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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095600
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】気化器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20240703BHJP
   F04D 29/22 20060101ALI20240703BHJP
   B01J 7/02 20060101ALI20240703BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20240703BHJP
   F24F 8/24 20210101ALN20240703BHJP
【FI】
A61L9/12
F04D29/22 C
F04D29/22 B
B01J7/02 Z
F24F8/80 110
F24F8/80 216
F24F8/80 238
F24F8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219095
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022212127
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000133445
【氏名又は名称】株式会社ダスキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】今西 正博
【テーマコード(参考)】
3H130
4C180
4G068
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB13
3H130AB21
3H130AB42
3H130AC18
3H130CB01
3H130CB05
3H130DD01Z
3H130EB01C
3H130EB02C
4C180AA07
4C180CA06
4C180EA17X
4C180EA52X
4C180EA53X
4C180EA57X
4C180EA58X
4C180EB01X
4C180EB05X
4C180EB06X
4C180EC01
4C180HH05
4C180LL06
4C180LL14
4G068DA10
4G068DB03
4G068DB26
4G068DC02
(57)【要約】
【課題】液体をミスト化せず効果的に気化させる気化器を提供する。
【解決手段】気化器1は、底壁部15と、底壁部15の周縁部から上方に延びる外周壁部16と、外周壁部16の上端部において上方に開口した開口縁部17とを有しており、内側に液体100が貯留される、容器14と、容器14の内側に設けられており、回転したときに液体100を外周壁部16の少なくとも一部に沿わせるように容器14の外周側に拡げる、インペラ26と、液体100に向けて風を供給する、ノズル23とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部と、前記底壁部の周縁部から上方に延びる外周壁部と、前記外周壁部の上端部において上方に開口した開口縁部とを有しており、内側に液体が貯留される、容器と、
前記容器の内側に設けられており、回転したときに前記液体を前記外周壁部の少なくとも一部に沿わせるように前記容器の外周側に拡げる、インペラと、
前記液体に向けて風を供給する、ノズルと
を備えた、気化器。
【請求項2】
前記ノズルは、前記容器の外周壁部に沿って配置された吐出口を有している、
請求項1に記載の気化器。
【請求項3】
前記吐出口は、前記容器の外周壁部の全周にわたって設けられている、
請求項2に記載の気化器。
【請求項4】
前記吐出口は、前記液体の液面に沿った方向に開口している、
請求項2又は3に記載の気化器。
【請求項5】
前記ノズルに風を供給する送風機をさらに備え、
前記送風機は、前記容器の下方に位置している、
請求項1に記載の気化器。
【請求項6】
前記ノズルと前記送風機との間を接続する送風経路をさらに備え、
前記送風経路は、前記容器の外周側において前記容器の下方から上方に延びており、前記容器の開口縁部において下方にUターンしている、
請求項5に記載の気化器。
【請求項7】
前記容器は、
前記外周壁部から径方向内側へ延びて前記開口縁部に至る、縮径部と、
前記縮径部及び前記開口縁部にわたって外周側に取り付けられて前記外周壁部の上端部を前記開口縁部の上端部にUターン状に接続する、流路形成部材と
をさらに有しており、
前記送風経路は、前記外周壁部の外表面と、前記流路形成部材の外表面と、前記開口縁部の内表面と、前記縮径部の内表面とによって、少なくとも構成されている、
請求項6に記載の気化器。
【請求項8】
前記容器を外周側から覆う筒状体と、
前記筒状体の上端開口部に取り付けられた蓋部材と、
を有し、
前記蓋部材は、
前記筒状体の内壁面に連続して前記流路形成部材の外周側を下方にUターン状に延びるUターン壁部と、
前記Uターン壁部の下端部に連続して下方に延びており、前記開口縁部及び前記縮径部の径方向内側において下方に延びる、内周壁部及び円錐部と
を有しており、
前記送風経路は、前記筒状体及び前記Uターン壁部と、前記容器の外周壁部の外表面、前記流路形成部材の外表面及び前記開口縁部の内表面との間に形成されている、
請求項7に記載の気化器。
【請求項9】
前記内周壁部と前記Uターン壁部とによって、これらの内径側に上方に向かって開口部が形成されている、
請求項8に記載の気化器。
【請求項10】
前記インペラは、放射状に延びるリッジを有している、請求項1に記載の気化器。
【請求項11】
前記インペラは、
前記底壁部に沿った平坦部と、
前記外周壁部に沿った湾曲部とを有している、
請求項10に記載の気化器。
【請求項12】
前記リッジは、前記湾曲部の外周縁まで延びており、前記インペラの回転方向側に凸状に湾曲している、
請求項11に記載の気化器。
【請求項13】
前記リッジの高さは、前記湾曲部の外周縁に向かうにつれて低くなっている、
請求項12に記載の気化器。
【請求項14】
前記インペラは、上下方向に貫通する貫通穴を有している、
請求項11に記載の気化器。
【請求項15】
前記送風経路において、上下方向及び前記インペラの回転軸を中心とする径方向に延びており、前記回転軸を中心とする周方向に複数配置されている、整流羽根をさらに備える、
請求項6に記載の気化器。
【請求項16】
前記容器を外周側から覆う筒状体と、
前記筒状体の上端開口部に取り付けられた蓋部材と、
を有し、
前記蓋部材は、
前記筒状体の内壁面に連続しており、前記開口縁部を上方から覆って下方にUターン状に延びる、Uターン壁部と、
前記Uターン壁部の下端部に連続して下方に延びており、前記開口縁部の径方向内側において下方に延びる、内周壁部と
を有しており、
前記整流羽根は、前記送風経路における前記Uターン壁部の上流側に配置される第1整流羽根と、前記送風経路における前記Uターン壁部の下流側に配置される第2整流羽根とを有している、
