(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095803
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】機械式ムーブメントと表示される時間を補正するためのデバイスとを備える計時器
(51)【国際特許分類】
G04C 3/04 20060101AFI20240703BHJP
G04B 17/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G04C3/04 B
G04B17/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064534
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2022537398の分割
【原出願日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】19217160.1
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19219544.4
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】インボーデン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュルムリ,ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】トンベ,リオネル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表示器によって示される実際時間を補正することが可能な計時器を提供する。
備える計時器
【解決手段】時計2は、機械式共振器14を組み込んだ機械式ムーブメントによって形成される。時計は、時間を表示する表示器12と、外部電子デバイス40(特に携帯電話)によって供給される外部補正信号を受信するための受信機30によって形成される、表示される時間を補正するための補正デバイスと、機械式共振器を制動するための制動デバイス22Aと、電子制御ユニット28と、を備え、補正デバイスは、外部補正信号内に含まれる時間誤差(遅れまたは進み)の関数として、表示される時間を補正することができるように構成され、補正デバイスは、表示される時間の時間誤差の少なくとも大部分を補正するために、制動デバイスが補正期間中に機械式共振器に作用して、表示器の駆動機構の動作を変化させることができるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-実際時間を表示するための表示器(12)と、
-前記表示器のための駆動機構(10)、および前記駆動機構に連結された機械式共振
器(14;14A)であって、前記機械式共振器の振動が前記駆動機構の動作のタイミン
グを合わせる、機械式共振器を備える、機械式ムーブメント(4;4A;92)と、
-前記表示器によって表示される前記実際時間を補正するためのデバイスと、
を備える計時器(2;112;132;154;170)において、
-表示される前記実際時間を補正するための前記デバイスは、
-表示される前記実際時間を補正する外部補正信号(SExt)を受信するための受信
機ユニット(30,30A;30B;204)、
-電子制御ユニット(28,28A;28B;196)、および
-前記機械式共振器を制動するための制動デバイス(22;22A;22A,106;
22B,114;24C,26C;22C;174)
によって形成し、
前記電子制御ユニットは、前記外部補正信号内に含まれる情報を処理し、前記情報を関
数として前記制動デバイスを制御し得るように構成し、前記実際時間を補正するための前
記デバイスは、前記計時器によって受信した前記外部補正信号が、表示される前記実際時
間の補正を必要とする際、前記制動デバイスが、補正期間の間に前記機械式共振器に作用
し、前記駆動機構の動作を変更し、必要とされる前記補正の少なくとも1つの主要部分、
好ましくは実質的に全てを実行し得るように構成することを特徴とする、計時器(2;1
12;132;154;170)。
【請求項2】
少なくとも1つの特定の位置を通る、振動する前記機械式共振器の通過を決定するため
のデバイス(144;192)を備え、前記デバイスは、前記機械式共振器の前記特定の
位置を決定して、振動する前記機械式共振器が前記特定の位置にある特定の瞬間を前記電
子制御ユニットが決定することを可能にし、前記電子制御ユニットは、前記補正期間の開
始時に生じて、前記制動デバイスと前記機械式共振器の間の第1の相互作用を生成する、
前記制動デバイスの第1の起動が、前記特定の瞬間の関数として始動されるように構成さ
れていることを特徴とする、請求項1に記載の計時器。
【請求項3】
前記時計ムーブメントは、前記機械式共振器に関連付けられた脱進機を備え、前記制動
デバイスは、振動する前記機械式共振器を停止させるための停止部材(184)が設けら
れたアクチュエータ(174)を備え、前記停止部材は、前記機械式共振器と相互作用し
ない位置と相互作用する位置との間で作動されることが可能であり、前記停止部材は、振
動する前記機械式共振器の突出部(190)に対する当接部を形成し、前記突出部は、前
記停止部材が前記突出部との前記相互作用する位置にある時に、前記停止部材に対して当
接するように構成され、前記相互作用する位置にある前記停止部材と、前記突出部とが、
前記機械式共振器の中立位置とは異なる、振動する前記機械式共振器に対する停止位置(
θB)を定め、前記停止位置は、前記機械式共振器の最小ポテンシャルエネルギー状態に
対応し、前記機械式共振器の利用可能な動作範囲における振動する前記機械式共振器の最
小振幅未満であり、前記停止位置は、振動する前記機械式共振器が、前記停止部材によっ
て、前記脱進機の、振動する前記機械式共振器との結合ゾーン(θZI)の外側で停止さ
れるように更に提供され、振動する前記機械式共振器の前記特定の位置を決定するための
前記回路と、前記電子制御ユニットとは、前記受信機ユニットによって受信した前記外部
補正信号(SExt)が、補正すべき、表示される前記時間での遅れに対応する場合に、
前記アクチュエータを起動させることができ、それにより、前記アクチュエータが前記ア
クチュエータの前記停止部材を作動させて、振動する前記機械式共振器の前記突出部(1
90)が、振動する前記機械式共振器の複数の1/2半周期において前記停止部材(18
4)に対して当接し、前記機械式共振器を遮断させることなく前記1/2半周期の各々を
早期に終了させるように、前記1/2半周期の各々が、前記中立位置を通る前記機械式共
振器の通過に追従する、ように構成され、前記複数の1/2半周期の1/2半周期の数、
または前記停止部材が前記相互作用する位置に保持されている前記補正期間の持続時間が
、補正すべき前記遅れによって決定されることを特徴とする、請求項2に記載の計時器。
【請求項4】
振動する前記機械式共振器の前記特定位置を決定するための前記デバイスは、前記機械
式共振器の運動の位置および方向を検出するための検出器(192)を備え、前記検出器
および前記機械式共振器は、振動する前記機械式共振器がその前記振動の周期の各々にお
いて、前記特定位置(「0」)を通る振動する前記機械式共振器の通過を検出することを
可能にし、前記特定位置を通る振動する前記機械式共振器の通過が検出される前記半周期
において、前記電子制御ユニット(196)が、振動する前記機械式共振器の運動の方向
を決定することを可能にする、ように構成され、前記電子制御ユニットは、前記電子制御
ユニットが前記アクチュエータ(174)を制御できるように、少なくとも部分的に前記
遅れを補正できるように構成され、それにより、振動する前記機械式共振器が、前記停止
位置に対して前記中立位置の側に位置する時に、前記アクチュエータが、前記アクチュエ
ータの前記停止部材を、前記停止部材の相互作用しない位置から、前記停止部材の相互作
用する位置へと作動させ、それにより、前記アクチュエータは引き続き、振動する前記機
械式共振器の前記突出部が、前記停止部材に対して少なくとも一度は当接するのに十分な
決定された持続時間にわたって、前記停止部材を前記相互作用する位置に保持することを
特徴とする、請求項3に記載の計時器。
【請求項5】
前記アクチュエータ(174)は双安定タイプであり、前記アクチュエータへの電力供
給を維持することなく、前記相互作用しない位置および前記相互作用する位置に留まるこ
とができるように構成され、前記電子制御ユニットおよび前記アクチュエータは、前記遅
れを少なくとも部分的に補正するために、振動する前記機械式共振器が、前記停止位置に
対して前記中立位置の側に位置する場合に、前記停止部材が、前記停止部材の前記相互作
用する位置から、前記停止部材の前記相互作用しない位置へと作動された後から、振動す
る前記機械式共振器の前記突出部(190)が、前記停止部材に対して複数回、周期的に
当接する前記補正期間が終了するまで、前記停止部材(184)が、前記停止部材の前記
相互作用する位置に維持されるように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載
の計時器。
【請求項6】
前記電子制御ユニットは測定回路を備え、前記測定回路は、前記検出器に関連付けられ
、前記測定回路は、決定された周波数(F0c/2)にてクロック信号を提供するクロッ
ク回路(202)と、振動する前記機械式共振器の時間ドリフトを、その前記設定点周波
数に対して測定することを可能にする比較器回路(200)と、を備え、前記測定回路は
、前記機械式共振器の時間ドリフトに対応する、前記補正期間の開始時からの時間間隔を
測定できるように構成され、前記電子制御ユニットは、前記時間間隔が、前記外部補正信
