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特開2024-95555断熱ブロックを固定するアンカー装置、およびこのアンカー装置を備えた密封熱絶縁タンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095555
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】断熱ブロックを固定するアンカー装置、およびこのアンカー装置を備えた密封熱絶縁タンク
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20240703BHJP
   B65D 90/02 20190101ALI20240703BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20240703BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20240703BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F17C3/04 A
F17C3/04 E
B65D90/02 B
B63B25/16 F
B63B25/08 N
B63B27/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023205058
(22)【出願日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】2213073
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バロー カリム
(72)【発明者】
【氏名】サルトル ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ニコラ
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA09
3E170AB29
3E170NA01
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172DA03
3E172DA23
3E172EB03
3E172EB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二次断熱絶縁バリアの寸法の現場調整をより容易かつ迅速にできるようにするアンカー装置を提供する。
【解決手段】本発明は、耐力壁(2)に対して断熱ブロック(7)を固定するためのアンカー装置(20)であって、クランプアセンブリ(30)と、ねじ付き下端部(22L)を備えるアンカーロッド(22)と、耐力壁(2)に締結するためのブッシング(23)であって、ナット(18)を受け入れるハウジングと、ナット(18)にねじ込まれるアンカーロッド(22)の下端部(22L)とを備える、ブッシング(23)と、を備える、アンカー装置(20)に関する。ハウジング(80)の寸法は、ハウジング(80)におけるアンカーロッド(22)の下端部(22L)の長手方向(LD)の挿入長を所定の変動を可能にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐力壁(2)に対して断熱ブロック(7;107;207)を固定するためのアンカー装置(20;220)であって、
- 断熱ブロック(7;107;207)と相互作用するための支圧面を有するクランプアセンブリ(30)であって、前記クランプアセンブリ(30)が、下部プレート(31)と、前記下部プレート(31)に平行な上部プレート(32)と、前記下部プレート(31)を前記上部プレート(32)に接続する接続部材(34)と、前記下部プレート(31)と前記上部プレート(32)との間に配置された間隔保持部材とを備える、クランプアセンブリ(30)と、
- 下端部(22L)と、前記下端部(22L)の反対側の上端部(22U)とを備えるアンカーロッド(22)であって、前記アンカーロッド(22)が、長手方向(LD)に延在し、前記長手方向(LD)が、前記支圧面に垂直であり、前記アンカーロッド(22)の前記上端部(22U)が、前記アンカーロッド(22)の前記下端部(22L)の方向に前記下部プレート(31)に引張力を加えることができるように前記下部プレート(31)に結合され、前記アンカーロッド(22)の前記下端部(22L)が、ねじ付きである、アンカーロッド(22)と、
- 前記耐力壁(2)に締結されるためのブッシング(23)であって、前記ブッシング(23)が、ハウジング(80)を画定する周壁部(23P)を有し、前記ハウジング(80)が、ナット(18)を受け入れ、前記アンカーロッド(22)の前記下端部(22L)が、前記ナット(18)にねじ込まれ、前記ハウジング(80)が、前記長手方向(LD)に平行な回転軸を中心とした前記ナット(18)の回転を停止させるための第1の停止面と、前記周壁部(23P)の上端部に向かう前記長手方向(LD)に平行な方向への前記ナット(18)の並進を停止させるための第2の停止面とを備えた、ブッシング(23)と、を備え、
前記ハウジング(80)における前記アンカーロッド(22)の前記下端部(22L)の前記長手方向(LD)において、挿入長の所定の長さ変動を許容するように、前記ハウジング(80)が、前記長手方向(LD)における前記ナット(18)の高さ寸法(hn)の少なくとも1.5倍に等しい前記長手方向(LD)の寸法(hh)を有する、アンカー装置(20;220)。
【請求項2】
前記ブッシング(23)が、前記周壁部(23P)の前記上端部を塞ぐ上壁(88)と、前記上壁(88)を貫通する開口部(81)とを有し、前記第2の停止面が、前記上壁(88)の下面(82)である、請求項1に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項3】
前記ハウジング(80)および前記開口部(81)が、前記ブッシング(23)に対する前記アンカーロッド(22)および前記ナット(18)のためのボールジョイント接続部を形成するように、前記開口部(81)が円錐台形壁(81F)によって画定される、請求項2に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項4】
前記支圧面が、前記下部プレート(31)の下面である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項5】
前記間隔保持部材が、前記下部プレート(31)と前記上部プレート(32)との間の最小間隔を、前記制限部に対して前記下部プレートおよび上部プレート(31,32)の限界位置において画定する制限部を備え、前記制限部が剛性部分(33)を備え、前記間隔保持部材が、前記下部プレート(31)および前記上部プレート(32)を分離位置に保つ傾向がある弾性圧縮部材(69)をさらに備え、前記接続部材(34)が、前記分離位置における前記下部プレートと前記上部プレートとの間の最大間隔を画定し、前記最大間隔が前記最小間隔よりも大きく、前記弾性圧縮部材(69)が、前記上部プレート(32)を前記下部プレート(31)に近づける傾向がある力に応答して、前記制限部に対する前記下部プレートおよび前記上部プレート(31,32)の前記限界位置に弾性的に圧縮されるように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンカー装置(220)。
【請求項6】
前記周壁部(23P)の前記上端部とは反対側の前記周壁部(23P)の下端部に向かう前記長手方向(LD)に平行な前記方向への前記ナット(18)の前記並進を制限するように、前記ブッシング(23)が、前記ハウジング(80)内で打ち抜かれる、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項7】
