(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009577
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/47 20200101AFI20240116BHJP
【FI】
D06F33/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111209
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】馬飼野 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】傅 瀛申
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸司
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA04
3B167AE05
3B167AE12
3B167AE13
3B167BA86
3B167BA91
3B167BA92
3B167HA07
3B167HA11
3B167HA21
3B167HA22
3B167HA31
3B167HA56
3B167KA71
3B167KA78
3B167LC23
3B167LC25
3B167MA03
3B167MA15
3B167MA17
(57)【要約】
【課題】外槽固定金具が設置されている状態の検知精度を向上させ、又は弾性支持機構の異常を検知する。
【解決手段】本発明のドラム式洗濯機100は、駆動機構10により回転駆動されるドラム8と、ドラム8を内包する外槽9と、外槽9を収容する筐体1と、外槽9と筐体1の間に配置されるリニアアクチュエータ30と、外槽9と筐体1の間に配置される弾性支持機構18と、駆動機構10を制御する制御装置40と、リニアアクチュエータ30の推力を制御するリニアアクチュエータ制御部44と、外槽9の振動を検出する外槽振動センサ16と、ドラム式洗濯機100の異常を診断する異常診断部45を備える。リニアアクチュエータ制御部44は、リニアアクチュエータ30の推力を制御して外槽9を加振させる。異常診断部45は、外槽振動センサ16の検出結果に基づき、ドラム式洗濯機100の異常を診断する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構により回転駆動される内槽と、前記内槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記外槽と前記筐体の間に配置されるリニアアクチュエータと、前記外槽と前記筐体の間に配置される弾性支持機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、前記リニアアクチュエータの推力を制御するリニアアクチュエータ制御部と、を備えたドラム式洗濯機において、
前記外槽の振動を検出する振動センサと、前記ドラム式洗濯機の異常を診断する異常診断部を備え、
前記リニアアクチュエータ制御部は、前記リニアアクチュエータの推力を制御して前記外槽を加振させ、
前記異常診断部は、前記振動センサの検出結果に基づき、前記ドラム式洗濯機の異常を診断することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
請求項1において、
前記異常診断部が異常と判断した場合、異常があることを報知する報知手段を備えたことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記異常診断部は、前記振動センサで検出された振動が所定の閾値よりも小さい場合、前記外槽と前記筐体とを接続する外槽固定金具が取り付けられていると異常判断することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項4】
請求項3において、
前記リニアアクチュエータ制御部は、共振よりも低い加振周波数となるように前記リニアアクチュエータの推力を制御することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項5】
請求項3において、
前記ドラム式洗濯機は試運転モードを備え、
前記リニアアクチュエータ制御部は、前記試運転モードが選択された時に前記リニアアクチュエータの推力を制御して前記外槽を加振することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項6】
