(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095602
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】医療用キャップ、医療用容器、および医療用容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240703BHJP
B65D 51/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61J1/05 315B
A61J1/05 315D
B65D51/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219280
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022212537
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(71)【出願人】
【識別番号】593181650
【氏名又は名称】株式会社泉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田形 祥之
(72)【発明者】
【氏名】伊達 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 裕希
(72)【発明者】
【氏名】石堂 義継
【テーマコード(参考)】
3E084
4C047
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB05
3E084CA01
3E084DA01
3E084EA04
3E084EC03
3E084EC10
3E084FC04
3E084GA08
3E084GB12
4C047AA05
4C047BB20
4C047BB26
4C047DD03
4C047DD04
4C047DD06
4C047DD08
(57)【要約】
【課題】密閉性の低下を防止できる医療用キャップを提供する。
【解決手段】医療用キャップ2は、開口を形成した筒状の口部の内側に配置される栓23と、ケース11とを備える。ケース11は、栓23と口部とに接した状態で栓23と口部との間に配置される筒状の内壁15と、口部を収容する筒状空間S1を介して内壁15を取り囲む筒状の外壁13と、を含む。内壁15は、ケース11の径方向への厚みが互いに異なる薄肉部18および厚肉部19を含む。薄肉部18および厚肉部19は、ケース11の周方向Dcに並んでいる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を塞ぐ医療用キャップであって、
前記開口を形成した筒状の口部の内側に配置される栓と、
前記栓と前記口部とに接した状態で前記栓と前記口部との間に配置される筒状の内壁と、前記口部を収容する筒状空間を介して前記内壁を取り囲む筒状の外壁と、を含むケースと、を備え、
前記内壁は、前記ケースの径方向への厚みが互いに異なる薄肉部および厚肉部を含み、
前記薄肉部および厚肉部は、前記ケースの周方向に並んでいる、医療用キャップ。
【請求項2】
前記内壁の外周面は、前記薄肉部の位置で前記ケースの径方向に凹んだ外側凹部と、前記厚肉部の位置で前記ケースの径方向に突出した外側凸部と、を形成している、請求項1に記載の医療用キャップ。
【請求項3】
前記内壁の内周面は、円筒状である、請求項2に記載の医療用キャップ。
【請求項4】
前記栓は、前記内壁の下端から下方に突出した下端部を含み、
前記下端部は、前記口部の内周面に接触する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【請求項5】
前記外壁の内周面は、前記内壁の下端よりも上方に配置された外側接触部を含み、
前記外側接触部は、前記口部の外周面に設けられた内側接触部に接触する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【請求項6】
前記外壁の前記外側接触部は、前記口部の前記内側接触部に設けられた凸部を収容する凹部を含む、請求項5に記載の医療用キャップ。
【請求項7】
前記外壁は、前記口部の外周面に設けられた上側凸部を収容する上側凹部と、前記口部の外周面に設けられた下側凹部に収容される下側凸部と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【請求項8】
前記外壁の下端は、前記口部の外周面に設けられた環状のネックフランジの上方に配置され、
前記外壁の下端の外径は、前記ネックフランジの外径以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【請求項9】
開口を形成した筒状の口部と、液体を収容する収容部と、を含む容器本体と、
請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用キャップと、を備える、医療用容器。
【請求項10】
開口を形成した筒状の口部と、前記開口を塞いだ医療用キャップと、を備える医療用容器を製造する方法であって、
前記口部は、熱可塑性樹脂製であり、
前記医療用キャップは、
前記開口を形成した前記口部の内側に配置された栓と、
前記栓と前記口部とに接した状態で前記栓と前記口部との間に配置された筒状の内壁と、前記口部を収容した筒状空間を介して前記内壁を取り囲む筒状の外壁と、を含むケースと、を備え、
前記内壁は、前記ケースの径方向への厚みが互いに異なる薄肉部および厚肉部を含み、
前記薄肉部および厚肉部は、前記ケースの周方向に並んでおり、
前記方法は、
前記医療用キャップおよび口部を組み合わせることにより、前記口部を前記筒状空間に配置する工程と、
組み合わされた前記医療用キャップおよび口部を加熱することにより、前記口部の外周面に設けられた内側接触部が前記外壁の内周面に設けられた外側接触部から離れた状態から、前記内側接触部が前記外側接触部に接した状態に、前記医療用キャップおよび口部を変化させる工程と、を含む、医療用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を塞ぐ医療用キャップと、これを備える医療用容器と、医療用容器の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液容器、採血管、バイアル瓶等の医療用容器の開口は、ゴム栓を備えるキャップによって塞がれることがある。中空の針をゴム栓に刺すと、輸液などの液体が針を通じて医療用容器から出る、もしくは、医療用容器に入る。
【0003】
例えば医療用容器が輸液バッグや輸液ボトルなどの輸液容器である場合、輸液容器内の輸液は、ゴム栓を貫通した中空の針を通じて輸液容器から注出する。医療用容器が採血管である場合は、ゴム栓を貫通した中空の針を通じて血液が採血管に注入する。医療用容器がバイアル瓶である場合は、ゴム栓を貫通した中空の針を通じて液状の薬剤がバイアル瓶から出る、もしくは、溶解液などの液体がバイアル瓶に入る。
【0004】
特許文献1は、輸液容器、採血管、バイアル瓶等に用いる医療用キャップを開示している。この医療用キャップは、支持体、弾性栓体、および内栓を備えている。支持体は、弾性栓体を取り囲んで収容する内部壁と、内部壁を取り囲む外部壁とを備えている。内栓の環状壁は、内部壁と外部壁との間隙に圧入される。特許文献1の段落0025には「前記内部壁12には、
図2(b)に示すように、切り欠き部14が設けられていることが好ましい。これにより、内部壁12をその直径が縮小する方向に変形させることが容易になる。」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の医療用キャップでは、切り欠き部が設けられた内部壁が弾性栓体のまわりに配置され、内栓の環状壁が内部壁のまわりに配置される。切り欠き部が設けられた位置では、内栓の環状壁が内部壁から離れている。そのため、切り欠き部が設けられた位置で内栓と弾性栓体との間に隙間が形成され、医療用キャップの密閉性が損なわれるおそれがある。医療用キャップの密閉性の低下は、液漏れや異物の混入などの原因となり得る。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、密閉性の低下を防止できる医療用キャップを提供することである。本発明の他の目的は、このような医療用キャップを備える医療用容器と、同医療用容器の製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、開口を塞ぐ医療用キャップであって、前記開口を形成した筒状の口部の内側に配置される栓と、前記栓と前記口部とに接した状態で前記栓と前記口部との間に配置される筒状の内壁と、前記口部を収容する筒状空間を介して前記内壁を取り囲む筒状の外壁と、を含むケースと、を備え、前記内壁は、前記ケースの径方向への厚みが互いに異なる薄肉部および厚肉部を含み、前記薄肉部および厚肉部は、前記ケースの周方向に並んでいる、医療用キャップを提供する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、開口を形成した筒状の口部と、前記液体を収容する収容部と、を含む容器本体と、前記医療用キャップと、を備える、医療用容器を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態は、開口を形成した筒状の口部と、前記開口を塞いだ医療用キャップと、を備える医療用容器を製造する方法を提供する。前記口部は、熱可塑性樹脂製である。前記医療用キャップは、前記開口を形成した前記口部の内側に配置された栓と、前記栓と前記口部とに接した状態で前記栓と前記口部との間に配置された筒状の内壁と、前記口部を収容した筒状空間を介して前記内壁を取り囲む筒状の外壁と、を含むケースと、を備える。前記内壁は、前記ケースの径方向への厚みが互いに異なる薄肉部および厚肉部を含む。前記薄肉部および厚肉部は、前記ケースの周方向に並んでいる。前記方法は、前記医療用キャップおよび口部を組み合わせることにより、前記口部を前記筒状空間に配置する工程と、組み合わされた前記医療用キャップおよび口部を加熱することにより、前記口部の外周面に設けられた内側接触部が前記外壁の内周面に設けられた外側接触部から離れた状態から、前記内側接触部が前記外側接触部に接した状態に、前記医療用キャップおよび口部を変化させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、密閉性の低下を防止できる医療用キャップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る医療用容器の一例を示す正面図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る医療用容器の他の例を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る医療用キャップおよび口部の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る医療用キャップおよび口部の鉛直な断面を示す断面図である。
【
図4】口部と組み合わせる前の医療用キャップの鉛直な断面を示す断面図である。
【
図5】口部と組み合わせる前の医療用キャップの平面図である。
【
図6】口部と組み合わせる前の医療用キャップの底面図である。
【
図9】
図8とは異なる切断面で切断した医療用キャップの鉛直な断面を示す断面図である。
【
図10】組み合わせる前の医療用キャップおよび口部の鉛直な断面を示す断面図である。
【
図11】組み合わされた医療用キャップおよび口部の鉛直な断面を示す断面図である。
【
図12】医療用キャップを製造する金型の概略断面図である。
【
図13】口部によって締め付けられ変形する前の内壁を示す断面図である。
【
図14】口部によって締め付けられ変形した内壁を示す断面図である。
【
