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特開2024-95541ガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095541
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/896 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01N21/896
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199949
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022211883
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 敬一
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】南 友和
(72)【発明者】
【氏名】高見 健一
(72)【発明者】
【氏名】久良木 正福
(72)【発明者】
【氏名】大橋 寿美
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA84
2G051AB01
2G051AB02
2G051AB05
2G051AB06
2G051BA01
2G051CA04
2G051CA07
2G051CB02
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】縦姿勢で支持されるガラス板の端面に発生しているチッピングを、簡易な構成の装置により迅速に検査する。
【解決手段】ガラス板の製造装置は、矩形状のガラス板の辺部GA(GB、GD、GE)の端面Ga(Gb、Gd、Ge)に発生しているチッピングを検査する検査装置1を備える。検査装置1は、縦姿勢で支持したガラス板Gの辺部GA(GB、GD、GE)をガラス板Gの主面G2(G1)側から撮像する撮像装置6と、撮像装置6で撮像した画像からガラス板GのチッピングCを検出する検出装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のガラス板の辺部の端面に発生しているチッピングを検査する検査工程を備えるガラス板の製造方法であって、
前記検査工程は、縦姿勢で支持した前記ガラス板の前記辺部を前記ガラス板の主面側から撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した画像に基づいて前記チッピングを検出する検出工程と、を備えることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記チッピングには、前記端面の板厚方向の途中から前記ガラス板の一方の主面に亘って形成されるチッピング、及び前記端面に凹状に形成されるチッピングの少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記辺部は、前記ガラス板の上辺部と下辺部の少なくとも一つの辺部であることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の前記上辺部を上側把持機構により把持することを特徴とする請求項3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記上側把持機構は、上下方向に延びる上側アーム部と、前記上側アーム部から前記ガラス板の幅方向に突出する上側爪部と、を備え、
前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の前記上辺部の端面が、前記上側爪部よりも上側に位置することを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記上側アーム部は、少なくとも下部が上下方向に一直線状に延び、前記上側爪部は、前記上側アーム部の下端部から前記幅方向の両側に一直線状に延びることを特徴とする請求項5に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記検出工程は、前記撮像工程で撮像した前記画像から、前記チッピングを抽出する抽出処理を行う画像処理工程を含み、
前記画像処理工程では、前記抽出処理前に前記画像から前記上側把持機構の像を除去する処理を行うことを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の前記下辺部を下側把持機構により把持することを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記下側把持機構は、上下方向に延びる下側アーム部と、前記下側アーム部から前記ガラス板の幅方向に突出する下側爪部と、を備え、
前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の前記下辺部の端面が、前記下側爪部よりも下側に位置することを特徴とする請求項8に記載のガラス板の製造方法。
【請求項10】
前記下側アーム部は、少なくとも上部が上下方向に一直線状に延び、前記下側爪部は、前記下側アーム部の上端部から前記幅方向の両側に一直線状に延びることを特徴とする請求項9に記載のガラス板の製造方法。
【請求項11】
前記検出工程は、前記撮像工程で撮像した前記画像から、前記チッピングを抽出する抽出処理を行う画像処理工程を含み、
前記画像処理工程では、前記抽出処理前に前記画像から前記上側把持機構及び前記下側把持機構の像を除去する処理を行うことを特徴とする請求項8に記載のガラス板の製造方法。
【請求項12】
前記検出工程は、前記撮像工程で撮像した前記画像から、前記チッピングを抽出する抽出処理を行う画像処理工程を含み、
前記画像処理工程では、前記抽出処理前に前記画像から前記辺部の端面の像を除去する処理を行うことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項13】
前記辺部は、前記ガラス板の左辺部と右辺部の少なくとも一つの辺部であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項14】
前記辺部の端面は、スクライブ切断により形成されることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項15】
