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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095554
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】油性睫毛用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/89
A61K8/81
A61K8/92
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204973
(22)【出願日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2022212236
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】伊夫伎 夏希
(72)【発明者】
【氏名】郡司(東) 竜太
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB232
4C083AB372
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC092
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC332
4C083AC372
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC662
4C083AC682
4C083AC842
4C083AC912
4C083AD022
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD151
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD432
4C083AD662
4C083CC14
4C083DD30
4C083EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさを両立し、さらにカールキープ力に優れる油性睫毛用化粧料の開発を課題とする。
【解決手段】次の成分(A)~(C);
(A)25℃で固形状または半固形状のポリオキシアルキレン化ワックス
(B)油溶性皮膜形成剤
(C)ロウエステル(ただし、成分(A)を除く)
を含有する油性睫毛用化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)25℃で固形状または半固形状のポリオキシアルキレン化ワックス
(B)油溶性皮膜形成剤
(C)ロウエステル(ただし、成分(A)を除く)
を含有する油性睫毛用化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)のHLBが8以上である請求項1に記載の油性睫毛用化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)は、エチレンオキサイドの付加モル数が8~200のポリオキシエチレン化ワックスである請求項1または2に記載の油性睫毛用化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)がシリコーン系樹脂および/または(メタ)アクリル酸系樹脂である請求項1または2に記載の油性睫毛用化粧料。
【請求項5】
前記成分(C)がカルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、およびコメヌカロウよりなる群から選択される1種または2種以上である請求項1または2に記載の油性睫毛用化粧料。
【請求項6】
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合(A)/(B)が、0.1~3である請求項1または2に記載の油性睫毛用化粧料。
【請求項7】
さらに、成分(D)25℃で液状の高級アルコールを含有する請求項1または2に記載の油性睫毛用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性睫毛用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
睫毛用化粧料に求められる効果は、睫毛を太く濃く見せ、目元の印象を美しく際立たせるもの等がある。近年、マスク着用の機会が増え、目元への注目度が上がっている。そのため、目元の印象を際立たせる睫毛を上向きにカールした状態で維持するカールキープ効果は非常に重要と考えられている。カールキープ効果に加え、汗や涙、雨等に対して睫毛用化粧料が、落ちることがなく、経時でにじむことがない等の化粧持ちの良さが求められている。一方で、これらの化粧持ちの良い睫毛用化粧料は化粧落ち(洗浄性)が悪く、睫毛用化粧料を十分に落とすには専用のクレンジングの使用や、睫毛を強く擦る必要があり、睫毛に対して負担をかける場合があった。そこで、高い化粧持ち効果を維持しつつ、お湯で簡便に化粧料を落とすことが出来る睫毛用化粧料が求められていた。
【0003】
これまでにも、ワックスとHLB値が6~12である非イオン性界面活性剤、揮発性油剤をそれぞれ特定量含有することで、ボリューム効果、カール効果、化粧持ち(耐水性)に加えて、温水による除去性に優れた油性睫毛用化粧料の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ガラス転移温度の異なる少なくとも3種の皮膜形成剤を含有することで、カールアップ・カールキープ力に優れる水中油型睫毛用化粧料の技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-124999号公報
