(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095692
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240703BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240703BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240703BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240703BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240703BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240703BHJP
C12N 15/14 20060101ALN20240703BHJP
C07K 14/765 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/63 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/14
C07K14/765
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044253
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2022081037の分割
【原出願日】2017-05-19
(31)【優先権主張番号】62/339,682
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517403846
【氏名又は名称】ハープーン セラピューティクス,インク.
【住所又は居所原語表記】611 Gateway Boulevard,Suite 400 South San Francisco,California 94080,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブリッジ,ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】レモン,ブライアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】イブニン,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ゲノ,ジャンマリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された耐熱性、結合親和性、および頑強な凝集プロフィールを有する単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、それぞれ特定のアミノ酸配列を含む、相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、ポリヌクレオチドが提供される。また、前記ポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターで形質転換された宿主細胞を含む医薬組成物が提供される。前記ポリヌクレオチドは、必要とする被験体における、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病の処置または改善に使用される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質であって、
ここで、
(a)CDR1のアミノ酸配列はGFX1X2X3X4FGMS(SEQ ID NO.1)に記載される通りであり、X1はトレオニン、アルギニン、リジン、セリン、またはプロリンであり、X2はフェニルアラニンまたはチロシンであり、X3はセリン、アルギニン、またはリジンであり、X4はセリン、リジン、アルギニン、またはアラニンであり;
(b)CDR2のアミノ酸配列はSISGSGX5X6TLYAX7SX8K(SEQ ID NO.2)で記載される通りであり、X5はセリン、アルギニン、トレオニン、またはアラニンであり、X6はアスパラギン酸、ヒスチジン、バリン、またはトレオニンであり、X7はアスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニン、またはセリンであり、X8はバリンまたはロイシンであり;および、
(c)CDR3のアミノ酸配列はGGSLX9X10(SEQ ID NO.3)で記載される通りであり、X9はセリン、アルギニン、トレオニン、またはリジンであり、X10はアルギニン、リジン、バリン、プロリン、またはアスパラギンであり、ここで、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10はそれぞれ同時にトレオニン、フェニルアラニン、セリン、セリン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン酸、バリン、セリン、およびアルギニンではない、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項2】
単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、以下の式:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4を含み、
式中、r1はSEQ ID NO.1であり、r2はSEQ ID NO.2であり、および、r3はSEQ ID NO.3であり、ここで、f1、f2、f3、およびf4は、前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質がSEQ ID NO:10で記載されるアミノ酸配列に少なくとも80パーセント同一であるように、選択されたフレームワーク残基である、請求項1に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項3】
r1はSEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15、またはSEQ ID NO.16を含む、請求項2に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項4】
r2はSEQ ID NO.17、SEQ ID NO.18、SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、またはSEQ ID NO.22を含む、請求項2に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項5】
r3はSEQ ID NO.23またはSEQ ID NO.24を含む、請求項2に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項6】
r1はSEQ ID NO.14を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項7】
r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.17であり、およびr3はSEQ ID NO.23である、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項8】
r1はSEQ ID NO.16を含み、r3はSEQ ID NO.23を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項9】
r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.18を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項10】
r1はSEQ ID NO.14を含み、r3はSEQ ID NO.23を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項11】
r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.19を含み、およびr3はSEQ ID NO.24を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項12】
r1はSEQ ID NO.14を含み、r2はSEQ ID NO.20を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項13】
r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.21を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項14】
r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.22を含み、およびr3はSEQ ID NO.24を含む、請求項2-5のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項15】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、およびSEQ ID NO.27から選択されたアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項16】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒト血清アルブミン、カニクイザル血清アルブミン、およびマウス血清アルブミンから選択された血清アルブミンに結合する、請求項1-15のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項17】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、同等の結合親和性(Kd)を有するヒト血清アルブミンとカニクイザル血清アルブミンに結合する、請求項1-16のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項18】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒトとカニクイザルの血清アルブミンに対する前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の結合親和性(Kd)よりも約1.5倍~約20倍弱い結合親和性(Kd)を有するマウス血清アルブミンに結合する、請求項1-17のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項19】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、約1nM~約100nM間のヒトKd(hKd)を有するヒト血清アルブミンに結合し、約1nM~約100nM間のカニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合する、請求項1-18のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項20】
hKdとcKdは、1nMと約5nM、または約5nMと約10nMの間である、請求項19に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項21】
hKdとcKdは、約1nM~約2nM、約2nM~約3nM、約3nM~約4nM、約4nM~約5nM、約5nM~約6nM、約6nM~約7nM、約7nM~約8nM、約8nM~約9nM、または約9nM~約10nMの間である、請求項20に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項22】
hKdとcKdの間の比率(hKd:cKd)は、約20:1~約1:2に及ぶ、請求項16-21のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項23】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項24】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.5として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項25】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.6として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項26】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.7として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項27】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約5nMと約10nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項28】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項29】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.25として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項30】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.26として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項31】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.27として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項1-22のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項32】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、少なくとも12時間、少なくとも20時間、少なくとも25時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも45時間、少なくとも50時間、または少なくとも100時間の消失半減期を有する、請求項1-31のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項33】
SEQ ID NO.10(wt抗HSA)として記載された配列を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含んでいる単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質であって、
ここで、CDR1のアミノ酸位置28、29、30、または31;CDR2の位置56、57、62、または64;あるいは、CDR3の位置103および104から選択された1つ以上のアミノ酸残基が置換され、
ここで、
アミノ酸位置28はアルギニン、リジン、セリン、またはプロリンで置換され、
アミノ酸位置29はチロシンで置換され、
アミノ酸位置30はアルギニンまたはリジンで置換され、
アミノ酸位置31はリジン、アルギニン、またはアラニンで置換され、
アミノ酸位置56はアルギニン、トレオニン、またはアラニンで置換され、
アミノ酸位置57はヒスチジン、バリン、またはトレオニンで置換され、
アミノ酸位置62はヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸、またはセリンで置換され、
アミノ酸位置64はロイシンで置換され、
アミノ酸位置103はアルギニン、トレオニン、またはリジンで置換され、
アミノ酸位置104はリジン、バリン、プロリン、またはアスパラギンで置換される、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項34】
位置28、29、30、31、56、57、62、64、103、および104以外のアミノ酸位置で1つ以上の追加の置換を含む、請求項33に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項35】
位置29における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項36】
位置31における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項37】
位置56における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項38】
位置62における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項39】
位置64における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項40】
位置104における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項41】
アミノ酸位置31および62における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項42】
アミノ酸位置31がアルギニンで置換される、請求項36に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項43】
アミノ酸位置31がアルギニンで置換され、アミノ酸位置62がグルタミン酸で置換される、請求項41に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項44】
