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特開2024-95622乳化粒子の微細化剤、乳化安定性向上剤、乳化物の乳化安定性を向上させる方法、乳化物の製造方法および乳化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095622
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】乳化粒子の微細化剤、乳化安定性向上剤、乳化物の乳化安定性を向上させる方法、乳化物の製造方法および乳化物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240703BHJP
   A23D 7/005 20060101ALI20240703BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20240703BHJP
   C09K 23/56 20220101ALI20240703BHJP
   C09K 23/38 20220101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/34
A61Q19/00
A61K9/107
A61K47/26
A61K47/10
A23D7/005
A23L29/10
C09K23/56
C09K23/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221428
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2022211958
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593012228
【氏名又は名称】株式会社希松
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】木原 俊和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉純
(72)【発明者】
【氏名】小松 令以子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4C076
4C083
4D077
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DK04
4B026DK05
4B026DK10
4B026DL02
4B026DL03
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX04
4B026DX05
4B035LC05
4B035LC16
4B035LG05
4B035LG09
4B035LG11
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG17
4B035LG19
4B035LG54
4B035LK17
4B035LP01
4B035LP21
4C076AA17
4C076BB31
4C076DD01
4C076DD38
4C076DD67
4C076FF16
4C076FF43
4C083AC022
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC422
4C083AC442
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD212
4C083BB01
4C083BB11
4C083CC02
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE01
4C083FF05
4D077AA02
4D077AA04
4D077AA09
4D077BA07
4D077DC07Y
4D077DC15Y
4D077DD63Y
(57)【要約】
【課題】 乳化物の乳化安定性を高める技術を提供する。
【解決手段】 1-ケストースおよび多価アルコールを有効成分とする、乳化粒子の微細化剤。本発明によれば、乳化物における乳化粒子を小さくすることができる。よって、乳化物における乳化安定性を向上することができる。本発明の有効成分である1-ケストースおよび多価アルコールは、比較的少量を配合すれば乳化粒子を小さくすることができることから、製品設計の自由度を狭めない。すなわち、本発明は、様々な乳化物製品の安定性を向上することができる、汎用性の高い技術である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ケストースおよび多価アルコールを有効成分とする、乳化粒子の微細化剤。
【請求項2】
1-ケストースおよび多価アルコールを有効成分とする、乳化安定性向上剤。
【請求項3】
1-ケストースを有効成分とする、油中水滴型乳化物における乳化粒子の微細化剤。
【請求項4】
1-ケストースを有効成分とする、油中水滴型乳化物における乳化安定性向上剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の剤を原料として配合する工程を有する、乳化物の乳化安定性を向上させる方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の剤を原料として配合する工程を有する、乳化物の製造方法。
【請求項7】
下記(a)~(e)を含有する、乳化物;
(a)1-ケストース、
(b)多価アルコール、
(c)界面活性剤、
(d)油性成分、
