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特開2024-95797車載装置、車車間通信方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095797
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車載装置、車車間通信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/18 20090101AFI20240703BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20240703BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20240703BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20240703BHJP
【FI】
H04W84/18
H04W4/46
H04W92/18
H04W4/44
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063995
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2021000663の分割
【原出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】田野崎 康雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 喜義
(72)【発明者】
【氏名】冨安 雄一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA41
5K067EE02
5K067EE25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】情報の展開にかかるコストを削減可能な車載装置、車車間通信方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】車載装置40は、コンセントレータ33を備えるローカル通信部としての920通信部11と、公衆通信部ととしてのLTE通信部41と、を具備する。ローカル通信部は、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成し、当該マルチホップネットワークを介して他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合うデータ伝播機能を備える。コンセントレータは、自装置の属するマルチホップネットワークを介して他の車載装置からデータを集約する。公衆通信部は、集約したデータを、公衆移動通信網を介して送信相手先に送信する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置において、
他の車載装置とマルチホップネットワークを形成し、当該マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合うローカル通信部を具備し、
前記ローカル通信部は、
自装置を備える車両が第1マルチホップネットワークから第2マルチホップネットワークに移動した場合に、前記第1マルチホップネットワークで展開されたデータを前記第2マルチホップネットワークに展開するデータ伝播機能を備える、車載装置。
【請求項2】
前記データ伝播機能は、予め設定された有効期限を過ぎていないデータを伝播させる、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記第1マルチホップネットワークが公衆移動通信網と通信可能な車両を含み、前記第2マルチホップネットワークが前記公衆移動通信網と通信可能な車両を含まない場合に、 前記データ伝播機能は、前記公衆移動通信網の管理センタから送信されたデータを前記第2マルチホップネットワークに展開する、請求項1に記載の車載装置。
【請求項4】
前記第1マルチホップネットワークが公衆移動通信網と通信可能な車両を含まず、前記第2マルチホップネットワークが前記公衆移動通信網と通信可能な車両を含む場合に、
前記公衆移動通信網と通信可能な車両は、前記第2マルチホップネットワークに展開されたデータを前記公衆移動通信網の管理センタに転送する、請求項1に記載の車載装置。
【請求項5】
車載装置が、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成する過程と、
前記車載装置が、前記マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合う過程と、
前記車載装置が、自装置を備える車両が第1マルチホップネットワークから第2マルチホップネットワークに移動した場合に、前記第1マルチホップネットワークで展開されたデータを前記第2マルチホップネットワークに展開する過程とを具備する、車車間通信方法。
【請求項6】
車載装置に、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成する過程を実行させる命令と、
前記車載装置に、前記マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合う過程を実行させる命令と、
前記車載装置に、自装置を備える車両が第1マルチホップネットワークから第2マルチホップネットワークに移動した場合に、前記第1マルチホップネットワークで展開されたデータを前記第2マルチホップネットワークに展開する過程を実行させる命令とを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車載装置、車車間通信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載装置を利用して、ネットワーク経由で各種のサービスをユーザに提供するシステムが実用化されている。この種のシステムでは、例えば3G/LTE(登録商標)(Long Term Evolution)に代表される公衆通信網により車載装置を管理センタに接続し、ユーザと管理センタとの間で各種の情報を双方向に展開することができる。例えば広域事故・工事情報、天気情報、車検・定期点検お知らせ情報などが、ユーザに提供される。また、車両側からも車両情報、故障情報等が管理センタに送信され、これらの情報をもとにメンテナンスサービス等が提供される。さらに、車両の走行状態等の各種情報をグローバルに共有するシステムも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-528739号公報
【特許文献2】国際公開第2017/130495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信事業者の公衆通信網を利用する以上、相応のコストがかかる。
そこで、目的は、情報の展開にかかるコストを削減可能な車載装置、車車間通信方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、車載装置は、ローカル通信部を具備する。ローカル通信部は、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成し、当該マルチホップネットワークを介して他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合う。そして、ローカル通信部は、自装置を備える車両が第1マルチホップネットワークから第2マルチホップネットワークに移動した場合に、第1マルチホップネットワークで展開されたデータを第2マルチホップネットワークに展開するデータ伝播機能を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係わる車車間通信システムの一例を示すシステム図である。
図2図2は、ローカルネットワーク、および孤立ネットワークの一例を示す図である。
図3図3は、グローバルネットワークの一例を示す図である。
図4図4は、車両に搭載されるデバイスの一例を示す図である。
図5図5は、車載装置30,40が各デバイスから取得するデータの一例を示す図である。
図6図6は、一般車両10に搭載される車載装置30の一例を示す機能ブロック図である。
図7図7は、隣接リスト32のデータ構造の一例を示す図である。
図8図8は、隣接リスト32に格納されたデータの一例を示す図である。
図9図9は、プログラム6に含まれるルーチンの一例を示すブロック図である。
図10図10は、各接続機器とプロセッサ4との間で授受されるコマンドの一例を示す図である。
図11図11は、メモリ5に記憶されるデータ7の一例を示す図である。
図12図12は、車載装置30に記憶されるネットワーク情報71の一例を示す図である。
図13図13は、図11に示される一時データ72の一例を示す図である。
図14図14は、特別車両20に搭載される車載装置40の一例を示す機能ブロック図である。
図15図15は、車載装置40に記憶されるネットワーク情報73の一例を示す図である。
図16図16は、管理センタ200の一例を示す機能ブロック図である。
図17図17は、車載装置30におけるタイマ割込み発生時の処理手順の一例を示す図である。