請求項15に記載の気化器。
【請求項17】
前記開口部には、平面視において渦巻状に形成された風切り羽根が前記インペラの回転軸を中心とする周方向に複数設けられている、
請求項9に記載の気化器。
【請求項18】
底壁部と、前記底壁部の周縁部から上方に延びる外周壁部とを有している容器の内側に貯留されている液体を、前記容器の内側に設けられているインペラを回転させることによって、前記液体を前記外周壁部の少なくとも一部に沿わせるように前記容器の外周側に拡げて、ノズルを介して前記液体に向けて風を供給することによって、前記液体を気化させる、気化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インフルエンザウイルスの失活装置が開示されている。失活装置は、次亜塩素酸溶液が貯留されている容器と、該容器内に空気を送り込み、該次亜塩素酸溶液と空気を攪拌することによって水分を抑制させた次亜塩素酸ガスを生じて、該次亜塩素酸ガスを外部に放散する空気循環手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6654276号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
失活装置は、水分を抑制させた次亜塩素酸ガスを外部に放散することによって、失活装置が置かれている室内の相対湿度が高くならないように、インフルエンザウイルスを失活させる。次亜塩素酸溶液は、空気と攪拌されるとき、表面が主に気化するため、十分に気化させることが難しくミスト状になりやすい。
失活装置は、次亜塩素酸溶液より次亜塩素酸成分を気化させ外部に放散することによって、失活装置が置かれている室内の相対湿度が低湿度下でも、インフルエンザウイルスを失活させる。次亜塩素酸成分は溶液を攪拌されるとき、表面でのみ気化するため、十分に気化させることが難しい。また、一般的な超音波でミスト状にする方式ではミストを直接、人が吸引するリスクや物質に付着することによる不具合を生じるリスクがある。
【0005】
そこで、本発明は、液体をミスト化せず効果的に気化させる気化器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、底壁部と、前記底壁部の周縁部から上方に延びる外周壁部と、前記外周壁部の上端部において上方に開口した開口縁部とを有しており、内側に液体が貯留される、容器と、
前記容器の内側に設けられており、回転したときに前記液体を前記外周壁部の少なくとも一部に沿わせるように前記容器の外周側に拡げる、インペラと、
前記液体に向けて風を供給する、ノズルと
を備えた、気化器を提供する。
【0007】
本発明に係る気化器は、液体が容器の外周壁部の少なくとも一部に沿うように外周側に拡がるので、容器を径方向への増大させることなく液体の液面の表面積を増大させることができる。その結果、表面積が増大した液体の表面にノズルを介して風を供給することによって、液体のミスト化を防止しながら液体の気化量を増大させることができる。
【0008】
前記ノズルは、前記容器の外周壁部に沿って配置された吐出口を有していてもよい。
【0009】
本構成によれば、外周壁部に沿って風を液体に供給しやすいので、気泡の発生を抑制して液体のミスト化を防止しながら液体の気化量を増大させることができる。
【0010】
前記吐出口は、前記容器の外周壁部の全周にわたって設けられていてもよい。
【0011】
本構成によれば、液体の液面の全周から風が供給されるので、液体の気化が促進される。
【0012】
前記吐出口は、前記液体の液面に沿った方向に開口していてもよい。
【0013】
本構成によれば、液体の液面に沿うように風を供給することによって、気泡の発生を抑制して液体のミスト化を防止しながら液体の気化量を増大させることができる。
【0014】
前記ノズルに風を供給する送風機をさらに備え、
前記送風機は、前記容器の下方に位置していてもよい。
【0015】
本構成によれば、送風機に気化した液体が付着することが抑制されるので、液体が付着したことによる送風機の不具合(例えば錆)が防止される。
【0016】
前記ノズルと前記送風機との間を接続する送風経路をさらに備え、
前記送風経路は、前記容器の外周側において前記容器の下方から上方に延びており、前記容器の開口縁部において下方にUターンしていてもよい。
【0017】
本構成によれば、送風機を容器の下方に設けながら、Uターンした送風経路を介して、容器に風を供給できる。
【0018】
前記容器は、
前記外周壁部から径方向内側へ延びて前記開口縁部に至る、縮径部と、
前記縮径部及び前記開口縁部にわたって外周側に取り付けられて前記外周壁部の上端部を前記開口縁部の上端部にUターン状に接続する、流路形成部材と
をさらに有しており、
前記送風経路は、前記外周壁部の外表面と、前記流路形成部材の外表面と、前記開口縁部の内表面と、前記縮径部の内表面とによって、少なくとも構成されていてもよい。
【0019】
本構成によれば、送風経路のうちUターン部は、流路形成部材における径方向寸法を有するので、曲率半径を大きくとりやすい。したがって、Uターン部における圧損増大が抑制されるので容器に供給される風量を確保しやすく、よって液体の気化量を増大させることができる。
【0020】
前記容器を外周側から覆う筒状体と、
前記筒状体の上端開口部に取り付けられた蓋部材と、
を有し、
前記蓋部材は、
前記筒状体の内壁面に連続して前記流路形成部材の外周側を下方にUターン状に延びるUターン壁部と、
前記Uターン壁部の下端部に連続して下方に延びており、前記開口縁部及び前記縮径部の径方向内側において下方に延びる、内周壁部及び円錐部と
を有しており、
前記送風経路は、前記筒状体及び前記Uターン壁部と、前記容器の外周壁部の外表面、前記流路形成部材の外表面及び前記開口縁部の内表面との間に形成されていてもよい。
【0021】
本構成によれば、筒状体の内側に容器を収容しつつ、筒状体と容器との間に送風経路を容易に形成できる。
【0022】
前記内周壁部と前記Uターン壁部とによって、これらの内径側に上方に向かって開口部が形成されていてもよい。
【0023】
本構成によれば、整流しながら渦巻き状に吐出して上方に拡散しやすい開口部を介して、気化した液体を上方に吐出することによって拡散させやすい。
【0024】
前記インペラは、放射状に延びるリッジを有していてもよい。
【0025】
本構成によれば、回転するインペラのリッジによって、液体を容器の外周壁部の少なくとも一部に沿うように外周側に拡げやすい。
【0026】
本発明は、底壁部と、前記底壁部の周縁部から上方に延びる外周壁部とを有している容器の内側に貯留されている液体を、前記容器の内側に設けられているインペラを回転させることによって、前記液体を前記外周壁部の少なくとも一部に沿わせるように前記容器の外周側に拡げて、ノズルを介して前記液体に向けて風を供給することによって、前記液体を気化させる、気化方法を提供する。
【0027】
