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特開2024-95540排ガス中の二酸化炭素及び窒素酸化物を回収し、藻類の生育に必要な炭素源及び窒素源に変換する排ガス処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095540
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】排ガス中の二酸化炭素及び窒素酸化物を回収し、藻類の生育に必要な炭素源及び窒素源に変換する排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20240703BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240703BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20240703BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240703BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240703BHJP
   C02F 3/00 20230101ALI20240703BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240703BHJP
   C01D 9/06 20060101ALI20240703BHJP
   C01B 21/40 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B01D53/50
B01D53/62
B01D53/56
B01D53/78
B01D53/14 200
C02F3/00 G
B01D53/14 100
C01B32/50
C01D9/06
C01B21/40 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198399
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】111150464
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523442585
【氏名又は名称】林 正仁
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】林 正仁
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA08
4D002AA09
4D002AA12
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA03
4D002BA05
4D002BA14
4D002CA01
4D002DA02
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA35
4D002FA09
4D002GA01
4D002GA02
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB08
4D002GB09
4D002GB11
4D002GB20
4D002HA10
4D020AA03
4D020AA05
4D020AA06
4D020BA01
4D020BA08
4D020BA09
4D020BA23
4D020BB03
4D020CA05
4D020CB25
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB01
4D020DB03
4D020DB06
4D020DB07
4D020DB08
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC29
4G146JD03
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】排ガス中の二酸化炭素と窒素酸化物を捕捉し、捕捉された対象物をその後に使用するために他の生成物に変換する。
【解決手段】排ガス処理方法は、NO、SOおよびCOを含む排ガスを脱硫して脱硫済み排ガスを得るステップ(A)と、酸化のために酸素を供給して酸化済み排ガスを得るステップ(B)と、酸化済み排ガスを水で洗浄して水洗済み排ガスと硝酸溶液とを得るステップ(C)と、水洗済み排ガスを塩基性溶液と接触させて水洗済み排ガス中のCOを吸収するステップ(D)とを備える。排ガスの処理方法は、排ガス中のCO及びNOの含有量を大幅に低減することができる。また、得られた生成物は、藻類培養のための炭素源および窒素源として使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを脱硫して脱硫された排ガスを得ることであって、前記排ガスは窒素酸化物、硫黄酸化物及び二酸化炭素を含み、窒素酸化物は一酸化窒素を含むステップ(A)と、
前記脱硫された排ガス中の一酸化窒素と反応する酸素を酸化反応のために供給して酸化された排ガスを得ることであって、前記酸化された排ガスは二酸化窒素及び二酸化炭素を含むステップ(B)と、