前記ハウジング(80)が、第1の断面を有する第1のハウジング部分(80U)、および第2の断面を有する第2のハウジング部分(80L)を備え、前記第1のハウジング部分(80U)が、前記長手方向(LD)において前記周壁部(23P)の前記上端部と前記第2のハウジング部分(80L)との間に位置し、前記第1のハウジング部分(80U)が、前記ナット(18)を受け入れ、前記ハウジング(80)が、前記第1のハウジング部分(80U)と前記第2のハウジング部分(80L)との間の界面に肩部(89)を備えるように、前記第1の断面が、前記第2の断面の最大寸法以下の最大寸法を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項8】
前記ブッシング(23)が、前記肩部(89)のレベルで前記ハウジング(80)内で打ち抜かれる、という組み合わせの、請求項6または7に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項9】
前記第1の停止面が、前記第1のハウジング部分(80U)の周面(83)である、請求項7または8に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項10】
前記第1の断面が、正六角形の形状、または長方形の形状、または2つのディスク部分によって延長された長方形の形状であり、前記ディスク部分が、前記長方形の中心線に対して対称である、請求項7から9のいずれか一項に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項11】
前記第2の断面が、円形、または正六角形の形状、または長方形の形状である、請求項7から10のいずれか一項に記載のアンカー装置(20;220)。
【請求項12】
流体を貯蔵するための密封熱絶縁タンクであって、耐力壁(2)と、前記耐力壁(2)に固定されたタンク壁(1)とを備え、前記タンク壁(1)が、厚さ方向(TD)において、前記タンクの外側から内側へ、熱絶縁バリア(3)、および前記熱絶縁バリア(3)に載置された密封膜(4)を、連続して有し、
前記熱絶縁バリア(3)が、前記耐力壁(2)上に並置された平行六面体の断熱ブロック(7;107;207)、前記密封膜(4)のための支持面を共に画定する前記断熱ブロック(7;107;207)の上面、を備え、
第1の断熱ブロック(7;107;207)が、請求項1から11のいずれか一項に記載の第1のアンカー装置(20;220)によって前記耐力壁(2)に固定され、
前記ブッシング(23)が前記耐力壁(2)に締結され、前記ナット(18)が前記第2の停止面(82)に当接するように、かつ前記ナット(18)が前記アンカーロッド(22)の前記下端部(22L)の第1の挿入長を前記ハウジング(80)内の所定の位置に保持するように、前記アンカーロッド(22)の前記下端部(22L)が、前記ナット(18)にねじ込まれ、前記第1の挿入長は、前記クランプアセンブリ(30)の上面が前記支持面と同一平面になるように選択される、
密封熱絶縁タンク。
【請求項13】
- 第2の断熱ブロック(7;107;207)が、請求項1から11のいずれか一項に記載の第2のアンカー装置(20;220)によって前記耐力壁(2)上に固定され、
- 前記第2のアンカー装置の前記ブッシング(23)が前記耐力壁(2)に締結され、前記ナット(18)が、前記ブッシング(23)の前記第2の停止面(82)に当接し、かつ前記ナットが、前記下端部(22L)の第2の挿入長を前記ブッシング(23)の前記ハウジング(80)内の所定の位置に保持するように、前記第2のアンカー装置の前記アンカーロッド(22)の前記下端部(22L)が、前記第2のアンカー装置の前記ナット(18)にねじ込まれ、前記第2のアンカー装置の前記クランプアセンブリ(30)の上面が前記支持面と同一平面になるように、前記第2の挿入長が選択され、
- 前記タンクが、前記厚さ方向(TD)において、前記耐力壁(2)上かつ前記第1の断熱ブロック(7;107;207)の下に配置された第1の間隔保持要素と、前記厚さ方向(TD)において、前記耐力壁(2)上かつ前記第2の断熱ブロック(7;107;207)の下に配置された第2の間隔保持要素とをさらに備え、
- 前記第2の間隔保持要素が、前記厚さ方向(TD)における前記第1の間隔保持要素の厚さ(e)よりも大きい前記厚さ方向(TD)における厚さ(e)を有し、
- 前記第2の挿入長が前記第1の挿入長未満である、
請求項12に記載の密封熱絶縁タンク。
【請求項14】
前記間隔保持要素が、マスチックのビーズ(13)および/または厚さシム(12)を備える、請求項13に記載の密封熱絶縁タンク。
【請求項15】
流体を輸送するための船舶(70)であって、二重船殻(72)と、請求項12から14のいずれか一項に記載のタンク(71)とを備え、前記タンクが、前記二重船殻内に配置される、船舶(70)。
【請求項16】
流体を移送するためのシステムであって、請求項15に記載の船舶(70)と、前記船舶の前記船殻内に設置された前記タンク(71)を、浮体式または陸上の貯蔵設備(77)に接続するように配置された断熱パイプ(73,79,76,81)と、前記浮体式もしくは陸上の貯蔵設備から前記船舶の前記タンクへ、または前記船舶の前記タンクから前記浮体式もしくは陸上の貯蔵設備へ、前記断熱パイプを介して流体の流れを搬送するためのポンプとを備える、システム。
【請求項17】
浮体式もしくは陸上の貯蔵設備(77)から前記船舶(70)の前記タンク(71)へ、または前記船舶(70)の前記タンク(71)から前記浮体式もしくは陸上の貯蔵設備(77)へ、断熱パイプ(73,79,76,81)を介して流体が搬送される、請求項15に記載の船舶(70)の積込みまたは積出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温流体を収容するための耐荷重構造に組み込まれた密封熱絶縁タンク、特に液化ガスを収容するための膜タンク、および特にそのようなタンク内で使用することができる機械的アンカー装置の分野に関する。
【0002】
密封熱絶縁タンクは、低温製品を貯蔵するために様々な産業で使用することができる。例えば、エネルギーの分野では、液化天然ガス(LNG)は、陸上貯蔵タンクまたは浮体式構造物上のタンクに、大気圧約-163℃で貯蔵できるメタン含有量の高い液体である。液化石油ガス(LPG)は、-50℃~0℃の温度で貯蔵できる。
【0003】
浮体式構造の場合、タンクは、液化ガスを輸送するため、または浮体式構造を推進するための燃料として使用される、液化ガスを受け取るためのものであり得る。
【背景技術】
【0004】
耐荷重構造体内に配置された液化天然ガスを貯蔵するための密封熱絶縁タンクは、例えば、国際公開第2014/096600A1号および国際公開第2019/110894A1号から知られており、その壁は、多層構造、すなわちタンクの外側から内側まで、耐荷重構造体に対して固定された二次熱絶縁バリア、二次熱絶縁バリアによって支持された二次密封膜、二次密封膜によって支持された一次熱絶縁バリア、および一次熱絶縁バリアによって支持され、タンク内に貯蔵された液化ガスと接触するのに適した一次密封膜を有する。
【0005】
各一次および二次熱絶縁バリアは、それぞれ通常は平行六面体形状を有する一次断熱ブロックおよび二次断熱ブロックのセットを備え、これらは並置され、したがってそれぞれの密封膜の支持面を形成する。断熱ブロックは、耐荷重構造体に締結され、一次および二次断熱ブロックの角に配置されたアンカー装置によって耐荷重構造体に固定される。したがって、各アンカー装置は、耐荷重構造に対してそれらを固定するために、4つの隣接する二次断熱ブロックの角部および4つの隣接する一次断熱ブロックの角部と相互作用する。
【0006】
実際には、耐荷重構造体はしばしば平坦度欠陥を有する。これらの平坦度欠陥を補償するために、マスチックのビーズが二次断熱ブロックと耐荷重構造との間に配置される。
【0007】
しかしながら、これらのマスチックのビーズは、正確にはこれらの厚さが平坦度欠陥を補償するように選択されるため、耐荷重構造上の異なる位置で異なる厚さを有する。断熱ブロック、特に二次断熱ブロックは、一般に、標準化された寸法で予め製造され、二次断熱ブロックによって形成された二次密封膜の支持面は、特に二次密封膜が早期に変形または損傷するのを防止するために、特定の許容範囲内で平坦でなければならない。
【0008】