駆動機構により回転駆動される内槽と、前記内槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記外槽と前記筐体の間に配置されるリニアアクチュエータと、前記外槽と前記筐体の間に配置される弾性支持機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、前記リニアアクチュエータの推力を制御するリニアアクチュエータ制御部と、を備えたドラム式洗濯機において、
前記リニアアクチュエータの振動又は変位を検出する変位センサと、前記ドラム式洗濯機の異常を診断する異常診断部を備え、
前記リニアアクチュエータ制御部は、前記リニアアクチュエータの推力を制御して前記外槽に静的な推力を付与し、その後、前記リニアアクチュエータの推力を0とし、前記外槽を自由振動させ、
前記異常診断部は、前記変位センサで検出された振動変位の低下率から求める減衰係数が所定の範囲に入らない場合、前記弾性支持機構に異常ありと判断することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項7】
請求項6において、
前記異常診断部が異常と判断した場合、異常があることを報知する報知手段を備えたことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項8】
駆動機構により回転駆動される内槽と、前記内槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記外槽と前記筐体の間に配置されるリニアアクチュエータと、前記外槽と前記筐体の間に配置される弾性支持機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、前記リニアアクチュエータの推力を制御するリニアアクチュエータ制御部と、を備えたドラム式洗濯機において、
前記リニアアクチュエータの振動又は変位を検出する変位センサと、前記ドラム式洗濯機の異常を診断する異常診断部を備え、
前記リニアアクチュエータ制御部は、前記リニアアクチュエータの推力を制御して前記外槽に静的な推力を付与し、
前記異常診断部は、前記変位センサで検出された変位が所定値以下の場合、前記外槽と前記筐体とを接続する外槽固定金具が取り付けられていると判断することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項9】
駆動機構により回転駆動される内槽と、前記内槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記外槽と前記筐体の間に配置されるリニアアクチュエータと、前記外槽と前記筐体の間に配置される弾性支持機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、前記リニアアクチュエータの推力を制御するリニアアクチュエータ制御部と、を備えたドラム式洗濯機において、
前記外槽の振動を検出する振動センサと、前記ドラム式洗濯機の異常を診断する異常診断部を備え、
前記リニアアクチュエータ制御部は、前記外槽の加振力の振幅が一定となるように、且つ前記外槽への加振周波数を変化させるように前記リニアアクチュエータの推力を制御し、
前記制御装置は、共振周波数付近で前記外槽を加振した時の前記振動センサの検出値と共振周波数からずれた周波数で前記外槽を加振した時における前記振動センサの検出値の比から減衰の大きさを算出し、
前記異常診断部は、算出された減衰の大きさが所定値を超えた場合、前記弾性支持機構に異常ありと判断することを特徴とするドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラム式洗濯機では、水を貯める外槽の内側にドラムを回転可能に支持している。また、ドラム式洗濯機では、このドラムを回転させて衣類を持ち上げ、落下させることで洗濯を行う。さらに、ドラム式洗濯機では、ドラムを高速で回転させることにより脱水を行う。この時、衣類がドラムの回転軸に対して偏ってドラム側面に張り付くと、そこに作用する遠心力により外槽が振動する。この振動を抑制し、外枠への伝達を低減するために、外槽は外枠に弾性支持されている。
【0003】