図18図18は、親ノード更新処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図19図19は、親ノード選出処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図20図20は、上位ノード確認処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図21図21は、上位ノード確認コマンドを受けたノードの動作の一例を示すフローチャートである。
図22図22は、接続要求コマンドを受けたノードの動作の一例を示すフローチャートである。
図23図23は、接続更新コマンドを受けたノードの動作の一例を示すフローチャートである。
図24図24は、子ノードリスト更新処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図25図25は、車載装置40におけるタイマ割込み発生時の処理手順の一例を示す図である。
図26図26は、マルチホップによる下位ノードへのルーティングの一例を示す図である。
図27図27は、マルチホップによる上位ノードへのルーティングの一例を示す図である。
図28図28は、データ下位展開処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図29図29は、データ下位展開コマンドを受けた子ノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図30図30は、データ上位展開処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図31図31は、データ上位展開コマンドを受けた親ノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図32図32は、ステータス下位展開処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図33図33は、ステータス下位展開コマンドを受けたノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図34図34は、データ削除処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図35図35は、データ削除コマンドを受けたノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図36図36は、下位ノード数取得コマンドを受けたノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図37図37は、コンセントレータ機能オフコマンドを受信したノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図38図38は、ローカルネットワークから孤立ネットワークへのデータ伝播の一例を示す図である。
図39図39は、ローカルネットワークから孤立ネットワークへのデータ伝播の他の例を示す図である。
図40図40は、ユーザ管理データ205aの一例を示す図である。
図41図41は、孤立ネットワーク中の車両からローカルネットワークへのデータ伝播の一例を示す図である。
図42図42は、孤立ネットワーク中の車両からローカルネットワークへのデータ伝播の他の例を示す図である。
図43図43は、複数のコンセントレータが密集した状態を示す図である。
図44図44は、コンセントレータ機能オフコマンド実行後に密集が解消した状態を示す図である。
図45図45は、ユーザ管理データ205aに管理される他の情報の例を示す図である。
図46図46は、実施形態における効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<用語の説明>
以下に、実施形態で用いられる用語について説明する。
マルチホップ通信:例えば、国際標準化組織IETF(Internet Engineering Task Force)のRPL(IPv6(Internet Protocol version 6)Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks)に準拠する最適経路選択アルゴリズムにより構築される、無線ネットワーク上での通信をいう。この種のネットワークは、メッシュ状、あるいはツリー状のネットワークトポロジを形成し得る。実施形態では、ツリー状のマルチホップネットワークに関して説明する。なお、マルチホップ通信については、920MHz特定小電力無線通信技術を用いるスマートメータシステムが実用化されている。
【0008】
920通信:920MHz帯を用いた、いわゆる特定小電力無線通信技術による通信を、本実施形態では920通信と略称する。なお920MHz帯特定小電力無線通信とは、ARIB STD-T108で規定される920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線通信である。
LTE通信:いわゆるLTE(Long Term Evolution)規格による無線通信を指す。実施形態においては、より上位の概念で、他の規格による公衆移動通信網を用いた通信も含めてLTE通信という。
一般車両:マルチホップ通信におけるコンセントレータ機能(集約機能)を持たない車両をいう。実施形態では符号10を付して示す。
特別車両:コンセントレータ機能を有し、LTE通信の可能な車両を、実施形態では特別車両と略称する。実施形態では符号20を付して示す。実施形態では特殊車両という用語も用いるが、これとは区別される。つまり特殊車両は、一般車両、特別車両のいずれにもなり得る。なお、実施形態において一般車両、特別車両を区別しない場合には、符号を付さない「車両」と表記する。
【0009】
ローカルネットワーク:実施形態において、LTE基地局と通信可能な特別車両を含むマルチホップネットワークをいう。
孤立ネットワーク:実施形態において、特別車両を含まないマルチホップネットワークをいう。加えて、LTE基地局と通信できない特別車両を含むマルチホップネットワークもいう。例えば、特別車両がLTE基地局のサービス範囲から出てしまうと、ローカルネットワークは孤立ネットワークになる。さらに、周囲に接続可能な車両がない単独の車両も、孤立ネットワークと称する。
【0010】
グローバルネットワーク:実施形態において、1以上のローカルネットワークと、これらのローカルネットワークを配下とするセンタ装置とを含むネットワークをいう。
【0011】
ノード:マルチホップネットワークを構成する一つ一つの車両、あるいは車載装置をいう。実施形態における車載装置は、ローカルネットワークや孤立ネットワークのノードとみなすことができる。
【0012】
[実施形態]
<構成>
図1は、実施形態に係わる車車間通信システムの一例を示すシステム図である。図1において、一般車両10と特別車両20とが、車車間通信システムに混在する。一般車両10および特別車両20は、920通信によるマルチホップネットワークを形成し、ツリー状のネットワークを構成してマルチホップ通信を行う。このうち特別車両20が、LTE通信によりLTE基地局100を経由して管理センタ200と通信することができる。特別車両20はコンセントレータ機能を備えているので、一般車両10から取得したデータと自らのデータとを集約し、LTE通信により管理センタ200に送信する。
【0013】
管理センタ200は、特別車両20から収集したデータを処理し、サービス内容に応じた情報を生成する。生成された情報は、サービス加入者専用のWebページに公開されたり、インターネット300経由で各種のサービスベンダ400に送られたり、スマートフォンやPC(Personal Computer)等のユーザデバイス500に向け配信されたりすることが可能である。
【0014】
一般ユーザがユーザデバイス500から入力したデータや、サービスベンダ400から提供されたデータは、管理センタ200に送信される。管理センタ200は、受信したデータを処理して、車両に展開するための情報を生成する。この情報は、LTE基地局100を経由して特別車両20に送信され、さらに、マルチホップネットワークの下位の車両に920通信で展開される。
【0015】
図2を参照して、ローカルネットワーク、および孤立ネットワークについて説明する。図2において、ローカルネットワーク801は、特別車両20を介してLTE基地局100と通信可能なマルチホップネットワークである。孤立ネットワーク802は、特別車両20が属さないマルチホップネットワークである。周囲に接続可能な車両がない単独の一般車両10も、孤立ネットワーク802に含まれる。また、特別車両20が属していても、LTE基地局100と通信できない(通信不可)のネットワークは、孤立ネットワーク802である。
【0016】
図3を参照して、グローバルネットワークについて説明する。実施形態において、複数のローカルネットワーク801、およびインターネット300を含むネットワークを、グローバルネットワーク900と総称する。グローバルネットワーク900において、管理センタ200は、各ローカルネットワーク801からのデータを受信し、インターネット300経由でサービスベンダ400やユーザデバイス500に情報を提供する。また、管理センタ200は、インターネット300から取得したデータを、ローカルネットワーク801側に送信する。
【0017】
図4は、車両に搭載されるデバイスの一例を示す図である。図4において、車載装置、GPS(Global Positioning System)部、カーナビゲーションシステム、およびCAN(Controller Area Network)バスにのみ符号を付して示す。各デバイスは、ライン型のCANバス70上の電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)として機能する。このうち車載装置30は、一般車両10に搭載され、車載装置40は、特別車両20に搭載される。
