(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095748
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】テネリグリプチン塩のアモルファス形態及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 417/14 20060101AFI20240703BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240703BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20240703BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
A61K31/496
A61P3/10
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061235
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020067296の分割
【原出願日】2020-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】500515071
【氏名又は名称】金剛化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康子
(72)【発明者】
【氏名】山田 明広
(72)【発明者】
【氏名】湯島 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 亮平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】横田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】金森 俊樹
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC82
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA13
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA07
4C086ZC20
4C086ZC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶媒残留量の少ないテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】残留溶媒の含有量が2000ppm以下である、式(I)で表される、3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジンの、n臭化水素酸塩(テネリグリプチン・n臭化水素酸塩)のアモルファス形態において、nは臭化水素酸のテネリグリプチンに対するモル比であり、2.0~3.0であるアモルファス形態、及びその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留溶媒の含有量が2000ppm以下である、式(I):
【化1】
で表される、3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジンの、n臭化水素酸塩(テネリグリプチン・n臭化水素酸塩)のアモルファス形態において、nは臭化水素酸のテネリグリプチンに対するモル比であり、2.0~3.0であるアモルファス形態。
【請求項2】
nが2.3~2.7である請求項1に記載のアモルファス形態。
【請求項3】
nが2.5である請求項2に記載のアモルファス形態。
【請求項4】
残留溶媒が、貧溶媒、及びアルコール類を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアモルファス形態。
【請求項5】
貧溶媒が酢酸エステル類を含み、アルコール類がエタノールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアモルファス形態。
【請求項6】
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項7】
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項8】
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液の溶媒がアルコール類である請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液の溶媒がアルコール類である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
式(II):
【化2】
で示される3-{(2S,4S)-1-(1,1-ジメチルエチルオキシカルボニル)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン(Boc-テネリグリプチン)のt-ブトキシカルボニル(t-Boc)基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項11】
Boc-テネリグリプチンのt-Boc基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項12】
テネリグリプチン・塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項13】
テネリグリプチン・塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項14】
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩またはテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアルコール溶液に、貧溶媒を加える時の温度が-50~10℃である請求項8、10、または12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記温度が-30~-10℃である請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩またはテネリグリプチン臭化水素酸塩のアルコール溶液を、貧溶媒に加える時の温度が-50~10℃である請求項9、11、または13に記載の製造方法。
【請求項17】
前記温度が-30~-10℃である請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
アルコール類がメタノール、エタノール、2-メチルエタノール、及び1-プロパノールから選ばれる一以上である請求項8~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
貧溶媒が、炭化水素、ケトン、エステル、及びエーテル系溶媒から選ばれる一以上である請求項6~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
貧溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びメチルt-ブチルエーテルから選ばれる一以上である請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のエタノール溶液に、酢酸エチルを加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項22】
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のエタノール溶液を、酢酸エチルに加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項23】
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項24】
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアモルファス形態の、製造方法。
【請求項25】