本発明に係る気化方法は、液体が容器の外周壁部の少なくとも一部に沿うように外周側に拡がるので、容器を径方向への増大させることなく液体の液面の表面積を増大させることができる。その結果、表面積が増大した液体の表面にノズルを介して風を供給することによって、液体のミスト化を防止しながら液体の気化量を増大させることができる。
【発明の効果】
【0028】
したがって、本発明に係る気化器は、液体を効果的に気化させる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る気化器の斜視図。
図2図1の断面IIに沿った気化器の縦断面図。
図3図2の支持部の平面図。
図4図2のインペラの平面図。
図5図4の断面Vに沿ったインペラの縦断面図。
図6図2の気化器の作動方法を説明する概略図。
図7図1の気化器を作動させたときの気化した液体の室内濃度と湿度の推移を示すグラフ。
図8】本発明の第2実施形態に係る気化器の斜視図。
図9】第2実施形態に係る気化器の図2と同様の縦断面図。
図10図9のインペラの平面図。
図11A図10の断面XIAに沿ったインペラの断面図。
図11B図10の断面XIBに沿ったインペラの断面図。
図12図8の断面XIIに沿った気化器の横断面図。
図13図8の気化器を作動させたときの気化した液体の室内濃度の推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0031】
[第1実施形態]
[気化器]
図1は、本発明の第1実施形態に係る気化器1の斜視図である。
【0032】
気化器1は、上端開口部2を有する筒状体3と、上端開口部2に取り付けられている円形の蓋部材4とを備える。
【0033】
筒状体3の側面の下部には、円周方向に延びる複数の吸気口5が所定の間隔で形成されている。
【0034】
蓋部材4の上面には、円形の開口部6が形成されている。
【0035】
図2は、図1の断面IIに沿った気化器1の縦断面図である。
【0036】
筒状体3の内側には、下端開口部8と、下端開口部8から径方向外側へ延びて上端開口部2に至る内側筒壁部9とが形成されている。
【0037】
下端開口部8の下側には、送風機10が取り付けられている。送風機10は、電力を供給されることによって作動するモータを有しており、該モータを作動することによって、吸気口5から取り込まれた空気を下端開口部8より上方に風として送る。
【0038】
筒状体3の内側には、下端開口部8と内側筒壁部9との間において、円形のカップ状の支持部11が取り付けられている。
【0039】
図3は、図2の支持部11の平面図である。
【0040】
支持部11の外側には、径方向に延びる4つの梁12が90度ごとに形成されている。4つの梁12は、それぞれ、支持部11が筒状体3に取り付けられるように、内側筒壁部9に接続されている。4つの梁12が内側筒壁部9に接続されることにより、4つの梁12の間には、送風機10から送られる風が通過する隙間が形成される。
【0041】
支持部11の内側には、磁界を変化させることにより、後述するインペラ26を回転させる撹拌機13が配置されている。撹拌機13は、電力を供給されることによって作動するモータ13aと、モータ13aを作動することによって支持部11の軸周りに回転する磁石13bとを有する。
【0042】
図2に示すように、支持部11の上面には、容器14が内側筒壁部9から離間して配置されている。
【0043】
容器14は、支持部11に支持されている底壁部15と、内側筒壁部9の内周側を底壁部15の周縁部から上方に延びる外周壁部16と、外周壁部16の上端部において上方に開口した開口縁部17とを有しており、円形のボウル状に形成されている。
【0044】
容器14はさらに、外周壁部16から径方向内側へ延びて開口縁部17に至る縮径部18と、縮径部18及び開口縁部17にわたって外周側に取り付けられて外周壁部16の上端部を開口縁部17の上端部にUターン状に接続する流路形成部材19とを有している。
【0045】
容器14は、流路形成部材19と蓋部材4とが例えばボルトなどの締結部20によって互いに固定されていることにより、筒状体3に対して移動しないように拘束されている。
【0046】
本実施形態において、容器14の内側には、除菌液として、次亜塩素酸溶液100が貯留されている。
【0047】
蓋部材4は、内側において、筒状体3の内側筒壁部9に連続して流路形成部材19の外周側を下方にUターン状に延びるUターン壁部21と、Uターン壁部21の下端部に連続して下方に延びており、開口縁部17及び縮径部18の径方向内側において下方に延びる内周壁部22と円錐状に広がる円錐部22aを有している。Uターン壁部21と内周壁部22と円錐部22aは、それぞれ、流路形成部材19、開口縁部17、及び縮径部18から離間している。
【0048】
気化器1は、内周壁部22と円錐部22aの外表面と縮径部18の内表面との間に形成された空間であるノズル23を備えている。ノズル23は、送風機10から送られる風を容器14内の次亜塩素酸溶液100に向けて供給するように、容器14の内側に向けて開口している。
【0049】
ノズル23は、容器14の外周壁部16の内表面に沿って配置された吐出口24を有している。吐出口24は、容器14の外周壁部16の内表面の全周にわたって設けられている。吐出口24はまた、容器14内の次亜塩素酸溶液100の液面に沿った方向に開口している。
【0050】
気化器1は、ノズル23と送風機10との間を接続する送風経路25を備える。送風経路25は、容器14の外周側において容器14の下方に位置する梁12の間の隙間から上方に延びており、容器14の流路形成部材19と開口縁部17において下方にUターンして、容器14の内側へ延びてノズル23と繋がっている。より詳しくは、送風経路25は、内側筒壁部9及びUターン壁部21と、外周壁部16の外表面、流路形成部材19の外表面、開口縁部17の内表面、及び縮径部18の内表面との間に形成された空間である。
【0051】
開口部6は、Uターン壁部21と内周壁部22と円錐部22aの内径側において、上方に向かって開口するように形成されている。
【0052】
容器14の内側の底壁部15には、筒状体3の軸周りに回転するインペラ26が配置されている。
【0053】
インペラ26は、中央が上方に突出しており、内部には、磁石26aが取り付けられている。磁石26aは、撹拌機13が作動することによって磁石13bが回転するとき、磁石13bの磁界の変化にしたがって磁石13bと連動して回転する。したがって、インペラ26は、撹拌機13が作動することによって変化する磁界にしたがって回転する。
【0054】
インペラ26は、回転するとき、容器14内の次亜塩素酸溶液100を外周壁部16の少なくとも一部に沿わせるように容器14の外周側に拡げる。本実施形態において、インペラ26は運転モードにより240~480rpmの間で切り替えて回転することができる。
【0055】
図4は、図2のインペラ26の平面図である。
【0056】
インペラ26の上面には、径方向に延びる6つのリッジ27が60度ごとに形成されている。
【0057】
図5は、図4の断面Vに沿ったインペラ26の縦断面図である。
【0058】
リッジ27は、それぞれ、上方に突出する円弧状の断面を有している。このリッジ27の断面形状により、インペラ26が回転するとき、次亜塩素酸溶液100は周方向に押されて回転する。次亜塩素酸溶液100は、回転の遠心力によって、容器14の外周側に拡がる。