したがって、二次熱絶縁バリアの組み立て中、二次熱絶縁バリアの寸法は、二次密封膜の支持面の平坦度公差に適合するように現場で調整されなければならない。この現場調整は、マスチックおよびアンカー装置を用いて、二次断熱ブロックに対して特に実行される。しかしながら、この現場調整は、特に、既に設置されている二次熱絶縁バリアのアンカー装置の解体を必要とし、面倒で時間がかかる可能性があり、したがってタンクの組み立てを遅くする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の背後にある1つの着想は、二次熱絶縁バリアの寸法の現場調整をより容易かつ迅速に実行できるようにする上述のアンカー装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、耐力壁に対して断熱ブロックを固定するためのアンカー装置を提供し、アンカー装置は、
- 断熱ブロックと相互作用するための支圧面を有するクランプアセンブリと、
- 下端部と、下端部の反対側の上端部とを備え、クランプアセンブリに結合されたアンカーロッドであって、アンカーロッドが長手方向に延在し、長手方向が支圧面に垂直であり、アンカーロッドの下端部がねじ付きである、アンカーロッドと、
- 耐力壁に締結されるためのブッシングであって、ブッシングが、ハウジングを画定する周壁部を有し、ハウジングが、ナットと、ねじ込まれたアンカーロッドの下端部とを受け入れ、ハウジングが、長手方向に平行な回転軸を中心としたナットの回転を停止させるための第1の停止面と、周壁部の上端部に向かう長手方向に平行な方向へのナットの並進を停止させるための第2の停止面とを備え、
ハウジングにおけるアンカーロッドの下端部の長手方向の挿入長が所定の長さ変動を許容するように、ハウジングの長手方向の寸法が、ナットの長手方向の高さ寸法の少なくとも1.5倍に等しい、ブッシングと、
を備える。
【0011】
したがって、ハウジングは、耐力壁に対するアンカーロッドの位置の現場調整を可能にする。したがって、ハウジングは、特に、耐力壁に対するクランプアセンブリの位置の現場調整を可能にする。この現場調整は、特に既に設置されている二次熱絶縁バリアのアンカー装置の解体を必要としないため、実行が容易で迅速である。例えば、クランプアセンブリの上面が二次密封膜の支持面を延長するように意図されている場合、この上面が支持面を形成する断熱ブロックの上面と同一平面であることを確実にすることは容易かつ迅速である。
【0012】
ハウジングの長手方向の寸法は、ナットの長手方向の高さ寸法の少なくとも1.5倍に等しく、上述の挿入長を十分に変動させることができる。例えば、ナットの高さ寸法は少なくとも10mmに等しく、ハウジングの長手方向の寸法は、少なくとも1.5・10mm=15mmに等しい。好ましくは、ナットの高さ寸法は12から20mmの間であり、ハウジングの長手方向の寸法は18から55mmの間であり、非常に好ましくは36から55mmの間である。
【0013】
実施形態によれば、そのようなアンカー装置は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0014】
一実施形態によれば、ブッシングは、周壁部の上端部を塞ぐ上壁と、上壁を貫通する開口部とを有し、第2の停止面は、上壁の下面である。
【0015】
一実施形態によれば、ハウジングの長手方向の寸法は、ナットの長手方向の高さ寸法の少なくとも2倍に等しい。他の実施形態によれば、ハウジングの長手方向の寸法は、ナットの長手方向の高さ寸法の1.5倍以上3.5倍以下である。
【0016】
一実施形態によれば、開口部は円錐台形壁によって画定され、その結果、ハウジングおよび開口部は、ブッシングに対してアンカーロッドおよびナットのためのボールジョイント接続部を形成する。
【0017】
一実施形態によれば、クランプアセンブリは、下部プレートと、下部プレートに平行な上部プレートと、下部プレートを上部プレートに接続する接続部材と、下部プレートと上部プレートとの間に配置された間隔保持部材とを備え、アンカーロッドの上端部は、アンカーロッドの下端部の方向に下部プレートに引張力を加えることができるように下部プレートに結合される。一実施形態によれば、支圧面は、下部プレートの下面である。
【0018】
一実施形態によれば、間隔保持部材が、下部プレートと上部プレートとの間の最小間隔を、制限部に対して下部プレートおよび上部プレートの限界位置において画定する制限部を備え、制限部が剛性部分を備え、間隔保持部材が、下部プレートおよび上部プレートを分離位置に保つ傾向がある弾性圧縮部材をさらに備え、接続部材が、分離位置において下部プレートと上部プレートとの間の最大間隔を画定し、最大間隔は最小間隔よりも大きく、弾性圧縮部材が、上部プレートを下部プレートに近づける傾向がある力に応答して、制限部に対する下部プレートおよび上部プレートの限界位置に弾性的に圧縮されるように構成される。
【0019】
これは、圧縮応力に対する熱絶縁バリアの応答を均一にする傾向がある。特に、圧縮応力に応答して熱絶縁バリアの平坦度欠陥を生成するリスクを低減する傾向があり、平坦度欠陥は、密封膜の完全性に有害となるアンカー装置に沿って応力の集中を引き起こす可能性がある。
【0020】
一実施形態によれば、ブッシングは、周壁部の上端部とは反対側の周壁部の下端部に向かう長手方向に平行な方向へのナットの並進を制限するようにハウジング内で打ち抜かれる。
【0021】
一実施形態によれば、ハウジングは、第2の停止面と周壁部の下端部との間の一定の断面を有するハウジング部分を有する。一実施形態によれば、一定の断面は、第1の停止面がハウジング部分の周面であるように選択される。
【0022】
一実施形態によれば、ハウジングは、第1の断面を有する第1のハウジング部分と、第2の断面を有する第2のハウジング部分とを備え、第1のハウジング部分は、長手方向において周壁部の上端部と第2のハウジング部分との間に位置し、第1のハウジング部分は、ナットを収容し、第1の断面は、ハウジングが第1のハウジング部分と第2のハウジング部分との間の界面に肩部を備えるように、第2の断面の最大寸法以下の最大寸法を有する。
【0023】
一実施形態によれば、ブッシングは、周壁部の下端部に向かう長手方向に平行な方向へのナットの並進を制限するように、肩部のレベルでハウジング内で打ち抜かれる。
【0024】
一実施形態によれば、第1の停止面は、第1のハウジング部分の周面である。
【0025】
一実施形態によれば、第1の断面は、正六角形の形状、または長方形の形状、または2つのディスク部分によって延長された長方形の形状であり、ディスク部分は長方形の中心線に対して対称である。
【0026】
一実施形態によれば、第2の断面は、円形、または正六角形の形状、または長方形の形状である。
【0027】
一実施形態によれば、第1の断面は、第2の断面の最大寸法よりも厳密に小さい最大寸法を有する。この場合、第1の断面および第2の断面は、同一または異なる形状とすることができる。別の実施形態によれば、第1の断面は、第2の断面の最大寸法に等しい最大寸法を有し、第1の断面および第2の断面は異なる形状であり、第1の断面の面積は、第2の断面の面積より厳密に小さく、好ましくは完全に含まれる。
【0028】
一実施形態によれば、クランプアセンブリは、二次熱絶縁バリアと相互作用するための二次クランプ部材を形成し、上部プレートは、アンカーロッドと反対方向にクランプアセンブリから突出するスタッドがねじ込まれる中央穴を有し、スタッドは、一次熱絶縁バリアと相互作用するための一次クランプ部材を支持する。
【0029】
本発明はまた、流体を貯蔵するための密封熱絶縁タンクであって、耐力壁と、耐力壁に固定されたタンク壁とを備え、タンク壁が、厚さ方向において、タンクの外側から内側へ、熱絶縁バリア、および、熱絶縁バリアに載置された密封膜を、連続して有し、
熱絶縁バリアが、耐力壁上に並置された平行六面体の断熱ブロック、密封膜のための支持面を共に画定する断熱ブロックの上面、を備え、
第1の断熱ブロックが、前述の実施形態のいずれか1つによる第1のアンカー装置によって耐力壁に固定され、
ブッシングが耐力壁に締結され、ナットが第2の停止面に当接するように、かつナットがアンカーロッドの下端部の第1の挿入長をハウジング内の所定の位置に保持するように、アンカーロッドの下端部がナットにねじ込まれ、第1の挿入長は、クランプアセンブリの上面が支持面と同一平面になるように選択される。
【0030】
一実施形態によれば、
