(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095593
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】口腔ケア支援システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240703BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240703BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240703BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20240703BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20240703BHJP
G16H 10/40 20180101ALN20240703BHJP
【FI】
G16H20/00
A61B5/00 N
G01N33/53 N
G01N33/66 A
G01N33/72 A
G16H10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217357
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022211959
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 多賀子
(72)【発明者】
【氏名】川井 康弘
【テーマコード(参考)】
2G045
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
2G045CA25
2G045DA31
2G045DA37
2G045DA48
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB06
4C117XB15
4C117XD08
4C117XE05
4C117XE07
4C117XE13
4C117XE14
4C117XE15
4C117XE17
4C117XE19
4C117XE23
4C117XE26
4C117XE37
4C117XE43
5L099AA03
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】口腔の健康状態を維持・向上させることを目的としてた検体検査および口腔ケア支援のためのシステムを提供せんとする。
【解決手段】口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する検査と、糖代謝に関連する血液検査を検査項目に含む検体検査。および口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する検査と、糖代謝に関連する血液検査を検査項目に含む検体検査結果と被験者の諸情報を解析することにより被験者の口腔の健康状態の維持・改善を実現させ得る口腔ケア支援サービスを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈血を検体サンプルとする、口腔内細菌および/またはカンジタ菌に関連する抗体検査と、血糖値検査および/またはヘモグロビンA1c値の検査、とを検査項目に含む、検体検査。
【請求項2】
口腔内細菌に少なくともPorphyromonas gingivalisが含まれる、請求項1に記載の検体検査。
【請求項3】
口腔内細菌に少なくともフゾバクテリウム属(Fusobacterium)に属する細菌から選ばれる単独または2つ以上が含まれる、請求項1に記載の検体検査。
【請求項4】
請求項1に記載の静脈血の検体検査に加えて、口腔内細菌および/またはカンジタ菌に関連する抗原検査および/または核酸検査を含む、請求項1に記載の検体検査。
【請求項5】
請求項1に記載の検体検査に加えて、口腔内細菌のオートインデューサーに関する分析検査を含む、検体検査。
【請求項6】
請求項1に記載の検体検査の結果に加えて、被験者の口腔や咽喉に関する情報を提供する、検体検査。
【請求項7】
被験者の口腔や咽喉に関する情報に、口腔や咽喉の健康状態に関する情報、口腔や咽喉の健康におけるリスク要因に関する情報、口腔・咽喉衛生に関する情報、口腔や咽喉の機能状態に関する情報、口腔や咽喉の機能低下のリスク要因に関する情報、および推奨する口腔や咽喉のケア商品に関する情報の何れかに含まれる情報が含まれる、請求項6に記載の検体検査。
【請求項8】
被験者の口腔や咽喉に関する情報に、歯科保健指導に関する情報が含まれる、請求項6に記載の検体検査。
【請求項9】
口腔内細菌および/またはカンジタ菌に関連する検査に、抗体検査および、核酸検査または抗原検査の何れか一方の検査、の2つの検査が含まれる、請求項1に記載の検体検査。
【請求項10】
請求項1に記載の検体検査に加えて、下記の群から選ばれる単独又は2以上の検査が含まれる、生体における検査。
(i)口腔内の画像情報や映像情報を活用した、口腔や咽喉の機能や口腔内の状態の検査
(ii)咀嚼行動時および/または発声行動時の頭部を含む映像情報や咀嚼の音情報を活用した口腔機能の検査
(iii)オーラルディアドコキネシス
【請求項11】
静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報と、下記に占める(i)および(ii)の何れか片方の情報を利用して、被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持に関連する口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成し、前記抗体検査の結果情報と作成した口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を被験者に提供する、口腔ケア支援システム。
(i)少なくとも血糖値測定、ヘモグロビンA1c値測定、酸化HDL値測定、およびCRP値測定からなる群から選ばれる単独または2以上の検査項目を含む、血液検査の結果情報
(ii)少なくとも被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報の何れかに含まれる単独又は2以上の情報を含む、被験者情報
【請求項12】
静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報と、下記(i)および(ii)に含まれる単独または2以上の情報を利用して、被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持に関連する口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成し、少なくとも作成した口腔や咽喉の衛生・機能関連情報と前記口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報を、検査依頼者および/または被験者に提供する、口腔ケア支援システム。
(i)少なくとも血糖値測定、ヘモグロビンA1c値測定、酸化HDL値測定、およびCRP値測定からなる群から選ばれる単独または2以上の検査項目に含む血液検査を含む、検体検査の結果情報
(ii)少なくとも被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報の何れかに含まれる1つ又は2以上の情報を含む、被験者情報
【請求項13】
口腔内細菌に、少なくともPorphyromonas gingivalisが含まれる、請求項11に記載の口腔ケア支援システム。
【請求項14】
口腔内細菌に少なくともフゾバクテリウム属(Fusobacterium)に属する細菌から選ばれる単独または2つ以上の菌株が含まれる、請求項11に記載の口腔ケア支援システム。
【請求項15】
請求項11に記載の結果情報が、静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査に加えて、口腔内細菌のオートインデューサーに関する分析検査の検査結果を含む、請求項11に記載の口腔ケア支援システム。
【請求項16】
請求項11に記載の被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持させる目的を有する口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成する際に利用する情報に、下記の群から選ばれる単独又は2以上の検査の結果情報が含まれる、請求項11に記載の口腔ケア支援システム。
(i)口腔内の画像情報や映像情報を活用した、口腔や咽喉の機能や口腔内の状態の検査
(ii)咀嚼行動時および/または発声行動時の頭部を含む映像情報や咀嚼の音情報を活用した口腔機能の検査
(iii)オーラルディアドコキネシス
【請求項17】
検体検査の検査結果の一部若しくは全てと、検体検査の検査結果から作成された被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能の向上若しくは維持に有用な情報を、電子カルテ若しくは被験者の健康管理に使用するデータベースに記録し、被験者の、歯科・口腔外科領域における医療行為の支援や口腔・咽喉の健康管理や機能維持の支援の目的で活用する、請求項11に記載の口腔ケア支援システム。
【請求項18】
被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持させるために有用な情報に、被験者における歯科保健指導の要否判断と前記判断結果の被験者への伝達が含まれる、請求項11に記載の口腔ケア支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の血液検査の情報と、口腔や咽喉の健康・衛生状態に影響を与える、もしくは与えうる可能性がある微生物の菌種や菌株を検出するための抗原抗体反応を利用した血液検査を実施する検体検査、並びにその検体検査を活用した健康維持支援のためのシステムを提供する。詳しくは、健康診断や血液検査、献血などの採血を伴う検査において、抗原抗体反応を利用した血液検査を実施する検体検査およびその検体検査を活用した健康維持支援のためのシステムを実施することで、被験者だけでなく、医科領域や歯科領域の医療機関や前記検査を実施する機関に提供することで、効果的な治療や口腔や咽喉の健康状態の維持・管理に関する保健指導を可能にしたり、さらに被験者の口腔や咽喉の機能の状態に関する情報や口腔や咽喉の機能の維持・向上に有用な情報を被験者に提供することで、被験者の口腔や咽喉の健康状態の維持や向上を図り、更には被験者のQOLの維持・向上をも実現可能にする口腔ケア支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔機能の維持・向上が人のQOLの維持・向上に不可欠であることが知られつつあり、特に、口腔機能の低下が著しくなる高齢化が急速に進行しつつある近年において、若年層も含めた幅広い年代に対して、口腔の健康状態を維持・向上させることにより、将来の口腔機能の維持や向上を図る必要が高まっている。この口腔機能の維持や向上のためには少なくとも口腔や咽喉の健康状態の維持・向上が少なくとも重要である。さらに、口腔や咽喉の健康を維持したり噛むことは、会話、姿勢維持、咀嚼、嚥下等の「自立行動」の維持に大きく影響し、介護予防としての効果も期待されている。一方、口腔の健康状態に大きな影響を及ぼす歯周疾患は、早期においては明確な自覚症状が現れにくく、歯の動揺、歯肉からの排膿といった自覚症状が出た時には、歯科保健指導や歯科治療によっても、歯の喪失を防ぐことは困難となる場合が多い。したがって、口腔や咽喉の健康状態の維持・向上を図るためには歯科検診やが不可欠であり、早期に歯周疾患などの口腔衛生上の問題点を発見し、適切な歯科保健指導や歯科診療が受診できるようにすることが重要である。
【0003】
この状況において、口腔や咽喉に関する検診などの実態は問題を解決するのは程遠い状態にある。例えば、法人などに勤務している人や教育機関で履修している人は定期健康診断を受診する機会に恵まれており、全身の健康状態の維持・向上に貢献しているが、口腔や咽喉に対する検診の実施率は低い現状にある。また前記以外の人においては、健康診断も受診していない場合が多く、口腔や咽喉に関する検診は受診していない人が殆どである。この状況において、教育機関で履修している未成年における齲蝕などの罹患率は大幅に低下している一方、成人における齲蝕の罹患率や歯周病などのその他の口腔疾患に罹患している人が増加している。また、平均寿命の延伸に伴い、オーラルフレイルによる健康寿命の短縮やQOLの低下も問題になりつつある。これらを改善するためには、不具合が無い限り検診や治療などの医療行為を受けていない現状を変えていく必要があるが、費用や時間的制約などの事情から改善できていない現状にある。