【0059】
[作動方法1]
第1実施形態の気化器1の作動方法を説明する。
【0060】
図6は、図2の気化器1の作動方法を説明する概略図である。
【0061】
撹拌機13が作動することにより、磁石13bが回転する。磁石13bが回転することにより変化する磁界にしたがって、磁石26aが取り付けられているインペラ26が回転する。インペラ26が回転することにより、次亜塩素酸溶液100は、リッジ27によって周方向に押されて回転して、回転の遠心力により、外周壁部16の内表面に沿って拡がる。
【0062】
次に、送風機10は、吸気口5から取り込まれた空気を下端開口部8より上方に風として送るように作動する。送風機10によって送られる風は、図6の破線で示す矢印の方向にしたがって、送風経路25とノズル23を通り、外周壁部16の内表面に沿って拡がって表面積が増大した次亜塩素酸溶液100の液面に沿うように吐出口24から供給される。
【0063】
表面積が増大した次亜塩素酸溶液100は、風が供給されることによって、ミスト化を抑えながら、次亜塩素酸ガスとなる。次亜塩素酸ガスは、図6の破線で示す矢印の方向にしたがって、開口部6を介して整流しながら渦巻き状に外部に放散される。外部に放散された次亜塩素酸ガスは、除菌効果を気化器1の周りの空間に及ぼす。
【0064】
[実施例1]
第1実施形態の気化器1を作動させる実施例を説明する。
【0065】
本実施例において、気化器1は、次亜塩素酸成分を室内に拡げるように作動する。容器14には、有効塩素濃度200mg/lの次亜塩素酸溶液100が400ml貯留されている。撹拌機13が作動することにより、インペラ26は240rpmで回転する。送風機10は、0.7m/minの風量で風を送るように作動する。室内の初期温度は24.3℃であり、初期相対湿度は56%である。試験室は体積25mの密閉空間である。
【0066】
図7は、上述の条件で、図1の気化器1を作動させたときの室内の有効塩素濃度と室内の湿度の推移を示すグラフである。実線は、気化器1の運転時間に対する室内の有効塩素濃度の推移を示す。破線は、気化器1の運転時間に対する室内の相対湿度の推移を示す。
【0067】
室内の有効塩素濃度は、気化器1の運転開始から緩やかに上昇して、1時間が経過する頃には大きく上昇するようになり、3時間が経過する頃には0.07ppmの定常状態となる。室内の湿度は、気化器1の運転開始から大きく減少して、1時間が経過した後は、45%の近傍に保たれる。したがって、気化器1を作動させることにより、相対湿度が上昇しないように、次亜塩素酸成分を室内に拡げて、除菌効果を室内に及ぼすことができる。
【0068】
[作用効果1]
このように構成した気化器1は、以下の特徴を有する。
【0069】
気化器1は、
底壁部15と、底壁部15の周縁部から上方に延びる外周壁部16と、外周壁部16の上端部において上方に開口した開口縁部17とを有しており、内側に次亜塩素酸溶液100が貯留される、容器14と、
容器14の内側に設けられており、回転したときに液体100を外周壁部16の少なくとも一部に沿わせるように容器14の外周側に拡げる、インペラ26と、
次亜塩素酸溶液100に向けて風を供給する、ノズル23と
を備える。
【0070】
本実施形態の気化器1は、次亜塩素酸溶液100が容器14の外周壁部16の少なくとも一部に沿うように外周側に拡がるので、容器14を径方向への増大させることなく次亜塩素酸溶液100の液面の表面積を増大させることができる。その結果、表面積が増大した次亜塩素酸溶液100の表面にノズル23を介して風を供給することによって、次亜塩素酸溶液100のミスト化を防止しながら次亜塩素酸溶液100の気化量を増大させることができる。
【0071】
ノズル23は、容器14の外周壁部16に沿って配置された吐出口24を有している。
【0072】
外周壁部16に沿って風を次亜塩素酸溶液100に供給しやすいので、気泡の発生を抑制して次亜塩素酸溶液100のミスト化を防止しながら次亜塩素酸溶液100の気化量を増大させることができる。
【0073】
吐出口24は、容器14の外周壁部16の全周にわたって設けられている。
【0074】
次亜塩素酸溶液100の液面の全周から風が供給されるので、次亜塩素酸溶液100の気化が促進される。
【0075】
吐出口24は、次亜塩素酸溶液100の液面に沿った方向に開口している。
【0076】
次亜塩素酸溶液100の液面に沿うように風を供給することによって、気泡の発生を抑制して次亜塩素酸溶液100のミスト化を防止しながら次亜塩素酸溶液100の気化量を増大させることができる。
【0077】
ノズル23に風を供給する送風機10をさらに備え、
送風機10は、容器14の下方に位置している。
【0078】
送風機10に気化した次亜塩素酸溶液100が付着することが抑制されるので、次亜塩素酸溶液100が付着したことによる送風機10の不具合(例えば錆)が防止される。
【0079】
気化器1は、ノズル23と送風機10との間を接続する送風経路25をさらに備え、
送風経路25は、容器14の外周側において容器14の下方から上方に延びており、容器14の開口縁部17において下方にUターンしている。
【0080】
送風機10を容器14の下方に設けながら、Uターンした送風経路25を介して、容器14に風を供給できる。
【0081】
容器14は、
外周壁部16から径方向内側へ延びて開口縁部17に至る、縮径部18と、
縮径部18及び開口縁部17にわたって外周側に取り付けられて外周壁部16の上端部を開口縁部17の上端部にUターン状に接続する、流路形成部材19と
をさらに有しており、
送風経路25は、外周壁部16の外表面と、流路形成部材19の外表面と、開口縁部17の内表面と、縮径部18の内表面とによって、少なくとも構成されている。
【0082】
送風経路25のうちUターン部は、流路形成部材19における径方向寸法を有するので、曲率半径を大きくとりやすい。したがって、Uターン部における圧損増大が抑制されるので容器14に供給される風量を確保しやすく、よって次亜塩素酸溶液100の気化量を増大させることができる。
【0083】
容器14を外周側から覆う筒状体3と、
筒状体3の上端開口部2に取り付けられた蓋部材4と、
を有し、
蓋部材4は、
筒状体3の内側筒壁部9に連続して流路形成部材19の外周側を下方にUターン状に延びるUターン壁部21と、
Uターン壁部21の下端部に連続して下方に延びており、開口縁部17及び縮径部18の径方向内側において下方に延びる、内周壁部22及び円錐部22aと、
を有しており、
送風経路25は、筒状体3及びUターン壁部21と、容器14の外周壁部16の外表面、流路形成部材19の外表面及び開口縁部17の内表面との間に形成されている。
【0084】
筒状体3の内側に容器14を収容しつつ、筒状体3と容器14との間に送風経路25を容易に形成できる。
【0085】
内周壁部22とUターン壁部21とによって、これらの内径側に上方に向かって開口部6が形成されている。
【0086】
