(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095559
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】カラー画像表示積層体およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20240703BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20240703BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20240703BHJP
B42D 25/41 20140101ALI20240703BHJP
B42D 25/435 20140101ALI20240703BHJP
【FI】
G02B5/18
G03H1/02
B42D25/328 100
B42D25/41
B42D25/435
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208023
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2022211355
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023133124
(32)【優先日】2023-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 正志
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 達也
(72)【発明者】
【氏名】樽見 英朗
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
2K008
【Fターム(参考)】
2C005HA03
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005JB01
2C005JB09
2C005JB17
2C005KA02
2C005KA14
2C005LA31
2C005LB07
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA50
2H249AA60
2H249CA01
2H249CA08
2H249CA15
2H249CA22
2K008FF27
(57)【要約】
【課題】 洗練されたカラー画像を表示するカラー画像表示積層体を提供すること。
【解決手段】 本発明のカラー画像表示積層体は、少なくとも、互いに異なる色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた複数の微細凹凸層と、複数の微細凹凸層の微細凹凸をそれぞれ覆うように配置された複数の反射層とを積層してなる、カラー表示積層体であって、複数の反射層のうち、カラー表示積層体が観察される観察側に最も近い第1の反射層の一部を除去することによって第1の開口セグメントを形成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
互いに異なる色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた複数の微細凹凸層と、
前記複数の微細凹凸層の微細凹凸をそれぞれ覆うように配置された複数の反射層とを積層してなる、カラー表示積層体であって、
前記複数の反射層のうち、前記カラー表示積層体が観察される観察側に最も近い第1の反射層の一部を除去することによって第1の開口セグメントを形成したことを特徴とする、カラー画像表示積層体。
【請求項2】
前記複数の反射層のうち、前記第1の反射層の次に前記観察側に近い第2の反射層の一部を除去することによって第2の開口セグメントを形成し、
前記第1の開口セグメントのうちの少なくとも一部と、前記第2の開口セグメントのうちの少なくとも一部とは、前記複数の微細凹凸層のうち、前記第2の反射層によって覆われた微細凹凸を有する第2の微細凹凸層を挟んで対向することを特徴とする、請求項1に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項3】
前記複数の微細凹凸層および前記複数の反射層はそれぞれ少なくとも3層あり、
前記複数の反射層のうち、前記第2の反射層の次に前記観察側に近い第3の反射層の一部を除去することによって第3の開口セグメントを形成し、
前記第2の開口セグメントのうちの少なくとも一部と、前記第3の開口セグメントのうちの少なくとも一部とは、前記複数の微細凹凸層のうち、前記第3の反射層によって覆われた微細凹凸を有する第3の微細凹凸層を挟んで対向することを特徴とする、請求項2に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項4】
前記観察側から最も遠い層として、印刷層をさらに備え、
前記観察側から前記印刷層まで積層方向に沿って、前記反射層が除去された第4の開口セグメントが連続することを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項5】
前記観察側から最も遠い層として、レーザー発色層をさらに備え、
前記観察側から前記レーザー発色層まで積層方向に沿って、前記反射層が除去された第5の開口セグメントが連続することを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項6】
前記複数の微細凹凸層および前記複数の反射層はそれぞれ少なくとも3層あり、
前記少なくとも3層の微細凹凸層は、赤色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、青色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、緑色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層とを含むことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項7】
前記複数の微細凹凸層および前記複数の反射層はそれぞれ少なくとも3層あり、
前記少なくとも3層の微細凹凸層は、シアンを呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、マゼンダを呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、イエローを呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層とを含むことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項8】
前記複数の微細凹凸層のそれぞれに設けられた前記微細凹凸は、回折格子からなることを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項9】
前記複数の微細凹凸層のそれぞれに設けられた前記微細凹凸は、3次元再生像を形成する計算機ホログラムの位相変調素子であることを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項10】
前記複数の反射層のうち、少なくとも1つの反射層は、前記複数の微細凹凸層のうち、相対する前記微細凹凸層と接することを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項11】
任意の層間に、剥離層および接着層のうち、少なくとも何れかを配置したことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項12】
前記任意の層間に配置された層は、前記複数の微細凹凸層よりも低い赤外線透過率を有することを特徴とする、請求項11に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項13】
前記複数の微細凹凸層のうち少なくとも一層が、他の微細凹凸層よりも低い赤外線透過率を有することを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項14】
前記印刷層は、可視光を吸収する黒色を呈することを特徴とする、請求項4に記載のカラー画像表示積層体。
【請求項15】
請求項1に記載のカラー画像表示積層体における前記第1の反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程を含む
ことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法。
【請求項16】
請求項2に記載のカラー画像表示積層体における前記第2の反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程を含む
ことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法。
【請求項17】
請求項2に記載のカラー画像表示積層体における前記第1の反射層の一部を除去する工程と、前記第2の反射層の一部を除去する工程とを、レーザービームの照射により同時に実施することを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法。
【請求項18】
請求項3に記載のカラー画像表示積層体における前記第3の反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程を含む
ことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法。
【請求項19】
請求項3に記載のカラー画像表示積層体における前記第2の反射層の一部を除去する工程と、前記第3の反射層の一部を除去する工程とを、レーザービームの照射により同時に実施することを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法。
【請求項20】
請求項5に記載のカラー画像表示積層体におけるすべての前記反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程と、
前記レーザー発色層のうち、前記観察側から前記レーザー発色層まで積層方向に沿って、前記反射層が連続して除去された部分に対応する領域を、レーザービームの照射により改質する工程と
を含むことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法。
【請求項21】
請求項5に記載のカラー画像表示積層体における前記第1の反射層の一部を除去する工程と、前記改質する工程とを、レーザービームの照射により同時に実施することを特徴とする、請求項20に記載のカラー画像表示積層体の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンデマンドな表示技術が施されたカラー画像表示積層体およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、パスポートやIDカードなどの個人認証に用いられる表示体には、表示体の所有者に紐付けられた情報、例えば、顔画像がオンデマンドに付与されている。
【0003】