号によって供給された時間誤差以上になると直ぐに、前記補正期間を終了させるように構
成されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の計時器。
【請求項7】
前記制動デバイスは、前記機械式共振器に制動パルスを印加できるように構成されてい
る電気機械式アクチュエータ(22,22A;22B;22C;24Cおよび26C)に
よって形成され、前記電子制御ユニットは、周波数FSUPにて第1の周期的デジタル信
号(SFS,SFS1,SFS2,)を発生させることができるように構成された、少な
くとも1つの周波数(62,62A,62B)を発生させるためのデバイスを備え、前記
電子制御ユニットは、前記受信機ユニットによって受信した前記外部補正信号が、補正す
べき表示された時間遅れに対応する場合に、前記第1の周期的デジタル信号から導かれた
第1の制御信号(SC1,SAct(SFS),S1Cmd(SFS1,SFS2))を
、第1の補正期間中に前記制動デバイスに提供して前記制動デバイスを起動させ、それに
より、前記制動デバイスが、前記機械式共振器に適用される周期的制動パルスの第1のシ
リーズを前記周波数FSUPにて発生させるように構成され、前記第1の補正期間の前記
持続時間、したがって前記第1のシリーズにおける周期的制動パルスの数は、補正すべき
前記遅れによって決定され、前記周波数FSUPにおける周期的制動パルスの前記第1の
シリーズが、前記第1の補正期間中に第1の同期フェーズになることができるように、前
記周波数FSUPが提供され、前記制動デバイスが構成され、前記機械式共振器(14)
の振動は、前記機械式共振器に提供される設定点周波数F0cよりも大きい補正周波数F
SCorに同期されることを特徴とする、請求項1または2に記載の計時器。
【請求項8】
前記周波数FSUPは、補正すべき前記遅れの関数として、少なくとも2つの異なる値
F1SUPおよびF2SUPを取ることができ、少なくとも1つの周波数を発生させるた
めの前記デバイスは、周波数F1SUPおよび周波数F2SUPにて前記第1の周期的デ
ジタル信号の選択を生じさせることができるように構成されている周波数発生デバイスで
あり、周波数F1SUPおよび周波数F2SUPは、前記補正周波数FSCorが、前記
周波数F1SUPおよび前記周波数F2SUPのそれぞれに対して2つの異なる値F1C
orおよびF2Corを取ることができるように設けられ、前記F2Corは、F1Co
rよりも大きく、前記周波数F1SUPは、前記遅れが所与の値未満である場合に選択さ
れる一方で、前記周波数F2SUPは、前記遅れが前記所与の値以上である場合に選択さ
れることを特徴とする、請求項7に記載の計時器。
【請求項9】
少なくとも1つの周波数を発生させるための前記デバイスは、周波数FINFにて第2
の周期的デジタル信号(SFI)を更に発生させることができるように構成されている周
波数発生デバイス(62,142;62A,62B,142)であり、前記電子制御ユニ
ット(28B;28C)は、前記受信機ユニットによって受信した前記外部補正信号が、
補正すべき表示された時間進みに対応する場合に、前記第2の周期的デジタル信号から導
かれた第2の制御信号(SAct(SFI),S1Cmd(SFI))を、第2の補正期
間中に前記制動デバイスに提供して前記制動デバイスを起動させ、それにより、前記制動
デバイスが、前記機械式共振器に適用される周期的制動パルスの第2のシリーズを前記周
波数FINFにて発生させることができるように構成され、前記第2の補正期間の持続時
間、したがって前記第2のシリーズにおける周期的制動パルスの数は、補正すべき前記進
みによって決定され、前記周波数FINFにおける周期的制動パルスの前記第2のシリー
ズが、前記第2の補正期間中に第2の同期フェーズになることができるように、前記周波
数FINFが提供され、前記制動デバイスが構成され、前記機械式共振器の前記振動は、
前記機械式共振器に提供される前記設定点周波数F0cよりも小さい補正周波数FICo
rに同期されることを特徴とする、請求項7または8に記載の計時器。
【請求項10】
前記時計ムーブメントは前記機械式共振器に関連付けられた脱進機を備え、前記周期的
制動パルスの第1のシリーズの前記制動パルスの前記周波数FSUPおよび前記持続時間
は、前記第1の同期フェーズ中に、前記第1のシリーズの前記制動パルスの各々が、振動
する前記機械式共振器の、前記脱進機との結合ゾーン(θZI)の外側で生じるように選
択されることを特徴とする、請求項7または8に記載の計時器。
【請求項11】
前記時計ムーブメントは前記機械式共振器に関連付けられた脱進機を備え、前記周期的
制動パルスの第2のシリーズの前記制動パルスの前記周波数FINFおよび前記持続時間
は、前記第2の同期フェーズ中に、前記第2のシリーズの前記制動パルスの各々が、振動
する前記機械式共振器の、前記脱進機との結合ゾーン(θZI)の外側で生じるように選
択されることを特徴とする、請求項9に記載の計時器。
【請求項12】
少なくとも1つの周波数を発生させるための前記デバイスは、前記機械式共振器に対し
て、前記設定点周波数F0cにて第3の周期的デジタル信号(SF0c)を更に発生させ
ることができるように構成されている周波数発生デバイス(62,142,144;62
A,62B,142,144)であり、前記電子制御ユニットは、前記第3の周期的デジ
タル信号から導かれた第3の制御信号(SAct(SF0c),S1Cmd(SF0c)
)を、前記補正期間に先行する予備期間中に、前記制動デバイスに提供して、前記制動デ
バイスを起動させて、前記制動デバイスが周期的制動パルスの予備的シリーズを生成させ
、前記シリーズを前記設定点周波数F0cにて前記機械式共振器に適用することができる
ように構成され、周期的制動パルスの前記予備的シリーズ中の、前記周期的制動パルスの
前記持続時間および振動する前記機械式共振器に印加される前記制動力は、前記制動パル
スのいずれも、振動する前記機械式共振器を、振動する前記機械式共振器の、前記脱進機
との結合ゾーン(θZI)の内部で停止させることがないように提供され、前記電子制御
ユニットは、周期的制動パルスの前記予備的シリーズ中の、前記周期的制動パルスの前記
持続時間および振動する前記機械式共振器に印加される前記制動力は、少なくとも前記予
備期間の終了時に、予備的同期フェーズが生成されることを可能にするように構成され、
前記機械式共振器の振動が前記設定点周波数F0cに同期されており、前記電子制御ユニ
ットは、前記補正期間中の周期的制動パルスの前記第1のシリーズの第1の制動パルスの
始動が、前記予備期間の最後の制動パルスが始動された瞬間に対して決定された時間間隔
の後に生じるように構成され、前記第1の制動パルスが始動された前記瞬間と、周期的制
動パルスの前記第1のシリーズの間に振動する前記機械式共振器に印加される前記制動力
は、前記補正周波数FSCorにおける前記第1の同期フェーズが前記第1の制動パルス
または第2の制動パルスにおいて即座に開始されるように提供されることを特徴とする、
請求項7から11のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項13】
前記機械式共振器を遮断するためのデバイス(22;106;114;174)を備え
、前記電子制御ユニットは、前記受信機ユニットによって受信した前記外部補正信号が、
補正すべき表示される時間の進みに対応する場合に、前記遮断デバイスに第4の制御信号
を供給することができるように構成され、前記第4の制御信号は、前記遮断デバイスが前
記補正期間中に前記機械式共振器の前記振動を遮断するように、前記遮断デバイスを起動
させ、前記補正期間は、前記補正期間中に前記駆動機構の前記動作を終了させるために、
前記補正すべき進みによって決定される、請求項1から12のいずれか一項に記載の計時
器。
【請求項14】
前記補正期間は、補正すべき前記進みに実質的に等しい持続時間を有することを特徴と
する、請求項13に記載の計時器。
【請求項15】
前記遮断デバイスは、前記制動デバイスとは別個のデバイス(114)によって形成さ
れ、双安定レバー(115)を備え、前記双安定レバーの第1の安定位置は前記機械式共
振器と相互作用しない位置に対応し、前記双安定レバーの第2の安定位置は前記機械式共
振器を停止させ遮断するための位置に対応することを特徴とする、請求項13または14
に記載の計時器。
【請求項16】
所与の進みを補正するための前記期間中に、前記遮断デバイス(106)が、前記機械
式共振器に対するロックを形成し、前記遮断デバイスが起動されて前記機械式共振器を遮
断する時、前記遮断デバイスの部品(107)が、前記機械式共振器を形成するバランス
の円形要素(100)内に構成された空洞(108)の中に挿入されていることを特徴と
する、請求項13から15のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項17】
前記表示される時間の前記補正は、前記外部補正信号を前記計時器に供給することがで
きる外部デバイスによって、前記表示される時間内で検出される時間誤差に対するもので
あることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項18】
表示される時間の前記補正は、時間帯の変更または季節時間の変更に対するものである
ことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項19】
測定回路を更に備え、前記測定回路は、プログラマブルカウンタおよびクロック回路に
よって形成され、季節時間の変更に対する外部補正信号の受信と、前記季節時間の変更を
行うように予定された日付および時間との間の残りの時間間隔を測定することを特徴とす
