(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095615
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用の高分子電解質及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20240703BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240703BHJP
C08F 30/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
C08F30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220641
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0187867
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522151617
【氏名又は名称】エスケー オン カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ミュン ス
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ゴ ヒョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ スン ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ ハン ソル
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョン レ
(72)【発明者】
【氏名】イ ホン ウォン
【テーマコード(参考)】
4J100
5H029
【Fターム(参考)】
4J100AL66P
4J100BA02P
4J100BA63P
4J100BB07P
4J100BC43P
4J100JA45
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM16
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】優れた難燃性、イオン伝導度および高電圧安定性を有するリチウム二次電池を提供すること。
【解決手段】本開示の実施形態のリチウム二次電池用の高分子電解質は、フッ素系溶媒と、リチウム塩と、リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子とを含み、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%である。これにより、高分子電解質を含むリチウム二次電池の難燃性およびイオン伝導度を向上させることができ、また高電圧安定性を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系溶媒と、
リチウム塩と、
リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子とを含み、
フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%である、リチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項2】
酸素含有量が7.3~30重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項3】
前記難燃性高分子は芳香族環を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項4】
前記難燃性高分子は、(メタ)アクリレート基から誘導された部分(moiety)を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項5】
前記難燃性高分子は、下記化学式1で表される第1構造単位と、下記化学式3で表される第3構造単位とを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化1】
(化学式1中、R
1~R
4はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R
1~R
4の少なくとも1つはフッ素原子であり、aは1~10の整数である。)
【化2】
(化学式3中、R
aは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基またはこれらの組み合わせであり、nは0~5の整数である。)
【請求項6】
前記難燃性高分子は、下記化学式4で表される構造単位を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化3】
(化学式4中、R
9~R
16はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R
9~R
16の少なくとも1つはフッ素原子であり、c及びdはそれぞれ独立して1~10の整数である。)
【請求項7】
前記難燃性高分子は、下記化学式5で表される構造単位を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化4】
(化学式5中、R
17及びR
18はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R
19~R
26はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R
19~R
26の少なくとも1つはフッ素原子であり、e及びfはそれぞれ独立して1~10の整数である。)
【請求項8】
前記難燃性高分子は、下記化学式6で表される第4構造単位と、下記化学式7で表される第5構造単位とを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化5】
(化学式6中、R
27及びR
28はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R
27及びR
28の少なくとも1つはフッ素原子である。)
【化6】
【請求項9】
前記難燃性高分子は、下記化学式8で表される構造単位を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化7】
(化学式8中、R
29~R
40はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R
29~R
40の少なくとも1つはフッ素原子である。)
【請求項10】
前記難燃性高分子は、下記化学式9で表される構造単位を含む、請求項9に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化8】
(化学式9中、R
41~R
46はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R
47~R
58はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R
47~R
58の少なくとも1つはフッ素原子であり、p1~p6はそれぞれ独立して1~10の整数である。)
【請求項11】
前記フッ素系溶媒は、フッ素含有環状カーボネートおよびフッ素含有線状カーボネートを1:9~3:7の体積比で含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項12】
前記フッ素含有環状カーボネートは、下記化学式10で表される構造を有する、請求項11に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化9】
(化学式10中、R
59~R
62はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であり、R
59~R
62の少なくとも1つはフッ素原子、またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基である。)
【請求項13】
前記フッ素含有環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、およびトリフルオロエチレンカーボネート(TFEC)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項11に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項14】
前記フッ素含有線状カーボネートは、下記化学式11で表される構造を有する、請求項11に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【化10】
(化学式11中、R
63及びR
64はそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であり、R