前記酸化された排ガスを水洗して、前記酸化された排ガス中の二酸化窒素を水に溶解させ、水洗された排ガスと硝酸溶液とを得ることであるステップ(C)と、
前記水洗された排ガスを塩基性溶液と接触させ、前記水洗された排ガス中の二酸化炭素を前記塩基性溶液によって吸収させ、塩基洗浄された排ガスと弱塩基性溶液とを得ることであって、前記塩基性溶液のpH値は9.5~14であり、前記弱塩基性溶液のpH値は8~9であるステップ(D)とを備える排ガス処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理方法において、
前記硝酸溶液のpH値を6.5~8に調整してpH値の調整された硝酸溶液を得ることであるステップ(E)をさらに備える排ガス処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の排ガス処理方法において、
前記ステップ(E)では、水酸化ナトリウムを前記硝酸溶液に添加して前記pH値の調整された硝酸溶液を得ることであって、前記pH値の調整された硝酸溶液はpH値の調整された硝酸ナトリウム溶液である排ガス処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の排ガス処理方法において、
前記ステップ(D)では、前記塩基性溶液は、水酸化ナトリウム溶液である排ガス処理方法。
【請求項5】
請求項2に記載の排ガス処理方法において、
前記弱塩基性溶液及び前記pH値の調整された硝酸溶液を、微細藻類を含む微細藻類培養槽に添加することであるステップ(F)をさらに備える排ガス処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の排ガス処理方法において、
前記微細藻類は、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)、クロレラ属(Chlorella sp.)、クリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)、シリンドロテカ属(Cylindrotheca sp.)、ドナリエラ・プリモレクタ(Dunaliella primolecta)、イソクリシス属(Isochrysis sp.)、モナランタス・サリナ(Monalanthus Salina)、ナンノクロリス属(Nannochloris sp.)、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis sp.)、ネオクロリス・オレオアブンダンス(Neochloris oleoabundans)、ニッチア属(Nitzschia sp.)、フェオダクチラム・トリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum)、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)、テトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、シアノバクテリア、又は、それらの組み合わせである排ガス処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の排ガス処理方法において、
前記ステップ(B)は、
前記脱硫された排ガスを脱塵し、前記脱硫された排ガス中の一酸化窒素と反応する酸素を酸化反応のために供給して前記酸化された排ガスを得ることであって、前記酸化された排ガスは二酸化窒素及び二酸化炭素を含むステップ(B´)である排ガス処理方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の排ガス処理方法において、
前記塩基性溶液と前記水洗された排ガスとの合計接触時間は、5秒以上である排ガス処理方法。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の排ガス処理方法において、
前記ステップ(D)は、90℃以下の温度で実施される排ガス処理方法。
【請求項10】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の排ガス処理方法において、
前記ステップ(D)では、前記塩基性溶液の濃度は、1wt%~50wt%である排ガス処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、ガスの処理方法に関し、特に、排ガス中の汚染物質を再利用するための処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業の発展に伴い、工場や火力発電所などのボイラーから排出される排ガスが大幅に増加し、深刻な大気汚染を引き起こしている。中でも硫黄酸化物や窒素酸化物、二酸化炭素などの温室効果ガスを含む汚染空気は、化石燃料の燃焼によって多く発生する。硫黄酸化物や窒素酸化物が大気中に放出されると、ただちに酸性雨が発生し、土壌の酸性化を引き起こし、農作物の生育に影響を与える。二酸化炭素は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスのひとつである。現在、環境保護規則では、煙突から排出される排ガスは、脱硫や脱硝などの処理工程を経てから排出し、硫黄酸化物や窒素酸化物を一定濃度まで低減させることが定められている。既存の技術では、窒素酸化物を無害な安定窒素に還元して大気中に放出する方法が一般的である。しかし、この方法では排出された廃棄物を有効利用できないのが残念である。
