(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095565
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両のワンウェイクラッチ、および、車両
(51)【国際特許分類】
B62M 9/00 20060101AFI20240703BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20240703BHJP
【FI】
B62M9/00 B
B62M9/00 A
B62M6/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211774
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】10 2022 214 309.4
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーマン クリストフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高いロバスト性、低摩耗かつ低騒音で作動するワンウェイクラッチを提供する。
【解決手段】二輪車用ワンウェイクラッチは、第1の軸2と、第1の歯列11を有する第2の軸3と、第2の歯列12を有するフリーホイールエレメント4と、摩擦エレメント5と、を含有しており、第1の歯列および第2の歯列は、互いに入り込んで噛み合う際に第2の軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめ、フリーホイールエレメントは軸方向でしゅう動可能に第1の軸に配置されており、フリーホイールエレメントは第1の軸に対して相対的に周方向で回動不能に配置され、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとは、つる巻線機構6によって互いに結合され、つる巻線機構は、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的な回動時にフリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)、特に二輪車のワンウェイクラッチにおいて、
第1の軸(2)と、
第1の歯列(11)を有する第2の軸(3)と、
第2の歯列(12)を有するフリーホイールエレメント(4)と、
摩擦エレメント(5)と、
を含有しており、
前記第1の歯列(11)および前記第2の歯列(12)は、互いに入り込んで噛み合う際に前記第2の軸(3)と前記フリーホイールエレメント(4)との間でトルク伝達を生ぜしめるように、設計されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は軸方向でしゅう動可能に前記第1の軸(2)に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は前記第1の軸(2)に対して相対的に周方向で回動不能に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)とは、つる巻線機構(6)によって互いに結合されており、該つる巻線機構(6)は、前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的な回動時に前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめるように設計されている、
ワンウェイクラッチ。
【請求項2】
前記つる巻線機構(6)がねじ山を含有している、
請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項3】
前記ねじ山が非セルフロッキング式に構成されている、
請求項2記載のワンウェイクラッチ。
【請求項4】
戻し力(90)を前記フリーホイールエレメント(4)に作用させるために配置および設計されたリセットエレメント(9)をさらに含有しており、前記戻し力(90)が前記第2の軸(3)の前記第1の歯列(11)に向かう方向に向けられている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項5】
前記摩擦力結合、前記つる巻線機構(6)および前記リセットエレメント(9)は、前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的な回動時に、前記リセットエレメント(9)の前記戻し力(90)よりも大きい解除力が摩擦力結合およびつる巻線機構によって生ぜしめられるように構成されている、
請求項4記載のワンウェイクラッチ。
【請求項6】
前記リセットエレメント(9)が軸方向スプリングディスクである、
請求項4または5記載のワンウェイクラッチ。
【請求項7】
