(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095527
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】連続式熱処理炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/12 20060101AFI20240703BHJP
F27B 9/02 20060101ALI20240703BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240703BHJP
F27B 9/36 20060101ALI20240703BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F27B9/12
F27B9/02
F27D17/00 101G
F27B9/36
C21D1/00 B
C21D1/00 118
C21D1/00 D
C21D1/00 112F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179296
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2022211034
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】遠山 暦紀
(72)【発明者】
【氏名】久岡 勇輝
【テーマコード(参考)】
4K034
4K050
4K056
【Fターム(参考)】
4K034AA12
4K034AA15
4K034BA05
4K034DB02
4K034DB03
4K034DB04
4K034EA11
4K034GA02
4K034GA16
4K050AA02
4K050BA02
4K050CA13
4K050CD25
4K050CD30
4K050CE01
4K050CG30
4K050EA05
4K056AA09
4K056BC03
4K056CA02
4K056DA03
4K056DA33
4K056FA02
4K056FA06
(57)【要約】
【課題】 炉長が被処理物の搬送方向に長くなるのを防止して、加熱された被処理物を冷却させる際に、加熱された被処理物から放熱される熱を、被処理物を予熱させるのに利用できるようにすると共に、被処理物を加熱させる条件を簡単に調整できるようにする。
【解決手段】 被処理物1を予熱させる予熱帯T1と、予熱された被処理物を加熱させる加熱帯T2と、加熱された被処理物を冷却させる冷却帯T3とを有する連続式熱処理炉において、予熱帯と冷却帯とを同じ共用搬送室11に設けると共に、予熱帯において予熱された被処理物を加熱させる第1加熱帯T2aと、第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させる第2加熱帯T2bを折り返し状に形成した折り返し搬送室12に設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被処理物を予熱させる予熱帯と、予熱された被処理物を加熱させる加熱帯と、加熱された被処理物を冷却させる冷却帯とを有し、被処理物を前記の予熱帯と加熱帯と冷却帯に導いて熱処理する連続式熱処理炉において、前記の予熱帯と冷却帯とを同じ共用搬送室に設けると共に、予熱帯において予熱された被処理物を加熱させる第1加熱帯と、第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させる第2加熱帯を折り返し状に形成した折り返し搬送室に設け、被処理物を共用搬送室における予熱帯において予熱させ、予熱された被処理物を共用搬送室から折り返し搬送室に導いて、前記の第1加熱帯において加熱させ、さらに第2加熱帯により第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させ、このように加熱された被処理物を折り返し搬送室から前記の共用搬送室における冷却帯に導き、前記の冷却帯において加熱された被処理物を前記の予熱帯と逆方向に搬送させながら放熱させて冷却させると共に、加熱された被処理物から放熱された熱を、前記の予熱帯における被処理物の予熱に利用することを特徴とする連続式熱処理炉。
【請求項2】
請求項1に記載の連続式熱処理炉において、前記の被処理物に平板状のものを用い、前記の平板状の被処理物を前記の予熱帯と加熱帯と冷却帯の順に導いて熱処理するにあたり、被処理物の平面部が搬送方向に沿うように保持させて搬送させ、前記の予熱帯における被処理物の平面部と前記の冷却帯における被処理物の平面部が対向するようにして、前記の冷却帯における加熱された被処理物から放熱された熱を、予熱帯における被処理物の予熱に利用することを特徴とする連続式熱処理炉。
【請求項3】
請求項1に記載の連続式熱処理炉において、前記の共用搬送室における予熱帯において被処理物を加熱させる加熱装置を、共用搬送室における冷却帯から離れた側壁に沿って設けると共に、予熱帯において予熱された被処理物を前記の折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯とにおいて加熱させる加熱装置を被処理物の搬送方向の両側の側壁に沿って設けたことを特徴とする連続式熱処理炉。
【請求項4】
請求項3に記載の連続式熱処理炉において、前記の第1加熱帯に設ける加熱装置の数を、第2加熱帯に設ける加熱装置の数よりも多くしたことを特徴とする連続式熱処理炉。
