IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社根本杏林堂の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095760
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61M5/142 530
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062253
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2023025435の分割
【原出願日】2012-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2011020009
(32)【優先日】2011-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2011236546
(32)【優先日】2011-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC03
4C066DD12
4C066EE04
4C066FF04
4C066QQ24
4C066QQ78
4C066QQ79
(57)【要約】      (修正有)
【課題】注入条件をより簡単に設定することができ、しかも、その設定内容の確認も行い易い注入装置を提供する。
【解決手段】注入装置は、注入ヘッドと、タッチパネル式のディスプレイ151を有するコンソールとを備え、a:ディスプレイに複数の撮像部位の画像を表示する処理と、b:それらの撮像部位のうち1つが選択された場合に、その撮像部位に対応する注入時間を読み出す処理と、c:患者に注入すべき造影剤の量を決定する処理と、d:決定されたその造影剤量と注入時間とに基づいて、造影剤の注入速度を決定する処理と、e:注入時間と注入速度との関係を示す注入条件のグラフをサムネイル画像175としてディスプレイに表示する処理と、f:その後、ディスプレイ上の所定のアイコン等が押された場合に、注入条件に従った注入をできる状態とする処理とを行う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの識別タグの情報を読み込むことができる注入ヘッドと、タッチパネル式のディスプレイを有するコンソールとを備え、前記シリンジ内の造影剤を患者に注入する注入装置であって、
(a)前記ディスプレイに複数の撮像部位の画像を表示する処理と、
(b)それらの撮像部位のうち1つが選択された場合に、その撮像部位に対応する注入時間を読み出す処理と、
(c)患者に注入すべき造影剤の量を決定する処理と、
(d)決定されたその造影剤量と前記注入時間とに基づいて、造影剤の注入速度を決定する処理と、
(e)前記注入時間と前記注入速度との関係を示す注入条件のグラフを、サムネイル画像として前記ディスプレイに表示する処理と、
(f)その後、前記ディスプレイ上の所定のアイコンおよび/または前記注入ヘッドの所定のボタンが押された場合に、前記注入条件に従った注入を実施できる状態とする処理と、
を行うことを特徴とする、注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に造影剤等を注入するための薬液注入装置に関する。特には、本発明は、体重と、注入時間と、体重当たりの投与量とを考慮した注入条件を簡単に設定することができ、しかも、その設定内容の確認を行い易い注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用の画像診断装置として、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等が知られている。このような撮像装置を使用する際、被験者に造影剤や生理食塩水など(以下、これらを単に「薬液」とも言う)を注入することがある。また、従来、この注入を自動的に実行する様々な薬液注入装置も提案されている。
【0003】
例えば特開2004-248734には、患者の身体区分(例えば頭部、胸部)や撮像部位(例えば、心臓、肝臓といった臓器)、さらには患者の体重なども考慮して、注入条件を設定できる装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2004-248734の装置によれば、患者ごとに最適な注入条件が設定可能であり、しかも造影剤の無駄な使用も低減することができる。このように患者の身体区分、撮像部位、および患者の体重などを考慮して注入条件を設定することは非常に有用であり、その設定をより簡単に行えるようになっていることが望ましい。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、注入条件をより簡単に設定することができ、しかも、その設定内容の確認も行い易い注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の薬液注入装置は下記の通りである。
1.シリンジの識別タグの情報を読み込むことができる注入ヘッドと、タッチパネル式のディスプレイを有するコンソールとを備え、前記シリンジ内の造影剤を患者に注入する注入装置であって、
(a)前記ディスプレイに複数の撮像部位の画像を表示する処理と、
(b)それらの撮像部位のうち1つが選択された場合に、その撮像部位に対応する注入時間を読み出す処理と、
(c)患者に注入すべき造影剤の量を決定する処理と、
(d)決定されたその造影剤量と前記注入時間とに基づいて、造影剤の注入速度を決定する処理と、
(e)前記注入時間と前記注入速度との関係を示す注入条件のグラフを、サムネイル画像として前記ディスプレイに表示する処理と、
(f)その後、前記ディスプレイ上の所定のアイコンおよび/または前記注入ヘッドの所定のボタンが押された場合に、前記注入条件に従った注入をできる状態とする処理と、
を行うことを特徴とする、注入装置。
【0007】
なお、「決定する」とは、液量や速度を最終的にある数値に確定することに限定されるものではなく、「決定」された後にそれらの数値が修正されてもよい。
【0008】
2.前記サムネイル画像のグラフは、横軸が経過時間で縦軸が注入速度でありその中に条件画像が表示されるものであって、
当該条件画像は、前記注入速度に対応した縦位置に表示され、かつ、前記注入時間に対応した横幅を有する、前記1に記載の注入装置。
【0009】
3.前記(a)の処理では、
前記複数の撮像部位の画像が表示される前に、前記ディスプレイに人体画像が表示されており、その人体画像の複数の身体区分のうち1つを選択することにより、前記複数の撮像部位の画像が表示される、前記1または2に記載の注入装置。
【0010】
4.さらに、
(g)前記シリンジの識別タグの情報を読み取る処理を行うものであって、
この処理では、少なくとも造影剤のヨード濃度の情報が読み取られる、前記1~3のいずれか1に記載の注入装置。
【0011】
5.さらに、
(h)患者の体重が入力される処理を行うものであって、
前記(c)の処理では、
入力された患者体重の情報と、
前記ヨード濃度の情報と、
選択された前記撮像部位に対応した単位体重当たりに必要なヨード量の情報と、
に基づいて造影剤の量を算出する、前記4に記載の注入装置。
【0012】
6.前記(h)の処理では、
前記ディスプレイに、患者の体重の区分を選択するための複数のアイコンが表示され、そのうちの1つを選択することにより体重の区分が決定される、前記5に記載の注入装置。
【0013】
7.前記ディスプレイに、注入中における造影剤の圧力のグラフがリアルタイムに表示されるように構成され、
このグラフは横軸が経過時間で縦軸が注入圧力であり、かつ、注入圧力が所定のリミット値を超えているか否かを認識し易いように、リミット値を超える領域が所定の色またはパターンで表示されている、前記1~6のいずれか1に記載の注入装置。
【0014】
8.前記注入ヘッドはデュアルタイプであり、造影剤の注入と生理食塩水の注入とを行う、前記1~7のいずれか1に記載の注入装置。
【0015】
本明細書において、
「身体区分」とは、患者の体のうちどの区分が撮像されるのかを示すものであり、例えば頭部、胸部、腹部、脚部などの区分が該当する。
「撮像部位」とは、撮像される部位(すなわち、造影する部位)をいい、例えば心臓、肝臓、腎臓などの臓器や、血管や、腫瘍部などが該当する。
「部位選択(方式)」とは、身体区分および/または撮像部位を選択することで、その選択された事項に対応する注入条件が設定される方式をいう。
「薬液」とは、造影剤、生理食塩水、またはそれらを混合したものをいう。