オンデマンドなカラー画像を特徴とした、特許文献1に記載の媒体がある。特許文献1は、回折格子によるカラー画像を表示する構造体に関する。1つの画素に対応するセルが赤色、青色、緑色のサブセルからなり、各サブセルの回折格子を覆う光反射層の選択的な除去と、マーキング層の黒色化により、任意のオンデマンドカラー画像を実現する。
【0004】
また、特許文献2は、ポリカーボネート基板に支持された回折構造と、反射増強コーティングを含むオーバーレイに関する記載である。ホログラム上の金属層の一部がレーザーにより除去され、透明部分を形成することで、下にある情報を確認できるデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018―120010号公報
【特許文献2】特開2009―248571号公報
【特許文献3】特開2007―225639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の媒体では、サブセル内を高精度に印字する技術が必要となる。低精度のアライメントで各サブセルを印字する場合、印字領域がずれると、各色の混合比が変わる。そのため、目的の配色通りのカラー画像を作製することは困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載の媒体では、ホログラムと、ホログラムの下の情報は異なる光学現象による組合せで媒体のデザインを成している。そのため、作製されるデザインは限定的である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記課題を鑑みてなされたものであり、洗練されたカラー画像を表示するカラー画像表示積層体およびその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じる。
【0010】
第1の態様は、少なくとも、互いに異なる色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた複数の微細凹凸層と、複数の微細凹凸層の微細凹凸をそれぞれ覆うように配置された複数の反射層とを積層してなる、カラー表示積層体であって、複数の反射層のうち、カラー表示積層体が観察される観察側に最も近い第1の反射層の一部を除去することによって第1の開口セグメントを形成したことを特徴とする、カラー画像表示積層体である。
【0011】
第2の態様は、複数の反射層のうち、第1の反射層の次に観察側に近い第2の反射層の一部を除去することによって第2の開口セグメントを形成し、第1の開口セグメントのうちの少なくとも一部と、第2の開口セグメントのうちの少なくとも一部とは、複数の微細凹凸層のうち、第2の反射層によって覆われた微細凹凸を有する第2の微細凹凸層を挟んで対向することを特徴とする、第1の態様のカラー画像表示積層体である。
【0012】
第3の態様は、複数の微細凹凸層および複数の反射層はそれぞれ少なくとも3層あり、複数の反射層のうち、第2の反射層の次に観察側に近い第3の反射層の一部を除去することによって第3の開口セグメントを形成し、第2の開口セグメントのうちの少なくとも一部と、第3の開口セグメントのうちの少なくとも一部とは、複数の微細凹凸層のうち、第3の反射層によって覆われた微細凹凸を有する第3の微細凹凸層を挟んで対向することを特徴とする、第2の態様のカラー画像表示積層体である。
【0013】
第4の態様は、観察側から最も遠い層として、印刷層をさらに備え、観察側から印刷層まで積層方向に沿って、反射層が除去された第4の開口セグメントが連続することを特徴とする、第1乃至3の何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0014】
第5の態様は、観察側から最も遠い層として、レーザー発色層をさらに備え、観察側からレーザー発色層まで積層方向に沿って、反射層が除去された第5の開口セグメントが連続することを特徴とする、第1乃至3の何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0015】
第6の態様は、複数の微細凹凸層および複数の反射層はそれぞれ少なくとも3層あり、少なくとも3層の微細凹凸層は、赤色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、青色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、緑色を呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層とを含むことを特徴とする、第1乃至3の何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0016】
第7の態様は、複数の微細凹凸層および複数の反射層はそれぞれ少なくとも3層あり、少なくとも3層の微細凹凸層は、シアンを呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、マゼンダを呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層と、イエローを呈するのに寄与する微細凹凸を設けられた微細凹凸層とを含むことを特徴とする、第1乃至3の何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0017】
第8の態様は、複数の微細凹凸層のそれぞれに設けられた微細凹凸は、回折格子からなることを特徴とする、第1乃至3の何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0018】
第9の態様は、複数の微細凹凸層のそれぞれに設けられた微細凹凸は、3次元再生像を形成する計算機ホログラムの位相変調素子であることを特徴とする、第1乃至3の何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0019】
第10の態様は、複数の反射層のうち、少なくとも1つの反射層は、複数の微細凹凸層のうち、相対する微細凹凸層と接することを特徴とする、第1乃至3の何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0020】
第11の態様は、任意の層間に、剥離層および接着層のうち、少なくとも何れかを配置したことを特徴とする、第1乃至3のうち何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0021】
第12の態様は、任意の層間に配置された層は、複数の微細凹凸層よりも低い赤外線透過率を有することを特徴とする、第11の態様のカラー画像表示積層体である。
【0022】
第13の態様は、複数の微細凹凸層のうち少なくとも一層が、他の微細凹凸層よりも低い赤外線透過率を有することを特徴とする、第1乃至3のうち何れかの態様のカラー画像表示積層体である。
【0023】
第14の態様は、印刷層は、可視光を吸収する黒色を呈することを特徴とする、第4の態様のカラー画像表示積層体である。
【0024】
第15の態様は、第1の態様のカラー画像表示積層体における第1の反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程を含むことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法である。
【0025】
第16の態様は、第2の態様のカラー画像表示積層体における第2の反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程を含むことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法である。
【0026】
第17の態様は、第2の態様のカラー画像表示積層体における第1の反射層の一部を除去する工程と、第2の反射層の一部を除去する工程とを、レーザービームの照射により同時に実施することを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法である。
【0027】
第18の態様は、第3の態様のカラー画像表示積層体における第3の反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程を含むことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法である。
【0028】
第19の態様は、第3の態様のカラー画像表示積層体における第2の反射層の一部を除去する工程と、第3の反射層の一部を除去する工程とを、レーザービームの照射により同時に実施することを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法である。
【0029】
第20の態様は、第5の態様のカラー画像表示積層体におけるすべての反射層の一部の除去を、レーザービームの照射により実施する工程と、レーザー発色層のうち、観察側からレーザー発色層まで積層方向に沿って、反射層が連続して除去された部分に対応する領域を、レーザービームの照射により改質する工程とを含むことを特徴とする、カラー画像表示積層体の作製方法である。
【0030】
第21の態様は、第5の態様のカラー画像表示積層体における第1の反射層の一部を除去する工程と、改質する工程とを、レーザービームの照射により同時に実施することを特徴とする、第20の態様のカラー画像表示積層体の作製方法である。
【発明の効果】
【0031】
第1の態様によれば、観察者は複数の微細凹凸層の微細凹凸に起因し形成される洗練されたカラー画像を観察できる。
【0032】
第2の態様によれば、観察者は複数の微細凹凸層の微細凹凸に起因し形成される洗練されたカラー画像と、複数の微細凹凸層の下層の情報との両方、あるいは、1層目の微細凹凸層の微細凹凸に起因し形成される洗練されたカラー画像と、1層目の微細凹凸層の下層の情報との両方を観察できる。
【0033】
第3の態様によれば、少なくとも3層の微細凹凸層に起因してカラー画像が形成されるため、観察者は、少なくとも3層のそれぞれの微細凹凸の呈する色によって定まる色域の洗練されたカラー画像と、微細凹凸層の下層の情報との両方を観察できる。
【0034】
第4の態様によれば、観察者は、複数の微細凹凸層の微細凹凸に起因し、印刷層と組み合わさって形成される洗練されたカラー画像を観察できる。
【0035】
第5の態様によれば、観察者は、複数の微細凹凸層の微細凹凸に起因され、さらに、レーザー発色層の色と組み合わされて形成される洗練されたカラー画像を観察できる。
【0036】
第6の態様によれば、観察者は、赤色、青色、緑色の混色によって形成される洗練されたカラー画像を観察できる。
【0037】
第7の態様によれば、観察者は、シアン、マゼンダ、イエローの混色によって形成される洗練されたカラー画像を観察できる。
【0038】
第8の態様によれば、カラー画像表示積層体の観察角度を知る観察者のみが、任意のカラー画像を観察できため、高い偽造防止効果を実現できる。
【0039】
第9の態様によれば、観察者は、カラー画像積層体に光源を照射すると、カラー画像とは異なる別のカラー画像を3次元で観察できるようになり、特異な光学効果を実現できる。
【0040】
第10の態様によれば、ノイズの少ない美麗なカラー画像を得ることができる。
【0041】
第11の態様によれば、製造時の取り回しに優れたカラー画像表示積層体を実現できる。
【0042】
第12および第13の態様によれば、反射層の有無の階調に優れ、洗練されたカラー画像を実現することができる。
【0043】