- 第2の断熱ブロックが、前述の実施形態のいずれか1つによる第2のアンカー装置によって耐力壁に固定される。
- 第2のアンカー装置のブッシングが耐力壁に締結され、ナットがブッシングの第2の停止面に当接し、かつナットがブッシングのハウジング内の所定の位置に下端部の第2の挿入長を保持するように、第2のアンカー装置のアンカーロッドの下端部が、第2のアンカー装置のナットにねじ込まれ、第2のアンカー装置のクランプアセンブリの上面が支持面と同一平面になるように、第2の挿入長が選択される。
- タンクが、厚さ方向において、耐力壁上かつ第1の断熱ブロックの下に配置された第1の間隔保持要素と、厚さ方向において、耐力壁上かつ第2の断熱ブロックの下に配置された第2の間隔保持要素とをさらに備える。
- 第2の間隔保持要素が、厚さ方向における第1の間隔保持要素の厚さよりも大きい厚さ方向の厚さを有する。
- 第2の挿入長が、第1の挿入長未満である。
【0031】
間隔保持要素の厚さは、耐力壁の平坦度欠陥を補償するように選択される。第1の挿入長および第2の挿入長は、クランプアセンブリの上面が密封膜の支持面を延在させることを確実にしながら、間隔保持要素の厚さの変動を補償する。これは、支持面が平坦であることをより確実にする傾向があり、密封膜が早期に変形または損傷するのを防止する傾向がある。
【0032】
一実施形態によれば、厚さ方向における間隔保持要素の厚さは、許容される厚さ範囲内にある。一例では、許容される厚さ範囲は34mmの大きさを有する。別の例では、許容される厚さ範囲は17mmの大きさを有する。
【0033】
特に、一実施形態によれば、厚さ方向における間隔保持要素の厚さは、最小許容厚さと最大許容厚さとの間にあり、最大許容厚さは、最小許容厚さより厳密に大きく、最小許容厚さはゼロではない。一例では、最小許容厚さは4mmに等しく、最大許容厚さは38mmに等しい。別の例では、最小許容厚さは4mmに等しく、最大許容厚さは21mmに等しい。
【0034】
一実施形態によれば、ハウジングの長手方向の寸法は、少なくとも許容される厚さ範囲の関数として決定される。
【0035】
一実施形態によれば、長手方向におけるナットの高さを除くハウジングの寸法、言い換えれば、ハウジングの寸法とナットの高さ寸法との間の差は、許容される厚さ範囲の大きさ以上であり、これにより、アンカーロッドの長さを変えることなく挿入長を変えることによって間隔保持要素の厚さの変動を完全に補償することが可能になる。一例では、ナットの高さを除くハウジングの長手方向の寸法は、35mm以上である。別の例では、ナットの高さを除くハウジングの長手方向の寸法は、32mmから35mmの間である。
【0036】
一実施形態によれば、ナットの高さ寸法は、許容厚み範囲の大きさに等しく、長手方向におけるナットの高さを除くハウジングの寸法は、ナットの高さ寸法に等しい。一例では、ナットの高さ寸法は、15mmから18mmの間である。
【0037】
別の実施形態によれば、アンカーロッドは、所定の長さを有するアンカーロッドのセットから選択され、長手方向におけるハウジングの寸法は、許容される厚さ範囲および所定の長さの関数として決定される。
【0038】
一実施形態によれば、第2の複数の断熱ブロックは、第1の複数の断熱ブロックに隣接している。
【0039】
一実施形態によれば、間隔保持要素は、マスチックのビーズおよび/または厚さシムを含む。特に、一実施形態によれば、間隔保持要素はマスチックのビーズからなる。
【0040】
断熱ブロックは、異なる構造を有することができる。
【0041】
一実施形態によれば、1つの断熱ブロックは、カバーシートに平行であり、カバーシートから離間した底部シートと、カバーシートと底部シートとの間に配置された繊維強化ポリマー発泡体ブロックとを備え、アンカー装置の下部プレートは、ポリマー発泡体ブロックにクランプ力を加えることなく、底部シートと直接的または間接的に相互作用する。例えば、アンカー装置の下部プレートは、例えば合板から作られたスペーサ、柱および/またはバテンなどの剛性要素によって底部シートと相互作用することができる。
【0042】
一実施形態によれば、1つの断熱ブロックは、底部シートと、底部シートに平行であり互いに離間した中間シートおよびカバーシートと、カバーシートと中間シートとの間、および中間シートと底部シートとの間にそれぞれ配置された2つの繊維強化ポリマー発泡体ブロックとを、連続して、備える。アンカー装置の下部プレートは、角ゾーンで中間シートと直接相互作用する。
【0043】
一実施形態によれば、1つの断熱ブロックが、カバーシートに平行であり、カバーシートから離間している底部シートと、カバーシートと底部シートとの間に配置されている繊維強化ポリマー発泡体ブロックとを備え、発泡体ブロックが、底部シートとカバーシートとの間に延在し、矩形の幾何学的エンベロープおよび複数の凹部を画定する複数の側面を有し、各凹部が、2つの隣接する側面の間に延在し、一対の補強材が、底部シートに剛性に接続され、底部シートの一対の側面のうちの一方の側面に沿って延在し、補強材が、一対の側面の側面に沿って、断熱ブロックの厚さ方向に垂直な方向においてより大きい寸法を有し、各補強材が、断熱ブロックの厚さ方向において底部シートから突出し、発泡体ブロックの1つの側面と自由に接触する表面を有する。一例では、アンカー装置の下部プレートは、カバーシートに面する補強材によって凹部内に保持されたピラーなどの剛性要素の上面と相互作用する。別の例では、アンカー装置の下部プレートは、カバーシートに面する補強材の上面と相互作用する。
【0044】
一実施形態によれば、
- 熱絶縁バリアは二次熱絶縁バリアであり、断熱ブロックは二次断熱ブロックであり、密封膜は二次密封膜である。
- タンク壁は、二次密封膜に載置された一次熱絶縁バリアと、一次熱絶縁バリアに載置された一次密封膜とをさらに備え、タンク内に収容された流体と接触するのに適しており、一次熱絶縁バリアは、二次断熱ブロックのうちの1つにそれぞれ重ねられた一次断熱ブロックを備える。
- スタッドは、二次密封膜を密封可能に貫通し、一次クランプ部材は、複数の二次断熱ブロックに重ね合わされた複数の一次断熱ブロックに対して耐力壁の方向に押圧されたままにされ、それにより、複数の一次断熱ブロックを耐力壁に対して固定する。
【0045】
一実施形態によれば、流体は、液化天然ガス、液化石油ガス、または液化エチレンなどの液化ガスである。
【0046】
そのようなタンクは、例えばLNGを貯蔵するための陸上の貯蔵設備の一部を形成することができ、または沿岸もしくは沖合の浮体式構造体、特にメタン運搬船、浮体式貯蔵再ガス化ユニット(FSRU)、浮体式生産貯蔵積出しユニット(FPSO)もしくは他の構造体に設置できる。
【0047】
一実施形態によれば、流体を輸送するための船舶は、二重船殻と、二重船殻内に配置された前述のタンクとを備える。
【0048】
一実施形態によれば、本発明はまた、流体を移送するためのシステムを提供し、本システムは、上述の船舶と、船舶の船殻内に設置されたタンクを浮体式または陸上の貯蔵設備に接続するように配置された断熱パイプと、断熱パイプを介して浮体式または陸上の貯蔵設備から船舶のタンクへ、または船舶のタンクから浮体式または陸上の貯蔵設備へ流体の流れを搬送するためのポンプとを備える。
【0049】
一実施形態によれば、本発明はまた、そのような船舶を積込みまたは積出しするための方法であって、流体/液化ガスが、断熱パイプを介して、浮体式もしくは陸上の貯蔵設備から船舶のタンクへ、または船舶のタンクから浮体式もしくは陸上の貯蔵設備へ搬送される、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明は、添付の図面を参照して、単に非限定的な例示として提供される、本発明の複数の特定の実施形態の以下の説明から、よりよく理解され、その他の目的、詳細、特徴および利点がより明らかになるであろう。
【0051】
図1】タンク壁の切欠斜視図である。
【0052】
図2図1の矢印IIに沿ったタンク壁の側面図であり、左側の図に第1の実施形態によるアンカー装置を示し、右側の図に同一のアンカー装置を示すが、マスチックのビーズの厚さが大きいことの視点から見ると、アンカーロッドの挿入長が異なる。
【0053】
図2A】ブッシングのナットおよびハウジングの寸法を説明するための、アンカー装置のブッシングおよびナットの概略図である。
