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特開2024-9569サーマルプリントヘッド及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009569
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20240116BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B41J2/335 101J
B41J2/335 101H
B41J2/345 J
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111196
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JD02
2C065JD11
2C065JD14
2C065JH04
2C065JH14
(57)【要約】
【課題】印字品質を向上し得るとともにより低コストであるサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッド1は、主面11を有する基板10と、主面11上に配置されている凸部14と、主面11と凸部14とを覆うグレーズ層15と、配線層20と、抵抗体層30とを備える。抵抗体層30は、グレーズ層15及び配線層20上に配置されており、かつ、複数の発熱部31を含む。配線層20は、複数の発熱部31に導通し、かつ、抵抗体層30に接触している。主面11の平面視において、複数の発熱部31は凸部14に重なっている。凸部14は、低温同時焼成セラミックで形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する基板と、
前記主面上に配置されている凸部と、
前記主面の少なくとも一部と前記凸部とを覆うグレーズ層と、
配線層と、
抵抗体層とを備え、
前記抵抗体層は、前記グレーズ層及び前記配線層上に配置されており、かつ、複数の発熱部を含み、
前記配線層は、前記複数の発熱部に導通し、かつ、前記抵抗体層に接触しており、
前記主面の平面視において、前記複数の発熱部は前記凸部に重なっており、
前記凸部は、低温同時焼成セラミックで形成されている、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記凸部の高さは、20μm以上である、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記凸部の前記高さは、200μm以下である、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線とを含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線の各々は、前記複数の発熱部のうち対応するものに導通している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記抵抗体層の短手方向において、前記抵抗体層は、前記凸部の中心線に対して、前記抵抗体層から前記複数の個別配線が引き出される方向にずれて配置されている、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記複数の発熱部と前記配線層とを覆う保護層をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
基板の主面上に、低温同時焼成セラミックで形成されている凸部を形成するステップと、
前記主面の少なくとも一部と前記凸部とを覆うグレーズ層を形成するステップと、
前記グレーズ層上に配線層を形成するステップと、
前記グレーズ層及び前記配線層上に抵抗体層を形成するステップとを備え、
前記抵抗体層は、複数の発熱部を含み、
前記配線層は、前記複数の発熱部に導通し、かつ、前記抵抗体層に接触しており、
前記主面の平面視において、前記複数の発熱部は前記凸部に重なっている、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記凸部の高さは、20μm以上である、請求項7に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記凸部の前記高さは、200μm以下である、請求項8に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記複数の発熱部と前記配線層とを覆う保護層を形成するステップをさらに備える、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-240641号公報(特許文献1)は、基板と、発熱抵抗体と、共通電極と、複数の個別電極とを備えるサーマルプリントヘッドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-240641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、印字品質を向上し得るとともにより低コストであるサーマルプリントヘッド及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のサーマルプリントヘッドは、主面を有する基板と、主面上に配置されている凸部と、主面の少なくとも一部と凸部とを覆うグレーズ層と、配線層と、抵抗体層とを備える。抵抗体層は、グレーズ層及び配線層上に配置されており、かつ、複数の発熱部を含む。配線層は、複数の発熱部に導通し、かつ、抵抗体層に接触している。主面の平面視において、複数の発熱部は凸部に重なっている。凸部は、低温同時焼成セラミックで形成されている。