【0003】
さらに、排出された廃棄ガスは温室効果ガスの量を増加させ、温室効果を強め、地球温暖化をもたらす。その結果、異常気象が増加し、洪水や干ばつが頻発し、極寒や極暑が常態化する。これらは農作物の収穫に影響を与え、氷原の融解や海面上昇を引き起こし、生態系や環境に深刻な影響を与える。そのため、温室効果ガスの主成分である二酸化炭素の削減が世界的な取り組みの目標となっている。
【0004】
二酸化炭素と温室効果の問題を解決するために、二酸化炭素の回収、貯蔵及び利用の多くの技術が開発されてきた。これらの技術は、二酸化炭素を様々な化学物質、例えば酢酸やポリカーボネート(PC)などの化学プラスチック製品に変換することを含む。これらの方法は一見合理的で、産業リサイクルによる経済効果も期待できる。しかし、実際には、人類はそれほど多くの化学製品を消費しているわけではないので、大気中の二酸化炭素をほとんど除去することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】CN205360917U
【発明の概要】
【0006】
現在、人類が燃焼している化石燃料は、太古の昔から植物の光合成によって蓄積された有機物である。これらの化石燃料には、植物の生育に不可欠な炭素元素や窒素元素が多く含まれている。もし、我々が化石燃料のエネルギーだけを利用し、これらの大量の炭素元素や窒素元素を恣意的に排出すれば、自然の炭素循環を破壊するだけでなく、公害や地球温暖化などの悪影響を引き起こす。従って、これらの大量の炭素元素と窒素元素を自然の炭素循環に導入することが、現在人類が直面している公害と地球温暖化問題の根本的な解決策である。
【0007】
既存の技術では、化石燃料を燃焼した後に排出される排ガス中の大量の二酸化炭素を減少させることができないという事実に鑑み、本発明の目的は、化石燃料を燃焼した後に排出される排ガス中の大量の二酸化炭素と窒素酸化物を捕捉し、さらに捕捉された対象物をその後に使用するために他の生成物に変換することであり、例えば、これらの生成物を藻類の養殖に応用することにより、大量の二酸化炭素を自然の炭素循環に戻し、炭素循環の他の層に迅速に移動させることができ、それによって排ガス中の二酸化炭素を大幅に削減し、窒素酸化物によって発生する酸性雨とその環境への影響を大幅に削減することができる。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の排ガス処理方法は、
排ガスを脱硫して脱硫された排ガスを得ることであって、前記排ガスは窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)及び二酸化炭素(CO)を含み、窒素酸化物は一酸化窒素(NO)を含むステップ(A)と、
前記脱硫された排ガス中の一酸化窒素と反応する酸素を酸化反応のために供給して酸化された排ガスを得ることであって、前記酸化された排ガスは二酸化窒素(NO)及び二酸化炭素を含むステップ(B)と、
前記酸化された排ガスを水洗して、前記酸化された排ガス中の二酸化窒素を水に溶解させ、水洗された排ガスと硝酸溶液とを得ることであるステップ(C)と、
前記水洗された排ガスを塩基性溶液と接触させ、前記水洗された排ガス中の二酸化炭素を前記塩基性溶液によって吸収させ、塩基洗浄された排ガスと弱塩基性溶液とを得ることであって、前記塩基性溶液のpH値は9.5~14であり、前記弱塩基性溶液のpH値は8~9であるステップ(D)とを備える。
【0009】
既存のガス処理法では、触媒により窒素酸化物を窒素に分解した後、湿式脱硫や乾式脱硫などの脱硫処理を行う脱硫・脱硝技術が用いられている。窒素は安定な気体であり、植物が吸収・利用することはできず、硝酸イオンは植物が直接吸収・利用できる窒素源の一形態である。本発明によれば、排ガスを脱硫工程によって予備的に浄化し、その後の藻類の生育を妨げる硫黄元素を大幅に減少させることができる。その後、酸素供給工程と水洗工程を行い、排ガス中の窒素酸化物を酸化して得られた二酸化窒素を水に溶解させて硝酸溶液とし、この塩基性溶液を水洗された排ガスと接触させて酸塩基中和反応を行う。従って、本発明は、排ガス中の二酸化炭素と窒素酸化物を大幅に削減し、温室効果ガスと酸性ガスの排出を削減し、大気質を浄化し、生態と環境を改善する効果を達成することができる。さらに、本発明の処理方法によって得られた生成物は、その後の藻類培養のための炭素源および窒素源として使用することができる。その結果、本発明は、排ガス中の温室効果ガスを大幅に削減するだけでなく、排ガス中の廃棄物を十分に利用することができる。即ち、本発明は環境を保護できるだけでなく、商業的価値も有する。
【0010】
好ましくは、前記窒素酸化物は二酸化窒素(NO)を含み得る。
【0011】
本発明によれば、硫黄酸化物は、二酸化硫黄および三酸化硫黄を含むが、これらに限定されない。
【0012】
本発明によれば、前記脱硫された排ガスは、一酸化窒素、二酸化窒素および二酸化炭素を含む。
【0013】
本発明によれば、排ガスの発生源は、火力発電所、製鉄所、コンクリート工場、石油化学工場、石油精製所、製紙工場、暖房工場などで石炭、天然ガス、重油などを燃焼して発生する排ガスであるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
