(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095783
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B65D47/06 400
B65D47/06 110
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063401
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2023515478の分割
【原出願日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2021070731
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】320007734
【氏名又は名称】株式会社KY7
(72)【発明者】
【氏名】高野 朗
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC07
3E084DC07
3E084FA09
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA04
3E084KA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紙材料を用いて形成した場合であっても、簡単な構成で貫通孔からの内容物の噴出を低減することが可能な蓋体を提供する。
【解決手段】液状物を収納する容器の口部を開閉可能に形成されており、内外を貫通する貫通孔が形成された紙系素材よりなる天蓋部2と、前記天蓋部2を囲繞して形成された紙系素材よりなる側壁部3と、前記天蓋部2の下面側に形成された内部材4と、を備え、前記内部材4は、前記天蓋部2と前記容器の内面側とに通じる挿通部7と、前記挿通部7の周辺に形成された液避壁8と、を備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物を収納する容器の開口部を閉蓋する蓋体であって、
内外を貫通する貫通孔が形成された紙系素材よりなる天蓋部と、
前記天蓋部の下面側に設けられた内部材と、を備え、
前記内部材は、前記天蓋部と前記容器の内面側とに通じる挿通部と、前記挿通部の周辺に形成された液避壁とを備えたことを特徴とする蓋体。
【請求項2】
前記液避壁は、前記内部材の表面から前記容器の内面側に向けて突出形成されている請求項1記載の蓋体。
【請求項3】
前記挿通部は、前記天蓋部に形成された前記貫通孔の位置と重なる位置に設けられている請求項1又は2記載の蓋体。
【請求項4】
前記天蓋部と前記内部材との間に隙間を有する箇所が少なくとも一部に存在する請求項1から3のいずれかに記載の蓋体。
【請求項5】
前記側壁部が紙製のブランク材により形成されている請求項1から4のいずれかに記載の蓋体。
【請求項6】
前記液避壁は、該液避壁が倒れるのを規制する規制部を有する請求項1から5のいずれかに記載の蓋体。
【請求項7】
前記貫通孔が複数形成されており、
前記液避壁は前記複数の貫通孔に対してそれぞれ形成されている請求項1から6のいずれかに記載の蓋体。
【請求項8】
前記天蓋部には飲み口部が開口形成されており、
前記内部材には、前記飲み口部の位置と重なる位置に飲み口挿通部が形成されるとともに、前記飲み口挿通部の周辺に飲み口用液避壁が形成されている請求項1から7のいずれかに記載の蓋体。
【請求項9】
前記液避壁の下端位置が前記側壁部の下端位置と同じ位置又は前記側壁部の下端位置よりも上方に位置する請求項1から8のいずれかに記載の蓋体。
【請求項10】
前記貫通孔は、ストロー状物を挿し込み可能に形成された差し込み孔、閉蓋時に前記容器内の気体を外部へ放出させる放出孔、又は前記閉蓋時に前記容器内の液状物を流出させる流出孔のいずれか一つを含む請求項1から9のいずれかに記載の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンビニエンスストアやスーパーマーケットのような店舗においては、コーヒー等の飲料や総菜などの各種飲食料品を簡易的な容器に入れて販売することが広く行われている。例えば、コンビニエンスストアでは、紙やプラスチックからなるカップ形状の容器にコーヒー等の飲料をその場で入れて販売することが行われている。また、近年は店舗の商品を購入者の希望場所へ届ける宅配サービス(デリバリーサービス)を利用して販売することも増加する傾向にある。容器の中に液状物が入っている場合、持ち運び時に液状物が容器の外に漏れ出てくることが懸念されるため、従来から容器の口部には蓋を取り付けて、持ち運び時に液状物などの内容物が外に漏れ出ることを防止することが行われている。容器の蓋としては、例えば下記に示す特許文献1に開示されているものがある。この蓋は、紙材料により形成されており、閉蓋時には紙コップ等のような円錐台形状を有する容器の内側面と係合する壁面部を有するように形成された側壁部と、この側壁部が囲繞する天蓋部とを備えている。
【0003】
一般に、このような蓋を形成する場合、容器内に入れる内容物が特に熱いものである場合には、閉蓋時に容器内の内圧が上昇することによって蓋体が外れやすくなるといった問題があった。そのため、蓋には、内圧の上昇を低減するための孔が天蓋部に貫通形成されていることが多かった。しかしながら、特に内容物がコーヒー等のような液状物の場合、持ち運び時に容器が揺れることが多く、その揺れに伴って内容物にも揺れが生じる。そのため、揺れた内容物が上記した孔から噴出するといった問題が生じやすかった。
【0004】
このような問題を解決するための蓋としては、下記に示す特許文献2に開示されているものがある。特許文献2に開示されている蓋は、容器の側壁に沿って上昇する内容液及びその上昇した内容液の跳ね返りを防止する防液壁部を備え、この防液壁部の内側に貫通孔を形成している。また、この蓋は合成樹脂の成形体で成形されており、防液壁部は天蓋部に凹部を形成するなどして、該天蓋部に対して直接形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-248530号公報
