(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095530
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】細長い医療デバイスのトルカーに対するトルク制限アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/08 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61M25/08 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023181918
(22)【出願日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】63/476,397
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/365,260
(32)【優先日】2023-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510292504
【氏名又は名称】コリンダス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ザープス
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ファルブ
(72)【発明者】
【氏名】ジィロン フアン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細長い医療デバイス(EMD)を操作するデバイスが、細長い医療デバイスを解放可能に固定し、トルカーにかかるトルクを制限するトルク制限アクチュエータを含むデバイスを提供する。
【解決手段】細長い医療デバイスを解放可能に固定するトルカーアセンブリであって、トルカーに加えられるトルクを制限するトルク制限アクチュエータを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い医療デバイスを操作するデバイスであって、
細長い医療デバイス(EMD)を解放可能に固定するトルカーと、
該トルカーに加えられるトルを制限するトルク制限アクチュエータと、を含むデバイス。
【請求項2】
前記トルク制限アクチュエータは、前記トルカーに加えられるトルクを所定のトルクに制限する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記トルク制限アクチュエータは、手動操作器とクラッチとを含み、前記クラッチは、所定のトルクを越えるトルクが前記トルカーにかかることを防止する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記トルク制限アクチュエータは、前記トルカーの長手軸の周りに手動回転可能なノブと、該ノブの部分と第1のクラッチ部材との間の付勢部材と、を含み、
前記第1のクラッチ部材は、該第1のクラッチ部材と第2のクラッチ部材との間が所定のトルクになるまで前記第2のクラッチ部材にトルクを加える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記トルク制限アクチュエータは、第1の方向で該アクチュエータに加えられるトルクを制限するが、反対の第2の方向で該アクチュエータに加えられるトルクは制限しない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記トルカーは、トルカーボディと、該トルカーボディ内で可動とされたプッシャーと、を有し、前記EMDをピンチするために少なくとも第1のパッドを前記トルカーの長手軸と交差する方向に動作させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記トルカーと前記EMDとの間の、前記トルカーの長手軸と交差する方向のピンチ力が、前記トルク制限アクチュエータによって前記トルカーに加えられるトルクの関数である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記クラッチは、バネ付勢された第1のギヤであり、第2のギヤと係合する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1のギヤと前記第2のギヤとの間が所定のトルクを超えると、前記第1のギヤが前記第2のギヤに対してスリップする、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記トルカーは、前記EMDを解放可能にピンチするために、前記第1のパッドから離してあって前記第1のパッドに向かう方向及び前記第1のパッドから離れる方向に可動とされた第2のパッドを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項11】
互いに離れていると共に前記トルカーの長手軸から離れているアームの対を有する付勢部材をさらに含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記トルク制限アクチュエータは、前記トルカーのボディに螺着される部分を有するシャフトを含み、該シャフトは、前記ボディに対し相対的に前記シャフトが回転したときにパッドを動作させて前記EMDに当接させるように作動可能な遠位部分を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記トルク制限アクチュエータは、駆動ギヤと、該駆動ギヤを付勢して前記シャフトに固定された従動ギヤと係合させる付勢部材と、を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記トルク制限アクチュエータは、前記ボディに対し相対的に手動回転可能とされたノブを含み、該ノブは、所定のトルクを加えることで解放可能にして前記シャフトと接続されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記トルク制限アクチュエータは、十分なトルクが前記トルカーにかかったときにその徴候を使用者に提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
細長い医療デバイスのトルカーであって、
経路を画定するキャビティを有するボディと、
前記キャビティ内で可動とされた第1のパッドと、
前記ボディに対し相対的に前記第1のパッドを付勢する、前記第1のパッドとは別の付勢部材と、
前記ボディに対し相対的に可動とされ、前記第1のパッドを動作させて前記経路内で前記第1のパッドにより前記細長い医療デバイスをピンチ及びアンピンチするアクチュエータと、
所定の値を超える所定のトルクがかかるときに解放可能にして前記アクチュエータに接続されるノブと、を含む、トルカー。
【請求項17】
EMD(細長い医療デバイス)の駆動システムであって、
ロボット駆動長手軸を有するロボット駆動装置と、
前記ロボット駆動長手軸に沿って可動とされたデバイスモジュールと、
前記EMDをピンチするトルカーをEMD長手軸の周りに回転させるように構成された被駆動部材にモータを連結する駆動トレインと、を含み、
前記トルカーは、該トルカーが前記デバイスモジュール内の使用位置にあるときに使用者から手動アクセスできるトルク制限アクチュエータを含む、駆動システム。
【請求項18】
前記トルク制限アクチュエータは、前記トルカーに加えられるトルクを所定のトルクに制限する、請求項17に記載の駆動システム。
【請求項19】
前記トルク制限アクチュエータは、手動操作器とクラッチとを含み、前記クラッチは、所定のトルクを越えるトルクが前記トルカーにかかることを防止する、請求項17に記載の駆動システム。
【請求項20】
前記トルク制限アクチュエータは、前記トルカーの長手軸の周りに手動回転可能なノブと、該ノブの部分と第1のクラッチ部材との間の付勢部材と、を含み、
前記第1のクラッチ部材は、該第1のクラッチ部材と第2のクラッチ部材との間が所定のトルクになるまで前記第2のクラッチ部材にトルクを加える、請求項17に記載の駆動システム。
【請求項21】
前記トルカーは、第1のデバイスモジュールから第2のデバイスモジュールへ移動させることができる、請求項17に記載の駆動システム。
【請求項22】
前記トルカーは、所定のトルクを超えて前記駆動トレインにかかるトルクを制限するトルク制限アクチュエータを含む、請求項17に記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連特許出願に対する相互参照]
本願は、2022年12月21日提出の米国仮出願63/476,397の優先権を主張する。この出願の開示内容はすべてここに援用される。
【0002】