る、請求項18に記載の計時器。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の計時器、および前記外部補正信号を送信する
ための送信機(52)を備える外部デバイス(40;152)によって形成される組立体
において、前記外部デバイスは、
-光検出器のアレイによって形成される写真センサを備える写真デバイス(44;11
56)と、
-前記写真デバイスによって捕捉された画像において、前記計時器の前記表示器の少な
くとも1つの決定された針の位置を決定できるように構成されている画像処理アルゴリズ
ムと、
-正確な実際時間を供給することができる時間ベース(48)と、
を備えることを特徴とする、組立体。
【請求項21】
前記外部デバイス(40;152)は、第1の時間データと第2の時間データとの間の
時間誤差を計算するためのアルゴリズムを更に備え、前記第1の時間データは、所与の時
間の瞬間で前記表示器によって表示され、前記外部デバイスによって前記外部デバイスの
前記写真センサおよび前記画像処理アルゴリズムを介して検出され、前記第2の時間デー
タは、前記第1の時間データに対応し、前記時間ベースによって実質的に前記所与の時間
の瞬間で供給され、前記組立体が、前記決定される時間誤差の補正を意図する場合、前記
計時器の外部にある前記デバイスによって供給される前記外部補正信号は、前記時間誤差
に関係する情報を含むことを特徴とする、請求項20に記載の組立体。
【請求項22】
前記外部デバイスは、携帯電話(40)であることを特徴とする、請求項20または2
1に記載の組立体。
【請求項23】
前記外部デバイスは、筐体(152)内に組み込まれ、前記筐体(152)は、前記計
時器のために設けられ、前記計時器(154)を所与の位置で受け入れるための凹部を備
えることを特徴とする、請求項20または21に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に、機械式ムーブメントと、この機械式ムーブメントによって駆動され
る、実際時間を表示するための表示器と、この実際時間を補正するためのデバイスと、を
備える計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式腕時計の分野において、その表示器によって示される実際時間を補正するための
通常の方法は、従来のステム-竜頭を使用することであり、竜頭は一般に、突出した位置
において、歯車セットに作用して時インジケータおよび分インジケータを駆動するように
構成されており、この駆動は、これらインジケータとがんぎ車との間の運動学的チェーン
に提供される摩擦のおかげである。したがって、機械式腕時計を実際時間にセットするに
は、ユーザまたはロボットは通常、ステム-竜頭を引き出し、それを作動させて、具体的
には、例えば駅で見つかるような基準クロックと、または例えばコンピュータによって提
供されるデジタル時間と、目視で比較することにより、時インジケータおよび分インジケ
ータを所望の対応する位置に移動させるようにステム-竜頭を回転させなければならない
。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/177779号
【特許文献2】スイス特許出願公開第711889号
【発明の概要】
【0004】
したがって、機械式ムーブメントを備える計時器の分野において、この機械式ムーブメ
ントの精密な動作を確実にすることに加えて、機械式ムーブメントを備えるこれらの計時
器によって表示される実際時間を補正するための効果的なシステムが真に必要であるとい
うことが分かる。具体的には、本発明の目的は、計時器の針を正確に設定できることであ
り、この計時器は、時間表示器を駆動する機械式ムーブメントを備え、好ましくは、ユー
ザまたはロボットが、計時器のステム-竜頭または他の外部制御部材を作動させて表示器
上の針を設定する操作を個別に行う必要なく、精密な実際時間を提供するように構成され
ている外部システム(具体的には、原子時計に接続しているシステム)によって与えられ
る精密な実際の時間に針を実質的に設定することができる。本発明の範囲内において、機
械式ムーブメントを備える計時器を実際時間に設定する精度は、関連する様々なインジケ
ータが、いつ正確な対応する位置にあるかを判断する必要がある、ユーザによる目視での
判定に依存しない。
【0005】
用語「実際時間」は、一般に、計時器およびそのユーザが位置する所与の場所の法定時
間を意味すると理解される。実際時間は一般に、時間で、分で、および任意選択的に秒で
表示される。実際時間は、計時器によって、特に機械式の計時器によって、一定の誤差を
有して示される場合がある。特に、GPSシステム、電話網、または特に高精度のクロッ
クから実際時間を受け取るインターネットネットワークサーバに接続しているコンピュー
タ、によって/を介して高い精度で与えられる法定時間を示すために、「精密な実際時間
」という表現が本願明細書では使用されることになる。この表現は、更には、計時器の外
部にあるデバイスに組み込まれる電子クロックまたは電子時間ベースによって正確に与え
られる実際時間に適用され、この電子クロックまたは電子時間ベースは、法定時間を与え
る高精度クロックと定期的に同期し得る。この背景において、実際時間は、特に計時器に
よって表示される実際時間に対して、単に「時刻」と呼ばれる。
【0006】
時計学の分野において長年にわたり存在してきた上述したニーズを満たすために、本発
明は以下を備える計時器を提案する:
実際時間を表示するための表示器と、
表示器を駆動するための機構、および駆動機構に連結された機械式共振器であって、機
械式共振器の振動が駆動機構の動作のタイミングを合わせる、機械式共振器によって形成
される、機械式ムーブメントと、
表示器によって示される実際時間を補正するためのデバイスと、
を備え、表示される実際時間を補正するためのデバイスは、上記計時器の中に組み込まれ
、
-表示される実際時間を補正する外部補正信号を受信するための受信機、-電子制御ユ
ニット、および-機械式共振器を制動するためのkによって形成し、電子制御ユニットは
、外部補正信号内に含まれる情報を処理し、情報を関数として制動デバイスを制御し得る
ように構成される。更には、実際時間を補正するためのデバイスは、計時器によって受信
した外部補正信号が、表示される実際時間の補正を必要とする際、制動デバイスが、補正
期間の間に機械式共振器に作用し、駆動機構の動作を変化させ、表示される実際時間に対
する補正の少なくとも1つの主要部分、好ましくは必要とされる補正の実質的に全てを実
行し得るように構成される。
【0007】
「制動デバイス」という用語は、一般に、振動する機械式共振器を制動および/または
停止させることができる、および/またはそのような共振器を少しの間だけ停止させたま
まにする(すなわち、それを遮断したままにする)ことができる、任意のデバイスを意味
すると理解される。制動デバイスは、1つ以上の制動ユニット(1つ以上のアクチュエー
タ)によって形成され得る。制動デバイスが複数の制動ユニットによって、特に2つの制
動ユニットによって形成される場合は、必要な補正に関連する特定の状況において、具体
的には、第1の制動ユニットが遅れを補正し、第2の制動ユニットが進みを補正する状況
において、各制動ユニットが選択されて機械式共振器に作用する(第2の制動ユニットは
、有利には、共振器を停止させ少しの間だけ遮断することができるように構成されている
)。「表示器の駆動機構の動作のタイミングを合わせる」という語句は、稼働中に、この
機構の歯車セットの運動のペースを設定すること、具体的には、歯車セットの、したがっ
て表示器の少なくとも1つのインジケータの回転速度を決定すること、を意味すると理解
される。以下の記載では、用語「共振器」が、いかなる具体的な修飾語もなしで使用され
る場合、それは機械式共振器を意味する。振動する共振器は、その起動状態にあると考え
られる共振器について記載するために使用され、共振器は、脱進機を介して機械的エネル
ギー源によって振動し持続される。
【0008】
好ましい実施形態では、制動デバイスは、制動パルスを機械式共振器に適用することが
できるように構成された電気機械式アクチュエータによって形成され、電子制御ユニット
は、周波数FSUPにて第1の周期的デジタル信号を発生させることができるように構成
された、少なくとも1つの周波数を発生させるためのデバイスを備える。電子制御ユニッ
トは、受信機ユニットを介して受信された外部補正信号が、補正すべき表示された時間遅
れに対応する場合は常に、第1の周期的デジタル信号から導かれた第1の制御信号を、第
1の補正期間中に制動デバイスに提供して制動デバイスを起動させ、それにより、制動デ
バイスが、機械式共振器に適用される周期的制動パルスの第1のシリーズを前記周波数F
SUPにて発生させるように構成され、前記第1のシリーズにおける周期的制動パルスの
数、したがって補正期間の持続時間は、補正すべき遅れによって決定される。周波数FS
UPにおける周期的制動パルスの前記第1のシリーズが、第1の補正期間中に第1の同期
フェーズになるように、周波数FSUPが提供され、制動デバイスが構成され、機械式共
振器の振動は、機械式共振器に提供される設定点周波数F0cよりも大きい補正周波数F
SCorに(平均して)同期される。
【0009】
時計ムーブメントが、共振器に関連付けられた脱進機を備える、好ましい代替的実施形
態では、周期的制動パルスの第1のシリーズの制動パルスの周波数FSUPおよび持続時
間は、前述の第1の同期フェーズ中に、前述の第1のシリーズの制動パルスの各々が、振
動する共振器の、脱進機との結合ゾーンの外側で生じるように選択される。
【0010】
1つの特定の実施形態では、計時器は、機械式共振器を遮断するためのデバイスを備え