【0004】
歯周疾患検診や歯科検診は、専門的な技量を有する歯科医師や歯科衛生士が被験者の各部位の歯牙や歯肉、歯垢などの状態を目視観察や器具・試薬を用いた検査などで把握する検査項目を含んでいることから、被験者一人に対して少なくとも20-40分程度の検査時間が必要とされている。これらの検診を確実に実施するためには、被験者数に見合った人数の専門家の確保に加え、口腔内に可視光線を照射できる証明装置が備わった検診用の椅子や口を漱いだりできる環境や検査専用の特殊な器具などの検査特有の設備や器具を準備する必要があり、多人数の被験者に対応するためには人数に見合った広い検査会場を確保する必要があり、これらは検診実施の普及を阻んでいる一因になっている。さらには、歯科検診に必要な費用は基本的な検査項目だけ実施した場合でも一般的に被験者一人当たり5000円前後が必要である。国民全員に対して歯科検診を実施する場合、巨額の実施費用を捻出する必要がある。また、1年に1回程度の実施が好ましいことから、費用の捻出において大きな課題となる。実施費用の負担については、国家予算や健康保険予算は既に逼迫状況にあることから全ての費用の捻出は困難である。被験者の負担にした場合は、生命に直接関係する検査ではないことや中間層以下の個人所得額が大幅に低減しつつあることなどを考慮すると、被験者が多額の費用負担までして定期的に検診を受診することは考えにくい。したがって、国民皆歯科検診制度が制定されたとしても、歯科皆検診実現に対して絶対数が不足している専門家や検査場所や器具等の検査環境の確保、および実施するために必要な多額の費用の捻出などを解決し実現させるかが大きな課題となると推測できる。
【0005】
一方、歯周病の原因菌とされる細菌などの情報を提供するため、口腔内から採取したサンプル中に含まれる特定の細菌を特定するマーカーを利用した検査が提案されている(特許文献1、2)。この検査は歯周病などの広義の口腔感染症の原因菌と言われる特定の細菌の口腔内での存在の有無を判断できるが、把握できる情報は口腔内に存在する細菌の情報に限られる。例えば歯周病は感染症であることから、口腔内にいわゆる歯周病病原性細菌が多く存在したとしても生体組織に感染していなければ歯周病に罹患していることにはならず、単にリスクがある程度の情報しか得られないという欠点があった。したがって、臨床的には、歯周病の診断は診断基準に基づいて歯周組織の状態や炎症の程度を確認して実施されることから、前記の検査は参考情報として一部の歯科医師などによって実施されるにとどまっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/106541号
【特許文献2】国際公開第2000/039583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、口腔や咽喉の衛生状態の悪化や機能の低下が全身疾患などの口腔や咽喉以外への組織に悪影響を与えたり、特に高齢者におけるQOLを低下させたりすることが知られつつあることから、加齢等に伴う口腔や咽喉の機能の維持や低下の防止や口腔や咽喉の機能と密接な関係にある口腔や咽喉の状態を健康な状態に向上させ維持させることが高齢化社会を迎えている現在社会において大きな課題になりつつあるが、口腔や咽喉に対する検診等は実施環境や所用費用などの理由から、国民間において広く実施されていない課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、鋭意検討した結果、解決しようとするところは、被験者や検査実施者等に労力や費用などの大きな負担をかけることなく、国民の口腔や咽喉の健康状態や機能を向上させたり維持管理に有用な口腔や咽喉に関する情報が把握可能な検体検査を提供するものである。具体的には、健康診断や血液検査、献血などの採血行為が実施される検査等において、本発明の検体検査や支援システムを実施することにより、いままで口腔や咽喉の健康状態や機能に関する情報を入手出来ていなかった人にも口腔や咽喉に関する情報を提供する。必要に応じて、これらの検体検査などの結果から被験者の口腔の健康状態を推測するとともに、歯科治療、歯周疾患検診、歯科検診や歯科保健指導などが必要な被験者を推測し、選定する。検査結果や推測情報などを被験者や検査依頼者などに伝達することで、口腔疾患の早期罹患段階における治療の実現や口腔疾患や口腔内の不具合を防止するための効果的な予防措置を実現させるとともに、最適な歯科治療や歯科保健指導の定期的な実施を実現させることができる。本発明は、それらの実現を可能とさせる検体検査や口腔ケアの支援システムを提供するものである。
【0009】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
項1:静脈血を検体サンプルとする、口腔内細菌および/またはカンジタ菌に関連する、核酸検査、抗原検査および抗体検査からなる群から選ばれる単独または2以上の検査と、血糖値検査および/またはヘモグロビンA1c値の検査、とを検査項目に含む、検体検査。
項2:血糖値検査が、空腹時血糖値の検査である、項1に記載の検体検査。
項3:血糖値検査が、空腹時血糖値の検査およびブドウ糖負荷試験検査である、項1に記載の検体検査。
項4:血糖値検査が、空腹時血糖時の検査であり、更に酸化HDL値の検査を含む、項1に記載の検体検査。
項5:口腔内細菌に少なくともPorphyromonas gingivalisが含まれる、項1に記載の検体検査。
項6:口腔内細菌に少なくとも異なる2種又は3種以上のPorphyromonas gingivalisの菌株が含まれる、項5に記載の検体検査。
項7:口腔内細菌に少なくともフゾバクテリウム属(Fusobacterium)に属する細菌から選ばれる単独または2つ以上が含まれる、項1に記載の検体検査。
項8:項1に記載の静脈血の検体検査に加えて、口腔内細菌および/またはカンジタ菌に関連する抗原検査および/または核酸検査を含む、項1に記載の検体検査。
項9:項1に記載の検体検査に加えて、口腔内細菌のオートインデューサーに関する分析検査を含む、検体検査。
項10:項1に記載の検体検査の結果に加えて、被験者の口腔や咽喉に関する情報を提供する、項1~9に記載の検体検査。
項11:被験者の口腔や咽喉に関する情報に、口腔や咽喉の健康状態に関する情報、口腔や咽喉の健康におけるリスク要因に関する情報、口腔・咽喉衛生に関する情報、口腔や咽喉の機能状態に関する情報、口腔や咽喉の機能低下のリスク要因に関する情報、および推奨する口腔や咽喉のケア商品に関する情報の何れかに含まれる情報が含まれる、項1~10に記載の検体検査。
項12:被験者の口腔や咽喉に関する情報に、歯科保健指導に関する情報が含まれる、項1~11に記載の検体検査。
項13:口腔内細菌および/またはカンジタ菌に関連する検査に、抗体検査および、核酸検査または抗原検査の何れか一方の検査、の2つの検査が含まれる、項1~12に記載の検体検査。
項14:項1~13に記載の検体検査に加えて、下記の群から選ばれる単独又は2以上の検査が含まれる、生体における検査。
(i)口腔内の画像情報や映像情報を活用した、口腔や咽喉の機能や口腔内の状態の検査
(ii)咀嚼行動時および/または発声行動時の頭部を含む映像情報や咀嚼の音情報を活用した口腔機能の検査
(iii)オーラルディアドコキネシス
項15:さらに、呼気の分析検査が含まれる、項1~14に記載の検体検査。
項16:さらに唾液の分析検査が含まれる、項1~15に記載の検体検査。
項17:静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報と、下記に占める(i)および(ii)の何れか片方の情報を利用して、被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持に関連する口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成し、前記抗体検査の結果情報と作成した口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を被験者に提供する、口腔ケア支援システム。
(i)少なくとも血糖値測定、ヘモグロビンA1c値測定、酸化HDL値測定、およびCRP値測定からなる群から選ばれる単独または2以上の検査項目を含む、血液検査の結果情報
(ii)少なくとも被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報の何れかに含まれる単独又は2以上の情報を含む、被験者情報
項18:血糖値検査が、空腹時血糖値の検査である、項17に記載の口腔ケア支援システム。
項19:血糖値検査が、空腹時血糖値の検査およびブドウ糖負荷試験検査である、項17に記載の口腔ケア支援システム。
項20:血糖値検査が、空腹時血糖時の検査であり、更に酸化HDL値の検査を含む、項17に記載の口腔ケア支援システム。
項21:静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報に加え、静脈から採血した血液における、核酸検査および/または抗原検査を含む、項17に記載の口腔ケア支援システム。
項22:静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報と、下記(i)および(ii)に含まれる単独または2以上の情報を利用して、被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持に関連する口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成し、少なくとも作成した口腔や咽喉の衛生・機能関連情報と前記口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報を、検査依頼者および/または被験者に提供する、口腔ケア支援システム。
(i)少なくとも血糖値測定、ヘモグロビンA1c値測定、酸化HDL値測定、およびCRP値測定からなる群から選ばれる単独または2以上の検査項目に含む血液検査を含む、検体検査の結果情報
(ii)少なくとも被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報の何れかに含まれる1つ又は2以上の情報を含む、被験者情報
項23:血糖値検査が、空腹時血糖値の検査である、項22に記載の口腔ケア支援システム。
項24:血糖値検査が、空腹時血糖値の検査およびブドウ糖負荷試験検査である、項22に記載の口腔ケア支援システム。
項25:血糖値検査が、空腹時血糖時の検査であり、更に酸化HDL値の検査を含む、項22に記載の口腔ケア支援システム。
項26:静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報に加え、静脈から採血した血液における、核酸検査および/または抗原検査を含む、項22に記載の口腔ケア支援システム。
項27:口腔内細菌に、少なくともPorphyromonas gingivalisが含まれる、項17~26に記載の口腔ケア支援システム。
項28:口腔内細菌に、少なくとも異なる2種又は2種以上のPorphyromonas gingivalisの菌株が含まれる、項27に記載の口腔ケア支援システム。
項29:口腔内細菌に少なくともフゾバクテリウム属(Fusobacterium)に属する細菌から選ばれる単独または2つ以上の菌株が含まれる、項17~28に記載の口腔ケア支援システム。
項30:項17および/または項22に記載の結果情報が、静脈から採血した血液における、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査に加えて、口腔内細菌のオートインデューサーに関する分析検査の検査結果を含む、項17~29に記載の口腔ケア支援システム
項31:項17および/または項22に記載の被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持させる目的を有する口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成する際に利用する情報に、下記の群から選ばれる単独又は2以上の検査の結果情報が含まれる、項17~30に記載の口腔ケア支援システム。
(i)口腔内の画像情報や映像情報を活用した、口腔や咽喉の機能や口腔内の状態の検査
(ii)咀嚼行動時および/または発声行動時の頭部を含む映像情報や咀嚼の音情報を活用した口腔機能の検査
(iii)オーラルディアドコキネシス