本発明は、広く言えばロボット医療処置システムの分野に関連し、具体的には細長い医療デバイスのトルカーに関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルその他の細長い医療デバイス(EMD)は、神経介入手術としても知られる神経血管インターベンション(NVI)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、及び末梢血管インターベンション(PVI)を含む、様々な血管系の疾患の診断及び治療のための低侵襲医療処置に使用される。これらの処置は、典型的には、血管系を通しガイドワイヤをナビゲートし、このガイドワイヤを利用してカテーテルを前進させ、治療を行うことを含む。カテーテル法は、標準的な経皮的手法により、イントロデューサシースを使用して、動脈又は静脈などの適切な血管へのアクセスを得ることから始まる。イントロデューサシースを介して、次に、NVIの場合の内頸動脈、PCIの場合の冠動脈口、又はPVIの場合の浅大腿動脈のような一次位置まで、診断ガイドワイヤを通じてシース又はガイドカテーテルを進める。続いて、血管系に適したガイドワイヤを、シース又はガイドカテーテルを通して、血管系内の標的位置までナビゲートする。蛇行解剖学的構造のようなある種の状況では、ガイドワイヤを通じて支持カテーテル又はマイクロカテーテルを挿入し、ガイドワイヤのナビゲーションを補助する。医師又は操作者は、画像システム(例えば、透視装置)を使用して、造影剤注入によるシネを取得し、ガイドワイヤ又はカテーテルを標的位置、例えば病変、にナビゲートするためのロードマップとして使用する固定フレームを選択することができる。また、医師がガイドワイヤ又はカテーテルを送り込んでいるときにも造影画像が取得され、これにより、医師は、デバイスが標的位置への正しい経路に沿って移動していることを確認できる。透視法を用いて解剖学的構造を観察しながら、医師はガイドワイヤ又はカテーテルの近位端を操作し、その遠位先端を病変又は標的の解剖学的位置へ向かう適切な血管へ向かわせ、側枝への進入を避ける。
【0004】
例えばNVI、PCI、及びPVIなどのカテーテル式処置を行う医師を補助するために使用することができるロボットカテーテルベース処置システムが開発されている。NVI処置の例としては、動脈瘤のコイル塞栓術、動静脈奇形の液体塞栓術、及び急性虚血性脳卒中の状況における大血管閉塞の機械的血栓摘出術があげられる。NVI処置では、医師は、ロボットシステムを用いて、神経血管ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルの操作を制御することにより標的病変へのアクセスを獲得し、正常な血流を回復させる治療を施す。標的アクセスはシース又はガイドカテーテルによって可能とされるが、より遠位の領域に対して又はマイクロカテーテル及びガイドワイヤの適切な支持を提供するために、中間カテーテルを必要とすることもある。ガイドワイヤの遠位先端は、病変及び治療の種類に応じて、病変の中にナビゲートされるか又は病変の先までナビゲートされる。動脈瘤を治療する場合、マイクロカテーテルを病変内に進め、ガイドワイヤを取り除き、そして、マイクロカテーテルを通して動脈瘤内にいくつかの塞栓コイルを留置し、動脈瘤内への血流を遮断するために使用する。動静脈奇形を治療する場合、マイクロカテーテルを介して液体塞栓を奇形内に注入する。血管閉塞を治療するための機械的血栓除去は、吸引かステント回収器の使用のいずれか又はその両方によって達成され得る。血栓の位置に応じて、吸引は、吸引カテーテルを介して又は細い動脈の場合はマイクロカテーテルを介して行う。吸引カテーテルが病変部に入ったら、陰圧をかけてカテーテルを通し血栓を除去する。あるいは、マイクロカテーテルを通してステント回収器を配備することによって、血栓を除去することができる。ステント回収器が血栓を絡め取ると、ステント回収器及びマイクロカテーテル(又は中間カテーテル)をガイドカテーテルに引き込むことによって、血栓が回収される。
【0005】
PCIの場合、医師は、ロボットシステムを使用して、冠状動脈ガイドワイヤを操作することによって病変へのアクセスを獲得し、治療を行い、正常な血流を回復させる。アクセスは、ガイドカテーテルを冠動脈入口部に着座させることにより得られる。ガイドワイヤの遠位先端を病変の先へナビゲートし、複雑な解剖学的構造の場合は、マイクロカテーテルを用いてガイドワイヤを適切に支持することができる。血流は、病変にステント又はバルーンを送り込んで展開することによって回復する。ステント留置前に病変の準備を必要とする場合があり、この場合、病変の前拡張のためにバルーンを送り込むか、又は、例えば、レーザー又はガイドワイヤを通じた回転式アテレクトミーカテーテル及びバルーンを用いてアテレクトミーを実施する。画像診断及び生理学的測定が、撮像カテーテル又は血流予備量比(FFR)測定を用いることにより、適切な治療法を決定するために実施される場合もある。
【0006】
PVIの場合、医師はロボットシステムを使用して治療を行い、NVIと同様の技術で血流を回復させる。ガイドワイヤの遠位先端は病変の先へナビゲートされ、複雑な解剖学的構造の場合はガイドワイヤを適切に支持するためにマイクロカテーテルが使用されることもある。病変にステント又はバルーンを送り込んで展開することにより血流が回復する。PCIの場合と同じく、病変の準備や画像診断も同様に用いられ得る。
【0007】
カテーテル又はガイドワイヤの遠位端での支持が、例えば、蛇行又は石灰化した血管系をナビゲートするために、遠位の解剖学的部位に到達するために、又は硬い病変を横切るために必要とされる場合、オーバーザワイヤ(OTW)カテーテル又は同軸システムが使用される。OTWカテーテルにはガイドワイヤ用のルーメンがあってカテーテルの全長にわたり延伸している。これにより、ガイドワイヤが全長にわたって支持されることになるので、比較的安定したシステムが提供される。しかし、このシステムには、ラピッドエクスチェンジカテーテル(後述)と比較して、高い摩擦及び長い全長を含むいくつかの欠点がある。通常、留置ガイドワイヤの位置を維持しながらOTWカテーテルを抜去又は交換するためには、ガイドワイヤの露出長(患者の外側)がOTWカテーテルより長くなければならない。長さ300cmのガイドワイヤがこの目的には一般的に十分であり、交換長ガイドワイヤと呼ばれることが多い。このガイドワイヤの長さの故に、OTWカテーテルの抜去又は交換には2名の操作者が必要である。これは、三軸系として当技術分野で知られている三重同軸系を使用する場合(四重同軸カテーテルも使用されることが知られている)、さらに困難になる。しかし、その安定性に鑑みて、NVI及びPVI処置ではOTWシステムがよく使用される。一方、PCI処置では、ラピッドエクスチェンジ(又はモノレール)カテーテルを使用することが多い。ラピッドエクスチェンジカテーテルのガイドワイヤルーメンは、モノレール又はラピッドエクスチェンジ(RX)セクションと呼ばれるカテーテルの遠位部分を通っているだけである。RXシステムでは、操作者は互いに平行にインターベンションデバイスを操作し(OTWシステムではデバイスを縦列の構成で操作するのとは対照的に)、ガイドワイヤの露出長はカテーテルのRXセクションよりもわずかに長くするだけでよい。ラピッドエクスチェンジ長のガイドワイヤは、典型的には180~200cmの長さである。短いガイドワイヤとモノレールであることを考えれば、RXカテーテルは1人の操作者で交換可能である。しかし、より遠位の支持が必要な場合にRXカテーテルは不適当であることが多い。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、細長い医療デバイス(EMD)を操作するデバイスが、細長い医療デバイスを解放可能に固定し、トルカーにかかるトルクを制限するトルク制限アクチュエータを含んでいる。
【0009】
一態様において、トルク制限アクチュエータは、トルカーにかかるトルクを所定のトルクに制限する。
【0010】
一態様において、トルク制限アクチュエータは、手動操作器と、所定のトルクを超えたトルクがトルカーにかかることを防止するクラッチと、を含む。
【0011】
一態様において、トルク制限アクチュエータは、トルカーの長手軸(長手方向軸/縦軸)の周りに手動回転可能なノブと、ノブの部分と第1のクラッチ部材との間の付勢部材と、を含む。第1のクラッチ部材は、第1のクラッチ部材と第2のクラッチ部材との間が所定のトルクになるまで第2のクラッチ部材にトルクを加える。
【0012】
一態様において、トルク制限アクチュエータは、第1の方向でアクチュエータに加えられるトルクを制限するが、反対の第2の方向でアクチュエータに加えられるトルクは制限しない。
【0013】
一態様において、トルカーは、トルカーボディと、トルカーボディ内で可動とされたプッシャー(押圧器)と、を有し、EMDをピンチする(掴む)ために少なくとも第1のパッドをトルカーの長手軸と交差する方向に動作させる。
【0014】
一態様において、トルカーとEMDとの間の、トルカーの長手軸と交差する方向のピンチ力は、トルク制限アクチュエータによってトルカーに加えられるトルクの関数である。