【特許文献2】特許第4943685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献2に開示された蓋体は、防液壁部を形成することで、貫通孔からの内容物の噴出等の問題をある程度解決することは可能であったものの、合成樹脂を主体としているために近年積極的に行われている環境問題への取り組みに反するといった問題があった。この点、環境にやさしいと言われる生分解性プラスチック材料も種々開発されており、生分解性プラスチック材料を用いることで環境に配慮した蓋体を製造することも可能となりつつある。しかしながら、生分解性プラスチック材料は、従来から広く用いられているプラスチック材料と比較すると高価であり、使用量が増えるとそれだけ製造コストも増加する。特に、上記した蓋体市場の流通量が著しく多いため、蓋体1個あたりの製造コストの増加はわずかなものであったとしても、大量の蓋体となった場合には、製造コストの増加は莫大なものとなる。そのため、環境問題への対応策として高価な生分解性プラスチック材料を蓋体に適用することは、現在のところでは現実的とは言い難かった。
【0007】
このような問題を解決するためには、蓋体を形成する素材として、上記した特許文献1に開示されている蓋体のように、紙材料を利用することも考えられる。しかしながら、紙材料は、プラスチック材料のように、自由な成形加工を行うことが難しいため、紙材料を用いて密閉性の高く、かつ天蓋部に形成された貫通孔からの噴出等を防ぐことのできる蓋体を安価に提供することが容易ではないという問題を有している。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、紙材料を用いて形成した場合であっても、簡単な構成で貫通孔からの内容物の噴出を大きく低減することが可能な蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)液状物を収納する容器の開口部を閉蓋する蓋体であって、内外を貫通する貫通孔が形成された紙系素材よりなる天蓋部と、前記天蓋部の下面側に設けられた内部材と、を備え、前記内部材は、前記天蓋部と前記容器の内面側とに通じる挿通部と、前記挿通部の周辺に形成された液避壁とを備えたことを特徴とする蓋体、
(2)前記液避壁は、前記内部材の表面から前記容器の内面側に向けて突出形成されている上記(1)記載の蓋体、
(3)前記挿通部は、前記天蓋部に形成された前記貫通孔の位置と重なる位置に設けられている上記(1)又は(2)記載の蓋体、
(4)前記天蓋部と前記内部材との間に隙間を有する箇所が少なくとも一部に存在する上記(1)から(3)のいずれかに記載の蓋体、
(5)前記側壁部が紙製のブランク材により形成されている上記(1)から(4)のいずれかに記載の蓋体、
(6)前記液避壁は、該液避壁が倒れるのを規制する規制部を有する上記(1)から(5)のいずれかに記載の蓋体、
(7)前記貫通孔が複数形成されており、前記液避壁は前記複数の貫通孔に対してそれぞれ形成されている上記(1)から(6)のいずれかに記載の蓋体、
(8)前記天蓋部には飲み口部が開口形成されており、前記内部材には、前記飲み口部の位置と重なる位置に飲み口挿通部が形成されるとともに、前記飲み口挿通部の周辺に飲み口用液避壁が形成されている上記(1)から(7)のいずれかに記載の蓋体、
(9)前記液避壁の下端位置が前記側壁部の下端位置と同じ位置又は前記側壁部の下端位置よりも上方に位置する上記(1)から(8)のいずれかに記載の蓋体、
(10)前記貫通孔は、ストロー状物を挿し込み可能に形成された差し込み孔、閉蓋時に前記容器内の気体を外部へ放出させる放出孔、又は前記閉蓋時に前記容器内の液状物を流出させる流出孔のいずれか一つを含む上記(1)から(9)のいずれかに記載の蓋体、
を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る蓋体は、液状物を収納する容器の開口部を閉蓋する蓋体であって、内外を貫通する貫通孔が形成された紙系素材よりなる天蓋部と、前記天蓋部の下面側に設けられた内部材と、を備え、前記内部材は、前記天蓋部と前記容器の内面側とに通じる挿通部と、前記挿通部の周辺に形成された液避壁とを備えているので、容器内部に収納された液状物に揺れが生じて容器の内壁に沿って液面が上昇したり、液状物が揺れて生じた波同士がぶつかってより大きな波になったり跳ねが生じたとしても、液避壁によって液状物が貫通孔に到達し、該貫通孔から漏れ出るのを防ぐことができる。したがって、本発明に係る蓋体によれば、例えば内容物が収納された容器を持ち運んでいるときや、内容物を容器に収納して車両等で運ぶデリバリー時などにおいても、容器内の液状物が天蓋部の貫通孔から漏出したり吹き出すといったことを防止することが可能になる。
また、本発明に係る蓋体は、天蓋部が環境への負荷を与えるおそれの少ない紙材料によって形成されている。そのため、本発明に係る蓋体によれば、プラスチック製の蓋体のように液漏れを防止するための複雑な形状や構造を成形によって形成することが容易でない紙材料を用いつつ、簡単な構造で容易に液漏れを防止することが可能になる。また、本発明によれば、天蓋部及び側壁部が紙材料によって形成されているため、プラスチック材料を主体とする蓋体に比べて、環境への負荷を低減することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の蓋体に係る実施の形態を表面側から表す外観斜視図である。
【
図2】蓋体の外観を裏面側から表す外観斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、内部材を表面側から表す外観斜視図であり、
図3(b)は、内部材を裏面側から表す外観斜視図である。
【
図5】飲み口部が閉じた状態にある蓋体の平面図である。
【
図6】飲み口部が開いた状態にある蓋体の平面図である。
【
図9】本実施の形態に係る蓋体の作用効果を説明するための説明図である。
【
図10】複数の蓋体をスタッキングした状態を説明するための説明図である。
【
図11】内部材の変形例であり、
図11(a)は飲み口挿通部及び飲み口液避壁を形成した内部材を裏面側から表す外観斜視図であり、
図11(b)は挿通部及び液避壁を形成した内部材を裏面側から表す外観斜視図である。
【
図12】内部材の変形例を裏面側から表す外観斜視図である。
【
図15】
図14に示す内部材において液避壁の変更例を説明するための説明図である。
【
図16】
図14に示す内部材において液避壁の変更例を説明するための説明図である。
【
図18】蓋体の異なる態様を説明するための説明図である。
【
図19】蓋体の異なる態様を説明するための説明図である。
【
図20】蓋体の異なる態様を説明するための説明図である。
【
図21】蓋体の異なる態様を説明するための説明図である。