アミノ酸位置31、56、64、および104における置換を含む、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項45】
アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がアラニンで置換され、アミノ酸位置64がロイシンで置換され、アミノ酸位置104がリジンで置換される、請求項44に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項46】
アミノ酸位置29と104が置換される、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項47】
アミノ酸位置29がチロシンで置換され、アミノ酸位置104がリジンで置換される、請求項46に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項48】
アミノ酸位置31および56が置換される、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項49】
アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がトレオニンで置換される、請求項48に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項50】
アミノ酸位置31、56、および62が置換される、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項51】
アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がトレオニンで置換され、アミノ酸位置62がグルタミン酸で置換される、請求項50に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項52】
アミノ酸位置31および104が置換される、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項53】
アミノ酸位置31がアルギニンで置換され、アミノ酸位置104がリジンで置換される、請求項51に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項54】
アミノ酸位置31、56、および104が置換される、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項55】
アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がアルギニンで置換され、アミノ酸位置104がバリンで置換される、請求項54に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項56】
アミノ酸位置31、56、62、および104が置換される、請求項33または34に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項57】
アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がアルギニンで置換され、アミノ酸位置62がグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置104がバリンで置換される、請求項56に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項58】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、同等の結合親和性(Kd)を有するヒト血清アルブミンとカニクイザル血清アルブミンに結合する、請求項33-57のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項59】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒトとカニクイザルの血清アルブミンに対する前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の結合親和性(Kd)よりも約1.5倍~約20倍弱い結合親和性(Kd)を有するマウス血清アルブミンに結合する、請求項33-58のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項60】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、約1nM~約100nM間のヒトKd(hKd)を有するヒト血清アルブミンに結合し、1nM~100nM間のカニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合する、請求項33-59のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項61】
hKdとcKdは、1nMと約5nM、または約5nMと約10nMの間である、請求項33-60のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項62】
hKdとcKdは、約1nM~約2nM、約2nM~約3nM、約3nM~約4nM、約4nM~約5nM、約5nM~約6nM、約6nM~約7nM、約7nM~約8nM、約8nM~約9nM、または約9nM~約10nMの間である、請求項33-61のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項63】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒト血清アルブミンに結合し、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合し、ここで、hKdとcKdの間の比率(hKd:cKd)は、約20:1~約1:2である、請求項33-62のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項64】
アミノ酸位置31はアルギニンで置換され、hKdとcKdは、約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項65】
アミノ酸位置31はアルギニンで置換され、アミノ酸位置62はグルタミン酸で置換され、hKdとcKdは、約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項66】
アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はアラニンで置換され、アミノ酸位置64はロイシンで置換され、アミノ酸位置104はリジンで置換され、および、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項67】
アミノ酸位置29はチロシンで置換され、アミノ酸位置104はリジンで置換され、およびhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項68】
アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はトレオニンで置換され、およびhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項69】
アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はトレオニンで置換され、アミノ酸位置62はグルタミン酸で置換され、および、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項70】
アミノ酸位置31はアルギニンで置換され、アミノ酸位置104はリジンで置換され、およびhKdとcKdは約5nMと約10nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項71】
アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はアルギニンで置換され、アミノ酸位置104はバリンで置換され、およびhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項72】
アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はアルギニンで置換され、アミノ酸位置62はグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置104はバリンで置換され、および、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項33-63のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項73】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、少なくとも12時間、少なくとも20時間、少なくとも25時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも45時間、少なくとも50時間、または少なくとも100時間の消失半減期を有する、請求項33-72のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項74】
CDR1、CDR2、またはCDR3中に少なくとも1つの突然変異を含む単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質であって、
ここで、CDR1はSEQ ID NO:11で記載される通りの配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:12で記載される通りの配列を有し、CDR3はSEQ ID NO:13で記載される通りの配列を有し、
ここで、少なくとも1つの突然変異は、SEQ ID NO:11のアミノ酸位置1、2、7、8、9、または10、SEQ ID NO:12の位置1、3、6、10、または11、あるいは、SEQ ID NO:13の位置1または2にはない、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項75】
CDR1(SEQ ID NO:11)の位置3、4、5、および6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7、8、13、および15、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置5および6から選択されたアミノ酸位置に少なくとも1つの突然変異を含む、請求項74に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項76】
CDR1(SEQ ID NO:11)の位置3、4、5、および6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7、8、13、および15、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置5および6以外のアミノ酸位置において1つ以上の追加の置換を含む、請求項74に記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項77】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6における突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項78】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置13において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項79】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および15、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項80】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置4と、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項81】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項82】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項83】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項84】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項85】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む、請求項74-76のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項86】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、同等の結合親和性(Kd)を有するヒト血清アルブミンとカニクイザル血清アルブミンに結合する、請求項74-85のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項87】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒトとカニクイザルの血清アルブミンに対する前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の結合親和性(Kd)よりも約1.5倍~約20倍弱い結合親和性(Kd)を有するマウス血清アルブミンに結合する、請求項74-86のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項88】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、約1nM~約100nM間のヒトKd(hKd)を有するヒト血清アルブミンに結合し、約1nM~約100nM間のカニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合する、請求項74-87のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項89】
hKdとcKdは、1nMと約5nM、または約5nMと約10nMの間である、請求項74-88のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項90】
hKdとcKdは、約1nM~約2nM、約2nM~約3nM、約3nM~約4nM、約4nM~約5nM、約5nM~約6nM、約6nM~約7nM、約7nM~約8nM、約8nM~約9nM、または約9nM~約10nMの間である、請求項74-89のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項91】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒト血清アルブミンに結合し、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合し、および、hKdとcKdの間の比率(hKd:cKd)は、約20:1~約1:2である、請求項74-85のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項92】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はアルギニンに突然変異し、およびhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項93】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はアルギニンに突然変異し、およびCDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置13はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項94】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および15はアラニンとロイシンにそれぞれ突然変異し、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、ならびに、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項95】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置4はチロシンに突然変異し、およびCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、ならびに、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項96】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、およびCDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7はトレオニンに突然変異し、ならびに、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項97】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13はトレオニンとグルタミン酸にそれぞれ突然変異し、ならびに、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項98】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はアルギニンに突然変異し、CDR3(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、ならびに、hKdとcKdは約5nMと約12nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項99】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7はアルギニンに突然変異し、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はバリンに突然変異し、ならびに、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項100】
CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13はアルギニンとグルタミン酸にそれぞれ突然変異し、およびCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はバリンに突然変異し、ならびに、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である、請求項74-91のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項101】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、少なくとも12時間、少なくとも20時間、少なくとも25時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも45時間、少なくとも50時間、または少なくとも100時間の消失半減期を有する、請求項74-100のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項102】
請求項1-101のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項103】
請求項102のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項104】
請求項103のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項105】
(i)請求項1-101のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、請求項102のポリヌクレオチド、請求項103のベクター、または請求項104の宿主細胞、および、(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項106】
請求項1-101のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の産生のためのプロセスであって、
前記プロセスは、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の発現を可能にする条件下で、請求項1-101のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換されたまたはトランスフェクトされた宿主を培養すること、および、培養物から生成されたタンパク質を回収および精製することを含む、プロセス。
【請求項107】
請求項1-101のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の被験体への投与を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病の処置または改善のための方法。
【請求項108】
被験体はヒトである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記方法はさらに、請求項1-100のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
請求項1、33、または74のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性の結合タンパク質。
【請求項111】
請求項1、33、または74の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む抗体。
【請求項112】
請求項1、33、または74の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む、多特異性抗体、二重特異性抗体、sdAb、可変重鎖ドメイン、ペプチド、またはリガンド。
【請求項113】
請求項1、33、または74の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む抗体であって、前記抗体は単一ドメイン抗体である、抗体。
【請求項114】
前記抗体はIgGの重鎖可変領域に由来する、請求項113に記載の抗体。
【請求項115】
請求項1、33、または74のいずれか1つの単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質とCD3結合ドメインを含む多特異性の結合タンパク質または抗体。
【請求項116】
請求項111-115のいずれか1つの多特異性抗体の被験体への投与を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病の処置または改善のための方法。
【請求項117】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項118】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.7として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項119】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項120】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.26として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項121】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.27として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項122】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.5として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項123】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.6として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項124】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【請求項125】
前記単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.25として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1-101のいずれか1つに記載の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年5月20日に出願された米国仮出願第62/339,682号の利益を主張するものであり、この文献は参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照により全体として本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2017年5月18日に作成された上記のASCIIのコピーは、47517-703_601_SEQ.txtのファイル名であり、22,218バイトのサイズである。
【0003】
引用による組み込み
本明細書で言及される公開物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の公開物、特許あるいは特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるべく具体的かつ個々に指示されるかのように、および、その全体にわたって、同程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
アルブミンは最も豊富な血漿タンパクであり、高溶解性であり、非常に安定していて、かつ、非常に長い循環型半減期を有している。アルブミンは、治療分子の循環型半減期を増加させる様々な方法で使用することができる。本開示は、治療分子の半減期を延長させるために使用可能な単一ドメインアルブミン結合タンパク質を提供する。
【発明の概要】
【0005】
1つの実施形態では、相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質が本明細書で提供され、ここで、(a)CDR1のアミノ酸配列はGFX1X2X3X4FGMS(SEQ ID NO.1)に記載される通りであり、X1はトレオニン、アルギニン、リジン、セリン、またはプロリンであり、X2はフェニルアラニンまたはチロシンであり、X3はセリン、アルギニン、またはリジンであり、X4はセリン、リジン、アルギニン、またはアラニンであり;(b)CDR2のアミノ酸配列はSISGSGX5X6TLYAX7SX8K(SEQ ID NO.2)で記載される通りであり、X5はセリン、アルギニン、トレオニン、またはアラニンであり、X6はアスパラギン酸、ヒスチジン、バリン、またはトレオニンであり、X7はアスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニン、またはセリンであり、X8はバリンまたはロイシンであり;および、(c)CDR3のアミノ酸配列はGGSLX9X10(SEQ ID NO.3)で記載される通りであり、X9はセリン、アルギニン、トレオニン、またはリジンであり、X10はアルギニン、リジン、バリン、プロリン、またはアスパラギンであり、ここで、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10はそれぞれ同時にトレオニン、フェニルアラニン、セリン、セリン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン酸、バリン、セリン、およびアルギニンではない。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、以下の式:f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4を含み、式中、r1はSEQ ID NO.1であり、r2はSEQ ID NO.2であり、および、r3はSEQ ID NO.3であり、ここで、f1、f2、f3、およびf4は、上記のタンパク質がSEQ ID NO:10で記載されるアミノ酸配列に少なくとも80パーセント同一であるように、選択されたフレームワーク残基である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15、またはSEQ ID NO.16を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r2はSEQ ID NO.17、SEQ ID NO.18、SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、またはSEQ ID NO.22を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r3はSEQ ID NO.23またはSEQ ID NO.24を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.14を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.17を含み、およびr3はSEQ ID NO.23を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.16を含み、r3はSEQ ID NO.23を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.18を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.14を含み、r3はSEQ ID NO.23を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.19を含み、およびr3はSEQ ID NO.24を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.14を含み、r2はSEQ ID NO.20を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.21を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、ここで、r1はSEQ ID NO.15を含み、r2はSEQ ID NO.22を含み、およびr3はSEQ ID NO.24を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、およびSEQ ID NO.27から選択されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.7として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.26として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.27として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.5として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.6として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.25として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒト血清アルブミン、カニクイザル血清アルブミン、およびマウス血清アルブミンから選択された血清アルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、同等の結合親和性(Kd)を有するヒト血清アルブミンとカニクイザル血清アルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒトとカニクイザルの血清アルブミンに対する上記タンパク質の結合親和性(Kd)よりも約1.5倍~約20倍弱い結合親和性(Kd)を有するマウス血清アルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、約1nM~約100nM間のヒトKd(hKd)を有するヒト血清アルブミンに結合し、1nM~100nM間のカニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは、1nMと約5nM、または約5nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは、約1nM~約2nM、約2nM~約3nM、約3nM~約4nM、約4nM~約5nM、約5nM~約6nM、約6nM~約7nM、約7nM~約8nM、約8nM~約9nM、または約9nM~約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdの間の比率(hKd:cKd)は、約20:1~約1:2に及ぶ。
【0007】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.5として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.6として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.7として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約5nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.22として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.23として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.24として記載されるアミノ酸配列を含み、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。
【0008】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、少なくとも12時間、少なくとも20時間、少なくとも25時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも45時間、少なくとも50時間、または少なくとも100時間の消失半減期を含む。
【0009】