好ましくは、前記排ガス中の前記硫黄酸化物の濃度は500ppm未満である。
【0015】
好ましくは、前記方法のステップ(B)において、一酸化窒素に対する酸素の体積比(つまり、酸素と一酸化窒素との体積比)は、1:1.5~1:2.0である。より好ましくは、前述の方法のステップ(B)において、一酸化窒素に対する酸素の体積比は、1:1.7~1:1.9、例えば、1:1.8である。
【0016】
好ましくは、前記方法のステップ(B)において、前記脱硫された排ガス中の一酸化窒素と反応する酸素の酸化反応を促進して前記酸化された排ガスを得るために、触媒を使用してもよく、前記触媒は金属又は活性炭であってもよい。より好ましくは、前記金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)等である。
【0017】
好ましくは、前記方法のステップ(C)で得られる前記硝酸溶液の濃度は、50重量%(wt%)~70wt%である。より好ましくは、前記方法のステップ(C)で得られる前記硝酸溶液の濃度は、55wt%~65wt%である。
【0018】
好ましくは、前述の方法のステップ(C)から得られる前記水洗された排ガスは、連続的に酸化されるので、その中の一酸化窒素は、数回の酸化サイクルの後に使い切ることができる。
【0019】
好ましくは、前記方法は、前記硝酸溶液のpH値を6.5~8に調整してpH値の調整された硝酸溶液を得ることであるステップ(E)をさらに備える。このpH値の範囲により、前記pH値の調整された硝酸溶液は、その後のステップにおける微細藻類の成長に最適なpH値の範囲の調整に適し、微細藻類の高速成長に必要な窒素元素を供給することができる。
【0020】
好ましくは、前記方法は、前記弱塩基性溶液及び前記pH値の調整された硝酸溶液を、微細藻類を含む微細藻類培養槽に添加することであるステップ(F)をさらに備える。これにより、水中の微細藻類に光合成のための炭素源を提供することができ、微細藻類をさらに加工して機能性食品、動物飼料およびバイオディーゼルを製造することができる。また、微細藻類培養液を二酸化炭素吸着用に再利用することができる。従って、本発明の生成物を有効に使用することができる。好ましくは、微細藻類を含む微細藻類培養槽は、微細藻類溶液を含み、微細藻類溶液は、0.01wt%の微細藻類から0.5wt%の微細藻類を含む。別の実施形態では、弱塩基性溶液(すなわち炭素源)又はpH値の調整された硝酸溶液(すなわち窒素源)は、微細藻類を含む微細藻類培養槽に添加する前に乾燥させた。窒素源や炭素源は固体形態で微細藻類を含む微細藻類培養槽に添加することができるため、乾燥工程により、微細藻類培養のために炭素源や窒素源を他の場所に運搬することが容易になる。
【0021】
好ましくは、微細藻類を含む微細藻類培養槽における微細藻類溶液に対し、pH値の調整された硝酸溶液(すなわち窒素源)に対する弱塩基性溶液(すなわち炭素源)の添加量の重量比(つまり、弱塩基性溶液とpH値の調整された硝酸溶液と微細藻類溶液との重量比)は、100~2000:10~100:8000~20000である。
【0022】
好ましくは、前記方法のステップ(E)では、水酸化ナトリウムを前記硝酸溶液に添加して前記pH値の調整された硝酸溶液を得ることであって、前記pH値の調整された硝酸溶液はpH値の調整された硝酸ナトリウム溶液である。微細藻類培養槽に硝酸溶液を直接多量に添加した結果、微細藻類の生育環境が酸性に傾くことを避けるため、硝酸溶液にアルカリ性物質を添加してpH値の範囲を調整し、微細藻類が適切な環境で生育できるようにすることができる。水酸化ナトリウムでpH値を調整すると、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなどの他のアルカリ性物質よりも微細藻類の生育を促進することができる。シアノバクテリアの培養を例にとると、70wt%の硝酸溶液3kg~5kgに水酸化ナトリウム2kg~4kgを添加し、次いで微細藻類溶液1トンに添加すると、シアノバクテリアの生育条件が最もよくなり、すなわちシアノバクテリアのバイオマスが急速に成長することができる。より好ましくは、炭素源として10kgのNaHCOを同時に添加すると、適切な水流と十分な照明の下で48時間以内に微細藻類の総バイオマスを増殖させることができる。
【0023】
好ましくは、前記ステップ(D)は、
前記水洗された排ガスを前記塩基性溶液と予備的に接触させ、前記水洗された排ガス中の二酸化炭素を前記塩基性溶液により吸収させ、予備的に塩基洗浄された排ガスと第1の弱塩基性溶液とを得ることであって、前記予備的に塩基洗浄された排ガスは、予備接触後に残存する二酸化炭素を含むステップ(D1)と、
前記予備的に塩基洗浄された排ガスを前記塩基性溶液と再度接触させ、前記予備的に塩基洗浄された排ガス中の二酸化炭素を前記塩基性溶液により吸収させ、前記塩基洗浄された排ガスと第2の弱塩基性溶液とを得ることであって、前記弱塩基性溶液は、前記第1の弱塩基性溶液と前記第2の弱塩基性溶液とを含むステップ(D2)とを有する。
【0024】
より好ましくは、前記ステップ(D2)は1回以上繰り返すことができる。例えば、前記ステップ(D2)が1回繰り返される場合、それは、前記ステップ(D)において、前記水洗された排ガスが新鮮な前記塩基性溶液と順次3回接触されることを意味する。
【0025】