【0018】
GPS部50は、GPS衛星からの測位信号を受信し、自らの位置情報を取得する。カーナビゲーションシステム60は、表示用モニタ、タッチセンサ、スピーカ等のユーザインタフェースを備え、ユーザへの情報表示、およびユーザからの情報入力を担う。また、カーナビゲーションシステム60は、道路地図などのデジタルマップデータを格納するための、SSD(Solid State Drive)を備える。
【0019】
図5は、車載装置30,40が各デバイスから取得するデータの一例を示す図である。例えば、緯度、経度、および高度を含む位置情報が、GPS部50から取得される。また、車速センサから、車速および進行方向が取得される。このほか走行距離や、車外、車内の温度なども取得される。
【0020】
図6は、一般車両10に搭載される車載装置30の一例を示す機能ブロック図である。第2車載装置としての車載装置30は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを備える、組み込みコンピュータである。以下に説明する処理機能は、ハードウェア資源としてのプロセッサが、メモリに書き込まれたプログラムに従って動作することで実現される。
【0021】
車載装置30は、920通信部1、プロセッサ4、メモリ5、CANバスインタフェース8、およびタイマ9を備える。これらはUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)、あるいはSPI(Serial Peripheral Interface)バス等のインタフェースを介して相互に接続される。
【0022】
ローカル通信部としての920通信部1は、アンテナ2を有し、920MHz特定小電力無線通信を行う。すなわち920通信部1は、電波圏内の他の車載装置とマルチホップ型の無線ネットワークを形成し、例えば図5に示されるようなデータを転送する。また、920通信部1はレジスタ3を備える。レジスタ3は、車両そのもの、あるいは車載装置30に割り当てられた固有のシリアル番号(通信ID31)と、周辺の他の車載装置をリストアップした隣接リスト32とを記憶する。
【0023】
プロセッサ4は、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理ユニットであり、メモリ5に予め書き込まれたプログラム6を実行する。例えばプロセッサ4は、920通信により形成されたマルチホップネットワークを介して他の車載装置との間でデータを展開して、互いに情報を共有し合う。メモリ5は、例えばNANDフラッシュメモリなどの不揮発性半導体メモリであり、所定の記憶領域に、プログラム6、およびデータ7を記憶する。
【0024】
CANバスインタフェース8は、CANバス70に接続された各要素とプロセッサ4との通信を仲介する。例えばGPS部50、カーナビゲーションシステム60、および他の各種車載機器80からのデータは、CANバスインタフェース8を介してプロセッサ4やメモリ5に転送される。
【0025】
タイマ9は、例えばRTC(Real Time Clock)であり、予め設定されたタイミングでハードウェア割込みを発生させて、プロセッサ4にプログラム6を実行させる。タイマ9は、車載バッテリーによりバックアップされている。GPS部50から時刻情報が得られれば、その時刻情報を用いてタイマ9の時刻を随時、補正してもよい。
【0026】
図7は、隣接リスト32のデータ構造の一例を示す図である。隣接リスト32は、隣接する他の車両の920通信部1の通信IDと、その920通信部1から受信した電波強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)とを対応付けたデータのセット(レコード)を、複数含む。
【0027】
図8に示されるように、周辺の4つの車両(920通信部1)のうち、通信ID(S0000010)から受信した電波のRSSI値が最高値を示し、通信ID(S0000200)から受信した電波のRSSI値が最低値を示す。これらのデータは時々刻々と変化し、マルチホップルートをダイナミックに形成するための重要な指標になる。
【0028】
図9は、プログラム6に含まれるルーチンの一例を示すブロック図である。プログラム6は、電源投入直後に実行される初期化ルーチン61、一定期間ごとにタイマ割込みを発生させるタイマ実行ルーチン62、920通信部1からコマンドを受信した際に起動するコマンド実行ルーチン63、および、車載機器制御ルーチン64を含む。
【0029】
コマンド実行ルーチン63は、例えば分岐処理、接続要求コマンド処理、上位ノード確認コマンド、下位ノード数取得コマンド、データ削除コマンド、データ展開コマンド…等の、複数のコマンドや処理を含む。コマンドは、各接続機器とプロセッサ4との間で授受される。例えばデータ削除コマンドは、プロセッサ4により実行されて、予め設定された有効期限を過ぎたデータを削除する削除部として機能する。
【0030】
車載機器制御ルーチン64は、CANバス70を介してGPS部50やカーナビゲーションシステム60と通信し、各デバイスの制御やデータの授受を実現する。各デバイスとプロセッサ4は、コマンドおよびデータを、例えばUART等のシリアル通信により授受する。
【0031】
図10は、各接続機器とプロセッサ4との間で授受されるコマンドの一例を示す図である。コマンドは、コマンド名、送信元、送信先、コマンドパラメータ、およびレスポンスデータ等の属性を持つ。各コマンドが実行された時の動作については<作用>の項目において詳しく説明する。
【0032】
図11は、メモリ5に記憶されるデータ7の一例を示す図である。図11に示されるように、データ7は、ネットワーク情報71と、一時データ72とを含む。特に、メモリ5の一時データ72を格納するための領域は、複数のデータを格納するのに十分な容量を確保される。
【0033】
図12は、車載装置30に記憶されるネットワーク情報71の一例を示す図である。図12に示されるように、ネットワーク情報71は、ネットワークタイプ71a、親ノード管理データ71b、子ノード数71c、および、子ノード管理データ71dを含む。
【0034】
ネットワークタイプ71aは、周囲の車載装置との間で形成されたマルチホップネットワークのタイプを格納する。親ノード管理データ71bは、マルチホップネットワーク中で自ノードの親ノードの通信IDと電波強度を格納する。子ノード数71cは、マルチホップネットワーク中で自ノードの子ノードの数を格納する。子ノード管理データ71dは、子ノードごとの通信ID、カウント値、および電波強度をそれぞれ格納する。
【0035】
図13は、図11に示される一時データ72の一例を示す図である。一時データ72に記憶されるデータは、それぞれ、ヘッダ部とデータ本体とを有する。ヘッダ部は、データタイプ、配信方式、データ作成日時(年月日と時分秒情報)、シリアル番号、有効期間、発信元情報、および、発信先情報をそれぞれ格納するためのフィールドを含む。
【0036】
例えばデータタイプMは、管理センタ200から宛先を指定せずに送信されたデータを示す。データタイプSは、管理センタ200から宛先(発信先通信ID)を指定して(特定車両など)送信されたデータを示す。データタイプEは、マルチホップネットワーク下流の車両で生成され管理センタ200に向けて送信されたデータを示す。
【0037】
図14は、特別車両20に搭載される車載装置40の一例を示す機能ブロック図である。第1車載装置としての車載装置40も組込み型のコンピュータであり、図6に示される構成に加えて、通信アンテナ42を有するLTE通信部41を備える。公衆通信部としてのLTE通信部41は、UARTなどを介してプロセッサ4と接続される。
【0038】
ところで、車載装置40の920通信部(符号11を付す)は、コンセントレータ33を備える。なお以下の説明において、920通信部11と、コンセントレータ機能を持たない920通信部1とを区別しない場合には、符号なしの「920通信部」と表記する。
【0039】
コンセントレータ33は、他の車載装置からマルチホップネットワークを介してデータを集約する。すなわちコンセントレータ33は、自らの属するマルチホップネットワークの配下の子ノードから送信されたデータを集約してLTE通信部41に渡す。
【0040】
LTE通信部41は、集約されたデータを、公衆移動通信網を介してセンタ装置に送信する。すなわちLTE通信部41は、コンセントレータ33により集約されたデータを、LTE通信により、LTE基地局100経由で管理センタ200に送信する。
【0041】
図15は、車載装置40に記憶されるネットワーク情報73の一例を示す図である。車載装置40のメモリ5は、図12に示される領域に加えて、さらに、コンセントレータ機能フラグ73aを格納する領域を備える。コンセントレータ機能フラグ73aは、コンセントレータ33の機能がオンされているか、またはオフされているかを管理するためのフラグである。
【0042】
図16は、管理センタ200の一例を示す機能ブロック図である。センタ装置としての管理センタ200は、データベース205を有するデータベースサーバ203と、送受信サーバ201、データ処理サーバ202、およびWebサーバ204を備える。送受信サーバ201は、バックホール(backhaul)回線を介してLTE基地局100とデータを授受する。データ処理サーバ202は、取得したデータを処理して各種の情報を生成する。Webサーバ204は、インターネット300と相互にデータを授受する。データベースサーバ203は、データベース205に保持されたデータを管理する。
【0043】