図15A-B】口部の内側接触部が外壁の外側接触部に接触する前後の変化を示す断面図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に係る医療用キャップおよび口部の鉛直な断面を示す断面図である。
【
図17】本発明のさらに他の実施形態に係る医療用キャップおよび口部の鉛直な断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
以下では、基準姿勢の医療用キャップ2および医療用容器1について説明する。基準姿勢は、ケース11の中心線Ccが鉛直であり、栓23において針が刺される面23uが上に向けられた姿勢である。ケース11の軸方向は、ケース11の中心線Ccに沿う方向であり、上下方向に相当する。ケース11の径方向Drは、ケース11の中心線Ccに直交する方向である。口部5の径方向、周方向、および軸方向は、ケース11の径方向Dr、周方向Dc、および軸方向にそれぞれ一致する。したがって、以下では、口部5の径方向等の表現を用いずに、ケース11の径方向Dr等の表現を用いる。
【0015】
以下の説明において、上端は、ある部材または部分において最も上方に位置する部分を意味する。言い換えると、上端は、最上端に相当する。上端は、1つ以上の点または面であってもよいし、1つ以上の点と1つ以上の面とを含んでいてもよい。「端」の定義は、上端以外の用語についても同様である。例えば、下端は、ある部材または部分において最も下方に位置する部分を意味する。以下の説明において、内側は、基準に対してケース11の中心線Ccまたは口部5の中心線Cm側を意味し、外側は、基準に対してケース11の中心線Ccまたは口部5の中心線Cmとは反対側を意味する。
【0016】
最初に、医療用キャップ2および医療用容器1の概要について説明する。
【0017】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る医療用容器1の一例を示す正面図である。
図1Bは、本発明の一実施形態に係る医療用容器1の他の例を示す正面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る医療用キャップ2および口部5の正面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る医療用キャップ2および口部5の鉛直な断面を示す断面図である。
【0018】
図1Aおよび
図1Bに示すように、医療用容器1は、物質を収容する容器本体3と、容器本体3の開口4(
図3参照)を塞ぐ医療用キャップ2とを備えている。容器本体3は、物質を収容する収容部6と、開口4を形成した筒状の口部5とを含む。
【0019】
容器本体3の開口4を通過する物質は、液体、固体、および半固体のいずれかであってもよいし、これら以外であってもよい。例えば、非経口で人に投与すべきまたは非経口で人から採取した液体が開口4を通過してもよい。開口4を通過する液体は、容器本体3から出る液体(輸液や注射液など)であってもよいし、容器本体3に入る液体(血液や溶解液など)であってもよい。例えば、容器本体3が固体または半固体状の物質(固形注射剤など)を収容している場合、溶解液などの液体を開口4を通じて容器本体3に供給してもよい。この場合、容器本体3内の物質が液体に溶解し、注射液などの人に投与すべき液体が容器本体3内で生成される。
【0020】
容器本体3の収容部6は、筒状の胴部7と、胴部7の底を閉じる底部8とを含む。口部5は、胴部7から上方に延びている。収容部6は、人の手で押されても変形しないまたは殆ど変形しない硬質の容器であってもよいし、人の手で押されると容易に変形する軟質の容器(袋など)であってもよい。
図1Aおよび
図1Bは、前者の例を示している。
図1Aおよび
図1Bに示す収容部6は、太さ(水平な断面の面積)が互いに異なる。
【0021】
容器本体3は、樹脂またはガラス製である。容器本体3は、一体成形された1つの部材であってもよいし、2つ以上の部品が結合された部材であってもよい。
図1Aおよび
図1Bは、口部5および収容部6が別々の部品であり、互いに結合された例を示している。この場合、口部5は、収容部6と同じ材料で作製されていてもよいし、収容部6とは異なる材料で作製されていてもよい。以下では、口部5が熱可塑性樹脂製である例について説明する。
【0022】
口部5と収容部6とが別々の部品である場合、医療用キャップ2は、口部5および収容部6が結合される前に口部5と組み合わされてもよいし、口部5および収容部6が結合された後に口部5と組み合わされてもよい。
図2は、収容部6に結合される前の口部5と組み合わされた医療用キャップ2を示している。
図2に示された医療用キャップ2および口部5は、医療用容器1の部品の一つである医療用キャップモジュールである。医療用キャップモジュールを収容部6などの医療用容器1の他の部品に結合または連結することにより、容器本体3および医療用容器1が製造される。
【0023】
医療用キャップ2は、ネジ式のキャップではなく、回転させずに口部5に押し付けることにより口部5に取り付けられる押し込み式のキャップである。医療用キャップ2と口部5とを組み合わせることにより、口部5の開口4が医療用キャップ2によって塞がれる。その後、医療用キャップモジュール(互いに組み合わされた医療用キャップ2および口部5)、または互いに組み合わされた医療用キャップ2および容器本体3を加熱する滅菌処理を行う。これにより、医療用キャップ2等に存在する細菌などの微生物が死滅または除去される。
【0024】
図3に示すように、医療用キャップ2は、口部5の内側に配置される円柱状の栓23と、栓23を収容および保持する円筒状のケース11とを備えている。栓23は、ケース11と共に口部5に取り付けられる。医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、栓23およびケース11が弾性変形する。
図3は、弾性変形した栓23およびケース11を示している。
【0025】
栓23は、ゴム製またはエラストマー製の栓であることが好ましいが、これら以外の材料で作製してもよい。ゴムは、力を加えると変形し、その力を除くとすぐに元の形状に戻る性質を持つ物質である。ゴムは、天然ゴムまたは熱硬化性エラストマーであってもよいし、これら以外の材料であってもよい。エラストマーは、合成ゴムまたは熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer)であってもよいし、これら以外の材料であってもよい。
【0026】
栓23は、スチレン-エチレンブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレン(SEPS)、イソプレン、およびブタジエンのいずれかによって作製されていてもよいし、これら以外の材料で作製されていてもよい。ケース11は、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)など)およびポリエチレン-テレフタラート(PET)のいずれかによって作製されていてもよいし、これら以外の材料で作製されていてもよい。つまり、ケース11は、熱可塑性樹脂製であってもよいし、これ以外の材料で作製されていてもよい。
【0027】
以下では、特に断りがない限り、口部5と組み合わせる前の医療用キャップ2について説明する。最初に、ケース11について説明し、その後、栓23について説明する。その後、医療用キャップ2および口部5について説明する。ケース11に関しては、最初に、ケース11の概要について説明し、その後、ケース11の薄肉部18および厚肉部19について説明する。
【0028】
図4は、口部5と組み合わせる前の医療用キャップ2の鉛直な断面を示す断面図である。
図5は、口部5と組み合わせる前の医療用キャップ2の平面図である。
図4は、
図5に示すIV-IV線に沿う断面を示している。
【0029】
図4に示すように、ケース11は、栓23を取り囲む円筒状の内壁15と、口部5が配置される筒状空間S1を介して内壁15を取り囲む円筒状の外壁13と、筒状空間S1の上方で内壁15から外壁13に延びる環状の上壁14とを含む。内壁15および外壁13は、上下に延びる円筒状である。上壁14は、ケース11の全周にわたって連続した円形の環状である。内壁15、外壁13、および上壁14は、同心である。内壁15、外壁13、および上壁14の中心線は、ケース11の中心線Cc上に配置されている。
【0030】
内壁15は、上壁14から下方に延びている。内壁15の上端は、内壁15の根元に相当する。内壁15の下端15Lは、内壁15の先端に相当する。内壁15の上端は、上壁14の上面を構成している。内壁15の内周面15iは、上壁14の上面の内周から下方に延びている。内壁15の外周面15oは、上壁14の下面の内周から下方に延びている。内壁15の下端15Lは、上壁14の下面よりも下方に配置されている。
【0031】
外壁13は、上壁14から上方および下方に延びている。外壁13の上面13uは、外壁13の上端に相当する。外壁13の下面13Lは、外壁13の下端に相当する。外壁13の上面13uは、内壁15の上端および上壁14の上面よりも上方に配置されている。外壁13の下面13Lは、内壁15の下端15Lおよび上壁14の下面よりも下方に配置されている。外壁13の内周面13iは、外壁13の上面13uから上壁14の上面の外周まで下方に延びており、上壁14の下面の外周から外壁13の下面13Lまで下方に延びている。
【0032】
外壁13の上面13uは、ケース11のうちで最も上方に位置している。外壁13の上面13uは、ケース11および医療用キャップ2の上面に相当する。外壁13の上面13uは、ケース11および医療用キャップ2の上端にも相当する。外壁13の下面13Lは、ケース11のうちで最も下方に位置している。外壁13の下面13Lは、ケース11および医療用キャップ2の下面に相当する。外壁13の下面13Lは、ケース11および医療用キャップ2の下端にも相当する。
【0033】
外壁13の上面13uは、栓23のいずれの部分よりも上方に配置されている。栓23およびケース11は、外壁13の上面13uから下方に凹んだ円板状凹部21を形成している。栓23の上面23u、すなわち、後述する内側部24の上面および上側部27の上面は、円板状凹部21の底面に相当する。
図5に示すように、栓23の上面23uは、医療用キャップ2を上から見たときにケース11に覆われておらず視認可能である。
【0034】
図4に示すように、ケース11は、外壁13の上面13uと外壁13の外周面13oとによって形成された環状の上側フランジ12を含む。ケース11の周方向Dcの各位置における上側フランジ12の鉛直な断面は、長方形、正方形、三角形、または半円形であってもよいし、これらのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。
図4は、上側フランジ12の鉛直な断面が三角形状である例を示している。この例の場合、上側フランジ12は、外壁13の上面13uの一部に相当する水平な上面と、外壁13の外周面13oの一部に相当する傾いた下面12Lとを含む。上側フランジ12の下面12Lは、上側フランジ12の外端に向かって斜め上に延びている。
【0035】
外壁13の外周面13oは、上側フランジ12の下面12Lに加えて、直線状の鉛直な断面を有する円筒状のストレート部13sを含む。ストレート部13sは、上側フランジ12から下方に延びている。上側フランジ12は、ストレート部13sから外側に突出している。ストレート部13sは、上側フランジ12よりも上下方向に長い。上側フランジ12の突出量、つまり、ストレート部13sから上側フランジ12の外端までのケース11の径方向Drの距離は、上下方向への上側フランジ12の長さ、つまり、ストレート部13sの上端から外壁13の上面13uまでの上下方向の距離よりも短い。上下方向へのストレート部13sの長さは、上下方向への上側フランジ12の長さ以下であってもよい。上側フランジ12の突出量は、上下方向への上側フランジ12の長さ以上であってもよい。