【
図22】蓋体の異なる態様を説明するための説明図である。
【
図26】蓋体を容器に閉蓋した状態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の蓋体に係る実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1から
図9に示すように、本発明に係る蓋体1は、紙系素材によりなる天蓋部2と、この天蓋部2を囲繞して形成され、かつ紙系素材によりなる側壁部3と、天蓋部2の下面側に設けられた内部材4とを備えており、内容物104としての液状物を収容可能に形成された容器101の口部102を開閉可能とするように形成されている。この蓋体1は、天蓋部2に内外を貫通する貫通孔として、放出孔5及び流出孔としての飲み口部6とが貫通形成されており、内部材4は、天蓋部2の側と容器101の内面側とに通じる挿通部7と、この挿通部7の周辺に形成された液避壁8とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
蓋体1は、容器101に開口形成された口部102を開閉するためのものであり、容器101とは別体として形成されている。
図1に示すように、この蓋体1は、天蓋部2と、側壁部3と、内部材4とを備えている。
【0014】
天蓋部2は、天面部9及び垂下片10を備えている。天蓋部2は、ブランク材として形成されている天蓋部形成部材の周縁を下方に折り曲げて形成されており、この折り曲げた周縁部が垂下片10となり、垂下片10に囲まれた内側部分が天面部9となるように構成されている。天面部9は、平面視円形状に形成されており、閉蓋時には容器101の口部102を上方から全体的に覆うことができるように形成されている。この天面部9には、天蓋部2の内外を貫通するように、言い換えると天面部9の表面9a側と裏面9b側とを貫通するように形成された放出孔5が貫通形成されている。
【0015】
放出孔5は、天面部9の中央部分に形成されており、上記した通り天面部9の表面9aと裏面9bとの間を貫通するように形成されている。この放出孔5は、容器101に蓋体1を取り付けて閉蓋した場合において、該容器101の内容物104が熱い液状物(例えばホットコーヒー、ラーメン等の各種総菜に用いられる液など)のときや、内容物104が炭酸飲料のような液鉱物である場合に、容器101の内部103における圧力(内圧)の上昇を防止するためのものである。
【0016】
なお、この放出孔5の大きさや形状は
図1等に示したものに限定されず、任意に設定してよい。例えば、放出孔5を丸形状にするだけでなく、多角形状にしてもよいし、例えば星形などのような従来から公知の形状にしてよい。また、放出孔5を形成する数は、1個に限定されるものではなく、複数個を貫通形成してもよい。さらに、放出孔5を貫通形成する位置は天面部9の中央部分に限定されず、天面部9の中央部分以外の位置に貫通形成してもよい。なお、この放出孔5は、後述する内部材4の挿通部7の内部に位置させることが、放出孔5からの液漏れや噴出等を防止する点で好ましい。また、放出孔5は、線状に切り込んだ切込み線で形成しても良く、容器101内の気体を外部へ放出させることのできる機能を有するものであればよい。
【0017】
飲み口部6は、天面部9の中央よりも天面部9の縁部に近接する位置に形成されている。この飲み口部6は、未使用時は飲み口形成部11によって閉じられており、使用時にこの飲み口形成部11を引き上げる等して開口することにより形成される。この飲み口形成部11は、未使用時には複数箇所が点止め(ミシン目状を含む)又はハーフカットにより天面部9に止められた状態となっており、飲み口部6を閉じた位置から開いた位置へと遷移させて飲み口部6を開口するときに、点止め箇所又はハーフカットが破断され、飲み口部6が開口形成されるようになっている。
図1にも示すように、飲み口形成部11にはラベル12の一端が超音波接合やヒートシール、高周波接合、各種接着剤による接合等といった任意の方法で接合されており、このラベル12の他端を摘んで引き上げることにより飲み口形成部11を引き上げて、飲み口部6を開口することができるように構成されている。なお、点止めとは、天蓋部形成部材に対して刃状部材を用いて飲み口形成部11を形成する際、天蓋部形成部材に切込みを入れる箇所に加えて切込みを入れない箇所を設けておくことで、この切込みを入れない箇所のみによって飲み口形成部11が天面部9と部分的に接合されていることを意味する。なお、この点止めの数や場所は任意に決定してよい。
【0018】
垂下片10は、天面部9の周縁部分に形成されており、周囲を囲むように立ち下がり形成されている。この垂下片10は、外周面10aが側壁部3と、内周面10bが側壁部3下端部分を折り返して形成される折り返し部13と、接合一体化されるように形成されている。
【0019】
側壁部3は、天蓋部2における天面部9を囲繞して形成されている。この側壁部3は、例えば環状扇形のブランク材(図示せず)の両端側を相互に接合した環状に形成されている。また、この側壁部3は、このように環状に形成すると、上端側から下端側に向かって先細り傾斜状に形成されている。側壁部3は、上部壁14、下部壁15及び折り返し部13を備えている。これら上部壁14、下部壁15及び折り返し部13は連続するように形成されている。上部壁14は、側壁部3において、天蓋部2と接合一体化したときに、天面部9の表面9aよりも上側の箇所をいい、下部壁15は、側壁部3において、天蓋部2と接合一体化したときに、天面部9の裏面9bよりも下側の箇所をいう。なお、上部壁14及び下部壁15を示す際に、天面部9の肉厚部分に相当する箇所、すなわち側壁部3において、天面部9の表面9aと裏面9bとの間となる箇所については、上部壁14及び下部壁15のいずれにも含む箇所として説明する。
【0020】
上部壁14は、天面部9の表面9aよりも上方に位置するように形成されており、天面部9の表面9aと接する位置における内径よりも上端部における内径の方が大きくなるように形成されている。このように形成することで、複数の蓋体1を積み重ねて搬送するときのスタッキング性を大きく向上させることができる(