【請求項5】
請求項1に記載の連続式熱処理炉において、前記の折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に空間部を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させることを特徴とする連続式熱処理炉。
【請求項6】
請求項1に記載の連続式熱処理炉において、前記の折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に仕切り壁を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させることを特徴とする連続式熱処理炉。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の連続式熱処理炉において、前記の共用搬送室を直線状に設けたことを特徴とする連続式熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板等の被処理物を炉内において順々に搬送させて、被処理物を連続して熱処理する連続式熱処理炉に関するものである。特に、平板状の鋼板等の被処理物を、少なくとも被処理物を予熱させる予熱帯と、予熱された被処理物を加熱させる加熱帯と、加熱された被処理物を冷却させる冷却帯とに導いて熱処理する連続式熱処理炉において、炉長が被処理物の搬送方向に長くなりすぎないようにすると共に、加熱帯において加熱された被処理物を冷却帯において冷却させる際に、加熱された被処理物から放熱される熱を、被処理物を予熱させる予熱帯において有効に利用できるようにし、さらに、加熱帯において被処理物を加熱させる条件を簡単に調整できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板等の被処理物を炉内において順々に搬送させて熱処理する連続式熱処理炉としては、特許文献1等に示されるように、鋼板等の被処理物を、被処理物を予熱させる予熱帯と、予熱された被処理物を加熱させる加熱帯と、加熱された被処理物を冷却させる冷却帯との順番に搬送させて熱処理するようにした連続式熱処理炉が知られている。
【0003】
ここで、特許文献1に示されるものにおいては、前記の予熱帯と加熱帯と冷却帯を、被処理物の搬送方向に沿って炉内に直線状に設けているため、炉長が被処理物の搬送方向に長くなって、設置スペースの確保が困難になるという問題があった。また、予熱帯と加熱帯と冷却帯を直線状に設けた炉内において被処理物を順々に搬送させて熱処理する場合、加熱帯において加熱された被処理物を冷却帯において放熱させて冷却させる際に、被処理物から放熱される熱を、有効に利用することができないという問題があった。
【0004】
また、従来においては、特許文献2に示されるように、加熱帯、均熱帯、徐冷帯、ターン部、冷却帯を設け、被処理物の搬送方向をターン部において反対方向に反転させて搬送させるようにしたものが示されている。このようにした場合、加熱帯、均熱帯、徐冷帯、冷却帯を直線状に設ける場合に比べて、直線方向における炉長を短くして、設置スペースの確保が容易になる。
【0005】
しかし、特許文献2に示されるものにおいては、炉をU字状に形成して、被処理物を加熱帯、均熱帯、徐冷帯、ターン部、冷却帯の順にU字状に搬送させるようにしているだけであるため、前記の特許文献1に示されたものと同様に、加熱帯において加熱された被処理物を冷却帯において放熱させて冷却させる際に、被処理物から放熱される熱を、有効に利用することができないという問題が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4-48760号公報
【特許文献2】特許第3745880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鋼板等の被処理物を炉内において順々に搬送させて、被処理物を連続して熱処理する連続式熱処理炉における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0008】
本発明は、平板状の鋼板等の被処理物を、少なくとも被処理物を予熱させる予熱帯と、予熱された被処理物を加熱させる加熱帯と、加熱された被処理物を冷却させる冷却帯とに導いて熱処理する連続式熱処理炉において、炉長が被処理物の搬送方向に長くなりすぎないようにすると共に、加熱帯において加熱された被処理物を冷却帯において冷却させる際に、加熱された被処理物から放熱される熱を、被処理物を予熱させる予熱帯において有効に利用できるようにし、さらに、加熱帯において被処理物を加熱させる条件を簡単に調整できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における連続式熱処理炉においては、前記のような課題を解決するために、少なくとも被処理物を予熱させる予熱帯と、予熱された被処理物を加熱させる加熱帯と、加熱された被処理物を冷却させる冷却帯とを有し、被処理物を前記の予熱帯と加熱帯と冷却帯に導いて熱処理する連続式熱処理炉において、前記の予熱帯と冷却帯とを同じ共用搬送室に設けると共に、予熱帯において予熱された被処理物を加熱させる第1加熱帯と、第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させる第2加熱帯を折り返し状に形成した折り返し搬送室に設け、被処理物を共用搬送室における予熱帯において予熱させ、予熱された被処理物を共用搬送室から折り返し搬送室に導いて、前記の第1加熱帯において加熱させ、さらに第2加熱帯により第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させ、このように加熱された被処理物を折り返し搬送室から前記の共用搬送室における冷却帯に導き、前記の冷却帯において加熱された被処理物を前記の予熱帯と逆方向に搬送させながら放熱させて冷却させると共に、加熱された被処理物から放熱された熱を、前記の予熱帯における被処理物の予熱に利用するようにした。