【0036】
外壁13の外周面13oは、ケース11および医療用キャップ2の外周面に相当する。外壁13の外周面13oは、医療用キャップ2または医療用容器1を扱う人の指で摘ままれる。ケース11の外径は、上側フランジ12で最も大きい。上側フランジ12は、人の指に引っ掛かり、人の指に対する医療用キャップ2の移動を規制する。これにより、医療用キャップ2または医療用容器1を扱う人の指に対する医療用キャップ2の安定性を高めることができる。
【0037】
内壁15、外壁13、および上壁14は、口部5が配置される筒状空間S1を形成している。筒状空間S1は、内壁15と外壁13との間の円筒状の空間である。筒状空間S1は、内壁15および外壁13と同心である。上壁14は、内壁15と外壁13との間の空間の上方に配置されており、同空間を塞いでいる。上壁14は、筒状空間S1の上端を形成している。筒状空間S1は、内壁15、外壁13、および上壁14によって、筒状空間S1の内側、外側、および上側の空間から隔てられている。その一方で、筒状空間S1は、下向きに開いており、筒状空間S1の下側の空間と上下に連なっている。
【0038】
次に、ケース11の薄肉部18および厚肉部19について説明する。
【0039】
図6は、口部5と組み合わせる前の医療用キャップ2の底面図である。
図7は、
図6の一部を拡大した図である。
図8は、
図4の一部を拡大した図である。
図9は、
図8とは異なる切断面で切断した医療用キャップ2の鉛直な断面を示す断面図である。
図9は、
図5に示すIX-IX線に沿う断面を示している。
【0040】
図6に示すように、内壁15は、ケース11の径方向Drへの厚みが互いに異なる薄肉部18および厚肉部19を含む。
図6は、複数の薄肉部18と複数の厚肉部19とが設けられた例を示している。この例では、8つの薄肉部18と8つの厚肉部19とがケース11の周方向Dcに並んでいる。内壁15に設けられた薄肉部18および厚肉部19の数は、1つずつであってもよい。
【0041】
図6に示すように、医療用キャップ2を下から見ると、薄肉部18および厚肉部19は、いずれも円弧状である。薄肉部18および厚肉部19は、中心がケース11の中心線Cc上に配置された円に沿って延びている。薄肉部18および厚肉部19は、ケース11の周方向Dcに連続している。厚肉部19は、薄肉部18よりもケース11の周方向Dcに長い。厚肉部19は、薄肉部18よりもケース11の径方向Drに厚い。ケース11の周方向Dcへの厚肉部19の長さに相当する厚肉部19の幅は、ケース11の周方向Dcへの薄肉部18の長さに相当する薄肉部18の幅以下であってもよい。厚肉部19の幅は、厚肉部19の上端から厚肉部19の下端まで一定であってもよいし、変化していてもよい。薄肉部18の幅についても同様である。
【0042】
ケース11の径方向Drへの厚みが互いに異なる薄肉部18および厚肉部19がケース11の周方向Dcに並んでいるので、内壁15の内周面15iおよび外周面15oの少なくとも一方は、ケース11の周方向Dcの位置に応じてケース11の中心線Ccからの距離が増加および減少を交互に繰り返す円筒状の凹凸面である。
図6は、内壁15の外周面15oが円筒状の凹凸面であり、内壁15の内周面15iが円筒面である例を示している。内壁15の内周面15iおよび外周面15oの両方が円筒状の凹凸面であってもよいし、内壁15の内周面15iだけが円筒状の凹凸面であってもよい。
図6に示す例の場合、内壁15の内周面15iの水平な断面は、円形である。
【0043】
図7に示すように、薄肉部18は、内側に凹んだ外側凹部16を内壁15の外周面15oに形成している。厚肉部19は、外側に突出した外側凸部17を内壁15の外周面15oに形成している。薄肉部18は、円弧状の内面18iおよび外面18oを含む。同様に、厚肉部19は、円弧状の内面19iおよび外面19oを含む。厚肉部19は、さらに、厚肉部19の内面19iから薄肉部18の内面18i、または、厚肉部19の外面19oから薄肉部18の外面18oに延びる2つの側面19sを含む。
図7に示す例では、厚肉部19の側面19sは、厚肉部19の外面19oから薄肉部18の外面18oに延びている。
【0044】
上下方向への厚肉部19の長さは、上下方向への薄肉部18の長さと等しい。厚肉部19の上端は、薄肉部18の上端と等しい高さに配置されている。厚肉部19の下端は、薄肉部18の下端と等しい高さに配置されている。内壁15の上端は、全ての厚肉部19の上端と全ての薄肉部18の上端とによって形成されている。同様に、内壁15の下端15Lは、全ての厚肉部19の下端と全ての薄肉部18の下端とによって形成されている。厚肉部19の下端は、薄肉部18の下端よりも上方または下方に配置されていてもよい。
【0045】
上下方向の位置が同じであれば、薄肉部18の厚みは、ケース11の周方向Dcの位置にかかわらず、一定または概ね一定である。同様に、上下方向の位置が同じであれば、厚肉部19の厚みは、ケース11の周方向Dcの位置にかかわらず、一定または概ね一定である。薄肉部18の厚みは、薄肉部18の上端から薄肉部18の下端まで一定であってもよいし、上下方向の位置に応じて段階的または連続的に変化していてもよい。
図9は、前者の例を示している。同様に、厚肉部19の厚みは、厚肉部19の上端から厚肉部19の下端まで一定であってもよいし、上下方向の位置に応じて段階的または連続的に変化していてもよい。
図8は、後者の例を示している。
【0046】
図8に示す例では、厚肉部19の厚みが厚肉部19の上端付近で減少しており、厚肉部19の下端付近で減少している。この例では、厚肉部19は、厚肉部19の上端に近づくにしたがって厚みが連続的に減少した根元部19p(
図11参照)と、厚みが一定またはほぼ一定の中間部19m(
図11参照)と、厚肉部19の下端に近づくにしたがって厚みが連続的に減少した先端部19d(
図11参照)とを含む。
【0047】
中間部19mは、根元部19pの下端から先端部19dの上端まで下方に延びている。中間部19mは、根元部19pよりも上下方向に長く、先端部19dよりも上下方向に長い。先端部19dは、根元部19pよりも上下方向に長い。上下方向への中間部19mの長さは、上下方向への根元部19pの長さ以下であってもよいし、上下方向への先端部19dの長さ以下であってもよい。上下方向への先端部19dの長さは、上下方向への根元部19pの長さ以下であってもよい。
【0048】
図8に示すように、中間部19mの内面および外面は、鉛直またはほぼ鉛直である。根元部19pの内面と先端部19dの内面も、鉛直またはほぼ鉛直である。根元部19pの内面の鉛直な断面、中間部19mの内面の鉛直な断面、および先端部19dの内面の鉛直な断面は、1つの直線上に配置されている。根元部19pの外面は、中間部19mの外面からケース11の中心線Ccに向かって斜め上に延びている。先端部19dの外面は、中間部19mの外面からケース11の中心線Ccに向かって斜め下に延びている。
【0049】
根元部19pの外面と上壁14の下面とは、内側に凹んだ根元側凹部20を形成している。
図8は、根元側凹部20がケース11の中心線Ccに向かって斜め上に凹んだ例を示している。この例では、根元側凹部20が栓23の一部(後述する下側部28の一部)で満たされている。根元側凹部20は、厚肉部19ごとに形成されている。したがって、複数の厚肉部19と上壁14とは、間隔を空けてケース11の周方向Dcに並んだ複数の根元側凹部20を形成している。
【0050】
前述のように、薄肉部18の厚みは、薄肉部18の上端から薄肉部18の下端まで一定である。薄肉部18の厚みは、薄肉部18の厚みの最大値と薄肉部18の厚みの最小値とを兼ねる。厚肉部19の厚みは、中間部19mで最も大きく、根元部19pで最も小さい。厚肉部19の厚みは、先端部19dで最も小さくてもよい。厚肉部19の厚みの最大値は、薄肉部18の厚みの最大値よりも大きい。厚肉部19の厚みの最小値は、薄肉部18の厚みの最大値よりも大きい。薄肉部18の厚みの最大値は、厚肉部19の厚みの最小値以上であってもよい。
【0051】
次に、栓23について説明する。
【0052】
図8および
図9に示すように、栓23は、内壁15に取り囲まれた内側部24と、上壁14の上方に配置された上側部27と、上壁14の下方に配置された下側部28と、下側部28を内側部24に接続する1つ以上の接続部29とを含む。
【0053】
栓23は、一体成形された1つの部材である。内側部24は、上側部27、下側部28、および接続部29のそれぞれと一体である。内側部24は、上下に延びる円柱状である。上側部27および下側部28は、栓23の全周にわたって連続した円形の環状である。内側部24、上側部27、および下側部28は、同心である。内側部24、上側部27、および下側部28の中心線は、ケース11の中心線Cc上に配置されている。
【0054】
内側部24の上面は、中空の針が刺される面である。内側部24の下面は、内側部24の上面に刺された針が突き出る面である。
図8および
図9は、内側部24の上面が、中空の針が刺される1つ以上のくぼみ22が設けられた凹凸面である例を示している。この例では、1つのくぼみ22が、内側部24の上面の中央部に配置されており、残り3つのくぼみ22が、中央のくぼみ22のまわりに等間隔で配置されている(
図5も参照)。内側部24の上面は、くぼみ22のない滑らかな平面または曲面であってもよい。内側部24の下面は、くぼみ22のない滑らかな平面または曲面であってもよいし、上下に起伏のある凹凸面であってもよい。
【0055】
内側部24は、内壁15よりも上下方向に長い。内側部24の上端は、内壁15の上端よりも上方に配置されている。内側部24の下端は、内壁15の下端15Lよりも下方に配置されている。内側部24の下端は、栓23の下端に相当する。
図8および
図9は、内側部24の下面が下方に凸の球冠状である例を示している。この例では、内側部24の下面の下端が内側部24の下端に相当する。内側部24の下面のいずれの部分も、内壁15の下端15Lよりも下方に配置されている。
【0056】
内側部24の外径は、内側部24の上端から内側部24の下端まで一定またはほぼ一定であってもよいし、内側部24の下端に近づくにしたがって連続的または段階的に変化していてもよい。
図8および
図9は、内側部24の外径が内側部24の下端に近づくにしたがって段階的に減少した例を示している。この例では、内側部24は、内壁15に取り囲まれた大径部25と、大径部25よりも外径が小さい小径部26とを含む。
【0057】
小径部26は、大径部25と同心である。小径部26は、大径部25から下方に延びている。小径部26は、大径部25よりも上下方向に短い。上下方向への小径部26の長さは、上下方向への大径部25の長さ以上であってもよい。小径部26の外径は、小径部26の上端から小径部26の下端26Lまで一定またはほぼ一定である。同様に、大径部25の外径は、大径部25の上端から大径部25の下端25Lまで一定またはほぼ一定である。内側部24の外径は、小径部26で最も小さい。
【0058】
大径部25の上端は、内側部24の上端に相当する。小径部26の下端26Lは、内側部24の下端に相当する。小径部26の下端26Lは、栓23の下端にも相当する。小径部26は、内壁15の下端15Lから下方に突出している。小径部26は、栓23の下端部を構成している。小径部26は、医療用キャップ2および口部5を組み合わせたときに、口部5の全周にわたって口部5の内周面32に接する部分である(
図3参照)。
【0059】
大径部25の外周面は、内壁15の内周面15iに接している。小径部26の外周面は、内壁15の全周にわたって内壁15の内周面15iから離れている。小径部26の外径は、内壁15の内径よりも小さい。内壁15の下端15Lは、大径部25の下面に相当する大径部25の下端25Lよりも下方に配置されている。内壁15の下端15Lは、小径部26の下端26Lよりも上方に配置されている。内壁15の下端15Lは、径方向Drに間隔を空けて小径部26の全周を取り囲んでいる。内壁15の内周面15iと小径部26の外周面とは、内壁15の下端15Lから大径部25の下面に向かって上方に凹んだ環状の下向き溝26gを形成している。