【特許文献2】特開2017-141165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1ではカール効果や経時でのにじみのなさ、落としやすさは優れるものの、カールキープ力は十分ではなかった。特許文献2では、経時でのにじみのなさは油性睫毛用化粧料と比べると十分ではなかった。そこで本発明は、化粧の落としやすさ、化粧持ち(経時でのにじみのなさ)を両立し、さらにカールキープ力に優れる油性睫毛用化粧料の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明者らは、25℃で固形状または半固形状のポリオキシアルキレン化ワックスと油溶性皮膜形成剤、さらにポリオキシアルキレン化ワックスを除くロウエステルを含有する油性睫毛用化粧料が、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさを両立し、さらにカールキープ力に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の形態を含む。
[1]
次の成分(A)~(C);
(A)25℃で固形状または半固形状のポリオキシアルキレン化ワックス
(B)油溶性皮膜形成剤
(C)ロウエステル(ただし、成分(A)を除く)
を含有する油性睫毛用化粧料。
[2]
前記成分(A)のHLBが8以上である[1]に記載の油性睫毛用化粧料。
[3]
前記成分(A)は、エチレンオキサイドの付加モル数が8~200のポリオキシエチレン化ワックスである[1]または[2]に記載の油性睫毛用化粧料。
[4]
前記成分(B)がシリコーン系樹脂および/または(メタ)アクリル酸系樹脂である[1]または[2]に記載の油性睫毛用化粧料。
[5]
前記成分(C)がカルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、およびコメヌカロウよりなる群から選択される1種または2種以上である[1]または[2]に記載の油性睫毛用化粧料。
[6]
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合(A)/(B)が、0.1~3である[1]または[2]に記載の油性睫毛用化粧料。
[7]
さらに、成分(D)25℃で液状の高級アルコールを含有する[1]または[2]に記載の油性睫毛用化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、カールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの全てに優れる油性睫毛用化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の詳細について以下に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0010】
(25℃で固形状または半固形状のポリオキシアルキレン化ワックス)
本発明に使用される成分(A)ポリオキシアルキレン化ワックスは、25℃で固形状または半固形状の、酸化アルキレン(アルキレンオキサイド)を付加重合したエステル油である。ここで、25℃で固形状とは、25℃の環境下で流動性を有さず、固体であるものを意味する。また、25℃で半固形状とは、前記固形状と後述の液状との中間の領域のものをいう。
【0011】
また、ポリオキシアルキレン化ワックスにおいて、付加重合するアルキレンオキサイドは、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。特に、化粧の落としやすさの観点から、エチレンオキサイドが好ましい。
【0012】
アルキレンオキサイドの付加モル数は、特に限定されず、例えば、8以上が好ましく、50以上がより好ましく、80以上がさらにより好ましい。また、200以下が好ましく、180以下がより好ましく、150以下がさらにより好ましい。また、8~200が好ましく、50~180がより好ましく、80~150がさらにより好ましい。
【0013】
本発明において、ポリオキシアルキレン化ワックスに用いられるエステル油は、通常化粧料に使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、ホホバ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、アーモンド油、大豆油、メドウフォーム油、ツバキ油、アボカド油、ヒマシ油、ヒマワリ種子油等の植物油、シア脂、カカオ脂等の油脂類、コメヌカロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、モクロウ等の植物性のロウ、ミツロウ等の動物性のロウ等が挙げられ、これらから1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
ポリオキシアルキレン化ワックスのHLBは、特に限定されず、いずれの値のものを使用することができる。本発明においては、化粧の落としやすさの観点から、8以上が好ましく、14以上がより好ましく、17以上がさらにより好ましい。ここでHLB(Hydphile-Lipophile Balance)とは、親水性-親油性のバランスを示す指標であり、小田・寺村らによる下記(式1)で計算されるものである。
HLB=「無機性値(IV)/有機性値(OV)」×10・・・(式1)
(甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、11~17頁、三共出版、1984年発行参照)
【0015】
このようなポリオキシアルキレン化ワックスは、例えば、ホホバワックスPEG-120エステルズ(HLB:18)、ホホバ油PEG-150エステルズ(HLB:18.3)、ホホバワックスPEG-80エステルズ(HLB:17)、PEG-75ラノリン(HLB:16.6)、PEG-8ミツロウ(HLB:9.4)等が挙げられる。これらの中でも、カールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの観点から、ホホバワックスPEG-120エステルズ、ホホバ油PEG-150エステルズ、およびホホバワックスPEG-80エステルズよりなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、ホホバワックスPEG-120エステルズおよび/またはホホバ油PEG-150エステルズがより好ましい。
【0016】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されず、油性睫毛用化粧料全量に対して、0.5質量%(以下、単に%と略す)以上が好ましく、0.8%以上がより好ましく、1%以上がさらにより好ましい。また、18%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらにより好ましい。また、0.5~18%が好ましく、0.8~15%がより好ましく、1~10%がさらにより好ましい。この範囲であると、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさにより優れるため、より好ましい。