63及びR
64の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基である。)
【請求項15】
前記フッ素含有線状カーボネートは、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)、エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(ETFEC)、プロピル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(PTFEC)、メチル2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-イソプロピルカーボネート(MHFPC)、エチル2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-イソプロピルカーボネート(EHFPC)およびジ-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(DTFEC)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項11に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項16】
前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiFSI、LiTFSI、LiSO3CF3、LiBOB、LiFOB、LiDFOB、LiDFBP、LiTFOP、LiPO2F2、LiCl、LiBr、LiI、LiB10Cl10、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiSCNおよびLiC(CF3SO2)3からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項17】
前記高分子電解質の全重量に対して、前記フッ素系溶媒の10~90重量%、前記リチウム塩の5~20重量%、および前記難燃性高分子の2.5~80重量%を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質。
【請求項18】
フッ素系溶媒と、
リチウム塩と、
リンおよびフッ素を含有する難燃性モノマーとを含み、
フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%である、リチウム二次電池用の高分子電解質用組成物。
【請求項19】
ケースと、
前記ケース内に収容される正極および負極を含む電極組立体と、
前記ケース内に注入される請求項1~17のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用の高分子電解質とを含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウム二次電池用の高分子電解質及びそれを含むリチウム二次電池に関し、より詳しくは、異種成分を含むリチウム二次電池用の高分子電解質及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電と放電の繰り返しが可能な電池であり、情報通信およびディスプレイ産業の発展につれてカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器の動力源として広く適用されている。また、最近では、ハイブリッド自動車のような環境に優しい自動車の動力源としても、二次電池を含む電池パックが開発および適用されている。
【0003】
二次電池としては、例えば、リチウム二次電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などが挙げられる。中でもリチウム二次電池は、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0004】
例えば、リチウム二次電池は、正極、負極及び分離膜(セパレーター)を含む電極組立体と、前記電極組立体を含浸させる電解質とを含むことができる。前記リチウム二次電池は、前記電極組立体および電解質を収容する、例えばパウチ状の外装材をさらに含むことができる。
【0005】
リチウム二次電池に含まれる電解質が液体の場合には、漏液および爆発の危険性があるため、安全性を向上させるためにフッ素含有溶媒およびフッ素含有高分子を含む電解質を用いることができる。しかし、フッ素含有溶媒およびフッ素含有高分子は燃焼遮断能力が低い可能性がある。
【0006】
例えば、韓国公開特許第10-2019-0062228号では、フッ素系の有機溶媒およびフッ素含有ポリマーを含む電解質を開示しているが、前述の問題点については十分に認識していない。そこで、リチウム二次電池の難燃性を改善するために、電解質の開発が絶えず求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の1つの課題は、リチウム二次電池に、優れた難燃性およびイオン伝導度を提供できる高分子電解質を提供することである。
【0008】
本開示の1つの課題は、リチウム二次電池に、優れた高電圧安定性を提供できる高分子電解質を提供することである。
【0009】
本開示の1つの課題は、前記電解質を含むことにより、優れた難燃性およびイオン伝導度を有するリチウム二次電池を提供することである。
【0010】
本開示の1つの課題は、前記電解質を含むことにより、優れた高電圧安定性を有するリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池用の高分子電解質は、フッ素系溶媒と、リチウム塩と、リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子とを含み、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質は、酸素含有量が7. 3~30重量%であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質は、芳香族環を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、(メタ)アクリレート基から誘導された部分(moiety)を含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式1で表される第1構造単位と、下記化学式3で表される第3構造単位とを含むことができる。
【0016】
【0017】
化学式1中、R1~R4はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R1~R4の少なくとも1つはフッ素原子であり、aは1~10の整数であってもよい。
【0018】
【0019】
化学式3中、Raは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基またはこれらの組み合わせであり、nは0~5の整数であってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式4で表される構造単位を含むことができる。
【0021】
【0022】
化学式4中、R9~R16はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R9~R16の少なくとも1つはフッ素原子であり、c及びdはそれぞれ独立して1~10の整数であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式5で表される構造単位を含むことができる。
【0024】
【0025】
化学式5中、R17及びR18はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R19~R26はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R19~R26の少なくとも1つはフッ素原子であり、e及びfはそれぞれ独立して1~10の整数であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式6で表される第4構造単位と、下記化学式7で表される第5構造単位とを含むことができる。
【0027】
【0028】
化学式6中、R27及びR28はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R27及びR28の少なくとも1つはフッ素原子であってもよい。
【0029】
【0030】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式8で表される構造単位を含むことができる。
【0031】
【0032】
化学式8中、R29~R40はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R29~R40の少なくとも1つはフッ素原子であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式9で表される構造単位を含むことができる。