「ユーザ」とは、造影剤注入装置を使用する者のことをいい、例えば医師や技師である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、注入条件を簡単に設定することができ、しかも、その設定内容の確認も行い易い注入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一形態による薬液注入装置の斜視図である。
図2図1の注入ヘッドにシリンジが装着される様子を示す斜視図である。
図3A図1の薬液注入装置と撮像装置とを接続したシステムのブロック図である。
図3B】制御部の構成を示すブロック図である。
図4】ディスプレイに表示される画像を示す図である(注入条件の設定)。
図5】ディスプレイに表示される画像を示す図である(注入条件の設定)。
図6】ディスプレイに表示される画像を示す図である(注入条件の設定)。
図7】ディスプレイに表示される画像を示す図である(注入条件の設定)。
図8】ディスプレイに表示される画像を示す図である(条件の確認)。
図9】ディスプレイに表示される画像を示す図である(薬液注入)。
図10】ディスプレイに表示される画像を示す図である(注入条件の設定)。
図11】注入条件の設定から薬液の注入に至るまでの手順を示すフローチャートである。
図12】ディスプレイに表示される画像を示す図である(ホーム画面)。
図13】ディスプレイに表示される画像を示す図である(救急モード1)。
図14】ディスプレイに表示される画像を示す図である(救急モード2)。
図15】ディスプレイに表示される画像を示す図である(救急モード3)。
図16】ディスプレイに表示される画像を示す図である(小児モード)。
図17】ディスプレイに表示される画像を示す図である(除脂肪体重モード)。
図18】ディスプレイに表示される画像を示す図である(撮像装置との同期)。
図19】ディスプレイに表示される画像を示す図である(注入結果の出力)。
図20】小児モードで表示される画像の他の例を示す図である。
図21】ディスプレイに表示される画像を示す図である(セルフチェック)。
図22】ディスプレイに表示される画像を示す図である(TBT注入のタイムライン)。
図23】ディスプレイに表示される画像を示す図である(TBT注入中の状態表示)。
図24】ヘッドディスプレイの一例を示す斜視図である。
図25】ヘッドディスプレイを含んだシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では幾つかのセクションに分けて本発明の実施形態について説明する。
【0019】
〔セクションA:注入条件を簡単に設定することができ、しかも、その設定内容の確認も行い易い注入装置〕
【0020】
図1の薬液注入装置は、患者に薬液を注入するためのものである。この注入装置は、可動式のスタンドに支持された注入ヘッド110と、この注入ヘッド110に接続されたコンソール150とを備えている。コンソール150には、さらに、ユーザによって手動操作されるハンドスイッチ(不図示)が備えられている。なお、薬液注入装置は、CT用のものであってもよいし、MR用のものであってもよく、特に限定されるものではない。
【0021】
注入ヘッドの種類は特に限定されるものではない。注入ヘッドは、1本のシリンジのみが装着されるシングルタイプ、または2本のシリンジが装着されるデュアルタイプのいずれであってもよい。図1の注入ヘッド110は、造影剤が充填されたシリンジ200Aと生理食塩水が充填されたシリンジ200Bとが装着されるデュアルタイプである。
【0022】
以下の説明では、シリンジ200A、200Bを区別せずに単に「シリンジ200」と記載することもある。シリンジ200は、筒状のシリンダ部材210にピストン部材220がスライド可能に挿入されたものである。
【0023】
図2図3Aに示すように、シリンダ部材210の一部には、ICタグ225が付されている。このICタグ225には、シリンジに関する情報(シリンジの識別情報、シリンジの耐圧、シリンダ部材の内径、ピストン部材のストローク等)や、該シリンジに充填された薬液の情報(名称(例えば製品名)、ヨード量などの成分情報、消費期限、薬液容量等)が記憶されている。ICタグは、そのタグに固有のユニークIDを有していてもよい。ICタグは、シリンジサイズ、シリンジの製造番号、および薬剤標準化コードのなかから選ばれる少なくとも1つの情報を有していてもよい。なお、ICタグ225としては、例えば、RFID(Radio frequency identification)タグを利用することができる。
【0024】
注入ヘッド110は、シリンジ200のピストン部材220を押し込むピストン駆動機構113を有している。ピストン駆動機構113は2系統設けられており、各機構は独立して動作する。ピストン駆動機構113は、詳細な図示は省略するが、前後方向に進退移動する駆動アーム(シリンジプレッサー)、およびその駆動源である駆動モータを有している。また、ピストン駆動機構113はロードセル(不図示)を内蔵しており、このロードセルで、ピストン部材220を押圧する力を検出する。ロードセルの検出結果を利用して、例えば、薬液を注入しているときの薬液の圧力の推定値を求めることができる。この推定値の算出は、針のサイズ、薬液の濃度、注入条件なども考慮して行われる。
【0025】
注入ヘッド110の上面前方には、シリンジ200を保持するための凹状のシリンジ保持部114が2つ設けられている。このシリンジ保持部114には、シリンジに取り付けられたICタグ225の情報を読み取るための不図示のリーダ/ライタ(図3Aの符号145参照)が設けられている。リーダ/ライタ145は、所定の情報をICタグ225に書き込む機能も有している。
【0026】
特に限定されるものではないが、この注入ヘッド110では、図2に示すようにシリンジ200はアダプタ230を介してヘッドに装着される。シリンジ200A、Bのいずれも、このようなアダプタ230を介して装着されうるが、図2では2つのアダプタ230のうち1つは図示を省略している。
【0027】
注入ヘッド110の上面には、複数のボタン115a~115cが設けられている。一例として、ボタン115aは薬液注入を実施できるようにするためのチェックボタンであり、ボタン115bは薬液注入を開始するためのスタートボタンであり、ボタン115cは注入動作を停止するためのストップボタンである。
【0028】
他のストップボタン115c′が注入ヘッド110の側面に設けられていてもよい。注入ヘッド110が比較的高い位置で使用される場合には、ヘッド上面のボタン115cを押すよりも側面のボタン115c′を押す方が容易なことがあり、このような構成は操作性がよく有利である。限定されるものではないが、注入ヘッド110の筐体後端部に所定の色で発光する発光部が設けられていてもよく、特には、各シリンジに対応して2つの発光部がヘッドの右側と左側とに1つずつ設けられていてよい。この場合、発光のパターンが変わることで、各シリンジの状態を表すことができるように構成されていてもよい。造影剤用の発光部と、生理食塩水用の発光部とが別の色で発光する構成も可能である。
【0029】
図3Aのブロック図に示されているように、注入ヘッド110は、ピストン駆動機構113やリーダ/ライタ145の動作を制御する制御部144を有している。また、ICタグ225から読み取られた情報を一例として一時的に記憶する記憶部146を有している。
【0030】
図1に示すように、コンソール150はタッチパネル式のディスプレイ151を有している。このディスプレイ151には、例えば、注入条件を設定するための画像や、注入中における薬液の圧力などが表示される(詳細下記)。図3Aに示すように、コンソール150は、各部の動作を制御する制御部153と、種々のデータが記憶される記憶部154と、所定の外部機器と接続するためのインターフェース端子158を有している。コンソール150は、また、注入ヘッド110との接続のためのインターフェースと、撮像装置との接続のためのインターフェースとを有している。コンソール150は、さらに、ユーザの手元で操作される操作器(コントローラ)157を有している。
【0031】
制御部153は、例えば、その機能に対応して図3Bに示すような、撮像画像表示処理部、注入時間読込処理部、注入速度決定処理部、サムネイル画像表示部、注入実施準備部を有している(詳細後述)。
【0032】
記憶部154には、例えば、ディスプレイ151に表示される画像のデータなどが記憶されている。また、注入条件を設定するための計算式などを含むアルゴリズムや、注入プロトコルのデータが記憶されている。注入プロトコルとは、どのような薬液を、どれくらいの量、どれくらいの速度で注入するかを示すものである。注入速度は、一定であってもよいし、時間とともに変化するものであってもよい。本実施形態のように造影剤と生理食塩水とを注入する場合、それらの薬液をどのような順序で注入するかといった情報も、注入プロトコルに含まれる。
