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特開2024-95571高精度ロゴスキーセンサに適用される温度勾配測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095571
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】高精度ロゴスキーセンサに適用される温度勾配測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20240703BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20240703BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20240703BHJP
   H01F 38/30 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01K7/00 381L
G01K1/14 L
H01F38/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023213560
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】22306942.8
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】パトリス・ジュッジ
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・デュプイ
【テーマコード(参考)】
2F056
2G025
5E081
【Fターム(参考)】
2F056CL06
2G025AA08
2G025AB14
5E081AA05
5E081BB03
5E081BB08
5E081CC05
5E081DD30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロゴスキーセンサで測定される信号を、温度センサで測定される温度勾配に基づいて補償することができる温度勾配測定装置を提供する。
【解決手段】ガス絶縁開閉装置の導体のための、ロゴスキーコイルを基板11上に備えるロゴスキーセンサ2に関し、当該センサは、2以上のデジタル又はアナログ温度センサ12,14,16,18を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス絶縁開閉装置の導体(30,40,50)のための、ロゴスキーコイルを基板(11)上に備えるロゴスキーセンサ(2)であって、当該センサが、2以上のデジタル又はアナログ温度センサ(12,14,16,18)を備える、ロゴスキーセンサ。
【請求項2】
前記2以上のデジタル又はアナログ温度センサ(12,14,16,18)が前記コイルの周りに規則的に配置されている、請求項1に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項3】
当該ロゴスキーセンサが、4個のアナログ温度センサを備えており、該センサの2個が直列に接続された2つのグループ(22,24)を含んでいて、該2つのグループが並列に接続されている、請求項1又は請求項2に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項4】
並列に接続されたn個(n≧2)のアナログ温度センサを備える、請求項1又は請求項2に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項5】
デイジーチェーン接続されたn個(n≧2)のアナログ温度センサを備える、請求項1又は請求項2に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項6】
前記2以上の温度センサ間の温度勾配及び/又は前記2以上の温度センサによって測定された温度の平均値を推定又は計算するための手段(28)をさらに備える、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項7】
前記温度センサの各々の位置における温度を推定又は計算するための手段(28)をさらに備える、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項8】
温度分布のデータセット又はマップを確立するための手段(28)をさらに備える、請求項7に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項9】