【0006】
本開示のサーマルプリントヘッドの製造方法は、基板の主面上に、低温同時焼成セラミックで形成されている凸部を形成するステップと、主面の少なくとも一部と凸部とを覆うグレーズ層を形成するステップと、グレーズ層上に配線層を形成するステップと、グレーズ層及び配線層上に抵抗体層を形成するステップとを備える。抵抗体層は、複数の発熱部を含む。配線層は、複数の発熱部に導通し、かつ、抵抗体層に接触している。主面の平面視において、複数の発熱部は凸部に重なっている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のサーマルプリントヘッド及びその製造方法によれば、サーマルプリントヘッドの印字品質が向上し得るとともに、サーマルプリントヘッドのコストが減少し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略断面図である。
図2図2は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略平面図である。
図3図3は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大平面図である。
図4図4は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大断面図である。
図5図5は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す概略部分拡大断面図である。
図6図6は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における、図5に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図7図7は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における、図6に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図8図8は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における、図7に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図9図9は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における、図8に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図10図10は、実施の形態1のサーマルプリントヘッドの製造方法における、図9に示される工程の次工程を示す概略部分拡大断面図である。
図11図11は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大平面図である。
図12図12は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面に基づいて本開示の実施の形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施の形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(実施の形態1)
【0011】
図1から図4を参照して、実施の形態1のサーマルプリントヘッド1を説明する。サーマルプリントヘッド1は、複数の発熱部31(図3を参照)を選択的に発熱させることによって、感熱紙などの印刷媒体47に印字を施す電子デバイスである。サーマルプリントヘッド1は、基板10と、凸部14と、グレーズ層15と、配線層20と、抵抗体層30と、保護層33と、駆動回路35と、導電ワイヤ36,37と、コネクタ40と、封止部材43と、ヒートシンク49とを主に備える。
【0012】
図1から図4を参照して、基板10は、主面11と、主面11とは反対側の裏面12とを有する。主面11と裏面12とは、各々、x方向と、x方向に垂直なy方向とに延在している。x方向は、基板10の長手方向であり、サーマルプリントヘッド1の主走査方向である。y方向は、基板10の短手方向であり、サーマルプリントヘッド1の副走査方向である。z方向は、基板10の厚さ方向である。主面11の法線方向は、x方向及びy方向に垂直なz方向である。主面11は、+z方向を向いている。裏面12は、z方向において、主面11に対向している。裏面12は、-z方向を向いている。
【0013】
基板10は、例えば、アルミナのようなセラミック基板、または、ソーダ石灰ガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板もしくは石英ガラス基板のようなガラス基板である。基板10は、電気絶縁性を有している。
【0014】
図3及び図4を参照して、凸部14は、主面11上に配置されている。凸部14は、主面11の一部を覆っている。凸部14は、低温同時焼成セラミック(LTCCセラミック)で形成されている。LTCCセラミックは、例えば、LTCCセラミックは、アルミナのようなセラミック粉末とガラス粉末とを含むLTCCスラリーを焼成することによって得られるセラミック材料である。凸部14の高さhは、例えば、20μm以上である。凸部14の高さhは、50μm以上であってもよい。凸部14の高さhは、例えば、200μm以下である。凸部14の高さhは、150μm以下であってもよい。本明細書において、凸部14の高さhは、主面11からの凸部14の最大高さである。主面11の平面視において、凸部14の長手方向はx方向であり、凸部14の短手方向はy方向である。凸部14の高さh方向は、z方向である。
