を流路形成部材54に固定することができる。なお、本実施形態においては、各係合突起54eが各装着用溝58bの円周方向部の端に当接するまで散水部保持部材58を回動させることにより、散水部保持部材58に保持された流体素子10が適正な方向に向くように構成されている。
【0099】
なお、上述した第1実施形態と同様に、シャワーヘッド本体52に設けられた各流体素子10は、噴射される湯水の振動平面(図4の紙面に平行な平面)が楕円形の環状部52aの接線方向に向くように夫々取り付けられている。また、各流体素子10を設ける間隔は一定ではなく、各流体素子10から噴射される湯水により使用者が心地よく包み込まれるように、それらの間隔が調整されている。本実施形態においては、隣り合う流体素子10の間隔は、約43mm~約167mmに設定されている。好ましくは、各流体素子10の間隔は、約30mm~約200mmに設定する。これに対し、従来の典型的な円板状のオーバーヘッドシャワーでは、シャワーヘッド全体に、散水孔が約10mm~約30mm程度の間隔で均一に設けられている。
【0100】
次に、本発明の第5実施形態によるシャワー装置51の作用を説明する。
まず、使用者がシャワー装置51からの吐水を開始させる操作を行うと、シャワー装置51への湯水の供給が開始される。供給された湯水は支持部材56の内部に形成された給水通路(図示せず)を通って、シャワーヘッド本体52の中に流入する。シャワーヘッド本体52の中に流入した湯水は、3本の湯水供給部52bの結合部において3つに分岐される。即ち、シャワーヘッド本体52に供給された湯水は、図20に矢印で示すように、湯水供給部52bの中で3つの分配通路54bに分配され、各分配通路54bの先端から環状通路54aに流入する。
【0101】
各分配通路54bの先端から環状通路54aに入った湯水は、図20に矢印で示すように、2つに分岐して環状通路54aの中に両方向に流れ込み、環状通路54a全体に行き渡る。これにより、湯水は、環状通路54aに沿って設けられた各連通孔54cを通って各散水部取付凹部54dに流入する。散水部取付凹部54dに流入した湯水は、散水部取付凹部54dに嵌め込まれている散水部保持部材58で保持された流体素子10に流入する。各流体素子10に供給された湯水は、往復振動しながら吐出される。シャワーヘッド本体52から吐出される湯水の態様は、上述した第1実施形態(図6)と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
ここで、本実施形態においては、シャワーヘッド本体52に供給された湯水が3つの分配通路54bに分配された後、環状通路54aに流入する。このため、給水源から各流体素子に至るまでに通過する給水通路の距離が均一化され、各流体素子10には、比較的均一な給水圧で湯水が供給される。この結果、各流体素子10から吐出される湯水の流量がより均一になり、使用者によるシャワーの浴び感が、より均一になる。
【0103】
また、例えば、複数の流体素子のうちの一部の流体素子に供給される湯水の圧力が低い場合には、吐出される湯水の水勢が弱く、湯水が設計値通りの角度で使用者に着水できなくなる虞もある。本実施形態のシャワー装置51によれば、分配通路54bによって湯水を分配することにより、各流体素子に比較的均一な給水圧で湯水を供給することができ、給水圧が低い場合でも、第1の散水部及び第2の散水部から吐出された湯水の、着水平面に対する着水角度の関係を、設計値通りに維持することができる。
【0104】
なお、上述した本発明の第2乃至第4実施形態を示す図11図12、及び図17には、供給された湯水をシャワーヘッド本体に流入させる供給経路が図示されていないが、上記の第5実施形態のように、分配通路を使用してシャワーヘッド本体に湯水を供給することもできる。
【0105】
例えば、図11に示す第2実施形態においては、シャワーヘッド本体20の長辺の中点同士、短辺の中点同士を接続するように十字の分配通路(図示せず)を設けることができる。この場合には、支持部材から供給された湯水を十字の交点から流入させ、分配通路を通って矩形環状のシャワーヘッド本体20の4箇所から湯水を流入させるように本発明を構成するのが良い。これにより、給水源から各流体素子に至るまでに通過する給水通路の距離が均一化され、シャワーヘッド本体20に設けられた各散水部に比較的均一な給水圧で湯水を供給することができる。
【0106】
また、図12図17に示す第3、第4実施形態においては、前後2つに分離された各シャワーヘッド本体の中点同士を接続するように、前後方向に延びる分配通路(図示せず)を設けることができる。この場合には、支持部材から供給された湯水を分配通路の中点から流入させ、分配通路を通って各シャワーヘッド本体の中央から湯水を流入させるように本発明を構成するのが良い。これにより、給水源から各流体素子に至るまでに通過する給水通路の距離が均一化され、シャワーヘッド本体に設けられた各散水部に比較的均一な給水圧で湯水を供給することができる。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した各実施形態及び各変形例におけるシャワーヘッド本体の形態、及びそれらに設けられていた各散水部の構成は、適宜組み合わせることができ、それらの任意の組み合わせによっても、本発明を構成することもできる。
【符号の説明】
【0108】
1 シャワー装置
2 シャワー室
2a 側壁面
4 シャワーヘッド本体
4a 給水通路
4b 散水部取付凹部
6 支持部材
8 散水部保持部材
10 流体素子(散水部)
10A 流体素子(第1の散水部)
10B 流体素子(第2の散水部)
10a 吐水口
10b 鍔部
10c 溝
10d 流入口
11A 吐水口
12a 給水通路
12b 渦列通路
12c 整流通路
14 段部
16 湯水衝突部
18 ノズル
18a 通路
18b 内壁面
18c 溝
20 シャワーヘッド本体
30 シャワーヘッド本体
32 第1の給水流路
34 第2の給水流路
36 散水部
36A 散水部(第1の散水部)
36B 散水部(第2の散水部)
36a 第1ノズル
36b 第2ノズル
36c スリーブ
37 散水板
37a ノズル
37b 軸線
38 散水部
38a ノズル
40 シャワーヘッド本体
40a、40b シャワーヘッド本体
42 ノズル
42A ノズル(第1の散水部)
42B ノズル(第2の散水部)
51 シャワー装置
52 シャワーヘッド本体
52a 環状部
52b 湯水供給部
53 上カバー
54 流路形成部材
54a 環状通路
54b 分配通路
54c 連通孔
54d 散水部取付凹部
54e 係合突起
55 下カバー
56 支持部材
58 散水部保持部材
58a 溝
58b 装着用溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22