前記第2の軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間で予め設定された摩擦力結合が周方向で形成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項8】
前記第2の軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が周方向で摩擦力を含有しており、および/または前記第2の軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が磁力を含有している、
請求項7記載のワンウェイクラッチ。
【請求項9】
前記摩擦エレメント(5)に対して相対的な前記フリーホイールエレメント(4)の並進的なしゅう動を制限するストッパ(7)をさらに含有する、
請求項1から8までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項10】
前記リセットエレメント(9)が前記ストッパ(7)と前記フリーホイールエレメント(4)との間に配置されている、
請求項9記載のワンウェイクラッチ。
【請求項11】
前記ストッパ(7)は、前記フリーホイールエレメント(4)が前記ストッパ(7)に当接すると前記歯列(11,12)が互いに完全に解除されるように構成されている、
請求項9または10記載のワンウェイクラッチ。
【請求項12】
前記つる巻線機構(6)は、フリーホイール方向での相対的な回動時に相応の相対的な並進的なしゅう動が前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを解除し、ロック方向での相対的な回動時に前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを接続するように構成されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項13】
前記摩擦エレメント(5)が軸方向でしゅう動不能に前記第2の軸(3)に固定されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項14】
前記フリーホイールエレメント(4)が半径方向歯列(8)によって軸方向でしゅう動可能、かつ周方向で回動不能に前記第1の軸(2)に固定されている、
請求項1から13までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項15】
車両、特に電動自転車において、請求項1から14までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ(1)を含有する、
車両。
【請求項16】
前記第2の軸(3)に結合された駆動ユニット(102)と前記第1の軸(2)に結合されたクランク機構(104)とを含有する、
請求項15記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のワンウェイクラッチ並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば電動自転車において従来では、前方に向けられた回動方向に関連して駆動された、つまり前方に向けられた走行方向で車両の駆動を生ぜしめる回動方向で駆動された駆動エレメントがモータ伝動装置のアウトプットよりも早く回動すると、駆動された駆動エレメントと駆動モータに接続されたモータ伝動装置との間の接続を遮断するように設計されたワンウェイクラッチが公知である。この場合、歯列を介してワンウェイクラッチの操作が頻繁に行われる。例えばこのような歯列をばね付勢により接続することが公知であって、この場合、フリーホイール方向でのトルク伝達が、例えば鋸歯形歯列の互いに滑動する複数の歯によって解消される。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
これに対して、請求項1の特徴を有する本発明によるワンウェイクラッチは、高いロバスト性の他に特に低摩耗かつ低騒音で作動する、特に好適な構造によって優れている。これは本発明によれば、第1の軸、第2の軸、フリーホイールエレメントおよび摩擦エレメントを含有する車両、好適には二輪車、特に好適には電動自転車のワンウェイクラッチによって得られる。特に、第1の軸および第2の軸は、平行な軸線を中心にして回動可能に、特に好適には互いに同軸的に配置されている。第2の軸は例えば駆動軸および/または駆動歯車を含有し得る。この場合、第2の軸は、第1の歯列、特に端面歯列を有していて、フリーホイールエレメントは第2の歯列、特に端面歯列を有している。第1の歯列および第2の歯列は、互いに入り込んで噛み合う際に第2の軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめるように設計されている。本発明の枠内で、複数の歯若しくは複数のリングギヤの代わりに、噛み合い時に被駆動軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめる、別の幾何形状の形状締結エレメントを使用してもよい。