項32:検体検査の検査結果の一部若しくは全てと、検体検査の検査結果から作成された被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能の向上若しくは維持に有用な情報を、電子カルテ若しくは被験者の健康管理に使用するデータベースに記録し、被験者の、歯科・口腔外科領域における医療行為の支援や口腔・咽喉の健康管理や機能維持の支援の目的で活用する、項17~31に記載の口腔ケア支援システム。
項33:被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持させるために有用な情報に、被験者における歯科保健指導の要否判断と前記判断結果の被験者への伝達が含まれる、項17~32に記載の口腔ケア支援システム
項34:被験者の口腔に関する情報に、歯科保健指導に関する情報が含まれる、項16~32に記載の静脈血の検体検査。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、従来、国民間で広く実施されている健康診断や血液検査、献血などの採血を伴う場合における血液検査に併せて実施できるため、環境整備や労力、費用の面で被験者や検査実施者などに大きな負担を要しないことから広範囲での実施の実現性が高い。したがって、本発明の実施により早期に国民の口腔の健康状態の向上や維持管理等に貢献することが可能となる。併せて、歯科診察、検診や歯科保健指導などが必要とする被験者を推測できることから、国民全員ではなくリスクを有する一部の被験者だけに専門的な医療措置を講じるだけでよいことから、被験者全員に歯周疾患検診や歯科検診を実施することに比べ、簡便かつ大幅な費用軽減を実現しつつ同等以上の効果を見込むことができる。したがって、本発明を実施することで、国民歯科皆検診と同等の効果をもたらす定期的な検査の実施が可能となり、歯科診療や歯科保健指導などの歯科衛生向上のための啓蒙活動が必要とする被験者に対して的確かつ効率的に口腔衛生啓蒙や医療措置を実施することが可能となる。また、口腔疾患等の予防や治療において、口腔や咽喉の健康状態や口腔や咽喉内の治療に影響を与えうる被験者毎の諸情報を歯科医などの医療従事者にも伝達できるため、効果的な治療法や予後ケア方法などの検討時に参考にしたり、歯科保健指導において被験者毎に最適な内容の指導を可能にできる。さらには、口腔・咽喉領域の部門を備えていない医療機関においても患者の口腔や咽喉の健康状態を容易に把握することが可能であるから、口腔や咽喉以外の医科領域においても治療の効果の向上や術後の予後改善などの観点で適切な措置を講じることができるようになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の代表的実施形態に係る支援システムの構成を示す説明図。
【
図2】同じく支援システムにおける支援サーバの構成を示すブロック図。
【
図3】同じく支援システムにおける支援サーバの別の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本発明における「静脈血」と記載する検体は、静脈から採取した血液自体および前記血液に由来する検体の単独、若しくは2以上から選択できる。血管以外から直接採取しない検体に関しては、検査結果に影響を与える因子がコンタミする可能性があるため、本発明の検体としては適用できない。また、採取して得られた血液を由来とする検体を用いるのが好ましいが、例えば同一日に複数採取した血液を使用することも好ましい態様である。抗体検査の結果と血糖値等の検査結果を対比して考察・評価することから、検体血液の採血日が異日の場合は好ましくない。
【0013】
本発明の検査対象である口腔内細菌とは、400~800種類以上と言われる口腔や咽喉に存在する細菌を意味する。口腔内常在菌を構成する細菌の種類は被験者毎に異なり、特定の被験者においても年齢や口腔や咽喉の衛生状況、全身疾患や代謝などの変化により変動することが知られている。歯周病や齲蝕など罹患の有無は歯科の検診や歯科診療において判断されているが、本発明の技術により簡便な方法でそれらを推定することができる。更に歯周組織が感染すると歯周組織内から完全に細菌を排除することは容易ではなく、多くの場合、外観観察上は健全と判断されていても生体組織内に生菌が残留している場合には、生体宿主の状態悪化や、再感染した場合などにおいて、疾病の進行が速くなるリスクがある。本発明の技術は生体外の細菌の状態ではなく、生体内における細菌の存在や感染の影響の程度などを把握することが出来るため、口腔感染症の罹患や再発リスクや口腔感染時の重症化の発生し易さなどの口腔感染リスクや、標準的な口腔感染症に対する治療方法や予防手段の効果が得られにくい体質の有無やその程度を推定出来る情報を提供することができる。
【0014】
「口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する」とは、検体検査の対象が、口腔内細菌またはカンジタ菌に由来す核酸、抗原および抗体若しくは前記の由来する遺伝子、抗原および抗体と同等の反応性を示す核酸、抗原および抗体などであることを意味する。具体的には、核酸検査の場合には検体検査対象とする全ての口腔内細菌やカンジタ菌に各々対応する核酸、抗原検査の場合には検体検査対象とする全ての口腔内細菌やカンジタ菌に各々対応する抗原、抗体検査の場合には検体検査対象とする全ての口腔内細菌やカンジタ菌に各々対応する抗体、およびそれらと同等の反応性を示す物質、が検査の対象であることを意味する。
【0015】
本発明の検体検査対象の口腔内細菌としては口腔や咽喉の健康状態に影響を与えうることが知られている細菌が好ましく、特に疾患の罹患や進行などに影響を与える可能性がある細菌を対象とすることがさらに好ましい。また、細菌以外においては真菌であるカンジタ菌(Candida albicans)も口腔感染症の原因菌として知られていることから検体検査対象とすることが好ましい。口腔の健康に悪影響を与えうる細菌としては、例えば、歯周病に関連するレッドコンプレックスと呼ばれるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)、Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ)、Tannerella forsythia(タンネレラ・フォーサイシア)の3種類の細菌のほか、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス:旧学名はActinobacillus actinomycetemcomitans)、オレンジコンプレックスと呼ばれる、Prevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)、Eubacterium nodatum(ユーバクテリウム・ノダタム)、Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム・ヌクレアータム)、Fusobacterium polymorphum(フゾバクテリウム・ポリモルファム)、Prevotella nigrescens(プレボテラ・ニグレッセンス)、Peptostreptococcus micros(ペプトストレプトコッカス・ミクロス)、Campylobactor rectus(カンピロバクター・レクタス)、Campylobacter showae、Campylobacter gracilis(カンピロバクター・グラシリス)、Streptococcus constellatus(ストレプトコッカス・コンステラータス)、など。その他、齲蝕との直接的・間接的な関係があると知られている、Streptococcus mutans(ストレプトコッカス・ミュータンス)、Streptococcus sobrinus(ストレプトコッカス・ソブリナス)、Actinomyces naeslundii(アクチノマイセス・ネスランディ)、Actinomyces viscosus(アクチノマイセス・ビスコサス)、Actinomyces odontolyticus(アクチノマイセス・オドントリティカス)、Actinomyces oris(アクチノマイセス・オリス)、その他には歯垢形成との関係が知られているCorynebacterium matruchotii(コリネバクテリウム・マトルコティ)、顎放線菌症との関連性が知られているActinomyces israelli(アクチノマイセス・イスラエリィ)、高齢者の侵襲性感染症との関連性が知られているStreptococcus agalactiae(ストレプトコッカス・アガラクチア)などが挙げられる。
【0016】
上記の口腔内細菌のうち、歯周病の病原性を有する細菌の代表例であるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)と、口腔衛生に大きな影響を与える歯垢の形成において重要な役割を果たすことが知られつつあるフゾバクテリウム属(Fosobacterium)に関しては、検査対象の口腔内細菌として特に重要である。
【0017】
特に、Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)に関しては、菌株が異なると薬剤耐性や疾患進行性などが異なる場合があることが知られていたり、口腔以外の組織に悪影響を及ぼしたりすることが知られているため、感染状態を引き起こしている細菌の菌株情報を正確に把握することで、効率的な治療方法や症状悪化の予防方法などの医療行為における参考情報となるだけでなく、口腔以外の疾患等のリスクが把握できる点で、複数の菌株に関する抗体検査を実施することは重要である。抗体検査で前記菌株情報を把握するためには、検知したい細菌を予め選択し、それらの実質的に交差反応を生じない抗体を作成し、それらを抗体検査に供することで実施できる。選択されうる菌株の例としては、ATCC33277株、ATCC53977株、ATCC49417株、A7A1-28株、AJW4株、AJW5株、FDC381株、Haral株、HG184株、HG564株、HG1690株、HG1691株、HNA99株、HW24D1株、JH4株、OMZ314株、OMZ409株、SUNY1021株、SU63株、TDC60株、W50株、W83株、9-14K-1株、16-1株、2561株、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
歯周病は炎症性の局所疾患としても理解されており、全身の炎症状態の状況によって、罹患リスク、疾患病状の進行性の程度、治癒の難易度などに様々な影響を与えることが知られつつある。特に、糖代謝に異常を有する場合には疾患の進行が早かったり、重症に至る可能性が高かったり、治療による症状緩和や治癒が難しかったりすることがあることが分かった。抗体検査は過去又は現在感染状態にあり、抗体が産生される状況であった事実を把握する検査であり、感染している細菌等の情報も正確にかつ詳細に把握できるメリットがある一方、感染後に治癒し、時間が経過した場合や感染していない場合などには有用な情報を得られないことやリスク判断に対して十分な情報を把握できないという課題点がある。したがって、採血時点での血糖の状態を把握する血糖値(空腹時血糖値の検査がより好ましい。)や、過去の血糖値の状態を推測できるヘモグロビンA1c値の検査結果を抗体検査の結果と併せて評価することにより、未感染の状態や感染後治癒した状態におけるリスク判断や感染状態における疾患症状の進行度や重症化リスク、治療効果の困難性、治療手段の選択補助情報(例えば、抗生剤の選択、口腔ケア手段や使用薬剤や口腔ケア剤などの選択、糖代謝異常の緩和策や治療の選択、食生活や運動療法などの選択などに有用な情報)など検査結果を有用に活用できる被検者の対象や提供できる情報を幅広く保持することが可能となる。なお、糖代謝異常の把握としては、空腹時血糖値の検査が好ましい。更には、空腹時血糖値は正常であるが、糖代謝が正常でないため食後の血糖値が通常の人よりも高い「食後高血糖」の状態になる、所謂「隠れ糖尿病」と称される状態の被験者を把握するために、空腹時血糖値の検査に加え、ブドウ糖負荷試験の検査を実施することが最も好ましい。なお、ブドウ糖負荷試験は、「10時間以上絶食後、空腹のまま採血し、血糖値を測定したうえでブドウ糖75gを摂取し、摂取後、30分、1時間、2時間後に採血し、血糖値を測定する」試験であることや、採血時の状態を把握する目的である単回の血糖値検査とは異なり生体の糖代謝に対する反応性の状態を把握する検査であり、1か月程度の期間であればほぼ同じ結果を得られる。したがって、抗体検査や(単回の)血糖値検査の場合には同日に採血した静脈血を検体とすべきではあるが、ブドウ糖負荷試験を実施する場合の検体は、前記検査の前後1か月以内に採血した4回分の異なる静脈血であっても問題ない。さらに、ブドウ糖負荷試験に替えて酸化HDL値の測定を実施することも本発明の実施態様の1つである。酸化HDL値は、特開第2021-004817号に開示される通り耐糖能異常リスクを測定する簡易的方法であり、単回の血液採取で実施できることから抗体価や空腹時血糖値などの測定に用いる静脈血を活用できる点で有用な手段である。なお、酸化HDL値の測定においては、前記の「隠れ糖尿病」を検知できるほか、BMIの数値からは肥満と判断されないが内臓脂肪や異所性脂肪が蓄積している、所謂「隠れ肥満」や「サルコペニア肥満」のリスクをも検知することが出来る。特に、サルコペニア肥満の場合、サルコペニアだけの人や肥満だけの人に比べ、生活機能の低下、転倒、骨折、死亡をきたしやすいことや筋肉に脂肪が蓄積しインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が亢進し、糖尿病を発症したり悪化させたりするリスクが高くなるなるため、この点からも酸化HDL値を測定することは有用である。
