(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095547
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】プリント回路基板を冷却するための冷却ケース及びコールドプレート構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/467 20060101AFI20240703BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L23/46 C
H05K7/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202690
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】2022/020902
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(71)【出願人】
【識別番号】514023586
【氏名又は名称】アセルサン・エレクトロニク・サナイ・ヴェ・ティジャレット・アノニム・シルケティ
【氏名又は名称原語表記】Aselsan Elektronik Sanayi ve Ticaret Anonim Sirketi
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】ムラト パルラク
(72)【発明者】
【氏名】アフメト サヒン セン
(72)【発明者】
【氏名】ベダト ヤグチ
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322EA11
5E322FA09
5F136BC00
5F136CA11
5F136CB06
5F136EA66
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱負荷が高くとも温度上昇を低くすることが可能な冷却ケース及びコールドプレートを提供すること。
【解決手段】プリント回路基板のコールドプレート(冷却板)構造体は、内部でプリント回路基板(PCB)を空気又は流体によって冷却する冷却ケース10と、ケース10内に配置され、ケース10の関連基板領域内に開口するスロット11により構成され、シャーシ(ケース)壁に熱を伝達し、コールドプレート20から高熱負荷を取り除く。また、ウェッジ機構を不要にする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板(1)の冷却構造であり、前記プリント回路基板(1)は、冷却のため並びに機械的及び電気的要件の双方を満たすために、内部に固定されるものである、該冷却構造であって、
・コールドプレート(20)と、及び
・空気又は流体による冷却をもたらし、前記コールドプレート(20)が配置される、冷却ケース(10)と、
を備え、
・前記冷却ケース(10)の側部に開けられた少なくとも1つのプレートスロット(11)であり、該プレートスロット(11)を通って前記冷却ケースの中に前記コールドプレート(20)を挿入することが可能である、該プレートスロット(11)と、及び
・前記コールドプレート(20)のうち、前記プレートスロット(11)に対応する側部にあるように構成されるフィン(21)であり、前記コールドプレート(20)から高熱負荷を取り除くことを可能にする、該フィン(21)と、
を備えることを特徴とする、プリント回路基板(1)の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント回路基板(1)の冷却構造であって、前記冷却ケース(10)に入る前記コールドプレート(20)の開口部を閉じる少なくとも1つの外側カバー(22)を備え、前記開口部は前記プレートスロット(11)であることを特徴とする、冷却構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリント回路基板(1)の冷却構造であって、前記フィン(21)と前記外側カバーとの間にあるように構成される密閉用の外側カバーガスケット(23)を備えることを特徴とする、冷却構造。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント回路基板(1)の冷却構造であって、前記フィン(21)と前記冷却ケース(10)との間にあるように構成される密閉用のケースガスケット(24)を備えることを特徴とする、冷却構造。
【請求項5】
請求項2に記載のプリント回路基板(1)の冷却構造であって、前記外側カバー(22)を前記冷却ケース(10)に固定し、密閉を完了するための少なくとも1つのねじ(25)を備えることを特徴とする、冷却構造。
【請求項6】
請求項1に記載のプリント回路基板(1)の冷却構造であって、熱抵抗を低減するために、前記コールドプレート(20)の側壁に配置される熱界面材料(26)を備えることを特徴とする、冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で空気又は流体によってプリント回路基板(PCB)を冷却する冷却ケースと、及びケース内に配置され、冷却ケースの関連基板領域内に開口するスリットにより構成され、熱をシャーシ(ケース)壁に伝達し、ウェッジ機構を不要にするコールドプレート(冷却板)構造体とに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板(PCB)は、冷却目的のための、並びに軍用電子部品パッケージングにおける機械的及び電気的要件を満たすための機械に、固定する必要がある。機械的には、プリント回路基板が衝撃及び振動に強い必要があり、電気的には、必要なコネクタ同士を互いに組み合わせる必要がある。特に、非常に高い熱負荷を有する基板を熱伝導法によって冷却することは、多くのプラットフォームに大きな利点を与える。1つのケースに2枚以上の基板が存在する場合があるが、これら基板のうちの1枚以上が他の基板に比べて過度の熱負荷を有する場合、冷却アーキテクチャ全体を変更することができる。
