(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095568
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】カテーテルコネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61M39/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212625
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2022211292
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(72)【発明者】
【氏名】坂口 丈治
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066JJ02
4C066JJ07
(57)【要約】
【課題】カテーテルの一端を着脱自在に接続するコネクタにおいて、締め付け解除後にコネクタからのカテーテル取り外しが容易にできるとともに、カテーテルとの接続が確実で液漏れのないカテーテルコネクタを提供する。
【解決手段】カテーテルコネクタは、カテーテルを通す通孔を備えるゴム弾性部材よりなる締め付けリング4と、締め付けリング4を内腔に収容するコネクタ本体1と、コネクタ本体1と共に締め付けリング4を挟み込むコネクタキャップ2と、コネクタ本体1に対してコネクタキャップ2を軸方向にスライドし、締め付けリングへの押圧、及び、その解除をするスライド手段3により構成し、前記締め付けリング4は軸方向への圧縮及び復元の特性が異なる第一の領域と第二の領域を備えている。そして、第一の領域には凹部を設けたり、軟質材料を用いたりすることで、第二の領域に優先して圧縮及び/又は復元が開始される変形起点域となるよう形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを通す通孔を備えるゴム弾性部材よりなる締め付けリングと、
該締め付けリングを内腔に収容する筒部を備えるコネクタ本体と、
該コネクタ本体と共に前記締め付けリングを挟み込む態様でコネクタ本体に組み付けるコネクタキャップと、
前記コネクタ本体に対してコネクタキャップを軸方向に相対的にスライドし、締め付けリングへの押圧、及び、その解除をするスライド手段により構成し、
前記締め付けリングは、軸方向への圧縮及び復元の特性が異なる第一の領域と第二の領域を備え、第一の領域は第二の領域に優先して圧縮が開始される変形起点域となることを特徴とするカテーテルコネクタ。
【請求項2】
前記第一の領域は、前記スライド手段による押圧を解除した際、前記第二の領域に優先して復元が開始される復元起点域となる請求項1のカテーテルコネクタ。
【請求項3】
前記第一の領域は、前記スライド手段により押圧された圧縮状態において、前記第二の領域と比較してコネクタ本体の内面への押圧が小さい請求項2のカテーテルコネクタ。
【請求項4】
前記第一の領域には、外周面に凹部が設けられる請求項3のカテーテルコネクタ。
【請求項5】
前記凹部は、規則的に連続して複数設けられる請求項4のカテーテルコネクタ。
【請求項6】
前記凹部は、前記締め付けリングの外周面に周方向と平行に形成される一つ以上の凹条溝である請求項4のカテーテルコネクタ。
【請求項7】
前記第二の領域は、前記スライド手段による押圧を解除した際、前記第一の領域に優先して復元が開始される復元起点域となる請求項1のテーテルコネクタ。
【請求項8】
前記第二の領域は、前記スライド手段により押圧された圧縮状態において、前記第一の領域と比較してコネクタ本体の内面への押圧が小さい請求項7のカテーテルコネクタ。
【請求項9】
前記第一の領域は、前記第二の領域よりも弾性特性が低く設定され、前記締め付けリングの周方向に沿って少なくとも一箇所以上設けられる請求項8のカテーテルコネクタ。
【請求項10】
前記第一の領域は前記第二の領域と比較して軟質な材料から形成される請求項8のカテーテルコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルを薬液注入器具に連結するための接続器具であって、カテーテルの一端側に着脱自在に接続されるカテーテルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬膜外麻酔用のカテーテルをシリンジ等の薬液注入器具と連結するカテーテルコネクタとして、筒状の内腔を備えたコネクタ本体の中に、カテーテルを通すための通孔を備えたゴム弾性を有する締め付けリングを入れ、該締め付けリングを圧縮することで幅方向に膨張し内径が縮小、外径が拡大し、細径となった通孔でカテーテルを固定し、太径となった外周面がコネクタ本体と密着することで液漏れを防ぐコネクタが知られている。