る。更には、電子制御ユニットは、受信機ユニットを介して受信した外部補正信号が、補
正すべき表示される時間の進みに対応する場合に、遮断デバイスに制御信号を供給するこ
とができるように構成され、制御信号は、遮断デバイスが補正期間中に機械式共振器の振
動を遮断するように、遮断デバイスを起動させ、補正期間は、補正期間中に駆動機構の動
作を終了させるために、補正すべき進みによって決定される。遮断/補正期間は、通常、
補正すべき、対応する進みに実質的に等しい持続時間を有する。
【0011】
概して、表示器によって表示される時間の補正は、計時器に外部補正信号を供給し得る
ように構成されている外部電子デバイスによって、この表示される時間の中で検出された
誤差に対するものである。1つの特定のケースでは、表示される時間の補正は、季節時間
の変更、または更には時間帯の変更に対するものである。
【0012】
本発明は、更には、本発明による計時器、および前記外部補正信号を送信するための送
信機を備える外部デバイスによって形成される組立体に関する。外部デバイスは、
-光検出器のアレイによって形成される写真センサを備える写真デバイスと、
-写真デバイスによって捕捉された画像において、計時器の表示器の少なくとも1つの
決定された針の位置を決定できるように構成されている画像処理アルゴリズムと、
-正確な実際時間を供給することができる時間ベースと、
を備える。
【0013】
好ましい実施形態では、外部デバイスは、第1の時間データと第2の時間データとの間
の時間誤差を計算するためのアルゴリズムを更に備え、第1の時間データは、所与の時間
の瞬間で表示器によって表示され、外部デバイスによって外部デバイスの写真センサおよ
び画像処理アルゴリズムを介して検出され、第2の時間データは、第1の時間データに対
応し、時間ベースによって実質的に前記所与の時間の瞬間で供給される。組立体が、計算
された時間誤差を補正することを意図する場合、計時器の外部にあるデバイスによって供
給される外部補正信号は、この時間誤差に関係する情報を含む。
【0014】
本発明は、決して限定的ではない例として与えられる添付の図面を使用して、以下に更
に詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態による計時器を備える、本発明による組立体の第1の実施形態の部分概略図を示し、計時器は、機械式ムーブメントと、時間表示器と、表示される時間を補正するためのデバイスと、第1の実施形態による外部電子デバイスと、を備え、外部電子デバイスは、補正モジュールと通信できるように構成されている。
【
図2】
図1の第1の実施形態による計時器の補正デバイスの代替的実施形態を概略的に示す。
【
図3】周期的制動パルスのシリーズを介して起こっている補正中における、補正周波数と設定点周波数との比率が比較的値「1」に等しい場合の、考慮される計時器の表示器によって示される進み補正期間中の機械式共振器の振動周波数の変化を示す。
【
図4】周期的制動パルスのシリーズを介して起こっている補正中における、補正周波数と設定点周波数との比率が比較的値「1」に等しい場合の、考慮される計時器の表示器によって示される遅れ補正期間中の機械式共振器の振動周波数の変化を示す。
【
図5】補正周波数と設定点周波数間との比率が比較的大きい場合の、周期的制動パルスのシリーズを伴う遅れ補正期間の始めにおける機械式共振器の振動を示し、この補正期間は初期的な過渡フェーズを有する。
【
図6】周期的制動パルスのシリーズを使用して実行される遅れ補正中における、同期フェーズ中の機械式共振器のいくつかの振動周期を、2つの異なる同期周波数に対して示す。
【
図7A】機械式共振器の振動の半周期当たり1つの制動パルスに対応する制動周波数に対する、共振器の自由振動の振幅および共振器の品質係数の関数としての、最大相対的同期周波数の複数の曲線を示す。
【
図7B】機械式共振器の振動周期当たり1つの制動パルスに対応する制動周波数に対する、共振器の自由振動の振幅および共振器の品質係数の関数としての、最大相対的同期周波数の複数の曲線を示す。
【
図8】時間表示器における遅れを短い周期的制動パルスを使用して補正するための予想される補正周波数範囲を、所与の設定点周波数に対して、制動パルスのために選択される複数の制動周波数の関数として近似的に示したグラフである。
【
図9】時間表示器における進みを短い周期的制動パルスを使用して補正するための予想される補正周波数範囲を、所与の設定点周波数に対して、制動パルスのために選択される複数の制動周波数の関数として近似的に示したグラフである。
【
図10】本発明による計時器の第2の実施形態を部分的に示す。
【
図11】本発明による計時器の第3の実施形態を部分的に示す。
【
図12】本発明による計時器の第4の実施形態を概略的に示す。
【
図13】本発明による組立体の第2の実施形態を部分的に示し、組立体は、本発明による計時器と、第2の実施形態による、筐体および計時器用充電ステーションとして働く外部電子デバイスと、を備える。
【
図14】第2の実施形態の外部電子デバイスにおける電子要素及び機能ユニットの構成を概略的に示す。
【
図15】第2の実施形態による組立体を形成し得る、本発明による計時器の第5の実施形態を概略的に示す。
【
図16】本発明による計時器の第6の実施形態の部分概略図を示す。
【
図17】
図16の計時器の制動デバイスの2つの代替的実施形態についての、遅れ補正期間中における機械式共振器の振動を示す。
【
図18】
図16の計時器の制動デバイスの2つの代替的実施形態についての、遅れ補正期間中における機械式共振器の振動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および
図2を参照して、以下の説明は、本発明による計時器の第1の実施形態、及
び本発明による計時器と、携帯電話によって形成される外部電子デバイスとを備える本発
明による組立体の第1の実施形態について説明する。
【0017】
計時器2は、機械式ムーブメント4と、アナログ時間表示器12と、この表示器を駆動
するための駆動機構10と、表示器によって示される時間を補正するためのデバイス6と
を備える。機械式ムーブメントは、表示器に運動学的にリンクされた歯車列11によって
形成された駆動機構10に対する機械的エネルギー源を形成するバレル8と、バランスば
ね15に関連付けられたバランス16によって形成された機械式共振器14と、この共振
器を駆動機構に連結させて共振器の振動がこの駆動機構の動作のタイミングを合わせる脱
進機18と、を備える。アナログ表示器12は、実際時間の表示用の目盛りを形成するイ
ンデックス36を備えるダイヤル32と、時針、分針、および秒針を備える針34と、に
よって形成される。針は、異なる形状、具体的には異なる長さおよび/または幅を有する
。好ましくは、インデックスは、12時間サイクルの場合「12時」(または24時間サ
イクルの場合「24時」)の位置が視覚的に認識できるように構成される。図示のケース
では、「12時」の角度位置は、2本の平行で実質的に径方向の棒によって定められる一
方で、他の時間の角度位置は、単一の棒によって定められる。
【0018】
分および/または秒を表示するために設けられた目盛り上で決定された分および/また
は秒の数に対応して、表示器の少なくとも1つの角度位置の決定を可能にするように、様
々な代替的実施形態を提供することができる。目盛りは、必ずしも見えないことが分かる
。より具体的には、例えば、12時間サイクルがあること、および「12時」の角度位置
が所与の識別可能な計時器の軸上に設けられることが分かり、目に見えるマークが表示側
にあれば十分であり、このマークにより、所与の軸上での12時の角度位置を識別可能に
するため、任意の時、任意の分および/または任意の秒に対応するあらゆる他の角度位置
を識別可能にする。例えば、ダイヤルは、ダイヤルの向きを規定可能にするパターンを有
し得る、または設けられた目盛りの特定の位置に対応する、決定された角度マークを定め
る更なる記号を備える。そのような更なる記号は、機械式ムーブメント4が中に組み込ま
れている時計ケースのダイヤルまたはベゼルを取り囲む縁に置くこともできる。角度マー
クは、単に、視覚的に認識し得る、決定された軸を定めるケースの形状によって、または
巻上げボタンによって与えられることに留意されたい。本発明はまた、実際時間のアナロ
グ表示に限定されず、実際時間を表示する他の表示器、例えば、「ジャンプする時変化」
、および/または特に「ジャンプする分変化」を有する表示器にも関し得ることに留意す
べきである。したがって、表示器は、ほぼ連続な形で前進する針を有するシステムに限定
されない。したがって、本発明は、特にディスクまたはリングを有するシステムに、特に
、ダイヤルに設けられた少なくとも1つの開口部を介して提供される表示器に更に適用さ
れ得る。
【0019】
補正デバイス6は、表示器12によって表示される時間を補正する外部補正信号SEx
tを受信するための受信機30と、時間を表示するための電子制御ユニット28と、を備
え、電子制御ユニット28は、外部補正信号SExt内に含まれる情報を処理し、それに
応答して、表示される時間に対する補正に関連する少なくとも1つの内部補正信号を発生
し得るように構成され、少なくとも1つの内部補正信号は、外部補正信号SExtによっ
て、すなわち、この外部補正信号内に含まれる情報によって決定される。計時器は、その
表示器によって示される時間が、計時器2が受信する外部補正信号SExtの関数として
補正されることを可能にするように構成される。表示される時間を補正するために、補正
デバイスは一般に、機械式共振器を制動するためのデバイスを備える。主な代替的実施形
態では、制動デバイスは、電気機械式アクチュエータ、例えば圧電性タイプのアクチュエ
ータ22Aによって形成される。更には、制動デバイスは電子制御ユニット28によって