【0003】
従来技術では、電子基板(PCB)は、ウェッジ機構と共に使用される。この構造体は、外部で互いに連結され、上側領域からスライドすることによってケースに取り付けられる。使用されるウェッジロック機構内部の隙間及び界面抵抗のせいで、この構造体は、高い熱抵抗を生み出す。先行技術の最大の問題は、熱抵抗が、中空機械部品で0.2℃/W、ウェッジロック面で0.5℃/Wであることである。この場合、熱は均等に分散できず、同時に放射される合成熱抵抗は0.143~0.2℃/Wで変化する。このような状況では、ウェッジ機構を通じて一方の壁からのみ70Wの熱負荷が伝達されると、この移動を通じて10℃の温度上昇が起こる可能性がある。
【0004】
特許文献1(US4962444A)は、電子システム内の電子基板を冷却するためのコールドリブ(冷却リブ)を有するシャーシを備える冷却システムに関する。従来技術におけるコールドプレート(冷却板)取り付け手法を変更せずとも、冷却流体がコールドプレートの端縁に到達できるように、新しく効果的な流体経路が設計されている。しかしながら、コールドプレートとケースの間の界面熱抵抗を排除し、基板ホルダなしでの取り付けを可能にし、基板ホルダからの熱抵抗を排除する構成は、存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
その結果、上述の欠点、及び主題に関する既存の解決策が不十分であるため、関連技術分野における改善が必要である。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、本発明によって触発され、上述の問題を解決することを目的とする。
【0008】
[発明の目的]
本発明の主な目的は、流体又は空気経路を延長せずに、側壁からスライドすることによってコールドプレートを冷却ケースに取り付け、それにより、熱負荷が高くとも温度上昇を低くすることが可能な冷却ケース及びコールドプレートを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、コールドプレートの端縁に配置される冷却フィンによって、冷却ケースの冷却剤に接触させることである。
【0010】
本考案のさらなる目的は、ねじ及びガスケットによって冷却ケースに嵌まる、密閉用のコールドプレートフランジを設けることである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、ウェッジ機構を利用しない、したがって、使用された場合のウェッジロック機構の内部の隙間及び界面抵抗に起因する高い熱抵抗が存在しない実施形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、プリント回路基板の冷却構造であり、前記プリント回路基板が、冷却のため並びに機械的及び電気的要件の双方を満たすために、内部に固定されるものである、該冷却構造であって、
・コールドプレートと、及び
・空気又は流体によって冷却をもたらし、前記コールドプレートが配置される、冷却ケースと、
を備え、
・前記冷却ケースの側部に開けられた少なくとも1つのプレートスロットであり、該プレートスロットを通って前記冷却ケースの中に前記コールドプレートを挿入することが可能である、該プレートスロットと、及び
・前記コールドプレートのうち、前記プレートスロットに対応する側部にあるように構成されるフィンであり、前記コールドプレートから高熱負荷を取り除くことを可能にする、該フィンと、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の構造的及び特性的な特徴並びに全ての利点は、以下に与えられる図面及びこれらの図面を参照することによって記載される詳細な説明によってより、明確に理解される。従って、評価は、これらの図面及び詳細な説明を参考にすることによって行われるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】空冷式又は流体冷却式の冷却ケースに取り付けられたコールドプレートの図である。
【
図3】ウェッジ機構を有する従来技術のコールドプレートの上側の組立及び詳細図である。
【
図4】本発明のスライド式コールドプレートの上側の組立及び詳細図である。
【
図5】本発明のスライド式コールドプレートを空冷式ケースに組み合わせる図である。
【
図6】本発明のスライド式コールドプレートの分解図である。
【
図7】本発明のスライド式冷却ケースの上部熱モデル図である。
【
図8】ウェッジ機構を有する従来技術のコールドプレート及び冷却ケースの熱モデル図である。
【0015】
<参照符号の説明>
1 プリント回路基板
2 ウェッジロック機構
10 冷却ケース
11 プレートスロット
20 コールドプレート
21 フィン
22 外側カバー
23 外側カバーガスケット
24 ケースガスケット
25 ねじ
26 熱界面材料
【発明を実施するための形態】
【0016】
