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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095659
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】核酸の標的組込み
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240703BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20240703BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240703BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/52 Z
C12P21/02 C
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N15/09 100
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024038487
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2022019272の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】62/609,806
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/711,272
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ング, チー ギン ドミンゴス
(72)【発明者】
【氏名】クロフォード, ヨンピン クオ
(72)【発明者】
【氏名】シェン, エイミー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, メイシア
(72)【発明者】
【氏名】スネデカー, ブラッドリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ミサーギ, シャンハラム
(72)【発明者】
【氏名】カオ, アルバート エリック
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC06
4B064CC10
4B064CC12
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA20
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA25
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065BC26
4B065BD16
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組換えタンパク質の発現に好適な標的組込み(TI)宿主細胞、ならびに該TI宿主細胞を作製かつ使用する方法を提供する。
【解決手段】宿主細胞ゲノムの特定の座位内における組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含み、座位が、特定の核酸配列から選択される配列と少なくとも約90%相同である、標的組込み(TI)宿主細胞を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的組込み(TI)宿主細胞であって、前記宿主細胞ゲノムの特定の座位内における組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含み、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同である、前記TI宿主細胞。
【請求項2】
前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ5’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される、請求項1に記載のTI宿主細胞。
【請求項3】
前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ5’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド45269、NW_006884592.1のヌクレオチド207911、NW_006881296.1のヌクレオチド491909、NW_003616412.1のヌクレオチド79768、NW_003615063.1のヌクレオチド315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97705からの少なくとも15塩基対、少なくとも20塩基対、少なくとも30塩基対、少なくとも40塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも75塩基対、少なくとも100塩基対、少なくとも150塩基対、少なくとも200塩基対、少なくとも300塩基対、少なくとも400塩基対、少なくとも500塩基対、少なくとも1,000塩基対、少なくとも1,500塩基対、少なくとも2,000塩基対、少なくとも3,000塩基対の配列からなる群から選択される、請求項1に記載のTI宿主細胞。
【請求項4】
前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ3’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される、請求項1に記載のTI宿主細胞。
【請求項5】
前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ3’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド45270、NW_006884592.1のヌクレオチド207912、NW_006881296.1のヌクレオチド491910、NW_003616412.1のヌクレオチド79769、NW_003615063.1のヌクレオチド315266、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706からの少なくとも15塩基対、少なくとも20塩基対、少なくとも30塩基対、少なくとも40塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも75塩基対、少なくとも100塩基対、少なくとも150塩基対、少なくとも200塩基対、少なくとも300塩基対、少なくとも400塩基対、少なくとも500塩基対、少なくとも1,000塩基対、少なくとも1,500塩基対、少なくとも2,000塩基対、少なくとも3,000塩基対の配列からなる群から選択される、請求項1に記載のTI宿主細胞。
【請求項6】
前記組込み外因性ヌクレオチド配列が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に機能的に連結される、請求項1~5のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項7】
標的組込み(TI)宿主細胞であって、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【請求項8】
TI宿主細胞であって、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子に機能的に連結された組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【請求項9】
TI宿主細胞であって、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される配列の全てまたは一部にすぐ隣接する組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【請求項10】
前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、請求項1~9のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項11】
前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、請求項10に記載のTI宿主細胞。
【請求項12】
前記TI宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、請求項10または11に記載のTI宿主細胞。
【請求項13】
前記外因性ヌクレオチド配列が、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含み、前記RRSがリコンビナーゼによって認識され得る、請求項1~12のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項14】
前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも2つのRRSを含む、請求項13に記載のTI宿主細胞。
【請求項15】
前記リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFLPリコンビナーゼである、請求項13または14に記載のTI宿主細胞。
【請求項16】
前記リコンビナーゼが、Bxb1インテグラーゼまたはφC31インテグラーゼである、請求項13または14に記載のTI宿主細胞。
【請求項17】
前記RRSが、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択される、請求項13~16のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項18】
前記外因性ヌクレオチド配列が、第1及び第2RRS、ならびに前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの選択マーカーを含む、請求項14~17のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項19】
第1選択マーカーを含み、前記第1選択マーカーが、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、G418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸からなる群から選択される、請求項18に記載のTI宿主細胞。
【請求項20】
第2選択マーカーをさらに含み、前記第1及び前記第2選択マーカーが異なる、請求項18または19に記載のTI宿主細胞。
【請求項21】
前記第2選択マーカーが、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、G418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸からなる群から選択される、請求項20に記載のTI宿主細胞。
【請求項22】
第3選択マーカー及び内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含み、前記IRESが、前記第3選択マーカーに機能的に連結される、請求項20または21に記載のTI宿主細胞。
【請求項23】
前記第3選択マーカーが、前記第1または前記第2選択マーカーとは異なる、請求項22に記載のTI宿主細胞。
【請求項24】
前記第3選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカー、改良型GFP(eGFP)マーカー、合成GFPマーカー、黄色蛍光タンパク質(YFP)マーカー、改良型YFP(eYFP)マーカー、シアン蛍光タンパク質(CFP)マーカー、mPlumマーカー、mCherryマーカー、tdTomatoマーカー、mStrawberryマーカー、J-redマーカー、DsRed-モノマーマーカー、mOrangeマーカー、mKOマーカー、mCitrineマーカー、Venusマーカー、YPetマーカー、Emerald6マーカー、CyPetマーカー、mCFPmマーカー、Ceruleanマーカー、及びT-Sapphireマーカーからなる群から選択される、請求項22または23に記載のTI宿主細胞。
【請求項25】
第3RRSをさらに含み、前記第3RRSが前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置し、前記第3RRSが、前記第1または前記第2RRSと比較して異種特異的である、請求項18~24のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項26】
前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの目的の外因性配列(SOI)を含む、請求項13~25のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項27】
前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む、請求項13~26のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項28】
前記外因性SOIが、前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する、請求項27に記載のTI宿主細胞。
【請求項29】
前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項27または28に記載のTI宿主細胞。
【請求項30】
前記外因性ヌクレオチド配列が、前記第1RRSと前記第3RRSとの間に位置する少なくとも1つの外因性SOI、及び前記第3RRSと前記第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む、請求項25~29のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項31】
前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項30に記載のTI宿主細胞。
【請求項32】
目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、
a)前記TI宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、
b)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する前記2つのRRSを含むベクターを導入すること、
c)リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、前記リコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに
d)前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【請求項33】
前記リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFLPリコンビナーゼである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記リコンビナーゼが、Bxb1インテグラーゼまたはφC31インテグラーゼである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、請求32~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記TI宿主細胞が、CHO宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
目的のポリペプチドの発現方法であって、
a)少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含むTI宿主細胞を提供し、前記少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーが、前記TI宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRSに隣接し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびに
b)前記目的のポリペプチドを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の前記細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項40】
少なくとも目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、
a)前記宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全ての前記RRSが異種特異的であること、
b)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第1及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、
c)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第2及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、
d)1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、前記1つ以上のリコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに
e)前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFLPリコンビナーゼである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記リコンビナーゼが、Bxb1インテグラーゼまたはφC31インテグラーゼである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記第1ベクターが、前記第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列をさらに含み、前記第2ベクターが、RRSの上流に、かつ前記第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つのSOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記第1SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記第2SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、請求39~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記TI宿主細胞が、CHO宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
目的のポリペプチドの発現方法であって、
a)前記宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた少なくとも2つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、少なくとも1つの外因性SOI及び1つの選択マーカーが、第1及び第3RRSに隣接し、少なくとも1つの外因性SOIが、第2及び前記第3RRSに隣接すること、ならびに
b)前記目的のポリペプチドを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の前記細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項51】
ベクターであって、
a.配列番号1の任意の部分から選択される2つの参照配列、
b.配列番号2の任意の部分から選択される2つの参照配列、
c.配列番号3の任意の部分から選択される2つの参照配列、
d.配列番号4の任意の部分から選択される2つの参照配列、
e.配列番号5の任意の部分から選択される2つの参照配列、
f.配列番号6の任意の部分から選択される2つの参照配列、または
g.配列番号7の任意の部分から選択される2つの参照配列
と少なくとも50%相同の2つのヌクレオチド配列を含み、前記配列がDNAカセットに隣接し、前記DNAカセットが、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む、前記ベクター。
【請求項52】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択される、請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項51または52に記載のベクター。
【請求項54】
目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、
a)前記宿主細胞ゲノムの座位を含む宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、
b)ベクターを前記宿主細胞中に導入し、前記ベクターが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、前記DNAカセットが、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含むこと、ならびに
c)前記選択マーカーを選択し、前記ゲノムの前記座位中に組み込まれた前記SOIを有するTI宿主細胞を単離して前記目的のポリペプチドを発現させることを含む、前記方法。
【請求項55】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つのSOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、請求項53~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記TI宿主細胞が、CHO宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つのSOI及び選択マーカーを含む前記核酸の前記組込みが、外因性ヌクレアーゼによって促進される、請求項54~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記外因性ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、TALエフェクタードメイン融合タンパク質、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連(Cas)エンドヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
TI宿主細胞であって、前記宿主細胞ゲノムの、1箇所以上の特定の座位内における組込み部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含み、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同である、前記TI宿主細胞。
【請求項63】
TI宿主細胞であって、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における1箇所以上の組込み部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【請求項64】
前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含み、前記RRSがリコンビナーゼによって認識され得る、請求項62~63のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【請求項65】
前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む、請求項64に記載のTI宿主細胞。
【請求項66】
少なくとも1つの目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、
e)前記TI宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、
f)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する前記2つのRRSを含むベクターを導入すること、
g)リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、前記リコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに
前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記少なくとも1つの目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【請求項67】
少なくとも1つの目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、
a)前記宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全ての前記RRSが異種特異的であること、
b)a)で提供される前記細胞中に、前記少なくとも1つの組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第1及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、
c)a)で提供される前記細胞中に、前記少なくとも1つの組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第2及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、
d)1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、前記1つ以上のリコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに
e)前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記少なくとも1つの目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【請求項68】
目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、
a)前記TI宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が1つ以上のRRSを含むこと、
b)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の1つ以上のRRSと一致し、少なくとも1つの調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの外因性SOIに隣接する前記1つ以上のRRSを含むベクターを導入すること、
c)リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、前記リコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに
d)誘導物質の存在下で前記目的の外因性ポリペプチドを発現するTI細胞を選択することによって、前記目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【請求項69】
目的のポリペプチドの発現方法であって、
a)前記宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRS及び調節可能なプロモーターに隣接する少なくとも1つの外因性SOIを含む宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびに
b)前記SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下で前記細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項70】
目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、
a)前記宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、第1、第2RRS及び前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全ての前記RRSが異種特異的であること、
b)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第1及び前記第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第1外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、
c)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第2及び前記第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、
d)1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、前記1つ以上のリコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに
e)誘導物質の存在下で前記目的の第1及び第2外因性ポリペプチドを発現するTI細胞を選択することによって、前記目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【請求項71】
少なくとも1つのSOIを含む核酸の前記組込みが、外因性ヌクレアーゼによって促進される、請求項66、68、及び69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記第1SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードし、前記第2SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項67または70に記載の方法。
【請求項73】
前記外因性ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、TALエフェクタードメイン融合タンパク質、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連(Cas)エンドヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記調節可能なプロモーターが、SV40及びCMVプロモーターからなる群から選択される、請求項66~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
a.前記第1ベクターが、前記第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列をさらに含み、
b.前記第2ベクターが、RRSの上流に、かつ前記第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーをさらに含む、請求項67及び70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
ベクターであって、配列番号1~7の任意の部分から選択される2つの配列、すなわち、
a.配列番号1の任意の部分から選択される2つの参照配列、
b.配列番号2の任意の部分から選択される2つの参照配列、
c.配列番号3の任意の部分から選択される2つの参照配列、
d.配列番号4の任意の部分から選択される2つの参照配列、
e.配列番号5の任意の部分から選択される2つの参照配列、
f.配列番号6の任意の部分から選択される2つの参照配列、または
g.配列番号7の任意の部分から選択される2つの参照配列
と少なくとも50%相同の2つのヌクレオチド配列を含み、前記配列がDNAカセットに隣接し、前記DNAカセットが、調節可能なプロモーターに機能的に連結され、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOIを含む、前記ベクター。
【請求項77】
前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項76に記載のベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月22日出願の米国仮特許出願第62/609,806号、及び2018年7月27日出願の米国仮特許出願第62/711,272号の利益を主張し、その各々の開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で開示される主題は、組換えタンパク質の発現に好適な標的組込み(TI)宿主細胞に加えて、TI宿主細胞を作製かつ使用する方法に関する。
【0003】
配列表
本明細書は、配列表(2018年12月21日に「00B2060779SEQ.txt」と命名された.txtファイルとして電子的に提出された)を参照する。00B2060779SEQ.txtファイルは、2018年12月20日に生成され、サイズは1,251,240バイトである。配列表の内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
細胞生物学及び免疫学の急速な進歩によって、がん、心血管疾患及び代謝性疾患を含む様々な疾患のための新規治療用組換えタンパク質を開発する需要が高まっている。これらの生物製剤候補は、目的のタンパク質を発現できる市販の細胞株によって一般に製造される。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、モノクローナル抗体を産生するように広く適合されている。
【0005】
市販の細胞株を開発するための従来の方針は、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のランダム組込み、続いて目的のポリペプチドを産生する細胞株の選択及び単離を含む。しかしながら、本アプローチはいくつかの欠点を有する。第1に、そのような組込みが珍しい事象であるだけでなく、ヌクレオチド配列が組み込まれる箇所に関してランダム性を考慮すると、これらの珍しい事象が、様々な遺伝子発現及び細胞増殖表現型も、もたらし得る。「位置効果の多様化」として知られるそのような多様化は、真核細胞ゲノム中に存在する複雑な遺伝子調節ネットワークならびに組込み及び遺伝子発現に関するある特定のゲノム座位の接近性に、少なくとも部分的には起因している。第2に、ランダム組込みの方針は一般に、宿主細胞ゲノム中に組み込まれる遺伝子コピーの数を制御しない。事実、遺伝子増幅方法が、高産生細胞を達成するために多くの場合に使用される。しかしながら、そのような遺伝子増幅は、望ましくない細胞表現型、例えば、不安定な細胞増殖及び/または産物発現などをもたらし得る。第3に、ランダム組込みプロセスに固有の組込み座位の不均一性ゆえに、トランスフェクション後に数千のクローンをスクリーニングし、目的のポリペプチドの望ましい発現レベルを示す細胞株を分離するには、多大な時間と労力を要する。そのような細胞株を単離した後であっても、目的のポリペプチドの安定発現は保証されず、安定した市販の細胞株を得るためにはさらにスクリーニングが必要となる場合がある。最後に、ランダムに組み込まれた細胞株から産生されるポリペプチドは高度な配列変動を示し、これは、目的のポリペプチドの高レベルな発現を選択するために使用される選択剤の変異原性に部分的に起因する可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で開示される主題は、組換えタンパク質の発現に好適な標的組込み(TI)宿主細胞に関する。本明細書で開示される主題は、高い生産性を有する宿主細胞のTI部位を提供するだけでなく、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)によって宿主細胞の単一TI座位に複数の目的の配列を導入する新規方法も提供する。RMCE法の利点としては、生産性の向上及び同じTI座位から複数のポリペプチドを異なる比率で共発現させる柔軟性が挙げられる。例えば、限定する意図はないが、本明細書で開示されるRMCE方針は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれを超える配列(例えば、抗体重鎖(HC)または軽鎖(LC)配列)のTI座位への挿入を可能にする。8つ以上の配列を同時に標的とする能力と共に、2プラスミドRMCEは、mAbのHC及びLC鎖比の調節による生産性の改善、複数の鎖を有する複合分子の発現、ならびに抗体を用いた導入遺伝子、内因性遺伝子またはRNAiの標的化による細胞経路の変更を可能にする。
【0007】
ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、宿主細胞ゲノムの座位内における組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含み、その座位は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同である。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ5’側のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、及びNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ3’側のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に機能的に連結される。
【0008】
ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、LOC107977062(配列番号1)、LOC100768845(配列番号2)、ITPR2(配列番号3)、ERE67000.1(配列番号4)、UBAP2(配列番号5)、MTMR2(配列番号6)、XP_003512331.2(配列番号7)、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、LOC107977062(配列番号1)、LOC100768845(配列番号2)、ITPR2(配列番号3)、ERE67000.1(配列番号4)、UBAP2(配列番号5)、MTMR2(配列番号6)、XP_003512331.2(配列番号7)、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子に機能的に連結される組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチドは、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に隣接する。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される配列の全てまたは一部にすぐ隣接する組込み部位に組み込まれる。
【0009】
ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である。ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である。
【0010】
ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、組込み外因性ヌクレオチド配列を含み、その外因性ヌクレオチド配列は、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも2つのRRSを含む。RRSは、リコンビナーゼ、例えば、Creリコンビナーゼ、FLPリコンビナーゼ、Bxb1インテグラーゼ、またはφC31インテグラーゼによって認識され得る。RRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択され得る。
【0011】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は第3RRSをさらに含み、その第3RRSは第1RRSと第2RRSとの間に位置し、その第3RRSは第1RRSまたは第2RRSとは異なる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する第1選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、第2選択マーカーをさらに含み、第1及び第2選択マーカーは異なっている。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、第3選択マーカー及び内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含み得、そのIRESは、第3選択マーカーに機能的に連結される。第3選択マーカーは、第1または第2選択マーカーとは異なり得る。選択マーカーは、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン及びG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ならびにピューロマイシン、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子からなる群から選択され得る。選択マーカーは、緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカー、改良型GFP(eGFP)マーカー、合成GFPマーカー、黄色蛍光タンパク質(YFP)マーカー、改良型YFP(eYFP)マーカー、シアン蛍光タンパク質(CFP)マーカー、mPlumマーカー、mCherryマーカー、tdTomatoマーカー、mStrawberryマーカー、J-redマーカー、DsRed-モノマーマーカー、mOrangeマーカー、mKOマーカー、mCitrineマーカー、Venusマーカー、YPetマーカー、Emerald6マーカー、CyPetマーカー、mCFPmマーカー、Ceruleanマーカー、及びT-Sapphireマーカーからなる群からも選択され得る。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカー、改良型GFP(eGFP)マーカー、合成GFPマーカーからなる群から選択される。
