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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009580
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】油水分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/035 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B01D17/035 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111213
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬山 展希
(57)【要約】
【課題】油中の水分除去が不均一になることを抑制して、水分除去に掛かる時間を短縮できる油水分離装置を提供する。
【解決手段】油水分離装置は、油槽に配置され、複数の吐出口を含む吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドと接続し、空気供給源からの空気を前記吐出ヘッドに供給する空気配管と、を備え、前記吐出ヘッドは、前記複数の吐出口を通じて、前記空気配管から供給される空気を前記油槽に放出し、前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの下部及び側部の少なくとも一方に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽に配置され、複数の吐出口を含む吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと接続し、空気供給源からの空気を前記吐出ヘッドに供給する空気配管と、を備え、
前記吐出ヘッドは、前記複数の吐出口を通じて、前記空気配管から供給される空気を前記油槽に放出し、
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの下部及び側部の少なくとも一方に配置される、油水分離装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドは、互いに間隔をあけて配置される複数のパイプと、前記複数のパイプを前記空気配管に連結するジョイント部と、を含み、
前記ジョイント部は、前記空気配管及び前記複数のパイプを連結し、前記複数のパイプを分岐させている、請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの長手方向に分布している、請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの下部に配置されている、請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの上下方向において同じ位置に設けられている、請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項6】
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドに等間隔で設けられている、請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項7】
前記吐出ヘッドの上方に載置台を更に備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の油水分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油から水分を除去する油水分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油から水分を除去する油水分離装置が開示されている。当該装置は、油を貯留する槽内の底側に配置され、空気導入管から供給される空気を泡状にして油に放出する泡発生手段を備える。泡発生手段から放出される空気は、油中を浮力で上昇する過程で油中の水分を取り込み、油中から槽外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-279707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る油水分離装置は、泡発生手段の空気導入管に近い部分では、浮力の影響で、多量の空気が油に放出される。