【0060】
下向き溝26gの幅は、小径部26の外周面から内壁15の内周面15iまでのケース11の径方向Drの距離である。下向き溝26gの深さは、内壁15の下端15Lから大径部25の下面までの上下方向の距離である。下向き溝26gの幅は、下向き溝26gの深さよりも短い。下向き溝26gの深さは、内壁15の下端15Lから小径部26の下端26Lまでの上下方向の距離よりも短い。下向き溝26gの幅は、下向き溝26gの深さ以上であってもよい。下向き溝26gの深さは、内壁15の下端15Lから小径部26の下端26Lまでの上下方向の距離以上であってもよい。
【0061】
上側部27は、内側部24から上壁14の上方の位置まで延びている。
図8および
図9は、上側部27が内側部24の上面から外側に斜め上に延び、その後、外壁13の内周面13iまで水平に延びた例を示している。上側部27は、内側部24から外壁13の内周面13iまで水平に延びていてもよいし、内側部24から離れるように上方に延びる部分を有していてもよい。上側部27は、内側部24の上面ではなく、内側部24の外周面から上方または外方に延びていてもよい。上側部27の上端は、内側部24の上端と等しい高さに配置されていてもよいし、内側部24の上端よりも上方または下方に配置されていてもよい。
【0062】
上側部27の上面および下面は、栓23の全周にわたって連続した円形の環状である。上側部27の上面および下面の少なくとも一方は、平面であってもよいし、上下に起伏のある曲面であってもよい。
図8および
図9は、上側部27の上面および下面のそれぞれが水平な平面である例を示している。上側部27の上面は、外壁13の上面13uよりも下方に配置されている。上側部27の下面は、上壁14の上面に接している。上側部27の外周面は、外壁13の内周面13iに接している。
【0063】
上側部27の厚みは、上側部27の下面から上側部27の上面までの上下方向の距離である。上壁14の厚みは、上壁14の下面から上壁14の上面までの上下方向の距離である。上側部27の幅は、上壁14の上面の内周から上側部27の外周面までのケース11の径方向Drの距離である。外壁13の上面13uの幅は、外壁13の上面13uの内周から外壁13の上面13uの外周までのケース11の径方向Drの距離である。上側部27の厚みは、上壁14の厚みよりも短い。上側部27の幅は、上側部27の厚みよりも長く、外壁13の上面13uの幅よりも短い。上側部27の厚みは、上壁14の厚み以上であってもよい。上側部27の幅は、上側部27の厚み以下であってもよいし、外壁13の上面13uの幅以上であってもよい。
【0064】
下側部28は、内壁15と外壁13との間に配置されている。下側部28の上面は、上壁14に接している。下側部28の内周面は、内壁15に接している。下側部28の外周面は、外壁13に接している。下側部28の下面は、筒状空間S1に配置された口部5の上方に配置される。下側部28の上面および下面は、栓23の全周にわたって連続した円形の環状である。下側部28の上面および下面の少なくとも一方は、平面であってもよいし、上下に起伏のある曲面であってもよい。
図8および
図9は、下側部28の上面および下面のそれぞれが水平な平面である例を示している。
【0065】
下側部28の内径は、上側部27の外径よりも小さい。下側部28の外径は、上側部27の外径よりも大きい。したがって、下側部28は、下側部28の一部が上側部27の真下に位置するように上壁14の下方に配置されている。下側部28の内径は、上側部27の外径以上であってもよい。下側部28の外径は、上側部27の外径以下であってもよい。下側部28の全体を上側部27の真下に配置してもよいし、上側部27の内側または外側に配置してもよい。
【0066】
下側部28の厚みは、下側部28の下面から下側部28の上面までの上下方向の距離である。下側部28の幅は、下側部28の内周面から下側部28の外周面までのケース11の径方向Drの距離である。下側部28の厚みは、上側部27の厚みよりも長く、上壁14の厚みよりも長い。下側部28の厚みは、下側部28の幅よりも短い。下側部28の幅は、外壁13の上面13uの幅よりも短い。下側部28の厚みは、下側部28の幅以上であってもよいし、上壁14の厚み以下であってもよい。下側部28の厚みは、上側部27の厚み以下であってもよい。下側部28の幅は、外壁13の上面13uの幅以上であってもよい。
【0067】
前述のように、栓23は、下側部28を内側部24に接続する1つ以上の接続部29を含む。
図7および
図9は、上壁14を上下に貫通する複数の貫通穴30に複数の接続部29が1つずつ充填された例を示している。栓23に設けられた接続部29の数は1つであってもよい。貫通穴30は、内壁15などの上壁14以外のケース11の一部を貫通していてもよい。
【0068】
図6は、複数の接続部29がケース11の周方向Dcに等間隔で配置された例を示している。この例では、ケース11の周方向Dcに最も近い2つの接続部29のケース11の周方向Dcへの間隔(以下、「2つの接続部29の間隔」ともいう。)が、ケース11の周方向Dcへの接続部29の長さよりも長い。複数の接続部29をケース11の周方向Dcに不等間隔で配置してもよい。2つの接続部29の間隔をケース11の周方向Dcへの接続部29の長さ以下にしてもよい。
【0069】
図9に示すように、接続部29は、上側部27と下側部28との間に配置されている。医療用キャップ2を上から見ると、接続部29の全体が、上側部27に重なっており、上側部27で隠れている。接続部29は、上側部27の下面から下側部28の上面まで下方に延びている。接続部29は、下側部28を上側部27に接続している。したがって、下側部28は、接続部29および上側部27を介して内側部24に接続されている。
【0070】
接続部29は、貫通穴30の全体またはほぼ全体を満たしている。接続部29の外周面は、貫通穴30の内周面に接している。接続部29の水平な断面の形状は、貫通穴30の水平な断面の形状と同じまたはほぼ同じである。接続部29の水平な断面は、円、楕円、または多角形であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。接続部29の水平な断面の面積は、下側部28に近づくにしたがって減少していてもよいし、上側部27から下側部28まで一定であってもよい。
図9は、前者の例を示している。
【0071】
ケース11の周方向Dcへの接続部29の長さは、上下方向への接続部29の長さよりも長い。ケース11の周方向Dcへの接続部29の長さは、ケース11の径方向Drへの接続部29の長さよりも長い。上下方向への接続部29の長さは、ケース11の径方向Drへの接続部29の長さよりも長い。ケース11の周方向Dcへの接続部29の長さは、上下方向への接続部29の長さ以下であってもよいし、ケース11の径方向Drへの接続部29の長さ以下であってもよい。上下方向への接続部29の長さは、ケース11の径方向Drへの接続部29の長さ以下であってもよい。
【0072】
図7に示すように、内壁15の外周面15oは、厚肉部19の位置でケース11の径方向Drに突出した外側凸部17と、薄肉部18の位置でケース11の径方向Drに凹んだ外側凹部16とを形成している。貫通穴30および接続部29は、薄肉部18の外側に配置されている。ケース11の周方向Dcへの貫通穴30および接続部29の長さは、ケース11の周方向Dcへの薄肉部18の長さよりも短い。貫通穴30および接続部29の一部は、ケース11の周方向Dcに最も近い2つの厚肉部19の間に配置されている。したがって、医療用キャップ2を下から見ると、貫通穴30および接続部29の一部は、外側凹部16内に配置されている。
【0073】
次に、医療用キャップ2および口部5について説明する。
【0074】
以下では、特に断りがない限り、組み合わせる前の医療用キャップ2および口部5について説明する。
【0075】
図10は、組み合わせる前の医療用キャップ2および口部5の鉛直な断面を示す断面図である。
図11は、組み合わされた医療用キャップ2および口部5の鉛直な断面を示す断面図である。
【0076】
図10に示すように、口部5は、開口4を形成した環状の先端面31と、先端面31の内周から下方に延びる円筒状の内周面32と、先端面31の外周から下方に延びる円筒状の外周面35とを含む。開口4は、先端面31の内周によって形成されている。内周面32は、開口4を通過するまたは通過した液体を案内する流路を形成している。
【0077】
口部5の内周面32は、口部5の開口4から下方に延びる円筒状のテーパー部33と、テーパー部33から下方に延びる円筒状のストレート部34とを含む。テーパー部33は、開口4から下方に離れるにしたがって細くなっている。テーパー部33のテーパー角(鉛直な直線に対する角度)は、開口4からストレート部34まで一定であってもよいし、段階的または連続的に変化していてもよい。
図10は、開口4から下方に離れるにしたがってテーパー部33のテーパー角が1度だけ段階的に増加した例を示している。
【0078】
図10に示す例では、テーパー部33は、開口4から下方に離れるにしたがって細くなった円筒状の上側テーパー部33uと、上側テーパー部33uから下方に離れるにしたがって細くなった円筒状の下側テーパー部33Lとを含む。上側テーパー部33uは、開口4から下方に延びている。下側テーパー部33Lは、上側テーパー部33uから下方に延びている。ストレート部34は、下側テーパー部33Lから下方に延びている。上側テーパー部33uのテーパー角は、下側テーパー部33Lのテーパー角よりも小さい。上側テーパー部33uのテーパー角は、下側テーパー部33Lのテーパー角よりも大きくてもよい。
【0079】
テーパー部33の内径は、テーパー部33の上端に相当する口部5の上端で最も大きく、テーパー部33の下端に相当する下側テーパー部33Lの下端で最も小さい。内壁15の下端15Lの外径は、テーパー部33の内径の最大値よりも小さく、テーパー部33の内径の最小値よりも大きい。同様に、栓23の下端部に相当する小径部26の外径は、テーパー部33の内径の最大値よりも小さく、テーパー部33の内径の最小値よりも大きい。したがって、医療用キャップ2および口部5を組み合わせるときは、内壁15が口部5に圧入される、もしくは、口部5が内壁15に圧入される。これにより、内壁15および栓23が口部5によって締め付けられ、弾性変形する。
【0080】
内側に締め付けられ弾性変形した栓23に中空の針を刺すと、栓23の復元によって針の外周面に栓23が密着した状態が維持される。これにより、針の外周面とこの針が刺さった栓23との隙間をより確実に密閉することができる。加えて、栓23に刺さった針を栓23で締め付けることができ、栓23に対する針の位置および姿勢をさらに安定させることができる。しかも、針を栓23に刺したときに出来た栓23の穴は、針を抜いたときに栓23の復元で自然に閉じる。したがって、この穴を通じて液体等が漏れたり、異物が入ったりすることを防止できる。
【0081】
医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、内壁15の外周面15oが口部5の内周面32に接触する。栓23の内側部24は、口部5の全周にわたって内壁15の下方で口部5の内周面32に接触し、栓23の下側部28は、口部5の全周にわたって口部5の先端面31に接触する。後述するように、外壁13の下側凸部41は、口部5の下側凹部45に嵌り、口部5の上側凸部46は、外壁13の上側凹部42に嵌る。さらに、組み合わされた医療用キャップ2および口部5を加熱する滅菌処理を行うと、口部5の内側接触部48が、外壁13の外側接触部43に接触する。
図11は、滅菌処理が行われた医療用キャップ2および口部5を示している。
【0082】
図10および
図11に示すように、外壁13は、医療用キャップ2および口部5を組み合わせたときに口部5の上側凸部46を収容する上側凹部42と、医療用キャップ2および口部5を組み合わせたときに口部5の下側凹部45に収容される下側凸部41とを含む。口部5は、上側凸部46および下側凹部45に加えて、医療用キャップ2および口部5を組み合わせたときに外壁13の下方に配置される環状のネックフランジ44を含む。