制御され、電子制御ユニット28は、機械式共振器14への機械的制動力の印加のタイミ
ングを管理するように、制動デバイスの電力供給回路を制御するために、制御信号SCm
dを制動デバイスに送信する。一般に、補正デバイスは、計時器によって受信された外部
補正信号SExtが、表示される時間の補正を必要とする時はいつでも、補正期間中に制
動デバイスが機械式共振器14に作用して、表示される時間の少なくともほとんどの部分
を補正するように駆動機構10の動作を変化させることができるように構成されている。
【0020】
示される代替的実施形態では、アクチュエータ22Aは、可撓性ストリップ24によっ
て形成された制動部材を備え、制動部材は、対向する2つの表面に(
図1の平面と垂直に
)、それぞれ2つの圧電層を有し、その各々が金属層で覆われて電極を形成している。圧
電アクチュエータは電力供給回路26を備えて、2つの圧電層を介して電界を印加するよ
うに、2つの電極間に特定の電圧が印加されることが可能であり、圧電層は、2つの電極
間に電圧が印加された時に、ストリップ24をバランス14の外縁20に向かって湾曲さ
せるように構成され、それにより、移動する制動パッドを形成するストリップの端部が、
外縁の外側円形面に対して押し付けられ、したがって、機械式共振器に機械的制動力を加
えることができる。バランスに印加される機械的制動力、したがって機械的制動トルクを
変化させるために、電圧が可変であり得ることに留意すべきである。制動デバイスに関し
ては、機械的時計ムーブメントにおけるそのような制動デバイスの様々な実施形態につい
て、国際公開第2018/177779号を参照することができる。特定の代替的実施形
態では、制動デバイスは、磁石コイルシステムによって作動するストリップによって形成
される。別の特定の代替的実施形態では、バランスは、円形の制動面を画定するバランス
の外縁、例えばディスクに加えて、部品を画定するまたは保持する中央スタッフを備える
。上記の場合では、機械的制動力を一瞬間だけ印加した時点で、この円形の制動面に対し
て圧力を印加するように、制動部材のパッドが構成されている。
【0021】
受信機ユニット30は、好ましくは、非接触受信機、例えば、所与の通信プロトコルに
従ってコード化される光信号のためのセンサ、「Bluetooth」受信機(好ましく
は、「Buletooth Low Energy」:BLE)、またはNFCとして公
知の短距離ワイヤレス通信用受信機である。後者の2つのケースでは、実際には、事前に
規定した規格に従って信号の送受信を可能にする通信ユニットがあることに留意されたい
。受信機ユニット30は、外部補正信号SExtを復調し、復調信号SExtに対応する
デジタル補正信号SCorを電子制御ユニット28に供給することを可能にするように構
成される。
【0022】
本発明による組立体の第1の実施形態の1つの好ましい代替形態は、本発明による計時
器と、携帯電話40とを備え、携帯電話40には、本発明を実施するための少なくとも1
つの時間補正アプリケーションがインストールされており、時間補正アプリケーションは
、詳細には、計時器の表示器によって表示される時間の誤差を検出し、対応する外部補正
信号SExtをこの計時器に提供するためのものである。携帯電話は、時間補正アプリケ
ーションによって使用される独自の資源、特にエネルギー源42と、正確な実際時間をも
たらす時間ベース48と、光検出器のアレイによって形成される写真センサを備える写真
デバイスとを備える。時間ベースは、電話ネットワークまたはWIFIおよび/またはG
PS受信機によってもたらされる正確な実際時間に定期的に同期される電子クロックによ
って形成し得る。したがって、時間ベースは、かなり正確で、例えば電子クロックに同期
され、携帯電話及び携帯電話ユーザの場所の正確な実際時間を示し得る基準時間をもたら
す。写真デバイス44は、アナログ表示器12の正確な画像を撮影する画素アレイによっ
て形成されるセンサを有する。
【0023】
携帯電話内にインストールされる時間補正アプリケーションは、画像処理アルゴリズム
46を備える、またはアプリケーションは、携帯電話上、または携帯電話が特にインター
ネットを介してアクセスできるサーバ上にインストールされた特定の画像処理アプリケー
ションを対象とするそのようなアルゴリズムを使用可能にするように構成される。画像処
理アルゴリズムは、写真デバイス44によって捕捉した画像内でアナログ表示器12の少
なくとも1つの決定される針の位置を決定し得るように構成される。すなわち、この針の
位置は、表示器に設けられた目盛りに対するものであり、この目盛りは、上記で示したよ
うに、仮想目盛りの特定の位置を決定するため、単一の視覚マークに低減することができ
る。2本の針(時針および分針)を有する表示器の場合、少なくとも分針の角度位置は、
ダイヤル32上のマーク、または表示側から見える計時器の別の部分に対して決定され、
(見えるか、見えないかにかかわらず)分の目盛りに対して表示される分を決定すること
を可能にする。3本の針(時針、分針及び秒針)を有する表示器の場合、少なくとも分針
および秒針の角度位置が決定される。表示器の少なくとも1つの角度位置を決定するため
に提供し得る様々な代替実施形態に関し、上記の文章も参照されたい。
【0024】
この場合、時間補正アプリケーションは、第1の時間データと第2の時間データとの間
の時間誤差を計算するためのアルゴリズムを含み、第1の時間データは、所与の時間の瞬
間で表示器によって表示され、外部デバイス、特に携帯電話40によって、その写真セン
サおよび画像処理アルゴリズムを介して検出され、第2の時間データは、第1の時間デー
タに対応し、前記所与の時間の瞬間で時間ベース48によって供給される。上記で述べた
ように、第1の時間データは、表示される分、表示される分及び秒、または表示される実
際時間(時、分及び秒)とし得る。
【0025】
最後に、携帯電話40は、外部補正信号SExtを送信するための送信機ユニット(送
信機)を備える。送信機ユニットは、計時器の(受信機の)受信器ユニットと同じ種類の
ものであり、特に、光学型(フォトダイオード)または無線型(例えば、BLEもしくは
NFC通信ユニット)のものである。時間補正アプリケーションは、時間誤差を計算する
ためのアルゴリズムによってもたらされた結果を、外部補正信号SExtを送信する送信
機ユニット52に特有のフォーマットにコード化する機能を含む。したがって、検出され
た時間誤差を補正することが意図される場合、計時器の外部にあるデバイスによって供給
される外部補正信号は、この時間誤差に関係する情報を含む。好ましくは、送信される情
報は、時間表示器が許容する最も正確な単位、典型的には、秒または10分の1秒単位で
検出される時間誤差である。表示を補正するかどうかの決定は、可搬デバイス内のアプリ
ケーションによって、または計時器内の電子制御ユニットによって行い得ることが分かる
。検出された誤差がゼロである場合、補正が不要であることは明らかである。検出された
誤差がゼロではないがわずかである、例えば、5秒未満である場合、代替的実施形態では
、この誤差は補正が不要であると決定することが可能である。言い換えると、少なくとも
1つの動作モードでは、ある値の範囲を、表示器への補正がもたらされない、検出された
時間誤差に対して定義し得る。
【0026】
別の代替的実施形態では、上記で説明した時間誤差を計算するためのアルゴリズムは、
計時器に組み込まれるように提供される。そのようなケースでは、外部補正信号SExt
は、第1の時間データ及び第2の時間データを含み、第1の時間データ及び第2の時間デ
ータは、次に、計時器内に位置する電子制御ユニットに組み込まれている、時間誤差を計
算するためのアルゴリズムによって処理される。計時器が内部電子クロックを備える一実
施形態では、特に、「フィットネス」型電子モジュールの場合、携帯電話の時間ベースの
時間を更なる情報として計時器に更に送信し得る。より詳細には、第2の時間データは、
画像が捕捉された時間の瞬間に関連し、外部補正信号が送信された瞬間に厳密に対応しな
い。このため、更なる機能のため、計時器の内部電子クロックに正確な時間を提供するこ
とが望ましい場合、第3の時間データに関係する補足データが有利である。
【0027】
図2は、第1の実施形態による計時器を補正するためのデバイスを示す。受信機ユニッ
ト30Aは、光信号を検知するセンサによって形成される。この光センサは、フォトトラ
ンジスタ型の少なくとも1つの要素を備える。代替的実施形態では、光センサは、太陽電
池の一部または太陽電池によって構成され、太陽電池は、エナジーハーベスター54を形
成し、電気アキュムレータ56に電力を供給するために使用される。別の代替的実施形態
では、光センサ30Aは、補正デバイスの電力供給回路58用エネルギー源として働くエ
ナジーハーベスター54とは別個の要素である。エナジーハーベスターは、当業者には既
知の様々なタイプのデバイスによって、例えば、磁気、光、または熱のエナジーハーベス
ターによって形成することができる。代替的実施形態では、磁気エナジーハーベスターは
、外部の磁気源からエネルギーを受け取るように構成され、電気アキュムレータが電気接
触なしで再充電されることを可能にしている。別の有利な代替的実施形態では、エナジー
ハーベスターは、磁石-コイルシステムによって形成され、計時器の機械式共振器の振動
から、したがって、この振動を維持しているバレルの振動から、少量のエネルギーを収穫
することが可能である。上述した代替的実施形態では、少なくとも1つの磁石が、共振器
の振動要素上に、または共振器の支持体上に構成され、少なくとも1つのコイルが、それ
ぞれ、前述の支持体上に、または前述の振動要素上に構成され、それにより、共振器がそ
の使用可能な稼働範囲内で振動する時に、磁石によって発生する磁束の大部分がコイルを