ところで、データ処理サーバ202は、課金処理部202aと、遠隔制御部202bとを備える。
課金処理部202aは、特別車両20に搭載される車載装置40と管理センタ200との、LTE通信にかかる費用を、車載装置40の属するマルチホップネットワークに属する車載装置のユーザ間で負担するための課金情報を生成する。この課金情報は、課金処理部202aにより公衆移動通信網に通知され、課金サーバ102等により処理されてユーザへの課金に用いられる。
【0044】
遠隔制御部202bは、既定の広さの範囲に特別車両20が複数存在する場合に、その範囲内の少なくともいずれか1つの特別車両20の車載装置40のコンセントレータ機能を無効化する。
【0045】
次に、上記構成における作用を説明する。車載装置30、または40に電源が投入されると、初期化ルーチン61(図9)は、先ず、メモリ5のネットワーク情報71(図12)、73(図15)をゼロクリアし、初期化する。コンセントレータ機能フラグ73a(図15)は、機能オンを示す1で初期化される。なお一時データ72については、例えば工場出荷時に一度だけ初期化すればよい。初期化が完了すると、タイマ割込みの発生とともに動作がスタートする。
【0046】
<作用>
(コンセントレータ機能を持たない車載装置30における処理手順の説明)
図17は、車載装置30におけるタイマ割込み発生時の処理手順の一例を示す図である。タイマ実行ルーチン62(図9)は、例えば1秒間隔でタイマ割込みを発生させる。プロセッサ4は、タイマ割込みシグナルを受けると、親ノード更新処理を実行し(ステップ16a)、子ノードリスト更新処理を実行し(ステップ16b)、一時データ72(図13)の更新処理を実行(ステップ16c)する。
【0047】
図18は、親ノード更新処理(図17のステップ16a)における処理手順の一例を示すフローチャートである。図18において、プロセッサ4は、ネットワーク情報71(図12)の親ノード管理データ71bを参照し、マルチホップネットワーク中で自ノードの親ノードの通信IDが登録されているか否かを確認する(ステップ17a)。登録が無く、親ノードの通信IDデータが初期化状態のままであれば(No)、プロセッサ4は、親ノード選出処理を行う(ステップ17d)。
【0048】
条件を満たす親ノードが有れば(ステップ17eでYes)、プロセッサ4は、その親ノードの通信IDをネットワーク情報71の親ノード管理データ71bに格納し、登録する(ステップ17f)。次にプロセッサ4は、920通信部を介して、親ノードに接続要求コマンドを送信する(ステップ17g)。
【0049】
接続要求コマンドは、例えば図10の形式のデータ列である。920通信部は、コマンドパラメータに自ノードの通信IDを格納して、接続要求コマンドを送信する。次に、プロセッサ4は親ノードに対してデータ上位展開コマンド(図10)を送信して、一時データ72中の各データを親ノードに差分コピーする(ステップ17h)。
【0050】
一方、ステップ17aで親ノードの通信IDデータが登録済みであれば(Yes)、プロセッサ4は、920通信部から隣接リストデータを取得し(ステップ17b)、登録されている親ノードが接続条件を満たすか否かを判定する(ステップ17c)。ステップ17cにおいてプロセッサ4は、当該親ノードの通信IDが隣接リストに存在し、かつ、通信IDのRSSI値が例えば128以上であるか否かを確認する。接続条件が満たされていれば(Yes)、プロセッサ4は、920通信部を介して親ノードに接続更新コマンドを送信する(ステップ17i)。接続条件が満たされていなければ(No)、プロセッサ4は、ステップ17dの親ノード選出処理以降の処理を行う。
【0051】
図19は、親ノード選出処理(図18のステップ17d)における処理手順の一例を示すフローチャートである。親ノード選出処理においてプロセッサ4は、隣接リストの中でRSSI値が大きな要素から順に参照し、RSSIが128以上のもので、かつ、自ノードの下位ノードでない通信IDがあるか否かを調べる。
【0052】
図19において、プロセッサ4は、920通信部から隣接リストデータを取得し(ステップ18a)、RSSI値の順に通信IDをソートする(ステップ18b)。次にプロセッサ4は、内部変数iに1を代入し(ステップ18c)、ソートされた隣接リストデータのi番目の要素から、RSSI値の値を閾値(ここでは128)と比較する(ステップ18d)。閾値未満であれば(No)、そのままiをインクリメントして(ステップ18g)、隣接リストの要素数に至るまで(ステップ18h)、処理手順は再びステップ18dに戻る。
【0053】
ステップ18dで、RSSI値が128以上の要素が見つかると(Yes)、プロセッサ4は上位ノード確認処理を実施し(ステップ18e)、当該i番目の要素の上位ノードに自ノードがないと判断されれば(ステップ18fでNo)、OK終了する。ステップ18fでYesであれば、ステップ18gでiをインクリメントして、条件を満たす親ノードが見つからなかった場合には(ステップ18hでNo)、NG終了する。
【0054】
図20は、上位ノード確認処理(ステップ18e)における処理手順の一例を示すフローチャートである。図20において、プロセッサ4は、920通信部を介して、親ノード候補(ステップ18dでRSSI値が128以上と検出されたもの)の車載装置の920通信部に上位ノード確認コマンドを送信する(ステップ19a)。上位ノード確認コマンドは、例えば図10の形式のデータ列である。920通信部は、コマンドパラメータに自ノードの通信IDを格納して、上位ノード確認コマンドを送信する。送信された上位ノード確認コマンドは、920無線区間を経由して親ノードの車載装置の920通信部で受信され、親ノード候補のプロセッサ4に転送される。上位ノード確認コマンドを受けた親ノード候補のプロセッサ4は、コマンドパラメータ中の通信IDを引数として、そのノードの親ノードに対し上位ノード確認要求コマンドを発動したのち、レスポンスを返送する。
【0055】
送信元ノードのプロセッサ4は、親ノード候補からのレスポンスを待ち(ステップ19b)、1秒以内にレスポンスが無い(ステップ19cでNo)、または「上位ノードに該当あり」のレスポンスを受けた場合(ステップ19dでNo)には、上位ノード確認処理はNG終了となる。1秒以内にレスポンスが有り(ステップ19cでYes)、「上位ノードに該当なし」であれば(ステップ19dでYes)、上位ノード確認処理はOK終了となる。
【0056】
図21は、上位ノード確認コマンドを受けたノードの動作の一例を示すフローチャートである。図21において、上位ノード確認コマンドを受けたノードは、親ノード管理データ71bを参照し(ステップ20a)、親ノードが無ければ(ステップ20bでNo)、「上位ノードに該当なし」をレスポンスとして920通信部に返す(ステップ20c)。親ノードが有れば(ステップ20bでYes)、当該ノードは、引数として与えられた通信IDと照合し、一致した場合は(ステップ20dでYes)、「上位ノードに該当あり」をレスポンスとして920通信部に返す(ステップ20e)。一致しなかった場合は(ステップ20dでNo)、当該ノードは、さらに親ノードに対して再帰的に上位ノード確認コマンドを送信し、受信したレスポンスを自ノードのレスポンスとして返送する(ステップ20f)。
【0057】
図22は、接続要求コマンドを受けたノードの動作の一例を示すフローチャートである。図22において、接続要求コマンドを受けたノードは、当該コマンドのコマンドパラメータに指定された子ノードの通信IDをネットワーク情報71の子ノード管理データ(図12)に登録する(ステップ21a)。次に当該ノードは、データ下位展開コマンドにより一時データ72の各データ(図13)を下位ノードに差分コピーする(ステップ21b)。次に当該ノードは、ステータス下位展開コマンドにより、ネットワークタイプ71aのデータを下位ノードに差分コピーする(ステップ21c)。そして当該ノードは、子ノード管理データにおける対応する要素のカウント値を初期化(ゼロクリア)する(ステップ21d)。
【0058】
図23は、接続更新コマンドを受けたノードの動作の一例を示すフローチャートである。図23に示されるように、接続更新コマンドを受けたノードは、ネットワーク情報71中の子ノード管理データのうち、接続更新コマンドのコマンドパラメータに指定された通信IDに対応する要素のカウント値をクリアする。図18図23の処理手順により、親ノード更新処理が実施される。次に、子ノードリスト更新処理(図17)について説明する。
【0059】
図24は、子ノードリスト更新処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。プロセッサ4は、内部変数iに1を代入して初期化したのち(ステップ23a)、子ノード管理データ71d(図12)のi番目の要素を参照し(ステップ23b)、カウント値が例えば10以上であるか否かを判定する(ステップ23c)。Yesであれば、プロセッサ4は、その要素を子ノード管理データ71dから削除し(ステップ23g)、iをインクリメントして(ステップ23e)、iが子ノード数に達するまで(ステップ23f)ステップ23bに戻って処理を継続する。
【0060】
ステップ23cで、カウント値が10未満であれば(No)、プロセッサ4はカウント値をインクリメントしたうえで(ステップ23d)、子ノード管理データ71dの次の要素を参照する。
【0061】
子ノードリスト更新処理は、タイマ実行ルーチンからキックされて1秒ごとに起動するので、各カウント数は1秒ごとに1増加する。子ノード管理データ71dのカウント値は該当する子ノードから接続要求があればクリアされる。つまり、カウント値が10になれば10秒以上接続要求がなかったということになり、ネットワーク上、自ノードから切り離されることになる。