第14の態様によれば、観察者は、コントラストに優れた、洗練されたカラー画像を観察できる。
【0044】
第15および第16の態様によれば、カラー画像表示積層体の優れたオンデマンド加工性を実現できる。
【0045】
第17の態様によれば、一度のレーザー光の走査で同じ領域の反射層を除去することができるので、加工のタクトタイムを低減することが可能となる。
【0046】
第18の態様によれば、第1および第2の反射層の除去のレーザーの加工条件を大幅に変えることなく、第3の反射層を除去するための加工を実施できる。
【0047】
第19の態様によれば、第2の反射層と第3の反射層とを同時に除去できるので、加工のタクトタイムを低減することが可能となる。
【0048】
第20の態様によれば、反射層を除去するためのレーザー加工条件と、レーザー発色層を改質するためのレーザー加工条件をそれぞれ設定することができ、洗練されたカラー画像を得ることができる。
【0049】
第21の態様によれば、加工のタクトタイムを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るカラー画像表示積層体を含む媒体を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体の別の構成例を示す側断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらに別の構成例を示す側断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらにまた別の構成例を示す側断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体の別の構成例を示す側断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらに別の構成例を示す側断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらにまた別の構成例を示す側断面図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の第3の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【
図10B】
図10Bは、本発明の第3の実施形態に係るカラー画像表示積層体の別の構成例を示す側断面図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の第3の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらに別の構成例を示す側断面図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の第3の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらに別の構成例を示す側断面図である。
【
図13A】
図13Aは、第4の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【
図13B】
図13Bは、第4の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【
図14A】
図14Aは、本発明の第4の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの変形例を示す側断面図である。
【
図14B】
図14Bは、本発明の第4の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの変形例を示す側断面図である。
【
図15A】
図15Aは、本発明の第5の実施形態に係るカラー画像表示積層体の各構成例を示す側断面図である。
【
図15B】
図15Bは、本発明の第5の実施形態に係るカラー画像表示積層体の各構成例を示す側断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第5の実施形態に係るカラー画像表示積層体の各構成例を示す側断面図である。
【
図17A】
図17Aは、本発明の第5の実施形態に係るカラー画像表示積層体の各構成例を示す側断面図である。
【
図17B】
図17Bは、本発明の第5の実施形態に係るカラー画像表示積層体の各構成例を示す側断面図である。
【
図18】
図18は、微細凹凸層に設けられる微細凹凸が回折格子である場合に、観察場所毎に異なるカラー画像の見え方を示す図である。
【
図19】
図19は、微細凹凸が3次元再生像を形成する計算機ホログラムの位相変調素子であるカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【
図20】
図20は、本発明の各実施形態に係るカラー画像表示積層体を配置したIDカードを示す斜視図である。
【
図21】
図21は、観察者側から見たカラー画像表示積層体の一部を模式表示する平面図である。
【
図22】
図22は、従来のカラー画像表示積層体を含むIDカード媒体を示す平面図である。
【
図23】
図23は、改良された従来のカラー画像表示積層体を含むIDカード媒体を示す平面図である。
【
図24】
図24は、赤緑青の微小単色体が2次元的に配置されることによって構成される顔イメージを説明するための概念図である。
【
図25】
図25は、第6の実施形態に係るカラー画像表示積層体の作製方法の一例を説明する図である。
【
図26】
図26は、ディメタによって描画されたカラー画像の例、カラー画像の一部の拡大図、およびカラー画像の一部の積層断面の写真である。
【
図27】
図27は、反射層の厚みと、レーザー光強度との相関関係を示す図である。
【
図28】
図28は、各層間に接着層を設けたカラー画像表示積層体の層構造を示す図である。
【
図29】
図29は、各層間に接着層を設けていないカラー画像表示積層体の層構造を示す図である。
【
図30】
図30は、各層間に接着層を設けたカラー画像表示積層体の層構造の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0052】
図1は、本発明の実施形態に係るカラー画像表示積層体を含む媒体を示す平面図である。
【0053】
図1では、カラー画像表示積層体10がIDカード11に含まれ、カラー画像としてIDカードの所有者の顔画像が表示される例を示している。
【0054】
図1に示すIDカード11に含まれるカラー画像表示積層体10のいくつかの構成例について以下に説明する。
【0055】
[第1の実施形態:2層の微細凹凸層を備えたカラー画像表示積層体]
図2は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【0056】
本発明のカラー画像表示積層体はいずれの実施形態においても、少なくとも、互いに異なる色を呈するのに寄与する微細凹凸dを設けられた複数の微細凹凸層cと、各微細凹凸層cの微細凹凸dをそれぞれ覆うように配置された複数の反射層rとを積層してなる。微細凹凸dは、回折格子とすることができる。また、微細凹凸dは、3次元再生像を形成する計算機ホログラムの位相変調素子とすることもできる。また、微細凹凸dは、回折格子や位相変調素子に限らず、回折や干渉、共鳴、屈折、反射、吸収、散乱などの現象により微細な凹凸により色を表示する構造とすることができる。
【0057】
本実施形態では、このようなカラー画像表示積層体の一実施形態として、
図2に例示するように、2層の微細凹凸層c1,c2を備えたカラー画像表示積層体10Zについて説明する。なお、本明細書において、英文字の後に続く数字は、層を区別するために使用される。
【0058】
図2に例示されるカラー画像表示積層体10Zは、図中上側である観察者k側から、微細凹凸層c1、反射層r1、微細凹凸層c2、および反射層r2を含む4つの層が順に積層されている。このように、カラー画像表示積層体10Zには、2層の微細凹凸層c1,c2が含まれている。
【0059】
微細凹凸層c1に設けられた微細凹凸d1と、微細凹凸層c2に設けられた微細凹凸d2とは、互いに異なる色を呈するのに寄与する光学効果を発現する。
【0060】
反射層r1,r2はそれぞれ、微細凹凸d1,d2を覆うように配置される。ただし、反射層r1,r2のうち、観察者k側に近い反射層である反射層r1の一部は除去され、開口セグメントj1となっている。また、反射層r1および開口セグメントj1と、微細凹凸層c2とは、相対(あいたい)するものの、直接接してはいない。つまり、接触していない。
【0061】
このような構成のカラー画像表示積層体10Zに、図中上側から光を入射させ、入射光が反射した反射光を観察者kが観察する場合、開口セグメントj1からは、微細凹凸層c2と反射層r2との界面にて作用した射出光が主に観察者kに届き、反射層r1からは、微細凹凸層c1と反射層r1との界面にて作用した射出光が観察者kに届く。
【0062】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体の別の構成例を示す側断面図である。
【0063】
図3に示すカラー画像表示積層体10Aは、カラー画像表示積層体10Zの変形例であり、カラー画像表示積層体10Zと同様の積層構造を有しているが、カラー画像表示積層体10Zでは、反射層r1および開口セグメントj1と、微細凹凸層c2とが直接接していないのに対して、カラー画像表示積層体10Aでは、反射層r1および開口セグメントj1と、微細凹凸層c2とが直接接していることが異なる。すなわち、反射層r1および開口セグメントj1は、相対する微細凹凸層c2の面と接触している。
【0064】
このような構成のカラー画像表示積層体10Aでも、図中上側から光を入射させた場合に、観察者kが観察する反射光は、開口セグメントj1を介して届く、微細凹凸層c2と反射層r2との界面にて作用した射出光と、反射層r1から届く、微細凹凸層c1と反射層r1との界面にて作用した射出光である。
【0065】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらに別の構成例を示す側断面図である。
【0066】
図4に示すカラー画像表示積層体10Bも、カラー画像表示積層体10Zの変形例であり、カラー画像表示積層体10Zと同様の積層構造を含んでいる。また、カラー画像表示積層体10Zと同様に、反射層r1および開口セグメントj1は、微細凹凸層c2と接触していない。
【0067】
しかしながら、カラー画像表示積層体10Bは、カラー画像表示積層体10Zとは異なり、観察者k側から最も遠い層として、印刷層pを備えている。印刷層pは、相対する反射層r2および開口セグメントj2とは直接接していない。すなわち、接触していない。
【0068】
さらに、反射層r2の一部が除去され、開口セグメントj2となっている。開口セグメントj2は、微細凹凸層c2を挟んで開口セグメントj1と少なくも一部が対向するように位置している。これによって、観察者k側から印刷層pまで積層方向(図中z方向)に沿って、開口セグメントj1、j2が連続する。
【0069】
これによって、観察者kは、微細凹凸層c1の上側(図中上側)から、開口セグメントj1、j2を介して、印刷層pの色を知覚したり、あるいは、印刷層pに付与(印刷)された情報を観察できる。
【0070】
例えば、印刷層pが黒色であれば、微細凹凸d1および微細凹凸d2による呈色とのコントラストが上がり、微細凹凸層c1,c2で形成されるカラー画像の視認性を高める効果が得られる。
【0071】