【0010】
そして、本発明における連続式熱処理炉のように、予熱帯と冷却帯とを同じ共用搬送室に設け、予熱帯において予熱された被処理物を加熱させる第1加熱帯と、第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させる第2加熱帯を折り返し状に形成した折り返し搬送室に設けると、予熱帯と第1及び第2加熱帯と冷却帯を炉内に直線状に設ける場合に比べて、直線方向における炉長が短くなって、設置スペースの確保が容易に行えるようになる。
【0011】
また、本発明における連続式熱処理炉のように、被処理物を共用搬送室における予熱帯において予熱させ、予熱された被処理物を共用搬送室から折り返し搬送室に導いて、前記の第1加熱帯において加熱させ、さらに第2加熱帯により第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させ、このように加熱された被処理物を折り返し搬送室から前記の共用搬送室における冷却帯に導き、前記の冷却帯において加熱された被処理物を前記の予熱帯と逆方向に搬送させながら放熱させて冷却させると共に、加熱された被処理物から放熱された熱を、前記の予熱帯における被処理物の予熱に利用させるようにすると、加熱された被処理物から放熱された熱を有効に利用できるようになる。
【0012】
ここで、本発明における連続式熱処理炉においては、前記の被処理物に平板状のものを用い、前記の平板状の被処理物を前記の予熱帯と加熱帯と冷却帯の順に導いて熱処理するにあたり、被処理物の平面部が搬送方向に沿うように保持させて搬送させ、前記の予熱帯における被処理物の平面部と前記の冷却帯における被処理物の平面部が対向するようにして、前記の冷却帯における加熱された被処理物から放熱された熱を、予熱帯における被処理物の予熱に利用することが好ましい。このようにすると、冷却帯に導かれた加熱された被処理物の平面部からの熱が、前記の予熱帯において搬送される被処理物の平面部に向けで広い範囲で放熱され、予熱帯における被処理物を、熱源を用いなくても効率よく予熱できるようになる。
【0013】
また、本発明における連続式熱処理炉においては、前記の折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に空間部を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させる他、折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に仕切り壁を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させるようにすることができる。
【0014】
ここで、前記のように折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に空間部を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させると、第1加熱帯と第2加熱帯との間における熱の移動が前記の空間部によって抑制され、第1加熱帯と第2加熱帯とにおいて被処理物を加熱させる温度を個別に制御できて、被処理物の種類や処理条件に合った加熱が行えるようになる。なお、このように第1加熱帯と第2加熱帯との間に空間部を設けた場合、第1加熱帯と第2加熱帯における熱が前記の空間部を通して放熱されやすくなる。
【0015】
一方、前記のように折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に仕切り壁を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させるようにすると、前記の第1加熱帯と第2加熱帯との間に空間部を設けた場合のように、第1加熱帯と第2加熱帯における熱が空間部を通して放熱されるということがなく、第1加熱帯と第2加熱帯における熱を有効に利用して、消費エネルギーを低減させることができる。
【0016】
また、本発明における連続式熱処理炉においては、前記の共用搬送室における予熱帯において被処理物を加熱させる加熱装置を、共用搬送室における冷却帯から離れた反対側の位置に設けると共に、予熱帯において予熱された被処理物を前記の折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯とにおいて加熱させる加熱装置を、被処理物の搬送方向の両側に設けることが好ましい。このようにすると、予熱帯と同じ共用搬送室に設けられた冷却帯において加熱された被処理物に冷却させる際に、冷却帯における被処理物が予熱帯に設けた加熱装置によって加熱されるのが抑制されるようになる。また、予熱帯において予熱された被処理物を前記の折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯とに加熱させる際に、被処理物の搬送方向の両側に設けた加熱装置によって被処理物が速やかに加熱されるようになる。
