(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095714
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するためのSCR触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20240703BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240703BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240703BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01J37/02 301L
B01D53/94 222
F01N3/28 301C
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024053063
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2021504248の分割
【原出願日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】18185261.7
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンネケス,エドガー フィクトール
(72)【発明者】
【氏名】ベアード,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】コルデス,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ヤン マルティン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB05
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4G169ZC04
4G169ZF04A
4G169ZF04B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低いN2O形成を示し、硫黄耐性が高い一方で、低温で優れたdeNOxを達成するディーゼルエンジン排気ガス処理用選択的接触還元触媒、排気ガス処理システム、及び前記触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】フロースルー基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む第1コーティングと、前記基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる、少なくとも75質量%がチタニアからなり、0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティングとを含む選択的接触還元触媒である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒であって、
(i)入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含む、フロースルー基材;
(ii)前記内壁と前記通路との間の界面を規定する前記基材の前記内壁の表面に適用された第1コーティングであって、前記第1コーティングが前記基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、前記第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;
(iii)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、前記第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、前記第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング
を含む、選択的接触還元触媒。
【請求項2】
(ii)による前記第1コーティングは、前記基材軸方向長さの75~100%にわたって、好ましくは前記基材の前記入口端部から前記出口端部に向かって、又は好ましくは前記基材の前記出口端部から前記入口端部に向かって延びる、請求項1に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項3】
(iii)による前記第2コーティングは、前記基材軸方向長さの75~100%にわたって、好ましくは前記基材の前記入口端部から前記出口端部に向かって延びる、請求項1又は2に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項4】
(iii)による前記第2コーティングは、(ii)による前記第1コーティング上に適用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項5】
前記第1コーティングに含有される前記8員環の多孔性ゼオライト材料は、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、好ましくはCHA、AEI、RTH、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、より好ましくはCHA及びAEIからなる群から選択される骨格型を有し、より好ましくは、前記第1コーティングに含有される前記8員環の多孔性ゼオライト材料は骨格型CHAを有し、
前記8員環の多孔性ゼオライト材料は、より好ましくはゼオライトSSZ-13である、請求項1から4のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項6】
前記第1コーティングに含有される前記ゼオライト材料は銅を含み、CuOとして計算される前記ゼオライト材料における銅の量は、前記ゼオライト材料の総質量に基づいて、好ましくは0.1~10質量%の範囲、より好ましくは1.5~5.5質量%の範囲、より好ましくは2.5~4.5質量%の範囲、より好ましくは3.0~4.0質量%の範囲、より好ましくは3.0~3.5質量%の範囲である、請求項1から5のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項7】
前記第1コーティングに含有される前記ゼオライト材料の前記骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~45:1の範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項8】
前記第1コーティングは酸化物バインダーをさらに含み、前記触媒において、前記第1コーティングは、好ましくは0.05~0.15g/in3の範囲、好ましくは0.08~0.14g/in3の範囲の装填量で前記酸化物バインダーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項9】
前記第1コーティングの、0~0.01質量%、好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%はチタニアからなり、より好ましくは、前記第1コーティングはチタニアを含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項10】
前記第2コーティングの前記第1酸化物材料に含まれるチタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項11】
前記第2コーティングの前記第1酸化物材料は、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化セリウム及び酸化タングステンの1つ以上をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項12】
前記第2コーティングは、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上、好ましくはシリカ及びアルミナの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項13】
前記触媒において、前記第1コーティングは総装填量(l1)を有し、前記第2コーティングは総装填量(l2)を有し、前記第1コーティングの総装填量の前記第2コーティングの総装填量に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲、好ましくは0.75:1~3:1の範囲、より好ましくは1:1~2:1の範囲である、請求項1から12のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【請求項14】
ディーゼルエンジンから出る排気ガス流を処理するための排気ガス処理システムであって、前記排気ガス処理システムは前記排気ガス流を前記排気ガス処理システムに導入するための上流端部を有し、前記排気ガス処理システムは、
(A)ディーゼル酸化触媒(DOC)であって、前記ディーゼル酸化触媒が基材に適用されたコーティングを含み、前記コーティングが、好ましくは、酸化物材料に担持されている、パラジウム、白金及びロジウムの1つ以上、より好ましくはパラジウム及び白金、より好ましくは白金を含む、ディーゼル酸化触媒(DOC)、
(B)1つ以上の請求項1から13のいずれか一項に記載の選択的接触還元(SCR)触媒
を含み、
(A)による前記ディーゼル酸化触媒は、(B)による前記1つ以上の選択的接触還元触媒の上流に配置され、好ましくは、(A)による前記ディーゼル酸化触媒が、前記排気ガス処理システムの一番目の触媒であり、前記排気ガス処理システムの前記上流端部の下流に配置され、
前記排気ガス処理システムが、任意に、(A)による前記ディーゼル酸化触媒の下流及び(B)による前記1つ以上の選択的接触還元触媒の上流に配置される、フィルター、好ましくは触媒付すすフィルターをさらに含む、排気ガス処理システム。
【請求項15】
ディーゼルエンジンから出る排気ガス流を処理するための排気ガス処理システムであって、前記排気ガス処理システムは前記排気ガス流を前記排気ガス処理システムに導入するための上流端部を有し、前記排気ガス処理システムは、請求項1から13のいずれか一項に記載の第1選択的接触還元触媒、並びに、ディーゼル酸化触媒、第2選択的接触還元触媒、アンモニア酸化触媒及びフィルターの1つ以上を含み、
前記ディーゼル酸化触媒、第2選択的接触還元触媒、アンモニア酸化触媒及びフィルターの1つ以上は、前記第1選択的接触還元触媒の下流に配置され、好ましくは、前記第1選択的接触還元触媒は、前記排気ガス処理システムの一番目の触媒であり、前記排気ガス処理システムの前記上流端部の下流に配置され、
好ましくは、前記排気ガス処理システムは、前記第1選択的接触還元触媒、及び前記選択的接触還元触媒の下流に配置される、フィルター、より好ましくは触媒付パティキュレートフィルターを含むか、又は
好ましくは、前記排気ガス処理システムは、前記第1選択的接触還元触媒、ディーゼル酸化触媒、及びフィルター、より好ましくは触媒付パティキュレートフィルターを含み、前記ディーゼル酸化触媒は、前記選択的接触還元触媒の下流及び前記フィルターの上流に配置される、排気ガス処理システム。
【請求項16】
選択的接触還元触媒、好ましくは請求項1から13のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒を製造する方法であって、
(a)銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料の源、及び水を含む第1スラリーを製造する工程と、
(b)基材軸方向長さの40~100%にわたってフロースルー基材の内壁の表面に工程(a)で得られた前記第1スラリーを適用して、スラリー処理基材を得る工程であって、前記フロースルー基材が、入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びる基材の内壁によって規定される複数の通路を含み、前記基材の前記内壁の表面が前記内壁と前記通路との間の界面を規定する、工程と、
(c)工程(b)で得られた前記スラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティングを有する基材を得る工程と、
(d)任意に、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材をか焼する工程と、
(e)チタニアを含む第1酸化物材料、及び水を含む第2スラリーを製造する工程であって、前記第1酸化物材料が任意に、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化タングステンを含み、前記第2スラリーが、好ましくは第2酸化物材料を含む、工程と、
(f)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって、好ましくは前記基材の前記入口端部から前記基材の前記出口端部に向かって、工程(e)で得られた前記第2スラリーを、工程(c)で得られた、任意に工程(d)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材に適用して、スラリー処理基材を得る工程と、
(g)工程(f)で得られた前記スラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材を得る工程と、
(h)工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する前記基材をか焼して、選択的接触還元触媒を得る工程であって、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなり、前記第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなる、工程と
を含む、方法。
【請求項17】
工程(a)は、
(a.1)酸化物バインダー、好ましくはジルコニルアセテートを、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料及び水と混合して、第1スラリーを得ることと、
(a.2)3~15マイクロメーターの範囲、好ましくは5~13マイクロメーターの範囲、より好ましくは8~12マイクロメーターの範囲の粒径Dv90に、(a.1)で得られた前記第1スラリーを粉砕することと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(e)は、
(e.1)チタニアを含み、任意に酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化タングステンを含む第1酸化物材料を、好ましくはアルミナ及びシリカの1つ以上を含む第2酸化物材料、有機分散剤及び水と混合することと、
(e.2)水酸化アンモニウム溶液の添加により、pHを、3.0~7.0の範囲、好ましくは5.0~6.0の範囲の値に調整して、第2スラリーを得ることと、
を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cu及びFeの1つ以上を含むゼオライト材料を含む第1コーティング、及びチタニアを含む第2コーティングを含む、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関する。本発明はさらに、当該選択的接触還元触媒を含む排気ガスを処理するシステムに、この選択的接触還元触媒の製造方法に関する。さらに、本発明は、この選択的接触還元触媒及び当該システムの使用に、及びこの選択的接触還元触媒及び当該システムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Yisun Chengら,ディーゼルSCR触媒の耐硫黄性及びDeSOx研究,SAE International Journal Fuels and Lubricants 1(1),471~476頁,2008年(非特許文献1)は、卑金属含有ゼオライト材料、特にFe-ゼオライト及びCu含有ゼオライトを含む触媒に対する硫黄被毒の影響を開示している。硫黄の影響は、特に300℃未満の温度で、鉄含有ゼオライトよりも銅含有ゼオライトに対してより顕著であることが実証されている。
【0003】
Krishna Kamasamudramら,ディーゼル後処理システムにおけるN2Oの形成及び緩和,Cummins Inc.,SAE International Journal Engines 5(2),688~698頁,2012年(非特許文献2)は、触媒とのSCR反応中の亜酸化窒素(N2O)の形成、及び銅含有触媒及びバナジウムベース触媒などのさまざまなSCR触媒を使用したその可能な制御を研究した。
【0004】
Ashok Kumarら,ゼオライトベースのSCR触媒の触媒機能及び硫酸化挙動に及ぼす遷移金属イオン特性の影響,SAE International Journal Engines 10(4),1604~1612頁,2017年(非特許文献3)は、銅含有BEAゼオライト材料、鉄含有BEAゼオライト材料及びH型BEAゼオライト材料を開示している。これらの材料がテストされ、銅含有BEAゼオライト材料が、標準及び高速なSCR反応下でより高いN2O形成を示すことがわかった。したがって、銅含有ゼオライトだけでは、亜酸化窒素(N2O)排出を少なくすることができないことが実証されている。
【0005】