また、開口セグメントj2と、開口セグメントj1とは、微細凹凸層c2を挟んで少なくとも一部が対向していればよい。したがって、開口セグメントj2と、開口セグメントj1とのy方向長さは、必ずしも同一でなくてもよい。同様に、開口セグメントj2と、開口セグメントj1とのx方向長さも、必ずしも同一でなくてもよい。
【0072】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらにまた別の構成例を示す側断面図である。
【0073】
図5に示すカラー画像表示積層体10Cは、カラー画像表示積層体10Bの変形例であり、カラー画像表示積層体10Bと同様の積層構造を含んでいるが、カラー画像表示積層体10Bでは、反射層r1および開口セグメントj1と、微細凹凸層c2とが直接接していないのに対して、カラー画像表示積層体10Cでは、反射層r1および開口セグメントj1と、微細凹凸層c2とが直接接している。また、カラー画像表示積層体10Cはさらに、観察者k側から最も遠い層として、レーザー発色層aを備えている。レーザー発色層aは、相対する反射層r2および開口セグメントj2と直接接している。すなわち、接触している。
【0074】
カラー画像表示積層体10Cも、観察者k側からレーザー発色層aまで積層方向(図中z方向)に沿って、開口セグメントj1、j2が連続しているので、観察者kは、微細凹凸層c1の上側(図中上側)から、開口セグメントj1、j2を介して、レーザー発色層aの色を知覚したり、あるいは、レーザー発色層aに付与(印刷)された情報を観察できる。
【0075】
レーザー発色層aは、レーザー光を照射することによって改質される。例えば、レーザー発色層aが、レーザー光の照射による改質により黒色BKを呈する場合、レーザー光のパワーや、周波数、走査の速度などの条件により、その濃度を可変とすることもできる。また、開口セグメントj2の一部を、濃い黒色とし、別の一部を、薄い黒色、つまり、グレーとすることもできる。
【0076】
[第2の実施形態:3層の微細凹凸層を備えたカラー画像表示積層体]
図6は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【0077】
本実施形態では、カラー画像表示積層体の一実施形態として、3層の微細凹凸層c1,c2,c3を備えたカラー画像表示積層体について説明する。
【0078】
図6に例示されるカラー画像表示積層体10Dは、図中上側である観察者k側から、微細凹凸層c1、反射層r1、微細凹凸層c2、反射層r2、微細凹凸層c3、および反射層r3の6つの層が順に積層されている。このように、カラー画像表示積層体10Dには、3層の微細凹凸層c1,c2,c3が含まれている。
【0079】
カラー画像表示積層体10Dは、カラー画像表示積層体10Zの構成に、さらに、微細凹凸層c3および反射層r3を追加した変形例でもある。反射層r2および開口セグメントj2と、微細凹凸層c3とは、相対(あいたい)するものの、直接接してはいない。つまり、接触していない。
【0080】
また、カラー画像表示積層体10Dは、微細凹凸d1によって観察者kに青色Bを呈し、微細凹凸d2によって観察者kに緑色Gを呈し、微細凹凸d3によって観察者kに赤色Rを呈する。これによってRGBの3原色を実現できる。同様に、微細凹凸d3によってシアンを呈し、微細凹凸d2によってマゼンダを呈し、微細凹凸d1によってイエローを呈するようにもできる。これによって、CMYKの3原色も実現できる。
【0081】
反射層r1,r2,r3のうち、最も観察者k側の微細凹凸層c1の微細凹凸d1を覆う反射層r1の一部は除去され、開口セグメントj1となっている。また、反射層r1,r2,r3のうち、微細凹凸層c1の次に観察者k側にある微細凹凸層c2の微細凹凸d2を覆う反射層r2の一部も除去され、開口セグメントj2となっている。開口セグメントj2と、開口セグメントj1とは、微細凹凸層c2を挟んで少なくとも一部が対向している。なお、反射層r1,r2,r3のうち、観察者k側から最も遠い反射層r3はまったく除去されていない。また、反射層r1と微細凹凸層c2、および反射層r2と微細凹凸層c3とは、それぞれ相対しているものの、直接接してはいない。つまり、接触していない。
【0082】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体の別の構成例を示す側断面図である。
【0083】
図7に示すカラー画像表示積層体10Eは、カラー画像表示積層体10Dの変形例であり、カラー画像表示積層体10Dと同様の積層構造を有しているが、カラー画像表示積層体10Dでは、反射層r1および開口セグメントj1と、微細凹凸層c2とが直接接しておらず、また、反射層r2および開口セグメントj2と、微細凹凸層c3とも直接接していないのに対して、カラー画像表示積層体10Eでは、反射層r1および開口セグメントj1と、微細凹凸層c2とが直接接しており、反射層r2および開口セグメントj2と、微細凹凸層c3とも直接接していることが異なる。
【0084】
カラー画像表示積層体10Eでもまた、カラー画像表示積層体10Dと同様に、微細凹凸d1によって観察者kに青色Bを呈し、微細凹凸d2によって観察者kに緑色Gを呈し、微細凹凸d3によって観察者kに赤色Rを呈することによってRGBの3原色を実現したり、微細凹凸d3によってシアンを呈し、微細凹凸d2によってマゼンダを呈し、微細凹凸d1によってイエローを呈するようことこれによって、CMYKの3原色も実現できる。
【0085】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらに別の構成例を示す側断面図である。
【0086】
図8に示すカラー画像表示積層体10Fは、カラー画像表示積層体10Dとカラー画像表示積層体10Bの変形例であり、カラー画像表示積層体10Dの観察者k側から最も遠い層に、カラー画像表示積層体10Bのように、印刷層pを備えた構成をしている。さらに、反射層r3の一部が除去され、開口セグメントj3となっている。開口セグメントj3は、開口セグメントj2と、微細凹凸層c3を挟んで対向するように位置している。印刷層pは、相対する反射層r3および開口セグメントj3とは直接接していない。
【0087】
観察者k側から印刷層pまで積層方向(図中z方向)に沿って、開口セグメントj1、j2、j3が連続している。これによって、観察者kは、微細凹凸層c1の上側(図中上側)から、開口セグメントj1、j2、j3を介して、印刷層pの色を知覚したり、あるいは、印刷層pに付与(印刷)された情報を観察できる。
【0088】
カラー画像表示積層体10Fでもまた、カラー画像表示積層体10D、10Eと同様に、RGBや、CMYKの3原色を実現できる。
【0089】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらにまた別の構成例を示す側断面図である。
【0090】
図9に示すカラー画像表示積層体10Gは、カラー画像表示積層体10Eとカラー画像表示積層体10Cの変形例であり、カラー画像表示積層体10Eの観察者k側から最も遠い層に、カラー画像表示積層体10Cのように、レーザー発色層aを備えた構成をしている。さらに、カラー画像表示積層体10Fと同様、反射層r3の一部が除去され、開口セグメントj3となっている。開口セグメントj3は、開口セグメントj2と、微細凹凸層c3を挟んで対向するように位置している。レーザー発色層aは、相対する反射層r3および開口セグメントj3と直接接している。
【0091】
観察者k側から印刷層pまで積層方向(図中z方向)に沿って、開口セグメントj1、j2、j3が連続している。したがって、観察者kは、微細凹凸層c1の上側(図中上側)から、開口セグメントj1、j2、j3を介して、レーザー発色層aの色を知覚したり、あるいは、レーザー発色層aに付与(印刷)された情報を観察できる。
【0092】
カラー画像表示積層体10Gでも、カラー画像表示積層体10Cと同様に、開口セグメントj3へ入射した光は、主としてレーザー発色層aによる寄与を受けることができ、例えば、レーザー発色層aが、黒色BKを呈していれば、この領域での反射率は低下する。
【0093】
カラー画像表示積層体10Gでもまた、カラー画像表示積層体10D、10E、10Fと同様に、RGBや、CMYKの3原色を実現できる。
【0094】
[第3の実施形態:剥離層や接着層等を備えたカラー画像表示積層体(1)]
図10Aは、本発明の第3の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【0095】
本実施形態では、第1および第2の実施形態で説明した構成にさらに、保護層h、剥離層i、接着層s、およびベース層bのような他の層も備えたカラー画像表示積層体について説明する。
【0096】
図10Aに例示されるカラー画像表示積層体10Hは、その一例の構成を示す側断面図であり、図中上側である観察者k側から、保護層h、剥離層i1、微細凹凸層c1、反射層r1、接着層s1、剥離層i2、微細凹凸層c2、反射層r2、接着層s2、印刷層p、ベース層bの順に積層されている。なお、図示してないが、接着層s2と、印刷層pとの間に、別の層を設けてもよい。
【0097】
剥離層i1および接着層s1はいずれも、微細凹凸層c1よりも低い赤外線透過率を有しても良い。同様に、剥離層i2および接着層s2はいずれも、微細凹凸層c2よりも低い赤外線透過率を有しても良い。
【0098】
図10Bは、本発明の第3の実施形態に係るカラー画像表示積層体の別の構成例を示す側断面図である。
【0099】
図10Bに例示されるカラー画像表示積層体10Iは、図中上側である観察者k側から、保護層h、接着層s1、反射層r1、微細凹凸層c1、剥離層i1、接着層s2、反射層r2、微細凹凸層c2、剥離層i2、印刷層p、ベース層bの順に積層されている。なお、図示していないが、剥離層i2と印刷層pとの間に、別の層を設けてもよい。
【0100】
カラー画像表示積層体10Hとカラー画像表示積層体10Iとでは、それぞれ図中上側である観察者k側から入射した光が、微細凹凸層c1,c2で作用するまでの有効光路長が異なる。また、作製する手順も異なる。
【0101】
図11Aおよび
図11Bは、本発明の第3の実施形態に係るカラー画像表示積層体のさらに別の構成例を示す側断面図である。
【0102】
図11Aに例示するカラー画像表示積層体10Jは、カラー画像表示積層体10Hの変形例であって、カラー画像表示積層体10Hの図中最下層にあるベース層bとそれに隣接する印刷層pとの2層を、1層のレーザー発色層aで置き換えた構成をしている。
【0103】
図11Bに例示するカラー画像表示積層体10Kは、カラー画像表示積層体10Iの変形例であって、カラー画像表示積層体10Iの図中最下層にあるベース層bとそれに隣接する印刷層pとの2層を、1層のレーザー発色層aで置き換えた構成をしている。
【0104】
カラー画像表示積層体10J、10Kともに、開口セグメントj1と開口セグメントj2とは、途中にある層を挟んで対向しているので、観察者k側からレーザー発色層aまで積層方向(図中z方向)に沿って、開口セグメントj1、j2が連続するようになる。これによって、カラー画像表示積層体10J、10Kの上側(図中上側)から、レーザー発色層aへ向けてレーザー光を照射した場合、レーザー光は、開口セグメントj1、j2を介して、レーザー発色層aへ到達し、レーザー発色層aにおいて、レーザー光によって照射された部分は、黒色BKに変色する。
【0105】
【0106】