【0062】
子ノードリスト更新処理が終わると、プロセッサ4は、一時データ72の更新処理を実行する(図17)。一時データ更新処理において、プロセッサ4は、タイマ9から取得した日時時刻情報、一時データ72の各データのデータ作成日時情報、および、有効期間情報を参照し、有効期間を過ぎたデータを一時データ72から削除する。
【0063】
(コンセントレータ機能を有する車載装置40における処理手順の説明)
図25は、車載装置40におけるタイマ割込み発生時の処理手順の一例を示す図である。タイマ実行ルーチン62(図9)は、例えば1秒間隔でタイマ割込みを発生させる。図25において、タイマ割込みシグナルを受けると、920通信部11は、LTE通信部41経由で管理センタ200との通信が可能か否かを確認する(ステップ24a)。通信が可能であれば(Yes)、920通信部11は、CANバスインタフェース8経由でGPS部50から位置情報を取得し、この位置情報をコマンドパラメータに付加した所在確認コマンドを管理センタ200に送信する(ステップ24b)。
【0064】
次に920通信部11は、コンセントレータ機能フラグ73a(図15)がセットされているか否かを確認し(ステップ24c)、セットされていれば(Yes)、下位ノードのネットワークタイプ71aに、ローカルネットワークに属することを表す番号1を格納する(ステップ24d)。その後、920通信部1と同様に、920通信部11は、子ノードリスト更新処理(ステップ24e)と、一時データ更新処理(ステップ24f)を行い、処理手順は呼び出し元に戻る(RETURN)。
【0065】
ステップ24aにおいて、管理センタ200との通信ができない(No)と判定されると、920通信部11は、コンセントレータ機能フラグをクリアし(ステップ24h)、920通信部1と同様に、親ノード更新処理24iを実行する(ステップ24i)。その後、920通信部11は、子ノードリスト更新処理(ステップ24e)と、一時データ更新処理(ステップ24f)を行う。
【0066】
ステップ24cにおいて、コンセントレータ機能フラグがセットされていないならば(No)、920通信部11は、親ノード管理データ71bを参照し、親ノードがあるか否かを判定する(ステップ24j)。親ノードがあれば(Yes)、処理手順はステップ24iに移り、親ノードが無いならば(No)、920通信部11はコンセントレータ機能フラグをセットし(ステップ24g)、ステップ24e以降の処理を行う。
【0067】
<データおよびステータスのルーティング>
次に、データおよびステータスのルーティングについて説明する。一時データ72の各データ(図13)、および、ネットワークタイプ71a(図12)に格納されるステータスは、920通信のマルチホップによるルーティングにより展開される。なお、ステータスは、自ノードがローカルネットワークに属するか、孤立ネットワークに属しているかを示す情報である。例えば、カーナビゲーションシステム50にステータスを参考情報として表示することができる。
【0068】
図26は、マルチホップによる下位ノードへのルーティングの一例を示す図である。図26において、自ノードからのデータは、マルチホップネットワークにおける下位ノードに向けて、枝分かれしつつ展開される。
図27は、マルチホップによる上位ノードへのルーティングの一例を示す図である。図27において、自ノードからのデータは、マルチホップネットワークにおける上位ノードに向けて展開される。なお、実施形態において、最上位ノードに達した各データは下位ノードへと向かって枝分かれしつつ展開される。
【0069】
(一時データ72に格納されたデータのルーティング)
図28は、データ下位展開処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。下位ノードにデータを展開するノードは、子ノード管理データ71d(図12)を参照し(ステップ26a)、内部変数iを1からインクリメントしつつ(ステップ26b、26e)、i番目の子ノードに通信IDおよび対象データを引数として、920通信によりデータ下位展開コマンドを送信する(ステップ26d)。ここで、展開対象データがコマンドパラメータに指定される。自らの配下の全ての子ノードにコマンドが送信されると(ステップ26cでYes)、処理は終了する。
【0070】
図29は、データ下位展開コマンドを受けた子ノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。データ下位展開コマンドを受信したノードは、一時データ(図13)のヘッダ部を参照し、データ下位展開コマンドで指定されたデータが一時データ中にあるか否かを判定する(ステップ27a)。データが既にあれば(Yes)処理は終了する。データが無ければ(No)、受信したデータを一時データ72に追加する(ステップ27b)。さらに、当該ノードは、子ノード管理データ71d(図12)を参照し(ステップ27c)、図28と同様の手順により全ての子ノードに宛ててデータ下位展開コマンドを送信する(ステップ27c~27g)。このようにして、下位ノードに対してデータ下位展開コマンドが再帰的に送信される。
【0071】
図30は、データ上位展開処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。図30において、当該ノードがコンセントレータ機能を持つ920通信部11であって、かつ、コンセントレータ機能フラグがセットされている場合には(ステップ28aでYes)、当該ノードはデータをLTE通信部41経由で管理センタ200に送信する(28e)。
【0072】
コンセントレータ機能を持たない920通信部1の場合、あるいはコンセントレータ機能を持っていてもコンセントレータ機能フラグがセットされていない場合には(ステップ28aでNo)、当該ノードは親ノード管理データ(図12)を参照し(ステップ28b)、親ノードがあるか否かを判断する(ステップ28c)。親ノードが無ければ(No)処理は終了する。
【0073】
ステップ28cで、親ノードが有れば(Yes)、当該ノードは、920通信により親ノードに向けデータ上位展開コマンドを送信する(ステップ28d)。ここで、展開対象データと、送信元通信IDとして自ノードの通信IDがコマンドパラメータに指定される。
【0074】
図31は、データ上位展開コマンドを受けた親ノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。データ上位展開コマンドを受けた親ノードは、一時データ(図13)のヘッダ部を参照し、データ上位展開コマンドで指定されたデータが一時データ中にあるか否かを判定する(ステップ29a)。データが既にあれば(Yes)処理は終了する。データが無ければ(No)、受信したデータを一時データ72に追加する(ステップ29b)。
【0075】
当該ノードがコンセントレータ機能を持つ920通信部11であって、かつ、コンセントレータ機能フラグがセットされている場合には(ステップ29cでYes)、当該ノードはデータをLTE通信部41経由で管理センタ200に送信する(29m)。
【0076】
コンセントレータ機能を持たない920通信部1の場合、あるいはコンセントレータ機能を持っていてもコンセントレータ機能フラグがセットされていない場合には(ステップ29cでNo)、当該ノードは親ノード管理データ(図12)を参照し(ステップ29d)、上位にさらなる親ノードがあるか否かを判断する(ステップ29e)。親ノードが有れば、当該ノードは、920通信により親ノードに向けデータ上位展開コマンドを送信する(ステップ29f)。ここで、展開対象データと、送信元通信IDとして自ノードの通信IDがコマンドパラメータに指定される。
【0077】
さらに、当該ノードは、子ノード管理データ71d(図12)を参照し(ステップ29g)、内部変数iを1からインクリメントしつつ(ステップ29h、29l)、コマンドパラメータに指定された送信元通信ID以外の子ノード(ステップ29jでNo)に対して920通信によりデータ下位展開コマンドを送信する(ステップ29k)。ここで、展開対象データがコマンドパラメータに指定される。自らの配下の全ての子ノード(コマンドパラメータに指定された送信元通信IDの子は除く)にコマンドが送信されると(ステップ29iでNo)、処理は終了する。このようにして、下位ノードに対してデータ下位展開コマンドが再帰的に送信される。
【0078】
(ステータスのルーティング)
図32は、ステータス下位展開処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。図32において、ノードは、子ノード管理データ71d(図12)を参照し(ステップ30a)、内部変数iを1からインクリメントしつつ(ステップ30b、30e)、i番目の子ノードに920通信によりステータス下位展開コマンドを送信する(ステップ30d)。ここで、自ノードのネットワークタイプ71aの値がコマンドパラメータに指定される。自らの配下の全ての子ノードにコマンドが送信されると(ステップ30cでNo)、処理は終了する。
【0079】
図33は、ステータス下位展開コマンドを受けたノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。ステータス下位展開コマンドを受信したノードは、受信したデータを一時データ72に追加する(ステップ31a)。次に、このノードは、子ノード管理データ71d(図12)を参照し(ステップ31b)、図28と同様の手順により全ての子ノードに宛ててステータス下位展開コマンドを送信する(ステップ31c~31f)。このようにして、下位ノードに対してステータス下位展開コマンドが再帰的に送信される。