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液中の臭化水素が、テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩に対して0.5~1等量である請求項23または24に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留溶媒の含有量が少ないテネリグリプチン[化学名:3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン]のn臭化水素酸塩(以下、テネリグリプチン・n臭化水素酸塩)のアモルファス形態、及びその製造方法に関する。ここで、nは臭化水素酸のテネリグリプチンに対するモル比であり、2.0~3.0である。
【背景技術】
【0002】
物質を構成する単位(分子、原子、イオン)が3次元に規則正しく配列した固体は結晶と呼ばれ、一方物質を構成する単位が規則正しく配列していない固体は非晶質或いはアモルファスと呼ばれる。アモルファスは化学ポテンシャル及び分子運動性が高い為、結晶状態と比較して物性が大きく異なっており、とりわけ水への溶解速度ひいては薬物の吸収改善が期待できることから非晶質を用いた医薬品の開発は盛んに行われており、アモルファス形態は医薬品効果の改善において重要な役割を果たす(非特許文献1)。
【0003】
テネリグリプチン[化学名称:3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン:式(I)]:
【化1】
の2.5臭化水素酸塩水和物は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(Dipeptidyl peptidase-4(以下、「DPP-4」)選択的阻害薬であり、DPP-4によるグルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-like peptide-1、以下「GLP-1」)の分解を抑制し、活性型GLP-1の血中濃度を上昇させ、血糖依存的にインスリン分泌を促進すると共にグルカゴン分泌を抑制することで血糖降下作用を発揮する2型糖尿病治療薬であり、その固体形態については以下の様な報告がされている(特許文献1、2、特許非文献2)。
【0004】
特許文献3では、下記式(II)で表される、t-ブトキシカルボニル(Boc)-テネリグリプチンのBoc基を48%臭化水素酸での処理により脱保護、エタノールで再結晶によりテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩水和物を調製している。得られた結晶は粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される回折角度として、5.4°,13.4°及び14.4°(それぞれ±0.2°)にピークを有する。この結晶性の塩の製造方法は、再現性のある商業的製造方法として優れている。
【化2】
【0005】
特許文献4には、前述したように結晶性のテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩よりも優れた薬物吸収が期待できるアモルファスの製造方法が記載されている。この特許文献ではテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩の水溶液或いはエタノール溶液を使用したスプレードライ法或いは凍結乾燥法によりアモルファスを製造している。これらの方法は、スプレードライヤー及び凍結乾燥機を使用し設定されたパラメータを管理することで安定にアモルファスを調製できる。しかし、アモルファスを大量スケールで調製するには特殊な製造設備が必要となる。更に、これらの装置の処理量は、原薬のバルク乾燥機と比較して小さい事から製造量が制限されるという問題がある。
【0006】
また、特許文献4には旋回式濃縮装置(エバポレーター等)を使用した濃縮乾固法でテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のエタノール溶液からアモルファスを調製する方法が記載されている。この方法は簡便にアモルファスを調製することが可能であるが、乾燥機内壁面に固体が固着するため、固体の排出は製造スケールが上がるにつれて困難になり実際の製造には向かない。
【0007】
本発明者らは、特許文献4に記載されている方法、すなわち濃縮乾固法によりテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩水和物のエタノール溶液からアモルファスを製造した。得られたアモルファスの残留溶媒量は、10000ppm以上であり、乾燥条件をより高温や減圧にしても改善は認められなかった。この様に多量の溶媒が残留するアモルファスを医薬品として使用すると、安全性の観点から問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許1997538453号
【特許文献2】特許4101053号
【特許文献3】特許4208938号
【特許文献4】中国特許108727364号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】低温生物工学 会誌、[Cryobiology and Cryotechnology],Vol.51,No.1,19~24,2005)
【非特許文献2】Bioorganic & Medicinal Chemistry,20(2012) 5705-5719.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、残留溶媒の含有量が少ない、テネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、残留溶媒の含有量が2000ppm以下である、上記式(I)で表される、3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジンの、n臭化水素酸塩(テネリグリプチン・n臭化水素酸塩)のアモルファス形態において、nは臭化水素酸のテネリグリプチンに対するモル比であり、2.0~3.0であるアモルファス形態である。
【0012】
また本発明は、以下に示す、テネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の製造方法[1]~[8]である。
【0013】
[1]テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【0014】
[2]テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【0015】
[3]式(II)で示される3-{(2S,4S)-1-(1,1-ジメチルエチルオキシカルボニル)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン(Boc-テネリグリプチン)のt-ブトキシカルボニル(t-Boc)基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【0016】
[4]Boc-テネリグリプチンのt-Boc基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【0017】
[5]テネリグリプチン・塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【0018】
[6]テネリグリプチン・塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【0019】
[7]テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【0020】
[8]テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、残留溶媒量の低減されたテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態を提供することができる。本発明により、残留溶媒量を2000ppm以下に抑えたテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態を提供することができる。さらに、本発明により、従来のように煩雑な操作や特別な装置を必要とせず、効率的に、残留溶媒量の低減されたテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態を製造可能な方法を提供することができる。ここでnは、2.0~3.0、2.3~2.7、または2.5でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1で得られたアモルファスのXRDデータである。
【
図2】比較例1で得られたアモルファスのXRDデータである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明について、以下詳細に説明する。