図12Aに例示するカラー画像表示積層体10Rは、カラー画像表示積層体10Jの接着層s2とレーザー発色層aとの間に、図中上側から剥離層i3、微細凹凸層c3、反射層r3、および接着層s3を備えている。微細凹凸層c3には、微細凹凸d3が設けられている。さらに、反射層r3の一部が除去され、開口セグメントj3となっている。開口セグメントj3は、開口セグメントj2と、途中にある層を挟んで対向するように位置している。
【0107】
図12Bに例示するカラー画像表示積層体10Sは、カラー画像表示積層体10Kの剥離層i2とレーザー発色層aとの間に、図中上側から接着層s2、微細凹凸層c3、反射層r3、および剥離層i3を備えている。微細凹凸層c3には、微細凹凸d3が設けられている。さらに、反射層r3の一部が除去され、開口セグメントj3となっている。開口セグメントj3は、開口セグメントj2と、途中にある層を挟んで対向するように位置している。
【0108】
カラー画像表示積層体10R、10Sともに、微細凹凸d1によって観察者kに青色Bを呈し、微細凹凸d2によって観察者kに緑色Gを呈し、微細凹凸d3によって観察者kに赤色Rを呈することができる。これによってRGBの3原色を実現できる。また、例えば、微細凹凸d3によってシアンを呈し、微細凹凸d2によってマゼンダを呈し、微細凹凸d1によってイエローを呈するようにもできる。これによって、CMYKの3原色も実現できる。
【0109】
カラー画像表示積層体10R、10Sともに、開口セグメントj2と開口セグメントj3とは、対向しているので、観察者k側からレーザー発色層aまで積層方向(図中z方向)に沿って、開口セグメントj1、j2、j3が連続するようになる。これによって、カラー画像表示積層体10R、10Sの上側(図中上側)から、レーザー発色層aへ向けてレーザー光を照射した場合、レーザー光は、開口セグメントj1、j2、j3を介して、レーザー発色層aへ到達し、その部分のレーザー発色層aは黒色BKに変色する。
【0110】
[第4の実施形態:剥離層や接着層を備えたカラー画像表示積層体(2)]
第4の実施形態も、第1および第2の実施形態で説明した構成にさらに、他の層も備えたカラー画像表示積層体であるが、第3の実施形態とは異なり、2つの微細凹凸層cの間に、剥離層も接着層も備えていない
図13Aおよび
図13Bは、第4の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【0111】
図13Aに例示するカラー画像表示積層体10Lは、
図11Aに例示するカラー画像表示積層体10Jから、微細凹凸層c1と微細凹凸層c2との間の接着層s1および剥離層i2を省略した構成をしている。カラー画像表示積層体10Jにおいて微細凹凸d2および開口セグメントj2に接していた微細凹凸層c2は、カラー画像表示積層体10Lでは、微細凹凸d1および開口セグメントj1にも接している。なお、
図13Aは、表記の利便性のために、
図11Aにおける接着層s2に相当する部位を、接着層s1として示している。
【0112】
図13Bに例示するカラー画像表示積層体10Mは、
図11Bに例示するカラー画像表示積層体10Kから、微細凹凸層c1と微細凹凸層c2との間の剥離層i1および接着層s2を省略した構成をしている。カラー画像表示積層体10Kにおいて微細凹凸d1および開口セグメントj1に接していた微細凹凸層c1は、カラー画像表示積層体10Mでは、微細凹凸d2および開口セグメントj2にも接している。なお、
図13Bは、表記の利便性のために、
図11Bにおける剥離層i2に相当する部位を、剥離層i1として示している。
【0113】
図14Aおよび
図14Bは、本発明の第4の実施形態に係るカラー画像表示積層体の1つの変形例を示す側断面図である。
【0114】
前述した
図13Aおよび
図13Bは、2つの微細凹凸層c1、c2を備えたカラー画像表示積層体10L、10Mを示しているが、
図14Aおよび
図14Bは、3つの微細凹凸層c1、c2、c3を備えたカラー画像表示積層体10T、10Uを示している。カラー画像表示積層体10T、10Uでは、微細凹凸層c2と微細凹凸層c3との間にも、剥離層iも接着層sも存在しない。
【0115】
図14Aに示すカラー画像表示積層体10Tにおいて、微細凹凸層c3は、微細凹凸d3および開口セグメントj3に接しているのみならず、微細凹凸d2および開口セグメントj2にも接している。同様に、
図14Bに示すカラー画像表示積層体10Uでも、微細凹凸層c3は、微細凹凸d3および開口セグメントj3に接しているのみならず、微細凹凸d2および開口セグメントj2にも接している。
【0116】
カラー画像表示積層体10T、10Uともに、微細凹凸d1によって観察者kに青色Bを呈し、微細凹凸d2によって観察者kに緑色Gを呈し、微細凹凸d3によって観察者kに赤色Rを呈することができる。これによってRGBの3原色を実現できる。また、例えば、微細凹凸d3によってシアンを呈し、微細凹凸d2によってマゼンダを呈し、微細凹凸d1によってイエローを呈するようにもできる。これによって、CMYKの3原色も実現できる。
【0117】
[第5の実施形態:剥離層や接着層を備えたカラー画像表示積層体(3)]
第5の実施形態も、第1および第2の実施形態で説明した構成にさらに、他の層も備えたカラー画像表示積層体であるが、積層の規則が、第3の実施形態とも、第4の実施形態とも異なる。
【0118】
【0119】
図15Aに例示するカラー画像表示積層体10Nは、
図13Aに例示するカラー画像表示積層体10Lにおける接着層s1と微細凹凸層c2との場所が交換されているとともに、図中において微細凹凸層c2の下側に、新たな剥離層i2および接着層s2を備えた構成をしている。なお、
図15Aでは、表記上の利便性のために、微細凹凸層c2と場所を交換された接着層s2を、接着層s1として示している。
【0120】
図15Bに例示するカラー画像表示積層体10Pは、
図13Bに例示するカラー画像表示積層体10Mにおける接着層s1と微細凹凸層c1との場所が交換されているとともに、図中において保護層hの下側に、新たな接着層s1および剥離層i1を備えた構成をしている。なお、
図15Bでは、表記上の利便性のために、カラー画像表示積層体10Mにおいて微細凹凸層c1と場所を交換された接着層s1を、接着層s2として示している。
【0121】
図16に例示するカラー画像表示積層体10Qは、
図11Bに例示するカラー画像表示積層体10Kにおける剥離層i1よりも下側の層の順序を、一部交換した構成をしている。すなわち、カラー画像表示積層体10Kにおいて上側から接着層s2、反射層r2、微細凹凸層c2、および剥離層i2の順に積層されていたものを、カラー画像表示積層体10Qでは、上側から剥離層i2、微細凹凸層c2、反射層r2、および接着層s2に交換した構成をしている。
【0122】
図17Aに例示するカラー画像表示積層体10Vは、
図15Aに例示するカラー画像表示積層体10Nに、新たな剥離層i、微細凹凸層c、反射層r、および接着層sを追加したものである。
図17Aでは、これら新たに追加された剥離層i、微細凹凸層c、反射層r、および接着層sを、剥離層i1、微細凹凸層c1、反射層r1、および接着層s1として示している。
【0123】
図17Aに示すカラー画像表示積層体10Vにおける剥離層i2よりも図中下側の層構成、すなわち、微細凹凸層c2、反射層r2、接着層s2、反射層r3、微細凹凸層c3、剥離層i3、および接着層s3は、
図15Aに示すカラー画像表示積層体10Nにおける剥離層i1よりも図中下側の層構成、すなわち、微細凹凸層c1、反射層r1、接着層s1、反射層r2、微細凹凸層c2、剥離層i2、および接着層s2に相当する。このように、
図17Aでは、表記上の利便性のために、
図15Aと同じ部位の符号が、英文字の後の数字が、
図15Aよりも1大きく表記されていることに留意されたい。
【0124】
図17Bに例示するカラー画像表示積層体10Wは、
図15Bに例示するカラー画像表示積層体10Pに、新たな接着層s、反射層r、微細凹凸層c、および剥離層iを追加したものである。
図17Bでは、これら新たに追加された接着層s、反射層r、微細凹凸層c、および剥離層iを、接着層s3、反射層r3、微細凹凸層c3、および剥離層i3として示している。
【0125】
カラー画像表示積層体10Wにおける剥離層i2よりも図中上側の構成は、カラー画像表示積層体10Pにおける剥離層i2よりも図中上側の構成に相当する。
【0126】
(上記各実施形態で説明した各層の材料)
次に、上記各実施形態で説明した各層を構成する材料について説明する。
【0127】
保護層hには、プラスチックシートを適用できる。プラスチックシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレート(PEN)シート、ポリプロピレン(PP)シート、ポリ塩化ビニル(PVC)シート、非晶性ポリエステル(PET-G)シート、ポリカーボネート(PC)シートとできる。
【0128】
このうち、IDカード11を、個人認証体用のカードやパスポートとして適用する場合、その基材としてPCVシート、PET-Gシート、PCシート等を適用すれば、熱や圧力による加工によって一体化することが容易である。
【0129】
保護層hの厚みは、50μm以上、400μm以下とできる。厚みを50μm以上とすることで、取り扱いが容易で、物理的な強度も確保されることに加え、積層一体化する際に生じる皺の抑制も容易となる。一方、厚みを400μm以下とすることで、積層一体化したカードとしての柔軟性も確保できる。
【0130】
微細凹凸層cには、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂などの光透過性樹脂を適用できる。微細凹凸層cが光透過性樹脂であることで、保護層h側からカラー画像表示積層体10(前述したすべての実施形態のカラー画像表示積層体をカラー画像表示積層体10と総称する)に入射した光は、反射層rを有さない領域、すなわち、前述したように、開口セグメントjが連続するz方向の経路では、微細凹凸層cを透過して印刷層pやレーザー発色層aまで到達することができる。
【0131】
微細凹凸層cの厚みは0.6μm以上、20μm以下とできる。厚みが0.6μm以上あることで、ロールツーロール法で、ホログラムをはじめとした微細凹凸dを賦形することが容易となる。また、厚みを10μm以下とすることで、積層一体化した際に、保護層h、あるいは、レーザー発色層aにおいて、微細凹凸dがある領域と、ない領域との境界に生じ得る空隙を、許容範囲内に抑えることができる。
【0132】
微細凹凸層cの耐熱性も、高い方が望ましい。樹脂材料の耐熱性が高いことで、カラー画像表示積層体10を内装する際の熱や圧力による変形を防げる。この耐熱性は、微細凹凸dの材質を架橋されたポリマーとすることで得ることができる。
【0133】
反射層rは、微細凹凸層cの微細凹凸dの表面の少なくとも一部を覆うように、かつ微細凹凸dに追従するように配置されている。
【0134】
反射層rの材料には、アルミニウム、銅、銀、金、およびそれらの合金など、光を反射する金属を適用する。中でもアルミニウムが好適である。また、無機蒸着層と金属蒸着層の多層でもよい。
【0135】
反射層rの厚みは、10nm以上、200nm以下とする。厚みを10nm以上とすることで、反射層rの反射効果を、目視で許容する程度に実現できる。一方、厚みを200nm以下とすることで、加工時の取り回しを容易にできる。カラー画像表示積層体10の複数の反射層rは、それぞれ同じ厚みでも良いし、異なる厚みとされても良い。同じ厚みであれば反射率や膜質を揃えられるため、微細凹凸dの光学効果を同程度と出来る。一方、異なる厚みとすれば、反射層rの除去において、除去の程度を調整する点で有利に機能する。