前記撮像工程では、前記ガラス板の前記主面側から、前記ガラス板の前記主面を撮像し、
前記検査工程では、前記ガラス板に発生している前記チッピング以外の欠陥を検査することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項16】
矩形状のガラス板の辺部の端面に発生しているチッピングを検査する検査装置を備えるガラス板の製造装置であって、
前記検査装置は、縦姿勢で支持した前記ガラス板の前記辺部を前記ガラス板の主面側から撮像する撮像装置と、前記撮像装置で撮像した画像から前記ガラス板の前記チッピングを検出する検出装置と、を備えることを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の欠陥を検査する処理を含むガラス板の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の製造工程では、ガラス板の欠陥を検査する検査工程が行われている。この欠陥には、例えば特許文献1に開示されているように、ガラス板を切断した際の切り残しや欠けなどの形状不良、ガラス板中の異物や泡などの内部欠陥が含まれる。この切り残しや欠けなどの形状不良は、粗大であり、例えば、端面(切断面)に沿った寸法が10mm~200mmであり、端面に垂直な方向の寸法が5mm~20mmである。
【0003】
また、ガラス板の端面には、ガラス板を切断する際に発生したチッピング(微小な欠け)が存在する場合がある。端面にチッピングが発生していると、ガラス板の製造工程中や梱包時、輸送時にガラス板がチッピングを起点として破損や損傷等するおそれがある。
【0004】
この種のチッピングを検査する場合には、例えば特許文献2に開示されているように、ガラス板の端面を端面側から撮像して検査するのが通例とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-112411号公報
【特許文献2】特開2012-163358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガラス板の検査工程では、ガラス板を搬送装置により縦姿勢で支持して搬送し、その搬送中または搬送停止時に撮像装置によりガラス板を撮像して欠陥の検査を行う場合がある。
【0007】
このように縦姿勢で支持されたガラス板について、端面に発生しているチッピングを上述のように端面側から撮像して検査しようとすると、撮像装置が、搬送装置や床面等と干渉するおそれがある。この干渉を回避して検査するためには、それら装置の構成が複雑になると共に、検査に要する時間が長くなるという問題が生じる。
【0008】
以上の観点から、本発明の課題は、縦姿勢で支持されるガラス板の端面に発生しているチッピングを、簡易な構成の装置により迅速に検査することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、矩形状のガラス板の辺部の端面に発生しているチッピングを検査する検査工程を備えるガラス板の製造方法であって、前記検査工程は、縦姿勢で支持した前記ガラス板の前記辺部を前記ガラス板の主面側から撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した画像に基づいて前記チッピングを検出する検出工程と、を備えることに特徴づけられる。
【0010】
このような構成によれば、縦姿勢で支持したガラス板を主面側から撮像して、ガラス板の端面に発生しているチッピングを検査するため、簡易な構成の装置による迅速な検査が可能となる。
【0011】
(2) 上記(1)の構成において、前記チッピングには、前記端面の板厚方向の途中から前記ガラス板の一方の主面に亘って形成されるチッピング、及び前記端面に凹状に形成されるチッピングの少なくとも一方が含まれるようにしてもよい。
【0012】
ガラス板の端面にこれらのチッピングが発生していても、ガラス板を主面側から撮像した場合の端面の輪郭形状は変化しない。すなわち、このチッピングは、撮像工程で撮像した画像に端面の形状変化として現れない。ここでの構成によれば、このチッピングを検査できることにより、検査の性能を高めることができる。
【0013】
(3) 上記(1)又は(2)の構成において、前記辺部は、前記ガラス板の上辺部と下辺部の少なくとも一つの辺部であってもよい。
【0014】
このような検査をしておけば、特にガラス板の梱包時や輸送時にチッピングを起点としてガラス板が破損や損傷等する事態を未然に防止できる。
【0015】
(4) 上記(3)の構成において、前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の上辺部を上側把持機構により把持してもよい。
【0016】
このようにすれば、縦姿勢のガラス板を簡易な設備で把持することができる。
【0017】
(5) 上記(4)の構成において、前記上側把持機構は、上下方向に延びる上側アーム部と、前記上側アーム部から前記ガラス板の幅方向に突出する上側爪部と、を備え、前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の前記上辺部の端面が、前記上側爪部よりも上側に位置していてもよい。
【0018】
このようにすれば、上側把持機構が撮像の邪魔になることを抑制できるため、検査範囲を広げることが可能となる。
【0019】
(6) 上記(5)の構成において、前記上側アーム部は、少なくとも下部が上下方向に一直線状に延び、前記上側爪部は、前記上側アーム部の下端部から前記幅方向の両側に一直線状に延びていてもよい。
【0020】
このようにすれば、検査範囲をより一層広げることが可能となる。
【0021】
(7) 上記(4)の構成において、前記検出工程は、前記撮像工程で撮像した前記画像から、前記チッピングを抽出する抽出処理を行う画像処理工程を含み、前記画像処理工程では、前記抽出処理前に前記画像から前記上側把持機構の像を除去する処理を行ってもよい。
【0022】
このようにすれば、把持機構部分の誤検出を防止するとともに、画像処理の負荷を低減することができ、高精度な検査が可能となる。
【0023】
(8) 上記(4)~(7)のいずれかの構成において、前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の前記下辺部を下側把持機構により把持してもよい。
【0024】