US5047378B(特許文献1)は、定置型発電市場向けの触媒を記載している。NH3-SCRに加えて、CO酸化にも重点が置かれている。当該文献は、チタニア担持のCu又はCo粒子とCu-ゼオライトとの混合物を開示している。CN105944755 A(特許文献2)は、硫酸化に対する保護を提供するための、Cu-SAPOでTiO2を沈殿させるプロセスを記載している。しかしながら、これらの文献は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するためのSCR触媒における亜酸化窒素排出及び/又は長期硫酸化を低減する方法を教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US5047378B
【特許文献2】CN105944755 A
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yisun Chengら,ディーゼルSCR触媒の耐硫黄性及びDeSOx研究,SAE International Journal Fuels and Lubricants 1(1),471~476頁,2008年
【非特許文献2】Krishna Kamasamudramら,ディーゼル後処理システムにおけるN2Oの形成及び緩和,Cummins Inc.,SAE International Journal Engines 5(2),688~698頁,2012年
【非特許文献3】Ashok Kumarら,ゼオライトベースのSCR触媒の触媒機能及び硫酸化挙動に及ぼす遷移金属イオン特性の影響,SAE International Journal Engines 10(4),1604~1612頁,2017年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成する選択的接触還元触媒を提供することであった。驚いたことには、本発明による選択的接触還元触媒は、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成することを可能にすることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関し、当該選択的接触還元触媒は、
(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;
(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含むゼオライト材料を含み、このゼオライト材料が、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、*-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、*-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG、ZON、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型、好ましくはCHA、AEI、BEA、MFI、FAU、FER、RTH、
LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される骨格型を有する、第1コーティング;
(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%がチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング
を含む。
【0010】
好ましくは、第1コーティングに含まれるゼオライト材料は、CHA、AEI、BEA、MFI、FER、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される骨格型を有する。より好ましくは、第1コーティングに含まれるゼオライト材料は骨格型CHAを有する。あるいは、より好ましくは、第1コーティングに含まれるゼオライト材料は骨格型BEAを有する。
【0011】
したがって、本発明はさらに、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関し、当該選択的接触還元触媒は、
(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;
(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;
(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1及び比較例1~2の触媒におけるNOx変換及びN
2O生成が測定及び計算されたWHTC試験サイクル(世界調和試験サイクル-高温相)で30分間動作した、SCRの入口温度及び出口温度、並びに排気マスフローを示す。
【
図2】
図2は、それぞれ、実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下で(WHTC-世界調和試験サイクル-高温相)、実施例1(新鮮及びエージングした)、比較例1(新鮮)及び比較例2(エージングした)の触媒で得られたNOx変換及びN
2O形成(g/kWhで表示する)を示す。
【
図3】
図3は、実施例3及び比較例3~4の触媒におけるNOx変換及びN
2O生成が測定及び計算されたWHTC試験サイクル(世界調和試験サイクル-高温相)で30分間動作した、SCRの入口温度及び出口温度、並びに排気マスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましくは、(ii)による第1コーティングは、入口端部から出口端部に向かって延びる。あるいは、好ましくは、第1コーティングは、出口端部から入口端部に向かって延びる。
【0014】
好ましくは、(ii)による第1コーティングは、基材軸方向長さの、50~100%にわたって、より好ましくは75~100%にわたって、より好ましくは95~100%にわたって、より好ましくは98~100%にわたって、より好ましくは99~100%にわたって延びる。より好ましくは、(ii)による第1コーティングは、基材軸方向長さの99~100%にわたって、基材の入口端部から出口端部に向かって延びる。
【0015】
好ましくは、(iii)による第2コーティングは、基材の入口端部から出口端部に向かって延びる。
【0016】
本発明によれば、好ましくは、(iii)による第2コーティングは、基材軸方向長さの、50~100%にわたって、より好ましくは75~100%にわたって、より好ましくは95~100%にわたって、より好ましくは98~100%にわたって、より好ましくは99~100%にわたって延びる。
【0017】
より好ましくは、(ii)による第1コーティングは基材軸方向長さの99~100%にわたって延び、(iii)による第2コーティングは基材軸方向長さの99~100%にわたって延びる。
【0018】
より好ましくは、(ii)による第1コーティングは、基材軸方向長さの75~100%にわたって、より好ましくは基材の入口端部から出口端部に向かって又はより好ましくは出口端部から入口端部に向かって延びる。より好ましくは、(iii)による第2コーティングは、基材軸方向長さの75~100%にわたって、より好ましくは基材の入口端部から出口端部に向かって延びる。
【0019】
したがって、本発明は、好ましくは、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関し、当該選択的接触還元触媒は、
(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;
(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの99~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;
(iii)基材軸方向長さの99~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング
を含む。
【0020】
本発明によれば、また好ましくは、(ii)による第1コーティングは、基材軸方向長さの、98~100%にわたって、より好ましくは99~100%にわたって延び、(iii)による第2コーティングは、基材軸方向長さの、20~90%にわたって、より好ましくは30~80%にわたって、より好ましくは40~60%にわたって、より好ましくは45~55%にわたって、より好ましくは48~52%にわたって、基材の入口端部から出口端部に向かって延びる。
【0021】
好ましくは、(iii)による第2コーティングは、(ii)による第1コーティング上に適用される。
【0022】
本発明によれば、また好ましくは、(ii)による第1コーティングは、基材軸方向長さの、40~50%にわたって、より好ましくは45~50%にわたって、より好ましくは48~50%にわたって、基材の出口端部から入口端部に向かって延び、(iii)による第2コーティングは、基材軸方向長さの、40~50%にわたって、より好ましくは45~50%にわたって、より好ましくは48~50%にわたって、基材の入口端部から出口端部に向かって延びる。
【0023】
本発明の文脈において、好ましくは、第1コーティングに含有される8員環の多孔性ゼオライト材料は、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、より好ましくはCHA、AEI、RTH、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、より好ましくはCHA及びAEIからなる群から選択される骨格型を有する。より好ましくは、第1コーティングに含有される8員環の多孔性ゼオライト材料は骨格型CHAを有する。より好ましくは、8員環の多孔性ゼオライト材料はゼオライトSSZ-13である。
【0024】
本発明の文脈において、好ましくは、より好ましくは骨格型CHAを有する第1コーティングに含まれるゼオライト材料は、走査型電子顕微鏡によって決定された、少なくとも0.5マイクロメーター、好ましくは0.5~1.5マイクロメーターの範囲、より好ましくは0.6~1.0マイクロメーターの範囲、より好ましくは0.6~0.8マイクロメーターの範囲の平均結晶サイズを有する。
【0025】
好ましくは、第1コーティングに含有されるゼオライト材料は銅を含み、CuOとして計算されるゼオライト材料中の銅の量は、ゼオライト材料の総質量に基づいて、より好ましくは0.1~10質量%の範囲、より好ましくは1.5~5.5質量%の範囲、より好ましくは2.5~4.5質量%の範囲、より好ましくは3.0~4.0質量%の範囲、より好ましくは3.0~3.5質量%の範囲である。より好ましくは、Fe2O3として計算されるゼオライト材料に含まれる鉄の量は、ゼオライト材料の総質量に基づいて、0~0.01質量%の範囲、より好ましくは1~0.001質量%の範囲、より好ましくは0~0.0001質量%の範囲である。
【0026】
第1コーティングに含まれるゼオライト材料の骨格構造の、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、Si、Al、O、及び任意にHからなる。
【0027】
好ましくは、第1コーティングに含有されるゼオライト材料の骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~45:1の範囲である。より好ましくは、第1コーティングに含有されるゼオライト材料の骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、10:1~40:1の範囲、より好ましくは20:1~35:1の範囲、より好ましくは25:1~35:1の範囲である。あるいは、より好ましくは、ゼオライト材料の骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、2:1~15:1の範囲、より好ましくは2:1~12:1の範囲、より好ましくは3:1~8:1の範囲である。
【0028】
したがって、本発明は、好ましくは、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関し、当該選択的接触還元触媒は、
(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;
(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅を含む骨格型CHAを有するゼオライト材料を含み、第1コーティングに含有されるゼオライト材料の骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比が、10:1~40:1の範囲、より好ましくは20:1~35:1の範囲、より好ましくは25:1~35:1の範囲である、第1コーティング;
(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング、
を含み、
ここで、(ii)による第1コーティングは、より好ましくは、基材軸方向長さの98~100%にわたって延び、(iii)による第2コーティングは、より好ましくは、基材軸方向長さの98~100%にわたって延びる。
【0029】
好ましくは、第1コーティングに含有されるゼオライト材料は鉄を含み、Fe2O3として計算されるゼオライト材料に含まれる鉄の量は、ゼオライト材料の総質量に基づいて、より好ましくは0.1~10.0質量%の範囲、より好ましくは0.5~7.0質量%の範囲、より好ましくは1.0~5.5質量%の範囲、より好ましくは2.0~5.5質量%の範囲である。ゼオライト材料の骨格構造の、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、Si、Al、O、及び任意にHからなり、ここで、骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、より好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~45:1の範囲である。より好ましくは、ゼオライト材料の骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、10:1~40:1の範囲、より好ましくは20:1~35:1の範囲、より好ましくは25:1~35:1の範囲である。あるいは、より好ましくは、ゼオライト材料の骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、2:1~15:1の範囲、より好ましくは2:1~12:1の範囲、より好ましくは3:1~8:1の範囲である。
【0030】
本発明によれば、好ましくは、触媒において、第1コーティングは、0.5~5g/in3の範囲、より好ましくは1~4g/in3の範囲、より好ましくは1.5~2.5g/in3の範囲の装填量(loading)でゼオライト材料を含む。
【0031】
(ii)による第1コーティングは、好ましくは、酸化物バインダーをさらに含み、ここで、この酸化物バインダーが、より好ましくはジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、並びにZr、Al、Ti及びSiの2つ以上を含む混合酸化物の1つ以上を含み、より好ましくはシリカ、アルミナ及びジルコニアの1つ以上を含み、より好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはジルコニアを含む。より好ましくは、触媒において、第1コーティングは、0.05~0.15g/in3の範囲、より好ましくは0.08~0.14g/in3の範囲の装填量で酸化物バインダーを含む。
【0032】
好ましくは、第1コーティングは、装填量(lz)のゼオライト材料、及び装填量(lb)の酸化物バインダーを含み、ここで、酸化物バインダーの装填量(lb)とゼオライト材料の装填量(lz)との比、(lb):(lz)は、0.02:1~0.1:1の範囲、より好ましくは0.03:1~0.8:1の範囲、より好ましくは0.03:1~0.07:1の範囲である。
【0033】
第1コーティングの、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%は、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料、及び上記で定義された酸化物バインダーからなる。
【0034】
第1コーティングの、好ましくは0~0.01質量%、より好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%はチタニアからなる。より好ましくは、第1コーティングはチタニアを含まない。
【0035】
第1コーティングに含まれるゼオライト材料の骨格構造の、好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%、より好ましくは0~0.00001質量%はPからなる。
【0036】
(iii)による第2コーティングにおいて、好ましくは、第2コーティングの第1酸化物材料に含まれるチタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する。
【0037】
第2コーティングの、好ましくは85~100質量%、より好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%はチタニアからなり、ここで、チタニアが、好ましくは正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する。
【0038】
好ましくは、第2コーティングの第1酸化物材料は、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化セリウム及び酸化タングステンの1つ以上をさらに含む。より好ましくは、第2コーティングの第1酸化物材料は酸化タングステンをさらに含み、より好ましくは、第2コーティングの第1酸化物材料は、チタニアに含浸された酸化タングステンを含み、より好ましくはチタニアに含浸された酸化タングステンからなる。