【0017】
本発明に使用される成分(B)油溶性皮膜形成剤は、油に溶解性を示す皮膜形成剤である。ここで、油に溶解性を示すとは、溶媒となる油(例えば、環状シリコーン油や短鎖ジメチルポリシロキサン等の揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素等)6gと皮膜形成剤4gとを90℃で混合した際に、均一になることを意味する。本発明において、皮膜形成剤とは、溶媒に40%溶解した溶液を、ガラス板に400μm厚のアプリケーターで塗布し、室温で24時間乾燥後に皮膜が形成されるものである。
【0018】
本発明に使用される成分(B)油溶性皮膜形成剤としては、特に限定されず、例えば、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、トリメチルシロキシケイ酸、トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸、(トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコノール)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸)クロスポリマー、(ビニルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸ステアリルジメチコン)クロスポリマー等のシリコーン系樹脂、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、(アクリレーツ/VA)コポリマー、(アクリル酸ステアリル/VA)コポリマー、(メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸エチルヘキシル)コポリマー等の(メタ)アクリル酸系樹脂、イソステアリン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン酸系樹脂等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタクリル酸であることを指す。
【0019】
これらの中でも、カールキープ力の観点から、シリコーン系樹脂および/または(メタ)アクリル酸系樹脂が好ましく、ポリメチルシルセスキオキサン、トリメチルシロキシケイ酸、トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸、(アクリレーツ/VA)コポリマー、および(アクリル酸ステアリル/VA)コポリマーよりなる群から選択される1種または2種以上がより好ましく、トリメチルシロキシケイ酸、(アクリレーツ/VA)コポリマー、および(アクリル酸ステアリル/VA)コポリマーよりなる群から選択される1種または2種以上がさらにより好ましい。
【0020】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されず、油性睫毛用化粧料全量に対して、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらにより好ましい。また、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、18%以下がさらにより好ましい。また、0.5~25%が好ましく、1~20%がより好ましく、1.5~18%がさらにより好ましい。この範囲であると、カールキープ力により優れるため、より好ましい。
【0021】
本発明において前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合(A)/(B)は、特に限定されず、経時でのにじみのなさの観点から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.25以上がさらにより好ましい。また、カールキープ力の観点から、3以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2以下がさらにより好ましい。また、0.1~3が好ましく、0.2~2.5がより好ましく、0.25~2がさらにより好ましい。
【0022】
本発明に使用される成分(C)ロウエステル(ただし、成分(A)を除く)は、25℃で固形の、高級脂肪酸および/またはヒドロキシカルボン酸と高級アルコールのエステルである。ロウエステルは、融点以上で油剤と混合すると溶解し、この混合物を融点以下に冷却すると油剤を固化する効果を奏する。本発明においてロウエステルは、油性睫毛用化粧料に粘度を付与し、カールキープ効果を高める効果を奏する。特に、融点が高いロウエステルを使用することで、カールキープ効果により優れるためより好ましい。
【0023】
本発明に使用される成分(C)ロウエステルの融点は特に限定されず、いずれのものも使用することができる。例えば、50~100℃が好ましく、55~95℃が好ましく、60~90℃がさらにより好ましい。ここで、融点は、医薬部外品原料規格2006一般試験法、融点試験法第1法にて測定することができる。
【0024】
本発明に使用される成分(C)ロウエステルは、特に限定されず、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、ゲイロウ、モクロウ、ヒマワリ種子ロウ、水添パーム油、シア脂、カカオ脂、ムルムルバター、水添ヤシ油、水添ナタネ油、水添アーモンド油、水添マカデミアナッツ油、水添アボカド油、オレンジワックス、レモンワックス、セレシン等が挙げられる。これらの中でも、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、およびコメヌカロウよりなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、およびミツロウよりなる群から選択される1種または2種以上がより好ましい。