【0019】
核酸検査として用いることのできる検査方法は核酸を活用した検査であれば特に限定されるものではなく、検査目的に応じて最適は方法が採用し得る。例えば、Conventional PCR、Real-time PCR、Reverse transcription PCR、Nested PCR、Hot start PCR、Multiplex PCR、Quantitative PCR、Quantitative Real-time PCR、Touchdown PCR、Inverse PCR、GC-rich PCR、2-step PCR、loop-mediated isothermal amplification、digital PCR、Whole Genome AmplificationなどのMultiple Displacement Amplification、Strand displacement amplification、Nicking Enzyme Amplification Reaction、Helicase-dependent amplification、Recombinase Polymerase Amplification、Strand-Invasion Based Amplification、Nucleic Acid Sequences Based Amplification、Transcription Mediated Amplificationなどを活用した検査方法が挙げられる。
【0020】
抗原検査の検査対象となる抗原とは、菌体自体、菌体の一部分および菌に由来する化合物のうち抗原構造を有するものをいう。2以上の菌に関連する抗原を同時に検査する場合、各々の菌に対応する別個の抗体を活用した抗原検査を組み合わせて実施する。この場合、各々の抗原検査に使用する抗体は、少なくとも検体中に含まれる他の細菌に対して実質上の交差反応を示さないことが望ましい。ここにおいて、実質上の交差反応を示さないとは、検査対象の各々の菌の抗原の存在の判別が可能な程度であれば、若干の交差反応が生じたとしても交差反応は示さないとみなすことを意味する。
【0021】
抗体検査の検査対象となる抗体とは、菌体自体、菌体の一部分および菌に由来する化合物による抗原刺激により産生される抗原と特異的に結合する活性を有するたんぱく質を意味する。抗体と反応する検査抗原としては、菌体自体、菌体の一部分および菌に由来する化合物以外に、同様の反応性を有する抗原ペプチドやその組み合わせなども含まれる。2以上の菌に関連する抗体を検査する場合、各々の抗体に対応する別個の抗原構造を有する抗原を活用した抗原抗体反応を利用する。この場合、各々の抗原抗体反応間や検体中に含まれる他の細菌に対する抗体と実質上交差反応を示さないことが望ましい。ここにおいて、実質上交差反応を示さないとは、検査対象の各々の菌の抗体の存在の判別が可能な程度であれば、若干の交差反応が生じたとしても交差反応は示さないとみなすことを意味する。また、抗体検査は抗体の有無を判断する定性的な検査でも良いが、抗体価を測定し得る検査であることが感染の程度や時期などを推察し得る情報となることから好ましい。
【0022】
好ましくは、核酸検査または抗原検査の少なくとも一方と抗体検査、さらに好ましくは、核酸検査または抗原検査の少なくとも一方と抗体検査を実施する。核酸検査や抗原検査はともに、検査時点における検査サンプル中に存在する口腔内細菌またはカンジタ菌、若しくはその菌体の断片などを検知できる。前者は核酸の存在を検知するものであるのに対して、後者は抗原の存在を検知するものであることから、両者の検査結果は完全に一致するとは言い切れないため、実施する検査の原理や具体的な試験条件などを加味したうえで、検査結果の解析を行う必要がある。検出精度や検査所用時間などでも核酸検査と抗原検査は相違する。核酸検査において、EMA(Ethidium bromide monoazide)やPMA(Propidium monoazide)を活用した方法を用いると生菌状態の菌の存在の可能性を把握することができる。したがって、検査の実施に際しては、検査目的や検査費用、検査環境などを総合的に検討したうえで、単独、或いは複数の最適な方法を採用して実施する。一方、抗体検査は、検査時点より過去に、被験者が口腔内細菌またはカンジタ菌に感染していたか、現在も感染状態が継続していることを把握することができる。抗体検査で感染の疑いが把握できたとしてもその感染部位が口腔領域以外の場合も含まれることから、これらの検査の情報だけの単純な判断はできないが、これらの検査の情報とそれ以外の諸情報を組み合わせて考察することことにより、感染履歴を含めた被験者の状態を把握できる。
【0023】
核酸検査、抗原検査および抗体検査に供する検査サンプルは同一でも異なっていても良いが、サンプルの採取時期は同時期である必要がある。サンプリング時期が同日だけでなく数日程度異なっていても「同時期」に該当するが、同日にサンプリングすることが最も好ましい。サンプリング時期が相違すると被験者の状態が変化する可能性があり、被験者の情報を正確に把握することが困難になるリスクを生じるため好ましくない。好ましくは、健康診断や医療機関での血液検査の際に全ての検査項目の検体検査サンプルを採取することが最も好ましい。抗体検査の検査サンプルは、静脈からの採血により得られる血液に限定される。一方、核酸検査や抗原検査の検査サンプルは、静脈からの採血で得られる血液の他、口腔内や咽喉内、若しくは口腔内組織内からの採取によって得られた血液も使用することができる。このうち、抗体検査に供する検体検査サンプルは静脈から直接採血した血液およびそれに由来する成分を用いる。また、核酸検査や抗原検査に供する検体サンプルは静脈から採取した血液を用いることが好ましいが、口腔内から採取した検体サンプルも使用できる。口腔内から採取したサンプルとしては、歯肉溝滲出液、歯垢、舌苔、唾液などである。検査目的に応じて検体検査サンプルを適宜選択できるが、歯周組織に関する情報を把握したい場合には、検査に供する検体サンプルにおいて血液の他、歯肉溝滲出液、歯垢、唾液の少なくともいずれかを含むことが好ましく、中でも歯肉溝滲出液および/または歯垢を含むことが好ましく、歯肉溝滲出液を含むことがもっとも好ましい。
【0024】
核酸検査や抗原検査の検査結果としては、検出された細菌の菌種や菌数、全体に対する占有比率(対送金数比率)、特定の菌株で検出された種類などであり、検査目的などを勘案しつつこれらから適宜選択し検査結果とできる。抗体検査の検査結果としては、特定の菌種や菌株に由来する抗体の存在の有無やそれらの抗体価(中和抗体価、凝集抗体価など)などであり、検査目的などを勘案しつつこれらから適宜選択し検査結果とできる。さらに、前記の検査結果(細菌の菌種の組合せやその存在比率、検出された検査項目や検査サンプルなど)を総合的に検討し、口腔内の健康状態に関して推測を行ない、前記の検査結果に包含させることもできる。これらに関連する技術が記載されている特許公報の事例としては、特開2009―52945号(免疫クロマトグラフィー法による歯周疾患の検査または診断方法)、特開2022-96817号、特開2022-96815号、特開2022-96814号、特開2022-96812号、特開2017-111095号(以上、歯周病原菌に対する抗体価測定に関連する技術情報)などが挙げられるがこれらの記載に限定されるものではない。
【0025】
歯周病に関しては、Red Complexと呼ばれる菌種のうちPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の検出の有無やそれらの菌数、総菌数に対する存在比率、検出される試験項目や試験サンプルの種類などの結果を総合的に判断する事により、罹患状態の可能性や罹患し易さのリスク判断を行うことができる。加えて、被験者への問診結果や各種情報収集端末から取得した情報やその解析結果などの諸情報や過去の治療履歴などの被験者に関する情報の内容を加味する事が出来ればより確度の高い正確なリスク判断を行うことができるため、より好ましい。具体的には、抗体価、血糖値・ヘモグロビンA1c値、酸化HDL値(齲蝕リスク、歯周病重症度の評価、口腔衛生状態の評価:特開2022-171275号、特開2022-171263号、特開2022-171272号などに開示。)、CRP検査などの血液検査項目やBMI(Body Mass Index)値、口腔内組織中の生菌の存在の有無、口腔内の状態や口腔ケアに対する被験者の認識や意識などに関する情報、歯科インプラント施術の有無、腸内細菌フローラ情報、被験者の生活関連情報(実際の口腔ケア行動・食生活のパターン・生活パターンに関する諸情報(好ましくは情報取得端末を活用した情報およびその情報を解析した結果などを含む)、喫煙の習慣の有無、など)などを適宜選択し、加味して判断を行うことが挙げられる。これらの具体事例において、抗体価は口腔内組織中に微量の生菌が存在している可能性も示唆でき、血糖値やヘモグロビンA1c値、酸化HDL値の血液検査項目は炎症反応の起こりやすさを示唆でき、歯科インプラント施術部位が存在すると歯周組織の深部への感染が比較的容易なため重度の歯周病に罹患しやすいことや、CRP検査結果からは歯周組織における強い炎症反応の存在の可能性を示唆しうることからこれらの検査項目を適宜組み合わせて実施することは最も好ましい。検査判断をさらに高めるためには、Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)以外の菌種に関する検査情報を併せて検討することが好ましい。具体的には、Red Complexと呼ばれる菌種のうちPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)以外のTreponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ)、Tannerella forsythia(タンネレラ・フォーサイシア)の2種類の細菌、Prevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス)から選ばれる1種以上を適宜選択することが好ましく、これら全ての菌種を選択することがさらに好ましい。さらに、前記情報に特定の菌株情報が得られる検査の結果情報を加味して考察することにより、効果的で効率のよい歯周病治療方法の選択に有益な情報を提供することが可能である。その他の事例としては、歯肉溝浸出液を検査サンプルにおけるPrevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)の検出された菌数が多い場合、歯周病に罹患している可能性を示唆する。特に、被験者が思春期であれば思春期性の歯肉炎、妊娠中であれば妊娠性歯肉炎の可能性を強く示唆する。なお、Prevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)に加えて、Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム・ヌクレアータム)などのフゾバクテリウムやTreponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ)などのスピロヘータなどが検出された総菌数に対して大きな割合を示す場合は、(急性)壊死性潰瘍性歯肉炎を罹患している可能性が示唆される。(急性)壊死性潰瘍性歯肉炎は通常の歯肉炎とは異なり軟部組織の壊死、急速な歯周破壊および隣接歯間骨量減少などの重篤な症状を伴うことから、本発明の検査により早期の段階で発見し、適切な措置を講じることが好ましい。
【0026】