ドラム式洗濯機は設置する際にいくつかの初期作業が必要となっている。例えば、洗濯機本体と家屋に設けられた水栓を給水ホースで接続したり、本体のがたつきが無くなるように、本体下部に設けられた高さ調整用の脚を調整したりする必要がある。また、前述のように外槽は筐体に弾性支持されており、そのまま輸送すると輸送時の振動などにより外槽が他の部品と接触し、破損する恐れがある。そこで、ドラム式洗濯機では、外槽を筐体に固定するための外槽固定金具を設置して輸送するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、この外槽固定金具を固定した状態でドラム式洗濯機の運転を行うと、脱水時の外槽の振動が減衰されずに筐体へ伝達され、筐体の振動が過大になるという課題がある。そのため、ドラム式洗濯機では、運転前に外槽固定金具を確実に取り外す必要がある。
【0005】
外槽固定金具の取り外しを抑制する技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、制御手段が、布量検知工程でモータに所定の加速トルクを発生させ、回転ドラムの回転を加速して水受け槽などの振動系の1次の共振周波数以下の所定回転数N2まで上昇させる。制御手段は、水受け槽に取り付けた加速度センサーからの信号を検出し、水受け槽の前後方向または上下方向、左右方向の最大加速度を加速度検知手段で検知する。そして、制御手段は、最大加速度が予め設定した基準値と比較して小さい場合、移送金具ありと検知し、移送金具が解除されていないことを表示手段に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、衣類がドラム側面に均等に張り付き、外槽の振動が微小となった場合は、外槽固定金具(移送金具)の設置の有無に関わらず、外槽固定金具が取付けられている状態と誤判定する可能性があった。
【0009】
また、ドラム式洗濯機には、運転時の振動を抑制するダンパ等の機械減衰機構が備えらえているが、特許文献1ではこの機械減衰機構の異常を検知する点については考慮されていなかった。
【0010】
本発明の目的は、外槽固定金具が設置されている状態の検知精度を向上させ、又は弾性支持機構の異常を検知するドラム式洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のドラム式洗濯機は、駆動機構により回転駆動される内槽と、前記内槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記外槽と前記筐体の間に配置されるリニアアクチュエータと、前記外槽と前記筐体の間に配置される弾性支持機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、前記リニアアクチュエータの推力を制御するリニアアクチュエータ制御部と、を備えたドラム式洗濯機において、前記外槽の振動を検出する振動センサと、前記ドラム式洗濯機の異常を診断する異常診断部を備え、前記リニアアクチュエータ制御部は、前記リニアアクチュエータの推力を制御して前記外槽を加振させ、前記異常診断部は、前記振動センサの検出結果に基づき、前記ドラム式洗濯機の異常を診断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外槽固定金具が設置されている状態の検知精度を向上させ、又は弾性支持機構の異常を検知するドラム式洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ドラム式洗濯機100を示す外観斜視図である。
【
図2】ドラム式洗濯機100の内部構造を示すために筺体の一部を切断して示した右側面断面図である。
【
図3】ドラム式洗濯機100の内部構造を示すために筺体の一部を切断して示した正面断面図である。
【
図4】リニアアクチュエータ30の内部構造を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の実施例1に係るアクティブ制振支持機構17の構造を示す模式図である。
【
図7】本発明の変形例に係るアクティブ制振支持機構17の構造を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施例1に係る制御装置40のブロック図である。
【
図10】変位センサ39の出力の時間変化を示す図である。
【
図11】本発明の実施例2に係る外槽固定金具の診断方法を示す図である。
【
図12】本発明の実施例3に係る加振周波数と外槽振動センサの出力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、同一の要素については、全ての図において、原則として同一の符号を付している。また、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。なお、以下に説明する構成はあくまで実施例に過ぎず、本発明に係る実施様態が、以下の具体的様態に限定されることを意図する趣旨ではない。