整流しながら渦巻き状に吐出して上方に拡散しやすい開口部6を介して、気化した次亜塩素酸溶液100を上方に吐出することによって拡散させやすい。
【0087】
インペラ26は、放射状に延びるリッジ27を有している。
【0088】
本構成によれば、回転するインペラ26のリッジ27によって、次亜塩素酸溶液100を容器14の外周壁部16の少なくとも一部に沿うように外周側に拡げやすい。
【0089】
気化方法は、底壁部15と、底壁部15の周縁部から上方に延びる外周壁部16とを有している容器14の内側に貯留されている次亜塩素酸溶液100を、容器14の内側に設けられているインペラ26を回転させることによって、次亜塩素酸溶液100を外周壁部16の少なくとも一部に沿わせるように容器14の外周側に拡げて、ノズル23を介して次亜塩素酸溶液100に向けて風を供給することによって、次亜塩素酸溶液100を気化させる。
【0090】
本実施形態の気化方法は、次亜塩素酸溶液100が容器14の外周壁部16の少なくとも一部に沿うように外周側に拡がるので、容器14を径方向への増大させることなく次亜塩素酸溶液100の液面の表面積を増大させることができる。その結果、表面積が増大した次亜塩素酸溶液100の表面にノズル23を介して風を供給することによって、次亜塩素酸溶液100のミスト化を防止しながら次亜塩素酸溶液100の気化量を増大させることができる。
【0091】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係る気化器200の斜視図であり、図9は、気化器200の縦断面図である。以下では第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0092】
図9において、容器14の底壁部15には、第1実施形態のインペラ26と異なる形状のインペラ226が配置されている。また、送風経路25には、上下方向及びインペラ226の回転軸を中心とする径方向に延びる整流羽根228が配置されている。さらに、図8及び図9において、開口部6には、渦巻状に形成された風切り羽根229が設けられている。
【0093】
第2実施形態の開口縁部17は、外周壁部16の上端に対応する。蓋部材4のUターン壁部21は、筒状体3の内壁面(内側筒壁部9)に連続しており、開口縁部17を上方から覆って下方にUターン状に延びている。内周壁部22は、第1実施形態の気化器1と同様に、Uターン壁部21の下端部に連続して下方に延びている。送風経路25は、内側筒壁部9、Uターン壁部21、及び内周壁部22と、容器14の外周壁部16の外表面及び内表面との間に形成されている。
【0094】
ノズル23は、内周壁部22の外表面と外周壁部16の内表面との間の空間に画定されている。開口部6は、Uターン壁部21及び内周壁部22の内径側において、上方に向かって開口するように形成されている。
【0095】
第2実施形態のインペラ226の構造について説明する。図9において、インペラ226は、底壁部15に沿った平坦部226bと、外周壁部16に沿った湾曲部226cとを有している。平坦部226bは、底壁部15の周縁部まで延びており、湾曲部226cは、平坦部226bの外周縁から上方に立ち上がって延びている。すなわちインペラ226の形状は、容器14の底壁部15及び外周壁部16に沿った形状である。
【0096】
インペラ226には、平坦部226bにおいて上下方向にインペラ226を貫通する貫通穴226eが複数設けられている。貫通穴226eは、平坦部226bの上側の空間と、平坦部226bと底壁部15との間の空間との間を連通している。
【0097】
湾曲部226cは、全周にわたって形成されている。湾曲部226cの高さ(平坦部226bから湾曲部226cの上端までの距離)は、容器14に貯留される次亜塩素酸溶液100の液面に対して、0~10mm程度高いことが好ましい。また、湾曲部226cの高さは、全周にわたって一定である。
【0098】
図10は、インペラ226の平面図である。平面視においてインペラ226は、円形である。図10において、インペラ226は、気化器200が作動すると、矢印Rの方向に回転する。インペラ226の上面には、第1実施形態のリッジ27と異なる形状のリッジ227が周方向に4か所均等に形成されている。リッジ227は、平坦部226bの中心から湾曲部226cの外周縁226dまで延びており、インペラ226の回転方向R側に凸状に湾曲している。言い換えると、リッジ227は、伸開角が約90°の伸開線で形成された渦巻形状である。
【0099】
リッジ227の曲率半径rは、リッジ227が湾曲部226cの外周縁226dとなめらかに接続されるように、平坦部226bの中心から湾曲部226cの外周縁226dに向かうにつれて大きくなっている。リッジ227の伸長方向に対して直交する幅wは、平坦部226bの中心から湾曲部226cの外周縁226dに向かうにつれて、大きくなっている(図11A及び図11B参照)。
【0100】
貫通穴226eは、平面視において長穴形状であり、リッジ227間において周方向に4か所均等に配置されている。また、インペラ226の回転の動力源となる磁石226aは、貫通穴226eと同様に、リッジ227間において周方向に4か所均等に配置されている。インペラ226を回転させる方法は、第1実施形態のインペラ26と同様である。
【0101】
図11Aは、図10の平坦部226bの中心付近(断面XIA)におけるリッジ227の伸長方向に対して直交する方向の断面図を示しており、図11Bは、湾曲部226cの外周縁226d付近(断面XIB)における同様の断面図を示している。リッジ227の高さH(インペラ226に対する鉛直方向の高さ)は、平坦部226bの中心から湾曲部226cの外周縁226dに向かうにつれて、低くなっている。湾曲部226cの外周縁226dに向かうにつれて低くなるリッジ227の高さHの変化は、連続的であることが好ましい。また、湾曲部226cの外周縁226dにおけるリッジ227の高さHは、0mm~2.0mmであることが好ましい。
【0102】
撹拌機13の作動によってインペラ226が回転すると、インペラ226の上面に貯留している次亜塩素酸溶液100は、リッジ227によって、湾曲部226cに沿って拡がり、さらに外周壁部16の内表面に沿って拡がる。湾曲部226cが外周壁部16に沿っているので、湾曲部226cと外周壁部16との境界における次亜塩素酸溶液100の流れは、なめらかであり、気泡が発生しにくい。
【0103】
また、リッジ227がインペラ226の回転方向R側に凸状に湾曲しているので、次亜塩素酸溶液100は、径方向及びインペラ226の回転方向Rに沿った周方向に押されて回転する。これにより、次亜塩素酸溶液100の液面は、上昇しやすく、第1実施形態の気化器1よりも低い回転数で上昇し得る。そのため、第1実施形態の気化器1より低い回転数で所望の液面を実現することができるので、リッジ227の回転による気泡の発生を抑制することができる。
【0104】
さらに、リッジ227の高さHが湾曲部226cの外周縁226dに向かうにつれて低くなっているので、液面が湾曲部226cの外周縁226d付近にあるとき、リッジ227によって液面を空気中に飛散させることを抑制し得る。また、外周縁226dにおけるリッジ227と容器14の外周壁部16との境界がなめらかとなるため、液面は安定しやすい。