別の実施形態では、SEQ ID NO.10として記載された配列を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含んでいる単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質が提供され、ここで、CDR1のアミノ酸位置28、29、30、または31;CDR2の位置56、57、62、または64;あるいは、CDR3の位置103、および104から選択された1つ以上のアミノ酸残基が置換され、ここで、アミノ酸位置28はアルギニン、リジン、セリン、またはプロリンで置換され、アミノ酸位置29はチロシンで置換され、アミノ酸位置30はアルギニンまたはリジンで置換され、アミノ酸位置31はリジン、アルギニン、またはアラニンで置換され、アミノ酸位置56はアルギニン、トレオニン、またはアラニンで置換され、アミノ酸位置57はヒスチジン、バリン、またはトレオニンで置換され、アミノ酸位置62はヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸、またはセリンで置換され、アミノ酸位置64はロイシンで置換され、アミノ酸位置103はアルギニン、トレオニン、またはリジンで置換され、アミノ酸位置104はリジン、バリン、プロリン、またはアスパラギンで置換される。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合は、位置28、29、30、31、56、57、62、64、103、および104以外のアミノ酸位置で1つ以上の追加の置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置29における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置31における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置56における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置62における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置64における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置104における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31および62における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置31がアルギニンで置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置31がアルギニンで置換され、アミノ酸位置62がグルタミン酸で置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31、56、64、および104における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がアラニンで置換され、アミノ酸位置64がロイシンで置換され、アミノ酸位置104がリジンで置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置29と104における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置29がチロシンで置換され、アミノ酸位置104がリジンで置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31および56における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がトレオニンで置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31、56、および62における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がトレオニンで置換され、アミノ酸位置62がグルタミン酸で置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31および104における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31がアルギニンで置換され、アミノ酸位置104がリジンで置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31、56、および104における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がアルギニンで置換され、アミノ酸位置104がバリンで置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31、56、62、および104における置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、アミノ酸位置31がリジンで置換され、アミノ酸位置56がアルギニンで置換され、アミノ酸位置62がグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置104がバリンで置換されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はアルギニンで置換され、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは、約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はアルギニンで置換され、アミノ酸位置62はグルタミン酸で置換され、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは、約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はアラニンで置換され、アミノ酸位置64はロイシンで置換され、アミノ酸位置104はリジンで置換され、および、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置29はチロシンで置換され、アミノ酸位置104はリジンで置換され、およびhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はトレオニンで置換され、および単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミンはアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はトレオニンで置換され、アミノ酸位置62はグルタミン酸で置換され、および、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はアルギニンで置換され、アミノ酸位置104はリジンで置換され、および単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約5nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はアルギニンで置換され、アミノ酸位置104はバリンで置換され、および単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はリジンで置換され、アミノ酸位置56はアルギニンで置換され、アミノ酸位置62はグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置104はバリンで置換され、および、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。
【0010】
別の実施形態では、CDR1、CDR2、またはCDR3中に少なくとも1つの突然変異を含む単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質が本明細書で提供され、ここで、CDR1はSEQ ID NO:11で記載される通りの配列を含み、CDR2はSEQ ID NO:12で記載される通りの配列を含み、CDR3はSEQ ID NO:13で記載される通りの配列を含み、ここで、少なくとも1つの突然変異は、SEQ ID NO:11のアミノ酸位置1、2、7、8、9、または10、SEQ ID NO:12の位置1、3、6、10、または11、あるいは、SEQ ID NO:13の位置1または2にはない。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)の位置3、4、5、および6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7、8、13、および15、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置5および6から選択されたアミノ酸位置で少なくとも1つの突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)の位置3、4、5、および6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7、8、13、および15、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置5および6以外のアミノ酸位置において1つ以上の追加の置換を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6における突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置13において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および15、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置4と、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6と、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13、ならびにCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6において突然変異を含む。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はアルギニンに突然変異し、および単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はアルギニンに突然変異し、およびCDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置13はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および15はアラニンとロイシンにそれぞれ突然変異し、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置4はチロシンに突然変異し、およびCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、およびCDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7はトレオニンに突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13はトレオニンとグルタミン酸にそれぞれ突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はアルギニンに突然変異し、CDR3(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約5nMと約12nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7はアルギニンに突然変異し、CDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はバリンに突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はアミノ酸配列を含み、ここで、CDR1(SEQ ID NO:11)のアミノ酸位置6はリジンに突然変異し、CDR2(SEQ ID NO:12)のアミノ酸位置7および13はアルギニンとグルタミン酸にそれぞれ突然変異し、およびCDR3(SEQ ID NO:13)のアミノ酸位置6はバリンに突然変異し、ならびに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のhKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。
【0011】
別の実施形態では、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが本明細書で提供される。さらなる実施形態は、本明細書に開示されるようなポリヌクレオチドを含むベクターを記載している。別の実施形態は、本開示に係るベクターで形質転換された宿主細胞を記載している。1つの実施形態では、(i)本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、本開示に係るポリヌクレオチド、本開示に係るベクター、または本開示に係る宿主細胞、および、(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物が提供される。
【0012】
別の実施形態では、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の産生のためのプロセスが本明細書に記載され、上記プロセスは、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の発現を可能にする条件下で、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換されたまたはトランスフェクトされた宿主を培養すること、および、培養物から生成されたタンパク質を回収および精製することを含む。
【0013】
本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の被験体への投与を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病の処置または改善のための方法がさらに記載されている。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態において、方法はさらに、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を含む。
【0014】
別の実施形態では、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性の結合タンパク質が記載されている。別の実施形態では、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む抗体が記載されている。
【0015】
さらなる実施形態は、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む、多特異性抗体、二重特異性抗体、sdAb、可変重鎖ドメイン、ペプチド、またはリガンドについて記載している。1つの実施形態では、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む抗体が提供され、ここで、上記抗体は単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン抗体はIgGの重鎖可変領域に由来する。
【0016】
1つの実施形態は、本開示に係る単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質とCD3結合ドメインを含む多特異性の結合タンパク質または抗体について記載している。1つの実施形態では、本開示に係る多特異性抗体の被験体への投与を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病の処置または改善のための方法が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新規な特徴は、とりわけ添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【
図1】HSA抗原とCD3抗原へのELISA滴定によって決定されるような親の抗HSAファージの特異的結合を例証する。
【
図2】ELISA滴定によって決定されるようなヒト、カニクイザル、およびマウスの血清アルブミンに対する抗HSAファージの交差反応性を例証する。
【
図3】精製されたsdAbを使用して、より正確なKd決定のために選択された9つのクローンの結合親和性プロフィールを提供する。
【
図4】複数の抗HSA sdAb変異体のための疎水性の曝露(T
h°C)の温度を例証する。
【
図5】低いpHで二量体対単量体を形成するための、複数の抗HSA sdAb変異体の傾向を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され記載されているが、こうした実施形態がほんの一例として提供されているに過ぎないということは当業者にとって明白である。多くの変更、変化および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者の心に思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されることもあることを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
【0019】
特定の定義