【実施例0015】
図1から
図12を用いて、本発明の実施例1に係る制振システム、および、それを用いたドラム式洗濯機を説明する。以下の実施例では、矢印にて示すように、ドラム式洗濯機を正面から見て、正面側を「前」、反正面側を「後」、天井側を「上」、床面側を「下」、左側を「左」、右側を「右」と定義する。
【0016】
<ドラム式洗濯機100>
まず、
図1から
図3を用いて、実施例1の制振システムを搭載した、ドラム式洗濯機100の構造を説明する。
図1は、ドラム式洗濯機100を示す外観斜視図である。
図2は、ドラム式洗濯機100の内部構造を示すために筺体の一部を切断して示した右側面断面図である。
図3は、ドラム式洗濯機100の内部構造を示すために筺体の一部を切断して示した正面断面図である。なお、以下の実施例では、制振システムをドラム式洗濯機100に搭載する例で説明するが、制振システムは縦型洗濯機に搭載するようにしても良い。
【0017】
各図に示すように、ドラム式洗濯機100の外郭を構成する筺体1は、ベース1aの上に取り付けられており、左右の側板1b、前面カバー1c、背面カバー、上面カバー1d、上面カバーパネル1e、前面下部カバー1fで構成されている。左右の側板1bはコの字型の上補強材、前補強材、後補強材に結合されており、ベース1aを含めて箱状の筺体1を形成し、十分な強度を有している。
【0018】
ドア2は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐためのもので、開閉可能に支持されている。筺体1の上部中央に設けた操作・表示パネル3は、電源スイッチ4、操作スイッチ5、表示器6を備える。操作・表示パネル3は、筺体1上部に設けた制御装置7に電気的に接続している。また、ベース1aの4隅下部にはゴム製の脚1hが設けられている。
【0019】
図2に示すドラム8(内槽)は外槽9に回転可能に支持されており、その外周壁および底壁に通水のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部8aを設けている。開口部8aの外側にはドラム8と一体の流体バランサ8bを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ8cが複数個設けてあり、洗濯、乾燥時にドラム8が回転すると、衣類はリフタ8cと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下する動きを繰り返す。ドラム8の回転軸Azは、略水平または開口部8a側がやや高くなるように傾斜している。
【0020】
円筒状の外槽9はドラム8を同軸上に内包し、後側端面の外側中央に駆動機構10を設けている。駆動機構10のシャフト10aは外槽9を貫通し、ドラム8と結合している。ドラム8は駆動機構10によって回転駆動される。
【0021】
外槽9は筐体1に収容され、前側中央に衣類を出し入れするための開口部9aを有している。また、駆動機構10には回転速度を検出する回転速度センサ10bが設けられている。外槽9上部には前後方向に前補助ばね9c、後補助ばね9dが設けられており、外槽9が前後方向に倒れないように支持している。
【0022】
外槽9の開口部9aと筺体1に設けた開口部は、ゴム製のベローズ11で接続しており、ドア2を閉じることで外槽9を水封する。排水口9bは外槽9の底面最下部に設けられており、内部排水ホース12と接続している。内部排水ホース12は糸屑を捕集するための糸屑捕集ボックス13を介して、外部排水ホース14に接続している。糸屑捕集ボックス13には、洗濯水を循環するための循環ポンプ15が設けられており、循環経路15aを介して水をドラム8内に散布する。外部排水ホース14には排水弁14aが設けてあり、排水弁14aを閉じて給水することで外槽9に水を溜め、排水弁14aを開いて外槽9内の水を機外へ排出する。
【0023】
外槽9の下部には外槽振動センサ16(振動センサ)を設けており、外槽9の振幅を測定している。前記振幅と予め設定しているしきい値を比較し、振幅が大きい場合にはドラム8の回転を停止させて、振動がしきい値以下となった場合のみ回転速度を上昇させることで、過大な振動の発生を抑制している。
【0024】