齲蝕に関しては、Streptococcus mutans(ストレプトコッカス・ミュータンス)が原因菌として広く知られているが、その他にも、Streptococcus sobrinus(ストレプトコッカス・ソブリナス)、Streptococcus downei (ストレプトコッカス・ダウネイ)、Streptococcus rattus(ストレプトコッカス・ラッタス)、Actinomyces naeslundii(アクチノマイセス・ネスランディ)、Actinomyces viscosus(アクチノマイセス・ビスコサス)、Actinomyces odontolyticus(アクチノマイセス・オドントリティカス)、Actinomyces oris(アクチノマイセス・オリス)の存在も齲蝕を引き起こす要因の一つとして考えられるため、リスク判断の判断要素になる。また、歯垢を検査サンプルとした場合、歯垢から検出された総菌数に対するStreptococcus sanguinis(ストレプトコッカス・サンギニス:旧学名Streptococcus sanguis)の菌数の存在比率(A)とStreptococcus mutans(ストレプトコッカス・ミュータンス)の菌数の存在比率(B)との関係(例えば、B/A比)は、口腔内の齲蝕部位の発生と密接な関係があると言われている(例えばB/Aが1-2程度の場合、前齲蝕の発生の可能性を示唆できることから、それ以上の数値を示す場合には齲蝕が発生している可能性が示唆される。)。したがって、齲蝕の原因菌ではないが、Streptococcus sanguinis(ストレプトコッカス・サンギニス)についても齲蝕のリスク判断を目的に包含する場合の検体検査対象とできる。
【0027】
歯垢(デンタルプラーク)に関しては、歯垢の形成過程において歯牙表面への付着菌の種類が変化することが知られている。したがって、歯垢を検査サンプルとした場合、検出される主な菌種を調べることで歯垢の形成過程の段階や口腔の健康状態悪化や口腔疾患罹患のリスクを推測できる。具体的には、Streptococcus gordonii(ストレプトコッカス・ゴルドニ)、Streptococcus oralis(ストレプトコッカス・オラリス)、Streptococcus mitis(ストレプトコッカス・ミティス)、Actinomyces naeslundii(アクチノマイセス・ネスランディ)、Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム・ヌクレアータム)、Prevotella nigrescens(プレボテラ・ニグレセンス)、Porphyromonas pasteri(ポルフィロモナス・パステリ)、Veillonella dispar(ベイロネラ・ディスパ)、Veillonella parvula(ベイロネラ・パルブラ)、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス)、Prevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)、Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)、Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ)、などの存在やそれらの全体に対する菌数比率の情報から、歯垢の成熟度合いや口腔疾患の罹患リスク、口臭などの不快症状の有無を推測できる。Corynebacterium matruchotii(コリネバクテリウム・マトルコティ)は菌体内にリン酸カルシウムを沈着させるため歯垢の石灰化による歯石の形成に深く関与していることが知られており、歯石付着や歯石予防の観点からの有用な情報を得られるため、歯石や歯石に関連する歯周病や齲蝕に関するリスク判断を目的に包含する場合に検体検査対象とできる。また、歯肉の端付近から上の部分の歯牙表面に付着している歯垢(歯肉縁上プラーク)に関しては齲蝕や歯周病に関するリスク判断に有用な情報を得ることができ、歯肉の端付近から下の歯周ポケットと呼ばれる部分の歯牙表面に付着している歯垢(歯肉縁上プラーク)に関しては主に歯周病に関するリスク判断に有用な情報が得られる。
【0028】
その他、高齢者、口腔乾燥の自覚がある人、ステロイド投薬や化学療法を受けている人や義歯装着者で、口腔内から採取した検査サンプルからCandida albicans(カンジタ・アルビカンス)が検出された場合、口腔カンジタ症に罹患している、若しくは罹患する可能性を推測できる。また、歯周組織中から採取した検査サンプルにおける核酸検査・抗原検査や、抗体検査において、Streptococcus constellatus(ストレプトコッカス・コンステラータス)とPrevotella intermedius(プレボテラ・インターメディアス)の混合感染を示唆する検査結果が得られた場合は、口腔内に閉鎖性膿瘍が発生している可能性を推測できることから、閉鎖性膿瘍のリスク判断を目的に包含する場合には検体検査対象とできる。
【0029】
本発明の検体検査から得られる情報をさらに多様にする目的で、静脈血の検体検査に加えて、口腔内細菌のオートインデューサー(autoinducer)に関する分析検査を実施することは好ましい実施態様の一つである。歯垢形成や齲蝕、歯周病の原因となる細菌等の口腔内における検査時における増殖の状態や検査時以後の増殖傾向の推測、それらの結果から推測される口腔衛生におけるリスクなどを判断し得るため好ましい。例えば、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ポリフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)属細菌、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、アクチノマイセス(Actinomyces)属細菌、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、プレボテラ・インタメディア(Prevotella intermedia)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)アクチノマイセス・ナエスランディ(Actinomyces naeslundii)、ストレプトコッカス・サンギニス(Streptococcus sanguinis)など多くの口腔内細菌に関してオートインデューサー-2による種間でのクオラムセンシングが発現しており、いくつかの細菌においては、前記のクオラムセンシングにより病原因子の産生が調節されていることが知られつつある。
【0030】
検査項目の結果に加えて提供することができる被験者の口腔や咽喉に関する情報としては、歯周病、齲蝕、歯垢、歯石、舌苔などに関連する情報に限定されない。例えば、口臭;舌炎、歯槽骨炎、顎骨歯髄炎、蜂窩織炎、などの口腔関連組織の炎症;味覚異常;口腔カンジタ症;歯周組織や歯槽骨の退縮(退行)、などに関連する生体側の情報や、医療措置が必要な疾患の罹患可能性があると推測される場合には歯科治療の受診を推奨したり、歯科衛生の不良が推測される場合には歯科保健指導の受診を推奨したり、口腔の健康の維持・向上に関する諸情報の提供や口腔ケア商品の推奨、口腔ケアの正しい方法など、口腔の健康の向上や維持・管理に有用な情報を提供したりすることが挙げられる。
【0031】
本発明は、歯科医や歯科衛生士などの専門家に対して、歯科の検診や歯科保健指導、歯科治療に有用な情報も提供し得る。現状では口腔内の痛みや腫れなど重篤な状況にならないと歯科領域の医療機関に受診しない人が殆どであり、口腔ケアの観点から好ましいとされる口腔状態の予防目的で歯科領域の医療機関を定期的に受診する人はほとんどいない。歯牙や歯槽骨などの欠損や退縮や重度の歯周ポケットの生成などは元の状態に戻すことが困難な場合が殆どで、それらを治療する医療行為においては状態を悪化させず、現状を維持することを目的とする措置が行われている。特に歯周病が進行した段階である歯周炎は慢性的な炎症や歯槽骨の吸収などが生じていることから治療効果が得られるまでに期間を要する場合が多いことから、被験者の口腔内の状態が非常に悪くなっている段階になって初めて医療機関を受診した場合には、最悪、歯牙の喪失を防ぐことが出来ず摂食時の障害が発生し、QOLの低下や栄養不良、認知症の進行などを引き起こす可能性もある。従って、口腔の健康管理においては、予防歯科の観点からの施策実行が重要であり、健康状態を逸した場合にはできる限り早期の段階で歯科専門医などの診察や治療を受けることが重要となる。本発明は、全身の健康管理の目的で実施が普及している健康診断や血液検査を実施している医療機関において採血した血液サンプルを使用した抗体検査等を実施することにより、歯科専門家の診察などが必要と推測する人を選択し、歯科受診などを推奨することで前記課題点を解消し得るものである。加えて、口腔内の健康状態に影響を与えている可能性のある細菌種の情報や、口腔内の炎症状態やその治療効果に影響を与えうる血糖値やヘモグロビンA1c値、酸化HDL値、CRP検査などの血液検査の検査結果を合わせて提供することにより、歯科医療機関における治療などにおいて、適切かつ効果的な治療方法等の選択に有用な情報提供を可能にできる。さらには、目視観察等の検査では健康状態な歯周組織と診断されていたとしても口腔感染症に関係する細菌の抗体が血液や歯肉溝滲出液の検体から検出された場合、口腔内組織中に炎症を引き起こさない程度の感染状態(不顕性感染の状態)にある可能性がある。この状態にある人は、感染状態にはあるが症状が現れていない若しくはごく軽微な症状にとどまっていることから、何らかの切っ掛け、、例えば、体調不良や口腔の衛生環境の悪化などの軽微な変調が口腔感染症の症状を進行させることがあり、既に感染状態にあったことから、症状の進行も通常に比べてかなり早い場合が多い。さらに前期に加え、血糖代謝異常などの疾病の進行に影響を与えうる全身状態にあれば、症状進行の更なる亢進だけでなく、疾病の治療に期間を要したり治療自体が困難になったりするリスクがあることから、症状の進行が進むできる限り前の段階で医療的措置を講じることが肝要となる。本発明により、不顕性感染の状態を把握することで、早期の疾病の治療や定期的な予防的措置を講じることができ、口腔の健康状態を維持・向上に貢献できる。
【0032】
本発明の検体検査から得られる情報をさらに多様にする目的で、口腔内の状態や口腔や咽喉の機能に関する検査を併せて実施することが好ましい実施態様の一つである。より詳しくは、口腔や咽喉の機能低下は口腔衛生状態を悪化させる要因の一つであり、どのような機能がどの程度低下しているかを把握することは、口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を充実させるためには有効である。口腔内の状態や口腔や咽喉の機能に関する検査としては、例えば、携帯電話の撮影機能を活用して得られる口腔内の画像を処理することにより歯垢の付着部位や付着程度、歯並びや義歯装着状態、歯頚部の状態(例えば、腫れ、発赤、退縮の有無や程度、など)、歯間部の状態(例えば、歯間鼓形空隙の有無や大きさ、清掃状態、など)、歯石付着の有無や付着部位・付着程度、など)などの口腔内の状態などを把握する検査や、咀嚼時や嚥下時における映像や音情報の解析や舌や口唇、軟口蓋などの運動の速度や巧緻性に関して発音を用いて評価する手法であるオーラルディアドコキネシスによる舌や顎の運動機能に関する情報を把握する検査が挙げられる。
【0033】
さらに、呼気や唾液の検査から得られた情報を加えて考察することで、より正確で、またはさらに広範囲の情報を把握することができるため、好ましい。
【0034】
本発明は、被験者の口腔や咽喉の衛生状態や機能を向上若しくは維持に関連する口腔や咽喉の衛生・機能関連情報、より詳しくは、口腔を健全な状態に維持・向上させるために有用な「口腔や咽喉の衛生・機能関連情報」の提供や、被験者の口腔ケアの意識を向上させたりや口腔ケア行動の実践や行動内容の改善を促すための情報の提供、歯科・医科における診察や治療などの必要性・緊急性などの推測と前記措置が必要と推測される被験者等に対する措置の推奨と付随する諸情報の提供、歯科保健指導の受講が好ましい被験者の選択情報や同指導受講の推奨などの情報など、被験者の口腔や咽喉の健康や機能に関して有用な情報を、被験者や雇用者、医療従事者などに提供する、口腔ケア支援システムをも提供し得る。
【0035】