【0003】
しかし、該締め付けリングが長い時間圧縮されることで、ゴム材の特性により圧縮を解除しても締め付けリングの外周面がコネクタ本体の内壁に張り付き、該リングの形状が容易に元に戻らず、カテーテルの抜去や再接続が必要な際に不都合が生じるといった問題があった。これを解消する器具として、前記締め付けリングを収容するコネクタ本体の筒部内腔壁面の一部に軸方向と並列する複数の凹条溝を備えたカテーテルコネクタが提案された。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のカテーテルコネクタは、コネクタ本体の内腔の壁面に凹条溝を備えているため、締め付けリング外周面との接触面(密着面)が小さく、接触摩擦抵抗が低減するなどにより、締め付けリングへの圧縮を解除したさい該締め付けリングが圧縮前の元の形状に戻りやすい構造になっている。
【0006】
反面、圧縮時も締め付けリングの外周面とコネクタ本体の内腔壁面との間に隙間が残ることで、気密性が不確かになり、液漏れの原因となる場合がある。また、コネクタ本体の内腔壁面に前記凹条溝を形成しても、前記締め付けリングを押し潰したさい、締め付けリングに不均一な圧縮が生じ、前記締め付けリングが折れ曲がるなど、押圧解除時も前記締め付けリングの一部が前記内腔壁面に張り付いたまま、内腔壁面から離れず元の形状に戻らない場合がある。
【0007】
そこで本発明は、締め付け解除後にコネクタからのカテーテル取り外しが容易にできるとともに、カテーテルとの接続が確実で液漏れのないカテーテルコネクタを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカテーテルコネクタは、カテーテルを通す通孔を備えるゴム弾性部材よりなる締め付けリングと、該締め付けリングを内腔に収容する筒部を備えるコネクタ本体と、該コネクタ本体と共に前記締め付けリングを挟み込む態様でコネクタ本体に組み付けるコネクタキャップと、前記コネクタ本体に対してコネクタキャップを軸方向に相対的にスライドし、締め付けリングへの押圧、及び、その解除をするスライド手段により構成し、前記締め付けリングは、軸方向への圧縮及び復元の特性が異なる第一の領域と第二の領域を備え、第一の領域は第二の領域に優先して圧縮が開始される変形起点域として形成した。
【0009】
前記第一の領域は、スライド手段による押圧を解除した際、前記第二の領域に優先して復元が開始される復元起点域ともなり、スライド手段により締め付けリングが圧縮された際に、前記第二の領域と比較してコネクタ本体への押圧が小さくなるよう設定した。具体的には、前記締め付けリングの外周面に凹部を形成する領域を備えるもので、好ましい凹部の構成として、該凹部を規則的に連続して複数形成する構成、あるいは、前記締め付けリングの周方向に凹条溝を形成する構成とした。
【0010】
また別の態様として、前記第二の領域が、前記スライド手段による押圧を解除した際、前記第一の領域に優先して復元が開始される復元起点域として形成されても良く、この場合前記第二の領域は、スライド手段により締め付けリングが圧縮された際に、前記第一の領域と比較してコネクタ本体への押圧が小さくなるよう設定した。具体的には、前記第一の領域を、前記締め付けリングの周方向に一つ以上、前記第二の領域よりも弾性特性が低くなるよう前記第二の領域と比較して軟質な材料で形成した。
【発明の効果】
【0011】
前記手段のカテーテルコネクタによると、締め付け解除後にコネクタからのカテーテル取り外しが容易にできるとともに、カテーテルとの接続が確実で液漏れのないカテーテルコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一の実施の形態のカテーテルコネクタの全体構成図。(クランプレバーを開いた状態)
【
図2】前記形態のクランプレバーを開いた状態の側面図。
【
図3】前記形態のクランプレバーを閉じた状態の側面断面図。
【
図4】前記形態のコネクタ本体の内部に収容されている締め付けリングの外観図。
【
図5】前記形態の締め付けリングにおける凹条溝のバリエーションを示す側面図。
【
図6】前記形態のコネクタ本体の斜視図及び側面図。
【
図7】前記形態のコネクタキャップの斜視図及び側面図。
【
図8】前記形態のクランプレバーの斜視図及び側面図。
【
図10】本発明の第二の実施の形態における締め付けリングの一部断面側面図。