【0039】
第2コーティングの第1酸化物材料の、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、チタニア(ここで、チタニアが、より好ましくは正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する)、及び任意に酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化セリウム及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンからなる。より好ましくは、第2コーティングの第1酸化物材料の99~100質量%は、80~95質量%、より好ましくは85~92質量%のチタニア、及び5~20質量%、より好ましくは8~15質量%の、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンからなる。
【0040】
好ましくは、触媒において、第2コーティングは、15.26~305.1g/l(0.25~5.0g/in3)の範囲、より好ましくは30.51~244.1g/l(0.5~4.0g/in3)の範囲、より好ましくは45.8~213.6g/l(0.75~3.5g/in3)の範囲、より好ましくは48.8~183.1g/l(0.8~3.0g/in3)の範囲、より好ましくは54.9~122.05g/l(0.9~2.0g/in3)の範囲の装填量で第1酸化物材料を含む。
【0041】
好ましくは、第2コーティングは、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上、より好ましくはシリカ及びアルミナの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含む。より好ましくは、第2酸化物材料は、アルミナ及びシリカ、より好ましくはガンマ-アルミナ及びシリカを含み、より好ましくはアルミナ及びシリカ、より好ましくはガンマ-アルミナ及びシリカからなり、ここで、アルミナ、より好ましくはガンマ-アルミナが任意に、シリコンを含有する。あるいは、より好ましくは、第2酸化物材料は、シリカを含み、より好ましくはシリカからなる。
【0042】
好ましくは、触媒において、第2コーティングは、0.61~36.6g/l(0.01~0.6g/in3)の範囲、より好ましくは1.22~24.4g/l(0.02~0.4g/in3)の範囲、より好ましくは3.05~21.36g/l(0.05~0.35g/in3)の範囲の装填量で第2酸化物材料を含む。
【0043】
第2コーティングの、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、上記で定義された、第1酸化物材料及び第2酸化物材料からなる。
【0044】
第2コーティングの、好ましくは0~0.1質量%、より好ましくは0~0.01質量%、より好ましくは0~0.001質量%はゼオライト材料からなる。より好ましくは、第2コーティングはゼオライト材料を含まず、ここで、より好ましくは、ゼオライト材料が銅及び鉄の1つ以上を含む。
【0045】
第2コーティングの、好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%は、1種以上の酸化バナジウムからなる。より好ましくは、第2コーティングは酸化バナジウムを含まない。
【0046】
第2コーティングの、好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%は、白金及びパラジウムの1つ以上、より好ましくは白金、パラジウム及びロジウムの1つ以上、より好ましくは1種以上の貴金属からなる。
【0047】
本発明によれば、好ましくは、第1コーティングの、95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、骨格型CHAを有し、かつ銅を含むゼオライト材料、及びより好ましくは上記で定義された酸化物バインダーからなり;第2コーティングの、90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、上記で定義された、第1酸化物材料及び第2酸化物材料からなり;ここで、第1酸化物材料の、95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%がチタニアからなり、より好ましくは、チタニアが、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有し、第2酸化物材料が、アルミナ及びシリカの1つ以上を含み、より好ましくはアルミナ及びシリカの1つ以上からなる。
【0048】
あるいは、本発明によれば、より好ましくは、第1コーティングの、95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、骨格型CHAを有し、かつ銅を含むゼオライト材料、及びより好ましくは上記で定義された酸化物バインダーからなり;第2コーティングの、90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、上記で定義された、第1酸化物材料及び第2酸化物材料からなり;ここで、第1酸化物材料の、95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%がチタニア及び酸化タングステンからなり、より好ましくは、チタニアが、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有し;より好ましくは第1酸化物材料の99~100質量%が、80~95質量%、より好ましくは85~92質量%のチタニア、及び5~20質量%、より好ましくは8~15質量%の酸化タングステンからなり、第2酸化物材料が、アルミナ及びシリカの1つ以上を含み、より好ましくはアルミナ及びシリカの1つ以上からなる。
【0049】
本発明の文脈において、好ましくは、触媒において、第1コーティングは総装填量(l1)を有し、第2コーティングは総装填量(l2)を有し、ここで、第1コーティングの総装填量の第2コーティングの総装填量に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲、より好ましくは0.75:1~3:1の範囲、より好ましくは1:1~2:1の範囲である。
【0050】
フロースルー基材は、好ましくはセラミック物質又は金属物質を含み、より好ましくはセラミック物質又は金属物質からなる。より好ましくは、フロースルー基材は、セラミック物質を含み、より好ましくはセラミック物質からなり、ここで、より好ましくは、セラミック物質が、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、より好ましくはコーディエライト又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、より好ましくはスピネル、及びチタニアの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイド及びコーディエライトの1つ以上、より好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくはそれらからなる。あるいは、より好ましくは、フロースルー基材は、金属物質を含み、より好ましくは金属物質からなり、ここで、より好ましくは、金属物質が、酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含み、より好ましくは酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上からなる。
【0051】
基材は、好ましくは2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲、より好ましくは5.08~20.32cm(2~8インチ)の範囲、より好ましくは10.16~19.05cm(4~7.5インチ)の範囲、より好ましくは12.7~17.78cm(5~7インチ)の範囲の基材長さを有する。
【0052】
基材は、好ましくは10.16~43.18cm(4~17インチ)の範囲、より好ましくは17.78~38.10cm(7~15インチ)の範囲、より好ましくは20.32~35.56cm(8~14インチ)の範囲、より好ましくは22.86~33.02cm(9~13インチ)の範囲、より好ましくは22.86~27.94cm(9~11インチ)の範囲の基材幅を有する。
【0053】
本発明の文脈において、選択的接触還元触媒の、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%は、フロースルー基材、第1コーティング及び第2コーティングからなる。より好ましくは、本発明の選択的接触還元触媒は、フロースルー基材、第1コーティング及び第2コーティングからなる。
【0054】
本発明はさらに、ディーゼルエンジンから出る排気ガス流を処理するための排気ガス処理システムに関し、前記排気ガス処理システムは前記排気ガス流を前記排気ガス処理システムに導入するための上流端部を有し、前記排気ガス処理システムは、
(A)ディーゼル酸化触媒(DOC)であって、このディーゼル酸化触媒が基材に適用されたコーティングを含み、このコーティングが、好ましくは、酸化物材料に担持されている、パラジウム、白金及びロジウムの1つ以上、より好ましくはパラジウム及び白金、より好ましくは白金を含む、ディーゼル酸化触媒(DOC)、
(B)1つ以上の本発明による選択的接触還元(SCR)触媒
を含み、
(A)によるディーゼル酸化触媒が、(B)による1つ以上の選択的接触還元触媒の上流に配置され、好ましくは、(A)によるディーゼル酸化触媒が、排気ガス処理システムの一番目の触媒であり、前記排気ガス処理システムの上流端部の下流に配置され、
排気ガス処理システムが、任意に、(A)によるディーゼル酸化触媒の下流及び(B)による1つ以上の選択的接触還元触媒の上流に配置される、フィルター、好ましくは触媒付すすフィルターをさらに含む。
【0055】
ディーゼル酸化触媒について、好ましくは、ディーゼル酸化触媒のコーティングに含まれる酸化物材料は、ジルコニア、アルミナ、チタニア及びシリカの1つ以上、より好ましくはジルコニア及びチタニアの1つ以上、より好ましくはチタニアを含む。
【0056】
好ましくは、ディーゼル酸化触媒のコーティングは、アルミナ、シリカ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはアルミナ及びジルコニアをさらに含む。
【0057】
ディーゼル酸化触媒のコーティングの、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、酸化物材料、より好ましくはチタニアに担持されているパラジウム、白金及びロジウムの1つ以上、及びより好ましくはアルミナ、シリカ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはアルミナ及びジルコニアからなる。
【0058】
好ましくは、ディーゼル酸化触媒のコーティングは、0.11~1.10g/l(3~30g/ft3)の範囲、より好ましくは0.18~0.71g/l(5~20g/ft3)の範囲、より好ましくは0.28~0.42g/l(8~12g/ft3)の範囲の前記触媒における装填量で、パラジウム、白金及びロジウムの1つ以上を含む。
【0059】
好ましくは、ディーゼル酸化触媒のコーティングは、30.51g/l~305.1g/l(0.5~5g/in3)の範囲、より好ましくは45.77~122.05g/l(0.75~2g/in3)の範囲、より好ましくは48.82~91.54g/l(0.80~1.5g/in3)の範囲の前記触媒における装填量で、パラジウム、白金及びロジウムの1つ以上を担持する酸化物材料を含む。
【0060】
好ましくは、ディーゼル酸化触媒の基材は、フロースルー基材であり、セラミック物質又は金属物質を含み、より好ましくはセラミック物質又は金属物質からなる。より好ましくは、フロースルー基材は、セラミック物質を含み、より好ましくはセラミック物質からなり、ここで、より好ましくは、セラミック物質が、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、より好ましくはコーディエライト又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、より好ましくはスピネル、及びチタニアの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイド及びコーディエライトの1つ以上、より好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくはそれらからなる。あるいは、より好ましくは、フロースルー基材は、金属物質を含み、より好ましくは金属物質からなり、ここで、より好ましくは、金属物質が、酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含み、より好ましくは酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上からなる。
【0061】
好ましくは、ディーゼル酸化触媒の基材は、2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲、より好ましくは5.08~20.32cm(2~8インチ)の範囲、より好ましくは10.16~19.05cm(4~7.5インチ)の範囲、より好ましくは12.7~17.78cm(5~7インチ)の範囲の基材長さを有する。
【0062】
好ましくは、ディーゼル酸化触媒の基材は、12.7~45.72cm(5~18インチ)の範囲、より好ましくは20.32~40.64cm(8~16インチ)の範囲、より好ましくは25.4~35.56cm(10~14インチ)の範囲、より好ましくは27.94~33.02cm(11~13インチ)の範囲の基材幅を有する。
【0063】
ディーゼル酸化触媒の、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、コーティング及び基材からなる。
【0064】
好ましくは、排気ガス処理システムはアンモニア酸化触媒をさらに含み、ここで、アンモニア酸化触媒が、1つ以上の選択的接触還元触媒(B)の下流に配置される。
【0065】
本発明はさらに、ディーゼルエンジンから出る排気ガス流を処理するための排気ガス処理システムに関し、前記排気ガス処理システムは前記排気ガス流を前記排気ガス処理システムに導入するための上流端部を有し、前記排気ガス処理システムは、
本発明による第1選択的接触還元触媒、並びにディーゼル酸化触媒、第2選択的接触還元触媒、アンモニア酸化触媒及びフィルターの1つ以上を含み、
ディーゼル酸化触媒、第2選択的接触還元触媒、アンモニア酸化触媒及びフィルターの1つ以上が、本発明による第1選択的接触還元触媒の下流に配置され、好ましくは、本発明による第1選択的接触還元触媒が、排気ガス処理システムの一番目の触媒であり、前記排気ガス処理システムの上流端部の下流に配置される。
【0066】
好ましくは、排気ガス処理システムは、本発明による第1選択的接触還元触媒、及び当該選択的接触還元触媒の下流に配置される、フィルター、より好ましくは触媒付パティキュレートフィルターを含む。あるいは、好ましくは、排気ガス処理システムは、好ましくは、本発明による第1選択的接触還元触媒、ディーゼル酸化触媒、及びフィルター、より好ましくは触媒付パティキュレートフィルターを含み、ここで、このディーゼル酸化触媒が、前記選択的接触還元触媒の下流及びフィルターの上流に配置される。
【0067】
本発明はさらに、選択的接触還元触媒、好ましくは本発明による選択的接触還元触媒を製造する方法に関し、この方法は、
(a)銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料の源、及び水を含む第1スラリーを製造する工程と、
(b)基材軸方向長さの40~100%にわたってフロースルー基材の内壁の表面に工程(a)で得られた第1スラリーを適用して、スラリー処理基材を得る工程であって、フロースルー基材が、入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びる基材の内壁によって規定される複数の通路を含み、基材の内壁の表面が内壁と通路との間の界面を規定する、工程と、
(c)工程(b)で得られたスラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティングを有する基材を得る工程と、
(d)任意に、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する基材をか焼する工程と、
(e)チタニアを含む第1酸化物材料、及び水を含む第2スラリーを製造する工程であって、第1酸化物材料が任意に、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化タングステンを含み、第2スラリーが、好ましくは第2酸化物材料を含む、工程と、
(f)基材軸方向長さの20~100%にわたって、好ましくは基材の入口端部から基材の出口端部に向かって、工程(e)で得られた第2スラリーを、工程(c)で得られた、任意に工程(d)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する基材に適用して、スラリー処理基材を得る工程と、