【0012】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの目的の外因性配列(SOI)を含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、第1、第2、及び第3RRS、第1RRSと第3RRSとの間に位置する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOI、ならびに第3RRSと第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの外因性SOIを含む。目的の配列は、本明細書に列挙される例を含むがこれらに限定されない、いずれかの目的のポリペプチドをコードし得る。SOIは同じであり得るか、またはそれらは異なり得、例えば、SOIは、抗体の両鎖にコード配列を含み得る。2つ以上の異なるポリペプチドが発現される場合では、目的の配列は2つのポリペプチドを様々な比率で含み得、例えば、8つのコード配列が1:7、2:6などを含むが、これらに限定されない2つの異なるポリペプチドをコードする場合である。SOIは、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードし得る。
【0013】
本明細書で開示される主題は、目的のポリペプチドの発現を促進するために、宿主細胞中への外因性核酸の標的組込み方法も提供する。ある特定の実施形態では、そのような方法は、リコンビナーゼ媒介組換えによる宿主細胞中への外因性核酸の標的組込みを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む細胞に関する。ある特定の実施形態では、そのような方法は、宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む細胞に関し、その座位は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であるヌクレオチド配列を含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)TI宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、その第1、第2、及び第3RRSが異種特異的である、すなわち、第1、第2、及び第3RRSが一致しないRRSであり、それゆえ、第1、第2、及び第3RRSのいずれか2つが、リコンビナーゼ媒介組換えの影響を受けないことになること、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、c)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、d)1つ以上のリコンビナーゼを導入し、その1つ以上のリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにe)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の細胞を培養することを含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた少なくとも2つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、少なくとも1つの外因性SOI及び1つの選択マーカーが、第1及び第3RRSに隣接し、少なくとも1つの外因性SOIが、第2及び第3RRSに隣接すること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の細胞を培養することを含む。
【0018】
本明細書で開示される主題はまた、TI宿主細胞の使用によって目的のポリペプチドを産生する組成物及び方法を提供する。そのような組成物及び方法は、TI宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の組込みを促進するポリヌクレオチド及びベクターに加えて、外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞及び組成物ならびにその使用方法を含むが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ベクターは、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み得、そのDNAカセットは、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択され得る。
【0019】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、相同組換え、相同組換え修復(HDR)、及び/または非相同末端結合(NHEJ)による、宿主細胞中への目的のポリペプチドをコードする外因性核酸の標的組込みを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、LOC107977062(配列番号1)、LOC100768845(配列番号2)、ITPR2(配列番号3)、ERE67000.1(配列番号4)、UBAP2(配列番号5)、MTMR2(配列番号6)、XP_003512331.2(配列番号7)、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内の部位における、目的のポリペプチドをコードする外因性核酸の細胞中への組込みを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、宿主細胞ゲノムの座位内の部位における、目的のポリペプチドをコードする外因性核酸の細胞中への組込みを含み、その座位は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であるヌクレオチド配列を含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位を含む宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、b)ベクターを宿主細胞中に導入し、そのベクターが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットが、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含むこと、ならびにc)選択マーカーを選択し、ゲノム座位中に組み込まれたSOIを有するTI宿主細胞を単離して目的のポリペプチドを発現させることを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、標的組込みを促進するための外因性ヌクレアーゼの使用を含む。外因性ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、TALエフェクタードメイン融合タンパク質、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連(Cas)エンドヌクレアーゼからなる群から選択され得る。
【0021】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)TI宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が1つ以上のRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の1つ以上のRRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの外因性SOIに隣接する1つ以上のRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)誘導物質の存在下で外因性SOIを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRSに隣接し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの外因性SOIを含む宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下で細胞を培養することを含む。
【0023】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、第1、第2RRS及び第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、その第1、第2、及び第3RRSが異種特異的である、すなわち、第1、第2、及び第3RRSが一致しないRRSであり、それゆえ、第1、第2、及び第3RRSのいずれか2つが、リコンビナーゼ媒介組換えの影響を受けないことになること、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1及び第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第1外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、c)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2及び第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、d)1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、その1つ以上のリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにe)誘導物質の存在下で外因性SOIを発現するTI細胞を選択することによって、目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】抗体の安定した高発現を可能にする、CHO TI座位を同定するためのゲノムワイドスクリーニングステップの概要を示す略図である。
図2】標的抗体を発現する集団を生成するために利用された2つの二重選択スキームを示す。トランスポザーゼ生成TI宿主がAに示され、ランダム組込み生成TI宿主がBに示される。
図3】2つの特定のTI宿主によって生成された上位クローンの生産性を示す。
図4】3つのRRS部位を使用し、2つの独立したRMCEを同時に実施することを含む2プラスミドRMCE方針を示す。1つのベクター(前方)は、RRS1、第1SOI及びプロモーター(P)に続いて開始コドン(ATG)及びRRS3を含む。他方のベクター(後方)は、開始コドン(ATG)を持たないマーカーのコード配列に融合したRRS3、SOI2及びRRS2を含む。2つのプラスミドが正確に標的する場合に限り、選択マーカーの完全な発現カセットが組み立てられ、それゆえ選択に対する耐性を細胞に付与することになる。
図5】抗体D、E、F、G、及びJの発現に関連して単一ベクターまたは2ベクターRMCEのいずれかを使用した結果を示す。FACS、ゲノムPCR、及び遺伝子コピー解析を評価し、両方のプラスミドカセットが正確にTI部位を標的としたかを確認した。2プラスミドRMCEでは、単一プラスミドRMCEと比較した場合、より多くの総HC及びLCコピーがTI部位を標的とした。
図6】6つの分子の力価を示す。
図7】複合mAb形式を発現させるために2ベクターRMCEを使用した結果を示す。各々が4本の異なる鎖(2本のHC及び2本のLC)を要する2つの二重特異性分子を、産生及び%二重特異性形成についてアッセイした。どちらの場合も、80%超の二重特異性含量で1.5g/L超を示す細胞株を開発した。
図8】4つの二重特異性分子に関する14日目の力価を示す。
図9A】RTIシステムでmAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株の生成を示す。細胞株開発の組織学的結果がAに示される。
図9B】RTIシステムでmAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株の生成を示す。RTI細胞株開発(CLD)プロセスの概略図がBに示される。
図10A】mAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株の力価及び比生産性の結果を示す。産生終了力価がAに示される。
図10B】mAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株の力価及び比生産性の結果を示す。産生終了IVCCがBに示される。
図10C】mAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株の力価及び比生産性の結果を示す。産生終了比生産性がCに示される。
図11】mAb-I及びmAb-II発現細胞株のHC及びLC mRNAの発現レベルを示す。HC mRNAの発現レベルがAに示され、HL mRNAの発現レベルがBに示される。
図12A】mAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株中のHC、HL及びBiP分子の細胞内レベルを示す。RTIシステムに対するシクロヘキシミド及びDoxの効果に関する概略図がAに示される。
図12B】mAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株中のHC、HL及びBiP分子の細胞内レベルを示す。mAb-AまたはmAb-Bを発現する細胞株の上清中におけるHC、LC及びBiPの細胞内レベルに加えてHC及びLCレベルが、Bに示される。
図12C】mAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株中のHC、HL及びBiP分子の細胞内レベルを示す。一晩CHXで処理した後のmAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株のHC、LC及びBiPの細胞内レベルが、Cに示される。
図12D】mAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株中のHC、HL及びBiP分子の細胞内レベルを示す。培養培地からのドキシサイクリン除去後のmAb-IまたはmAb-IIを発現する細胞株のHC、LC及びBiPの細胞内レベルが、Dに示される。
図13A】BiPの細胞内蓄積とmAb-I LC発現との間の相関関係を示す。産生終了力価がAに示される。
図13B】BiPの細胞内蓄積とmAb-I LC発現との間の相関関係を示す。HC、LC及びBiPの蓄積がBに示される。
図13C】BiPの細胞内蓄積とmAb-I LC発現との間の相関関係を示す。鎖交換実験の略図がCに示される。
図13D】BiPの細胞内蓄積とmAb-I LC発現との間の相関関係を示す。mAb-I、mAb-II、またはこれらの分子の鎖交換型を発現するRTIプールのHC、LC及びBiPの細胞内レベルが、Dに示される。
図14A】この分子のプール発現に対するmAb-A HC及びHLの寄与を示す。産生終了力価がAに示される。
図14B】この分子のプール発現に対するmAb-A HC及びHLの寄与を示す。産生終了IVCCがBに示される。
図14C】この分子のプール発現に対するmAb-A HC及びHLの寄与を示す。産生終了比生産性がCに示される。
図15】発現低下の一因となる可能性のあるLC及びHCのCDR領域を示す。mAb-I及びmAb-II LCサブユニットの略図がAに示される。mAb-I及びmAb-II HC領域の略図がBに示される。
図16A】HCの発現に関連してHC定常領域で2つの点変異を使用した結果を示す。mAb-I及びmAb-IIのHC及びLCサブユニット間の様々な鎖交換の産生終了力価が、Aに示される。
図16B】HCの発現に関連してHC定常領域で2つの点変異を使用した結果を示す。様々なRTIプールのHC、LC及びBiPの細胞内レベルがBに示される。
図16C】HCの発現に関連してHC定常領域で2つの点変異を使用した結果を示す。低タンパク質発現の診断ツールとしてのRTIシステム利用に関する概略図が、Cに示される。
図17-1】2つの異なる細胞培養プロセスを使用した産生を示す。
図17-2】2つの異なる細胞培養プロセスを使用した産生を示す。
図18】3つのmAbのRMCEプールに関する力価及び比生産性の結果を示す。HL及びHLL構成を比較した3つのmAbのRMCEプールに関する14日目の力価が、Aに示される。HL及びHLL構成を比較した3つのmAbのRMCEプールに関する14日目の比生産性(Qp)が、Bに示される。Aのプールから生成されたクローンの14日目の力価がCに示される。Aのプールから生成されたクローンの14日目のQpがDに示される。C及びDでは、構成ごとに6つのクローンを試験した。
図19A】3つの異なるプラスミド構成を比較したmAb YのRMCEプールに関する力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)、mRNA発現ならびにタンパク質発現を示す。14日目の力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)が、それぞれA、B及びCに示される。各バーは、単一プールからのデータを表す。Aは、プールからのシードトレインmRNA発現及び細胞内抗体タンパク質発現である。
図19B】3つの異なるプラスミド構成を比較したmAb YのRMCEプールに関する力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)、mRNA発現ならびにタンパク質発現を示す。14日目の力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)が、それぞれA、B及びCに示される。各バーは、単一プールからのデータを表す。
図19C】3つの異なるプラスミド構成を比較したmAb YのRMCEプールに関する力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)、mRNA発現ならびにタンパク質発現を示す。14日目の力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)が、それぞれA、B及びCに示される。各バーは、単一プールからのデータを表す。
図19D】3つの異なるプラスミド構成を比較したmAb YのRMCEプールに関する力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)、mRNA発現ならびにタンパク質発現を示す。重鎖及び軽鎖のmRNA発現を、HLL-HL構成を基準として正規化し、各バーは4つの技術的複製物の平均である(エラーバーは標準偏差である)。重鎖及び軽鎖のmRNA発現を、HLL-HL構成を基準として正規化した。
図19E】3つの異なるプラスミド構成を比較したmAb YのRMCEプールに関する力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)、mRNA発現ならびにタンパク質発現を示す。ウェスタンブロットから定量化し、HLL-HL構成を基準として正規化した全てのプールからの細胞内重鎖及び軽鎖タンパク質発現がEに示され、各バーは3つの技術的複製物の平均である(エラーバーは標準偏差である)。
図19F】3つの異なるプラスミド構成を比較したmAb YのRMCEプールに関する力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)、mRNA発現ならびにタンパク質発現を示す。Eに示されるデータの代表的なウェスタンブロット画像がFに示される。
図20A】3つの異なる構成を有するRMCEプールから生成したmAb YまたはmAb IIIを発現する単クローンの力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)を示す。mAb Yを発現する単クローンの14日目の力価がAに示される。
図20B】3つの異なる構成を有するRMCEプールから生成したmAb YまたはmAb IIIを発現する単クローンの力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)を示す。mAb Yを発現する単クローンの14日目のQpがBに示される。
図20C】3つの異なる構成を有するRMCEプールから生成したmAb YまたはmAb IIIを発現する単クローンの力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)を示す。mAb Yを発現するクローンの14日目のIVCCがCに示される。
図20D】3つの異なる構成を有するRMCEプールから生成したmAb YまたはmAb IIIを発現する単クローンの力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)を示す。mAb IIIを発現する単クローンの14日目の力価がDに示される。
図20E】3つの異なる構成を有するRMCEプールから生成したmAb YまたはmAb IIIを発現する単クローンの力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)を示す。mAb IIIを発現する単クローンの14日目のQpがEに示される。
図20F】3つの異なる構成を有するRMCEプールから生成したmAb YまたはmAb IIIを発現する単クローンの力価、Qp、及び増殖(生細胞濃度の積分、IVCCで表される)を示す。mAb IIIを発現するクローンの14日目のIVCCがFに示される。
図21A】様々な構成のRMCEプールの発現レベル、力価及びQpを示す。鎖発現に対するプラスミド位置の効果を評価するためにトランスフェクトした1本の重鎖、1本の軽鎖プラスミドの概略図がAに示される。抗体重鎖(Hと略される)及び軽鎖(Lと略される)は、同じプラスミド上で発現されるか、または前方及び後方プラスミド間で分割されるかのいずれかであった。L3、Loxfas、及び2L部位に注目し、後方プラスミド中のpacピューロマイシン耐性遺伝子にも同様に注目する。
図21B】様々な構成のRMCEプールの発現レベル、力価及びQpを示す。Aで概要が述べられているDNA構成を有するプールからの重鎖及び軽鎖のシードトレインmRNA発現がBに示される。
図21C】様々な構成のRMCEプールの発現レベル、力価及びQpを示す。様々な構成のRMCEプールに関する14日目の力価がCに示される。
図21D】様々な構成のRMCEプールの発現レベル、力価及びQpを示す。様々な構成の14日目のQpがDに示される。
図21E】様々な構成のRMCEプールの発現レベル、力価及びQpを示す。プールの重鎖及び軽鎖DNAコピー数がEに示される。
図22A】mAbの高分子量種(HMWS)パーセンテージに対するHC:LC比の効果が、TI部位に依存しないことを示す。宿主7細胞上の抗体Sに関する14日目の力価がAに示される。
図22B】mAbの高分子量種(HMWS)パーセンテージに対するHC:LC比の効果が、TI部位に依存しないことを示す。宿主7細胞上の抗体Sの高分子量種(HMWS)パーセンテージがBに示される。
図22C】mAbの高分子量種(HMWS)パーセンテージに対するHC:LC比の効果が、TI部位に依存しないことを示す。宿主4細胞上の抗体Sに関する14日目の力価がCに示される。
図22D】mAbの高分子量種(HMWS)パーセンテージに対するHC:LC比の効果が、TI部位に依存しないことを示す。宿主4細胞上の抗体Sの高分子量種(HMWS)パーセンテージがDに示される。
図23A】抗体IVの生産性及び高分子量種(HMWS)に対するHC:LC比の効果を示す。宿主4細胞上の抗体IVに関する14日目の力価がAに示される。
図23B】抗体IVの生産性及び高分子量種(HMWS)に対するHC:LC比の効果を示す。宿主4細胞上の抗体IVの高分子量種(HMWS)パーセンテージがBに示される。
図24A】2部位TI宿主細胞中における抗体VIの生産性及び高分子量種(HMWS)に対するHC:LC比の効果を示す。2部位TI宿主細胞上の抗体VIに関する14日目の力価がAに示される。
図24B】2部位TI宿主細胞中における抗体VIの生産性及び高分子量種(HMWS)に対するHC:LC比の効果を示す。2部位TI宿主細胞上の抗体IVの高分子量種(HMWS)パーセンテージがBに示される。
図25】2つのクローンが、それぞれ8.4及び8.7g/Lの力価を有し、7.4%及び5.6%の凝集体を含むことを示す。
図26】異なる調節された標的組込み細胞株における抗体Zの14日目の力価を示す。
図27】異なる調節された標的組込み細胞株における抗体Zの比生産性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される宿主細胞、遺伝子構築物(例えば、ベクター)、組成物、及び方法は、標的組込み(TI)宿主細胞の開発及び/または使用に用いられ得る。ある特定の実施形態では、そのようなTI宿主細胞は、宿主細胞ゲノムの特定の遺伝子または特定の座位内に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0026】
限定のためではなく開示を明確にするために、詳細な説明が以下のサブセクションに分割される:
1.定義
2.組込み部位
3.外因性ヌクレオチド配列
4.宿主細胞
5.標的組込み
6.TI宿主細胞の調製及び使用
7.産物
8.例示的な非限定的実施形態
【0027】
1.定義
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文献によって規定されることになる。好ましい方法及び材料については以下で説明されるが、本明細書に記載されるものと類似するか、または同等の方法及び材料も、本明細書で開示される主題の実施または試験に使用され得る。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それら全体が参照によって組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、及び例は、例示的にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0028】
「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」という用語、及びそれらの変化形は、本明細書で使用される場合、追加の行為または構造の可能性を排除することのないオープンエンドな移行句、用語、または単語であること意図する。単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示される実施形態または要素「を含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態も企図する。
【0029】
本明細書における数値範囲の列挙について、それらの間に介在する同程度の正確さを有する各数値が明示的に企図される。例えば、6~9の範囲では、6及び9に加えて、数値7及び8が企図され、範囲6.0~7.0では、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が、明示的に企図される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定されるような特定の値の許容誤差範囲内を意味し、値の測定方法または決定方法、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存することになる。例えば、「約」は、当該技術分野における慣習に従って、3または3を超える標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%、さらにより好ましくは最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物系またはプロセスに関して、本用語は値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「選択マーカー」という用語は、対応する選択剤の存在下で、その遺伝子を保持する細胞が特異的に選択されるか、またはそれに対して選択されることを可能にする遺伝子であり得る。例えば、限定する意図はないが、選択マーカーは、選択マーカー遺伝子で形質転換された宿主細胞が、遺伝子の存在下でポジティブに選択されることを可能にし得、非形質転換宿主細胞は、選択的条件下では増殖または生存できないことになる。選択マーカーは、ポジティブ、ネガティブ、または二機能性であり得る。ポジティブ選択マーカーは、マーカーを保持する細胞の選択を可能にし得るのに対して、ネガティブ選択マーカーは、マーカーを保持する細胞が選択的に排除されることを可能にし得る。選択マーカーは、薬物に対する耐性を付与し得る、または宿主細胞の代謝もしくは異化障害を補い得る。とりわけ、原核細胞では、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシンまたはクロラムフェニコールに対する耐性を付与する遺伝子が使用され得る。真核細胞で選択マーカーとして有用な耐性遺伝子としては、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン及びG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)の遺伝子、ならびにピューロマイシン、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。追加のマーカー遺伝子は、WO92/08796及びWO94/28143に記載されている。
【0032】
選択マーカーは、対応する選択剤の存在下における選択を容易にする以外に、通常は細胞中に存在することのない分子をコードする遺伝子、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、改良型GFP(eGFP)、合成GFP、黄色蛍光タンパク質(YFP)、改良型YFP(eYFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed-モノマー、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、及びT-Sapphireを代わりに提供し得る。そのような遺伝子を持つ細胞は、例えば、コードされたポリペプチドによって放射される蛍光を検出することによって、この遺伝子を持たない細胞と区別され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「機能的に連結される」という用語は、2つ以上の構成要素の並置を指し、その構成要素は、それらがその意図される手法で機能することを可能する関係にある。例えば、プロモーター及び/またはエンハンサーは、そのプロモーター及び/またはエンハンサーが、コード配列の転写を調節するように機能する場合、コード配列に機能的に連結されている。ある特定の実施形態では、「機能的に連結されている」DNA配列は、単一染色体上で連続かつ隣接している。ある特定の実施形態では、例えば、分泌リーダー及びポリペプチドなどの2つのタンパク質をコードする領域を結合させる必要がある場合、配列は連続して隣接し、同じリーディングフレーム内に存在する。ある特定の実施形態では、機能的に連結されているプロモーターは、コード配列の上流に位置し、それに隣接し得る。ある特定の実施形態では、例えば、コード配列の発現を調節するエンハンサー配列に関して、2つの構成要素は隣接していないが、機能的に連結され得る。エンハンサーは、そのエンハンサーがコード配列の転写を増加させる場合、コード配列に機能的に連結されている。機能的に連結されているエンハンサーは、コード配列の上流、配列内、または配列の下流に位置し得、コード配列のプロモーターとは相当な距離を置いて位置し得る。機能的連結は、当該技術分野において既知の組換え方法によって、例えば、PCR手法を使用して、及び/または都合の良い制限部位でのライゲーションによって達成され得る。都合の良い制限部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来方法に従って使用され得る。内部リボソーム進入部位(IRES)は、それが5’末端に依存しない手法で内部位置においてオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳を開始できる場合、ORFに機能的に連結されている。
【0034】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、転写及び/または翻訳を指す。ある特定の実施形態では、所望の産物の転写レベルは、存在している対応するmRNAの量に基づいて決定され得る。例えば、目的の配列から転写されたmRNAは、PCRによって、またはノーザンハイブリダイゼーションによって定量され得る。ある特定の実施形態では、目的の配列によってコードされるタンパク質は、様々な方法によって、例えば、ELISAによって、タンパク質の生物活性についてアッセイすることによって、またはそのような活性に依存しないアッセイ、例えば、タンパク質を認識してそれに結合する抗体を使用するウェスタンブロッティングもしくはラジオイムノアッセイなどを用いることによって定量され得る。
【0035】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、抗体が所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、半抗体、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体が結合する抗原と結合する、インタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Holliger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照のこと。
【0037】
本明細書で使用される場合、「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体と抗原との結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれ、V及びV)の可変ドメインは、一般に類似した構造を有し、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照のこと。)単一VまたはVドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分な場合がある。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原と結合する抗体からのVまたはVドメインを使用して単離され、それぞれ相補的なVまたはVドメインのライブラリーをスクリーニングしてよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照のこと。
【0038】
本明細書で使用される場合、「重鎖」という用語は、免疫グロブリン重鎖を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「軽鎖」という用語は、免疫グロブリン軽鎖を指す。
【0040】
抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分類される場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0041】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が同一であり、及び/または同じエピトープと結合するが、例えば、天然に存在する変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する可能性のあるバリアント抗体を除き、そのようなバリアントは一般に少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従うモノクローナル抗体は、様々な技術、例えば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン座位の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない技術によって作製されてよく、モノクローナル抗体を作製するそのような方法及び他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0042】
「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる部位、すなわち、異なる抗原上の異なるエピトープまたは同じ抗原上の異なるエピトープに対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の態様では、多重特異性抗体は3つ以上の結合特異性を有する。多重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製されてよい。
【0043】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書では天然抗体構造と実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義されるようなFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同じ意味で使用される。
【0044】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原と結合する、インタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv、及びscFab)、単一ドメイン抗体(dAb)、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Holliger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照のこと。
【0045】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖及び/または軽鎖の残部が、異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0046】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0047】
「ヒト化」抗体は、非ヒトCDRのアミノ酸残基及びヒトFRのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、そのドメイン中ではCDRの全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のCDRに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応することになる。ヒト化抗体は場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を経た抗体を指す。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が同一であり、及び/または同じエピトープと結合するが、例えば、天然に存在する変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する可能性のあるバリアント抗体を除き、そのようなバリアントは一般に少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。
【0048】
「治療用抗体」という用語は、疾患の処置に使用される抗体を指す。治療用抗体は、様々な作用機序を有する場合がある。治療用抗体は、抗原と関連する標的と結合し、その正常な機能を中和する場合がある。例えば、がん細胞の生存に必要なタンパク質の活性をブロックするモノクローナル抗体は、細胞死を引き起こす。別の治療用モノクローナル抗体は、抗原と関連する標的と結合し、その正常な機能を活性化する場合がある。例えば、モノクローナル抗体は、細胞上のタンパク質に結合し、アポトーシスシグナルを誘導し得る。さらに別のモノクローナル抗体は、患部組織上でのみ発現される標的抗原に結合する可能性があり、毒性ペイロード(効果的な薬剤)、例えば、化学療法剤または放射性薬剤などとモノクローナル抗体との複合化によって、毒性ペイロードを患部組織に特異的に送達するための薬剤が作製され、健康な組織への害が減少し得る。治療用抗体の「生物学的に機能的断片」は、インタクトな抗体に起因する生物学的機能の一部または全てではないとしても、少なくとも1つを示し、その機能は少なくとも標的抗原への特異的結合を含むことになる。
【0049】
「診断用抗体」という用語は、疾患の診断試薬として使用される抗体を指す。診断用抗体は、特定の疾患と特異的に関連するか、または特定の疾患において発現の増加を示す標的抗原に結合する場合がある。診断用抗体は、例えば、患者からの生体試料中において、または患者の腫瘍などの疾患部位に関する画像診断において標的を検出するために使用されてよい。診断用抗体の「生物学的に機能的断片」は、インタクトな抗体に起因する生物学的機能の一部または全てではないとしても、少なくとも1つを示し、その機能は少なくとも標的抗原への特異的結合を含むことになる。
【0050】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は同じ意味で使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、それらは初代形質転換細胞及び継代の数に関係なくそれらに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一ではない場合があるが、変異を含有する場合もある。元々の形質転換細胞中でスクリーニングされた、または選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0051】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/または物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基、特にプリン塩基またはピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)またはウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボースまたはリボース)、及びリン酸基で構成される。多くの場合、核酸分子は塩基の配列によって記載され、それにより塩基は核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は通常、5’~3’で表される。本明細書において、核酸分子という用語は、例えば、相補的DNA(cDNA)及びゲノムDNAを含むデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNAまたはRNAの合成形態、ならびにこれらの分子のうち2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線状または環状であってよい。加えて、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方に加えて、一本鎖及び二本鎖形態を含む。さらに、本明細書に記載される核酸分子は、天然に存在するか、または天然に存在しないヌクレオチドを含有し得る。天然に存在しないヌクレオチドの例としては、誘導体化された糖もしくはリン酸骨格結合を有する修飾ヌクレオチド塩基または化学的に修飾された残基が挙げられる。核酸分子はまた、インビトロ及び/またはインビボで、例えば、宿主または患者中における本発明の抗体の直接発現を目的としたベクターとして好適なDNA及びRNA分子を包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)またはRNA(例えば、mRNA)ベクターは、修飾され得ないか、または修飾され得る。例えば、mRNAは、mRNAを対象に注入するとインビボで抗体を生成することができるように、RNAベクターの安定性及び/またはコードされた分子の発現を増強するために化学的に修飾され得る(例えば、Stadler et al,Nature Medicine 2017、2017年6月12日にオンライン出版、doi:10.1038/nm.4356またはEP 2 101 823 B1を参照のこと)。