このようにすれば、ガラス板の揺れを防止できるため、適正なチッピングの検査が可能となる。
【0025】
(9) 上記(8)の構成において、前記下側把持機構は、上下方向に延びる下側アーム部と、前記下側アーム部から前記ガラス板の幅方向に突出する下側爪部と、を備え、前記撮像工程を行う際には、前記ガラス板の前記下辺部の端面が、前記下側爪部よりも下側に位置してもよい。
【0026】
このようにすれば、下側把持機構が撮像の邪魔になることを抑制できるため、検査範囲を広げることが可能となる。
【0027】
(10) 上記(9)の構成において、前記下側アーム部は、少なくとも上部が上下方向に一直線状に延び、前記下側爪部は、前記下側アーム部の上端部から前記幅方向の両側に一直線状に延びていてもよい。
【0028】
このようにすれば、検査範囲をより一層広げることが可能となる。
【0029】
(11) 上記(8)~(10)のいずれかの構成において、前記検出工程は、前記撮像工程で撮像した前記画像から、前記チッピングを抽出する抽出処理を行う画像処理工程を含み、前記画像処理工程では、前記抽出処理前に前記画像から前記上側把持機構及び前記下側把持機構の像を除去する処理を行ってもよい。
【0030】
このようにすれば、把持機構部分の誤検出を防止するとともに、画像処理の負荷を低減することができ、高精度な検査が可能となる。
【0031】
(12) 上記(1)~(11)のいずれかの構成において、前記検出工程は、前記撮像工程で撮像した前記画像から、前記チッピングを抽出する抽出処理を行う画像処理工程を含み、前記画像処理工程では、前記抽出処理前に前記画像から前記辺部の端面の像を除去する処理を行ってもよい。
【0032】
このようにすれば、辺部の端面の誤検出を防止するとともに、画像処理の負荷を低減することができ、高精度な検査が可能となる。
【0033】
(13) 上記(1)~(12)のいずれかの構成において、前記辺部は、前記ガラス板の左辺部と右辺部の少なくとも一つの辺部であってもよい。
【0034】
このような検査をしておけば、特にガラス板の梱包時や輸送時にチッピングを起点としてガラス板が破損や損傷等する事態をより確実に防止できる。
【0035】
(14) 上記(1)~(13)のいずれかの構成において、前記辺部の端面は、スクライブ切断により形成されてもよい。
【0036】
このようにすれば、スクライブ切断により切断された端面にはチッピングが発生し易くなるという事態に的確に対処することが可能となる。
【0037】
(15) 上記(1)~(14)のいずれかの構成において、前記撮像工程では、前記ガラス板の前記主面側から、前記ガラス板の前記主面を撮像し、前記検出工程では、前記ガラス板に発生している前記チッピング以外の欠陥を検査してもよい。
【0038】
このようにすれば、チッピングの検査と、チッピング以外の欠陥、すなわちガラス板の広範囲に亘って発生し得る異物や泡などの欠陥の検査とを同時に行えるため、作業効率が改善されて生産性の向上が図られる。
【0039】
(16) 上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、矩形状のガラス板の辺部の端面に発生しているチッピングを検査する検査装置を備えるガラス板の製造装置であって、前記検査装置は、縦姿勢で支持した前記ガラス板の前記辺部を前記ガラス板の主面側から撮像する撮像装置と、前記撮像装置で撮像した画像から前記ガラス板の前記チッピングを検出する検出装置と、を備えることに特徴づけられる。
【0040】
このような構成の装置によれば、既述の方法と同様にして、簡易な構成の装置による迅速なチッピングの検査が可能となる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、縦姿勢で支持されるガラス板の端面に発生しているチッピングを、簡易な構成の装置により迅速に検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置の全体構成を示す概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置の全体構成を示す概略側面図(図1に示す全体構成を右側から見た概略図)である。
図3】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置が行う画像処理の対象となる範囲を示すガラス板の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置におけるガラス板の上側の上辺部を把持する把持機構の要部を示す拡大正面図である。
図5】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置におけるガラス板の下側の下辺部を把持する把持機構の要部を示す拡大正面図である。
図6】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置におけるガラス板の上側の上辺部を把持する把持機構及び下側の下辺部を把持する把持機構の要部を示す拡大正面図である。
図7】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置の検査対象となるガラス板の要部の外観を拡大して示す正面図である。
図8】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置の検査対象となるガラス板の要部を拡大して示す縦断側面図(図7のX-X線断面図の第一例)である。
図9】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置の検査対象となるガラス板の要部を拡大して示す縦断側面図(図7のX-X線断面図の第二例)である。
図10】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置が検査対象について画像処理を行った結果として得られる画像を拡大して示す正面図である。
図11】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置の検査対象となるガラス板の要部を拡大して示す縦断側面図である。
図12】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える検査装置が行う画像処理の対象となる範囲を示すガラス板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法及び製造装置について添付図面を参照して説明する。
