(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095566
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電気自転車のモータによって提供される電動アシストを制御するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20240703BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211775
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】10 2022 214 308.6
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マネヴァルト メルリン マルティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気自転車のモータによって提供される電動アシストを制御するための方法100に関する。
【解決手段】方法は、自転車が第1の制限速度を下回る速度で移動するときの、第1の制御値S1に基づく前記モータによる電動アシストの制御101であって、前記第1の制御値S1を第1のコントロールアルゴリズム110を用いて算出する前記制御101と、移行段階終了後の、第2の制御値S2に基づく前記モータによる前記電動アシストの制御102であって、前記第2の制御値S2を第2のコントロールアルゴリズム120を用いて算出し、前記自転車の速度がリミット速度を受け入れるように前記第2のコントロールアルゴリズム120によって前記電動アシストを制御する前記制御102とを含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自転車(1)のモータ(2)によって提供される電動アシストを制御するための方法(100)において、
前記自転車(1)が第1の制限速度を下回る速度で移動するときの、第1の制御値(S1)に基づく前記モータ(2)による電動アシストの制御(101)であって、前記第1の制御値(S1)を第1のコントロールアルゴリズム(110)を用いて算出する前記制御(101)と、
移行段階終了後の、第2の制御値(S2)に基づく前記モータ(2)による前記電動アシストの制御(102)であって、前記第2の制御値(S2)を第2のコントロールアルゴリズム(120)を用いて算出し、前記自転車(1)の速度がリミット速度を受け入れるように前記第2のコントロールアルゴリズム(120)によって前記電動アシストを制御する前記制御(102)と、
を含んでいる方法(100)。
【請求項2】
前記方法が、さらに、前記自転車(1)を前記第1の制限速度を上回る速度で移動させるときの、前記移行段階における移行制御値(S3)に基づく前記モータ(2)による電動アシストの制御(103)であって、前記移行制御値(S3)を前記第1の制御値(S1)と前記第2の制御値(S2)とに基づいて算出する前記制御(103)を含んでいる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記移行段階は、所定の時間停止し、または、前記自転車(1)を第2の制限速度を上回る速度で移動させれば終了する、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記移行制御値(S3)および/または前記第2の制御値(S2)に基づく前記モータ(2)による前記電動アシストの前記制御(102)は、
-前記自転車(1)を所定のタイムインターバルにわたって前記第2の制限速度を上回る速度で移動させる場合、
-ペダル踏み回数が所定の第1の閾値を越えている場合、
-ドライバートルクが所定の第2の閾値を越えている場合、および/または、
-ドライバーパワーが所定の第3の閾値を越えている場合、
に初めて行われる、請求項2および3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記第1の制御値(S1)が、前記モータ(2)によって提供されるべきモータトルクまたは前記モータ(2)によって提供されるべきモータパワーに対する目標値であり、および/または、
前記第2の制御値(S2)が、前記モータ(2)によって提供されるべきモータトルクまたは前記モータ(2)によって提供されるべきモータパワーに対する目標値であり、および/または、
前記移行制御値(S3)が、前記モータ(2)によって提供されるべきモータトルクまたは前記モータ(2)によって提供されるべきモータパワーに対する目標値である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記第1のコントロールアルゴリズム(110)により、前記第1の制御値(S1)を、検知したドライバーパワーおよび/または検知したドライバートルクに基づいて求める、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
ドライバーが、ペダル踏み回数、ドライバートルクおよび/またはドライバーパワーの最小量を下回った場合に、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)により、前記自転車(1)の速度が前記リミット速度を受け入れるような電動アシストの制御を終了させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
現在のドライバートルクまたは現在のドライバーパワーに関係なく、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)により、前記自転車(1)の速度が前記リミット速度を受け入れるような電動アシストの制御を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記第1の制御値に基づく前記電動アシストの前記制御(101)と、前記第2の制御値(S2)に基づく前記電動アシストの前記制御(103)との間で交替が行われる場合に、前記電動アシストが連続的な過程を有するように前記移行制御値(S3)を求める、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記移行制御値(S3)を以下の式を用いて算出し、
M3=M1+f*(M2-M1)
ここで
M1は前記第1の制御値(S1)を表し、
M2は前記第2の制御値(S2)を表し、
M3は前記移行制御値(S3)を表し、そして