本明細書で使用される用語は、特定のケースのみを記載することを目的としており、本発明を制限することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈上他の意味を明白に示すものでない限り、同様に複数形を含むことを意図している。さらに、用語「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「含んだ(with)」、または、その変異形が発明を実施するための形態および/または請求項のいずれかで使用される程度には、上記のような用語は「含んでいる(comprising)」との用語に類似する手法で包括的であることを意図している。
【0020】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定されるような特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは部分的には、その値がどのように測定または決定されるかに、例えば、測定システムの制限に依存する。例えば、「約」とは、任意の値での実践につき1または1を超える標準偏差を意味し得る。特定の値が本出願と請求項に記載されている場合、特段の定めのない限り、「約」との用語は、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味するものであると仮定されなければならない。
【0021】
用語「個体」、「患者」、または「被験体」は交換可能に使用される。いかなる用語も、医療従事者(例えば、医者、正看護師、臨床看護師、医師助手、看護助手、あるいはホスピスの職員)の監督(例えば、常時または断続的)を特徴とする状況を必要とせず、かつ、該状況に限定されない。
【0022】
用語「フレームワーク」または「FR」残基(または領域)は、本明細書に定義されるようなCDRまたは超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基を指す。「ヒト・コンセンサス・フレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択の際に最も一般に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。
【0023】
本明細書で使用されるように、「可変領域」または「可変ドメイン」とは、可変ドメインの特定の部分が抗体中の配列で大きく異なり、その特定の抗原について各々の特定の抗体の結合と特異性で使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。それは、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖と軽鎖の可変ドメインは各々、β-シート構造を接続する、場合によってはβ-シート構造の一部を形成するループを形成する、3つのCDRにより接続された、β-シート構造を採用している4つのFR領域を含む。各鎖のCDRはFR領域によって極めて接近して一緒に保持され、他の鎖からのCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md.(1991)を参照)。定常ドメインは抗体を抗原に結合することに直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。「Kabatでのような可変ドメイン残基の番号付け」あるいは「Kabatでのようなアミノ酸位置の番号付け」、およびその変更形態は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991)における抗体の編集物の重鎖変数ドメインあるいは軽鎖変数ドメインのために使用された番号づけ方式を参照する。この番号付け方式を使用して、実際の線形のアミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮または可変ドメインのFRまたはCDRへの挿入に対応するより少ないまたは追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatに係る残基52a)を、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従って残基82a、82b、および82cなど)を含むことがある。残基のKabatの番号付けは、「標準的な」Kabatの番号付けされた配列を有する抗体の配列の相同領域での整列によって任意の抗体について決定されることがある。本開示のCDRはKabatの番号付けの慣習に必ず対応するということを意図するものではない。
【0024】
本明細書で使用されるように、配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」との用語は、配列を整列させ、ギャップを導入して、必要に応じて最大のパーセント配列同一性を達成した後に、かつ、配列同一性の一部としてのいかなる保存的置換を考慮せずに、特定の配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列は、当該技術分野内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されている利用可能なコンピューター・ソフトウェアを用いて達成可能である。当業者は、比較されている配列の完全長にわたって最大限の整列を達成するために必要とされるあらゆるアルゴリズムを含む、配列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0025】
本明細書で使用されるように、「消失半減期」は、Goodman and Gillman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics 21-25(Alfred Goodman Gilman,Louis S.Goodman,and Alfred Gilman,eds.,6th ed.1980)に記載されるように、通常の意味で使用される。簡潔に言えば、この用語は、薬物排泄の時間的経過の定量的測度を包含することを目的としている。薬物濃度が消失プロセスの飽和に必要とされる濃度には通常接近しないので、ほとんどの医薬品の消失は指数関数的である(つまり、一次速度論に従う)。指数関数的なプロセスの速度は、1単位時間当たりの僅かな変化を表現するその速度定数kによって、あるいは、そのプロセスの50%の完成のために必要とされる時間であるその半減時間t1/2によって、表現されることがある。これらの2つの定数の単位はそれぞれtime-1とtimeである。反応の一次速度定数と半減時間は、単純に関連づけられ(k×t1/2=0.693)、これに応じて交換されることがある。一次消失動力学は一定の比率の薬物が単位時間ごとに失われるように指令を出すため、薬物濃度対時間の対数のプロットは、初回の分布相の後(つまり、薬物の吸収と分布が完了している後)は常に線形である。薬物排泄のための半減時間はこうしたグラフから正確に決定することができる。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「結合親和性」は、それらの結合標的に対する本開示に記載されたタンパク質の親和性を指し、「Kd」値を数的に使用して発現される。2つ以上のタンパク質が、それらの結合標的に対して同等の結合親和性を有すると示されている場合、その結合標的に対するそれぞれのタンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。2つ以上のタンパク質が単一の結合標的に対して同等の結合親和性を有すると示されている場合、上記の単一結合標的に対するそれぞれのタンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。タンパク質が同等の結合親和性で2つ以上の標的に結合すると示されている場合、2つ以上の標的に対する上記タンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。一般に、高いKd値は弱い結合に相当する。いくつかの実施形態では、「Kd」は、BIAcore(商標)-2000あるいはBIAcore(商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, N.J.)を使用して放射標識された抗原結合アッセイ(RIA)または表面プラズモン共鳴アッセイによって測定される。ある実施形態では、「on-rate」あるいは「会合速度(rate of associationまたはassociation rate)」あるいは「kon」、および「オフ率」あるいは「解離速度(rate of dissociation)または(dissociation rate)」、または「koff」もBIAcore(商標)-2000あるいはBIAcore(商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, N.J.)を使用して、表面プラズモン共鳴技術で決定される。追加の実施形態では、「Kd」、「kon」、および「koff」は、Octet(登録商標)システムズ(Pall Life Sciences)を使用して測定される。
【0027】
単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、医薬組成物、同様に、そのような単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を作るための核酸、組み換え発現ベクター、および宿主細胞が本明細書に記載されている。さらに、疾患、疾病、および障害の予防および/または処置において、開示された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を使用する方法も提供される。単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は血清アルブミンに特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、他の標的抗原に関する結合ドメインと同様に、CD3結合ドメインなどの追加のドメインも含む。
【0028】
<単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質>
単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質が本明細書で企図されている。血清アルブミンは肝臓によって生成され、血漿中に溶解して生じ、哺乳動物で最も豊富な血液タンパク質である。アルブミンは、血管と体内組織との間の体液の適切な分布に必要とされる膠質浸透圧の維持にとって不可欠であり;アルブミンなしでは、血管中の高い圧力はより多くの流体を組織へと送り込む。それはさらに、いくつかの疎水性のステロイドホルモンと非特異的に結合することによって血漿担体として、およびヘミンと脂肪酸のための輸送タンパク質として作用する。ヒト血清アルブミン(HSA)(分子量~67kDa)は、血漿中の最も豊富なタンパク質であり、約50mg/ml(600μM)で存在し、ヒトでは約20日の半減期を有する。HSAは、血漿pHを維持する役目を果たし、コロイド状の血圧に貢献し、多くの代謝産物と脂肪酸の担体として機能し、および、血漿中の主要な薬物輸送タンパク質として役立つ。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はHSAに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はカニクイザルからの血清アルブミンタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はHSAとカニクイザルからの血清アルブミンタンパク質とに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はさらに、マウス血清アルブミンタンパク質に結合する。いくつかの実施形態において、マウス血清アルブミンへの結合親和性は、ヒトまたはカニクイザルの血清アルブミンに対する親和性よりも約1.5~約20倍弱い。
【0029】
アルブミンとの非共有会合は、短命のタンパク質の消失半減期を延長する。例えば、FAbフラグメントに対するアルブミン結合ドメインの組み換え融合は、FAbフラグメントのみの投与と比較して、マウスとウサギの静脈内にそれぞれ投与されたとき、25倍と58倍のインビトロクリアランスの減少、および、26倍と37倍の半減期延長を引き起こした。別の例において、インスリンがアルブミンとの会合を促進するために脂肪酸でアシル化されるとき、ウサギまたはブタに皮下注射された時に長期的な効果が観察された。合わせて、これらの研究は、アルブミン結合と持続的な作用/血清の半減期との間の関連性を実証するものである。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、血清アルブミンに特異的な、ラクダ科由来のsdAbの重鎖可変ドメイン(VH)、可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体、ペプチド、リガンド、または小分子実体である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、HSAに特異的な、ラクダ科由来のsdAbの重鎖可変ドメイン(VH)、可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体、ペプチド、リガンド、または小分子実体である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の血清アルブミン結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む、血清アルブミンに結合するあらゆるドメインである。ある実施形態では、血清アルブミン結合ドメインは単一ドメイン抗体である。他の実施形態では、血清アルブミン結合ドメインはペプチドである。さらなる実施形態では、血清アルブミン結合ドメインは小分子である。単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はかなり小さく、いくつかの実施形態では、せいぜい25kD、せいぜい20kD、せいぜい15kD、または、せいぜい10kDであることが企図される。ある例では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質結合は、ペプチドまたは小分子実体であれば、5kD以下である。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質自体の変更された薬動力学と薬物動態学をもたらす半減期延長ドメインである。上記のように、半減期延長ドメインは消失半減期を延長する。半減期延長ドメインはさらに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の組織分布、浸透、および拡散の変質を含む薬力学的な特性を変更する。いくつかの実施形態において、半減期延長ドメインは、半減期延長ドメインのないタンパク質と比較して、改善された組織(腫瘍を含む)標的化、組織分布、組織浸透、組織内での拡散、増強した有効性をもたらす。1つの実施形態では、治療方法は、量を減少させた単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を有効かつ効率的に利用し、非腫瘍細胞の細胞毒性の減少などの副作用の減少をもたらす。
【0032】
さらに、その結合標的に対する単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の結合親和性は、特定の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質中の特定の消失半減期を標的とするように選択することができる。したがって、いくつかの実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はその結合標的に対して高い結合親和性を有する。他の実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はその結合標的に対して中程度の結合親和性を有する。さらに他の実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はその結合標的に対して低いまたは中程度の結合親和性を有する。典型的な結合親和性は、10nM以下(高い)の、10nM~100nMの間(中程度)の、および100nMを超える(低い)Kdを含む。上記のように、結合標的に対する単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質への結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)などの既知の方法によって決定される。
【0033】
ある実施形態では、本明細書に開示された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するHSAに結合する。ある実施形態では、本明細書に開示された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合する。ある実施形態では、本明細書に開示された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンと、ヒトKd(hKd)を有するHSAとに結合する。いくつかの実施形態において、hKdは1nM~100nMの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、hKdは1nM~10nMの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、cKdは1nM~100nMの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、cKdは1nM~10nMの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、hKdとcKdの範囲は、約1nMと約5nM、あるいは約5nMと10nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ヒト血清アルブミン、カニクイザル血清アルブミン、およびマウス血清アルブミンから選択された血清アルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、同等の結合親和性(Kd)を有するヒト血清アルブミン、カニクイザル血清アルブミン、およびマウス血清アルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、約1nM~約10nM間のヒトKd(hKd)を有するヒト血清アルブミンに結合し、約1nM~約10nM間のカニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザル血清アルブミンに結合する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、約10nMと約50nMの間のマウスKd(mKd)を有するマウス血清アルブミンに結合する。