【0105】
インペラ226と底壁部15との間の空間に空気が存在した状態で、気化器を作動させると、該空間の空気がインペラを浮上させ、インペラに撹拌機の磁力が伝わりにくくなり、インペラが所望の回転数で回転しない現象が発生し得る。第2実施形態のインペラ226には、該空間と連通する貫通穴226eが設けられているので、該空間が次亜塩素酸溶液100で満たされ、その後インペラ226は、底壁部15と密着する。このため、該空間の空気によるインペラ226の浮上を抑制し、インペラ226は、所望の回転数で回転できる。
【0106】
次に、整流羽根228の構造について説明する。図9において、整流羽根228は、送風経路25の2箇所に配置されている。送風機10によって送られる風の主の流れは、第1実施形態と同様である。すなわち、風の主の流れ方向は、Uターン壁部21の上流側では上方であり、Uターン壁部21の下流側では下方である。
【0107】
整流羽根228は、Uターン壁部21の上流側に配置される第1整流羽根228aと、Uターン壁部21の下流側に配置される第2整流羽根228bとを有している。具体的には、第1整流羽根228aは、内側筒壁部9と外周壁部16の外表面との間に配置されており、第2整流羽根228bは、内周壁部22と外周壁部16の内表面との間に配置されている。
【0108】
本実施形態の第1整流羽根228aは、容器14と一体に形成されており、第2整流羽根228bは、蓋部材4と一体に形成されている。
【0109】
図12は、図8の断面XIIに沿った横断面を上方から見た図である。なお、インペラ226や支持部11等の一部の部品については省略している。図12において、第1整流羽根228aと第2整流羽根228bとは、インペラ226の回転軸を中心とする周方向に等間隔で複数配置されている。第1整流羽根228aの数は、第2整流羽根228bの数より多い。また、周方向に隣り合う第1整流羽根228a同士の間隔は、周方向に隣り合う第2整流羽根228b同士の間隔より小さい。
【0110】
送風機10によって送風経路25内を通過する風の流れは、上下方向と周方向との成分を有する。風の流れが周方向の成分を有するため、風の流れは、送風経路25内の周方向で不均等となりやすい。その結果、次亜塩素酸溶液100に供給される風は、周方向で不均等となる。第2実施形態の気化器200には、送風経路25内に整流羽根228が設けられているため、送風経路25内の風の流れは、周方向に均等となりやすい。具体的には、周方向に流れる風は、整流羽根228によってせき止められ、風の流れ方向が上下方向に変化し得る。その結果、風の流れのうち周方向の成分が弱まるので、送風経路25内の風は、周方向に均等となりやすい。これにより、次亜塩素酸溶液100に周方向に均等な風が供給され、効果的に次亜塩素酸溶液100を気化させることができる。
【0111】
第2実施形態の気化器200には整流羽根228が2箇所に設けられているため、より送風経路内25の風の流れを均等にすることができ、次亜塩素酸溶液100にさらに周方向に均等な風が供給される。
【0112】
次に、風切り羽根229について説明する。図8において、風切り羽根229は、インペラ226の回転軸を中心とする周方向に複数設けられている。風切り羽根229は、開口部6の中心から開口部6の外周縁まで延びている。
【0113】
開口部6には、径が異なる円形リング状の補強用のリブ230が2つ設けられている。それぞれのリブ230の中心は、インペラ226の回転軸を中心と一致している。それぞれのリブ230は、風切り羽根229と一体に形成されている。
【0114】
開口部6を介して気化器の外部に放散される次亜塩素酸ガスは、気化器の上方に流れることが好ましい。次亜塩素酸ガスが気化器の上方に流れる方が、次亜塩素酸ガスが気化器の側方に流れる場合と比して、室内に均等に次亜塩素酸ガスを循環させることができる。第2実施形態の気化器200の開口部6には、風切り羽根229が設けられているので、開口部6を通る次亜塩素酸ガスは、気化器の上方に流れやすい。
【0115】
次亜塩素酸ガスが風切り羽根229を通過すると、次亜塩素酸ガスは、風切り羽根229の渦巻形状に従った周方向に流れる。当該周方向の流れによって、次亜塩素酸ガスは、より上方向へ流れるように促進される。これにより、開口部6を介して気化器200の外部に拡散される次亜塩素酸ガスの主の流れは、気化器200の上方向となり得る。
【0116】
[実施例2]
第2実施形態の気化器200を作動させる実施例を説明する。
【0117】
本実施例において、容器14には、有効塩素濃度258mg/lの次亜塩素酸溶液100が400ml貯留されている。撹拌機13が作動することにより、インペラ226は回転する。本実施例では、インペラ226の回転数を変化させることによって、次亜塩素酸溶液100の液面を変化させた。試験室は体積25mの密閉空間である。なお、送風機10の回転数は、一定である。
【0118】
図13は、上述の条件で気化器200を60分間作動させたときの室内の有効塩素濃度の推移を示すグラフである。実線、破線、一点鎖線は、インペラ226の回転数がそれぞれ291rpm、244rpm、142rpmであるときの、気化器200の運転時間に対する室内の有効塩素濃度の推移を示す。
【0119】
加えて、上述の条件における気化器200の作動中の液面上昇及び次亜塩素酸気化量の結果を表1に示す。液面上昇とは、インペラの回転時(すなわち気化器の作動時)における次亜塩素酸溶液100の液面の最大高さ(すなわち外周壁部16における液面の高さ)から、インペラの停止時(すなわち気化器の作動前)における次亜塩素酸溶液100の液面の高さを差し引いたものである。次亜塩素酸気化量とは、次亜塩素酸溶液100に含まれる次亜塩素酸が気化した量である。具体的には、気化器の作動前後における次亜塩素酸溶液100の変化量と有効塩素濃度の変化量から、算出される。
【0120】
【表1】
【0121】
図13より、インペラ226の回転数の上昇に伴って、室内の有効塩素濃度は、インペラ226の回転数が高い条件の方が回転数が低い条件よりも、短い時間で上昇している。
【0122】
また、表1より、インペラ226の回転数の上昇に伴って、液面上昇及び次亜塩素酸気化量は、増大している。
【0123】
液面上昇が増大することは、次亜塩素酸溶液100が外周壁部16に沿う長さが長いこと、すなわち液面の表面積が大きいことを意味する。図13及び表1の結果より、液面上昇の増大、すなわち液面の表面積の増大によって、効果的に次亜塩素酸が気化され、より短い時間で室内の有効塩素濃度を上昇させることができることが確認された。
【0124】
[実施例3]
第1実施形態の気化器1と第2実施形態の気化器200とを作動させて比較した実施例を説明する。
【0125】
本実施例では、第1実施形態及び第2実施形態の容器14に、次亜塩素酸溶液100を400ml貯留し、撹拌機13を60分間作動させて、次亜塩素酸溶液100を気化させている。第1実施形態のインペラの回転数は480rpmであり、第2実施形態のインペラの回転数は291rmである。
【0126】