好ましくは、脱硫方法は乾式脱硫である。乾式脱硫を採用することにより、半乾式脱硫の壁がべたつくという問題を回避することができる。具体的には、炭酸水素ナトリウム粉末を乾式脱硫の脱硫剤として使用することができる。高温排ガスによる炭酸水素ナトリウムの活性化により、炭酸水素ナトリウムの表面に微多孔構造が形成され、硫黄酸化物と迅速かつ十分に反応することができる。
【0026】
好ましくは、前記方法のステップ(D)における前記塩基性溶液は、水酸化ナトリウム溶液である。その理由の1つは、水酸化ナトリウムと二酸化炭素の反応によって得られる生成物である炭酸水素ナトリウムが環境汚染を引き起こさないからである。また、炭酸水素ナトリウムは回収して利用することができ、特に良好な炭素源として利用することができ、前記ステップ(E)で微細藻類培養槽に添加することができる。
【0027】
好ましくは、前記微細藻類は、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)、クロレラ属(Chlorella sp.)、クリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)、シリンドロテカ属(Cylindrotheca sp.)、ドナリエラ・プリモレクタ(Dunaliella primolecta)、イソクリシス属(Isochrysis sp.)、モナランタス・サリナ(Monalanthus Salina)、ナンノクロリス属(Nannochloris sp.)、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis sp.)、ネオクロリス・オレオアブンダンス(Neochloris oleoabundans)、ニッチア属(Nitzschia sp.)、フェオダクチラム・トリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum)、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)、テトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、シアノバクテリア、又は、それらの組み合わせである。
【0028】
好ましくは、前記ステップ(B)は、前記脱硫された排ガスを脱塵し、前記脱硫された排ガス中の一酸化窒素と反応する酸素を酸化反応のために供給して前記酸化された排ガスを得ることであって、前記酸化された排ガスは二酸化窒素及び二酸化炭素を含むステップ(B´)である。このステップにより、排ガスをさらに浄化することができる。具体的には、排ガス中のダスト粒子および/または前述の脱硫プロセスによって生成されたダスト粒子を除去することができる。いくつかの実施形態では、前述のダスト粒子の粒径は0.1μmを超える。好ましくは、脱塵ステップは、ナノファイバーチューブによってダスト粒子を濾過することである。
【0029】
好ましくは、前記方法のステップ(D)において、前記塩基性溶液と前記水洗された排ガスとの合計接触時間は、5秒以上である。より好ましくは、前記合計接触時間は15秒以上である。より好ましくは、前記合計接触時間は1分以上である。
【0030】
前記方法のステップ(D)において、前記塩基性溶液の濃度が高いほど、前記塩基性溶液中の塩基性化合物が沈殿しやすくなり、その結果、流路が詰まり、作業上のリスクが高まる。一方、塩基性溶液の濃度が低いほど、必要な塩基性溶液の流量は多くなる。つまり、相対的にエネルギーを浪費することになる。従って、好ましくは、前記塩基性溶液の濃度は、1wt%~50wt%であるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、塩基性溶液の濃度は3wt%~5wt%であり、操作上安全であり、比較的省エネルギーである。別の実施形態では、塩結晶を生成するために高濃度の塩基性溶液を採用する。例えば、炭酸水素ナトリウム結晶を生成するために、10wt%以上の濃度を有する水酸化ナトリウムを噴霧に採用することができ、炭酸水素ナトリウムを藻類培養のために固体形態で他の場所に輸送することができる。
【0031】
好ましくは、前記方法のステップ(D)は、90℃以下の温度で実施される。この温度範囲であれば、塩基性溶液中に含まれる水分が過度に高い温度によって蒸発することを防止でき、溶解した塩基性化合物を部分的に沈殿させることができ、その結果、塩基性溶液の輸送のための流路が容易に詰まることを防止できる。より好ましくは、4℃以下では酸塩基中和の反応速度が低下するため、ステップ(D)は4℃以上90℃以下の温度で行う。さらに、前記塩基性溶液と二酸化炭素との反応により得られる塩の溶解度を考慮すると、より好ましくは、ステップ(D)は、50℃以上60℃以下の温度で実施される。
【0032】
本発明は、さらに、排ガスを処理するためのシステムを提供し、排ガス処理システムは、
排ガス入口と脱硫反応ユニットと脱硫された排ガスの出口とを含み、前記脱硫反応ユニットは、前記排ガス入口と前記脱硫された排ガスの出口とに流体連通している脱硫部と、
酸素供給ユニットと酸化反応ユニットと酸化された排ガスの出口を含み、前記酸化反応ユニットは、前記脱硫された排ガスの出口と前記酸素供給ユニットと前記酸化された排ガスの出口とにそれぞれ流体連通している酸化部と、