【0052】
「単離」核酸は、その自然環境の構成成分から分離されている核酸分子を指す。単離核酸は、核酸分子を通常含有する細胞中に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸分子に連結される別の核酸を増殖できる核酸分子を指す。本用語は、自己複製核酸構造としてのベクターに加えて、ベクターが導入されている宿主細胞のゲノム中に組み込まれるベクターを含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を誘導する。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「相同配列」という用語は、配列のアラインメントによって決定されるような、有意な配列類似性を共有する配列を指す。例えば、2つの配列は、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または99.9%相同であり得る。アラインメントは、アルゴリズム及びコンピュータプログラム、例えば、BLAST、FASTA、及びHMMEを含むが、これらに限定されないものによって実施され、これは配列を比較し、要素、例えば、配列長、配列の識別情報及び類似性、ならびに配列のミスマッチ及びギャップの存在及び長さなどに基づいて一致の統計的有意性を算出する。相同配列は、DNA配列及びタンパク質配列の両方を指し得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「隣接」という用語は、第1ヌクレオチド配列が、第2ヌクレオチド配列の5’末端もしくは3’末端、または両端のいずれかに位置することを指す。隣接ヌクレオチド配列は、第2ヌクレオチド配列に隣接し得るか、または第2ヌクレオチド配列から規定の距離にあり得る。隣接ヌクレオチド配列の長さに特定の制限はない。例えば、隣接配列は、若干の塩基対または数千の塩基対であり得る。ある特定の実施形態では、隣接ヌクレオチド配列の長さは、約少なくとも15塩基対、少なくとも20塩基対、少なくとも30塩基対、少なくとも40塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも75塩基対、少なくとも100塩基対、少なくとも150塩基対、少なくとも200塩基対、少なくとも300塩基対、少なくとも400塩基対、少なくとも500塩基対、少なくとも1,000塩基対、少なくとも1,500塩基対、少なくとも2,000塩基対、少なくとも3,000塩基対、少なくとも4,000塩基対、少なくとも5,000塩基対、少なくとも6,000塩基対、少なくとも7,000塩基対、少なくとも8,000塩基対、少なくとも9,000塩基対、少なくとも10,000塩基対であり得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、ヌクレオチド配列が宿主細胞に由来せず、従来のDNA送達方法によって、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または形質転換方法によって宿主細胞中に導入されることを示す。「内因性」という用語は、ヌクレオチド配列が宿主細胞に由来することを指す。「外因性」ヌクレオチド配列は、塩基組成の点で同一である「内因性」対応物を有し得るが、「外因性」配列は、例えば、組換えDNA技術によって宿主細胞中に導入される。
【0057】
2.組込み部位
本明細書で開示される主題は、外因性ヌクレオチド配列の標的組込みに好適な宿主細胞を提供する。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、宿主細胞、すなわち、TI宿主細胞のゲノム上の組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0058】
「組込み部位」は、外因性ヌクレオチド配列が挿入されている宿主細胞ゲノム内の核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、組込み部位は、宿主細胞ゲノム上の2つの隣接するヌクレオチド間に存在する。ある特定の実施形態では、組込み部位は、外因性ヌクレオチド配列が挿入され得るヌクレオチドのいずれかの間にヌクレオチドのストレッチを含む。ある特定の実施形態では、組込み部位は、TI宿主細胞ゲノムの特定の座位内に位置する。ある特定の実施形態では、組込み部位は、TI宿主細胞の内因性遺伝子内に存在する。
【0059】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、TI宿主細胞ゲノムの特定の座位内における部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列が組み込まれる座位は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0060】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、TI宿主細胞ゲノムの特定の座位内における部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列が組み込まれる座位は、コンティグNW_006874047.1、NW_006884592.1、NW_006881296.1、NW_003616412.1、NW_003615063.1、NW_006882936.1、及びNW_003615411.1から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0061】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号1の合計で1~1,000bp、1,000~2,000bp、2,000~3,000bp、3,000~4,000bp、及び4,000~4,301bpとなるヌクレオチドから選択される位置内に位置する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号2の合計で1~100,000bp、100,000~200,000bp、200,000~300,000bp、300,000~400,000bp、400,000~500,000bp、500,000~600,000bp、600,000~700,000bp、及び700,000~728785bpとなるヌクレオチドから選択される位置内に位置する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号3の合計で1~100,000bp、100,000~200,000bp、200,000~300,000bp、300,000~400,000bp、及び400,000~413,983となるヌクレオチドから選択される位置内に位置する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号4の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、20,000~30,000bp、及び30,000~30,757bpとなるヌクレオチドから選択される位置内に位置する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号5の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、20,000~30,000bp、30,000~40,000bp、40,000~50,000bp、50,000~60,000bp、及び60,000~68,962bpとなるヌクレオチドから選択される位置内に位置する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号6の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、20,000~30,000bp、30,000~40,000bp、40,000~50,000bp、及び50,000~51,326bpとなるヌクレオチドから選択される位置内に位置する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号7の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、及び20,000~22,904bpとなるヌクレオチドから選択される位置内に位置する組込み部位に組み込まれる。
【0062】
ある特定の実施形態では、組込み外因性配列のすぐ5’側のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705及びそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、組込み外因性配列のすぐ5’側のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0063】
ある特定の実施形態では、組込み外因性配列のすぐ3’側のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117及びそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、組込み外因性配列のすぐ3’側のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0064】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、配列番号1~7及びそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に機能的に連結される。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列に機能的に連結されるヌクレオチド配列は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのSOIを含む。ある特定の実施形態では、機能的に連結されたヌクレオチド配列は、ランダムに組み込まれたSOIと比較してSOIの発現レベルを増加させる。ある特定の実施形態では、組込み外因性SOIは、ランダムに組み込まれたSOIよりも約20%、30%、40%、50%、100%、2倍、3倍、5倍、または10倍高く発現される。
【0065】
ある特定の実施形態では、組込み外因性配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、及びNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705ならびにそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列の5’側に隣接し、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、及びNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117ならびにそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列の3’側に隣接する。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列の5’側に隣接するヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、及びNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同であり、組込み外因性ヌクレオチド配列の3’側に隣接するヌクレオチド配列は、配列番号NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、及びNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0066】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチドは、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される配列の全てまたは一部にすぐ隣接する座位中に組み込まれる。
【0067】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、配列番号1~7及びそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に隣接する。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、配列番号1~7及びそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択される配列から約100bp、約200bp、約500bp、約1kb以内の距離にある。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列に隣接するヌクレオチド配列は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0068】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号1の合計で1~1,000bp、1,000~2,000bp、2,000~3,000bp、3,000~4,000bp、及び4,000~4,301bpとなるヌクレオチドから選択される位置に隣接する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号2の合計で1~100,000bp、100,000~200,000bp、200,000~300,000bp、300,000~400,000bp、400,000~500,000bp、500,000~600,000bp、600,000~700,000bp、及び700,000~728785bpとなるヌクレオチドから選択される位置に隣接する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号3の合計で1~100,000bp、100,000~200,000bp、200,000~300,000bp、300,000~400,000bp、及び400,000~413,983となるヌクレオチドから選択される位置に隣接する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号4の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、20,000~30,000bp、及び30,000~30,757bpとなるヌクレオチドから選択される位置に隣接する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号5の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、20,000~30,000bp、30,000~40,000bp、40,000~50,000bp、50,000~60,000bp、及び60,000~68,962bpとなるヌクレオチドから選択される位置に隣接する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号6の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、20,000~30,000bp、30,000~40,000bp、40,000~50,000bp、及び50,000~51,326bpとなるヌクレオチドから選択される位置に隣接する組込み部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、配列番号7の合計で1~10,000bp、10,000~20,000bp、及び20,000~22,904bpとなるヌクレオチドから選択される位置に隣接する組込み部位に組み込まれる。
【0069】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列の組込み部位を含む座位は、オープンリーディングフレーム(ORF)をコードしない。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列の組込み部位を含む座位は、シス作用性エレメント、例えば、プロモーター及びエンハンサーを含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列の組込み部位を含む座位は、遺伝子発現を増強する任意のシス作用性エレメント、例えば、プロモーター及びエンハンサーを含まない。
【0070】
ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子内における組込み部位に組み込まれる。内因性LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子の野生型及び全ての相同配列を含む。ある特定の実施形態では、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子の相同配列は、野生型LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同であり得る。ある特定の実施形態では、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子は、野生型哺乳動物LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子である。ある特定の実施形態では、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子は、野生型ヒトLOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子である。ある特定の実施形態では、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子は、野生型ハムスターLOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2遺伝子である。
【0071】
ある特定の実施形態では、組込み部位は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらの少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子に機能的に連結される。ある特定の実施形態では、組込み部位は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらの少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子に隣接する。
【0072】
表1は、例示的なTI宿主細胞の組込み部位を提供する:
表1-TI宿主細胞の組込み部位
【0073】
ある特定の実施形態では、組込み部位及び/または組込み部位に隣接するヌクレオチド配列は、実験的に同定され得る。ある特定の実施形態では、組込み部位及び/または組込み部位に隣接するヌクレオチド配列は、ゲノムワイドスクリーニングアプローチによって同定され、1つ以上の外因性ヌクレオチド配列中に組み込まれた1つ以上のSOIによってコードされる目的のポリペプチドを望ましいレベルで発現する宿主細胞を単離し得、その外因性配列は、宿主細胞ゲノム中の1箇所以上の座位に組み込まれた配列である。ある特定の実施形態では、組込み部位及び/または組込み部位に隣接するヌクレオチド配列は、トランスポザーゼに基づくカセット組込み事象後のゲノムワイドスクリーニングアプローチによって同定され得る。ある特定の実施形態では、組込み部位及び/または組込み部位に隣接するヌクレオチド配列は、ブルートフォースランダム組込みスクリーニングによって同定され得る。ある特定の実施形態では、組込み部位及び/または組込み部位に隣接するヌクレオチド配列は、従来のシーケンシングアプローチ、例えば、標的座位増幅(TLA)、それに続く次世代シーケンシング(NGS)及び全ゲノムNGSなどによって決定され得る。ある特定の実施形態では、染色体上の組込み部位の位置は、従来の細胞生物学アプローチ、例えば、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)分析などによって決定され得る。
【0074】
ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、TI宿主細胞ゲノム中の特定の第1座位内における第1組込み部位に組み込まれた第1外因性ヌクレオチド配列及びゲノム中の特定の第2座位内における第2組込み部位に組み込まれた第2外因性ヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、TI宿主細胞ゲノム中の複数の組込み部位に組み込まれた複数の外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0075】
ある特定の実施形態では、本開示のTI宿主細胞は、少なくとも2つの異なる外因性ヌクレオチド配列、例えば、少なくとも1つのRRSを含む外因性ヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、2つ以上の外因性ヌクレオチド配列が、1つ以上のSOIの導入のために標的とされ得る。ある特定の実施形態では、SOIは同じである。ある特定の実施形態では、SOIは異なる。ある特定の実施形態では、第1外因性ヌクレオチド配列を含む親TI宿主細胞は、第1外因性ヌクレオチド配列の組込み部位とは異なる組込み部位に第2外因性ヌクレオチド配列を含み得る。
【0076】
ある特定の実施形態では、組込み部位は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。ある特定の実施形態では、組込み部位は、同じ染色体上に存在し得る。ある特定の実施形態では、組込み部位は、同じ染色体中で互いに1~1,000ヌクレオチド、1,000~100,000ヌクレオチド、100,000~1,000,000ヌクレオチドまたはそれを超える範囲内に位置する。ある特定の実施形態では、組込み部位は、異なる染色体上に存在する。ある特定の実施形態では、1つの組込み部位に外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞は、同じまたは異なる組込み部位における少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、またはそれを超える外因性ヌクレオチド配列の挿入に使用され得る。
【0077】
ある特定の実施形態では、少なくとも2箇所の組込み部位のリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)に関する実現可能性は、各部位について個別に評価され得る。ある特定の実施形態では、少なくとも2箇所の組込み部位のRMCEに関する実現可能性は、同時に評価され得る。複数の部位のRMCEに関する実現可能性は、当該技術分野において既知の方法、例えば、ポリペプチド力価、またはポリペプチド比生産を測定することによって評価され得る。ある特定の実施形態では、評価は、当該技術分野において既知の方法によって、例えば、SOI(複数可)を発現するTI宿主細胞の培養物の力価及び/または比生産性を評価することによって実施され得る。例示的な培養方針としては、流加振盪フラスコ培養及びバイオリアクター流加培養が挙げられるが、これらに限定されない。目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の力価及び比生産性は、当該技術分野において既知の方法、例えば、これらに限定されないが、ELISA、FACS、蛍光微量アッセイ技術(Fluorometric Microvolume Assay Technology)(FMAT)、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、ウェスタンブロット分析によって評価され得る。
【0078】
3.外因性ヌクレオチド配列
外因性ヌクレオチド配列は、宿主細胞に由来しないが、従来のDNA送達方法によって、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または形質転換方法によって宿主細胞中に導入され得るヌクレオチド配列である。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、目的の配列(SOI)、例えば、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。しかしながら、ある特定の実施形態では、本開示との関連において用いられる外因性ヌクレオチド配列は、要素、例えば、1つ以上の組換え認識配列(RRS)及び1つ以上の選択マーカーを含み、これらは追加の核酸配列、例えば、SOIの導入を促進する。ある特定の実施形態では、追加の核酸配列の導入を促進する外因性ヌクレオチド配列は、本明細書においては「ランディングパッド」と称される。したがって、ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、(1)1つ以上のSOI、例えば、外因性部位特異的ヌクレアーゼ媒介(例えば、CRISPR/Cas9媒介)標的組込みによって宿主細胞ゲノム中の特定の座位に組み込まれたSOIを含む外因性ヌクレオチド配列、(2)1つ以上のランディングパッドを含む外因性ヌクレオチド配列、または(3)1つ以上のSOIが組み込まれている1つ以上のランディングパッドを含む外因性ヌクレオチド配列を含み得る。
【0079】
ある特定の実施形態では、TI宿主細胞は、TI宿主細胞ゲノム中の1箇所以上の組込み部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、TI宿主細胞ゲノムの特定の座位内における1箇所以上の組込み部位に組み込まれる。例えば、限定する意図はないが、少なくとも1つの外因性核酸配列は、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%の相同を有する1箇所以上の座位に組み込まれ得る。
【0080】
3.1 ランディングパッド
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含み、そのRRSはリコンビナーゼによって認識され得る。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも2つのRRSを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は2つのRRSを含み、2つのRRSが同じである。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は2つのRRSを含み、2つのRRSが異種特異的である、すなわち、同じリコンビナーゼによって認識されない。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は3つのRRSを含み、その第3RRSは第1RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、第1及び第2RRSは同じであり、第3RRSは第1または第2RRSとは異なる。ある特定の実施形態では、3つ全てのRRSが異種特異的である。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのRRSを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、複数のRRSを含む。ある特定の実施形態では、複数の2つ以上のRRSが同じである。ある特定の実施形態では、2つ以上のRRSが異種特異的である。ある特定の実施形態では、各RRSは、異なるリコンビナーゼによって認識され得る。ある特定の実施形態では、RRSの総数のサブセットは同種特異的である、すなわち、同じリコンビナーゼによって認識され、RRSの総数のサブセットは異種特異的である、すなわち、同じリコンビナーゼによって認識されない。ある特定の実施形態では、RRSまたは複数のRRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択され得る。
【0081】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、1つのRRS及び少なくとも1つの選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、第1及び第2RRS、ならびに少なくとも1つの選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、選択マーカーは、第1RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、2つのRRSが少なくとも1つの選択マーカーに隣接する、すなわち、第1RRSは選択マーカーの5’側上流に位置し、第2RRSは選択マーカーの3’側下流に位置する。ある特定の実施形態では、第1RRSは選択マーカーの5’末端に隣接し、第2RRSは選択マーカーの3’末端に隣接する。
【0082】
ある特定の実施形態では、選択マーカーは、第1RRSと第2RRSとの間に位置し、2つの隣接RRSは同じである。ある特定の実施形態では、選択マーカーに隣接する2つのRRSは、両方ともLoxP配列である。ある特定の実施形態では、選択マーカーに隣接する2つのRRSは、両方ともFRT配列である。ある特定の実施形態では、選択マーカーは、第1RRSと第2RRSとの間に位置し、2つの隣接RRSは異種特異的である。ある特定の実施形態では、第1隣接RRSはLoxP L3配列であり、第2隣接RRSはLoxP 2L配列である。ある特定の実施形態では、LoxP L3配列は選択マーカーの5’側に位置し、LoxP 2L配列は選択マーカーの3’側に位置する。ある特定の実施形態では、第1隣接RRSは野生型FRT配列であり、第2隣接RRSは変異体FRT配列である。ある特定の実施形態では、第1隣接RRSはBxb1 attP配列であり、第2隣接RRSはBxb1 attB配列である。ある特定の実施形態では、第1隣接RRSはφC31 attP配列であり、第2隣接RRSはφC31 attB配列である。ある特定の実施形態では、2つのRRSは同じ方向に配置される。ある特定の実施形態では、2つのRRSは、両方ともフォワードまたはリバース方向に存在する。ある特定の実施形態では、2つのRRSは逆方向に配置される。
【0083】
ある特定の実施形態では、選択マーカーは、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン及びG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ならびにピューロマイシン、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、またはミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子であり得る。ある特定の実施形態では、選択マーカーは、GFP、eGFP、合成GFP、YFP、eYFP、CFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed-モノマー、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、またはT-Sapphireマーカーであり得る。ある特定の実施形態では、選択マーカーは、少なくとも2つの選択マーカーを含む融合構築物であり得る。ある特定の実施形態では、選択マーカーまたは選択マーカーの断片をコードする遺伝子は、異なる選択マーカーまたはその断片をコードする遺伝子に融合され得る。
【0084】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、2つのRRSに隣接する2つの選択マーカーを含み、第1選択マーカーは第2選択マーカーとは異なる。ある特定の実施形態では、2つの選択マーカーは両方とも、グルタミンシンテターゼ選択マーカー、チミジンキナーゼ選択マーカー、HYG選択マーカー、及びピューロマイシン耐性選択マーカーからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、チミジンキナーゼ選択マーカー及びHYG選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、第1選択マーカーは、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン及びG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ならびにピューロマイシン、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子からなる群から選択され、第2選択マーカーは、GFP、eGFP、合成GFP、YFP、eYFP、CFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed-モノマー、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、及びT-Sapphireマーカーからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、第1選択マーカーはグルタミンシンテターゼ選択マーカーであり、第2選択マーカーはGFPマーカーである。ある特定の実施形態では、両方の選択マーカーに隣接する2つのRRSは同じである。ある特定の実施形態では、両方の選択マーカーに隣接する2つのRRSは異なっている。
【0085】
ある特定の実施形態では、選択マーカーは、プロモーター配列に機能的に連結される。ある特定の実施形態では、選択マーカーは、SV40プロモーターに機能的に連結される。ある特定の実施形態では、選択マーカーは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに機能的に連結される。
【0086】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカー及びIRESを含み、そのIRESは選択マーカーに機能的に連結される。ある特定の実施形態では、IRESに機能的に連結される選択マーカーは、GFP、eGFP、合成GFP、YFP、eYFP、CFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed-モノマー、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、及びT-Sapphireマーカーからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、IRESに機能的に連結される選択マーカーは、GFPマーカーである。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、2つのRRSに隣接するIRES及び2つの選択マーカーを含み、そのIRESは第2選択マーカーに機能的に連結される。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、2つのRRSに隣接するIRES及び3つの選択マーカーを含み、そのIRESは第3選択マーカーに機能的に連結される。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、2つのRRSに隣接するIRES及び3つの選択マーカーを含み、そのIRESは第3選択マーカーに機能的に連結される。ある特定の実施形態では、第3選択マーカーは、第1または第2選択マーカーとは異なる。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、プロモーターに機能的に連結される第1選択マーカー及びIRESに機能的に連結される第2選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、SV40プロモーターに機能的に連結されるグルタミンシンテターゼ選択マーカー及びIRESに機能的に連結されるGFP選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、CMVプロモーターに機能的に連結されるチミジンキナーゼ選択マーカー及びHYG選択マーカーならびにIRESに機能的に連結されるGFP選択マーカーを含む。
【0087】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、3つのRRSを含む。ある特定の実施形態では、第3RRSは、第1RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、3つ全てのRRSが同じである。ある特定の実施形態では、第1及び第2RRSは同じであり、第3RRSは第1または第2RRSとは異なる。ある特定の実施形態では、3つ全てのRRSが異種特異的である。
【0088】
3.2 目的の配列(SOI)
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカー、少なくとも1つの外因性SOI、及び少なくとも1つのRRSを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたはそれを超えるSOIを含む。ある特定の実施形態では、SOIは同じである。ある特定の実施形態では、SOIは異なる。
【0089】
ある特定の実施形態では、SOIは、一本鎖抗体またはその断片をコードする。ある特定の実施形態では、SOIは、抗体重鎖配列またはその断片をコードする。ある特定の実施形態では、SOIは、抗体軽鎖配列またはその断片をコードする。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、抗体重鎖配列またはその断片をコードするSOI及び抗体軽鎖配列またはその断片をコードするSOIを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、第1抗体重鎖配列またはその断片をコードするSOI、第2抗体重鎖配列またはその断片をコードするSOI、及び抗体軽鎖配列またはその断片をコードするSOIを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、第1抗体重鎖配列またはその断片をコードするSOI、第2抗体重鎖配列またはその断片をコードするSOI、第1抗体軽鎖配列またはその断片をコードするSOI及び抗体軽鎖配列またはその断片をコードする第2SOIを含む。ある特定の実施形態では、重鎖及び軽鎖配列をコードするSOIの数は、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの所望の発現レベルを達成するために、例えば、二重特異性抗体産生の所望の量を達成するために選択され得る。ある特定の実施形態では、重鎖及び軽鎖配列をコードする個々のSOIは、例えば、単一の組込み部位に存在する単一の外因性核酸配列に、単一の組込み部位に存在する複数の外因性核酸配列に、またはTI宿主細胞内の異なる組込み部位に組み込まれた複数の外因性核酸配列に組み込まれ得る。
【0090】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカー、少なくとも1つの外因性SOI、及び1つのRRSを含む。ある特定の実施形態では、RRSは、少なくとも1つの選択マーカーまたは少なくとも1つの外因性SOIに隣接して位置する。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの選択マーカー、少なくとも1つの外因性SOI、及び2つのRRSを含む。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、第1RRSと第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、選択マーカー及び外因性SOIに隣接する2つのRRSは同じである。ある特定の実施形態では、選択マーカー及び外因性SOIに隣接する2つのRRSは異なる。ある特定の実施形態では、第1隣接RRSはLoxP L3配列であり、第2の隣接RRSはLoxP 2L配列である。ある特定の実施形態では、L3 LoxP配列は、選択マーカー及び外因性SOIの5’側に位置し、LoxP 2L配列は、選択マーカー及び外因性SOIの3’側に位置する。
【0091】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、3つのRRS及び2つの外因性SOIを含み、第3RRSは第1RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、第1SOIは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、第2SOIは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、第1及び第2SOIは異なる。ある特定の実施形態では、第1及び第2RRSは同じであり、第3RRSは第1または第2RRSとは異なる。ある特定の実施形態では、3つ全てのRRSが異種特異的である。ある特定の実施形態では、第1RRSはLoxP L3部位であり、第2RRSはLoxP 2L部位であり、第3RRSはLoxFas部位である。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、3つのRRS、1つの外因性SOI、及び1つの選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、SOIは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、選択マーカーは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、3つのRRS、2つの外因性SOI、及び1つの選択マーカーを含む。ある特定の実施形態では、第1SOI及び選択マーカーは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、第2SOIは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。
【0092】