図10参照)。また、上部壁14には、上端部に張出部16が形成されている。この張出部16は側壁3よりも径方向(平面視したときの蓋体1の中心から端部までの長さ方向)の大きさが、該側壁3の他の部分よりも大きくなるように形成されている。なお、この張出部16は、カール状に曲げ成形したものであってもよいし、鍔状に張出形成された張出状部であってもよい。この張出部16は蓋体1においては必須ではないが、形成することによって蓋体1全体の強度を向上させることができるようになるため、形成することが好ましい。なお、この張出部16の形状やカールの大きさ等については、従来から公知の大きさや形状のものを任意に選択して用いてよく、本明細書に記載した形状のものに限定されるものではない。なお、張り出し部16に代えて、又は張り出し部16と併せて、上部壁14の上端部分を内側に折り返して補強部として形成してもよい。同様に、上部壁14の上端部分を内側ではなく外側に折り返して補強部として形成してもよい。
【0021】
下部壁15は、天面部9の裏面9bよりも下方に位置するように形成されており、天面部9の裏面9bに接する位置における内径よりも、下端部における内径の方が小さくなるように形成されている。また、この側壁部3の下端部における内径は、容器101の口部102周囲の外径よりも小さいことが好ましく、また側壁部3の下部壁15において天面部9の裏面9bに接する位置における内径が容器101における口部102の周囲の外径と略同一であることが好ましい。ここで「ほぼ同一」とは、蓋体1によって容器101の口部102を閉蓋したときに、口部102の周囲と蓋体1とが密閉性を有する状態で嵌合することができる径であることを意味する。
【0022】
折り返し部13は、側壁部3の下部壁15の一部を内側に折り返して形成されている。この折り返し部13には、内側に突状の係合部17が形成されており、容器101に取り付けたときに、該容器101における口部102の周辺に形成された容器側のカール部106と係合し、かつ閉蓋時には容器側のカール部106と係止するように構成されている。この折り返し部13は、最下端部の内径が容器側のカール部106よりも小さくなるように形成されていることが、蓋体全体としての密閉性を確保する観点から好ましい。なお、折り返し部13、垂下片10及び下部壁15は、超音波接合、ヒートシール、各種接着剤等による接着等、従来から知られている任意の方法によって接合一体化されていることが好ましい。
【0023】
図2に示すように、内部材4は、天蓋部2の下面側、すなわち天面部9の裏面9b側に形成されている。本実施の形態に係る蓋体1においては、内部材4は天面部9の裏面9bに接合一体化されている。内部材4の接合は、超音波接合、ヒートシール、高周波溶着、各種の接着剤による接合など、従来から公知の方法を任意に選択して用いてよいが、接合のしやすさ等の観点から、超音波接合により行うことが好ましい。
【0024】
内部材4は、蓋体1が容器101に閉蓋されたときに、蓋体1の容器101側、言い換えると内側に位置するように設けられた部材である。この内部材4は、容器101の内側直線状の3辺と円弧状に形成された1辺が組み合わされて形成された板状の部材により形成されている。内部材4は、挿通部7、液避壁8、飲み口挿通部20、飲み口用液避壁21a,21b及び接合部30を備えている。内部材4となる板状部材において円弧状に形成された1辺は、天面部9の裏面9bへ接合したときに、側壁部3の内側面に形成されている弧と干渉しない程度の弧を描くように形成されている。なお、この内部材4の形状は上記したものに限定されず、他の形状であってもよい。また、
図2等に示すように、内部材4は、天面部9の裏面9bに取り付けるときは、挿通部7の形成されている位置が放出孔5の位置と重なる位置に設けられていることが好ましい。また、この内部材4は、紙系素材や樹脂系素材等により形成することができる。内部材4を紙系素材で形成する場合は、例えば原反紙から打ち抜き加工することで形成するなど従来から公知の方法を任意に選択して行ってよい。また、内部材4を樹脂系素材で形成する場合には、射出成形、ブロー成型、押出成形等により一体成形してもよいし、従来から公知の他の方法を任意に選択して行ってよい。
【0025】
挿通部7は、天面部9の裏面9bに内部材4を取り付けたときに、天蓋部2側と容器101の内部103側とに通じるよう孔状に形成されている。この挿通部7は、天面部9(天蓋部2)の放出孔5が形成されている位置と重なる位置に設けられる。また、挿通部7は、放出孔5と同じ大きさであるか、又は放出孔5よりも大きい開口となるように形成することが好ましい。
【0026】
液避壁8は、挿通部7の周辺に形成されている。
図2等に示すように、本実施の形態に係る蓋体1では、液避壁8は、内部材4を構成する板状部材の所定箇所を折り曲げ形成することによって、内部材4の表面から容器101の内面側に向けて突出形成されている。なお、液避壁8の形成方法は折り曲げ形成に限定されるものではなく、例えば液避壁8用の別部材を設けることによって形成してもよい。液避壁8は、挿通部7の周辺に形成された壁部18a~18dにより構成されている。これら壁部18a~18dは、長手方向一端部が挿通部7側に向かう方向へと折り曲げ形成された規制部19a~19dを有している。これら規制部19a~19dは、壁部18a~18dが挿通部7に向けて倒れていくのを防止し、該壁部18a~18dが所定角度をもって起立した状態を維持することができるようにするためのものである。すなわち、
図3及び
図4等にも示すように、内部材4においては、挿通部7の周辺には壁部18a~18dが形成されており、規制部19a~19dは挿通部7(開口)に向けて突出するように形成されている。そのため、これら規制部19a~19dは、内部材4を平面視したときに、挿通部7の縁部よりも内側に向けて突出するように折り曲げられている。これら規制部19a~19dは、内部材4が天面部9の裏面9bに接合されると、挿通部7の奥側に裏面9bが存在することになる。そのため、規制部19a~19dは、壁部18a~18dに何らかの力が作用する等によって挿通部7が開口形成されている方向に向けて倒れようとすると、天面部9の裏面9bと当接し、壁部18a~18dがそれ以上倒れようとするのを阻止することができる。そのため、壁部18a~18dは、規制部19a~19dが形成されていることによって、所定角度を保ちながら起立した状態を維持することができるようになる。なお、壁部18a~18dの起立する角度としては、容器101の内容物が放出孔5に到達し、この放出孔5から内容物が漏出したり、噴出するのを防止することが可能な角度を任意に決定してよいが、加工のしやすさ等の観点から、壁部18a~18dが挿通部7に向けて若干倒れた角度となることが好ましい。また、これら壁部18a~18dは、下端部分の位置が側壁部3の下端部の位置と同じか、又は側壁部3の下端部の位置よりも上側に位置するように形成することが好ましい。壁部18a~18dをこのような大きさに形成することで、複数の蓋体1を積み重ねる際に、壁部18a~18dの高さが影響することもなく、良好なスタッキング性を維持することが可能になる。