【0034】
いくつかの実施形態において、hKdは、約1.5nM、約1.6nM、約1.7nM、約1.8nM、約1.9nM、約2nM、約2.1nM、約2.2nM、約2.3nM、約2.4nM、約2.5nM、約2.6nM、約2.7nM、約2.8nM、約2.9nM、約3nM、約3.1nM、約3.2nM、約3.3nM、約3.4nM、約3.5nM、約3.6nM、約3.7nM、約3.8nM、約3.9nM、約4nM、約4.5nM、約5nM、約6nM、約6.5nM、約7nM、約7.5nM、約8nM、約8.5nM、約9.0nM、約9.5nM、または約10nMである。
【0035】
いくつかの実施形態において、cKdは、約1.5nM、約1.6nM、約1.7nM、約1.8nM、約1.9nM、約2nM、約2.1nM、約2.2nM、約2.3nM、約2.4nM、約2.5nM、約2.6nM、約2.7nM、約2.8nM、約2.9nM、約3nM、約3.1nM、約3.2nM、約3.3nM、約3.4nM、約3.5nM、約3.6nM、約3.7nM、約3.8nM、約3.9nM、約4nM、約4.5nM、約5nM、約6nM、約6.5nM、約7nM、約7.5nM、約8nM、約8.5nM、約9.0nM、約9.5nM、または約10nMである。
【0036】
いくつかの実施形態において、mKdは、約10nM、約11nM、約12nM、約13nM、約14nM、約15nM、約16nM、約17nM、約18nM、約19nM、約20nM、約21nM、約22nM、約23nM、約24nM、約25nM、約26nM、約27nM、約28nM、約29nM、約30nM、約31nM、約32nM、約33nM、約34nM、約35nM、約36nM、約37nM、約38nM、約39nM、約40nM、約41nM、約42nM、約43nM、約44nM、約45nM、約46nM、約47nM、約48nM、または約50nMである。
【0037】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、およびSEQ ID NO.27から選択されたアミノ酸配列を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdは約2.3nMであり、cKdは約2.4nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.25として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.25として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdは約2.1nMであり、cKdは約2.2nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.5として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.5として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdは約1.9nMであり、cKdは約1.7nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.6として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.6として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdは約3.2nMであり、cKdは約3.6nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.7として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.7として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdは約2.7nMであり、cKdは約2.6nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.26として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.26として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdは約2.1nMであり、cKdは約2nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdとcKdは約5nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を有し、hKdは約6nMであり、cKdは約7.5nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約2.2nMであり、cKdは約2.3nMである。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.27として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは約1nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.27として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約1.6nMであり、cKdは約1.6nMである。
【0039】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.4として記載されるアミノ酸配列を有し、約17nMのmKdを有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.5として記載されるアミノ酸配列を有し、約12nMのmKdを有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.6として記載されるアミノ酸配列を有し、約33nMのmKdを有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.7として記載されるアミノ酸配列を有し、約14nMのmKdを有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有し、約16nMのmKdを有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.25として記載されるアミノ酸配列を有し、約17nMのmKdを有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.26として記載されるアミノ酸配列を有し、約17nMのmKdを有する。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、SEQ ID NO.27として記載されるアミノ酸配列を有し、約16nMのmKdを有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、hKdとcKdとの間の比率(hKd:cKd)は約20:1~約1:2に及ぶ。
【0041】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも20時間、少なくとも25時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも45時間、少なくとも50時間、または少なくとも100時間の消失半減期を有する。
【0042】
<CD3結合ドメイン>
T細胞の応答の特異性は、T細胞受容体複合体によって抗原(主要組織適合複合体、MHCの文脈で表示される)の認識によって媒介される。T細胞受容体複合体の一部として、CD3は、細胞表面に存在する、CD3γ(ガンマ)鎖、CD3δ(デルタ)鎖、および2つのCD3ε(イプシロン)鎖を含むタンパク質複合体である。T細胞受容体複合体を含むために、CD3は、CD3ζ(ゼータ)と同様に、T細胞受容体複合体のα(アルファ)とβ(ベータ)鎖と会合する。固定された抗CD3抗体によるなどしてT細胞上にCD3をクラスター形成することで、T細胞受容体の結合に似ているがそのクローンに典型的な特異性とは無関係のT細胞活性化を引き起こす。
【0043】
一態様では、本開示に従って単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性タンパク質が、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、多特異性タンパク質は、CD3に特異的に結合するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、多特異性タンパク質は、ヒトのCD3に特異的に結合するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、多特異性タンパク質は、CD3γに特異的に結合するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、多特異性タンパク質は、CD3δに特異的に結合するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、多特異性タンパク質は、CD3εに特異的に結合するドメインをさらに含む。
【0044】
さらなる実施形態では、多特異性タンパク質は、T細胞受容体(TCR)に特異的に結合するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、多特異性タンパク質は、TCRのα鎖に特異的に結合するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、多特異性タンパク質は、TCRのβ鎖に特異的に結合するドメインをさらに含む。
【0045】
ある実施形態において、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性タンパク質のCD3結合ドメインは、ヒトCD3との有力なCD3結合親和性を呈するだけではなく、それぞれのカニクイザルCD3タンパク質との優れた交差反応性も示す。例によっては、多特異性タンパク質のCD3結合ドメインは、カニクイザルからのCD3と交差的に反応する。ある例では、CD3結合のヒトKD:カニクイザルKD(hKd:cKd)の比率は、20:1と1:2との間である。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性タンパク質のCD3結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または単一ドメイン抗体(sdAb)などのCD3結合抗体の抗原結合性フラグメント、Fab、Fab′、F(ab)2、およびFvフラグメント、1つ以上のCDRから構成されたフラグメント、単鎖抗体(例えば、単鎖Fvフラグメント(scFv))、ジスルフィド安定化(dsFv)Fvフラグメント、ヘテロ共役抗体(例えば、二重特異性抗体)、pFvフラグメント、重鎖単量体または二量体、軽鎖単量体または二量体、ならびに1つの重鎖と1つの軽鎖からなる二量体、からのドメインを含む、CD3に結合する任意のドメインであり得る。いくつかの例において、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性タンパク質が最終的に使用される同じ種に由来することがCD3結合ドメインにとっては有益である。例えば、ヒトで使用するためには、抗体または抗体フラグメントの抗原結合ドメインからのヒトまたはヒト化残基を含めることが、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性タンパク質のCD3結合ドメインには有益なことがある。
【0047】
したがって、1つの態様では、抗原結合ドメインは、ヒト化抗体またはヒト抗体または抗体フラグメント、あるいはマウスの抗体または抗体フラグメントを含む。一実施形態では、ヒト化抗CD3結合ドメインまたはヒト抗CD3結合ドメインは、本明細書に記載された、ヒト化抗CD3結合ドメインまたはヒト抗CD3結合ドメインの、1つ以上(例えば3つすべて)の、軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)、および/または本明細書に記載された、ヒト化抗CD3結合ドメインまたはヒト抗CD3結合ドメインの、1つ以上(例えば3つすべて)の、重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含み、それは、例えば、1つ以上の、例えば3つすべてのLC CDR、および1つ以上の、例えば3すべてのHC CDRを含む、ヒト化抗CD3結合ドメインまたはヒト抗CD3結合ドメインを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、ヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインは、CD3に特異的なヒト化またはヒト軽鎖可変領域を含み、CD3に特異的な軽鎖可変領域はヒト軽鎖フレームワーク領域中のヒトあるいはヒト以外の軽鎖CDRを含む。ある例では、軽鎖フレームワーク領域はλ(ラムダ)軽鎖フレームワークである。他の例では、軽鎖フレームワーク領域はκ(カッパ)軽鎖フレームワークである。
【0049】
いくつかの実施形態において、ヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインは、CD3に特異的なヒト化またはヒト重鎖可変領域を含み、CD3に特異的な重鎖可変領域は、ヒト重鎖フレームワーク領域中のヒトまたはヒト以外の重鎖CDRを含む。
【0050】
ある例では、重鎖および/または軽鎖の相補性決定領域は、例えば、ムロモナブ-CD3(OKT3)、オテリキシズマブ(TRX4)、テプリズマブ(MGA031)、ビジリズマブ(Nuvion)、SP34、TR-66あるいはX35-3、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111-409、CLB-T3.4.2、TR-66、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII-46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW2-4B6、OKT3D、M-T301、SMC2、F101.01、UCHT-1、およびWT-31などの、既知の抗CD3抗体に由来する。
【0051】
CD3に結合する親和性は、例えば、アッセイプレート上にコーティングされた;微生物細胞表面に表示された;溶液中などの;CD3に結合する、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性タンパク質自体、またはそのCD3結合ドメインの能力によって決定することができる。CD3に対する本開示に従う、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性タンパク質自体、もしくはそのCD3結合ドメインの結合能力は、ビーズ、基質、細胞などに対して、リガンド(例えば、CD3)、または前記多特異性タンパク質自体もしくはそのCD3結合ドメインを固定することによりアッセイ可能である。薬剤は、所定の温度で一定の期間インキュベートされた適切な緩衝液と結合パートナーに加えることができる。未結合材料を取り除くために洗浄した後、結合タンパク質を、例えば、SDS、高いpHの緩衝液などで放出可能であり、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析可能である。
【0052】
<標的抗原結合ドメイン>
記載された血清アルブミン結合およびCD3ドメインに加えて、本明細書に記載される、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質は、ある実施形態において、標的抗原に結合するドメインも含む。標的抗原は疾患、障害、または疾病に関与する、おより/または関連している。特に、標的抗原は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主疾患、または宿主対移植片疾患に関連する。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍細胞上で発現された腫瘍抗原である。代替的に、いくつかの実施形態では、標的抗原はウイルスまたは細菌などの病原体に関連する。
【0053】
いくつかの実施形態において、標的抗原はタンパク質、脂質、または多糖類などの細胞表面分子である。いくつかの実施形態において、標的抗原は、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、損傷を受けた赤血球、動脈のプラーク細胞、または繊維性の組織細胞である。
【0054】