【0025】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されず、油性睫毛用化粧料全量に対して、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらにより好ましい。また、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、12%以下がさらにより好ましい。また、0.5~20%が好ましく、1~15%がより好ましく、1.5~12%がさらにより好ましい。この範囲であると、カールキープ力、経時でのにじみのなさにより優れるため、より好ましい。
【0026】
本発明はさらに成分(D)25℃で液状の高級アルコールを含有することができる。ここで、25℃で液状とは、25℃の環境下で流動性を有する液体を意味する。また、本発明において高級とは、炭素数が6以上のものを意味する。特に、炭素数8~30が好ましく、炭素数14~28がより好ましく、炭素数18~24がさらにより好ましい。成分(D)25℃で液状の高級アルコールを含有することで、化粧の落としやすさにより優れるため、より好ましい。25℃で液状の高級アルコールは、特に限定されず、例えば、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、イソセチルアルコール、ヤシアルコール、オリーブアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデシルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびデシルテトラデカノールよりなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、オクチルドデカノールおよび/またはデシルテトラデカノールがより好ましい。
【0027】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されず、油性睫毛用化粧料全量に対して、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらにより好ましい。また、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、6%以下がさらにより好ましい。また、0.5~10%が好ましく、1~8%がより好ましく、1.5~6%がさらにより好ましい。この範囲であると、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさにより優れるため、より好ましい。
【0028】
本発明の油性睫毛用化粧料は、上記成分以外の油性成分を含有することができる。油性成分としては、通常化粧料に使用されるものであれば、揮発性、不揮発性等の特性、固形、液状等の性状等、特に限定されず、いずれのものも使用することができる。例えば、炭化水素油、エステル油、脂肪酸、シリコーン油、フッ素系油等が挙げられる。
【0029】
より詳細には、炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、軽質イソパラフィン等の揮発性炭化水素油、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、α-オレフィンオリゴマー等の不揮発性炭化水素油、ワセリン等が挙げられる。
【0030】
エステル油としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸ミリスチリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリメリト酸トリトリデシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸ステアリル等の一価アルコールと脂肪酸のエステル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等の多価アルコールと脂肪酸のエステル、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、デカエチルヘキサン酸ポリグリセリル-10、デカイソステリン酸ポリグリセリル-10等のポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、コハク酸ジ-2-エチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル等の多価カルボン酸とアルコールのエステル、カカオ脂、シア脂、ヤシ油、オリーブ油、パーム油、マカデミアンナッツ油、メドウフォーム油、ホホバ油、菜種油、コメヌカ油、ヒマシ油、ミンク油等の植物油、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ジ水添ロジンダーマジリノレイル等のダイマー酸エステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル)、N-ラウロイルサルコシンイソプロピル等のアミノ酸エステル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等が挙げられる。
【0031】
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノール酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0032】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン等の直鎖シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油、メチルフェニルポリシロキサン(化粧品表示名称では、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、フェニルトリメチコン、フェニルメチコン等と表記される)等のフェニル変性シリコーン油、トリフルオロプロピルシクロテトラシロキサン、トリフルオロプロピルシクロペンタシロキサン等のフッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物等が挙げられる。特に、低分子量の直鎖シリコーン油(例えば、25℃動粘度が1~5CSのジメチルポリシロキサンやメチルトリメチコン等)や環状シリコーン油は揮発性シリコーン油として用いることができる。フッ素系油としては、例えば、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、経時でのにじみのなさ、カールキープ力の観点から、揮発性の油性成分を含有することが好ましく、揮発性炭化水素油および/または揮発性シリコーン油を含有することがより好ましく、揮発性炭化水素油を含有することがさらにより好ましい。