この詳細な説明では、本発明の冷却ケース及びコールドプレートの好ましい実施形態が、要旨をより良く理解するためにのみ説明されている。
【0017】
本発明では、従来から公知の方法による他の要件を満たすように熱伝導冷却を改善する実施形態が提供される。この実施形態では、非常に高い熱負荷を有する基板のウェッジ機構に起因する熱性能損失を最小限に抑える方法が開発されている。この方法では、スロットが、ケースの関連基板領域内に開口し、コールドプレート(冷却板)と呼ばれるプレートが、外部からケース内に挿入される。コールドプレートは、電子素子からシャーシ(ケース)壁に熱を伝達するために用いられる本発明要旨の実施形態では、ウェッジ機構は完全に排除される。スライドプレートの端縁は広く保たれ、冷却効率を高めるためにフィンが追加され、密閉を確実にするためにスライドプレートのフランジにガスケットが追加される。また、流体冷却式ケース及び空冷式ケースのどちらの場合でも、極めて効率的で、製造が容易であり、熱的に極めて有利な構造を得ることが目的である。
【0018】
プリント回路基板(1)を冷却するための本発明の冷却ケース(10)及びコールドプレート(20)の構成は、最も基本的な形態では、流体冷却式又は空冷式ケース(10)と、冷却ケース(10)内に配置されるコールドプレート(20)とを含む。
【0019】
本発明要旨の実施形態を従来技術と区別する最も重要な特徴は、冷却ケース(10)の側部にあるプレートスロット(11)の開口部である。プレートスロット(11)により、コールドプレート(20)を側部から冷却ケース(10)内に挿入することができる。さらに、プレートスロットに対応するコールドプレートの側部にあるように構成されるフィン(21)により、冷却シャーシの壁面から熱が直接取り除かれ、これにより、コールドプレートから高熱負荷が取り除かれる。
【0020】
本発明の主題の実施形態では、冷却ケース(10)に入るコールドプレート(20)の開口部を閉じる少なくとも1つの外側カバー(22)が存在し、この開口部がプレートスロット(11)である。また、密閉を確実にするために、フィン(21)と外側カバーとの間にあるように構成される外側カバーガスケット(23)も存在する。本発明の実施形態はさらに、フィン(21)と冷却ケース(10)との間にあるように構成される密閉用のケースガスケット(24)を備える。本明細書では、外側カバー(22)は、冷却ケース(10)に固定され、ねじ及び外側カバーガスケット(23)によって密閉が完了する。さらに、コールドプレート(20)の側壁に、熱界面材料(thermal interface material)(26)が設けられる。熱界面材料(26)は、コールドプレート(20)の側壁の熱抵抗を低減する。
【0021】
本発明要旨の実施形態では、冷却すべきPCB又は素子とコールドプレート(20)とがねじで互いに連結され、共に移動する。コールドプレート(20)の材質を変えることにより、基板の端縁までの熱伝導抵抗を管理することができる。しかしながら、ウェッジ機構は、コールドプレートからケースへの熱伝達における最大の問題である。ウェッジ構造は実用的であり、分解及び組み立てにおいては利便性をもたらすが、冷却においては非常に深刻な問題を引き起こす。実際には、問題がない限り基板が分解されることはないが、ウェッジ機構が存在する限り、基板は常に高温で作動しなければならない。この問題は把握されており、本発明の構造により、基板をコールドプレートと共に又は別々に設置することができる。一方の端縁では、冷却剤への熱伝導が途切れることなく継続し、同時に、他方の端縁では、ケース端縁を大きな表面で押すことにより、遭遇する熱抵抗が従来のウェッジ構造に比べて非常に低くなる。結果として、製品は冷たくなり、性能は高くなり、寿命は長くなる。
【0022】
図1は、ウェッジロック機構(2)を備える冷却ケースへのプリント回路基板(1)の組み付けを示す。ここで、ウェッジ機構は、熱伝達を行うためではなく、基板をケースに連結するために使用される。基板上にある基板自体のコールドプレートは、スライド式コールドプレート(20)に熱を伝導できるように、平らに設計されている。その後、分解及び組み立てを容易にするためのウェッジ機構の助けを借りて、基板を分解し、また組み立てることができる。
【0023】
図3及び
図4は、2つの異なる機構、すなわち、冷却ケース(10)内にウェッジロック機構(2)を有するコールドプレート(2)と、本発明のスライド式コールドプレート(20)とを上側から示す。冷却が8~10℃改善することにより、流体冷却式システムで使用される冷却ユニット(交換器)の体積を、最大で半分に減少させることが可能となる。
【0024】
図7及び
図8は、2つの異なる冷却方法による熱伝導経路の差異を示している。ウェッジ機構の構造では、熱が2つの別々のラインに分割されるが、金属同士の界面及びウェッジ機構における抵抗による損失が存在する。本発明要旨の実施形態では、熱がコールドプレート(20)の冷却フィン(21)に到達する。さらに、冷却ケース(10)の壁を大きな表面から押すことにより、この表面が、熱の一部をケース壁にも伝達する。ガスケット構造体を板の片側に設けるだけで、片側の密閉対策を講じるには十分である。
【0025】
コールドプレート(20)は、冷却フィン(21)上にあるので、冷却器に直接接触し、また、他の方法では発生してしまう、全熱負荷が100~120Wの基板で発生する可能性のある10~11℃の性能低下がなくなる。さらに、基板を分解し、また組み立てるのに非常に実用的である。さらに、密閉手段が施されているので、同じ構造を、空冷式構造及び流体冷却式構造のどちらでも容易に使用することができる。
【外国語明細書】