本開示に従って単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質のデザインは、標的抗原に対する結合ドメインが、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む任意のタイプの結合ドメインであり得るという点で、結合ドメインを標的抗原に対して柔軟なものとする。いくつかの実施形態において、標的抗原に対する結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(scFv)、ラクダ科由来のsdAbの重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、および可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体である。他の実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインは、非Ig結合ドメイン、つまり、アンチカリン(anticalins)、アフィリン(affilins)、アフィボディ(affibody)分子、アフィマー(affimers)、アフィチン(affitins)、アルファボディ(alphabodies)、アヴィマー(avimers)、DARPins、フィノマー(fynomers)、クニッツドメインペプチドおよびモノボディなどの抗体模倣薬である。さらなる実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインは、標的抗原に結合または会合するリガンドまたはペプチドである。またさらなる実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインはノッチンである。またさらなる実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインは小分子実体である。
【0055】
<単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の修飾>
本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、(i)アミノ酸が遺伝子コードによってコードされるものではないアミノ酸残基で置換され、(ii)成熟ポリペプチドがポリエチレングリコールなどの別の化合物で融合され、または、(iii)リーダーまたは分泌配列、あるいは、免疫原ドメインを遮断するための、および/または、タンパク質の精製のための配列などの追加のアミノ酸がタンパク質に融合される、誘導体またはアナログを包含する。
【0056】
典型的な修飾としては、限定されないが、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドあるいはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化などのアミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介性の添加、およびユビキチン化が挙げられる。
【0057】
修飾は、3結合タンパク質が、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル終端を含む、本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のいかなる場所でも行われる。単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の修飾に役立つ特定の共通したペプチド修飾は、共有結合修飾とADPリボシル化による、グルタミン酸残基のグリコシル化、脂質結合、硫酸化、ガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、ポリペプチド中のアミノ基もしくはカルボキシル基の遮断、またはその両方を含む。
【0058】
<単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子も提供される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド分子はDNA構築物として提供される。他の実施形態では、ポリヌクレオチド分子はメッセンジャーRNA転写物として提供される。
【0059】
ポリヌクレオチド分子は、ペプチドリンカーによって分離されるか、または、他の実施形態ではペプチド結合によって直接結合される3つの結合ドメインをコードする遺伝子を組み合わせて、適切なプロモーター、および随意に適切な転写ターミネーターに動作可能に連結された単一の遺伝子構築物にして、および、細菌または例えば、CHO細胞などの他の適切な発現系でそれを発現するなどの既知の方法によって構築される。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示に従って単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子も、提供される。いくつかの実施形態では、前記多特異性結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドはまた、CD3結合ドメインのためのコード配列を含む。いくつかの実施形態では、前記多特異性結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドはまた、標的抗原結合ドメインのためのコード配列を含む。いくつかの実施形態では、前記多特異性結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドはまた、CD3結合ドメインおよび標的抗原結合ドメインのためのコード配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド分子はDNA構築物として提供される。他の実施形態では、ポリヌクレオチド分子はメッセンジャーRNA転写物として提供される。標的抗原結合ドメインが小分子である実施形態では、ポリヌクレオチドは、血清アルブミン結合ドメインおよびCD3結合ドメインをコードする遺伝子を含んでいる。半減期延長ドメインが小分子である実施形態では、ポリヌクレオチドは、CD3と標的抗原とに結合するドメインをコードする遺伝子を含んでいる。利用されるベクター系と宿主に依存して、任意の数の適切な転写、および構成的で誘導可能なプロモーターを含む翻訳要素が使用されてもよい。プロモーターはそれぞれの宿主細胞でポリヌクレオチドの発現を駆り立てるように選択される。
【0061】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、さらなる実施形態を表すベクター、好ましくは発現ベクターに挿入される。この組換えベクターは既知の方法によって構築可能である。特定の所望のベクターは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスなど)、およびコスミドを含んでいる。
【0062】
様々な発現ベクター/宿主系は、記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ発現するために利用されてもよい。E.coliにおける発現のための発現ベクターの実施例は、pSKK (Le Gall et al., J Immunol Methods. (2004) 285(1):111-27)、哺乳動物細胞における発現のためのpcDNA5(Invitrogen)、PICHIAPINK(商標)Yeast Expression Systems(Invitrogen)、BACUVANCE(商標)Baculovirus Expression System(GenScript)である。
【0063】
したがって、本明細書に記載されているような単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、いくつかの実施形態では、上記のようなタンパク質をコードするベクターを宿主細胞へ導入し、タンパク質ドメインが発現し、単離することもあり、随意にさらに精製されることもある条件下で上記宿主細胞を培養することにより、生成される。
【0064】
<単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の産生>
いくつかの実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の産生のプロセスが本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、上記プロセスは、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主を、血清アルブミン結合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養すること、および培養物から生成されたタンパク質を回収ならびに精製することを含む。
【0065】
さらなる実施形態では、基準結合化合物と比較して、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、および/または本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質の、1つ以上の特性、例えば親和性、安定性、耐熱性、交差反応性等を改善することを対象とされたプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、異なるドメイン、または単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質もしくは基準結合化合物のアミノ酸セグメントに各々が対応する複数の単一置換ライブラリーが提供され、単一置換ライブラリーの各メンバーが、その対応するドメインまたはアミノ酸セグメントの単一のアミノ酸変化のみをコードするようなものである。(これにより、大きなタンパク質またはタンパク結合部位の起こりうるすべての置換を、少数の小さなライブラリーで調査することが可能となる。)いくつかの実施形態において、複数のドメインは、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質または基準結合化合物のアミノ酸のコンティグ配列を形成するか網羅する。様々な単一置換ライブラリーのヌクレオチド配列は、少なくとも1つの他の単一置換ライブラリーのヌクレオチド配列と重複する。いくつかの実施形態において、すべてのメンバーが隣接するドメインをコードするそれぞれの単一置換ライブラリーのすべてのメンバーに重複するように、複数の単一置換ライブラリーは設計される。
【0066】
こうした単一置換のライブラリーから発現された結合化合物は各ライブラリー中で変異体の部分集合を得るために別々に選択され、該変異体は、基準結合化合物と少なくとも同じぐらい優れた特性を有し、かつ、結果として生じたライブラリーはサイズが減少している。(すなわち、結合化合物の選択されたセットをコードする核酸の数は、元々の単一置換ライブラリーのメンバーをコードする核酸の数よりも少ない。)こうした特性としては、限定されないが、標的化合物への親和性、熱、高いまたは低いpH、酵素分解、他のタンパク質に対する交差反応性など様々な条件に対する安定性が挙げられる。それぞれの単一置換ライブラリーからの選択された化合物は、「前候補化合物」または「前候補タンパク質」と本明細書では交換可能に呼ばれている。別々の単一置換ライブラリーからの前候補化合物をコードする核酸配列は、PCRベースの遺伝子シャッフリング技術を使用してPCRでシャッフルされることで、シャッフルされたライブラリーが生成される。
【0067】
スクリーニングプロセスの典型的なワークフローが本明細書に記載される。前候補化合物のライブラリーは単一置換ライブラリーから生成され、標的タンパク質への結合のために選択され、その後、前候補ライブラリーはシャッフルされることで候補化合物をコードする核酸のライブラリーが精製され、これはファージミド発現系などの便利な発現ベクターへとクローン化される。その後、ファージ発現候補化合物は、標的分子への結合親和性などの所望の特性を改善するために1ラウンド以上の選択を経験する。標的分子は吸着されることもあれば、さもなければウェルまたは他の反応容器の表面へ付けられることもあり、あるいは、標的分子はビオチンなどの結合部分で誘導対化されてもよく、これは、候補結合化合物でのインキュベーション後に、洗浄のために、磁気ビーズなどのビーズに結合されたストレプトアビジンなどの相補的な部分で捕えられることもある。典型的な選択レジメンでは、標的分子からの非常に低い解離速度の候補化合物だけが選択されるように、候補結合化合物は長期間の洗浄工程を経験する。こうした実施形態のための典型的な洗浄時間は少なくとも8時間であり;あるいは、他の実施形態では、少なくとも24時間であり;あるいは、他の実施形態では、少なくとも48時間であり;あるいは、他の実施形態では、少なくとも72時間である。選択後の単離されたクローンは増幅され、選択の追加サイクルにさらされるか、あるいは、例えば、配列決定によって、および、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴結合、バイオ層干渉法(例えば、Octet system, ForteBio, Menlo Park, CA)などにより結合親和性の比較測定を行うことによって、分析される。いくつかの実施形態では、プロセスは、SEQ ID NO.10のアミノ酸配列を有するタンパク質などの基準血清アルブミン結合タンパク質と比較して、耐熱性、選択された一組の結合標的に対する交差反応性が改善された、1つ以上の単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、および/または単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質を同定するために実行される。単一置換ライブラリーは、フレームワーク領域とCDR中の両方のコドンを含む、基準血清アルブミン結合タンパク質のVH領域中のコドンを変えることにより調製され;別の実施形態では、コドンが変えられる位置は、基準血清アルブミン結合タンパク質の重鎖のCDR、あるいは単独でCDR1、単独でCDR2、単独でCDR3、またはそのついなどのこうしたCDRのサブセットを含む。別の実施形態で、コドンが変えられる位置はもっぱらフレームワーク領域で生じる。いくつかの実施形態において、ライブラリーは10~250までの範囲で番号付けられるVHとののフレームワーク領域だけの基準血清アルブミン結合タンパク質から単一のコドン変化のみを含む。別の実施形態では、コドンが変えられる位置は、基準血清アルブミン結合タンパク質の重鎖のCDR3、あるいはこうしたCDR3のサブセットを含む。別の実施形態では、VHのコード領域のコドンが変えられる位置の数は、最大で100の位置がフレームワーク領域にあるように、10~250までの範囲にある。単一置換ライブラリーの調製後に、上に概説されるように、以下の工程が行われる:(a)前候補タンパク質として個々の単一置換ライブラリーの各メンバーを別々に発現する工程;(b)元々の結合標的[例えば、所望の交差反応標的]とは異なることもあれば、異ならないこともある結合パートナーに結合する前候補タンパク質をコードする個々の単一置換ライブラリーのメンバーを選択する工程;(c)シャッフルされたコンビナトリアルライブラリーを生成するためにPCRで選択されたライブラリーのメンバーをシャッフルする工程;(d)候補血清アルブミン結合タンパク質としてシャッフルされたライブラリーのメンバーを発現する工程;および、(e)元々の結合パートナーと結合する候補血清アルブミン結合タンパク質についてシャッフルされたライブラリーのメンバーを1回以上選択する工程、および場合によっては(f)所望の交差反応標的と結合するためにさらなる候補タンパク質を選択する工程であって、それによって、元々のリガンドに対する親和性を失うことなく基準血清アルブミン結合タンパク質に対する1つ以上の物質の交差反応性を強化した核酸でコードされた血清アルブミン結合タンパク質を提供する工程。さらなる実施形態では、方法は、以下の工程で工程(f)を置き換えることによって、選択された交差反応する物質(複数可)または化合物(複数可)またはエピトープ(複数可)に対して、反応性が減少した血清アルブミン結合タンパク質を得るために実施されることもある:望ましくない交差反応化合物に結合する候補血清アルブミン結合タンパク質のサブセットから、1回以上、候補結合化合物を枯渇させる(depleting)工程。
【0068】
最近の研究では、製造、貯蔵、およびインビボでの使用の間に、治療用抗体は多数の経路を介して分解する危険性があることが報告されている。タンパク質における最も頻繁に生じる化学分解反応には、アスパラギン(N)の脱アミド、およびアスパラギン酸(D)残基の異性化がある。とりわけ、NおよびDの残基が抗原認識に関与する場合、それらの化学的変質は効力の大きな喪失を引きおこす可能性があると仮定されてきた。アスパラギンおよびアスパラギン酸の残基は環状のスクシンイミド中間体の形成を介して進む分解経路を共有することが知られている。抗体のアスパラギン酸部位における、スクシンイミド中間体、およびそれらの加水分解生成物(アスパラギン酸およびイソアスパラギン酸)の形成は、安定性の問題を示す。異性化が生じるとき、抗体の化学構造が変わり、これによって、例えば、凝集、より短い貯蔵寿命により示される、乏しい安定性を引き起こす可能性がある。それに応じて、本開示のいくつかの実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質が提供され、ここで、1つ以上のアスパラギン酸残基が突然変異し、それによって、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の異性化の可能性を減少させる。いくつかの実施形態では、アスパラギン酸残基は、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のCDR2中にあり、アスパラギン酸残基はグルタミン酸に突然変異する。ある実施形態では、SEQ ID NO.10により定義されたタンパク質の位置62のアスパラギン酸残基は、グルタミン酸(D62E)に突然変異する。いくつかの実施形態では、D62Eの突然変異を含む単一ドメイン血清アルブミンタンパク質の血清アルブミン結合親和性は、突然変異によって影響を受けない。いくつかの実施形態では、D62Eの突然変異を含む、およびその突然変異を含まない単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、血清アルブミンに対して同等の結合親和性を有する。