当該ロゴスキーセンサで測定される電流値を、前記コイルの幾何学的パラメータ並びにできれば2以上の温度センサの温度測定値及び/又は2以上の温度センサ間の温度勾配及び/又は2以上の温度センサで測定される平均温度及び/又は温度に起因する膨張による幾何学的パラメータの変動に基づいて、補償する手段(28)をさらに備える、請求項1乃至請求8のいずれか1項に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項10】
前記コイルが、200mm以上の外径を有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のロゴスキーセンサ。
【請求項11】
導体(30)と請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のロゴスキーセンサとを備える、単相ガス絶縁開閉装置。
【請求項12】
3つの導体(30,40,50)と、各導体の周囲の請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のロゴスキーセンサとを備える、三相ガス絶縁開閉装置。
【請求項13】
前記温度センサの1以上が、導体(30)の下方又は下部或いは各導体(30,40,50)の下方又は下部に位置し、前記温度センサの1以上が導体(30,40,50)の上方又は上部或いは各導体(30,40,50)の上方又は上部に位置する、請求項11又は請求項12に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項14】
請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置の導体(30,40,50)の電流を測定する方法であって、前記ロゴスキーセンサで1以上の電流を測定するステップと、2以上の温度センサの各々で1以上の温度を測定するステップと、前記2以上の温度センサ間の1以上の温度勾配及び/又は前記2以上の温度センサの各々で得られる温度に基づく1以上の平均温度を計算するステップと、前記温度勾配及び/又は前記平均温度に基づいて測定された電流を補償及び/又は補正するステップとを含む、方法。
【請求項15】
前記ロゴスキーセンサで複数の電流を測定するステップと、前記2以上の温度センサ間の複数の温度勾配及び/又は前記2以上の温度センサでの複数の平均温度を測定するステップと、前記複数の温度勾配及び/又は前記複数の平均温度と測定された複数の電流とを前記導体(30,40,50)の1以上の標準電流で比較するステップと、温度勾配及び/又は平均温度と電流との間の関係を確立するステップとを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上のデジタル又はアナログ温度センサを備えるロゴスキーセンサ、該ロゴスキーセンサを備えるガス絶縁開閉装置並びに該ロゴスキーセンサの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロゴスキーセンサでガス絶縁開閉装置(GIS;Gas Insulated Switchgear)の電流を測定することが知られている。
【0003】
ロゴスキーセンサは、米国特許第5414400号明細書に開示されているように、プリント回路基板に実装できる。
【0004】
しかし、ロゴスキーセンサは、例えば5℃~10℃などの温度勾配に付され、センサで測定される電流の値に影響を与えかねない。特に、それらの厚さは、重大な相対的変動に付され、電流の測定値を変化させかねない。
【0005】
図9は、例えばエポキシ樹脂製のプリント回路のプレート11を備える、米国特許第5414400号明細書に記載されたロゴスキーコイルを示し、コイルは、プレートの各面に銅3の堆積物を含み、一方の面の堆積物は、プレートを貫通するめっきスルーホール5を介して他方の面の堆積物に接続されている。
【0006】
コイル下部の温度T1が上部の温度T2よりも低い場合、熱膨張が異なるため、コイルの下部で誘導される電流は上部で誘導される電流とは異なる。そのため、ロゴスキーセンサで測定される電流の精度の向上に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5414400号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、2以上のデジタル又はアナログ温度センサを備える基板(例えばプリント回路基板)上のロゴスキーセンサに関する。
【0009】
本発明によって、ロゴスキータイプの電流センサ、特に直径の大きい(例えば外径200mm又は450mm以上)の電流センサで、精度の高い温度補償電流を得るために、平均温度を測定することができるようになる。ロゴスキーセンサで測定される信号を、温度センサで測定される温度勾配に基づいて補償することができる。
【0010】