水洗塔と水洗された排ガスの出口と硝酸溶液出口とを含み、前記水洗塔は、前記酸化された排ガスの出口と前記水洗された排ガスの出口と前記硝酸溶液出口とにそれぞれ流体連通している水洗部と、
塩基性溶液噴霧ユニットと塩基洗浄された排ガスの出口と弱塩基性溶液出口とを含み、前記塩基性溶液噴霧ユニットは、前記水洗された排ガスの出口と前記塩基洗浄された排ガスの出口と前記弱塩基性溶液出口とにそれぞれ流体連通している塩基洗浄部とを備え、
前記排ガス入口は、前記排ガスを前記脱硫反応ユニットに導入するためのものであり、前記排ガスは、一酸化窒素及び二酸化窒素などの窒素酸化物、硫黄酸化物、及び二酸化炭素を含み、
前記脱硫反応ユニットは、前記排ガス中の硫黄酸化物と反応して脱硫された排ガスを得るための脱硫剤を供給し、
前記脱硫された排ガスの出口は、脱硫された排ガスを排出するためのものであり、
前記酸素供給ユニットは、前記脱硫された排ガス中の一酸化窒素を酸化して酸化された排ガスを得るために、前記酸化反応ユニットに酸素を供給し、
前記酸化された排ガスの出口は、前記酸化された煙道ガスを排出するためのものであり、前記酸化された排ガスは、二酸化窒素及び二酸化炭素を含み、
前記水洗塔は、前記酸化された排ガスを水洗し前記酸化された排ガス中の二酸化窒素を水に溶解して水洗された排ガスと硝酸溶液を得るための水を供給し、
前記水洗された排ガスの出口は、前記水洗された排ガスを排出するためのものであり、
前記硝酸溶液出口は、前記硝酸溶液を排出するためのものであり、
前記塩基性溶液噴霧ユニットは、塩基性溶液を供給して前記水洗された排ガス中の二酸化炭素を吸収し、塩基洗浄された排ガスと弱塩基性溶液を得て、
前記塩基洗浄された排ガスの出口は、前記塩基洗浄された排ガスを排出するためのものであり、
前記弱塩基性溶液出口は、前記弱塩基性溶液を排出するためのものである。
【0033】
好ましくは、前記酸化反応ユニットは、触媒を含むセラミック繊維フィルターである。好ましくは、前記触媒は、金属又は活性炭である。より好ましくは、前記金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、又はルテニウム(Ru)であってもよい。
【0034】
好ましくは、一酸化窒素検出バルブが、前記水洗された排ガスの出口に取り付けられ、前記一酸化窒素検出バルブは、循環パイプを介して前記酸化ユニットに接続し、前記水洗された排ガスの出口の中の一酸化窒素の濃度を検出することができ、水洗された排ガスの出口の中の一酸化窒素の濃度が10ppmより高い場合、前記水洗された排ガスは、前記酸化反応ユニットに再導入される。
【0035】
好ましくは、前記硝酸溶液出口は、さらにpH値調整ユニットと流体連通している。pH値調整ユニットは、硝酸のpH値を調整して藻類の成長に最適な条件を提供するために、水酸化ナトリウムを供給する。
【0036】
本発明の利点は、脱硝を行わずに脱硫によって排ガス中の窒素酸化物を保持することである。そして、酸素処理及び水洗のステップにより、二酸化窒素を水に溶解させて硝酸溶液とし、この塩基性溶液を水洗された排ガスと接触させて酸塩基中和反応を行う。従って、本発明は、排ガス中の二酸化炭素と窒素酸化物を大幅に削減し、温室効果ガスの排出を削減し、大気質を浄化し、生態と環境を改善する効果を達成することができる。さらに、本発明の処理方法によって得られた生成物は、その後の藻類培養のための炭素源および窒素源として使用することができる。その結果、本発明は、排ガス中の温室効果ガスを大幅に削減するだけでなく、排ガス中の廃棄物を十分に利用することができる。即ち、本発明は環境を保護できるだけでなく、商業的価値も有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の実施例2の排ガス処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、以下の実施形態を通じてさらに説明される。本発明は、実施形態の内容に限定されるべきではない。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良や変更を行うことができる。
【0039】
(実施例1 排ガス処理方法)
まず、ステップ(A)において、排ガスを脱硫して脱硫された排ガス(脱硫済み排ガス)を得た。具体的には、製鉄の高温ボイラーから採取された一酸化窒素、二酸化窒素、硫黄酸化物、二酸化炭素、及びダスト粒子を含む排ガスを、炭酸水素ナトリウムによって乾式脱硫して脱硫済み排ガスを得た。脱硫済み排ガスは、ダスト粒子、一酸化窒素、二酸化窒素、及び二酸化炭素を含む。
【0040】
次に、ステップ(B´)において、脱硫済み排ガスを脱塵し、酸素を供給して脱硫済み排ガス中の一酸化窒素と酸化反応させて酸化された排ガス(酸化済み排ガス)を得た。具体的には、脱硫済み排ガスを白金金属触媒に覆われたセラミックファイバーフィルターを通過させて脱硫した。そして、酸素を供給して脱硫済み排ガス中の一酸化窒素と酸化反応させて酸化済み排ガスを得た。酸化済み排ガスは、二酸化窒素と二酸化炭素とを含む。また、排ガス中の一酸化窒素に対する供給される酸素の体積比(つまり、酸素と一酸化窒素の体積比)は1:1.5であり、反応のためのガスと触媒の完全接触時間は0.04秒~1秒であった。
【0041】