「歯列」とは、本発明の枠内で、噛み合い時に被駆動軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめる形状締結エレメントであると解釈されてよい。フリーホイールエレメントは、軸方向でしゅう動可能に第1の軸に配置されている。さらに、フリーホイールエレメントは、第1の軸に対して相対的に周方向で回動不能に第1の軸に配置されている。フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとは、つる巻線機構によって互いに連結されている。この場合、つる巻線機構は、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的な回動時に、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめるように設計されている。
【0004】
言い換えれば、ワンウェイクラッチ機能は、摩擦係合によって操作可能なつる巻線機構を介して歯列の接続および解除が行われることによって、提供される。つまり、ワンウェイクラッチの特別な構成によって、第1の軸と第2の軸との相対的な回動が、摩擦エレメントにおける摩擦力結合を介して摩擦エレメントとフリーホイールエレメントとの相対的な回動に変換される。つる巻線機構は、歯の噛み合いを解除または接続するために、フリーホイールエレメントが軸方向で第1の軸に向かってしゅう動せしめられ、それによって特に第2の軸の第1の歯列から離れる方向にまたはこの第1の歯列に向かってしゅう動させられるように、作用する。
【0005】
つる巻線機構は多様に構成されていてよい。例えば、互いに入り込んで噛み合うつる巻線状のエレメントが、フリーホイールエレメントおよび/または摩擦エレメントに設けられていてよい。さらに、相対的な回動を軸に沿った相対的な並進的なしゅう動に変えるために構成された、例えばリンクガイドに類似した、互いに入り込んで噛み合う任意の別のエレメントが摩擦エレメントおよびフリーホイールエレメントに配置されていてよい。
【0006】
この場合、ワンウェイクラッチは、特に簡単かつ安価な構造で、しかも摩耗および騒音発生に関連して有利な特性を有するワンウェイクラッチの特に確実かつロバストな機能を可能にする、という利点を提供する。詳細において、例えば機能に関与するすべてのエレメントは機械的に特にロバストに構成されていて、ワンウェイクラッチの運動方向若しくは操作方向で直接に機械的に連結されていることによって、故障が確実に避けられるように構成されていることができる。しかも、例えばつる巻線機構によって歯列の噛み合いの接続若しくは解除が特に的確にかつ特に強制的に行われるので、例えば長時間に亘っての歯列の不都合な滑動は避けられ、それによって一方では騒音が避けられ、他方では少ない摩耗が保証され得る。しかも、歯の噛み合いは、特にロバストであって、確実に噛み合いガイドされ得る。
【0007】
従属請求項は、本発明の好適な実施態様を内容とする。
【0008】
好適には、つる巻線機構はねじ山を含有している。つまり、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの間に、これらのエレメントの相対回動時に相応の並進的なしゅう動の機能を相互に生ぜしめるねじ山が形成されている。これによって、特に簡単かつ安価な形式でしかも特に確実に、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの間で連結の所望の運動学が実行され得る。ねじ山は、様々な形式で構成され、例えば特にメートル法による標準ねじ山として、または任意のピッチ等を有する任意のねじ山として構成されてよい。
【0009】
特に好適には、ねじ山は、非セルフロッキング式に構成されている。この場合、特にねじ山は、好適には戻し力だけがフリーホイールエレメントに作用し、相対的な回動によって解除力が存在しないときに、フリーホイールエレメントがリセットエレメントの戻し力によって自動的にねじ山を越えて第2の軸の第1の歯列まで移動せしめられるように構成されている。言い換えれば、ねじ山は、セルフロッキング作用が存在しないことによって、ねじ山がリセットエレメントによって生ぜしめられる、軸線に沿ったフリーホイールエレメントの並進運動を可能にするように、構成されている。これによって、ワンウェイクラッチの自動的なロックを特に短い反応時間で提供する、ワンウェイクラッチの特に簡単かつ安価な構造が可能となる。
【0010】