【0054】
図3】第1の変形実施形態による、アンカー装置のブッシングの斜視図である。
【0055】
図4】第2の変形実施形態による、アンカー装置のブッシングの断面図である。
【0056】
図5】アンカー装置の位置を示す、図1および図2のタンク壁の概略上面図である。
【0057】
図6】第2の実施形態によるアンカー装置を示す、図2と同様の側面図である。
【0058】
図7図1のタンク壁内で使用することができる、別の断熱ブロックの斜視図である。
【0059】
図8図1のタンク壁内で使用することができる、さらに別の断熱ブロックの斜視図である。
【0060】
図9】メタン運搬船タンクおよびこのタンクを積込み/積出しするためのターミナルの切欠概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
慣例により、「下部」および「上部」という用語は、図1に示す水平壁のように、それぞれタンクの外側または内側に向かって、別の要素に対する要素の相対位置を定義するために使用される。しかしながら、以下の説明は、重力場におけるその向きにかかわらず、任意の壁に適用可能である。
【0062】
図1は、液化天然ガス(LNG)などの液化流体を貯蔵するための密封熱絶縁タンクの壁1の多層構造を示す。タンク壁1は、耐力壁2に固定された二次熱絶縁バリア3と、二次熱絶縁バリア3に載置された二次密封膜4と、二次密封膜4に載置された一次熱絶縁バリア5と、タンク内に収容された液化天然ガスと接触するのに適した一次密封膜6とを、タンクの外側から内側へと厚さ方向TDに、連続して備える。
【0063】
耐力壁2は、船舶の船殻または二重船殻によって、特に形成できる。耐力壁2は、一般には多面体形状であるタンクの一般的な形状を画定する複数の壁を備える耐荷重構造の一部を、典型的には形成する。
【0064】
二次熱絶縁バリア3は、複数の二次断熱ブロック7を備え、二次断熱ブロック7は、以下で詳細に説明するアンカー装置20によって耐力壁2に固定される。二次断熱ブロック7は、通常は平行六面体形状を有し、平行な列に配置される。
【0065】
二次密封膜4は、隆起縁部を有する金属ストレーキ8の連続層を備える。金属ストレーキ8は、二次断熱ブロック7のカバーシートに形成された溝9に締結された平行な溶接支持体に、隆起縁部によって溶接される。金属ストレーキ8は、例えば、Invar(登録商標)、すなわち、膨張係数が典型的には1.2.10-6~2.10-6-1である鉄とニッケルとの合金から製造される。
【0066】
一次熱絶縁バリア5は、通常は平行六面体形状を有し、二次断熱ブロック7と同一の長さおよび幅寸法を有する、複数の一次断熱ブロック11を備える。一次断熱ブロック11の各々は、タンク壁1の厚さ方向に整列した二次断熱ブロック7の1つと整列して配置されている。
【0067】
一次密封膜6は、様々な方法で製造することができる。ここでは、これは、隆起縁部を有する金属ストレーキ8の連続層を備える。二次密封膜4の場合と同様に、金属ストレーキ8は、それらの隆起縁部によって、一次断熱ブロック11のカバーシートに形成された溝に締結された平行な溶接支持体に溶接される。
【0068】
図1では、耐力壁2の平坦度欠陥を補償するための厚さシム12およびマスチックのビーズ13を示すために、二次断熱ブロック7が省略されている。国際公開第2018069585号に記載されているように、位置決めシム(図示せず)を設けることもできる。
【0069】
アンカー装置20は、二次断熱ブロック7および一次断熱ブロック11の四隅に配置されることが好ましい。二次断熱ブロック7および一次断熱ブロック11の各スタックは、4つのアンカー装置20によって耐力壁2に固定される。さらに、各アンカー装置20は、4つの隣接する二次断熱ブロック7の角部、および4つの隣接する一次断熱ブロック11の角部と相互作用する。
【0070】
図2は、第1の実施形態によるアンカー装置20のさらなる詳細を二次断熱ブロック7と共に示す。
【0071】
ここで、二次断熱ブロック7は、底部シート14とカバーシート15との間に挟まれた断熱ポリマー発泡体層16を備える。底部シート14およびカバーシート15は、例えば合板から作製される。断熱ポリマー発泡体層16は、底部シート14およびカバーシート15に接着されている。断熱ポリマー発泡体は、特に、場合により繊維で補強されたポリウレタン系発泡体であってもよい。
【0072】
図5は、より具体的には、一実施形態による4つの隣接する二次断熱ブロック7の角の間のアンカー装置20の位置決めを上から見て示している。アンカー装置20は、クランプアセンブリ30の輪郭によって表されている。各二次断熱ブロック7の底部シート14は、アンカー装置20を受け入れる矩形煙突の形態の通路55をクリアするために、その角ゾーンに切り欠き52を含むことが分かる。
【0073】
二次断熱ブロック7のカバーシート15および断熱ポリマー発泡体層16は、底部シート14の角部54を露出させる矩形煙突の形態の凹部53を含む。角部54は、例えば、スペーサ50、または角柱などの底部シート14に堅固に接続された剛性要素によって、アンカー装置20を直接的または間接的に支持するのに適している。
【0074】
アンカー装置20は、クランプアセンブリ30とアンカーロッド22とを備える。アンカーロッド22の下端部22Lは、以下でより詳細に説明するブッシング23内に収容される。アンカーロッド22は、タンク壁1の厚さ方向TDと平行な長手方向LDに延び、隣り合う二次断熱ブロック7の間を通る。
【0075】
クランプアセンブリ30は、下部プレート31と、間隔保持ブロック33と、上部プレート32とを、厚さ方向TDにおいて、連続して備える。下部プレート31および上部プレート32は、耐力壁2に平行な2つの対向する長辺を備える、通常は平行六面体形状を有する。間隔保持ブロック33の輪郭も長方形であり、同じ寸法である。変形例として、クランプアセンブリ30の輪郭形状は、例えば六角形または円形など、異なっていてもよい。
【0076】
下部プレート31は、アンカーロッド22によって耐力壁2の方向に、4つの隣接する二次断熱ブロック7の各々の角部54に押し付けられた状態に保たれる。図示の実施形態では、スペーサ50は、下部プレート31と各二次断熱ブロック7の角部54との間に配置され、したがって底部シート14にクランプ力を伝達する。
【0077】
アンカーロッド22の上端部22Uは、下部プレート31の中央穴を通って間隔保持ブロックに作られたハウジング45に係合される。ナット42は、アンカーロッド22の上端部22Uに形成されたねじ山と相互作用して、下部プレート31を耐力壁2の方向に固定する。
【0078】
図示の実施形態では、アンカー装置20は、1つまたは複数のベルビル・スプリング・ワッシャをさらに備える。ばねワッシャは、ナット42と下部プレート31との間のアンカーロッド22に装着され、これにより、二次断熱ブロック7が耐力壁2に弾性的に固定されることが保証される。また、アンカーロッド22の上端部には局所的に係止部材が溶接されており、アンカーロッド22が長手方向LDに平行な回転軸周りに回転することを防止し、ナット42の緩みを防止することができる。
【0079】
間隔保持ブロック33は、タンク壁1の厚さ方向TDにそれを貫通し、下部プレート31および上部プレート32を間隔保持ブロック33の2つの対向する面に接続する2つの締結ねじ34が係合される2つの穴をさらに備える。具体的には、締結ねじ34の下端部はねじ付きで、下部プレート31のねじ孔にねじ込まれている。図示されていない方法で、分割されたロックナットを、下部プレート31の上面に対して各締結ねじ34の下端部にねじ込んで、締結ねじ34を下部プレート31内の所定の位置にロックすることができる。図示されていない方法で、このスプリットロックナットを下部プレート31の下面に当接させることもできる。
【0080】
反対側の端部において、各締結ねじ34は、上部プレート32の穴に収容された、例えば皿穴または平坦な、頭部36を備える。
【0081】
上述したように、アンカーロッド22の下端部22Lは、ブッシング23に収容されている。ブッシング23のベースは、4つの隣接する二次断熱ブロック7の角ゾーンの間の通路55の中央位置で、例えば溶接によって、耐力壁2に締結される。ブッシング23は、ブッシング23にハウジング80を画定する周壁部23Pを有する。
