(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095611
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】フィブリノゲンを決定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/86 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01N33/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023220263
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】22216869.2
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・パツケ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA39
2G045DA40
2G045DA41
2G045FA13
2G045FA14
(57)【要約】
【課題】典型的には希釈されたサンプルを少なくとも1つの凝固活性化剤と混合することにより反応混合物を提供すること、および反応混合物中のフィブリン形成を測定することを含む、フィブリノゲンを決定するための公知の方法と比較して、単一の測定において拡張された測定範囲をカバーし、故に、必要な複数の測定の数を明確に減らす、フィブリノゲン濃度を決定する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、血液凝固診断法の分野にあり、サンプル中のフィブリノゲンを定量的に決定するための改善された方法に関する。方法は、反応混合物に第XIII因子を添加することを含む。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のフィブリノゲンを決定する方法であって、方法は、以下、
a)サンプルを少なくとも1つの凝固活性化剤と混合することにより反応混合物を提供する工程、および
b)反応混合物中のフィブリン形成を測定する工程
を含み、第XIII因子が、反応混合物にさらに添加されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
反応混合物中の添加された第XIII因子の最終濃度が標準の5%~200%に相当するような量の第XIII因子が、反応混合物に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凝固活性化剤は、トロンビンおよびトロンボプラスチンからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに添加される第XIII因子は、単離されたヒト第XIII因子または組換え第XIII因子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
さらに添加される第XIII因子は、活性化された第XIIIa因子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
サンプル中のフィブリノゲンを決定する方法に使用するための試薬であって、試薬は、少なくとも1つの凝固活性化剤および第XIII因子を含有する、試薬。
【請求項7】
凝固活性化剤は、トロンビンおよびトロンボプラスチンからなる群から選択される、請求項6に記載の試薬。
【請求項8】
第XIII因子は、単離されたヒト第XIII因子または組換え第XIII因子である、請求項6または7に記載の試薬。
【請求項9】
第XIII因子は、活性化された第XIIIa因子である、請求項6~8のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項10】
サンプル中のフィブリノゲンを決定する方法に使用するための試験キットであって、試験キットは、
i)少なくとも1つの凝固活性化剤を含有する第1の試薬、および
ii)第XIII因子を含有する第2の試薬
を含む、試験キット。
【請求項11】
第1の試薬は、トロンビンおよびトロンボプラスチンからなる群からの凝固活性化剤を含有する、請求項10に記載の試験キット。
【請求項12】
第2の試薬は、単離されたヒト第XIII因子または組換え第XIII因子を含有する、請求項10または11に記載の試験キット。
【請求項13】