【0015】
一態様において、クラッチは、バネ付勢された第1のギヤであり、第2のギヤと係合する。
【0016】
一態様において、第1のギヤと第2のギヤとの間が所定のトルクを超えると、第1のギヤが第2のギヤに対してスリップする。
【0017】
一態様において、トルカーは、EMDを解放可能にピンチするために、第1のパッドから離してあって第1のパッドに向かう方向及び第1のパッドから離れる方向に可動とされた第2のパッドを含む。
【0018】
一態様において、付勢部材は、互いに離れていると共にトルカーの長手軸から離れているアームの対を含む。
【0019】
一態様において、トルク制限アクチュエータはシャフトを含み、このシャフトは、トルカーのボディに螺着される部分と、トルカーのボディに対し相対的にシャフトが回転したときにパッドを動作させてEMDに当接させるように作動可能な遠位部分と、を有する。
【0020】
一態様において、トルク制限アクチュエータは、駆動ギヤと、駆動ギヤを付勢してシャフトに固定された従動ギヤと係合させる付勢部材と、を含む。
【0021】
一態様において、トルク制限アクチュエータは、トルカーのボディに対し相対的に手動回転可能とされたノブを含む。このノブは、所定のトルクを加えることで解放可能にしてシャフトと接続されている。
【0022】
一態様において、トルク制限アクチュエータは、十分なトルクがトルカーにかかったときに、可聴クリック音及び/又はノブの振動の形態の触覚的フィードバックを通してなどで、使用者に知らせる。
【0023】
一態様において、細長い医療デバイスのトルカーは、経路を画定するキャビティを有するボディと、キャビティ内で可動とされた第1のパッドと、ボディに対し相対的に第1のパッドを付勢する、第1のパッドとは別の付勢部材と、ボディに対し相対的に可動とされ、第1のパッドを動作させて経路内で第1のパッドにより細長い医療デバイスをピンチ(掴む)及びアンピンチ(放す)するアクチュエータと、所定の値を超える所定のトルクがかかるときに解放可能にしてアクチュエータに接続されるノブと、を含む。
【0024】
一態様において、EMD駆動装置が、ロボット駆動長手軸を有するロボット駆動装置と、ロボット駆動長手軸に沿って可動とされたデバイスモジュールと、細長い医療デバイス(EMD)をピンチするトルカーをEMD長手軸の周りに回転させるように構成された被駆動部材にモータを連結する駆動トレインと、を含み、トルカーは、トルカーがデバイスモジュール内の使用位置にあるときに使用者から手動アクセスできるトルク制限アクチュエータを含む。
【0025】
一態様において、トルカーは、第1のデバイスモジュールから第2のデバイスモジュールへ移動させることができる。
【0026】
一態様において、トルカーは、所定のトルクを超えて駆動トレインにかかるトルクを制限するトルク制限アクチュエータを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】カテーテル処置システムを例示する概略図である。
【
図2】カテーテル処置システムを例示する概略ブロック図である。
【
図3】カテーテル処置システムのカセットアセンブリとロボット駆動装置と駆動モジュールの分解図である。
【
図5】
図4のトルカーアクチュエータの分解図である。
【
図6】
図4のトルカーアクチュエータを側面から見た平面図である。
【
図7】
図6のトルカーアクチュエータの断面図である。
【
図8】
図4のトルカーアクチュエータのトルク制限ノブアセンブリの分解図である。
【
図8A】トルク制限アセンブリの部分の拡大図である。
【
図8B】トルク制限アセンブリのノブの斜視図である。
【
図9】
図4のトルカーアクチュエータのパッド及び付勢部材の斜視図である。
【
図10】カテーテル処置システムのカセット内にあるトルカーアクチュエータの斜視図である。
【
図11】各停止機能を説明する、トルカーアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、実施例に係るカテーテルベース処置システム10を例示する斜視図である。カテーテルベース処置システム10は、カテーテルベース医療処置、例えば、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(例えば、STEMIを治療するため)、神経血管インターベンション処置(NVI)(例えば、急性大血管閉塞(ELVO)を治療するため)、末梢血管インターベンション処置(PVI)(例えば、重症下肢虚血(CLI)のため)など、を行うために使用され得る。カテーテルベース医療処置には診断カテーテル処置が含まれることがあり、この処置においては、患者の疾患の診断を補助するために1つ以上のカテーテル又は他の細長い医療デバイス(EMD)が使用される。例えば、カテーテルベース診断処置の一実施例において、造影剤をカテーテルを通して1つ以上の動脈に注入し、患者の血管系の画像を撮影する。カテーテルベース医療処置には、カテーテルベース治療処置(例えば、血管形成術、ステント留置、末梢血管疾患の治療、血栓除去、動脈静脈奇形治療、動脈瘤の治療など)も含まれ、この処置ではカテーテル(又は他のEMD)を用いて疾患を治療する。治療処置は、例えば、血管内超音波(IVUS)、光干渉断層撮影(OCT)、血流予備量比(FFR)などの補助デバイス54(
図2に示される)を含めることによって強化することができる。ただし、当分野で通常の知識をもつ者にとっては、特定の専用の経皮的インターベンションデバイス又はコンポーネント(例えば、ガイドワイヤのタイプ、カテーテルのタイプなど)が、実施される処置のタイプに基づいて選択可能であることは、当然のことである。カテーテルベース処置システム10は、処置で使用される専用の経皮的インターベンションデバイスをわすかな調節で収容でき、あらゆるカテーテルベース医療処置を実施することができる。
【0029】
カテーテルベース処置システム10は、数ある要素の中でも特に、ベッドサイドユニット20及び制御ステーション(図示せず)を含む。ベッドサイドユニット20は、ロボット駆動装置24と、患者12に隣接して位置する位置決めシステム22と、を備える。患者12は、患者テーブル18に乗せられる。位置決めシステム22は、ロボット駆動装置24を位置決めし、支持するために使用される。位置決めシステム22は、例えば、ロボットアーム、関節式アーム、ホルダーなどである。位置決めシステム22は、一端で、例えば、患者テーブル18(
図1に示される)、ベース、又はカートに取り付けることができる。位置決めシステム22の他端には、ロボット駆動装置24が取り付けられる。位置決めシステム22は、患者12が患者テーブル18に乗ることができるように(ロボット駆動装置24と共に)退避させることができる。患者12が患者テーブル18に乗った後は、位置決めシステム22を用いて、処置のためにロボット駆動装置24を患者12に対して据える又は位置決めすることができる。処置のための位置にあるロボット駆動装置の配置は、ここではロボット駆動装置の使用位置と呼ぶ。一実施例において、患者テーブル18は、床及び/又は地面に固定されている台座17によって支持されて作動可能である。患者テーブル18は、台座17に対して、多自由度、例えば、ロール、ピッチ、ヨーで動くことができる。ベッドサイドユニット20はまた、制御器及びディスプレイ46(
図2に示される)を含むこともできる。例えば、制御器及びディスプレイは、ロボット駆動装置24のハウジングに配置することができる。
【0030】
通常、ロボット駆動装置24は、適切な経皮的インターベンションデバイス及びアクセサリ48(
図2に示される)(例えば、ガイドワイヤ、バルーンカテーテル(これに限定されない)を含む各種タイプのカテーテル、ステントデリバリーシステム、ステント回収器、塞栓形成コイル、液体塞栓、吸引ポンプ、造影剤や薬剤を注入するデバイス、止血弁アダプタ、シリンジ、ストップコック、膨張デバイスなど)を備えていて、使用者又は操作者が、制御ステーションにある制御機器及び入力機器などの各種コントローラを操作することによって、ロボットシステムを介してカテーテルベース医療処置を行うことができるようにしている。ベッドサイドユニット20、具体的にはロボット駆動装置24は、ベッドサイドユニット20にここに説明する機能性を付与するために数多くのコンポーネント及び/又はその組み合わせを含むことができる。ロボット駆動装置24は、レール又は直線部材に取り付けられた複数のデバイスモジュール32a-dを含む。デバイスモジュール32a-dの各々を使用して、カテーテルやガイドワイヤなどのEMDを駆動することができる。例えば、ロボット駆動装置24を使用して、診断用カテーテルの中へ及び患者12の動脈中のガイドカテーテルの中へガイドワイヤを自動的に送ることができる。EMDなどの1つ以上のデバイスは、例えばイントロデューサシースを介して挿入点16において患者12の体(例えば血管)に入る。各デバイスモジュール32a-dは、駆動モジュールを含み、駆動モジュールに取り外し可能に取り付けられたカセットを含む。各駆動モジュールは、ブラケット又はステージを備えたロボット駆動長手軸に沿って可動とされる。