【0024】
本発明は、残留溶媒の含有量が2000ppm以下である、式(I)で表される、3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジンの、n臭化水素酸塩(テネリグリプチン・n臭化水素酸塩)のアモルファス形態に関する。
【0025】
本発明において、「テネリグリプチン・n臭化水素酸塩」の「n」は、臭化水素酸のテネリグリプチンに対するモル比であり、2.0~3.0、2.3~2.7、または2.5とすることができる。ここで、2.0~3.0の範囲には、例えば、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0が含まれる。
【0026】
残留溶媒とは、本発明のテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態の製造において使用する貧溶媒、及びアルコール類であり、残留溶媒の含有量は、ガスクロマトグラフィー等の従来公知の方法により測定することができる。本発明のアモルファス形態の残留溶媒の含有量は、2000ppm以下であり、800ppm以下、または600ppm以下とすることもできる。
【0027】
本発明のテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアモルファス形態は、以下に示す本発明の製造方法[1]~[8]により製造することができる。
[1]テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液に、貧溶媒を滴下する方法。
[2]テネリグリプチン・n臭化水素酸塩(n=2.0~3.0)の溶液を、貧溶媒に滴下する方法。
[3]Boc-テネリグリプチンのt-ブトキシカルボニル(t-Boc)基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液に、貧溶媒を滴下する方法。
[4]Boc-テネリグリプチンのt-Boc基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液を、貧溶媒に滴下する方法。
[5]テネリグリプチン・塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液に、貧溶媒を滴下する方法。
[6]テネリグリプチン・塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液を、貧溶媒に滴下する方法。
[7]テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液に、貧溶媒を滴下する方法。
[8]テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液を、貧溶媒に滴下する方法。
【0028】
上記の製造方法[1]~[8]において、原料として使用するテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩、テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩等のテネリグリプチン・n臭化水素酸塩、テネリグリプチン・2.5塩酸塩等のテネリグリプチン・塩酸塩、及びBoc-テネリグリプチンは文献記載の方法(例えば特許文献1、2、3、特許非文献2)に準じて製造できる。
【0029】
製造方法[1]及び[2]において、例えばテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態を製造する場合は、原料としてテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩を用いることができる。あるいは、例えばテネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩(n=2)からテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態を製造する場合は、テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩をアルコール溶媒等に溶解する際に、0.5~1等量の臭化水素を添加すればよい。この様に、原料に含まれる臭化水素酸のモル数と、目的とする最終生成物中の臭化水素酸のモル数とを考慮して、反応の途中で臭化水素酸を添加することで所望のモル数のテネリグリプチン臭化水素酸塩のアモルファス形態を製造することができる。
【0030】
製造方法[1]及び[2]において、テネリグリプチン・n臭化水素酸塩の溶液の溶媒としては、アルコール類(アルコール系溶媒)を使用することができる。この様なアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられ、特に、エタノールが好適である。
【0031】
また製造方法[1]及び[2]において、テネリグリプチン・n臭化水素酸塩の溶液に加える(滴下する)、あるいはテネリグリプチン・n臭化水素酸塩の溶液を加える(滴下する)貧溶媒としては、炭化水素系溶媒、(例えば、ベンゼン、トルエン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-へプタン等)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、2-ブタノン等)、酢酸エステル系溶媒(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸t-ブチル等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等)が挙げられ、単一あるいは混合して使用することができる。これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランが好適である。
【0032】
製造方法[3]及び[4]では、t-Boc基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を、中間体を精製することなく、そのまま溶媒で希釈することができる。t-Boc基の脱保護反応で使用する臭化水素酸の量を調整することにより、所望のモル数のテネリグリプチン臭化水素酸塩のアモルファス形態を得ることができる。
【0033】
製造方法[3]及び[4]において、得られた反応液を希釈する溶媒、並びに貧溶媒はそれぞれ、製造方法[1]及び[2]で使用するテネリグリプチン・n臭化水素酸塩の溶液の溶媒、並びに貧溶媒と同様である。
【0034】
製造方法[5]及び[6]においては、塩基処理により、テネリグリプチン塩酸塩からテネリグリプチンを遊離し、脱塩酸を行う。塩基処理に用いる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられ、これらを水溶液として使用する。脱塩酸したのち、中間体(遊離したテネリグリプチン)は精製することなくそのまま次の反応に使用できる。テネリグリプチン・塩酸塩として、テネリグリプチン・2.5塩酸塩等を使用できる。
【0035】
製造方法[5]及び[6]において、脱塩酸後、臭化水素酸と共に添加する溶媒、並びに貧溶媒はそれぞれ、製造方法[1]及び[2]で使用するテネリグリプチン・n臭化水素酸塩の溶液の溶媒、並びに貧溶媒と同様である。
【0036】
製造方法[7]及び[8]において、使用するアルコールは、製造方法[1]及び[2]と同様でよく、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられ、特に、エタノール、メタノールが好適である。また臭化水素溶液は、臭化水素の水溶液(臭化水素酸)、エタノール等のアルコール溶液を使用することができる。
【0037】
製造方法[7]及び[8]において、貧溶媒はそれぞれ、製造方法[1]及び[2]で使用する貧溶媒と同様である。
【0038】
本発明の製造方法[1]~[8]において、貧溶媒をテネリグリプチン・n臭化水素酸塩の溶液に滴下する、もしくはテネリグリプチン・n臭化水素酸塩の溶液を貧溶媒中へ滴下する際の温度は-50~-10℃とすることができ、より好ましくは-30~-10℃である。
【0039】
本発明における、より好ましい態様を以下に例示する。
1)残留溶媒の含有量が2000ppm以下である、テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態。
2)テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアルコール溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