(g)工程(f)で得られたスラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材を得る工程と、
(h)工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材をか焼して、選択的接触還元触媒を得る工程であって、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなり、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなる、工程と
を含む。
【0068】
好ましくは、工程(a)は、
(a.1)酸化物バインダー、より好ましくはジルコニルアセテートを、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料及び水と混合して、第1スラリーを得ることと、
(a.2)3~15マイクロメーターの範囲、より好ましくは5~13マイクロメーターの範囲、より好ましくは8~12マイクロメーターの範囲の、参考例1に記載されているように決定された粒径Dv90に、(a.1)で得られた第1スラリーを粉砕することと
を含む。
【0069】
工程(c)によれば、好ましくは、工程(b)で得られたスラリー処理基材は、90~200℃の範囲、より好ましくは100~150℃の範囲、より好ましくは110~130℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中で乾燥される。
【0070】
工程(c)によれば、好ましくは、工程(b)で得られたスラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、5~60分間の範囲、より好ましくは10~20分間の範囲の持続時間で乾燥される。
【0071】
工程(c)によれば、好ましくは、工程(b)で得られたスラリー処理基材は、90~200℃の範囲、より好ましくは130~190℃の範囲、より好ましくは155~175℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でさらに乾燥される。
【0072】
工程(c)によれば、好ましくは、工程(b)で得られたスラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、10~80分間の範囲、より好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でさらに乾燥される。
【0073】
工程(c)において、好ましくは、ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、より好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である。
【0074】
工程(d)によれば、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する基材は、好ましくは300~600℃の範囲、より好ましくは350~550℃の範囲、より好ましくは400~500℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でか焼される。
【0075】
工程(d)によれば、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する基材は、ガス雰囲気中で、好ましくは10~80分間の範囲、より好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でか焼される。
【0076】
工程(d)において、好ましくは、ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、より好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である。
【0077】
好ましくは、工程(e)は、
(e.1)チタニアを含み、任意に酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンを含む第1酸化物材料を、より好ましくはアルミナ及びシリカの1つ以上を含む第2酸化物材料、有機分散剤及び水と混合することと、
(e.2)水酸化アンモニウム溶液の添加により、pHを、3.0~7.0の範囲、より好ましくは5.0~6.0の範囲の値に調整して、第2スラリーを得ることと、
を含む。
【0078】
工程(g)によれば、好ましくは、工程(f)で得られたスラリー処理基材は、90~200℃の範囲、より好ましくは100~150℃の範囲、より好ましくは110~130℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中で乾燥される。
【0079】
工程(g)によれば、好ましくは、工程(f)で得られたスラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、5~60分間の範囲、より好ましくは10~20分間の範囲の持続時間で乾燥される。
【0080】
工程(g)によれば、好ましくは、工程(f)で得られたスラリー処理基材は、90~200℃の範囲、より好ましくは130~190℃の範囲、より好ましくは155~175℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でさらに乾燥される。
【0081】
工程(g)によれば、好ましくは、工程(f)で得られたスラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、10~80分間の範囲、より好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でさらに乾燥される。
【0082】
工程(g)において、好ましくは、ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、より好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である。
【0083】
工程(h)によれば、工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材は、好ましくは300~600℃の範囲、より好ましくは350~550℃の範囲、より好ましくは400~500℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でか焼される。
【0084】
工程(h)によれば、工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材は、ガス雰囲気中で、好ましくは10~80分間の範囲、より好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でか焼される。
【0085】
工程(h)において、好ましくは、ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、より好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である。
【0086】
本発明による方法において、好ましくは、第1スラリー及び第2スラリーの1つ以上を適用することは、噴霧又は基材を浸漬することによって、より好ましくは基材を浸漬することによって行われる。
【0087】
好ましくは、工程(a)で得られた第1スラリーを適用することは、基材軸方向長さの90~100%、より好ましくは95~100%、より好ましくは99~100%にわたって、より好ましくは基材の入口端部から基材の出口端部に向かって又はより好ましくは基材の出口端部から基材の入口端部に向かって行われる。
【0088】
好ましくは、工程(f)で得られた第2スラリーを適用することは、基材軸方向長さの90~100%、より好ましくは95~100%、より好ましくは99~100%にわたって、基材の入口端部から基材の出口端部に向かって行われる。あるいは、好ましくは、工程(f)で得られた第2スラリーを適用することは、基材軸方向長さの20~90%、より好ましくは30~80%、より好ましくは40~60%、より好ましくは45~55%、より好ましくは48~52%にわたって、基材の入口端部から基材の出口端部に向かって行われる。
【0089】
代替態様として、好ましくは、工程(a)で得られた第1スラリーを適用することは、基材軸方向長さの40~50%、より好ましくは45~50%、より好ましくは48~50%にわたって、基材の出口端部から基材の入口端部に向かって行われ、工程(f)で得られた第2スラリーを適用することは、基材軸方向長さの40~50%、より好ましくは45~50%、より好ましくは48~50%にわたって、基材の入口端部から基材の出口端部に向かって行われる。
【0090】
特に好ましくは、本発明の方法は、
(a)銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料の源、及び水を含む第1スラリーを製造する工程と、
(b)基材軸方向長さの40~100%にわたってフロースルー基材の内壁の表面に工程(a)で得られた第1スラリーを適用して、スラリー処理基材を得る工程であって、この基材が、入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びる基材の内壁によって規定される複数の通路を含み、基材の内壁の表面が内壁と通路との間の界面を規定する、工程と、
(c)工程(b)で得られたスラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティングを有する基材を得る工程と、
(d)任意に、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する基材をか焼する工程と、
(e)チタニアを含む第1酸化物材料、及び水を含む第2スラリーを製造する工程であって、第1酸化物材料が任意に、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化タングステンを含み、第2スラリーが、好ましくは第2酸化物材料を含む、工程と、
(f)基材軸方向長さの20~100%にわたって、好ましくは基材の入口端部から基材の出口端部に向かって、工程(e)で得られた第2スラリーを、工程(c)で得られた、任意に工程(d)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する基材に適用して、スラリー処理基材を得る工程と、
(g)工程(f)で得られたスラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材を得る工程と、
(h)工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材をか焼して、選択的接触還元触媒を得る工程であって、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなり、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなる、工程と
からなる。
【0091】
本発明はさらに、本発明の方法により得ることができる又は得られる、選択的接触還元触媒、好ましくは上記で定義された本発明の選択的接触還元触媒に関する。
【0092】
本発明はさらに、本発明による選択的接触還元触媒を、好ましくはディーゼルエンジンからの排気ガス流に含まれる窒素酸化物の選択的触媒還元に使用する方法に関する。
【0093】
本発明はさらに、本発明による排気ガス処理システムを、ディーゼルエンジンからの排気ガス流の処理に使用する方法に関する。
【0094】
本発明はさらに、窒素酸化物を選択的触媒還元する方法に関し、ここで、窒素酸化物が排気ガス流中に含まれ、前記方法が、
(1)好ましくはディーゼルエンジンからの排気ガス流を提供する工程と、
(2)工程(1)で提供された排気ガス流を、本発明による選択的接触還元触媒に通過させる工程と、
を含む。
【0095】
本発明はさらに、ディーゼルエンジンからの排気ガス流を処理する方法に関し、前記方法が、
(1’)前記排気ガス流を提供する工程と、
(2’)工程(1’)で提供された排気ガス流を、本発明による排気ガス処理システムに通過させる工程と、
を含む。
【0096】
本発明は、以下の一連の実施態様、及び示されているような従属性及び後方参照から生じる実施態様の組み合わせによって説明される。特に、実施態様の範囲が言及されるそれぞれの場合において、例えば、「実施態様1から3のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒」などの表現の文脈において、この範囲の各実施態様は、当業者にとって明示的に開示されているとみなされる、すなわち、この表現は「実施態様1、2及び3のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒」と同義であるとして当業者によって理解されるべきであることに留意されたい。
【0097】
1a.ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒であって、前記選択的接触還元触媒は、
(i)入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含む、フロースルー基材;
(ii)前記内壁と前記通路との間の界面を規定する前記基材の前記内壁の表面に適用された第1コーティングであって、前記第1コーティングが前記基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、前記第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含むゼオライト材料を含み、前記ゼオライト材料が、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、*-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、*-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG、ZON、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型、好ましくはCHA、AEI、BEA、MFI、FAU、FER、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される骨格型を有する、第1コーティング;
(iii)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、前記第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、前記第2コーティングの少なくとも75質量%がチタニアからなり、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング
を含む、選択的接触還元触媒。
【0098】
1.ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒、好ましくは実施態様1aに記載の選択的接触還元触媒であって、前記選択的接触還元触媒は、
(i)入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;
(ii)前記内壁と前記通路との間の界面を規定する前記基材の前記内壁の表面に適用された第1コーティングであって、前記第1コーティングが前記基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、前記第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;
(iii)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、前記第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、前記第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング
を含む、選択的接触還元触媒。
【0099】
2.(ii)による前記第1コーティングは、前記基材軸方向長さの、50~100%にわたって、好ましくは75~100%にわたって、より好ましくは95~100%にわたって、より好ましくは98~100%にわたって、より好ましくは99~100%にわたって、より好ましくは前記基材の前記入口端部から前記出口端部に向かって、又はより好ましくは前記基材の前記出口端部から前記入口端部に向かって延びる、実施態様1に記載の選択的接触還元触媒。
【0100】
3.(iii)による前記第2コーティングは、前記基材の前記入口端部から前記出口端部に向かって延びる、実施態様1又は2に記載の選択的接触還元触媒。
【0101】
4.(iii)による前記第2コーティングは、前記基材軸方向長さの、50~100%にわたって、好ましくは75~100%にわたって、より好ましくは95~100%にわたって、より好ましくは98~100%にわたって、より好ましくは99~100%にわたって、より好ましくは前記基材の前記入口端部から前記出口端部に向かって延び、
(ii)による前記第1コーティングは、より好ましくは前記基材軸方向長さの99~100%にわたって延び、(iii)による前記第2コーティングは、より好ましくは前記基材軸方向長さの99~100%にわたって延びる、実施態様1から3のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0102】