図1は、4つのデバイスモジュールを例示しているが、デバイスモジュールの数は1つ以上が想定される。
【0031】
ベッドサイドユニット20は、制御ステーション(図示せず)と通信し、制御ステーションのユーザ入力機器によって生成された信号をベッドサイドユニット20へ無線又は有線で伝送し、ベッドサイドユニット20の様々な機能を制御することを可能にする。後述するように、制御ステーションは、制御コンピューティングシステム34(
図2に示される)を含むか、又は、制御コンピューティングシステム34を介してベッドサイドユニット20とつながる。ベッドサイドユニット20は、制御ステーションか制御コンピューティングシステム34(
図2に示される)又はその両方に、フィードバック信号(例えば、負荷、速度、動作条件、警告信号、エラーコードなど)を提供することもできる。制御コンピューティングシステム34とカテーテルベース処置システム10の各コンポーネントとの間の通信は、無線接続、有線接続、又はコンポーネント間の通信を可能にするその他の手段である通信リンクを介して提供し得る。制御ステーション又は他の類似の制御システムは、ローカルサイト(現場)(例えば、
図2に示されるローカル制御ステーション38)又はリモートサイト(遠隔地)(例えば、
図2に示されるリモート制御ステーション及びコンピューティングシステム42)のどちらかに位置する。カテーテル処置システム10は、ローカルサイトの制御ステーション又はリモートサイトの制御ステーションにより、あるいは、ローカル制御ステーションとリモート制御ステーションの両方によって同時に、作動させることができる。ローカルサイトにおいて、使用者又は操作者及び制御ステーションは、患者12及びベッドサイドユニット20と同じ部屋又は隣の部屋にある。ここで使用される場合、ローカルサイトは、ベッドサイドユニット20及び患者12又は被験体(例えば、動物や死体)の場所であり、リモートサイトは、使用者又は操作者及びベッドサイドユニット20をリモート制御するために使用される制御ステーションの場所である。リモートサイトの制御ステーション(及び制御コンピューティングシステム)とローカルサイトのベッドサイドユニット20及び/又は制御コンピューティングシステムとは、例えばインターネットを介し、通信システム及びサービス36(
図2に示される)を使用して通信する。一実施例において、リモートサイトとローカル(患者)サイトは互いに離れており、例えば、同じ建物内の別々の部屋、同じ市内の別々の建物、別の市町村、又は、その他の、リモートサイトがローカルサイトのベッドサイドユニット20及び/又は患者12への物理的アクセスをもたない別々の場所にある。
【0032】
制御ステーションは、通常、カテーテルベース処置システム10の各種コンポーネント又はシステムを作動させるためのユーザ入力を受信するように構成された1つ以上の入力モジュール28を含む。ここに示す実施例において、制御ステーションは、使用者又は操作者がベッドサイドユニット20を制御してカテーテルベース医療処置を行うことを可能にする。例えば、入力モジュール28は、ロボット駆動装置24と連動する経皮的インターベンションデバイス(例えば、EMD)を使用してベッドサイドユニット20に様々なタスクを実行させるように構成することができる(例えば、ガイドワイヤの前進、後進又は回転、カテーテルの前進、後進又は回転、カテーテルで配置されたバルーンの膨張又は収縮、ステントの位置決め及び/又は展開、ステント回収器の位置決め及び/又は展開、コイルの位置決め及び/又は展開、造影剤のカテーテル注入、液体塞栓のカテーテル注入、薬液又は生理食塩水のカテーテル注入、カテーテルでの吸引、又は、カテーテルベース医療処置の一環として実施され得るその他の機能の実行)。ロボット駆動装置24は、経皮的インターベンションデバイスを含むベッドサイドユニット20のコンポーネントの動作(例えば、軸方向動作及び回転動作)させるための各種駆動機構を含む。
【0033】
一実施例において、入力モジュール28は、1つ以上のタッチスクリーン、ジョイスティック、スクロールホイール、及び/又はボタンを含むことができる。入力モジュール28に加えて、制御ステーション26は、フットスイッチや音声命令用のマイクロフォンといった追加のユーザ制御機器44(
図2に示される)を使用することもできる。入力モジュール28は、各コンポーネント及び経皮的インターベンションデバイス、例えば、ガイドワイヤ及び1つ以上のカテーテル又はマイクロカテーテルなど、を前進、後進、又は回転させるように構成することができる。ボタンは、例えば、緊急停止ボタン、倍率ボタン、デバイス選択ボタン、及び自動作動ボタンを含むことができる。緊急停止ボタンが押されると、動力(例えば、電力)が遮断されるか又はベッドサイドユニット20に対し除かれる。速度制御モードにあるとき、倍率ボタンは、入力モジュール28の操作に応答して動作する関連コンポーネントの動作速度を増減させるように作用する。位置制御モードにあるときには、倍率ボタンは、入力距離と出力指令距離との間のマッピングを変更する。デバイス選択ボタンにより、使用者又は操作者は、ロボット駆動装置24に装填された経皮的インターベンションデバイスのうちのどれを入力モジュール28によって制御するか、選択することができる。自動作動ボタンは、カテーテルベース処置システム10が、使用者又は操作者から直接的に指令を受けずに経皮的インターベンションデバイスで実行することのできるアルゴリズムによる作動を可能にするために、使用される。一実施例において、入力モジュール28は、タッチスクリーン(ディスプレイの一部である場合とそうでない場合がある)に表示される1つ以上の制御部又はアイコン(図示せず)を含み、これらは選択されると、カテーテルベース処置システム10のコンポーネントを作動させる。入力モジュール28はまた、バルーンを膨張又は収縮させ及び/又はステントを展開するように構成されたバルーン又はステント制御器を含むことができる。入力モジュール28の各々は、1つ以上のボタン、スクロールホイール、ジョイスティック、タッチスクリーンなどを含み、これらは、専用に制御する特定の1つ以上のコンポーネントを制御するために使用することができる。さらに、1つ以上のタッチスクリーンが、入力モジュール28の各部分又はカテーテルベース処置システム10の各コンポーネントに関連付けられた1つ以上のアイコン(図示せず)を表示することができる。
【0034】
カテーテルベース処置システム10は、撮像システム14も含む。撮像システム14は、例えば、カテーテルベース医療処置と併せて使用される医用撮像システム(例えば、非デジタルX線、デジタルX線、CT、MRI、超音波など)である。一実施例において、撮像システム14は、制御ステーションと通信するデジタルX線撮像デバイスである。一実施例において、撮像システム14は、患者12に対し様々な角度位置で画像(例えば、矢状面像、尾面像、前後面像など)を得るために、患者12の周囲を撮像システム14が部分的に又は完全に回転することを可能にするCアーム(
図1に示される)を含むことができる。一実施例において、撮像システム14は、X線源13及びイメージインテンシファイアとしても知られる検出器15を有するCアームを含む透視システムである。
【0035】
撮像システム14は、処置中に患者12の適切な領域のX線画像を撮像するように構成することができる。例えば、撮像システム14は、神経血管状態を診断するために、頭部の1つ以上のX線画像を撮像するように構成することができる。撮像システム14は、カテーテルベース医療処置中に1つ以上のX線画像(例えば、リアルタイム画像)を撮像して、ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、マイクロカテーテル、ステント回収器、コイル、ステント、バルーンなどを処置中に適切に位置決めするために、制御ステーション26の使用者又は操作者を補助するように構成することもできる。1枚以上の画像がディスプレイ30に表示され得る。例えば、画像をディスプレイに表示して、使用者又は操作者がガイドカテーテル又はガイドワイヤを適切な位置に正確に移動させることを補助する。
【0036】
方向を明確にするために、直交座標系をX,Y,Z軸で導入した。正のX軸は、長手(軸方向)遠位方向、すなわち、近位端から遠位端へ向かう方向、言い換えれば、近位から遠位の方向へ向いている。Y軸とZ軸は、X軸に対する横断面内にあり、正のZ軸が上向き、つまり重力の反対方向に向き、Y軸は右手の法則によって自動的に決まる。ここで使用される場合、X軸は、ロボット駆動装置24の長手軸に沿って延伸する。使用位置でロボットハウジングは、重力の方向に対し直交する水平面に対して傾き得るので、X軸、Y軸、及びZ軸は、ロボット駆動装置24によって規定される。