3)テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアルコール溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
4)テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
5)テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
6)Boc-テネリグリプチンのt-Boc基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
7)Boc-テネリグリプチンのt-Boc基を、臭化水素酸による脱保護反応により除去し、得られた反応液を溶媒で希釈した溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
8)テネリグリプチン・2.5塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液に、貧溶媒を加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
9)テネリグリプチン・2.5塩酸塩を脱塩酸し、臭化水素酸と溶媒を加えた溶液を、貧溶媒に加えることを特徴とするテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態の、製造方法。
【実施例0040】
以下に具体的な実施形態を挙げて本発明を説明するが、これらの例は単なる実例であって本発明はその実施形態に限定されるものではなく、それらにおける様々な変更及び改変が当業者によって、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく実行され得ることが理解される。
【0041】
以下、実施例1~16において本発明の方法により、比較例1において従来の方法により、テネリグリプチンのアモルファス形態を製造し、粉末X線回折装置(XRD)により解析した。また、テネリグリプチンの残留溶媒量を、以下に示すガスクロマトグラフィー(GC)により測定した。
【0042】
原料として用いたテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩又はその水和物、テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩又はその水和物、テネリグリプチン・2.5塩酸塩、及びBoc-テネリグリプチンは、文献記載の方法(例えば特許文献1、2、3、特許非文献2)に準じて調製した。
【0043】
残留溶媒量の測定方法
試料に含まれる各溶媒の残留溶媒は、下記の条件にてGC測定して求められたピーク面積値から検量線法により算出した。ここで、各溶媒の残留溶媒量は試料の質量に対する各溶媒の質量の割合を百分率で示したものである。
装置:ガスクロマトグラフ装置
検出器:水素炎イオン化検出器
カラム:DB-624(長さ30m、内径0.53mm、膜厚3.00μm)(Agilent Technologies Inc.製)
カラム温度:40℃付近の一定温度で注入後、10分間維持し、次いで毎分25℃で250℃まで加熱し、250℃で3分間維持した。
検出器温度:250℃(一定)
注入口温度:200℃(一定)
キャリアガス:ヘリウム
カラム圧力:25kPa
上記測定条件において、メタノールは約2.4分、エタノールは約3.2分、アセトンは約3.8分、イソプロパノールは約4.0分、酢酸メチルは約4.4分、メチルt-ブチルエーテルは約5.1分、酢酸エチルは約7.8分、テトラヒドロフランは約8.3分、ヘプタンは約11.1分にピークが検出される。
【0044】
実施例1 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.2gのエタノール54g溶液の約半量を留去した後、酢酸メチル100g中に-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.5gを得た。得られたアモルファスのXRDデータを
図1に示す。残留溶媒は、酢酸メチル593ppmであった。
【0045】
実施例2 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.1gにエタノール51gを加え、約半量を留去した後、酢酸エチル100g中に-20℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.1gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル143ppmであった。
【0046】
実施例3 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩4.0gにエタノール80gを加え、約半量を留去した後、テトラヒドロフラン100g中に-20℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.1gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、テトラヒドロフラン1517ppmであった。
【0047】
実施例4 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.2gにエタノール82gを加え、約半量を留去した後、メチルt-ブチルエーテル100g中に-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.5gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒は、メチルt-ブチルエーテル427ppmであった。
【0048】
実施例5 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.0gにエタノール50gを加え、約半量を留去した後、酢酸エチル80gとアセトン20gの混合溶液中に-20℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.3gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル914ppm、アセトン854ppmであった。
【0049】
実施例6 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.0gにエタノール50gを加え、約半量を留去した後、酢酸エチル80gとヘプタン20g混合溶液中に-20℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.2gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル827ppm、ヘプタン908ppmであった。
【0050】
実施例7 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.2gにエタノール40gとメタノール10gを加え、約半量を留去した後、酢酸メチル100g中に-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.5gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸メチル614ppmであった。
【0051】
実施例8 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.2gにエタノール80gとイソプロパノール10gを加え、約半量を留去した後、酢酸メチル100g中に-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.1gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、イソプロパノール600ppm酢酸メチル522ppmであった。
【0052】
実施例9 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.2gにエタノール55gを加え、約半量を留去した。この溶液に酢酸エチル100gを-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.3gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル1853ppmであった。
【0053】