通過する。好ましくは、磁石-コイル結合は、共振器の中立位置(静止位置)を中心とし
て提供される。機械式ムーブメントが自動ムーブメントである別の代替的実施形態では、
振動する重りを使用して、マイクロ発生器を駆動して電気を発生させ、電気はアキュムレ
ータ内に保存される。エナジーハーベスターを、ハイブリッドとすること、すなわち複数
の、特に無線/非接触タイプの異なるユニットにより形成することもでき、エナジーハー
ベスターは、様々なエネルギー源から様々なエネルギーを収穫し、これら様々なエネルギ
ーを電気エネルギーに変換することを意図している。
【0028】
電子制御ユニット28Aは、共振器14を制動するためのデバイス22を、特に
図1に
概略的に示す電気機械式アクチュエータ22Aを制御する。制動力を機械式共振器に一瞬
の間だけ印加することを可能にする他のタイプのアクチュエータを提供できる。任意選択
で、電子制御ユニットは、利用可能な電気エネルギーのレベルを検出するための回路68
を備え、この検出回路は、制御論理回路60に信号S
NEを提供して、利用可能な電気エ
ネルギーのレベルに関する情報を提供し、それにより、この論理回路は、表示される時間
を補正するための操作を開始する前に、補正モジュールが十分なエネルギーを有している
か否かを知ることができる。そうでない場合は、以下の様々な選択肢が可能である:
1)計時器は送信機を有して、表示される時間の完全な補正を可能にするには、アキュ
ムレータを再充電しなければならないことを、例えば送信機によって発生された光信号ま
たは音響信号を介して、ユーザに直接通知することを可能にする。補正動作を完了するに
は電気エネルギーレベルが不十分である限りは、計時器は、いかなる補正動作も行わない
。
2)計時器は送信機、具体的にはBLEもしくはNFC通信ユニット、または少なくと
も1つの発光ダイオードから構成される光送信機を有して、表示される時間を完全に補正
するためにアキュムレータを再充電する必要があることを、携帯電話40に通知すること
を可能にする。したがって、携帯電話は、携帯電話の電子ディスプレイに関する情報をユ
ーザに示すことができる。代替的に、補正動作を完了するには電気エネルギーレベルが不
十分である限りは、計時器は、いかなる補正動作も行わない。有利な代替実施形態によれ
ば、携帯電話は、エナジーハーベスター54を介して、または携帯電話から、例えば磁気
誘導によって、エネルギーを転送することに特化した別のエネルギーハーベスティングデ
バイスを介して、電気アキュムレータ56を再充電するための再充電機能を直接起動する
。
3)計時器は、アキュムレータ56において利用可能なエネルギーを使用して、表示さ
れる時間の部分的な補正を実行するだけであり、好ましくは、実行された補正が部分的の
みであること、および任意選択で、論理回路60が計算し得る残りの誤差があることを、
計時器内に配置した送信機を介して、携帯電話に通知する。
4)計時器は、いかなる補正動作も行わず、いかなる情報も送信しない(「ダム(du
mb)」計時器による単純な代替形態)。
【0029】
上記で示したような電気エネルギー管理システムが存在しない場合は、利用可能な電圧
が十分ならば、計時器は必要な補正動作を始めることができ、電力供給回路58によって
供給される電圧が十分な限り、この補正動作を実行することができる。有利な代替的実施
形態では、アキュムレータ56において利用可能な電気エネルギーを節約するために、表
示される時間を補正するための動作が予定されていない時は、補正デバイスはスタンバイ
モードに置かれる。必要に応じて、補正モジュールの様々な部分を、異なる期間の間だけ
起動することができる。同様に、別の実施形態の範囲内における、本発明による補正デバ
イスの電力供給の管理に関して以下を参照されたい。
【0030】
計時器2の第1の実施形態に組み込まれた電子制御ユニット28Aは、外部補正信号S
Extを受信する受信機30Aによって供給されるデジタル補正信号SCorを受信する
制御論理回路60と、所与の周波数FSUPを有する周期的デジタル信号を発生させる発
生デバイス62と、を備える(発生デバイス62は「周波数発生器」、または単に周波数
FSUPでの「発生器」とも称される)。補正される全体的時間誤差TErrが、表示器
において、実際時間の遅れ(負のTErr)に対応するか、または進み(正のTErr)
に対応するかに応じて、制御論理回路60は、周波数発生器62およびタイマー63にそ
れぞれ送信する2つの制御信号S1RおよびS2R、またはタイマー70に送信する1つ
の制御信号SA、のいずれかを発生させる。タイマー63および70は、プログラム可能
であり、意図した補正期間、すなわち、遅れを補正するための期間PRCor、および進
みを補正するための期間PACorを測定するために使用される。定義上は、進みは正の
誤差に対応し、遅れは負の誤差に対応する。上述のように、論理回路は、補正すべき時間
誤差TErr(好ましい代替的実施形態)、または所与の時間の瞬間で計時器によって表
示される時間のいずれか、および外部電子デバイスの時間ベースによって提供される対応
する正確な実際時間を受信する。2番目のケースでは、論理回路は、時間誤差TErr自
体を計算する。
【0031】
まず、時間表示器において検出された遅れを補正するための電子制御ユニット28Aの
構成を説明し、次いで、進みを補正するためのこのユニットの構成のみを説明する。
【0032】
遅れに対応する負の時間誤差の場合、第1の遅れ補正モードによれば、本発明は、周期
的制動パルスのシリーズを周波数FSUPにて発生させることを提供し、これらの周期的
制動パルスは、制動デバイス22によって、特にアクチュエータ22Aによって、振動す
る共振器に印加されている。この目的のために、制御論理回路60は、信号S1Rを介し
て周波数発生器62を起動し、そして補正期間PRCorに対応する時間間隔までカウン
トアップするか、またはその時間間隔からカウントダウンするタイマー63であって、そ
の持続時間(その値)が論理回路によって決定される、タイマー63を起動する(定義上
、表現「タイマー」は、初期的にタイマーの中に入力される所与の時間間隔からカウント
ダウンするタイマーに加えて、この所与の時間間隔までカウントアップするタイマーを包
含する)。
【0033】
示される代替的実施形態では、周波数発生器が起動される場合、周波数発生器は、周期
的デジタル信号S
FSを周波数F
SUPにて他のタイマー64に提供する(タイマーは、
周期的制動パルスに対して選択された持続時間に対応する値Tpを有する)。タイマー6
3および64の出力は「AND」論理ゲート65に提供され、論理ゲート65は、意図さ
れた補正期間PR
Corの間に、「OR」論理ゲート66を介して、または周期的起動信
号S
C1を制動デバイスに送信することを可能にする他の任意のスイッチング回路を介し
て、周期的起動信号S
C1を出力して、制動デバイス22を周期的に起動させる。周期的
起動信号S
C1は、計時器によって表示される時間において検出された遅れを補正する場
合に、制御信号S
Cmdを形成する。したがって制動デバイスは補正期間PR
Corの間
に、周期的制動パルスを周波数F
SUPにて機械式共振器に印加し、その持続時間(値)
は補正すべき遅れに依存する。一般原則として、制動パルスは消散する性質を有するが、
これは、振動する共振器のエネルギーの一部が、これら制動パルスの間に消散するからで
ある。主な実施形態では、計時器2の説明において
図1を参照して上述したように、機械
的制動トルクは、実質的には摩擦によって、具体的には、共振器の制動表面上に、好まし
くは円形の制動表面上に一定の圧力を印加する機械式制動部材によって、印加される。
【0034】
好ましくは、
図1に示す代替的実施形態については、機械式共振器によって、およびこ
の共振器を制動するためのデバイスによって形成されるシステムは、振動する共振器の使
用可能な動作範囲にて、振動する共振器の固有振動周期における実質的にいかなる瞬間に
おいても、制動デバイスが機械的制動パルスを開始することを可能にするように構成され
ている。換言すれば、周期的制動パルスの1つは、特に補正期間中に生じる最初の制動パ
ルスは、実質的に振動する共振器の任意の角度位置にて始まることができる。
【0035】
先に既に引用した国際公開第2018/177779号の開示によれば、振動する共振
器の平均周波数は、共振器に周期的制動パルスを、有利には設定点周波数F0Cの2倍を
正整数Nで除算した値、すなわちFFR=2・F0C/N、に対応する制動周波数FFR
にて、連続的に印加することにより、精密に調整することができる。いったん正整数Nが
与えられると、制動周波数FFRは、機械式共振器に対する設定点周波数F0cに比例し
、かつこの設定点周波数だけに依存する。同期フェーズ中に、機械式共振器が、その振動
における最も遠い位置を通過する時点で制動パルスが生じるように、すなわち、振動運動
の方向の反転が、各制動パルスの間に、または各制動パルスの終了時に生じるように、制
動パルスによって印加される制動トルクと、これら制動パルスの持続時間とが選択される
と、制動周波数FFRにて周期的制動パルスを印加する制動デバイスが起動を開始する時
に生じる過渡フェーズの後に、同期フェーズが確立され、その間に機械式共振器の振動が
、平均的に設定点周波数F0cに同期することを、国際公開第2018/177779号
は開示している。後者の解決策は、特に信頼性がより高い有利なケースで起こり、その場
合、機械式共振器は、各制動パルスによって停止され、その後、この制動パルスが終了す
るまで制動デバイスによって遮断されたままである。
【0036】
関心は低いが、特許公開第2018/177779号は、設定点周波数の2倍(2F0
)よりも大きい制動周波数FFRについて、特に、Mが2よりも大きい整数(M>2)と