5.(ii)による前記第1コーティングは、前記基材軸方向長さの、98~100%にわたって、好ましくは99~100%にわたって延び、(iii)による前記第2コーティングは、前記基材軸方向長さの、20~90%にわたって、好ましくは30~80%にわたって、より好ましくは40~60%にわたって、より好ましくは45~55%にわたって、より好ましくは48~52%にわたって、前記基材の前記入口端部から前記出口端部に向かって延びる、実施態様1又は2に記載の選択的接触還元触媒。
【0103】
6.(iii)による前記第2コーティングは、(ii)による前記第1コーティング上に適用される、実施態様1から5のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0104】
7.(ii)による前記第1コーティングは、前記基材軸方向長さの、40~50%にわたって、好ましくは45~50%にわたって、より好ましくは48~50%にわたって、前記基材の前記出口端部から前記入口端部に向かって延び、(iii)による前記第2コーティングは、前記基材軸方向長さの、40~50%にわたって、好ましくは45~50%にわたって、より好ましくは48~50%にわたって、前記基材の前記入口端部から前記出口端部に向かって延びる、実施態様1に記載の選択的接触還元触媒。
【0105】
8.前記第1コーティングに含有される前記8員環の多孔性ゼオライト材料は、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、好ましくはCHA、AEI、RTH、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、より好ましくはCHA及びAEIからなる群から選択される骨格型を有し、より好ましくは、前記第1コーティングに含有される前記8員環の多孔性ゼオライト材料は骨格型CHAを有し、
前記8員環の多孔性ゼオライト材料は、より好ましくはゼオライトSSZ-13である、実施態様1から7のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0106】
9.前記第1コーティングに含有される前記ゼオライト材料は銅を含み、CuOとして計算される前記ゼオライト材料における銅の量は、前記ゼオライト材料の総質量に基づいて、好ましくは0.1~10質量%の範囲、より好ましくは1.5~5.5質量%の範囲、より好ましくは2.5~4.5質量%の範囲、より好ましくは3.0~4.0質量%の範囲、より好ましくは3.0~3.5質量%の範囲である、実施態様1から8のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0107】
10.Fe2O3として計算される前記ゼオライト材料に含まれる鉄の量は、前記ゼオライト材料の総質量に基づいて、0~0.01質量%の範囲、好ましくは0~0.001質量%の範囲、より好ましくは0~0.0001質量%の範囲である、実施態様9に記載の選択的接触還元触媒。
【0108】
11.前記ゼオライト材料の骨格構造の、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、Si、Al、O、及び任意にHからなり、前記骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~45:1の範囲である、実施態様1から10のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0109】
12.前記ゼオライト材料の前記骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、10:1~40:1の範囲、好ましくは20:1~35:1の範囲、より好ましくは25:1~35:1の範囲である、実施態様11に記載の選択的接触還元触媒。
【0110】
13.前記ゼオライト材料の前記骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、2:1~15:1の範囲、好ましくは2:1~12:1の範囲、より好ましくは3:1~8:1の範囲である、実施態様11に記載の選択的接触還元触媒。
【0111】
14.前記第1コーティングに含有される前記ゼオライト材料は鉄を含み、Fe2O3として計算される前記ゼオライト材料に含まれる鉄の量は、前記ゼオライト材料の総質量に基づいて、好ましくは0.1~10.0質量%の範囲、より好ましくは0.5~7.0質量%の範囲、より好ましくは1.0~5.5質量%の範囲、より好ましくは2.0~5.5質量%の範囲であり、前記ゼオライト材料の前記骨格構造の、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、Si、Al、O、及び任意にHからなり、前記骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~45:1の範囲である、実施態様1から9のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0112】
15.前記ゼオライト材料の前記骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、10:1~40:1の範囲、好ましくは20:1~35:1の範囲、より好ましくは25:1~35:1の範囲である、実施態様14に記載の選択的接触還元触媒。
【0113】
16.前記ゼオライト材料の前記骨格構造において、SiO2:Al2O3のモル比として計算される、SiとAlのモル比は、2:1~15:1の範囲、好ましくは2:1~12:1の範囲、より好ましくは3:1~8:1の範囲である、実施態様14に記載の選択的接触還元触媒。
【0114】
17.前記触媒において、前記第1コーティングは、0.5~5g/in3の範囲、好ましくは1~4g/in3の範囲、より好ましくは1.5~2.5g/in3の範囲の装填量で前記ゼオライト材料を含む、実施態様1から16のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0115】
18.前記第1コーティングは酸化物バインダーをさらに含み、前記酸化物バインダーは、好ましくはジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、並びにZr、Al、Ti及びSiの2つ以上を含む混合酸化物の1つ以上を含み、より好ましくはシリカ、アルミナ及びジルコニアの1つ以上を含み、より好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはジルコニアを含む、実施態様1から17のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0116】
19.前記触媒において、前記第1コーティングは、0.05~0.15g/in3の範囲、好ましくは0.08~0.14g/in3の範囲の装填量で前記酸化物バインダーを含む、実施態様18に記載の選択的接触還元触媒。
【0117】
20.前記第1コーティングの、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%は、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料、及び好ましくは実施態様18又は19に記載の酸化物バインダーからなる、実施態様1から19のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0118】
21.前記第1コーティングの、0~0.01質量%、好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%はチタニアからなり、より好ましくは、前記第1コーティングはチタニアを含まない、実施態様1から20のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0119】
22.前記第1コーティングに含まれる前記ゼオライト材料の前記骨格構造の、0~0.001質量%、好ましくは0~0.0001質量%、より好ましくは0~0.00001質量%はPからなる、実施態様1から20のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0120】
23.前記第2コーティングの前記第1酸化物材料に含まれるチタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する、実施態様1から22のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0121】
24.前記第2コーティングの、85~100質量%、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%はチタニアからなり、チタニアは、好ましくは正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する、実施態様1から23のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0122】
25.前記第2コーティングの前記第1酸化物材料は、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化セリウム及び酸化タングステンの1つ以上をさらに含む、実施態様1から24のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0123】
26.前記第2コーティングの前記第1酸化物材料は、酸化タングステンをさらに含み、好ましくは、前記第2コーティングの前記第1酸化物材料は、チタニアに含浸された酸化タングステンを含み、より好ましくはチタニアに含浸された酸化タングステンからなる、実施態様25に記載の選択的接触還元触媒。
【0124】
27.前記第2コーティングの前記第1酸化物材料の、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、チタニア、及び任意に酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化セリウム及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンからなり、チタニアは、好ましくは正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する、実施態様25又は26に記載の選択的接触還元触媒。
【0125】
28.前記第2コーティングの前記第1酸化物材料の、99~100質量%は、80~95質量%、好ましくは85~92質量%のチタニア、及び5~20質量%、好ましくは8~15質量%の、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンからなる、実施態様27に記載の選択的接触還元触媒。
【0126】
29.前記触媒において、前記第2コーティングは、15.26~305.1g/l(0.25~5.0g/in3)の範囲、より好ましくは30.51~244.1g/l(0.5~4.0g/in3)の範囲、より好ましくは45.8~213.6g/l(0.75~3.5g/in3)の範囲、より好ましくは48.8~183.1g/l(0.8~3.0g/in3)の範囲、より好ましくは54.9~122.05g/l(0.9~2.0g/in3)の範囲の装填量で前記第1酸化物材料を含む、実施態様1から28のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0127】
30.前記第2コーティングは、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上、好ましくはシリカ及びアルミナの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含む、実施態様1から29のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0128】
31.前記第2コーティングは、アルミナ及びシリカ、好ましくはガンマ-アルミナ及びシリカを含み、好ましくはアルミナ及びシリカ、より好ましくはガンマ-アルミナ及びシリカからなり、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナは任意にシリコンを含有するか、又は前記第2酸化物材料は、シリカを含み、好ましくはシリカからなる、実施態様30に記載の選択的接触還元触媒。
【0129】
32.前記触媒において、前記第2コーティングは、0.61~36.6g/l(0.01~0.6g/in3)の範囲、より好ましくは1.22~24.4g/l(0.02~0.4g/in3)の範囲、より好ましくは3.05~21.36g/l(0.05~0.35g/in3)の範囲の装填量で前記第2酸化物材料を含む、実施態様30又は31に記載の選択的接触還元触媒。
【0130】
33.前記第2コーティングの、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、第1酸化物材料、及び実施態様30から32のいずれか一項に記載の第2酸化物材料からなる、実施態様1から32のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0131】
34.前記第2コーティングの、0~0.1質量%、好ましくは0~0.01質量%、より好ましくは0~0.001質量%はゼオライト材料からなり、より好ましくは、前記第2コーティングはゼオライト材料を含まない、実施態様1から33のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0132】
35.前記ゼオライト材料は銅及び鉄の1つ以上を含む、実施態様34に記載の選択的接触還元触媒。
【0133】
36.前記第2コーティングの、0~0.001質量%、好ましくは0~0.0001質量%は1種以上の酸化バナジウムからなり、より好ましくは、前記第2コーティングは酸化バナジウムを含まない、実施態様1から35のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0134】
37.前記第2コーティングの、0~0.001質量%、好ましくは0~0.0001質量%は、白金及びパラジウムの1つ以上、より好ましくは白金、パラジウム及びロジウムの1つ以上、より好ましくは1種以上の貴金属からなる、実施態様1から36のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0135】
38.前記第1コーティングの、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、骨格型CHAを有し、かつ銅を含むゼオライト材料、及び好ましくは実施態様18又は19に記載の酸化物バインダーからなり、
前記第2コーティングの、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、前記第1酸化物材料、及び実施態様30から32のいずれか一項に記載の第2酸化物材料からなり、
前記第1酸化物材料の、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%はチタニアからなり、好ましくは、チタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有し、前記第2酸化物材料は、アルミナ及びシリカの1つ以上を含み、好ましくはアルミナ及びシリカの1つ以上からなる、実施態様1から37のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0136】
39.前記第1コーティングの、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、骨格型CHAを有し、かつ銅を含むゼオライト材料、及び好ましくは実施態様18又は19に記載の酸化物バインダーからなり、
前記第2コーティングの、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、前記第1酸化物材料、及び実施態様30から32のいずれか一項に記載の第2酸化物材料からなり、
前記第1酸化物材料の、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%はチタニア及び酸化タングステンからなり、好ましくは、チタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有し、前記第1酸化物材料の99~100質量%は、80~95質量%、より好ましくは85~92質量%のチタニア、及び5~20質量%、より好ましくは8~15質量%の酸化タングステンからなり、前記第2酸化物材料は、アルミナ及びシリカの1つ以上を含み、好ましくはアルミナ及びシリカの1つ以上からなる、実施態様1から37のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0137】
40.前記触媒において、前記第1コーティングは総装填量(l1)を有し、前記第2コーティングは総装填量(l2)を有し、前記第1コーティングの総装填量の前記第2コーティングの総装填量に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲、好ましくは0.75:1~3:1の範囲、より好ましくは1:1~2:1の範囲である、実施態様1から39のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0138】
41.前記フロースルー基材は、セラミック物質又は金属物質を含み、好ましくはセラミック物質又は金属物質からなる、実施態様1から40のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0139】