【0034】
【0035】
化学式9中、R41~R46はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R47~R58はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R47~R58の少なくとも1つはフッ素原子であり、p1~p6はそれぞれ独立して1~10の整数であってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記フッ素系溶媒は、フッ素含有環状カーボネートおよびフッ素含有線状カーボネートを1:9~3:7の体積比で含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有環状カーボネートは、下記化学式10で表される構造を有することができる。
【0038】
【0039】
化学式10中、R59~R62はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であり、R59~R62の少なくとも1つはフッ素原子、またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、およびトリフルオロエチレンカーボネート(TFEC)からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有線状カーボネートは、下記化学式11で表される構造を有することができる。
【0042】
【0043】
化学式11中、R63及びR64はそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であり、R63及びR64の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有線状カーボネートは、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)、エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(ETFEC)、プロピル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(PTFEC)、メチル2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-イソプロピルカーボネート(MHFPC)、エチル2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-イソプロピルカーボネート(EHFPC)、およびジ-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(DTFEC)からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiFSI、LiTFSI、LiSO3CF3、LiBOB、LiFOB、LiDFOB、LiDFBP、LiTFOP、LiPO2F2、LiCl、LiBr、LiI、LiB10Cl10、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiSCNおよびLiC(CF3SO2)3からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質の全重量に対して、前記フッ素系溶媒の10~90重量%、前記リチウム塩の5~20重量%、および前記難燃性高分子の2. 5~80重量%を含むことができる。
【0047】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池用の高分子電解質用組成物は、フッ素系溶媒と、リチウム塩と、リンおよびフッ素を含有する難燃性モノマーとを含み、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%である。
【0048】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池は、ケースと、前記ケース内に収容される正極および負極を含む電極組立体と、前記ケース内に注入される前述の実施形態のリチウム二次電池用の高分子電解質とを含む。
【発明の効果】
【0049】
本開示の例示的な実施形態によると、リチウム二次電池用の高分子電解質は、リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子およびフッ素系溶媒を含み、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%であってもよい。これにより、前記電解質を含むリチウム二次電池の難燃性およびイオン伝導度を向上させることができ、高電圧安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1及び比較例1~3により製造された電解質の製剤および流動性を評価した写真である。
【
図4】
図4は、実施例1及び比較例1~3により製造された電解質の難燃性を評価した写真である。
【
図5】
図5は、実施例1及び比較例1~3により製造されたリチウム二次電池の高電圧安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものにすぎず、本発明の限定を意図したものではない。
【0052】
本明細書で使用される単数形は、文脈で特に指示がない限り、複数形も含む。
【0053】
以下、本明細書で特に定義がない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるというのは、他の部分の「直上に」ある場合だけでなく、その途中に別の部分がある場合も含むことができる。
【0054】
以下、本明細書で特に定義がない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
【0055】
本明細書の用語「A及び/又はB」とは、AとBを同時に含む態様を意味するものであってもよく、A及びBの中で選択された態様を意味するものであってもよい。
【0056】
本明細書で「重合体」は、オリゴマーを含み、単独重合体と共重合体を含む。前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、架橋共重合体、またはこれらのすべてを含むものであってもよい。
【0057】
本明細書で「アルキル」は、1つの水素の除去によって脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖または分岐鎖の形態の両方を含むことができる。前記アルキルは、1~10個の炭素原子、具体的には1~7個の炭素原子、より具体的には1~5個の炭素原子、さらに具体的には1~3個の炭素原子を有することができる。前記アルキルは、一例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチルヘキシルなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本明細書で「アリール」とは、1つの水素の除去によって芳香族環から誘導された有機ラジカルであり、前記芳香族環は各環に、適切には4~7個、具体的には5または6個の環原子を含む単一または融合環系を含み、複数のアリールが単結合で連結されている形態まで含むことができる。一例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
以下、本明細書で特に定義がない限り、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」または「アクリル」の両方を含む意味で使用することができる。
【0060】
本明細書で「高分子電解質」とは、全固体状態の電解質だけでなく、高分子ベースの電解質に電解液が含まれる「ゲルポリマー電解質」を意味し得る。例えば、前記ゲルポリマー電解質は、製造方法によって、高分子マトリックス製造後に電解液をスウェリングする形態(Physical gel)、または電解液とモノマーが混合された組成物を硬化して製造する形態(Chemical gel)であってもよい。
【0061】
本明細書で「難燃性」とは、連鎖燃焼反応を遮断する燃焼遮断能力を意味し得る。
【0062】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解する一助となる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項のみに限定されて解釈されるものではない。
【0063】
一実施形態は、フッ素系溶媒と、リチウム塩と、リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子とを含み、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%であるリチウム二次電池用の高分子電解質を提供する。また、他の実施形態は、前記リチウム二次電池用の高分子電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0064】