第2の試薬中の第XIII因子は、活性化された第XIII因子aである、請求項10~12のいずれか1項に記載の試験キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固診断法の分野にあり、サンプル中のフィブリノゲンを定量的に決定するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィブリノゲンは、フィブリンの水溶性前駆体であり、フィブリンは、創傷閉鎖のための基質を形成する。凝固プロテアーゼトロンビン(第IIa因子)は、フィブリノゲンを切断し、このようにしてフィブリン形成、すなわち、凝血塊形成を活性化する。低下したフィブリノゲンレベルは、出血する傾向に関連する。急に上昇したフィブリノゲンレベルは、炎症において、手術後に、および他の状況においてしばしば見られる。長期間上昇したフィブリノゲンレベルは、血栓性障害についてのリスク指標であると考えられている。
【0003】
フィブリノゲン濃度を決定するためのいくつかの異なる方法が、先行技術において公知である。
【0004】
特許文献1は、トロンビン時間の測定に基づくフィブリノゲン決定法を記載しており、トロンビン時間は、フィブリノゲンだけでなく、他の要因、例えばヘパリンなどの抗凝固剤、または直接的トロンビン阻害剤、またはその他にフィブリンもしくはフィブリノゲン切断産物の存在によっても影響を受ける可能性があるため、トロンビン時間は、フィブリノゲン濃度の正確な決定を可能にしないことが知られており、トロンビン時間は、一般に、重度のフィブリノゲン欠損状態の場合にのみ有効である。トロンビン時間法は、通常、未希釈血漿サンプルを比較的少量のトロンビンと混合して、凝固を活性化すること、およびフィブリン形成、すなわち、反応物の吸光度の変化を測光法で測定すること、および次いで凝固時間を決定することを含む。しかし、特許文献1によれば、決定されるのは凝固時間ではなく、代わりに反応曲線の一次導関数の最大値、または言い換えると、反応曲線の吸光度の最大変化である。吸光度の最大変化は、フィブリノゲン濃度と線形的に相関することが見出され、そのため、後者は、既知のフィブリノゲン濃度および吸光度の最大変化の割り当てに基づいて構築された検量線の助けにより決定することができる。
【0005】
フィブリノゲン濃度を決定するためのはるかにより正確で、一般的に使用される方法は、いわゆるClauss法である(非特許文献1)。この試験は、血漿サンプルを凝固活性化剤としてのトロンビンと混合すること、および凝固時間を決定することを含む、トロンビン時間のバリエーションである。Clauss法では、比較的低いフィブリノゲン濃度が、反応物中で比較的高い、標準化されたトロンビン濃度と組み合わされ、その結果、フィブリン形成の速度は、実質的にフィブリノゲン濃度のみと相関する。反応物中の比較的低いフィブリノゲン濃度は、通常、予め希釈されている血漿サンプルの使用により確立される。
【0006】
次いで、フィブリン形成、すなわち、凝血塊形成が、反応物において測光法で決定される。フィブリン形成のため、反応物は次第に濁り、そのため、フィブリン形成は、吸収測定により定量的に測定することができる。
【0007】
次いで通常、サンプルの凝固時間が決定される。サンプルの凝固時間は、フィブリノゲンの量に比例する。サンプルの凝固時間は、トロンビンがサンプルに添加されてから、明確なフィブリン形成、すなわち、反応物の濁りが測定されるまでの時間である。「明確なフィブリン形成」は、超過した場合に凝固時間を示す、試験および機器特異的な閾値と定義することができる。あるいは、「明確なフィブリン形成」は、凝固反応の開始前および完了後のシグナルの差から進んで、到達した場合に凝固時間を示す、試験および機器特異的な百分率のシグナルの差の値と定義することができる。Clauss試験におけるフィブリン形成の反応速度論は、トロンビン時間試験におけるフィブリン形成の反応速度論とは大幅に異なる。Clauss試験では、フィブリン形成は、フィブリノゲン濃度に依存して、トロンビン試薬の添加後3秒で早くも開始し、すなわち、フィブリン形成が10秒後まで開始しないトロンビン時間試験におけるよりもはるかに早い。さらに、Clauss試験では、フィブリン形成の速度は、少なくとも比較的高濃度のサンプルにおいて、トロンビン時間試験におけるよりも大きい。したがって、Clauss試験における高いフィブリノゲン濃度を有するサンプルについての反応曲線は、トロンビン時間試験と比較した、短い遅滞期、急な傾き、および比較的急速に到達したプラトー期により区別される。トロンビン時間試験と比較して、Clauss試験における低いフィブリノゲン濃度を有するサンプルについての反応曲線は、同様に、短い遅滞期、穏やかな傾き、および通常は測定が完了して初めて開始する程度までの遅いプラトー期を示す。対照的に、トロンビン時間の場合、プラトー期ははるかに弱いか、またはそれは全く適用不可でさえある。