そのため、泡発生手段の空気導入管から遠い部分では、空気が十分に行き渡らず、油に放出される空気が少なくなる。そうすると、泡発生手段から放出される空気の分布が不均一になる。従って、油中の水分除去が不均一になり、水分除去に掛かる時間が長くなる。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、油中の水分除去が不均一になることを抑制して、水分除去に掛かる時間を短縮できる油水分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る油水分離装置は、油槽に配置され、複数の吐出口を含む吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドと接続し、空気供給源からの空気を前記吐出ヘッドに供給する空気配管と、を備え、前記吐出ヘッドは、前記複数の吐出口を通じて、前記空気配管から供給される空気を前記油槽に放出し、前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの下部及び側部の少なくとも一方に配置されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、吐出ヘッドから放出される空気の分布が不均一になることを抑制できる。従って、油中の水分除去に掛かる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る油水分離装置の正面図である。
図2】油槽の内部に配置され、フック部材及び載置台等が取り付けられた状態の図1の油水分離装置の正面図である。
図3図2の油水分離装置についての斜視図である。
図4図2の油水分離装置について下方から見た平面図である。
図5図2の油水分離装置の吐出パイプの断面図である。
図6】載置台に部品が載置された状態の図2の油水分離装置の斜視図である。
図7】内部空間が油で満たされた状態の図5の吐出パイプの断面図である。
図8】内部空間の油の一部が排出された状態の図5の吐出パイプの断面図である。
図9】内部空間の全ての油が排出され、吐出口から空気が排出されている状態の図5の吐出パイプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る油水分離装置について、添付図面を参照して説明する。図1に、実施形態に係る油水分離装置1についての正面図を示す。
【0010】
油水分離装置1は、後述する油槽2(図2)に配置され、空気を放出する吐出ヘッド3と、吐出ヘッド3に空気供給源からの空気を供給する空気配管4とを備えている。吐出ヘッド3は、後述する複数の吐出口3a(図4)を含み、本実施形態では、複数の吐出口3aは吐出ヘッド3の下部に形成されている。吐出ヘッド3は、空気配管4に接続されている。空気配管4の上流側には、空気供給源9(図2)が接続され、空気供給源9から空気配管4に供給された空気を吐出ヘッド3に供給可能に構成されている。
【0011】
上記の油水分離装置1を油槽2の内部に配置すると共に、油槽2に水分除去を行う対象の油を貯留させ、吐出ヘッド3の複数の吐出口3aから空気を排出し、吐出口3aから排出された空気が油の内部を通過することによって油から水分の除去を行う。油水分離装置1を用いた油の水分除去について、図2ないし8を参照して説明する。
【0012】
図2に、油水分離装置1が油槽2の内部に配置された状態の油水分離装置1及び油槽2の正面図を示す。油槽2は、油を貯留可能な形状で構成され、油を貯留する貯留空間S1を有している。本実施形態においては、油槽2は、直方体の形状を有している。油は、例えば、防錆油、切削油、潤滑油、燃料などである。油槽2は、貯留空間S1の下部となる底壁2aと、底壁2aから上方に延び貯留空間S1の側方を囲む4つの側壁2bとを有している。油槽2においては、貯留空間S1の上部が開放されている。本実施形態においては、油槽2の内部において、貯留空間S1を油が部分的に占めるように油が貯留されている。図2において、油槽2に貯留された油の液面をL1で示す。図2においては、説明の便宜上、油槽2の側壁2bが透視され、油槽2の内部の構成が図示されている。
【0013】
油槽2の内部には、吐出ヘッド3及び空気配管4が配置される。吐出ヘッド3は、油槽2に貯留された油に浸漬されている。空気配管4の一部が、油槽2の内部に配置されている。そのため、空気配管4は、油槽2の外部に配置された外部空気配管4aと、油槽2の内部に配置された内部空気配管4bとを含んでいる。図2に示されるように、外部空気配管4aには、空気配管4の内部を流通する空気の流量を計測可能な流量計7が取り付けられていてもよい。また、外部空気配管4aには、油槽2の内部に向けて供給される空気から予め水分の除去を行うための装置(例、水分除去フィルター)が設けられていてもよい。