【0033】
なお、このような注入プロトコルに関する情報は、予め記憶部154に記憶されていてみよいし、インターフェース端子158を介して接続された外部機器から入力されるものであってもよい。また、コンソール150のスロット(不図示)に差し込まれる外部記憶媒体を通じて入力されるものであってもよい。外部の装置またはシステムから注入プロトコルに関する情報が入力される構成であってもよい。
【0034】
撮像装置300は、例えばCTスキャナ、MRI装置、アンギオグラフィ装置などであり、図3Aに示すように、患者の透視画像を撮像する撮像部303bと、患者を載せるベッド304と、それらの動作を制御する制御部303aとを有している。
【0035】
以下、本実施形態の注入装置の動作について、ディスプレイ151に表示される具体的な画像の例示しつつ説明する。
【0036】
本実施形態の注入装置は、通常の薬液注入を実施するための画像(例えば図4図10参照)と、他の注入方式で注入するもしくは所定の編集を行うための画面(例えば図13参照)とが表示されるように構成されている。これらのモードは、コンソール150に設けられた物理的ボタンを押すことで切り替えられるように構成されていてもよい。本セクションでは、先ず、図4図10を参照しつつ通常の薬液注入を実施するモードについて説明する。
【0037】
なお、以下の手順は一例にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。図11は、注入条件の設定から薬液の注入に至るまでの手順を示すフローチャートである。
【0038】
まず、ユーザによって注入ヘッド110にシリンジ200A、200Bが装着される。シリンジ200Aには造影剤が充填され、シリンジ200Bには生理食塩水が充填されている。シリンジ200を装着すると、そのICタグ225の情報が、注入ヘッド110のリーダ/ライタ145(図3A)によって読み取られる(ステップS1)。読み取られる情報は、例えば、造影剤の量・ヨード濃度、造影剤の製品名、そのシリンジの耐圧に関する情報などである。ただし、これに限定されるものではなく、他にも種々の情報が読み込まれてもよい。
【0039】
造影剤の量は、例えば100ml、150ml、200mlなどである。ヨード濃度は、例えば240mgI/ml、300mgI/ml、320mgI/ml、350mgI/ml、370mgI/などである。シリンジの耐圧は、例えば15kgf/cmなどである。
【0040】
「シリンジの耐圧」の数値は、その数値を超える圧力で注入が行われるとシリンジが破損するおそれのある数値を意味している。本実施形態の装置では、シリンジのICタグからこの数値が自動的に読み込まれて、その数値がピストン駆動機構のリミット値に設定されてもよいし、または、ユーザによって入力された数値がリミット値として設定されてもよい。例えば、シリンジのICタグから読み込まれた数値が15kg/cmであって、一方、ユーザによって入力された数値が20kg/cmの場合、より小さい値である15kg/cmの方が優先されるように構成されていることが好ましい。
【0041】
リーダ/ライタ145によって読み取られたこれらの情報はコンソール150に送られ、必要に応じて、コンソール150のディスプレイ151に表示される。
【0042】
(通常の薬液注入モードについて)
図4は、ディスプレイ151に表示される画面である。図4の画面の中央には、横向きの人体形状の画像161が表示されている。この人体画像161は、複数のアイコン161a~161dで構成されており、それぞれ、頭部161a、胸部161b、腹部161c、および脚部161dを表している。各アイコン161a~161dは、それをタッチすることによって選択される。
【0043】
図4では、人体画像161の下にさらに他のアイコン群164(詳細下記)が表示されているが、初期画面では、これらは表示されておらず、人体画像161のみが表示されている。初期画面において、図4のように人体画像161と他のアイコン群164との両方が表示される構成としてもよいが、人体画像161のみを表示する構成の場合、画面上の表示項目がシンプルとなり、これによって、ユーザがより直感的に操作できるようになる。
【0044】
人体画像161のうちの1つのアイコン(例えば腹部161c)にタッチすることで、腹部に対応する撮像部位(ここでは、「腫瘍部」、「肝臓」、「腎臓」、および「血管」)のアイコン164a~164dが表示される。
【0045】
図4の画面では、これらのアイコン164a~164dは、人体画像161の下に横一列で表示されている。各アイコン164a~164dには、臓器を表す絵のみが表示されており、「腫瘍部」、「肝臓」、「腎臓」、「血管」などといった文字は表示されていない。これらの文字は、表示されていてもよいし、されていなくてもよいが、文字の表示がなく、図4のように絵のみのアイコンの場合、表示内容がよりシンプルとなる。なお、文字を表示するかどうかが、切替え可能に構成されていてもよい。
【0046】
なお、図4の状態では、人体画像161のうち腹部161cのみがハイライトされており、これにより、この身体区分が現在選択されていることを識別できるようになっている。
【0047】
次いで、撮像部位の選択を行う(ステップS2)。一例として、図4の画面で肝臓のアイコン164bにタッチする。すると、肝臓の絵が人体画像161の腹部161cに向かって吸い込まれるように移動し、図5に示すように、腹部161cの中に表示される構成でであってもよい。
【0048】
こうして撮像部位が選択されると、この撮像部位に関連付けられた薬液注入時間が記憶部154から読み出され、ディスプレイ151に表示される。この例では、肝臓に対応する注入時間は30秒であり、画面下部に、「0:30sec」と表示されたアイコン171が表示される。
【0049】
図5の画面では、また、ディスプレイ151に患者の体重を選択するためのアイコン169a~169cが表示される。アイコン169a~169cは、人体画像161の下方で、横一列に配置されている。体重は3つの区分に分けられ、アイコン169aが40kg未満、アイコン169bが40kg以上70kg未満、アイコン169cが70kg以上を表している。
【0050】
なお、体重の区分数を変更できるように構成されていてもよい。各区分の体重の値に関しても、それらの値が自由に変更できるように構成されていてもよい。図5では「Kg」のような単位がアイコン中に表示されているが、単位の表示は無くてもよく、単に、「40~70」のような表示も可能である。
【0051】
図5の画面では、また、アイコン169a~169cと人体画像161の間に、2つのアイコン167a、167bが表示されている。アイコン167aには、体重計の絵が表されている。アイコン167bには注射器の絵が表示されている。体重計のアイコン167aをタッチすると、体重の詳細な入力が可能となる(詳細後述)。注射器のアイコン167bをタッチすると、注入速度を任意に選択できる「フローレートモード」に切り替わる(詳細後述)。なお、アイコン167bは図5ではなく図4の画面で表示されてもよく、具体的には、アイコン164dの側方に表示されてもよい。
【0052】
次いで、ユーザは図5の画面で3つのアイコン169a~169cのうち1つにタッチし、患者体重の入力を行う(ステップS3)。以下、40kg以上70kg未満のアイコン169bがタッチされた例について説明する。
【0053】
図6では図示を省略しているが、体重の区分が決定されると、選択された1つのアイコン169bがハイライトされた状態となる。なお、表示形態の一例として、注入時間のアイコン171が、画面下部から、体重計のアイコン167aの左付近の破線で示される位置付近まで、斜め上に向かって移動し、そこに表示されるようになっていてもよい。
【0054】
また、図6の画面では、ICタグ225から読み取られた情報が表示される。例えば、アイコン173aに、シリンジの耐圧が「15.0kgf/cm」と表示される。アイコン173bに、肝臓を造影するために必要な単位体重当たりのヨード量が「540mgI/kg」と表示される。これらのアイコン173a、173bは、人体画像161の上に表示されている。
【0055】
また、図6の画面では、薬液の注入量を示すアイコン173cが表示されており、「A 100ml」、「B 60ml」と表示されている。これは、造影剤の注入量が100mlで、生理食塩水の注入量が60mlであることを表している。このアイコン173cの下には、「量調整」と示されたアイコン173dが表示されている。
【0056】
シリンジの薬液残量(例えば70ml)が注入設定量(例えば76ml)よりも少ない場合、このアイコン173dを押すことで、薬液残量が注入量として設定される。
【0057】