【0027】
飲み口挿通部20は、天面部9の裏面9bに内部材4を取り付けたときに、天蓋部2側と容器101の内部103側とに通じる孔状に開口形成されている。この飲み口挿通部20は、天面部9の飲み口部6が形成されている位置と重なる位置に設けられる。また、飲み口挿通部20は、飲み口部6と同じ大きさであるか、又は
図6にも示すように、飲み口部6よりも小さい開口となるように形成することが好ましい。このような大きさに形成することで、蓋体1を容器101に取り付けて使用したときに、飲み口部6から内容物104が漏れ出ることを防止することができる。
【0028】
飲み口用液避壁21a,21bは、飲み口挿通部20の周囲に形成されている。本実施の形態では、これら飲み口用液避壁21a,21bは、飲み口挿通部20を挟んで対向する位置に形成されている。これら飲み口用液避壁21a,21bには、該飲み口用液避壁21a,21bの長手方向一端部が飲み口挿通部20側に向かう方向へと折り曲げ形成された規制片22a,22bが形成されている。これら規制片22a,22bは、飲み口用液避壁21a,21bが飲み口挿通部20に向けて倒れていくのを防止し、所定角度で飲み口用液避壁21a,21bを起立した状態を維持するためのものである。また、これら飲み口用液避壁21a,21bを形成することにより、飲み口挿通部20の周辺には、開口孔25,26が形成されている。本実施の形態においては、先に説明した液避壁8を構成する壁部18a~18dに加え、飲み口用液避壁21a,21bが形成されており、これら飲み口用液避壁21a,21bにも規制片22a,22bが形成されている。したがって、これら規制片22a,22bが形成されていることにより、壁部18a~18dについて先に説明したのと同様の理由により、飲み口用液避壁21a,21bについても所定角度を保ちながら起立した状態を維持することができるようになっている。なお、飲み口用液避壁21a,21bについても、壁部18a~18dについて説明したのと同様の理由により、飲み口用液避壁21a,21bが飲み口挿通部20に向けて若干倒れた角度となることが好ましく、飲み口部側液避壁22a,22bの下端位置も、側壁部3の下端部の位置と同じか、又は側壁部3の下端部の位置よりも上側に位置するように形成することが好ましい。なお、飲み口部側液避壁22a,22bの下端部の位置と壁部18a~18dの下端部の位置は、同じでも良いし異なっていてもよい。また、飲み口部側液避壁22aと22bとの下端部の位置も、同じでも良いし異なっていても良い。さらに、壁部18a~18dの下端部の位置も、同じでも良いし異なっていても良い。
【0029】
本発明に係る蓋体1を形成する紙系素材としては、繊維原料のスラリーを網上に抄き取り、乾燥ないし押圧乾燥、抄紙してシート状にして得られる、いわゆる紙材料や、パルプ系繊維等からなる原料シートを粉砕機で粉砕して得られる粉砕パルプ等の開繊繊維原料を空気流によって積繊し、積繊体の繊維相互をバインダーで固定して得られる、いわゆるエアレイドシート等や、これらを複数枚積層したもの等が挙げられる。また、セルロースナノファイバー(セルロースミクロフィブリル)よりなる、いわゆる透明紙等も用いることができる。紙系素材としては、パルプだけからなるもののほか、非パルプ系の繊維や合成繊維、再生繊維等の繊維を含むものであっても良いが、パルプ以外の天然繊維や天然分解性繊維が好ましい。また、パルプを50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むものがより好ましく、更に80質量%以上含むものが好ましいが、特にパルプ100質量%からなるものが好ましい。紙系素材は、合成樹脂や天然樹脂のフィルムや不織布、木箔等の木質系素材等、さらにはアルミ箔等の素材との複合材料も用いることができるが、複合材料とする場合、複合材料全体としてパルプや天然繊維、天然分解性樹脂分等を50質量%以上含有することが好ましく、特に80質量%以上のパルプを含むものが好ましい。パルプ等の天然分解性成分の含有率が高いほど、紙系素材が生分解されやすくなるため、好ましい。特に、パルプ分の割合が95質量%以上であることが好ましい。
【0030】
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ等から得られるものが挙げられる。パルプは、赤松、トド松、エゾ松、ダグラスファー、ヘムロック、スプルース等の針葉樹パルプ、ブナ、ナラ、カバ、ユーカリ、ポプラ、アルダー等の広葉樹パルプ、針葉樹パルプと広葉樹パルプの混合物等の木材パルプ、ケナフ、バガスパルプ、タケパルプ、シリアルパルプ、ワラパルプ、アバカパルプ、木綿パルプ等の非木材パルプ、古紙パルプ等を用いることができる。針葉樹パルプは、広葉樹パルプに比べて繊維長が長いため、針葉樹パルプ等の繊維長の長いパルプを用いた紙材料は、繊維相互の絡み具合が高まり、また針葉樹パルプ等を用いた原料シートを粉砕した粉砕パルプも、広葉樹パルプからなる原料シートを粉砕した粉砕パルプに比べて繊維長が長いため、繊維相互の絡み合いにより紙系素材の強度が向上する。
【0031】
紙系素材は、耐水性を有することが好ましく、耐水紙等のあらかじめ耐水性が付与された素材を用いたり、少なくとも紙系素材の容器側に位置する表面にコート層を設けたものを用いても良い。コート層は、フィルムを貼着したり、塗工剤を塗布することにより設けることができるが、塗工剤の塗布により設けることが好ましい。コート層は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂であるポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等、ポリエチレンテレフタレート、セロファン、ナイロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、デンプン系樹脂等により形成することができ、2種以上を併用して形成してもよいが、中でもアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、生分解性樹脂等が好ましく、特に、例えばセルロース誘導体、ポリ乳酸、ポリカプロ絡トン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンサクシネート系樹脂、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、デンプン系樹脂、生分解性ウレタン樹脂と鵜の生分解性樹脂と呼ばれている樹脂で形成すると、天然分解性が向上するため好ましい。本発明に係る蓋体1の各部に用いる紙系素材としては、目付量150g/m2から400g/m2程度のものを用いることができるが、160g/m2から360g/m2のものがより好ましく、170g/m2から350g/m2のものが更に好ましい。