ある特定の実施形態では、外因性SOIは、目的のポリペプチドをコードする。そのような目的のポリペプチドは、これらに限定されないが、抗体、酵素、サイトカイン、成長因子、ホルモン、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、ワクチンタンパク質、または治療機能を有するタンパク質を含む群から選択され得る。ある特定の実施形態では、外因性SOIは、抗体またはその抗原結合断片をコードする。ある特定の実施形態では、外因性SOIは、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする。ある特定の実施形態では、外因性SOI(または複数のSOI)は、標準抗体をコードする。ある特定の実施形態では、外因性SOI(または複数のSOI)は、半抗体、例えば、これらに限定されないが、本開示の抗体B、Q、T及びmAbIをコードする。ある特定の実施形態では、外因性SOI(または複数のSOI)は、複合抗体をコードする。ある特定の実施形態では、複合抗体は、二重特異性抗体、例えば、これらに限定されないが、本開示の二重特異性分子A、二重特異性分子B、二重特異性分子C、または二重特異性分子Dであり得る。ある特定の実施形態では、外因性SOIは、少なくとも1つのシス作用性エレメント、例えば、プロモーターまたはエンハンサーに機能的に連結される。ある特定の実施形態では、外因性SOIは、CMVプロモーターに機能的に連結される。
【0093】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、2つのRRS及び2つのRRS間に位置する少なくとも2つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、抗体の1本の重鎖及び1本の軽鎖をコードするSOIは、2つのRRS間に位置する。ある特定の実施形態では、抗体の1本の重鎖及び2本の軽鎖をコードするSOIは、2つのRRS間に位置する。ある特定の実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖コピーの異なる組合せをコードするSOIは、2つのRRS間に位置する。
【0094】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は、3つのRRS及び少なくとも2つの外因性SOIを含み、第3RRSは第1RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのSOIは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、少なくとも1つのSOIは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、第1及び第2RRSは同じであり、第3RRSは第1または第2RRSとは異なる。ある特定の実施形態では、3つ全てのRRSが異種特異的である。ある特定の実施形態では、第1抗体の1本の重鎖及び1本の軽鎖をコードするSOIは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、第2抗体の1本の重鎖及び1本の軽鎖をコードするSOIは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、第1抗体の1本の重鎖及び2本の軽鎖をコードするSOIは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、第2抗体の1本の重鎖及び1本の軽鎖をコードするSOIは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、第1抗体の1本の重鎖及び3本の軽鎖をコードするSOIは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、第1抗体の1本の軽鎖ならびに第2抗体の1本の重鎖及び1本の軽鎖をコードするSOIは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、第1抗体の1本の重鎖及び3本の軽鎖をコードするSOIは、第1RRSと第3RRSとの間に位置し、第1抗体の2本の軽鎖ならびに第2抗体の1本の重鎖及び1本の軽鎖をコードするSOIは、第3RRSと第2RRSとの間に位置する。ある特定の実施形態では、複数の抗体の重鎖及び軽鎖コピーの異なる組合せをコードするSOIは、第1RRSと第3RRSとの間に、かつ第3RRSと第2RRSとの間に位置する。
【0095】
ある特定の実施形態では、SOIの数は、SOIを発現する宿主細胞の力価及び/または比生産性を増加させるように選択される。例えば、限定する意図はないが、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれを超えるSOIの組込みは、力価及び/または比生産性の増加をもたらし得る。
【0096】
抗体発現との関連において、SOIをコードする追加の重鎖または軽鎖の包含は、力価及び/または比生産性の増加をもたらし得る。例えば、限定する意図はないが、1本の重鎖及び1本の軽鎖をコードする配列(HL)から1本の重鎖及び2本の軽鎖をコードする配列(HLL)にコピー数を増加させる場合、力価及び/または比生産性の増加が達成され得る。同様に、以下の実施例で概要が述べられるように、HLL(3つのSOI)からHLL-HL(5つのSOI)またはHLL-HLL(6つのSOI)に増加させると、力価及び/または比生産性の増加が可能になり得る。さらに、コピー数をHLL-HL(5つのSOI)またはHLL-HLHL(7つのSOI)に増加させると、力価及び/または比生産性の増加が可能になり得る。重鎖及び軽鎖SOIコピー数の追加の選択肢としては、HHL、HHL-H、HLL-H、HHL-HH、HHL-HL、HHL-LL、HLL-HH、HLL-HL、HLL-LL、HHL-HHL、HHL-HHH、HHL-HLL、HHK-LLL、HLL-HHL、HLL-HHH、HLL-LLL、HHL-HHHL、HHL-HHHH、HHL-HHLL、HHL-HLLL、HHL-LLLL、HLL-HHHL、HLL-HHHH、HLL-HLLL、及びHLL-LLLLが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、追加コピーの包含は単一ゲノム座位で生じるが、ある特定の実施形態では、SOIコピーが2箇所以上の座位に組み込まれ得、例えば、複数のコピーが、単一座位に組み込まれ得、1つ以上のコピーが1つ以上の追加の座位に組み込まれ得る。
【0097】
ある特定の実施形態では、SOIの位置、例えば、1つのSOIが、別のSOIと比較して3’側または5’側に位置するかどうかは、SOIを発現する宿主細胞の力価及び/または比生産性を増加させるように選択される。例えば、限定する意図はないが、抗体産生との関連において、重鎖及び軽鎖SOIの組込み位置は、力価及び/または比生産性の増加をもたらし得る。図23A~D及び以下に提示される実施例で概要が述べられるように、重鎖及び軽鎖SOIの相対位置は、SOIコピー数に変化がないにもかかわらず、力価及び比生産性に影響を与え得る。
【0098】
4.宿主細胞
本明細書で開示される主題は、ヌクレオチド配列の標的組込み及び目的のポリペプチドの発現に好適な宿主細胞を提供する。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2及びそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子、または宿主細胞ゲノムの座位を含み、その座位は、配列番号1~7及びそれらと少なくとも50%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0099】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、真核生物宿主細胞である。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である。
【0100】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されるような293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるような、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞、Y0細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、及びPER.C6(登録商標)細胞からなる群から選択される。
【0101】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は細胞株である。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、ある特定の世代数で培養されている細胞株である。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、初代細胞である。
【0102】
ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドの発現は、発現レベルがある特定のレベルに維持され、10、20、30、50、100、200、または300世代にわたって20%未満で増加する、または減少する場合に安定している。ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドの発現は、培養物がいずれの選択も行うことなく維持され得る場合に安定している。ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドの発現は、目的の遺伝子のポリペプチド産物が、約1g/L、約2g/L、約3g/L、約4g/L、約5g/L、約10g/L、約12g/L、約14g/L、または約16g/Lに到達する場合に高い。
【0103】
本明細書で開示される主題は、目的のポリペプチドを産生する方法にも関する。ある特定の実施形態では、そのような方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の細胞を培養することを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた少なくとも2つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、少なくとも1つの外因性SOI及び1つの選択マーカーが、第1及び第3RRSに隣接し、少なくとも1つの外因性SOIが、第2及び第3RRSに隣接すること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の細胞を培養することを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらの少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内に組み込まれた2つのRRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供すること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の細胞を培養することを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内に組み込まれた少なくとも2つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供し、少なくとも1つの外因性SOI及び1つの選択マーカーが、第1及び第3RRSに隣接し、少なくとも1つの外因性SOIが、第2及び第3RRSに隣接すること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の細胞を培養することを含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドが産生され、細胞培養培地中に分泌される。ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドは、宿主細胞内で発現かつ保持される。ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドは、宿主細胞膜で発現される、宿主細胞膜中に挿入される、かつ宿主細胞膜中で保持される。
【0105】
目的の外因性ヌクレオチドまたはベクターは、従来の細胞生物学の方法、例えば、トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、または注入を含むが、これらに限定されない方法によって宿主細胞中に導入され得る。ある特定の実施形態では、目的の外因性ヌクレオチドまたはベクターは、脂質ベースのトランスフェクション法、リン酸カルシウムベースのトランスフェクション法、カチオン性ポリマーベースのトランスフェクション法、またはナノ粒子ベースのトランスフェクションを含む化学物質ベースのトランスフェクション法によって宿主細胞中に導入される。ある特定の実施形態では、目的の外因性ヌクレオチドは、ウイルス媒介形質導入、例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアデノ随伴ウイルス媒介形質導入を含むが、これらに限定されない形質導入によって宿主細胞中に導入される。ある特定の実施形態では、目的の外因性ヌクレオチドまたはベクターは、遺伝子銃媒介注入によって宿主細胞中に導入される。ある特定の実施形態では、DNA及びRNA分子の両方が、本明細書に記載される方法を使用して宿主細胞中に導入される。
【0106】
5.標的組込み
標的組込みは、外因性ヌクレオチド配列が、宿主細胞ゲノムの1箇所以上の所定部位に組み込まれることを可能にする。ある特定の実施形態では、標的組込みは、1つ以上のRRSを認識するリコンビナーゼによって媒介される。ある特定の実施形態では、標的組込みは、相同組換えによって媒介される。ある特定の実施形態では、標的組込みは、外因性部位特異的ヌクレアーゼ、続いてHDR及び/またはNHEJによって媒介される。
【0107】
5.1.リコンビナーゼ媒介組換えによる標的組込み
「組換え認識配列」(RRS)は、リコンビナーゼによって認識されるヌクレオチド配列であり、リコンビナーゼ媒介組換え事象に必要かつ十分である。RRSは、組換え事象がヌクレオチド配列中で発生することになる位置を定義するために使用され得る。
【0108】
ある特定の実施形態では、RRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択される。
【0109】
ある特定の実施形態では、RRSは、Creリコンビナーゼによって認識され得る。ある特定の実施形態では、RRSは、FLPリコンビナーゼによって認識され得る。ある特定の実施形態では、RRSは、Bxb1インテグラーゼによって認識され得る。ある特定の実施形態では、RRSは、φC31インテグラーゼによって認識され得る。
【0110】
RRSがLoxP部位である場合のある特定の実施形態では、宿主細胞は、組換えを実施するためにCreリコンビナーゼを必要とする。RRSがFRT部位である場合のある特定の実施形態では、宿主細胞は、組換えを実施するためにFLPリコンビナーゼを必要とする。RRSがBxb1 attPまたはBxb1 attB部位である場合のある特定の実施形態では、宿主細胞は、組換えを実施するためにBxb1インテグラーゼを必要とする。RRSがφC31 attPまたはφC31attB部位である場合のある特定の実施形態では、宿主細胞は、組換えを実施するためにφC31インテグラーゼを必要とする。リコンビナーゼは、酵素のコード配列を含む発現ベクターを使用して宿主細胞中に導入され得る。
【0111】
Cre-LoxP部位特異的組換えシステムは、多くの生物学的実験システムで広く使用されている。Creは、34bpのLoxP配列を認識する38kDaの部位特異的DNAリコンビナーゼである。Creは、バクテリオファージP1に由来し、チロシンファミリーの部位特異的リコンビナーゼに属する。Creリコンビナーゼは、LoxP配列間の分子内及び分子間組換えの両方を媒介し得る。LoxP配列は、2つの13bp逆方向反復配列に隣接する8bpの非回文コア領域で構成される。Creリコンビナーゼは、13bpの反復配列に結合することによって、8bpのコア領域内の組換えを媒介する。Cre-LoxP媒介組換えは、高効率で行われ、他の宿主因子を一切必要としない。2つのLoxP配列が、同じヌクレオチド配列上で同じ方向に配置されている場合、Cre媒介組換えによって、2つのLoxP配列間に位置するDNA配列が共有結合閉環として切り取られることになる。2つのLoxP配列が、同じヌクレオチド配列上で逆位置に配置されている場合、Cre媒介組換えによって、2つの配列間に位置するDNA配列の方向性が反転されることになる。LoxP配列はまた、異なる染色体間の組換えを促進するために、異なる染色体上にも配置され得る。2つのLoxP配列が2つの異なるDNA分子上に存在する場合、かつ1つのDNA分子が環状である場合、Cre媒介組換えによって、環状DNA配列の組込みがもたらされることになる。
【0112】
ある特定の実施形態では、LoxP配列は、野生型LoxP配列である。ある特定の実施形態では、LoxP配列は、変異体LoxP配列である。変異体LoxP配列は、Cre媒介組込みまたは置換の効率を高めるために開発されてきた。ある特定の実施形態では、変異体LoxP配列は、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、及びLox66配列からなる群から選択される。例えば、Lox71配列は、左側の13bp反復配列中に変異した5bpを有する。Lox66配列は、右側の13bp反復配列中に変異した5bpを有する。野生型及び変異体LoxP配列の両方とも、Cre依存的組換えを媒介し得る。
【0113】
FLP-FRT部位特異的組換えシステムは、Cre-Loxシステムに類似している。そのシステムはフリッパーゼ(FLP)リコンビナーゼを含み、これは酵母Saccharomyces cerevisiaeの2μmプラスミドに由来する。FLPは、チロシンファミリーの部位特異的リコンビナーゼにも属する。FRT配列は、各々が8bpのスペーサーに隣接する13bpの2つの回文配列からなる34bpの配列である。FLPは、13bpの回文配列に結合し、8bpスペーサー内でDNA切断、交換及びライゲーションを媒介する。Creリコンビナーゼと同様に、2つのFRT配列の位置及び方向性によって、FLP媒介組換えの結果が決定される。ある特定の実施形態では、FRT配列は、野生型FRT配列である。ある特定の実施形態では、FRT配列は、変異体FRT配列である。野生型及び変異体FRT配列の両方とも、FLP依存的組換えを媒介し得る。ある特定の実施形態では、FRT配列は、応答性受容体ドメイン配列、例えば、これに限定されないが、タモキシフェン応答性受容体ドメイン配列などに融合される。
【0114】
Bxb1及びφC31は、セリンリコンビナーゼファミリーに属する。それらは両方ともバクテリオファージに由来し、溶原性を確立して細菌ゲノム中へのファージゲノムの部位特異的組込みを促進するためにこれらのバクテリオファージによって使用される。これらのインテグラーゼは、attP及びattB配列と称される短い(40~60bp)DNA基質間の部位特異的組換え事象を触媒し、その配列は、それぞれファージDNA及び細菌DNA上に位置する元々の付着部位である。組換え後、2つの新しい配列が形成され、これらはattL及びattR配列と称され、各々がattP及びattBに由来する半分の配列を含有する。組換えはまた、attL配列とattR配列との間で行われ、組み込まれたファージを細菌DNAから切り出すこともできる。両方のインテグラーゼは、追加の宿主因子による支援を一切受けることなく、組換えを触媒し得る。補助因子が一切存在しない場合、これらのインテグラーゼは、attPとattBとの間における一方向性の組換えを80%超の効率で媒介する。これらのインテグラーゼによって認識され得る短いDNA配列及び一方向性の組換えのため、これらの組換えシステムは、遺伝子工学の目的で広く使用されているCre-LoxP及びFRT-FLPシステムを補完するものとして開発されてきた。
【0115】
「一致RRS」及び「同種特異的RRS」という用語は、2つのRRS間で組換えが行われることを示す。ある特定の実施形態では、2つの一致RRSは同じである。ある特定の実施形態では、両方のRRSが野生型LoxP配列である。ある特定の実施形態では、両方のRRSが変異体LoxP配列である。ある特定の実施形態では、両方のRRSが野生型FRT配列である。ある特定の実施形態では、両方のRRSが変異体FRT配列である。ある特定の実施形態では、2つの一致RRSは異なる配列であるが、同じリコンビナーゼによって認識され得る。ある特定の実施形態では、第1一致RRSはBxb1 attP配列であり、第2一致RRSはBxb1 attB配列である。ある特定の実施形態では、第1一致RRSはφC31 attB配列であり、第2一致RRSはφC31 attB配列である。
【0116】
ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列は2つのRRSを含み、ベクターは、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致する2つのRRSを含む、すなわち、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1RRSが、ベクター上の第1RRSと一致し、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2RRSが、ベクター上の第2RRSと一致する。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1RRS及びベクター上の第1RRSは、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2RRS及びベクター上の第2RRSと同じである。そのような「単一ベクターRMCE」方針の非限定的な例は、図2Aに提示される。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1RRS及びベクター上の第1RRSは、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2RRS及びベクター上の第2RRSとは異なる。ある特定の実施形態では、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1RRS及びベクター上の第1RRSは、両方ともLoxP L3配列であり、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2RRS及びベクター上の第2RRSは、両方ともLoxP 2L配列である。
【0117】
ある特定の実施形態では、「2ベクターRMCE」方針が用いられる。例えば、限定する意図はないが、組込み外因性ヌクレオチド配列は3つのRRSを含み、例えば、第3RRS(「RRS3」)が第1RRS(「RRS1」)と第2RRS(「RRS2」)との間に存在する一方で、第1ベクターが、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1及び第3RRSと一致する2つのRRSを含み、第2ベクターが、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第3及び第2RRSと一致する2つのRRSを含む場合の配置であり得る。2ベクターRMCE方針の例が図4に示される。そのような例では、RRS1、RRS2、及びRRS3は異種特異的であり、例えば、それらは互いに交差反応しない。いくつかの実施形態では、1つのベクター(前方)は、RRS1、第1SOI及びプロモーターに続いて、開始コドン及びRRS3を(この順序で)含む。他方のベクター(後方)は、開始コドン(ATG)を持たないマーカーのコード配列に融合したRRS3、SOI2及びRRS2を(この順序で)含む。追加のヌクレオチドが、確実に融合タンパク質のインフレーム翻訳を行うために、RRS3部位と選択マーカー配列との間に挿入される場合がある。いくつかの実施形態では、第1SOIは抗体をコードする。いくつかの実施形態では、抗体は、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、第2SOIは抗体をコードする。いくつかの実施形態では、抗体は、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質である。ある特定の実施形態では、第1及び第2SOIによってコードされる抗体は、多重特異性、例えば、二重特異性抗体を形成するために対になる。
【0118】
そのような2ベクターRMCE方針は、RRSの各対間に適切な数のSOIを組み込むことによって、8つ以上のSOIの導入を可能にする。
【0119】
単一ベクター及び2ベクターRMCEの両方とも、宿主細胞ゲノムの所定の部位に対する1つ以上のドナーDNA分子(複数可)の一方向性組込み、及びドナーDNA上に存在するDNAカセットと、組込み部位が存在する宿主ゲノム上のDNAカセットとの正確な交換を可能にする。DNAカセットは、少なくとも1つの選択マーカー(しかしながら、ある特定の2ベクターRMCEの例では、「分割選択マーカー」が本明細書で概要が述べられているように使用され得る)及び/または少なくとも1つの外因性SOIに隣接する2つの異種特異的RRSを特徴とする。RMCEは、標的ゲノム座位及びドナーDNA分子内の2つの異種特異的RRS間における、リコンビナーゼによって触媒される二重組換え交差事象を含む。RMCEは、SOIまたは選択マーカーのコピーを、宿主細胞ゲノムの所定の座位に導入するように設計される。1回だけの交差事象を含む組換えとは異なり、RMCEは、原核生物ベクター配列が宿主細胞ゲノム中に導入されないように実施されることにより、宿主免疫または防御機構の不必要な誘導を減少させ得る、及び/または防止し得る。RMCE手順は、複数のDNAカセットで反復され得る。
【0120】
ある特定の実施形態では、標的組込みは、1回の交差組換え事象によって達成され、少なくとも1つの外因性SOIまたは少なくとも1つの選択マーカーに隣接する1つのRRSを含む1つの外因性ヌクレオチド配列が、宿主細胞ゲノムの所定の部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、標的組込みは、1回のRMCEによって達成され、2つの異種特異的RRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOIまたは少なくとも1つの選択マーカーを含むDNAカセットが、宿主細胞ゲノムの所定の部位に組み込まれる。ある特定の実施形態では、標的組込みは、2回のRMCEによって達成され、2つの異種特異的RRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOIまたは少なくとも1つの選択マーカーを各々が含む2つの異なるDNAカセットが、宿主細胞ゲノムの所定の部位に両方とも組み込まれる。ある特定の実施形態では、標的組込みは、複数回のRMCEによって達成され、2つの異種特異的RRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOIまたは少なくとも1つの選択マーカーを各々が含む、複数のベクターに由来するDNAカセットが、宿主細胞ゲノムの所定の部位に全て組み込まれる。ある特定の実施形態では、選択マーカーは、両方のRMCEの組込みが選択マーカーの発現を可能にするように、第1ベクター上で部分的にコードされ、第2ベクター上で部分的にコードされ得る。そのようなシステムの例は、図4に提示される。
【0121】
ある特定の実施形態では、リコンビナーゼ媒介組換えによる標的組込みは、原核生物ベクターに由来する配列と共に、宿主細胞ゲノムの、1箇所以上の所定の組込み部位に組み込まれた選択マーカーまたは1つ以上の外因性SOIをもたらす。ある特定の実施形態では、リコンビナーゼ媒介組換えによる標的組込みは、原核生物ベクターに由来する配列を含まない宿主細胞ゲノムの、1箇所以上の所定の組込み部位に組み込まれた選択マーカーまたは1つ以上の外因性SOIをもたらす。
【0122】
5.2 相同組換え、HDR、またはNHEJによる標的組込み
本明細書で開示される主題は、相同組換えによって、または外因性部位特異的ヌクレアーゼに続いてHDRもしくはNHEJによって媒介される標的組込みにも関する。
【0123】
相同組換えは、広範囲の配列相同性を共有するDNA分子間の組換えである。それは、二本鎖DNA切断の誤りのない修復を誘導するために使用され得、減数分裂中に配偶子の配列多様性を生成する。相同組換えは、2つの相同DNA分子間の遺伝情報交換を含むため、それは染色体上の遺伝子の全体的な配置を変更するわけではない。相同組換え中、二本鎖DNA(dsDNA)中にニックまたは切断が形成され、続いて一本鎖DNA末端による相同dsDNA分子の侵入、相同配列の対合、ホリデイジャンクションを形成する分岐点移動、及びホリデイジャンクションの最終的な解離が行われる。
【0124】
二本鎖切断(DSB)は、DNA損傷の最も深刻な形態であり、そのようなDNA損傷の修復は、全ての生物でゲノム完全性を維持するために不可欠である。DSBを修復するには、2つの主な修復経路が存在する。第1修復経路は、相同組換え修復(HDR)経路であり、相同組換えはHDRの最も一般的な形態である。HDRは細胞中に存在する相同DNAの存在を必要とするため、この修復経路は通常、細胞周期のS期及びG2期で活性となり、新たに複製された姉妹染色分体が相同鋳型として利用可能である。HDRはまた、DNA複製中に崩壊した複製フォークを修復するための主な修復経路でもある。HDRは、比較的誤りのない修復経路と考えられる。DSBの第2修復経路は、非相同末端結合(NHEJ)である。NHEJは、切断されたDNAの末端が相同DNA鋳型を必要とすることなく、一緒にライゲートされる修復経路である。
【0125】
標的組込みは、外因性部位特異的ヌクレアーゼに続いてHDRによって促進され得る。これは、相同組換えの頻度が、特定の標的ゲノム部位にDSBを導入することによって増加され得ることに起因する。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、TALエフェクタードメイン融合タンパク質、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連(Cas)エンドヌクレアーゼからなる群から選択され得る。
【0126】
CRISPR/Cas及びTALENシステムは、最も容易な構築及び高効率を提供する2つのゲノム編集ツールである。CRISPR/Casは、バクテリオファージの侵入に対する細菌の免疫防御機構として同定された。Casは、合成ガイドRNA(gRNA)によって誘導される場合、細胞中の特定のヌクレオチド配列と関連して、そのヌクレオチド配列中またはその周囲のDNAを、例えば、一本鎖切断、DSB、及び/または点変異のうち1つ以上を行うことによって編集できるヌクレアーゼである。TALENは、操作された部位特異的ヌクレアーゼであり、これはTALE(転写活性化因子様エフェクター)のDNA結合ドメイン及び制限エンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインで構成される。DNA結合ドメインモノマーの超可変残基領域中に存在するアミノ酸を変更することによって、様々な人工TALENが、様々なヌクレオチド配列を標的とするために作製され得る。その後、DNA結合ドメインはヌクレアーゼを標的配列に誘導し、DSBを作製する。
【0127】
相同組換えまたはHDRによる標的組込みは、組込み部位への相同配列の存在を含む。ある特定の実施形態では、相同配列はベクター上に存在する。ある特定の実施形態では、相同配列は、ポリヌクレオチド上に存在する。
【0128】
ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたベクターは、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と、または少なくとも1つの選択マーカーに隣接する配列番号1~7から選択される配列と相同なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたベクターは、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と、または少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIに隣接する配列番号1~7から選択される配列と相同なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたベクターは、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットは、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたベクターは、DNAカセットに隣接するLOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットは、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、ベクターヌクレオチド配列は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と、または配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。ある特定の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択される。
【0129】
ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたポリヌクレオチドは、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と、または少なくとも1つの選択マーカーに隣接する配列番号1~7から選択される配列と相同なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたポリヌクレオチドは、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と、または少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIに隣接する配列番号1~7から選択される配列と相同なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたポリヌクレオチドは、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットは、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込みを目的としたポリヌクレオチドは、DNAカセットに隣接するLOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットは、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む。ある特定の実施形態では、隣接ヌクレオチド配列は、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びXP_003512331.2からなる群から選択される内因性遺伝子と、または配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0130】
ある特定の実施形態では、相同組換えは、いずれの補助因子も用いることなく実施される。ある特定の実施形態では、相同組換えは、組込み可能なベクターの存在によって促進される。ある特定の実施形態では、組込みベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及び組込みファージベクターからなる群から選択される。
【0131】
5.3 調節された標的組込み
主にコードされるタンパク質が発現困難であるという理由から、タンパク質発現レベルが最適ではない場合が多く存在する。発現困難なタンパク質の低発現レベルは原因が多岐にわたり、その特定が困難となり得る。ある1つの可能性は、宿主細胞中で発現されるタンパク質の毒性である。そのような場合、調節された発現システムは、タンパク質をコードする目的の配列が誘導性プロモーターの制御下にある場合に毒性タンパク質を発現させるために使用され得る。これらのシステムでは、発現困難なタンパク質の発現は、調節因子、例えば、小分子、例えば、これらに限定されないが、テトラサイクリンまたはその類似体であるドキシサイクリン(DOX)などが培養物に添加される場合にのみ促される。毒性タンパク質の発現を調節すると、毒性作用を軽減することができ、培養物が産生前に所望の細胞増殖を達成することを可能にする。ある特定の実施形態では、調節された標的組込み(RTI)システムは、特定の座位、例えば、1つ以上のRRSを含む外因性核酸配列に組み込まれ、それに機能的に連結される調節プロモーター下で転写されるSOIを含む。ある特定の実施形態では、RTIシステムは、発現困難な分子、例えば、これに限定されないが、抗体などの低タンパク質発現の根本的な原因を決定するために使用され得る。ある特定の実施形態では、RTIシステムにおけるSOIの発現を選択的に止める能力は、SOIの発現を、観察された有害作用に関連付けるために使用され得る。
【0132】
ある特定の実施形態では、発現困難な分子の根本的原因分析中における転写及び細胞株多様性の影響を最小限に抑えるために、調節された標的組込み(RTI)システムが使用され得る。例えば、限定する意図はないが、TI宿主中におけるSOIの発現は、調節因子、例えば、ドキシサイクリンの培養物に添加することによって誘導され得る。ある特定の実施形態では、RTIベクターは、テトラサイクリン調節プロモーターを利用してSOIを発現し、これは、例えば、それ自体が宿主細胞のゲノムの組込み部位に組み込まれる、RRSを含む外因性核酸配列中に組み込まれ得、それによってSOIの調節された発現を可能にする。
【0133】
ある特定の実施形態では、本開示に記載されるRTIシステムは、対照細胞株と比較した場合の、SOI、例えば、治療用抗体の低タンパク質発現に関する根本的な原因(複数可)の決定を成功させるために使用され得る。ある特定の実施形態では、RTI細胞株中におけるSOI、例えば、治療用抗体の相対的発現が低いことが確認されると、SOIの細胞内蓄積及び分泌レベルは、タンパク質翻訳阻害剤処理、例えば、Dox及びシクロヘキシミドを活用することによって評価され得る。
【0134】
5.4 調節されたシステム
本明細書で開示される主題は、TIに使用するための調節されたシステムにも関する。例えば、限定する意図はないが、そのような調節は、転写抑制因子または活性化因子と構成的または最小プロモーターとの調節された結合によって、mRNA合成をブロックまたは活性化するための遺伝子スイッチに基づき得る。ある特定の非限定的な実施形態では、抑制は、例えば、タンパク質が転写開始を立体的にブロックするリプレッサータンパク質と結合することによって、または転写サイレンサーを介して転写を能動的に抑制することによって達成され得る。ある特定の非限定的な実施形態では、哺乳動物またはウイルスのエンハンサーレス最小プロモーターの活性化は、活性化ドメインへの調節された結合によって達成され得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、転写抑制因子または活性化因子の条件付き結合は、外的刺激に応答してプロモーターと結合するアロステリックタンパク質を使用することによって達成され得る。ある特定の実施形態では、転写抑制因子または活性化因子の条件付き結合は、隔離タンパク質から放出されることにより、標的プロモーターと結合し得る細胞内受容体を使用することによって達成され得る。ある特定の実施形態では、転写抑制因子または活性化因子の条件付き結合は、化学的誘導二量体化因子を使用することによって達成され得る。
【0136】
ある特定の実施形態では、本開示のTIシステムに使用されるアロステリックタンパク質は、抗生物質、細菌クオラムセンシングメッセンジャー、異化代謝産物に、または温度、例えば、冷たさもしくは熱さなどの培養パラメータに応答して転写活性を調節するタンパク質であり得る。ある特定の実施形態では、そのようなRTIシステムは、例えば、代替炭素源のための異化遺伝子を制御する細菌抑制因子が、哺乳動物細胞に移入されている場合に異化代謝産物に基づくものであり得る。ある特定の実施形態では、標的プロモーターの抑制は、リプレッサーCymRのクマート応答性結合によって達成され得る。ある特定の実施形態では、異化代謝産物に基づくシステムは、単純ヘルペスVP16トランス活性化ドメインに融合した、原核生物リプレッサーHdnoRの6-ヒドロキシニコチン応答性結合によるキメラプロモーターの活性化に依存し得る。
【0137】
ある特定の実施形態では、TIシステムは、クオラムセンシング分子による集団内及び集団間コミュニケーションを管理する原核生物に由来するクオラムセンシングに基づく発現システムであり得る。これらのクオラムセンシング分子は標的細胞の受容体に結合し、特定のレギュロンスイッチの開始をもたらす同族プロモーターに対する受容体の親和性を調節する。ある特定の実施形態では、クオラムセンシング分子は、N-(3-オキソ-オクタノイル)-ホモセリンラクトンであり得、その存在下で、TraR-p65融合タンパク質は、TraR特異的オペレーター配列に融合した最小プロモーターからの発現を活性化する。ある特定の実施形態では、クオラムセンシング分子は、あるシステム中においてブチロラクトンSCB1(ラセミ2-(1’-ヒドロキシ-6-メチルヘプチル)-3-(ヒドロキシメチル)-ブタノリド)であり得、そのシステムとは、Streptomyces coelicolor A3(2)ScbRリプレッサーに基づき、これはSCB1の不存在下でその同族オペレーターOScbRと結合する。ある特定の実施形態では、クオラムセンシング分子は、RTIシステムに使用されるホモセリン由来の誘導物質であり得、Pseudomonas aeruginosaクオラムセンシングリプレッサーRhlR及びLasRは、SV40 T抗原核局在化配列及び単純ヘルペスVP16ドメインに融合され、特定のオペレーター配列を含有するプロモーター(lasボックス)を活性化し得る。
【0138】
ある特定の実施形態では、本開示のRTIシステムに使用されるアロステリックタンパク質を調節する誘導分子は、クマート、イソプロピル-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)、マクロライド、6-ヒドロキシニコチン、ドキシサイクリン、ストレプトグラミン、NADH、テトラサイクリンであり得るが、これらに限定されない。
【0139】
ある特定の実施形態では、本開示のRTIシステムに使用される細胞内受容体は、細胞質または核内受容体であり得る。ある特定の実施形態では、本開示のRTIシステムは、小分子を使用することによって、タンパク質の隔離及び阻害から転写因子を解放することを利用し得る。ある特定の実施形態では、本開示のRTIシステムはステロイド調節に依存し得、ホルモン受容体は、サイトゾルのHSP90から放出されて核に移動し、選択されたプロモーターを活性化し得る天然または人工転写因子に融合される。ある特定の実施形態では、変異体受容体が使用され、これらは内因性ステロイドホルモンによるクロストークを回避するために、合成ステロイド類似体によって調節され得る。ある特定の実施形態では、受容体は、4-ヒドロキシタモキシフェンに応答するエストロゲン受容体バリアントまたはRU486によって誘導可能なプロゲステロン受容体変異体であり得る。ある特定の実施形態では、ヒト核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)に基づく核内受容体由来のロシグリタゾン応答性転写スイッチが、本開示のRTIシステムに使用され得る。ある特定の実施形態では、ステロイド応答性受容体のバリアントはRheoSwitchであり得、これはGal4 DNA結合ドメイン及びVP16トランス活性化因子に融合した改変Choristoneura fumiferanaエクジソン受容体及びマウスレチノイドX受容体(RXR)に基づく。合成エクジソンの存在下で、RheoSwitchバリアントは、Gal4応答エレメントのいくつかの反復配列に融合した最小プロモーターと結合し、それを活性化し得る。