【0034】
本発明の油性睫毛用化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常の化粧料に使用される成分を含有することができる。例えば、水性成分、粉体、紫外線吸収剤、高分子、保湿剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効成分、安定化剤、色素、香料等が挙げられる。
【0035】
本発明の油性睫毛用化粧料は、常法により製造することができる。以下に製造方法の例を示すが、これに限定されるものではない。例えば、成分(A)~(C)、および必要に応じて成分(D)および任意成分を成分(A)、(C)の融点以上の温度(例えば90℃)で均一に混合し、室温に冷却して得ることができる。また、各成分を混合する際に、分散性を高めるために、ロールミル等の分散機器を用いても良い。
【0036】
本発明における油性とは、油性成分を連続相とする、実質的に水を含まない剤型を意味する。ここで実質的に水を含まないとは、全く含まないか、含んでいるとしても油性睫毛用化粧料中に1%以下を意味する。
【0037】
本発明の油性睫毛用化粧料の性状は、特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、クリーム状、固形状等いずれの性状とすることもできる。これらの中でも、塗布しやすい観点から、液状、ゲル状、クリーム状が好ましく、経時でのにじみのなさの観点から、ゲル状、クリーム状が好ましい。
【0038】
本発明の油性睫毛用化粧料は、特に限定されず、マスカラ、睫毛用下地、マスカラオーバーコート等に用いることができる。
【0039】
なお、本発明は以下の構成をとることもできる。
[1]
次の成分(A)~(C);
(A)25℃で固形状または半固形状のポリオキシアルキレン化ワックス
(B)油溶性皮膜形成剤
(C)ロウエステル(ただし、成分(A)を除く)
を含有する油性睫毛用化粧料。
[2]
前記成分(A)のHLBが8以上である[1]に記載の油性睫毛用化粧料。
[3]
前記成分(A)は、エチレンオキサイドの付加モル数が8~200のポリオキシエチレン化ワックスである[1]または[2]に記載の油性睫毛用化粧料。
[4]
前記成分(B)がシリコーン系樹脂および/または(メタ)アクリル酸系樹脂である[1]~[3]のいずれかに記載の油性睫毛用化粧料。
[5]
前記成分(C)がカルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、およびコメヌカロウよりなる群から選択される1種または2種以上である[1]~[4]のいずれかに記載の油性睫毛用化粧料。
[6]
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合(A)/(B)が、0.1~3である[1]~[5]のいずれかに記載の油性睫毛用化粧料。
[7]
さらに、成分(D)25℃で液状の高級アルコールを含有する[1]~[6]のいずれかに記載の油性睫毛用化粧料。
【0040】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例0041】
実施例1~17および比較例1~6:油性マスカラ
下記表1~2に示す処方の油性マスカラを下記の製造方法にて調製し、(イ)カールキープ力、(ロ)化粧の落としやすさ、(ハ)経時でのにじみのなさについて、下記評価方法により評価した。その結果も併せて表1~2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
*1:FLORASOLVS JOJOBA-120 (HALLSTAR社製)
*2:FLORASOLVS PEG-150 HYDROGENATED JOJOBA (HALLSTAR社製)
*3:FLORASOLVS JOJOBA-80 (HALLSTAR社製)
*4:FLORASOLVS MACADAMIA-16 (HALLSTAR社製)
*5:KSG-16(信越化学工業社製)
*6:リソノール24SP(高級アルコール工業社製)
*7:ISODODECANE(IMCD社製)
【0045】
(製造方法)
A:成分(1)~(4)、(10)~(14)を100℃まで加熱し、均一に混合する。
B:Aに(16)~(17)を混合し、3本ロールミルにて均一に分散する。
C:Bに成分(5)~(9)、(15)を加え、25℃で均一に分散する。
D:Cを塗布体(ナイロンブラシ)付き容器に充填して油性マスカラを得た。
【0046】
(評価方法)
下記の(イ)~(ハ)の項目について、化粧品評価専門パネル10名による各試料の使用テストを行い、パネル各人が各々下記評価観点により評価を行い、下記絶対評価基準にて5段階に評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0047】
(評価項目):(評価観点)
(イ)カールキープ力:各試料を睫毛に塗布しパネルに通常の生活をしてもらい、塗布6時間後に、塗布直後の睫毛のカールを維持しているかどうかを目視で評価した。
(ハ)経時でのにじみのなさ:各試料を睫毛に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらい、6時間後に塗布部位周辺ににじみが観察されるかどうかを目視で評価した。
【0048】
(絶対評価基準1)
(評点) :(評価)
5 :非常に良い
4 :良い
3 :普通
2 :悪い
1 :非常に悪い
【0049】
(評価項目):(評価観点)
(ロ)化粧の落としやすさ:各試料を睫毛に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらい、6時間後に40℃のお湯で各試料が落とせるかどうかを目視で評価した。
【0050】
(絶対評価基準2)
(評点) :(評価)
5 :お湯で洗顔するとすぐに落ちる