【0083】
外壁13の下側凸部41は、外壁13の上側凹部42と上下に連なっている。上側凹部42は、外壁13の内周面13iから凹んでいる。上側凹部42は、外壁13の内周面13iよりも外側に位置する底面42bと、底面42bの上端および下端から外壁13の内周面13iに延びる2つの側面42sとによって形成されている。上側凹部42の下側の側面42sは、外壁13の下側凸部41の外面の一部である。下側凸部41の外面は、上側凹部42の底面42bから内側に延びると共に、外壁13の下面13Lから内側に延びている。
【0084】
外壁13の上側凹部42および下側凸部41は、ケース11の全周にわたって連続している。口部5の上側凸部46および下側凹部45は、口部5の全周にわたって連続している。下側凸部41および上側凸部46の少なくとも一方は、ケース11の周方向Dcに不連続であってもよい。同様に、上側凹部42および下側凹部45の少なくとも一方は、ケース11の周方向Dcに不連続であってもよい。
【0085】
上側凹部42および下側凸部41は、上壁14よりも下方に配置されている。上側凹部42の上端は、内壁15の下端15Lよりも上方に配置されている。上側凹部42の下端は、内壁15の下端15Lよりも下方に配置されている。下側凸部41は、上側凹部42よりも下方に配置されている。したがって、下側凸部41は、内壁15の下端15Lよりも下方に配置されている。
【0086】
下側凸部41の高さは、上側凹部42の底面42bから下側凸部41の先端に相当する下側凸部41の内端までのケース11の径方向Drの距離である。上側凹部42の深さは、上側凹部42の底面42bから外壁13の内周面13iまでのケース11の径方向Drの距離である。上側凹部42の深さは、下側凸部41の高さと等しくてもよいし、下側凸部41の高さよりも大きいまたは小さくてもよい。上側凹部42の深さは、上側凹部42の底面42bから外壁13の外周面13oまでのケース11の径方向Drの距離と等しくてもよいし、当該距離よりも大きいまたは小さくてもよい。
【0087】
口部5の上側凸部46が外壁13の上側凹部42に嵌ると、上側凸部46の上面が、上側凹部42の上側の側面42sと上下に向かい合う。このとき、上側凸部46の上面から上側凹部42の上側の側面42sまでの上下方向の距離は、上側凹部42の深さよりも短くてもよい。外壁13の下側凸部41が口部5の下側凹部45に嵌ると、上側凹部42の下側の側面42sに相当する下側凸部41の上面が、下側凹部45の下面と上下に向かい合う。このとき、下側凸部41の上面から下側凹部45の下面までの上下方向の距離は、下側凹部45の深さよりも短くてもよい。
【0088】
口部5の上側凸部46が外壁13の上側凹部42に嵌り、外壁13の下側凸部41が口部5の下側凹部45に嵌ると、外壁13の下面13Lが、ネックフランジ44の上面と上下に向かい合う。このとき、外壁13の下面13Lは、ネックフランジ44の上面に接していてもよいし、ネックフランジ44の上面から離れていてもよい。
図11は、上下方向へのネックフランジ44の厚みよりも小さな隙間が、外壁13の下面13Lとネックフランジ44の上面との間に形成された例を示している。
【0089】
図11に示すように、医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、外壁13の下側凸部41は、口部5の上側凸部46およびネックフランジ44の間に配置される。言い換えると、上側凸部46の下面とネックフランジ44の上面とは、下側凹部45を形成している。下側凹部45は、上側凸部46の先端に相当する上側凸部46の外端から内側に凹んでいる。下側凹部45の底から上側凸部46の外端までのケース11の径方向Drの距離は、下側凹部45の底からネックフランジ44の外端までのケース11の径方向Drの距離よりも短い。
【0090】
ネックフランジ44は、口部5の全周にわたって連続した円形の環状である。口部5の外径は、ネックフランジ44で最も大きい。外壁13の外径は、上側フランジ12で最も大きく、上側フランジ12以外の位置で最も小さい。上側フランジ12の外径は、ネックフランジ44の外径よりも大きい。外壁13の下端の外径は、ネックフランジ44の外径以下である。
図11は、外壁13の下端の外径がネックフランジ44の外径と等しいまたは概ね等しい例を示している。外壁13の下端の外径は、ネックフランジ44の外径よりも大きくてもよい。口部5と組み合わされた医療用キャップ2を下から見ると、外壁13の下端の全体またはほぼ全体がネックフランジ44で隠れる。
【0091】
図11は、滅菌処理が行われた後の医療用キャップ2および口部5を示している。外壁13の内周面13iは、滅菌処理が行われる前は内側接触部48に非接触であり、滅菌処理が行われた後に内側接触部48に接触する外側接触部43を含む。口部5の外周面35は、滅菌処理が行われる前は外壁13の内周面13iに非接触であり、滅菌処理が行われた後に外壁13の内周面13iに接触する内側接触部48を含む。内側接触部48が外側接触部43に接触するまでの過程は後述する。
【0092】
外壁13の外側接触部43は、内壁15の下端15Lよりも上方に配置されている。医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、口部5の内側接触部48は、内壁15の下端15Lよりも上方に配置される。内側接触部48および外側接触部43は、滅菌処理が行われた後も、内壁15の下端15Lよりも上方に配置される。外側接触部43は、外壁13の内周面13iにおいて滅菌処理が行われた後に内側接触部48が接触した部分であり、外壁13の内周面13iにおいて滅菌処理が行われた後に内側接触部48が接触していない部分を含まない。
【0093】
図11は、内側接触部48が口部5の全周にわたって連続した円筒状であり、外側接触部43が、ケース11の全周にわたって連続した円筒状である例を示している。内側接触部48は、口部5の全周にわたって連続していてもよいし、ケース11の周方向Dcに不連続であってもよい。後者の場合、内側接触部48は、間隔を空けてケース11の周方向Dcに並んだ複数の分割体を含んでいてもよい。内側接触部48が口部5の全周にわたって連続している場合、外側接触部43はケース11の全周わたって連続し、内側接触部48がケース11の周方向Dcに不連続である場合、外側接触部43はケース11の周方向Dcに不連続である。
【0094】
図11は、口部5の全周にわたって連続した環状溝47が、口部5の内側接触部48と口部5の上側凸部46との間に形成された例を示している。この例では、内側接触部48は、直線状の鉛直な断面を有する円筒状のストレート部48sと、外側に突出した鉛直な断面を有するリング状の凸部48cとを含む。ストレート部48sおよび凸部48cは、環状溝47よりも上方に配置されている。
【0095】
内側接触部48の鉛直な断面は、1つ以上の直線または1つ以上の曲線によって構成されていてもよいし、1つ以上の直線および1つ以上の曲線によって構成されていてもよい。内側接触部48の鉛直な断面の一部または全部は、上下に延びる直線状であってもよいし、鉛直な直線に対して傾いていてもよい。後者の場合、内側接触部48の鉛直な断面の一部または全部が、外側に突出していてもよいし、内側に凹んでいてもよい。
【0096】
口部5のストレート部48sは、口部5の凸部48cの上方に配置されている。ストレート部48sおよび凸部48cは、上下に連なっている。ストレート部48sは、凸部48cよりも上下方向に長い。ストレート部48sは、環状溝47よりも上下方向に長い。環状溝47は、凸部48cよりも上下方向に長い。ストレート部48sを凸部48cの下方に配置してもよい。上下方向へのストレート部48sの長さは、上下方向への凸部48cの長さ以下であってもよい。上下方向へのストレート部48sの長さは、上下方向への環状溝47の長さ以下であってもよい。上下方向への環状溝47の長さは、上下方向への凸部48cの長さ以下であってもよい。
【0097】
口部5の凸部48cは、口部5のストレート部48sから外側に突出している。環状溝47は、凸部48cおよび上側凸部46から内側に凹んでいる。口部5の中心線Cm(
図3参照)から凸部48cの外端までのケース11の径方向Drの距離は、口部5の中心線Cmから上側凸部46の外端までのケース11の径方向Drの距離と等しくてもよいし、同距離よりも長いまたは短くてもよい。
図11は、凸部48cの外端が、上側凸部46の外端よりも内側に配置された例を示している。
【0098】
図11に示す例の場合、外壁13の外側接触部43は、直線状の鉛直な断面を有する円筒状のストレート部43sと、外側に凹んだ鉛直な断面を有するリング状の凹部43cとを含む。滅菌処理が行われると、外壁13のストレート部48sが、ストレート部43sに接触し、外壁13の凸部48cが、凹部43cに接触する。凸部48cが凹部43cに嵌ることで、外壁13に対する上下方向への口部5の移動が規制される。凹部43cは、外壁13の上側凹部42よりも浅い凹みである。凹部43cの深さは、上側凹部42の深さ以上であってもよい。
【0099】
次に、医療用キャップ2、医療用キャップモジュール、および医療用容器1の製造方法について説明する。
【0100】
図12は、医療用キャップ2を製造する金型の概略断面図である。
図13は、口部5によって締め付けられ変形する前の内壁15を示す断面図である。
図14は、口部5によって締め付けられ変形した内壁15を示す断面図である。
図15A-Bは、口部5の内側接触部48が外壁13の外側接触部43に接触する前後の変化を示す断面図である。
図15Aは、医療用キャップ2および口部5を組み合わせた後であって、滅菌処理を行う前の医療用キャップ2および口部5を示している。
図15Bは、滅菌処理を行った後の医療用キャップ2および口部5を示している。
図13および
図14は、
図5に示すXIII-XIII線に沿う断面を示している。
【0101】
医療用キャップ2を製造するときは、射出成形の1つであるインサート成形によりケース11と一体の栓23を成形する。具体的には、
図12に示すように、可動金型51の所定位置にケース11を配置する。その後、ケース11と共に可動金型51を固定金型52の方に移動させ、可動金型51および固定金型52を重ね合わせる。これにより、栓23と同一形状の空洞53が、ケース11、可動金型51、および固定金型52によって形成される。
【0102】
図12では、可動金型51および固定金型52のそれぞれが一体の1つの部材であり、可動金型51が固定金型52の下方に配置された例を示している。可動金型51および固定金型52の姿勢は、
図12に示す可動金型51および固定金型52を右回りまたは左回りに90度回転させた姿勢であってもよい。可動金型51は、互いに連結された複数の部材によって構成されていてもよい。固定金型52についても同様である。
【0103】
空洞53を形成した後は、熱可塑性エラストマーなどの溶融した材料を、固定金型52に形成された通路54を介して空洞53に注入する。空洞53に注入された液状の材料は、栓23の内側部24および上側部27を形成すべき空間を満たす。上側部27を形成すべき空間に供給された液状の材料は、同空間から上壁14の複数の貫通穴30(
図9参照)に入り、栓23の下側部28を形成すべき空間に流れる。このようにして、空洞53の全体またはほぼ全体が溶融した材料で満たされる。
【0104】
空洞53を液状の材料で充填した後は、空洞53が液状の材料で充填された状態を維持しながら、空洞53内の液状の材料を冷却する。これにより、空洞53内の液状の材料が固化し、栓23に変化する。栓23は、空洞53内の液状の材料が固化したものである。ケース11に接する液状の材料は、ケース11と結合しながら固体に変化する。これにより、ケース11と一体の栓23が作製される。
【0105】