【0069】
<医薬組成物>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、またはこのベクターによって形質転換された宿主細胞、および少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、を含む医薬組成物も提供される。用語「薬学的に許容可能な担体」としては、限定されないが、成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、かつ、投与される患者にとって毒性ではない任意の担体が挙げられる。適切な医薬担体の例は当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、無菌液などを含んでいる。こうした担体は、従来の方法によって製剤することができ、適切な投与量で被験体に投与可能である。好ましくは、組成物は無菌である。これらの組成物は、保存剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントをさらに含むことがある。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤の包含によって保証され得る。
【0070】
医薬組成物のいくつかの実施形態において、本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、ナノ粒子でカプセル化される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、フラーレン、液晶、リポソーム、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、デンドリマー、またはナノロッドである。医薬組成物の他の実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はリポソームに結合する。いくつかの例では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質はリポソームの表面へ共役する。いくつかの例では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、リポソームのシェル内にカプセル化される。いくつかの例では、リポソームはカチオン性リポソームである。
【0071】
本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質は、薬物としての使用のために企図されている。投与は様々な方法によって、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所的、または皮内の投与によって達成される。いくつかの実施形態において、投与経路は、治療の種類と、医薬組成物に含まれる化合物の種類に依存する。投与レジメンは主治医と他の臨床因子によって決定される。任意の1人の患者のための投与量は、患者の背格好、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間と投与経路、治療の種類、健康状態、および同時に投与されている他の医薬品を含む多くの因子に依存する。「有効量」は、こうした病状の減少または緩解をもたらす、疾患の経過と重症度に影響するのに十分な有効成分の量を指し、既知の方法を使用して決定されることもある。
【0072】
<処置方法>
いくつかの実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、または本明細書に記載される単一ドメイン結成アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質の投与を含む、必要としている個体の免疫系を刺激するための方法および使用も提供される。いくつかの例では、本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質の投与は標的抗原を発現する細胞への細胞毒性を引き起こす、および/または持続させる。いくつかの例では、細胞は癌細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、自己反応性のTまたはB細胞、損傷を受けた赤血球、動脈プラーク、あるいは繊維症の組織である。
【0073】
[0078] さらに、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、または本明細書に記載される単一ドメイン結成アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質を個体に投与することを含む、標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病の処置のための方法と使用も本明細書で提供される。標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病としては、限定されないが、ウイルス感染、細菌感染、自己免疫性疾患、移植拒絶反応、アテローム性動脈硬化症、または線維症が挙げられる。他の実施形態では、標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主疾患、または宿主対移植片疾患である。1つの実施形態では、標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病は癌である。1つの例では、癌は血液の癌である。別の例では、癌は固形腫瘍癌である。
【0074】
本明細書で使用されるように、いくつかの実施形態では、「処置」あるいは「処置すること」あるいは「処置された」とは、望ましくない生理的な疾病、障害、または疾患を遅らせる(減らす)こと、あるいは、有益なまたは望ましい臨床結果を得ることを目的とする治療的処置を指す。本明細書に記載される目的のために、有益な、または望ましい臨床結果としては、限定されないが、症状の緩和;疾病、障害、あるいは疾患の程度の減少;疾病、障害、あるいは疾患の状態の安定化(つまり、悪化しないこと);疾病、障害、あるいは疾患の発症を遅らせること、または進行を遅らせること;疾病、障害、あるいは疾患状態の改善;および、検出可能であれ検出不可能であれ、または疾病、障害、あるいは疾患の亢進であれ改善であれ、緩解(部分的でも全体でも)。処置は過剰なレベルの副作用のない臨床的に有意な反応を誘発することを含む。処置はさらに、処置を受けない場合の予想される生存時間と比較して、生存時間を延ばすことを含む。他の実施形態では、「処置」あるいは「処置すること」あるいは「処置された」とは、予防的な処置を指し、その目的は、例えば、疾患の素因のある人(例えば、乳癌などの疾患のための遺伝子マーカーをつけた個体)など、望ましくない生理的な疾病、障害、あるいは疾患の発症を遅らせるか、あるいはその重症度を低下させることである。
【0075】
本明細書に記載された方法のいくつかの実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、または本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質は、特定の疾患、障害もしくは疾病を処置するための薬剤と組み合わせて投与される。薬剤としては、限定されないが、抗体、小分子(例えば、化学療法剤)、ホルモン(ステロイド、ペプチドなど)、放射線療法(γ線、X線、および/または、放射性同位体、マイクロ波、UV放射などの指示された送達)、遺伝子治療(例えば、アンチセンス、レトロウイルス治療など)、および他の免疫療法に関する治療が挙げられる。いくつかの実施形態において、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質、または本明細書に記載された単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質は、下痢止め薬、制吐剤、鎮痛剤、オピオイド、および/または、非ステロイド性抗炎症薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質または本明細書に記載されるような単一ドメイン血清アルブミン結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質は、手術の前、間、もしくは後に投与される。
【実施例0076】
実施例1:親の抗HSA単一ドメイン抗体と同等の結合特性を有する、抗HSA単一ドメイン抗体変異体の生成
<親の抗HSAファージの特徴づけ>
HSA抗原への親の抗HSAファージの特異的結合を、CD3を陰性対照として使用し測定し(
図1)、かつヒト、カニクイザル、およびマウスの血清アルブミンに対する抗HSAファージの交差反応性を測定した(
図2)。
【0077】
<単一置換HSA sdAbファージライブラリー>
3つのCDRドメインの各々に対して、単一置換ライブラリーを提供した。単一置換ライブラリーをHSAに結合させ、その後、様々なレベルのHSAを含む緩衝液で洗浄した。0時間および24時間で結合されたファージをレスキュー(rescued)し、数え上げた。緩衝液中2.5mg/mlのHSAで24時間洗浄して選択されたファージを、2つの独立したコンビナトリアルファージライブラリーを作るために使用した。
【0078】
<コンビナトリアル抗HSAライブラリー>
第1ラウンドでは、MSAを選択標的として使用した。ウェルを、2つの独立したライブラリーからのコンビナトリアルファージ結合の後、24時間洗浄した。第2ラウンドでは、HSAを選択標的として使用した。ウェルを、両方のライブラリーの結合後に、1mg/mlのHSA中で24時間洗浄した。第2ラウンドの選択からの挿入物PCRedを、ME10 His6発現ベクター(SEQ ID NO:38として開示された(6XHis配列)へとサブクローン化した。96個のクローンを選び、DNAを精製し、配列決定し、Expi293細胞へとトランスフェクトした。
【0079】
<結合親和性の測定>
上澄み液を、オクテットプラットフォーム(Octet platform)を使用して、HSAおよびCSAに対するKdを評価するために使用した。9個のクローンを、さらなる特徴づけのために、親のsdAbに比較された結合親和性、ならびにロバストな産生、凝集、および安定性のプロファイルに基づいて、選択した(
図3)。
【0080】
実施例2:抗HSAの単一ドメイン抗体を含む三重特異性抗体の薬物動態
実施例1の抗HSAの単一ドメイン抗体を使用して、三重特異性抗体を調製し、これを動物実験における半減時間を排除するために評価する。
【0081】
三重特異性抗体は、筋肉内への0.5mg/kgのボーラス注入として、カニクイザルに投与される。他のカニクイザル群は、結合ドメインを有する、CD3およびCD20に対して大きさが同等であるが、HSA結合が欠如しているタンパク質を受ける。第3および第4の群は、それぞれCD3およびHSA結合ドメインを有する抗体、ならびにCD20およびHSA結合ドメインを有するタンパク質を受け、その両方共、三重特異性抗体に対して大きさが同等である。各試験群は、5匹のサルからなる。血清サンプルを、指示された時点でとり、連続的に希釈し、そしてタンパク質の濃度を、CD3および/またはCD20に対して、結合ELISAを使用して測定する。
【0082】
薬物動態分析を、被験物質の血漿中濃度を用いて実施する。各被験物質に関する群平均血漿データは、投与後の時間に対してプロットされた場合に、多重指数関数的なプロファイルに一致する。データは、ボーラス投入を用いた標準的な2区画モデル、および分布相および排出相のための一次速度定数によって適合される。i.v.投与に関するデータを最良適合するための一般的な式は:c(t)=Ae-αt+Be-βtであり、式中、c(t)は時間tにおける血漿中濃度であり、AおよびBはY軸状の切片であり、そしてαおよびβは、それぞれ分布相および排出相の外見上の一次速度定数である。α-位相は、クリアランスの位相定数であり、タンパク質の分布を動物のすべての細胞外液へと反映するが、崩壊曲線の第2の位相部分またはβ-位相部分は、真性血漿クリアランスを表わす。そのような式を適合させる方法は、当技術分野において公知である。例えば、A=D/V(α-k21)/(α-β)、B=D/V(β-k21)/(α-β)であって、αおよびβ(α>βの間)は、二次方程式:r2+(k12+k21+k10)r+k21k10=0の乗根であり、V=分布容積、k10=排出速度、k12=区画1から区画2への移動速度(transfer rate)、およびk21=区画2から区画1への移動速度、ならびにD=投与量、の推定パラメータを用いる。
【0083】
データ分析:濃度対時間プロファイルのグラフを、KaleidaGraph(KaleidaGraph(商標) V. 3.09 Copyright 1986-1997. Synergy Software. Reading, Pa.)を使用して作成する。報告可能なものよりも小さいもの(LTR)として報告された値は、PK分析において含まれておらず、グラフに示されていない。薬物動態パラメータを、WinNonlinソフトウェア(WinNonlin(登録商標)Professional V. 3.1 WinNonlin(商標) Copyright 1998-1999. Pharsight Corporation. Mountain View, Calif.)を使用して、区画解析によって測定する。薬物動態パラメータを、Ritschel W A and Kearns G L, 1999, IN: Handbook Of Basic Pharmacokinetics Including Clinical Applications, 5th edition, American Pharmaceutical Assoc., Washington, D.C.において記載されているように計算する。
【0084】
実施例1の抗HSA単一ドメイン抗体を含む三重特異性抗体が、HSA結合ドメインが欠如しているタンパク質と比較して、消失半減期の増大などの薬物動態パラメータを向上させることが予想される。
【0085】
実施例3:抗HSA単一ドメイン抗体の変異体の耐熱性
タンパク質の疎水的曝露の温度(Th)は、ピーク染料蛍光の変曲点の導関数に相当し、タンパク質安定性の尺度である融解温度(Tm)と相関することが知られている。この研究の目的はいくつかの抗HAS単一ドメイン抗体の変異体のThを評価することであった。
【0086】
<タンパク質産生>
抗huALB単一ドメイン抗体の配列を、リーダー配列が前にあり、6xヒスチジンタグ(SEQ ID NO:38)が後ろにあるpcDNA3.4(Invitrogen)へとクローン化した。Expi293F細胞(Life Technologies A14527)は、Expi 293培地中の0.2~8x1e6細胞/mL間でOptimum Growth Flasks(Thomson)の懸濁液中で維持された。精製されたプラスミドDNAは、Expi293発現系キット(Life Technologies, A14635)プロトコルに合わせてExpi293F細胞へトランスフェクトされ、トランスフェクション後4-6日間、維持される。調整培地は、親和性と脱塩クロマトグラフィーによって部分的に精製された。抗huCD3escFvタンパク質を、Amicon Ultra遠心濾過ユニット(EMD Millipore)で濃縮し、Superdex 200サイズ排除培地(GE Healthcare)に適用し、賦形剤を含む中性の緩衝液中で分解させた。画分貯留と最終的な純度を、SDS-PAGEと解析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって評価した。精製されたタンパク質溶液の吸光度は、SpectraMax M2(Molecular Devices)を使用して280nmで決定され、UV透過性の96ウェルプレート(Corning 3635)とその濃度はモル吸光係数から計算された。
【0087】
<示差走査型蛍光定量法>
精製された抗HSA単一ドメイン抗体タンパク質を、賦形剤を含む中性の緩衝液中に、0.15%のDMSO終濃度で、5xSYPROのオレンジ色染料(Life Technologies S6651)とともに、0.2~0.25mg/mLまで希釈し、MicroAmp EnduraPlate光学マイクロプレートと接着剤フィルム(Applied Biosystems 4483485 and 4311971)へと入れた。希釈されたタンパク質と染料混合物を含むプレートは、ABI 7500 Fast リアルタイムPCR機器(Applied Biosytems)に充填し、25°C~95°Cの複数工程の温度勾配にさらした。温度勾配は、各1つの摂氏度における2分間の保持から構成し、500nmでの励起を用い、放射をROXフィルターで集める。摂氏度のT
hは、
図4の精製された抗HSA単一ドメイン抗体タンパク質について提示される。
【0088】
実施例4:pH低下にさらされた場合の抗HSA単一ドメイン抗体の変異体の二量化の相対的な傾向
抗HSA単一ドメイン抗体タンパク質を、上述のように、Expi293-F細胞中で発現させた。各変異体のための調整培地を、カラム内に充填されたプロテインAアガロース(GE Healthcare, 17519901)に適用し、TRIS緩衝生理食塩水で広範囲に洗浄し、pH3の0.05%(vol/vol)酢酸で溶離させ、pH 5までの部分中和前に最大10分間室温で保持し、その後、Sephadex G25カラム(GE Healthcare 17058401)を用いて、賦形剤を含む中性の緩衝液中に脱塩した。
【0089】
実施例3に記載されるように、精製された抗HSA単一ドメイン抗体の変異体の濃度を280nmの吸光度で測定した。精製されたタンパク質を、SDS-PAGE、およびYarra 2000 SECカラム(Phenomenex 00H-4512-E0)を使用する解析的SECによって評価し、Chemstationソフトウェア(Agilent)を用い、1200LC上で、溶媒を含むリン酸塩緩衝液中で分析した。二量体および単量体に対応するピークを手動でまとめ、値を
図5で示す。
【0090】
【0091】