実施例10 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩5.2gにエタノール60gを加え、約半量を留去した。この溶液に酢酸エチル80g、テトラヒドロフラン20gを-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.0gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル1252ppm、テトラヒドロフラン591ppmであった。
【0054】
実施例11 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩5.2gにエタノール84gと48%臭化水素酸0.75gを加え、約半量を留去した後、この溶液を酢酸エチル100g中に-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.2gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル868ppmであった。
【0055】
実施例12 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩5.2gにエタノール104gと48%臭化水素酸0.75gを加え、約半量を留去した。この溶液に酢酸エチル100gを-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.3gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル593ppmであった。
【0056】
実施例13 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
3-{(2S,4S)-1-(1,1-ジメチルエチルオキシカルボニル)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン3.0gにエタノール80mLと48%臭化水素酸2.4gを加え、4時間加熱還流した。反応液を約半量まで留去した後、テトラヒドロフラン40g中に-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、30℃で減圧乾燥して表題化合物2.2gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、テトラヒドロフラン1741ppmであった。
【0057】
実施例14 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
3-{(2S,4S)-1-(1,1-ジメチルエチルオキシカルボニル)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン3.0gにエタノール70gと48%臭化水素酸2.4gを加え、4時間加熱還流したのち、約半量を留去した後、テトラヒドロフラン40gを-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、30℃で減圧乾燥して表題化合物2.2gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、テトラヒドロフラン1420ppmであった。
【0058】
実施例15 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5塩酸塩2.1gに水酸化ナトリウム溶液と酢酸エチルを加えた。有機層を分液した後、48%臭化水素酸1.5gを加え、留去した。得られた残渣にエタノール30gを加え、酢酸エチル40g中に-15℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物2.1gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル862ppmであった。
【0059】
実施例16 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.5塩酸塩2.3gに水酸化ナトリウムと酢酸エチルを加えた。有機層を分液後、48%臭化水素酸1.5gを加え、留去した。得られた残渣にエタノール30gを加え、酢酸エチル40gを-15℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物2.3gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル1298ppmであった。
【0060】
実施例17 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩5.0gにメタノール25gと19.6%臭化水素エタノール溶液2.01g、エタノール83gを加え、留去した。この溶液に酢酸エチル100gを-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.0gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、酢酸エチル373ppmであった。
【0061】
実施例18 テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩5.0gにメタノール12.5gと19.6%臭化水素エタノール溶液1.96gを加えた。この溶液に酢酸エチル100gを-10℃で滴下した。析出固体を濾取後、70℃で減圧乾燥して表題化合物4.5gを得た。得られたアモルファスのXRDデータは、実施例1のデータと一致した。残留溶媒量は、メタノール1394ppm、エタノール393ppm、酢酸エチル808ppmであった。
【0062】
比較例1 従来法によるテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス
特許文献4(中国特許108727364号の実施例3)記載の方法に準じてテネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩のアモルファス形態を調製した。すなわち、テネリグリプチン・2.5臭化水素酸塩2.0gにエタノール100mLを加え、減圧濃縮した。得られた固体を50℃で減圧乾燥して表題化合物を得た。得られたアモルファスのXRDデータを
図2に示す。残留溶媒量は、エタノール31636ppmであった。
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩またはテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアルコール溶液に、貧溶媒を加える時の温度が-50~10℃である請求項7、9、または11に記載の製造方法。
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩またはテネリグリプチン臭化水素酸塩のアルコール溶液を、貧溶媒に加える時の温度が-50~10℃である請求項8、10、または12に記載の製造方法。
貧溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びメチルt-ブチルエーテルから選ばれる一以上である請求項23に記載の製造方法。
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液中の臭化水素が、テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩に対して0.5~1等量である請求項27または28に記載の製造方法。
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩またはテネリグリプチン・n臭化水素酸塩のアルコール溶液に、貧溶媒を加える時の温度が-50~10℃である請求項7、9、または11に記載の製造方法。
テネリグリプチン・n臭化水素酸塩またはテネリグリプチン臭化水素酸塩のアルコール溶液を、貧溶媒に加える時の温度が-50~10℃である請求項8、10、または12に記載の製造方法。
アルコール類がメタノール、エタノール、2-メチルエタノール、及び1-プロパノールから選ばれる一以上である請求項7、8、及び18~21のいずれか一項に記載の製造方法。
貧溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びメチルt-ブチルエーテルから選ばれる一以上である請求項23に記載の製造方法。
テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩の、アルコールと臭化水素溶液中の臭化水素が、テネリグリプチン・2.0臭化水素酸塩に対して0.5~1等量である請求項27または28に記載の製造方法。