【0136】
接着層sは、接着剤を主成分とできる。接着剤は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂とできる。接着剤には、接着性付与剤、充填剤、軟化剤、熱安定剤、酸化防止剤の単体、およびこれらの混合体などの改質剤を含有できる。
【0137】
接着層sの厚みは、0.1μm以上、10μm以下とできる。厚みを0.1μm以上とすることで、接着剤の接着効果を十分発現できる。一方、厚みを10μm以下とすることで、接着層sがある領域と、接着層sがない領域との境界で生じ得る空隙を、許容範囲内に抑えることができる。
【0138】
接着層sの厚みが仮に10μmよりも厚いと、この空隙が大きくなり、保護層hと接着層sとの剥離の原因となるのみならず、境界領域が不自然に目立ち、カラー画像表示積層体10の外観が損なわれる。
【0139】
印刷層pには、無機顔料や有機顔料、染料のインキを用いることができる。染料インキを用いる場合は、印刷層pは支持体にしみ込むため、支持体と一体となる。インキは、赤外発光インキを用いることもできる。赤外光を照射することで、画像を確認することができる。
【0140】
印刷層pは、特に、フォトルミネセンスで発色する蛍光顔料を用いることができる。蛍光顔料としては、可視域で発光する蛍光顔料のほかに、通常光下では無色であり、ブラックライトなどの紫外光下で強く発光する蛍光顔料を用いることもできる。また、光照射を止めても残光発光する蓄光体を用いてもよい。
【0141】
印刷層pは、所定の印刷法を用いて形成されてもよい。印刷法には、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、サーマル転写法が挙げられる。
【0142】
レーザー発色層aには、保護層hと同様に、各種プラスチックシートを適用できる。積層一体化の加工のためにも、保護層hと同様の材料を主成分とするシートを適用することが好ましい。
【0143】
レーザー発色層aの厚みは、保護層hと同程度とすることができ、保護層hと同じ理由で50μm以上、400μm以下とできる。
【0144】
また、レーザー発色層aは所定の波長を有したレーザー光線の照射によって炭化する特性を有するプラスチックシートともできる。あるいは、レーザー発色層aとして、ポリカーボネートを主原料とし、添加剤としてレーザー光線を吸収するエネルギー吸収体とすることもできる。
【0145】
ベース層bには、保護層h、レーザー発色層aと同様に、各種プラスチックシートを適用できる。ベース層bも、保護層h、レーザー発色層aと同様の材料を主成分とするシートを適用することで、熱や圧力をかけて積層一体化する際に生じ得る皺を抑制でき、同程度の温度や圧力で熱可塑し樹脂が流動するので加工も容易となる。
【0146】
次に、微細凹凸dについて説明する。
【0147】
微細凹凸dは、回折格子によって、あるいは位相変調素子によって実現できる。
【0148】
微細凹凸dが回折格子である場合、微細凹凸dは、回折格子であってもよい。各微細凹凸層cに異なる空間周波数の回折格子を設け、組み合わせることで、観察者kに届く光の波長ごとの強度を調整することができる。なお、回折格子は、バイナリ型であっても、ブレーズド型であってもよい。
【0149】
一定の空間周波数の回折格子に、白色光を入射光とした場合のそれぞれの空間周波数と射出光の強度分布について説明する。まず、回折格子は、入射光が、カラー画像表示積層体10に対して、観察者k側から45度の角度をなして入射し、観察角度が、観察者k側からカラー画像表示積層体10に対して90度である(真上方向)ときに、その空間周波数を、例えば1100本/mm、1300本/mm、1500本/mmとした場合について説明する。
【0150】
この場合、観察者kには、それぞれの空間周波数に対応した回折波長を中心に分布をもった射出光の分布が届く。回折格子の面積率を任意とすれば、観察者kはフルカラーの画像を観察することができる。
【0151】
図18は、微細凹凸層に設けられる微細凹凸が回折格子である場合に、観察場所毎に異なるカラー画像の見え方を示す図である。
【0152】
図18に示されるように、各微細凹凸dの回折格子から届く光の強度が、観察場所に応じて異なることによって、観察者kは、観察場所を変えることによって、任意のカラー画像を知覚できる。観察者kに回折光が届かない観察角度では、カラー画像を知覚するのは困難である。
【0153】
微細凹凸dが位相変調素子である場合、微細凹凸dは、位相変調素子であってもよい。位相変調素子は、再生像を結像させ、空間位相変調器として機能する計算機ホログラムであってもよい。また、位相変調素子は、フーリエ変換ホログラム、あるいはフレネル変換ホログラムでもよい。
【0154】
図19は、微細凹凸が3次元再生像を形成する計算機ホログラムの位相変調素子であるカラー画像表示積層体の1つの構成例を示す側断面図である。
【0155】
図19に示すカラー画像表示積層体10Xでは、微細凹凸層c1,c2,c3それぞれにおいて、位相変調素子の微細凹凸dの高さが一定である。
【0156】
すなわち、微細凹凸層c1では、微細凹凸d1における凹部又は凸部の深さ(底面から上面までの高さでもある)は、一定値であるβに統一されている。これによって、微細凹凸層c1では、固有の呈色を発現できる。
【0157】
また、微細凹凸層c2では、微細凹凸d2における凹部又は凸部の深さ(底面から上面までの高さでもある)は、一定値であるαに統一されている。αは、βとは異なり、α>βの関係を有する。これによって、微細凹凸層c2では、微細凹凸層c1とは異なる固有の呈色を発現できる。
【0158】
さらに、微細凹凸層c3では、微細凹凸d3における凹部又は凸部の深さγ(底面から上面までの高さでもある)は、一定値であるγに統一されている。γは、α、βとは異なり、α>β>γの関係を有する。これによって、微細凹凸層c3では、微細凹凸層c1、c2とは異なる固有の呈色を発現できる。
【0159】
例えば、典型的な深さの値として、α=250nm、β=200nm、γ=150nmとすることで、深さαを、緑Gの呈色、深さβを、青Bの呈色、深さγを、赤Rの呈色に対応させることができる。ただし、これらの値は、微細凹凸層cの屈折率によって異なる。
【0160】
図20は、本発明の各実施形態に係るカラー画像表示積層体を配置したIDカードを示す斜視図である。
【0161】
IDカード11に配置されているカラー画像表示積層体10では、微細凹凸dとして、3次元再生像を形成する計算機ホログラムの位相変調素子が適用されている。この場合、
図20に示すように、IDカード11の正面側の点光源30から、カラー画像表示積層体10に光を照射すると、観察者kは、位相変調素子によって再生された再生像31を視認することができる。
【0162】
再生像31は、主として反射層rを有する位相変調素子により実現される。一方で、カラー画像表示積層体10の面上では、各層の反射層rを有する領域によりカラーの顔画像を確認できる。カラーの顔画像を確認できる原理について、
図21を用いて説明する。
【0163】
図21は、観察者側から見たカラー画像表示積層体の一部を模式表示する平面図である。
【0164】
図21に示すカラー画像表示積層体10は、画素配置の一例を示す平面図である。各画素40内に反射層rB、反射層rG、反射層rRが見られる。反射層rB、反射層rG、反射層rRは、前述した反射層r1、反射層r2、反射層r3に相当する。各画素40内には、レーザー発色層aの黒色BKも見られる。
【0165】
画素40内のこれら反射層rB、rG、rRや、レーザー発色層aの黒色BKの領域サイズを調整することで、画素40ごとに任意の色を表現できる。そして、カラー画像表示積層体10は、これら画素40の組合せで、任意のカラー画像を表示することができる。
【0166】
(カラー画像表示積層体の第1の作製方法)
次に、カラー画像表示積層体の第1の作製方法について説明する。
【0167】
【0168】
図11Bに示すカラー画像表示積層体10Kは、前駆体として、保護層hと、レーザー発色層aと、接着層s1、反射層r1、微細凹凸層c1、および剥離層i1からなる積層体T1と、接着層s2、反射層r2、微細凹凸層c2、および剥離層i2からなる積層体T2とを有する。
【0169】
カラー画像表示積層体10Kの作製時にはまず、レーザー発色層aに、積層体T2を転写する。その後、積層体T2に、積層体T1を転写する。その後、保護層hと、転写後のレーザー発色層aとを、熱圧ラミネートすることで、カラー画像表示積層体10Kを作製することができる。
【0170】
【0171】
(カラー画像表示積層体の第2の作製方法)
次に、カラー画像表示積層体の第2の作製方法について説明する。
【0172】
第2の作製方法は、転写箔一体化による位置合わせエンボスによって実施されるものであり、例えば、
図13A、
図13B、
図14A、および
図14Bのようなカラー画像表示積層体の作製に好適である。以下では、
図13Aを代表として参照しながら、第2の作製方法を説明する。
【0173】
図13Aに示すカラー画像表示積層体10Lは、前駆体として、保護層hと、レーザー発色層aと、剥離層i1、微細凹凸層c1、反射層r1、微細凹凸層c2、反射層r2、および接着層s1からなる積層体T3とを有する。
【0174】
カラー画像表示積層体10Lの作製時にはまず、積層体T3を作製するために、剥離層i1と、成形層とを基材に塗工する。さらに、微細凹凸d1が設けられたスタンパーを用いて微細凹凸d1を成形層に転写し、微細凹凸d1が設けられた微細凹凸層c1を得る。そして、微差凹凸層c1の上に反射層r1を設ける。その後、反射層r1の上にさらに成形層を設ける。さらに、微細凹凸d2が設けられたスタンパーを用いて微細凹凸d2を成形層に転写し、微細凹凸層c2を得る。最後に、微細凹凸層c2に反射層r2と接着層s1とを積層することによって積層体T3を作製する。
【0175】
次に、レーザー発色層aに、積層体T3を転写する。そして、保護層hと転写後のレーザー発色層aとを熱圧ラミネートすることで、カラー画像表示積層体10Lを作製することができる。
【0176】
(カラー画像表示積層体の第3の作製方法)
次に、カラー画像表示積層体の第3の作製方法について説明する。
【0177】
第3の作製方法は、転写箔一体化による位置合わせドライラミネーションによって実施されるものであり、例えば、
図15A、
図15B、
図17A、および
図17Bのようなカラー画像表示積層体の作製に好適である。以下では、
図15Aを代表として参照しながら、第3の作製方法を説明する。
【0178】
図15Aに示すカラー画像表示積層体10Nは、前駆体として、保護層hと、レーザー発色層aと、剥離層i1、微細凹凸層c1、反射層r1、および接着層s1からなる積層体T4と、反射層r2、微細凹凸層c2、剥離層i2、および接着層s2からなる積層体T5とを有する。
【0179】
カラー画像表示積層体10Nの作製時にはまず、積層体T4を作製するために、剥離層i1と成形層を基材に塗工する。微細凹凸d1が設けられたスタンパーを用いて微細凹凸d1を成形層に転写し、微細凹凸d1が設けられた微細凹凸層c1を得る。そして、微細凹凸層c1の上に反射層r1を設けることで、積層体T4を作製する。
【0180】
また、積層体T5を作製するために、別の基材に剥離層i2と成形層を塗工する。微細凹凸d2が設けられたスタンパーを用いて微細凹凸d2を成形層に転写し、微細凹凸d2が設けられた微細凹凸層c2を得る。そして、微細凹凸層c2の上に反射層r2を設けることで、積層体T5を作製する。