図1を参照すると、ロボット駆動装置24は、X-Y平面と平行な上面又は第1の部材24aと、第1の部材24aと平行で間隔を置いた下面又は第2の部材と、第1の部材24aと第2の部材との間に実質的に直交して延伸している前面又は第3の部材24cと、を有するハウジングを含む。第3の部材24cは、ロボット駆動装置24が
図1に示す使用位置又は使用方向にあるとき、使用者に面している。第4の部材が、第3の部材24cから間隔を置いてあり、実質的に、第3の部材24cと平行であり且つ第1の部材24a及び第2の部材24bに直交している。ロボット駆動装置ハウジングには他の形状も使用可能であると想定される。この場合、第1の部材24aが上面部材であり、第2の部材が下面又は底面部材であり、前面又は第3の部材24cが外科的処置中の使用位置で使用者に面する部分であり、第4の部材が外科的処置中の使用位置で使用者とは逆に向く部分である。ロボット駆動装置24はさらに、遠位領域24eと近位領域24fとを含む。この場合、遠位領域24eが、EMDが導入される患者の挿入点に近く、近位領域24fが、EMDが導入される患者の挿入点から最も遠くにある。
【0037】
図2は、実施例に係るカテーテルベース処置システム10のブロック図である。カテーテルベース処置システム10は、制御コンピューティングシステム34を含み得る。制御コンピューティングシステム34は、物理的に、例えば制御ステーションの一部であり得る。制御コンピューティングシステム34は、通常、ここに説明する各機能をカテーテルベース処置システム10に提供するのに適した電子制御ユニットである。例えば、制御コンピューティングシステム34は、埋め込みシステム、専用回路、ここに説明する機能をプログラムされた汎用システムなどである。制御コンピューティングシステム34は、ベッドサイドユニット20、通信システム及びサービス36(例えば、インターネット、ファイアウォール、クラウドサービス、セッションマネージャ、病院ネットワークなど)、ローカル制御ステーション38、追加の通信システム40(例えば、テレプレゼンスシステム)、リモート制御ステーション及びコンピューティングシステム42、及び患者センサ56(例えば、心電図(ECG)デバイス、脳波(EEG)デバイス、血圧モニタ、体温モニタ、心拍モニタ、呼吸モニタなど)と通信する。制御コンピューティングシステムは、撮像システム14、患者テーブル18、追加の医療システム50、造影剤注入システム52、及び補助デバイス54(例えば、IVUS、OCT、FFRなど)とも通信する。ベッドサイドユニット20は、ロボット駆動装置24と位置決めシステム22とを含み、場合によって追加の制御器及びディスプレイ46を含む。上述のように、追加の制御器及びディスプレイは、ロボット駆動装置24のハウジングに配置することができる。インターベンションデバイス及びアクセサリ48(例えば、ガイドワイヤ、カテーテルなど)は、ベッドサイドユニット20と連動する。一実施例において、インターベンションデバイス及びアクセサリ48は、専用にしたデバイス(例えば、IVUSカテーテル、OCTカテーテル、FFRワイヤ、造影用診断カテーテルなど)を含み、これらはそれぞれの補助デバイス54、すなわちIVUSシステム、OCTシステム、及びFFRシステムなどと連動する。
【0038】
一実施例において、制御コンピューティングシステム34は、カテーテルベース処置システム10を使用して医療処置を実行することができるように、(例えば、ローカル制御ステーション38又はリモート制御ステーション42などの制御ステーションの)入力モジュール28との使用者の相互作用に基づいて、及び/又は、コンピューティングシステム34のアクセス可能な情報に基づいて、制御信号を生成するように構成されている。ローカル制御ステーション38は、1つ以上のディスプレイ30、1つ以上の入力モジュール28、及び追加のユーザ制御機器44を含む。リモート制御ステーション及びコンピューティングシステム42は、ローカル制御ステーション38と同様のコンポーネントを含むことができる。リモート制御ステーション42及びローカル制御ステーション38は、別のものとして、必要とされる機能に基づいてそれぞれ構成することができる。追加のユーザ制御機器44は、例えば、1つ以上の足入力制御器を含むことができる。足入力制御器は、使用者が、X線をオン/オフしたり、複数の保存画像をスクロールするなど、撮像システム14の機能を選択することを可能にするべく構成することができる。一実施例において、足入力デバイスは、入力モジュール28に含まれるスクロールホイールにマッピングされる(割り付けられる)デバイスを使用者が選択できるようにするべく構成することができる。追加の通信システム40(例えば、音声カンファレンス、ビデオカンファレンス、テレプレゼンスなど)が、例えば、操作者が患者、医療スタッフ(例えば、アンギオオスイートスタッフ)、及び/又はベッドサイドの近くの機器と相互作用することを補助するべく採用される。
【0039】
カテーテルベース処置システム10は、明示してはいない他のシステム及び/又はデバイスを含むように接続又は構成することができる。例えば、カテーテルベース処置システム10は、画像処理エンジン、データストレージ及びアーカイブシステム、自動バルーン及び/又はステント膨張システム、薬液注入システム、薬液追跡及び/又はログシステム、ユーザログ、暗号化システム、カテーテルベース処置システム10のアクセス又は使用を制限するシステムなどを含むことができる。
【0040】
前述したように、制御コンピューティングシステム34は、ロボット駆動装置24と位置決めシステム22を含みそして追加の制御機器及びディスプレイ46を含む場合のあるベッドサイドユニット20と通信し、モータの作動を制御すると共に経皮的インターベンションデバイス(例えば、ガイドワイヤ、カテーテルなど)を駆動するために使用される機構を駆動するために、ベッドサイドユニット20へ制御信号を提供する。各種の駆動機構がロボット駆動装置24の一部として設けられる。
【0041】
図3を参照すると、デバイスモジュール32aは、第1の駆動モジュール60及び第1のカセット68を含んでいる。デバイスモジュール32bは、第2の駆動モジュール62及び第2のカセット70を含む。デバイスモジュール32cは、第3の駆動モジュール64及び第3のカセット72を含む。デバイスモジュール32dは、第4の駆動モジュール66及び第4のカセット74を含む。一実施例において、第1のカセット68、第2のカセット70、第3のカセット72、及び第4のカセット74は、マルチユニットカセットアセンブリとして一緒に出荷される。一実施例において、マルチユニットカセットアセンブリ76は、カセットの各々が、互いに摺動可能に接続される一方、それぞれの駆動モジュールに取り外し可能に接続される、ことを可能にする。一実施例において、複数のデバイスモジュール32a-dのそれぞれは、独立して作動し、ロボット駆動装置24内で直線部材に沿って直線的に動作することができる。各デバイスモジュール32a-dは、ロボット駆動装置において互いに及び直線部材に対して独立して動くことができる。駆動機構は、ここではロボット駆動長手軸78とも呼ぶ、ロボット駆動装置24の長手軸78に沿ってデバイスモジュールをそれぞれ動作させる。ロボット駆動長手軸78は、デバイスモジュールが沿って移動する送りネジ駆動などの直線部材の方向に延伸するか、又は、デバイスモジュールが沿って移動する直線部材に平行な別の軸に沿って画定される。
図3を参照すると、各カセット68-74は、通常、XZ平面において上下に向けられている。各カセット68-74は、X軸に沿った又は長手軸78と平行な長さが、Y軸に沿った又はY軸と交差する各カセットの幅よりも大きい。ここに全内容が援用される国際公開公報WO2021/011533は、XY平面でおおよそ水平な位置に配置されたカセットを開示する。カセットの上下(縦/垂直)と左右(横/水平)の間の区別は、国際公開公報WO2021/011554に記載されており、その全内容がここに援用される。
【0042】
国際公開公報WO2021/011554を参照すると、一実施例において、駆動機構は、デバイスモジュールのそれぞれに連結された独立のステージ並進モータと、回転ナットを利用した送りネジ、ラックアンドピニオン、ピニオン又はプーリを介したベルト、スプロケットを介したチェーンなどのステージ駆動機構と、を含むか、又は、ステージ並進モータ64a-dは、それ自体がリニアモータである。駆動機構は、デバイスモジュールの前進及び後進を提供する。このような駆動機構の例が国際公開公報WO2021/011533に記載されている。
【0043】
病原体による患者の汚染を防ぐために、医療スタッフは、ベッドサイドユニット20と患者12又は被験者(