本発明における口腔ケア支援システムは、口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報と、血糖値およびヘモグロビンA1c値、酸化HDL値、CRP検査値の少なくとも1つの血液検査の結果情報、および被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報から選択される単独又は2以上の被験者情報、を記録する支援サーバ1を有し、核酸検査等の検体検査結果と、血液検査の結果情報か被験者情報の一方またはその両方を利用して、被験者の口腔の健康の状態や健康状態を損なうリスクを推定し、その推定情報を基に個々の被検者毎に対し口腔の健康状態を維持向上や維持させるために有用な情報を作成し、検査結果や推定情報、作成した被験者の口腔の健康を向上若しくは維持するために有用な情報を、ネットワークを通じて直接若しくは検査事業者や検査依頼者などを介して被験者や医療従事者などに提供するシステムである。なお、口腔の健康状態を維持向上や維持させるために有用な情報には、被験者に対して事業者が提供し得る口腔ケアに関するサービスや商品などの提供の申入れや提供の実施も含まれる。このシステムの活用により、非常に簡便かつ安価で多くの被検体の情報処理が可能となるだけでなく、専門家の診察や検診、指導などを必要とする口腔の健康状態が悪い可能性がある被験者や口腔保健指導受診を必要とする口腔衛生が不良である可能性が高い被験者を効果的に選定できることから、提供した情報を基に必要とする被験者に対して必要となる医療的措置を講じることで、国民皆歯科検診に代わる検査システムになり得る。本発明の検査システムは、実際に歯科検診を国民全員に実施することと比較して、格段に安価で簡便かつ迅速に実現できる点で極めて優れているといえる。
【0036】
口腔や咽喉の衛生・機能関連情報の作成において、例えば、抗体検査の結果からは現在の感染状態の有無や過去の感染の有無の推測(治癒後、経時的な要因で陰性となる場合があるため)などの情報、感染の原因となる細菌の種類や菌株などの情報、口腔や咽喉以外の生体組織への影響リスクの推測情報などが把握できる。一方、血糖値の検査結果においては、空腹時血糖値の場合は糖尿病の罹患や糖尿病境界域状態の有無に関する情報、ヘモグロビンA1c値の検査結果については、採血以前の血糖値の水準に関する情報、ブドウ糖負荷血糖値検査や酸化HLB値の検査結果については、糖代謝機能に関する情報が把握できる。更に、CRP値の検査結果については、口腔や咽喉における炎症疾患が発生している可能性の有無を把握することが出来る。また、「被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報の何れかに含まれる単独又は2以上の情報を含む、被験者情報」からは、全身における炎症状態の要因にもなり得る肥満状態の把握(肥満の有無、その程度)、内臓脂肪や皮下脂肪の付着程度、遺伝素因、口腔衛生に影響を与えうる諸因子の有無やその内容の把握(口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣:例えば、口腔衛生習慣の欠如若しくは頻度や清掃技術の程度などにおける課題点等により、口腔衛生状態の悪化リスクの程度が推測でき、飲酒や喫煙などの習慣の有無や程度により口腔疾患罹患リスクが推測できる。その他、年齢や性別、病歴などの属性情報も疾患罹患リスクなどの推測に有意な情報になる。)からは、口腔や咽喉の状態の推測や疾患への罹患リスクなどの推測における被験者の内的及び外的情報を把握することが出来る。これらの情報をもとに本発明においては被検者個人に関する最新かつ個別の口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成することが出来る。例えば、糖尿病に罹患している場合、歯周病などの炎症性疾患の進行が早かったり、平均的な治療手段では治癒が遅かったり困難だったりするため、歯周病などの罹患を予防する口腔ケア手段の提案情報を作成したり、口腔清掃が不十分であったり口腔衛生状態が不良である被験者に関しては、歯科衛生指導の受講や早期の歯科等治療の開始の推奨情報を作成したり、血糖値等の血液検査結果や被験者情報、抗体検査結果などを参考にして、医療従事者等がより効果的な治療方法の選択が可能な情報を作成したり、被験者の生活・運動習慣や嗜好性傾向、口腔衛生行動の状況、体格的特徴から推測されるリスク情報及びリスク軽減のための諸対策案情報の作成などを行い、更に、前記情報を組み合わせた場合に想定できるリスク増強などの有無の検証とその検証結果から想定できる未来予測およびその回避策等に関する諸情報を作成することにより、個々の情報だけでは得られない被検者個人の現状をより正確に反映した口腔や咽喉の衛生・機能関連情報を作成することが出来る。
【0037】
本実施形態に係る口腔ケア支援システムは、
図1に示すように、支援サーバ1と検査結果を入力するための端末2、検査結果等を被験者に伝達するための情報出力するための端末5がインターネットなどのネットワークNを通じて接続され各種情報の送受信が行われるとともに、支援サーバ1はネットワークNを通じて通信接続され各種情報などの送受信が行われる。必要に応じて、検査結果や必要な情報を基に被験者の口腔や咽喉の健康状態を推測するとともに、支援サーバ1で処理できない場合などに口腔や咽喉の健康状態の維持・向上に関して個々の被験者に適切な情報を選定や作成するための演算装置3、被験者の口腔や咽喉の健康状態を推測するために必要な検査結果以外の諸情報や被験者に提供する口腔や咽喉の健康状態の維持・向上に関する情報の選択や情報内容の作成に必要でかつ支援サーバ1に記憶されていない諸情報を入手するためのシステム外サーバ4、がインターネットなどのネットワークNを通じて接続される。システム外サーバ4にはマイナンバー制度を活用したデータベースや電子記録タイプの健康保険証、健康記録等の情報も含有する電子記録タイプのお薬手帳、医療機関や専業機関等が管理する電子カルテなども含まれ、システム外サーバ4から被験者等の情報を取得して活用することや、本発明の口腔ケア支援システムで取得した情報や作成した情報を前記システム外サーバ4に転送し、前記システム内で活用することもできる。
【0038】
前記の実施形態に係る口腔ケア支援システムにおいて、支援サーバは2つ若しくは3つ以上のコンピュータなどで構成されていても良い。この場合、構成されているコンピュータなどは、互いにローカルネットワークなどのインターネットを介さない接続手段か若しくはインターネットなどのネットワークNを通じて接続される。前記接続手段は併用されていてもシステム内で混在していても良い。複数の支援サーバが存在する場合、システムを運営するに際して最適な方法で記録やデータ処理(演算)などの分担やデータやシステムのバックアップなどを各々の支援サーバに行わせることができる。複数の支援サーバが存在する場合は、少なくとも、何れか1つの支援サーバ1に、検査結果や口腔の健康を向上若しくは維持するために有用な情報などを選択し、指定された端末に前記情報などを送信する機能を有していることが必要である。検査結果や被験者の属性情報などは個人情報であることから、秘密保持の観点からそれらに関する情報を送受信する頻度は少ないほど好ましい。前記情報のデータ入力の場所が支援サーバと地理的に離れている場合には、インターネットなどのネットワークを使用せず入力する端末と接続された別の支援サーバ1に記録させておくことにより、インターネットを介した個人情報の送受信の回数を大幅に減らすことができるため、情報漏洩のリスクを軽減させることができる。また、処理能力などの理由から支援サーバ1の処理装置の有用情報生成部において処理できない若しくは処理しきれない場合にはシステム外の演算装置を利用することもできる。
【0039】
支援サーバ1は、
図2に示すように、通信制御部12を備えた処理装置10と記憶手段11とを備える単または複数のコンピュータで構成され、具体的には、処理装置10を中心に、記憶手段11、通信制御部12、図示しない入力操作手段としてポインティングデバイスやキーボード、ディスプレイなどよりなる従来から汎用されているコンピュータ装置を用いることができる。
【0040】
処理装置10は、マイクロプロセッサなどのCPUを主体に構成され、図示しないRAM、ROMからなる記憶部を有して各種処理動作の手順を規定するプログラムや処理データが記憶される。記憶手段11は、支援サーバ1内外のメモリやハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、リムーバルディスクエクスチェンジシステム(RDX)、リダンダント・アレイ・オブ・インエクスペンシブ・ディスクズ(RAID)などから選択し得る。支援サーバ1に通信接続された他のコンピュータのメモリやハードディスクなどで一部又は全部の記憶部の内容を記憶してもよい。
【0041】
処理装置10は、機能的には、システムの運用に必要な情報を取得し、指定された支援サーバの記憶手段に記憶させる「情報収取・記録機能」と被験者毎に被験者に提供する検査結果情報や被験者の口腔の健康を向上若しくは維持するために有用な情報などの生成に必要な情報を記録手段から取得し有用情報を作成し出力する端末5に情報を送信する「情報生成・送信機能」の2つに大別される。具体的には、記録される個々の情報は入力すべき情報を入手した段階で順次端末2から入力され記録手段に記録される。この場合、例えば、複数の支援サーバが存在する場合、入力すべき情報項目ごとに情報を記録する記録手段を指定する場合もあれば、被験者単位で情報を記録する記録手段を指定する場合も可能である。記録される情報を活用する「情報生成・送信機能」の利便性や情報漏洩防止などの観点から最適な方法を採用することが望ましい。被験者に情報を提供する場合、提供する検査結果と必要に応じて被験者の口腔の健康を向上若しくは維持するために有用な情報を生成しそれら情報を纏めて端末5に送信することで行う。端末5においてはディスプレイなどへの表示や印刷だけでなく被験者の所有するコンピュータ、スマートホンや記録媒体などに端末5を通じて情報を転送することも含まれる。この場合、支援システムの端末5が被験者の保有するコンピュータや情報取得用の端末などであり、支援サーバから端末5すなわち被験者が保有するコンピュータなどに直接情報を送信することもできる。
【0042】
被験者の口腔や咽喉の健康を向上若しくは維持するために有用な情報の生成においては、少なくとも口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する抗体検査の結果情報と(i)少なくとも血糖値またはヘモグロビンA1c値、酸化HDL値、CRP検査の測定検査を含む血液検査の結果情報、および/または(ii)少なくとも被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報から選択される単独又は2以上の被験者情報に属する一つ又は2つ以上の情報を参考に過去の知見を参考にしつつ作成する。前記に列挙した被験者情報は、口腔や咽喉の健康と関連性が指摘されている事情であり、被験者の口腔や咽喉の健康に対する推定に有意義な情報となり得る。参考に使用できる過去の知見とは、例えば、口腔疾患の罹患や治療において通常の健康な人とは異なる事情が存在する可能性ある事情や、理論上、口腔や咽喉の健康と関係し得る可能性を否定できない事情などを集約し、独自の判定スキムや判断基準などを作成したうえで検査結果を検討する。例えば、核酸検査や抗原検査は生菌または菌体等の一部の存在を示唆し得る試験であり、試験サンプルの由来と併せて検討する。この検査結果で生菌または菌体などの一部の存在が推測される場合でかつ抗体検査が陽性であった場合には、採血時点において炎症性の疾患が発生しているリスクが高いことを推測できる。口腔内から採取した試験サンプルの場合は、検査で検出された菌と口腔や咽喉の健康状態との関連性の知見から、予防または治療の必要性や疾病の罹患の可能性、被験者の有する罹患リスクの推定などが把握できる。また、血糖値(空腹時血糖値、ブドウ糖負荷血糖値を含む)やヘモグロビンA1c値、酸化HDL値は被験者の糖代謝の異常有無とその程度が把握できる血液指標であるが、歯周病などの炎症性の口腔疾患の罹患や治療の効果などに影響を与えることが知られている。またCRP検査では口腔組織における炎症の有無の推測に有意な情報となる。これらは組み合わせて考察することによりより有意義な情報を作成することが可能となる。例えば、糖代謝に異常が存在し、抗体検査の結果が陽性であり、かつCRP検査にて炎症の存在が推測される場合には、炎症性疾患に罹患後の症状進行が早かったり、治療に困難性が存在したりするリスクがあると判断し、速やかに医療機関を受診し、医療従事者において疾患の有無や早期治療の開始を判断できるよう勧告的な情報を作成することが出来る。したがって、これらの情報も被験者における口腔や咽喉の衛生・機能関連情報の作成において有意義な情報となり得る。
【0043】
記憶手段11は、支援サーバ1が一つの場合には、その支援サーバ1は少なくとも、被検者一般属性情報取得部が取得した被検者属性情報を記憶する被検者属性情報記憶部、検査結果情報取得部が取得した検査結果情報を記憶する検査情報記憶部、被検者情報取得部が取得した被検者情報を記憶する被検者情報記憶部、有用情報生成部が生成した被験者の口腔を健全な状態に向上若しくは維持させるために有用な情報を記憶する有用情報記憶部を備えている。一方、複数の支援サーバ1が存在する場合には、前記の被検者属性情報記憶部、検査情報記憶部、被検者情報記憶部、および有用情報記憶部は必ず何れかの支援サーバ1に存在していることが必要となるが、例えば複数の支援サーバ1が前記記憶部の全てを備えていても差し支えなく、運用の実態に即して自由に設計が可能である。