本発明は、電流センサが顕著な温度勾配が存在するおそれのある環境に配置され、精度の制約が高い場合に特に有用である。本発明では、温度勾配の存在下でも測定精度等級0.1を達成することができる。エネルギー価格算定に求められる精度は、1000Aの通電時に1A未満の測定誤差が必要とされる。これは、温度勾配の存在下よりも温度が均一な環境の方が達成し易い。顕著な温度勾配が存在する場合、分布温度測定は精度の向上に寄与し、さらに厳しい精度等級に達することができるようにする条件の1つである。
【0011】
一実施形態では、本発明に係るロゴスキーセンサは複数のアナログ温度センサを備えており、これは平均センサに相当し得る。
【0012】
別の実施形態では、本発明に係るロゴスキーセンサは複数のデジタル温度センサを備える。
【0013】
いずれの場合も、温度センサはロゴスキーコイルの周囲360°にわたって、好ましくは規則的に配置できる。
【0014】
本発明に係るロゴスキーセンサは、
・2以上の温度センサ間の温度勾配及び/又は2以上の温度センサで測定される平均温度を推定又は計算するための
・及び/又は各温度センサの位置での温度を推定又は計算するための
・及び/又は温度分布のデータセット又はマップを確立するための
・及び/又はロゴスキーセンサで測定される電流値を、コイルの幾何学的パラメータ(内径、外径、その軸に沿って測定されるコイルの厚さ)並びにできれば2以上の温度センサの温度測定値及び/又は2以上の温度センサ間の温度勾配及び/又は2以上の温度センサで測定される平均温度及び/又は温度に起因する膨張による幾何学的パラメータの変動に基づいて、補正または補償するための
手段、例えば計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータを備えることができ、かかる補正又は補償は、計算手段、例えば、計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータによって実行することができ、これらには温度データ測定値が提供されて、それに応じて補正又は補償を実行するようにプログラムされる。
【0015】
本発明は、単相導体、又は複相(例えば三相)を有するシステムの各相に適用される。
【0016】
本発明は、導体と該導体の周囲に設けられた本発明に係るロゴスキーセンサとを備える単相GISに関する。
【0017】
本発明は、3つの導体と、各導体の周りの本発明に係るロゴスキーセンサとを備える三相GISに関する。
【0018】
本発明に係るGISでは、1以上の温度センサを、導体の下方又は下部或いは各導体の下方又は下部に配置することができ、1以上の温度センサを、導体の上方又は上部或いは各導体の上方又は上部に配置することができる。
【0019】
GISにおいて、本発明は、GISが、内部熱放散の大きい定格電流負荷下或いは太陽光放射に付される屋外用途に置かれたときに、電流センサの精度等級を保証するのに貢献する。
【0020】
負荷電流つまりGIS導体内を流れる永久電流は、零乃至数千アンペア(例えば5000A)の範囲にある。これらの電流は導体内を流れ、その抵抗は所定の長さで両端の接続に応じてΩ単位で測定される。消費電力は、抵抗に電流の2乗を乗じた値に等しい。例えば、4000Aの電流及び30μΩの抵抗では、発熱電力(ワット単位)は0.000030Ω×4000×4000=480Wとなる。これは、GIS内に収容された大量のガスを顕著に加熱するのに十分である。主に対流現象によって、バーの高さで発生する熱は、高温ガスを容器の上部に向かって上昇させる。ロゴスキーセンサは、この容器の周囲に配置されるが、数度の温度差に耐えることを余儀なくされる。
【0021】
本発明は、高精度でのエネルギー計測に寄与する。
【0022】
本発明は、本発明に係るロゴスキーセンサと、計算手段、例えば計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータとを備える電流測定システムであって、計算手段に、温度データ測定値が提供され、それに応じて、ロゴスキーセンサから提供された測定値に基づいて導体内の電流を推定又は計算し、できれば上述の通り電流を補正又は補償するようにプログラムされる、電流測定システムに関する。
【0023】
本発明は、導体、例えばGIS(例えば本発明に係るGIS)内の導体の電流を測定する方法であって、本発明に係るロゴスキーセンサで導体を流れる電流を測定するステップと、ロゴスキーセンサの2以上の温度センサの各々で温度を測定するステップと、温度及び/又は2以上の温度センサ間の温度勾配及び/又は2以上の温度センサで測定される平均温度に基づいて、測定電流を補償することを含む方法に関する。
【0024】
本発明に係る方法は、温度分布のデータセット又はマップを確立し、そのデータセット又はマップに基づいて1以上の温度勾配を計算又は推定することを含むことができる。