【0008】
フィブリノゲンを決定するための別の方法は、いわゆる「導出されたフィブリノゲン」の決定、すなわち、トロンボプラスチン時間の決定から導出されたフィブリノゲンの決定である。これは、血漿サンプルを凝固活性化剤としてのトロンボプラスチン(例えば、脂質付加された組織因子)と混合すること、および比濁分析法または濁度測定法により測定されたフィブリン形成曲線からフィブリノゲン濃度(導出されたフィブリノゲン)を算出することにより達成される。
【0009】
しかし、記載されている公知の方法、特にClauss法は、測定範囲が非常に限定的であるという欠点を有する。Clauss法は、フィブリン形成の速度が実質的にフィブリノゲン濃度のみと相関するように、比較的高いトロンビン濃度を有するサンプルと接触させることを必要とするため、これは、ほんの少し上昇したフィブリノゲン含有量を有するサンプルが、極めて急速に開始する凝固を示すという欠点を有する。例えば、約5g/L(正常範囲:1.8~3.5g/L)のフィブリノゲン含有量を有するサンプルは、自動化分析システムについてさえカバーするのが難しい期間である、わずか3.8秒の凝固時間を有し得る。さらに高いフィブリノゲン濃度を有するサンプルは、測定前に希釈された場合(例えば、緩衝液中1:10または1:100)にのみ信頼性をもって分析することができる。しかし、仮に各サンプルが、上限のフィブリノゲン濃度範囲における測定範囲を拡張するために測定前に全般に希釈された場合、減少したフィブリノゲン含有量を有するサンプルの場合の反応物中のフィブリノゲンの量が非常に少ないため、不十分なまたは検出不能な凝血塊形成が生じ得ることから、これは、下限のフィブリノゲン濃度範囲における測定範囲を自動的に制限するであろう。したがって、最初の測定後に他のサンプル希釈度でのさらなる測定を行わなければならないため、典型的には、多くのサンプルを複数回測定することが必要である。このアプローチは時間がかかり、多大な費用を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Clauss,A.、Gerinnungsphysiologische Schnellmethode zur Bestimmung des Fibrinogens[Rapid coagulation-based method for determining fibrinogen]、1957、Acta haemat.17:237~246頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、典型的には希釈されたサンプルを少なくとも1つの凝固活性化剤と混合することにより反応混合物を提供すること、および反応混合物中のフィブリン形成を測定することを含む、フィブリノゲンを決定するための公知の方法と比較して、単一の測定において拡張された測定範囲をカバーし、故に、必要な複数の測定の数を明確に減らす、フィブリノゲン濃度を決定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
サンプル、またはサンプルおよび凝固活性化剤から構成される反応混合物に第XIII因子を添加することにより、より低いフィブリノゲン濃度範囲において測定範囲が拡張されることが見出された。このことは、今度は、多くの場合に、減少したフィブリノゲン含有量を有するサンプルの複数の測定を省くことを可能にする。
【0014】
第XIII因子は、凝血塊形成においてフィブリン糸を架橋する重要な役割を担う酵素として知られている。この架橋は、凝血塊を安定化する。健康な個体の血漿では、70%~140%の第XIII因子含有量が、典型的に見出される。
【0015】
したがって、本発明は、サンプル中のフィブリノゲンを決定する方法であって、以下:
a)サンプルを少なくとも1つの凝固活性化剤と混合することにより反応混合物を提供する工程、および
b)反応混合物中のフィブリン形成を測定する工程
を含み、第XIII因子が、反応混合物にさらに添加される、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましくは、反応混合物中の添加された第XIII因子の最終濃度が標準の5%~200%に相当するような量の第XIII因子が、反応混合物に添加される。標準の100%は、複数の健康なドナー由来の血漿プールにおいて測定される第XIII因子活性に相当する。
【0017】
例えば、単離されたヒト第XIII因子(ヒト血漿から精製されたまたは合成で生成された)または組換え第XIII因子(遺伝子技術により得られた)を、反応混合物に添加することができる。