【0014】
内部空気配管4bは、油槽2の内部で上下方向V1に延びている。内部空気配管4bは、空気の供給される方向における下流側の端部に位置する接続部4dにおいて、吐出ヘッド3に接続される。なお、接続部4dを設けずに、空気配管4及び吐出ヘッド3を接続してもよい。従って、空気供給源9から供給された空気は、外部空気配管4a及び内部空気配管4bを通って、吐出ヘッド3に供給される。
【0015】
また、図2に示されるように、油水分離装置1に、フック部材5が取り付けられてもよい。フック部材5は、吐出ヘッド3及び空気配管4を油槽2の内部に配置し、あるいは油槽2から取り出す際に、油水分離装置1を持ち上げるために用いられる。フック部材5の形状は、例えば、リング形状である。フック部材5の持ち上げには、例えば、クレーンを用いることができる。また、図2に示されるように、油水分離装置1に載置台6が取り付けられてもよい。載置台6は、油水分離装置1によって部品に防錆処理を行う際に、吐出ヘッド3の上方に防錆処理を行う部品を載置するために用いられる。また、図2に示されるように、油水分離装置1の空気配管4よりも上流側の位置に配置されて空気配管4に向けて空気を供給する空気供給源9が油水分離装置1に取り付けられてもよい。空気供給源9から空気配管4に供給された空気が吐出ヘッド3に供給され、吐出ヘッド3から空気を排出することにより、油槽2の内部に貯留された油から水分の除去が行われる。なお、本実施形態においては、油中の水分の除去は、吐出ヘッド3から空気を排出して水分を油から外部に排出した結果、油中の水分が任意の基準以下になることをいう。
【0016】
図3に油水分離装置1の斜視図を示し、図4に油水分離装置1を下方から見た平面図を示す。図3及び図4においては、説明の便宜上、油槽2の底壁2a及び側壁2bが透視され、油槽2の内部の構成が図示されている。図5に、吐出ヘッド3における空気の供給される方向に直交する平面に沿った断面図を示す。
【0017】
吐出ヘッド3は、複数の吐出口3aを含む。吐出ヘッド3は、吐出ヘッド3の内部に空気を流通させる空気配管4に接続される。そして、吐出ヘッド3は、複数の吐出口3aを通じて、空気配管4から供給される空気を油槽2に放出する。
【0018】
吐出ヘッド3は、空気が充填される内部空間S2(図7参照)を有している。複数の吐出口3aは、それぞれ内部空間S2に連通するように構成されている。従って、吐出ヘッド3の内部空間S2と油槽2の貯留空間S1とが、複数の吐出口3aを介して連通している。また、吐出ヘッド3は、ハウジング3b、及びハウジング3bに空気を供給する流入口3cを有している。
【0019】
図4に示されるように、吐出ヘッド3は、2つのパイプ3dを含んでいる。2つのパイプ3dは、それぞれ、上流側屈曲部3fと、下流側屈曲部3gとを有している。図4では、2つのパイプ3dは、ジョイント部3eで直角になるように取り付けられ、ジョイント部3eから上流側屈曲部3fまで、油槽2の側壁2bに沿って延びている。なお、上流側屈曲部3f及び下流側屈曲部3gは、それぞれ、2つのパイプ3dと一体でもよいし、別体で形成してもよい。
【0020】
2つのパイプ3dは、それぞれ上流側屈曲部3fで屈曲してから、互いに平行となる方向に延びている。また、2つのパイプ3dは、下流側屈曲部3gにおいて、再び屈曲している。2つのパイプ3dは、下流側屈曲部3gから下流側に向かうにつれて互いに近接する方向に延び、油槽2の側壁2bに沿って延びている。
【0021】
2つのパイプ3dは、それぞれ、ジョイント部3eから上流側屈曲部3fまで互いに離間する方向に延びた上流側パイプ3hと、上流側屈曲部3fと下流側屈曲部3gとの間でそれぞれ互いに平行となるように延び吐出口3aが設けられた吐出パイプ3iと、下流側屈曲部3gから互いに近接する方向に延びた下流側パイプ3jとを有している。2つのパイプ3dは、端部3kで閉じている。本実施形態においては、2つのパイプ3dのそれぞれにおいて、吐出パイプ3iのみに吐出口3aが設けられている。なお、複数の吐出口3aは、吐出パイプ3iに限らず、吐出ヘッド3のいずれかの位置に設けられればよい。
【0022】