これにより、リチウム二次電池の難燃性およびイオン伝導度を向上させることができるとともに、高電圧安定性を向上させることができる。
【0065】
<リチウム二次電池用の高分子電解質>
例示的な実施形態によるリチウム二次電池用の高分子電解質(以下、「高分子電解質」と略記することもある。)は、フッ素系溶媒と、リチウム塩と、リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子とを含み、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2. 3~7.5重量%であってもよい。
【0066】
前記フッ素系溶媒を含むことにより、引火点が高く、耐化学性、熱特性及び電気化学的安定性が高く、安定した電極-電解質界面(LiFまたはF-rich layer)を形成できる高分子電解質を提供することができる。例えば、前記フッ素系溶媒は、フッ素含有環状カーボネートおよびフッ素含有線状カーボネートを含むことができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有環状カーボネートは、下記化学式10で表すことができる。
【0068】
【0069】
化学式10中、R59~R62はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であり、R59~R62の少なくとも1つはフッ素原子、またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0070】
例えば、R59~R62はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R59~R62の少なくとも1つはフッ素原子であってもよい。
【0071】
例えば、R59~R62のいずれか1つがフッ素原子であってもよく、R59~R62のいずれか2つがフッ素原子であってもよく、R59~R62のいずれか3つがフッ素原子であってもよく、R59~R62の全てがフッ素原子であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、およびトリフルオロエチレンカーボネート(TFEC)からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0073】
一実施形態では、前記フッ素含有環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有線状カーボネートは、下記化学式11で表される構造を有することができる。
【0075】
【化12】
化学式11中、R
63及びR
64はそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基またはフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基であり、R
63及びR
64の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基であってもよい。
【0076】
例えば、前記R63及びR64はそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルキル基、メチル基若しくはエチル基、またはメチル基であってもよい。
【0077】
例えば、前記R63及びR64は、それぞれ独立してフッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキル基、フッ素原子で置換された炭素数1~4のアルキル基、フッ素原子で置換された炭素数1~3のアルキル基、フッ素原子で置換されたメチル基若しくはエチル基、またはフッ素原子で置換されたメチル基であってもよい。ここで、前記置換されたフッ素原子の数は、1つまたは2つ以上であってもよく、水素原子がフッ素原子で全て置換された過フッ化アルキル基であってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記フッ素含有線状カーボネートは、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)、エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(ETFEC)、プロピル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(PTFEC)、メチル2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-イソプロピルカーボネート(MHFPC)、エチル2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-イソプロピルカーボネート(EHFPC)、およびジ-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(DTFEC)からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0079】
一実施形態では、前記フッ素含有線状カーボネートは、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)を含むことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記フッ素系溶媒は、前記フッ素含有環状カーボネートおよび前記フッ素含有線状カーボネートを1:9~3:7の体積比で含むことができる。例えば、前記体積比の範囲は、1:9~3:7、1.5:8.5~2.5:7.5、2:8~3:7、または2:8~2.5:7.5であってもよい。前記範囲内では、前記高分子電解質全体におけるフッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%であり、酸素含有量が7.3~30.0重量%であってもよい。
【0081】
これにより、前記高分子電解質を含むリチウム二次電池の難燃性および高電圧安定性をさらに向上させることができる。
【0082】
一実施形態では、前記フッ素系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)およびメチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)を2:8~3:7の体積比で含むことができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiFSI、LiTFSI、LiSO3CF3、LiBOB、LiFOB、LiDFOB、LiDFBP、LiTFOP、LiPO2F2、LiCl、LiBr、LiI、LiB10Cl10、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiSCNおよびLiC(CF3SO2)3からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0084】
一実施形態では、前記リチウム塩はLiPF6を含むことができる。
【0085】
前記フッ素系溶媒に溶解した前記リチウム塩の濃度は、0.5M~3Mであってもよい。例えば、前記リチウム塩の濃度は、0.5M~3M、0.8M~1.5M、または0.8M~1.2Mであってもよい。前記範囲内では、リチウムイオン及び/又は電子をより円滑に移動させることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は芳香族環を含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、(メタ)アクリレート基から誘導された部分(moiety)を含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、フッ素化ホスホネート、フッ素化ホスファゼン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子がフッ素化ホスホネートを含む場合、前記難燃性高分子は、下記化学式1で表される第1構造単位と、下記化学式3で表される第3構造単位とを含むことができる。例えば、前記難燃性高分子は、さらに下記化学式2で表される第2構造単位を含むことができる。
【0090】
【0091】
化学式1中、R1~R4はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R1~R4の少なくとも1つはフッ素原子であり、aは1~10の整数であってもよい。
【0092】
例えば、前記R1~R4の少なくとも2つはフッ素原子であってもよく、具体的には、前記R1~R4はフッ素原子であってもよい。
【0093】
例えば、前記aは、1~8の整数、1~5の整数、1~3の整数、または2の整数であってもよい。
【0094】
【化14】
化学式2中、R
5~R
8はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R