また、輸送時においては、輸送中の振動によって外槽9と筐体1の接触を防止するために、外槽9の後方上部と筐体1を外槽固定金具9eで接続し、外槽9が筐体1に対して振動しないように固定している。
【0025】
図3に示すように、外槽9は、下側をベース1aに固定したアクティブ制振支持機構17と弾性支持機構18によって防振支持されている。アクティブ制振支持機構17は、コイルばね17aとリニアアクチュエータ30で構成されており、弾性支持機構18は、コイルばね18aと機械減衰機構18bで構成されている。機械減衰機構18bは摩擦式のダンパや油圧式のダンパなどがあるが、実施例1では油圧式のダンパとする。
【0026】
ここで、ドラム8の脱水時の回転方向に対して、下向きの速度を持つ側(例えば、ドラム8が反時計回りに回転する場合は左側)にリニアアクチュエータ30を有するアクティブ制振支持機構17を設け、上向きの速度を持つ側に機械減衰機構18bを有する弾性支持機構18を設ける。以後、実施例1ではドラム8の回転方向を反時計回りとし、左側と表記した場合はドラム8の回転方向に対して下向きの速度を持つ側を指し、右側と表記した場合は上向きの速度を持つ側を指すこととする。
【0027】
<リニアアクチュエータ30>
次に、
図4から
図5を用いて、リニアアクチュエータ30の構造について説明する。
図4は、リニアアクチュエータ30の内部構造を示す縦断面図である。なお、
図4の矢印で示すように、xyz軸を定める。また、z方向においてリニアアクチュエータ30の半分を図示しているが、リニアアクチュエータ30の構成は、xy平面を基準として対称になっている。
【0028】
リニアアクチュエータ30は固定子31と可動子32を備えており、固定子31と、y方向に延びる板状の可動子32との間のy軸方向への磁気的な吸引力・反発力によって、固定子31と可動子32との相対位置をy方向に直線的に変化させるモータである。
【0029】
固定子31は、電磁鋼板を積層して構成されるコア31aとこのコア31aの磁極歯Tに巻回される巻線31bを備えている。また、可動子32はy方向に延びる複数の金属板32aと、y方向で所定の間隔を設けて金属板32aに設置される永久磁石32b1、32b2、32b3を備えている。
【0030】
図5は、
図4のV-V線矢視断面図である。なお、
図5ではz方向におけるリニアアクチュエータ30の半分(
図4参照)ではなく、リニアアクチュエータ30の全体を図示している。
図5に示すように、固定子31のコア31aは、ロ字状の環状部Sと、一対の磁極歯T(T1、T2)を備えており、この環状部Sによって磁気回路が構成されている。
【0031】
一対の磁極歯T1、T2は、環状部Sからx方向内側に延びており、互いに対向している。なお、磁極歯T1、T2の間の距離は、板状の可動子32の厚さよりも若干大きくなっている。磁極歯T1、T2には、それぞれ、巻線31b(31b1、31b2)が巻回されている。この巻線31bに通電することによって、固定子31が電磁石として機能するようになっている。
【0032】
図4に戻り、
図4では、y方向(可動子32の移動方向)において、2対の磁極歯Tが設けられている。また、2対の磁極歯Tのそれぞれに巻回されている巻線31bは、一本の巻線をなしており、その両端が制御装置7(
図2参照)に接続されている。
【0033】
図4に示す永久磁石32b
1、32b
2、32b
3は、y方向に磁化されている。より詳しく説明すると、y方向正側の向きに磁化された永久磁石(例えば、永久磁石32b
1、32b
3)と、y方向負側の向きに磁化された永久磁石(例えば、永久磁石32b
2)とがy方向において交互に配置されている。そして、可動子32と、電磁石として機能する固定子31との吸引力・反発力によって、可動子32にy方向の推力が作用するようになっている。なお、「推力」とは、可動子32と固定子31との相対位置を変化させる力である。
【0034】
<アクティブ制振支持機構17>
図6は、本発明の実施例1に係るアクティブ制振支持機構17の構造を示す模式図である。先述のように、アクティブ制振支持機構17は、主に、コイルばね17aとリニアアクチュエータ30からなる。
【0035】
図6に例示するアクティブ制振支持機構17では、リニアアクチュエータ30の固定子31を外槽9に接続し、可動子32を筺体1に接続している。この場合、固定子31の上端は、外槽側サスペンションベース33、ゴム製のブッシュ35a、35b及び金属板37a、37bを貫通し、ナット38aで固定されている。
【0036】