図4に示されるように、吐出ヘッド3は、ジョイント部3eを含んでいる。ジョイント部3eは、吐出ヘッド3の2つのパイプ3dを空気配管4と連結する。ジョイント部3eは、複数のパイプ3d及び空気配管4を連結し、ジョイント部3eから複数のパイプ3dを分岐させることもできる。本実施形態では、ジョイント部3eは、複数のパイプ3d及び空気配管4を連結し、2つに分岐している。なお、上流側屈曲部3f、下流側屈曲部3g、上流側パイプ3h、下流側パイプ3j、及びジョイント部3eは、油槽の形状、及び油水分離装置の設計などに応じて、適宜、使用すればよい。
【0023】
吐出ヘッド3は、図5に示されるように、上下方向V1において、上部3m、側部3n、及び下部3pに分けることができる。すなわち、油槽2に、吐出ヘッド3を浸漬させるのに十分な量の油があるとした場合の油の液面L1に最も近い部分を上部3m、最も遠い部分を下部3p、その間の部分を側部3nとすることができる。吐出ヘッド3における吐出パイプ3iの上下にある平面が液面L1と平行になるように配置されている場合(例、吐出パイプ3iの断面が長方形又は正方形などの場合)には、液面L1に最も近い位置にある平面を上部3m、液面L1に最も遠い位置にある平面を下部3p、上部3mと下部3pの間の部分を側部3nとすることができる。また、吐出ヘッド3における吐出パイプ3iの液面L1に最も近い位置に液面L1と平行な平面が無い場合(例、吐出パイプ3iの断面が円形などの場合)には、液面L1に最も近い位置にあり、吐出口を設けるとした場合に必要となる領域を上部3m、上部3mと上下方向V1に対向する領域を下部3p、上部3mと下部3pの間の部分を側部3nとすることができる。
【0024】
図5には、吐出ヘッド3における吐出パイプ3iについての断面図が示されている。吐出ヘッド3の形状は、例えば、角管状、円管状であるが、これに限られない。複数の吐出口3aは、吐出ヘッド3の下部3p及び側部3nの少なくとも一方に配置され、好ましくは、吐出ヘッド3の下部3pに配置されている。また、好ましくは、複数の吐出口3aは、等間隔に配置されている。本実施形態においては、複数の吐出口3aは、吐出ヘッド3の下部3pに、長手方向に沿って一列に等間隔に設けられている。吐出ヘッド3のうち吐出口3aよりも上方の部分においては、吐出ヘッド3の内部空間S2がハウジング3bによって閉鎖されている。吐出ヘッド3の上部3mは、吐出口を有さず、内部空間S2を上方から閉鎖している。
【0025】
図5には、円管状である吐出ヘッド3について示されている。吐出ヘッド3が円管状である場合、例えば、液面L1に最も近い位置にあり、吐出口を設けるとした場合に必要となる領域を上部3mとし、上部3mと上下方向V1に対向する領域を下部3pとし、その間の部分を側部3nとすることができる。本実施形態では、吐出口3aの中心3qが下部3pにあるときには吐出口3aが下部3pに配置されているものとし、吐出口3aの中心3qが側部3nにあるときには吐出口3aが側部3nに配置されているものとし、吐出口3aの中心3qが上部3mにあるときには吐出口3aが上部3mに配置されているものとする。
【0026】
内部空気配管4bは、配管部4cと、接続部4dとを有している。内部空気配管4bの接続部4dは、吐出ヘッド3における流入口3cに接続されている。本実施形態においては、配管部4cは、油槽2の貯留空間S1において、油槽2の側壁2bに近接した位置で上下方向V1に延びるように配置されている。
【0027】
2つのパイプ3dは、それぞれ上流側パイプ3h及び下流側パイプ3jを有している。そして、2つのパイプ3dの上流側パイプ3h及び下流側パイプ3jのそれぞれに対して、フック部材5が接続されている。フック部材5は、2つのパイプを互いに接続するブリッジ部5aと、ブリッジ部5aから上方に向けて延びたポール部5bと、ポール部5bの上方の端部に取り付けられたフック部5cとを有している。フック部材5は、2つのパイプ3dの上流側パイプ3hに接続された上流側フック部5dと、2つのパイプ3dの下流側パイプ3jに接続された下流側フック部5eとを含んでいる。
【0028】
上流側フック部5d及び下流側フック部5eは、それぞれ2つのパイプ3dの上流側パイプ3h及び上流側パイプ3jと接続している。上流側フック部5d及び下流側フック部5eを用いて、油水分離装置1を上昇及び降下させることができる。例えば、部品の防錆処理時には、上流側フック部5dと下流側フック部5eとをクレーン等を使って上昇又は降下させることにより、油槽2に対して、吐出ヘッド3、空気配管4、及び載置台6(防錆処理を行う部品を含む)を容易に設置し、又は引き上げることが可能になる。
【0029】