(e)水。
【請求項8】
前記(a)1-ケストース1重量部に対して、前記(b)多価アルコールを0.08重量部以上24重量部以下含有する、請求項7に記載の乳化物。
【請求項9】
前記乳化物100質量%に対して、前記(a)1-ケストースおよび前記(b)多価アルコールを合計で0.75質量%以上含有する、請求項7に記載の乳化物。
【請求項10】
前記(b)多価アルコールが、二価アルコールおよび/または三価アルコールである、請求項7に記載の乳化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化粒子の微細化剤、乳化安定性向上剤、乳化物の乳化安定性を向上させる方法、乳化物の製造方法および乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化物は、化粧品、医薬品、食品等の分野において、クリーム類などに多用されている。一方、乳化物はしばしば、時間経過や温度などの外的環境変化に伴い安定性が損なわれ、クリーミングや分離などが生じて品質が劣化することが課題になっている。
【0003】
一般に、乳化安定性を高めるためには、界面活性剤の配合量を多くすることが行われる。しかしこの手法では、界面活性剤に起因するべたつき等が生じて使用感を損ねたり、消費者の安心感を損ねる懸念がある。そこで、界面活性剤の増量によらず、乳化安定性を高める技術が研究開発されており、例えば、特許文献1には、下記(A)~(D)を特定の割合で含有することで、安定性に優れた乳化組成物が得られることが開示されている;(A)脂溶性薬剤および脂質、(B)糖および/または糖アルコール、(C)水、(D)リン脂質および分子量が1000以上の水溶性の非イオン性界面活性物質。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2785981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の乳化組成物は、水8重量部に対して2重量部以上という比較的多量の糖および/または糖アルコールを配合する必要があることから、当該技術を適用できる製品の範囲が限られるといった課題がある。すなわち、係る特許文献を鑑みても、未だ、乳化物の乳化安定性を高める、汎用性の高い技術は十分に供給されている状況ではない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、乳化物の乳化安定性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、1-ケストースと多価アルコールとを併用することにより、乳化粒子を顕著に小さくすることができ、乳化安定性を向上できることを見出した。また、油中水滴型乳化物においては、多価アルコールを併用せずに1-ケストースを配合した場合であっても、乳化粒子を顕著に小さくすることができ、乳化安定性を向上できることを見出した。そこで、係る知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0007】
(1)本発明に係る乳化粒子の微細化剤の第1の態様は、1-ケストースおよび多価アルコールを有効成分とする。
【0008】
(2)本発明に係る乳化安定性向上剤の第1の態様は、1-ケストースおよび多価アルコールを有効成分とする。
【0009】
(3)本発明に係る乳化粒子の微細化剤の第2の態様は、油中水滴型乳化物において乳化粒子を微細化する剤であって、1-ケストースを有効成分とする。
【0010】
(4)本発明に係る乳化安定性向上剤の第2の態様は、油中水滴型乳化物において乳化安定性を向上する剤であって、1-ケストースを有効成分とする。
【0011】
(5)本発明に係る乳化物の乳化安定性を向上させる方法は、第1~2の態様に係る乳化粒子の微細化剤および乳化安定性向上剤(本発明において、これらをまとめて、またはこれらのいずれかを指して「本剤」という場合がある。)のうちのいずれかを原料として配合する工程を有する。
【0012】
(6)本発明に係る乳化物の製造方法は、本剤のうちのいずれかを原料として配合する工程を有する。
【0013】
(7)本発明に係る乳化物は、下記(a)~(e)を含有する;
(a)1-ケストース、
(b)多価アルコール、
(c)界面活性剤、
(d)油性成分、
(e)水。
【0014】
(8)本発明に係る乳化物は、(a)1-ケストース1重量部に対して、(b)多価アルコールを、0.08重量部以上24重量部以下含有するものであってもよい。
【0015】
(9)本発明に係る乳化物は、乳化物100質量%に対して、(a)1-ケストースおよび(b)多価アルコールを合計で0.75質量%以上含有するものであってもよい。
【0016】
(10)本発明に係る乳化物において、(b)多価アルコールは、二価アルコールおよび/または三価アルコールであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乳化物における乳化粒子を小さくすることができる。一般に、乳化粒子が小さければ、粒子の沈降あるいは浮上の速度が小さくなる。このことから、乳化粒子が小さいほどクリーミングが抑制され、安定性が高くなることが知られている(Stokesの法則、鈴木敏幸、乳化技術の基礎(相図とエマルション)、J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn., Vol.44, No.2, 2010, pp.103-117)。よって、本発明によれば、乳化物における乳化安定性を向上することができる。