【0080】
(データの削除)
図34は、データ削除処理における処理手順の一例を示すフローチャートである。一時データ72におけるデータの削除は、最上位のノードから順に実施される。図34において、最上位ノードは、一時データ(図13)のヘッダ部を参照し、指定されたヘッダ情報と一致するデータを、自ノードの一時データ72から削除する(ステップ32a)。次にこのノードは、子ノード管理データ71d(図12)を参照し(ステップ32b)、図28と同様の手順により全ての子ノードに宛ててデータ削除コマンドを送信する(ステップ32c~32f)。ここで、コマンドパラメータに削除対象データのヘッダ情報が指定される。このようにして、下位ノードに対してデータ下位展開コマンドが再帰的に送信される。
【0081】
図35は、データ削除コマンドを受けたノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。データ削除コマンドを受信したノードは、一時データ(図13)のヘッダ部を参照し、指定されたヘッダ情報と一致するデータを、自ノードの一時データ72から削除する(ステップ33a)。次にこのノードは、子ノード管理データ71dを参照し(ステップ33b)、図34と同様の手順により全ての子ノードに宛てて指定データの削除コマンドを送信する(ステップ33c~32f)。このようにして、下位ノードに対してデータ下位展開コマンドが再帰的に送信される。
【0082】
図36は、下位ノード数取得コマンドを受けたノードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。下位ノード数取得コマンドを受けたノードは、子ノード管理データ71d(図12)を参照し(ステップ34a)、子ノードが無ければ(ステップ34bでNo)、0コードを返して終了する。
【0083】
子ノードが有れば(ステップ34bでYes)、当該ノードは、内部変数iに1を代入し(ステップ34c)、子ノード数の合計数を0としてから(ステップ34d)、i番目の子ノードに再帰的に下位ノード取得コマンドを送り、下位ノード数を取得する(ステップ34e)。次に、当該ノードは、取得した子ノード数+1を合計数に加算し(ステップ34f)、iをインクリメントしてから(ステップ34h)、自らの配下の全ての子ノードから子ノード数を取得すると(ステップ34gでNo)、処理は終了する。
【0084】
図37は、コンセントレータ機能オフコマンドに係わる処理手順の一例を示すフローチャートである。管理センタ200のデータ処理サーバ202(図16)は、各LTE基地局100のサービス範囲内のコンセントレータ機能搭載車(特別車両)から送信された所在確認コマンドを参照し、各車両の位置を監視している。
【0085】
実施形態では、半径100m以内に複数のコンセントレータ機能搭載車がある状態を、密集状態と定義する。そして、密集状態が形成された場合、最もLTE基地局100からの距離が小さいものを以外のコンセントレータ機能搭載車に対してコンセントレータ機能オフコマンドを送信する。
【0086】
図37は、コンセントレータ機能オフコマンド(図10)を受け取ったノードの動作である。図19と同様の処理により、親ノードを選出する(ステップ35a)。条件を満たす親ノードがなかった場合(ステップ35bでNo)には処理を終了する。条件を満たす親ノードが有れば(ステップ35bでYes)、図18と同様の手順で親ノードの登録(ステップ35c)、親ノードへの接続要求(ステップ35d)を行なったあと、コンセントレータ機能フラグ73a(図15)をクリアすることにより、コンセントレータ機能をオフする(ステップ35e)。
【0087】
[管理センタ200からの車両へのマルチキャストデータ送信]
(管理センタ200からのデータのローカルネットワーク上の車両への送信)
管理センタ200は、各車両に向け広域事故、工事情報、あるいは天気情報等を送信する。これらのデータは管理センタ200のデータ処理サーバ202で生成され、図13に示されるようにヘッダ部、およびデータ本体データを備える。このうち本体データは例えばXML(eXtended Markup Language)形式のデータであり、テキストデータや位置情報等のデータを含む。
【0088】
ヘッダ部は、当該データグラムの有効期間情報を含む。有効期間は、例えば1時間から数時間程度と、既知の920通信システムと比較して比較的長く設定される。これらのデータは送受信サーバ201(図16)からバックホール回線、LTE基地局100経由で、特別車両20に送信される。コンセントレータ機能を持つ特別車両20は、920通信部11でこれらを受信し、ただちにデータ下位展開コマンドにより、ローカルネットワーク内の各車両に展開する。データを展開された各車両は、受信したデータを一時データ72に追加保存する。
【0089】
データを受信した各車両の車載装置30は、CANバスインタフェース8を介して例えばカーナビゲーションシステム60を制御し、一時データ72から取り出したデータをカーナビゲーションシステムのモニタ上にテキストあるいはイメージとして表示する。
【0090】
(データ伝播機能についての説明)
孤立ネットワークは、特別車両20が居ないことから、管理センタ200からのデータを直接取得することができない。そこで実施形態では、データを車両から車両へと伝播させることで、孤立ネットワーク内の各車両がデータを取得できるようにする。なお、設定された有効期限を過ぎていないデータを伝播させることとする。
【0091】
(管理センタ200からのデータの孤立ネットワーク内車両へのデータ伝播)
図38はローカルネットワークから孤立ネットワークへのデータ伝播の一例を示す図である。図38(A)の状態において、ローカルネットワークA中の各ノードの一時データ72に、管理センタ200から送信されたデータCが保持されているとする。また、孤立ネットワークB中の各ノードの一時データ72には、データCは保持されていないとする。この状態から、図38(B)に示すように、ローカルネットワークA中の車両Pと孤立ネットワークB中のトップノードである車両Qとが接近すると、例えば車両Qの920通信部1が車両Pに子ノードとして接続される。
【0092】
そうすると、データ下位展開機能により、車両Pの一時データ72中のデータが車両Qを経由して、孤立ネットワークBに属していた各車両の車載装置30に展開される。データを受信した各車両の車載装置30は、CANバスインタフェース8を介してカーナビゲーションシステム60を制御し、一時データ72から取り出したデータをカーナビゲーションシステム60のモニタ上に表示する。
【0093】
図39は、ローカルネットワークから孤立ネットワークへのデータ伝播の他の例を示す図である。図39(A)の状態において、ローカルネットワークA中の各ノードの一時データ72に、管理センタ200から送信されたデータCが保持されているとする。また、孤立ネットワークB中の各ノードの一時データ72には、データCは保持されていないとする。この状態から、図39(B)に示すように、ローカルネットワークA中の車両Pが移動してローカルネットワークAを離脱し、孤立ネットワークB中のトップノードである車両Qに接近して、車両Qの子ノードとして接続したとする。
【0094】
そうすると、データ上位展開機能により、車両Pの一時データ72中のデータが車両Qに展開される。さらに、データ上位展開機能およびデータ下位展開機能により、車両Qを経由して孤立ネットワークBの各車両に展開される。データを受信した各車両の車載装置30は、CANバスインタフェース8を介してカーナビゲーションシステム60を制御し、一時データ72から取り出したデータをカーナビゲーションシステム60のモニタ上に表示する。
【0095】
[車両から管理センタ200へのユニキャストデータ送信]
ユニキャストデータは、各車両から管理センタ200に向けて、主にメンテナンスのためにユニキャストで送信される。ユニキャストデータは、車載装置30から例えば一定周期で送信される。例えば、「車両の位置情報」、「地図バージョン情報」、「ライト点灯状況」、および、「ワイパー動作状況」等のデータが対象とされる。
【0096】
これらのデータは、車載装置30のプロセッサ4にてCANバス70を介してGPS部50や各種デバイスから取得される。ユニキャストデータは、例えばXML形式で表現され、ヘッダ部には有効期間情報がある。ユニキャストデータのデータ構造は、例えば図13に示す構造となる。
【0097】
(ローカルネットワーク中の車両からのデータ送信)
車載装置30のプロセッサ4で作成されたデータは、本体データが暗号化されたあと、データ上位展開コマンドにより上位ノードに順に展開される。その際、各ノードの一時データ72にデータが追加される。ローカルネットワークにおいて、コンセントレータ機能を持つ車載装置40に達したデータは、LTE通信部41により、LTE基地局100経由で管理センタ200に転送される。管理センタ200の送受信サーバ201はこのデータを受信し、データベース205のユーザ管理データ205aに格納する。
【0098】
図40は、ユーザ管理データ205aの一例を示す図である。車両IDである通信IDごとに、経由コンセントレータID、緯度GPS情報、経度GPS情報、バッテリー充電状況、ガソリン残量、車内温度、車外照度、ライト点灯状況、および、ワイパー動作状況などのデータが対応付けて記憶される。ユーザ管理データ205aは、必要に応じ、Webサーバ204、あるいはデータベースサーバ203により処理される。
【0099】