5~R
8の少なくとも1つはフッ素原子であり、bは1~10の整数であってもよい。
【0095】
例えば、前記R5~R8の少なくとも2つはフッ素原子であってもよく、具体的には、前記R5~R8はフッ素原子であってもよい。
【0096】
例えば、前記bは、1~8の整数、1~5の整数、1~3の整数、または2の整数であってもよい。
【0097】
【0098】
前記化学式3中、Raは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基またはこれらの組み合わせであり、nは0~5の整数である。
【0099】
前記nは0~3の整数であってもよく、具体的には、前記nは0または1であってもよく、より具体的には、前記nは0であってもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式4で表される構造単位を含むことができる。
【0101】
【0102】
化学式4中、R9~R16はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R9~R16の少なくとも1つはフッ素原子であり、c及びdはそれぞれ独立して1~10の整数であってもよい。
【0103】
例えば、前記R9~R16はフッ素原子であってもよい。
【0104】
例えば、前記のc及びdは、それぞれ独立して、1~8の整数、1~5の整数、1~3の整数、または2の整数であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子がフッ素化ホスホネートを含む場合、前記難燃性高分子は、下記化学式5で表される構造単位を含むことができる。
【0106】
【0107】
化学式5中、R17及びR18はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R19~R26はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R19~R26の少なくとも1つはフッ素原子であり、e及びfはそれぞれ独立して1~10の整数であってもよい。
【0108】
例えば、前記R17及びR18は互いに同一でも異なっていてもよく、具体的には全てが水素原子であってもよい。
【0109】
例えば、前記R19~R26の少なくとも2つはフッ素原子であってもよく、前記R19~R26の少なくとも4つはフッ素原子であってもよく、具体的には、前記R19~R26はフッ素原子であってもよい。
【0110】
例えば、前記のe及びfは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して1~8の整数、1~5の整数、1~3の整数、または2の整数であってもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子がフッ素化ホスファゼンを含む場合、前記難燃性高分子は、下記化学式6で表される第4構造単位と、下記化学式7で表される第5構造単位とを含むことができる。
【0112】
【0113】
化学式6中、R27及びR28はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R27及びR28の少なくとも1つはフッ素原子であってもよい。
【0114】
例えば、前記のR27及びR28はフッ素原子であってもよい。
【0115】
【0116】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子がフッ素化ホスファゼンを含む場合、前記難燃性高分子は下記化学式8で表される構造単位を含むことができる。
【0117】
【0118】
化学式8中、R29~R40はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R29~R40の少なくとも1つはフッ素原子であってもよい。
【0119】
例えば、前記R29~R40の少なくとも2つはフッ素原子であってもよく、R29~R40の少なくとも6つはフッ素原子であってよく、前記R29~R40はフッ素原子であってもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、前記難燃性高分子は、下記化学式9で表される構造単位を含むことができる。
【0121】
【0122】
化学式9中、前記R41~R46はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、R47~R58はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R47~R58の少なくとも1つはフッ素原子であり、p1~p6はそれぞれ独立して1~10の整数であってもよい。
【0123】
例えば、前記R41~R46は互いに同一でも異なっていてもよく、具体的には全てが水素原子であってもよい。
【0124】
例えば、前記R47~R58の少なくとも2つはフッ素原子であってもよく、R47~R58の少なくとも6つはフッ素原子であってもよく、前記R47~R58はフッ素原子であってもよい。
【0125】
例えば、前記p1~p6は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して1~8の整数、1~5の整数、1~3の整数、または2の整数であってもよい。
【0126】
前述のような難燃性高分子を含むことにより、前記高分子電解質を含むリチウム二次電池の難燃性および高電圧安定性をさらに向上させることができる。
【0127】
リチウム二次電池の燃焼時には高活性のHラジカルおよびOHラジカルが形成され、前記ラジカルは連鎖燃焼反応を引き起こし得る。特定の理論に拘束されるわけではないが、一実施形態による難燃性高分子は、Pラジカルを放出して前記高活性のHラジカルおよびOHラジカルを捕捉することによって連鎖燃焼反応を遮断する燃焼遮断能力を有し得る。
【0128】
また、特定の理論に拘束されるわけではないが、一実施形態による難燃性高分子は、高温分解時にFラジカルを生成してOHラジカルを捕捉することができ、引火点が高く、耐化学性、熱特性および電気化学的安定性が高く、安定した電極-電解質界面(LiFまたはF-rich layer)を形成することができる。
【0129】
また、特定の理論に拘束されるわけではないが、前述の構造単位を含む難燃性高分子は、リンおよびフッ素を前記のようにすべて含むことにより、リンの電極および電解質の副反応による抵抗増加を抑制しながらも燃焼遮断能力が高く、前記高分子電解質の安全性をさらに向上させつつ、より安定した電極-電解質界面を形成することができる。また、モノマーが重合して高分子ネットワークを形成することにより、前記高分子電解質の分解をより抑制することができる。
【0130】
これにより、前述のリンおよびフッ素を含有する難燃性高分子を含む前記高分子電解質は、難燃性およびイオン伝導度が向上したリチウム二次電池を製造するのに使用することができる。
【0131】
また、リチウム二次電池が高電圧で駆動されると、電極の表面で電解質が酸化分解して電極および電解質の副反応が誘発されることにより、リチウムイオンが減少し、電解質が枯渇する可能性がある。前述のように、前記難燃性高分子は、安定した電極-電解質界面を形成することができ、前記高分子電解質の分解を抑制することができる。これにより、前記難燃性高分子を含む前記高分子電解質は、高電圧安定性が向上したリチウム二次電池を提供するのに使用することができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質は、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%であってもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質は、フッ素含有量が35~60重量%であってもよい。例えば、前記フッ素含有量は、35~60重量%、36~50重量%、または36.5~40重量%であってもよい。前記範囲内では、前記高分子電解質がリチウム塩を十分に解離できるので、リチウム二次電池のイオン伝導度を向上させることができる。また、安定した電極-電解質界面を形成し、高分子電解質の分解を抑制することができるので、リチウム二次電池の高電圧安定性をより向上させることができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質は、リン含有量が2.3~7.5重量%であってもよい。例えば、前記リン含有量は、2.3~7.5重量%、2.3~5.5重量%、または2.4~4.0重量%であってもよい。前記範囲内では、前記高分子電解質の燃焼遮断能力が高く、リチウム二次電池の難燃性を向上させることができる。
【0135】
具体的には、前記のフッ素及びリンの含有量が前述の範囲未満であると、高分子電解質の燃焼遮断能力が低下し、リチウム二次電池の難燃性が劣化することがある。また、安定した電極-電解質界面を形成する能力と、前記高分子電解質の分解を抑制する能力が低下して、リチウム二次電池の高電圧安定性が劣化することがある。また、前記のフッ素及びリン含有量が前述の範囲を超えると、リチウム塩が溶解および解離しないことがあり、イオン伝導度が劣化することがある。