【0018】
本発明によれば、乳化粒子の粒子径が小さい乳化物、あるいは、乳化安定性が高い乳化物を得ることができる。
【0019】
本発明の有効成分である1-ケストースおよび多価アルコールは、比較的少量を配合すれば乳化粒子を小さくすることができることから、製品設計の自由度を狭めない。すなわち、本発明は、様々な乳化物製品の安定性を向上することができる、汎用性の高い技術であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例で乳化物の作製に用いた原料を示す表である。
図2】各種の糖を配合した水中油滴型乳化物における乳化粒子の中位径を示す棒グラフである。上段のグラフはグリセリンを配合しなかったものの中位径を、下段のグラフは糖とともにグリセリンを配合したものの中位径を、それぞれ示す。
図3】糖(スクロースまたは1-ケストース)ならびに多価アルコールを油相に入れる手順で作製した水中油滴型乳化物における、乳化粒子の中位径を示す棒グラフである。
図4】多価アルコールを水相に入れ、1-ケストースを水相(試料2)または油相(試料3)に入れる手順で作製した水中油滴型乳化物における、乳化粒子の中位径を示す棒グラフである。
図5】1-ケストースとBGとを併用しない水中油滴型乳化物(試料1)および併用した水中油滴型乳化物(試料2)における、乳化粒子の中位径を示す棒グラフである。
図6】各種の界面活性剤を用いた水中油滴型乳化物の配合および粒度分布の測定結果を示す表である。
図7】各種の界面活性剤を用いた水中油滴型乳化物における、乳化粒子の中位径を示す棒グラフである。試料1は、多価アルコールを配合し、1-ケストースは配合しない水中油滴型乳化物であり、試料2は、多価アルコールと1-ケストースとを併用して配合した水中油滴型乳化物である。
図8】1-ケストース:グリセリンの配合割合(質量比)を変化させた水中油滴型乳化物における、乳化粒子の中位径を示す棒グラフである。
図9】1-ケストースおよびグリセリンの合計配合量(質量%)を変化させた水中油滴型乳化物における、乳化粒子の中位径を示す棒グラフである。
図10】(a)は、塩化Naおよび1-ケストースのいずれも配合しない油中水滴型乳化物(試料1)ならびに塩化Naまたは1-ケースを配合した油中水滴型乳化物(試料2,3)を充填した透明容器の外観を示す写真である。(b)は、同試料1~3を光学顕微鏡で拡大観察した写真画像である。
図11】(a)は、BGを配合し、1-ケストースを配合しない油中水滴型乳化物(試料1)、グリセリンを配合し、1-ケストースを配合しない油中水滴型乳化物(試料2)、BGと1-ケストースとを配合した油中水滴型乳化物(試料3)ならびにグリセリンと1-ケストースとを配合した油中水滴型乳化物(試料4)を充填した透明容器の外観を示す写真である。(b)は、同試料2~4を光学顕微鏡で拡大観察した写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
乳化物とは、水と油のように互いに溶解しない液相の一方が他の一方に微細な液滴として分散しているものをいう。そしてこの液滴を乳化粒子(分散相)といい、乳化粒子が分散している相を連続相という。連続相や乳化粒子が水(水溶液)か油かにより、乳化物は、「水中油滴(O/W)型」と「油中水滴(W/O)型」とに大別される。水中油滴(O/W)型乳化物であれば乳化粒子は油滴であり、油中水滴(W/O)型乳化物であれば乳化粒子は水滴である。本発明は、水中油滴(O/W)型および油中水滴(W/O)型のいずれの乳化物も対象としている。
【0023】
乳化物が水中油滴型か油中水滴型かは、例えば、当該乳化物に粉末色素をふりかけて拡がり方を観察することにより確認することができる。具体的には、粉末状の水溶性色素(例えばメチレンブルー)または油溶性色素(例えばスダンIII)を乳化物にふりかける。前者をふりかけた場合に色素が拡がり、後者をふりかけた場合に色素が拡がらないものは、水中油滴型乳化物であると判断することができる。反対に、前者をふりかけた場合に色素が拡がらず、後者をふりかけた場合に色素が拡がるものは、油中水滴型乳化物と判断できる。
【0024】
「乳化粒子を微細化する」とは、乳化粒子を小さくすることをいう。すなわち、「乳化粒子の微細化剤」は、乳化粒子を小さくする組成物、あるいは、乳化粒子を小さくすることを目的として用いられる組成物を意味する。乳化粒子が小さくなったか否かは、本剤を用いない乳化物、すなわち、1-ケストースを配合しない乳化物、あるいは1-ケストースおよび多価アルコールのいずれも配合しない乳化物を比較対照として、乳化粒子の粒子径を比較して判断できる。
【0025】
「乳化安定性」とは、乳化物を一定期間保存した場合の状態変化(主として油層と水層との分離)の程度をいう。すなわち、「乳化安定性を向上する」とは、一定期間経過後の乳化物の状態変化を少なくすること、または、状態変化を生じるまでの期間を長くすることをいう。また、「乳化安定性向上剤」は、乳化物の乳化安定性を向上する組成物、あるいは、乳化安定性を向上することを目的として用いられる組成物を意味する。
【0026】
第1の態様に係る「乳化粒子の微細化剤」および「乳化安定性向上剤」はいずれも、1-ケストースおよび多価アルコールを有効成分としている。第2の態様に係る「乳化粒子の微細化剤」および「乳化安定性向上剤」はいずれも、1-ケストースを有効成分としている。
【0027】