送信されたデータは、データ削除コマンドによりネットワークから削除される。コンセントレータ機能を持つ車載装置40は、LTE通信部41から送信したデータを自ノードの一時データ72から削除し、その後、データのヘッダ情報を引数にして各子ノードにデータ削除コマンドを送信する。データ削除コマンドはローカルネットワーク中の下位ノードに順に展開され、各ノードの一時データ72から当該データが削除される。
【0100】
(孤立ネットワーク中の車両からのデータ伝播)
孤立ネットワーク内では、車載装置30のプロセッサ4で作成されたデータは、データ上位展開コマンドにより上位のノードに順に展開される。データが最上位ノードに達すると、下位展開コマンドにより下位のノードに順にデータが展開され、やがてデータは、ネットワーク全体の各ノードに展開される。孤立ネットワーク中にはコンセントレータが存在しないので、データを直接管理センタ200に送信することはできないが、データの有効期限以内であれば、データ伝播機能により受け取ることが可能になる。
【0101】
図41は、孤立ネットワーク中の車両からローカルネットワークへのデータ伝播の一例を示す図である。図41(A)に示されるように、孤立ネットワークB中の各ノードの一時データ72にデータDが保持されているとする。この状態から、図41(B)に示すように、ローカルネットワークA中の車両Pと孤立ネットワークB中の最上位ノードである車両Qとが接近し、車両Qの920通信部1が車両Pに子ノードとして接続されたとする。そうすると、データ上位展開機能により、車両Qの一時データ72のデータが、車両Pを経由してローカルネットワークAに展開される。このデータがコンセントレータ機能を持つ車載装置40に達すると、LTE通信部41により、LTE基地局100経由でデータを管理センタ200の送受信サーバ201に転送される。
【0102】
図42は、孤立ネットワーク中の車両からローカルネットワークへのデータ伝播の他の例を示す図である。図42(A)において、図41(A)と同様に、孤立ネットワークB中の各ノードの一時データ72にデータDが保持されているとする。この状態から、孤立ネットワークB中の車両Qが移動して孤立ネットワークBを離脱し、ローカルネットワークA中の車両Pに接近し、車両Qの920通信部1が車両Pに子ノードとして接続したとする。そうすると、データ上位展開機能により、車両Qの一時データ72のデータが、車両Pを経由してローカルネットワークA中に展開される。このデータがコンセントレータ機能を持つ車載装置40に達すると、LTE通信部41によりLTE基地局100経由でデータを管理センタ200の送受信サーバ201に転送される。
【0103】
図41図42のいずれの場合においても、コンセントレータ機能を持つ車載装置40は、データをLTE通信部41から送信したのち、自ノードの一時データ72から当該データを削除し、データのヘッダ情報を引数にして各子ノードに上述したデータ削除コマンドを送信する。データ削除コマンドは、ローカルネットワークA中の下位ノードに順に展開され、各ノードの一時データ72からデータDが削除される。
【0104】
[管理センタ200から特定車両へのユニキャストデータ送信]
特定の車両に対し、管理センタ200から車検や定期点検のお知らせ情報が送信される。これらのデータは管理センタ200のデータ処理サーバで生成され、図13に示されるように、ヘッダ部およびデータ本体データを含む。本体データは例えばXML形式のデータでありテキストデータや位置情報等のデータを含む。ヘッダ部には送信先車両のコンセントレータ機能を持つ車載装置40の通信IDが格納される。有効期間情報は例えば3分である。
【0105】
管理センタ200は、車両データ(図40)の「経由コンセントレータID」を参照し、対応するコンセントレータと、そのコンセントレータの近隣にあるコンセントレータにデータを送信する。コンセントレータは、管理センタ200からの車両へのマルチキャストデータ送信と同様に、ローカルネットワーク中の全ノードにデータを下位展開する。その際、各ノードはデータヘッダの送信先通信IDを参照し、自ノードの通信IDに該当する場合は、下位展開を停止する。その後、カーナビゲーション画面にその旨を表示し、車両から管理センタ200へのユニキャストデータ送信と同様の手順で、データが届いたことを示すACK(図13)を管理センタ200に送信する。ACKの元データ有効期間は元データの作成日時から例えば7分である。管理センタ200側は、7分経過してもACKを受信しない場合はデータの再送等を行う。
【0106】
[コンセントレータ密集の解消]
図43は、複数のコンセントレータが密集した状態を示す図である。この状態を検出した管理センタは、コンセントレータ機能オフコマンドを送信する。そうすると、例えば図44に示されるように、密集状態が解消される。なお、図25に示す通り、一度コンセントレータ機能がオフになっても、接続できる親ノードがなくなった場合には復旧する。
【0107】
[課金の管理]
実施形態によれば、各車両は既存のネットワークサービスを利用できるのにも関わらず、LTE通信費が発生するのはコンセントレータ機能を持つ車載装置40を搭載する車両(特別車両)だけとなる。従って、既存の技術に比べて通信コストを大幅に削減することができる。さらに実施形態では、特別車両への課金を、ユーザ間で折半することにより公平性を担保できるようになっている。
【0108】
図45は、ユーザ管理データ205aに管理される他の情報の例を示す図である。すなわちユーザIDごとに、課金情報が管理される。例えば使用頻度の多い車両にコンセントレータを設置することが効率的である。図45の例では、U005とU015に生じたLTE通信費は、ユーザ数で除算されて、各ユーザで分担するように請求される。
【0109】
[車両から近隣の車両へのデータ送信]
車両からのメンテナンスデータは、コンセントレータ機能を持つ車載装置40経由で管理センタ200に送信された後、ネットワーク中の各ノードの一時データ72から削除される。しかし、管理センタ200に送信された後にも削除されず、ネットワーク中の各ノードの一時データ72に、一定期間にわたって保持される運用も可能である。
【0110】
(緊急車両、工事用車両からの情報展開)
車両ユーザは、カーナビゲーションシステム60のユーザインタフェースを用いて、メッセージテキストおよび有効期間を入力する。カーナビゲーションシステム60は、GPS部50からの位置情報を付加し、CANバスインタフェース8を介して車載装置40のプロセッサ4にメッセージ送信コマンド(図10)を送る。そして、車載装置40のプロセッサ4で車両から車両へのデータ(図13)が作成され、データ上位展開コマンドとデータ下位位展開コマンドにより、ネットワークに接続した周囲の車両にメッセージが展開される。ヘッダ部の有効期間情報は1時間から数時間と比較的長く設定される。メッセージ受信した車両は、カーナビゲーションシステム60のモニタ上に位置情報とともにメッセージを表示する。
【0111】
上記構成により、周囲にコンセントレータ機能を持つ車両がない場合、およびLTEのサービス圏外であっても、ネットワークに接続した周囲の車両に情報を伝えることができる。さらに、データ伝播機能により、LTE通信を用いなくても近隣地域への情報の伝播が可能になる。
【0112】
[車載装置単体での運用]
920通信コストの廉価性および省電力性を利用して、データ発信元は常時接続した単独の車載装置30を想定することも可能である。この場合でも周囲にコンセントレータ機能を持つ車両がない場合およびLTEのサービス圏外であっても、ネットワークに接続した周囲の車両に情報を伝えることができる。さらに上述したデータ伝播機能により、近隣地域への情報の伝播が可能になる。例えば(1)~(3)のような運用例がある。
(1) アンダーパスの水位情報・警戒情報の展開
車両に水位計を搭載し、一定の水位を超えると、GPS部50からの位情報を付加して、ネットワークに接続した近隣の車両に警告メッセージを送信する。メッセージを受け取った車両はカーナビゲーションシステム60のモニタ上に位置情報ともに警告メッセージを表示する。これにより危険個所に接近する車両への注意喚起が可能になる。
(2) 駐車場の満車・空車情報の展開
駐車場の管理システムと本装置を連携させて、ネットワークに接続した近隣の車両に駐車場の満車・空車情報を伝えることができる。情報を受け取った車両はカーナビゲーションシステム60のモニタ上に位置情報とともに満車・空車情報を表示する。
(3) ガソリンスタンドの価格情報
ネットワークに接続した近隣の車両にガソリンスタンドの位置情報、価格情報を伝えることができる。情報を受け取った車両はカーナビゲーションシステム60のモニタ上に位置情報とともに価格情報を表示する。
【0113】
<効果>
図46は、実施形態における効果を説明するための図である。図46に示されるように、実施形態では、LTE通信機能を一部の車両600(特別車両)のみに搭載し、データ展開機能により複数の車両で同じ情報を共有できるようにした。また、LTE基地局100を用いた公衆通信網の課金を、ユーザ間で分担するようにした。これにより1ユーザあたりの通信料金を抑えることができる。ユーザは、ユーザデバイス500でインターネット300にアクセスし、管理センタ200、サービスベンダ400から提供される各種のサービスを、車両600のユーザとともに享受することができる。
【0114】
また、車両がLTEサービス圏外であった場合でも、ネットワーク中にコンセントレータ機能を持つ車両がありLTEサービス圏内にある場合には、車間マルチホップ通信によりグローバルネットワークとの通信が可能になる。
【0115】
また、LTE通信ができていた車両がサービス範囲外に出た場合には、コンセントレータ機能フラグがクリアされることにより、通常のノードとして機能し、他のLTE通信可能なネットワークに接続することが可能なため、より安定した通信が可能になる。
【0116】