なお、図5図10の画像では、薬液の量、注入速度、濃度などに関する具体的な数値が表示されているが、これらは例示であって、本発明を何ら限定するものではない。
【0058】
次に、造影剤の注入量を決定する手順を説明する。本実施形態では、(i)患者の体重と、(ii)造影剤のヨード濃度と、(iii)撮像部位に対応した単位体重当たりに必要なヨード量とに基づいて、注入量が計算される。具体的には患者の体重は、一例として、40kg~70kgの中間値である55kgとして計算される。この体重と、必要ヨード量とに基づいてその患者に注入すべき総ヨード量を算出し、そして、この総ヨード量と、造影剤のヨード濃度とに基づいて、注入すべき造影剤の量を算出する。
【0059】
なお、ここでは40kg~70kgの区分の代表値が55kgである例を示したが、この値は、初期設定で変更できるようになっていてもよい。さらには、体重区分(例えば40kg~70kgの区分)そのものの範囲も初期設定で変更できるようになっていてもよい。
【0060】
従来の薬液注入装置では、通常、患者体重を考慮して造影剤の量を決定するためには、例えば体重情報や造影剤情報をユーザがマニュアル入力する必要があり、作業が煩雑であった。しかし、本装置によれば、1つのアイコン169b(一例)をタッチするだけで体重情報が入力され、また、造影剤情報もICタグ225から読み取られるため、非常に簡単である。
【0061】
次いで、造影剤の注入速度の算出(ステップS4)について説明する。
本実施形態の装置では、例えば肝臓164bを選択した時点で、注入時間が「0:30sec」と決定される。上記工程で算出した注入すべき造影剤量を、この注入時間で除することによって、造影剤の注入速度が自動的に算出される。
【0062】
上述した一連の工程によって造影剤の注入時間〔sec〕、造影剤の注入量〔ml〕、および造影剤の注入速度〔ml/sec〕が求められ、造影剤の注入条件が決定される。なお、生理食塩水の注入条件は公知の方法により決定可能であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
図6に示すように、こうして求められた造影剤の注入条件および生理食塩水の注入条件はサムネイル画像175として表示される(ステップS5)。なお、ステップS3、S4を経ずにサムネイル画像175が表示される構成も可能である。例えば、ステップS2で撮像部位を1つ選択した時点で、デフォルトの体重区分が選択され、かつ、それに対応した注入速度が決定され、そしてそれらに対応するサムネイル画像が自動的に表示されるようになっていてもよい。
【0064】
サムネイル画像175には、横軸が経過時間で縦軸が注入速度のグラフが表示される。このグラフ内には、2つの条件画像175a、175bが表示されており、条件画像175aが造影剤の注入条件を示し、条件画像175bが生理食塩水の注入条件を示している。各画像175a、175bは、注入速度に対応した高さの位置に表示され、注入時間に対応した横幅を有している。
【0065】
従来の装置は、一般的に、注入条件を設定した時点で、その注入時間、注入速度、および注入量などの情報が単に数値として表示するものであった。そのため、どのような注入条件が設定されたかを直感的に確認しにくいことがあったが、本実施形態の装置によれば、サムネイル画像175を通じて注入条件を良好に確認できる。
【0066】
また、設定した注入条件を、図7(詳細下記)に示すような大きなグラフ175′として表示させることも考えられる。しかし、この場合、注入条件を設定するための種々のアイコン(例えば171、169b、161など)を表示するスペースが無くなる。これに対して、サムネイル画像175で表示する構成によれば、アイコン171、169a~c、161等をそのまま表示させておくことができ、必要であれば、それらのアイコンを使って簡単に修正を行うことができる。
【0067】
なお、サムネイル画像中の条件画像に関して、その横幅および高さが設定された条件に応じて変化する構成でもよいし、変化しない構成でもよい。
【0068】
再び図6を参照する。一例として、図6の画面でサムネイル画像175にタッチすると、この画像が拡大されて図7のような大きな画像175′が表示される。この画像175′では、造影剤の条件画像175aと、生理食塩水の条件画像175bと、シリンジの耐圧173a′が表示されている。造影剤の条件画像175aの横に上向き矢印と下向き矢印が表示されており、これを操作することで注入条件を修正することができる。図示は省略するが、同様に、生理食塩水の注入条件も修正可能である。
【0069】
なお、上記方式に代えて、例えば画像175aにタッチしながら上下に移動させることで、速度が変更されるようになっていてもよい。また、条件画像175a、175b内の数値が、テンキーを使用した数値入力によって変更できるように構成されていてもよい。条件画像は、所定の「上」ボタンおよび「下」ボタンを押すことにより、変更されるように構成されていてもよい。
【0070】
図8は、最終的に設定された条件を確認するための画面である。この画面では、画面中央に注入条件のグラフの画像175′が大きく表示されている。画像175′の上には、する横長のウィンドウ178が表示されており、この中には、患者の体重、体重当たり必要なヨード量、注入時間などの情報が表示されている。ウィンドウ178の右にはアイコン173cが表示されており、それにより、造影剤(A)および生理食塩水(B)の量を確認することができる。
【0071】
なお、ウィンドウ178に、例えば選択された体重区分などの他の情報が表示されるように構成されていてもよい。体重当りのヨード量が表示されてもよいし、体重・時間当りのヨード量が表示されてもよい。
【0072】
図8の画面で注入条件を確認した後、ユーザが、一例として、ディスプレイ上のボタン165または注入ヘッドの所定のボタンを押すことにより(ステップS6)、薬液の注入が開始可能な状態となる。薬液注入は、この例では、造影剤および生理食塩水の順で行われる(ステップS7)。
【0073】
造影剤の注入が開始されると、ディスプレイには図9(a)のような圧力グラフが表示される。このグラフは、注入中における薬液の圧力をリアルタイムに示すものであり、横軸が経過時間で縦軸が圧力である。薬液の圧力は、例えば、ピストン駆動機構がシリンジのピストン部材を押す圧力に基づいて算出される。ピストン駆動機構がピストン部材を押す圧力は、一例として、ピストン駆動機構のロードセルを用いて検出することができる。
【0074】
図9(a)は、注入開始後一定時間経過した時点でのグラフであり、図9(b)はそこからさらに所定時間が経過した時点でのグラフである。これらのグラフにおいては、薬液の圧力が所定のリミット値P1を越えているか否かを認識し易いように、P1より上の領域は所定の色で表示されるか、または、所定のパターンで表示されている。薬液の圧力がリミット値P1を超えてこの領域内に入った場合には、ユーザに対して警告が発せられることが好ましい。警告は、音声によるメッセージや画像もしくは文字によるメッセージであってもよい。または、薬液の圧力が下がるように、ピストン駆動機構の出力が自動的に調整されてもよい。上記構成によれば、薬液圧力の上昇が防止され、その結果、シリンジ等の破損を防止することができる。
【0075】
なお、図9のグラフにおいて所定の経過時間を超えた領域179bが、上記同様、着色または所定のパターンで表示されていてもよい。領域179a、179b内に、図9(c)のように、圧力を示す画像および/または経過時間を示す画像が表示される構成としてもよい。
【0076】
図10は、患者体重を詳細に入力するための画面である。図10に示すように、本実施形態の装置では、図6の画面で、選択された体重区分のアイコン169bにタッチすると、テンキー177が表示される。このテンキー177から数値をマニュアル入力(一例)することで、患者の詳細な体重を入力することが可能である。具体的には、例えば「62kg」などと設定することができ、この場合、アイコン169a~cの表示が消えて「62kg」と示されたアイコンが1つ表示される。
【0077】
図10の画面に表示されている体重計のアイコン167aと注射器のアイコン167bは、注入条件を設定するためのモードを切り替えるためのものである。アイコン167aが選択されている状態では、「体重入力モード」(上述した一連の設定手順)で設定が行われる。本実施形態の装置ではこのモードがデフォルトとなっている。アイコン167bが選択されると、「フローレートモード」での設定が可能となる。体重入力モードでは、注入時間(例えば、0:30sec)が優先され、注入速度はそれに基づいて算出された値となる。これに対して、フローレートモードでは、例えば1.5ml/sec、2.0ml/secのように、任意の注入速度が設定できる。このモードは、例えば、造影において注入速度が重要なファクターとなる場合に利用される。