「1-ケストース」は、1分子のグルコースと2分子のフルクトースからなる三糖類のオリゴ糖である。1-ケストースは、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよく、簡便には、市販されているものを用いてもよい。市販品には、1-ケストースを高い純度(糖の総量を100%とした場合の、当該糖の質量%)で含有する精製品や、30~70質量%程度の比較的低い純度で含有するフラクトオリゴ糖の混合物などがあるが、それらのいずれを用いてもよい。
【0028】
「多価アルコール」は、分子中に2個以上のヒドロキシル基をもつアルコールをいう。ヒドロキシル基の数により、二価アルコールや三価アルコール、四価アルコール等に分けられるが、本発明にでは価数にかかわらず、用いることができる。多価アルコールとして、具体的には、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類(二価)、グリセリン(三価)、ジグリセリン(四価)、エリスリトール(四価)やキシリトール(五価)、ソルビトール(六価)、マンニトール(六価)、マルチトール(九価)などの糖アルコール類を例示することができる。
【0029】
1-ケストース(および多価アルコール)は、乳化物の製造において、原料として配合することにより用いることができる。1-ケストース(および多価アルコール)を原料として配合することにより、乳化物の乳化安定性を向上させることができる。
【0030】
乳化物は、本剤を原料として配合するほかは、常法に従って製造することができる。すなわち、本剤の有効成分である(a)1-ケストースおよび(b)多価アルコールと、乳化物を構成する一般的原料である(c)界面活性剤、(d)油性成分および(e)水とを混合すればよい。乳化の手法は、例えば、分散乳化法、反転乳化法、転相温度乳化法、液晶乳化法、D相乳化法、Agent-in-water法、Agent-in-oil法、Nascent-soap法、交互添加法等が例示されるが、これらのいずれも用いることができる。また、1-ケストースと多価アルコールとは、乳化物の作製工程において、水相および油相のいずれに入れてもよく、両方に入れてもよい。また、1-ケストースと多価アルコールとは同じ相に入れてもよく、異なる相に入れてもよい。
【0031】
「界面活性剤」は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤に大別されるが、本発明では、化粧品や医薬部外品、医薬品などに使用可能ないずれも用いることができ、製品の目的や用途、他原料の種類や配合量など、製品設計に応じて適宜選択することができる。界面活性剤は、1種類を単独で乳化物に配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0032】
アニオン界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩など)、N-アシルアミノ酸塩(N-アシルアスパラギン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグリシン、N-アシルサルコシン塩、N-アシルメチルアラニン塩、アシルイセチオン酸塩、N-アシルアミノ酸リシン塩など)やN-アシルタウリン塩などのアミノ酸型界面活性剤、脂肪酸塩(脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムなど)、カルボン酸塩(ヒドロキシエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩など)、硫酸エステル塩(アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩など)、リン酸エステル塩(モノアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩など)、アシル乳酸塩、アルキル硫酸塩(アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩など)等を例示することができる。
【0033】
カチオン界面活性剤としては、例えば、ステアラルコニウムクロリド、オレアルコニウムクロリド、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、クオタニウム-82、ポリクオタニウム、セトリモニウムクロリド、ココイルアルギニンエチルPCA等を例示することができる。
【0034】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(ステアリン酸PEG-10など)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(ステアリン酸PEG-15グリセリルなど)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート80など)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-60水添ヒマシ油など)、ポリオキシエチレンヒマシ油(PEG-30ヒマシ油など)、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(テトラオレイン酸ソルベス30など)、グリセリン脂肪酸エステル(ステアリン酸グリセリルなど)、ソルビタン脂肪酸エステル(ステアリン酸ソルビタンなど)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ステアリン酸ポリグリセリル-10など)、ショ糖脂肪酸エステル(ジステアリン酸スクロースなど)、アルキルポリグルコシド(ラウリルグルコシドなど)、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル(コレス-10など)、ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル(PEG-20フィトステロールなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ステアレス-2、ステアレス-4、ステアレス-20、ステアレス-21など)、ポリエーテル変性シリコーン(PEG-10ジメチコンなど)等を例示することができる。