載置台6は、空気の流通する方向の上流側に配置された上流側載置台6aと、下流側に配置された下流側載置台6bとを含んでいる。上流側載置台6a及び下流側載置台6bは、それぞれ防錆処理を行う部品を支持するための支持板6cと、支持板6cを吐出ヘッド3と干渉しないように支持する脚部6dとを有している。載置台6は、吐出ヘッド3と別体でもよいし、一体でもよい。載置台6の支持板6cの形状は、部品を上部に載置できる形状であればよく、例えば、板状、箱状である。
【0030】
吐出ヘッド3と油槽2の底壁2aとの間の隙間は、吐出ヘッド3の複数の吐出口3aによる空気の放出を阻害しないように設定すればよい。複数の吐出口3aが吐出ヘッド3の下部に設けられている場合は、吐出ヘッド3と底壁2aとの間に複数の吐出口3aから排出される空気が円滑に排出されるのに十分な隙間を設ければよい。複数の吐出口3aが吐出ヘッド3の側部に設けられている場合は、吐出ヘッド3と底壁2aとの間に隙間を設けてもよいし、設けなくてもよい。本実施形態においては、吐出ヘッド3と油槽2の底壁2aとの間に隙間が設けられている。
【0031】
支持板6cは、油水分離装置1を平面視したときに、吐出パイプ3iの延びる方向と直交する方向に延びている。支持板6cは、吐出パイプ3iの延びる方向と平行な方向に延びてもよいし、これ以外の方向に延びてもよい。脚部6dは、支持板6cに取り付けられ、支持板6cから下方に向けて延びている。支持板6cは、2つのパイプ3dの上方に配置されている。また、支持板6cが2つのパイプ3dの上方を通るように、脚部6dが2つのパイプ3dよりも高い位置で支持板6cを支持している。脚部6dの間を2つのパイプ3dが通るように、吐出ヘッド3が配置されている。また、2つのパイプ3dは、支持板6cの下部に接続されている。
【0032】
上記のように構成された油水分離装置1において、防錆処理が行われる際の動作について説明する。防錆処理が行われる際には、油槽2に吐出ヘッド3及び空気配管4が配置され、油槽2に防錆処理の行われる油が貯留される。防錆処理が行われる際には、載置台6の支持板6c上に、防錆処理を行う部品が載置される。なお、油水分離装置1では、部品を油に浸漬した状態で油の水分除去を行うことにより、部品の防錆処理を行うことができる。
【0033】
本実施形態においては、防錆処理が行われる部品として、例えば、ベアリングが用いられる。図6に、防錆処理が行われる部品8としてのベアリングが載置台6の支持板6c上に載置された状態の油水分離装置1の斜視図を示す。本実施形態では、説明のために簡略化された円環が、ベアリングに相当する部品8として図示されている。なお、上述のように、脚部6dが油槽2の底壁2aに着地した状態において、2つのパイプ3dと底壁2aとの間に隙間が設けられているので、支持板6c上に部品8が載置されたとしても2つのパイプ3dには部品8の荷重は掛からない。
【0034】
部品8についての防錆処理が行われる際には、支持板6c上に部品8が載置された状態で、空気配管4を介して吐出ヘッド3の内部に空気が供給される。空気が吐出ヘッド3に供給され、吐出ヘッド3の2つのパイプ3dが空気によって満たされた状態でさらに空気が2つのパイプ3dに供給され続けると、2つのパイプ3dに設けられた複数の吐出口3aから空気が排出される。油槽2は上方が外部と接続しているので、複数の吐出口3aから排出された空気は上昇し、油槽2に貯留された油を通過して外部に放出される。
【0035】
上述したように、複数の吐出口3aから排出された空気は、複数の吐出口3aから油槽2に貯留された油の液面L1まで上昇する過程において、油に含まれた水分を取り込む。水分を取り込んだ空気が外部に排出されることにより、油に含まれた水分が外部に排出される。これにより、油槽2に貯留されている油から水分の除去を行うことができる。また、吐出ヘッド3の2つのパイプ3dに空気を継続して供給し、油槽2内部の油に空気を通し続けることで、油に含まれた水分を外部に排出し続けることができる。
【0036】
図7から図9を参照して、吐出ヘッド3に空気が供給され、複数の吐出口3aから空気が排出されるまでの吐出ヘッド3の内部の状態について説明する。図7から図9は、吐出ヘッド3におけるハウジング3bの吐出パイプ3iについての断面図である。図7から図9においては、吐出パイプ3iと複数の吐出口3aの断面図が示されている。
【0037】
図7から図9に示されるように、吐出パイプ3iは内部空間S2を有している。また、吐出パイプ3iにおいて、複数の吐出口3aが吐出パイプ3iの長手方向に分布している。吐出パイプ3iの長手方向をD1で示す。複数の吐出口3aは、吐出パイプ3iの長手方向D1に沿って一列に並べられて設けられている。
【0038】