fは移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇または下降するパラメータである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記移行制御値(S3)が、前記第2の制御値(S2)および前記パラメータfで重みづけした前記第1の制御値(S1)のうちその都度より大きなほうの制御値に対応し、ここでfは移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇または下降するパラメータである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記第1のコントロールアルゴリズム(110)により、ユーザーによって影響を受ける前記第1のコントロールアルゴリズムの入力値の低域フィルタリングを、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)による場合よりも小さな強度で行い、および/または、前記第1のコントロールアルゴリズム(110)により、前記第1の制御値(S1)の低域フィルタリングを、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)による前記第2の制御値(S2)の低域フィルタリングよりも小さな強度で行う、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
電気自転車(1)のモータ(2)によって提供される電動アシストを制御するための装置(10)において、前記装置は、以下のために設置されており、すなわち
前記自転車(1)を、第1の制限速度を下回る速度で移動させる場合の、第1の制御値(S1)に基づく前記モータ(2)による電動アシストを制御するためであって、前記第1の制御値(S1)を第1のコントロールアルゴリズム(110)を用いて算出する前記電動アシストの制御のために、および、
前記モータ(2)による前記電動アシストを、移行段階終了後に、第2の制御値(S2)に基づいて制御するためであって、前記第2の制御値(S2)が、第2のコントロールアルゴリズム(120)により算出され、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)により、前記自転車(1)の速度がリミット速度を受け入れるように前記電動アシストを制御するために、
設置されている装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自転車のモータによって提供される電動アシストを制御するための方法に関するものである。本発明は、さらに、付属の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自転車の場合、ドライバーによってもたらされたトルクをアシストファクタと乗積させることで、これから電気自転車のモータによって提供されるモータトルクを求める場合が多い。このようにして、提供すべきモータの電動アシストを求めるためにドライバートルクが利用される。しかしながら、電動アシストはある程度まで行えばよいので、リミット速度においてはリミット機能によって電動アシストは軽減または調整され、最大許容リミット速度以降はモータアシストが調整されていなければならない。このリミット速度は、典型的には、法的規定に基づいて選定される。以下では、最大許容リミット速度(v_max)は、モータアシストが行うことができる最大許容速度(たとえば27.5km/h)を示すものとする。それ以下には、リミット機能がドライバーにとって快適なモータアシストの下りスロープを保証する速度範囲がある(たとえば24.5km/h-27.5km/h)。リミット速度(v_a)はリミット制限値以内であり(たとえば26km/h)、走行の際にリミット機能によって生じる速度を表す。
【0003】
しかしながら、通例、電気自転車の平均的なドライバーは、条件が許す限り、優先的には主にリミット制限値で走行する。ドイツでは、たとえば立法機関によりモータアシストは最大で25km/h+10%までしか許されていない。ドライバーがより高速で走行するのは、大抵は、ドライバーが必ずしも電動アシストを必要としておらず、しかもより高い速度を望んでいる場合だけである。ドライバーがより緩速で走行するのは、大抵は、使用可能なモータパワーを加えても自力でリミット速度に到達するのに十分でない場合だけであり、これはたとえば傾斜がある場合、或いは、ドライバーが状況的にこれを望んでいる場合、たとえば狭い場所にいる場合であることがある。
【0004】
最近では、電気自転車の制御は、第1に、ドライバーパワーおよび/またはドライバートルクから得られるモータパワーまたはモータトルクを算出することに基づいている。リミット速度でのモータの速度調整は追加的に行われるが、しかしながら、従来は、ドライバーが通常主にリミット速度で走行したがっていること、その際ドライバーが通常できるだけ高速で走行したがっていること、その際ドライバーができるだけリラックスして、すなわち小さな自力で走行したがっていることを合目的的に考慮していない。その結果、電気自転車における電動アシストのための従来公知の制御方法は、リミット速度の領域では、または、リミット速度へ接近する際に、最適とは言えない。
【0005】
特許文献1は、モータ駆動部を有する自転車のための速度制御装置を開示している。そこでは、入力装置で希望速度を予め選定することができる。
【0006】
特許文献2は、車両を縦方向に案内するための車間距離適合型速度制御器を備えた、eバイクのような筋力支援式車両を開示している。
【0007】
特許文献3は、利用者と補助モータによって作動可能な、電動自転車のような車両を記載している。車両は、補助モータが車両を停止状態から、または、比較的低速から、既定の制限速度まで、しかも利用者による駆動なしでも駆動するように補助モータに影響を与える制御装置を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013215759号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102017107205号明細書
【特許文献3】独国実用新案第202005006684号明細書
【発明の概要】
【0009】
電気自転車のモータによって提供される電動アシストを制御するための本発明による方法は、前記自転車が第1の制限速度を下回る速度で移動するときの、第1の制御値に基づく前記モータによる電動アシストの制御であって、前記第1の制御値を第1のコントロールアルゴリズムを用いて算出する前記制御と、移行段階終了後の、第2の制御値に基づく前記モータによる前記電動アシストの制御であって、前記第2の制御値を第2のコントロールアルゴリズムを用いて算出し、前記自転車の速度がリミット速度を受け入れるように前記第2のコントロールアルゴリズムによって前記電動アシストを制御する前記制御とを含んでいる。
【0010】
電気自転車のモータによって提供される電動アシストを制御するための本発明による装置は、以下のために設置されており、すなわち前記自転車を、第1の制限速度を下回る速度で移動させる場合の、第1の制御値に基づく前記モータによる電動アシストであって、前記第1の制御値を第1のコントロールアルゴリズムを用いて算出する前記電動アシストを制御するために、および、前記モータによる前記電動アシストを、移行段階終了後に第2の制御値に基づいて制御するためであって、前記第2の制御値が第2のコントロールアルゴリズムを用いて計算され、前記第2のコントロールアルゴリズムにより、前記自転車の速度がリミット速度を受け入れるように前記電動アシストを制御するために設置されている。