好適な形式で、ワンウェイクラッチは、戻し力をフリーホイールエレメントに作用させるために配置および設計されたリセットエレメントをさらに含有している。戻し力は第2の軸の第1の歯列に向かう方向に向けられている。リセットエレメントおよびその戻し力によって、特に摩擦力結合によって解除力が存在しないときに、つまりワンウェイクラッチが負荷されていない状態にあるときに、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとが互いに移動せしめられるように、作用する。これによって、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの間の相対回動が停止されると、リセットエレメントを用いて歯列が自動的に接続される。さらに、リセットエレメントによる自動的なリセットは、歯列の再接続の特に短い反応時間を可能にする、という利点を提供する。つまり、フリーホイール方向での相対回動がもはや存在しないときに、戻し力によって特に短時間でワンウェイクラッチが再びロックされるので、ロック方向でのトルク伝達が直ちに可能となる。
【0011】
好適な形式で、摩擦力結合、つる巻線機構およびリセットエレメントは、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的な回動時に、リセットエレメントの戻し力よりも大きい解除力が摩擦力結合およびつる巻線機構によって生ぜしめられるように構成されている。つまり、ワンウェイクラッチは、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとがフリーホイール方向で相対回動する際に、戻し力が、歯列の解除を生ぜしめる解除力によって過剰補整されるように、設計されている。これにより、ワンウェイクラッチの特に確実かつ正確に規定された機能が提供され得る。
【0012】
さらに好適には、リセットエレメントが軸方向スプリングディスクである。つまり好適には、軸方向スプリングディスクによって戻し力が軸方向で生ぜしめられるように、リセットエレメントはディスク状に構成されている。例えば軸方向スプリングディスクは、横断面が円錐形に構成されていてよい。これにより、ワンウェイクラッチの特に簡単、軽量および安価な構成が可能である。
【0013】
1実施例では、第2の軸と摩擦エレメントとの間で予め設定された摩擦力結合が第2の軸の周方向で形成されている。これにより、ワンウェイクラッチのコンパクトで簡単な構造形式が可能である。
【0014】
特に好適には、第2の軸と摩擦エレメントとの間で摩擦力結合が、特に第2の軸に関連して周方向で摩擦力を含有している。つまり、摩擦力は第2の軸に関連して接線方向に向けられている。この場合特に、摩擦エレメントは少なくとも部分的に中空軸として構成されていてよい。例えば摩擦力は、摩擦エレメントと第2の軸との間の半径方向の付着力によって生ぜしめられてよい。これによって、つる巻線機構の操作可能性は、摩擦力を介して簡単な形式で適切に調整され得る。
【0015】
好適な形式で、摩擦力は少なくとも1つのねじによっておよび/または摩擦リングによって生ぜしめられる。例えば、少なくとも1つのねじが摩擦エレメント内にねじ込まれていてよく、半径方向で第2の軸を予め定められたねじ力で押し付けることができる。これにより、ねじ力およびひいては摩擦力は、特に簡単な形式で生ぜしめられ調整され得る。特に好適には、第2の軸の周囲に分配配置された複数のねじが設けられている。摩擦リングが、例えば追加的なエレメントとして摩擦エレメントと第2の軸との間に配置されていてよい。この場合、例えば摩擦力は、摩擦エレメントと摩擦リングとの間および/または第2の軸と摩擦リングとの間の表面粗さおよび/または嵌め合いに依存して構成されていてよく、これによって同様に簡単かつ安価な形態が可能となる。
【0016】
さらに好適には、第2の軸と摩擦エレメントとの間の摩擦力結合が磁力を含有している。つまり、摩擦エレメントと第2の軸との間に、予め定められた摩擦力結合を周方向で生ぜしめるような磁力が設けられている。この場合、例えば、永久磁石が摩擦エレメントおよび/または第2の軸に配置されていてよい。これによって、摩擦力結合を同様に簡単な形式で、特に適切に形成することができる。
【0017】
特に好適には、ワンウェイクラッチが、摩擦エレメントに対して相対的なフリーホイールエレメントの並進的なしゅう動を制限するストッパをさらに含有する。ストッパは特に、第1の歯列から離反する方向のフリーホイールエレメントのしゅう動を制限するように構成されている。この場合、好適な形式で、フリーホイールエレメントがストッパに当接して第2の軸と第1の軸とがさらに相対回動すると、第2の軸と摩擦エレメントとの間の摩擦力結合が克服されるので、第2の軸は摩擦エレメントに対して相対的に回動することができる。ストッパによって、特にコンパクトで構造的に正確に規定されたワンウェイクラッチの形態を得ることができる。
【0018】
好適な形式で、リセットエレメントは、ストッパとフリーホイールエレメントとの間で特に軸方向に配置されている。これによって、僅かな構成部分を有するワンウェイクラッチのコンパクトな構造が可能となる。
【0019】
好適な形式で、ストッパは、フリーホイールエレメントがストッパに当接すると、2つの歯列が互いに完全に解除されるように構成されている。つまり、ストッパは、このストッパに到達したときに2つの歯列がもはや接触しないように、摩擦エレメントに対するフリーホイールエレメントの、このような形式の相対的な並進的しゅう動を可能にする。これによって、ワンウェイクラッチの特に摩耗の少ない運転形式が保証され得る。