【0078】
図9の圧力グラフに関して、このグラフ内に、検出された薬液のリアルタイムの圧力だけでなく、その注入条件で注入を行った場合に得られるであろう理想のパターン(単一の線で表示されるものであってもよいし、ある程度の幅を有するバンドとして表示されるものであってもよい)が描かれてもよい。
【0079】
なお、上述した一連の動作は、基本的には次のような処置を含む:
(a)ディスプレイに複数の撮像部位の画像を表示する処理、
(b)それらの撮像部位のうち1つが選択された場合に、その撮像部位に対応する注入時間を読み出す処理、
(c)患者に注入すべき造影剤の量を決定する処理、
(d)決定されたその造影剤量と注入時間とに基づいて、造影剤の注入速度を決定する処理、
(e)注入時間と注入速度との関係を示す注入条件のグラフを、サムネイル画像として前記ディスプレイに表示する処理、
(f)その後、前記ディスプレイ上の所定のアイコンおよび/または注入ヘッドの所定のボタンが押された場合に、注入条件に従った注入をできる状態とする処理。そして、これらの各処理はそれぞれ制御部153の各処理部によって実行可能である。
【0080】
以上のように構成された本発明によれば、注入条件を設定すると、その条件がサムネイル画像175(図6参照)としてディスプレイ151に表示される。したがって、ユーザは、このサムネイル画像175を通じて設定内容を確認することができる。また、この画像は、図7のような大きな画像ではなく、比較的小さなサムネイル画像として表示されるので、注入条件を設定するためのアイコン(例えば171、169a~c、161など)をそのままの位置で表示させることができ、それらのアイコンを使って簡単に修正を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態の薬液注入装置では、基本的には、(i)シリンジを注入ヘッドにセットする、(ii)撮像部位を選択する、(iii)患者体重を選択するというシンプルなステップで注入条件の設定を行うことができる。このような簡単な設定を実現するためにも、例えば、撮像部位を選択した時点で、それに対応する、造影剤の注入時間(例えば「0:30sec」)が決まるように構成されていることが好ましい。また、造影剤の情報をマニュアル入力する手間を省略するためにも、シリンジのICタグ225から、造影剤のヨード濃度の情報、造影剤の量の情報などが自動的に読み取られるようになっていることが好ましい。
【0082】
患者の体重入力は、テンキーを用いて具体的な数値が入力されるものであってよいが、本実施形態のように複数のアイコン169a~169c(図5)のうちの1つを選ぶものであれば、より簡単な操作で済む。
【0083】
また、本実施形態の装置では、造影剤の注入時間は、選択された撮像部位によって決まり(図5の例では0:30sec)、原則としてこの時間は、患者の体重に関わらず一定である。このような構成によれば、1人の患者に対して複数回の診断を行う場合(撮像部位は共通)、または、複数人の患者に対して診断を行う場合(撮像部位は共通)であっても、注入時間が同じになるため、CT装置等のスキャン開始のタイミングの調整が不要となる。
【0084】
本発明は上記の限定されるものではなく、次のようなものであってもよい。
例えば、ICタグ225の付いていないシリンジ200に対応するために、画面(例えば図5)製品名のアイコン163aにタッチすることによりプルダウンリストが表示され、そのリスト中の1つの製品を選択することで、製品名およびそのヨード量の情報などが入力される。
【0085】
本実施形態の装置では、撮像部位(例えば、腫瘍部、肝臓、腎臓、および血管など)ごとに所定の注入時間(例えば、30秒、45秒、60秒など)が登録されている。このようなデータは、コンソール150の記憶部154(図3A参照)に記憶されていてもよいし、または、外部の機器に記憶されており、ネットワーク経由でそのデータがコンソール150に読み込まれるものであってもよい。
【0086】
また、患者の体重を測定する機器、もしくは、患者の体重情報を有する機器がコンソール150に接続され、その機器から体重の情報が入力されることにより、自動的に患者の体重区分(図5のアイコン169a~169c参照)が選択されるようになっていてもよい。これによれば、体重を選択する工程を省略することが可能となる。
【0087】
体重アイコン169a~169cに関し、2つまたは4つ以上のアイコンが表示される構成としてもよい。また、体重区分を選択するのではなく、デフォルトの1つの体重値(例えば60kg)が自動的に選択される構成としてもよい。
【0088】
薬液注入を開始する手順としては、図7図8の画像175′を表示することなく、図6の状態で所定のボタン(画面上のアイコンおよび/または注入ヘッド上のボタン)を押すことにより注入が開始可能な状態となるようになっていてもよい。一例としては、図6の状態で、ボタン165または注入ヘッド上のボタンを押すことにより、ボタン165の表示が「スタートOK」となり、注入が開始可能な状態となる。
【0089】
なお、図4図10では、一例として横向きの人体画像161を示したが、本発明の装置は、縦向きの人体画像を表示するものであってもよい。人体画像161に含まれる身体区分の数は、4つに限定されるものではなく、3つ以下または5つ以上であってもよい。
【0090】
次に、ディスプレイ151に表示される画像の例について、図12図23を参照しながら説明する。なお、図12図23に表示されている具体的な文字情報や数値情報は本発明を何ら限定するものではない。
【0091】
〔セクションB:注入モード等をコンソール上で簡単に設定または変更することができ、様々な方式での注入に対応可能な造影剤注入装置〕
(他の注入方式の選択・所定の編集などを行うためのモード)
本セクションに係る発明の目的は、注入モードや条件設定方式(以下、これらを単に「注入モード等」ともいう)をコンソール上で簡単に設定または変更することができ、様々な方式での注入に対応可能な造影剤注入装置を提供することにある。また、当該注入装置を使用する医師が複数人居る場合であっても、各医師の好みに応じた注入モード等を設定可能な造影剤注入装置を提供することにある。
【0092】
図12は、ホーム画面を示している。このホーム画面は、例えば、コンソールに設けられた所定の物理的ボタンを押すことで表示される。なお、画面上の所定のアイコン等を押すことでホーム画面が表示される構成であってもよいし、または、所定時間(アイドル時間)経過後に自動的にホーム画面が表示される構成であってもよい。
【0093】
図12のホーム画面においては、複数のアイコンがマトリクス状(一例として3行4列)に配置されている。この例では、各アイコンは角部に丸みがつけられた略正方形であるが、アイコン自体の形状は、長方形、多角形、円形など、他の形状であってもよい。ホーム画面に表示されるアイコンの数は特に限定されないが、アイコンが多すぎる場合にはユーザが直感的に操作しにくくなる可能性もある。したがって、例えば、行数を3~5、列数を3~6(すなわち3×3のマトリクス~5×6のマトリクス)のアイコン数とすることが、操作性を損なうことなくかつ十分な情報を表示でき、好ましい。
【0094】
図12に示すように、ホーム画面の上段には、4つのアイコン411~414が横に並んで表示されている。アイコン411~414はそれぞれ「小児モード」、「救急モード」、「プロット注入モード」、および「テストボーラストラッキング(TBT)注入モード」用である。
【0095】
ホーム画面の中段には、この造影剤注入装置を使用する医師1~医師4を選択するための4つのアイコン415が表示されている。なお、アイコン415の数は特に限定されるものではなく、例えば、1つ、2つ、または3つのみが表示されるものであってもよい。
【0096】
ホーム画面の下段には、造影剤注入装置1の各種機能を実施するためのアイコン416が複数表示されている。一例として、薬液注入の結果を表示するためのアイコン、プロトコル設定を行うためのアイコン、種々の環境設定を行うためのアイコン、さらにユーザ(医師等)の編集を行うためのアイコンが表示さている。
【0097】
ホーム画面のアイコンの配置は、適宜変更できるように構成されていることが好ましい。基本的には、アイコンの並べ替えや、各アイコンの表示/非表示を自由に変更できるよう構成されている。もっとも、一定のアイコンに関しては、画面上に常に表示される(すなわち非表示とすることができない)ようにしてもよい。例えば救急モード用のアイコン412が常に表示される構成とすることで、救急時の薬液注入に好適に対応できることとなる。
【0098】
次に、各アイコンの機能について説明する。以下では、まず「救急モード」について説明し、次いで「小児モード」やその他のモードについて説明する。