【0017】
また、本発明における連続式熱処理炉において、予熱帯において予熱された被処理物を前記の折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯とにおいて加熱させるにあたっては、第1加熱帯に設ける加熱装置の数を、第2加熱帯に設ける加熱装置の数よりも多くすることが好ましい。このようにすると、予熱帯において予熱された被処理物を、第1加熱帯において所定の温度まで速やかに加熱させることができ、またこのように加熱された被処理物を第2加熱帯において所定の温度に維持させるように加熱させることが簡単に行えるようになる。
【0018】
また、本発明における連続式熱処理炉においては、前記の共用搬送室を直線状に設けることが好ましい。このように、共用搬送室を直線状に設けるようにすると、共用搬送室を曲線状にして蛇行させて設ける場合に比べて、連続式熱処理炉の設計や製作が簡単になってコストも低減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る連続式熱処理炉においては、前記のように予熱帯と冷却帯とを同じ共用搬送室に設け、予熱帯において予熱された被処理物を加熱させる第1加熱帯と、第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させる第2加熱帯を折り返し状に形成した折り返し搬送室に設けたため、直線方向における炉長を短くして、設置スペースを確保が容易に行えるようになった。
【0020】
また、本発明における連続式熱処理炉においては、前記のように被処理物を共用搬送室における予熱帯において予熱させ、予熱された被処理物を共用搬送室から折り返し搬送室に導いて、折り返し搬送室における第1加熱帯において加熱させ、さらに第2加熱帯において第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させ、このように加熱された被処理物を折り返し搬送室から前記の共用搬送室における冷却帯に導き、前記の冷却帯において加熱された被処理物を前記の予熱帯と逆方向に搬送させながら放熱させて冷却させるにあたり、加熱された被処理物から放熱された熱を、前記の共用搬送室における予熱帯において予熱させる被処理物の予熱に利用し、加熱された被処理物から放熱された熱を有効に利用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る連続式熱処理炉の全体を示した概略断面説明図である。
【
図2】同実施形態に係る連続式熱処理炉における共用搬送室において、被処理物を予熱帯で予熱させる一方、加熱された被処理物を冷却帯で冷却させる状態を示した概略断面説明図である。
【
図3】同実施形態に係る連続式熱処理炉において、折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に空間部を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させ、折り返し搬送室に設けられた第1加熱帯において予熱された被処理物を加熱させ、さらに第2加熱帯により第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させる状態を示した概略断面説明図である。
【
図4】同実施形態に係る連続式熱処理炉における天井の上方に設けられた案内レールに沿って被処理物を、共用搬送室における予熱帯や冷却帯で搬送させる例を示した搬送方向と直交する方向の部分断面説明図である。
【
図5】同実施形態に係る連続式熱処理炉において、天井の上方に設けられた案内レールに沿って走行する走行ローラーから吊下げ補助具等を介して被処理物を吊下げて炉内に保持させ、前記の走行ローラーによって被処理物を炉内で搬送させる例を示した部分概略説明図である。
【
図6】前記の実施形態の変更例における連続式熱処理炉の全体を示した概略断面説明図である。
【
図7】前記の変更例において、折り返し搬送室における第1加熱帯と第2加熱帯との間に仕切り壁を設けて、第1加熱帯と第2加熱帯とを分離させ、折り返し搬送室に設けられた第1加熱帯において予熱された被処理物を加熱させ、さらに第2加熱帯により第1加熱帯によって加熱された被処理物の加熱状態を維持させる状態を示した概略断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る連続式熱処理炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る連続式熱処理炉は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0023】
この実施形態における連続式熱処理炉においては、
図1に示すように、炉10内に、鋼板等の平板状になった被処理物1を予熱させる予熱帯T1と、予熱された被処理物1を加熱させる加熱帯T2と、加熱された被処理物1を冷却させる冷却帯T3とを設けるにあたり、前記の予熱帯T1と冷却帯T3とを同じ直線状になった共用搬送室11内に設けると共に、予熱された被処理物1を加熱させる加熱帯T2として、予熱帯T1において予熱された被処理物1を所定温度まで加熱させる第1加熱帯T2aと、第1加熱帯T2aによって所定温度に加熱された被処理物1の加熱状態を維持させる第2加熱帯T2bを折り返し状に形成した折り返し搬送室12内に設けている。なお、この実施形態においては、予熱帯T1と冷却帯T3とを共用させる共用搬送室11を直線状にしたが、曲線状になっていてもよい。