【0136】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質は、酸素含有量が7.3~30重量%であってもよい。例えば、前記酸素含有量は、7.3~30重量%、15~30重量%、または25~30重量%であってもよい。前記範囲内では、リチウム二次電池の難燃性およびイオン伝導度をより向上させることができ、高電圧安定性をより向上させることができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質の全重量に対して、前記フッ素系溶媒の10~90重量%、前記リチウム塩の5~20重量%、前記難燃性高分子の2.5~80重量%を含むことができる。
【0138】
例えば、前記フッ素系溶媒は、10~90重量%、30~90重量%、50~88重量%、70~88重量%、または80~85重量%が含まれてもよい。前記リチウム塩は、5~20重量%、7~15重量%、または10~12重量%が含まれてもよい。前記難燃性高分子は、2.5~80重量%、3~70重量%、3~50重量%、4~30重量%、または5~10重量%が含まれてもよい。
【0139】
前記範囲内では、リチウム二次電池の難燃性およびイオン伝導度をより向上させることができ、また高電圧安定性をより向上させることができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質のイオン伝導度は5×10-4S/cm以上であってもよい。
【0141】
一般に、高分子電解質は液体電解質に比べてイオン伝導度が低くなり得る。しかし、前述の高分子電解質は、リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子を含むことにより、電極および電解質の副反応によるリチウムイオンの減少を遮断することができる。これにより、通常の高分子電解質を用いる場合よりもイオン伝導度が高く、リチウムイオンの拡散特性を向上させることができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質を構成する各元素、例えば、フッ素、リンおよび酸素の含有量は、元素分析(Elemental Analyzer,EA)、誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectroscopy,ICP-OES)、イオンクロマトグラフィー(Ion Chromatography,IC)および核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance,NMR)を総合的に用いて測定することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、前記高分子電解質は、水を含まない非水系電解質であってもよい。
【0144】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池用の高分子電解質用組成物は、フッ素系溶媒と、リチウム塩と、リンおよびフッ素を含有する難燃性モノマーとを含み、フッ素含有量が35~60重量%であり、リン含有量が2.3~7.5重量%であってもよい。
【0145】
前記のフッ素系溶媒およびリチウム塩については、リチウム二次電池用の高分子電解質に関する内容の中でフッ素系溶媒およびリチウム塩で前述した通りである。
【0146】
いくつかの実施形態では、前記難燃性モノマーは、下記化学式12で表される構造を有するフッ素化ホスホネート、または下記化学式13で表される構造を有するフッ素化ホスファゼンを含むことができる。
【0147】
【0148】
化学式12中、R65~R72はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R65~R72の少なくとも1つはフッ素原子であり、g及びhはそれぞれ独立して1~10の整数であり、R73~R76はそれぞれ独立して水素原子または重合性基であり、R73~R76の少なくとも2つは重合性基であり、前記重合性基は、アクリロイル基またはメタクリロイル基であってもよい。
【0149】
例えば、前記R65~R72の少なくとも2つはフッ素原子であってもよく、前記R65~R72の少なくとも4つはフッ素原子であってもよく、具体的には、前記R65~R72はフッ素原子であってもよい。
【0150】
例えば、前記のg及びhは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して1~8の整数、1~5の整数、1~3の整数、または2の整数であってもよい。
【0151】
例えば、前記R73~R76のいずれか2つが重合性基であってもよく、前記R73~R76のいずれか3つが重合性基であってもよく、前記R73~R76の全てが重合性基であってもよい。前記重合性基は(メタ)アクリロイル基であってもよい。
【0152】
【0153】
化学式13中、R77~R88はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子であり、R77~R88の少なくとも1つはフッ素原子であり、R89~R94はそれぞれ独立して水素原子または重合性基であり、R89~R94の少なくとも2つは重合性基であり、前記重合性基はアクリロイル基またはメタクリロイル基であってもよく、q1~q6はそれぞれ独立して1~10の整数であってもよい。
【0154】
例えば、前記R77~R88の少なくとも2つはフッ素原子であってもよく、前記R77~R88の少なくとも6つはフッ素原子であってもよく、前記R77~R88はフッ素原子であってもよい。
【0155】
例えば、前記R89~R94のいずれか2つが重合性基であってもよく、前記R89~R94のいずれか3つが重合性基であってもよく、前記R89~R94のいずれか4つが重合性基であってもよく、前記R89~R94のいずれか5つが重合性基であってもよく、前記R89~R94の全てが重合性基であってもよい。前記重合性基は、(メタ)アクリロイル基であってもよい。
【0156】
例えば、前記q1~q6は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して1~8の整数、1~5の整数、1~3の整数、または2の整数であってもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、前記難燃性モノマーを50~90℃で40分~70分間熱重合することによって難燃性高分子を得ることができる。例えば、前記難燃性高分子は、前述のフッ素化ホスホネート、フッ素化ホスファゼン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0158】
<リチウム二次電池>
図1及び
図2は、それぞれ例示的な実施形態によるリチウム二次電池を示す概略的な平面図および断面図である。
【0159】
図1及び
図2を参照すると、リチウム二次電池は、正極100および負極130を含む電極組立体150を含むことができる。電極組立体150は、ケース160内に、前述の例示的な実施形態による高分子電解質と共に収容することができる。例えば、電極組立体150は、正極100と負極130との間に介在する固体電解質140をさらに含むことができる。また、選択によって、電極組立体150は、さらに正極100と負極130との間に分離膜を含んでいてもよく、含まなくてもよい。
【0160】
正極100は、正極活物質を正極集電体105に塗布して形成した正極活物質層110を含むことができる。前記正極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション及びデインターカレーションすることができる化合物を含むことができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、複数の一次粒子が組立または凝集して実質的に1つの粒子に形成された二次粒子であってもよく、単一粒子の形態であってもよい。前記単一粒子の形態は、例えば、複数の一次粒子(例えば、10個超)が組立または凝集して実質的に1つの粒子に形成された二次粒子を排除したものを意味し得る。ただし、前記単一粒子の形態は、2~10個の範囲の単一粒子が互いに付着または密着して実質的に単一体の形態(例えば、単一粒子に変換された構造)を有することを排除するものではない。いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、二次粒子の形態と単一粒子の形態の両方を含むこともできる。
【0162】
例示的な実施形態では、前記正極活物質はリチウム-遷移金属酸化物を含むことができる。例えば、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物系(LiCoO2)、リチウムマンガン酸化物系(LiMn2O4)、リチウムニッケル酸化物系(LiNiO2)、リチウムリン酸鉄系(LFP)の正極活物質などのリチウム-遷移金属酸化物、またはこれらの遷移金属の一部が他の遷移金属で置換されたリチウム-遷移金属複合酸化物を含むことができる。