【0035】
両性界面活性剤としては、例えば、レシチン(大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リン脂質、卵黄水添レシチン、大豆水添レシチン、水酸化レシチン、リゾレシチンなど)、硫酸エステル塩型やスルホン酸塩型、リン酸エステル塩型、イミダゾリン型、ベタイン型、アミドアミンオキシド型の両性界面活性剤等を例示することができる。
【0036】
「油性成分」とは、油に溶ける性質をもつ物質をいう。本発明では、化粧品や医薬部外品、医薬品、食品などに使用可能ないずれも用いることができ、製品の目的や用途、他原料の種類や配合量など、製品設計に応じて適宜選択することができる。例えば、油性成分は、その化学構造に基づいて、油脂、高級脂肪酸、ロウ類、炭化水素、エステル類、高級アルコールおよびシリコーン油などに分けられる場合があるが、これらのうちのいずれも用いることができる。また、常温で液体状、固体状、半固体状(ペースト状など)のいずれの形態の油性成分も用いることができる。また、紫外線吸収剤の機能を発揮する油性成分も用いることができる。
【0037】
例えば、油脂としては、馬油、ヤシ油、シア脂、シア脂油、コメ胚芽油、オリーブ果実油、ツバキ油、グレープシードオイル、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アプリコット油、トリエチルヘキサノイン等を例示することができ、高級脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、ベヘン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等を例示することができ、ロウ類としては、ホホバ種子油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリン等を例示することができ、炭化水素としては、水添ポリイソブテン、イソドデカン、テトラデセン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルオイル(流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等を例示することができ、エステル類としては、イソステアリン酸ステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル等を例示することができ、高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等を例示することができ、シリコーン油としては、ジメチコン等のストレートシリコーン油、アモジメチコン等のアミノ変性シリコーン油、ステアリルジメチコン等のアルキル変性シリコーン油、PEG-12ジメチコン等のポリエーテル変性シリコーン油、メチルフェニルポリシロキサン等のフェニル変性シリコーン、シクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサン等を例示することができる。また、紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコン-15、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等を例示することができる。
【0038】
1-ケストースの乳化物における配合量は、製品の目的や用途、他原料の種類や配合量など、製品設計に応じて適宜設定することができる。例えば、1-ケストースの配合量は、乳化物100質量%に対して、下限は、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.11質量%以上、0.12質量%以上、0.13質量%以上、0.14質量%以上、0.15質量%以上、0.16質量%以上、0.17質量%以上、0.18質量%以上、0.19質量%以上、0.2質量%以上、0.21質量%以上、0.22質量%以上、0.23質量%以上、0.24質量%以上、0.25質量%以上を例示することができる。また、上限は、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下を例示することができる。
【0039】
1-ケストースおよび多価アルコールの乳化物における配合割合は、製品の目的や用途、他原料の種類や配合量など、製品設計に応じて適宜設定することができる。例えば、配合割合は、1-ケストース1重量部に対して、多価アルコールの下限が0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.03重量部以上、0.04重量部以上、0.05重量部以上、0.06重量部以上、0.07重量部以上、0.08重量部以上、上限が50重量部以下、48重量部以下、46重量部以下、44重量部以下、42重量部以下、40重量部以下、38重量部以下、36重量部以下、34重量部以下、32重量部以下、30重量部以下、28重量部以下、26重量部以下、24重量部以下を例示することができる。