【0020】
さらに好適には、つる巻線機構は、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとのフリーホイール方向での相対的な回動時に相対的な並進的なしゅう動により2つの歯列の歯の噛み合いが解除されるように構成されている。さらにこのつる巻線機構は、ロック方向での相対的な回動時にフリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの相対的な並進的なしゅう動によって歯列の歯の噛み合いが接続されるように構成されている。つまり、フリーホイール方向での回動時に第1の軸と第2の軸とのトルク伝達が解消され、逆のロック方向での回動時にトルク伝達が可能となる。
【0021】
好適には、摩擦エレメントは軸方向でしゅう動不能に第2の軸に固定されている。この場合、特に第2の軸の部分領域と摩擦エレメントの部分領域とが軸方向で係合し合っている。この場合、好適には、摩擦エレメントは両側で軸方向にしゅう動不能に第2の軸に固定されている。
【0022】
好適な形式で、フリーホイールエレメントが、半径方向歯列によって軸方向でしゅう動可能であり、かつ周方向で回動不能に第1の軸に固定されている。半径方向歯列として、例えばキー溝結合がフリーホイールエレメントと第1の軸との間に形成されていてよい。例えば、半径方向歯列は、軸方向にまっすぐに、または代替として、はす歯歯列として形成されていてよい。これにより、機能が保証され、フリーホイールエレメントと第1の軸との間の確実なトルク伝達が簡単な形式で保証され得る。
【0023】
好適な形式で、歯列は鋸歯形歯列またはハース歯列(Hirth-Verzahnungen)として構成されている。鋸歯形歯列として、軸方向に対して相対的に様々な傾斜の歯面を有する歯列が挙げられる。この場合、各歯の2つの歯面は、例えば軸方向に対して平行に配置されていてよい。ハース歯列として、左右対称の歯を有する歯列が挙げられる。
【0024】
さらに、本発明は、以上説明したワンウェイクラッチを含有する、車両、特に二輪車、好適には電動自転車を提供する。
【0025】
好適には、車両は、第2の軸に特にトルクを伝達するように結合された駆動ユニットと、特にトルクを伝達するように第1の軸に結合されたクランク機構とを含有する。
【0026】
選択的または追加的に、好適には、二輪車、例えば電動自転車の後輪ハブにフリーホイールが設けられていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の好適な実施例によるワンウェイクラッチを備えた車両の簡略化された概略図である。
【
図2】
図1に示した車両の駆動部の詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を、図面に示した実施例を用いて説明する。図面には、機能的に同じ構成部分にはそれぞれ同じ符号が付けられている。
【0029】
図1は、本発明の好適な実施例によるワンウェイクラッチ1を含有する車両100の簡略化された概略図を示す。車両100は、筋力および/またはモータ動力で駆動可能な車両100、具体的には電動自転車である。
【0030】
車両100は駆動ユニット102を含有しており、この駆動ユニット102はモータを含有していて、このモータは特に電動モータである。このモータに、車両100の電気エネルギアキュムレータ109によって電気エネルギが供給され得る。
【0031】
駆動ユニット102は、電動自転車100のボトムブラケットの領域内に配置されている。モータを用いて生ぜしめられたモータトルクによって、筋力によって生ぜしめられた電動自転車100の運転者の踏力は、電動式にアシストされ得る。
【0032】
この場合、運転者の筋力は、クランクを含有するクランク機構104を介してクランクシャフト(図示せず)に加えられる。クランクシャフトは、第1の軸2に対して同軸的に配置されていて、特にトルクを伝達するように第1の軸2に結合されている。第1の軸2はクランク軸線15に沿って延在していて、第2の軸3に対して同軸的に配置されている(
図2および
図3参照)。第2の軸3は、トルクを伝達するように駆動ユニット102に結合されている。第2の軸3は、例えば駆動ユニット2の伝動装置の別の歯車からトルクが伝達され得る歯車である。
【0033】
駆動ユニット102は、生ぜしめられたモータトルクによって第2の軸3を駆動することができる。第2の軸3は第1の軸2に対して同軸的に配置されている。第1の軸2と第2の軸3との間に、相対的な回動を可能にするために軸受50が配置されている。この軸受50は、例えば固定リング51によって軸方向でしゅう動不能に第1の軸2に固定されていてよい。
【0034】
第1の軸2と第2の軸3との間にワンウェイクラッチ1が設けられており、このワンウェイクラッチ1は、第1の軸2および第2の軸3の相対的な回動方向に応じて、第1の軸2と第2の軸3との間でトルク伝達を生ぜしめるかまたは中断することができる。