【
図11】本発明の第三の実施の形態における締め付けリングの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のカテーテルコネクタの第一の実施の形態について図面を参考に詳細に説明する。本明細書では、要素ごとに、カテーテルコネクタ操作時における医療従事者側を近位側、患者側を遠位側とする。
また、この種のコネクタに採用される前記のスライド手段としては、コネクタキャップとコネクタ本体をねじ機構により接続し、ねじの締め付けおよび解放でコネクタキャップをスライドさせるねじ式と、コネクタ本体に組み付けられるコネクタキャップをクランプレバーの開閉やその他の手段によりスライドさせるクランプ式などが考えられるが、ここでは代表例としてクランプレバー式コネクタの例についてのみ記載する。なお、本発明のコネクタがねじ式や他のクランプ式コネクタを除外するものではない。
【0014】
図1は、本実施の形態のカテーテルコネクタのクランプレバーを開いた状態の全体構成図を示し、
図2は前記状態の側面図を示している。また、
図3は、前記形態のクランプレバーを閉じ、カテーテルが固定された状態の側面断面図を示している。なお、
図3の断面図において理解を容易とするため、カテーテルを破線で示している。
【0015】
本形態のカテーテルコネクタは、硬膜外麻酔用カテーテル等のカテーテルの一端部を接続して、該カテーテルに麻酔薬等を注入する器具(シリンジや持続注入器等)を結合するためのコネクタとして用いられるもので、カテーテルが貫通する貫通孔41を備えるゴム弾性部材よりなる締め付けリング4と、該締め付けリング4を内腔120に収容する筒部12、及び、薬液注入器具との接続部(テーパー部)11を備えるコネクタ本体1と、コネクタ本体1と共に締め付けリング4を両端部から挟み込む態様でコネクタ本体1に組み付けられるコネクタキャップ2と、前記コネクタ本体1に対してコネクタキャップ2を軸方向に相対的にスライドし、締め付けリング4を押圧、及び、その解除をするためのスライド操作部となるクランプレバー3により基本構成される。
【0016】
次に、各部について詳細に説明する。
図4はコネクタ内に収容されている締め付けリングを示している。
【0017】
本形態の締め付けリング4は、後記するコネクタ本体1のリング収容筒部12の内腔120に収容されて用いられるゴム弾性樹脂からなる筒状のリングで、カテーテルを貫通可能な貫通孔41を有し、外径が前記リング収容筒部12の内径に適合したものとして形成される。
【0018】
また、前記締め付けリング4は、外周面の遠位側に周方向に沿って凹条溝43を設け、該凹条溝43を第一の領域とし、凹条溝が形成されないそれ以外の領域を第二の領域とする。ここで、前記第一の領域と第二の領域とは、それぞれ軸方向への圧縮及び復元の特性が異なる領域で、第一の領域は第二の領域に優先して圧縮及び復元が開始される変形・復元起点域となっている。
【0019】
前記締め付けリング4の大きさは、コネクタ本体1の内腔及び挿入するカテーテルの外径の寸法に適合するサイズに形成されればよいが、本形態においては一般的な硬膜外麻酔用カテーテルに適合するものとして、外径4mm、内径1.3mm、長さ9mm程度に設定される。
また、本形態での前記凹条溝43は、該締め付けリング4の遠位端から1.5mmの位置より幅1mm、深さ0.5mmに形成される。
【0020】
図9は、参考として従来のコネクタの締め付けリングの一例を示している。
従来の締め付けリングは、ゴム弾性を有する部材により円筒形に形成されるため、その性質上、コネクタ本体1とコネクタキャップ2により両端から押圧され、コネクタ本体1の内腔120に密着した際に、締め付けリング外周面420が該内腔120に張り付いてしまい、該押圧を解除した際も、圧縮状態のまま元の形状に戻らず、カテーテルが抜けないことがある。
【0021】
一方、本形態の締め付けリング4は、外周面に圧縮や復元のさいに変形起点域となる凹条溝43を備えるため、カテーテル挿通後、コネクタ本体1とコネクタキャップ2とにより両端から押し潰されたとき、凹条溝43の部分が先に潰れ、ここが緩衝域となることで、締め付けリング4への不均一な圧縮が緩和され曲がった状態での圧縮により生じる軸方向への折れ曲がりを予防できる。また、貫通孔41のうち凹条溝43が形成された領域の内径が優先的に縮小し、カテーテルを確実に把持可能である。
【0022】
また、締め付けリング4は、近位側に凹条溝43が形成されていないため、圧縮された状態において、近位側の外径が拡大し外周面42がコネクタ本体1の内腔120と密着することで、カテーテルからの液漏れを防ぐことができる。