【0099】
(救急モード)
「救急モード」とは、例えば夜間の診療などにおいて専門の医師が不在の場合であっても、他の医師による造影剤注入を可能にするためのものである。図12のホーム画面で救急モードアイコン412が選択されると、救急モードが開始され、ディスプレイには、所定の操作後(詳細下記)、図13のような画面が表示される。
【0100】
この画面では、ステータスバー431が画面上部に表示され、このステータスバー431には、現在救急モードが選択されていることを示すER表示431aと、幾つかのその他のアイコンとが表示される。
【0101】
「その他のアイコン」としては、例えば、薬液注入時に患者までのルートが正常に確保されていることを確認するため動作を行わせるための「ルート」アイコンや、従来公知の「タイミングテスト」を行うためのアイコンなどである。さらに、図示は省略するが、シリンジ内の薬液の製品名および/または製造メーカ等の識別マークがステータスバー431に表示されてもよい。ステータスバー431の右側にはスタートボタン433が表示されている。
【0102】
画面中央には、大きなウィンドウ450が表示されており、このウィンドウ内には救急モード用の注入条件画像451や、ユーザに対し操作の案内を行うためのガイダンス画像453が表示されている。
【0103】
この注入条件画像451は、縦軸が薬液の注入速度で横軸が注入時間であるグラフであり、グラフ内には条件バー画像455が表示されている。救急モードでは注入条件を迅速に設定できることが重要であるため、条件バー画像455には、予め設定された注入速度および注入時間(一例で速度が1.0ml/sec、量が100ml)の注入条件が表示されている。なお、この注入条件は、ユーザによって変更されうるものであってもよいし、変更不可でもよい。
【0104】
ガイダンス画像453は、注入ヘッドおよび/またはコンソールに対してどのような操作をすべきかを案内するための情報をユーザに対して提供する。図13の例では、コンソールの操作器(ハンドスイッチ、図1では図示を省略)を押すべき旨の情報が画像として表示されている。
【0105】
なお、ガイダンス画像453は、同画像中の「i」マークのボタン453aを押すことにより表示されるように構成されていてもよい。他の形態においては、iボタン453aを押さなくても、所定時間経過後に自動的にガイダンス画像453が表れる構成としてもよい。
【0106】
図13でh、画面中央のウィンドウ450と画面上部のステータスバー431との間には、横長の情報表示バー435が表示されており、そこには、例えば、患者の身体画像や、薬液注入時間が表示されている。例えば、患者の身体画像は複数の身体区分からなるものであって、選択された身体区分(詳細下記)がハイライトされてもよい。これにより、ユーザが、現在どの身体区分が選択されているかを知ることができる。
【0107】
横長の情報表示バー435の右側には、シリンジの薬液量を表示する表示部436が表示されている。この例では「150ml」と表示されており、これは、シリンジ内の造影剤が150mlであることを表している。
【0108】
図13の画面で注入条件等を確認し、画面上のスタートボタン433またはコンソールの操作器(不図示)を押すと、図14のような画面が表示される。この画面では、スタートボタン433内の文字が「チェック」に変わり、また、ガイダンス画像453内の指示内容も変わっている。具体的には、注入ヘッド110上のチェックボタン115a(図2参照)を押すべき旨の情報が画像として表示されている。次いで、このチェックボタン115aまたはスタートボタン433を押すことにより、救急モードでの薬液注入がスタートする。
【0109】
本実施形態の構成によれば、ユーザは、(1)図12のホーム画面で救急モードを選択し、(2)次いでその注入条件を確認した後に画面上またはコンソールに対して「スタートOK」の入力を行い、(3)その後、注入ヘッドの所定のボタン(一例)を押すことで、救急モードで注入を安全かつ迅速に開始することができる。
【0110】
なお、救急モードを行う場合、まず図15のような画面が表示され、複数の注入条件の候補のうち1つを選択できるように構成されていてもよい。図15の例では、「頭部CTA」、「胸腹部CTA」、「腹部急性腹症(条件1)」、「腹部急性腹症(条件2)」、「腹部急性腹症(条件3)」が表示されている。このような構成によれば、救急モードであっても、部位や患者特性を考慮した好適な造影剤注入が可能となる。複数の注入条件の候補のうち1つを選択すると例えば図14の画面が表示される。
【0111】
上記のような例の他にも、次のように画像を表示する構成としてもよい。すなわち、上記同様図12のホーム画面で救急モードを選択し、それにより図15のような画面が表示される。図15の画面中のいずれかの注入条件候補を選択することで、図14の画面が表示される。そして、図14の画面中のチェックボタン433またはヘッド上のチェックボタンを押すと、アイコン433の表示が「チェック」から「スタートOK」に変わる(図13)。次いで、図13の状態で、ヘッド上のスタートボタンもしくはコントローラ157のスイッチを押すことで、注入がスタートする。このように、本発明において、画面の表示態様は必要に応じて変更可能である。
【0112】
(小児モード)
ホーム画面(図12)で小児モードアイコン411が選択されると、小児モードが開始され、ディスプレイには図16のような画面が表示される。画面左側には小児を表した縦形(一例)の人体画像461が表示される。この人体画像461は、選択可能な複数の身体区分(例えば頭部、胸部、腹部、脚部など)のアイコンを含んでいる。図16では、「胸部」が選択され、選択された当該区分がハイライトした状態が描かれている。
【0113】
選択された身体区分に応じて、予め設定された所定の注入条件がサムネイル画面465に表示される。一例として、ここでは、造影剤を1.5ml/secで20ml注入した後に生理食潜水を1.5ml/secで10ml注入する注入条件が表示されている。図16の画面中央には、また、小児の体重を設定するための体重表示部463aと、注入時間を表示する注入時間表示部463bが表示されている。
【0114】
上述のように構成された本実施形態の構成によれば、成人のみではなく、小児に対しても、各患者に応じた好適な注入条件を設定可能となる。小児モードにおいても図15のように複数の注入条件の候補を表示するようにしてもよい。もっとも、小児の場合、成人患者に比べて細かい注入条件の設定が不要なこともあるので、そのような機能が省略され、より迅速で簡単に設定が行える構成としてもよい。
【0115】
なお、小児の人体画像461は縦形に限定されるものではなく、横形に表されてもよい。具体的には、図20に示すような横形の小児の人体画像461′が表示されるようになっていてもよい。図20は、人体画像461′のうち1つの身体区分(胸部)が選択され、その区分に対応する撮像部位アイコン469(一例として「冠動脈」および「心機能」)が表示されている。人体画像に含まれる区分の数は特に限定されるものではない。また、小児モードは、例えば、小型シリンジ(一例で20ml)用のアダプタが注入ヘッドに装着された場合に開始されてもよい。具体的には、例えば、アダプタが装着された場合に図20のような小児の人体画像461′の画面に自動的に切り換わるように構成されていてもよい。
【0116】
(その他の注入モード)
図12のホーム画面で、プロット注入アイコン413またはテストボーラストラッキング注入アイコン414を選択すると、プロット注入モードまたはテストボーラストラッキング注入モードが開始される。これらの注入モードについては、従来より公知であるので詳細な説明は省略するが、本実施形態の構成によれば、ホーム画面から各種注入モードを直感的に選択できるので、ユーザの注入条件設定時に手間を軽減することが可能となる。
【0117】
なお、図12に表示されたアイコン411~414の内容は何ら本発明を限定するものではない。すなわち、他の条件設定方式(例えば体重入力モード、除脂肪体重モード、体表面積モード、血液量モードなど)のためのアイコンを、ユーザの好みに応じて、ホーム画面上に表示させることができるように構成されていることが好ましい。
【0118】
これらの注入モード/条件設定方式も従来公知のものを利用可能であるが、例えば除脂肪体重モードとして図17のような画面が表示されてもよい。この画面では、患者体重、身長、薬液情報、注入条件などに加えて、患者が男性であるか女性であるかを選ぶためのアイコン473が表示されている。また、ウィンドウ471には、現在除脂肪体重モードが選択されていることを示す「LBW」の表示および、体重あたりのヨード量(540mgl/Kg)が表示されている。
【0119】