図7に、吐出パイプ3iの内部空間S2が油で満たされている状態の吐出パイプ3iの断面図を示す。図7に示されるように、油槽2に油が貯留された状態で吐出ヘッド3が油槽2に配置されると、吐出口3aを介して吐出パイプ3iの内部空間S2の内部に油が侵入し、内部空間S2が油によって満たされる。なお、吐出パイプ3iの内部空間S2に空気が供給されている状態で吐出ヘッド3が油槽2に配置されてもよい。図7において、内部空間S2の油の液面をL2で示す。内部空間S2が油で満たされた状態において、空気配管4を通して空気が吐出ヘッド3における吐出パイプ3iの内部空間S2に供給される。
【0039】
内部空間S2に空気が供給されると、内部空間S2に満たされていた油の一部が吐出口3aを通して吐出パイプ3iの外部に排出される。これにより、内部空間S2に貯留されていた油の一部が、空気によって下方に押され、吐出口3aを介して外部に排出される。そのため、内部空間S2に貯留されていた油の一部が、吐出パイプ3iの外部で油槽2に貯留されている油に入り込む。内部空間S2に空気が供給されることにより、吐出パイプ3iの上側の一部に空気が存在し、吐出パイプ3iの下側の一部に油が存在している状態の吐出パイプ3iの断面図について、図8に示す。図8において、内部空間S2の油の液面をL2で示す。また、内部空間S2に貯留されている油が、吐出口3aを通って吐出パイプ3iの外部に排出される際の油の流れる方向をD2で示す。
【0040】
図8に示される状態から吐出ヘッド3の内部に継続して空気が供給されると、内部空間S2において空気の占める割合が増えていく。その際、空気が内部空間S2に供給されるにつれて、吐出パイプ3iの内部で、油の液面L2がD3方向に移動していく。
【0041】
図9に、内部空間S2から空気が全て排出された状態の吐出パイプ3iの断面図を示す。吐出パイプ3iの内部に空気が供給され続け、内部空間S2の油が全て排出されると、図9に示されるように、内部空間S2が空気で占められる。内部空間S2が空気で占められた後に、空気を吐出パイプ3iの内部へ供給し続けると、複数の吐出口3aを介して空気が吐出ヘッド3の外部へ排出される。複数の吐出口3aから排出された空気は、油槽2に貯留された油を通って上昇し、油の液面L1を通って油の外部に排出される。このとき、空気が吐出口3aから排出された後に、油を通って上昇しながら、油に含まれる水分を取り込み、取り込んだ水分と共に油の外部に排出される。
【0042】
本実施形態によれば、複数の吐出口3aは、吐出ヘッド3の下部3pに配置されている。吐出パイプ3iに空気を供給して、油に放出するまで、内部空間S2全体に、空気を充填することができる。従って、空気を内部空間S2に充填し、空気の圧力を安定させた状態で、複数の吐出口3aから空気を放出できるので、複数の吐出口3aから安定して空気を放出することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、複数の吐出口3aが吐出パイプ3iの下部に、一列にかつ等間隔で並べられている。従って、吐出パイプ3iの内部に空気が溜められた状態から、複数の吐出口3aから安定して空気を放出することができる。
【0044】
また、複数の吐出口3aが吐出パイプ3iの下部に設けられている場合、複数の吐出口3aから空気が放出される際に、吐出パイプ3iの内部に十分な量の空気が溜められているので、吐出ヘッド3の流入口3cに供給される空気に圧力変動があったとしても、吐出パイプ3iの内部に溜められた空気に圧力変動を吸収させることができる。従って、圧力変動を吸収した状態で、複数の吐出口3aから安定して空気を放出することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、吐出ヘッド3の上下方向V1において、複数の吐出口3aが吐出パイプ3iの同じ位置に設けられている。吐出パイプ3iの内部に溜められた空気が、一定のタイミングで複数の吐出口3aから放出される。従って、複数の吐出口3aから空気を放出する際に、複数の吐出口3aから安定して空気を放出することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、複数の吐出口3aは、互いに水平方向に間隔をあけて配置される複数のパイプ3dの長手方向に分布している。油槽2に対して、複数の吐出口3aが広範囲に亘って配置されるので、油中の水分除去を広範囲で行うことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、吐出ヘッド3の上方に配置される載置台6の支持板6c上に、防錆処理を行う部品8を設置して部品8についての防錆処理が行われる。