表2に本実施例の実施結果を示す。表2において、気化液量とは、次亜塩素酸溶液100が気化した量であり、具体的には気化器の作動前後における次亜塩素酸溶液100の変化量である。次亜塩素酸気化量及び液面上昇は、[実施例2]において説明されたものである。
【0127】
【表2】
【0128】
表2の結果より、第2実施形態の気化器200の気化液量は、第1実施形態の気化器1より少ない一方で、次亜塩素酸気化量は、第1実施形態の気化器1より多い。また、第2実施形態の気化器200の液面上昇は、第1実施形態の気化器1より大きい。
【0129】
[考察]
第2実施形態の気化器200の気化液量が第1実施形態の気化器1より少ないことの要因は、第2実施形態のインペラ226の回転数が低いこと、インペラ226が湾曲部226cを有していること、リッジ227が湾曲部226cの外周縁226dまで延びており、インペラ226の回転方向R側に凸状に湾曲していること、及びリッジ227の高さHが湾曲部226cの外周縁226dに向かうにつれて低くなっていること、であると考えられる。これらの要因により、液面において気泡の発生が抑制され、次亜塩素酸溶液100のミスト化が防止されていると考えられる。
【0130】
第2実施形態の気化器200の液面上昇が第1実施形態の気化器1より大きいことの要因は、リッジ227が湾曲部226cの外周縁226dまで延びており、インペラ226の回転方向R側に凸状に湾曲していることであると考えられる。
【0131】
第2実施形態の気化器200の次亜塩素酸気化量が第1実施形態の気化器1より多いことの要因は、第2実施形態の気化器200液面上昇が第1実施形態の気化器1より多いこと、第2実施形態の気化器200の送風経路25内に整流羽根228が設けられていること、と考えられる。液面上昇が大きい、すなわち表面積が大きい液面に風が供給されることによって、次亜塩素酸気化量が多くなったと考えられる。さらに、送風経路25内の風が整流羽根228によって整流されるので、拡大された表面積の液面に周方向に均等な風が供給され、効果的に次亜塩素酸が気化されたと考えられる。
【0132】
したがって、第2実施形態の気化器200は、気化液量を抑制しつつ、すなわちミスト化をさらに防止しつつ、次亜塩素酸気化量を増加させることができる。
【0133】
[作用効果2]
このように構成した気化器200は、以下の特徴を有する。
【0134】
インペラ226は、
底壁部に沿った平坦部226bと、
外周壁部に沿った湾曲部226cとを有している。
【0135】
その結果、液面が湾曲部226cに沿って上昇するので、気泡の発生を抑制することができる。
【0136】
リッジ227は、湾曲部226cの外周縁226dまで延びており、インペラ226の回転方向R側に凸状に湾曲している。
【0137】
その結果、次亜塩素酸溶液100は、径方向及びインペラ226の回転方向Rに沿った周方向に押されて回転するので、次亜塩素酸溶液100の液面は上昇しやすい。これにより、低い回転数で所望の液面を実現することができるので、リッジ227の回転による気泡の発生を抑制することができる。
【0138】
リッジ227の高さHは、湾曲部226cの外周縁226dに向かうにつれて低くなっている。
【0139】
その結果、液面の位置が湾曲部226cの外周縁226d付近にあるとき、リッジ227によって液面を空気中に飛散させることを抑制し得る。また、外周縁226dにおけるリッジ227と容器14の外周壁部16との境界がなめらかとなるため、液面は安定しやすい。
【0140】
インペラ226は、上下方向に貫通する貫通穴226eを有している。
【0141】
その結果、インペラ226と底壁部15との間の空間が次亜塩素酸溶液100で満たされ、インペラ226は底壁部15と密着して回転する。このため、インペラ226は、該空間によって浮上することなく、所望の回転数で回転できる。
【0142】
気化器200は、送風経路25において、上下方向及びインペラ226の回転軸を中心とする径方向に延びており、回転軸を中心とする周方向に複数配置されている、整流羽根228をさらに備える。
【0143】
その結果、送風経路25内の風の流れは、周方向に均等となりやすい。これにより、次亜塩素酸溶液100に周方向に均等な風が供給され、効果的に次亜塩素酸溶液100を気化させることができる。
【0144】
気化器200は、
容器14を外周側から覆う筒状体3と、
筒状体3の上端開口部2に取り付けられた蓋部材4と、
を有し、
蓋部材4は、
筒状体3の内壁面に連続しており、開口縁部17を上方から覆って下方にUターン状に延びる、Uターン壁部21と、
前記Uターン壁部の下端部に連続して下方に延びており、開口縁部17の径方向内側において下方に延びる、内周壁部22と
を有しており、
整流羽根228は、送風経路25におけるUターン壁部21の上流側に配置される第1整流羽根228aと、送風経路25におけるUターン壁部21の下流側に配置される第2整流羽根228bとを有している。
【0145】
その結果、より送風経路内25の風の流れを均等にすることができ、さらに効果的に次亜塩素酸溶液100を気化することができる。
【0146】
開口部6には、平面視において渦巻状に形成された風切り羽根229がインペラ226の回転軸を中心とする周方向に複数設けられている。
【0147】
その結果、次亜塩素酸ガスが風切り羽根229を通過すると、次亜塩素酸ガスは、風切り羽根229の渦巻形状に従った周方向に流れる。当該周方向の流れによって、次亜塩素酸ガスは、より上方向へ流れるように促進され、効果的に室内に次亜塩素酸ガスを循環させることができる。
【0148】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0149】
上述の実施形態では、容器14には、除菌液として、次亜塩素酸溶液100が貯留されているが、例えば、アルコール系溶液、二酸化塩素溶液などの塩素系溶液、過酸化水素溶液、過酢酸溶液、オゾン水などの酸化剤系溶液、又は石油若しくは植物由来の揮発性抗菌成分系溶液が貯留されていてもよい。また、容器14には、除菌液以外の液体、例えば、芳香剤などの液体が貯留されていてもよい。
【0150】
上述の実施形態では、送風経路25は、Uターン壁部21と流路形成部材19の外表面との間に形成された空間において、Uターンしているが、風が次亜塩素酸溶液100に向けて供給されることができるのであれば、直線状に延びていてもよい。
【0151】
第1実施形態では、インペラ26は、6つのリッジ27を有しているが、異なる数のリッジ、例えば、4つ又は8つのリッジ、若しくはそれ以外の数のリッジを有していてもよい。第2実施形態のリッジ227も同様である。なお、第2実施形態のインペラ226に設けられている磁石226a及び貫通穴226eの数は、リッジ227の数に対応して、適宜変更され得る。
【0152】
上述の実施形態では、送風機10は、容器14の下方に位置しているが、容器14の上方に位置して、ノズルを介して容器14内に向けて風を供給してもよい。
【0153】
第2実施形態の気化器200には、整流羽根228がUターン壁部21の上流側と下流側とに2箇所設けられているが、これに限定されない。整流羽根は、送風経路に3箇所以上設けられていてもよい。整流羽根は、Uターン壁部の上流側のみ、又はUターン壁部の下流側のみに設けられていてもよい。