【0032】
また、内部材4を樹脂材料により形成する場合に用いられる樹脂系素材としては、例えば塗工剤の例示として掲げた上記したものを任意に選択して用いられる。
【0033】
次に、本発明に係る蓋体1の作用効果について説明する。
図9に示すように、蓋体1は、使用時には容器101の口部102を閉じた状態にする。この場合、蓋体1のほぼ中央に放出孔5が位置し、この放出孔5の周囲には壁部18a~18dからなる液避壁8が形成されている。また、蓋体1の中央よりも縁部寄りには飲み口部6が位置しており、この飲み口部6の周囲にも飲み口用液避壁21a,21bが形成されるとともに、液避壁8の壁部18aが位置している。
【0034】
このような状態において、例えば蓋体1を取り付けた容器101を利用者が手に持って持ち運んでいたり、又は宅配サービスなどで自動車などに乗せて運搬しているときなどは、蓋体1を取り付けた容器101が振動で揺れるために、容器101の内容物104である液状物にも液揺れが発生する。このとき、内容物104の液揺れは容器101内においてあらゆる方向に生じるとともに、容器101の内面に衝突することによって液面が上昇したり、液揺れによって生じた波同士がぶつかって、より大きな波になったり跳ねが生じたりする。しかしながら、本発明に係る蓋体1によれば、内容物104の液面が上昇したり液揺れにより波が発生したとしても、その発生した波が液避壁8の壁部18a~18dに衝突するため、それ以上波の高さが高くなることを防止することができる。そのため、容器101内において内容物の液揺れが発生したとしても、その液揺れに伴って生じる波の高さが天面部9の放出孔5にまで到達する高さとなるのを防止することができ、放出孔5から内容物104である液状物が漏れ出たり、噴出したりすることを防止することが可能になる。しかも、本発明に係る蓋体1は、放出孔5の周辺に壁部18a~18dが形成されているので、あらゆる方向から生じる波に対して壁部18a~18dの少なくともいずれかが波の高さの上昇を確実に防止することができる。そのため、内容物104の液揺れに伴う放出孔5からの漏れや噴出を確実に防止することが可能になる。
【0035】
また、本発明に係る蓋体1は、内容物104が熱いものだったり、炭酸飲料などのように、閉蓋時に容器101の内圧が上昇するおそれについても、放出孔5を貫通形成することによって低減することができる。それに加え、特に熱い飲料などの場合には、容器101内の蒸気によって壁部18a~18dなどに水滴が付着しやすい場合がある。そのような水滴が付着した状態で容器101に揺れが加わると、付着した水滴が放出孔5から漏れ出たり噴出することがあるところ、本発明に係る蓋体1によれば放出孔5の位置と壁部18a~18dの先端部分の位置とが重ならないようずれた位置に配置されるように形成しているので、上記した水滴などの漏れ出しや噴出が発生するおそれも防ぐことが可能になる。
【0036】
さらに、本発明に係る蓋体1は、飲み口挿通部20の周辺にも飲み口用液避壁21a,21bが形成されているので、これら飲み口用液避壁21a,21bによっても、先に説明したのと同様の作用が生じる。また、飲み口挿通部20の場合には、飲み口用液避壁21a,21bに加えて、壁部18aが飲み口用液避壁としての機能も発揮する。すなわち、飲み口挿通部20は、飲み口用液避壁21a,21bが形成されていることによって、これら飲み口用液避壁21a,21bが形成されている方向の液揺れについては上記した作用によって内容物104が飲み口部6に到達し、該飲み口部6から漏れ出ることを防ぐことができる。また、これだけではなく、飲み口用液避壁21a,21bが形成されている方向と直交する方向に対しては、液避壁8の壁部18aが飲み口側液避壁としての機能を有するため、飲み口挿通部20と壁部18aとが配置される方向についての内容物の液揺れは、孔部側液避壁21aによって液面の上昇を防ぎ、かつ内容物104が飲み口部6に到達し、該飲み口部6から漏れ出ることを防止することが可能になる。
【0037】
このように、本発明に係る蓋体1によれば、利用者が手に持っていたりしたときや宅配サービスによる運搬時などのように、容器101に対して振動が加わりやすく内容物104に対してあらゆる方向に液揺れが生じた場合であっても、その液揺れに起因する内容物104の放出孔5や飲み口部6からの漏れ出しや噴出を防止することが可能になる。
【0038】
また、本発明に係る蓋体1によれば、蓋体1を取り外した時に、天面部9の裏面9b側に溜まる内容物104の量を少なくすることもできる。したがって、蓋体1を取り外したときに内容物104が零れて容器101の周囲や利用者の衣服を濡らして汚してしまうといったことも防ぐことが可能になる。
【0039】
本発明に係る蓋体1は、天蓋部2と側壁部3とが環境への負荷を与えるおそれの少ない紙系素材によって形成されている。そのため、本発明に係る蓋体1によれば、プラスチック製の蓋体のように、内容物104の漏出を防止するための複雑な形状や構造を成形によって形成することが容易でない蓋体でありながら、簡単な構造で容易に内容物104の漏出を防止することが可能になる。また、本発明に係る蓋体1によれば、天蓋部2及び側壁部3が紙系素材によって形成されているため、プラスチック材料を主体とする蓋体に比べて、環境への負荷を大きく低減することも可能になる。
【0040】
図10に示すのは、複数の蓋体1を積み重ねた状態である。このように、本発明に係る蓋体1によれば、孔部側液避壁21a~21d及び飲み口用液避壁21a,21bの下端部の位置が、側壁部3の下端部の位置と少なくとも同じ位置であり、望ましくは側壁部3の下端部の位置よりも上方に位置するように構成しているので、複数の蓋体1を積み重ねた場合のスタッキング性も維持することができる。
【0041】