42.前記フロースルー基材は、セラミック物質を含み、好ましくはセラミック物質からなり、好ましくは、セラミック物質は、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライト又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、及びチタニアの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイド及びコーディエライトの1つ以上、より好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくはアルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライト又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、及びチタニアの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイド及びコーディエライトの1つ以上、より好ましくはコーディエライトからなる、実施態様41に記載の選択的接触還元触媒。
【0140】
43.前記フロースルー基材は、金属物質を含み、好ましくは金属物質からなり、好ましくは、金属物質が、酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含み、より好ましくは酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上からなる、実施態様41に記載の選択的接触還元触媒。
【0141】
44.前記基材は、2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲、好ましくは5.08~20.32cm(2~8インチ)の範囲、より好ましくは10.16~19.05cm(4~7.5インチ)の範囲、より好ましくは12.7~17.78cm(5~7インチ)の範囲の基材長さを有する、実施態様1から43のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0142】
45.前記基材は、10.16~43.18cm(4~17インチ)の範囲、好ましくは17.78~38.10cm(7~15インチ)の範囲、より好ましくは20.32~35.56cm(8~14インチ)の範囲、より好ましくは22.86~33.02cm(9~13インチ)の範囲、より好ましくは22.86~27.94cm(9~11インチ)の範囲の基材幅を有する、実施態様1から44のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0143】
46.前記選択的接触還元触媒の、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%は、前記フロースルー基材、前記第1コーティング及び前記第2コーティングからなる、実施態様1から45のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0144】
47.ディーゼルエンジンから出る排気ガス流を処理するための排気ガス処理システムであって、前記排気ガス処理システムは前記排気ガス流を前記排気ガス処理システムに導入するための上流端部を有し、前記排気ガス処理システムは、
(A)ディーゼル酸化触媒(DOC)であって、前記ディーゼル酸化触媒が基材に適用されたコーティングを含み、前記コーティングが、好ましくは、酸化物材料に担持されている、パラジウム、白金及びロジウムの1つ以上、より好ましくはパラジウム及び白金、より好ましくは白金を含む、ディーゼル酸化触媒(DOC)、
(B)1つ以上の実施態様1から46のいずれか一項に記載の選択的接触還元(SCR)触媒
を含み、
(A)による前記ディーゼル酸化触媒は、(B)による前記1つ以上の選択的接触還元触媒の上流に配置され、好ましくは、(A)によるディーゼル酸化触媒が、前記排気ガス処理システムの一番目の触媒であり、前記排気ガス処理システムの前記上流端部の下流に配置され、
前記排気ガス処理システムが、任意に、(A)による前記ディーゼル酸化触媒の下流及び(B)による前記1つ以上の選択的接触還元触媒の上流に配置される、フィルター、好ましくは触媒付すすフィルターをさらに含む、排気ガス処理システム。
【0145】
48.前記ディーゼル酸化触媒の前記コーティングに含まれる前記酸化物材料は、ジルコニア、アルミナ、チタニア及びシリカの1つ以上、好ましくはジルコニア及びチタニアの1つ以上、より好ましくはチタニアを含む、実施態様47に記載の排気ガス処理システム。
【0146】
49.前記ディーゼル酸化触媒の前記コーティングは、アルミナ、シリカ及びジルコニアの1つ以上、好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはアルミナ及びジルコニアをさらに含む、実施態様47又は48に記載の排気ガス処理システム。
【0147】
50.前記ディーゼル酸化触媒の前記コーティングの、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、酸化物材料、好ましくはチタニアに担持されているパラジウム、白金及びロジウムの1つ以上、並びに、好ましくはアルミナ、シリカ及びジルコニアの1つ以上、好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはアルミナ及びジルコニアからなる、実施態様47から49のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0148】
51.前記ディーゼル酸化触媒の前記コーティングは、0.11~1.10g/l(3~30g/ft3)の範囲、好ましくは0.18~0.71g/l(5~20g/ft3)の範囲、より好ましくは0.28~0.42g/l(8~12g/ft3)の範囲の前記触媒における装填量で、パラジウム、白金及びロジウムの1つ以上を含む、実施態様47から50のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0149】
52.前記ディーゼル酸化触媒の前記コーティングは、30.51g/l~305.1g/l(0.5~5g/in3)の範囲、好ましくは45.77~122.05g/l(0.75~2g/in3)の範囲、より好ましくは48.82~91.54g/l(0.80~1.5g/in3)の範囲の前記触媒における装填量で、パラジウム、白金及びロジウムの1つ以上を担持する前記酸化物材料を含む、実施態様47から51のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0150】
53.前記ディーゼル酸化触媒の前記基材は、フロースルー基材であり、セラミック物質又は金属物質を含み、好ましくはセラミック物質又は金属物質からなる、実施態様47から52のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0151】
54.前記フロースルー基材は、セラミック物質を含み、好ましくはセラミック物質からなり、好ましくは、前記セラミック物質が、好ましくはアルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライト又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、及びチタニアの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイド及びコーディエライトの1つ以上、より好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくはアルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライト又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、及びチタニアの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイド及びコーディエライトの1つ以上、より好ましくはコーディエライトからなるか、又は
前記フロースルー基材は、金属物質を含み、好ましくは金属物質からなり、好ましくは、前記金属物質が、酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含み、より好ましくは酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上からなる、実施態様54に記載の排気ガス処理システム。
【0152】
55.前記ディーゼル酸化触媒の前記基材は、2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲、好ましくは5.08~20.32cm(2~8インチ)の範囲、より好ましくは10.16~19.05cm(4~7.5インチ)の範囲、より好ましくは12.7~17.78cm(5~7インチ)の範囲の基材長さを有する、実施態様47から54のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0153】
56.前記ディーゼル酸化触媒の前記基材は、12.7~45.72cm(5~18インチ)の範囲、好ましくは20.32~40.64cm(8~16インチ)の範囲、より好ましくは25.4~35.56cm(10~14インチ)の範囲、より好ましくは27.94~33.02cm(11~13インチ)の範囲の基材幅を有する、実施態様47から55のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0154】
57.前記ディーゼル酸化触媒の、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、前記コーティング及び前記基材からなる、実施態様47から56のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0155】
58.前記1つ以上の選択的接触還元触媒(B)の下流に配置されるアンモニア酸化触媒をさらに含む、実施態様47から57のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【0156】
59.ディーゼルエンジンから出る排気ガス流を処理するための排気ガス処理システムであって、前記排気ガス処理システムは前記排気ガス流を前記排気ガス処理システムに導入するための上流端部を有し、前記排気ガス処理システムは、実施態様1から46のいずれか一項に記載の第1選択的接触還元触媒、並びに、ディーゼル酸化触媒、第2選択的接触還元触媒、アンモニア酸化触媒及びフィルターの1つ以上を含み、
前記ディーゼル酸化触媒、第2選択的接触還元触媒、アンモニア酸化触媒及びフィルターの1つ以上は、前記第1選択的接触還元触媒の下流に配置され、好ましくは、前記第1選択的接触還元触媒は、前記排気ガス処理システムの一番目の触媒であり、前記排気ガス処理システムの前記上流端部の下流に配置され、
より好ましくは、前記排気ガス処理システムは、前記第1選択的接触還元触媒、及び前記選択的接触還元触媒の下流に配置される、フィルター、より好ましくは触媒付パティキュレートフィルターを含むか、又は
より好ましくは、前記排気ガス処理システムは、前記第1選択的接触還元触媒、ディーゼル酸化触媒、及びフィルター、より好ましくは触媒付パティキュレートフィルターを含み、前記ディーゼル酸化触媒は、前記選択的接触還元触媒の下流及び前記フィルターの上流に配置される、排気ガス処理システム。
【0157】
60.選択的接触還元触媒、好ましくは実施態様1から46のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒を製造する方法であって、
(a)銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料の源、及び水を含む第1スラリーを製造する工程と、
(b)基材軸方向長さの40~100%にわたってフロースルー基材の内壁の表面に工程(a)で得られた前記第1スラリーを適用して、スラリー処理基材を得る工程であって、前記フロースルー基材が、入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びる基材の内壁によって規定される複数の通路を含み、前記基材の前記内壁の表面が前記内壁と前記通路との間の界面を規定する、工程と、
(c)工程(b)で得られた前記スラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティングを有する基材を得る工程と、
(d)任意に、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材をか焼する工程と、
(e)チタニアを含む第1酸化物材料、及び水を含む第2スラリーを製造する工程であって、前記第1酸化物材料が任意に、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化タングステンを含み、前記第2スラリーが、好ましくは第2酸化物材料を含む、工程と、
(f)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって、好ましくは前記基材の前記入口端部から前記基材の前記出口端部に向かって、工程(e)で得られた前記第2スラリーを、工程(c)で得られた、任意に工程(d)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材に適用して、スラリー処理基材を得る工程と、
(g)工程(f)で得られた前記スラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材を得る工程と、
(h)工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する前記基材をか焼して、選択的接触還元触媒を得る工程であって、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなり、前記第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなる、工程と
を含む、方法。
【0158】
61.工程(a)は、
(a.1)酸化物バインダー、好ましくはジルコニルアセテートを、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料及び水と混合して、第1スラリーを得ることと、
(a.2)3~15マイクロメーターの範囲、好ましくは5~13マイクロメーターの範囲、より好ましくは8~12マイクロメーターの範囲の、参考例1に記載されているように決定された粒径Dv90に、(a.1)で得られた前記第1スラリーを粉砕することと
を含む、実施態様60に記載の方法。
【0159】
62.工程(c)によれば、工程(b)で得られた前記スラリー処理基材は、90~200℃の範囲、好ましくは100~150℃の範囲、より好ましくは110~130℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中で乾燥される、実施態様60又は61に記載の方法。
【0160】
63.工程(c)によれば、工程(b)で得られた前記スラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、5~60分間の範囲、好ましくは10~20分間の範囲の持続時間で乾燥される、実施態様60から62のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
64.工程(c)によれば、工程(b)で得られた前記スラリー処理基材は、90~200℃の範囲、好ましくは130~190℃の範囲、より好ましくは155~175℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でさらに乾燥される、実施態様62又は63に記載の方法。
【0162】
65.工程(c)によれば、工程(b)で得られた前記スラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、10~80分間の範囲、好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でさらに乾燥される、実施態様62から64のいずれか一項に記載の方法。
【0163】
66.工程(c)における前記ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である、実施態様62から65のいずれか一項に記載の方法。
【0164】
67.工程(d)によれば、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材は、300~600℃の範囲、好ましくは350~550℃の範囲、より好ましくは400~500℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でか焼される、実施態様60から66のいずれか一項に記載の方法。
【0165】
68.工程(d)によれば、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材は、ガス雰囲気中で、10~80分間の範囲、好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でか焼される、実施態様60から67のいずれか一項に記載の方法。
【0166】