【0015】
図3及び図4を参照して、グレーズ層15は、主面11の少なくとも一部及び凸部14上に配置されており、主面11の少なくとも一部と凸部14とを覆っている。グレーズ層15は、主面11の全体を覆ってもよい。グレーズ層15は、例えば、SiO-BaO-Al-SnO-ZnO系ガラスのような非晶質ガラスを含む材料で形成されている。
【0016】
図2から図4を参照して、配線層20は、グレーズ層15上に配置されている。配線層20は、抵抗体層30の複数の発熱部31に通電するための導電経路を構成している。配線層20は、複数の発熱部31に導通し、かつ、抵抗体層30に接触している。配線層20は、例えば、金(Au)ペーストのような導電材料で形成されている。配線層20の厚さは、例えば、0.6μm以上1.2μm以下である。
【0017】
配線層20は、共通配線21と、複数の個別配線25と、複数の引出配線29とを含む。複数の個別配線25は、共通配線21と複数の引出配線29とから離れている。複数の発熱部31を選択的に発熱させるために、共通配線21から複数の発熱部31を経由して複数の個別配線25に向けて電流が流れる。
【0018】
共通配線21は、複数の発熱部31に導通している。具体的には、図3及び図4に示されるように、共通配線21は、基部22と、複数の延出部23とを含む。主面11の平面視において、基部22は、抵抗体層30に対して、y方向の一方側(+y側)に配置されている。基部22の長手方向はx方向であり、基部22の短手方向はy方向である。基部22は、y方向において、抵抗体層30から離れている。複数の延出部23は、基部22から抵抗体層30に向けて-y方向に延びている。複数の延出部23は、x方向に沿って等間隔に配列されている。
【0019】
複数の個別配線25の各々は、複数の発熱部31のうち対応するものに導通している。具体的には、図3及び図4に示されるように、複数の個別配線25は、x方向に沿って配列されている。複数の個別配線25の各々は、端子部28と、延出部26とを含む。
【0020】
主面11の平面視において、端子部28は、抵抗体層30に対して、y方向の他方側(-y側)に配置されている。端子部28は、y方向において、抵抗体層30に対して、共通配線21の基部22とは反対側に配置されている。図1及び図3に示されるように、導電ワイヤ36は、端子部28と駆動回路35とにボンディングされている。端子部28は、導電ワイヤ36を通して、駆動回路35に電気的に接続されている。
【0021】
延出部26は、端子部28に接続されている。延出部26のうち端子部28とは反対側の端部27は、抵抗体層30に接触している。主面11の平面視において、延出部26の端部27は、抵抗体層30及び凸部14に重なっている。
【0022】
図2に示されるように、主面11の平面視において、複数の引出配線29は、駆動回路35に対して、y方向の他方側(-y側)に配置されている。主面11の平面視において、複数の引出配線29は、駆動回路35に対して、抵抗体層30及び複数の個別配線25とは反対側に配置されている。導電ワイヤ37は、駆動回路35と複数の引出配線29とにボンディングされている。複数の引出配線29は、導電ワイヤ37を通して、駆動回路35に電気的に接続されている。複数の引出配線29は、コネクタ40に接続されている。
【0023】
図2から図4に示されるように、抵抗体層30は、グレーズ層15及び配線層20上に配置されている。主面11の法線方向(z方向)において、抵抗体層30は、グレーズ層15に対して、基板10とは反対側に配置されている。抵抗体層30は、グレーズ層15に接触している。主面11の平面視において、抵抗体層30の長手方向はx方向であり、抵抗体層30の短手方向はy方向である。主面11の平面視において、抵抗体層30は、共通配線21の複数の延出部23と、複数の個別配線25の延出部26の端部27とに交差している。抵抗体層30は、共通配線21の複数の延出部23の各々の一部と、複数の個別配線25の各々の延出部26の端部27の一部とを覆っている。抵抗体層30は、共通配線21の複数の延出部23と、複数の個別配線25の延出部26の端部27とを跨いでいる。
【0024】
抵抗体層30は、配線層20よりも高い電気抵抗率を有する材料で形成されている。抵抗体層30の材料は、例えば、酸化ルテニウム(RuO)粒子とガラスフリットとを含む導電性ペーストである。抵抗体層30の厚さは、例えば、6μm以上10μm以下である。
【0025】
抵抗体層30は、複数の発熱部31を含む。抵抗体層30のうち、共通配線21の複数の延出部26のいずれかを覆う部分と、x方向において当該部分の隣に位置する複数の個別配線25の端部27のいずれかを覆う部分とにより挟まれた領域が、複数の発熱部31のいずれかである。複数の発熱部31は、グレーズ層15に接触している。複数の発熱部31は、x方向に沿って配列されている。主面11の平面視において、複数の発熱部31は、凸部14に重なっている。主面11の平面視において、抵抗体層30の短手方向(y方向)では、複数の発熱部31は凸部14の内側に配置されている。
【0026】
図4に示されるように、保護層33は、グレーズ層15と、配線層20、複数の発熱部31とを覆っている。保護層33は、グレーズ層15と、配線層20、複数の発熱部31とに接触している。配線層20のうち導電ワイヤ36,37がボンディングされる部分(例えば、端子部28など)は、保護層33から露出している。保護層33は、例えば、グレーズ層15と同様に、非晶質ガラスを含む材料で形成されている。