【0024】
また、前記の予熱帯T1と冷却帯T3との間には壁などの仕切りは設けられておらず、同じ共用搬送室11内に存在している。なお、
図1においては、説明の便宜上、予熱帯T1と冷却帯T3との間の境界部分Lを点線で示したが、壁などは設けられていない。
【0025】
また、この実施形態における連続式熱処理炉においては、
図1及び
図3に示すように、前記の折り返し搬送室12における第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間に空間部Sを設けて、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとを分離させるようにしている。
【0026】
ここで、この実施形態における連続式熱処理炉においては、平板状になった被処理物1を両側の平面部1aが搬送方向に沿うように保持させて炉10内を搬送させるようにし、前記の被処理物1を共用搬送室11における予熱帯T1において予熱させて前記の折り返し搬送室12内に導き、予熱された被処理物1を折り返し搬送室12における前記の第1加熱帯T2aにおいて所定温度まで加熱させた後、第1加熱帯T2aから折り返された前記の第2加熱帯T2bにおいて、被処理物1を所定温度に加熱させた状態を維持させ、加熱された状態にある被処理物1を、前記の折り返し搬送室12内から前記の共用搬送室11内における冷却帯T3に導き、冷却帯T3において前記の被処理物1を予熱帯T1と逆方向に搬送させながら冷却させるようにしている。
【0027】
そして、前記のように平板状になった被処理物1を両側の平面部1aが搬送方向に沿うように保持させて搬送させ、共用搬送室11における予熱帯T1において予熱させた後、折り返し搬送室12における第1加熱帯T2aにおいて被処理物1を所定温度まで加熱させ、第2加熱帯T2bにおいて所定温度に加熱された状態で維持された被処理物1を共用搬送室11内における冷却帯T3に導き、冷却帯T3において被処理物1を予熱帯T1と逆方向に搬送させながら冷却させるようにすると、冷却帯T3に導かれた加熱された被処理物1の平面部1aから熱が、前記の予熱帯T1において搬送される被処理物1の平面部1aに向けて広い範囲で放熱され、予熱帯T1における被処理物1が、加熱装置H等の熱源を用いなくても効率よく予熱されるようになる。
【0028】
ここで、この実施形態における連続式熱処理炉においては、
図1及び
図2に示すように、冷却帯T3における加熱された被処理物1からの放熱だけでは、予熱帯T1において搬送される被処理物1を所定の温度まで予熱できない場合や、予熱帯T1において搬送される被処理物1の平面部1aの表裏で温度差が生じる場合に備えて、前記の共用搬送室11内における冷却帯T3から離れた予熱帯T1側における炉10の側壁14の内側に、加熱装置Hを被処理物1の搬送方向に沿って所要間隔を介して複数設け、これらの加熱装置Hにより被処理物1を予熱帯T1において予熱させる一方、冷却帯T3側の側壁14には加熱装置Hを設けないようにしている。
【0029】
また、前記の折り返し搬送室12における第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bにおいては、
図1及び
図3に示すように、被処理物1の搬送方向両側における炉10の側壁14の内側に、それぞれ加熱装置Hを被処理物1の搬送方向に沿って設けるようにしている。
【0030】
そして、前記の第1加熱帯T2aの両側における炉10の側壁14の内側に設ける加熱装置Hの数を、第2加熱帯T2bの両側における炉10の側壁14の内側に設ける加熱装置Hの数よりも多くし、予熱帯T1から予熱されて導かれた被処理物1を前記の第1加熱帯T2aにおいて速やかに所定温度に加熱させるようにし、またこのように所定温度に加熱された被処理物1を前記の第2加熱帯T2bにおいて加熱させて、被処理物1が所定の加熱温度で維持(均熱)されるようにしている。
【0031】
ここで、この実施形態における連続式熱処理炉においては、前記のように折り返し搬送室12における第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間に空間部Sを設けて、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとを分離させているため、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間における熱の移動が前記の空間部Sによって抑制され、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとにおいて被処理物1を加熱させる温度を個別に制御できて、被処理物1の種類や処理条件に合った加熱が行えるようになる。
【0032】
また、この実施形態における連続式熱処理炉においては、平板状になった被処理物1を両側の平面部1aが搬送方向に沿うように保持させて、炉10内を搬送させるにあたり、
図2~
図5に示すように、前記の共用搬送室11や折り返し搬送室12の外側に設けた外枠20において、炉10の天井15の上方に位置する上枠21に、前記の被処理物1を搬送させる方向に沿うようにして案内レール30を設け、前記の案内レール30に走行用ローラー31を搬送方向に適当な間隔で配置させ、各走行用ローラー31に被処理物1を吊下げるのに用いる吊下げ補助具32を設け、各走行用ローラー31を送りチェーン33により案内レール30に沿って走行させるようにしている。