【0040】
また、例えば、配合割合は、多価アルコール1重量部に対して、1-ケストースの下限が0.001重量部以上、0.002重量部以上、0.004重量部以上、0.006重量部以上、0.008重量部以上、0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.03重量部以上、0.04重量部以上、0.042重量部以上、上限が40重量部以下、38重量部以下、36重量部以下、34重量部以下、32重量部以下、30重量部以下、28重量部以下、26重量部以下、24重量部以下、22重量部以下、20重量部以下、18重量部以下、16重量部以下、14重量部以下、12.6重量部以下を例示することができる。
【0041】
1-ケストースおよび多価アルコールの乳化物における合計配合量もまた、製品の目的や用途、他原料の種類や配合量など、製品設計に応じて適宜設定することができる。例えば、1-ケストースおよび多価アルコールの配合量は、乳化物100質量%に対して、合計で、下限は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上を例示することができる。また、上限は、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下を例示することができる。
【0042】
本発明の乳化物の形態は特に限定されないが、例えば、液状、クリーム状、ジェル状とすることができる。
【0043】
本発明の乳化物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(a)~(e)以外の成分を配合することができる。係る他の成分としては、例えば、溶媒ないし分散媒、エタノール、糖類、pH調整剤、着色剤、動植物エキス、ビタミンおよびその誘導体、美白剤、抗炎症剤、キレート剤、無機又は有機塩類、可溶化剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、増粘剤、香料、カチオンポリマー、清涼剤、冷感剤等を例示することができ、これら他の成分は、必要に応じて乳化物調製時または乳化物調製後に配合できる。
【0044】
本発明に係る乳化物は、化粧品、食品、医薬品、医薬部外品などに用いることができる。化粧品・医薬部外品としては、例えば、化粧液(保湿液、美容液等)、クリーム、乳液、日やけ料、日やけ止め料、クレンジング、パック(洗い流すもの)、マッサージ料、ボディリンス、リキッドファンデーション、整髪料(ヘアクリーム等)、養毛料(ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアコンディショナー等)、頭皮料(頭皮用トリートメント等)、毛髪着色料(カラーリンス、ヘアマニュキュア等)、ヘアリンスなどを例示することができる。これらの化粧品・医薬部外品に用いる場合は、本発明の乳化物における上記(c)および(d)を当該製品用途に適したものに設定し、製品用途に応じて、香料や品質保持原料(防腐剤、酸化防止剤等)、化粧品用薬剤(紫外線吸収剤、ビタミン剤、植物抽出物類、美白剤等)、イオン性界面活性剤などを添加して、当該化粧品・医薬部外品を製造することができる。
【0045】
以下、本発明について各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0046】
<試験方法>試験は、特段の記載のない限り下記の方法により行った。
(1)使用原料
図1に示す原料(全て市販品)を用いて乳化物を製造した。なお、糖は精製水に溶解して固形分濃度70質量%または50質量%の糖水溶液を調製し、これを用いた。ただし、ソルビトールは製品が70質量%水溶液のため、そのまま用いた。
【0047】
(2)水中油滴型乳化物の作製
水中油滴型乳化物は下記2-1または2-2の製法により作製した。
≪製法2-1:糖水溶液および多価アルコールを水相に入れる方法≫
[1]界面活性剤と油性成分とを混合して、界面活性剤が溶解するまで(約80℃程度に)加温した。
[2]多価アルコール、糖水溶液および精製水を混合して約80℃程度に加温し、攪拌した。
[3][2]を攪拌しながら、[2]に[1]を投入した。
[4][3]を約5分間攪拌した後、冷却した。
【0048】
≪製法2-2:糖水溶液および多価アルコールを油相に入れる方法≫
[1]界面活性剤、多価アルコールおよび油性成分を混合して、界面活性剤が溶解するまで(約80℃程度に)加温した。
[2]糖水溶液を[1]に加えて、均一になるまで攪拌した。
[3]精製水を約80℃程度に加温して攪拌しながら、ここに[2]を投入した。
[4][3]を約5分間攪拌した後、冷却した。
【0049】
(3)油中水滴型乳化物の作製
油中水滴型乳化物は下記の製法により作製した。
[1]界面活性剤と油性成分とを室温にて均一になるまで混合した。
[2]多価アルコール、糖水溶液、塩化ナトリウムおよび精製水を室温にて均一になるまで混合した。
[3]パドルを用いて100回転/分で[1]を攪拌しながら、[1]に[2]を徐々に投入した。
[4][3]を同条件で約10分間、攪拌した。
【0050】
(4)粒子径の測定
製造直後の乳化物について、レーザー回析散乱式粒度分布測定器(「LS 13 320」ベックマン・コールター株式会社)を用いて分散質(乳化粒子)の粒度分布を測定し、平均径、中位径および最頻径を算出した。
【0051】
<実施例1>有効成分の検討