【0044】
本実施形態に係るガラス板の製造方法は、溶融ガラスを延伸してガラスリボンを成形する成形工程と、成形工程で成形されたガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、徐冷工程で徐冷されたガラスリボンを室温付近(例えば20℃~75℃)まで冷却する冷却工程と、冷却工程で冷却されたガラスリボンを所定の大きさに切断してガラス板を得る切断工程と、切断工程で得たガラス板を検査する検査工程とを備える。
【0045】
成形工程では、オーバーフローダウンドロー法を用いて溶融ガラスからガラスリボンを成形する。詳細には、断面楔形の成形体の頂部から両側に溢れ出たそれぞれの溶融ガラスを成形体の外側面部に沿って流下させながら成形体の下端部で融合一体化させることで、ガラスリボンを成形する。この場合、溶融ガラス(又はガラスリボン)は下方に延伸される。
【0046】
なお、成形工程は、オーバーフローダウンドロー法を用いたものに限定されない。例えば、スロットダウンドロー法やリドロー法などの他のダウンドロー法や、フロート法を用いてもよい。
【0047】
徐冷工程では、徐冷炉の内部空間に下方に向かって所定の温度勾配を設ける。ガラスリボンは、徐冷炉の内部空間を下方に向かって移動するに連れて、温度が低くなるように徐冷される。これにより、ガラスリボンの内部歪が低減される。ガラスリボンの幅方向両端部には、幅方向中央部よりも厚みが大きい不要部が形成される場合がある。冷却工程では、ガラスリボンは冷却ゾーン内を下方に向かって搬送されつつ、室温付近まで冷却される。
【0048】
切断工程は、ガラスリボンを延伸方向の所定長さに切断する第一切断工程と、幅方向両端部の不要部を切断して除去する第二切断工程とを備える。本実施形態では、第二切断工程は、第一切断工程の後に第一切断工程とは別の場所で行われる。
【0049】
第一切断工程及び第二切断工程では、ガラスリボンの一方の主面の切断予定線に沿ってスクライブ線を形成した後、スクライブ線の周辺部に曲げ応力を付与することで、ガラスリボンをスクライブ線に沿って切断(割断)する。これにより、ガラスリボンから所定サイズのガラス板が得られる。ガラス板の幅方向の寸法は、例えば2000mm~3000mmであり、延伸方向の寸法は、例えば2000mm~3000mmであり、ガラス板の板厚方向の寸法は、例えば0.2mm~1.3mmである。
【0050】
本実施形態では、第一切断工程及び第二切断工程で、ガラスリボンを縦姿勢(例えば、鉛直姿勢)のまま切断する。ガラスリボンの切断方法や切断姿勢はこれに限定されない。得られたガラス板は、縦姿勢で支持された状態で搬送され、検査工程が行われる。
【0051】
検査工程は、ガラス板の製造装置が備える検査装置によって実行される。以下、図1及び図2に基づいて、検査装置1の構成を説明する。
【0052】
検査装置1は、搬送装置2と、撮像装置6と、検出装置と、を備える。本実施形態では、撮像装置6は、光源ユニット3と、カメラユニット4と、を備える。検出装置は、画像処理部5を備える。
【0053】
搬送装置2は、検査エリアE内で、ガラス板Gを縦姿勢で支持して矢印A方向(図1参照)に搬送する。
【0054】
光源ユニット3は、搬送されるガラス板Gの第一主面G1側に配置されている。光源ユニット3は、上下方方向に複数(例えば6~10個)の光源3aを並べて配置したものである。
【0055】
カメラユニット4は、搬送されるガラス板Gの第二主面G2側に配置されている。カメラユニット4は、上下方向に複数(例えば6~10個)のカメラ4aを並べて配置したものである。
【0056】
光源ユニット3の光源3aの個数と、カメラユニット4のカメラ4aの個数とは同数であり、各光源3aと各カメラ4aとはガラス板Gの搬送経路を挟んで対向するように配置されている。光源3a及びカメラ4aの個数は、ガラス板Gの上下方向の寸法に応じて適宜選択される。光源ユニット3の複数の光源3aからガラス板Gの第一主面G1に向かって照射された光は、ガラス板Gを透過して、カメラユニット4の複数のカメラ4aにより受光される。
【0057】
画像処理部5は、カメラユニット4の複数のカメラ4aによりガラス板Gの第二主面G2側から撮像される画像に対して画像処理を行うものである。
【0058】
ここで、検査装置1は、ガラス板Gの上辺部GAの端面Ga及び下辺部GBの端面Gbに発生しているチッピング(詳細は後述する)を検査する第一処理を行う。また、検査装置1は、チッピング以外の欠陥、すなわちガラス板Gの広範囲に亘って発生している異物や泡からなる欠陥を検査する第二処理を行う。
【0059】
第一処理及び第二処理は、カメラユニット4の複数のカメラ4aが、搬送されているガラス板Gの右辺部GDの撮像を開始してから左辺部GEの撮像を終了するまで継続して行われる。この間、ガラス板Gは、搬送装置2によって一定速度で搬送される。この場合、第一処理及び第二処理が行われている時のガラス板Gの搬送速度は、第一処理及び第二処理が行われていない時(検査エリアE以外での搬送時)のガラス板Gの搬送速度よりも遅い。これにより、高精度な検査を行いつつタクトタイムを短くすることができる。
【0060】
さらに、ここでの構成によれば、透過光を利用して上記二つの端面Ga、Gbに発生しているチッピングを同時に検査できるという利点が得られる。これに対して、仮に、上記二つの端面Ga、Gbに発生しているチッピングをそれぞれの端面側から検査する場合には、このような利点を得ることができない。また、このように端面側から検査する場合には、透過光を利用した検査は行い得ず、反射光を利用した検査などが行われる。
【0061】
第一処理では、図2に示す複数のカメラ4aのうちの上端のカメラ4aと下端のカメラ4aとがそれぞれガラス板Gの上辺部GA及び下辺部GBを撮像した画像を利用して、チッピングの検査が行われる。詳細には、上端のカメラ4aと上端の光源3aとを結ぶ光軸が、ガラス板Gの上辺部GA(すなわちガラス板Gの上辺部GAの端面Gaより下側の領域)を横切るよう、上端のカメラ4aと上端の光源3aの位置が調整されている。同様に、下端のカメラ4aと下端の光源3aとを結ぶ光軸が、ガラス板Gの下辺部GB(すなわちガラス板Gの下辺部GBの端面Gbより上側の領域)を横切るよう、下端のカメラ4aと下端の光源3aの位置が調整されている。この検査において、画像処理部5は、上辺部GA及び下辺部GBを撮像した画像から、上辺部GAの端面Ga及び下辺部GBの端面Gbにそれぞれ発生しているチッピングを抽出するための画像処理を行う。この画像処理は、図3に示す上側の画像処理範囲7と下側の画像処理範囲8とでそれぞれ行われる。同図では、上側の画像処理範囲7及び下側の画像処理範囲8のいずれにもクロスハッチングを付している。