次に、ステップ(C)において、酸化済み排ガスを水洗して酸化済み排ガス中の二酸化窒素を水に溶解させ、水洗された排ガス(水洗済み排ガス)と硝酸溶液とを得た。具体的には、酸化済み排ガスを水スプレーで水洗し、酸化済み排ガス中の二酸化窒素を水中に溶解させ、70wt%の硝酸溶液と水洗済み排ガスを得た。
【0042】
その後、ステップ(D1)では、330m/hrの流量を有する水洗済み排ガスを、500L/hrの流量を有する2wt%の水酸化ナトリウム溶液と並流で予備接触させた。予備接触は5秒間の持続的な循環噴霧であった。その間、ガスに対する塩基性溶液の流量比は1:660であった。前記循環噴霧とは、チャンバー内で循環する水酸化ナトリウム溶液により噴霧された水洗済み排ガスを指し、これにより、水洗済み排ガス中の二酸化炭素が水酸化ナトリウム溶液に吸収され、予備的に塩基洗浄された排ガス(予備塩基洗浄済み排ガス)及び第1の炭酸水素ナトリウム溶液が得られ、予備塩基洗浄済み排ガスは、予備接触後に残存する二酸化炭素を含む。ステップ(D2)では、330m/hrの流量を有する予備塩基洗浄済み排ガスを、500L/hrの流量を有する2wt%の水酸化ナトリウム溶液と並流で「再度接触」させた。また、「再度接触させる」という用語は、5秒間の持続的な循環噴霧を意味し、その結果、第2の炭酸水素ナトリウム溶液と第2の塩基洗浄済み排ガスが得られた。その後、第3の炭酸水素ナトリウム溶液と塩基洗浄済み排ガスを得るために、ステップ(D2)を1回繰り返した。この3段階の接触により得られた第1の炭酸水素ナトリウム溶液、第2の炭酸水素ナトリウム溶液及び第3の炭酸水素ナトリウム溶液をまとめて貯留プールに回収し、貯留プール中の炭酸水素ナトリウム溶液のpH値を測定したところ8~9であり、貯留プール中の炭酸水素ナトリウム溶液の濃度は約0.5~2wt%であった。従って、ステップ(D)では、水洗済み排ガスを別途2wt%の水酸化ナトリウム溶液と順次3回接触させ、排ガス中の二酸化炭素を水酸化ナトリウム溶液にほとんど吸収させた。最終的に塩基洗浄された排ガス(塩基洗浄済み排ガス)が得られた。塩基洗浄済み排ガスの二酸化炭素の含有量を二酸化炭素検出器で検出した結果、元の排ガスに比べて二酸化炭素の含有量が大幅に減少していた。
【0043】
ステップ(D)では、水酸化ナトリウム溶液が二酸化炭素に接触したとき、直ちに酸塩基の中和反応が起こった。また、水洗済み排ガスを塩基性溶液と並流で接触させることにより、水酸化ナトリウム溶液の二酸化炭素との接触時間が延長された。従って、酸塩基中和は十分に反応することができる。
【0044】
次に、ステップ(E)において、硝酸に水酸化ナトリウムを添加し、pH値の調整された硝酸溶液(pH値調整済み硝酸溶液)を得た。具体的には、水酸化ナトリウムの添加量は、その後の微細藻類培養工程における微細藻類溶液の量に依存した。本実施形態では、70wt%の硝酸溶液5.29kgに水酸化ナトリウム3.3kgを添加し、pH値が7~7.5のpH値の調整された硝酸ナトリウム溶液(pH値調整済み硝酸ナトリウム溶液)を得た。
【0045】
最後に、ステップ(F)において、弱塩基性溶液及びpH値調整済み硝酸ナトリウム溶液を、微細藻類を含む微細藻類培養槽に添加した。具体的には、10トンの微細藻類溶液を含む微細藻類培養槽に、ステップ(E)で得られた25kgのpH値調整済み硝酸ナトリウム溶液を窒素源として7日毎に添加した。一方、ステップ(D)で得られた0.5wt%~2wt%の炭酸水素ナトリウムを乾燥して固体の炭酸水素ナトリウムを得た後、10トンの微細藻類溶液を含む前記微細藻類培養槽に、95kgの固体の炭酸水素ナトリウムを炭素源として7日毎に添加した。本実施形態では、ステップ(E)において特定量の水酸化ナトリウムを添加して特定のpH値の硝酸ナトリウム溶液を得て、ステップ(F)においてpH値調整済み硝酸ナトリウム溶液及び炭酸水素ナトリウム溶液を特定量添加することにより、シアノバクテリアを最適に増殖させることができ、収穫された微細藻類粉末を最大にすることができる。つまり、7日ごとに34.5キロの微細藻類粉末を収穫できる。窒素源と炭素源の添加量が最適範囲に制御されない場合、pH値調整済み硝酸ナトリウム溶液と炭酸水素ナトリウム溶液の添加量がより良い場合と比べて、生産される微細藻類粉末は少なくなり、本発明の約1/10にしかならない。つまり、10トンの藻類水溶液から約3~3.78kgの微細藻類粉末しか生産できない。一般的に、培養7日後、乾燥微細藻類粉末の重量は、微細藻類溶液の湿重量の約1/3500~1/2500である。
【0046】
(実施例2 排ガス処理システム)
図1は、本実施例の排ガス処理システムの概略図であり、二重の実線は液体または気体が流れる管路を示す。
【0047】
図1に示すように、本発明の排ガス処理システム1は、脱硫部11と酸化部12と水洗部13と塩基洗浄部14とを備え、脱硫部11は、排ガス入口111と脱硫反応ユニット112と脱硫された排ガスの出口(脱硫済み排ガス出口)113とを含み、脱硫反応ユニット112は、排ガス入口111と脱硫済み排ガス出口113とにそれぞれ流体連通している。排ガス入口111は、排ガスを脱硫反応ユニット112に導入するためのものである。排ガスは、一酸化窒素及び二酸化窒素などの窒素酸化物、硫黄酸化物、及び二酸化炭素を含む。脱硫反応ユニット112は、排ガス中の硫黄酸化物と反応して脱硫された排ガス(脱硫済み排ガス)を得るための脱硫剤を供給する。脱硫済み排ガス出口113は、脱硫済み排ガスを排出するためのものである。
【0048】