【0082】
また、ハウジング80には、ナット18とアンカーロッド22の下端部22Lとが収容されている。下端部22Lには、下端部22Lにナット18をねじ込むことができるように、ねじ付きである。より具体的には、ナット18は、アンカー装置20が作動しているときに、少なくともアンカーロッド22によって貫通され、ハウジング80に収容された軸方向停止面82に当接するまで、下端部22Lにねじ込まれる。加えて、ハウジング80は、長手方向LDに平行な回転軸を中心としたナット18の回転を停止させるための回転停止面83を備える。
【0083】
図2では、ハウジング80が、長手方向LDにおいて、より多くのまたはより少ない下端部22Lを、ハウジング80に挿入することを可能にするのに十分な長さを有することも分かる。言い換えると、長手方向LDにけるハウジング80の長さは、下端部22Lのハウジング80への挿入長を所定の変動が許可されるように選択されている。この長さは、以下ではhhと示され、図2Aに示されている。
【0084】
図2の2つの図では、図1を参照して上述したマスチックのビーズ13も見ることができる。マスチックのビーズ13は、厚さ方向TDにおいて耐力壁2上および二次断熱ブロック7の下に配置される。
【0085】
上述したように、マスチックのビーズ13は、耐力壁2の平坦度欠陥を補償するためのものである。結果として、マスチックのビーズ13は、正確にはこれらの厚さが平坦度欠陥を補償するように選択されるため、耐力壁2上の異なる位置で厚さ方向TDに異なる厚さを有することができる。
【0086】
図2の2つの図は、このような場合を示しており、図2の左側の図に示す耐力壁2上の位置A1では、二次断熱ブロック7の下のマスチックのビーズ13は厚さeを有し、図2の右側の図に示す耐力壁2上の別の位置A2では、二次断熱ブロック7の下のマスチックのビーズ13は厚さeを有し、e>eである。耐力壁2上のこれら2つの位置A1およびA2において、二次断熱ブロック7はアンカー装置20によって固定される。二次断熱ブロック7は、例えば二次断熱ブロック7が標準化された寸法で予め製造されているため、厚さ方向TDの高さ寸法は同一である。しかし、位置A2のアンカー装置20は、位置A1のアンカー装置20よりも、下端部22Lのハウジング80への挿入長が短い。したがって、厚さ方向TDにおけるクランプアセンブリ30と耐力壁2との間の距離は、位置A1におけるアンカー装置20よりも位置A2におけるアンカー装置20の方が大きい。
【0087】
さらに図2の2つの図を参照すると、前述の挿入長は、2つのアンカー装置20のそれぞれの上部プレート32の上面が、隣接する二次断熱ブロック7のカバーシート15の上面と同一平面になるように選択される。
【0088】
具体的には、タンク壁1の組み立て中に、マスチックのビーズ13、ナット18およびアンカーロッド22が設けられた二次断熱ブロック7およびブッシング23が図2に示すように配置された後、組み立てを担当する作業者は、
- アンカーロッド22をナット18にねじ込みまたはねじ込み解除することによって前述の挿入長を調整する。このねじ込みまたはねじ込み解除は、回転停止面83が長手方向LDに平行な回転軸を中心としたナット18の回転を停止させるという事実によって、補助されることに留意されたい。
- 上部プレート32の上面が隣接する二次断熱ブロック7のカバーシート15の上面と同一平面であるかどうかをチェックする。
- そうでなければ、挿入長を再び調整するか、そうであれば、クランプアセンブリ30をアンカーロッド22に締結することによって、アンカー装置20の組み立てを終了する。
これらのステップを実行するために、作業者は、これらのステップの実行中にまだ最終的に設置されていないクランプアセンブリ30を除いて、既に設置されているタンク壁1の要素を解体する必要がないことが理解されよう。作業者は単にアンカーロッド22をねじ込みまたはねじ込み解除する必要があり、異なるアンカーロッド22を提供する必要も、クランプアセンブリ30を修正する必要もないため、挿入長の調整は作業者が実行するのが容易で迅速であることも理解されよう。
【0089】
上述した挿入長を十分に変動させるために、ハウジング80の長さhhは、ナット18の長手方向LDの高さの少なくとも1.5倍である。ナット18の高さは、以下にhnで示され、図2Aに示されている。
【0090】
ハウジング80の長さhhは、少なくともマスチックのビーズ13の許容される厚さ範囲の関数として決定される。
【0091】
一変形例によれば、作業者は、長手方向LDの長さが同じアンカーロッド22のみを使用することができる。この場合、マスチックのビーズ13の厚さの許容範囲内の変動は、上述の挿入長の変動によって十分に補償できる。したがって、ハウジング80の長手方向LDの長さhhとナット18の高さhnとの差、言い換えれば、量hh-hn(図2Aを参照)は、マスチックのビーズ13の許容される厚さ範囲の大きさに等しいか、または場合によってはこの大きさよりもわずかに大きい(例えば、1mmまたは2mmだけ大きい)。
【0092】
第1寸法例:
- ナット18の高さ:hn=18mm;
- マスチックのビーズ13は、4mmの最小許容厚さおよび38mmの最大許容厚さを有する。したがって、マスチックのビーズ13の許容される厚さ範囲の大きさは34mmである。
- ハウジング80の長さ:hh=52mm。
【0093】
第2寸法例:
- ナット18の高さが15から18mmの間である。
- マスチックのビーズ13は、4mmの最小許容厚さおよび21mmの最大許容厚さを有する。したがって、マスチックのビーズ13の許容される厚さ範囲の大きさは17mmである。
- ハウジング80の長さhhは、32mmから35mmの間である。
【0094】
別の変形例によれば、作業者は、いくつかの異なる長さを有するアンカーロッド22のセットにアクセスできる。この場合、マスチックのビーズ13の厚さの変動は、アンカーロッド22の長さの作業者による選択によって部分的に、および前述の挿入長の変動によって部分的に、補償できる。次いで、ハウジング80の長さhhは、マスチックのビーズ13の許容される厚さ範囲の大きさの関数として、およびアンカーロッドのセットのアンカーロッド22の長さの関数として決定される。特定の一例では、アンカーロッドのセットのアンカーロッド22の長さは、互いに所定の増分だけ異なる。
【0095】
いずれにせよ、これらの変形例のうちの1つまたは他の変形例によれば、上部プレート32の上面が二次断熱ブロック7のカバーシート15の上面と同一平面にあることを保証することにより、上部プレート32の上面が、二次断熱ブロック7のカバーシート15の上面によって形成される仮想面PSを延長することを保証する。仮想面PSの位置は、図2に太い破線で示されている。仮想面PSは、二次密封膜4の支持面を形成する。上部プレート32の上面が二次断熱ブロック7のカバーシート15の上面と同一平面にあることを保証することにより、平坦な仮想面PSが平坦になることをより保証し、これは、二次密封膜4が早期に変形または損傷するのを防止する傾向がある。
【0096】
ここまで、耐力壁2の平坦度欠陥を補償するために、マスチックのビーズ13の厚さが可変である場合について説明した。変形例として、厚さシム12の厚さは可変であり、長手方向LDにおけるハウジング80の長さは、厚さシム12の許容される厚さ範囲とは別に、上述のように決定される。
【0097】
タンク壁1は、単一膜タンクを製造するために、二次熱絶縁バリア3および二次密封膜4に限定することができる。一次熱絶縁バリア5および一次密封膜6が存在する場合、アンカー装置20も一次ステージを備える。この目的のために、上部プレート32は、その中心にねじ穴を有し、その中にスタッド27のねじ付きベースが取り付けられる。スタッド27は、二次密封膜4の金属ストレーキ8に形成された孔を貫通する。スタッド27は、二次密封膜4を密封するために、孔の周囲に溶接されたカラーを有する。一次断熱ブロック11は、例えば国際公開第2021/239712A1号に記載されているように、スタッド27によって下にある2つの二次断熱ブロック7に固定される。
【0098】
スペーサ50は、アンカーロッド22がそれを通過することを可能にする中央貫通孔51を有する限り、多数の方法で製造することができる。例えば、スペーサ50は、国際公開第2021/239712A1号に記載されているように製造できる。