して、M・F0に等しい値についても、同期を得ることができることを示している。FF
R=4・F0である代替的実施形態では、システムは単にエネルギーを失い、同期フェー
ズ中には効果がない。なぜなら、パルスは2つのうち1つが共振器の中立点で生じるから
であり、これは不利である。より高い制動周波数FFRについては、同期フェーズにおい
て、最も遠い位置で生じないパルス対は、互いの効果を相殺する。したがって、これらは
、実用的な関心が大きくない、理論的なシナリオであると理解される。他の制動周波数が
、設定点周波数への共振器の同期につながり得るが、調整方法を実装するための条件が、
実装するには遥かに面倒で困難であるという点に留意すべきである。
【0037】
本発明の起源における開発の範囲内で、国際公開第2018/177779号で開示さ
れている注目すべき現象を使用して、共振器をその設定点周波数に連続的に同期させるだ
けでなく、決定された形で、共振器の振動周波数を、設定点周波数の下と上にそれぞれ位
置する2つの周波数範囲で変化させることもできることが強調された。すなわち、決定さ
れた平均周波数を機械式共振器に課することができ、この決定された平均周波数は設定点
周波数とは異なり、これよりも大きいまたは小さいのいずれかであり、周期的制動パルス
を印加することにより、この共振器を、設定点周波数とは異なるが、それに十分に近い周
波数に同期させて、振動する共振器と制動デバイスとの間に同期フェーズが確立されるこ
とを可能にして、この目的のために選択された周波数にて制動パルスを発生させ、一方で
、計時器の動作のタイミングを合わせるために、振動する共振器を機能的な範囲に維持す
ることができる。本発明は、この注目すべき発見を使用して、考慮する機械式時計ムーブ
メントの動作を変化させることによって、すなわち、問題の計時器の表示器を駆動する機
構の動作のタイミングを合わせる共振器の周波数を、所与の補正期間中に変化させること
によって、計時器によって表示される時間を補正することを提案する。
【0038】
特に、本明細書に記載されている電子制御ユニットの第1の実施形態は、表示される時
間において検出された遅れを、第1の遅れ補正モードに従って補正することを提供し、こ
の補正モードでは、補正期間PRCorの間、振動する共振器は、設定点周波数F0cよ
り大きい補正周波数FSCorに同期される。本発明の起源における開発の範囲内で、設
定点周波数への同期の場合と同様に、所与の補正周波数FCorに対して制動周波数FB
raを、以下の数式:
FBra=2・FCor/N (Nは正整数)
を満足させるように選択すると、設定点周波数よりも大きいまたは小さい補正周波数に
対して、最良の結果が得られることが示された。
【0039】
したがって、周期的制動パルスは、制動周波数FBraにて機械式共振器に印加され、
制動周波数は、有利には、補正周波数FCorの2倍を、好ましくは十分に小さい正整数
Nで除算した値に対応する。この方程式は、設定点周波数よりも大きい補正周波数FCo
r=FSCorに対して、および設定点周波数よりも小さい補正周波数FCor=FIC
orに対しても有効である(第1の進み補正モードであり、これは以降の本発明による計
時器の別の実施形態において生じる)。したがって、いったん正整数Nが選択されると、
制動周波数FBraは、提供される補正周波数FCorに比例し、かつこの補正周波数だ
けに依存する。「所与の周波数への同期」という用語は、この所与の周波数に対して、平
均的に同期することを意味すると理解される。この定義は、2より大きい数Nにとって重
要である。例えば、N=6の場合、共振器の振動の各制動パルスによって発生する時間差
の結果、3つの振動のうちの1つだけが、設定点周期T0c=1/F0cに対して(した
がって、固有/自由振動周期T0=1/F0に対して)、その持続時間の変化を受ける。
【0040】
設定点周波数への同期の場合と同様に、特定の状況では、他の制動周波数を使用して、
所望の補正周波数への同期を得ることが可能であるが、制動周波数FBra=2・FCo
r/Nの選択が、より効果的およびより安定な形で、周波数FCorへの同期を得ること
を可能にするということに留意すべきである。一般に、制動周波数と補正周波数との関係
を表す数学的方程式は、FBra=(p/q)・FCorであり、式中、pおよびqは2
つの正整数であり、有利には、数qは数pよりも大きい。当業者は、適切な小数p/qの
リスト、およびどの条件が適切か(特にどの制動トルクが適切か)を実験的に作成するこ
とができる。
【0041】
制動パルスは、一定の偶力または一定でない偶力(例えば実質的にガウス曲線または正
弦波曲線)によって印加され得ることが分かる。用語「制動パルス」は、共振器の振動す
る部材(バランス)を制動する、すなわち、この振動する部材の振動運動に対抗する、共
振器への一瞬間の偶力の印加を意味する。可変トルクの場合、パルス持続時間は、一般に
、このパルスの、共振器を制動するための大きな偶力を有する部分として、具体的には、
偶力が最大値の半分よりも大きい部分として定義される。制動パルスが大きな変動を呈し
得ることに留意すべきである。制動パルスは、絶えず変化し、より短いパルスの連続を形
成する場合さえある。一般に、各制動パルスの持続時間は、共振器に対する設定点周期T
0cの半分よりも小さくなるように提供されるが、有利には、設定点周期の4分の1未満
、好ましくはT0c/8未満である。
【0042】
図3および
図4は、設定点周波数F0c=4Hzを有し、振動72を有する機械式共振
器について、それぞれ、固有周波数がF0=4.0005Hzの場合に、周波数F
INF
=2・FI
Cor、FI
Cor=0.99975・F0c=3.999Hzにて共振器に
印加された周期的制動パルスの第1のシリーズ74と、固有周波数がF0=3.9995
Hzの場合に、周波数F
SUP=2・FS
Cor、FS
Cor=1.00025・F0c
=4.001Hzにて共振器に印加された周期的制動パルスの第2のシリーズ76と、を
示す。
図3、
図4の下図は、補正期間中における共振器の振動周波数の変化を示し、補正
期間は、制動パルスが周波数F
INFまたはF
SUPにて共振器に印加される期間として
定義される。曲線78は、表示された時間において検出された進みを補正するための、周
期的制動パルスの第1のシリーズ74の間における機械式共振器の振動周波数に対する変
化を示し、制動周波数F
INFの結果、同期周波数によって与えられる補正周波数FI
C
orが得られ、これは設定点周波数F0cよりも小さい(第1の進み補正モード)。曲線
80は、表示された時間において検出された遅れを補正するための、周期的制動パルスの
第2のシリーズ76の間における機械式共振器の振動周波数に対する変化を示し、制動周
波数F
SUPの結果、同期周波数によって与えられる補正周波数FS
Corが得られ、こ
れは設定点周波数よりも大きい(第1の遅れ補正モード)。
【0043】
図3および
図4の非常に短い補正期間は、共振器の角度位置を時間の関数として与える
グラフにおいて、共振器の振動および周期的制動パルスをはっきりと見える形で表しなが
ら、補正期間の全体を示すようにとっている。より具体的には、数秒において、予想され
る補正は比較的小さく、実際には1秒未満である。したがって、
図3および
図4で選択さ
れた補正周波数については、補正は非常に小さい。したがって、振動する共振器の固有周
波数(固有/自由周波数)が、1日当たり約10秒(進みまたは遅れ)の日差に対応する
ので、この場合、機械式腕時計の標準の範囲内にあるが、補正周波数は単に例示を目的と
して与えられており、第1の進み補正モードまたは遅れ補正モードを実装するために通常
提供される補正周波数よりも、設定点周波数に非常に近い。結論として、
図3および
図4
は、全体として、設定点周波数に近いが、それとは異なる補正周波数にて周期的制動パル
スのシリーズを受けた場合に、そして通常の時間ドリフトを引き起こす固有周波数の場合
に、振動する共振器の挙動を示すために、概略的に与えられているだけである。予想され
る補正周波数に関する、より詳細で精密な考察は後述されるであろう。
【0044】
周波数曲線78および80を示す2つのグラフにおいて、補正期間の開始時に過渡フェ
ーズPH
Trを見ることができ、その間に周波数が変化した後に、過渡フェーズに続く同
期フェーズPH
Synの間に、それぞれ周波数FI
CorまたはFS
Corにて安定する
。示される2つのケースでは、過渡フェーズPH
Trは比較的短く(2秒未満)、周波数
の変化は、望ましい補正周波数の方向に生じている。示される2つのケースでは、過渡フ
ェーズの間における単位時間当たりの平均的補正は、同期フェーズの間に生じる平均的補
正にほぼ等しい。しかしながら、過渡フェーズをより長く、例えば3~10秒とすること
ができ、過渡フェーズの間における周波数の変化は場合によって変動し、それにより平均
的補正は可変であり未定であるが、実際には小さいままであることに留意すべきである。
国際公開第2018/177779号の
図9~
図11を参照することができ、この文献で
は、共振器を、固有周波数から、それに近いが異なる設定点周波数F0cに同期させるた
めの過渡フェーズは、より長い。この文献の
図10において、設定点周波数が共振器の固
有周波数より大きい場合は、振動周波数が、始めに過渡フェーズの開始時に減少し、その
後、増加して最終的に固有周波数を超えて、設定点周波数にて安定することが分かる。
【0045】
過渡フェーズの持続時間およびこの過渡フェーズの間の周波数の変化は、様々な要因、
具体的には、制動トルク、パルスの持続時間、振動の初期的な振幅、および振動周期にお
いて最初の制動パルスが印加される瞬間、に依存する。したがって、過渡フェーズの結果
生じる、設定点周波数に対する時間偏差を制御することは困難である。例として、FCo