【0011】
リミット速度は、有利には、最大許容リミット速度に可能な限り近い。
【0012】
このように、電動アシストの制御のための制御値を発生させるために少なくとも2つのコントロールアルゴリズムを実施する。アルゴリズムは、自転車の作動中に連続的に実施するか、或いは、少なくとも、これから得られる制御値、すなわちモータによる電動アシストを制御するための制御値または移行制御値を発生させるための制御値が必要な場合に実施する。
【0013】
第1のコントロールアルゴリズムは、モータによる電動アシストを求めるために適した任意のコントロールアルゴリズムであってよい。
【0014】
第2のコントロールアルゴリズムは、自転車の速度がリミット速度を受け入れるように第2のコントロールアルゴリズムによって電動アシストが制御されるように構成されている。ドライバーがリミット速度付近で走行していると、電動アシストをリミット速度へ調整する。したがって、リミット速度は第2のコントロールアルゴリズムの目標値である。リミット制限値は、ドライバーにとって快適なコントロールに必要な、前記目標値を中心とする速度範囲である。その際、最大許容リミット速度は、これ以降はモータアシストが許されていないので、電動的にはこれを越えることはできない。このことは、電動アシストがドライバートルクまたはドライバーパワーに対し与えられた関係において変化せず、自転車を可能な限りリミット速度で移動させるように調整されることを意味している。特に、ドライバーの影響を最小限に抑えることができる。これは、典型的には、ドライバーパワーが小さくても自転車をモータによってアシストされる最大速度で移動させることを自転車のドライバーは望んでいるので、特に有利である。オプションで、自転車を第3の制限速度を下回る速度で移動させる場合にだけ、第2の制御値に基づくモータによる電動アシストの制御を行い、この場合第3の制限速度は、最大許容リミット速度よりも大きいか、最大許容リミット速度に等しい。すなわち、ドライバーによってもたらされたパワーが、最大許容リミット速度を越えて自転車を加速させるために十分であれば、有利には、第2の制御値および第2のコントロールアルゴリズムに基づく電動アシストの制御は行わない。
【0015】
移行制御値に基づくモータによる電動アシストの制御は、第1のコントロールアルゴリズムと第2のコントロールアルゴリズムとの間での快適な交替を可能にするために移行段階で行われる。すなわち、たとえば、第1の制御値に基づく電動アシストの制御から、第2の制御値による電動アシストの制御へダイレクトに交替させると、自転車をリミット速度へ驚くほどに加速させる可能性がある。これは、移行制御値によって回避される。
【0016】
移行制御値は、第1の制御値に基づいて、そして同時に第2の制御値に基づいて算出する。その際、第1の制御値に基づく電動アシストの制御と、第2の制御値に基づく電動アシストの制御との間で、連続的な移行が達成されれば、特に有利である。第1の制限速度を越えて自転車を加速させる際には、有利には、第2の制御値の重みづけをより強く増していく。すなわち、自転車がリミット速度またはリミット制限値に接近すればするほど、第2の制御値が電動アシストの制御に介入していく度合いが増していく。その際、たとえば第1の制御値に対する第2の制御値の繰り込みをある時間にわたって、たとえば3秒にわたって行ってよい。また、たとえば第1の制御値に対する第2の制御値の繰り出しをある時間にわたって、たとえば1秒にわたって減速時に行ってもよい。その際、第2の制御値の繰り込みまたは繰り出しの時間は、リミット速度/リミット制限値に対する接近に依存していてもよい。すなわち、自転車の速度がリミット速度/リミット制限値へ接近すればするほど、第2の制御値をより迅速に、より強く重みづけしてよい。第1の制御値に対する第2の制御値の重みづけは、現在の速度に依存して構成されていてよい。
【0017】
移行制御値に基づく、また第2の制御値にも基づくモータによる電動アシストの制御は、オプションでは更なるパラメータに依存していてよい。すなわち、たとえば、ドライバーパワーまたはドライバートルクも、移行制御値に基づくモータによる電動アシストの制御を行うべきかどうかの決定に対する追加のパラメータであってよい。したがって、たとえば、自転車の下り坂走行のために速度が最大許容リミット速度を越えれば、移行制御値に基づく電動アシストの制御を行わない場合に有利でありうる。
【0018】
自転車がリミット速度以下またはその前後の速度帯で走行していれば、第2のコントロールアルゴリズムによって与えられている択一的な方法をモータアシストのために使用すべきである。択一的に、自転車がすでに所定時間の間連続して前記速度帯で走行している場合にだけ前記択一的方法を使用してもよい。作動するための更なる条件は、ドライバーが最小量でペダルを踏んでいること、すなわちドライバーのペダル踏み回数および/またはトルクおよび/またはパワーが閾値を越えていることであってよい。ドライバーが最小量でペダルを踏んでいれば(ペダル踏み回数および/またはトルクおよび/またはパワーが閾値を越えている)、これを、最大のアシスト速度を伴う走行要望として解釈する。これから得られる利点は、ドライバーが非常にリラックスして大きな自力なしに一緒にセーリングできることである。典型的には、ドライバーの最小パワーは、通常ドライバーがリミット速度で踏まなければならない場合よりも著しく低い20Wであってよい。ドライバーによって最小量を下回れば、前記択一的方法を終了させる。自転車の速度が他の速度帯からずれている場合、または、ある程度の時間の間これが満たされている場合も同様である。
【0019】
特に、標準方法と択一的方法との間で連続的な移行を行い、すなわち第1のコントロールアルゴリズムをそのまま使用することと、第2のコントロールアルゴリズムをそのまま使用することとの間で連続的な移行を行う。すなわち、たとえば、ドライバーがリミット速度に接近すればするほど、または、接近していた時間が長ければ長いほど、第2のコントロールアルゴリズムはそれだけ強く作用する。特に、択一的方法の繰り込み、繰り出しの時間は、リミット速度/リミット制限値への接近にも依存していてよい(たとえば、リミット速度に接近すればするほど、繰り込みはそれだけ速い)。
【0020】
従属項は、本発明の有利な更なる構成を示している。
【0021】
有利には、さらに、自転車を第1の制限速度を上回る速度で移動させれば、移行段階で移行制御値に基づくモータによる電動アシストの制御を行い、この場合移行制御値を第1の制御値と第2の制御値とに基づいて算出する。
【0022】
有利には、移行段階は、所定の時間にわたって停止し、または、自転車を第2の制限速度を上回る速度で移動させれば終了する。したがって、移動段階の継続は有利には時間に依存しており、または、速度に依存している。
【0023】