グルコース、ソルビトール、スクロース、1-ケストースおよびラフィノースを用いて、試験方法(2)製法2-1により水中油滴型乳化物を作製し、試料1~5とした。各糖と併せて多価アルコールを配合しないもの(「グリセリン無し」)と配合したもの(「グリセリン有り」)とを作製し、試験方法(4)により乳化粒子の粒度分布を測定した。「グリセリン無し」の配合を表1に、「グリセリン有り」の配合を表2に、粒度分布の測定結果を各表の下段に、それぞれ示す。また、乳化粒子の中位径の棒グラフを図2に示す。
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1~2および図2に示すように、粒子径(平均径、中位径、最頻径)は、「グリセリン有り」の試料4が、他の全ての試料(「グリセリン無し」の試料1~5、ならびに、「グリセリン有り」の試料1~3、5)と比較して最も小さかった。試料1~3および試料5では「グリセリン無し」と「グリセリン有り」とで粒子径に大差は無かったのに対して、試料4では「グリセリン有り」の方が「グリセリン無し」よりも粒子径が顕著に小さかった。すなわち、1-ケストースを用いた場合のみ、グリセリン併用により乳化粒子の粒子径が顕著に小さくなった。この結果から、1-ケストースと多価アルコールとを併用することにより、乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0054】
<実施例2>工程の検討
(1)工程の検討1
糖としてスクロースまたは1-ケストースを用いて、試験方法(2)製法2-2により水中油滴型乳化物を作製し、試料2および試料3とした。対照として糖を配合しない乳化物も同様に作製し、これを試料1とした。試料1は、作製工程においては、糖水溶液に代えて同重量の水を用いた。多価アルコールはいずれの試料もグリセリンおよびBGを用いた。試料1~3について試験方法(4)により乳化粒子の粒度分布を測定した。乳化物の配合および粒度分布の測定結果を表3に示す。また、中位径の棒グラフを図3に示す。
【表3】
【0055】
表3および図3に示すように、粒子径(平均径、中位径、最頻径)は、試料3が、試料1~2と比較して顕著に小さかった。すなわち、製法2-2(糖および多価アルコールを油相に入れる作製手順)で乳化物を作製した場合においても、実施例1で行った製法2-1(糖および多価アルコールを水相に入れる作製手順)と同様に、1-ケストースを用いたものは乳化粒子の粒子径が顕著に小さかった。この結果から、1-ケストースおよび多価アルコールは、乳化物の作製工程において、油相および水相のいずれに投入しても、乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0056】
(2)工程の検討2
1-ケストースおよび多価アルコール(グリセリンおよびBG)を用いて、試験方法(2)製法2-1により水中油滴型乳化物を作製し、試料1~3とした。ただし、試料1は糖を配合しなかった。また、試料3は、糖水溶液を工程[1]で界面活性剤および油性成分に混合して用いた。すなわち、試料1は多価アルコールを水相に入れて作製した乳化物であり、試料2は1-ケストースおよび多価アルコールを水相に入れて作製した乳化物であり、試料3は1-ケストースを油相に入れ、多価アルコールを水相に入れて作製した乳化物である。試料1~3について試験方法(4)により乳化粒子の粒度分布を測定した。乳化物の配合および粒度分布の測定結果を表4に示す。また、中位径の棒グラフを図4に示す。
【表4】
【0057】
表4および図4に示すように、粒子径(平均径、中位径、最頻径)は、試料2が最も小さかったものの、試料2および試料3のいずれも、試料1と比較して顕著に小さかった。すなわち、1-ケストースおよび多価アルコールを水相に入れて作製した乳化物も、1-ケストースを油相に入れ、多価アルコールを水相に入れて作製した乳化物も、1-ケストースを配合しないものより乳化粒子の粒子径が顕著に小さかった。この結果から、1-ケストースおよび多価アルコールは、乳化物の作製工程において、油相および水相のうち、同じ相に投入しても、異なる相に投入しても、乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0058】
<実施例3>多価アルコールの検討
糖として1-ケストースを、多価アルコールとしてBGを用いて、試験方法(2)製法2-1により水中油滴型乳化物を作製し、試料2とした。対照としてBGを配合しない乳化物も同様に作製し、これを試料1とした。試料1~2について試験方法(4)により乳化粒子の粒度分布を測定した。乳化物の配合および粒度分布の測定結果を表5に示す。また、中位径の棒グラフを図5に示す。
【表5】
【0059】
表5および図5に示すように、粒子径(平均径、中位径、最頻径)は、試料2の方が試料1よりも顕著に小さかった。すなわち、多価アルコールとしてBGを用いた場合も、グリセリンを用いた場合(実施例1)やグリセリンおよびBGを用いた場合(実施例2)と同様に、1-ケストースと多価アルコールとを併用しない場合と比較して乳化粒子の粒子径が小さかった。この結果から、多価アルコールはその種類を問わず、1-ケストースと併用することにより、乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0060】
<実施例4>界面活性剤の検討
図1に示す5種の界面活性剤および多価アルコールとしてグリセリンおよびBGを用いて、試験方法(2)製法2-2により水中油滴型乳化物を作製した。多価アルコールと併せて1-ケストースを配合しないもの(試料1)と配合したもの(試料2)とを作製し、試験方法(4)により乳化粒子の粒度分布を測定した。試料1は、作製工程においては、糖水溶液に代えて同重量の水を用いた。乳化物の配合および粒度分布の測定結果を図6に示す。また、中位径の棒グラフを図7に示す。