【0018】
添加される第XIII因子は、(トロンビン)活性化可能なプロ酵素(第XIII因子)の形態で、またはすでに活性化されている酵素(第XIIIa因子)として添加することができる。
【0019】
好ましくは、第XIII因子はサンプルと混合され、その後に凝固活性化剤が反応混合物に添加される。あるいは、第XIII因子および凝固活性化剤は、例えば第XIII因子を含有する試薬および凝固活性化剤をサンプルに添加することにより、同時にサンプルと混合することができる。
【0020】
好適な凝固活性化剤は、ヒト血漿サンプルに添加された場合に血液凝固系の外因性および/または内因性経路を活性化する任意の物質または物質の混合物である。好ましい凝固活性化剤は、組織因子およびリン脂質(トロンボプラスチン)および塩化カルシウムの混合物である。組織因子は、哺乳動物(例えば、ヒトまたはウサギ)の脳、肺または胎盤組織に由来してもよく、または代わりに、組換えでまたは合成で生成することができる。別の好ましい凝固活性化剤は、トロンビン、例えばヒトまたはウシトロンビンである。あるいは、凝固活性化ヘビ毒、またはヘビ毒から単離された凝固活性化プロテアーゼも活性化剤として使用することができる。さらなる凝固活性化剤は、リン脂質および負に帯電した表面、例えばガラス、シリカ、カオリン、エラグ酸、セライトおよび血小板第3因子である。
【0021】
用語「サンプル」は、血漿または全血サンプル、好ましくはヒトの血漿または全血サンプル、または動物の血漿または全血サンプルを意味することが理解されるべきである。血漿または全血サンプルは、サンプルの自発的な、未制御の凝固を回避するためにサンプル収集中に添加される抗凝固剤、例えばクエン酸塩またはEDTAを含有し得る。
【0022】
反応混合物中のフィブリン形成の測定は、好ましくは、反応混合物の吸光度値を経時的に測定することにより実行される。吸光度値は、測光法により、すなわち、反応混合物を透過した光線の光減衰を測定することにより、または比濁分析法により、すなわち、反応混合物を透過した光線の散乱光成分を測定することにより測定することができる。理想的には、測定は、凝固活性化剤が反応混合物に添加された直後に開始され、吸光度値は、フィブリン形成が完了するまで連続的に測定される。
【0023】
その後、フィブリンは、決定された吸光度曲線を、例えば、吸光度の最大変化を決定すること、およびそれを、既知のフィブリノゲン濃度および吸光度の最大変化の割り当てに基づいて構築された検量線と比較するなど、当業者によく知られている評価法を使用して評価することにより定量的に決定される。
【0024】
本発明は、サンプル中のフィブリノゲンを決定する方法に使用するための試薬であって、その試薬が、少なくとも1つの凝固活性化剤および第XIII因子を含有する試薬をさらに提供する。試薬は、本発明によるフィブリノゲンの決定のための反応混合物の特に簡単な提供を可能にする。
【0025】
上にすでに記載したように、試薬に含まれる凝固活性化剤は、ヒト血漿サンプルに添加された場合に血液凝固系の外因性および/または内因性経路を活性化する任意の物質または物質の混合物であってもよい。好ましくは、試薬は、トロンビンおよびトロンボプラスチンからなる群からの凝固活性化剤を含有する。
【0026】
上にすでに記載したように、試薬にさらに含まれる第XIII因子は、単離されたヒト第XIII因子または組換え第XIII因子であってもよく、活性化可能なプロ酵素(第XIII因子)の形態で、またはすでに活性化されている酵素(第XIIIa因子)として使用することができる。
【0027】
本発明は、サンプル中のフィブリノゲンを決定する方法に使用するための試験キットをなおさらに提供する。この目的のために、本発明による試験キットは、i)少なくとも1つの凝固活性化剤を含有する第1の試薬、およびii)第XIII因子を含有する第2の試薬を含む。第1の試薬に含まれる凝固活性化剤および第2の試薬に含まれる第XIII因子は、それらのそれぞれの実施形態において上に記載したように具現化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】反応物への第XIII因子の添加なしの先行技術により決定された、フィブリノゲン濃度を決定するための検量線を示すグラフである。
【
図1B】反応物への第XIII因子の添加ありの本発明により決定された、フィブリノゲン濃度を決定するための検量線を示すグラフである。
【
図2A】先行技術により決定され、反応物への第XIII因子の添加なしで決定された、既知のフィブリノゲン濃度を有するサンプルのフィブリノゲン濃度(g/L)を示すグラフである。
【