【0163】
例えば、前記リチウム-遷移金属酸化物は、ニッケル(Ni)を含み、さらにコバルト(Co)またはマンガン(Mn)からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。例えば、前記正極活物質は、NCM系正極活物質;Mn-rich系正極活物質;または、LLO(Li rich layered oxides,Over Lithiated Oxides,Over-lithiated layered oxide,OLO,LLOs)系正極活物質を含むことができる。例えば、前記リチウム-遷移金属酸化物は、下記の化学式14-1~14-3で表される構造を有することができる。
【0164】
LiaNibM1-bO2 ・・・化学式14-1
【0165】
前記化学式14-1中、0. 9≦a≦1. 2、b≧0. 5であり、MはNa、Mg、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、BaおよびZrの少なくとも1つである。具体的には、前記化学式14-1中、0. 95≦a≦1. 08であってもよく、bは、0. 6以上、0. 8以上、0. 8超、0. 9以上または0. 98以上であってもよい。具体的には、前記化学式14-1中、MはCo、MnまたはAlを含み、より具体的には、MはCoおよびMnを含み、選択によってAlをさらに含むことができる。
【0166】
pLi2MnO3・(1-p)LiqJO2・・・化学式14-2
【0167】
前記化学式14-2中、0<p<1であり、0.9≦q≦1.2であり、Jは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Zn、Ti、Al、MgおよびBからなる群より選択される1つ以上の元素であってもよい。
【0168】
Li1+xM1-xO2・・・化学式14-3
【0169】
前記化学式14-3中、0≦x≦0.4であり、MはNa、Mg、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、BaおよびZrの少なくとも1つである。具体的には、前記化学式14-3中、MはNi、Co、MnまたはAlを含み、より具体的には、Ni、CoおよびMnを含み、選択によってAlをさらに含むことができる。
【0170】
また、前記正極活物質は、LiFePO4の化学式で表されるリチウムリン酸鉄(LFP)系の正極活物質であってもよい。
【0171】
前記正極活物質は、溶媒中でバインダー、導電材及び/又は分散材などと混合および撹拌することにより、スラリーを製造することができる。前記スラリーを正極集電体105にコーティングし、圧縮および乾燥して、正極100を製造することができる。
【0172】
正極集電体105は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅またはこれらの合金を含むことができ、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むことができる。
【0173】
前記バインダーは、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの有機系バインダー、またはスチレン-ブタジエンラバー(SBR)などの水系バインダーを含むことができ、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤と共に用いることができる。例えば、正極バインダーとしては、PPC-LiTFSI系のバインダーを用いることができる。
【0174】
前記導電材は、活物質粒子間の電子移動を促進するために含むことができる。例えば、前記導電材は、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素系導電材及び/又はスズ、酸化スズ、酸化チタン、LaSrCoO3、LaSrMnO3等のペロブスカイト(perovskite)物質などを含む金属系導電材を含むことができる。
【0175】
負極130は、負極集電体125と、負極活物質を負極集電体125にコーティングして形成した負極活物質層120とを含むことができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、前記負極活物質として、人造黒鉛、天然黒鉛、非晶質炭素などの炭素系化合物またはシリコン(Si)系化合物を用いることができる。例えば、前記負極活物質としては、Pure Si、シリコン酸化物(SiOx;0<x<2)、炭化ケイ素(SiC)、または炭素コアおよびシリコンコート層を含むシリコン-炭素粒子を用いることができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、負極130は金属リチウムを含むことができる。例えば、前記負極活物質としては、金属リチウムまたはリチウム-金属合金を用いることができ、負極活物質層120は、負極集電体125上に配置されたリチウム金属箔(lithium metal foil)を含むことができる。
【0178】
負極集電体125は、例えば、金、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅またはこれらの合金を含むことができ、銅または銅合金を含むことができる。
【0179】
いくつかの実施形態では、前記負極活物質を溶媒中でバインダー、導電材及び/又は分散材などと混合および撹拌することにより、スラリーを製造することができる。前記スラリーを負極集電体125にコーティングし、圧縮および乾燥して、負極130を製造することができる。前記導電材としては、前述の物質と実質的に同一または類似の物質を使用することができる。
【0180】
例示的な実施形態では、負極用バインダーは、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、PPC-LiTFSIなどの有機系バインダー、またはSBRなどの水系バインダーを含み、CMCのような増粘剤と共に使用することができる。
【0181】
一方、前記リチウム二次電池は、無負極二次電池、すなわち、電池の組立過程において負極集電体125上に負極活物質層120を形成していない電池であってもよい。無負極リチウム二次電池を初期充電または初回充電すると、メイン正極活物質と犠牲正極活物質は脱リチウム化し、正極活物質から生成されたリチウムイオンは、負極集電体125上で還元され、リチウムメタル層または固体リチウム層のリチウム層を形成することができる。
【0182】
正極100と負極130との間には、固体電解質140を介在することができる。選択的には、正極100と負極130との間に分離膜を介在することができ、前記分離膜はエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを含むことができる。前記分離膜は、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などから形成された不織布を含むこともできる。
【0183】
いくつかの実施形態では、負極130の面積及び/又は体積は正極100よりも大きくてもよい。これにより、正極100から生成されたリチウムイオンが、例えば途中で析出することなく負極130に円滑に移動することができる。
【0184】
例示的な実施形態によると、正極100、負極130および固体電解質140によって電極セルが定義され、複数の電極セルが積層され、例えばゼリーロール(jelly roll)の形態の電極組立体150を形成することができる。例えば、固体電解質140の巻き取り(winding)、積層(lamination)、折り畳み(folding)などによって電極組立体150を形成することができる。
【0185】
選択的には、正極100、負極130および分離膜によって電極セルを定義することができ、前記分離膜の巻き取り(winding)、積層(lamination)、折り畳み(folding)などにより、ゼリーロールの形態の電極組立体150を形成することができる。
【0186】
電極組立体150をケース160内に電解質と共に収容することにより、リチウム二次電池を定義することができる。
【0187】
図1に示すように、各電極セルに属する正極集電体105および負極集電体125から、それぞれ電極タブ(正極タブおよび負極タブ)が突出してケース160の一側部まで延びることができる。前記電極タブは、ケース160の前記一側部と共に融着して、ケース160の外側に延長または露出する電極リード(正極リード107および負極リード127)を形成することができる。
【0188】
前記リチウム二次電池は、例えば、缶を用いた円筒型、角型、ポーチ(pouch)型またはコイン(coin)型などに製造することができる。
【0189】
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0190】
合成例
1.難燃性モノマーの製造