【0061】
図6および図7に示すように、水添レシチン(コレステロール混合物)、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ソルビタンおよび水添レシチンのいずれを用いた場合も、試料2の方が試料1よりも粒子径(平均径、中位径、最頻径)が顕著に小さかった。この結果から、界面活性剤の種類に関わらず、1-ケストースおよび多価アルコールを併用して配合することにより、乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0062】
<実施例5>配合割合の検討
(1)1-ケストースおよび多価アルコールの配合割合
1-ケストースおよびグリセリンの配合割合(質量比)を1-ケストース:グリセリン=1:0.008~24(1-ケストース:グリセリン=0.042~12.6:1)の間で変化させて、試験方法(2)製法2-1により水中油滴型乳化物を作製し、試料2~5とした。対照として、グリセリンを配合しないもの(1-ケストース:グリセリン=6.3:0)および1-ケストースを配合しないもの(1-ケストース:グリセリン=0:12)も同様に作製し、試料1および試料6とした。試料1~6について試験方法(4)により乳化粒子の粒度分布を測定した。乳化物の配合および粒度分布の測定結果を表6に示す。また、中位径の棒グラフを図8に示す。
【表6】
【0063】
表6および図8に示すように、試料2~5のいずれも、試料1および試料6と比較して粒子径(平均径、中位径、最頻径)が顕著に小さかった。この結果から、1-ケストースおよび多価アルコールは、その配合割合に関わらず、これらを併用することにより、乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0064】
(2)1-ケストースおよび多価アルコールの合計配合量
1-ケストースおよびグリセリンの合計配合量(乳化物全体を100とした場合の質量百分率)を0~18.3質量%の間で変化させて、試験方法(2)製法2-1により水中油滴型乳化物を作製し、試料1~6とした。これら試料について試験方法(4)により乳化粒子の粒度分布を測定した。乳化物の配合および粒度分布の測定結果を表7に示す。また、中位径の棒グラフを図9に示す。
【表7】
【0065】
表7および図9に示すように、試料2~6のいずれも、試料1と比較して粒子径(平均径、中位径、最頻径)が顕著に小さかった。この結果から、1-ケストースおよび多価アルコールは、その合計配合量に関わらず、これらを併用することにより、乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0066】
<実施例6>油中水滴型乳化物の検討
(1)1-ケストースの配合
表8に示す配合で、試験方法(3)により試料1~3の油中水滴型乳化物を作製した。試料1は塩化ナトリウムおよび1-ケストースのいずれも配合しないもの、試料2は塩化ナトリウムを配合したもの、試料3は1-ケストースを配合したものである。なお、塩化ナトリウムは、従来、油中水滴型乳化物の乳化安定性を向上させることが知られている。試料1~3について、作製直後に光学顕微鏡にて観察して、乳化粒子の粒子経および粒子形状を確認した。その観察画像を図10に示す。
【表8】
【0067】
図10に示すように、試料1は、作製直後に油相と水相とが分離してしまい、乳化物が作製できなかった。試料2は、乳化物が作製できたが、粒子径が大きい乳化粒子が多く、また、粒子形状が不定形(きれいな円形でない)のものが多く観察された。これに対して、試料3は、乳化粒子の粒子径が試料2より小さいものが殆どであり、形状もきれいな円形が殆どであった。すなわち、1-ケストースを配合した油中水滴型乳化物では、乳化粒子の形状が整えられ、また、粒子径が小さくなった。この結果から、油中水滴型乳化物では、1-ケストースにより乳化粒子の粒子径を小さくできることが明らかになった。
【0068】
(2)1-ケストースと多価アルコールとの併用
表9に示す配合で、試験方法(3)により試料1~4の油中水滴型乳化物を作製した。試料1はBGを配合し、1-ケストースを配合しないもの(BG)、試料2はグリセリンを配合し、1-ケストースを配合しないもの(Gly)、試料3はBGと1-ケストースとを配合したもの(BG+Kes)、試料4はグリセリンと1-ケストースとを配合したもの(Gly+Kes)である。試料1~4について、作製直後に光学顕微鏡にて観察して、乳化粒子の粒子経および粒子形状を確認した。その観察画像を図11に示す。
【表9】
【0069】
図11に示すように、試料1は、作製直後に油相と水相とが分離してしまい、乳化物が作製できなかった。試料2は乳化物が作製できたが、粒子径が大きい乳化粒子が多く、また、粒子形状が不定形(きれいな円形でない)のものが多く観察された。これに対して、試料3および試料4は、乳化粒子の粒子径が試料2より顕著に小さく、形状もきれいな円形のものが殆どであった。すなわち、1-ケストースと多価アルコールとを併用して配合した油中水滴型乳化物では、乳化粒子の形状が整えられ、また、粒子径が顕著に小さくなった。この結果から、油中水滴型乳化物においても、水中油滴型乳化物と同様に、1-ケストースと多価アルコールとを併用することにより、乳化粒子の粒子径を顕著に小さくできることが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11