図1に示される)を収容している部屋で無菌技術を使用する。ベッドサイドユニット20と患者12を収容する部屋は、例えば、カテーテルラボ又はアンギオスイートである。無菌技術は、滅菌バリア、滅菌器具、適切な患者準備、環境管理、及び接触ガイドラインを使用することからなる。これに応じてすべてのEMD及びインターベンションアクセサリは滅菌され、滅菌バリア又は滅菌器具のいずれかとのみ接触することを許される。一実施例において、滅菌ドレープ(図示せず)で非滅菌ロボット駆動装置24が覆われる。各カセット68-74が滅菌され、ドレープ付きロボット駆動装置24と少なくとも1つのEMDとの間の滅菌インターフェースとして作用する。各カセット68-74は、1回だけの使用を目的として滅菌されるように設計されるか、又は、カセット68-74又はそのコンポーネントを複数の処置で使用できるように全体的にもしくは部分的に再滅菌されるように設計される。
【0044】
遠位及び近位:「遠位」及び「近位」は、2つの別の部分の相対的位置を定義する。ロボット駆動装置に関して言えば、「遠位」及び「近位」は、その用途における患者に対するロボット駆動装置の位置によって定義される。相対的位置を定義するために使用される場合、遠位部分は、ロボット駆動装置がその用途の使用位置にあるときに、近位部分よりも患者に近いロボット駆動装置の部分である。患者の中では、アクセスポイントから経路に沿ってより遠くにある血管系ランドマークが、アクセスポイントに近いランドマークよりも遠位であると見なされる。なお、アクセスポイントはEMDが患者に入るポイントである。同様に、近位部分は、ロボット駆動装置がその用途の使用位置にあるときに、遠位部分よりも患者から遠い部分である。方向を定義するために使用される場合、遠位方向は、ロボット駆動装置がその用途の使用位置にあるときに、近位部分から遠位部分及び/又は患者へ向かって、何かが移動している又は何かが移動しようとしている進路、又は、何かが目指している又は向いている進路を言う。近位方向は、遠位方向の反対方向である。
図1の例で言うと、ロボット駆動装置は、患者に対面している操作者の視点から示されている。この配置において、遠位方向は正のX座標軸に沿っており、近位方向は負のX座標軸に沿っている。
【0045】
長手軸(縦軸/長手方向軸):部材(例えば、カテーテルベース処置システムにおけるEMDその他の要素)の「長手軸」は、部材の近位部位から部材の遠位部位の方向に部材の横断面の中心を通る、部材の長さに沿った線又は軸である。例えば、ガイドワイヤの長手軸は、ガイドワイヤが関連する部分で非線形であったとしても、ガイドワイヤの近位部からガイドワイヤの遠位部へ向かう方向の中心軸である。
【0046】
軸方向動作(軸方向移動):部材の「軸方向動作」は、部材の長手軸に沿った部材の並進(平行移動)を指す。EMDの遠位端を、その長手軸に沿って遠位方向に、患者の中へ又はさらに奥へ軸方向に移動させると、該EMDは前進中である。EMDの遠位端を、その長手軸に沿って近位方向に、患者から外へ又はさらに離れる方へ軸方向に移動させると、該EMDは引き抜き中である。
【0047】
回転動作:部材の「回転動作」は、部材の局所の長手軸を中心とした部材の角度方向の変化を指す。EMDの回転動作は、加えられたトルクによる、長手軸の周りのEMDの時計回り又は反時計回りの回転に相当する。
【0048】
軸方向挿入及び横方向挿入:「軸方向挿入」は、第1の部材を、第2の部材の長手軸に沿って第2の部材に挿入することを指す。コレットに軸方向に装填されるEMDはコレットに軸方向に挿入される。軸方向挿入の一例として、ガイドワイヤの近位端にカテーテルを後方装填することがあげられる。「横方向挿入」は、第1の部材を、第2の部材の長手軸と交差する平面内の方向に沿って第2の部材に挿入することを指す。これは、半径方向装填又は側方装填と呼ぶこともできる。別の言い方をすれば、横方向挿入は、第1の部材を、第2の部材の半径方向に平行で長手軸と直交する方向に沿って第2の部材に挿入することを指す。
【0049】
上/下・前/後・内/外:「上面、上側、上方、上向き」は重力の方向とは逆の一般的な方向を指し、「下面、下側、下方、下向き」は重力の方向の一般的な方向を指す。「前面(正面)」は、ベッドサイドの使用者に面し、関節アームなどの位置決めシステムとは反対にあるロボット駆動装置の側面を指す。「後面(背面)」は、関節アームなどの位置決めシステムに近い側のロボット駆動装置の側面を指す。「内方」は、部分の内部を意味する。「外方」は、部分の外部を意味する。
【0050】
ステージ:「ステージ」は、デバイスモジュールをロボット駆動装置に連結するために使用される部材、部分、又はデバイスを指す。例えば、ステージは、ロボット駆動装置のレール又は直線部材にデバイスモジュールを連結するために使用され得る。
【0051】
駆動モジュール:「駆動モジュール」は、概して、カセットと連動する駆動カプラと共に1つ以上のモータを通常は含むロボット駆動システムの部分(例えば、主要部分)を指す。
【0052】
デバイスモジュール:「デバイスモジュール」は、駆動モジュールとカセットの組み合わせを指す。
【0053】
カセット:「カセット」は、概して、通常は駆動モジュールと少なくとも1つのEMDとの間の(直接的)又はデバイスアダプタを介した(間接的)滅菌インターフェースであるロボット駆動システムの部分(非主要、消耗品又は滅菌可能ユニット)を指す。
【0054】
シャフト(遠位)駆動:「シャフト(遠位)駆動」は、EMDをそのシャフトに沿って保持し操作することを指す。一実施例において、オンデバイス(デバイス搭載)アダプタは、通常、デバイスが挿入されるハブ又はYコネクタの直ぐ近位に配置される。オンデバイスアダプタの場所が導入点(ボディ又は他のカテーテル又は弁)の近くである場合、シャフト駆動は、通常、座屈防止機能を必要としない。(駆動能力を向上させるための座屈防止機能を含むことはある。)
【0055】
コレット:「コレット」は、EMDの一部を解放可能に固定することができるデバイスを指す。ここで言う「固定」は、作動中のコレットとEMDとの意図的な相対動が無いことを意味する。一実施例において、コレットは、少なくとも2つの部材を含んでおり、この部材は、互いに相対的に回転動作して2つの部材のうちの少なくとも一方に解放可能にEMDを固定する。一実施例において、コレットは、少なくとも2つの部材を含んでおり、この部材は、互いに相対的に軸方向に(長手軸に沿って)動作して2つの部材のうちの少なくとも一方に解放可能にEMDを固定する。一実施例において、コレットは、少なくとも2つの部材を含んでおり、この部材は、互いに相対的に回転動作できると共に軸方向動作でき、2つの部材のうちの少なくとも一方に解放可能にEMDを固定する。
【0056】
固定:「固定」は、作動中に第1の部材が第2の部材に対し相対動しないことを意味する。
【0057】
ピンチ/アンピンチ:「ピンチ(掴む)」は、部材が動くときにEMDと該部材とが一緒に動くようにEMDを部材に解放可能に固定することを指す。「アンピンチ(放す)」は、EMDの部材との固定を解除し、部材との固定から解放されたEMDが該部材とは関係なく動作できるように、部材からEMDを解放することを指す。
【0058】
オンデバイスアダプタ:「オンデバイスアダプタ(デバイス搭載アダプタ)」は、駆動インターフェースを提供するためにEMDを解放可能にピンチすることのできる滅菌装置を指す。オンデバイスアダプタは、エンドエフェクタ又はEMDキャプチャデバイスとしても知られている。限定的ではない一実施例では、オンデバイスアダプタは、ロボット制御されて作動するコレットであり、EMDをその長手軸の周りに回転させ、EMDをコレットでピンチ及び/又はアンピンチし、及び/又は、EMDをその長手軸に沿って並進させる。一実施例において、オンデバイスアダプタは、EMDのハブに位置するギヤなどのハブ駆動機構である。
【0059】
EMD:「細長い医療デバイス(EMD)」は、限定的な意味でなく言えば、カテーテル(例えば、ガイドカテーテル、マイクロカテーテル、バルーン/ステントカテーテル)、ワイヤベースデバイス(例えば、ガイドワイヤ、塞栓コイル、ステント回収器など)、及びこれらのいずれかの組み合わせからなる医療デバイス、を指す。一実施例において、ワイヤベースEMDは、限定的な意味でなく言えば、ガイドワイヤ、マイクロワイヤ、塞栓コイル用近位プッシャー、ステント回収器、自己拡張ステント、及びフローダイバーターを含む。典型的には、ワイヤベースEMDは、その近位終端にハブ又はハンドルをもっていない。一実施例において、EMDは、近位端にハブを有すると共に該ハブから遠位端に向かって延伸する可撓性シャフトを有するカテーテルであり、そのシャフトは、ハブよりも柔軟である。一実施例において、カテーテルは、ハブとシャフトとの間の遷移部分として中間部を含んでおり、この中間部が、ハブよりは柔らかく且つシャフトよりは硬い中間可撓性をもつ。一実施例において、中間部はストレインリリーフである。
【0060】
ハブ(近位)駆動:「ハブ駆動」又は「近位駆動」は、近位の位置(例えば、カテーテルハブのギヤ付きアダプタ)でEMDを保持し操作することを指す。一実施例において、ハブ駆動は、カテーテルを並進及び/又は回転させるべくカテーテルのハブに力又はトルクを加えることを指す。ハブ駆動は、EMDを座屈させる可能性があり、したがって、ハブ駆動は、多くの場合、座屈防止機能を必要とする。ハブ又は他のインターフェースをもたないデバイス(例えば、ガイドワイヤ)の場合、デバイスアダプタをデバイスに追加して、デバイスモジュールへのインターフェースとして作用させることもできる。一実施例において、EMDは、カテーテルの遠位端を反らせるためにハンドルからカテーテルの遠位端まで延びるワイヤなど、カテーテルの中の部分を操作する機構を含んでいない。