【0027】
駆動回路35は、主面11上に実装されている。例えば、駆動回路35は、接着剤などの接合部材(図示せず)を用いて、グレーズ層15に固定されている。駆動回路35は、基板10から分離された配線基板(図示せず)に搭載されてもよい。配線基板は、例えば、プリント回路基板(PCB)である。駆動回路35は、配線層20(具体的には、複数の個別配線25及び複数の引出配線29)に電気的に接続されている。駆動回路35は、複数の個別配線25を通して、複数の発熱部31に個別に電流を印加する。複数の発熱部31のうち電流が印加された発熱部31が、選択的に発熱する。
【0028】
図1及び図2に示されるように、コネクタ40は、y方向において、駆動回路35に対して抵抗体層30とは反対側に配置されている。コネクタ40は、例えば、y方向における基板10の端部に取り付けられている。コネクタ40は、配線層20(具体的には、複数の引出配線29)を通して駆動回路35に電気的に接続されている。例えば、コネクタ40は、複数のピン(図示せず)を含む。複数のピンの一部は、複数の引出配線29に導通している。複数のピンの別の一部は、共通配線21の基部22に導通する配線(図示せず)に導通している。コネクタ40は、サーマルプリンタに接続される。サーマルプリンタからコネクタ40を通して共通配線21に定電圧が印加される。
【0029】
図1及び図4に示されるように、封止部材43は、駆動回路35を覆っており、駆動回路35を封止している。封止部材43は、導電ワイヤ36,37をさらに覆っており、導電ワイヤ36,37をさらに封止している。封止部材43は、複数の個別配線25のうち保護層33から露出している部分(例えば、端子部28など)をさらに覆っている。封止部材43は、電気的絶縁性を有している。封止部材43は、例えば、エポキシ樹脂のような絶縁樹脂材料で形成されている。
【0030】
図1に示されるように、ヒートシンク49は、z方向において、基板10に対してグレーズ層15及び抵抗体層30とは反対側に配置されている。ヒートシンク49は、ねじのような締結部材または接合部材(図示せず)によって、基板10の裏面12に取り付けられている。ヒートシンク49は、基板10を支持している。ヒートシンク49は、例えば、アルミニウム(Al)のような高熱伝導材料で形成されている。抵抗体層30の複数の発熱部31から発生した熱の一部は、基板10を通してヒートシンク49に伝わる。ヒートシンク49に伝わった熱は、サーマルプリントヘッド1の外部へと放熱される。ヒートシンク49は、基板10の過度な温度上昇を防止することができる。駆動回路35が基板10とは別の配線基板上に搭載されている場合、ヒートシンク49は、基板10と配線基板とを支持する。
【0031】
図1及び図4に示されるように、サーマルプリントヘッド1は、主面11上に形成されている突起45を含む。突起45は、凸部14と、グレーズ層15と、配線層20と、複数の発熱部31と、保護層33とを含む。突起45では、凸部14、グレーズ層15、配線層20、複数の発熱部31及び保護層33が、主面11の法線方向(z方向)においてこの順に主面11上に積層されている。
【0032】
図5から図10を主に参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法を説明する。
【0033】
図5を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、基板10の主面11上に、低温同時焼成セラミック(LTCCセミラック)で形成されている凸部14を形成するステップを備える。具体的には、LTCCスラリーを主面11の一部上に塗布する。LTCCスラリーは、LTCCセミラック粉末と、ガラスと、バインダーと、溶剤とを含む。LTCCスラリーを焼成して、LTCCで形成されている凸部14を形成する。LTCCスラリーの焼成温度は、例えば、870℃以上900℃以下である。基板10がセラミック基板である場合、LTCCスラリーの焼成温度は、セラミック基板の焼成温度よりも低い。基板10がガラス基板である場合、LTCCスラリーの焼成温度は、ガラス基板のガラス転移温度よりも低い。
【0034】
図6を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、主面11の少なくとも一部と凸部14とを覆うグレーズ層15を形成するステップを備える。具体的には、主面11及び凸部14上に、例えばスクリーン印刷によって、非晶質ガラスを含むペーストを塗布する。当該ペーストを焼成する。こうして、グレーズ層15が形成される。
【0035】
図7を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、グレーズ層15上に配線層20を形成するステップを備える。具体的には、グレーズ層15上に、例えばスクリーン印刷によって、金を主成分とするレジネートペーストを塗布する。当該レジネートペーストを焼成する。焼成されたレジネートペーストを、エッチングなどによってパターニングする。こうして、配線層20が形成される。配線層20は、共通配線21と、複数の個別配線25と、複数の引出配線29とを含む。
【0036】
図8を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、グレーズ層15及び配線層20上に抵抗体層30を形成するステップを備える。具体的には、グレーズ層15及び配線層20上に、例えばスクリーン印刷によって、導電性ペーストを塗布する。当該導電性ペーストを焼成する。こうして、抵抗体層30が形成される。抵抗体層30は、複数の発熱部31を含む。配線層20は、複数の発熱部31に導通し、かつ、抵抗体層30に接触している。主面11の平面視において、複数の発熱部31は、凸部14に重なっており、かつ、x方向に配列されている。