有利には、第2の制御値に基づくモータによる電動アシストの制御は、自転車を所定のタイムインターバルにわたって第2の制限速度を上回る速度で移動させる場合、ペダル踏み回数が所定の第1の閾値を越えている場合、ドライバートルクが所定の第2の閾値を越えている場合、および/または、ドライバーパワーが所定の第3の閾値を越えている場合に初めて行われる。ペダル踏み回数、ドライバートルク、ドライバーパワーは、ドライバーの動作によって与えられる値であり、有利にはセンサを用いて検知して、それぞれの閾値と比較する。このようにして、第1の制限速度を越えても、必ずしも直接第2の制御値に基づいて電動アシストを制御するものでないことが達成される。というのは、これが常に望ましいとは限らないからである。移行段階の投入が望ましい状況は、前述したパラメータによって認知でき、すなわちタイムインターバル、ドライバーのペダル踏み回数、ドライバートルク、つまり自転車のドライバーによって現時点でもたらされたトルク、または、ドライパワーによって認知できる。これらパラメータの組み合わせ、または、これらパラメータすべての監視も有利である。このようにして、ドライバーにとって快適と感じられるような、モータの制御の直観的挙動が達成される。
【0024】
さらに有利には、第1の制御値は、モータによって提供されるべきモータトルクまたはモータによって提供されるべきモータパワーに対する目標値である。さらに有利には、第2の制御値は、モータによって提供されるべきモータトルクまたはモータによって提供されるべきモータパワーに対する目標値である。さらに有利には、移行制御値は、モータによって提供されるべきモータトルクまたはモータによって提供されるべきモータパワーに対する目標値である。このようにして、これら制御値は、好ましくはモータによって提供されるトルクまたはモータによって提供されるモータパワーに対し直接影響を及ぼすように特に選定される。
【0025】
有利には、第1のコントロールアルゴリズムにより、第1の制御値を、検知したドライバーパワーおよび/または検知したドライバートルクに基づいて求める。したがって、第1のコントロールアルゴリズムは有利には通常のコントロールアルゴリズムであり、この場合第1のコントロールアルゴリズムは、有利には、検知したドライバーパワーおよび/または検知したドライバートルクがアシストファクタの作用を受けることで、これから望ましいモータトルク、すなわち提供すべきモータトルク、または、提供すべきモータパワーを算出するように選定されている。
【0026】
有利には、ドライバーがペダル踏み回数、ドライバートルクおよび/またはドライバーパワーの最小量を下回った場合に、第2のコントロールアルゴリズムにより、自転車の速度がリミット速度を受け入れるような電動アシストの制御を終了させる。すなわち、第2のコントロールアルゴリズムにより、典型的には、現在のペダル踏み回数、現在の自転車トルクおよび現在の自転車パワーに関係なく、電動アシストを提供する。したがって、ドライバーが比較的ゆっくりペダルを踏んでも、または、ドライバーのパワーが比較的小さくても、自転車は緩速にならないであろう。それにもかかわらず、ブレーキを使用しなくとも減速走行を可能にするため、最小量に関して上記の値をチェックするのが有利である。すなわち、たとえば、ドライバーのペダル踏み過程を調整することは、走行が減速されるべきであることを典型的に示唆している。このようにして、第2の制御値に基づく電動アシストの制御と第2のコントロールアルゴリズムとを終了させるために、快適な手段が提供される。
【0027】
また、現在のドライバートルクまたは現在のドライバーパワーに関係なく、第2のコントロールアルゴリズムにより、自転車の速度がリミット速度を受け入れるような電動アシストの制御を行えば有利である。しかしながら、これは、ドライバートルクまたは現在のドライバーパワーの、最小量を上回るような値に対してのみ特に適用される。第2のコントロールアルゴリズムによれば、有利には、提供されるべきモータトルクまたは提供されるべきモータパワーはアシストファクタに基づかずに算出する。
【0028】
有利には、第1の制御値に基づく電動アシストの制御と、第2の制御値に基づく電動アシストの制御との間で交替が行われる場合に、電動アシストが連続的な過程を有するように移行制御値を求める。移行制御値は、有利には、自転車を加速させる電動アシストへ導くように選定されている。この加速も、有利には第2の制御値に依存している。したがって、第2のコントロールアルゴリズムによる電動アシストの制御への特に緩やかな移行が提供される。
【0029】
また、移行制御値を以下の式を用いて算出すれば有利である。
【0030】
【0031】
ここで、M1は第1の制御値を表し、M2は第2の制御値を表し、M3は移行制御値を表し、そしてfは移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇または下降するパラメータである。すなわち、移行制御値は、第1の制御値と第2の制御値との間での移行が時間に依存して選定されている場合に、所定の時間の間適用されるか、或いは、移行制御値は、電動アシストの制御が時間に関係なくコントロールされて、現在の速度に反応して制御される場合に、速度に依存しているかのいずれかである。パラメータfは、速度に依存して選定されていてよく、この場合パラメータは、たとえば測定した速度に基づいて求められるか、或いは、時間に依存して選定されていてよく、この場合パラメータは、作動しているタイマーに基づいて求められるかのいずれかである。パラメータfは、第1の制限速度での現在の値0から上昇して、移行段階の終了時の現在の値1へ上昇する。与えられた式により、第2の制御値の繰り込みが可能になる。これは、自転車の加速に対し適用される。同時に、第1の制御値の繰り出しが可能になる。これは、自転車の減速に対し適用される。
【0032】
これとは択一的に、移行制御値が、第2の制御値およびパラメータfで重みづけした第1の制御値のうちその都度より大きなほうの制御値に対応し、ここでfは移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇または下降するパラメータであれば有利である。
【0033】
したがって、第1の制御値が第2の制御値と同じ大きさであれば、第1の制御値をたとえば第2の制御値の上昇の際に代用する。したがって、第1の制御値と第2の制御値との間での連続的な移行を提供することもできる。
【0034】
第1のコントロールアルゴリズムにより、ユーザーによって影響を受ける第1のコントロールアルゴリズムの入力値の低域フィルタリングを、第2のコントロールアルゴリズムによる場合よりも小さな強度で行うのも有利である。この適用例では、制御方法は基本的に同じままであるが、しかしながら、1つまたは複数のパラメータ(ここではフィルタ定数)は第1または第2のコントロールアルゴリズムに依存している。したがって、第1のコントロールアルゴリズムはドライバーの動作に対してより反応性があり、すなわちより迅速に応答する。したがって、第2のコントロールアルゴリズムにより、使用者の動作に対し比較的緩速に反応するコントロールアルゴリズムが提供され、これによって、自転車をリミット速度前後で移動させる場合、連続的な運転感覚が提供される。第2のコントロールアルゴリズムにより、ドライバーにとってより快適な運転感覚を達成するのは有利な目標でありうる。というのは、ここではより緩慢なドライバートルクフィルタによってモータアシストがより安定に行われ、通常リミット制限値では、ドライバーはモータアシストの高度な反応性を期待しないからである。