各注入モードにおいては、従来公知のユーザに対する所定の警告がなされるように構成されていてもよい。例えば、設定される注入速度、注入量、または注入圧力が所定の基準値を超えるまたは下回る場合に、警告が発せられるような構成としてもよい。この際、警告だけでなく、対象の動作を強制停止するような構成としてもよい。
【0120】
(医師選択アイコン)
図12に示すように、本実施形態では注入装置を使用する医師をアイコンで選択できるようになっている。図12では、一例として、4人の医師(ユーザ1~4)が表示されている。ユーザ1のアイコンに付いているチェックマークは、この医師がデフォルトの医師であること(つまり、医師の選択が行われない場合にはこの医師1が選択される)を示している。
【0121】
本実施形態によれば、各医師は、予め、自分の好みに従った注入条件を設定しておくことができる。(i)一例として、図4に示したような部位選択モードにおいて、各身体区分を押した際にどのような撮像部位が表示されるか、(ii)どの程度の注入時間、注入速度とするか、(iii)どのような注入パターンを利用するか等を詳細に設定できるように構成されている。
【0122】
このような構成によれば、医師は、自分の好みに従った条件設定モードを使用可能となる。
【0123】
なお、各医師の好みに従って他の事項(例えば、どのようなアイコンをホーム画面に表示するか、各アイコンをどのような配置で表示するかなど)を自由に変更できるように構成されていてもよい。例えば、図12のホーム画面の上段に表示されているアイコンを中段に表示し、中段に表示されているアイコンを上段に表示してもよい。
【0124】
一方で、ホーム画面から削除できないアイコンが設定されていてもよい。例えば、救急モードがどの病院でも比較的重要と考えられる場合には、上述のように、この救急モードのアイコンをホーム画面に必ず表示し、他のアイコンのみが、好みのアイコンに変更できる構成としてもよい。
【0125】
(各種機能を実施するためのアイコン等)
ホーム画面(図12)の「プロトコル設定」のアイコンは、注入プロトコルを新規に設定したり、既存の注入プロトコルを変更したりするためのものである。注入プロトコルとしては、特に限定されるものではないが、薬液の注入速度が時間とともに変化する可変注入と呼ばれるプロトコルや、造影剤の注入の後に生理食塩水の注入が行われるようなプロトコルなど種々の方式を設定できることが好ましい。
【0126】
なお、「プロトコル設定」のモードにおいて、注入プロトコルの新規登録や変更が行い易いようにガイダンスが表示されてもよい。一例として、注入プロトコルとして設定すべき幾つかの項目が並んで表示されており、項目ごとに具体的な数値範囲などを入力していくことで、登録または変更が完了するような設定画面を利用してもよい。項目の配列方向は、上下方向であってもよいし、左右方向であってもよい。
【0127】
「環境設定」のアイコンは様々な設定を行うためのものであり、例えば、日時の設定、音量の設定、他の医療機器との連携(連動)のための設定、漏出検出の設定などが挙げられる。
【0128】
「ユーザ編集」のアイコンは、医師の新たな設定登録や、既に登録してある事項の変更のためのものである。
【0129】
「注入結果」のアイコンは、薬液の結果を表示するためのものであり、例えば、1回の薬液注入における注入グラフを表示させてもよいし、または、過去に行われた複数回分の薬液注入のデータ(一例として、日時、注入パターン、注入速度、注入量、注入圧力、造影剤製品名など)の一覧を表示させてもよい。図19は、造影剤注入装置1と外部の医療システムとの連携例を示す図である。このように、薬液注入の結果のグラフ485(一例として、どのような圧力でどのような薬液がどれくらいの時間注入されたかの情報を含む)が外部出力され、撮像装置によって撮像された診断画像とともに表示されてもよい。
【0130】
なお、本実施形態のコンソール150には次のような種々の画面が表示されてもよい。図18は、コンソール150が撮像装置300に接続された状態を示しており、画面左上には、撮像装置300と接続されていることを示す画像481が表示されている。この場合、撮像装置(スキャナ)300側から所定の注入条件プロトコルが読み込まれ、そのプロトコルが注入条件として設定されるようになっていてもよい。画面上のメッセージウインドウ483には、一例として、「スキャナからプロトコルが設定されました」とのメッセージが表示される。
【0131】
なお、本実施形態の造影剤注入装置においては、デフォルトとして登録された部位画面がまず表示され、例えばホームボタン(コンソールのハードキー)を押すことで、ホーム画面が表示されるように構成されていてもよい。ホームボタンを押す代わりに、タイマーが設定されており、所定の時間で自動的にホーム画面を表示させてもよい。
【0132】
上記に説明した本セクションに係る主な発明の要旨は下記の通りである。
1.シリンジ内の薬液を患者に向けて注入するための注入ヘッドと、タッチパネル式のディスプレイを有し前記注入ヘッドと通信可能に構成されたコンソールとを備えた造影剤注入装置であって、
複数のアイコンがマトリクス状に配置され、かつ、注入モードまたは条件設定方式を選択するための選択用アイコンを含んでいるホーム画面を前記ディスプレイに表示する処理と、
前記選択用アイコンのうち1つが選択された場合に、そのアイコンに対応する注入モードまたは条件設定方式の画面を表示する処理と、
を行うように構成された、造影剤注入装置。
【0133】
2.前記選択用アイコンとして、
予め設定された注入速度および注入時間の注入条件で注入を実施する救急モード用のアイコンが含まれている、上記1に記載の造影剤注入装置。
【0134】
3.前記救急モードにおいては、
前記注入ヘッドおよび/または前記コンソールに対してどのような操作をすべきかを案内するガイダンス画面が表示されるように構成されている、上記2に記載の造影剤注入装置。
【0135】
4.前記救急モードにおいては、
複数の注入条件の候補が表示され、その1つを選択できるように構成されている、上記2または3に記載の造影剤注入装置。
【0136】
5.前記選択用アイコンとして、
小児に対する注入条件を設定するための小児モード用のアイコンが含まれている、上記1または2に記載の造影剤注入装置。
【0137】
6.前記選択用アイコンとして、さらに、
体重入力モード、除脂肪体重モード、体表面積モード、および血液量モードから選択される少なくとも1つモードためのアイコンが含まれている、上記1~5のいずれか1つに記載の造影剤注入装置。
【0138】
7.さらに、
前記ディスプレイに、当該装置を使用する医師を選択するための医師選択用アイコンを表示する処理を行うように構成されている、上記1~6のいずれか1つに記載の造影剤注入装置。
【0139】
8.前記医師選択用アイコンの1つが押されると、その医師の好みに設定された条件設定モードが設定される、上記7に記載の造影剤注入装置。
【0140】
〔セクションC:注入装置のさらに別の機能について〕
(C-1:セルフチェック)
本発明の注入装置は次のような動作を行うように構成されていてもよい。
【0141】
本発明の一形態の注入装置は、主電源(例えばコンソール150の主電源)が入れられると「セルフチェック」と呼ばれる一連の動作を自動的に実施するものであってもよい。「セルフチェック」では、注入ヘッド110のピストン駆動機構130や所定のスイッチまたはセンサ等を動作させ、正常に動作するか否かをチェックする。例えば、ピストン駆動機構130であれば、その駆動源であるモータを実際に回転させてみて、正常な動作が行われているかどうかをチェックする。この場合、モータの回転量は微小であってもよく、例えば、薬液注入(造影のための本注入や、本注入前の所定の事前注入)での回転量よりも少ない回転量でチェックが実施されてもよい。
【0142】
また、スイッチやセンサ等の場合には、例えば、それらの部品の通電状態を確認する、もしくは、出力値が所定の範囲内であるかどうかを確認する等のチェックをする。また、機器同士の接続が正常であるかどうかのチェックが行われてもよい。
【0143】
セルフチェックの結果は、図21に示すように、ディスプレイ上に順次表示されるように構成されていてもよく、図21の例では「速度」、「量」、「圧力」、「STOP」「スイッチ」、「接続」などの項目が順次チェックされる。
【0144】
このような構成によれば、注入装置の起動時のセルフチェックによって注入装置の各機能が正常であることを確認したうえで注入装置の使用を開始することができるので、注入装置の故障や接続不良などに起因するトラブルを未然に防止することができる。
【0145】
(C-2:プロトコル設定時のガイダンス機能)