【0140】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるRTIシステムは、同族オペレーターと融合した最小コアプロモーターの活性化のために、DNA結合タンパク質及び転写活性化因子の化学的誘導二量体化を利用し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるRTIシステムは、FKBPとFRBとのラパマイシン調節二量体化を利用し得る。このシステムでは、FRBはp65トランス活性化因子に融合され、FKBPは、操作された最小インターロイキン-12プロモーターの上流に配置される同族オペレーター部位に特異的なジンクフィンガードメインに融合される。ある特定の実施形態では、FKBPは変異され得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるRTIシステムは、細菌ジャイレースBサブユニット(GyrB)を利用し得、GyrBは、抗生物質クーママイシンの存在下で二量体化し、ノボビオシンで解離する。
【0141】
ある特定の実施形態では、本開示のRTIシステムは、調節されたsiRNA発現のために使用され得る。ある特定の実施形態では、調節されたsiRNA発現システムは、テトラサイクリン、マクロライド、またはOFF型及びON型のQuoRexシステムであり得る。ある特定の実施形態では、RTIシステムは、Xenopus末端オリゴピリミジンエレメント(TOP)を使用し得、これは5’非翻訳領域中にヘアピン構造を形成することによって翻訳開始をブロックする。
【0142】
ある特定の実施形態では、本開示に記載されるRTIシステムは、気相制御発現、例えば、アセトアルデヒド誘導調節(AIR)システムを利用し得る。AIRシステムは、Aspergillus nidulans AlcR転写因子を用いることができ、これは、非毒性濃度の気体または液体アセトアルデヒドの存在下で、最小ヒトサイトメガロウイルスプロモーターに融合したAlcR特異的オペレーターから組み立てられたPAIRプロモーターを特異的に活性化する。
【0143】
ある特定の実施形態では、本開示のRTIシステムは、Tet-OnまたはTet-Offシステムを利用し得る。そのようなシステムでは、1つ以上のSOIの発現は、テトラサイクリンまたはその類似体であるドキシサイクリンによって調節され得る。
【0144】
ある特定の実施形態では、本開示のRTIシステムは、PIP-onまたはPIP-offシステムを利用し得る。そのようなシステムでは、SOIの発現は、例えば、プリスチナマイシン、テトラサイクリン及び/またはエリスロマイシンによって調節され得る。
【0145】
6.TI宿主細胞の調製及び使用
本明細書で開示される主題は、宿主細胞中への外因性ヌクレオチド配列の標的組込み方法に関する。ある特定の実施形態では、方法は、外因性ヌクレオチド配列を宿主細胞中に組み込み、その後のSOIの標的組込みに好適な宿主細胞を作製することに関する。ある特定の実施形態では、方法は、リコンビナーゼ媒介組換えを含む。ある特定の実施形態では、方法は、相同組換え、HDR、及び/またはNHEJを含む。
【0146】
6.1 リコンビナーゼ媒介組換えを使用したTI宿主細胞の調製
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0147】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらの少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0148】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)TI宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つの異種特異的RRSを含む第1DNAカセットを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つの異種特異的RRSを含む第2DNAカセットを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼが、RRSを認識してRMCEを1回実施すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0149】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらの少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つの異種特異的RRSを含む第1DNAカセットを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つの異種特異的RRSを含む第2DNAカセットを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼが、RRSを認識してRMCEを1回実施すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0150】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全てのRRSが異種特異的であること、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、c)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、d)1つ以上のリコンビナーゼを導入し、その1つ以上のリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにe)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。ある特定の実施形態では、第1ベクター上に選択マーカー全体を有するのではなく、第1ベクターは、第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列を含み、第2ベクターは、RRSの上流に、かつ第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーを含む。
【0151】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらの少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全てのRRSが異種特異的であること、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、c)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、d)1つ以上のリコンビナーゼを導入し、その1つ以上のリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにe)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。ある特定の実施形態では、第1ベクター上に選択マーカー全体を有するのではなく、第1ベクターは、第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列を含み、第2ベクターは、RRSの上流に、かつ第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーを含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含む第1DNAカセットを含み、3つ全てのRRSが異種特異的であること、b)a)で提供される細胞中に、第2DNAカセットを含む第1ベクターを導入し、その第2DNAカセットが、第1DNAカセットの第1及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つの異種特異的RRSを含むこと、c)a)で提供される細胞中に、第3DNAカセットを含む第2ベクターを導入し、その第3DNAカセットが、第1DNAカセットの第2及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つの異種特異的RRSを含むこと、d)1つ以上のリコンビナーゼを導入し、その1つ以上のリコンビナーゼが、RRSを認識してRMCEを2回実施すること、ならびにe)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。ある特定の実施形態では、第1ベクター上に選択マーカー全体を有するのではなく、第1ベクターは、第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列を含み、第2ベクターは、RRSの上流に、かつ第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーを含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含む第1DNAカセットを含み、3つ全てのRRSが異種特異的であること、b)a)で提供される細胞中に、第2DNAカセットを含む第1ベクターを導入し、その第2DNAカセットが、第1DNAカセットの第1及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つの異種特異的RRSを含むこと、c)a)で提供される細胞中に、第3DNAカセットを含む第2ベクターを導入し、その第3DNAカセットが、第1DNAカセットの第2及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つの異種特異的RRSを含むこと、d)1つ以上のリコンビナーゼを導入し、その1つ以上のリコンビナーゼが、RRSを認識してRMCEを2回実施すること、ならびにe)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。ある特定の実施形態では、第1ベクター上に選択マーカー全体を有するのではなく、第1ベクターは、第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列を含み、第2ベクターは、RRSの上流に、かつ第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーを含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する1つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上のRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する1つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する1つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上のRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する1つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0156】
本明細書で開示される主題は、目的のポリペプチドを産生する方法にも関し、本方法は、a)本明細書に記載されるTI宿主細胞を提供すること、b)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)のTI宿主細胞を培養することを含む。
【0157】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0158】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0159】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、3つのRRSを含むベクターを導入し、そのベクターの第1RRSが組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1RRSと一致し、そのベクターの第2RRSが組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2RRSと一致し、少なくとも1つの第2選択マーカーが第1RRSと第2RRSとの間に位置すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼが、ベクター及び組込み外因性ヌクレオチド配列上の両方の第1及び第2RRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI宿主細胞を選択することによって、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0160】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、3つのRRSを含むベクターを導入し、そのベクターの第1RRSが組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1RRSと一致し、そのベクターの第2RRSが組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2RRSと一致し、少なくとも1つの第2選択マーカーが第1RRSと第2RRSとの間に位置すること、c)リコンビナーゼを導入し、そのリコンビナーゼが、ベクター及び組込み外因性ヌクレオチド配列上の両方の第1及び第2RRSを認識すること、ならびにd)第2選択マーカーを発現するTI宿主細胞を選択することによって、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0161】
6.2 相同組換え、HDR、またはNHEJを使用した宿主細胞の標的改変方法
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7と少なくとも約90%相同であること、b)ベクターをTI宿主細胞中に導入し、そのベクターが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットが、少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含むこと、c)選択マーカーを選択し、ゲノム座位中に組み込まれたSOIを有するTI宿主細胞を単離して目的のポリペプチドを発現させることを含む。ある特定の実施形態では、ベクターのDNAカセットは、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む。
【0162】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するためのTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、b)ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入し、そのポリヌクレオチドが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットが、少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含むこと、c)選択マーカーを選択し、ゲノム座位中に組み込まれたSOIを有するTI宿主細胞を単離して目的のポリペプチドを発現させることを含む。ある特定の実施形態では、ベクターのDNAカセットは、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む。
【0163】
ある特定の実施形態では、相同組換えは、組込みベクターによって促進される。ある特定の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、トランスポゾンは、PiggyBac(PB)トランスポゾンシステムであり得る。
【0164】
ある特定の実施形態では、組込みは、外因性ヌクレアーゼによって促進される。ある特定の実施形態では、外因性ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、TALエフェクタードメイン融合タンパク質、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連(Cas)エンドヌクレアーゼからなる群から選択される。
【0165】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、b)ベクターをTI宿主細胞中に導入し、そのベクターが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットが、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカーを含むこと、c)選択マーカーを選択し、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0166】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、b)ポリヌクレオチドをTI宿主細胞中に導入し、そのポリヌクレオチドが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットが、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカーを含むこと、c)選択マーカーを選択し、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0167】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、b)ベクターを宿主細胞中に導入し、そのベクターが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットが3つのRRSを含み、第3RRS及び少なくとも1つの選択マーカーが第1RRSと第2RRSとの間に位置すること、ならびにc)選択マーカーを選択し、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0168】
ある特定の実施形態では、本開示は、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、b)ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入し、そのポリヌクレオチドが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、そのDNAカセットが3つのRRSを含み、第3RRS及び少なくとも1つの選択マーカーが第1RRSと第2RRSとの間に位置すること、ならびにc)選択マーカーを選択し、その後の標的組込みに好適なTI宿主細胞を単離することを含む。
【0169】
ある特定の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)TI宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびに第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、少なくとも1つの目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全てのRRSが異種特異的であること、b)a)で提供される細胞中に、少なくとも1つの組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、c)a)で提供される細胞中に、少なくとも1つの組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2及び第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、d)1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、その1つ以上のリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにe)第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、少なくとも1つの目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。ある特定の実施形態では、第1ベクター上に選択マーカー全体を有するのではなく、第1ベクターは、第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列を含み、第2ベクターは、RRSの上流に、かつ第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーを含む。
【0171】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)TI宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が1つ以上のRRSを含むこと、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の1つ以上のRRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの外因性SOIに隣接する1つ以上のRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、そのリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにd)誘導物質の存在下で外因性SOIを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。
【0172】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドを発現する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRS及び調節可能なプロモーターに隣接する少なくとも1つの外因性SOIを含む宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびにb)SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下で細胞を培養することを含む。
【0173】
ある特定の実施形態では、本開示は、目的の第1及び第2ポリペプチド(ここで第1及び第2ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る)を発現するTI宿主細胞を調製する方法を提供し、本方法は、a)宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、その座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、その外因性ヌクレオチド配列が、第1、第2RRS及び第1RRSと第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全てのRRSが異種特異的であること、b)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第1及び第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第1外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、c)a)で提供される細胞中に、組込み外因性ヌクレオチド配列上の第2及び第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第2SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、d)1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、その1つ以上のリコンビナーゼがRRSを認識すること、ならびにe)誘導物質の存在下で少なくとも第1及び第2外因性SOIを発現するTI細胞を選択することによって、目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む。ある特定の実施形態では、第1ベクター上に選択マーカー全体を有するのではなく、第1ベクターは、第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列を含み、第2ベクターは、RRSの上流に、かつ第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーを含む。
【0174】
7.産物
本開示の宿主細胞は、任意の目的の分子、例えば、目的のポリペプチドの発現に使用され得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、ポリペプチド、例えば、哺乳動物ポリペプチドの発現に使用され得る。そのようなポリペプチドの非限定的な例としては、ホルモン、受容体、融合タンパク質、調節因子、成長因子、補体系因子、酵素、凝固因子、抗凝固因子、キナーゼ、サイトカイン、CDタンパク質、インターロイキン、治療用タンパク質、診断用タンパク質及び抗体が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は治療用抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は診断用抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト化抗体である。
【0175】
ある特定の実施形態では、本明細書における定義内に包含されるポリペプチドの例としては、例えば、レニンなどの哺乳動物ポリペプチド、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、リポタンパク質、アルファ-1-アンチトリプシン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、グルカゴン、レプチン、凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォンウィルブランド因子など、プロテインCなどの抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿もしくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)など、ボンベシン、トロンビン、造血成長因子、腫瘍壊死因子-アルファ及び-ベータ、腫瘍壊死因子受容体、例えば、細胞死受容体5及びCD120など、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、Bリンパ球刺激因子(BLyS)、増殖誘導リガンド(APRIL)、エンケファリナーゼ、RANTES(活性化時に調節され、T細胞が正常に発現かつ分泌される)、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ)、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン、ミュラー管抑制物質、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、ベータ-ラクタマーゼなどの微生物タンパク質、DNase、IgE、CTLA-4などの細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、インヒビン、アクチビン、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、血管内皮増殖因子ファミリータンパク質(例えば、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びP1GF)、血小板由来成長因子(PDGF)ファミリータンパク質(例えば、PDGF-A、PDGF-B、PDGF-C、PDGF-D、及びそれらの二量体)、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー、例えば、aFGF、bFGF、FGF4、及びFGF9など、上皮成長因子(EGF)、ホルモンまたは成長因子の受容体、例えば、VEGF受容体(複数可)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、及びVEGFR3)、上皮成長因子(EGF)受容体(複数可)(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3、及びErbB4受容体)、血小板由来成長因子(PDGF)受容体(複数可)(例えば、PDGFR-α及びPDGFR-β)、ならびに線維芽細胞増殖因子受容体(複数可)など、TIEリガンド(アンジオポエチン、ANGPT1、ANGPT2)、アンジオポエチン受容体、例えば、TIE1及びTIE2など、プロテインAまたはD、リウマチ因子、神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)など、またはNGF-bなどの神経成長因子、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF-アルファ及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはTGF-β5を含むTGF-ベータなど、インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP)、CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20など、エリスロポエチン、骨誘導因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、ケモカイン、例えば、CXCL12及びCXCR4など、インターフェロン、例えば、インターフェロン-アルファ、-ベータ、及び-ガンマなど、コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF、サイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10など、ミッドカイン、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜タンパク質、崩壊促進因子、ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部など、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、インテグリン、例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAMなど、エフリン、Bv8、デルタ様リガンド4(DLL4)、Del-1、BMP9、BMP10、フォリスタチン、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱因子(SF)、Alk1、Robo4、ESM1、パールカン、EGF様ドメインマルチプル7(EGFL7)、CTGF及びそのファミリーメンバー、トロンボスポンジン、例えば、トロンボスポンジン1及びトロンボスポンジン2など、コラーゲン、例えば、コラーゲンIV及びコラーゲンXVIIIなど、ニューロピリン、例えば、NRP1及びNRP2など、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、Notchタンパク質、例えば、Notch1及びNotch4など、セマフォリン、例えば、Sema3A、Sema3C、及びSema3Fなど、腫瘍関連抗原、例えば、CA125(卵巣癌抗原)など、イムノアドヘシン、ならびに上に列挙したポリペプチドのいずれかの断片及び/またはバリアントに加えて、例えば、上に列挙したタンパク質のいずれかを含む1つ以上のタンパク質に結合する抗体断片を含む抗体が挙げられる。
【0176】
ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドは、二重特異性、三重特異性または多重特異性ポリペプチド、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体の様々な分子形式が当該技術分野において既知であり、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al.,Mol Immunol 67(2015)95-106を参照のこと)。本明細書にさらに含まれる多重特異性抗体の特定の種類は、標的細胞、例えば、腫瘍細胞上の表面抗原に、及びT細胞の再標的化により標的細胞を死滅させることを目的としたT細胞受容体(TCR)複合体の活性化インバリアント構成成分、例えば、CD3などに同時に結合するように設計された二重特異性抗体である。二重特異性抗体形式の他の例としては、2つのscFv分子が柔軟なリンカーによって融合されている、いわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞誘導体)分子(例えば、WO2004/106381、WO2005/061547、WO2007/042261、及びWO2008/119567、Nagorsen and Bauerle,Exp Cell Res 317,1255-1260(2011)を参照のこと)、ダイアボディ(Holliger et al.,Prot Eng 9,299-305(1996))及びそれらの誘導体、例えば、タンデムダイアボディ(「TandAb」、Kipriyanov et al.,J Mol Biol 293,41-56(1999))など、ダイアボディ形式に基づいているが、さらなる安定化のためにC末端ジスルフィド架橋を特徴とする「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnson et al.,J Mol Biol 399,436-449(2010))、ならびにいわゆるtriomabという全ハイブリッドマウス/ラットIgG分子(Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36,458-467(2010)に概説されている)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に含まれる特定のT細胞二重特異性抗体形式は、WO2013/026833、WO2013/026839、WO2016/020309、Bacac et al.,Oncoimmunology 5(8)(2016)e1203498に記載されている。
【0177】
ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、構成的に、または調節された目的の治療用タンパク質または分子を発現しながら、シャペロン、タンパク質修飾酵素、shRNA、gRNAまたは他のタンパク質もしくはペプチドの発現に使用され得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞によって発現されるポリペプチドは、いずれかのタンパク質、例えば、8MPI、8MP2、8MP38(GDFIO)、8MP4、8MP6、8MP8、CSFI(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、EPO、FGF1(αFGF)、FGF2(βFGF)、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFN81、IFNG、IFNWI、FEL1、FEL1(イプシロン)、FEL1(ゼータ)、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFBb3、LTA(TNF-β)、LTB、TNF(TNF-α)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM-L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、HGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、IL1R1、IL1R2、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIF1、HGF、LEP(レプチン)、PTN、及びTHPO.kからなる群から選択されるサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質、及びサイトカイン受容体を含むが、これらに限定されないタンパク質に結合する、またはそれと相互作用する場合がある。
【0179】
いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞によって発現されるポリペプチドは、CCLI(1-309)、CCL2(MCP-1/MCAF)、CCL3(MIP-Iα)、CCL4(MIP-Iβ)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP-Iδ)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MDP-3b)、CCL20(MIP-3α)、CCL21(SLC/エクソダス-2)、CCL22(MDC/STC-1)、CCL23(MPIF-1)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CXCLI(GROI)、CXCL2(GR02)、CXCL3(GR03)、CXCL5(ENA-78)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCL10(IP10)、CXCL11(1-TAC)、CXCL12(SDFI)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL1(SCYDI)、SCYEI、XCLI(リンホタクチン)、XCL2(SCM-Iβ)、BLRI(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCRI(CKRI/HM145)、CCR2(mcp-IRB IRA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBII)、CCR8(CMKBR8/TER1/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、XCR1(GPR5/CCXCR1)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、HM74、IL8RA(IL8Rα)、IL8RB(IL8Rβ)、LTB4R(GPR16)、TCP10、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5、C5R1、CSF3、GRCC10(C10)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HDF1、HDF1α、DL8、PRL、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREM1、TREM2、及びVHLからなる群から選択されるケモカイン、ケモカイン受容体、またはケモカイン関連タンパク質に結合する、またはそれと相互作用する場合がある。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞によって発現されるポリペプチドは、0772P(CA125、MUC16)(すなわち、卵巣癌抗原)、ABCF1、ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、ADORA2A、アグリカン、AGR2、AICDA、AIF1、AIG1、AKAP1、AKAP2、AMH、AMHR2、アミロイドベータ、ANGPTL、ANGPT2、ANGPTL3、ANGPTL4、ANPEP、APC、APOC1、AR、ASLG659、ASPHD1(アスパラギン酸ベータヒドロキシラーゼドメイン含有1、LOC253982)、AZGP1(亜鉛-a-糖タンパク質)、B7.1、B7.2、BAD、BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3、BAG1、BAI1、BCL2、BCL6、BDNF、BLNK、BLRI(MDR15)、BMP1、BMP2、BMP3B(GDF10)、BMP4、BMP6、BMP8、BMPR1A、BMPR1B(骨形成タンパク質受容体型IB)、BMPR2、BPAG1(プレクチン)、BRCA1、ブレビカン、C19orf10(IL27w)、C3、C4A、C5、C5R1、CANT1、CASP1、CASP4、CAV1、CCBP2(D6/JAB61)、CCL1(1-309)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP1δ)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MIP-3β)、CCL2(MCP-1)、MCAF、CCL20(MIP-3α)、CCL21(MTP-2)、SLC、エクソダス-2、CCL22(MDC/STC-1)、CCL23(MPIF-1)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CCL3(MTP-Iα)、CCL4(MDP-Iβ)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCNA1、CCNA2、CCND1、CCNE1、CCNE2、CCR1(CKRI/HM145)、CCR2(mcp-IRβ/RA)、CCR3(CKR/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKBR7/EBI1)、CCR8(CMKBR8/TER1/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、CD164、CD19、CD1C、CD20、CD200、CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム)、CD24、CD28、CD3、CD37、CD38、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD40、CD40L、CD44、CD45RB、CD52、CD69、CD72、CD74、CD79A(CD79α、免疫グロブリン関連アルファ、B細胞特異的タンパク質)、CD79B、CDS、CD80、CD81、CD83、CD86、CDH1(E-カドヘリン)、CDH10、CDH12、CDH13、CDH18、CDH19、CDH20、CDH5、CDH7、CDH8、CDH9、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、CDKN1A(p21/WAF1/Cip1)、CDKN1B(p27/Kip1)、CDKN1C、CDKN2A(P16INK4a)、CDKN2B、CDKN2C、CDKN3、CEBPB、CER1、CHGA、CHGB、キチナーゼ、CHST10、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、CLDN3、CLDN7(クローディン-7)、CLL-1(CLEC12A、MICL、及びDCAL2)、CLN3、CLU(クラスタリン)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CNR1、COL18A1、COL1A1、COL4A3、COL6A1、補体因子D、CR2、CRP、CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形腫由来増殖因子)、CSFI(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(GCSF)、CTLA4、CTNNB1(b-カテニン)、CTSB(カテプシンB)、CX3CL1(SCYDI)、CX3CR1(V28)、CXCL1(GRO1)、CXCL10(IP-10)、CXCL11(I-TAC/IP-9)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GRO3)、CXCL5(ENA-78/LIX)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR4、CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、Gタンパク質共役受容体)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、CYB5、CYC1、CYSLTR1、DAB2IP、DES、DKFZp451J0118、DNCLI、DPP4、E16(LAT1、SLC7A5)、E2F1、ECGF1、EDG1、EFNA1、EFNA3、EFNB2、EGF、EGFR、ELAC2、ENG、ENO1、ENO2、ENO3、EPHB4、EphB2R、EPO、ERBB2(Her-2)、EREG、ERK8、ESR1、ESR2、ETBR(エンドセリンB型受容体)、F3(TF)、FADD、FasL、FASN、FCER1A、FCER2、FCGR3A、FcRH1(Fc受容体様タンパク質1)、FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C)、FGF、FGF1(αFGF)、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF2(bFGF)、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF8、FGF9、FGFR、FGFR3、FIGF(VEGFD)、FELl(イプシロン)、FILl(ゼータ)、FLJ12584、FLJ25530、FLRTI(フィブロネクチン)、FLT1、FOS、FOSL1(FRA-1)、FY(DARC)、GABRP(GABAa)、GAGEB1、GAGEC1、GALNAC4S-6ST、GATA3、GDF5、GDNF-Ra1(GDNFファミリー受容体アルファ1、GFRA1、GDNFR、GDNFRA、RETL1、TRNR1、RET1L、GDNFR-アルファ1、GFR-アルファ-1)、GEDA、GFI1、GGT1、GM-CSF、GNASI、GNRHI、GPR2(CCR10)、GPR19(Gタンパク質共役受容体19、Mm.4787)、GPR31、GPR44、GPR54(KISS1受容体、KISS1R、GPR54、HOT7T175、AXOR12)、GPR81(FKSG80)、GPR172A(Gタンパク質共役受容体172A、GPCR41、FLJ11856、D15Ertd747e)、GRCCIO(C10)、GRP、GSN(ゲルゾリン)、GSTP1、HAVCR2、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、HGF、HIF1A、HOP1、ヒスタミン及びヒスタミン受容体、HLA-A、HLA-DOB(MHCクラスII分子(Ia抗原)のベータサブユニット、HLA-DRA、HM74、HMOXI、HUMCYT2A、ICEBERG、ICOSL、1D2、IFN-a、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNB1、IFNガンマ、DFNW1、IGBP1、IGF1、IGF1R、IGF2、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP6、IL-l、IL10、IL10RA、IL10RB、IL11、IL11RA、IL-12、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA1、IL13RA2、IL14、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17B、IL17C、IL17R、IL18、IL18BP、IL18R1、IL18RAP、IL19、IL1A、IL1B、ILIF10、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1F9、IL1HY1、IL1R1、IL1R2、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RL1、IL1RL2、ILIRN、IL2、IL20、IL20Rα、IL21R、IL22、IL-22c、IL22R、IL22RA2、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL30、IL3RA、IL4、IL4R、IL5、IL5RA、IL6、IL6R、IL6ST(糖タンパク質130)、インフルエンザA型、インフルエンザB型、EL7、EL7R、EL8、IL8RA、DL8RB、IL8RB、DL9、DL9R、DLK、INHA、INHBA、INSL3、INSL4、IRAK1、IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2)、ERAK2、ITGA1

、ITGA2、ITGA3、ITGA6(a6インテグリン)、ITGAV、ITGB3、ITGB4(b4インテグリン)、α4β7及びαEβ7インテグリンヘテロ二量体、JAG1、JAK1、JAK3、JUN、K6HF、KAI1、KDR、KITLG、KLF5(GCボックスBP)、KLF6、KLKIO、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、KRT1、KRT19(ケラチン19)、KRT2A、KHTHB6(毛髪特異的H型ケラチン)、LAMAS、LEP(レプチン)、LGR5(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5、GPR49、GPR67)、Lingo-p75、Lingo-Troy、LPS、LTA(TNF-b)、LTB、LTB4R(GPR16)、LTB4R2、LTBR、LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質)、Ly6E(リンパ球抗原6複合体、座位E、Ly67、RIG-E、SCA-2、TSA-1)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体、座位G6D、Ly6-D、MEGT1)、LY6K(リンパ球抗原6複合体、座位K、LY6K、HSJ001348、FLJ35226)、MACMARCKS、MAGまたはOMgp、MAP2K7(c-Jun)、MDK、MDP、MIB1、ミッドカイン、MEF、MIP-2、MKI67、(Ki-67)、MMP2、MMP9、MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン)、MS4A1、MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315)、MSMB、MT3(メタロチオネクチン-111)、MTSS1、MUC1(ムチン)、MYC、MY088、Napi3b(NaPi2bとしても知られる)(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質輸送体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性リン酸輸送体3b)、NCA、NCK2、ニューロカン、NFKB1、NFKB2、NGFB(NGF)、NGFR、NgR-Lingo、NgR-Nogo66(Nogo)、NgR-p75、NgR-Troy、NME1(NM23A)、NOX5、NPPB、NR0B1、NR0B2、NR1D1、NR1D2、NR1H2、NR1H3、NR1H4、NR112、NR113、NR2C1、NR2C2、NR2E1、NR2E3、NR2F1、NR2F2、NR2F6、NR3C1、NR3C2、NR4A1、NR4A2、NR4A3、NR5A1、NR5A2、NR6A1、NRP1、NRP2、NT5E、NTN4、ODZI、OPRD1、OX40、P2RX7、P2X5(プリン受容体P2Xリガンド依存性イオンチャネル5)、PAP、PART1、PATE、PAWR、PCA3、PCNA、PD-L1、PD-L2、PD-1、POGFA、POGFB、PECAM1、PF4(CXCL4)、PGF、PGR、ホスファカン、PIAS2、PIK3CG、PLAU(uPA)、PLG、PLXDC1、PMEL17(シルバーホモログ、SILV、D12S53E、PMEL17、SI、SIL)、PPBP(CXCL7)、PPID、PRI、PRKCQ、PRKDI、PRL、PROC、PROK2、PSAP、PSCAhlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA2700050C12、RIKEN cDNA2700050C12遺伝子)、PTAFR、PTEN、PTGS2(COX-2)、PTN、RAC2(p21 Rac2)、RARB、RET(retがん原遺伝子、MEN2A、HSCR1、MEN2B、MTC1、PTC、CDHF12、Hs.168114、RET51、RET-ELE1)、RGSI、RGS13、RGS3、RNF110(ZNF144)、ROBO2、S100A2、SCGB1D2(リポフィリンB)、SCGB2A1(マンマグロビン2)、SCGB2A2(マンマグロビン1)、SCYEI(内皮単球活性化サイトカイン)、SDF2、セマ5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7回トロンボスポンジン反復配列(1型及び1型様)、膜貫通ドメイン(TM)及び短い細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B)、SERPINA1、SERPINA3、SERP1NB5(マスピン)、SERPINE1(PAI-1)、SERPDMF1、SHBG、SLA2、SLC2A2、SLC33A1、SLC43A1、SLIT2、SPPI、SPRR1B(Sprl)、ST6GAL1、STABI、STAT6、STEAP(前立腺の6回膜貫通上皮抗原)、STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2、6回膜貫通前立腺タンパク質)、TB4R2、TBX21、TCPIO、TOGFI、TEK、TENB2(推定膜貫通プロテオグリカン)、TGFA、TGFBI、TGFB1II、TGFB2、TGFB3、TGFBI、TGFBRI、TGFBR2、TGFBR3、THIL、THBSI(トロンボスポンジン-1)、THBS2、THBS4、THPO、TIE(Tie-1)、TMP3、組織因子、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TMEFF1(EGF様及び2つのフォリスタチン様ドメインを有する膜貫通タンパク質1、トモレグリン-1)、TMEM46(shisaホモログ2)、TNF、TNF-a、TNFAEP2(B94)、TNFAIP3、TNFRSFIIA、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF21、TNFRSF5、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(AP03L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM-L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSFS(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TOLLIP、Toll様受容体、TOP2A(トポイソメラーゼEa)、TP53、TPM1、TPM2、TRADD、TMEM118(ringフィンガータンパク質、膜貫通2、RNFT2、FLJ14627)、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、TREM1、TREM2、TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4)、TRPC6、TSLP、TWEAK、チロシナーゼ(TYR、OCAIA、OCA1A、チロシナーゼ、SHEP3)、VEGF、VEGFB、VEGFC、バーシカン、VHLC5、VLA-4、XCL1(リンホタクチン)、XCL2(SCM-1b)、XCRI(GPR5/CCXCRI)、YY1、及び/またはZFPM2に結合する、またはそれと相互作用する場合がある。
【0180】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法に従って産生される抗体(または二重特異性抗体)の標的分子としては、CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CDS、CD16、CD19、CD20、CD21(CR2(補体受容体2)またはC3DR(C3d/エプスタインバーウイルス受容体)またはHs.73792)、CD33、CD34、CD64、CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2)、CD79b(CD79B、CD79β、IGb(免疫グロブリン関連ベータ)、B29)など、ErbB受容体ファミリーのCD200メンバー、例えば、EGF受容体、HER2、HER3、またはHER4受容体など、細胞接着分子、例えば、LFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、アルファ4/ベータ7インテグリン、及びアルファv/ベータ3インテグリンでそのアルファまたはベータサブユニットのいずれかを含むもの(例えば、抗CD11a、抗CD18、または抗CD11b抗体)など、成長因子、例えば、VEGF-A、VEGF-Cなど、組織因子(TF)、アルファインターフェロン(アルファIFN)、TNFアルファ、インターロイキン、例えば、IL-1ベータ、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL17AF、IL-1S、IL-13Rアルファ1、IL13Rアルファ2、IL-4R、IL-5R、IL-9R、IgEなど、血液型抗原、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、mpl受容体、CTLA-4、RANKL、RANK、RSV Fタンパク質、プロテインCなどが挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、補体タンパク質C5(例えば、ヒトC5に特異的に結合する抗C5アゴニスト抗体)に特異的に結合する抗体(または二重特異性抗体などの多重特異性抗体)を産生するために使用され得る。
【0181】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、インフルエンザウイルスB赤血球凝集素、すなわち、「fluB」に特異的に結合する抗体(または二重特異性抗体などの多重特異性抗体)(例えば、インフルエンザBウイルスの山形系統に由来する赤血球凝集素と結合する抗体、インフルエンザBウイルスのビクトリア系統に由来する赤血球凝集素と結合する抗体、インフルエンザBウイルスの祖先系統に由来する赤血球凝集素と結合する抗体、またはインフルエンザBウイルスの山形系統、ビクトリア系統、及び祖先系統に由来する赤血球凝集素とインビトロ及び/またはインビボで結合する抗体)を産生するために使用され得る。抗FluB抗体に関するさらなる詳細は、WO2015/148806に記載されていて、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0182】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生される抗体(または二重特異性抗体)は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)-1もしくはLRP-8またはトランスフェリン受容体と、ならびにベータ-セクレターゼ(BACE1またはBACE2)、アルファ-セクレターゼ、ガンマ-セクレターゼ、タウ-セクレターゼ、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、細胞死受容体6(DR6)、アミロイドベータペプチド、アルファ-シヌクレイン、パーキン、ハンチンチン、p75NTR、CD40及びカスパーゼ-6からなる群から選択される少なくとも1つの標的と結合する。
【0183】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生される抗体は、CD40に対するヒトIgG2抗体である。ある特定の実施形態では、抗CD40抗体は、RG7876である。
【0184】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生されるポリペプチドは、標的免疫サイトカインである。ある特定の実施形態では、標的免疫サイトカインは、CEA-IL2v免疫サイトカインである。ある特定の実施形態では、CEA-IL2v免疫サイトカインは、RG7813である。ある特定の実施形態では、標的免疫サイトカインは、FAP-IL2v免疫サイトカインである。ある特定の実施形態では、FAP-IL2v免疫サイトカインは、RG7461である。
【0185】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、CEA及び少なくとも1つの追加の標的分子と結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、腫瘍標的サイトカイン及び少なくとも1つの追加の標的分子と結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、IL2v(すなわち、インターロイキン2バリアント)に融合され、IL1に基づく免疫サイトカイン及び少なくとも1つの追加の標的分子と結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、T細胞二重特異性抗体(すなわち、二重特異性T細胞誘導体またはBiTE)である。
【0186】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、IL-1アルファ及びIL-1ベータ、IL-12及びIL-1S、IL-13及びIL-9、IL-13及びIL-4、IL-13及びIL-5、IL-5及びIL-4、IL-13及びIL-1ベータ、IL-13及びIL-25、IL-13及びTARC、IL-13及びMDC、IL-13及びMEF、IL-13及びTGF-~、IL-13及びLHRアゴニスト、IL-12及びTWEAK、IL-13及びCL25、IL-13及びSPRR2a、IL-13及びSPRR2b、IL-13及びADAMS、IL-13及びPED2、IL17A及びIL17F、CEA及びCD3、CD3及びCD19、CD138及びCD20、CD138及びCD40、CD19及びCD20、CD20及びCD3、CD3S及びCD13S、CD3S及びCD20、CD3S及びCD40、CD40及びCD20、CD-S及びIL-6、CD20及びBR3、TNFアルファ及びTGF-ベータ、TNFアルファ及びIL-1ベータ、TNFアルファ及びIL-2、TNFアルファ及びIL-3、TNFアルファ及びIL-4、TNFアルファ及びIL-5、TNFアルファ及びIL6、TNFアルファ及びIL8、TNFアルファ及びIL-9、TNFアルファ及びIL-10、TNFアルファ及びIL-11、TNFアルファ及びIL-12、TNFアルファ及びIL-13、TNFアルファ及びIL-14、TNFアルファ及びIL-15、TNFアルファ及びIL-16、TNFアルファ及びIL-17、TNFアルファ及びIL-18、TNFアルファ及びIL-19、TNFアルファ及びIL-20、TNFアルファ及びIL-23、TNFアルファ及びIFNアルファ、TNFアルファ及びCD4、TNFアルファ及びVEGF、TNFアルファ及びMIF、TNFアルファ及びICAM-1、TNFアルファ及びPGE4、TNFアルファ及びPEG2、TNFアルファ及びRANKリガンド、TNFアルファ及びTe38、TNFアルファ及びBAFF、TNFアルファ及びCD22、TNFアルファ及びCTLA-4、TNFアルファ及びGP130、TNFa及びIL-12p40、VEGF及びアンジオポエチン、VEGF及びHER2、VEGF-A及びHER2、VEGF-A及びPDGF、HER1及びHER2、VEGFA及びANG2、VEGF-A及びVEGF-C、VEGF-C及びVEGF-D、HER2及びDR5、VEGF及びIL-8、VEGF及びMET、VEGFR及びMET受容体、EGFR及びMET、VEGFR及びEGFR、HER2及びCD64、HER2及びCD3、HER2及びCD16、HER2及びHER3、EGFR(HER1)及びHER2、EGFR及びHER3、EGFR及びHER4、IL-14及びIL-13、IL-13及びCD40L、IL4及びCD40L、TNFR1及びIL-1R、TNFR1及びIL-6RならびにTNFR1及びIL-18R、EpCAM及びCD3、MAPG及びCD28、EGFR及びCD64、CSPGs及びRGM A、CTLA-4及びBTN02、IGF1及びIGF2、IGF1/2及びErb2B、MAG及びRGM A、NgR及びRGM A、NogoA及びRGM A、OMGp及びRGM A、POL-l及びCTLA-4、ならびにRGM A及びRGM Bから選択される少なくとも2つの標的分子に結合する。
【0187】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体である。ある特定の実施形態では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、RG7802である。抗CEA/抗CD3二重特異性抗体に関するさらなる詳細は、WO2014/121712で提供されていて、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0188】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体である。ある特定の実施形態では、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体二重特異性抗体は、CrossmAbである。ある特定の実施形態では、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体は、RG7716である。
【0189】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体である。ある特定の実施形態では、抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体は、RG7221である。ある特定の実施形態では、抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体は、CAS番号1448221-05-3である。
【0190】
他の多くの抗体及び/または他のタンパク質が、本開示においては宿主細胞によって発現されてよく、上記の一覧は限定することを意図するものではない。
【0191】
本開示の宿主細胞は、製造規模における目的の分子の作製に用いられてよい。治療用タンパク質、または他のタンパク質の「製造規模」での作製は、作製されるタンパク質及び必要性に応じて、約400L~約80,000Lの範囲の細胞培養物を利用する。通常、そのような製造規模での作製では、約400L~約25,000Lの細胞培養サイズを利用する。この範囲内で、特定の細胞培養サイズ、例えば、4,000L、約6,000L、約8,000、約10,000、約12,000L、約14,000L、または約16,000Lなどが利用されてよい。
【0192】
本開示の宿主細胞は、現在の細胞培養方法に使用される非TI細胞と比較した場合に、より短い時間枠での、大量の目的分子の作製に用いられ得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、現在の細胞培養方法に使用される非TI細胞と比較した場合に、目的分子の質を改善するために用いられ得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、細胞ストレス及びクローン不安定性を経時的に引き起こし得る産物によって引き起こされ得る慢性毒性を防止することにより、シードトレイン安定性を増強するために使用され得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、急性毒性産物の最適発現に使用され得る。
【0193】
ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞、TIシステムは、細胞培養プロセスの最適化及び/またはプロセス開発に使用され得る。
【0194】
ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、従来の細胞培養方法に使用される非TI細胞と比較した場合に、目的分子の作製を約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、または約10週間早めるために使用され得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、従来の細胞培養方法に使用される非TI細胞と比較した場合に、目的分子の採取を約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、または約10週間早めるために使用され得る。
【0195】
ある特定の実施形態では、本実施形態の宿主細胞は、従来の細胞培養方法に使用される非TI細胞と比較した場合に、目的分子の凝集レベルを減少させるために用いられ得る。
【0196】
ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、ランダムに組み込まれた宿主細胞と比較して、目的のポリペプチド(または複数のポリペプチド)の発現増加を達成するために使用され得る。例えば、限定する意図はないが、本開示の宿主細胞は、少なくとも3g/L、3.5g/L、4g/L、4.5g/L、5g/L、5.5g/L、6g/L、6.5g/L、7g/L、7.5g/L、8g/L、8.5g/L、9g/L、9.5g/L、10g/L、10.5g/L、11g/L、またはそれを超える力価で標準抗体及び半抗体の発現を、ならびに少なくとも1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、3.5g/L、4g/L、4.5g/L、5g/L、5.5g/L、6g/L、またはそれを超える力価で多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の発現を達成し得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、ランダム組込み宿主細胞と比較して、二重特異性含量の増加を達成し得る。例えば、限定する意図はないが、本開示の宿主細胞は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、98%、99%またはそれを超える二重特異性含量を達成し得る。
【0197】
ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、治療分子の選択されたサブユニットの構成的発現及び同じ治療分子の他の異なるサブユニットの調節された発現に使用され得る。ある特定の実施形態では、治療分子は、融合タンパク質であり得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、完全に組み立てられた抗体分子の発現及び分泌における各抗体サブユニットの役割及び効果を理解するために使用され得る。
【0198】
ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、調査ツールとして使用され得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、様々な細胞中における問題となる分子の低タンパク質発現に関する根本的原因を解決するための診断ツールとして使用され得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、観察された現象または細胞挙動を、細胞中の導入遺伝子発現と直接関連付けるために使用され得る。本開示の宿主細胞はまた、観察された挙動が細胞中において可逆的であるか否かを実証するために使用され得る。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、細胞中における導入遺伝子(複数可)の転写及び発現に関する問題を同定して軽減するために活用され得る。
【0199】
ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、発現困難な分子の導入遺伝子サブユニット、例えば、これらに限定されないが、抗体のHC及びLCサブユニットなどを、TIシステム中の平均分子のサブユニットと交換して、問題となるサブユニット(複数可)を同定するために使用され得る。ある特定の実施形態では、次いで、アミノ酸配列分析が、低タンパク質発現の原因となる可能性があるアミノ酸残基または領域を絞り込み、それに注力するために使用され得る。
【0200】
8.例示的な非限定的実施形態
A.標的組込み(TI)宿主細胞であって、前記宿主細胞ゲノムの特定の座位内における組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含み、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同である、前記TI宿主細胞。
【0201】
A1.前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ5’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される、Aに記載のTI宿主細胞。
【0202】
A2.前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ5’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド45269、NW_006884592.1のヌクレオチド207911、NW_006881296.1のヌクレオチド491909、NW_003616412.1のヌクレオチド79768、NW_003615063.1のヌクレオチド315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97705からの少なくとも15塩基対、少なくとも20塩基対、少なくとも30塩基対、少なくとも40塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも75塩基対、少なくとも100塩基対、少なくとも150塩基対、少なくとも200塩基対、少なくとも300塩基対、少なくとも400塩基対、少なくとも500塩基対、少なくとも1,000塩基対、少なくとも1,500塩基対、少なくとも2,000塩基対、少なくとも3,000塩基対の配列からなる群から選択される、Aに記載のTI宿主細胞。
【0203】
A3.前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ3’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される、Aに記載のTI宿主細胞。
【0204】
A4.前記組込み外因性ヌクレオチド配列のすぐ3’側の前記ヌクレオチド配列が、NW_006874047.1のヌクレオチド45270、NW_006884592.1のヌクレオチド207912、NW_006881296.1のヌクレオチド491910、NW_003616412.1のヌクレオチド79769、NW_003615063.1のヌクレオチド315266、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706からの少なくとも15塩基対、少なくとも20塩基対、少なくとも30塩基対、少なくとも40塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも75塩基対、少なくとも100塩基対、少なくとも150塩基対、少なくとも200塩基対、少なくとも300塩基対、少なくとも400塩基対、少なくとも500塩基対、少なくとも1,000塩基対、少なくとも1,500塩基対、少なくとも2,000塩基対、少なくとも3,000塩基対の配列からなる群から選択される、Aに記載のTI宿主細胞。
【0205】
A5.前記組込み外因性ヌクレオチド配列が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に機能的に連結される、A~A4のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0206】
A6.TI宿主細胞であって、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【0207】
A7.TI宿主細胞であって、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子に機能的に連結された組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【0208】
A8.TI宿主細胞であって、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される配列の全てまたは一部にすぐ隣接する組込み部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【0209】
A9.前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、A~A8のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0210】
A10.前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、A9に記載のTI宿主細胞。
【0211】
A11.前記TI宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、A9またはA10に記載のTI宿主細胞。
【0212】
A12.前記外因性ヌクレオチド配列が、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含み、前記RRSがリコンビナーゼによって認識され得る、A~A11のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0213】
A13.前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも2つのRRSを含む、A12に記載のTI宿主細胞。
【0214】
A14.前記リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFLPリコンビナーゼである、A12またはA13に記載のTI宿主細胞。
【0215】
A15.前記リコンビナーゼが、Bxb1インテグラーゼまたはφC31インテグラーゼである、A12またはA13に記載のTI宿主細胞。
【0216】
A16.前記RRSが、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択される、A12~A15のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0217】
A17.前記外因性ヌクレオチド配列が、第1及び第2RRS、ならびに前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの選択マーカーを含む、A13~A16のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0218】
A18.第1選択マーカーを含み、前記第1選択マーカーが、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、G418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸からなる群から選択される、A17に記載のTI宿主細胞。
【0219】
A19.第2選択マーカーをさらに含み、前記第1及び前記第2選択マーカーが異なる、A17またはA18に記載のTI宿主細胞。
【0220】
A20.前記第2選択マーカーが、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、G418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンテターゼ(GS)、アスパラギンシンテターゼ、トリプトファンシンテターゼ(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、ブラストサイジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸からなる群から選択される、A19に記載のTI宿主細胞。
【0221】
A21.第3選択マーカー及び内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含み、前記IRESが、前記第3選択マーカーに機能的に連結される、A19またはA20に記載のTI宿主細胞。
【0222】
A22.前記第3選択マーカーが、前記第1または前記第2選択マーカーとは異なる、A21に記載のTI宿主細胞。
【0223】
A23.前記第3選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカー、改良型GFP(eGFP)マーカー、合成GFPマーカー、黄色蛍光タンパク質(YFP)マーカー、改良型YFP(eYFP)マーカー、シアン蛍光タンパク質(CFP)マーカー、mPlumマーカー、mCherryマーカー、tdTomatoマーカー、mStrawberryマーカー、J-redマーカー、DsRed-モノマーマーカー、mOrangeマーカー、mKOマーカー、mCitrineマーカー、Venusマーカー、YPetマーカー、Emerald6マーカー、CyPetマーカー、mCFPmマーカー、Ceruleanマーカー、及びT-Sapphireマーカーからなる群から選択される、A21またはA22に記載のTI宿主細胞。
【0224】
A24.第3RRSをさらに含み、前記第3RRSが前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置し、前記第3RRSが、前記第1または前記第2RRSと比較して異種特異的である、A17~A23のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0225】
A25.前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの目的の外因性配列(SOI)を含む、A12~A24のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0226】
A26.前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む、A12~A25のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0227】
A27.前記外因性SOIが、前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する、A26に記載のTI宿主細胞。
【0228】
A28.前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、A26またはA27に記載のTI宿主細胞。
【0229】
A29.前記外因性ヌクレオチド配列が、前記第1RRSと前記第3RRSとの間に位置する少なくとも1つの外因性SOI、及び前記第3RRSと前記第2RRSとの間に位置する少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む、A24~A28のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0230】
A30.前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、A29に記載のTI宿主細胞。
【0231】
A31.前記SOIが、ランダムに組み込まれた宿主細胞と比較してより高いレベルで発現される抗体をコードする、A26に記載のTI宿主細胞。
【0232】
A32.前記抗体が、少なくとも3g/L、3.5g/L、4g/L、4.5g/L、5g/L、5.5g/L、6g/L、6.5g/L、7g/L、7.5g/L、8g/L、8.5g/L、9g/L、9.5g/L、10g/L、10.5g/L、11g/L、またはそれを超える力価で発現される標準抗体または半抗体である、A31に記載のTI宿主細胞。
【0233】
A33.前記抗体が、少なくとも1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、3.5g/L、4g/L、4.5g/L、5g/L、5.5g/L、6g/Lの力価で発現される多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である、A31に記載のTI宿主細胞。
【0234】
A34.前記抗体が二重特異性抗体であり、前記二重特異性含量が、ランダム組込み宿主細胞と比較して増加している、A31に記載のTI宿主細胞。
【0235】
A35.前記抗体が二重特異性抗体であり、前記二重特異性含量が、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、98%、99%またはそれを超える、A1に記載のTI宿主細胞。
【0236】
B.目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、前記TI宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する前記2つのRRSを含むベクターを導入すること、リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、前記リコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【0237】