一方、可動子32の下端は筺体側サスペンションベース34、ゴム製のブッシュ35c、35d及び金属板37c、37dを貫通し、ナット38bで固定されている。外槽側サスペンションベース33は外槽9に接続されており、筺体側サスペンションベース34は筺体1に固定されている。コイルばね17aは固定子31と金属板37dの間に配置されている。また、固定子31には変位センサ39が設けられており、固定子31と可動子32のy軸方向の距離を測定できる。
【0037】
図6では、リニアアクチュエータ30の固定子31を外槽9に接続し、可動子32を筺体1に接続しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
図7は、本発明の変形例に係るアクティブ制振支持機構17の構造を示す模式図である。
図7に示すように、変形例では、
図6のアクティブ制振支持機構17を反転させ、リニアアクチュエータ30の固定子31を筺体1に接続し、可動子32を外槽9に接続している。この場合、固定子31は筺体側サスペンションベース34、ゴム製のブッシュ35c、35d及び金属板37c、37dを貫通し、ナット38bで固定されている。一方、可動子32の上端は外槽側サスペンションベース33、ゴム製のブッシュ35a、35b及び金属板37a、37bを貫通し、ナット38aで固定されている。また、コイルばね17aは固定子31と金属板37bの間に配置されている。
【0039】
図4に示したように、固定子31は巻線31bを有しており、巻線31bの両端を制御装置7(
図2参照)に接続する必要がある。そこで、変形例に示すように、固定子31を筺体1側に接続することにより、巻線31bの両端と制御装置7を接続するハーネスが、外槽9が振動することによって発生する断線のリスクを低減することができる。
【0040】
<制御装置>
次に、
図8を用いて実施例1の制御装置40及び異常診断部45について説明する。
図8は、本発明の実施例1に係る制御装置40のブロック図である。
【0041】
ドラム8の回転速度は、回転速度センサ10bで測定し、制御装置40内の回転速度演算部41で算出する。また、外槽9の振動検出は外槽振動センサ16で行い、振動変位算出部42は外槽振動センサ16の出力と回転速度演算部41で算出された回転速度に基づいて、加速度を変位に換算している。振動判定部43は算出された変位と予め設定されたしきい値を比較し、振動が大きいと判断した場合には、ドラム8の回転を停止するなどの動作を行う。
【0042】
実施例1では、脱水時の振動を低減するためにリニアアクチュエータ30による制振制御を行うが、変位センサ39の出力に基づいて、リニアアクチュエータ制御部44が必要な推力を算出し、リニアアクチュエータ30の制御を行う。
【0043】
次に、異常診断部45は、振動変位算出部42の出力、もしくは変位センサ39の出力の内、少なくとも一方の情報に基づき、異常の有無を診断する。なお、異常診断部45は必ずしも制御装置40内に設ける必要はなく、独立していても構わない。
【0044】
異常診断部45が異常と判断した場合、異常があることを表示器6(報知手段)に表示(報知)することで使用者などに報知する。報知手段は表示器6に限らず、スピーカなどで音声やブザー音で報知しても構わない。さらに、図示しないが、無線や有線通信にて洗濯機以外の外部端末、例えばスマートフォンなどの診断用ツールなどに異常を報知してもよい。さらには、保守作業者が使用する情報端末に異常を報知するようにしても構わない。
【0045】
また、制御装置40は異常診断部45が異常と判断した際には、修理後などに再診断を行い、異常なしと判断されるまでは、通常の運転を行わないように制限を掛ける。これにより、異常が生じたまま洗濯機を運転させることで、異常振動などが発生するのを抑止することができる。
【0046】
<初期不良診断>
前述のように、一般的にドラム式洗濯機を設置する場合、給水ホース、排水ホースの接続や、本体下部の高さ調整脚の調整、輸送用の外槽固定金具9eの取り外し作業が必要になる。その後、ドラム式洗濯機が正しく設置されたかどうかを確認するために、制御装置40はドラム式洗濯機を試運転モードで運転し、異常がないかを確認する。また、初期不良としては、防振機構であるダンパがオイル漏れなどで減衰が不足することが考えられる。以下、本発明の特徴である、輸送用の外槽固定金具9eの取り外し診断、機械減衰機構18bの機械減衰機構診断について説明する。外槽固定金具9eの取り外し診断、機械減衰機構18bの機械減衰機構診断の異常診断は、試運転モードで実施される。
【0047】
<外槽固定金具診断>
まず、異常診断部45による外槽固定金具診断について