【0099】
図3は、ブッシング23の変形実施形態を示す。
【0100】
ブッシング23は、周壁部23Pの下端部に、任意選択的に傾斜した、円形カラー29を有する。カラー29は、ブッシング23を耐力壁2に溶接によって締結することを可能にする。
【0101】
ブッシング23は、周壁部23Pの上端部を塞ぐ上壁88を有する。上壁88には、開口部81が形成されている。上壁88は、平坦な上面88Fを有し、任意選択的に、開口部81とは反対側のその外縁88Aに傾斜している。開口部81は、ハウジング80内に出現する。軸方向停止面82は、上壁88の下面によって形成される。変形例として、軸方向停止面82は、ハウジング80内の別の場所、例えば、上壁88の下に位置するハウジング80の内側の突出部に形成できる。
【0102】
開口部81は、円錐台形壁81Fによって画定される。円錐台形壁81Fは、開口部81の断面がブッシング23の上端部からハウジング80に向かって連続的に減少するように構成される。図2および図3を参照すると、結果として、ハウジング80および開口部81は、ブッシング23に対してアンカーロッド22およびナット18のためのボールジョイント接続部を形成することが理解されよう。
【0103】
ここで、ハウジング80は、その上端部を除いて一定の断面を有し、ハウジング80の断面が開口部81に向かって連続的に減少するように、軸方向停止面82が傾斜している。例えば、軸方向停止面82の傾斜は、ナット18が軸方向停止面82に当接したとき、ナット18と軸方向停止面82との間の接触面を最大にするために、ナット18の傾斜した外縁の傾斜に対応することができる。ここで、ハウジング80の一定の断面とは、ナット18の六角形断面に相当する正六角形断面であり、ハウジング80の周面が回転停止面83を形成している。変形例として、ハウジング80の一定の断面は、長方形の断面、または2つのディスク部分によって延長された長方形の形状の断面とすることができ、ディスク部分は長方形の中心線に対して対称である。
【0104】
図示のように、ブッシング23は、直円筒形の外形を有する。言い換えると、周壁部23Pは、直円筒形の外形を有している。変形例として、ブッシング23は、異なる外形を有することができる。
【0105】
図4は、ブッシング23の変形実施形態を示す。図4において、図2および図3の要素と同一の要素は同じ参照符号を有し、再度説明しない。
【0106】
この変形実施形態では、ハウジング80は、異なる断面を有する2つのハウジング部分を備える。より具体的には、ハウジング80は、第1のハウジング部分80Uおよび第2のハウジング部分80Lを備える。第1のハウジング部分80Uは、長手方向LDにおいて開口部81と第2のハウジング部分80Lとの間に位置している。また、第1のハウジング部分80Uの断面の最大寸法は、厳密には、第2のハウジング部分80Lの断面の最大寸法よりも小さい。したがって、ハウジング80は、ハウジング部分80Uと80Lとの間の界面に肩部89を有する。肩部89は、長手方向LDに対して垂直である。
【0107】
第1のハウジング部分80Uの長手方向LDの高さは、ナット18の高さhnよりも大きい。ナット18が軸方向停止面82に対して当接したとき、ナット18は、第1のハウジング部分80Uに完全に収容される。ブッシング23をハウジング80内で肩部89のレベルで打ち抜くことによって、肩部89の塑性変形を引き起こすことができ、これにより、第1のハウジング部分80Uの断面が局所的に減少して、長手方向LDに平行な方向に、周壁部23Pの下端部に向かって、したがって耐力壁2に向かってナット18の並進を制限する。例えば、打ち抜きは、軸方向停止面82に対するナット18の限界位置に対して、周壁部23Pの下端部に向かうナット18の並進を約1~5mm制限する。図4の一点鎖線の矢印は、ブッシング23がハウジング80内で打ち抜かれる方向および向きを示す。具体的には、作業者は、周壁部23Pの下端部に設けられたハウジング80の開口部からナット18をハウジング80内に挿入し、ナット18を軸方向停止面82に当接した後、打ち抜き作業を行い、カラー29によってブッシング23を耐力壁2に溶接する。
【0108】
第1のハウジング部分80Uは、ここでは正六角形の断面である一定の断面を有し、これはナット18の正六角形の断面に対応し、その結果、第1のハウジング部分80Uの周面は回転停止面83を形成する。変形例として、第1のハウジング部分80Uの一定の断面は、長方形の形状または2つのディスク部分によって延長された長方形の形状の断面とすることができ、ディスク部分は長方形の中心線に対して対称である。
【0109】
第2のハウジング部分80Lは、ここでは円形断面である一定の断面を有する。変形例として、第2のハウジング部分80Lの一定の断面は、正六角形または長方形の断面とすることができる。
【0110】
変形例として、第1のハウジング部分80Uの断面の最大寸法は、第2のハウジング部分80Lの断面の最大寸法に等しくすることができる。この場合、これらの断面は異なる形状を有し、第1のハウジング部分80Uの断面の面積は、第2のハウジング部分80Lの断面の面積より厳密に小さく、好ましくは完全に含まれ、したがって肩部89は、ハウジング部分80Uと80Lとの間の界面に存在する。
【0111】
図4を参照して上述した打ち抜き作業は、ナット18の耐力壁2に向かう並進を制限するように、図3に示すブッシング23のハウジング80内で実行することもできる。同様に、この場合、作業者は、周壁部23Pの下端部に設けられたハウジング80の開口部からナット18をハウジング80内に挿入し、ナット18を軸方向停止面82に当接し、打ち抜き作業を行った後、カラー29を用いて、ブッシング23を耐力壁2に溶接する。
【0112】
図6は、第2の実施形態によるアンカー装置220を二次断熱ブロック7と共に示す。図6では、前述の図の要素と類似または同一の要素は同じ参照符号を有し、再度説明しない。
【0113】
アンカー装置220は、弾性要素69が2つの締結ねじ34に係合され、頭部36が上部プレート32の穴46内を摺動するのに適しているという点で、アンカー装置20とは異なる。
【0114】
穴46の底部に対する頭部36の限界位置は、プレート32と31との間に最大間隔が存在する位置を画定する。この最大間隔の寸法は、下部プレート31と上部プレート32との間の締結ねじ34の有効長さによって規定される。間隔保持ブロック33の長手方向LDの厚さは、下部プレート31と上部プレート32との間の最小間隔を規定する。この最小間隔は、下部プレート31および上部プレート32が間隔保持ブロック33当接する限界位置において達成される。
【0115】
最小間隔と最大間隔との寸法差は、長手方向LDにおける穴46内の頭部36の摺動遊びに相当する。その寸法は、タンク壁の構造およびタンクの動作条件の関数として決定され、その結果、上部プレート32は、タンクの動作中に落下したとき、特に、動作中にタンク壁1によって受けられる海のうねりによって生成される熱収縮ならびに静的および動的な圧力および変形の影響下で、二次断熱ブロック7のカバーシート15に概ね追従することができる。
【0116】
弾性要素69は、静止状態で、図6に示す分離位置にプレート32および31を保持する。より具体的には、弾性要素69は、間隔保持ブロック33と上部プレート32との間の上述の寸法差に等しいクリアランスを形成する。上部プレート32に加えられる圧力に応答して、弾性要素69は圧縮され、間隔保持ブロック33の上面に対する上部プレート32の下面の限界位置まで、このクリアランスを徐々に減少させる。
【0117】
ここで、弾性要素69は、締結ねじ34を受け入れる孔の大径ステージ19内に収容され、ステージ19の底部の肩部を押圧する。限界位置では、弾性要素69はステージ19内に完全に収容されている。
【0118】
好ましくは、締結ねじ34は、静止位置において弾性要素69の圧縮プレストレスを生成するように構成され、その結果、上部プレート32は落下することなく中程度の荷重を受けることができる。
【0119】
弾性要素69の剛性は、タンク壁の構造およびタンクの動作条件の関数として決定されるため、上部プレート32は、タンクの動作中に、特に、動作中にタンク壁1によって受けられる熱収縮、ならびに静圧および動圧の影響下で落下したときに、二次断熱ブロック7のカバーシート15に概ね追従することができる。