【0035】
ワンウェイクラッチ1の正確な機能形式および構成を、以下に
図2および
図3を参照して詳細に説明する。
【0036】
ワンウェイクラッチ1は、第1の軸2および第2の軸3に対して概ね同軸的に配置されたフリーホイールエレメント4および摩擦エレメント5を含有している。
【0037】
フリーホイールエレメント4はディスク状に構成されていて、第1の軸2の外周面に直接配置されている。例えばはす歯状のキー溝結合の形で形成されていてよい半径方向歯列8によって、フリーホイールエレメント4は軸方向でしゅう動可能、かつ周方向で回動不能に第1の軸2に配置されている。
【0038】
フリーホイールエレメント4は軸方向の端面側に第2の端面歯列12を含有している。第2の軸3で、特に第2の軸3の半径方向外方に突き出すフランジに第1の端面歯列11が形成されている。第1の端面歯列11および第2の端面歯列12は、互いに入り込んで噛み合う際にトルク伝達を生ぜしめるように、設計されている。
【0039】
つまり、2つの端面歯列11,12が互いに入り込んで噛み合うまで、フリーホイールエレメント4が
図2に矢印Aによって示された方向で第1の端面歯列11に向かって右方向にしゅう動せしめられると、第2の軸3とフリーホイールエレメント4との間でトルク伝達が可能となる。したがって同様に、フリーホイールエレメント4と第1の軸2との間の半径方向歯列8によって、第1の軸2と第2の軸3との間のトルク伝達がフリーホイールエレメント4を介して可能となる。このような2つの端面歯列11,12が互いに入り込んで噛み合った状態は、歯列の接続状態と呼ばれる。
【0040】
2つの端面歯列11,12がもはや互いに入り込んで噛み合わなくなるまで、フリーホイールエレメント4が
図2に矢印Bで示された方向で左に第1の端面歯列11から離れる方向にしゅう動せしめられると、第2の軸3とフリーホイールエレメント4との間のトルク伝達およびひいては第1の軸2と第2の軸3との間のトルク伝達が中断される。このような2つの端面歯列11,12が互いに噛み合っていない状態は、歯列の解除状態と呼ばれる。
【0041】
したがって、歯列の接続および解除は、フリーホイールエレメント4が、第2の軸3に対して相対的に並びに特に第1の軸2に対しても相対的に、軸方向に沿って並進的にしゅう動せしめられることによって生ぜしめられる。
【0042】
この場合、このようなフリーホイールエレメント4の並進的なしゅう動は、第1の軸2と第2の軸3との相対的な回動に依存して所定の回動方向で、以下に記載されているように摩擦エレメント5によって生ぜしめられる。
【0043】
摩擦エレメント5は、中空軸としてまたは概ねスリーブ状に構成されていて、第1の軸2およびフリーホイールエレメント4の一部の半径方向外側に配置されている。この場合、摩擦エレメント5は軸方向でしゅう動不能に第2の軸3に固定されており、摩擦エレメント5および第2の軸3の相対的な回動が可能である。しかしながら、摩擦力結合が克服されないときに摩擦エレメント5が第2の軸3と一緒に回動するように作用する、周方向で予め定められた摩擦係合としての摩擦力結合が、摩擦エレメント5と第2の軸3との間に形成されている。
【0044】
ワンウェイクラッチ1はさらに、フリーホイールエレメント4と摩擦エレメント5との間に形成されたつる巻線機構6を含有している。つる巻線機構6は、図示の実施例では、摩擦エレメント5の半径方向内側とフリーホイールエレメント4の半径方向外側との間でねじ山を含有している。この場合、つる巻線機構6のねじ山は、ロック方向Cでの第1の軸2の相対回動時に、歯列が接続するように、つまりフリーホイールエレメント4が矢印Aの方向にしゅう動することによって2つの端面歯列11,12が噛み合うように作用するように、構成されている(
図2参照)。同様に、第1の軸2が逆のフリーホイール方向Dで相対回動すると、歯列の解除、つまりフリーホイールエレメント4が矢印Bの方向でしゅう動することによって2つの端面歯列11,12の歯の噛み合いの解除が生ぜしめられる。
【0045】
さらにワンウェイクラッチ1はストッパ7を含有しており、このストッパ7は、摩擦エレメント5に対して相対的なフリーホイールエレメント4の軸方向のしゅう動を制限する。ストッパ7は第2の軸2に構成されている。
【0046】
フリーホイールエレメント4が、ストッパ7に達する程度に大きくしゅう動せしめられて、第1の軸2がフリーホイール方向Dでさらに相対回動すると、摩擦エレメント5と第2の軸3との間の摩擦力結合が克服され、それによって摩擦エレメント5と第2の軸3とは互いに相対的に回動する。
【0047】
さらに、ワンウェイクラッチはリセットエレメント9を含有しており、このリセットエレメント9は、軸方向でストッパ7とフリーホイールエレメント4との間に配置されている。リセットエレメント9は軸方向スプリングディスクとして構成されている。詳しくは、リセットエレメント9はストッパ7に当接するディスク状のベース領域と、このベース領域から半径方向内方におよびフリーホイールエレメント4の方向に突き出す、フリーホイールエレメント4に当接する複数のスプリングフィンガとを有している。