B1.前記リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFLPリコンビナーゼである、Bに記載の方法。
【0238】
B2.前記リコンビナーゼが、Bxb1インテグラーゼまたはφC31インテグラーゼである、Bに記載の方法。
【0239】
B3.前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、B~B2のいずれか1項に記載の方法。
【0240】
B4.前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、請求項B~B3のいずれか1項に記載の方法。
【0241】
B5.前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、B4に記載の方法。
【0242】
B6.前記TI宿主細胞が、CHO宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、B4またはB5に記載の方法。
【0243】
C.目的のポリペプチドの発現方法であって、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含むTI宿主細胞を提供し、前記少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーが、前記TI宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRSに隣接し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびに前記目的のポリペプチドを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の前記細胞を培養することを含む、前記方法。
【0244】
C1.前記少なくとも1つの外因性SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、Cに記載の方法。
【0245】
D.少なくとも目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、前記宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全ての前記RRSが異種特異的であること、a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第1及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第2及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、前記1つ以上のリコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【0246】
D1.前記リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFLPリコンビナーゼである、Dに記載の方法。
【0247】
D2.前記リコンビナーゼが、Bxb1インテグラーゼまたはφC31インテグラーゼである、Dに記載の方法。
【0248】
D3.前記第1ベクターが、前記第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列をさらに含み、前記第2ベクターが、RRSの上流に、かつ前記第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーをさらに含む、Dに記載の方法。
【0249】
D4.前記第1SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、D~D3のいずれか1項に記載の方法。
【0250】
D5.前記第2SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、D~D3のいずれか1項に記載の方法。
【0251】
D6.前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、CまたはD~D5のいずれか1項に記載の方法。
【0252】
D7.前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、D6に記載の方法。
【0253】
D8.前記TI宿主細胞が、CHO宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、D7に記載の方法。
【0254】
E.目的のポリペプチドの発現方法であって、前記宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた少なくとも2つの外因性SOI及び少なくとも1つの選択マーカーを含む宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、少なくとも1つの外因性SOI及び1つの選択マーカーが、第1及び第3RRSに隣接し、少なくとも1つの外因性SOIが、第2及び前記第3RRSに隣接すること、ならびに前記目的のポリペプチドを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下でa)の前記細胞を培養することを含む、前記方法。
【0255】
E1.前記第1SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、Eに記載の方法。
【0256】
E2.前記第2SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、EまたはE1に記載の方法。
【0257】
E3.前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、E~E2のいずれか1項に記載の方法。
【0258】
E4.前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、E3に記載の方法。
【0259】
E5.前記TI宿主細胞が、CHO宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、E4に記載の方法。
【0260】
F.ベクターであって、
a)配列番号1の任意の部分から選択される2つの参照配列、
b)配列番号2の任意の部分から選択される2つの参照配列、
c)配列番号3の任意の部分から選択される2つの参照配列、
d)配列番号4の任意の部分から選択される2つの参照配列、
e)配列番号5の任意の部分から選択される2つの参照配列、
f)配列番号6の任意の部分から選択される2つの参照配列、または
g)配列番号7の任意の部分から選択される2つの参照配列
と少なくとも50%相同の2つのヌクレオチド配列を含み、前記配列がDNAカセットに隣接し、前記DNAカセットが、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含む、前記ベクター。
【0261】
F1.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも60%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Fに記載のベクター。
【0262】
F2.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも70%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Fに記載のベクター。
【0263】
F3.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも80%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Fに記載のベクター。
【0264】
F4.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも90%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Fに記載のベクター。
【0265】
F5.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも95%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Fに記載のベクター。
【0266】
F6.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも99%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Fに記載のベクター。
【0267】
F7.前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択される、F~F6のいずれか1項に記載のベクター。
【0268】
F8.前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、F~F7のいずれか1項に記載のベクター。
【0269】
G.目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、前記宿主細胞ゲノムの座位を含む宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ベクターを前記宿主細胞中に導入し、前記ベクターが、DNAカセットに隣接する配列番号1~7から選択される配列と少なくとも50%相同のヌクレオチド配列を含み、前記DNAカセットが、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー及び少なくとも1つの外因性SOIを含むこと、ならびに前記選択マーカーを選択し、前記ゲノムの前記座位中に組み込まれた前記SOIを有するTI宿主細胞を単離して前記目的のポリペプチドを発現させることを含む、前記方法。
【0270】
G1.前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択される、Gに記載の方法。
【0271】
G2.前記少なくとも1つのSOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、GまたはG1に記載の方法。
【0272】
G3.前記TI宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、G~G2のいずれか1項に記載の方法。
【0273】
G4.前記TI宿主細胞が、ハムスター宿主細胞、ヒト宿主細胞、ラット宿主細胞、またはマウス宿主細胞である、G3に記載の方法。
【0274】
G5.前記TI宿主細胞が、CHO宿主細胞、CHO K1宿主細胞、CHO K1SV宿主細胞、DG44宿主細胞、DUKXB-11宿主細胞、CHOK1S宿主細胞、またはCHO K1M宿主細胞である、G3またはG4に記載の方法。
【0275】
G6.前記少なくとも1つのSOI及び選択マーカーを含む前記核酸の前記組込みが、外因性ヌクレアーゼによって促進される、G1~G5のいずれか1項に記載の方法。
【0276】
G7.前記外因性ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、TALエフェクタードメイン融合タンパク質、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連(Cas)エンドヌクレアーゼからなる群から選択される、G6に記載の方法。
【0277】
G8.前記目的のポリペプチドが多重特異性抗体である、Gに記載の方法。
【0278】
G9.前記多重特異性抗体が二重特異性抗体である、G8に記載の方法。
【0279】
H.TI宿主細胞であって、前記宿主細胞ゲノムの、1箇所以上の特定の座位内における組込み部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含み、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同である、前記TI宿主細胞。
【0280】
H1.TI宿主細胞であって、LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列からなる群から選択される内因性遺伝子内における1箇所以上の組込み部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む、前記TI宿主細胞。
【0281】
H2.前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含み、前記RRSがリコンビナーゼによって認識され得る、H~H1のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0282】
H3.前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの外因性SOIをさらに含む、H2に記載のTI宿主細胞。
【0283】
H4.前記宿主細胞が、前記宿主細胞の前記ゲノムの第1座位に少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列及び前記宿主細胞の前記ゲノムの2箇所以上の第2座位に少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む、H~H3のいずれか1項に記載のTI宿主細胞。
【0284】
H5.前記第1座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0285】
H5.1.前記第1座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0286】
H5.2.前記第1座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0287】
H5.3.前記第1座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0288】
H5.4.前記第1座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0289】
H5.5.前記第1座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0290】
H5.6.前記第1座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0291】
H6.前記第1座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0292】
H6.1.前記第1座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0293】
H6.2.前記第1座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0294】
H6.3.前記第1座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0295】
H6.4.前記第1座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0296】
H6.5.前記第1座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0297】
H6.6.前記第1座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0298】
H7.前記第1座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0299】
H7.1.前記第1座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0300】
H7.2.前記第1座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0301】
H7.3.前記第1座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0302】
H7.4.前記第1座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0303】
H7.5.前記第1座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0304】
H7.6.前記第1座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0305】
H8.前記第1座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、または配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0306】
H8.1.前記第1座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0307】
H8.2.前記第1座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0308】
H8.3.前記第1座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0309】
H8.4.前記第1座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0310】
H8.5.前記第1座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0311】
H8.6.前記第1座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0312】
H9.前記第1座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、または配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0313】
H9.1.前記第1座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0314】
H9.2.前記第1座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0315】
H9.3.前記第1座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0316】
H9.4.前記第1座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0317】
H9.5.前記第1座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0318】
H9.6.前記第1座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0319】
H10.前記第1座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0320】
H10.1.前記第1座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0321】
H10.2.前記第1座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0322】
H10.3.前記第1座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0323】
H10.4.前記第1座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0324】
H10.5.前記第1座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0325】
H10.6.前記第1座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0326】
H11.前記第1座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0327】
H11.1.前記第1座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号1の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0328】
H11.2.前記第1座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号2の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0329】
H11.3.前記第1座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号3の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0330】
H11.4.前記第1座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号4の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0331】
H11.5.前記第1座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号5の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0332】
H11.6.前記第1座位が、配列番号7の全てまたは一部と少なくとも90%相同の配列を含み、前記第2座位が、配列番号6の全てまたは一部と少なくとも90%相同の少なくとも1つの配列を含む、H4に記載のTI宿主細胞。
【0333】
H12.前記第1座位が、LOC107977062遺伝子内の組込み部位であり、前記第2座位が、次の群:LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列から選択される遺伝子内の組込み部位である、H4に記載のTI宿主細胞。
【0334】
H13.前記第1座位が、LOC100768845遺伝子内の組込み部位であり、前記第2座位が、次の群:LOC107977062、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列から選択される遺伝子内の組込み部位である、H4に記載のTI宿主細胞。
【0335】
H14.前記第1座位が、ITPR2遺伝子内の組込み部位であり、前記第2座位が、次の群:LOC107977062、LOC100768845、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列から選択される遺伝子内の組込み部位である、H4に記載のTI宿主細胞。
【0336】
H15.前記第1座位が、ERE67000.1遺伝子内の組込み部位であり、前記第2座位が、次の群:LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、UBAP2、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列から選択される遺伝子内の組込み部位である、H4に記載のTI宿主細胞。
【0337】
H16.前記第1座位が、UBAP2遺伝子内の組込み部位であり、前記第2座位が、次の群:LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、MTMR2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列から選択される遺伝子内の組込み部位である、H4に記載のTI宿主細胞。
【0338】
H17.前記第1座位が、MTMR2遺伝子内の組込み部位であり、前記第2座位が、次の群LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、XP_003512331.2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列から選択される遺伝子内の組込み部位である、H4に記載のTI宿主細胞。
【0339】
H18.前記第1座位が、XP_003512331.2遺伝子内の組込み部位であり、前記第2座位が、次の群:LOC107977062、LOC100768845、ITPR2、ERE67000.1、UBAP2、MTMR2、及びそれらと少なくとも約90%相同の配列から選択される遺伝子内の組込み部位である、H4に記載のTI宿主細胞。
【0340】
H19.前記第1座位に組み込まれた前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、調節可能なプロモーターを含む、H4~H18に記載のTI宿主細胞。
【0341】
H20.前記第2座位に組み込まれた前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、調節可能なプロモーターを含む、H4~H18に記載のTI宿主細胞。
【0342】
H21.前記第1座位に組み込まれた前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列及び前記第2座位に組み込まれた前記少なくとも1つのヌクレオチド配列が、調節可能なプロモーターを含む、H4~H18に記載のTI宿主細胞。
【0343】
J.少なくとも1つの目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、前記TI宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する2つのRRSを含むこと、a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の2つのRRSと一致し、少なくとも1つの外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する前記2つのRRSを含むベクターを導入すること、リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、前記リコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記少なくとも1つの目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【0344】
J1.少なくとも1つの目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、前記宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの第1選択マーカーに隣接する第1及び第2RRS、ならびに前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全ての前記RRSが異種特異的であること、a)で提供される前記細胞中に、前記少なくとも1つの組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第1及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第1外因性SOI及び少なくとも1つの第2選択マーカーに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、a)で提供される前記細胞中に、前記少なくとも1つの組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第2及び前記第3RRSと一致し、少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、前記1つ以上のリコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびに前記第2選択マーカーを発現するTI細胞を選択することによって、前記少なくとも1つの目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【0345】
J2.目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、a)前記TI宿主細胞ゲノムの1箇所以上の座位内における部位に組み込まれた少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記1箇所以上の座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が1つ以上のRRSを含むこと、b)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の1つ以上のRRSと一致し、少なくとも1つの調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの外因性SOIに隣接する前記1つ以上のRRSを含むベクターを導入すること、c)リコンビナーゼまたはリコンビナーゼをコードする核酸を導入し、前記リコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびにd)誘導物質の存在下で前記目的の外因性ポリペプチドを発現するTI細胞を選択することによって、前記目的のポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【0346】
J3.目的のポリペプチドの発現方法であって、a)前記宿主細胞ゲノムの座位内に組み込まれた2つのRRS及び調節可能なプロモーターに隣接する少なくとも1つの外因性SOIを含む宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であること、ならびにb)前記SOIを発現し、そこから目的のポリペプチドを回収するのに好適な条件下で前記細胞を培養することを含む、前記方法。
【0347】
J4.目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞の調製方法であって、a)前記宿主細胞ゲノムの座位内における部位に組み込まれた外因性ヌクレオチド配列を含むTI宿主細胞を提供し、前記座位が、配列番号1~7から選択される配列と少なくとも約90%相同であり、前記外因性ヌクレオチド配列が、第1、第2RRS及び前記第1RRSと前記第2RRSとの間に位置する第3RRSを含み、全ての前記RRSが異種特異的であること、b)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第1及び前記第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第1外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第1ベクターを導入すること、c)a)で提供される前記細胞中に、前記組込み外因性ヌクレオチド配列上の前記第2及び前記第3RRSと一致し、調節可能なプロモーターに機能的に連結される少なくとも1つの第2外因性SOIに隣接する2つのRRSを含む第2ベクターを導入すること、d)1つ以上のリコンビナーゼ、または1つ以上のリコンビナーゼをコードする1つ以上の核酸を導入し、前記1つ以上のリコンビナーゼが前記RRSを認識すること、ならびにe)誘導物質の存在下で前記目的の第1及び第2外因性ポリペプチドを発現するTI細胞を選択することによって、前記目的の第1及び第2ポリペプチドを発現するTI宿主細胞を単離することを含む、前記方法。
【0348】
J5.少なくとも1つのSOIを含む核酸の前記組込みが、外因性ヌクレアーゼによって促進される、請求項J、J2、及びJ3のいずれか1項に記載の方法。
【0349】
J6.前記第1SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードし、前記第2SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、請求項J1またはJ4に記載の方法。
【0350】
J7.前記外因性ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、TALエフェクタードメイン融合タンパク質、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連(Cas)エンドヌクレアーゼからなる群から選択される、J5に記載の方法。
【0351】
J8.前記調節可能なプロモーターが、SV40及びCMVプロモーターからなる群から選択される、請求項J~J4のいずれか1項に記載の方法。
【0352】
J9.前記第1ベクターが、前記第1SOIの上流に、かつRRSの下流に隣接して配置されるコドンATGに機能的に連結されるプロモーター配列をさらに含み、前記第2ベクターが、RRSの上流に、かつ前記第2SOIの下流に隣接するATG転写開始コドンを欠く選択マーカーをさらに含む、請求項J2及びJ4のいずれか1項に記載の方法。
【0353】
K.ベクターであって、
a)配列番号1の任意の部分から選択される2つの参照配列、
b)配列番号2の任意の部分から選択される2つの参照配列、
c)配列番号3の任意の部分から選択される2つの参照配列、
d)配列番号4の任意の部分から選択される2つの参照配列、
e)配列番号5の任意の部分から選択される2つの参照配列、
f)配列番号6の任意の部分から選択される2つの参照配列、または
g)配列番号7の任意の部分から選択される2つの参照配列
と少なくとも50%相同の2つのヌクレオチド配列を含み、前記2つのヌクレオチド配列がDNAカセットに隣接し、前記DNAカセットが、調節可能なプロモーターに機能的に連結され、2つのRRSに隣接する少なくとも1つの外因性SOIを含む、前記ベクター。
【0354】
K1.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも60%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Kに記載のベクター。
【0355】
K2.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも70%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Kに記載のベクター。
【0356】
K3.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも80%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Kに記載のベクター。
【0357】
K4.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも90%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Kに記載のベクター。
【0358】
K5.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも95%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Kに記載のベクター。
【0359】
K6.前記ベクターが、前記2つの参照配列と少なくとも99%相同の2つのヌクレオチド配列を含む、Kに記載のベクター。
【0360】
K7.前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組込みファージベクター、非ウイルスベクター、トランスポゾン及び/またはトランスポザーゼベクター、インテグラーゼ基質、ならびにプラスミドからなる群から選択される、K~K6のいずれか1項に記載のベクター。
【0361】
K8.前記SOIが、一本鎖抗体、抗体軽鎖、抗体重鎖、一本鎖Fv断片(scFv)、またはFc融合タンパク質をコードする、K~K7のいずれか1項に記載のベクター。
【実施例0362】
以下の実施例は、本明細書で開示される主題の単なる例示であり、決して限定するものとして見なされるべきではない。
【0363】
実施例1:臨床用及び市販用細胞株開発を目的としたCHO宿主細胞の生産性の高い標的組込み部位の発見
この実施例は、高い生産性を有するCHOゲノム中における標的組込み座位を同定する方法について記載する。従来の細胞株開発(CLD)は、目的の配列(SOI)を持つプラスミドのランダム組込み(RI)に基づく。このプロセスは、予測不能かつ多大な労力を要する。そのため、高産生RIクローンを同定するには多大な努力が必要となる。従来のRI CLDとは異なり、標的組込み(TI)CLDは、CHOゲノム中の所定の「ホットスポット」に規定のコピー数(通常は1~2コピー)を有する導入遺伝子を導入する。低コピー数及び予備試験した組込み部位を考慮すると、TI細胞株は、RI株と比較して優れた安定性を有するはずである。さらに、選択マーカーは、適切なTIを有する細胞を選択するためだけに使用され、高レベルの導入遺伝子発現を有する細胞を選択するためには使用されないため、低変異原性マーカーを適用すると、配列バリアント(SV)の可能性を最小限に抑える場合があり、これはメトトレキサート(MTX)またはメチオニンスルホキシミン(MSX)のような選択剤の変異原性に部分的に起因する。
【0364】
図1は、抗体の安定した高発現を可能にする、CHO TI座位を同定するためのゲノムワイドスクリーニングステップの概要を示す略図である。CHOゲノム中の転写的に活性な配列をスクリーニングするために、2つのアプローチを利用して、抗体Aまたは抗体Bのいずれかを発現し、抗体配列がRRS1及びRRS2に隣接する抗体カセットをCHOゲノム中に導入した。1つのアプローチは従来のランダム組込み方法であって、他方は、トランスポザーゼ発現プラスミド及び抗体プラスミドの共トランスフェクションを必要とするトランスポザーゼに基づく組込みであった。15k~20kのトランスフェクタントを、方法の各々についてスクリーニングした。インタクトなIgG ELISAアッセイ及び遺伝子コピー解析に基づいて、抗体力価が高く、HC遺伝子コピー数が少ない合計で約300のクローンを、振盪フラスコ中において流加評価のために増殖させた。次いで、許容される力価及び産物品質特性を有する、2つの方法で同定した40の異なる可能性のある高度に転写的に活性な組込み部位を表す40のクローンをGFPランディングパッド交換のために選択し、TI宿主を生成した。
【0365】
転写的に活性な座位の抗体カセットを置き換えるために、同じRRS1及びRRS2に隣接するGFP遺伝子及び適切な選択マーカーをコードするランディングパッドをRMCE用に構築した。RMCEを開始するために、リコンビナーゼ及びGFPランディングパッドを上位40のクローンの各々に共トランスフェクトした。2つの選択マーカーを使用して、標的組込み事象を増強した。RMCEが成功すると、GFPランディングパッドが転写的に活性な座位を標的として抗体カセットを置き換えて、GFP発現の増加及び抗体発現の喪失をもたらすはずである。GFP-/mAB+からGFP+/mAb-への表現型の変化は、FACS分析を使用して容易に検出可能なはずである。GFP+/mAb-濃縮を、FACS分析を使用して40のRMCEプールのうち14で検出した。次いで、個々のTI宿主候補を単離するために、これらの14のRMCEプールの各々を単一細胞クローン化した。14のプールから合計で90の有力なTI宿主候補をFACS及びゲノムPCRの確認に基づいて選択し、元の抗体カセットが除去されて、目的の組込み部位においてGFPランディングパッドで置き換えた。続いて、これらの候補宿主のいくつかを、同じRRS1及びRRS2に隣接する試験抗体Cを使用して、それらのRMCEの能力及び効率について評価した。転写的に活性な座位を同定した方法に応じて、2つの二重選択スキームを利用し、標的抗体を発現する集団を生成した(図2A及び図2B)。ランディングパッドの構成は、2つのスクリーニング方法でわずかに異なっていた。TIトランスフェクションプールのRMCE効率に加えて抗体生産性に基づいて、7つの最終宿主を選択し、これらは抗体の高発現についてCHOK1M宿主中で7つの特有の組込み部位を表した。
【0366】
これらの7つの宿主を、標的座位増幅/次世代シーケンシング(TLA/NGS)によって分析し、組込み部位に隣接するCHOゲノム配列を同定することにより、目的の組込み部位が存在する可能性のある遺伝子配列を提供した。
表2-TI宿主細胞の組込み部位
【0367】
組込み部位に基づいて、5’隣接配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、及びNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705を含み得る。
【0368】
組込み部位に基づいて、3’隣接配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、及びNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117を含み得る。
【0369】
宿主のうち2つ、すなわち、宿主4及び7では、さらに分析したところ、単一のGFPランディングパッドがCHO宿主ゲノム中に挿入されていたことが示された。これらの2つの宿主では抗体配列が全く見られなかったため、このことは転写的に活性な座位を同定するために使用した最初の抗体カセットが完全に除去されたことを示していた。加えて、これらの2つのTI宿主から単離したゲノムDNAの全ゲノムシーケンシングを自社で実施した。これらの2つのTI宿主中では抗体特異的配列を一切検出しなかったが、GFP配列(ランディングパッドからの)は容易に検出した。TI宿主では、63倍超のゲノムカバレッジを達成した。TI宿主中に抗体A及びBが存在しないことをさらに保証するために、抗体A及びB以外の抗体を発現するTI細胞株からの複数のHCCF試料を、LC-MS実験を使用して評価した。LC-MSデータを、LC-MS/MSによる配列バリアント分析と同様のアプローチを使用して分析し、これは0.5%超のレベルでバリアントペプチドを検出する能力を有する。TI細胞株から採取した全ての試料中で、抗体AまたはBペプチドを一切検出しなかった。最後に、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)分析もChrombiosによって実施し、これらの2つのTI宿主ゲノム中におけるGFPランディングパッドの染色体位置を決定した。
【0370】
これらの2つの十分に特徴付けしたTI宿主を、合計で16の異なる標準抗体を用いて、臨床用細胞株開発におけるそれらのRMCEのロバスト性についてさらに評価した。図3は、これらのTI宿主によって生成された上位クローンの生産性を示す。歴史的に、ランダム組込みによって生成された細胞株の平均生産性は約3g/Lであった。試験したほとんどの場合で、TI細胞株は、平均してRIクローンと同等またはそれよりも良好な生産性を示した。
【0371】