【0035】
本発明による装置は、本発明による方法を実施するために適している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
次に、本発明のいくつかの実施例を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【
図1】本発明による装置を備えた自転車の概略図である。
【
図3】第1のコントロールアルゴリズムと第2のコントロールアルゴリズムとの間での移行を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による有利な第1および第2のコントロールアルゴリズムの例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による有利な第1および第2のコントロールアルゴリズムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は電気自転車1の概略図であり、電気自転車には、電気自転車1のモータ2によって提供される電動アシストを制御するための本発明による装置10が配置されている。本発明による装置10によって本発明による方法100を実施する。このため、装置10は有利には電子演算ユニットを含み、電子演算ユニットは方法100を実施させるソフトウェアを有している。
【0038】
図2は方法100の例示的なフローチャートを示している。方法100により、自転車1の現在の速度に依存して、モータ2によって提供される電動アシストの制御を行う。その際、第1の制御値S1、第2の制御値S2、または、移行制御値S3のいずれかを利用する。第1の制御値S1に基づくモータ2による電動アシストの制御101、第2の制御値S2に基づくモータ2による電動アシストの制御102、または、移行制御値S3に基づくモータ2による電動アシストの制御103のいずれかを行う。制御値S1ないしS3の提供は、
図2では並列態様で図示されている。オプションでは、各時点で第1の制御値S1と第2の制御値S2と移行制御値S3とを算出する。それぞれ1つの判定基準111,121,131に依存して、第1の制御値S1か、第2の制御値S2か、移行制御値S3かを、モータ2を制御するために適用ステップ140で適用する。第1の判定基準111が満たされていれば、第1の制御値S1をモータ2の制御のために適用する。第2の判定基準121が満たされていれば、第2の制御値S2をモータ2の制御のために適用する。第3の判定基準131が満たされていれば、移行制御値S3をモータ2の制御のために適用する。各時点ですべての制御値S1ないしS3を算出することは必ずしも必要でない。すなわち、たとえば、第1の制御値S1だけに基づいて電動アシストの制御を行うのであれば、第2の制御値S2の算出は省略できる。
【0039】
制御値S1ないしS3は、モータ2によって提供すべきモータトルクに対する、または、モータ2によって提供すべきモータパワーに対する目標値である。したがって、適用ステップ140で、たとえば現時点でのモータパワーまたは現時点でのモータトルクを検出して、電動アシストをより強化するか、或いは、より弱化させ、その結果モータ2によって提供されるモータトルク、または、モータ2によって提供されるモータパワーは、目標値を受け入れる。
【0040】
第1の制御値S1を、第1のコントロールアルゴリズム110を用いて算出する。第1の判定基準111を用いて、電気自転車1を第1の制限速度v1よりも小さな速度vで移動させるかどうかを調べる。第1の制限速度v1よりも小さな速度vで移動させる場合には、適用ステップ140でモータ2によって電動アシストを制御101するために第1の制御値S1を提供する。第1のコントロールアルゴリズム110によって、検知したドライバーパワーまたは検知したドライバートルクに基づいて第1の制御値S1を求める。すなわち、検知したドライバーパワーまたは検知したドライバートルクをたとえばアシストファクタと乗積することで、これから、提供すべきモータトルクまたは提供すべきモータパワーを算出する。なお、アシストファクタは速度依存であってよい。提供すべきモータトルクまたは提供すべきモータパワーにより第1の制御値S1を発生させて、提供する。
【0041】
第2の制御値S2を、第2のコントロールアルゴリズム120を用いて算出する。第2の判定基準121を用いて、電気自転車1を第2の制限速度v2よりも大きな速度vで移動させるかどうかを調べる。第2の制限速度v2よりも大きな速度vで移動させる場合には、適用ステップ140でモータ2によって電動アシストを制御101するために第2の制御値S2を提供する。自転車1の速度vがリミット速度vmaxを受け入れるように、第2のコントロールアルゴリズム120によって第2の制御値S2による電動アシストを制御する。これは、自転車1がリミット速度vmaxで移動するように、電動アシストを第2のコントロールアルゴリズム120により調整することを意味している。これは、さしあたり、現在のドライバートルクまたは現在のドライバーパワーとは関係なく行う。すなわち、第2のコントロールアルゴリズム120の枠内では特にアシストファクタは考慮しない。第2のコントロールアルゴリズムにより、電気自転車1を運転する際のいわゆるセーリング走行または滑走が可能になる。これは、リミット速度vmaxで一定に移動するために、ドライバーは比較的少ないエネルギーを消費すればよいことを意味している。
【0042】
第1の制御値S1に基づくモータ2による電動アシストの制御101と、第2の制御値S2に基づくモータ2による電動アシストの制御102との間の移行は、移行段階で行われる。移行段階では、移行制御値S3に基づくモータ2による電動アシストの制御103を行う。移行制御値は、第1の制御値S1と第2の制御値S2とに基づいて算出ステップ130で算出される。
【0043】
移行制御値S3は、算出ステップ130で異なる態様で行ってよい。有利には、移行制御値S3は、第1の制御値S1および第2の制御値S2のうちその都度大きいほうの制御値に対応するように選定する。この事例では、算出ステップ130で第3の制御値S3を次のように算出する。
【0044】
【0045】
なお、パラメータM1は第1の制御値S1を、パラメータM2は第2の制御値S2を、パラメータM3は移行制御値S3を表し、パラメータfは、移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇する、或いは、1から0へ下降するパラメータである。その際、パラメータfは第2の制御値S2による制御への移行の際に上昇し、そしてパラメータfは第1の制御値S1による制御への移行の際に下降する。