【0062】
上側の画像処理範囲7の上端7aは、ガラス板Gの上辺部GAの端面Gaよりも上側にあり、端面Gaと上端7aとの距離L1は、好ましくは0.5mm以上10.0mm以下である。距離L1の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L1の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。また、上側の画像処理範囲7の下端7bは、ガラス板Gの上辺部GAの端面Gaよりも下側にあり、端面Gaと下端7bとの距離L2は、好ましくは0.5mm以上~10.0mm以下である。距離L2の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L2の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。さらに、上側の画像処理範囲7は、ガラス板Gの幅方向全長に亘る範囲である。
【0063】
下側の画像処理範囲8の下端8aは、ガラス板Gの下辺部GBの端面Gbよりも下側にあり、端面Gbと下端8aとの距離L3は、好ましくは0.5mm以上10mm以下である。距離L3の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L3の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。また、下側の画像処理範囲8の上端8bは、ガラス板Gの下辺部GBの端面Gbよりも上側にあり、端面Gbと上端8bとの距離L4は、好ましくは0.5mm以上10.0mm以下である。距離L4の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L4の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。さらに、下側の画像処理範囲8は、ガラス板Gの幅方向全長に亘る範囲である。
【0064】
第二処理では、図2に示す複数の全てのカメラ4aがガラス板Gの第二主面G2の全範囲を撮像した画像を利用して、異物や泡などからなる欠陥の検査が行われる。この検査において、画像処理部5は、第二主面G2の全範囲を撮像した画像から上側の画像処理範囲7と下側の画像処理範囲8とを除外した範囲で、異物や泡などからなる欠陥を抽出するための画像処理を行う。この第二処理で行われる画像処理と、上述の第一処理で行われる画像処理とは相違している(詳細は後述する)。
【0065】
ここで、搬送装置2の詳細な構成を説明する。図1及び図2に示すように、搬送装置2は、ガラス板Gの上辺部GAを把持する複数の上側把持機構9と、ガラス板Gの下辺部GBを把持する複数の下側把持機構10とを備える。上側把持機構9の個数と下側把持機構10の個数は同じであってもよく、異なっていてもよい。ガラス板Gの重量を支持するためには、上側把持機構9の個数が多いことが好ましい。上側把持機構9は、ガラス板Gの搬送方向に延びる上側レール11により案内されて移動し、下側把持機構10は、同じく搬送方向に延びる下側レール12により案内されて移動する。
【0066】
本実施形態では、上側レール11及び上側把持機構9は、前工程を行うエリア(例えば既述の切断工程を行うエリア)から検査エリアEまで及び検査エリアEから後工程を行うエリアまでガラス板Gを縦姿勢で搬送する際にも用いられる。一方、下側レール12及び下側把持機構10は、検査エリアEのみで用いられる。
【0067】
検査エリアEでは、ガラス板Gの上辺部GA及び下辺部GBがそれぞれ上側把持機構9及び下側把持機構10により把持されることで、ガラス板Gの揺れが防止されている。この場合には、上側把持機構9と下側把持機構10とによって、ガラス板Gに上下方向に沿う張力が付与されることが好ましい。
【0068】
図4は、一つの上側把持機構9がガラス板Gの上辺部GAを把持している状態を示す拡大正面図である。同図に示すように、上側把持機構9は、上下方向に延びる上側アーム部9aと、上側アーム部9aからガラス板Gの幅方向に突出する上側爪部9bとを備える。なお、「幅方向」とは、ガラス板Gの搬送方向に沿う方向である(以下、同様)。
【0069】
上側アーム部9aは、上下方向に一直線状に延びている。また、上側爪部9bは、上側アーム部9aの下端部から幅方向の両側に一直線状に延びている。詳細には、上側爪部9bの上端9bxは、ガラス板Gの上辺部GAの端面Gaと略平行に延びている。そして、ガラス板Gの上辺部GAの端面Gaは、上側爪部9bの上端9bxよりも上側に位置している。つまり、上側把持機構9は、上側爪部9bの上端9bxよりもガラス板Gの上辺部GAの端面Gaが上側に食み出すように、ガラス板Gを把持する。
【0070】
ここで、ガラス板Gの上辺部GAの端面Gaと、上側爪部9bの上端9bxとの離間距離(上側爪部9bの上端9bxに対するガラス板Gの上辺部GAの端面Gaの食み出し量)Laは、上側の画像処理範囲7の既述の距離L2、及び後述するチッピングの上下方向の長さよりも長い。これにより、ガラス板Gの上辺部GAの適所を把持した上で、チッピングの検査を適正に行うことができる。
【0071】
上側アーム部9aは、全長に亘って上下方向に一直線状に延びていてもよく、その下部のみが上下方向に一直線状に延びていてもよい。
【0072】
ここで、上側の画像処理範囲7でガラス板Gの上辺部GAの端面Gaを撮像できない範囲は、上側アーム部9aの下部が存在する範囲である。この場合、上側アーム部9aの下部の幅方向の長さLxは、好ましくは10mm以上35mm以下である。長さLxの下限値は、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上である。長さLxの上限値は、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは25mm以下である。これに対して、ガラス板Gの幅方向の長さは、2000~3000mmである。そのため、上側把持機構9を複数備えていても、上辺部GAの端面Gaを撮像できない範囲を小さくすることができ、チッピングの検査に生じ得る弊害が低減される。
【0073】