空洞53内の液状の材料を栓23に変化させた後は、固定金型52から可動金型51を離す。その後、可動金型51から栓23およびケース11を取り外す。栓23およびケース11を取り外す前または後に、必要に応じて栓23およびケース11の少なくとも一方を加工してもよい。例えば、バリや固定金型52の通路54内で固化した材料を栓23から除去してもよい。このようにして、栓23およびケース11を含む医療用キャップ2が製造される。
【0106】
医療用キャップ2を製造した後は、医療用キャップ2および口部5を組み合わせて、口部5に対する医療用キャップ2の位置を規定位置に一致させる。
図14は、口部5に対する医療用キャップ2の位置が規定位置に一致した状態を示している。規定位置は、口部5の開口4が医療用キャップ2によって塞がれる位置である。規定位置は、内壁15および外壁13の間の筒状空間S1に口部5が配置されると共に、外壁13の下側凸部41が口部5の下側凹部45に嵌り、口部5の上側凸部46が外壁13の上側凹部42に嵌る位置である。
【0107】
容器本体3の口部5および収容部6が別々の部品である場合、口部5および収容部6を結合する前に医療用キャップ2および口部5を組み合わせてもよいし、口部5および収容部6を結合した後に医療用キャップ2および口部5を組み合わせてもよい。後者の場合、医療用キャップ2および口部5を組み合わせる前に、必要に応じて、液体、固体、または半固体状の物質(薬剤など)を容器本体3の中に入れてもよい。
【0108】
医療用キャップ2および口部5を組み合わせるとき、医療用キャップ2および口部5の一方を医療用キャップ2および口部5の他方に押し付けてもよいし、医療用キャップ2および口部5を互いに押し付けてもよい。医療用キャップ2を口部5の上側から口部5に押し付けてもよいし、医療用キャップ2を上下に反転させた状態で口部5を医療用キャップ2の上側から医療用キャップ2に押し付けてもよい。以下では、医療用キャップ2を口部5の上側から口部5に押し付けることにより、医療用キャップ2を規定位置に移動させる例について説明する。
【0109】
医療用キャップ2および口部5を組み合わせるときは、口部5が内壁15および外壁13の間の筒状空間S1に差し込まれるように医療用キャップ2を口部5に被せる。この状態で医療用キャップ2を口部5に押し付ける。前述のように、口部5の内径は、口部5の上端で内壁15の下端15Lの外径よりも大きく、同外径よりも小さな値まで口部5の上端から下方に離れるにしたがって連続的に減少している。したがって、内壁15と外壁13との間に口部5を差し込むと、内壁15が、口部5の中に入り、口部5の内周面32によって内側に押される。
【0110】
具体的には、筒状空間S1に口部5を差し込むと、内壁15は、口部5の内周面32によって内側に押され、内側に弾性変形する。このとき、内壁15の一部が塑性変形してもよい。内壁15は、内側に弾性変形しながら口部5の内周面32に沿って口部5に対して下方に移動する。これにより、内壁15が口部5によって締め付けられ、内壁15の内径および外径が減少する。栓23は、内壁15によって締め付けられ、弾性変形する。
【0111】
医療用キャップ2は、内壁15が口部5によって締め付けられながら規定位置の方に移動する。口部5の内周面32と内壁15の外周面15oとの接触面積は、内壁15が口部5に対して下方に移動するにしたがって増加する。内壁15の変形量は、口部5の上端から下方に離れるにしたがって連続的に増加する。したがって、
図13および
図14に示すように、内壁15の外周面15oは、直径が一定またはほぼ一定の円筒状から、口部5の内周面32(具体的には、上側テーパー部33u)に倣う倒立円錐台状に変化する。
【0112】
医療用キャップ2が規定位置に到達すると、外壁13の下側凸部41が口部5の下側凹部45に嵌り、口部5の上側凸部46が外壁13の上側凹部42に嵌る。さらに、栓23の内側部24が口部5の内周面32に押し付けられ、栓23の下側部28が口部5の先端面31に押し付けられる。内側部24および下側部28は、口部5の全周にわたって口部5の内周面32および先端面31に密着する。これにより、医療用キャップ2と口部5との隙間が密閉される。
【0113】
図13および
図14に示すように、内壁15は、ケース11の周方向Dcに並んだ薄肉部18および厚肉部19を含む。医療用キャップ2および口部5を組み合わせる前のケース11の径方向Drへの内壁15の厚みは、ケース11の周方向Dcの位置に応じて増加および減少を交互に繰り返す。内壁15が口部5によって締め付けられると、内壁15が変形し、内壁15の内径および外径が減少する。このとき、薄肉部18は、厚肉部19の変形量よりも大きな変形量でケース11の周方向Dcに変形する。
【0114】
図13は、医療用キャップ2および口部5を組み合わせる前のケース11の周方向Dcへの薄肉部18の幅が一定またはほぼ一定である例を示している。
図14は、医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、内壁15の下端15Lに近づくしたがって薄肉部18の幅が連続的に減少するように薄肉部18が変形した例を示している。内壁15の下端15Lでの薄肉部18の幅は、零または実質的に零であってもよいし、零を超える値であってもよい。言い換えると、ケース11の周方向Dcに最も近い2つの厚肉部19が、内壁15の下端15Lで接していてもよいし、内壁15の下端15Lでケース11の周方向Dcに離れていてもよい。
【0115】
医療用キャップ2および口部5を組み合わせて、口部5に対する医療用キャップ2の位置を規定位置に一致させた後は、医療用キャップ2および口部5を加熱する滅菌処理を行う。
図15Aは、医療用キャップ2および口部5を組み合わせた後であって、滅菌処理を行う前の医療用キャップ2および口部5を示している。
図15Aに示すように、滅菌処理を行う前、口部5の外周面35に設けられた内側接触部48は、外壁13の内周面13iに設けられた外側接触部43に接触しておらず、間隔を空けて外側接触部43と向かい合っている。
【0116】
滅菌処理中は、医療用キャップ2および口部5を加熱するので、医療用キャップ2および口部5の温度が上昇し、医療用キャップ2および口部5の剛性が低下する。内壁15および栓23は、口部5によって締め付けられており、口部5を広げるように口部5を外側に押している。栓23の下側部28は、滅菌処理を開始する前から口部5に接しており、外側への口部5の変形を規制している。口部5の剛性が低下したときに、内壁15および栓23が口部5を外側に押す力が、口部5の変形を規制する力(下側部28から口部5に加わる力や口部5自身の抵抗力)を上回ると、口部5が変形し、口部5の内径および外径が増加する。
【0117】
図15Bは、滅菌処理を行った後の医療用キャップ2および口部5を示している。滅菌処理を行うと、口部5は、例えば、口部5の内径および外径の増加量が口部5の上端に近づくにしたがって連続的に増加するように変形する。このような場合、口部5は、ケース11の周方向Dcのいずれの位置でも口部5の鉛直な断面が外側に斜めに倒れるように変形する。滅菌処理が終了し、医療用キャップ2および口部5の温度が低下しても、口部5の形状は、元に戻らないまたは殆ど元に戻らない。
【0118】
図15Bに示すように、滅菌処理を行った後は、口部5の内側接触部48が外壁13の外側接触部43に接触している。
図15Bは、口部5のストレート部48sが外壁13のストレート部43sに受け止められ、口部5の凸部48cが外壁13の凹部43cに収容された状態を示している。口部5の内側接触部48を外壁13の外側接触部43に接触させることにより、口部5が内壁15および栓23を締め付ける力の減少を小さくすることができ、栓23が弾性変形した状態を維持できる。さらに、口部5の凸部48cを外壁13の凹部43cに収容することにより、口部5の内側接触部48が外壁13に対して下方向に移動するような口部5の変形を防止または最小化できる。
【0119】
このようにして、医療用キャップ2および口部5を含む医療用キャップモジュールが製造される。医療用キャップモジュールを用いて医療用容器1を製造する場合は、口部5と収容部6とを結合する。口部5および収容部6を結合した後に医療用キャップ2および口部5を組み合わせる場合は、前記と同様の手順により、医療用キャップ2および口部5を組み合わせる。これにより、医療用キャップモジュールの状態を経ずに、医療用容器1が製造される。
【0120】
次に、本実施形態に係る効果について説明する。
【0121】
本実施形態では、液体等が通過する開口4を形成した筒状の口部5が、ケース11の内壁15および外壁13の間の筒状空間S1に配置される。栓23は、内壁15の内側に配置されている。内壁15は、栓23と口部5とに接した状態で栓23と口部5との間に配置される。内壁15は、ケース11の径方向Drへの厚みが互いに異なる薄肉部18および厚肉部19を含む。薄肉部18および厚肉部19は、ケース11の周方向Dcに並んでいる。
【0122】
口部5を内壁15および外壁13の間の筒状空間S1に配置すると、口部5によって内壁15が締め付けられ、厚肉部19よりも薄い薄肉部18が変形する。これにより、内壁15の内径および外径が減少し、栓23が内壁15によって締め付けられる。さらに、内壁15の全周を薄くするのではなく厚肉部19を設けるので、内壁15の剛性を確保することができる。加えて、切り欠きではなく薄肉部18を設けるので、切り欠きを設けた場合に比べて栓23の表面と口部5の内周面32との隙間を小さくできる、もしくは、当該隙間の発生を防止できる。これにより、切り欠きを設けた場合に比べて医療用キャップ2の密閉性の低下を防止できる。そのため、栓23が内壁15から脱落したり、ケース11が口部5から外れたりすることを防止することができる。
【0123】
本実施形態では、厚肉部19が、ケース11の径方向Drに突出した外側凸部17を内壁15の外周面15oで形成しており、薄肉部18が、ケース11の径方向Drに凹んだ外側凹部16を内壁15の外周面15oで形成している。口部5を内壁15および外壁13の間の筒状空間S1に配置するとき、口部5の内周面32と内壁15の外周面15oとが擦れ合う。内壁15の外周面15oに外側凹部16を設けると、外側凹部16がない場合に比べて、口部5の内周面32と内壁15の外周面15oとが擦れ合う範囲が狭くなる。これにより、医療用キャップ2および口部5を組み合わせるときに口部5および内壁15に加わる摩擦抵抗を減らすことができる。
【0124】
本実施形態では、内壁15の内周面15iおよび外周面15oの両方を筒状の凹凸面にするのではなく、内壁15の外周面15oだけをケース11の径方向Drに起伏がある筒状の凹凸面にしている。医療用キャップ2および口部5を組み合わせる前、内壁15の内周面15iは、円筒状である。医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、栓23は、内壁15の内周面15iによって締め付けられる。したがって、内壁15の内周面15iが筒状の凹凸面である場合に比べて、栓23を均一な力で締め付けることができる。言い換えると、ケース11の周方向Dcの各位置で栓23が内側に押される力の差を減らすことができる。
【0125】
本実施形態では、医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、内壁15の外周面15oだけでなく、栓23の下端部も口部5の内周面32に接触する。つまり、内壁15の外周面15oと口部5の内周面32との接触によって医療用キャップ2および口部5の隙間が塞がれ、栓23の下端部と口部5の内周面32との接触によって医療用キャップ2および口部5の隙間が塞がれる。これにより、医療用キャップ2の密閉性をさらに高めることができる。
【0126】