【0181】
次に、積層体T4と、積層体T5とを、接着層s1で一体化する。このとき、例えば、ドライラミネート方式で作製できる。
【0182】
その後、レーザー発色層aに、積層体T4、T5を転写する。そして、保護層hと、転写後のレーザー発色層aとを熱圧ラミネートする。最後に、微細凹凸層c2側の基材をはがし、剥離層i2の上から接着層s2を塗工することで、カラー画像表示積層体10Nを作製する。
【0183】
(カラー画像表示積層体の第4の作製方法)
次に、カラー画像表示積層体の第4の作製方法について説明する。
【0184】
第4の作製方法は、転写箔一体化による位置合わせ熱ラミネーションによって実施されるものであり、
図16のようなカラー画像表示積層体10Qの作製に好適である。したがって、以下では
図16を参照しながら、第4の作製方法を説明する。
【0185】
図16に示すカラー画像表示積層体10Qは、前駆体として、保護層hと、レーザー発色層aと、接着層s1、反射層r1、微細凹凸層c1、および剥離層i1からなる積層体T6と、剥離層i2、微細凹凸層c2、反射層r2、および接着層s2からなる積層体T7とを有する。
【0186】
カラー画像表示積層体10Qの作製時にはまず、積層体T6を保護層hに転写し一体化する。また、積層体T7をレーザー発色層aに転写し一体化する。その後、両者を熱圧ラミネートにより、さらに一体化することでカラー画像表示積層体10Qを作製する。
【0187】
(ディメタ加工)
上述した作製方法1~4の何れにおいても、反射層rの一部が除去され開口セグメントjを有するカラー画像表示積層体10は、反射層rの一部をディメタにより除去することによって開口セグメントjが設けられる。ディメタは、積層一体化されたのちに実施されても良いし、積層一体化される前に実施されても良い。
【0188】
ディメタは、レーザービームの照射により実施できる。レーザービームには、波長が1064nmのYVO4や、YAGレーザーのような固定レーザーを適用できる。赤外レーザーに限らず、可視光レーザー、紫外光レーザーを用いても良い。
【0189】
このようなレーザービームを、保護層h側から照射し、反射層rを除去できる。
【0190】
レーザーの走査速度やステップ幅、出力の繰り返し周波数を調整することで、反射層rの開口セグメントjにおけるレーザーの走査方向の個々のパルス痕や、パルス痕とパルス痕との重なり程度を調整できる。
【0191】
カラー画像表示積層体10内の各反射層rに照射されるレーザーのパルスエネルギーやピークパワーを調整することで、複数の反射層rの一部を同時に除去することができる。また、レーザー照射側の反射層rのみを選択的に除去し、奥側の反射層rを残すこともできる。
【0192】
例えば、
図12Aに示すカラー画像表示積層体10Rにおいて、複数の反射層r1,r2,r3の一部を同時に除去したり、レーザー照射側の反射層r1のみを選択的に除去し、奥側の反射層r2を除去せずに残すこともできる。また、反射層r2が除去された開口セグメントj2を介して反射層r3にレーザーを照射することにより、複数の反射層r2,r3の一部を同時に除去したり、レーザー照射側の反射層r2のみを選択的に除去し、奥側の反射層r3を除去せずに残すこともできる。1度目のレーザー照射により開口セグメントj1を除去し、2度目のレーザー照射により開口セグメントj2を除去し、3度目のレーザー照射により開口セグメントj3を除去するよう、複数回に分けて実施することもできる。
【0193】
各反射層rに照射されるレーザーのパルスエネルギーやピークパワーを、複数の反射層r(例えば反射層r1,r2,r3)ごとに調整するために、カラー画像表示積層体10内でレーザー光の透過率を制御してもよい。
【0194】
また、カラー画像表示積層体10内でレーザー光の透過率を制御するために、レーザーの波長域で光を減衰させる材料を用いてもよい。吸熱するため赤外吸収色素や、中空シリカのような断熱材料を用いてもよい。
【0195】
カラー画像表示積層体10内の各反射層rの開口セグメントjを調整することで、観察者kに届く各反射層rによって反射される光の強度を変えられるため、観察者kは、各反射層rで反射されることによって実現される各色を、反射層rの2次元的な量によって、混合された色として知覚できる。
【0196】
反射層rが除去された開口セグメントjが、z方向に連続している場合、観察者kからz方向に最も遠い層に印刷層pがある場合は、観察者kは、印刷層pによる色を観察できる。また、この場合、印刷層pではなく、レーザー発色層aがある場合は、レーザー発色層aのうち、レーザービームによって十分に照射された領域が、レーザービームの照射によって改質するので、観察者kは、その領域から、改質によって発色した色を観察できる。この色は、典型的には黒色BKである。
【0197】
なお、反射層rの一部を除去する工程と、改質する工程とを、レーザービームの照射により同時に実施することもできる。
【0198】
例えば、
図12Aに示すカラー画像表示積層体10Rにおいて、反射層r3の一部を除去する工程と、レーザー発色層aの一部を改質する工程とを同時に実施することができる。
【0199】
また、微細凹凸層cに設けられる微細凹凸dが、位相変調素子である場合は、反射層rの開口セグメントjによらず、もともと設計された再生像31を、より高い期待値で得ることができる。これは、再生像31が、微細凹凸層cの全面に設けられた位相変調素子から形成されているためである。
【0200】
(実施例)
次に、カラー画像表示積層体の作製方法の実施例について説明する。
【0201】
まず、計算機を用いて、点光源30を照射することで得たい再生像31を形成させるための位相変調素子を計算した。次に、その計算結果を用いて得た描画パターンデータを、2種類の描画エネルギー量で、2枚のレジスト基板に、それぞれ電子線描画した。その後、現像処理を行い、微細凹凸dの高さの異なる同じ位相変調素子を作製した。そして、レジスト基板に、ニッケル蒸着を行い、シード層をつけ、ニッケル電鋳法により、ニッケル電鋳版を作製した。
【0202】
次に、作製したニッケル電鋳版に、予め、PET基材に剥離層iと微細凹凸層cの前駆体となる層を塗工したフィルムを、熱をかけて押し当て、前駆体層にニッケル電鋳版の位相変調素子を転写した。さらに、微細凹凸層cに真空蒸着法によって、アルミニウムの反射層rを設けた。こうして、2種類のフィルムAとフィルムBを作製した。それぞれ、アルミニウム面に接着層sを塗工した。
【0203】
次に、レーザー発色層aとなるポリカーボネート基材に作製したフィルムのうち、フィルムAを接着層s側から接地させ、熱と圧をかけ、転写した。その後、PET基材を剥離した。さらに、むき出しとなった剥離層iに、もう1種類の作製したフィルムBを接着層s側から接地させ、熱と圧をかけ、転写した。そして、PET基材を剥離した。
【0204】
転写したレーザー発色層aのポリカーボネート基材を、保護層hであるポリカーボネート基材と積層した。さらに、レーザー発色層a側に、有色のベース層、レーザー発色層a、保護層hの順で積層し、熱と圧をかけ、融着し、カード形状とした。
【0205】
上記のカードに、1064nmの赤外光のパルスレーザー光を照射した。照射する際、レーザー出力、Qスイッチ周波数、走査スピードを調整した。
【0206】
調整した照射条件ではフィルムBの反射層rが除去され、フィルムAの反射層rは除去されなかった。
【0207】
上記のように作製したIDカード11を観察すると、フィルムAとフィルムBのそれぞれの呈する色の混色による画像が観察された。
【0208】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係るカラー画像表示積層体の作製方法について説明する。
【0209】
先ず、
図22から
図24を用いて、第6の実施形態に係るカラー画像表示積層体の作製方法の必要性について説明する。
【0210】
図22は、従来のカラー画像表示積層体を含むIDカード媒体を示す平面図である。
【0211】
図23は、改良された従来のカラー画像表示積層体を含むIDカード媒体を示す平面図である。
【0212】
図22に示すように、従来のIDカード媒体11Aには、多くの文字情報Mと、顔イメージXとからなる2つの個人情報が表示されている。これら個人情報は、改ざん防止対策として、特殊な印刷で行われていることがある。しかしながら、この改ざん防止対策にも関わらず、改ざんを防止しきれてはおらず、さらなる改ざん防止対策が必要とされる。
【0213】
さらなる改ざん防止対策を備えたIDカード媒体11Bには、
図23に示すように、通常の顔イメージXの他に、もう1つ特殊な印刷による顔イメージYを配置する方式で、ホログラム、特殊インキ等の材料を用いて、転写インクジェット等の方式で描画している。
【0214】
図24は、赤緑青の微小単色体が2次元的に配置されることによって構成される顔イメージを説明するための概念図である。
【0215】
図24に示すように、赤緑青の微小単色体R,G,Bが2次元的に配置されて顔イメージXが形成されている。これら微小単色体R,G,Bは、赤緑青ひとまとまりで1つの画素を構成するため、この条件を満たしている。顔イメージXはこのような画素が縦横数100~数1000で構成されている。1つの微小単色体は数10~数100μm程度である。
【0216】
このように、顔イメージXは、微視的には赤緑青の微小単色体R,G,Bを、2次元的に配置されて構成される例が多い。これまで主流であった転写等の方法は、別の微小単色体を各色で形成する画像形成方法である。しかし、近年は、レーザーを使った描画技術が主流となりつつあり、この方法は赤緑青の微小単色体R,G,Bにレーザーを照射して色を消去する方法、もしくは赤緑青の微小単色体R,G,B上にカバー層をも設け、顔形成に必要な微小単色体上のカバー層をレーザーで除去する方法が主流となりつつある。
【0217】
ところが、この方法では、微小単色体R,G,Bを正確に除去しなければならないため、照射位置精度を、微小単色体R,G,Bよりかなり小さくする必要がある。
【0218】
通常、プリンタは、被印刷媒体の搬送時にジャムが発生するのを防ぐため、被印刷媒体搬送経路を、被印刷媒体の大きさより1mm程度大きくとる。このため被印刷媒体の搬送位置精度は、1mm程度の誤差を含むことになる。この精度で搬送されれば、必要とされる位置精度にはるかに及ばない。このため被印刷媒体に印刷位置確認用のマークなどを設置して、印刷前にマークを読み取って媒体位置を常に確認する必要がある。
【0219】
このような背景を踏まえ、本実施形態に係るカラー画像表示積層体の作製方法では、微小単色体の平面配置R,G,Bに代えて、赤緑青のパネルを積層し、必要な微小単色体は、レーザー光照射で逐次生成する。
【0220】
図25は、第6の実施形態に係るカラー画像表示積層体の作製方法の一例を説明する図である。
【0221】
図25(a)に示すように、カラー画像表示積層体400は、回折格子(青)421、回折格子(緑)422、および回折格子(赤)423を積層してなる。
【0222】
このようなカラー画像表示積層体400では、赤の微小単色体が必要な場合は、
図25(a)に示すように、最表層の赤層をそのまま使用する。
【0223】
一方、緑の微小単色体が必要な場合は、
図25(b)に示すように、赤層の反射層423aを、レーザー光425がレンズ426で集光された集光レーザー424で除去する。
【0224】
また、青の微小単色体が必要な場合は、
図25(c)に示すように、集光レーザー424で、赤層の反射層423aに加えて、緑層の反射層422aも除去する。
【0225】