また、ノードが密集した状態で、さらに一定距離以下に複数のコンセントレータがあった場合に、管理センタ200から遠隔でコンセントレータ機能をオン/オフする機能を設けることで、無駄な通信費が発生することを防止できる。また、車両の近隣に車載コンセントレータがない場合でも、データ伝播機能を用いることにより、LTE通信ができる場合と同等のサービスを提供することができる。
【0117】
マルチホップネットワークに特別車両がない場合は、データは一定の期間にわたって車両に保持され、管理センタ200との通信が可能になった際に通信が行われる。ネットワーク中にコンセントレータ機能を持つ車両がなくても、データ伝播機能を利用することにより、コンセントレータにデータが伝わった時点でLTE通信を行い、グローバルネットワーク側に伝える。
【0118】
またコンセントレータ搭載車によって受信されたデータはローカルネットワーク、孤立ネットワークの各ノードに蓄積されるが、データには有効期間後に削除される。これにより、メモリ容量オーバーを防止できる。
【0119】
ユーザは低コストの920MHz特定小電力無線通信機能を用いることにより高コストの通信インフラを使用することなく情報を発信することができる。920MHz特定小電力無線通信機の省電力性能の高さから、停止時にも情報を送信続けることも可能である。
【0120】
また、実施形態の車載装置は、カーナビゲーションシステム60と接続され、車両の位置データや各種デバイスからの情報取得、デバイスへの制御、ユーザへの情報表示、ユーザからのデータ入力はカーナビゲーションシステム60を介して行うことができる。
【0121】
以上のように、実施形態によれば、車載装置にはコンセントレータ機能を有するものと有しないものがある。各車両はネットワークを構成し低コストな920MHz特定小電力無線通信技術を用いてマルチホップ通信を行う。ネットワーク中のコンセントレータ機能を有する車載装置のみが各一般車両のデータを集約し管理センタ200との間で高コストなLTE通信を行い、係る通信費を全ユーザで分割して支払うことにより1ユーザあたりの通信料金を低く抑える。
【0122】
マルチホップネットワークに特別車両がない場合には、通信用データをネットワーク内の各車両に一定期間保持し、ネットワーク間のデータ伝播機能を用いることにより各車両がLTE通信を行う場合と同等のサービスを提供することができる。
【0123】
マルチホップ通信技術を応用して、一般の車両間は低コストな近距離通信を行うネットワークを構成し、携帯通信機能を一部の車両のみ搭載することにより全体のコストを下げると同時に十分なサービス機能を実現することができる。さらに携帯通信機能搭載車に係る費用を他の近距離通信ユーザも分割して支払う課金システムを導入してユーザ間の公平性を担保できる。
【0124】
以上述べたように、実施形態によれば、情報の展開にかかるコストを削減可能な車載装置、車車間通信方法、およびプログラムを提供することが可能になる。
【0125】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
第1車載装置と、
第2車載装置と、
センタ装置とを具備し、
前記第1車載装置は、
他の車載装置とマルチホップネットワークを形成し、当該マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合うローカル通信部と、
自装置の属するマルチホップネットワークを介して前記他の車載装置から前記データを集約するコンセントレータと、
前記集約したデータを、公衆移動通信網を介して前記センタ装置に送信する公衆通信部とを備え、
前記第2車載装置は、
他の車載装置とマルチホップネットワークを形成し、当該マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合い、前記第1車載装置を備える車両が当該マルチホップネットワークに存在する場合に、当該第1車載装置をルートノードとして前記データを展開するローカル通信部を備える、車車間通信システム。
[付記2]
前記センタ装置は、
前記第1車載装置と前記センタ装置との通信にかかる費用を当該第1車載装置の属するマルチホップネットワークに属する車載装置のユーザ間で負担するための課金情報を生成し、前記公衆移動通信網に通知する課金処理部を具備する、[付記1]に記載の車車間通信システム。
[付記3]
前記センタ装置は、
前記第1車載装置を備える車両が既定の広さの範囲に複数存在する場合に、当該範囲内の少なくともいずれか1つの第1車載装置の前記コンセントレータの機能を無効化する遠隔制御部を具備する、[付記1]に記載の車車間通信システム。
[付記4]
車載装置において、
他の車載装置とマルチホップネットワークを形成し、当該マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合うローカル通信部と、
自装置の属するマルチホップネットワークを介して前記他の車載装置から前記データを集約するコンセントレータと、
前記集約したデータを、公衆移動通信網を介して送信相手先に送信する公衆通信部とを具備する、車載装置。
[付記5]
車載装置において、
他の車載装置とマルチホップネットワークを形成し、当該マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合うローカル通信部を具備し、
前記ローカル通信部は、
公衆移動通信網に接続可能な車載装置を備える車両が前記マルチホップネットワークに存在する場合に、当該車両の車載装置を前記マルチホップネットワークにおけるルートノードとして前記データを展開する、車載装置。
[付記6]
さらに、予め設定された有効期限を過ぎたデータを削除する削除部を具備する、[付記4]または[付記5]に記載の車載装置。
[付記7]
車載装置が、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成する過程と、
前記車載装置が、前記マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合う過程と、
前記車載装置が、自装置の属するマルチホップネットワークを介して前記他の車載装置から前記データを集約する過程と、
前記車載装置が、前記集約したデータを、公衆移動通信網を介して送信相手先に送信する過程とを具備する、車車間通信方法。
[付記8]
車載装置が、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成する過程と、
前記車載装置が、前記マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合う過程と、
公衆移動通信網に接続可能な車載装置を備える車両が前記マルチホップネットワークに存在する場合に、当該車両の車載装置を前記マルチホップネットワークにおけるルートノードとして、前記車載装置が前記データを展開する過程とを具備する、車車間通信方法。[付記9]
車載装置に、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成する過程を実行させる命令と、
前記車載装置に、前記マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合う過程を実行させる命令と、
前記車載装置に、自装置の属するマルチホップネットワークを介して前記他の車載装置から前記データを集約する過程を実行させる命令と、
前記車載装置に、前記集約したデータを、公衆移動通信網を介して送信相手先に送信する過程を実行させる命令とを含む、プログラム。
[付記10]
車載装置に、他の車載装置とマルチホップネットワークを形成する過程を実行させる命令と、
前記車載装置に、前記マルチホップネットワークを介して前記他の車載装置との間でデータを展開して互いに情報を共有し合う過程を実行させる命令と、
公衆移動通信網に接続可能な車載装置を備える車両が前記マルチホップネットワークに存在する場合に、当該車両の車載装置を前記マルチホップネットワークにおけるルートノードとして、前記車載装置に前記データを展開する過程を実行させる命令とを含む、プログラム。
【符号の説明】
【0126】
1…通信部、2…アンテナ、3…レジスタ、4…プロセッサ、5…メモリ、6…プログラム、7…データ、8…CANバスインタフェース、9…タイマ、10…一般車両、11…通信部、20…特別車両、30…車載装置、32…隣接リスト、33…コンセントレータ、80…各種車載機器、40…車載装置、41…LTE通信部、42…通信アンテナ、50…GPS部、60…カーナビゲーションシステム、61…初期化ルーチン、62…タイマ実行ルーチン、63…コマンド実行ルーチン、64…車載機器制御ルーチン、70…CANバス、71…ネットワーク情報、71a…ネットワークタイプ、71b…親ノード管理データ、71d…子ノード管理データ、72…一時データ、73…ネットワーク情報、73a…コンセントレータ機能フラグ、100…LTE基地局、102…課金サーバ、200…管理センタ、201…送受信サーバ、202…データ処理サーバ、202a…課金処理部、202b…遠隔制御部、203…データベースサーバ、204…Webサーバ、205…データベース、205a…ユーザ管理データ、300…インターネット、400…サービスベンダ、500…ユーザデバイス、801…ローカルネットワーク、802…孤立ネットワーク、900…グローバルネットワーク、920…タイマ実行ルーチン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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