本実施形態では、口部5の内周面32が内壁15の外周面15oに接すると共に、口部5の外周面35が外壁13の内周面に接する。より具体的には、口部5の外周面35に設けられた内側接触部48が、外壁13の内周面に設けられた外側接触部43に接する。内側接触部48および外側接触部43は、内壁15の下端15Lよりも上方に配置されている。内壁15および栓23が口部5を広げるように外側に口部5を押していたとしても、内側接触部48と外側接触部43との接触により口部5が外側に広がることを防止できる。口部5が外側に広がると、内壁15も外側に広がり、内壁15が栓23を締め付ける力が減少する。したがって、内壁15が栓23を締め付ける力の減少を防止できる。
【0127】
本実施形態では、口部5の内側接触部48に設けられた凸部48cが、外壁13の外側接触部43に設けられた凹部43cに収容される。内側接触部48および外側接触部43の上下方向への相対的な移動は、凸部48cと凹部43cとの接触によって規制される。口部5の内側接触部48が外壁13の外側接触部43に対して上下方向に移動すると、口部5が内壁15を締め付ける力が減少し得る。加えて、凹部43cではなく凸部48cを口部5に設けるので、口部5の剛性の低下を防止でき、口部5が外側に広がり難くすることができる。
【0128】
本実施形態では、医療用キャップ2および口部5を組み合わせると、口部5の上側凸部46が外壁13の上側凹部42に収容され、外壁13の下側凸部41が口部5の下側凹部45に収容される。口部5および外壁13の上下方向への相対的な移動は、上側凸部46および上側凹部42の接触と下側凸部41および下側凹部45の接触とによって規制される。加えて、上側凸部46および下側凸部41が上側凹部42および下側凹部45に嵌ると、医療用キャップ2または口部5に触れる人の指に感触が伝わる。これにより、医療用キャップ2または口部5が適切な位置に達したことを人の指に伝えることができる。
【0129】
本実施形態では、口部5の外周面35に設けられた環状のネックフランジ44が外壁13の下方に配置される。外壁13の下端の外径は、ネックフランジ44の外径と等しいか、ネックフランジ44の外径よりも小さい。人の指がネックフランジ44に対して外壁13の反対側から外壁13の方に移動したり、ネックフランジ44および外壁13が人の指の方に移動したりしたとしても、指が外壁13の下端またはその付近に当たり難い。したがって、人の指が意図せず外壁13に当たる頻度を減らすことができる。
【0130】
本実施形態では、前述のように、ケース11の内壁15の剛性を確保しながら、切り欠きを設けた場合に比べて栓23の表面と口部5の内周面32との隙間を小さくできる、もしくは、当該隙間の発生を防止できる。このような医療用キャップ2および口部5を用いれば、容器本体3内の液体が口部5を通じて漏れたり、異物が口部5を通じて容器本体3に入ったりすることを防止できる。
【0131】
本実施形態では、医療用キャップ2および口部5を組み合わせる。その後、医療用キャップ2および口部5を加熱する。口部5は、熱可塑性樹脂製である。口部5の温度が上昇すると、口部5の剛性が低下する。口部5の外周面35に設けられた内側接触部48は、外壁13の内周面に設けられた外側接触部43から離れている。さらに、口部5は、内壁15および栓23によって外側に押されている。したがって、口部5の温度が上昇すると、口部5の変形により口部5が外側に押し広げられる。
【0132】
口部5が押し広げられると、口部5の内側接触部48が、外壁13の外側接触部43に近づき接触する。これにより、口部5のさらなる変形を防止することができ、口部5が内壁15および栓23を締め付ける力の減少を小さくすることができる。さらに、医療用キャップ2および口部5の温度が低下しても、口部5の形状は、元に戻らないまたは殆ど元に戻らない。これにより、口部5が内壁15および栓23を締め付ける力を維持できる。
【0133】
本実施形態では、液体等が通過する開口4を形成した筒状の口部5が、ケース11の内壁15および外壁13の間の筒状空間S1に配置される。栓23は、内壁15の内側に配置されている。内壁15は、栓23と口部5との間に配置される。ケース11の上壁14は、内壁15および外壁13の間に配置された口部5の上方に配置される。内壁15、外壁13、および上壁14は、口部5を収容する筒状空間S1を形成している。
【0134】
栓23は、内壁15の内側に配置された内側部24だけでなく、上壁14の下方に配置された下側部28を含む。口部5が内壁15と外壁13との間の筒状空間S1に配置されると、下側部28が、口部5と上壁14との間に配置される。これにより、口部5の先端面31と上壁14の下面との隙間を小さくする、もしくは、この隙間を下側部28で埋めることができ、医療用キャップ2の密閉性を高めることができる。
【0135】
さらに、下側部28は、内側部24とは独立した部材ではなく、栓23の接続部29によって内側部24に接続されている。したがって、内側部24および下側部28の相対的な移動を小さくすることができる。加えて、栓23の接続部29は、ケース11を貫通する貫通穴30を通過しているので、貫通穴30の内周面によってケース11に対する移動が規制される。これにより、栓23およびケース11の相対的な移動を小さくすることができる。
【0136】
栓23を射出成形する場合は、溶融した栓23の材料をケース11の貫通穴30に流し込むことにより、内側部24と一体の下側部28および接続部29を成形することができる。さらに、溶融した栓23の材料は、冷却されているときにケース11と結合しながら固体に変化する。これにより、栓23およびケース11の結合力を高めることができ、栓23およびケース11の相対的な移動を防止または最小化できる。
【0137】
本実施形態では、口部5が内壁15と外壁13との間の筒状空間S1に配置されると、下側部28は、口部5の先端面31と上壁14の下面との両方に接した状態で、口部5と上壁14との間に配置される。これにより、口部5の先端面31と上壁14の下面との隙間を下側部28で埋めることができ、医療用キャップ2の密閉性を高めることができる。
【0138】
本実施形態では、口部5が内壁15と外壁13との間の筒状空間S1に配置されると、栓23の下側部28が口部5の先端面31に接触すると共に、栓23の下端部が口部5の内周面32に接触する。つまり、複数の位置で医療用キャップ2および口部5の隙間が塞がれる。これにより、医療用キャップ2の密閉性をさらに高めることができる。
【0139】
本実施形態では、内側部24、下側部28、および接続部29に加えて、上側部27が栓23に設けられている。上側部27は、内側部24から上壁14の上方の位置に延びている。接続部29は、上壁14を上下に貫通する貫通穴30を通じて上側部27から下側部28に延びている。したがって、上壁14は、上側部27と下側部28との間に配置されている。ケース11に対する上下方向への栓23の移動は、上側部27および上壁14の接触または下側部28および上壁14の接触によって規制される。これにより、栓23およびケース11の上下方向への相対的な移動を防止または最小化できる。また、ケース11に対する径方向への栓23の移動は、接続部29と貫通穴30との接触によって、規制される。したがって、本実施形態では、栓23は、ケース11から剥離されづらく、医療用キャップ2の密閉性を高めることができる。
【0140】
本実施形態では、内壁15の外周面15oがケース11の径方向Drに凹んだ外側凹部16を形成している。ケース11の径方向Drへの上壁14の長さに相当する上壁14の幅は、外側凹部16で増加する。上壁14を上下に貫通する貫通穴30は、上壁14の幅が広い部分に設けられている。さらに、医療用キャップ2を下から見ると、貫通穴30の少なくとも一部は、外側凹部16内に配置されている。したがって、外側凹部16からケース11の周方向Dcに離れた位置に貫通穴30を配置する場合に比べて貫通穴30および接続部29の面積を容易に増加させることができる。
【0141】
本実施形態では、内壁15と上壁14とが内壁15の外周面15oから凹んだ根元側凹部20を形成している。下側部28の一部は、根元側凹部20に収容されている。ケース11に対する上下方向への栓23の移動は、下側部28の表面と根元側凹部20の内面との接触によって規制される。加えて、ケース11の径方向Drへの内壁15の厚みが、根元側凹部20で減少するので、根元側凹部20がない場合に比べて容易に内壁15を内側に変形させることができ、栓23を内壁15で締め付けることができる。
【0142】
本実施形態では、外径が互いに異なる大径部25および小径部26が栓23の内側部24に設けられている。大径部25よりも外径が小さい小径部26は、内壁15に取り囲まれた大径部25の下端から下方に延びている。内壁15の下端15Lは、大径部25の下端よりも下方で、かつ、小径部26の下端よりも上方の位置に配置されている。したがって、内壁15の内周面15iと小径部26の外周面とは、大径部25の下面に向かって上方に凹んだ環状の溝26gを形成している。
【0143】
ケース11、可動金型51、および固定金型52によって形成された空洞53内に溶融した栓23の材料を注入することにより栓23を成形することが考えられる(射出成形の1つであるインサート成形)。この場合、可動金型51および固定金型52の少なくとも一方によってケース11を支持する必要がある。前述のように、内壁15の内周面15iと小径部26の外周面とが、大径部25の下面に向かって上方に凹んだ環状の溝26gを形成している。溝26gは、可動金型51または固定金型52の一部が内壁15の内側部分および外側部分を支持することにより形成される。これにより、可動金型51および固定金型52に対するケース11の安定性を高めることができ、栓23およびケース11の寸法精度を高めることができる。
【0144】
次に、他の実施形態について説明する。
【0145】
ケース11を成形した後にインサート成形によりケース11と一体の栓23を成形するのではなく、栓23を成形した後にインサート成形により栓23と一体のケース11を成形してもよい。もしくは、ケース11および栓23を別々に成形した後、両者を組み合わせてもよい。または、ケース11と栓23とは、異なる樹脂材質を1つの成形サイクルにおいて交互に成形する二色成形によって、成形されてもよい。
【0146】
医療用キャップ2および口部5を単に組み合わせるだけでなく、超音波溶着により医療用キャップ2および口部5を結合してもよい。
図16は、外壁13およびネックフランジ44が互いに押し付けられた状態で外壁13およびネックフランジ44に超音波振動を加えることにより、外壁13およびネックフランジ44を両者の接触位置で溶融および結合させた例を示している。
【0147】
医療用キャップ2の上側フランジ12の鉛直な断面は、2辺が水平な長方形または正方形状であってもよい。
図16は、上側フランジ12の下面12Lが、外壁13のストレート部13sから上側フランジ12の外端まで水平面である例を示している。上側フランジ12の外端は、上下に延びる円筒面である。上側フランジ12の上面は、外壁13の上面13uの一部である環状の水平面である。
【0148】
内壁15の内周面15iを円筒状にし、内壁15の外周面15oを凹凸面にするのではなく、内壁15の内周面15iを凹凸面にし、内壁15の外周面15oを円筒状にしてもよい。もしくは、内壁15の内周面15iおよび外周面15oの両方を凹凸面にしてもよい。
【0149】
また、
図17に示すように、医療用キャップ2は、上側フランジ12がない形状であってもよい。この場合、外壁13の上面13uの外縁13eは、外壁13の外周面13oの一部に相当する。外周面13oは、上面13uの外縁13eから下方に延びる。
図17に示す変形例によれば、上側フランジ12がある場合と比較し、指を引っ掛ける部分がないことから、医療用キャップ2を口部5から取り外しづらく、異物混入等を目的とした不正な開封を行いづらくなる。また、医療用キャップ2の外径が小さくなるため、金型の取り数、つまり、当該金型によって同時に製造できる医療用キャップ2の数を増やすことができ、樹脂の使用量が減るといった利点がある。
【0150】
栓23の下端部に相当する小径部26は、口部5の内周面32に接触しなくてもよい。この場合、栓23の下端は、内壁15の下端15Lよりも上方に配置されていてもよい。
【0151】