酸化部12は、酸素供給ユニット121と酸化反応ユニット122と酸化された排ガスの出口(酸化済み排ガス出口)123とを含み、酸化反応ユニット122は、脱硫済み排ガス出口113と酸素供給ユニット121と酸化済み排ガス出口123とにそれぞれ流体連通している。酸素供給ユニット121は、脱硫済み排ガス中の一酸化窒素を酸化して酸化された排ガス(酸化済み排ガス)を得るために酸化反応ユニット122に酸素を供給し、酸化済み排ガスは酸化済み排ガス出口123から排出され、酸化済み排ガスは、二酸化窒素及び二酸化炭素を含む。
【0049】
水洗部13は、水洗塔131と水洗された排ガスの出口(水洗済み排ガス出口)132と硝酸溶液出口133とを含み、水洗塔131は、酸化済み排ガス出口123と水洗済み排ガス出口132と硝酸溶液出口133とにそれぞれ流体連通している。水洗塔131は、酸化済み排ガスを水洗するための水を供給し、酸化済み排ガス中の二酸化窒素を水に溶解させて水洗された排ガス(水洗済み排ガス)と硝酸溶液を得る。水洗済み排ガス出口132は、水洗済み排ガスを排出するためのものである。硝酸溶液出口133は、硝酸溶液を排出するためのものである。他の実施形態では、硝酸溶液出口133は、硝酸溶液のpH値を調整することができるpH値調整ユニット134と流体連通している。
【0050】
塩基洗浄部14は、塩基性溶液噴霧ユニット141と塩基洗浄された排ガスの出口(塩基洗浄済み排ガス出口)142と弱塩基性溶液出口143を含み、塩基性溶液噴霧ユニット141は、水洗済み排ガス出口132と塩基洗浄済み排ガス出口142と弱塩基性溶液出口143とにそれぞれ流体連通している。塩基性溶液噴霧ユニット141は、塩基性溶液を供給して水洗済み排ガス中の二酸化炭素を吸収し、塩基洗浄された排ガス(塩基洗浄済み排ガス)と弱塩基性溶液を得る。塩基洗浄済み排ガス出口142は、塩基洗浄済み排ガスを排出するためのものであり、弱塩基性溶液出口143は、弱塩基性溶液を排出するためのものである。
【0051】
本発明の排ガス処理システムの利用方法は、以下の通りである。
【0052】
まず、製鉄の高温ボイラーから採取した排ガスを排ガス入口111から脱硫部11に導入する。排ガスは、一酸化窒素及び二酸化窒素等の窒素酸化物、硫黄酸化物、及び二酸化炭素を含む。排ガス中の硫黄酸化物は、脱硫反応ユニット112において脱硫剤(つまり、炭酸水素ナトリウム粉末)に吸着され、脱硫された排ガス(脱硫済み排ガス)が得られた。
【0053】
次に、脱硫済み排ガスを脱硫済み排ガス出口113から酸化部12の酸化反応ユニット122に導入した。酸素供給ユニット121から酸化反応ユニット122に酸素を供給して、脱硫済み排ガス中の一酸化窒素が酸化され、酸化された排ガス(酸化済み排ガス)が得られた。
【0054】
そして、酸化済み排ガスを酸化済み排ガス出口123から水洗部13の水洗塔131に導入し、水洗塔131から酸化済み排ガスを水洗するための水を供給することにより、酸化済み排ガス中の二酸化窒素を水に溶解させ、水洗済み排ガスと硝酸溶液を得た。硝酸溶液は、藻類培養のために硝酸溶液出口133を介して微細藻類を含む培養槽15に導入することができる。別の実施形態では、pH値調整ユニット134によって硝酸溶液に水酸化ナトリウムを供給して、硝酸溶液のpH値をpH6.5~8に調整することができ、この硝酸溶液を、藻類培養のために硝酸溶液出口133を介して微細藻類を含む培養槽15に導入することができる。
【0055】
最後に、水洗済み排ガスを、二酸化炭素を吸収させるために水洗済み排ガス出口132を介して塩基洗浄部14の塩基性溶液噴霧ユニット141に導入した。具体的には、塩基性溶液噴霧ユニット141から供給される塩基性溶液により、水洗済み排ガス中の二酸化炭素が吸収され、弱塩基性溶液及び塩基洗浄済み排ガスが得られた。本実施形態では、塩基性溶液噴霧ユニット141で採用した塩基性溶液は水酸化ナトリウム溶液であったため、得られた弱塩基性溶液は炭酸水素ナトリウム溶液であった。炭酸水素ナトリウム溶液は、微細藻類培養用の炭素源として利用可能である。当該炭酸水素ナトリウム溶液は、微細藻類の培養のために弱塩基性溶液出口143を介して微細藻類を含む培養槽15に導入された。検出器によって検出された結果二酸化炭素が大きく減少した塩基洗浄済み排ガスは、塩基洗浄済み排ガス出口142を介して排出することができる。ステップ(D)を実施した後、二酸化炭素の除去率はほぼ90%である。
【0056】
まとめると、排ガス処理方法と排ガス処理システムの使用とによれば、二酸化炭素と窒素酸化物を効果的に吸収することができる。また、本発明の排ガス処理システムから得られる弱塩基性溶液及び硝酸溶液は、それぞれ微細藻類培養用の炭素源及び窒素源として使用することができる。
【0057】
上記の実施形態は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、いかなる態様においても本発明を限定することを意図するものではない。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能であることは当業者には明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態の観点から説明してきたが、本発明をそれらの特定の実施形態に過度に限定すべきではないことを理解されたい。実際、当業者にとって自明な種々の変更も、以下の特許請求の範囲に包含される。

図1