さらに、第一の領域となる凹条溝43は周辺の第二の領域と比較し外径が小さいため、圧縮状態でコネクタ本体1への押圧が弱くコネクタ本体1へ張り付き難いことで、締め付けリング4への圧縮を解除した際に、凹条溝43が元の形状に戻る復元起点域となることでスムーズな復元が可能となり、カテーテルの把持を容易に解除することができる。
【0023】
前述の通り締め付けリング4は、遠位側寄りに凹条溝43が形成されることで、近位側は圧縮状態において、従来のカテーテルコネクタのようにコネクタ本体1と密着し気密性を保つことで液漏れを防止し、遠位側は圧縮を解除した際に、凹条溝43が優先的に元の形状に復元するため、確実な液漏れ防止と元の形状への復元しやすさを両立している。
【0024】
図5のAからDはいずれも、カテーテルコネクタの締め付けリングの凹条溝のバリエーションを示すものである。
【0025】
図5のAにおいて、締め付けリング4の凹条溝43は該締め付けリング外周面に周方向に沿って複数(本形態においては2本)設けられる。該凹条溝43は、該締め付けリング4遠位側の約半分程度におさまるように形成されており、近位側には凹条溝43を設けないことが好ましい。
【0026】
図5のBにおいて、凹条溝43は締め付けリング4の近位端から一定の長さ離れた場所から遠位側に向かって螺旋状の一条の溝として設けられる。
【0027】
図5のCにおいて、凹条溝43は締め付けリング4の近位端から一定の長さ離れた場所から、2本の螺旋状の溝が互いに交差するよう設けられる。
【0028】
図5のDにおいて、凹条溝43は周方向に半周の長さで軸方向に複数、軸に対して線対称に(本形態においては4つ)並列して設けられる。
【0029】
前記締め付けリングの凹条溝43は、例示であり、凹条溝43の位置、形状やサイズは本発明の趣意を変更するものでなければ、締め付けリング4の外周面42の近位側などに形成されたものや、また、溝が曲線で形成される様なものであっても、更には、他の位置や溝形状であっても良い。
【0030】
図6は本形態のコネクタ本体を示し、Aが斜視図、Bが側面図を示している。
コネクタ本体1の近位側は、シリンジ等の薬液注入器具のオステーパーを接続するためのメスルアーテーパー部11として形成し、遠位側は、前記締め付けリング4を収容するための内腔120を有し、先端開口部がリング挿入口13となる円筒状のリング収容筒部12として形成した。また、該リング収容筒部12の先端側側面の対称となる位置には、後記するクランプレバー3を取り付けて、回動するための回動軸14を幅方向に突出させて設け構成した。
【0031】
そして、前記ルアーテーパー部11とリング収容筒部12との中間部はコネクタ本体基部15とし、リング収容筒部12と連通する内腔120に締め付けリング4の底部を留め置くための段差を備えた締め付けリング留め部16、及び、締め付けリング4の貫通孔41を通して突出するカテーテル末端を留め置くためのテーパー状に形成されるカテーテル末端収容部17、及び、その端部となるカテーテル留め部171が設けられている。
【0032】
また、コネクタ本体基部15の近位側には、カテーテルを固定するためクランプレバー3を完全に閉じた状態にするさいに、クランプレバー3を固定する手段となる係止フック18を設けて、これらを一体的に形成してコネクタ本体1として構成した。
【0033】
更に、本カテーテルコネクタ本体1は、カテーテル末端が所定のカテーテル末端収容部17のカテーテル留め部171の位置まで挿入されていることが外部から目視で確認できるように透明あるいは半透明な樹脂により形成されており、また、カテーテル末端収容部17が目視しやすいように該収容部の周囲を開口抜け部170として形成している。
【0034】
図7は、本形態のコネクタキャップを示し、Aが斜視図、Bが側面図を示している。
コネクタキャップ2は、前記コネクタ本体1と共に締め付けリング4を両側から挟み込む態様で該コネクタ本体1と組み合わされるもので、該コネクタ本体1のリング収容筒部12の内腔120に挿入されて締め付けリング4への圧縮部となる内筒21と、該内筒21と同軸となる外周に前記コネクタ本体1のリング収容筒部12を収容する外筒22を設け、該内筒21及び外筒22は、先端部23で折り返すようにつなげられ一体化され形成されている。そして、前記内筒21には、カテーテルが挿入可能な挿通孔210が設けられ、外筒22には、該外筒22側面の対称となる位置に、前記コネクタ本体1と組み合わせたさいにコネクタ本体1の回動軸14を突出させ、該コネクタ本体1とコネクタキャップ2の可動を軸方向に規制するスリット24が設けられる。
【0035】