次に、本発明に係る蓋体1の第1の変更例を説明する。なお、下記に示す変更例の説明においては、先に説明した構成と同様の構成の部分については説明を省略し、符号の同一のものを適用する。なお、本明細書におけるそれぞれの構成については、適宜組み合わせて用いてもよいし、それぞれ別個独立に用いてもよい。
【0042】
図11に示すのは、内部材4の変形例である。内部材4は、例えば
図11(a)に示すように、飲み口挿通部20と飲み口用液避壁21a,21bのみを形成したり、
図11(b)に示すように、挿通部7と液避壁8のみを形成したものを用いてもよい。このように、飲み口部6に対応する内部材4と放出孔5に対応する内部材4とをそれぞれ別個に形成することで、例えば飲み口部6のみに内部材4を設ける場合や、逆に放出孔5にのみ内部材4を設ける場合のように、内部材4を設ける箇所と設けなくてもよい箇所とを明確に分離することができる。つまり、必要に応じた部位に対して内部材4を設けることができるので、原材料の使用料を低減することができ、原料コストや製造コストを低減することもできる。なお、
図11に示すように、内部材4は放出孔5に対応したものと飲み口部6に対応したものとをそれぞれ別個にしているが、必ずしもそれぞれを別個に設けなければいけないというわけではなく、両方の内部材4を併用してもよい。
【0043】
図12に示すのは、内部材4の別の変形例である。この内部材4は、対向する2つの辺4aと4bとが直線状に形成されるとともに、やはり対向する2つの辺4cと4dとが弧状に形成されている。また、飲み口挿通部20が形成されている端部と反対側の端部は、液避壁8が形成されている箇所から延出する量が先に説明した内部材4よりも大きくなるように形成されている。内部材4をこのように形成することで、接合部30の接合面積を増加させることができたり、また天面部9の裏面側9bにおいて、側壁部3の内面によって挟持させるようにして保持するように構成することもできる。したがって、接合する場合にはより強固に接合することもできるし、一方で側壁部3の内面にて挟持させて保持させる場合には、接合する際に必要な接着剤等が不要になったり、超音波接合により接合する場合には接合の工程が不要となるため、製造コストを低減することも可能になる。
【0044】
図12(b)に示すのは、内部材4の別の変形例である。この内部材4は、板状部材が円形状に形成されている。このような円形状に形成することで、
図12(a)において説明した変形例に加えて、より多くの接合面積を増加させることができたり、側壁部3の内面で挟持することで内部材4を保持する場合にもより強固に保持されやすくすることが可能になる。
【0045】
図13に示すのは、内部材4の別の変形例である。この内部材4は、挿通部7及び飲み口挿通部20が形成されているものの、挿通部7にのみ液避壁8が形成されており、飲み口挿通部20が形成されている箇所には飲み口用液避壁21a,21bが形成されていない態様である。このように、必要に応じて液避壁8等を形成してもよい。なお、上記した例に限定されず、例えば挿通部7及び飲み口挿通部20が形成されている態様で、飲み口用液避壁21a,21bが形成され、液避壁8が形成されない態様も内部材4の変形例として挙げられる。
【0046】
図14及び
図15に示すのは、内部材4の別の変形例である。この内部材4は、液避壁8の構成が他の態様と相違する。すなわち、本変形例に係る内部材4は、挿通部7の周囲を囲繞するように液避壁8が形成されている。このように液避壁8を挿通部7の周囲に囲繞させることによっても、放出孔5からの液漏れを十分に防止することができる。なお、このように液避壁8を構成する場合は、例えば内部材4を形成する板状部材に対して折り曲げ加工等を施すことによって液避壁8を形成しても良いし、また、液避壁8となる部材を板状部材とは別に形成し、該板状部部材に対して液避壁8となる部材を接合して内部材4を形成しても良い。また、これら以外の方法により内部材4を形成してもよい。
【0047】
このような液避壁8の形状は、
図14や
図15(a)に示すような四角形状といった多角形状に限定されるものではない。例えば、
図15(b)に示すような円形状、
図15(c)に示す星形状、
図15(d)に示すような三角形状であったり、
図15(e)に示すような星形状を
図15(c)の態様とは逆にしたものであってもよい。また、これら以外の形状であって、従来から公知のものを任意に選択して適宜用いてもよい。
【0048】
また、
図16に示すように、液避壁8の下端部分の形状も直線状であることに限定されるものではない。例えば、
図16(a)に示すように液避壁8の下端部分が波形状であったり、
図16(b)に示すように三角形状であったり、
図16(c)に示すようなギザギザ形状であってもよい。また、
図16(d)に示すような三角形状であってもよい。なお、この液避壁8の下端部分の形状についても、上記した放出孔5からの液漏れが解消できる形状であれば、これら以外の従来から公知の形状を任意に採用して用いてよい。
【0049】
図17に示すのは、内部材4の別の変形例である。この内部材4においては、液避壁8の形状がさらに異なっており、壁部18a~18dの一端側に規制部19a~19dが形成されているのみならず、壁部18a~18dの他端側にも規制部27a~27dが形成されている。このように、壁部18a~18dの両端側に規制部19a~19d、規制部27a~27dを形成することにより、より壁部18a~18dの起立した姿勢を強固に保持した状態を維持することができる。
【0050】
図18から
図22に示すのは、本発明に係る蓋体1の別の変更例である。すなわち、
図18(a)から
図18(e)、
図19(a)から
図19(d)、
図20(a)から
図20(e)、及び
図21(a)から
図21(f)に示す蓋体1は、天蓋部2における天面部9の周縁部に立ち上がり部28を形成し、この立ち上がり部28の外側面と側壁部3とを接合一体化することにより蓋体1を形成している態様である。このような蓋体1であっても、本発明に係る内部材4を適用することができ、それにより放出孔5からの内容物104の漏出や噴出を防止することができる。また、
図22(a)から
図22(e)に示す態様の蓋体1であっても同様に、本発明に係る内部材4を適用することができ、それにより放出孔5からの内容物104の漏出や噴出を防止することができる。
【0051】
なお、上記した例では、蓋体1の例として、平面視円形状のカップに適用可能な蓋体を用いて説明するが、蓋体1は、平面視したときの形状が円形状であることに限定されるものではなく、例えば楕円形状、三角形状や四角形状等といった多角形状、星形形状など、従来から公知の形状を任意に選択して用いることができる。