【0120】
弾性要素69により、アンカー装置220は、図6に示す分離位置と限界位置との間で弾性変形する能力を有する。これは、圧縮応力に対する熱絶縁バリア3の応答を均一にする傾向がある。特に、圧縮応力に応答して二次熱絶縁バリア3の平坦度欠陥を生成するリスクを低減する傾向があり、この平坦度欠陥は、二次密封膜4の完全性に有害となるアンカー装置220に沿って応力の集中を引き起こす可能性がある。
【0121】
ここで、弾性要素69は、圧縮ばね、例えばつる巻きばねである。変形例として、弾性要素69は、例えばばねワッシャの形態で異なって製造することができる。弾性要素69は、特にベルビルワッシャ、好ましくは互いに反転した位置に連続して配置されたベルビルワッシャのスタック、好ましくは奇数、例えば5個であってもよく、その結果、スタックの両端は、ベルビルワッシャの最大直径で構成される。
【0122】
さらに、弾性要素69および/またはねじ頭部36は、例えば国際公開第2021/239712A1号に記載されているように、同じ機能を実行するために異なる位置に配置することができる。
【0123】
以上、二次断熱ブロック7の構造を例示した。別の実施形態では、二次断熱ブロック7は、別の一般的な構造、例えば国際公開第2012/127141A1号に記載されている構造を有することができる。次いで、二次断熱ブロック7は、底部シート、カバーシート、および、タンク壁1の厚さ方向TDにおいて、底部シートとカバーシートとの間に延在し、パーライト、グラスウールまたはロックウールなどの熱絶縁パッキンで充填された複数の区画を画定する耐荷重ウェブ、を備えるケースの形態で製造される。
【0124】
二次断熱ブロックの別の実施形態が、参照符号107で図7に示されている。図7では、前述の図の要素と類似または同一の要素は、100だけ増加した同じ参照符号を有し、再度説明しない。ここで、断熱ポリマー発泡体層16は、例えば合板から作られた中間シート10が接着されることによって、分離された2つの下部層16bおよび上部層16aに分割される。上部層16aの長さは、下部層16bの長さよりも短く、中間シート10の2つの長手方向端部を有する縁部10aを露出させる。
【0125】
剛性ピラー17は、下部層16bの四隅に形成された凹部において、中間シート10と底部シート14との間で下部層16bの厚さ方向に延びている。剛性ピラー17は、アンカー装置20または220のクランプ力を吸収するために縁部10aと部分的に一直線にあり、その下部プレート31はここで縁部10aに直接適用することができる。そのような二次断熱ブロックのさらなる詳細は、国際公開第2014/096600A1号に見出すことができる。
【0126】
二次断熱ブロックのさらに別の実施形態が、参照符号207で図8に示されている。図8では、前述の図の要素と類似または同一の要素は、200だけ増加した同じ参照符号を有し、再度説明しない。断熱ポリマー発泡体層216は、底部シート214とカバーシート215との間に延在し、矩形の幾何学的エンベロープを画定する複数の側面216fと、複数の凹部240とを有し、各凹部240は、2つの隣接する側面216fの間に延在する。図8ではその一方のみが見える、2つの補強材220は、底部シート214に堅固に接続され、底部シート214の2つの平行な側面214bに沿って延在する。補強材220は、側面214bに沿って、断熱ブロック207の厚さ方向に垂直な方向により大きい寸法を有する。各補強材220は、断熱ブロック207の厚さ方向に底部シート214から突出し、断熱ポリマー発泡体層216の側面216fと自由に接触する表面を有する。
【0127】
剛性ピラー217は、凹部217f内に保持され、カバーシート215に面する支圧面216を有する。アンカー装置20または220の下部プレート31は、任意選択的にスペーサによって支圧面216を押圧する。変形例として、剛性ピラー217は省略され、アンカー装置20または220の下部プレート31は、補強材220のカバーシート215に面する支圧面を押圧する。そのような二次断熱ブロックのさらなる詳細は、国際公開第2021/0239767A1号に見出すことができる。
【0128】
一次断熱ブロック11は、様々な方法で、例えば、二次断熱ブロック7のように底部シートとカバーシートとの間に挟まれた断熱ポリマー発泡体層の形態で製造することができる。
【0129】
次いで、底部シートは、二次密封膜4のストレーキ8の隆起縁部を受け入れるための溝を備える。カバーシートはまた、溶接支持体を受け入れるための溝を備える。
【0130】
以上、一次断熱ブロック11の構造を例示した。別の実施形態では、一次断熱ブロック11は、別の一般的な構造、例えば国際公開第2012/127141A1号に記載されている構造を有することができる。
【0131】
1つまたは2つの密封膜のみを有するタンク壁を製造するための上記の技術は、異なるタイプの容器で使用することもでき、例えば、陸上設備またはメタン運搬船もしくは他の船舶などの浮体式構造で、液化天然ガス(LNG)用の二重膜タンクを形成するために使用することもできる。
【0132】
図9を参照すると、メタン運搬船70の切欠図は、船舶の二重船殻72内に組み立てられた、通常は角柱形状を有する密封熱絶縁タンク71を示す。タンク71の壁は、タンクに収容されたLNGと接触するのに適した一次密封膜と、一次密封膜と船舶の二重船殻72との間に配置された二次密封膜と、一次密封膜と二次密封膜との間、および二次密封膜と二重船殻72との間にそれぞれ配置された2つの熱絶縁バリアとを含む。
【0133】
それ自体公知の方法で、LNGの貨物をタンク71からまたはタンクに移送するために、船舶の上部デッキに配置された積込み/積出しパイプ73を、適切なコネクタによって海上または港湾ターミナルに接続することができる。
【0134】
図9は、積込みおよび積出しステーション75、海中パイプライン76、および陸上設備77を備える海上ターミナルの一例を示す。積込みおよび積出しステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78とを備える固定された沖合設備である。可動アーム74は、積込み/積出しパイプ73に連結可能な断熱されたフレキシブルホース79の束を保持する。方向づけ可能な可動アーム74は、あらゆるサイズのメタン運搬船に適している。図示されていない接続パイプラインが、タワー78の内側に延びている。積込みおよび積出しステーション75は、陸上設備77からまたは陸上設備にメタン運搬船70を荷積みおよび荷降ろしすることを可能にする。後者は、液化ガス貯蔵タンク80と、海中パイプライン76によって積込みまたは積出しステーション75に接続された接続パイプライン81とを備える。海中パイプライン76は、積込みまたは積出しステーション75と陸上設備77との間で液化ガスを長距離、例えば5kmにわたって移送することを可能にし、これにより、積込みおよび積出し作業中にメタン運搬船70を海岸から長距離に保つことを可能にする。
【0135】
液化ガスを移送するのに必要な圧力を発生させるために、船舶70に搭載されたポンプ、および/または陸上設備77に設けられたポンプ、および/または積込みおよび積出しステーション75に設けられたポンプが実装される。
【0136】
本発明をいくつかの特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明は決してそれに限定されず、記載された手段のすべての技術的等価物およびそれらの任意の組み合わせが本発明の範囲内にある場合、それらを含むことは明らかである。
【0137】
動詞「含む(include)」または「備える(comprise)」およびその活用形の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素またはステップの存在を除外しない。
【0138】
特許請求の範囲において、括弧の間のいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈することはできない。
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】