69.工程(d)における前記ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である、実施態様67又は68に記載の方法。
【0167】
70.工程(e)は、
(e.1)チタニアを含み、任意に酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化タングステンを含む第1酸化物材料を、好ましくはアルミナ及びシリカの1つ以上を含む第2酸化物材料、有機分散剤及び水と混合することと、
(e.2)水酸化アンモニウム溶液の添加により、pHを、3.0~7.0の範囲、好ましくは5.0~6.0の範囲の値に調整して、第2スラリーを得ることと、
を含む、実施態様60から69のいずれか一項に記載の方法。
【0168】
71.工程(g)によれば、工程(f)で得られた前記スラリー処理基材は、90~200℃の範囲、好ましくは100~150℃の範囲、より好ましくは110~130℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中で乾燥される、実施態様60から70のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
72.工程(g)によれば、工程(f)で得られた前記スラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、5~60分間の範囲、好ましくは10~20分間の範囲の持続時間で乾燥される、実施態様60から71のいずれか一項に記載の方法。
【0170】
73.工程(g)によれば、工程(f)で得られた前記スラリー処理基材は、90~200℃の範囲、好ましくは130~190℃の範囲、より好ましくは155~175℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でさらに乾燥される、実施態様71又は72に記載の方法。
【0171】
74.工程(g)によれば、工程(f)で得られた前記スラリー処理基材は、ガス雰囲気中で、10~80分間の範囲、好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でさらに乾燥される、実施態様71から73のいずれか一項に記載の方法。
【0172】
75.工程(g)における前記ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である、実施態様71から74のいずれか一項に記載の方法。
【0173】
76.工程(h)によれば、工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する前記基材は、300~600℃の範囲、好ましくは350~550℃の範囲、より好ましくは400~500℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でか焼される、実施態様60から75のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
77.工程(h)によれば、工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する前記基材は、ガス雰囲気中で、10~80分間の範囲、好ましくは20~40分間の範囲の持続時間でか焼される、実施態様60から76のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
78.工程(h)における前記ガス雰囲気は、空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、希薄空気及び酸素の1つ以上、より好ましくは空気である、実施態様76又は77に記載の方法。
【0176】
79.噴霧又は前記基材を浸漬することによって、好ましくは前記基材を浸漬することによって、前記第1スラリー及び前記第2スラリーの1つ以上を適用することを含む、実施態様60から78のいずれか一項に記載の方法。
【0177】
80.前記基材軸方向長さの90~100%、好ましくは95~100%、より好ましくは99~100%にわたって、好ましくは前記基材の前記入口端部から前記基材の前記出口端部に向かって又は好ましくは前記基材の前記出口端部から前記基材の前記入口端部に向かって、工程(a)で得られた前記第1スラリーを適用することを含む、実施態様60から79のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
81.前記基材軸方向長さの90~100%、好ましくは95~100%、より好ましくは99~100%にわたって、前記基材の前記入口端部から前記基材の前記出口端部に向かって、又は
前記基材軸方向長さの20~90%、好ましくは30~80%、より好ましくは40~60%、より好ましくは45~55%、より好ましくは48~52%にわたって、前記基材の前記入口端部から前記基材の前記出口端部に向かって、工程(f)で得られた前記第2スラリーを適用することを含む、実施態様60から80のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
82.前記基材軸方向長さの40~50%、好ましくは45~50%、より好ましくは48~50%にわたって、前記基材の前記出口端部から前記基材の前記入口端部に向かって、工程(a)で得られた前記第1スラリーを適用すること、及び前記基材軸方向長さの40~50%、好ましくは45~50%、より好ましくは48~50%にわたって、前記基材の前記入口端部から前記基材の前記出口端部に向かって、工程(f)で得られた前記第2スラリーを適用することを含む、実施態様60から79のいずれか一項に記載の方法。
【0180】
83.(a)銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料の源、及び水を含む第1スラリーを製造する工程と、
(b)基材軸方向長さの40~100%にわたってフロースルー基材の内壁の表面に工程(a)で得られた前記第1スラリーを適用して、スラリー処理基材を得る工程であって、前記基材が、入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びる基材の内壁によって規定される複数の通路を含み、前記基材の内壁の表面が前記内壁と前記通路との間の界面を規定する、工程と、
(c)工程(b)で得られた前記スラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティングを有する基材を得る工程と、
(d)任意に、工程(c)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材をか焼する工程と、
(e)チタニアを含む第1酸化物材料、及び水を含む第2スラリーを製造する工程であって、前記第1酸化物材料が任意に、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化タングステンを含み、前記第2スラリーが、好ましくは第2酸化物材料を含む、工程と、
(f)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって、好ましくは前記基材の前記入口端部から前記基材の前記出口端部に向かって、工程(e)で得られた前記第2スラリーを、工程(c)で得られた、任意に工程(d)で得られたそれに適用された第1コーティングを有する前記基材に適用して、スラリー処理基材を得る工程と、
(g)工程(f)で得られた前記スラリー処理基材を乾燥させて、それに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する基材を得る工程と、
(h)工程(g)で得られたそれに適用された第1コーティング及び第2コーティングを有する前記基材をか焼して、選択的接触還元触媒を得る工程であって、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなり、前記第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなる、工程と
からなる、実施態様60から82のいずれか一項に記載の方法。
【0181】
84.実施態様60から83のいずれか一項に記載の方法、好ましくは実施態様83に記載の方法により得ることができる又は得られる、選択的接触還元触媒、好ましくは実施態様1から46のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。
【0182】
85.実施態様1から46及び84のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒を、好ましくはディーゼルエンジンからの排気ガス流に含まれる窒素酸化物の選択的触媒還元に使用する方法。
【0183】
86.実施態様47から59のいずれか一項に記載の排気ガス処理システムを、ディーゼルエンジンからの排気ガス流の処理に使用する方法。
【0184】
87.窒素酸化物を選択的触媒還元する方法であって、前記窒素酸化物が排気ガス流に含まれ、前記方法が、
(1)好ましくはディーゼルエンジンからの排気ガス流を提供する工程と、
(2)工程(1)で提供された前記排気ガス流を、実施態様1から46及び84のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒に通過させる工程と、
を含む、方法。
【0185】
88.ディーゼルエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、前記方法が、
(1’)前記排気ガス流を提供する工程と、
(2’)工程(1’)で提供された前記排気ガス流を、実施態様47から59のいずれか一項に記載の排気ガス処理システムに通過させる工程と、
を含む、方法。
【0186】
本発明の文脈において、「内壁の表面」という用語は、壁の「覆いのない」又は「飾りのない」又は「空白の」表面、すなわち、表面を汚染する可能性のある任意の避けられない不純物は別として、壁の材料からなる未処理の状態での壁の表面として理解されるべきである。
【0187】
以下の実施例、参考例及び比較例により、本発明をさらに説明する。
【実施例0188】
参考例1:Dv90値の決定
Sympatec HELOS装置を使用して静的光散乱法によって、粒径分布を決定し、ここで、サンプルの光学濃度が5~10%の範囲であった。
【0189】
参考例2:Cu-CHAゼオライトの製造
US 8 293 199 B2の教示に従って、Cuを含む骨格構造型CHAを有し、かつ本明細書の実施例に使用されるゼオライト材料を製造した。特に、US 8 293 199 B2,コラム15,26~52頁の実施例2を参照した。
【0190】
参考例3:DOC触媒の製造
最初に、アルミナ(デルタ及びシータ相;95m2/gのBET比表面積、0.47ml/gの総細孔容積、及び125マイクロメーターのDv90)を、アルミナ量の2質量%に相当する量の硝酸(50%溶液)と組み合わせて滴下した。硝酸の後、固形分が93質量%に達するまで蒸留水をアルミナに添加し、アルミナ混合物を形成した。
【0191】
これとは別に、蒸留水、酢酸(白金前駆体溶液の体積の4倍の量をチタニアに添加した)及び水酸化ジルコニウム(52質量%の固形分、>30m3/gのBET比表面積、及び45マイクロメーターのDv90;ZrO2として計算されたジルコニアの総質量は、か焼後の触媒の最終質量の12質量%を示す)を一緒に混合した。酢酸の添加によって、この混合物のpHを3.5に調整した。この混合物に、アルミナ混合物をジルコニアアセテート溶液(30質量%の固形分、ZrO2として計算されたジルコニアアセテートからのジルコニア総質量は、か焼後の触媒の最終質量の3質量%を示す)と一緒に添加した。酢酸を添加して、得られたスラリーのpHを3.5に調整した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、スラリーを粉砕した。
【0192】
これとは別に、蒸留水とモノエタノールアミン(MEA)の溶液(チタニアの乾燥量の0.2%)、及び16.6質量%の固形分を有する白金前駆体、すなわち、アミン安定化ヒドロキソPt(IV)錯体を混合した。この混合物に、チタニア(TiO2、アナターゼ相、110m2/gのBET比表面積及び>10nmの平均細孔径を有する)を添加して、スラリーを形成した。か焼後の触媒中の最終的なチタニア装填量は1g/in3に相当した。さらに、酢酸と蒸留水との1:1の混合物(白金前駆体溶液の1/5の体積)をこのスラリーに添加した。
【0193】
粉砕したアルミナ-ジルコニアのスラリーをPt-チタニアのスラリーに添加した。その後、蒸留水とスクロースとの1:1の混合物(か焼後の触媒の最終質量の0.6質量%)もスラリーに添加した。この次に、オクタノール(か焼後の触媒の最終質量の2質量%)を添加した。さらに、アルミナバインダー(80質量%の固形分、185m2/gのBET比表面積、45マイクロメーターのDv80)をか焼後の触媒の最終質量の0.1質量%の量で添加した。最後に、モノエタノールアミン(MEA)(か焼後の触媒中の最終的なチタニア装填量の1質量%)を再び得られたスラリーに添加し、蒸留水を添加して、41質量%の最終スラリーの固形分を得た。
【0194】
次に、以下の参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径30.48cm(12インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり300/(2.54)2セル、及び0.127ミリメートル(5ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、最終スラリーを適用した。その後、基材を、125℃の温度で15分間、165℃で30分間乾燥させ、590℃の温度で30分間か焼した。か焼後の触媒中のウオッシュコート装填量は、106.79g/l(1.75g/in3)であり、61.02g/l(1.0g/in3)のチタニア、29.47g/l(0.483g/in3)のデルタ/シータアルミナ、15.26g/l(0.25g/in3)のジルコニア、及び1.04g/l(0.017g/in3)のアルファ-アルミナを含んでいた。か焼後の触媒中の白金含有量は、10g/ft3であった。
【0195】
参考例4:一般的なコーティング方法
フロースルー基材を1つ以上のコーティングでコーティングするために、フロースルー基材を、基材の特定の長さで、所定のスラリーの一部に垂直に浸漬した。このようにして、ウォッシュコートは基材の壁に接触した。サンプルを、特定の期間、通常1~10秒間、スラリー中に放置した。真空を適用して、スラリーを基材中に引き込んだ。次に、基材をスラリーから取り出し、反転させ、基材から排出させることによって過剰なスラリーを基材から除去し、次に、より良好な分布のために圧縮空気を吹き付けた。
【0196】
実施例1:SCR触媒の製造
a)本発明による新鮮なSCR触媒の製造
第1コーティング(底部コーティング)
30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が7.02g/l(0.115g/in3)であるように、本質的に参考例2のように製造し、133.34g/l(2.185g/in3)のか焼後の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。
【0197】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートル(3.4ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、第1コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第1コーティングのウオッシュコート装填量は、140.35g/l(2.3g/in3)であり、133.34g/l(2.185g/in3)のCu-CHA、及び7.02g/l(0.115g/in3)のジルコニアを含んでいた。
【0198】
第2コーティング(トップコーティング)
水、及び0.11g/in3のか焼後の触媒中の最終的なSi含有アルミナ装填量に対応するSi含有ガンマ-アルミナ(5質量%のシリカ、180m2/gのBET比表面積、90マイクロメーターのDv90、0.63ml/gの総細孔容積を有するガンマ-Al2O3)を用いて、40質量%の固形分を有する混合物を製造し、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が12マイクロメーターになるまで粉砕した。
【0199】
これとは別に、蒸留水を、39質量%の活性含有量及び8のpHを有する有機分散剤と混合した。チタニア(TiO2として)の乾燥質量に基づいて3質量%として、分散剤の量を計算した。か焼後の触媒中の最終的なチタニア装填量が1.05g/in3になるように、これに、チタニア(TiO2-アナターゼ相)を添加してチタニアスラリーを形成した。次に、ガンマ-アルミナ混合物を、0.01g/in3のか焼後の触媒中の最終装填量に対応する量で、チタニアコロイド結合剤(17質量%の固形分、1のpH、35マイクロメーターのD50)と共にチタニアスラリーに添加した。
【0200】
水酸化アンモニウム溶液を添加することにより、pHを5.0に設定した。最後に、か焼後の触媒中のシリカの最終装填量が0.03g/in3であるように、コロイド状シリカバインダー(40質量%の固形分、9.25のpH、142m2/gのBET比表面積)をスラリーに添加した。蒸留水も添加して、38質量%の固形分を有する最終スラリーを得た。