【0052】
本発明に係る蓋体1は、例えばコーヒーやジュース等のような飲料カップの蓋、各種の総菜等を収納可能に形成された容器の蓋、またラーメンや蕎麦、うどんといった、液状物を有する各種の飲食物を収納可能な容器の蓋に適用することができる。また、蓋体1は、内容物が液状物であれば飲食物に限定されるものではなく、包装容器に係る蓋体におけるあらゆる分野において適用することが可能である。
【0053】
また、上記した蓋体は、上部から下部に向けて先細りテーパ状に形成されている態様のものを例示しているが、天蓋部2、より詳しくは天面部9に内部材4を設けることができるものであればよく、側壁部3の形状が上記した先細りテーパ状であるものには限定されない。例えば、上部から下部に向けてストレート形状であってもよいし、上部から下部に向けて先太りテーパ状に形成されている態様の蓋体であっても適用することができる。また、内部材を取り付ける対象についても、天蓋部2の下面側に形成されるものであればよく、その取付対象は天蓋部2に限定されるものではない。
【0054】
次に、本発明に係る蓋体のさらに別の変更例について、
図23から
図26に基いて説明する。この態様の蓋体1は、容器101の口部102に形成された縁部105に沿って接合されて用いられるものである。蓋体1は、容器101の口部102に接合された状態において口部102を覆うような形状に形成される。蓋体1は、
図25、
図26等に示すように、容器101の口部102の縁部105に接合される接合領域Rを裏面側に有する。また、蓋体1は、蓋体1の平面視上、蓋体1の露出面201のうち接合領域Rの内側に対応する領域である内側領域Rnに飲み口部6や放出孔5が形成されている。飲み口部6や放出孔5などを含む貫通孔の構成や蓋体1における他の構成については先に説明したのと同様の構成であるので、ここでは省略する。
【0055】
接合領域Rは、容器101の口部102に応じた形状で、口部102に沿って感情に形成される領域である。接合領域Rの幅(内外方向に沿った幅)は、口部102の縁部105の幅と同じ又はその幅よりも細い幅であることが通常である。ただし、このことは、接合領域Rの幅が縁部105の幅よりも太いことを禁止するものではない。また、接合領域Rは、蓋体1の外周端202よりも内側に形成されていてもよいし、蓋体1の外周端202まで形成されていてもよい。接合領域Rに対する位置は、特に限定しない限り、蓋体1における接合領域Rを形成する部分に対する位置として定められる。例えば、接合領域Rの内側(外側)という場合には、特に限定しない限り、蓋体1における接合領域Rを形成する部分に対して内側(外側)であることを示す。
【0056】
図24等に示すように、蓋体1は、天蓋部2における天面部9の裏面9b側に内部材4が設けられている。本態様の蓋体1においては、内部材4は接着等のような、先に説明した方法によって天面部9の裏面9b側に設けられている。なお、このような態様の蓋体1に内部材4を設ける場合には、接合領域Rよりも内側の内側領域Rn内に内部材4を設けることが好ましい。内部材4を内側領域Rn内に設けることにより、接合領域Rに段差が生じることがないので、蓋体1を容器101の縁部105に対してヒートシール等の方法によって接合する場合に、安定した状態で接合させて閉蓋することが可能になる。なお、内部材4の詳細な構成については先に説明したのと同様である。また、
図27に示すように、内部材4を飲み口部6に対応する部材4aと、放出孔5に対応する部材4bとにそれぞれ別個に形成して天面部9の裏面9b側に設けてもよい。
【0057】
以上、本発明に係る蓋体1について詳細に説明したが、本発明に係る蓋体1は上記した例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更してよい。例えば、本明細書では、貫通孔の例として飲み口部6と放出孔5を挙げているが、貫通孔はこれらに限定されるものではない。例えば、ストロー状物(ストローなど)を挿し込み可能に形成された切込み状の孔でもよいし、他の形状の貫通孔でもよい。すなわち、本明細書における貫通孔は、天蓋部2の内外を貫通形成するように形成されているものであれば、その大きさや形状は特に限定されない。また、内部材についても、それぞれの貫通孔に対応して別個独立に設けてもよいし、一つの内部材の中に複数の貫通孔に対応した液避壁等を形成してもよく、その形態は特に限定されない。
【0058】
本発明は、下記の技術的思想を包含する。
(1)液状物を収納する容器の開口部を閉蓋する蓋体であって、内外を貫通する貫通孔が形成された紙系素材よりなる天蓋部と、前記天蓋部の下面側に設けられた内部材と、を備え、前記内部材は、前記天蓋部と前記容器の内面側とに通じる挿通部と、前記挿通部の周辺に形成された液避壁とを備えたことを特徴とする蓋体、
(2)前記液避壁は、前記内部材の表面から前記容器の内面側に向けて突出形成されている上記(1)記載の蓋体、
(3)前記挿通部は、前記天蓋部に形成された前記貫通孔の位置と重なる位置に設けられている上記(1)又は(2)記載の蓋体、
(4)前記天蓋部と前記内部材との間に隙間を有する箇所が少なくとも一部に存在する上記(1)から(3)のいずれかに記載の蓋体、
(5)前記側壁部が紙製のブランク材により形成されている上記(1)から(4)のいずれかに記載の蓋体、
(6)前記液避壁は、該液避壁が倒れるのを規制する規制部を有する上記(1)から(5)のいずれかに記載の蓋体、
(7)前記貫通孔が複数形成されており、前記液避壁は前記複数の貫通孔に対してそれぞれ形成されている上記(1)から(6)のいずれかに記載の蓋体、
(8)前記天蓋部には飲み口部が開口形成されており、前記内部材には、前記飲み口部の位置と重なる位置に飲み口挿通部が形成されるとともに、前記飲み口挿通部の周辺に飲み口用液避壁が形成されている上記(1)から(7)のいずれかに記載の蓋体、
(9)前記液避壁の下端位置が前記側壁部の下端位置と同じ位置又は前記側壁部の下端位置よりも上方に位置する上記(1)から(8)のいずれかに記載の蓋体、
(10)前記貫通孔は、ストロー状物を挿し込み可能に形成された差し込み孔、閉蓋時に前記容器内の気体を外部へ放出させる放出孔、又は前記閉蓋時に前記容器内の液状物を流出させる流出孔のいずれか一つを含む上記(1)から(9)のいずれかに記載の蓋体、
を要旨とする。
【符号の説明】
【0059】
1 蓋体
2 天蓋部
3 側壁部
4 内部材
5 放出孔
6 飲み口部
7 挿通部
8 液避壁