図5は、一つの下側把持機構10がガラス板Gの下辺部GBを把持している状態を示す拡大正面図である。同図に示すように、下側把持機構10は、上下方向に延びる下側アーム部10aと、下側アーム部10aから幅方向に突出する下側爪部10bとを備える。
【0074】
下側アーム部10aは、上下方向に一直線状に延びている。また、下側爪部10bは、下側アーム部10aの上端部から幅方向の両側に一直線状に延びている。詳細には、下側爪部10bの下端10bxは、ガラス板Gの下辺部GBの端面Gbと略平行に延びている。そして、ガラス板Gの下辺部GBの端面Gbは、下側爪部10bの下端10bxよりも下側に位置している。つまり、下側把持機構10は、下側爪部10bの下端10bxよりもガラス板Gの下辺部GBの端面Gbが下側に食み出すように、ガラス板Gを把持する。
【0075】
ここで、ガラス板Gの下辺部GBの端面Gbと、下側爪部10bの下端10bxとの離間距離(下側爪部10bの下端10bxに対するガラス板Gの下辺部GBの端面Gbの食み出し量)Lbは、下側の画像処理範囲8の既述の距離L4、及び後述するチッピングの上下方向の長さよりも長い。これにより、ガラス板Gの下辺部GBの適所を把持した上で、チッピングの検査を適正に行うことができる。
【0076】
下側アーム部10aは、全長に亘って上下方向に一直線状に延びていてもよく、その上部のみが上下方向に一直線状に延びていてもよい。
【0077】
この場合、下側アーム部10aの上部の幅方向長さLyは、既述の上側アーム部9aと同様に10mm以上35mm以下である。長さLyの下限値は、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上である。長さLyの上限値は、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは25mm以下である。したがって、下側アーム部10aの存在によってガラス板Gの下辺部GBの端面Gbを撮像できない範囲については、既述の上側アーム部9aについて述べた事項と同様である。
【0078】
また、図6に示すように、ガラス板Gの右辺部GDに最も近い上側爪部9bと右辺部GDの端面Gdとの距離Lc、ガラス板Gの左辺部GEに最も近い上側爪部9bと左辺部GEの端面Geとの距離Ld、ガラス板Gの右辺部GDに最も近い下側爪部10bと右辺部GDの端面Gdとの距離Le、ガラス板Gの左辺部GEに最も近い下側爪部10bと左辺部GEの端面Geとの距離Lfは、それぞれ、好ましくは10mm以上で100mm以下であり、より好ましくは20mm以上で90mm以下であり、さらに好ましくは30mm以上で80mm以下である。ガラス板Gの角部には、製造工程中や梱包時、輸送時に、負荷がかかりやすい。上側把持機構9及び下側把持機構10が、このような位置を把持することにより、ガラス板Gの角部のチッピングを確実に検出し、ガラス板Gの破損を防止することができる。
【0079】
次に、本実施形態に係るガラス板Gの製造方法の特徴的構成を説明する。この製造方法が備える既述の検査工程は、搬送工程と、撮像工程と、検出工程と、を含む。さらに、検出工程は、画像処理工程と、判定工程と、を含む。
【0080】
搬送工程は、縦姿勢で支持されたガラス板Gを、検査エリアEで搬送装置2によりガラス板Gの幅方向に搬送する工程である。
【0081】
撮像工程は、搬送装置2により搬送されるガラス板Gを撮像装置6により第二主面G2側から撮像する工程である。
【0082】
画像処理工程は、撮像工程で撮像された画像に所定の画像処理を行い、ガラス板Gに発生している欠陥を検出する工程である。
【0083】
判定工程は、画像処理工程で検出された欠陥の大きさ及び/又は数量に基づいて、ガラス板の合否を判定する工程である。
【0084】
以下、画像処理工程について詳細に説明する。まず、既述の第一処理に係る画像処理の手法を説明する。
【0085】
図7は、ガラス板Gの上辺部GAにおける幅方向の一部を第二主面G2側から見た外観の態様を示す拡大正面図である。同図に示すように、ガラス板Gの上辺部GAの端面GaにはチッピングCが発生している。なお、同図には、上側把持機構9の上側爪部9bの一部が現れている。
【0086】
チッピングCは、ガラス板Gの上辺部GAを貫通せずに端面Gaに発生している。したがって、同図の態様においては、チッピングCは、端面Gaの輪郭形状を変えていないため、端面Gaの形状変化として現れていない。
【0087】
詳述すると、このチッピングCは、図8に示すように、端面Gaの板厚方向の途中から第一主面G1(第二主面G2であってもよい)に亘って欠損したもの、或いは、図9に示すように、第一主面G1及び第二主面G2に到達せずに端面Gaに凹状の欠損部として発生したものなどである。
【0088】
図10は、チッピングCを含む画像13を例示するものである。この画像13は、ガラス板Gの上辺部GAを撮像装置6が撮像した画像から、チッピングを含む領域を切り出したものである。画像処理工程では、撮像装置6が撮像した画像に対して、下記の(1)~(3)に示す画像処理を行う。なお、撮像される画像はグレースケールである。
【0089】
(1)上側把持機構9の像を除去する画像処理を行う。詳しくは、各ピクセルの明るさ値に、上側把持機構9の像に対応する所定の除去閾値を設定し、この設定された除去閾値以下のピクセルを除外することで、上側把持機構9の像を除去する。
(2)上辺部GAの端面Gaの像を除去する画像処理を行う。詳しくは、各ピクセルの明るさ値に、上辺部GAの端面Gaの像に対応する所定の除去閾値を設定し、この設定された除去閾値以下のピクセルを除外することで、上辺部GAの端面Gaの像を除去する。本実施形態では、上端のカメラ4aと上端の光源3aとを結ぶ光軸が、ガラス板Gの上辺部GAを横切るように配置されているため、図10では上辺部GAの端面Gaの像は明るさ値の低い線状の輪郭線として表れている。
(3)チッピングの輪郭線を強調する画像処理を行う。詳しくは、ソーベルフィルタ等の公知の輪郭強調フィルタを用いた画像処理により、チッピングの輪郭線を強調することができる。なお、輪郭強調フィルタの種類はソーベルフィルタに限定されない。
【0090】
なお、(1)~(3)の画像処理で上側把持機構9及び上辺部GAの端面Gaの像を除去した箇所に対応するピクセルは、所定の明るさ値に置換しても良く、データをブランクとしても良い。
【0091】
以上のような画像処理が行われることで、図10に示す画像13から、上側把持機構9(上側爪部9bの一部)及び上辺部GAの端面Gaの像を除去することができる。これにより、チッピングCの像のみが鮮明に現れる。さらに、この画像13は、輪郭線を強調することで、チッピングCの像のみがより一層鮮明に現れる。