また、前記外筒22の近位側には、スリット24を跨いで幅方向両側に張り出して延設する翼25を設け、該翼25には、後記するクランプレバー3の回動により該クランプレバーの押圧部32との接触部となり、押圧されて、コネクタキャップ2全体を軸方向に可動するための接触部26として、翼25上面の前記スリット24を挟んでクランプレバー3側の面を第一の接触面26a、奥側の面を第二の接触面26bとして形成し、第一及び第二の接触面26a、26bの間はスリット24と連通する空間27として形成して、コネクタキャップ2可動による締め付けリング4の圧縮手段、及び、クランプレバー3の回動を中途で仮止めさせる仮止め手段としている。また、後記するクランプレバー3を取り付ける側と対向する面には把持や操作を容易とするためのプレート28を設け、これらを一体に形成してコネクタキャップ2を構成した。
【0036】
図8は、本形態のクランプレバーを示し、Aが斜視図、Bが側面図を示している。
クランプレバー3は、前記コネクタ本体1の回動軸14に係合させ、前記コネクタキャップ2を挟んだ状態で回動運動可能なように接続する軸受フック31と、前記コネクタキャップ2の接触部26に適合する当接部であって、カテーテルを接続するさい、コネクタキャップ2を軸方向に押し込むように移動させる、角部を適度な湾曲形状に形成した押圧部32と、クランプレバー3をコネクタ本体1から離した状態となる開いた状態から、レバーがコネクタ本体1に接した状態となる閉じた状態まで回動させるための操作部となる把持部33、及び、完全に閉じた状態としたさいに、コネクタ本体1の係止フック18に係合する接続固定手段となる掛止め部34を設けて、これらを一体に形成してクランプレバー3を構成した。
【0037】
前記コネクタ本体1、コネクタキャップ2、クランプレバー3、及び、締め付けリング4は次のように接続され一体化される。
コネクタ本体1のリング収容筒部12に締め付けリング4を挿入した後、該締め付けリング4をコネクタキャップ2の内筒21と挟むように、また、コネクタ本体1から突起する回動軸14をコネクタキャップ2のスリット24から突出するように、コネクタキャップ2の内筒21と外筒22の間にコネクタ本体1のリング収容筒部12を挿入して取り付ける。次に、前記コネクタ本体1の回動軸14に、コネクタキャップ2の外筒22を挟むようにクランプレバー3の軸受フック31を嵌めこみ、本形態のカテーテルコネクタとした。(
図1~
図3参照)
【0038】
ここで、クランプレバー3の軸受フック31を把持部33の両側面から突起させ、軸受フック31間に切り欠け部を備える形状を採っているため、クランプレバー3の回動のさい、把持部33上端部がコネクタキャップ2の外筒22に接触して止まり、該接触位置がクランプレバー3を開いた状態の上限位置となる。
【0039】
本形態のカテーテルコネクタにカテーテルを接続する手段を説明する。
先ず、クランプレバー3を開いた状態でカテーテル末端部をコネクタキャップ2の挿通孔210から、締め付けリング4の貫通孔41を通し、コネクタ本体1のカテーテル末端収容部17まで挿入する。
そして、前記のようにコネクタ本体1の回動軸14に接続されたクランプレバー3を、回動軸14を軸として回動して、クランプレバー3を開いた状態から閉じた状態にすることで、クランプレバー3の押圧部32に押圧された接触部26が軸方向に可動して、コネクタキャップ2の内筒21を押し下げ、コネクタ本体1の締め付けリング留め部16との間で締め付けリング4が押し潰され、結果、カテーテルが締め付けリング4に締め付けられて固定される。尚、カテーテルの接続を解除するときは、クランプレバー3を閉じた状態から開いた状態にすることで、コネクタキャップ2全体が遠位側にスライドし、結果、締め付けリング4への押圧が解除され貫通孔41が広がることで接続が解除される。
【0040】
このように、前記クランプレバー3を閉じ、締め付けリング4が押し潰されてカテーテルが固定されたさい、押しつぶされた締め付けリング4の遠位側に凹条溝43が設けられていることで、該リング近位側はコネクタ本体と密着し液漏れを防止し、遠位側はコネクタ本体1の内腔壁面への押圧力が低減することで、接続解除のさい、内腔120壁面に締め付けリング4が張り付いてしまい、形状が戻らずにカテーテルとの接続が解除されないといったことを防止している。
【0041】
図10及び
図11は本発明の第二の実施の形態及び第三の実施の形態における締め付けリングを示す外観図である。第一の実施の形態では、締め付けリング4に凹条溝43を形成することで変形・復元起点域を設けたが、他の形態は、変形・復元起点域を形成する構成を変更したものであり、コネクタ本体、コネクタキャップ、クランプレバー及び締め付けリングの一部は第一の実施の形態と同様に構成されている。以下、第一の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0042】