TI細胞株は、抗体遺伝子コピー数が少ないため、RI細胞株よりも安定性が高く、SVが低いと予想した。クローン安定性のために、毎月の流加産生を4か月間毎月設定し、生産性をモニターした。表3は、TI宿主のうち1つによって生成されたTI細胞株の10%のみで、PSBから120日後に力価が20%を超えて低下したことを示した。歴史的に、RI細胞株の60%が同様の力価低下を有することとなる。このことは、同定した組込み部位が、安定した抗体発現に非常に好適であることを強く示唆している。TI細胞株を、NATベースの配列バリアント分析にも供した。RI細胞株と比較した場合に、TI細胞株では5%超のSV頻度が有意に低かった(4%対15%、表3)。
表3 TI対RIの利点
【0372】
実施例2:2プラスミドRMCE方針
標準抗体の高力価発現を達成し、多重鎖複合体形式を発現するという課題に対処するために、革新的な2プラスミドRMCE方針を開発した。2プラスミドRMCE方法では、8つ以上の鎖が同時にTI部位を標的とすることを可能にする。このアプローチは、抗体のHC及びLC鎖比を調節する柔軟性を向上させて生産性を改善するだけでなく、複数の鎖を有する複合分子に加えて、導入遺伝子、内因性遺伝子またはRNAiを抗体で標的し、細胞経路を変更することも可能である。
【0373】
2プラスミドRMCE方針は、3つのRRS部位を使用し、2つの独立したRMCEを同時に実施することを含む(図4)。したがって、上に記載されるTI宿主中のGFPランディングパッドを、RRS1またはRRS2部位のいずれかと交差活性しない第3RRS部位(RRS3)を含むように置き換えた。標的化する2つの発現プラスミドは、効率的標的化のために同じ隣接RRS部位を必要とし、一方の発現プラスミド(前方)はRRS1及びRRS3に隣接し、他方(後方)はRRS3及びRRS2に隣接する。2プラスミドRMCEの効率は低いと予想しているため、ストリンジェントな選択スキームが、稀なRMCE特有の事象を強化するのに有用である。2プラスミドRMCEには、少なくとも2つの選択マーカーが必要である。ある特定の実施形態では、3つの選択マーカーを用いて、その1つの選択マーカー発現カセットを2つの部分に分割する(例えば、図4を参照のこと)。分割選択マーカー発現カセットを含むある特定の実施形態では、前方プラスミドは、プロモーターに続いて開始コドン及びRRS3配列を含有することになる。後方プラスミドは、ATG開始を除いた選択マーカーコード領域のN末端に融合したRRS3配列を有することになる。追加のヌクレオチドを、確実に融合タンパク質のインフレーム翻訳を行うために、RRS3部位と選択マーカー配列との間に挿入することが必要となる場合がある。2つのプラスミドが正確に標的する場合に限り、選択マーカーの完全な発現カセットが組み立てられ、それゆえ選択に対する耐性を細胞に付与することになる。図4は、2プラスミドRMCE方針を示す概略図である。当然のことながら、単一プラスミドRMCEを、必要であれば、RRS1及びRRS2を使用して引き続き実施することができる。
【0374】
2プラスミドRMCEアプローチのロバスト性を試験するために、元のGFPランディングパッドを、以前に同定したTI宿主、すなわち、宿主4を使用して、3つのRRS部位を有する新しいGFPランディングパッドで置き換えた。単一プラスミドRMCEと比較して2プラスミドRMCEでは、より深刻な生存能力の低下及びより長い回収時間を観察し、これは2プラスミドRMCEの初期RMCE効率の低下と一致した。プールを回収したら、FACS、ゲノムPCR及び遺伝子コピー解析を評価し、両方のプラスミドカセットが正確にTI部位を標的としたかを確認した。合計で、5つの標準抗体(Q、R、S、T、及びU)を、単一プラスミドRMCE及び2プラスミドRMCEの両方を使用して生産性について試験した(図5)。2プラスミドRMCEでは、単一プラスミドRMCEと比較して、より多くの総HC及びLCコピーがTI部位を標的とした。5つ全ての場合で、2プラスミドTIトランスフェクションプールの生産性が一貫して高く、単一プラスミドプールの生産性と比較して最大200%増加した。2プラスミドRMCEでの力価増加は、主に比生産性に起因し、そのレベルが単一プラスミドRMCEのレベルと比較して300%もはるかに高く改善したことが分かった。
【0375】
十分に特徴付けしたTI宿主、例えば、宿主4を、5つの異なる抗体で高い力価を達成するそれらの能力について、異なる細胞培養プラットフォームでさらに評価した。図6は、これらのTI宿主によるこれらの抗体の生産性を示す。大半の抗体で、14日目に10g/Lよりも高い生産性を達成し、16日目には12g/Lよりも高い生産性を達成した。
【0376】
2プラスミドRMCEを使用して複合mAb形式の発現を評価するために、4本の異なる鎖(2本のHC及び2本のLC)を二重特異性アセンブリのために同じ細胞中で発現することが必要な2つの二重特異性分子を試験した。2つの別個の発現プラスミドを同時に標的化することを可能にすることで、異なる鎖のプラスミド構成を操作し、バランスのとれた発現に最適な鎖比を達成することができる。どちらの場合も、2プラスミドRMCEを使用して、80%超の二重特異性含量で1.5g/L超を有する(図7)宿主4に由来する細胞株を開発した。
【0377】
4本の異なる鎖(2本のHC及び2本のLC)を二重特異性アセンブリのために同じ細胞中で発現することが必要な4つの二重特異性分子に関する14日目の力価も評価した。2プラスミドRMCEを使用して、80%超の二重特異性含量で1.5g/L超の力価を有する(図8)全ての細胞株を開発し、これらは宿主4に由来していた。
【0378】
実施例3:mAb-I(発現困難)対mAb-II(平均発現)抗体分子を発現するRTI細胞株の発現及び増殖分析
発現困難な分子を、数回のCLD試行後に生成した全ての細胞株が、標準CLDプラットフォームプロセスから通常予想される力価未満の力価を達成する場合のものとして定義する。既に同定した1つの発現困難な抗体(mAb-I)について、例えば、4回の別個のCLD試行から120を超える細胞株を流加産生培養で評価した。それにもかかわらず、わずか24細胞株をスクリーニングしただけの平均的な抗体分子(mAb-II)と比較した場合に、最も高いmAb-I発現細胞株でも、通常の力価を50%達成しただけであった(図9A表)。残念なことに、ランダム組込みシステム中で分子を発現困難にする可能性のある根本的な原因(複数可)を調べることは、主に異なる細胞株間での導入遺伝子コピー数及び遺伝子組込み部位の違いによって非常に困難である。
【0379】
mAb-Iを発現困難にする根本的な要因(複数可)を同定するために、RTIシステムを使用して、mAb-I及びmAb-II分子の両方についてCLDを開始した。HC及びLC構築物の両方を、誘導性CMV-TOプロモーター制御下で発現ベクターにクローニングし、これらのベクターを、導入遺伝子転写レベルが同様の細胞株の単離可能性を高めるためにTI宿主にトランスフェクトした。mAb-I及びmAb-IIのRTI CLDアプローチの全体的な概略図を図9Bに示す。トランスフェクト細胞株を、2つの別個の条件を使用して選択に供し、その条件下で細胞株は、CLDプロセス全体を通じて、1)Doxの存在下で誘導した(誘導)か、または2)Doxの不存在下で誘導した(非誘導)かのいずれかであった。Doxの不存在下で誘導した細胞株は一時的に誘導されたにすぎず、シードトレイン力価に基づいて、または示した場合の産生アッセイ中に順位付けした。これにより、選択プロセス中における抗体発現の役割(発現圧力)の評価が可能となった(図9B)。
【0380】
産生アッセイを、ドキシサイクリンの存在下または不存在下で「誘導」及び「非誘導」シードトレイン群の両方から、宿主7に由来する2つの代表的なmAb-I及びmAb-II細胞株を使用して実施した。後者を使用して、誘導のない場合におけるプロモーター漏出性及び基底抗体産生レベルを評価した。ドキシサイクリンの不存在下では、かなり厳しく調節された抗体発現を観察し、これは調節された発現システムがこれらの細胞株で効果的に機能したことを示唆していた(図10A及び図10C)。ドキシサイクリンの存在下または不存在下における全ての細胞株の増殖(図10B)プロファイルは同等であったが、ドキシサイクリンの不存在下で、増殖プロファイルはわずかに良好に見えた。「誘導」または「非誘導」シードトレイン条件下で誘導した細胞株は、産生中に比較的同等の力価及び比生産性を示し(図10A及び図10C、mAb-IまたはmAb-IIの細胞株1及び2と3及び4を比較)、これは選択中の構成的抗体発現が、高力価の細胞株の単離において大きな役割を果たしていなかったことを示していた(図10)。加えて、RI CLD試行と同様に、mAb-I RTI細胞株の力価及び比生産性は、mAb-II RTI細胞株よりもさらに50%低かった(図10A及び図10C)。mAb-Iの「誘導」及び「非誘導」RTI培養物の両方とも、mAb-II対照細胞株と比較して同様に低い力価を示したため、この観察によって、mAb-Iの低発現の原因として慢性毒性が除外された。
【0381】
実施例4:mAb-I細胞株のより低い抗体発現は、より低い転写に起因したものではなかった
mAb-I発現細胞株で観察したより低い抗体発現を分析するために、qRT-PCR実験を行い、ドキシサイクリン誘導及び非誘導条件下で、mAb-IまたはmAb-IIを発現するRTI細胞株中の抗体HC及びLCのmRNAレベルを測定した。Doxの不存在下では、mAb-IまたはmAb-II細胞株は、HCまたはLC mRNAをほとんどまたは全く発現せず、このことは誘導性プロモーターによる比較的厳しい転写調節を示していた(図11)。Doxの存在下では、mAb-I発現細胞株の抗体HC及びLC転写レベルは、mAb-II発現細胞株のレベルと同等か、またはそれよりも高かった(図11A及び図11B)。これらの結果によって、導入遺伝子転写レベルの低下が、mAb-I発現細胞株の抗体発現低下の理由ではなかったことが確認された。さらに、CLDプロセス中のシードトレイン培養におけるドキシサイクリンの有無は、導入遺伝子転写率に対して全く影響を与えず、このことは「誘導」または「非誘導」条件下で単離した細胞株が、同等のHCまたはLC mRNAレベルを有していたからであった(図11A及び図11B)。
【0382】
実施例5:mAb-I発現の誘導は、細胞内BiPの可逆的蓄積及び抗体HC分解の遅延をもたらした
mAb-I発現に影響を及ぼす根本的な要因を同定するために、シクロヘキシミド(CHX)処理及び除去と共にDox誘導を使用して、抗体の分泌、折り畳み及び分解を調査した。これらの実験では、「誘導」培養物をCHXで処理してタンパク質合成を停止させ、5時間後、細胞を洗浄してDoxのみを含有する培地(CHX無し)中に再懸濁してタンパク質合成を再開した(図12A)。CHX除去後のおよそ60分間、これらの培養物の上清中ではHCまたはLCを検出せず、抗体分泌の漸増だけを120分後に同様の割合で検出した(図12B、上部パネル)。このことは、適切に折り畳まれ、かつ組み立てられた抗体分子の分泌が、CHX除去後のmAb-I細胞株とmAb-II細胞株との間で同等であったことを示唆していた。抗体LCの細胞内レベルも、mAb-I発現細胞株とmAb-II発現細胞株との間でかなり同等であった(図12B、LCパネル)。しかしながら、CHX処理の5時間後であっても、mAb-II発現株と比較してmAb-I発現細胞株で著しく高いレベルの細胞内抗体HCを検出した(図12B、HCパネル)。これは、mAb-I発現細胞株の折り畳まれていない、または誤って折り畳まれた抗体HCの分解及びクリアランスの遅延または問題に関与していた。興味深いことに、CHX処理の前後で、mAb-II細胞株と比較してmAb-Iで非常に高いレベルの細胞内BiPを検出した(図12B、下部パネル、BiP)。シャペロンとしてのBiPは、小胞体ストレス応答(UPR)に加えて抗体HCまたはLCの折り畳みにも関与していて、シードトレイン培養におけるその存在は、ER関連細胞ストレスの指標となり得た。
【0383】
mAb-I発現と細胞内BiP蓄積との間の相関関係をさらに調査するために、「誘導」シードトレイン培養物を、ドキシサイクリンを含有する培地中でCHXと共に、またはそれ無しで一晩処理し、これらの試料中の細胞内HC、LC及びBiPレベルを評価した。CHX処理を行わない場合、細胞内抗体HC分子の基底レベルは、mAb-II細胞株と比較してmAb-Iでより高かったが、細胞内LCのレベルは全ての試料セット間で同等であった。他方では、BiPレベルは、mAb-II発現細胞株と比較してmAb-Iで非常に高かった(図12C、-CHX試料)。これらの培養物をCHXで一晩処理すると、全ての細胞株でHC及びLCのレベルが低下し、同様にmAb-I発現細胞株で特にBiPレベルが同時に低下した(図12C、+CHX試料)。これは、先の知見と一致していた(図12B)。シクロヘキシミドは、無差別に全ての真核生物タンパク質の合成を阻害するため、mAb-I細胞株のより高いBiPレベルを、抗体HCまたはLCサブユニットの蓄積と直接関連付けることはできなかった。しかしながら、調節された発現システムは、細胞内BiPと抗体HCまたはLCレベルとの間の関連を直接試験する能力を提供した。そのために、ドキシサイクリンを培地から6日間除去し、他の内因性タンパク質の発現に影響を与えることなく特異的に抗体発現を止めて、細胞内HC、LC、及びBiPレベルをモニターした。mAb-I細胞株の抗体(HC及びLC)発現と細胞内BiPの蓄積との間の直接的かつ特定の関連を観察したが、mAb-IIの発現は、細胞内BiPレベルに対する影響を一切示さなかった(図12D)。
【0384】
実施例6:mAb-I LC発現は細胞内BiP蓄積を誘導したが、mAb-I HCも、この抗体の低発現に明確に寄与した
mAb-I LCが細胞内BiPの蓄積に役割を果たしたかどうかを決定するために、LCを構成的に発現しながら、調節プロモーター下でmAb-I HCを発現する構築物を生成した。この構築物を、mAb-IまたはmAb-II(対照)の調節されたHC/LCを発現する構築物と共にCHO細胞にトランスフェクトし、各トランスフェクションから2つの別個のプールを得た。プール力価を産生培養中で評価した(図13A)一方で、シードトレイン培養物をドキシサイクリンの存在下及び不存在下でウェスタンブロット分析によって評価した(図13B)。産生アッセイ中、各プールをDoxで誘導したか、または誘導しないままとした。非誘導プールは、産生中に抗体をほとんど発現せず、これは厳しい発現調節を示していた(図13A、-Dox)。産生中のDox誘導培養物の分析によって、「非誘導」シードトレイン培養物に由来する調節されたHC/構成的LC mAb-I発現プールは、調節されたHC/LC mAb-Iプール及びシードトレイン中に「誘導」した調節されたHC/構成的LC mAb-Iプールと比較して、力価が大幅に低かったことが明らかとなった(図13A)。「非誘導」培養物のウェスタンブロット分析は、全ての条件下でDoxを培地に添加した場合に限り、抗体HCを発現したことを示した。加えて、mAb-I HCを含まないmAb-I LCのみの構成的発現は、細胞内BiPの蓄積を誘導した(図13B)。これらの結果は、mAb-I LCサブユニットの発現と細胞内BiPの蓄積との間の直接的関連を示唆していた。HCの不存在下で構成的に発現した場合、mAb-IのLC分子は、BiPシャペロンと相互作用するER内の折り畳まれていない凝集体を形成する可能性があり、これらの細胞中でBiPの細胞内レベルの増加を引き起こす。産生段階中のmAb-I HCの発現は、これらの細胞にさらに負荷をかけ、HC及びLC分子の両方の折り畳みに対応する細胞内BiPの需要が高まり、非効率的な抗体のアセンブリ、折り畳み及び分泌効率をもたらし得た(図13A)。
【0385】
これらの知見が、細胞内BiPの蓄積によって示されるように、mAb-I LC発現と細胞ERストレスとの間の関連を示していたが、mAb-I LC発現とmAb-I細胞株の低力価との間の直接的関連を確立する必要があった。そのために、抗体分子を生成したが、それはmAb-I及びmAb-IIの重鎖及び軽鎖を交換して、HCLC、HCIILCII、HCLCII、及びHCIILC抗体の組合せを生成した。HCLCII構築物は、mAb-I HC及びmAb-II LCを有する抗体を発現したが、HCIILC構築物は、mAb-II HC及びmAb-I LCを有する抗体を発現した。これらの全ての構築物に関する抗体HC及びLC発現は、RTIベクターシステムにおいてCMV-TOプロモーターの制御下にあった(図13C)。次いで、これらの構築物を発明者らのCHO TI宿主細胞にトランスフェクトし、各構築物ごとに2つの別個のRTIプールを生成し、mAb-I、もしくはmAb-II、またはこれらの抗体のハイブリッド型の発現を試験した。先に言及した通り(図13B)、mAb-I LC発現と細胞内BiPの蓄積との間に明確で直接的な相関関係を観察した(図13D、LC及びBiPブロット)。興味深いことに、細胞内BiPはまた、HCIILCIIと比較してHCLCIIハイブリッド抗体を発現するプール中で決して強くはないが、顕著な手法で蓄積し、これらのプール中で、HCの発現に起因する可能性がある、ある程度のレベルのERストレスを示唆していた(図13D、HCIILCII及びHCLC試料中での長時間曝露BiPレベルを比較)。Dox除去による抗体発現の停止によって、mAb-II(HCLC)プールを除く全てのRTIプールで細胞内BiPレベルの低下がもたらされ、Dox除去前であっても細胞内HC及びBiPの両方の初期レベルが、大幅に低下した(図13D、HCIILCIIプールと他のプールの0日目のHC及びBiPレベルを比較)。
【0386】
抗体発現全体に対するmAb-I HC及びLCの役割を評価するために、HCLC、HCIILCII、HCLCII、及びHCIILCRTIプールを産生アッセイで評価した。ドキシサイクリンの不存在下では、全てのRTIプールがほとんど抗体を発現せず、抗体発現の厳しい調節を示していた(図14A、-Dox)。全てのRTIプールの増殖率は類似していて、誘導培養物は、非誘導培養物と比較してわずかに低い増殖率を有していた(図14B)。先に観察した通り、mAb-I及びmAb-II RTIプールは、それぞれ最低及び最高の力価及び比生産性を有した(図14A及び図14C)。興味深いことに、HCIILC及びHCLCIIRTIプールの両方が、HCLCよりも高かったが、HCIILCIIRTIプールよりは低い力価及び比生産性を示した(図14A及び図14C)。これらの結果は、mAb-I HC及びLCサブユニットの両方が、mAb-IIと比較して、この抗体の発現低下に個別に寄与していたことを示していた。発明者らの予想に反して、LCサブユニットを発現したハイブリッドRTIプールは、HCサブユニットを発現するプールと比較して、わずかに高い力価及び比生産性を有した(図14A及び図14C)。これは、mAb-I HCが、LCサブユニットと比較して、この抗体の発現低下にわずかにより重要な役割を果たしたことを示していた。RTIシステムと組み合わせた抗体鎖交換アプローチの使用によって、生物学的ストレス(細胞内BiP蓄積など)の明確な指標を特定できなかった場合であっても、mAb-I HCサブユニットの発現と関連する負の効果が明らかとなった。
【0387】
実施例7:mAb-I及びmAb-IIのHC及びLCサブユニット間のアミノ酸配列の違い
ある特定のアミノ酸残基が、mAb-I HC及びLCの問題となる発現に寄与する可能性があるかどうかを評価するために、mAb-I及びmAb-IIのLC(図15A)及びHC(図15B)サブユニットのアミノ酸配列をアラインメントした。mAb-I及びmAb-IIのHC及びLC分子に関する全てのCDR領域のアミノ酸組成は、それらが異なる抗原を標的とするように開発されたため、互いに異なっていた。LCサブユニットでは、可変領域の残部及び全ての定常領域について、mAb-I分子とmAb-II分子との間にアミノ酸配列差は全くない。LCのCDR1セグメントは、LCIIよりも6アミノ酸長いが、LCIIのCDR3セグメントは、LCよりも1アミノ酸長い(図15A)。抗体HCサブユニットに関しては、CDRセグメントを除き、4つのアミノ酸残基を除いて、HC及びHCIIの可変領域の残部及び定常領域は同一である(図15B)。これらのアミノ酸変化のうち2つはかなり保守的であり(T→S及びL→A)、それゆえHCの低発現に寄与する可能性はない。HCのN→G変化によって、抗体HCグリコシル化が防止される。したがって、HCの発現に対するHCIIとHCとの間のN→G及びY→Vアミノ酸差の影響を調査した。2つの点変異が生成され、HCのG及びVアミノ酸残基が、それぞれN及びYに変化した(HC二重変異体またはHCdm)。HCdmをLC及びLCIIと共に使用してRTIプールを生成し、これらのプール中での抗体発現を産生培養中で評価した(図16A)。その結果、HCdmをLCと共に共発現したことにより、抗体発現をHCIILCIIで観察したレベルまで増加させたことが分かり、このことは、これらの変異がHC抗体の低発現レベルを回復できることを示唆していた(図16A)。興味深いことに、LCIIと共発現した場合、HCdmはHCIILCIIの力価よりもさらに高い力価を達成し、このことは、HCdmがHCIIと比較して発現及び折り畳みに優れていることを示唆していた(図16A)。先に観察した通り、HCLCが最も低い力価を有した一方で、HCLCIIは中間の抗体発現プロファイルを示した(図16A)。ウェスタンブロット分析により、HCdmと共発現させた場合であっても、LCの発現が、依然として細胞内BiP蓄積の増加と関連していたことが明らかとなった(図16B)。図16Cは、RTIシステムを使用して、発現困難な分子を発現する細胞株における問題の原因を分析かつ特定し得る方法の診断ロードマップを示す。
【0388】
実施例8:2つの異なる独立したランディングパッドを含有するTI宿主細胞の生成。
宿主8は、2つの異なる独立したランディングパッドを含有する標的組込み(TI)宿主であり、これは抗体遺伝子の発現を個別に、または同時に標的化し得る。宿主8の親細胞株は、単一のランディングパッドを含有する宿主7(表2を参照のこと)である。第2ランディングパッドを、ランディングパッドが宿主4TI宿主中に位置するゲノム位置で宿主8に挿入した(表2を参照のこと)。この挿入を、宿主7TI宿主内における宿主4TI部位位置への新しいランディングパッドのCRISPR/Cas9に基づくノックインによって実施した。
【0389】
これを達成するために、宿主4TI部位のゲノム領域を、TI宿主4及びTI宿主7内で特徴付けた。この情報に基づいて、CRISPR/Cas9に基づくノックインを促進するために、この特定のゲノム領域を標的とするようにガイドRNAを構築した。別に、新たに作製したランディングパッドを含有するドナープラスミドをこの部位にノックインするように生成し、ノックインを促進するために標的ノックイン部位の上流及び下流のゲノム領域に対応する相同性アーム、ならびにノックインクローンのスクリーニングを可能にする追加の遺伝子と共に構築した。gRNA及びCas9の遺伝子を含有するプラスミド、ならびにドナープラスミドの共トランスフェクションを、新しいランディングパッドのCRISPR/Cas9に基づくノックインを促進するために実施した。
【0390】
CRISPR/Cas9に基づくノックインを受けたクローンの選択及びスクリーニング後、宿主8を最終的に同定し、さらに評価を行った。既存の宿主7ランディングパッドをインタクトであると決定し、宿主4部位位置に新しくノックインしたランディングパッドが存在し、インタクトであり、かつ正しい位置にあるかも確認した。
【0391】
次いで、両部位でのリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)の実現可能性を、各部位について個別に評価し、次いで同時に評価した。クローンを、宿主7のランディングパッドのみ、宿主4のランディングパッドのみ、及び両部位で同時にRMCEによって生成し、次いで14日間の流加振盪フラスコ評価で評価した。両部位で同時に抗体を発現するクローンの力価及び比生産性は、各部位での個別の発現と比較して高かった。異なる細胞培養プロセスの細胞培養プラットフォームBでさらに評価を実施し、細胞培養プラットフォームAと比較して全てのクローンで力価がさらに上昇したことを示した(図17)。宿主4部位の14日目の平均力価は、プラットフォームA細胞培養において3.0g/Lであって、宿主7部位は1.9g/Lであって、両部位は同時に3.9g/Lであった。
【0392】
最終的に、TI宿主8を、TI宿主4のランディングパッドのゲノム位置に位置する第2ランディングパッドを追加することによってTI宿主7から作製した。さらなる調査によって、ランディングパッドのノックイン及び既存かつ新規の両方のランディングパッドにおけるRMCEの実現可能性を確認する。さらに、宿主8から生成したクローンを各部位で個別に、かつ両部位で同時に評価すると、抗体発現の生産性が示される。個々の部位と対比して、両部位で同時に抗体遺伝子を発現することは、細胞培養プラットフォームA及び細胞培養プラットフォームBの両方に見られる生産性の相加効果を有する(図17)。
【0393】
方法
抗体プラスミドDNA構築物構成:1プラスミド抗体構築物を構築するために、抗体HC及びLC断片を、L3及び2L配列に加えてピューロマイシンN-アセチル-トランスフェラーゼ(pac)選択マーカーを含有するベクター骨格にクローニングした。2プラスミド抗体構築物を構築するために、抗体HC及びLC断片を、L3及びLoxFAS配列を含有する前方ベクター骨格、ならびにLoxFAS及び2L配列ならびにpac選択マーカーを含有する後方ベクターにクローニングした。CreリコンビナーゼプラスミドpOG231(Wong ET et al.,Nucleic Acids Res 2005,33,(17),e147、O’Gorman S et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 1997,94,(26),14602-7、各々の内容が参照によって本明細書に組み込まれる)を、全てのRMCEプロセスに使用した。
【0394】
細胞培養:CHO細胞を、125mLの振盪フラスコ容器中における独自のDMEM/F12ベースの培地中で、150rpm、37℃及び5%COで振盪して培養した。細胞を、3~4日ごとに3×10細胞/mLの播種密度で継代した。
【0395】
RMCEの安定した細胞株開発:発現プラスミドを、MaxCyte STX(登録商標)エレクトロポレーション(MaxCyte,Gaithersburg,MD)によってTI宿主にトランスフェクトした。次いで、RMCEトランスフェクションプールを、ピューロマイシン及び1-(2’-デオキシ-2’-フルオロ-1-ベータ-D-アラビノフラノシル-5-ヨード)ウラシル(FIAU)(Moravek)で選択した。プール選択後、単一細胞クローニング(SCC)を実施し、TI細胞株をさらに評価するために生成した。
【0396】
流加産生アッセイ:流加産生培養を、独自の化学的に規定した産生培地を用いて振盪フラスコまたはambr15容器(Sartorius Stedim)中で実施した。細胞を0日目に1×10細胞/mlで播種し、3日目に37℃から35℃に温度を変えた。培養物に、3日目、7日目、及び10日目に独自のフィード培地を加えた。培養細胞の生細胞数(VCC)及びパーセント生存能を、Vi-Cell(商標)XR機器(Beckman Coulter)を使用して、0日目、3日目、7日目、10日目、及び14日目に測定した。グルコース及び乳酸濃度を、Bioprofile 400 Analyzer(Nova Biomedical)を使用して、7日目、10日目及び14日目に測定した。14日目の力価を、UV検出を用いたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して決定した。
【0397】
液滴PCRによる遺伝子コピー数の決定:液滴PCRアッセイを、ddPCR(商標)Supermixキット(Bio-Rad)を使用して実施した。ddPCRマスターミックス、900nMのフォワードプライマー、900nMのリバースプライマー、250uMのプローブ、3単位のHaeIII制限酵素及び試料DNAを含有する各ddPCR反応物。室温で10分間インキュベートした後、液滴をAutomatic Droplet Generator(Bio-Rad)で生成した。PCR熱サイクル条件は、95℃で10分間、続いて94℃を30秒間及び60℃を1分間の40サイクル、次いで98℃を10分間で酵素を不活性化させた。PCR反応後、液滴をQX200(商標)Droplet reader(Bio-Rad)上で読み取った。データを、Quantasoftwareを使用して収集かつ分析した。HC及びLC遺伝子コピー数を、参照遺伝子Bax、アルブミン、Hprt及びb-ミクログロブリンの規定コピー数に基づいて正規化した。この実験で使用したプライマーは、Primer Express v3.0(Life Technologies)を使用して設計した。プライマーの配列を表4に列挙する。
表4.液滴PCRのプライマー配列。
【0398】
定量的リアルタイムPCR(qRT-PCRまたはTaqman)分析:シードトレイン培養物からのRNA試料を、製造業者の指示に従ってQiagen RNeasy plus mini kitを使用して精製した。TaqMan RT-PCRアッセイを、TaqMan One(登録商標)Step RT-PCR Master mix kit(Life Technologies)を使用して実施した。各RT-TaqMan PCR反応物は、RT-PCRマスターミックス、逆転写酵素、300nMのフォワードプライマー、300nMのリバースプライマー、100nMのプローブ、及び10ngの精製RNA試料を含有していた。熱サイクル条件は、48℃で30分間及び95℃で10分間、続いて95℃を15秒間及び60℃を1分間の40サイクルであった。全ての反応物を、7900 HT Fast Real Time PCR System(Life Technologies)上で処理した。データを、TaqMan RT-PCR増幅後にSDS v2.4ソフトウェア(Life Technologies)を使用して分析した。HC及びLCの相対的発現レベルを、デルタCt分析法に基づいて決定した。ハウスキーピング遺伝子であるシクロフィリンの発現レベルを参照遺伝子として使用し、各反応物で異なるRNA試料を正規化した。この実験で使用したプライマーは、primer express v3.0(Life Technologies)を使用して設計した。プライマーの配列を表5に列挙する。
表5.定量的リアルタイムPCRのプライマー配列
【0399】
ウェスタンブロット分析:シードトレイン培養物からの細胞ペレットをPBSで洗浄し、プロテアーゼ阻害剤のmini cOmplete(商標)カクテル(Roche)を含むNP-40溶解緩衝液中に再懸濁した。細胞溶解物を13000RPMで10分間遠心分離し、上清を収集した。各溶解物のタンパク質濃度を、Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo Scientific)を使用して決定した。等しいタンパク質濃度の各溶解物を、SDS-PAGE緩衝液及びNuPage Sample Reducing Agent(Invitrogen)と混合してから、5分間95℃で熱変性させた。次いで、溶解物をNuPageプレキャスト4~12%Bis-Trisゲル(Invitrogen)上に負荷して電気泳動した。iBlotシステム(Invitrogen)を使用して、タンパク質をニトロセルロース膜に移した。膜を、0.1%Tween20を含有するtris緩衝生理食塩水(TBS-T)中の5%脱脂乳溶液を使用して、室温で1時間ブロックした。ブロック後、特異的一次抗体を使用して膜を室温で1時間インキュベートし、次いでTBS-Tで10分間3回洗浄した。二次西洋ワサビペルオキシダーゼ複合化抗体を室温で1時間添加し、続いてTBS-Tで15分間の洗浄を3回行った。Amersham ECL検出試薬またはAmersham ECL Prime検出試薬(GE Life Sciences)のいずれかを使用して、膜で発現させた。Image Lab5.1(Biorad)をバンドシグナルの定量化に使用した。以下の一次抗体を使用した:1:3000のヤギ抗ヒトIgG-HRP(MP Biomedicals)及び1:2500のマウス抗βアクチン(Sigma Alrdich)。以下の二次抗体を使用した:1:10000のヒツジ抗マウス(GE Healthcare UK)。
【0400】
実施例9:1本の重鎖、1本の軽鎖プラスミドDNA構成への追加の軽鎖付加は、抗体力価及び比生産性を改善する。
TI宿主の生産性に対する抗体コピー数の影響を調査するために、RMCEプールを、1本の重鎖及び1本の軽鎖(HL構成)または1本の重鎖及び2本の軽鎖(HLL構成)のいずれかを含有する単一プラスミドをトランスフェクトすることによって生成した。フローサイトメトリーによるRMCEの選択、回収、及び検証後、プールの生産性を14日間の流加産生アッセイで評価した。3つの別個の抗体(mAb-Q、mAb-S、及びmAb-T)では、HLプールと比較してHLLプールの力価がおよそ2倍増加したことを観察し、主に比生産性の1.5~2.5倍の増加によって引き起こされた(図18A及び図18B)。追加の単一細胞クローンを、限界希釈法を使用することによってトランスフェクトプールから生成し、力価及び比生産性が、HL構成のものよりもHLL構成由来のクローンでも高いことを確認した(図18C図18D)。
【0401】
実施例10:RMCEプールにおける最大7つの抗体鎖によるトランスフェクションは、抗体の比生産性及び力価を増加させる。
抗体の発現に対する抗体鎖数増加の効果を評価した。5つの抗体について、HLL単一プラスミド構成をHLL-HLまたはHLL-HLL二重プラスミド構成と比較した。
【0402】
mAb YのHLL-HL(5鎖)、HLL-HLL(6鎖)及びHLL-HLHL(7鎖)構成を比較した。産生中のRMCEプールの力価及びQpは、一般にHLL-HL構成からHLL-HLL及びHLL-HLHL構成へと増加した(図19A図19B)が、異なるプールの中でも増殖(生細胞数の積分、IVCCとして表される)は相対的に同等であった(図19C)。これらのプールにおけるシードトレイン抗体mRNA発現を見ると、HLL-HLからHLL-HLL及びHLL-HLHLへの軽鎖mRNAの増加に加えて、HLL-HL及びHLL-HLLプールと比較したHLL-HLHLプールでの重鎖mRNAの増加を観察した(図19D)。これらのRMCEプールからの重鎖及び軽鎖の細胞内タンパク質レベルも、ウェスタンブロットを使用して測定した。細胞内軽鎖タンパク質レベルは、軽鎖mRNAで観察したものと非常に一致し、5つから6つ及び7つの鎖構成へと増加した(図19E図19F)。
【0403】
実施例11:7鎖のHLL-HLHL構成を有する単一細胞クローンは、2つの試験抗体において高い力価及び比生産性を有する。
7鎖構成HLL-HLHLの高い力価及び生産性が、単一細胞クローニング後に維持されるかどうかを評価するために、mAb YのHLL-HL、HLL-HLL、及びHLL-HLHL RMCEプールから単一細胞単クローンを生成した。次いで、これらの単クローンを14日間の流加産生アッセイで評価した。各構成の上位6クローンを見ると、力価及びQpが、HLL-HL構成からHLL-HLL及びHLL-HLHLへとわずかに増加した(図20A図20B)が、増殖は同様のままであった(図20C)ことが見出された。
【0404】
HLL-HLHL構成が高い単クローン力価をもたらすことを確認するために、異なるmAbであるmAb IIIを使用して、HLL-HL(5鎖)及びHLL-HLHL(7鎖)のRMCEプールから、宿主4に由来する単一細胞クローンを生成した。14日間の流加産生アッセイでの評価後、HLL-HLクローンに対するHLL-HLHLクローンの明確な力価の利点を観察し(図20D)、それはmAb Uで見られたものよりも高かった。力価増加は、HLL-HLHLクローンのQpがより高いことによって主として誘導されると思われ(図20E)、2つの構成間におけるIVCCの平均差はほとんどなかった(図20F)。
【0405】
実施例12:トランスフェクトプラスミドにおける抗体鎖の位置は、その生産性に影響を及ぼす。
トランスフェクトプラスミドにおける重鎖及び軽鎖の位置または配置が、抗体発現に及ぼす影響も評価した。これを行うために、RMCEプールを、mAb Zの1本の重鎖及び1本の軽鎖を持ついくつかの異なる構成を含有するプラスミドで生成した。本開示のTI宿主は、同じ組込み部位における2つの異なるプラスミドの組込みを支援するため、重鎖及び軽鎖の両方が同じプラスミドから発現される場合に加えて、それらが前方または後方のいずれか異なるプラスミド上で分離されている場合の位置効果を調査した(図21A)。
【0406】
RMCEプールを生成した後、シードトレイン培養物における抗体Z重鎖及び軽鎖のmRNA発現レベルを測定した。重鎖のmRNA発現は、重鎖よりも軽鎖が先行した場合に減少し、前方及び後方の両プラスミドのLH構成は、HL構成よりも低い重鎖mRNA発現を有していた。しかしながら、軽鎖に対する位置の効果は、それが発現されたプラスミドに依存した:前方プラスミドでは、軽鎖mRNAの発現は、HLに対してLH構成で増加したが、後方プラスミドのLH構成も増加した。前方プラスミドの軽鎖カセットはそれ自体で高レベルの軽鎖mRNAを発現したが、後方プラスミドの単一軽鎖カセットは、あらゆる構成の中で最も低い軽鎖mRNAレベルを有したことも観察した(図21B)。概して、前方プラスミドと比較して、後方プラスミドでは重鎖及び軽鎖の両方のmRNA発現レベルが低かったことを観察した。
【0407】
これらの異なるRMCEプールの流加産生アッセイにより、抗体mRNA発現の傾向に類似した一連の力価及び比生産性が得られた(図21C図21D)。LH-mAb無し構成は、HL-mAb無しよりも高いQp及び力価を有していたが、最も低いレベルのLC mRNA発現を有するプールのH-L及びmAb無し-LHもまた、最も低いQp及び力価を有した。
【0408】
観測したmRNA及び抗体の生産性の違いが抗体鎖の位置に起因するものであり、絶対コピー数の変動によるものではないことを確認するために、デジタル液滴PCRを使用してプールの重鎖及び軽鎖コピー数を測定した。予想通り、全てのプールがおよそ1本の重鎖及び1本の軽鎖DNAコピーを有した(図21E)。
【0409】
実施例13:mAb上の%高分子量種に対するHC対LC比の影響。
抗体のHC:LC比が生産性及び凝集体などの高分子量種(HMWS)に及ぼす影響を評価した。さらに、TI部位に対する影響を、異なるTI部位を有する細胞を使用することによって評価した。これを行うために、RMCEプールを、TI宿主4または宿主7の位置に1本の重鎖及び1本の軽鎖(HL構成)または1本の重鎖及び2本の軽鎖(HLL構成)のいずれかを含有する単一プラスミドをトランスフェクトすることによって生成した。プールの生産性を、14日間の流加産生アッセイで評価した(図22A及び図22B)。%HMWSを評価すると(図22B及び図22D)、HC:LC比の影響が組込み部位に依存しないことを示していた。
【0410】
抗体のLCコピーの増加が生産性及び高分子量種(HMWS)に及ぼす影響を、mAb IVに関連して評価した。これを行うために、RMCEプールを、宿主4部位の位置に、または宿主4及び7部位の位置に1本の重鎖及び1本の軽鎖(HL構成)、1本の重鎖及び2本の軽鎖(HLL構成)、2本の重鎖及び3本の軽鎖(HLL-HL構成)、2本の重鎖及び4本の軽鎖(HLL-HLL構成)、2本の重鎖及び5本の軽鎖(HLL-HLLL構成)、3本の重鎖及び6本の軽鎖(HLLL-HLLHL構成)、または3本の重鎖及び7本の軽鎖(HLLL-HLLHLL構成)のいずれかを含有する単一プラスミドをトランスフェクトすることによって生成した(図23及び図24)。
【0411】
多数の力価及び産生評価アッセイを通じて、多数のクローンを同定し、特定の産生プロセスを用いてambr15産生評価で評価した。この評価から、細胞培養の性能、力価、及び産物品質特性(パーセント凝集を含む)によって同定した上位10クローンを選択し、さらに評価するためにバンク化した。最終的に、高力価でパーセント凝集が低く、以前に生成したmAb-VI細胞株と同等の産物品質でmAb-VIを発現する2部位組込み細胞株を生成した。図25は、上位2つのクローンが、それぞれ8.4及び8.7g/Lの力価を有し、7.4%及び5.6%の凝集体を含むことを示す。
【0412】
実施例14:調節された標的組込み:クローン評価。
この実験では、宿主4の調節された誘導体における抗体Zの発現を、抗体をコードする配列の調節された標的組込みを実施した後に評価した。抗体Zの発現調節に用いたシステムは、3つの主要な構成要素で構成される:1)シグナル配列前にタンデムtet-オペロン配列を含む調節プロモーター、2)プロモーター及びTet-リプレッサータンパク質コード配列、ならびに3)抗体Zの発現を可能にするドキシサイクリンなどの誘導物質。
【0413】
抗体Zをコードする配列の標的組込みを確認したら、クローン評価を振盪フラスコプロセスで実施した。3日目、7日目及び10日目に10%フィード(総体積の)を実施した。1つの産生培養アッセイを、クローンを評価するために実施した。全てのクローンを、0日目に3×10細胞/mLの播種密度で播種した。3日目、7日目、及び10日目に1μg/mLのドキシサイクリンを36の培養物全てに添加し、抗体Zの発現を誘導した。
【0414】
最終的な力価及び比生産性(Qp)をそれぞれ図26及び図27に示す。14日目の採取細胞培養液(HCCF)を力価分析にかけた。力価は、1~3.68g/Lの範囲であった(クローン7を除外)。バンク化のためのクローン選択を、最初に力価によって順位付けし、最終的な選択は、Qp及び他のパラメータを含む細胞培養性能に基づいた。バンク化のために選択したクローンは、2.69~3.68g/Lの範囲の力価をもたらした。
【0415】
示される、かつ請求される様々な実施形態に加えて、開示される主題は、本明細書に開示される、かつ請求される特徴の他の組合せを有する他の実施形態も対象とする。そのため、本明細書に提示される特定の特徴は、開示される主題が本明細書に開示される特徴の任意の好適な組合せを含むように、開示される主題の範囲内において他の手法で互いに組み合わされ得る。開示される主題の特定の実施形態に関する前述の記載は、例示及び説明を目的として提示されている。網羅的であること、または開示される主題を開示されるそれらの実施形態に限定することを意図するものではない。
【0416】
様々な修正及び変更が、開示される主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、開示される主題の組成物及び方法で行われ得ることが、当業者には明らかとなる。したがって、開示される主題が、添付の特許請求及びそれらの等価物の範囲内にある修正及び変更を含むことを意図する。
【0417】
様々な刊行物、特許及び特許出願が本明細書で引用され、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
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図13A
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図15
図16A
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図17-1】
図17-2】
図18
図19A
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図19D
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図21A
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図22A
図22B
図22C
図22D
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27
【配列表】
2024095659000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の一発明。
【外国語明細書】