防錆油についての水分除去を行いつつ、部品8を載置台6に置いて防錆処理をすることができる。この場合、部品8の周囲で、吐出ヘッド3から放出された空気によって防錆油に対流を生じさせることができる。従って、部品8の周囲において、防錆油の対流によって、部品8に対して、十分に水分除去が行われた油で防錆処理することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、複数の吐出口3aが吐出パイプ3iの下部3pに設けられ、空気が下方に向けて吐出されている。従って、複数の吐出口3aから吐出された空気は、下方に向かって進み、その後上昇して油の液面L1から外部に排出される。従って、油槽2に貯留された油のより深い位置から水分除去することができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、複数の吐出口3aが吐出パイプ3iの下部3pに設けた構成について説明したが、上記実施形態に限定されない。例えば、複数の吐出口3aが、吐出パイプ3iの側部3nに設けられてもよい。吐出口3aが吐出ヘッド3の下部3p及び側部3nの少なくとも一方に配置されることにより、吐出パイプ3iの内部に空気を充填する際に、内部空間S2に一旦空気が貯留される。また、複数の吐出口3aは、吐出パイプ3iの長手方向に沿って一列に並べられていなくてもよい。例えば、複数の吐出口3aは、複数の列に並べてもよいし、ランダムに並べてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、吐出ヘッド3が2つのパイプ3dを有する構成について説明したが、上記実施形態に限定されない。パイプ3dの数は、2つ以外の数であってもよい。パイプ3dは3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、2つのパイプ3dのそれぞれにおいて、パイプ3dが互いに平行に延びた吐出パイプ3iを有する構成について説明したが、上記実施形態に限定されない。2つのパイプ3dは互いに平行に延びた部分を有していなくてもよい。
【0052】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0053】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0054】
[項目1]
油槽に配置され、複数の吐出口を含む吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと接続し、空気供給源からの空気を前記吐出ヘッドに供給する空気配管と、を備え、
前記吐出ヘッドは、前記複数の吐出口を通じて、前記空気配管から供給される空気を前記油槽に放出し、
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの下部及び側部の少なくとも一方に配置される、油水分離装置。
【0055】
[項目2]
前記吐出ヘッドは、互いに間隔をあけて配置される複数のパイプと、前記複数のパイプを前記空気配管に連結するジョイント部と、を含み、
前記ジョイント部は、前記空気配管及び前記複数のパイプを連結し、前記複数のパイプを分岐させている、項目1に記載の油水分離装置。
【0056】
[項目3]
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの長手方向に分布している、項目1または2に記載の油水分離装置。
【0057】
[項目4]
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの下部に配置されている、項目1乃至3のいずれかに記載の油水分離装置。
【0058】
[項目5]
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドの上下方向において同じ位置に設けられている、項目1乃至4のいずれかに記載の油水分離装置。
【0059】
[項目6]
前記複数の吐出口は、前記吐出ヘッドに等間隔で設けられている、項目1乃至5のいずれかに記載の油水分離装置。
【0060】
[項目7]
前記吐出ヘッドの上方に載置台を更に備える、項目1乃至6のいずれかに記載の油水分離装置。
【符号の説明】
【0061】
1 油水分離装置
2 油槽
3 吐出ヘッド
3a 吐出口
3d パイプ
3e ジョイント部
3m 上部
3n 側部
3p 下部
4 空気配管
5 フック部材
6 載置台
9 空気供給源
D1 長手方向
V1 上下方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9