【0048】
リセットエレメント9は、スプリングフィンガのばね力によって戻し力90をフリーホイールエレメント4に加えるように設計されている。したがって、フリーホイールエレメント4はリセットエレメント9によっていつでも第1の端面歯列11に向かう方向に押圧される。
【0049】
ワンウェイクラッチ1の構成要素、詳しくはリセットエレメント9、つる巻線機構6、および第2の軸3と摩擦エレメント5との間の摩擦力結合は、フリーホイールエレメント4と摩擦エレメント5とが互いにフリーホイール方向に相対回動する際につる巻線機構6および摩擦力結合によって、2つの端面歯列11,12を解除する、戻し力90よりも大きい解除力が生ぜしめられるように設計されている。これによって、フリーホイールエレメント4と摩擦エレメント5とが互いにフリーホイール方向で回動するときに、トルク伝達の中断が確実にワンウェイクラッチ1によって保証される。
【0050】
2つの端面歯列11,12の解除された状態で、つまりこれらの端面歯列11,12が互いに噛み合っていないときに、フリーホイールエレメント4と摩擦エレメント5との相対回動は停止されるので、つる巻線機構6および摩擦力結合の解除力も停止される。この場合、リセットエレメント9の戻し力90は、フリーホイールエレメント4が直ちに第1の端面歯列11に向かう方向に移動せしめられるように作用するので、2つの端面歯列11,12はすぐに互いに噛み合い状態にもたらされる。
【0051】
リセットエレメント9の戻し力90によるフリーホイールエレメント4の運動は、つる巻線機構6のねじ山が非セルフロッキング式に構成されていることによって可能である。これによって、解除力がもはや存在しないときに、リセットエレメント9はフリーホイールエレメント4を摩擦エレメント5に向かって相対的に軸方向でしゅう動させることができる。
【0052】
したがって、フリーホイール方向での回動の終了直後に、端面歯列11,12が直ちに再接続されることによって、その後直ちにトルク伝達が自動的に回復され、それによって、ワンウェイクラッチ1の特に短い反応時間が得られる。
【0053】
さらに、このワンウェイクラッチ1は前記リセットエレメント9なしでも提供され得る、ということを指摘しておく。このような形式のワンウェイクラッチ1は、特に簡単かつ安価な構造を有する点で優れている。好適には、この場合、ストッパ7として、(図示していない)止めリングを使用することができる。この場合、ワンウェイクラッチ1のロックは、端面歯列11,12がフリーホイールエレメント4の運動によってつる巻線機構6を用いて再び接続されることによって得られる。
【符号の説明】
【0054】
1 ワンウェイクラッチ
2 第1の軸
3 第2の軸
4 フリーホイールエレメント
5 摩擦エレメント
6 つる巻線機構
7 ストッパ
8 半径方向歯列
9 リセットエレメント
11 第1の端面歯列、第1の歯列
12 第2の端面歯列、第2の歯列
15 クランク軸線
50 軸受
51 固定リング
90 戻し力
100 車両、電動自転車
102 駆動ユニット
104 クランク機構
109 電気エネルギアキュムレータ
A,B 矢印
C ロック方向
D フリーホイール方向
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
この場合、運転者の筋力は、クランクを含有するクランク機構104を介してクランクシャフト(図示せず)に加えられる。クランクシャフトは、第1の軸2に対して同軸的に配置されていて、特にトルクを伝達するように第1の軸2に結合されている。第1の軸2はクランク軸線15に沿って延在していて、第2の軸3に対して同軸的に配置されている(
図2および
図3参照)。第2の軸3は、トルクを伝達するように駆動ユニット102に結合されている。第2の軸3は、例えば駆動ユニット
102の伝動装置の別の歯車からトルクが伝達され得る歯車である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
さらにワンウェイクラッチ1はストッパ7を含有しており、このストッパ7は、摩擦エレメント5に対して相対的なフリーホイールエレメント4の軸方向のしゅう動を制限する。ストッパ7は第2の軸3に構成されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)、特に二輪車のワンウェイクラッチにおいて、
第1の軸(2)と、
第1の歯列(11)を有する第2の軸(3)と、
第2の歯列(12)を有するフリーホイールエレメント(4)と、
摩擦エレメント(5)と、
を含有しており、