【0037】
図8を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、複数の発熱部31と配線層20とを覆う保護層33を形成するステップを備える。具体的には、グレーズ層15上と、複数の発熱部31上と、配線層20の一部上とに、例えばスクリーン印刷によって、非晶質ガラスを含むペーストを塗布する。当該ペーストを焼成する。こうして、保護層33が形成される。配線層20のうち導電ワイヤ36,37がボンディングされる部分(例えば、端子部28など)は、保護層33から露出している。
【0038】
図9を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、主面11上に駆動回路35を実装するステップを備える。例えば、駆動回路35は、接着剤などの接合部材(図示せず)を用いて、グレーズ層15に固定される。図9を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、導電ワイヤ36,37をボンディングするステップを備える。例えば、導電ワイヤ36は、ワイヤボンダー(図示せず)を用いて、駆動回路35と複数の個別配線25の端子部28とにボンディングされる。導電ワイヤ37は、ワイヤボンダー(図示せず)を用いて、駆動回路35と複数の引出配線29とにボンディングされる。
【0039】
図10を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、駆動回路35を封止部材43で封止するステップを備える。例えば、駆動回路35上に封止樹脂材料をポッティングする。封止樹脂材料を硬化させる。こうして、封止部材43が形成される。
【0040】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、基板10にコネクタ40を取り付けるステップを備える。コネクタ40は、複数のピン(図示せず)を含む。複数のピンの一部は、複数の引出配線29に導通している。複数のピンの別の一部は、共通配線21の基部22に導通する配線(図示せず)に導通している。本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、基板10にヒートシンク40を取り付けるステップを備える。具体的には、ヒートシンク49は、ねじのような締結部材または接合部材(図示せず)によって、基板10の裏面12に取り付けられる。こうして、図1から図4に示される本実施の形態のサーマルプリントヘッド1が得られる。
【0041】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の動作を説明する。
【0042】
図1に示されるように、突起45は、サーマルプリンタに含まれるプラテンローラ46に対向している。プラテンローラ46は、印刷媒体47をサーマルプリントヘッド1に向けて送り出す。プラテンローラ46が回転することにより、印刷媒体47が+y方向に送り出される。突起45とプラテンローラ46との間に、印刷媒体47が挟み込まれる。
【0043】
駆動回路35は、複数の個別配線25を通して、複数の発熱部31に個別に電流を印加する。複数の発熱部31のうち電流が印加された発熱部31が、選択的に発熱する。複数の発熱部31で発生した熱は、印刷媒体47に伝わる。こうして、サーマルプリントヘッド1を用いて、印刷媒体47に印字が施される。複数の発熱部31で発生した熱の一部は、グレーズ層15に伝わる。グレーズ層15にこの熱が蓄えられる。グレーズ層15は、蓄熱層として機能する。複数の発熱部31で発生した熱の残りは、基板10及びヒートシンク49を通して、サーマルプリントヘッド1の外部に放出される。
【0044】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1及びその製造方法の効果を説明する。
【0045】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1は、主面11を有する基板10と、主面11上に配置されている凸部14と、主面11の少なくとも一部と凸部14とを覆うグレーズ層15と、配線層20と、抵抗体層30とを備える。抵抗体層30は、グレーズ層15及び配線層20上に配置されており、かつ、複数の発熱部31を含む。配線層20は、複数の発熱部31に導通し、かつ、抵抗体層30に接触している。主面11の平面視において、複数の発熱部31は凸部14に重なっている。凸部14は、低温同時焼成セラミックで形成されている。
【0046】
印刷媒体47は、凸部14と複数の発熱部31とを含む突起45に接触する。突起45は凸部14を含むため、突起45をより高くすることができる。複数の発熱部31を含む突起45は印刷媒体47に十分な接触圧力で接触して、複数の発熱部31から印刷媒体47に十分な熱が印加される。また、サーマルプリントヘッド1に対する印刷媒体47の接触面積が減少する。そのため、サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0047】
凸部14は、低温同時焼成セラミックで形成されている。そのため、凸部14は、塗布工程及び焼成工程という、グレーズ層15などと同様の工程で形成され得る。凸部14は、基板10をエッチングすることなく形成され得る。サーマルプリントヘッド1の製造効率が向上するとともに、サーマルプリントヘッド1の製造コストが減少する。