図10は本発明の第二の実施の形態における締め付けリングを示す一部断面側面図である。
本形態における締め付けリング5は、遠位側半分程度を第一の領域とし、残りの近位側を第二の領域とした。第一の領域の外周面は一様に連続して複数の凹部53を備え、第二の領域は、凹部53を設けない。具体的には、前記第一の領域の外周面は、例えば食器洗い等のスポンジ表面に見られるような略正弦波曲線状の凹凸を領域内に一様に連続して形成した。
【0043】
前記構成によると、締め付けリング5が圧縮された際に肉薄となる前記凹部53が優先して圧縮する変形起点域となり、該凹部53部分の内腔が優先して縮小するためカテーテルを確実に把持可能である。また、締め付けリング5が圧縮された状態において、前記第一の領域は前記凹部53を備えることによりコネクタ本体1の内面への押圧が、前記第二の領域よりも小さい。そのため、圧縮を解除した際に前記第一の領域が優先して復元する復元起点域ともなり、締め付けリング5が元の形状に復元しやすくなる。
【0044】
また前記凹部53は一様に配置されているため、前記締め付けリング5が両端から押圧された際も、締め付けリング5に不均一な圧縮が生じ難く、締め付けリング5全体が折れ曲がって圧縮されコネクタ本体の内腔に密着し、締め付けリング5が元の形状に戻らなくなることを防いでいる。
【0045】
さらに、第二の領域である前記締め付けリング5の近位側は、凹部53を備えないため、圧縮された際にコネクタ本体1の内腔120と締め付けリング5の外周面が密着し、液漏れを防ぐことができる。
【0046】
前記第二の実施の形態における締め付けリング5の凹部53は、例示であり、本発明の趣意を変更するものでなければ、例えば、格子状に並んでいる凹部や、凹凸が正弦波曲線のようにつながらない不連続な凹部、更には、他の凹部形状であっても良い。
【0047】
図11は本発明の第三の実施の形態における締め付けリングの外観図である。
本形態における締め付けリング6は、軟質な第一の硬さ特性を有する第一の材料から形成される第一の領域と、硬質な第二の硬さ特性を備える第二の材料から形成される第二の領域とを有し、前記第一の領域は締め付けリング6の遠位側寄りに任意の幅で周方向に沿って一箇所形成される。
【0048】
前記構成のカテーテルコネクタによると、締め付けリング6が圧縮された際に、硬質な材料で形成された第二の領域と比較して、軟質な材料で形成された第一の領域が優先的に変形する変形起点域621となる。軟質である該変形起点域621は、硬質な領域に優先して締め付けリング6の幅方向に膨張するため、内径は縮小してカテーテルを把持し、外周面62は膨張してコネクタ本体1の内腔120と密着し、カテーテルの確実な把持と液漏れの防止の両立を実現する。
【0049】
また、前記第二の領域は、締め付けリング6が圧縮した際、前記第一の領域である変形起点域621が優先的に潰れるため、該変形起点域621と比較して圧縮量が小さい。そのため、コネクタ本体1の内面との密着が前記変形起点域621より小さいため、押圧を解除した際に前記変形起点域621に優先して元の形状へ復元する、復元起点域となる。
【0050】
さらに、前記変形起点域621を締め付けリング6の周方向と平行に設けることにより、不均一な圧縮を防止することができる。
【0051】
前記第三の実施の形態における変形起点域621は、例示であり、締め付けリングに設ける位置や数などは、本発明の趣意を変更するものでなければ、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1. コネクタ本体
11. (メス)ルアーテーパー部
12. リング収容筒部
120.(リング収容)内腔
13. リング挿入口
14. 回動軸
15. コネクタ本体基部
16. 締め付けリング留め部
17. カテーテル末端収容部
170.開口抜け部
171.カテーテル留め部
18. 係止フック
2. コネクタキャップ
21. 内筒
210.挿通孔
22. 外筒
23. 先端部
24. スリット
25. 翼部
26a.第一の接触部
26b.第二の接触部
27. 空間
28. 把持プレート
3. クランプレバー
31. 軸受フック
32. 押圧部
33. 把持部
34. 掛止め部
4. 締め付けリング
41. 貫通孔
42. 締め付けリング外周面
43. 凹条溝
5. 締め付けリング
53. 凹部
6. 締め付けリング
61. 貫通孔
62. 外周面
621.変形起点域