【0061】
滅菌可能ユニット:「滅菌可能ユニット」は、滅菌することの可能な(病原微生物が存在しない)装置を指す。これには、限定的な意味でなく言えば、カセット、消耗品ユニット、ドレープ、デバイスアダプタ、及び滅菌可能な駆動モジュール/ユニット(電気機械的コンポーネントを含み得る)が含まれる。滅菌可能ユニットは、患者、他の滅菌デバイス、又は医療処置の滅菌野内に置かれた他の物と接触することがある。
【0062】
滅菌インターフェース:「滅菌インターフェース」は、滅菌ユニットと非滅菌ユニットとの間のインターフェース又は境界を指す。例えば、カセットは、ロボット駆動装置と少なくとも1つのEMDとの間の滅菌インターフェースである。
【0063】
消耗品:「消耗品」は、医療処置で通常1回だけ使用される滅菌可能ユニットを指す。このユニットは、別の医療処置に使用するべく再滅菌のプロセスを通して再使用可能とした消耗品とされることもあり得る。
【0064】
ギヤ:「ギヤ」は、ベベルギヤ、螺旋ベベルギヤ、スパーギヤ、マイタギヤ、ウォームギヤ、ヘリカルギヤ、ラックアンドピンオン、スクリューギヤ、サンギヤなどの内歯ギヤ、インボリュートスプラインシャフト及びブッシング、又は、当技術分野で周知の他のタイプのギヤである。
【0065】
図4を参照すると、トルカーアクチュエータ100は、トルカー102とトルク制限アクチュエータ104とを含む。トルカーアクチュエータ100は、遠位ハウジング部材110と接続されて作動可能な近位ハウジング部材108から形成されるハウジング106を含む。プッシャー112が、ハウジング106の近位端116とハウジング106の遠位端118との間にトルカー長手軸114に沿って、ハウジング106の中に動作可能として収容される。第1のパッド120及び第2のパッド122が、細長い医療デバイス(EMD)のシャフトを解放可能にピンチできるように、トルカー長手軸114に向かってまたこれから離れるように作動する。付勢部材124が、第1のパッド120及び第2のパッド122を互いに離れる方向に付勢する。プッシャー112が近位端116から遠位端118に向かって移動すると、第1のパッド120及び第2のパッド122に互いに向かう力を加え、付勢部材124の付勢力を上回る十分な力を提供する。プッシャー112が遠位端118から近位端116に向かって移動すると、付勢部材124による、第1のパッド120及び第2のパッド122を互いに離しまたトルカー長手軸114から離す付勢が許容される。
【0066】
一実施例において、第1のパッド120は、第1の部分128と、当接位置でEMDと接触する第2の部分130と、を含む。第1のパッド120の第1の部分128は、近位ランプ(傾斜路)132と遠位ランプ134とを有する外面を含む。同様に、第2のパッド122は、第1の部分129と、当接位置でEMDと接触する第2の部分131と、を含む。第1の部分129は、近位ランプ138と遠位ランプ140とを含む。
【0067】
遠位ハウジング部材110は、第1のランプ(傾斜路)142及び第2のランプ144を含む。プッシャー112は、第1のランプ146及び第2のランプ148を含む。プッシャー112が近位位置から遠位位置に向かって移動すると、プッシャー112の第1のランプ146及び第2のランプ148が、それぞれ、第1のパッド120の近位ランプ132及び第2のパッド122の近位ランプ138に当接する。一方、遠位ランプ134及び遠位ランプ140は、それぞれ、遠位ハウジング部材110の第1のランプ142及び第2のランプ144に当接する。各ランプ部分の接触は、第1のパッド120及び第2のパッド122を、トルカー長手軸114と略直交する方向において互いに向かうように押し、パッド間にEMDをピンチする。細長い医療デバイスのトルカーの作動は、国際公開公報WO2022/154977:「Torquer For An Elongated Medical Device」に記載されており、その全内容がここに援用される。
【0068】
プッシャー112は、トルク制限アクチュエータ104の操作によって、遠位ハウジング部材110の中で遠位へ移動する。
図7及び
図8を参照すると、トルク制限アクチュエータ104は、近位ハウジング部材108と螺合するシャフト150を含む。シャフト150に含まれた遠位端がプッシャー112に接続されて作動し、シャフト150が遠位方向に移動するとプッシャー112が遠位方向に移動し、シャフト150が近位方向に移動するとプッシャー112が近位方向に移動する。シャフト150は、プッシャー112の近位端158を遠位方向に押す遠位端152を有する。プッシャー112は、シャフト150が近位方向に移動するとプッシャ112も近位方向に移動するように、シャフト150の遠位ハブ154と係合する一対のアーム156を含む。
【0069】
トルク制限アクチュエータ104は、締結具162でシャフト150に固定されるノブ160を含む。
図8Bを参照すると、ノブ160は、操作者が操作する外面164と、キャビティ壁168によって画定される内部キャビティ166と、を含む。一実施例において、キャビティ壁は、多数の定間隔リブ170によって画定される輪郭を含み、リブ170が駆動ギヤ172の輪郭としっかり係合する。駆動ギヤ172は、キャビティ166内に配置されてノブ160と共に回転する。シャフト150は、駆動ギヤ172と噛み合う従動ギヤ174を含む。ノブ160が第1の方向に回転すると駆動ギヤ172が回転し、この回転が従動ギヤ174及びシャフト150を第1の方向に回転させる。ノブ160が第1の方向に回転すると、シャフト150は、近位ハウジング部材108のネジ領域176内で遠位方向へ移動する。この遠位方向移動により、プッシャー112が遠位方向へ移動し、第1のパッド120及び第2のパッド122が互いに向かって動作させられてEMDをピンチする。一実施例において、キャビティ壁の輪郭は、駆動ギヤ172を支持するハウジングの嵌合スプラインと係合する複数のスプラインである。嵌合スプラインは、ノブ160と駆動ギヤ172との間の回転動作を禁止するが、ノブ160と駆動ギヤ172との間のトルカー長手軸114に沿った軸方向動作は許容する。
【0070】
付勢部材178がノブ160のキャビティ166の中に配置され、駆動ギヤ172を従動ギヤ174と係合させるように付勢する。
図8Aを参照すると、従動ギヤ174と駆動ギヤ172とは、互いに対面して共通軸の周りに回転する面ギヤであり、本例の場合、駆動ギヤ172及び従動ギヤ174はトルカー長手軸114の周りに回転する。駆動ギヤ172は、第1の面182及び第2の面184を有する多数のギヤ歯180を含み、第1の面182の傾斜が第2の面184の傾斜より小さい。一実施例においては、第1の面182の傾斜が第2の面184の傾斜以上である。同様に、従動ギヤ174は、第1の面188及び第2の面190を有する多数のギヤ歯186を含み、これらがギヤ歯180の第1の面182及び第2の面184と噛み合う。
【0071】
駆動ギヤ172及び従動ギヤ174はクラッチとして機能し、駆動ギヤ172が第1のクラッチプレートであり、従動ギヤ174が第2のクラッチプレートである。トルクが所定値を越えたとき、ギヤ歯180の第1の面182が、ギヤ歯186の対応する第1の面188を乗り越え、その結果、従動ギヤ174に対して駆動ギヤ172がスリップする。別の言い方をすれば、所定のトルクの印加で係合維持できずにギヤ歯が相手を乗り越えることを、ここでは「スリップ」と言う。
【0072】
第1の方向にノブ160を回転させていくと、第1のパッド120及び第2のパッド122を互いに向け動作させ続けるために必要なトルクが所定の力を超えるまでは、シャフト150が第1のパッド120及び第2のパッド122を互いの方へ動作させ続けてEMDをピンチする。所定の力に達すると、付勢部材178の付勢力がそれ以降は、ギヤ歯180によるギヤ歯186の駆動を維持するには不十分となる。ノブ160を第1の方向に所定の力で回転させると、ギヤ歯180がギヤ歯186に対し上滑りするようになり、ギヤ歯180の第1の面182がギヤ歯186の第1の面188を乗り越える都度に、使用者に対して触覚的フィードバックと同時に可聴クリック音を提供する。このようにして、トルク制限アクチュエータ104は、所定の力に到達した後に操作者がノブ160を第1の方向に回し続けたとしても、第1のパッド120と第2のパッド122とでピンチされているEMDに加えられ得る力及びトルクの大きさを制限するクラッチとして機能する。
【0073】