【0044】
歯周病は口腔領域に於ける疾患の代表的なものであり、口臭や歯肉の退縮などによる視覚美的状態の損失などの不都合な状況をもたらすだけでなく、大幅な歯牙の喪失や咀嚼機能などの口腔機能の損壊、摂食障害の発生に伴う栄養不良や精神面での不調の発生などの全身疾患への影響などが発生し、QOLの低下をもたらす要素となる。したがって、本発明の口腔ケア支援システムの口腔内細菌またはカンジタ菌に関連する、核酸検査、抗原検査および抗体検査からなる群から選ばれる単独または2つ以上の検査項目には、少なくともPorphyromonas gingivalisに関連する、核酸検査、抗原検査および抗体検査からなる群から選ばれる単独または2つ以上の検査項目を含んでいることが好ましい。さらには、複数のPorphyromonas gingivalisの菌株によって口腔の健康状態が脅かされていたり、不都合が発生したりしていることも考えられる。Porphyromonas gingivalisの菌株によっては歯周病の病原性が極めて強かったり、通常の治療では効果が得られにくい薬剤耐性などの特性を有していたり、全身疾患発症の一因になることから、菌株情報もより有効な被験者情報を作成するためには有用な情報となる。このことから、できる限り多くの菌株を対象とする検査項目を含めることが最も好ましい。
【0045】
本発明における「被験者の口腔や咽喉の健全な状態」には「健全な口腔や咽喉の機能の状態」の意味も含む。したがって、「被験者の口腔や咽喉を健全な状態に維持・向上に必要な情報」には「被験者の口腔や咽喉の機能を健全な状態に維持・向上に必要な情報」が包まれる。口腔機能とは、捕食(食べ物を口に取り込むこと)、咀嚼、食塊の形成と移送、嚥下、構音、味覚、触覚、唾液の分泌などに関わり、人が社会のなかで健康な生活を営むための必要な基本的機能であり、これらの状態を把握することは被験者にとって非常に有用である。また、口腔の衛生状態や歯周病や齲蝕などの疾患と密接な関係が知られていることから、被験者のQOLの維持・向上の観点から、口腔内の状態と口腔機能の状態の両者を把握することは極めて重要である。
【0046】
口腔や咽喉の機能や口腔内の状態に関する情報を取得する方法は既存の技術を活用することができる。例えば、情報収集のための専用端末や、専用のアプリケーションや情報収集装置などを組み込んだスマートホンなどの他用途の端末を活用した情報の収集方法が挙げられる。これらの端末はブルートゥース(登録商標)、赤外線通信、有線回線などのインターネットを介さない接続手段もしくはインターネットなどのネットワークNを介して情報入力に使用する端末2や直接支援サーバ1に取得情報などを送信したり、ネットワーク側からの指示情報などの情報を取得する機能も有する。口腔や咽喉の機能や口腔内の状態に関する情報の収集においては、解析の目的を達成するに必要な情報をデジタル形式で取得・保存し、必要に応じて情報処理したうえで、前記の手段で支援サーバ1などにそれら情報を送信する。なお、前記端末を使用して被験者から情報を取得するに際しては、支援サーバ1から口腔機能の状態を把握するための端末に対して送信される情報に基づき若しくは前記情報を利用して情報取得動作の内容や制御など被験者の口腔や咽喉の機能情報を取得しても良い。前記端末から送信された情報は、最終的に
図3に示す通り、処理装置10の口腔機能情報取得部によって口腔や咽喉の機能に関する情報が支援サーバ1に取得され、記録手段の口腔機能情報記憶部に記録される。記録される情報は、支援サーバ1が口腔機能の状態を把握するための端末から取得した情報そのままでも良いが、前記端末から取得した情報を加工した2次情報を口腔機能情報記憶部に記録しても良い。さらには、口腔機能情報記憶部に記録された情報と情報加工に必要な、被験者の口腔や咽喉内の情報、被験者情報、被検者属性情報などを活用して、処理装置10の有用情報生成部で被験者の口腔や咽喉を健全な状態に維持・向上に必要な情報を作成した情報を記録装置11の有用情報記憶部に記録することもできる。
【0047】
本発明の口腔ケア支援システムは、雇用者の健康維持・増進を業務とする法人等の従業者等の健康管理をおこなう部門の従事者や歯科領域の医療従事者にも有用な情報を提供することができる。現状では歯科診療の際に歯科医師などが歯科衛生などの指導が必要と判断した人に対して歯科保健指導がなされている場合が多い。しかし、その場合、既に口腔内の健康を害している状況であるため、歯科衛生の大きな目的である予防歯科の観点では時期を逸しているという課題が存在していた。本発明は大規模かつ定期的な実施を容易とする特徴を有することから、1年に1回など定期的かつ継続的に本発明の口腔ケア支援システムを活用することで口腔内の疾患等が顕著に表れていない段階で口腔の健康状態が不良である被験者を選定し得ることができる。選定された人を対象に歯科検診の実施や医療機関への受診の督促をおこなうことで、口腔内の健康を大きく損なう前の早期段階での歯科治療や歯科保健指導を実現させることができる。また、歯科の医療措置においても口腔内の菌感染に関する詳細な情報や口腔の健康状態に影響を与えうる被験者の全身の状態や行動習慣などの情報を提供できるため、歯科医師などの医療従事者等は、必要な措置を講じる前に前記の参考情報を把握することができ、有効的な治療方針や再発予防策を講じることが可能となる。
【0048】
本発明における被験者情報とは、前記の通り、少なくとも被験者自身の性別、年齢、身長、体重、腹囲長、BMI、ウェスト長・ヒップ長比率、血族近縁者の病歴情報などの一般属性情報、口腔や全身の健康状態に対する自覚情報、治療履歴情報、口腔衛生習慣、食生活や生活習慣・運動習慣・飲酒習慣・喫煙習慣の実態情報、就寝時行動情報および心理状態情報を意味する。これらの情報は被験者の自己申告や端末機器を使用したモニタリング、電子カルテなどから取得することができる。自己申告の方法としては、例えば特定健診における被験者情報を活用できる。特定健診では既往歴や自覚症状に関する被験者情報を把握する。特定健診では別途空腹血糖値やヘモグロビンA1c値の血液検査も実施することから、この血液サンプルを用いて核酸検査等の検査を実施すれば、別途特別の措置を行うことなく本願発明を実施することができる。特定健診における既往歴情報の一部や自覚症状の一部は問診票のような被験者に対する質問形式で取得されている。例えば既往歴以外では、喫煙習慣、運動習慣、食生活習慣、飲酒習慣、睡眠習慣などの項目が存在するのが一般的であり、それらの情報を活用することができる。
【0049】
口腔機能や口腔内の状態を把握したり評価したりする方法としては特に限定するものではないが、例示すると以下の手段が挙げられる。口腔機能の重要な要素として咀嚼や嚥下の機能が挙げられる。咀嚼機能の把握や評価においては、被験者が実際に咀嚼している時の顔面映像の情報から顎の動き方や舌の動きを把握や推定する方法、口中に入れる食事の量や摂取から嚥下までに咀嚼する回数、咀嚼スピード(単位当たりの咀嚼回数)などを分析し把握する方法、食事を口中に入れる際の上半身や顎などの動き方の映像から摂食時行動における口腔機能の把握や評価をする方法などが挙げられる。嚥下機能の把握や評価においては、嚥下時の喉付近の映像情報を分析し、喉の各部位の変位から嚥下時運動状態の詳細の把握や嚥下能力の評価をする方法や嚥下時に発生する音情報を分析することで嚥下機能を把握や推定する方法が挙げられる。これらに関連する技術が記載されている特許公報の事例としては、特開2021-105878号、特開2022-126288号、特開2022-74671号、特開2022-68486号、特開2022-68485号、特開2022-68483号が挙げられるがそれらの記載内容に限定されるものではない。このほか口腔機能を把握したり評価したりする方法の事例としては、オーラルディアドコキネシスが挙げられる。オーラルディアドコキネシスとは舌、口唇、軟口蓋などの運動速度や巧緻性を発音状況によって評価する検査法であり、例えば、「パ」「タ」「カ」の特定音を一定時間内に繰り返し発音する動作を行ったときに発生する音声情報を取得し分析することで、舌や口唇、軟口蓋などの運動の速度や巧緻性(巧みさ)を評価し口腔機能を把握する方法が挙げられる。一方、口腔内の状態の把握や評価における情報を取得する方法の事例としては以下のような方法が挙げられる。口腔内の状態の事例としては、歯垢の付着部位や付着の状態、舌苔の付着の有無や付着の程度、歯石の有無や付着の程度、歯並びの状態、歯肉の状態(表面色;歯肉退縮の有無や発生部位、程度;歯肉の腫れの有無や発生部位、程度;など)、歯科治療措置の状態(治療部位や治療内容、喪失歯や義歯装着の部位など)、咬合状態の把握や推定などが挙げられる。これらの情報を取得する方法としては、開口時の画像や映像を取得し分析する方法がある。例えば、スマートホンの撮影機能を活用し、必要に応じて特定波長の光や太陽光類似光、紫外領域の光など目的に応じた光を測定部位に照射する照光装置や開口具などの撮影補助具を使用したうえで画像や映像を取得する方法が挙げられる。さらに前記に加え、これらの情報は複数回取得することで単回での情報取得の段階で部分的に情報が欠損していたり、分析に必要十分な内容の上方でなかった場合に不十分な部分の情報を他の情報との対比などから補うなどの情報処理を施したうえで情報分析を行う方法も挙げられる。これらに関連する技術が記載されている特許公報の事例としては、特開2020-179173号、特開2022-171272号、特開2021-105878号、特開2022-97176号、特開2022-68486号、特開2022-68485号、特開2022-68484号、特開2022-68483号が挙げられるがそれらの記載内容に限定されるものではない。これらの画像情報、映像情報や音声情報を取得する端末としては、専用の機器を使用してもよいし、スマートホンなどのOA機器にデータ収集用のソフトウェアを組入れたうえで使用してもよいが、前記情報の取得が可能でかつ支援サーバなどに取得した情報を送信できる機能を備える機器等であれば限定されるものではない。
【0050】
咀嚼や嚥下以外の口腔機能に関しては以下の方法などを用いて把握することが可能である。例えば、口腔運動情報(歯軋り、咀嚼、咀嚼力、嚥下開口可動範囲)、咬合機能としての咬合力(咬合圧)や咬合状態、咀嚼機能としての咀嚼能力と咀嚼回数や下顎運動能力など、嚥下機能としてののどの動きや嚥下力など、舌の機能としての舌運動能力、舌圧や血流量など、唾液の状態としてのpHや緩衝能の程度(pHを正常域に保つ性能)、唾液分泌量、口腔や咽喉領域の乾燥状態、唾液中のカルシウムイオン濃度、口腔内細菌の血清抗体価、免疫グロブリン量、活性酸素量、口腔の粘つきなど、口臭の状態としての主なガスの種類や濃度、歯の状態としての歯間鼓形空隙の大きさ(開口面積)や歯牙表面色相、残歯数など、歯茎の状態としての色相や血流量などが該当する。
【0051】
より具体的には、咬合機能の咬合力(咬合圧)は、筋電位、圧電センサーを噛む、または顎またはコメカミなどの筋電位から計測して取得できる。咬合状態は、画像取得し、AIによる解析で取得できる。咀嚼能力は、咬合力(咬合圧)と同様、筋電位、圧電センサーを噛む、または顎またはコメカミなどの筋電位から計測して取得できる。咀嚼回数は、画像解析、筋電位加速度、距離センサーなどを用いて、顎の動き、または咀嚼時に発生する筋電位を計測することで取得できる。下顎運動能力は、顎を動かした時の筋電位で取得できる。嚥下機能の評価や嚥下時の喉の動きは、反復唾液嚥下テスト法(RSST)、水飲みテスト(MWST)、フードテスト(FT)、嚥下音測定(頸部聴診法)、嚥下造影検査(Videofluoroscopic eamination of swallowing; VF)、嚥下内視鏡検査、筋電位測定、光電センサ位相測定などで嚥下機能や嚥下状態の評価・推測ができる。嚥下力は、のどを動かしたときの筋電位を計測して取得できる。舌圧は、圧電センサや圧力センサの付いたプローブを舌と顎で挟んだ際の圧を計測することで取得できる。舌の血流量は、SpO2光電センサの付いたプローブを舌に押し当てることで取得できる。これらに関連する技術が記載されている特許公報の事例としては、特開2021-105878号、特表2017-515565号が挙げられるがこれらの記載に限定されるものではない。
【0052】
また、唾液のpH、緩衝能の程度は、pHセンサーが付いたプローブを備えるセンサーデバイスを用いてユーザが該プローブを口腔内に咥えることで取得できる。唾液の分泌量や口腔や咽喉領域の乾燥状態は、静電容量センサー(インピーダンス計測)が付いたプローブを備えるセンサーデバイスを用いてユーザが該プローブを口腔内に咥えることで取得できる。