【0092】
なお、上側の画像処理範囲7の幅方向全長においてチッピングCを抽出するためには、上記の(1)~(3)の画像処理に加えて、下記の(4)に示すような画像処理を行う。
【0093】
(4)まず、各ピクセルの明るさ値に、欠陥を検出すための所定の検出閾値を設定し、この検出閾値を超えた領域を欠陥として抽出する。次いで、抽出された欠陥に対して、縦横サイズ、面積、明るさ分布などの特徴量パラメータを生成する。そして、生成された特徴量パラメータに基づいて、上記抽出された欠陥の中からチッピングCを検出する。
【0094】
ここで、チッピングCの上下方向(縦方向)の長さは、20~500μmであり、幅方向(横方向)の長さは、30~800μmである。
【0095】
なお、チッピングとしては、図11に示すようにガラス板Gの上辺部GAを板厚方向に貫通して端面Gaに発生しているチッピングCも存在する。このチッピングCに対しても、上記(1)、(2)、(3)、(4)の画像処理が行われる。また、このチッピングCの上下方向の長さ及び幅方向の長さも、上記のチッピングCと同一である。
【0096】
以上のような画像処理工程での画像処理は、本実施形態では、コンピュータ等の制御手段を用いて自動で行われる。そして、画像処理の結果として、チッピングCの大きさによりクラス分けしてモニタリングする。
【0097】
上記画像処理の手法は、ガラス板Gの上辺部GAの端面Gaを対象にして上側の画像処理範囲7で画像処理を行う場合を例示したものであるが、ガラス板Gの下辺部GBの端面Gbを対象にして下側の画像処理範囲8で画像処理を行う場合も同様に適用される。この場合は、上記説明した事項における上側が下側に置き換えられる。
【0098】
さらに、画像処理工程では、ガラス板Gの第二主面の全範囲を撮像した画像から上側の画像処理範囲7と下側の画像処理範囲8とを除外した範囲で、異物や泡などの欠陥を抽出ための画像処理(既述の第二処理に係る画像処理)が行われる。
【0099】
この場合は、上記(1)、(2)、(3)に対応する画像処理は行われず、異物や泡などの欠陥を抽出するために上記(4)に対応する画像処理が行われる。したがって、この場合の画像処理は、上述のチッピングCを抽出するための画像処理よりも簡易になる。
【0100】
これにより、ガラス板Gの狭い領域での緻密な画像処理と、ガラス板Gの広い領域での簡易な画像処理とが同時に行われる。したがって、欠陥の検査精度の向上と、生産性の向上とを両立させることができる。
【0101】
なお、既述のガラス板Gの上辺部GAを対象にした画像処理の手法は、ガラス板Gの右辺部GDを対象にする場合及び左辺部GEを対象にする場合にも同様に適用することができる。
【0102】
この場合には、図12に示す右側の画像処理範囲14及び左側の画像処理範囲15でそれぞれ画像処理が行われる。右側の画像処理範囲14の右端14aは、ガラス板Gの右辺部GDの端面Gdよりも右側にあり、端面Gdと右端14aまでの距離L5は、好ましくは0.5mm以上10.0mm以下である。距離L5の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L5の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。また、右側の画像処理範囲14の左端14bは、ガラス板Gの右辺部GDの端面Gdよりも左側にあり、端面Gdと左端14bとの距離L6は、好ましくは0.5mm以上10.0mm以下である。距離L6の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L6の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。さらに、右側の画像処理範囲14は、ガラス板Gの上下方向全長に亘る範囲である。
【0103】
左側の画像処理範囲15の左端15aは、ガラス板Gの左辺部GEの端面Geよりも左側にあり、端面Geと左端15aとの距離L7は、好ましくは0.5mm以上10.0mm以下である。距離L7の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L7の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。また、左側の画像処理範囲15の右端15bは、ガラス板Gの左辺部GEよりも右側にあり、端面Geと右端15bとの距離L8は、好ましくは0.5mm以上10.0mm以下である。距離L8の下限値は、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。距離L8の上限値は、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。さらに、左側の画像処理範囲15は、ガラス板Gの上下方向全長に亘る範囲である。
【0104】
そして、この場合には、上記(1)に対応する画像処理は行われず、ガラス板Gの右辺部GDの端面Gd及び左辺部GEの端面Geをそれぞれ対象にして上記(2)、(3)に対応する画像処理が行われる。
【0105】
また、この場合には、右側の画像処理範囲14及び左側の画像処理範囲15のそれぞれの上下方向全長においてチッピングCを抽出するために上記(4)に対応する画像処理が行われる。
【0106】
したがって、この場合の画像処理は、既述のガラス板Gの上辺部GAを対象にした画像処理よりも簡易になる。
【0107】
なお、右側の画像処理範囲14で行う画像処理は、既述のガラス板Gの上辺部GAを対象にした画像処理について説明した事項における上側が右側に置き換えられ、下側が左側に置き換えられる。また、左側の画像処理範囲15で行う画像処理は、既述のガラス板Gの上辺部GAを対象にした画像処理について説明した事項における上側が左側に置き換えられ、下側が右側に置き換えられる。
【0108】
この場合の画像処理と、既述の異物や泡などの欠陥を抽出するための画像処理とを同時に行う場合には、以下に示すような手順で画像処理が行われる。
【0109】
すなわち、検査エリアEには、カメラユニット4の複数のカメラ4aよりもガラス板Gの搬送方向上流側の位置に、搬送されるガラス板Gの右辺部GDの存否を検知するセンサ(図示略)が設置されている。
【0110】