【0046】
これとは択一的に、移行制御値S3を次の式を用いて算出してよい。
【0047】
【0048】
なお、パラメータM1は第1の制御値S1を、パラメータM2は第2の制御値S2を、パラメータM3は移行制御値S3を表し、パラメータfは、移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇する、或いは、1から0へ下降するパラメータである。その際、パラメータfは第2の制御値S2による制御への移行の際に上昇し、そしてパラメータfは第1の制御値S1による制御への移行の際に下降する。
【0049】
前述した2つの例におけるパラメータfは、有利には、連続的に上昇し、或いは、連続的に下降する。その際、パラメータfが上昇するか下降するかは、第1のコントロールアルゴリズム110から第2のコントロールアルゴリズム120への移行を行うか、または、その逆の態様で行うかに依存している。その際パラメータfは、有利には、第1のコントロールアルゴリズム110から第2のコントロールアルゴリズム120への交替を行うと、上昇する。
【0050】
いずれの場合も、電動アシストが連続的な過程を有するように移行制御値S3を求めれば有利である。すなわち、特に適用した制御値の推移も連続的であり、したがって、モータによるアシストを制御するために、第1の制御値と第2の制御値と移行制御値S1,S2,S3から構成される、連続的に推移する制御値を適用する。
【0051】
図2に図示した例の場合、移行段階は第1の制限速度v
1を越えると始まり、第2の制限速度v
2を越えると終わる。しかしながら、択一的に、移行段階は所定の時間にわたって継続するようにスタートしてもよく、たとえば第1の制御値S1に基づく電動アシストの制御から、第2の制御値S2に基づく電動アシストの制御への移行の際に、3秒にわたって継続するように、或いは、たとえば逆の移行の際に、すなわち第2の制御値S2に基づく電動アシストの制御から、第1の制御値S1に基づく電動アシストの制御への移行の際に、1秒にわたって継続するように、スタートしてもよい。
【0052】
リミット速度vmaxに対する例示的な値は、25km/hである。第1の制限速度v1に対する例示的な値は、80%*vmaxである。第2の制限速度v2に対する例示的な値は、90%*vmaxである。
【0053】
現在の速度vが第1の制限速度v1よりも大きいか等しいように自転車1がドライバーによって加速されると、移行段階で移行制御値S3に基づくモータ2による電動アシストの制御を行う。これは、第2の制御値S2に基づくモータ2による電動アシストの制御102への移行を提供するという意図をもって行われる。
【0054】
移行段階が終了したならば、第2の制御値S2に基づくモータ2による電動アシストの制御102を行う。
【0055】
このようにして、移行段階により、第1のコントロールアルゴリズムと第2のコントロールアルゴリズム120との間での移行が提供される。しかしながら、自転車1の速度vだけに基づいて移行段階を開始すると、第1のアシスト速度v1よりも上の高い速度であっても、たとえば自転車1の短時間の山道下り走行のようなたとえば現在の周囲条件に基づく高い速度であっても、移行段階が始まり得るという結果になる。このような事例では、第2の制御アルゴリズムによる電動アシストの制御への移行のために移行段階を行うことは必ずしも望ましいことではない。したがって、移行段階をスタートさせるために更なる条件が満たされていなければならない場合に有利である。この移行条件とは、たとえば、移行段階をスタートさせるために、自転車1を所定のタイムインターバルにわたって第1の制限速度v1よりも上の速度で移動させることであってよい。択一的にまたは追加的に、移行段階を開始させるには、ペダル踏み回数が所定の第1の閾値よりも上でなければならない。択一的にまたは追加的に、移行段階を開始させるには、ドライバートルクが所定の第2の閾値よりも上および/またはドライバーパワーが所定の第3の閾値よりも上でなければならない。これらの条件はすべて、自転車をリミット速度vmaxへ加速させてこの速度で保持させようとする適当なエネルギーが自転車1のドライバーからもたらされることを推量させる。
【0056】
第2のコントロールアルゴリズム120により、ドライバートルクおよび現在のドライバーパワーとは独立に電動アシストを提供する。これは、ペダル踏み過程の終了の際にも、自転車1のドライバーによって自転車1の速度vが低下しないことになる可能性がある。というのは、この自転車1の速度vがモータ2の電動アシストによって保持され、この電動アシストによってリミット速度vmaxへのコントロールが行われるからである。第2のコントロールアルゴリズム120に基づく電動アシストの制御は、たとえば、自転車1の速度vを第1の制限速度v1以下へ減速させるようにして自転車1のブレーキを操作することによって終了させることができる。エコノミックなパフォーマンスを達成するため、第2の制御値S2に基づく電動アシストの制御102から、第1の制御値S1に基づくモータ2による電動アシストの制御101への移行を導くようなアボート条件が定義されていれば、有利である。すなわち、たとえばペダル踏み回数、ドライバートルクおよび/またはドライバーパワーの最小量が定義されていて、この最小量を下回れば、第2のコントロールアルゴリズムに基づく電動アシストの制御を終了させれば、有利である。この事例では、第1の制御値S1に基づく電動アシストの制御への移行のための移行段階が実施される。
【0057】
第1のコントロールアルゴリズム110は、有利には、第2のコントロールアルゴリズム120による事例の場合よりも電動アシストの比較的より敏捷なパフォーマンスを提供するように構成されている。このため、たとえば第2のコントロールアルゴリズム120で、第2のコントロールアルゴリズム120の入力値または出力値の比較的強い低域フィルタリングを行うならば、有利である。なお、第2のコントロールアルゴリズム120の出力値とは第2の制御値S2である。このような低域フィルタリングにより、第2の制御値S2の推移において尖部が除去され、したがって特に連続的な走行が達成される。よって、滑走の感覚が助長される。これとは逆に、まさに自転車1の始動後の加速時においては、すなわち第1のコントロールアルゴリズム110が動作している場合には、ダイナミックな処理が望ましいことがある。それ故、第1の制御値S1に対し比較的弱めの低域フィルタリングを行うか、或いは、低域フィルタリングを行わなければ有利である。これは、同様に第1のコントロールアルゴリズムの入力パラメータに対し適用され、すなわち提供されたドライバートルクまたは提供されたドライバーパワーの時間的経過に対し適用される。
【0058】