【0053】
また、口臭の主なガスの種類、濃度は、ガス・呼気センサーノズルを備えるセンサーデバイスを用いて、ユーザが該ノズルに呼気を吹きかけることで取得できる。歯の歯間鼓形空隙の大きさ(開口面積)、歯牙表面色相、残歯数、歯茎の色相は、端に近赤外光の光吸収パターンをスペクトル解析するセンサーを備えるセンサーデバイスをユーザが口腔内に咥えることで色相判別かつ画像解析による色相判別をして取得できる。歯茎の血流量は、SpO2センサーを備えるセンサーデバイスをユーザが口腔内に当てることで取得できる。
【0054】
また、被験者情報取得部がユーザのセンサ付きの端末(センサーデバイス)から取得する、ケアの実態を把握することが可能な情報としては、歯磨き行為のパターンとして、スイッチ信号により取得される歯ブラシの日時、タイマーにより取得されるブラッシング時間、ジャイロセンサにより取得されるブラッシング部位、加速度センサにより取得されるブラッシング速度、歪みゲージや圧力センサにより取得されるブラッシング圧などが該当する。
【0055】
このようなセンサーデバイスとしては、たとえば、咀嚼、嚥下、唾液分泌、舌運動に関する組織機能水準、咬合状態、摂食時における咀嚼又は嚥下行動、又は就寝時行動を把握するセンサ付きの端末、特開2017-60661号公報に記載の口腔ケアサポートシステムの歯ブラシ用アタッチメント端末、センサ付きブラキシズム(歯ぎしり、噛みしめ)抑制製品の「GrindCare(登録商標)」端末(Sunstar Suisse SA社製 関連特許;欧州特許第1610862号、米国特許第8160689号、米国特許第9149226号等)などのセンサー付き各種オーラルデバイスを用いることができる。
【0056】
センサーデバイスの構成は、たとえば、処理装置を中心に記憶手段、入・出力部、画像入力部、表示・告知部、無線・有線通信部を備え、入・出力部のセンサや画像入力部により口腔および咽頭の内外の生体情報、行動情報、ケア行動情報を入手するデバイスとすることができる。
【0057】
歯磨行動などの歯科衛生行動を正確に把握する手段として、以下のような構成を備えるデバイスを用いることもできる。すなわち、スイッチをオンすることで、またはドッキングステーションから取り出すことで、または加速度、生体センサーで動きを感知することで電源がONとなる。入・出力部のセンサーからの取得情報と共に、センサーデバイスの状態(電池残量、使用時間、装着状態など)を、同じく被検者が所有するコンピュータやスマートホンンなどの情報端末に対して被験者情報を取得する各々のデバイスから無線・有線通信部により近距離無線通信(ANT+、Bluetooth、ZigBee、IrDAなど)を用いて取得した情報を転送する。オンラインで使用する場合、センサー情報が情報端末に近距離無線通信により転送され、情報端末に歯磨き行動、歯軋り行動、心拍状態などの被検者情報が送信される。
【0058】
支援サーバ1や情報入力する端末2にデバイスが取得した情報を送信する方法として、各々のデバイスに情報の送受信の機能を備えて直接情報を送信したり、被験者所有のコンピュータやスマートホンを介して情報を送信することができる。口腔および咽頭の内外の生体情報、行動情報、ケア行動情報、アドバイス情報、商品情報を表示するとともに、被験者の属性、全身の健康状態、行動日記などの情報をキーボード、マイクなどの入力部により行うことができる。また、備え付けのカメラ、バーコードリーダーなどで画像入力部から、顧客情報および製品情報などを画像情報にて取り込むこともできる。センサーデバイスとインタラクティブに情報伝達することでケア行動、口腔咽頭周りの現状態などを即座に表示すると共に、支援サーバ1から、機器からの情報を元に解析、評価した結果も合わせて表示を行う。また、関連商品の紹介などを分析データと使用実態から適切に行い、被験者の利便性を高める事を目的とする。
【0059】
また、センサーデバイスからのセンサー取得情報と共に機器の状態(電池残量、使用時間、装着状態など)の情報入手は、近距離無線通信(ANT+、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、IrDAなど)を用いて受信することで行うことができる。オンラインで使用する場合、たとえばセンサー情報がセンサーデバイスから近距離無線通信により転送され、歯磨き行動、歯軋り行動、心拍状態など、被験者情報が情報端末に送信される。歯磨き行動に対して、ブラッシング圧が高い、速度が速いなど、直ぐに告知しなければならない情報は、情報端末からセンサーデバイスに対して、近距離無線通信を使用し転送する機能をもつようにすればよい。口腔ケア行動後に表示される分析・評価内容に関しては、Wifiなどの無線LANまたは有線LANによるインターネット接続により支援サーバ1との間でデータ送信が行われる。
【0060】
たとえばユーザの入力により取得される口腔の状態の自覚症状等項目としては、歯がしみやすい、口が粘つく、口腔内が乾燥しやすい、食べ物を飲み込み難い、歯ぐきから血が出やすい、歯ぐきの色が悪い、歯並びが悪い、歯面の色が悪い、歯と歯の隙間が気になる、口臭が気になる、咀嚼し難い、噛み合わせが悪い、顎がガクガクするといった情報が該当する。また、前記ユーザの口腔および咽頭領域についての生体組織の機能や健康の状態・ケア実態情報を保有する機関としては、歯科医院などの医療機関や電子カルテシステムを管理する機関、ユーザの検体サンプルを分析する分析評価機関などが該当し、これら機関とあらかじめ情報の交換について提携することなどにより入手することができる。
【0061】
提供する口腔ケア関連情報としては、適正でない歯磨や歯ブラシなどの商品を使用した場合に生じる問題と適正な商品の選択基準や選択方法、各種オーラルケア商品に関する情報(原料情報、誤った使用方法の際に生じる問題点と正しい使用方法など)、決めた期間(たとえば1週間)における具体的な最適な口腔ケア方法、年齢や性別の違いや、妊産婦、乳幼児、要介護者により生じるオーラルトラブルとその予防や対処方法、最新のオーラル関連研究の紹介、義歯やインプラントに関する基礎知識、義歯に生じやすいトラブルとその予防方法などが挙げられる。
【0062】
また、提供する食生活とケアとの関連性についての情報としては、食事の癖や偏り、嗜好品の摂取・使用などにより生じるトラブルの例とその対処方法、咀嚼の重要性についての情報と咀嚼障害を起こした場合に生じやすい問題、咀嚼障害を生じにくくする予防法、噛み合わせの重要性についての情報と、噛み合わせ障害が発生した場合に生じやすい問題などが挙げられる。その他、全身の健康と口腔衛生との関連性に関する情報も提供することが好ましい。
【0063】
被検者は、これら情報の提供と引き換えに、被験者の意識・知識実態の情報をユーザに可能な限り意識させることなく入手する。具体的には、無料サービス一覧からユーザが選択する選択履歴から情報を取得すること、提供サービス毎に必要とする情報をユーザが入力することにより当該情報を取得することなどが行われる。商品の使用に伴うモニタリング情報の入力がある場合は、被験者毎のデータ保存ディレクトリを作成する。商品購入後のユーザ登録や商品アフターサービスなども行うことが好ましい。
【0064】
被検者一般属性情報取得部が個々の端末2又は被検者の情報を保有するシステム外サーバ4から取得する、ユーザの一般属性としては、たとえば、性別や年齢、生年月日、身長、体重、生活地域、職種などが該当する。
【0065】
また、被験者情報取得部が取得する健康状態としては、端末2としてのセンサーデバイスから取得する情報として、顎の状態であるコメカミ、顎などに取り付ける筋電位センサから得られる歯軋り頻度や歯軋り回数、体の状態として、専用のセンサから得られる身長、体重、体脂肪率、心電、脈波、脈拍、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和量)、ヘモグロビン濃度、体温、活動量、血圧、血糖値、骨密度など、カメラから得られる摂取Calなどが該当する。また、医療機関や健康保険や労働組合などの機関、電子カルテシステムを管理する機関などの機関コンピュータ3から取得する情報として、当該被検者の健康診断結果情報、献血の可否および検体検査情報、摂取健康食品の種類と摂取頻度、治療中の疾病情報、アレルギーの有無と種類、服薬情報など該当する。
【0066】
同じく被検者情報取得部が取得する治療履歴としては、被験者が申告した情報のほか、医療機関や健康保険や労働組合などの機関、電子カルテシステムを管理する機関などが使用するシステム外サーバ4から取得することができる。取得できる情報の例としては、過去の歯科検診履歴、過去の歯石除去履歴、フッ素塗布措置の有無と処理日、スケーリングやルートプレーニング措置の有無と施術日、義歯の有無および装着部位、装着開始日、インプラントの有無および施術部位、治療情報(う蝕治療、歯周病治療など)、口腔内細菌血清抗体価測定情報、咬合状態情報、ブラッシング指導の有無と実施日、特定口腔内細菌の存在状態(たとえば、免疫反応を活用した検査)、潜血の有無(たとえば、ヘモグロビンの触媒作用や免疫反応を応用した検査)、ユーザの口腔内フローラの状態、唾液中の免疫グロブリンの種類と含有量、口腔粘膜や唾液中のDNA/RNA分析、唾液中のヘパラナーゼ定量、唾液中の女性ホルモン定量、唾液中のアンモニア定量、唾液中の白血球定量、唾液中のLDHやMMPなどの組織破壊マーカーの定量、唾液中の酸化ストレスマーカーの種類と定量などの情報が該当する。
【0067】
同じく被検者情報取得部が取得する食生活の情報としては、たとえば通常の食事の回数、通常の食事の開始時間と食事時間、食事の内容などが該当する。これらの情報は専用のデバイスなどを活用し、被験者が申告することなく自動的に取得できることが好ましい、例えば、情報提供が難しい食事の内容の情報は食事の写真を取得し送信することでAIが解析して食事の内容の情報に変換するなどの手法を用いることが好ましい。また、外食の回数や外食の食事の内容の情報、間食の有無やその内容、接種した飲料の内容や摂取時間など被験者の飲食に関する諸情報をできうる限り取得することがより好ましい。
【0068】
同じく被検者情報取得部が取得する生活習慣としては、各種の情報取得用のデバイスから被験者が所有する情報端末を通じて支援サーバ1に自動的に入力されることが好ましい。情報端末から支援サーバ1に送信される情報として、たとえばライフスタイル(喫煙、飲酒、嗜好(甘いものを良く食べるなど))、日々行動ダイアリー、日常的運動の種類、日常的運動の平均的運動時間、平均就寝時間や平均起床時間、睡眠の質に関連する情報などが該当する。
【0069】
有用情報生成部は、検査情報記憶部、被験者情報記憶部、口腔機能情報記憶部に記憶された最新および過去の口腔および咽頭領域についての生体組織の機能や健康の状態、ケアの実態および意識・知識実態を把握する事が可能な情報を、被験者情報記憶部に記憶された上記被検者情報に基づき解析し、解析した情報を提供する時点における保険者の口腔の健康の維持や向上のために有用な情報を選択して生成する。解析は、たとえば多変量解析など、所定の式に基づいて行うことができる。好ましくは上記情報について過去の情報や過去に提供された有用情報を、機械学習により分析し、推測のうえ生成することも好ましい。この機械学習には、ニューラルネットワークによるディープラーニングなどの任意の手法を用いることができる。
【0070】
有用情報生成部で生成される有用情報としては、好ましくは次の(i)~(viii)の情報から選択される1つ又は2つ以上の情報が含まれる。
(i)被検者の口腔や咽喉のケアの実態に関する評価情報および改善提案の情報、
(ii)口腔・咽頭領域における生体組織の機能の水準、口腔衛生の状態、口腔疾患の罹患の有無や症状の程度が心身の健康に与えうる影響に関する一般情報、
(iii)被検者の現状の口腔・咽頭領域の状態やその他の上方から考えられる将来の口腔の健康状態に与えうるリスクやその予防・改善方法に関する情報、
(iv)被検者の口腔や咽喉の機能の維持や向上のための口腔・咽喉のケア商品に関する情報、
(v)被検者の口腔や咽喉の機能の維持や向上のためのサービスに関する情報、
(vi)被検者の生活習慣、食生活、運動習慣の実態の評価およびその実態から推測できる将来の口腔の健康状態に与えるリスク、その実態の改善方法や維持・改善行動に対するサポート提案の情報、
(vii)被検者の口腔および咽頭領域の機能や状態に悪影響を及ぼす可能性のある就寝時行動に関する情報又は改善サービスの情報、
(viii)歯科領域や医科領域の機関や医療従事者における被検者の口腔や咽喉に関する医療行為に参考になり得る情報。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 支援サーバ
2 端末
3 システム外演算装置
4 システム外サーバ
10 処理装置
11 記憶手段
12 通信制御部