【0025】
本発明に係る方法は、ロゴスキーセンサで導体内の複数の電流を測定するステップ又は以前のステップと、2以上の温度センサ間の複数の温度勾配及び/又は2以上の温度センサでの複数の平均温度を測定するステップと、それら複数の温度勾配及び/又は複数の平均温度と複数の測定電流とを導体の1以上の標準電流で比較するステップと、温度勾配及び/又は平均温度と電流との間の関係を確立するステップとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るロゴスキーコイルの実施形態を示す。
図2】本発明に係るロゴスキーコイルの温度センサのブリッジ接続を示す。
図3】本発明に係るロゴスキーコイルの温度センサの別のブリッジ接続を示す。
図4】本発明に係るロゴスキーコイルの温度センサの並列接続を示す。
図5】本発明に係るロゴスキーコイルの温度センサのデイジーチェーン接続を示す。
図6】各々本発明に係るロゴスキーコイルが付随した3本の導体を含む三相システムを示す。
図7】本発明に係るロゴスキーコイルが付随した測定システムを示す。
図8】ロゴスキーコイルのパラメータ及びコイル近傍の異なる位置での異なる温度を示す。
図9】従来技術に係るロゴスキーコイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図1に示すが、例えば米国特許第5414400号明細書に開示されているような基板又はプレート11上のロゴスキーコイル2を備える。
【0028】
図9に示すように、コイル2は、例えばエポキシ樹脂製等のプリント回路のような基板又はプレート11を備える。コイルは、プレートの各面に金属3(例えば銅)の堆積物を含んでおり、一方の面の堆積物は、プレートを貫通するめっきスルーホール5を介して他方の面の堆積物に接続されている。
【0029】
符号30は導体(例えばGIS導体)であり、電流が流れる。ロゴスキーセンサは、導体の電流を測定するためのものである。
【0030】
このセンサには、複数の温度センサ、この例では4以上の温度センサ12,14,16,18が設けられており、好ましくはセンサは抵抗器である。
【0031】
温度センサは、図2又は図3に示すように接続され、2つのレグ22(22’),24(24’)を並列に含むブリッジ20,20’に配置され、各レグは、2つの温度センサ、実際には抵抗器を含む。すべての抵抗が同一の値を有する場合、このブリッジで、4箇所の異なる位置で平均温度の測定を行うことができ、システムは単一の抵抗器のインピーダンス値(例えば100Ω)に等しい値を有する。単一の温度プローブを、電流測定の補償に用いると、センサの平均温度ではなく、1箇所の温度値しか示さない。そのため、補償誤差及び測定誤差を生じる。
【0032】
別法として、4つではなく3つのセンサを実装することもできるが、4以上のセンサが好ましい。
【0033】
センサの別の電気的接続を図4に示すが、複数のセンサ(例えば各々1000Ωの抵抗器)が並列に接続されている。例えば、このようなセンサが、図1のロゴスキーコイルの周囲に一定間隔で10個配置される。
【0034】
センサの別の電気的接続は、図5に示すものであり、複数(本例では4個)のセンサが「デイジーチェーン」又は「並列」に接続される。この場合、各温度センサはデジタルアドレスを有しており、アクイジションユニットとセンサ間の通信はデジタルで行われる。これによって、高度な監視機能のために温度勾配を測定することができる。各センサの位置の温度だけでなく、全センサで測定された平均温度も測定できる。例えば、かかる10個のセンサをロゴスキーコイルの周囲に一定間隔で配置することができる。各センサは、接地ライン23、電圧供給ライン27(例えば+5V)、信号ライン25に接続することができる。
【0035】
好ましくは、導体30の下方に1以上の温度センサが位置し、導体30の上方に1以上の温度センサが位置して、導体の下部と上部との間の温度勾配を推定又は測定することができる(高温ガスは導体の下部から上部に向かって上昇するため、導体の上方部分の温度は導体の下部よりも高くなり易い)。「下」及び「上」とは、導体の位置の垂直方向をいい、高温ガスはその垂直方向に沿っ、導体の下方又は導体の下部から導体の上方又は上部へと上昇する。
【0036】
本発明のいずれの実施形態でも、各センサからの信号は、サンプリング及び/又は処理並びに温度情報をもたらすため、制御ユニット(例えばコンピュータ又はマイクロプロセッサ)に供給することができる。
【0037】
図6は、3つの導体30,40,50(例えば三相システムの導体)を含む容器を表しており、本発明に係るロゴスキーコイル2,42,52が導体の各々の周囲に実装されている。導体の各々における一次電流からの内部散逸の結果及び/又は容器への太陽光放射のため、容器60内に温度勾配が存在し得る。例えば、容器の底部は約40℃の温度であり、中央部は例えば47℃、上部は約55℃である。