【0048】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1では、凸部14の高さhは、20μm以上である。
【0049】
そのため、突起45をより高くすることができる。サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0050】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1では、凸部14の高さhは、200μm以下である。
【0051】
そのため、配線層20のパターニングが容易になる。サーマルプリントヘッド1の製造歩留まりが向上するとともに、サーマルプリントヘッド1の製造コストが減少する。
【0052】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1では、配線層20は、共通配線21と、複数の個別配線25とを含む。共通配線21は、複数の発熱部31に導通している。複数の個別配線25の各々は、複数の発熱部31のうち対応するものに導通している。
【0053】
そのため、突起45をより高くすることができる。サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0054】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1は、複数の発熱部31と配線層20を覆う保護層33をさらに備える。
【0055】
そのため、複数の発熱部31及び配線層20が保護層33によって保護されるとともに、サーマルプリントヘッド1(より具体的には突起45)に対する印刷媒体47の接触がより円滑になる。サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0056】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、基板10の主面11上に、低温同時焼成セラミックで形成されている凸部14を形成するステップと、主面11の少なくとも一部と凸部14とを覆うグレーズ層15を形成するステップと、グレーズ層15上に配線層20を形成するステップと、グレーズ層15及び配線層20上に抵抗体層30を形成するステップとを備える。抵抗体層30は、複数の発熱部31を含む。配線層20は、複数の発熱部31に導通し、かつ、抵抗体層30に接触している。主面11の平面視において、複数の発熱部31は凸部14に重なっている。
【0057】
印刷媒体47は、凸部14と複数の発熱部31とを含む突起45に接触する。突起45は凸部14を含むため、突起45をより高くすることができる。複数の発熱部31を含む突起45は印刷媒体47に十分な接触圧力で接触して、複数の発熱部31から印刷媒体47に十分な熱が印加される。また、サーマルプリントヘッド1に対する印刷媒体47の接触面積が減少する。そのため、サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0058】
凸部14は、低温同時焼成セラミックで形成されている。そのため、凸部14は、塗布工程及び焼成工程という、グレーズ層15などと同様の工程で形成され得る。凸部14は、基板10をエッチングすることなく形成され得る。サーマルプリントヘッド1の製造効率が向上するとともに、サーマルプリントヘッド1の製造コストが減少する。
【0059】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法では、凸部14の高さhは、20μm以上である。
【0060】
そのため、突起45をより高くすることができる。サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0061】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法では、凸部14の高さhは、200μm以下である。
【0062】
そのため、配線層20のパターニングが容易になる。サーマルプリントヘッド1の製造歩留まりが向上するとともに、サーマルプリントヘッド1の製造コストが減少する。
【0063】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、複数の発熱部31と配線層20を覆う保護層33を形成するステップをさらに備える。
【0064】
そのため、複数の発熱部31及び配線層20が保護層33によって保護されるとともに、サーマルプリントヘッド1(より具体的には突起45)に対する印刷媒体47の接触がより円滑になる。サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0065】
(実施の形態2)
【0066】
図11及び図12を参照して、実施の形態2のサーマルプリントヘッド1を説明する。本実施の形態のサーマルプリントヘッド1は、実施の形態1のサーマルプリントヘッド1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で実施の形態1のサーマルプリントヘッド1と異なっている。
【0067】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1では、抵抗体層30の短手方向(y方向)において、抵抗体層30は、凸部14の中心線14cに対して、抵抗体層30から複数の個別配線25が引き出される方向(-y方向)にずれて配置されている。すなわち、抵抗体層30の短手方向(y方向)において、抵抗体層30の中心線30cは、凸部14の中心線14cに対して、抵抗体層30から複数の個別配線25が引き出される方向(-y方向)にずれて配置されている。