【0033】
ここで、前記の案内レール30は、前記の第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bの間で180°の円弧を描くように設けられ、前記の被処理物1はこの案内レール30に沿って走行されることにより折り返して送られるようになる。なお、このように案内レール30を180°折り返す以外にも、折り返し搬送室12全体を円形にして案内レール30を設け、被処理物1を円軌道で搬送させるようにしてもよい。
【0034】
ここで、走行用ローラー31に設けられた吊下げ補助具32により被処理物1を吊り下げて炉10内に保持させるにあたっては、適当な位置における走行用ローラー31に設けられた吊下げ補助具32に、吊下げ用ロッド34を下方に向けて取り付け、この吊下げ用ロッド34を前記の天井15の上に設けた断熱部16を通して、前記の案内レール30に沿って天井15に設けられた案内スリット17から炉10内に導入させ、この吊下げ用ロッド34の先端部(下端部)に二股状になって折り返された保持部34aを設ける一方、前記の被処理物1の吊下げ方向両側(上側と下側)に折り返し状になった吊下げ部1bを設けている。
【0035】
また、被処理物1の吊下げ方向両側(上側と下側)を折り返し状に形成しなくても、適宜、補助部品(図示せず)を用いて被処理物1を保持部34aに引っ掛けるようにして、取付け、取り外しが行えるような構造にすることもできる。
【0036】
そして、
図5に示すように、案内レール30に所要間隔を介して配置された一対の走行用ローラー31における各吊下げ補助具32にそれぞれ下方に向けて取り付けられた各吊下げ用ロッド34の先端部に設けた各保持部34aに、それぞれ被処理物1の吊下げ方向上側に設けられた吊下げ部1bを引っ掛けるようにして、一対の吊下げ用ロッド34により被処理物1を平面部1aが搬送方向に沿うようにして炉10内に保持させ、この状態で、各走行用ローラー31を送りチェーン33によって牽引することにより案内レール30に沿って走行させて、前記のように炉10内に保持させた被処理物1を順々に炉10内で搬送させるようにしている。
【0037】
なお、平板状になった被処理物1を両側の平面部1aが搬送方向に沿うように保持させて炉10内を搬送させる方法は、この実施形態に示した方法に限定されず、従来から公知の様々な方法を組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、前記の実施形態における連続式熱処理炉においては、前記のように折り返し搬送室12における第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間に空間部Sを設けて、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとを分離させるようにしたが、
図6及び
図7に示す変更例においては、前記の折り返し搬送室12における第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間に空間部Sを設けずに、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間に仕切り壁18を設けて、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとを分離させるようにしている。
【0039】
そして、この変更例においては、前記の仕切り壁18における第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの両側に加熱装置Hを設けるようにしている。
【0040】
ここで、前記の変更例のように、折り返し搬送室12における第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間に空間部Sを設けずに、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間に仕切り壁18を設けて、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとを分離させるようにすると、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bとの間の空間部Sを通して、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bにおける熱が外部に放熱されるということがなく、第1加熱帯T2aと第2加熱帯T2bにおける熱を有効に利用して、消費エネルギーを低減させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 :被処理物
1a :平面部
1b :吊下げ部
10 :炉
11 :共用搬送室
12 :折り返し搬送室
14 :側壁
15 :天井
16 :断熱部
17 :案内スリット
18 :仕切り壁
20 :外枠
21 :上枠
30 :案内レール
31 :走行用ローラー
32 :吊下げ補助具
33 :送りチェーン
34 :吊下げ用ロッド
34a :保持部
H :加熱装置
L :予熱帯と冷却帯との間の境界部分
S :空間部
T1 :予熱帯
T2 :加熱帯
T2a :第1加熱帯
T2b :第2加熱帯
T3 :冷却帯