4 :お湯でしばらく洗顔すると落ちる
3 :お湯で洗顔してこすると落ちる
2 :お湯で洗顔してこすっても落としきれない
1 :お湯で洗顔してこすっても落ちない
【0051】
(4段階判定基準)
(判定) :(評価)
◎ :4.0点より高い
○ :3.0点より高く4.0点以下
△ :2.0点より高く3.0点以下
× :2.0点以下
【0052】
表1~2の結果から、本発明の油性マスカラは、カールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの全てに優れるものであった。一方、成分(A)を含有しない比較例1は、化粧の落としやすさの点で満足のいくものが得られなかった。また、成分(A)の代わりにPEG-16マカデミアグリセリズを用いた比較例2では、カールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの点で満足のいくものが得られなかった。また成分(B)を含有しない比較例3はカールキープ力、経時でのにじみのなさの点において満足のいくものが得られなかった。また、成分(B)の代わりに(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを用いた比較例4はカールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの点で満足のいくものが得られなかった。また、成分(C)を含有しない比較例5では、カールキープ力、経時でのにじみのなさの点において満足のいくものが得られなかった。また、成分(C)の代わりにポリエチレンを用いた比較例6では、カールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの点において満足のいくものが得られなかった。
【0053】
実施例18:油性マスカラ
(成分) (%)
1.水添ポリイソブテン*8 残量
2.水添ロジン酸ペンタエリスリチル*9 3
3.ホホバワックスPEG-120エステルズ*1 7
4.キャンデリラロウ(融点72℃)*10 3
5.ミツロウ (融点63℃)*11 6
6.イソステアリン酸デキストリン*12 1
7.(アクリレーツ/VA)コポリマー 10
8.カルミン 5
9.グンジョウ 1
10.炭酸プロピレン 1
11.オクチルドデカノール 3
12.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクライト*13 4
13.セルロース(球状、平均粒子径10μm) 1
14.ラウロイルリシン*14 3
15.タルク(不定形、平均粒子径5μm) 3
16.クロルフェネシン 0.1
17.水溶性コラーゲン 0.1
18.オレンジ花水 0.1
19.ブチレングリコール 0.01
20.フェノキシエタノール 0.01
21.水 0.01
22.メチルパラベン 0.01
*8:IPソルベント1620MU(出光興産社製)
*9:エステルガムHP(荒川化学工業社製)
*10:精製キャンデリラワックスSR-3(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*11:SUPER REFINED BEESWAX(クローダジャパン社製)
*12:ユニフィルマHVY(千葉製粉社製)
*13:スメクトン SAN-P(クニミネ工業社製)
*14:アミホープLL(味の素社製)
【0054】
(製造方法)
A:成分1~6を100℃に加熱し、均一に混合する。
B:Aに8~16を混合し、三本ロールミルで分散する。
C:Bに7、17~22を加え、25℃で均一に分散する。
D:Cを塗布体(ナイロンブラシ)付き容器に充填して油性マスカラを得た。
【0055】
実施例18の油性マスカラは、カールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの全てに優れるものであった。
【0056】
実施例19:油性マスカラ
(成分) (%)
1.水添ポリイソブテン*8 残量
2.ポリメチルシルセスキオキサン*15 10
3.ホホバワックスPEG-120エステルズ*1 7
4.キャンデリラロウ(融点72℃)*10 3
5.ミツロウ (融点63℃)*11 6
6.カルナウバロウ (融点83℃)*16 1
7.パルミチン酸デキストリン*17 4
8.(アクリレーツ/VA)コポリマー 10
9.ポリプロピレン繊維 0.5
10.レーヨン繊維 1
11.ナイロン繊維 1
12.PET繊維 1
13.セルロース繊維 1
14.テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2処理黒色酸化鉄 1
15.テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2処理ベンガラ 1
16.テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2処理黄色酸化鉄 1
17.炭酸プロピレン 1
18.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクライト*13 4
19.シリカ(球状、平均粒子径5μm) 1
20.ラウロイルリシン*14 3
21.タルク(不定形、平均粒子径5μm) 3
22.クロルフェネシン 0.1
23.レモン果実エキス 0.1
24.トコフェロール 0.1
25.アンズ核油 0.1
26.オリーブ果実油 0.1
27.スクワラン 0.5
28.ジプロピレングリコール 0.5
29.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 0.8
30.ヒマワリ種子油 0.1
31.ゴマ種子油 0.1
*15:SILFORM FLEXIBLE RESIN(モメンティブ社製)
*16:カルナウバワックス(マチャードケミカル社製)
*17:レオパール KL2(千葉製粉社製)
【0057】
(製造方法)
A:成分1~7を100℃に加熱し、均一に混合する。
B:Aに14~31を混合し、三本ロールミルで分散する。
C:Bに8~13を加え、25℃で均一に分散する。
D:Cを塗布体(ナイロンブラシ)付き容器に充填して油性マスカラを得た。
【0058】
実施例19の油性マスカラは、カールキープ力、化粧の落としやすさ、経時でのにじみのなさの全てに優れるものであった。