【0038】
図7は、導体30の周囲に実装された本発明に係るロゴスキーコイル2を表す。コイルからの信号は、信号を光信号に変換するため変換器32に送ることができる。1以上の他のセンサ(例えば静電容量センサ34)からの他の信号、変換器36によって光信号に変換することができる。光信号は、マージユニット28でマージすることができる。マージユニットは、データを処理するマイクロプロセッサを備えることができ、少なくとも温度勾配情報及び/又は複数の温度センサで得られるデータから推定される平均温度及び/又は複数の温度センサで得られる温度情報から電流測定補償を実行できる計算能力を有する。例えば、温度勾配及び/又は平均温度及び/又は複数の温度センサで得られる温度情報とそれらの測定電流への影響との関係は、リアルタイムで測定することができ、次いで例えば数学的法則に変換して、正確な電流測定値を得るため、記録又はソフトウェアからアクセスできるようにすることができる。
【0039】
複数のコイル(例えば図6に示すような)に対して同じ測定システムを実装することができる。本発明に係る1以上のロゴスキーコイルで測定される電流値は、温度センサの温度測定値及び/又は温度センサで測定される平均温度及び/又は2以上のセンサ間の温度勾配に基づいて補償することができる。或いは、マージユニットに、計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータを実装して、本発明に係る方法又はプロセスを実行するようにプログラムすることができる。
【0040】
電流に対する温度の影響は、試験(例えば以前のステップ)で測定することができる。2以上の温度センサから得られる複数の温度勾配及び/又は複数の平均温度及び/又は複数の温度データについて、複数の電流を測定できる。これらの測定値を、1以上の現在の標準と比較することができる。これによって、電流と平均温度又は温度勾配(温度勾配よりも実施が容易であるので平均温度が好ましい)との間の関係(例えば数学的法則)を推定することができる。この関係を測定電流の補正に用いることができ、この補正は例えばソフトウェアによって実行される。
【0041】
平均温度は、センサの異なるゾーン間の平均温度である。
【0042】
異なるポイント又はゾーンで温度を(好ましくはデジタルセンサを用いて)測定することによって、温度分布のデータセット又はマップを確立し、温度勾配を同定することができ、また、異常なホットポイントの検出にも役立つ。
【0043】
ロゴスキーコイルの感度は次式で与えられる。
【0044】
【数1】
【0045】
出力電圧は次式で与えられる。
【0046】
【数2】
【0047】
しかし、ロゴスキーコイルは温度に敏感であるため、精度の向上には、温度の関数として測定電流Ipを補償するのが好ましい。平均温度及び材料の膨張に対するその影響を考慮に入れると、感度Sは次式で与えられる。
【0048】
【数3】
【0049】
そこで、コイルの両側で異なる温度t1及びt2が測定される場合(図8)、t1及びt2の一方だけを用いてコイルの電流Ipの測定値を補正すると、誤った補正となる(電流が過大補償又は過小補償される)。ロゴスキーコイルの上部と下部の温度差も、コイルの感度に影響を与える可能性がある。
【0050】
したがって、ロゴスキーコイルの様々な部分間に温度差がある場合、単一の温度センサでは不十分である。一実施形態では、本発明は、測定電流Ipを補償するために平均温度の測定を実施し、その結果、精度の高い補償又は補正が得られる。デジタルセンサの場合、上述の平均温度は、測定温度の合計をセンサの数で除算したものに等しくなる。
【0051】
電流を測定する手段(又は電流センサ又は電流計)及び/又は電圧を測定する手段(又は電圧計)を、ロゴスキーコイル内の電流又はロゴスキーコイルの接点又は端子間の電圧を測定するために、本発明に係るデバイス又はセンサの実施形態と組み合わせて実装することができる。
【0052】
例えば、測定される電流は、温度に応じて線形的に、-40℃~+80℃の間で約24ppm/℃の傾きで、ドリフト又は変動する可能性がある。このオーダーの傾きは、例えば、マージユニット28によって或いはより一般的には例えば計算機、プロセッサ、マイクロプロセッサ又はコンピュータによって補償することができ、それらには温度データ測定値が提供され、それに応じてプログラムされる。
【符号の説明】
【0053】
2 ロゴスキーコイル
11 基板
12 温度センサ
14 温度センサ
16 温度センサ
18 温度センサ
28 補償手段
30 導体
40 導体
50 導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】