例えば図13では「i」ボタン453aを押すことにより所定のガイダンス画像が表示されることを述べたが、このようなガイダンス画像が、例えば注入プロトコル(すなわち注入条件)を設定する手順の中で表示されるように構成されていてもよい。例えば、注入プロトコルを設定するために幾つかの項目の入力が必要な場合、1つの項目の入力が終了した後に、例えば、次の入力項目が何であるか等を示すガイダンス表示がされてもよい。このようなガイダンス表示は、自動的に表示されるものであってもよいし、ユーザによって所定の入力がなされた場合に表示されるものであってもよい。
【0146】
(C-3:TBTモード)
従来、撮像装置の撮像タイミングを決定するために例えばテストインジェクション法やボーラストラッキング法を使用することが提案されている。ボーラストラッキング法の詳細については、例えば、本出願人によって先に出願されたWO2011/136218等にも記載されているので詳しい説明は省略するが概要は次の通りである:ボーラストラッキング法では、造影剤の注入しながら所定の関心部位のCT値上昇を撮像装置で監視し、CT値が所定値に達したことをトリガとして、その後所定の遅延時間を挟んで、本スキャンが開始される。本実施形態の注入装置においては、図12の画面のアイコン414にタッチすることで、このボーラストラッキングモードに入るように構成されている。
【0147】
ボーラストラッキングテストにおいては、WO2011/136218にも記載されている通り、最初の造影剤注入後の遅延時間の間に、患者が息を止めこれにより心拍数を安定させることが行われる。このような一連の注入に関して、例えば図22に示すように、コンソールのディスプレイに生理食塩水および造影剤の注入条件701と、ボーラストラッキングのタイムライン702のウィンドウが表示される構成としてもよい。タイムライン702のウィンドウ内において、符号703で示した部分がインターバル(遅延時間)部分であり、ここに、例えば「遅延」、「息止め」、「心拍安定」等の文字情報を表示してもよい。それら各々には、対応する秒数(ここではいずれも5sec)が表示されていてもよい。
【0148】
薬液の注入が開始された場合、例えば図23のように現在の注入状況が表示されるようになっていてもよい。特に、画面上部のステータスバー部に、現在どのプロセスが行われているかを示すインジケータ731~733が表示されるようになっていてもよい。インジケータ731は「テストボーラス」注入が行われていることを示し、インジケータ732はインターバル中であることを示し、インジケータ733は「ボーラス」注入が行われていることを示す。図23では、インジケータ732がハイライトした状態となっており、現在インターバル中であることを示している。
【0149】
(C-4:外部記録媒体へのデータ書き出し)
本発明の一形態の注入装置では、注入が終了した後、その注入結果の情報等を外部の記憶媒体に書出し可能に構成されていてもよい。この記憶媒体としては、コンソールの所定のスロット(不図示)に差し込まれるメモリ媒体であってもよい。書き出される情報は特に限定されるものではなく、注入結果に関するものであればどのようなものであってもよい。注入結果を他のパーソナルコンピュータ等でも利用しやすいようにCSV方式でデータが書き出されてもよい。ただし、データの方式はこれに限定されるものではなく、様々な方式を利用可能である。上記のような注入結果の書出しは、メモリ等の記憶媒体に限らず、例えばネットワークを介して所定のシステム(例えば病院管理システムなど)に送られ、その内部の記憶装置に保存されてもよい。
【0150】
(C-5:ヘッドディスプレイでの情報の表示)
本発明はさらに、次のような機能を備えていてもよい。例えば、注入ヘッド110がサブディスプレイ(ヘッドディスプレイともいう)を備えている場合、例えば図9に示したような注入中の圧力グラフがこのヘッドディスプレイに表示されるように構成されていてもよい。具体的には、コンソール側とヘッド側とが同期して、メインディスプレイおよびヘッドディスプレイの少なくとも一方に圧力グラフをリアルタイムで表示するようにしてもよい。例えば「ルート確認」を行なっている間の圧力グラフがヘッドディスプレイに表示されてもよい。「ルート確認」は、主に、薬液ルートが正常に確保されているかどうか(例えば、注入針が正常に穿刺されているか、チューブにキンクが生じていないか等)を確認するためのものである。したがって、このようなルート確認における圧力グラフを、患者の近くのヘッドディスプレイで確認できることは、注入針の穿刺異常を見つけたり、キンク箇所を直したりする作業がやりやすくなる点で好適である。
【0151】
なお、ルート確認のための薬液注入における注入速度が、いわゆる本注入における注入速度と自動的に同じになるように構成されていてもよい。あるいは、本注入の注入速度とは別に、ルート確認の注入速度を設定する構成であってもよい。
【0152】
ヘッドディスプレイは図24のような構成であってもよい。この構成では、ヘッド支持構造A158に、注入ヘッド110とヘッドディスプレイA151とが保持されている。ヘッド支持構造A158は、従来公知の可動式スダンドであってもよいし、天井に備え付けられる多関節の支持アームであってもよい。ヘッドディスプレイA151は、連結機構A155を介してヘッド支持構造A158に接続されている。特に限定されるものではないが、ヘッドディスプレイA151が、ヘッド注入110と間隔をあけて、ヘッド上方に位置していてもよい。連結機構A155は、例えば、鉛直軸周りおよび/または水平軸周りにヘッドディスプレイA151が回動できるように、該ディスプレイを保持するものであってもよい。このような構成によれば、ヘッドディスプレイの向きを広範囲で調整できるので、オペレータがディスプレイをより視認しやすいものとなる。
【0153】
ヘッドディスプレイA151は、図25のブロック図のように構成されていてもよい。図25のヘッドディスプレイA151以外の構成は図3Aと同じであるので重複説明は省略する。ヘッドディスプレイA151は、インターフェースを介して注入ヘッド110およびコンコール150と通信可能であり、一例として、制御部とタッチパネル式ディスプレイと操作ボタンを有していてもよい。「操作ボタン」は、ヘッドディスプレイA151に設けられた物理的ボタンであってもよい。ただし、操作ボタンを備えていない構成としてもよい。このように、本発明においては、ヘッドディスプレイA151に種々の機能を持たせてもよい。
【0154】
以上、本発明の一形態に係る薬液注入装置について、幾つかのセクションにわたって説明したが、当然ながら、本発明は各セクションに記載した特徴を適宜組み合せてもよい。
【0155】
本発明のさらに他の一形態の注入装置は下記の通りである:
シリンジが装着され該シリンジ内の薬液を患者に向けて注入する注入ヘッドと、タッチパネル式のディスプレイを有するコンソールとを備え、前記シリンジ内の造影剤を患者に注入する注入装置であって、
(a)前記ディスプレイに複数の撮像部位の画像を表示する処理と、
(b)それらの撮像部位のうち1つが選択された場合に、その撮像部位に対応する注入時間を読み出す処理と、
(c)患者に注入すべき造影剤の量を決定する処理と、
(d)決定されたその造影剤量と前記注入時間とに基づいて、造影剤の注入速度を決定する処理と、
(e)前記注入時間と前記注入速度との関係を示す注入条件のグラフを、サムネイル画像として前記ディスプレイに表示する処理と、
(f)その後、前記ディスプレイ上の所定のアイコンおよび/または前記注入ヘッドの所定のボタンが押された場合に、前記注入条件に従った注入を実施できる状態とする処理と、
を行うことを特徴とする、注入装置。
【0156】
本発明において、注入ヘッドは、シリンジの識別タグの情報を読み込む機能を有していないものであってもよい。この場合、例えば、コンソールがオペレータからの入力を受け付ける入力受付部(不図示)を備えており、それを介して識別タグの情報の少なくとも一部に相当する情報が入力されてもよい。具体的な例としては、ディスプレイ上にプルダウン方式で表示された選択肢を選ぶことで、所定のパラメータがオペレータによって入力されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0157】
110 注入ヘッド
113 ピストン駆動機構
150 コンソール
151 ディスプレイ
161 人体画像
161a~161d 身体区分のアイコン
164 アイコン群
164a~164d 撮像部位のアイコン
169a~169c 体重区分のアイコン
175 サムネイル画像
175a、175b 条件画像
200A、200B シリンジ
300 撮像装置
411~414 アイコン
415 医師選択用アイコン
416 アイコン
450 ウィンドウ
453 ガイダンス画面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25