既述したように、ギヤ歯180の第2の面184及びギヤ歯186の第2の面190の傾斜は、それぞれ、ギヤ歯180の第1の面182及びギヤ歯186の第1の面188の傾斜よりきつい。一実施例においては、第2の面184及び第2の面190の傾斜は、第1の面182及び第1の面188の傾斜以下である。この傾斜は、ノブ160が第1の方向と反対の第2の方向に回転するときに、ギヤ歯180の第2の面184がギヤ歯186の第2の面190を乗り越えることを防ぐ目的に十分である。一実施例において、第1の方向の回転が、EMDにトルカーを締め付ける/係合させる一般的な方向である時計回り(CW)の方向であり、第2の方向は、EMDからトルカーを緩める/外す一般的な方向である反時計回り(CCW)の方向である。別の言い方をすれば、反時計回りに回転させることでパッドが開く。トルカーを締め付けること及び緩めることは、2つの主要な状況において生じる:操作者の手に保持されている自由空間においてと、カバーを閉じた使い捨てカセットの中に装着されてと、である。
【0074】
ハウジング106は、ハウジング106に固定されて作動可能なギヤ126を含む。ギヤ126は、アクチュエータによって駆動され、EMD220がトルカー102に固定された後は、トルカーアクチュエータ100をEMD220と共に回転させる。
【0075】
図9を参照すると、付勢部材124は、シャフト150の一部を受け入れる開口部194を有する基部190を含む。シャフト150及び付勢部材124は、互いに独立して、トルカー長手軸114に沿って自在に移動する。付勢部材124は、第1のアーム196と第2のアーム198とを含み、これらのアームは、互いに離れていて、トルカー長手軸114からも離れている。第1のアーム196及び第2のアーム198は、プッシャー112の外側に沿って延びている。第1のアーム196は第1の分枝200と第2の分枝202とを含み、これら分枝は、第1のパッド120及び第2のパッド122の各第1の側部の一部とそれぞれ係合する。同様に、第2のアーム198は、第1の分枝204と第2の分枝206とを含み、これら分枝は、第1のパッド120及び第2のパッド122の各第2の側部の一部と係合する。なお、第1のパッド120及び第2のパッド122の各第1の側部と第2の側部とは、間隔を置いて、トルカー長手軸114の反対方向にある。分枝200,202,204,206は、第1のパッド120及び第2のパッド122がEMDをピンチする係合位置と、第1のパッド120及び第2のパッド122がEMDと係合せずピンチしない解放位置と、の両方で、第1のパッド120及び第2のパッド122が互いに離れる方向へ付勢するように、予荷重を与えられている。一実施例においては、1つのアーム196のみが存在し、第2のアーム198は存在しない。別の実施例においては、2本より多いアームが使用される。分枝200及び分枝202は、パッド120及びパッド122を互いから押し離すように付勢する。
【0076】
図10を参照すると、トルカーアクチュエータ100は、ノブ160がカセット70の外側まで延伸するようにしてカセット70の中に配置され、使用者がノブ160を操作して、ノブ160を第1の時計回りの方向及び第2の反時計回りの方向の両方に回転させることができるようになっている。なお、トルカーアクチュエータ100は、遠位ハウジング部材110の遠位端から延出してEMDをカセット70を通して案内する案内チューブ208を含む。
【0077】
図11を参照すると、停止部材が、トルク制限アクチュエータ104と併せて、又は、トルク制限アクチュエータ104とは別に、使用され、遠位方向のプッシャー112の移動を制限し、これによって、第1のパッド120と第2のパッド122との間に加えられ得る力の大きさを制限する。プッシャー停止部材210は、プッシャー112の遠位部分か遠位ハウジング部材110の部分のいずれかに配置され、停止部材210と接触することでプッシャー112が遠位方向に動くことを禁止する。第1の停止部材210が、遠位の特定の点を超えようとするプッシャー112の移動を制限することになり、これに従ってEMD220に加えられる力の大きさが制限されることになる。
【0078】
一実施において、第2のパッド停止部材212が遠位ハウジング部材110の内側部分に配置され、第1のパッド120及び第2のパッド122の一方又は両方と接触してパッドが遠位方向に動くことを禁止することによって、互いに近づくパッドの動作を制限してEMD220に加わる力を制限する。
【0079】
一実施例において、ギヤ126を駆動するアクチュエータ214がトルク制限機構を内蔵しており、この制限機構は機械的又は電気機械的のいずれかであってコントローラにより制御される。
【0080】
一実施例において、ノブストップ216がノブ160か近位ハウジング部材108のいずれかに配置され、ハウジング106の中へ入っていくシャフト150の距離を制限し、これによってプッシャー112、第1のパッド120、及び第2のパッド122の遠位方向への移動を制限し、これに応じて第1のパッド120及び第2のパッド122の互いに近づく動きを制限し、結果的に、パッドからEMDに加えられるピンチの力を制限する。
【0081】
一実施例において、カバー218は、所定のトルクを超えるトルクがトルカーアクチュエータ100に加えられたときに、閉の使用位置から開位置へ自動的に作動するように構成される。これにより、トルクが所定の力を超えたことが視覚的に示されることになる。カバー218が開くことは、可聴及び触覚的フィードバックと併せて、所定のトルクに到達したという視覚的フィードバックを提供する。
【0082】
ここに説明するデバイスは、多くの特徴を提供する。第1のトルク制限アクチュエータ104は、十分なトルクをトルカーに加えたという可聴及び/又は触覚のフィードバックを使用者に提供し、挿入された細長い経皮的デバイス(EMD)に十分なトルク及び力が加えられることを確実にする。所定のトルクに達すると、使用者は、第1のギヤが第2のギヤを上滑りすることによる可聴及び触覚のフィードバックを介して警告を受ける。このことは、トルクが過小である結果、トルカーが回転するときに該トルカー内でEMDがスリップしてしまい性能不足になるというような事例を排除する。
【0083】
トルク制限アクチュエータ104は、トルカー102に加えることができるトルクを制限する。これにより、射出成形プラスチックのような軽量且つ低コストの材料/プロセスを設計に使用することができる。トルク制限ノブ160は、力の強い使用者がトルクデバイスを壊してしまうことを防止する一方で、力の弱い使用者が必要なノブトルクを加えられるように十分に大きな直径を提供する。第2の部分130がエラストマー当接パッドである場合、トルカーに加えられるトルク、したがってパッドによりEMDに加えられる力を制限することで、処置で使用される被覆EMDの損傷を避けることができる。この種の設計は、滑り要素間の高い力と低い接触摩擦を必要とする。印加されるトルクを制限することによって、EMDの被覆を保護し、損傷を受けないようにすることができる。
【0084】
トルカーアクチュエータ100は、ロボット駆動装置24のコンポーネントを高いトルクから保護するように作用する。トルカーアクチュエータ100は、システムロボットに搭載される使い捨てカセット内の所定位置に固定される。高トルクがロボット駆動装置に損傷を与え、システムの使用を妨げる可能性がある。トルク制限アクチュエータ104は、トルカーアクチュエータ100に加えられるトルクを制限し、したがって、ロボット駆動装置24のコンポーネントに加えられるトルクも制限する。
【0085】
一実施例において、細長い医療デバイス220用のトルカー102は、経路を画定するキャビティを有するボディを含む。一実施例において、ボディは、近位ハウジング部材108と遠位ハウジング部材110とを含み、各々がその中にキャビティを有する。
図5及び
図11を参照すると、EMD220は、締結具162、ノブ160、付勢部材178、駆動ギヤ172、シャフト150、近位ハウジング部材108、付勢部材124、プッシャー112、遠位ハウジング部材110、及び案内チューブ208を通る開口部又はチャンネルによって画定される経路を通って延伸する。第1のパッド120は、キャビティ内で動作可能である。第1のパッド120とは別にした付勢部材124が、第1のパッド120をボディに対して付勢する。アクチュエータは、ボディに対して可動であり、第1のパッドを動作させて、経路内で第1のパッドにより細長い医療デバイスをピンチしアンピンチする。ノブが、所定の値を超える所定のトルクが加えられることに応じて解放可能にアクチュエータに接続される。
【0086】
本開示は、実施例に基づいて説明してきたが、当分野で通常の知識をもつ者であれば、定義された主題の思想及び範囲から逸脱することなく、形態や具体例に変更を加えることができることを当然理解する。例えば、複数の実施例が、1つ以上の利点を提供する1つ以上の特徴を含むとして説明されているが、説明された特徴を相互に交換することもできるし、あるいは、説明された実施例又は別の代替的実施例で互いに組み合わせることも想定される。説明してきた開示は、可能な限り広範囲であることを明白に意図している。例えば、特に明記しない限り、1つの特定の要素を記載する定義は、複数の当該特定の要素をも包含する。
【外国語明細書】