前記第1の歯列(11)および前記第2の歯列(12)は、互いに入り込んで噛み合う際に前記第2の軸(3)と前記フリーホイールエレメント(4)との間でトルク伝達を生ぜしめるように、設計されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は軸方向でしゅう動可能に前記第1の軸(2)に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は前記第1の軸(2)に対して相対的に周方向で回動不能に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)とは、つる巻線機構(6)によって互いに結合されており、該つる巻線機構(6)は、前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的な回動時に前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめるように設計されている、
ワンウェイクラッチ。
【請求項2】
前記つる巻線機構(6)がねじ山を含有している、
請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項3】
前記ねじ山が非セルフロッキング式に構成されている、
請求項2記載のワンウェイクラッチ。
【請求項4】
戻し力(90)を前記フリーホイールエレメント(4)に作用させるために配置および設計されたリセットエレメント(9)をさらに含有しており、前記戻し力(90)が前記第2の軸(3)の前記第1の歯列(11)に向かう方向に向けられている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項5】
前記摩擦力結合、前記つる巻線機構(6)および前記リセットエレメント(9)は、前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的な回動時に、前記リセットエレメント(9)の前記戻し力(90)よりも大きい解除力が摩擦力結合およびつる巻線機構によって生ぜしめられるように構成されている、
請求項4記載のワンウェイクラッチ。
【請求項6】
前記リセットエレメント(9)が軸方向スプリングディスクである、
請求項4記載のワンウェイクラッチ。
【請求項7】
前記第2の軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間で予め設定された摩擦力結合が周方向で形成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項8】
前記第2の軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が周方向で摩擦力を含有しており、および/または前記第2の軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が磁力を含有している、
請求項7記載のワンウェイクラッチ。
【請求項9】
前記摩擦エレメント(5)に対して相対的な前記フリーホイールエレメント(4)の並進的なしゅう動を制限するストッパ(7)をさらに含有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項10】
前記リセットエレメント(9)が前記ストッパ(7)と前記フリーホイールエレメント(4)との間に配置されている、
請求項9記載のワンウェイクラッチ。
【請求項11】
前記ストッパ(7)は、前記フリーホイールエレメント(4)が前記ストッパ(7)に当接すると前記歯列(11,12)が互いに完全に解除されるように構成されている、
請求項9記載のワンウェイクラッチ。
【請求項12】
前記つる巻線機構(6)は、フリーホイール方向での相対的な回動時に相応の相対的な並進的なしゅう動が前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを解除し、ロック方向での相対的な回動時に前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを接続するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項13】
前記摩擦エレメント(5)が軸方向でしゅう動不能に前記第2の軸(3)に固定されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項14】
前記フリーホイールエレメント(4)が半径方向歯列(8)によって軸方向でしゅう動可能、かつ周方向で回動不能に前記第1の軸(2)に固定されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項15】
車両、特に電動自転車において、請求項1から3までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ(1)を含有する、
車両。
【請求項16】
前記第2の軸(3)に結合された駆動ユニット(102)と前記第1の軸(2)に結合されたクランク機構(104)とを含有する、
請求項15記載の車両。
【外国語明細書】