口部5の内側接触部48を上下に短くしてもよい。例えば、内側接触部48は、口部5の外周面35に形成された環状溝47よりも上下に長い円筒状ではなく、環状溝47よりも上下に短いリング状であってもよい。
【0152】
口部5の凸部48cと外壁13の凹部43cとを省略してもよい。つまり、ストレート部48sだけを口部5の内側接触部48に設け、ストレート部43sだけを外壁13の外側接触部43に設けてもよい。もしくは、凸部48cだけを口部5の内側接触部48に設け、凹部43cだけを外壁13の外側接触部43に設けてもよい。
【0153】
図16に示すように、外壁13の内周面13iにおいて内壁15の下端15Lよりも上方に位置する部分は、滅菌処理が行われた後も口部5の外周面35から離れていてもよい。つまり、口部5の内側接触部48と外壁13の外側接触部43とを省略してもよい。もしくは、外壁13の内周面13iにおいて内壁15の下端15Lよりも上方に位置する部分は、滅菌処理が行われる前から口部5の外周面35に接していてもよい。
【0154】
口部5の内側接触部48と口部5の上側凸部46との間に形成された環状溝47を省略してもよい。
【0155】
2対の凸部および凹部(口部5の上側凸部46と外壁13の上側凹部42とのペア、外壁13の下側凸部41と口部5の下側凹部45とのペア)のうちの少なくとも1つの対を省略してもよい。
【0156】
ネックフランジ44を省略してもよい。
【0157】
医療用キャップ2および口部5を組み合わせたときに、栓23の下側部28は、口部5および上壁14の少なくとも一方から離れていてもよい。
【0158】
栓23の上側部27を省略してもよい。この場合、ケース11の貫通穴30を、内壁15に形成してもよいし、上壁14および内壁15によって形成されたコーナー部に形成してもよい。
【0159】
ケース11の貫通穴30を上壁14に設ける場合、医療用キャップ2を下から見たときに、貫通穴30の全体を外側凹部16の外に配置してもよい。この場合、貫通穴30の全体を薄肉部18または厚肉部19の外側に配置してもよいし、薄肉部18および厚肉部19の両方の外側に配置してもよい。つまり、貫通穴30の一部を薄肉部18の外側に配置し、貫通穴30の残りの部分を厚肉部19の外側に配置してもよい。
【0160】
内壁15と上壁14とによって形成された根元側凹部20に栓23の下側部28を収容しなくてもよい。この場合、根元側凹部20を省略してもよい。
【0161】
内壁15の下端15Lを大径部25の下端25Lよりも上方に配置してもよい。もしくは、内壁15の下端15Lを栓23の下端に相当する小径部26の下端26Lよりも下方に配置してもよい。
【0162】
栓23の下側部28と口部5とを面接触させるのではなく、口部5の全周にわたって線接触させてもよい。例えば、口部5の先端面31は、上方に突出した環状のリブを形成していてもよい。もしくは、下側部28の下面は、下方に突出した環状のリブを形成していてもよい。
【0163】
上方または下方に突出した環状のリブを口部5および下側部28のいずれに設ける場合でも、下側部28と口部5とが線接触するので、面接触する場合に比べて、下側部28と口部5とが押し付けられる圧力を高めることができ、両者の隙間をより確実に密閉することができる。さらに、リブを口部5に設けた場合は、リブが下側部28に食い込むので、下側部28が口部5の変形を規制する力を増加させることができる。
【0164】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0165】
次に、本明細書および添付図面から導き出される特徴を以下に例示する。
【0166】
[項1-0]
開口を塞ぐ医療用キャップであって、
前記開口を形成した筒状の口部の内側に配置される栓と、
前記栓と前記口部との間に配置される筒状の内壁と、前記口部を収容する筒状空間を介して前記内壁を取り囲む筒状の外壁と、を含むケースと、を備える、医療用キャップ。
【0167】
[項1-1]
前記内壁は、前記栓と前記口部とに接した状態で前記栓と前記口部との間に配置され、
前記内壁は、前記ケースの径方向への厚みが互いに異なる薄肉部および厚肉部を含み、
前記薄肉部および厚肉部は、前記ケースの周方向に並んでいる、項1-0に記載の医療用キャップ。
【0168】
[項1-2]
前記内壁の外周面は、前記薄肉部の位置で前記ケースの径方向に凹んだ外側凹部と、前記厚肉部の位置で前記ケースの径方向に突出した外側凸部と、を形成している、項1-1に記載の医療用キャップ。
【0169】
[項1-3]
前記内壁の内周面は、円筒状である、項1-1~2のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0170】
[項1-4]
前記栓は、前記内壁の下端から下方に突出した下端部を含み、
前記下端部は、前記口部の内周面に接触する、項1-1~3のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0171】
[項1-5]
前記外壁の内周面は、前記内壁の下端よりも上方に配置された外側接触部を含み、
前記外側接触部は、前記口部の外周面に設けられた内側接触部に接触する、項1-1~4のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0172】
[項1-6]
前記外壁の前記外側接触部は、前記口部の前記内側接触部に設けられた凸部を収容する凹部を含む、項1-5に記載の医療用キャップ。
【0173】
[項1-7]
前記外壁は、前記口部の外周面に設けられた上側凸部を収容する上側凹部と、前記口部の外周面に設けられた下側凹部に収容される下側凸部と、を含む、項1-1~6のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0174】
[項1-8]
前記外壁の下端は、前記口部の外周面に設けられた環状のネックフランジの上方に配置され、
前記外壁の下端の外径は、前記ネックフランジの外径以下である、項1-1~7のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0175】
[項2-1]
前記ケースは、前記筒状空間に配置された前記口部の上方に配置される上壁と、を含み、
前記栓は、前記内壁に取り囲まれた内側部と、前記筒状空間に配置された前記口部と前記上壁との間に配置される下側部と、前記ケースを貫通する貫通穴を通じて前記下側部を前記内側部に接続する接続部とを含む、項1-0~7のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0176】
[項2-2]
前記下側部は、前記筒状空間に配置された前記口部と前記上壁との両方に接した状態で前記口部と前記上壁との間に配置される、項1-0~7および項2-1のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0177】
[項2-3]
前記栓は、前記内壁の下端から下方に突出した下端部を含み、
前記下端部は、前記口部の内周面に接触する、項1-0~7および項2-1~2のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0178】
[項2-4]
前記栓は、前記ケースを貫通する貫通穴を通じて前記下側部を前記内側部に接続する接続部をさらに含む、項1-0~7および項2-1~3のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0179】
[項2-5]
前記栓は、前記内側部から前記上壁の上方の位置に延びる上側部をさらに含み、
前記接続部は、前記上壁を上下に貫通する前記貫通穴を通じて前記上側部から前記下側部に延びている、項1-0~7および項2-1~4のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0180】
[項2-6]
前記内壁の外周面は、前記ケースの径方向に凹んだ外側凹部を形成しており、
前記医療用キャップを下から見ると、前記上壁を上下に貫通する前記貫通穴の少なくとも一部は、前記外側凹部内に配置されている、項2-5に記載の医療用キャップ。
【0181】
[項2-7]
前記内壁と前記上壁とは、前記内壁の外周面から凹んだ根元側凹部を形成しており、
前記根元側凹部は、前記下側部の一部を収容している、項1-0~7および項2-1~6のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0182】
[項2-8]
前記栓の前記内側部は、前記内壁に取り囲まれた大径部と、前記大径部よりも外径が小さい小径部と、を含み、
前記小径部は、前記大径部の下端から下方に延びており、
前記内壁の下端は、前記大径部の下端よりも下方で、かつ、前記小径部の下端よりも上方の位置に配置されている、項1-0~7および項2-1~7のいずれか一項に記載の医療用キャップ。
【0183】
[項3]
開口を形成した筒状の口部と、前記液体を収容する収容部と、を含む容器本体と、
項1-0~7および項2-1~7のいずれか一項に記載の医療用キャップと、を備える、医療用容器。
【0184】
[項4-1]
開口を形成した筒状の口部と、前記開口を塞いだ医療用キャップと、を備える医療用容器を製造する方法であって、
前記口部は、熱可塑性樹脂製であり、
前記医療用キャップは、
前記開口を形成した前記口部の内側に配置された栓と、
前記栓と前記口部とに接した状態で前記栓と前記口部との間に配置された筒状の内壁と、前記口部を収容した筒状空間を介して前記内壁を取り囲む筒状の外壁と、を含むケースと、を備え、
前記内壁は、前記ケースの径方向への厚みが互いに異なる薄肉部および厚肉部を含み、
前記薄肉部および厚肉部は、前記ケースの周方向に並んでおり、
前記方法は、
前記医療用キャップおよび口部を組み合わせることにより、前記口部を前記筒状空間に配置する工程と、
組み合わされた前記医療用キャップおよび口部を加熱することにより、前記口部の外周面に設けられた内側接触部が前記外壁の内周面に設けられた外側接触部から離れた状態から、前記内側接触部が前記外側接触部に接した状態に、前記医療用キャップおよび口部を変化させる工程と、を含む、医療用容器の製造方法。
【0185】
[項4-2]
開口を塞ぐ医療用キャップを製造する方法であって、
前記医療用キャップは、
前記開口を形成した筒状の口部の内側に配置される栓と、
前記栓と前記口部との間に配置される筒状の内壁と、前記口部を収容する筒状空間を介して前記内壁を取り囲む筒状の外壁と、前記筒状空間に配置された前記口部の上方に配置される上壁と、を含むケースと、を備え、
前記栓は、前記内壁に取り囲まれた内側部と、前記筒状空間に配置された前記口部と前記上壁との間に配置される下側部と、前記ケースを貫通する貫通穴を通じて前記下側部を前記内側部に接続する接続部とを含み、
前記方法は、
前記ケースを金型内に配置する工程と、
前記ケースと前記金型とによって形成された空洞に溶融した前記栓の材料を注入し、前記空洞内の前記材料を冷却することにより、前記栓を成形する工程と、を含む、医療用キャップの製造方法。
【0186】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0187】
1 :医療用容器
2 :医療用キャップ
4 :開口
5 :口部
11 :ケース
13 :外壁
14 :上壁
15 :内壁
15L :内壁の下端
15i :内壁の内周面
15o :内壁の外周面
16 :外側凹部
17 :外側凸部
18 :薄肉部
19 :厚肉部
20 :根元側凹部
23 :栓
24 :内側部
25 :大径部
25L :大径部の下端
26 :小径部(栓の下端部)
26L :小径部の下端
27 :上側部
28 :下側部
29 :接続部
30 :貫通穴
41 :下側凸部
42 :上側凹部
43 :外側接触部
43c :凹部
44 :ネックフランジ
45 :下側凹部
46 :上側凸部
48 :内側接触部
48c :凸部
51 :可動金型
52 :固定金型
53 :空洞
Dc :ケースの周方向
Dr :ケースの径方向
S1 :筒状空間