このセンサが、ガラス板Gの右辺部GDの存在を検知し、ガラス板Gがカメラ4aとセンサとの距離を搬送されたのち、第一の所定時間が経過するまでの間に撮像した画像に対して、右辺部GDの端面Gdに発生しているチッピングCを抽出するための画像処理が行われる。このときの第一の所定時間は、ガラス板Gが右側の画像処理範囲14の距離L5と距離L6とを合わせた距離を搬送される時間に対応している。
【0111】
そして、第一の所定時間が経過してから第二の所定時間が経過するまでの間に撮像した画像に対して、上側の画像処理範囲7と下側の画像処理範囲8とを除外した範囲で、異物や泡などの欠陥を抽出するための画像処理が行われる。このときの第二の所定時間は、右側の画像処理範囲14の左端14bから左側の画像処理範囲15の右端15bまでの距離に対応している。
【0112】
さらに、第二の所定時間が経過してから第三の所定時間が経過するまでの間に撮像した画像に対して、左辺部GEの端面Geに発生しているチッピングCを抽出するための画像処理が行われる。このときの第三の所定時間は、ガラス板Gが左側の画像処理範囲15の距離L7と距離L8とを合わせた距離を搬送される時間に対応している。
【0113】
本実施形態では、第一の所定時間と第三の所定時間とは同一であり、その所定時間よりも第二の所定時間の方が長い。また、上記の異物や泡などの欠陥を抽出するための画像処理が行われている間は、上辺部GAの端面Ga及び下辺部GBの端面Gbにそれぞれ発生しているチッピングCを抽出するための画像処理も併行して行われる。そして、第三の所定時間が経過した時点で、全ての画像処理が終了する。
【0114】
このような構成によれば、ガラス板Gの搬送方向の一箇所にセンサを設置して時間管理を行うだけで済むため、装置構成の簡易化が図られる。
【0115】
以上、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法及び製造装置について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0116】
例えば、上記実施形態では、撮像装置6が透過光を利用してガラス板Gを撮像するようにしたが、反射光または散乱光を利用して撮像するようにしてもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、撮像装置6を定位置に保持してガラス板Gを移動させながら欠陥の検査を行うようにしたが、ガラス板Gを定位置に保持して撮像装置6を移動させながら欠陥の検査を行うようにしてもよい。
【0118】
さらに、上記実施形態では、画像処理工程での画像処理を、コンピュータ等の制御手段を用いて自動で行うようにしたが、作業者が手作業で行うようにしてもよい。
【0119】
上記実施形態では、撮像装置6はグレースケールの画像を撮像したが、これに限定されない。撮像装置6によりカラー画像を撮像した後に、撮像した画像を画像処理部5によりグレースケールに変換しても良い。
【0120】
画像処理工程では、必要に応じてノイズ除去等のフィルタ処理を実行しても良い。
【0121】
上記実施形態では、ガラス板Gの第二主面の全範囲を撮像した画像から上側の画像処理範囲7、下側の画像処理範囲8、右側の画像処理範囲14、及び左側の画像処理範囲15を除外した範囲で、異物や泡などの欠陥を抽出ための画像処理を行っているが、これに限定されない。ガラス板Gの第二主面の全範囲を撮像した画像の全体に対して、異物や泡などの欠陥を抽出ための画像処理を行っても良い。
【0122】
また、上記実施形態では、ガラス板Gの上辺部GAの端面Gaに発生しているチッピングの検査と、ガラス板Gの下辺部GBの端面Gbに発生しているチッピングの検査とを同時に行うようにしたが、この両検査を別々に行うようにしてもよく、或いは、いずれか一方の検査のみを行うようにしてもよい。
【0123】
さらに、上記実施形態では、ガラス板Gの右辺部GDの端面Gdに発生しているチッピングの検査と、ガラス板Gの左辺部GEの端面Geに発生しているチッピングの検査とを行うようにしたが、この両検査のうちのいずれか一方の検査のみを行うようにしてもよく、或いは、この両検査を行わないようにしてもよい。
【0124】
上記実施形態では、搬送装置2の上側レール11及び上側把持機構9は、前工程を行うエリア(例えば既述の切断工程を行うエリア)から検査エリアEまで、及び検査エリアEから後工程を行うエリアまでガラス板Gを縦姿勢で搬送する際にも用いられていたが、これに限定されない。搬送装置2は検査エリアEのみで使用し、前工程を行うエリアから検査エリアEまで、及び検査エリアEから後工程を行うエリアまでガラス板Gを縦姿勢で搬送する際に使用する搬送装置を別途設けてもよい。
【0125】
上記実施形態では、検査エリアE内で、縦姿勢で支持されたガラス板Gの検査を行ったが、ここでの縦姿勢は、ガラス板の縦辺が鉛直方向に一致する姿勢のみならず、ガラス板の縦辺が鉛直方向から傾斜した姿勢も含む。ガラス板Gにかかる負荷を小さくする観点からは、ガラス板の縦辺を鉛直方向に一致させた状態で検査を行うことが好ましい。
【0126】
上記の実施形態では、上側把持機構9でガラス板Gの上辺部GAを把持すると共に、下側把持機構10でガラス板Gの下辺部GBを把持した状態で、ガラス板Gの検査を行っていたが、これに限定されない。上側把持機構9でガラス板Gの上辺部GAを把持し、下側把持機構10でガラス板Gの下辺部GBを把持しない状態で、ガラス板Gの検査を行っても良い。
【0127】
上記の実施形態では、検査工程において、ガラス板Gの端面Ga、Gb、Gc、Gdの板厚方向の途中からガラス板Gの一方の主面G1、G2に亘って形成されるチッピングC、及び端面Ga、Gb、Gc、Gdに凹状に形成されるチッピングCを検出していたが、これに限定されない。ガラス板Gの一方の主面から、他方の主面に亘って形成されるチッピングを検出しても良い。
【符号の説明】
【0128】
1 検査装置
2 搬送装置
3a 光源
4a カメラ
5 画像処理部
6 撮像装置
9 上側把持機構
9a 上側アーム部
9b 上側爪部
10 下側把持機構
10a 下側アーム部
10b 下側爪部
11 上側レール
12 下側レール
13 画像
C チッピング
G ガラス板
G1 第一主面
G2 第二主面
GA ガラス板の上辺部
Ga 上辺部の端面
GB ガラス板の下辺部
Gb 下辺部の端面
GD ガラス板の右辺部
Gd 右辺部の端面
GE ガラス板の左辺部
Ge 左辺部の端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12