図3はパラメータfの概要図を示し、この場合第1のコントロールアルゴリズムの使用と、第1の制御値S1の適用と、後に行われる第2のコントロールアルゴリズム120および第2の制御値S2の適用との間の移行が図示されている。パラメータfは移行段階においてたとえば直線的に上昇していることがわかる。しかしながら、パラメータfの検出のための他の曲線形状も有利であり、すなわち、たとえば速度の上昇に伴ってパラメータfがより迅速に上昇してよい。
【0059】
図4は、本発明の一実施形態による、例示的な第1のコントロールアルゴリズム110と例示的な第2のコントロールアルゴリズム120との有利な組み合わせを示している。すなわち、第1のコントロールアルゴリズム110により、たとえばドライバーによって要求されたモータトルク112を検知し、比較115を介して最大許容モータトルク113と比較する。これよりも小さなそれぞれのモータトルクは、乗積ステップ116においてリミットファクタ114と乗積させることで、出力ステップ117で第1の制御値S1を求める。なお、リミットファクタとは、リミット速度v
maxよりも上の電動アシストを制限するパラメータである。したがってリミットファクタは、リミット速度v
maxよりも上であれば値0へ低下し、これによってリミット速度v
maxよりも上の電動アシストの提供が回避される。
【0060】
第2のコントロールアルゴリズム120では、ドライバーによって要求されたモータトルク112は考慮せずに、乗積ステップ124において、最大許容モータトルク122をリミットファクタ123と乗積させる。その結果、出力ステップ125において、この乗積の結果として第2の制御値S2を出力させる。各時点で最大許容モータトルクが要求されることにより自転車1が加速されることになり、したがってそのために最大許容モータトルクは十分である。しかしながら、速度は第1のコントロールアルゴリズム110に対応して構成されているリミットファクタ123によって制限される。したがって、第2のコントロールアルゴリズム120はドライバーによって要求されたモータトルク112に依存していない。
【0061】
図5は、第1および第2のコントロールアルゴリズム110,120の択一的構成を示している。その際、第1のコントロールアルゴリズム110は
図4に示した第1のコントロールアルゴリズム110に対応している。
【0062】
その際、第2のコントロールアルゴリズム120は、
図4に図示した第2のコントロールアルゴリズム120に比べて次のように修正されており、すなわち比較ステップ127において、最大許容モータトルク122を、ドライバーによって要求されてフィルタリングされたモータトルク126と比較して、それぞれより小さな値のほうを乗積ステップ124においてリミットファクタ123と乗積させることで第2の制御値S2を求めるように、修正されている。その際、ドライバーによって要求されたモータトルク126は低域フィルタを介してフィルタリングする。この第2のコントロールアルゴリズム120でも、リミット速度v
maxが受け入れられるように電動アシストの制御を行う。ただし、ドライバーによって要求されたモータトルク126がリミット速度v
maxへの加速のために十分であったとしても、必ずしも最大許容モータトルク122を調達しない。
【0063】
第2のコントロールアルゴリズムで与えられる択一的リミット方法により、電動アシストを用いて最大許容アシスト速度または目標速度は可能な限りこれよりもわずかに下に調整すべきであり、しかも(ドライバーが択一的な方法を終了させない限り)ドライバーが何をするかに関係なく調整すべきである。
【0064】
現今の方法においては、速度調整におけるモータアシストは典型的には、ドライバーがどの程度強くペダルを踏むかにいまだに依存している。これによってドライバーによる駆動トルクへの影響が存在し、ドライバーによる駆動トルクの影響は、一方では速度の望ましくない変動を生じさせ、他方ではドライバーにある程度の自己負担を代償として要求する。もっとも簡単な事例では、電気自転車1が目標速度よりも低速で走行すれば、モータトルクは連続的に上昇し、電気自転車1が目標速度よりも高速で走行すれば、モータトルクは連続的に減少する。有利な事例では、目標速度前後で(過剰)振動が起きた場合にこれをできるだけ緩衝させるために、目標速度で加速も最小にさせようと試みられる。
【0065】
前記択一的リミット方法は、速度調整でのより静穏な走行を可能にさせるためにドライバーの影響を抑制する。通常は、速度調整においてもモータトルク要求はフィルタリングしたドライバートルクに依存している。フィルタは、スポーツモードでは比較的反応性があるように構成され、その結果ドライバーサイン(Fahrersinus)は抑制されるが、それにもかかわらずモータトルクはドライバートルクの変化に反応して追従する。しかし、速度調整では、ドライバーはリラックスして安定して走行(クルーズ)したいので、反応性が不快な場合がある。いまや、択一的リミット方法は、モータトルクにとって基本的なドライバートルクを通常作動時よりも強く低域フィルタリングすることによって、速度調整においてより安定した走行を可能にさせることができる。対応的に、速度調整機能に関与する算出モータトルク要求も(より強く)フィルタリングすることができる。
【0066】
利点は、とりわけ、vmaxの調整により、実際に可能な限り正確にvmaxに到達することがドライバーにとってより簡単で、よりリラックスして可能なことである。電気自転車1がリミット速度に「ギアを入れた」ように感じられ、ドライバーがドライバートルクまたはドライバーパワーの減少によって中止への命令をアクティブに出さない限り、電気自転車はドライバーを最大速度で引っ張る。その結果、スリップストリーム効果が得られ、ドライバーは一緒に引っ張られているように感じる。
【0067】
2つの異なる制御/調整方法のより穏やかな移行のために、既存の制御と速度調整とを比例的に作用させること、または、移行領域においてこれら方法を連続的に互いに移行させることが考えられる。
【0068】
有利には、第2のコントロールアルゴリズムは特定の区間でのみ使用可能であり、このことはたとえばジオフェンシングによって達成できる。すなわち、移行段階をたとえば自転車専用道路のみで導入する。
【0069】
上記の言葉による開示事項以外に、
図1ないし
図5の開示事項を明確に指摘しておく。
【符号の説明】
【0070】
1 電気自転車
2 モータ
100 電動アシストを制御するための方法
101 第1の制御値に基づく電動アシストの制御
102 第2の制御値に基づく電動アシストの制御
103 移行制御値に基づく電動アシストの制御
110 第1のコントロールアルゴリズム
120 第2のコントロールアルゴリズム
f 移行段階に伴い速度または時間に依存して0から1へ上昇または下降するパラメータ
M1 第1の制御値
M2 第2の制御値
M3 移行制御値
S1 第1の制御値
S2 第2の制御値
S3 移行制御値
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自転車(1)のモータ(2)によって提供される電動アシストを制御するための方法(100)において、