図9を用いて説明する。
図9は、外槽振動センサ16の出力を示す図である。
図9では、外槽固定金具9eが取り外されていた状態(外槽固定金具なし)と、外槽固定金具9eが取り外されていない状態(外槽固定金具あり)を示している。
【0048】
外槽固定金具診断するにあたっては、まず、リニアアクチュエータ制御部44が、リニアアクチュエータ30の推力を制御して外槽9を加振する。
【0049】
外槽9をリニアアクチュエータ30の推力で加振すると、ドラム8や外槽9などで構成される振動部の質量と、外槽9と筐体1とを接続するばね定数や減衰係数で決まる振動が発生する。外槽固定金具9eが取り外されていた状態(外槽固定金具なし)では、外槽9の振動が大きくなる。
【0050】
一方、外槽固定金具9eが筐体1と外槽9を接続したままの状態(外槽固定金具あり)になっていると、外槽9の振動が小さくなる。従って、異常診断部45は、予め設定された所定のしきい値と外槽振動センサ16で検出された外槽9の振動を比較し、外槽振動センサ16で検出された外槽9の振動が所定のしきい値よりも小さい場合は外槽固定金具9eが取り外されていない(外槽固定金具9eが取り付けられている)と異常判断することができる。ここで、外槽9の振動を評価する手段としては外槽振動センサ16を用いずに、変位センサ39を用いてもよい。
【0051】
なお、共振付近で加振すると外槽固定金具が付いていた場合に、筐体1の振動が過大になる恐れがあるため、リニアアクチュエータ制御部44は共振よりも低い加振周波数となるようにリニアアクチュエータ30の推力を制御することが望ましい。
【0052】
<機械減衰機構診断>
次に、機械減衰機構18bの診断である機械減衰機構診断について述べる。
図10は、変位センサ39の出力の時間変化を示す図である。
図10では、機械減衰機構18bの減衰が正常な場合(減衰機構異常なし)と、減衰が規定値よりも小さい場合(減衰機構異常あり)を併記している。
【0053】
リニアアクチュエータ制御部44は、リニアアクチュエータ30を動作させ外槽9を上に押す向きに推力を発生させる。外槽9は所定の位置まで持ち上げる。すなわち、リニアアクチュエータ30は外槽9に静的な推力を付与する。その後、リニアアクチュエータ30の推力を0とし、外槽9を自由振動させる。その時の外槽9の振動を変位センサ39で検出し、異常診断部45は振動変位(振動振幅)の低下率から減衰係数を求める。
【0054】
求めた減衰係数が所定の範囲に入らない場合、異常診断部45は破線で示すように機械減衰機構18b(弾性支持機構)に異常ありと判断し、表示器6に報知する。
【0055】
なお、変位の低下率ではなく、所定の変位以下となるまでの時間で判定しても構わない。その場合は、所定の時間以内に所定の変位以下となった場合は正常と判定し、所定時間よりも経過した場合は以上ありと判定する。また、実施例1では変位センサ39の出力で判定する方法について述べているが、外槽振動センサ16の出力を用いても同様である。
【0056】
<初期不良診断モード>
次に、外槽固定金具診断や機械減衰機構診断などを行う初期不良診断モードについて述べる。初期不良診断モードは、設置者が給水ホースの接続など初期作業が完了した後に実施するモードであり、給水や排水が正しく行われるか、水漏れがないかなど初期作業が正しく行われたか、本体に不具合がないかなどを評価するモードである。実施例1の外槽固定金具診断や機械減衰機構診断も初期不良診断モードで行う診断の1つである。なお、評価結果に関しては、表示器6に表示する。
【0057】
さらに、この初期不良診断モードに関しては、操作パネルを使って選択的に実施しても構わないが、工場出荷後の初めての運転の場合や、長期間使われていなかった場合などは、初期不良診断モードを運転しないと通常運転ができないように制御しても構わない。そうすることで、初期不良診断モードで確認することを忘れて異常な状態で運転を行うことを防止することができる。
【0058】
なお、実施例1では、外槽振動センサ16と変位センサ39の2つを設けた構成としているが、必ずしも両方を設ける必要はなく、どちらか一方を設けることで診断は可能である。
【0059】
実施例1によれば、外槽固定金具が設置されている状態の検知精度を向上させたドラム式洗濯機を提供することができる。
一方、ドラム式洗濯機100に外槽固定金具9eが取り付けられ外槽9が固定された状態の場合(外槽固定金具あり)、ばね定数が大きくなったことと等価であるため、リニアアクチュエータ30の推力に対して、変位センサ39の出力が小さくなる。