このような除去処理で、赤緑青の必要な色を生成して画素内の必要な色を組み合わせる。
【0226】
例えば、白色が必要な場合は、
図25(d)に示すように、画素42内で赤、緑、青の3要素光が必要となるので、赤、緑、青すべての微小単色体42r,42g,42bを作り、白色を合成する。
【0227】
なお、このように3層の各反射層423a,422a,421aを、第1層の反射層423aから順に、集光レーザー424で除去する(ディメタする)場合、第2層の反射層422a、第3層の反射層421aと、下位層側の反射層になるほど、上位層側の反射層へのディメタによるダメージが蓄積される。そのため、下位層の反射層の厚みを、上位層の反射層の厚みよりも厚く設定する。例えば、
図25において、第1層423(赤)の反射層423aの厚みを50nm、第2層422(緑)の反射層422aの厚みを50nm、第3層(青)の反射層421aの厚みを100nmとする。すなわち反射層の第3層が第1層と第2層より、厚くなっている。このとき第1層と第2層は、同じ厚みでもよい。
【0228】
また、第2層が第1層より厚くても良い。また、第1層が第2層より厚くても良い。第1層と第2層の厚みの差は、20nm以下とできる。この差であれば、第1層と第2層を選択的にレーザーで除去できる。第3層の厚みは、例えば、2層より30nm以上厚く、2層の5倍以下の厚さできる。30nm以上厚ければ印字層へのダメージを防止できる。5倍より厚さとすることで第3層を実用的なコストで形成できる。
【0229】
図26(a)は、
図25に示すような3層の各反射層423a,422a,421aを含む積層構成に対して、反射層423a、422a、421aの順に、集光レーザー424で除去する(ディメタする)ことによって描画されたカラー画像の例を示す。また、
図26(b)は、
図26(a)のカラー画像の一部の拡大図である。また、
図26(c)は、
図26(a)のカラー画像の一部の積層断面の写真である。 従来の技術では、
図24に示すように、2次元的に配置されている微小単色体R,G,Bから、設計通りの単色体を除去する必要があるため、レーザー光の照射の位置合わせ精度を、微小単色体R,G,Bの大きさに比べてかなり小さくする必要がある。
【0230】
それに対して、本実施形態に係る作製方法によれば、媒体に予め単色体を用意する必要がないため、高い照射位置合わせ精度を必要とすることなく実現することができる。
【0231】
(第6の実施形態の実施例1)
第6の実施形態の実施例1について説明する。
【0232】
ここでは、反射層の厚みと、レーザー光強度との関係について説明する。
【0233】
図25(a)に示すように、回折格子(青)421、回折格子(緑)422、および回折格子(赤)423が積層されたカラー画像表示積層体400の場合、前述したように、第1層423の反射層423aのみ、第2層422の反射層422aのみを除去する必要がある。
【0234】
図27は、これに関して検証された反射層の厚みと、レーザー光強度との相関関係を示す図である。
【0235】
図27の横軸は、レーザー光強度を、縦軸は、照射位置における反射層除去域の平均半径を示す。
【0236】
また431は、反射層の厚みが50nmであるサンプル、432は、100nmであるサンプル、433は、150nmであるサンプルに、レーザー光を照射したときのレーザー光強度-反射層除去域平均半径を示す。
【0237】
例えば除去域半径を焼く50μmをターゲットとしたとき、反射層が50nmの場合は、約22μJのレーザー光強度、100nmの場合は、30μJのレーザー光強度、150nmの場合は、34μJのレーザー光強度が必要となる。それぞれの照射条件以下では反射層を除去できない。
【0238】
前述したように、下位層側の反射層になるほど、上位層側の反射層へのディメタによるダメージが蓄積されるため、下位層の反射層の厚みを、上位層の反射層の厚みよりも厚く設定する。ここでは、第1層423の反射層423aの厚みを50nm、第2層422の反射層422aの厚みを100nm、第3層421の反射層421aの厚みを150nmとする。この場合、
図27に示す結果から、まず22μJのレーザー光を、第1層423、第2層422、および第3層421の、反射層を取り除きたい場所に照射し、次に30μJのレーザー光を、第2層422および第3層421の、反射層を取り除きたい場所に照射し、最後に、第3層421の反射層を取り除きたい場所に、32μJのレーザー光を照射することで、設計通りの赤緑青の配置を実現することができる。
【0239】
(第6の実施形態の実施例2)
第6の実施形態の実施例2について説明する。
【0240】
ここでは、カラー画像表示積層体400の各層421,422,423間の密着力を高めた場合の効果を検証するために、各層421,422,423間に接着層を設けた場合について説明する。
【0241】
図28は、各層間に接着層を設けたカラー画像表示積層体の層構造を示す図である。
【0242】
図29は、比較のために準備された、各層間に接着層を設けていないカラー画像表示積層体の層構造を示す図である。
【0243】
図28に示すカラー画像表示積層体400Aには、回折格子423と回折格子422との間に接着層434aが、回折格子422と回折格子421との間に接着層434bがそれぞれ設けられている。接着層434a,434bはともに、JER1004,JER1004+Vylon270であり、層厚は2μmである。
【0244】
このような構成のカラー画像表示積層体400Aに対して、反射層423aを除去するためにレーザー光を照射した結果、
図28における領域Wに示すように、格子層423bを除去することなく、反射層423aのみを選択的に除去することができた。
【0245】
一方、
図29に示すカラー画像表示積層体400に対しても、反射層423aを除去するためにレーザー光を照射した結果、
図29における領域Wに示すように、反射層423aのみならず、格子層423bも除去されてしまった。
【0246】
このように、接着層434a,434bを設けた場合、各層421,422,423間の密着力が高められ、レーザー光の照射によって、格子層が除去されることなく、反射層のみを選択的に除去できることを確認できた。
【0247】
なお、各層間に接着層を設けたカラー画像表示積層体の層構造は、
図28に示す例の他に、
図30のような構成とすることもできる。
【0248】
図30に示す層構造を有するカラー画像表示積層体400Bは、図中下側から、第1層423、第2層422、第3層421、および透明保護層450がこの順に積層されている。
【0249】
第1層423は、図中下側から、透明なポリカ基材423d、接着層423b、アルミ等からなる反射層423a、およびホロ層(赤)423cがこの順に積層されている。
【0250】
第2層422は、図中下側から、透明なポリカ基材422d、接着層422b、アルミ等からなる反射層422a、およびホロ層(緑)422cがこの順に積層されている。
【0251】
このような層構造によって、第1層423のホロ層(赤)423cは、第2層422の透明なポリカ基材422dによって保護される。
【0252】
第3層421は、図中下側から、透明なポリカ基材421d、接着層421b、アルミ等からなる反射層421a、およびホロ層(青)421cがこの順に積層されている。
【0253】
このような層構造によって、第2層422のホロ層(緑)422cは、第3層421の透明なポリカ基材421dによって保護される。
【0254】
さらに、第3層421には、透明保護層450が積層されるので、ホロ層(青)421cは、例えばポリカ基材からなる透明保護層450によって保護される。なお、ホロ層(青)、ホロ層(緑)、ホロ層(赤)の積層順、すなわち上下の順序は特に限定されない。ただし、視認し難いホロ層(青)を、この積層順で最下層すなわち観察者から遠い方、レーザー発色層側にすると、視認性を向上しやすい。
【0255】
このようなカラー画像表示積層体400Bは、
図31(a)に示すように、図中下側から接着層501、アルミ等からなる反射層502、ホロ層503、剥離層504、およびPET基材505が順に積層された、3色の転写フィルム500を準備し、
図31(b)に示すように、3色別々にポリカ基材421d,422d,423dへ転写することによって、ポリカ基材423dに順に積層された接着層423b、反射層423a、およびホロ層423cからなる発色層(赤)と、ポリカ基材422dに順に積層された接着層422b、反射層422a、およびホロ層422cからなる発色層(緑)と、ポリカ基材421dに順に積層された接着層421b、反射層421a、およびホロ層421cからなる発色層(青)とからなる3色の発色層を作製し、
図31(c)に示すように、これら3色の発色層を一体化することによって作製される。なお、
図31では保護層が省略されているが、
図1にあるように保護層を備えても良い。
【0256】
(第6の実施形態の実施例1,2の実施条件)
第6の実施形態の実施例1,2の実施条件は、以下の通りである。
【0257】
回折格子421,422,423は、基材(PET12μm厚)に、ハクリ層(MCS5041、1μm厚)、ホログラム層(VH311A主材、VH311B硬化剤、0.7μm)、および反射層(アルミ、50,100,150nm厚)を設けて構成した。これらを
図25(a)に示すように積層することによって、カラー画像表示積層体400を形成し、塩化ビニルカードに固定した状態でレーザー光425を照射した。
【0258】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0259】
本発明のカラー画像表示積層体は、反射層を選択的に除去することにより、オンデマンドな画像などの情報を付与することができる。そして、所望する色合いのカラー画像を再現できるため、精巧なカラー画像を実現できる。
【0260】
特に、個別情報が付与されるようなパスポートや運転免許証、IDカードのような個人認証媒体などの価値を保護するために利用することができる。
【符号の説明】
【0261】
10、10A~10N、10P~X、10Z・・カラー画像表示積層体、
11・・IDカード、
11A,11B・・IDカード媒体、
30・・点光源、
31・・再生像、
40,42・・画素、
42b・・微小単色体(青)、 42g・・微小単色体(緑)、
42r・・微小単色体(赤)、
400,400A,400B・・カラー画像表示積層体、
421・・回折格子(青)、
421a・・反射層(青)、
422・・回折格子(緑)、
422a・・反射層(緑)、
423・・回折格子(赤)、
423a・・反射層(赤)、
424・・集光レーザー、
425・・レーザー光、
426・・レンズ、
431・・サンプル(反射層厚み50nm)、
432・・サンプル(反射層厚み100nm)、
433・・サンプル(反射層厚み150nm)、
434a,434b・・接着層、
450・・透明保護層、
500・・転写フィルム、
501・・接着層、
502・・反射層、
503・・ホロ層、
504・・剥離層、
505・・PET基材、
a・・レーザー発色層、
B・・微小単色体(青)、
BK・・黒色、
b・・ベース層、
c、c1~c3・・微細凹凸層、
d、d1~d3・・微細凹凸、
G・・微小単色体(緑)、
h・・保護層、
i、i1~i3・・剥離層、
j、j1~j3・・開口セグメント、
k・・観察者、
M・・文字情報、
p・・印刷層、
R・・微小単色体(赤)、
r、r1~r3、rB、rG、rR・・反射層、
s、s1~s3・・接着層、
T1~T7・・積層体、
W・・領域、
X,Y・・顔イメージ、
α、β、γ・・深さ