【0154】
第2実施形態のインペラ226の平坦部226bには、貫通穴226eが設けられているが、貫通穴は、平坦部226bと湾曲部226cとを跨いで設けられていてもよく、又は湾曲部226cのみに設けられていてもよい。
【0155】
上述の実施形態の送風経路25のうち、Uターン壁部21の上流側の部分は、容器14の外周壁部16の外表面と内側筒壁部9との間に形成されているが、これに限定されない。例えば、容器14の外周側に別部品が設けられていてもよく、当該別部品の外表面と内側筒壁部9との間に送風経路が形成されていてもよい。
【0156】
本発明の第1の態様は、
底壁部と、前記底壁部の周縁部から上方に延びる外周壁部と、前記外周壁部の上端部において上方に開口した開口縁部とを有しており、内側に液体が貯留される、容器と、
前記容器の内側に設けられており、回転したときに前記液体を前記外周壁部の少なくとも一部に沿わせるように前記容器の外周側に拡げる、インペラと、
前記液体に向けて風を供給する、ノズルと
を備えた、気化器を提供する。
【0157】
本発明の第2の態様は、
前記ノズルは、前記容器の外周壁部に沿って配置された吐出口を有している、
第1の態様に記載の気化器を提供する。
【0158】
本発明の第3の態様は、
前記吐出口は、前記容器の外周壁部の全周にわたって設けられている、
第1の態様又は第2の態様に記載の気化器を提供する。
【0159】
本発明の第4の態様は、
前記吐出口は、前記液体の液面に沿った方向に開口している、
第2の態様又は第3の態様に記載の気化器を提供する。
【0160】
本発明の第5の態様は、
前記ノズルに風を供給する送風機をさらに備え、
前記送風機は、前記容器の下方に位置している、
第1の態様から第4の態様のいずれかに記載の気化器を提供する。
【0161】
本発明の第6の態様は、
前記ノズルと前記送風機との間を接続する送風経路をさらに備え、
前記送風経路は、前記容器の外周側において前記容器の下方から上方に延びており、前記容器の開口縁部において下方にUターンしている、
第5の態様に記載の気化器を提供する。
【0162】
本発明の第7の態様は、
前記容器は、
前記外周壁部から径方向内側へ延びて前記開口縁部に至る、縮径部と、
前記縮径部及び前記開口縁部にわたって外周側に取り付けられて前記外周壁部の上端部を前記開口縁部の上端部にUターン状に接続する、流路形成部材と
をさらに有しており、
前記送風経路は、前記外周壁部の外表面と、前記流路形成部材の外表面と、前記開口縁部の内表面と、前記縮径部の内表面とによって、少なくとも構成されている、
第6の態様に記載の気化器を提供する。
【0163】
本発明の第8の態様は、
前記容器を外周側から覆う筒状体と、
前記筒状体の上端開口部に取り付けられた蓋部材と、
を有し、
前記蓋部材は、
前記筒状体の内壁面に連続して前記流路形成部材の外周側を下方にUターン状に延びるUターン壁部と、
前記Uターン壁部の下端部に連続して下方に延びており、前記開口縁部及び前記縮径部の径方向内側において下方に延びる、内周壁部及び円錐部と
を有しており、
前記送風経路は、前記筒状体及び前記Uターン壁部と、前記容器の外周壁部の外表面、前記流路形成部材の外表面及び前記開口縁部の内表面との間に形成されている、
第7の態様に記載の気化器を提供する。
【0164】
本発明の第9の態様は、
前記内周壁部と前記Uターン壁部とによって、これらの内径側に上方に向かって開口部が形成されている、
第8の態様に記載の気化器を提供する。
【0165】
本発明の第10の態様は、
前記インペラは、放射状に延びるリッジを有している、第1の態様に記載の気化器を提供する。
【0166】
本発明の第11の態様は、
前記インペラは、
前記底壁部に沿った平坦部と、
前記外周壁部に沿った湾曲部とを有している、第10の態様に記載の気化器を提供する。
【0167】
本発明の第12の態様は、
前記リッジは、前記湾曲部の外周縁まで延びており、前記インペラの回転方向側に凸状に湾曲している、第11の態様に記載の気化器を提供する。
【0168】
本発明の第13の態様は、
前記リッジの高さは、前記湾曲部の外周縁に向かうにつれて低くなっている、第12の態様に記載の気化器を提供する。
【0169】
本発明の第14の態様は、
前記インペラは、上下方向に貫通する貫通穴を有している、第11の態様から第13の態様のいずれかに記載の気化器を提供する。
【0170】
本発明の第15の態様は、
前記送風経路において、上下方向及び前記インペラの回転軸を中心とする径方向に延びており、前記回転軸を中心とする周方向に複数配置されている、整流羽根をさらに備える、第6の態様に記載の気化器を提供する。
【0171】
本発明の第16の態様は、
前記容器を外周側から覆う筒状体と、
前記筒状体の上端開口部に取り付けられた蓋部材と、
を有し、
前記蓋部材は、
前記筒状体の内壁面に連続しており、前記開口縁部を上方から覆って下方にUターン状に延びる、Uターン壁部と、
前記Uターン壁部の下端部に連続して下方に延びており、前記開口縁部の径方向内側において下方に延びる、内周壁部と
を有しており、
前記整流羽根は、前記送風経路における前記Uターン壁部の上流側に配置される第1整流羽根と、前記送風経路における前記Uターン壁部の下流側に配置される第2整流羽根とを有している、第15の態様に記載の気化器を提供する。
【0172】
本発明の第17の態様は、
前記開口部には、平面視において渦巻状に形成された風切り羽根が前記インペラの回転軸を中心とする周方向に複数設けられている、第9の態様に記載の気化器を提供する。
【0173】
本発明の第18の態様は、
底壁部と、前記底壁部の周縁部から上方に延びる外周壁部とを有している容器の内側に貯留されている液体を、前記容器の内側に設けられているインペラを回転させることによって、前記液体を前記外周壁部の少なくとも一部に沿わせるように前記容器の外周側に拡げて、ノズルを介して前記液体に向けて風を供給することによって、前記液体を気化させる、気化方法を提供する。
【符号の説明】
【0174】
1、200 気化器
2 上端開口部
3 筒状体
4 蓋部材
5 吸気口
6 開口部
8 下端開口部
9 内側筒壁部
10 送風機
11 支持部
12 梁
13 撹拌機
13a モータ
13b 磁石
14 容器
15 底壁部
16 外周壁部
17 開口縁部
18 縮径部
19 流路形成部材
20 締結部
21 Uターン壁部
22 内周壁部
22a 円錐部
23 ノズル
24 吐出口
25 送風経路
26、226 インペラ
26a、226a 磁石
226b 平坦部
226c 湾曲部
226d 外周縁
226e 貫通穴
27、227 リッジ
228 整流羽根
228a 第1整流羽根
228b 第2整流羽根
229 風切り羽根
230 リブ
100 次亜塩素酸溶液(液体)
R インペラの回転方向
H リッジの高さ
r リッジの曲率半径
w リッジの幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13