図2B】本発明により決定され、反応物への第XIII因子の添加ありで決定された、既知のフィブリノゲン濃度を有するサンプルのフィブリノゲン濃度(g/L)を示すグラフである。
【実施例0029】
実施例1:外来性第XIII因子の存在下でのClaussフィブリノゲン試験
第XIII因子濃縮物フィブロガミン250(CSL Behring、Marburg、Germany)を、9g/Lのアルブミン、8g/LのNaClおよび5g/Lのグルコースを含有する水溶液中に溶解した。この溶液中の第XIII因子の濃度は、標準の7100%であった。
【0030】
この第XIII因子含有溶液を、凝固活性化剤としてトロンビンを含有する試薬(Dade Thrombin Reagent、Siemens Healthineers、Marburg、Germany)と混合した。上記の水溶液を使用して、第XIII因子なしの混合物も調製した。表1は、様々な成分の混合比を示す。
【0031】
【0032】
ヒト血漿サンプル(標準ヒト血漿)中のフィブリノゲンを決定するために、反応混合物を以下のように調製した:
サンプル24μL(Owrenのベロナール緩衝液で1:3に予め希釈)
37℃での10秒のインキュベーション
+Owrenのベロナール緩衝液76μL
37℃での180秒のインキュベーション
+第XIII因子あり/なしのトロンビン試薬混合物50μL。
【0033】
こうして調製した反応混合物中の第XIII因子の濃度は、標準の77.8%および標準の0%(第XIII因子の添加なし)であった。
【0034】
反応混合物において、吸収を405nmにて連続的に測定し、反応速度(mA/s)を0秒から70秒の間の範囲で決定した。
【0035】
最初に、2つの検量線を決定した。このために、Owrenのベロナール緩衝液で希釈した0.25、0.37および0.49g/Lのフィブリノゲン濃度を有する標準ヒト血漿サンプルを、それぞれ、第XIII因子の添加なしのフィブリノゲン決定試験において(先行技術、
図1A)、および第XIII因子の添加ありのフィブリノゲン決定試験において(本発明による、
図1B)、10回測定した。濃度レベル0.25、0.37および0.49g/Lのフィブリノゲンは、標準ヒト血漿中の公表されたフィブリノゲン値を考慮に入れて確立した。10回の決定からの平均値を、検量線についての支持点として使用する(
図1Aおよび1B)。
【0036】
その後、既知のフィブリノゲン濃度(0.25、0.37および0.49g/L)を有する3つの血漿サンプルを、それぞれ、第XIII因子の添加なしのフィブリノゲン決定試験において(先行技術、
図2A)、および第XIII因子の添加ありのフィブリノゲン決定試験において(本発明による、
図2B)、10回測定した。生の値を、
図1の検量線を使用して評価し、変動係数を、それぞれの10回の決定について決定した。
【0037】
図1Aから、第XIII因子の添加なしでは、0.25g/Lのフィブリノゲンのより低い較正点は、0mA/sの反応速度と非常に近いことが分かる。個々の値は、負の範囲にある(吸光度低下)。10回の決定を平均した場合にのみ、0.2mA/sの正の値が得られる。生の値が重複範囲を有するため、0.37g/Lのフィブリノゲンにおける較正点からの、0.25g/Lのフィブリノゲンにおける較正点の明らかな統計的区別はできないことが分かる。対照的に、第XIII因子が添加された場合、傾きの値(mA/s)のレベルは増加し、もはや重複範囲がないため(
図1B)、0.37g/Lにおける較正点は、0.25g/Lにおける較正点から明らかに区別できる。
【0038】
図2は、
図1の検量線を使用した、測定した生の値の評価を示す。第XIII因子の添加なしでは、0.25g/Lのフィブリノゲンの公称値を有するサンプルは、0.37g/Lのフィブリノゲンの公称値を有するサンプルからのばらつき範囲と重複する広いばらつき範囲を有する(
図2A)。第XIII因子の添加の場合、値のばらつきは、より小さく、0.25g/Lのフィブリノゲンを含有するサンプルは、0.37g/Lのフィブリノゲンを含有するサンプルから明らかに区別できる(
図2B)。変動係数は、第XIII因子の添加ありで、第XIII因子の添加なしよりも実質的に低い。
【0039】
この実施例では、第XIII因子の添加は、0.25g/Lのフィブリノゲンの測定範囲の下端をもたらし、一方、第XIII因子の添加なしでは、0.37g/Lのフィブリノゲンの下限測定範囲のみが可能であろう。したがって、反応混合物への第XIII因子の添加は、測定範囲の拡張を可能にし、そのため、本発明による方法は、低いフィブリノゲン濃度を有するより多くのサンプルにおいてフィブリノゲン濃度の信頼できる決定のために使用することができる。