前記自転車(1)が第1の制限速度を下回る速度で移動するときの、第1の制御値(S1)に基づく前記モータ(2)による電動アシストの制御(101)であって、前記第1の制御値(S1)を第1のコントロールアルゴリズム(110)を用いて算出する前記制御(101)と、
移行段階終了後の、第2の制御値(S2)に基づく前記モータ(2)による前記電動アシストの制御(102)であって、前記第2の制御値(S2)を第2のコントロールアルゴリズム(120)を用いて算出し、前記自転車(1)の速度がリミット速度を受け入れるように前記第2のコントロールアルゴリズム(120)によって前記電動アシストを制御する前記制御(102)と、
を含んでいる方法(100)。
【請求項2】
前記方法が、さらに、前記自転車(1)を前記第1の制限速度を上回る速度で移動させるときの、前記移行段階における移行制御値(S3)に基づく前記モータ(2)による電動アシストの制御(103)であって、前記移行制御値(S3)を前記第1の制御値(S1)と前記第2の制御値(S2)とに基づいて算出する前記制御(103)を含んでいる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記移行段階は、所定の時間停止し、または、前記自転車(1)を第2の制限速度を上回る速度で移動させれば終了する、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記移行制御値(S3)および/または前記第2の制御値(S2)に基づく前記モータ(2)による前記電動アシストの前記制御(102)は、
-前記自転車(1)を所定のタイムインターバルにわたって前記第2の制限速度を上回る速度で移動させる場合、
-ペダル踏み回数が所定の第1の閾値を越えている場合、
-ドライバートルクが所定の第2の閾値を越えている場合、および/または、
-ドライバーパワーが所定の第3の閾値を越えている場合、
に初めて行われる、請求項2または3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記第1の制御値(S1)が、前記モータ(2)によって提供されるべきモータトルクまたは前記モータ(2)によって提供されるべきモータパワーに対する目標値であり、および/または、
前記第2の制御値(S2)が、前記モータ(2)によって提供されるべきモータトルクまたは前記モータ(2)によって提供されるべきモータパワーに対する目標値であり、および/または、
前記移行制御値(S3)が、前記モータ(2)によって提供されるべきモータトルクまたは前記モータ(2)によって提供されるべきモータパワーに対する目標値である、
請求項2または3に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記第1のコントロールアルゴリズム(110)により、前記第1の制御値(S1)を、検知したドライバーパワーおよび/または検知したドライバートルクに基づいて求める、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項7】
ドライバーが、ペダル踏み回数、ドライバートルクおよび/またはドライバーパワーの最小量を下回った場合に、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)により、前記自転車(1)の速度が前記リミット速度を受け入れるような電動アシストの制御を終了させる、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項8】
現在のドライバートルクまたは現在のドライバーパワーに関係なく、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)により、前記自転車(1)の速度が前記リミット速度を受け入れるような電動アシストの制御を行う、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記第1の制御値に基づく前記電動アシストの前記制御(101)と、前記第2の制御値(S2)に基づく前記電動アシストの前記制御(103)との間で交替が行われる場合に、前記電動アシストが連続的な過程を有するように前記移行制御値(S3)を求める、請求項2または3に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記移行制御値(S3)を以下の式を用いて算出し、
M3=M1+f*(M2-M1)
ここで
M1は前記第1の制御値(S1)を表し、
M2は前記第2の制御値(S2)を表し、
M3は前記移行制御値(S3)を表し、そして
fは移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇または下降するパラメータである、
請求項2または3に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記移行制御値(S3)が、前記第2の制御値(S2)および前記パラメータfで重みづけした前記第1の制御値(S1)のうちその都度より大きなほうの制御値に対応し、ここでfは移行段階に伴い速度に依存してまたは時間に依存して0から1へ上昇または下降するパラメータである、請求項2または3に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記第1のコントロールアルゴリズム(110)により、ユーザーによって影響を受ける前記第1のコントロールアルゴリズムの入力値の低域フィルタリングを、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)による場合よりも小さな強度で行い、および/または、前記第1のコントロールアルゴリズム(110)により、前記第1の制御値(S1)の低域フィルタリングを、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)による前記第2の制御値(S2)の低域フィルタリングよりも小さな強度で行う、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
電気自転車(1)のモータ(2)によって提供される電動アシストを制御するための装置(10)において、前記装置は、以下のために設置されており、すなわち
前記自転車(1)を、第1の制限速度を下回る速度で移動させる場合の、第1の制御値(S1)に基づく前記モータ(2)による電動アシストを制御するためであって、前記第1の制御値(S1)を第1のコントロールアルゴリズム(110)を用いて算出する前記電動アシストの制御のために、および、
前記モータ(2)による前記電動アシストを、移行段階終了後に、第2の制御値(S2)に基づいて制御するためであって、前記第2の制御値(S2)が、第2のコントロールアルゴリズム(120)により算出され、前記第2のコントロールアルゴリズム(120)により、前記自転車(1)の速度がリミット速度を受け入れるように前記電動アシストを制御するために、
設置されている装置(10)。
【外国語明細書】