テトラヒドロフラン(THF)100mLにパーフルオロ-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジオール10g(34.00mmol)及びトリエチルアミン(TEA)4.13g(40.80mmol)を順に定量して反応器に投入した。前記反応器を0℃に冷却した後、THF15mLに溶解したアクリルクロライド2.8g(30.95mmol)を1時間かけてゆっくりと投入し、常温条件で18時間撹拌した。
【0191】
前記撹拌液からTEA-HCl塩を除去するためにろ過し、0.1N HCl水溶液およびNaHCO3水溶液でそれぞれ1回反応性除去およびH2O洗浄を行った。その後、真空乾燥して溶媒を除去し、ヘキサン/エチルアセテートでカラム精製して、中間体3.5gを得た。
【0192】
得られた中間体をジクロロメタン100mLに溶解後、TEA2.55g(25.2mmol)およびジクロロフェニルホスフィンオキシド0.98g(5.03mmol)を順次投入した。常温で24時間撹拌した後、0.1N HCl水溶液とNaHCO3水溶液でそれぞれ1回反応性除去およびH2O洗浄を行った。その後、ヘキサン/エチルアセテートでカラム精製し、下記化学式15で表される構造を有する難燃性モノマー(フッ素化ホスホネート)2.67gを得た。
【0193】
【0194】
実施例及び比較例
1.実施例1
フッ素系溶媒であるFECおよびMTFECをそれぞれ1:4の体積比で混合し、12時間撹拌して混合溶媒を準備した。前記混合溶媒に1M LiPF6を溶解し、12時間撹拌して電解液を調製した。調製した電解液と合成例で得られた難燃性モノマーを混合して30分間撹拌し、70℃で1時間加熱して高分子電解質を製造した。
【0195】
前記高分子電解質の全重量に対するフッ素系溶媒、リチウム塩および難燃性高分子の含有量を下記表1に示し、前記高分子電解質に含まれるフッ素、リン、酸素元素の含有量を表2に示す。
【0196】
2.比較例1
合成例で得られた難燃性モノマーの代わりに、下記化学式16で表される構造を有するPEGDA(ポリエチレングリコールジアクリレート)モノマーを使用した以外は、実施例1と同様にして高分子電解質を製造した。
【0197】
前記高分子電解質の全重量に対するフッ素系溶媒、リチウム塩および高分子の含有量を下記表1に示し、前記高分子電解質に含まれるフッ素、リン、酸素元素の含有量を表2に示す。
【0198】
【0199】
3.比較例2
合成例で得られた難燃性モノマーを使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてフッ素系溶媒およびリチウム塩を含む液体電解質を製造した。
前記電解質の全重量に対するフッ素系溶媒およびリチウム塩の含有量を下記表1に示し、前記電解質に含まれるフッ素、リン、酸素元素の含有量を表2に示す。
【0200】
4.比較例3
有機溶媒であるEC(エチレンカーボネート)およびEMC(エチルメチルカーボネート)をそれぞれ3:7の体積比で混合し、12時間撹拌して混合溶媒を準備した。前記混合溶媒に1M LiPF6を溶解し、12時間撹拌して液体電解質を製造した。
前記電解質の全重量に対する有機溶媒およびリチウム塩の含有量を下記表1に示し、前記電解質に含まれるフッ素、リン、酸素元素の含有量を表2に示す。
【0201】
5.比較例4
フッ素系溶媒として、FEC及びMTFECの代わりに、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)のみを使用した以外は、実施例1と同様にして高分子電解質を製造した。
前記高分子電解質の全重量に対するフッ素系溶媒、リチウム塩および難燃性高分子の含有量を下記表1に示し、前記高分子電解質に含まれるフッ素、リン、酸素元素の含有量を表2に示す。
【0202】
6.比較例5
フッ素系溶媒であるFEC及びMTFECを使用せずに、LiPF6及び合成例で得られた難燃性モノマーを混合して30分間撹拌した後、70℃で1時間加熱して高分子電解質を製造した。
前記高分子電解質の全重量に対するリチウム塩および難燃性高分子の含有量を下記表1に示し、前記高分子電解質に含まれるフッ素、リン、酸素元素の含有量を表2に示す。
【0203】
【0204】
【0205】
評価
評価1:製剤の評価
実施例および比較例による電解質の製剤および流動性を評価した。
【0206】
図3は、実施例1及び比較例1~3により製造された電解質の製剤および流動性を評価した写真である。
【0207】
図3を参照すると、実施例1及び比較例1は高分子電解質であり、流動性がないため、高分子電解質が入ったボトルをひっくり返しても前記高分子電解質が下がらなかった。また、比較例2及び3は液体電解質であり、流動性があるため、液体電解質が入ったボトルを引っくり返すと前記液体電解質が下に下がった。
【0208】
評価2:燃焼試験
実施例及び比較例による電解質をガラスフィルターに含浸させ、トーチで2秒間点火した後、燃焼様相を確認して難燃性を評価した。
【0209】
図4は、実施例1及び比較例1~3により製造された電解質の難燃性を評価した写真である。
【0210】
図4に示すように、発火源を除去した場合、実施例1は火が消え、比較例1は炎の大きさは小さいが短時間燃焼した。また、比較例2は燃焼持続時間が比較例3よりは短いが比較例1よりは長く、比較例3は燃焼持続時間が最も長かった。
評価結果を下記表3に示す。
【0211】
評価3:イオン伝導度の評価
イオン伝導度は、電気化学インピーダンス分光法(electrochemical impedance、spectroscopy、EIS)によって測定した。
【0212】
実施例1、比較例1、比較例4及び比較例5により製造された高分子電解質の両面にSS(stainless steel、Type 304)基板を接触させた後、サンプルの両面の電極を介して交流電圧を印加した。測定されたインピーダンス軌跡の半円や直線が実数軸と交わる交点Rから高分子電解質の抵抗を求め、製造された高分子電解質試片の断面積と厚さから、下記式よりイオン伝導度を計算した。
【0213】
【0214】
σはイオン伝導度、tは厚さ、Aは断面積、Rは電解質抵抗である。
評価結果を下記表4に示す。
【0215】
評価4:高電圧安定性の評価
1.リチウム二次電池の製造
前述の実施例1及び比較例1~3の電解質を用いて、リチウム二次電池を製造した。
(1)正極活物質としてのLi[Ni0.6Co0.2Mn0.2]O2、導電材としてのカーボンブラック、及びバインダーとしてのポリビニリデンフルオリド(PVdF)を92:5:3の重量比で混合してスラリーを製造した。前記スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布し、130℃で真空乾燥した。乾燥したスラリーを圧延して密度3. 2g/cm3のリチウム二次電池用正極を製造した。
【0216】
(2)前記製造された正極と対極(負極)であるリチウムメタル(厚さ100μm)との間に分離膜(ポリプロピレン、厚さ20μm)を介することにより、リチウムコインハーフセル(coin halfcell)を構成した。リチウムメタル/分離膜/正極の組み合わせをコインセルプレート(coin cell plate)に入れた。
【0217】
(3-1)実施例1及び比較例1の高分子電解質の場合には、前記電解液および難燃性モノマーの撹拌液50μlを前記コインセルプレートに注液し、キャップ(cap)を閉じてクランプ(clamping)した。70℃で1時間熱硬化を行い、12時間以上含浸することにより、リチウム二次電池を製造した。
【0218】
(3-2)比較例2及び3の場合には、液体電解質50μlを前記コインセルプレートに注液し、キャップ(cap)を閉じてクランプし、12時間以上含浸することにより、リチウム二次電池を製造した。
【0219】
2.CC-CV充電
前述の実施例1及び比較例1~3のリチウム二次電池に対して、4.2Vまで0.1C CC充電した後、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6及び4.7Vの各電圧で順次に10時間ずつCV充電しながら、電解質の分解態様を評価した。
【0220】
図5は、実施例1及び比較例1~3により製造されたリチウム二次電池の高電圧安定性を示すグラフである。
【0221】
図5から、経時により電圧が上昇するほど、電解質が分解して発生する電流の量が増加することを確認できる。これにより、実施例1は、比較例1~3に比べて高電圧下での電解質の分解が抑制され、比較例3は、比較例1及び2に比べて高電圧下で電解質が容易に分解されることが分かる。
【0222】
【0223】
【0224】
表2~表4、
図4及び
図5から分かるように、フッ素系溶媒と、リチウム塩と、リンおよびフッ素を含有する難燃性高分子とを含み、フッ素を35~60重量%、リンを2.3~7.5重量%の量で含むことにより、実施例1の高分子電解質は、比較例1~5の電解質に比べて、十分に固体化して流動性が低くて漏液しない固体電解質を含む二次電池を提供できるとともに、難燃性、イオン伝導度および高電圧安定性が向上した。
【符号の説明】
【0225】
100:正極
105:正極集電体
107:正極リード
110:正極活物質層
120:負極活物質層
125:負極集電体
127:負極リード
130:負極
140:固体電解質
150:電極組立体
160:ケース