【0201】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって最終スラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、73.23g/l(1.2g/in3)であり、64.69g/l(1.06g/in3)のチタニア、6.71g/l(0.11g/in3)のSi安定化ガンマ-アルミナ、及び1.83g/l(0.03g/in3)のシリカを含んでいた。
【0202】
b) a)で得られた触媒のエージング
a)で得られた触媒を、空気中650℃で50時間さらにエージングした。
【0203】
比較例1:本発明によらないSCR触媒の製造
第1コーティング(底部コーティング)
30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が3.97g/l(0.065g/in3)であるように、本質的に参考例2のように製造し、75.67g/l(1.24g/in3)の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。
【0204】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートル(3.4ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、第1コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第1コーティングのウオッシュコート装填量は、79.63g/l(1.305g/in3)であり、75.67g/l(1.24g/in3)のCu-CHA、及び3.97g/l(0.065g/in3)のジルコニアを含んでいた。
【0205】
第2コーティング(トップコーティング)
1.52g/in3のか焼後の触媒中の最終的なFe-BEA装填量に対応するFe-BEAゼオライト(Fe2O3として計算されたFeが1.5質量%、SiO2:Al2O3モル比が40)、蒸留水、及び7のpHを有する有機分散剤を用いて、44質量%の固形分を有する混合物を製造した。固形分を44質量%に固定した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が5マイクロメーターになるまで、スラリーを粉砕した。その後、1.52g/in3のか焼後の触媒中の最終的なFe-MFI装填量に対応するFe-MFIゼオライト(Fe2O3として計算されたFeが3.5質量%、SiO2:Al2O3モル比が27.5)を、か焼後の触媒中の最終的なシリカ装填量が9.15g/l(0.15g/in3)であるように、コロイド状シリカバインダー(40質量%の固形分、9.25のpH、142m2/gのBET比表面積)と共にスラリーに添加した。か焼後の触媒中の最終的なアルミナ装填量が0.004g/in3であるように、アルファ-アルミナもこれに添加した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が6マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。
【0206】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって得られたスラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、195.28g/l(3.2g/in3)であり、92.76g/l(1.52g/in3)のFe-BEA、92.76g/l(1.52g/in3)のFe-MFI、0.244g/l(0.004g/in3)のアルファ-アルミナ及び9.15g/l(0.15g/in3)のシリカを含んでいた。
【0207】
比較例2:本発明によらないSCR触媒の製造
a)本発明によらない新鮮なSCR触媒の製造
30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が0.225g/in3であるように、本質的に参考例2のように製造し、4.275g/in3の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。
【0208】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートル(3.4ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中のウオッシュコート装填量は、274.60g/l(4.5g/in3)であり、260.88g/l(4.275g/in3)のCu-CHA、及び13.73g/l(0.225g/in3)のジルコニアを含んでいた。
【0209】
b) a)で得られた触媒のエージング
a)で得られた触媒を、空気中650℃で50時間エージングした。
【0210】
実施例2:実施例1及び比較例1~2のSCR触媒の使用-NOx変換/N
2O形成
テストのために、平行に配置された2つの実施例1によるSCR触媒の上流に配置された参考例3に記載のように得られたDOCを含むシステム、及び平行に配置された2つの比較例1によるSCR触媒の上流に配置された参考例3に記載のように得られたDOCを含むシステム、及び2つの比較例2による触媒を使用するシステムを製造した。実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下(WHTC-世界調和試験サイクル-高温相)で、これらのシステムを評価した。排気を30分間蓄積し、高温相サイクルに基づいてSCR触媒の出口端部で30分後に変換されたNOx及び形成されたN
2Oを計算するために統合した。測定条件を
図1に示し、結果を
図2に示す。
【0211】
図2からわかるように、実施例1の新鮮な触媒で測定されたNOx変換は5.32g/kWhであり、N
2O形成は0.053g/kWhであった。比較例1の新鮮な触媒で測定されたNOx変換は4.94g/kWhであり、N
2O形成は0.053g/kWhであった。これは、本発明のSCR触媒が、その第2コーティング(トップコーティング)にFe-ゼオライトを含む層状SCR触媒と比較して、新鮮な条件下で低いN
2O生成を維持しながら、改善されたNOx変換を達成することを示している。さらに、実施例1のエージングした触媒で測定されたNOx変換は5.327g/kWhであり、N
2O形成は0.076g/kWhであった。比較例2のエージングした触媒で測定されたNOx変換は5.453g/kWhであり、N
2O形成は0.115g/kWhであった。これは、本発明のSCR触媒が、Cu-CHAを含むSCR触媒と比較して、良好なNOx変換を示すと同時に、低減されたN
2O生成(~33.6%)を達成することを示している。
【0212】
この実施例は、本発明の触媒が、実際の条件下で低いN2O生成を維持しながら、優れたNOx変換を示すことを実証している。
【0213】
実施例3:SCR触媒の製造
a)本発明による新鮮なSCR触媒の製造
第1コーティング(底部コーティング)
30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が6.41g/l(0.105g/in3)であるように、本明細書の参考例2に従って製造し、121.74g/l(1.995g/in3)のか焼後の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。
【0214】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり400/(2.54)2セル、及び0.152ミリメートル(6ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、第1コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で20分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第1コーティングのウオッシュコート装填量は、128.15g/l(2.1g/in3)であり、121.74g/l(1.995g/in3)のCu-CHA、及び6.41g/l(0.105g/in3)を含んでいた。
【0215】
第2コーティング(トップコーティング)
か焼後の触媒中のチタニア+タングステンの装填量が1.43g/in3であるように、チタニア(TiO2、アナターゼ相、90質量%、及び10質量%のWO3として計算されたタングステン、90m2/gのBET比表面積、8.6マイクロメーターのDv90)を、蒸留水、及び39質量%の活性含有量及び8のpHを有する有機分散剤と混合した。有機分散剤の量を、か焼後の触媒中のチタニア+酸化タングステンの最終装填量の5%に設定し、最終スラリーの固形分を46質量%に調整した。水酸化アンモニウム溶液を添加することにより、pHを6.3に設定した。最後に、か焼後の触媒中の最終的なシリカ装填量が0.07g/in3であるように、シリカをスラリーに添加した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が2マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを混合した。
【0216】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって得られたスラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、91.53g/l(1.5g/in3)であり、87.26g/l(1.43g/in3)のチタニア+酸化タングステン、及び4.27g/l(0.07g/in3)のシリカを含んでいた。
【0217】
b) a)で得られた触媒のエージング
a)で得られた触媒を、10体積%のH2O及び10体積%のO2を有する空気中で、550℃で100時間さらにエージングした。
【0218】
比較例3:本発明によらないSCR触媒の製造
a)本発明によらない新鮮なSCR触媒の製造
第1コーティング(底部コーティング)
実施例3の第1コーティングのように、第1コーティングを製造した。
【0219】
第2コーティング(トップコーティング)
V2O5として計算された0.0375g/in3のか焼後の触媒中の最終的なバナジア装填量に対応するバナジウムオキザラート溶液(3%のバナジウム)を蒸留水と混合し、1.392g/in3のか焼後の触媒中の最終的なタングステン-チタニア装填量に対応するチタニア(TiO2、アナターゼ相、90質量%、及び10質量%のWO3、90m2/gのBET比表面積、8.6マイクロメーターのDv90)をゆっくりと添加し、5分間混合した。その後、39質量%の活性含有量及び8のpHを有する有機分散剤を添加した。有機分散剤の量を、か焼後の触媒中の最終的なチタニア+タングステン装填量の5質量%として計算した。最終スラリーの固形分を46質量%に設定した。水酸化アンモニウム溶液を添加することにより、pHを5.0に設定した。最後に、か焼後の触媒中の最終的なシリカ装填量が0.07g/in3であるように、シリカをスラリーに添加した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が2マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを混合した。
【0220】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって最終スラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、92.14g/l(1.51g/in3)であり、85.43g/l(1.4g/in3)のチタニア+酸化タングステン、4.27g/l(0.07g/in3)のシリカ、及び2.29g/l(0.0375g/in3)のバナジウム(V2O5として計算する)を含んでいた。
【0221】
b) a)で得られた触媒のエージング
a)で得られた触媒を、10体積%のH2O及び10体積%のO2を有する空気中で、550℃で100時間さらにエージングした。
【0222】
比較例4:本発明によらないSCR触媒の製造
a)本発明によらない新鮮なSCR触媒の製造
30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が6.41g/l(0.105g/in3)であるように、本明細書の参考例2に従って製造し、121.74g/l(1.995g/in3)のか焼後の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。
【0223】
次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり400/(2.54)2セル、及び0.152ミリメートル(6ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で20分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中のウオッシュコート装填量は、128.15g/l(2.1g/in3)であり、121.74g/l(1.995g/in3)のCu-CHA、及び6.41g/l(0.105g/in3)を含んでいた。
【0224】
b) a)で得られた触媒のエージング
a)で得られた触媒を、10体積%のH2O及び10体積%のO2を有する空気中で、550℃で100時間エージングした。
【0225】
実施例4:実施例3及び比較例3~4のSCR触媒の使用-NOx変換及びN
2O生成
テストのために、実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下(WHTC-世界調和試験サイクル)で、実施例3及び比較例3~4のSCR触媒をそれぞれ評価した。サイクルを30回繰り返した(WHTC-第1サイクルが低温相で、その後のサイクルが高温相で)。排気を30分間蓄積し、SCR触媒の出口端部で30分後に変換されたNOx及び形成されたN
2Oを計算するために統合した。高温相サイクルに基づいて、N
2O生成のNOx変換に対する比をさらに計算した。測定条件を
図3に示しており、結果を以下の表1~4に示している。
【0226】
【0227】
【0228】
表1及び2からわかるように、実施例3の新鮮な触媒により、実際の排気ガス条件下で、NOx変換とN2O生成との間の優れたバランスを得ることができる。特に、これは、0.022~0.030の亜酸化窒素生成のNOx変換に対する低い比によって示される。さらに、NOx変換、及び0.024g/kWhを超えないN2O生成は、30サイクル後も安定する。それと比較して、比較例4の新鮮な触媒は、サイクル後に安定性の低いNOx変換を示し、特に、新鮮な条件下で0.042~0.054g/kWhの高いN2O(これは本発明によるN2O生成の2倍である)を示す。亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約3倍高い。さらに、比較例3の新鮮な触媒は、安定なNOx変換を示すが、本発明の触媒と比較して低いNOx変換、及び新鮮な条件下で、特に本発明の触媒と比較して1.5~1.8倍高いN2O生成を示し、亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約2倍高い。これらの表は、実施例3の新鮮な触媒が、実際の排気ガス条件下で、比較例の触媒と比較して、改善された触媒性能を示すことを実証している。
【0229】
【0230】
【0231】
表3及び4からわかるように、実施例3のエージングした触媒によっても、実際の排気ガス条件下で、NOx変換とN2O生成との間の優れたバランスを得ることができる。特に、これは、0.028~0.037の亜酸化窒素生成のNOx変換に対する低い比によって示される。さらに、NOx変換、及び0.017g/kWhを超えないN2O生成は、30サイクル後も安定する。それと比較して、比較例4のエージングした触媒で得られたNOx変換はサイクル後に約14%減少し、N2O生成は本発明の触媒で得られたものよりも少なくとも2倍高い。したがって、亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約2倍高い。さらに、比較例3のエージングした触媒は、本発明の触媒よりもわずかに高い安定なNOx変換を示す。しかしながら、N2O生成は、本発明の触媒を使用する場合に測定したN2O生成より約4倍高い。亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約3.5~3.7倍高い。これらの結果は、実施例3の触媒(新鮮及びエージングした)が、実際の排気ガス条件下で、比較例の触媒と比較して、改善された触媒性能を示すことを実証している。
【0232】
実施例4は、本発明のSCR触媒(新鮮及びエージングした)の特定の組成が、実際の排気ガス条件下で、N2O生成を低減することを可能にすると同時に、優れたNOx変換を得ることができることを実証している。これは、本発明のSCR触媒が改善された触媒性能を有し、安定であり、また硫酸化に対してより耐性があることを示している。
【0233】
引用文献
- Yisun Chengら,ディーゼルSCR触媒の耐硫黄性及びDeSOx研究,SAE International Journal Fuels and Lubricants 1(1),471~476頁,2008年
- Krishna Kamasamudramら,ディーゼル後処理システムにおけるN2Oの形成及び緩和,Cummins Inc.,SAE International Journal Engines 5(2),688~698頁,2012年
- Ashok Kumarら,ゼオライトベースのSCR触媒の触媒機能及び硫酸化挙動に及ぼす遷移金属イオン特性の影響,SAE International Journal Engines 10(4),1604~1612頁,2017年
- US 8 293 199 B2
- US 5 047 378 B
- CN 105 944 755 A