【0068】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1の製造方法は、実施の形態1のサーマルプリントヘッド1の製造方法と同様の工程を備えているが、既に記載したとおり、凸部14に対する抵抗体層30の配置の点で実施の形態1のサーマルプリントヘッド1の製造方法と異なっている。
【0069】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1及びその製造方法の効果は、実施の形態1のサーマルプリントヘッド1及びその製造方法の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0070】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド1及びその製造方法では、抵抗体層30の短手方向(y方向)において、抵抗体層30は、凸部14の中心線14cに対して、抵抗体層30から複数の個別配線25が引き出される方向(-y方向)にずれて配置されている。
【0071】
印刷媒体47は、プラテンローラ46によって、通常、複数の個別配線25側から共通配線21側に送り出される。抵抗体層30に含まれる複数の発熱部31は、凸部14の中心線14cに対して、印刷媒体47の送り出し方向の上流側に変位している。そのため、複数の発熱部31を含む突起45はより確実に印刷媒体47に十分な接触圧力で接触して、複数の発熱部31から印刷媒体47に十分な熱がより確実に印加される。サーマルプリントヘッド1の印字品質が向上し得る。
【0072】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0073】
(付記1)
主面を有する基板と、
前記主面上に配置されている凸部と、
前記主面の少なくとも一部と前記凸部とを覆うグレーズ層と、
配線層と、
抵抗体層とを備え、
前記抵抗体層は、前記グレーズ層及び前記配線層上に配置されており、かつ、複数の発熱部を含み、
前記配線層は、前記複数の発熱部に導通し、かつ、前記抵抗体層に接触しており、
前記主面の平面視において、前記複数の発熱部は前記凸部に重なっており、
前記凸部は、低温同時焼成セラミックで形成されている、サーマルプリントヘッド。
(付記2)
前記凸部の高さは、20μm以上である、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
(付記3)
前記凸部の前記高さは、200μm以下である、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
(付記4)
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線とを含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線の各々は、前記複数の発熱部のうち対応するものに導通している、付記1から付記3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
(付記5)
前記抵抗体層の短手方向において、前記抵抗体層は、前記凸部の中心線に対して、前記抵抗体層から前記複数の個別配線が引き出される方向にずれて配置されている、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
(付記6)
前記複数の発熱部と前記配線層とを覆う保護層をさらに備える、付記1から付記5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
(付記7)
基板の主面上に、低温同時焼成セラミックで形成されている凸部を形成するステップと、
前記主面の少なくとも一部と前記凸部とを覆うグレーズ層を形成するステップと、
前記グレーズ層上に配線層を形成するステップと、
前記グレーズ層及び前記配線層上に抵抗体層を形成するステップとを備え、
前記抵抗体層は、複数の発熱部を含み、
前記配線層は、前記複数の発熱部に導通し、かつ、前記抵抗体層に接触しており、
前記主面の平面視において、前記複数の発熱部は前記凸部に重なっている、サーマルプリントヘッドの製造方法。
(付記8)
前記凸部の高さは、20μm以上である、付記7に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
(付記9)
前記凸部の前記高さは、200μm以下である、付記8に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
(付記10)
前記複数の発熱部と前記配線層とを覆う保護層を形成するステップをさらに備える、付記7から付記9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0074】
今回開示された実施の形態1及び実施の形態2はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 サーマルプリントヘッド、10 基板、11 主面、12 裏面、14 凸部、14c 中心線、15 グレーズ層、20 配線層、21 共通配線、22 基部、23,26 延出部、25 個別配線、27 端部、28 端子部、29 引出配線、30 抵抗体層、30c 中心線、31 発熱部、33 保護層、35 駆動回路、36,37 導電ワイヤ、40 コネクタ、43 封止部材、45 突起、46 プラテンローラ、47 印刷媒体、49 ヒートシンク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12