r=1.05・F0c=4.2Hzであり、過渡フェーズが最大で10秒持続し、この過
渡フェーズの間における平均周波数がF0cに等しいと想定すると、FCorに対する絶
対時間偏差は最大で0.5秒である。したがって、この不確定性が、補正期間中に生成さ
れる補正に小さい誤差を生成させるが、この誤差は無視できない。このような誤差を防止
するために、以下に解決策が説明される。電子制御ユニットの第1の実施形態では、補正
期間(の持続時間)PRCorが、補正すべき時間誤差TErrに基づいて決定される場
合は、この補正期間を、意図した制動周波数にて周期的制動パルスのシリーズを共振器に
印加する期間として定義することにより、および、補正期間中の振動周波数が同期周波数
の振動周波数であるという仮定を適用することにより、得られた補正には、したがって、
予想される小さな誤差が存在する。
【0046】
同期周波数は、補正周波数を決定する。定義上、補正周波数FCorは、同期周波数に
等しい。補正期間の同期フェーズにおいて、制動パルスの持続時間は、各制動パルスの間
にまたはその終了時に、共振器に印加される制動トルクが共振器を停止させることができ
るのに十分でなければならないことが分かる(その瞬間的な振幅を定める最も遠い角度位
置の通過)。遅れを補正するための、設定点周波数よりも大きい同期周波数の場合、制動
パルスの間に共振器が停止したままである時間間隔は、単位時間当たりに可能な補正を減
少させるので、一定の安全マージンを考慮して、この時間間隔を制限して、より大きな同
期周波数のおかげで補正期間を短くすることが好ましい。制動パルスの周波数、共振器の
振動の各半周期の時点で共振器に供給される維持エネルギー、および制動トルクの値は、
振動する共振器を停止に至らせるのに必要な時間間隔において生じることに留意すべきで
ある。当業者であれば、所与の制動周波数および結果として生じる補正周波数に対して、
制動システムを最適化するために、制動パルスについての制動トルクおよび持続時間を、
特に実験的な方法でまたはシミュレーションによって決定する方法を知っているであろう
。2Hz~10Hzの設定点周波数の場合、0.5μNm~50μNmの範囲の制動トル
クおよび2ms~10msの範囲の制動パルスが、実際に使用するには有利な補正周波数
として、通常は適切であると思われる(これらの値範囲は例示の目的で非限定的に与えら
れている)。
【0047】
上述した仮説に基づいて、すなわち同期周波数が、補正期間PRCorの全体にわたっ
て適用される場合、提供される補正期間の値は、補正すべき時間誤差TErr、設定点周
波数F0c、および補正周波数FCorに基づいて決定することができる。そして、同期
周波数は、それに等しい補正周波数を決定するので、提供される補正期間の値はまた、補
正すべき時間誤差TErr、設定点周波数F0c、および制動周波数FBraに基づいて
決定することができる。定義上は、表示される時間の進みは正の誤差に対応する一方で、
遅れは負の誤差に対応する。以下の数式は、補正期間の値を決定するために得られた:
PCor=TErr・F0c/(F0c-FCor)=2TErr・F0c/(2F0
c-N・FBra)
【0048】
第1の遅れ補正モード(負の誤差)では、補正周波数FCor=FSCorは、PCo
rが正になるように、F0cよりも大きい。そのような場合、制動周波数FBra=FS
UPである。したがって、以下の式が得られる:
PRCor=TErr・F0c/(F0c-FSCor)=2TErr・F0c/(2
F0c-N・FSUP)
【0049】
第1の進み補正モード(正の誤差)では、補正周波数FCor=FICorは、PCo
rが正になるように、F0cよりも小さい。そのような場合、制動周波数FBra=FI
NFである。したがって、以下の式が得られる:
PACor=TErr・F0c/(F0c-FICor)=2TErr・F0c/(2
F0c-N・FINF)
【0050】
代替的実施形態では、外部電子デバイス(携帯電話40)は、この計時器の機械式共振
器のための設定点周波数、および(任意選択で、遅れの値範囲の関数として)この遅れを
補正するために供給されるより高い周波数をメモリ内に有するか、または考慮される計時
器からこれらを受信する。したがって、この代替的実施形態では、外部電子デバイス内に
実装される時間補正アプリケーションは、補正期間の値PRCorを決定し、外部補正信
号SExtを介してこの情報を計時器に伝達し得る。この代替的実施形態では、計時器の
電子制御ユニットは、補正すべき時間誤差TErrに基づき補正期間の値を計算するため
のリソースを必要としない。
【0051】
機械式計時器の動作の補正に関して、その共振器に適用される周期的制動パルスのシリ
ーズによって補正が得られるという一般的な説明に続いて、ここで、本発明による計時器
の第1の実施形態に戻ることができる。電子制御ユニット28A(
図2)は、計時器2の
受信機ユニットによって受信した外部補正信号S
Extが、補正すべき表示された時間遅
れに対応する場合には常に、周波数発生器62によって提供される周期的デジタル信号S
FSから導かれた制御信号S
C1を、補正期間PR
Cor中に制動デバイスに提供して制
動デバイス22を起動させ、その結果、この制動デバイスが周期的制動パルスのシリーズ
を生成させ、それが周波数F
SUPにて共振器に適用されるように構成されている。補正
期間(の持続時間)は補正すべき遅れによって決定されるので、したがって周期的制動パ
ルスのシリーズにおける周期的制動パルスの数もまた、補正すべき遅れによって決定され
る。周波数F
SUPでの周期的制動パルスのシリーズの各々が、対応する補正期間中に第
1の同期フェーズになることができ、共振器の振動が、機械式共振器に提供される設定点
周波数F0cより大きい補正周波数FScorに同期する(定義により、「平均的に同期
する」)ように、周波数F
SUPが提供され、制動デバイスが構成される。
【0052】
図5~
図10を参照すると、以下のパラグラフは、制動パルスに関する、具体的には制
動周波数F
Braおよび対応する補正周波数F
Corに関連するいくつかの所見を提示し
、これらの所見は、有利には、第1の遅れ補正モードの好ましい代替的実施形態に対して
、および更に、第1の進み補正モードの好ましい代替的実施形態に対して考慮され(これ
らは後述する実施形態において実装されることになる)、表示された時間において検出さ
れた進みは、上記で既に定義された周波数F
INFでの制動パルスのシリーズによって補
正され、その結果、やはり上記で定義された、設定点周波数F0cよりも小さい補正周波
数FI
Corになることが意図されている。
【0053】
図5は補正期間の第1の部分を示し、補正周波数FS
Cor=3.5Hzと設定点周波
数F0c=3.0Hz(自由に振動している場合は共振器の固有周波数に実質的に等しく
、振動82によって示す)との間に比較的大きな比率を有し、すなわち、比率RS=FS
Cor/F0c=3.5/3.0=1.167である。制動周波数F
Bra=F
SUP=
2・FS
Cor=7.0Hz(N=1のケース)と、十分な制動偶力とを有する制動パル
ス84が機械式共振器に印加されて、過渡フェーズPH
Trにおいて、振動する共振器の
振動86の振幅が十分に減少し、各制動パルスの間に最終的に停止することが可能な場合
、対応する補正周波数、すなわちFS
Cor=3.5Hzを、この共振器に比較的迅速に
課すことができる。与えられた実施例では、所望の同期は、ちょうど1秒後に得られるが
、振動が安定するフェーズPH
Stは、同期フェーズPH
Synの始めに生じる。示され
るケースでは、振幅は安定化フェーズ中に再び増加して、自由共振器の初期振幅の約1/
3に対応する振幅にて最終的に安定する。
【0054】
デモンストレータ(本発明による計時器の原型)を、
図5に示すケースについて作製し
た。機械式共振器に、周期的制動パルスを周波数F
SUP=7.0Hzにて印加すること
により、6時間の補正期間に対して7時間の進みが、非常に精密に計時器の表示器に得ら
れた。したがって、6時間の実際時間で、厳密に1時間「進んだ」。そのような結果は、
自由に動作する(すなわち、制動パルスが存在しない)共振器の不正確さの結果である表
示器の時間ドリフトに単に実施される補正とは異なる、表示器によって示される時間を補
正する方法への道を開く。したがって、以下で説明する別の実施形態から分かるように、
本発明は、季節時間の変更で(特に、標準時間から、法定時間が前進する夏時間への変更
に対して)発生する1時間のジャンプを修正可能にする。旅行中に生じ得る時間帯変更の
補正も考慮し得る。
【0055】
図6は、機械式共振器の自由振動82Aと、補正期間の同期フェーズにおける、この共
振器の第1の振動86Aであって、補正周波数FS
Corと設定点周波数F0cとの間の
比率RSが比較的小さい(すなわち「1」に比較的近い)、第1の振動86Aと、補正期
間の同期フェーズにおける、この共振器の第2の振動86Bであって、補正周波数FS
C
orと設定点周波数F0cとの間の比率RSが比較的大きい(すなわち「1」から比較的
遠い)、第2の振動86Bと、を示す。第1の振動86Aは、比較的低い強度の周期的制
動パルス84Aのシリーズから生じ、振動周期毎に1回ずつ生じる(これは、N=2、F
SUP=FS
Cor、のケースに対応する)。しかしながら、第2の振動86Bは、比較
的高い強度の周期的制動パルス84Bのシリーズから生じ、振動の半周期毎に1回ずつ生
じる(これは、N=1、すなわちF
SUP=2・FS
Corのケースに対応する)。
【0056】
制動トルクおよび制動周波数を、適切な形で選択することにより、補正周波数は、表示
される時間の遅れを補正するために、設定点周波数F0cと、特定のより高い周波数FS
Cmaxとの間を連続的に変化することができ、表示される時間の進みを補正するために
、設定点周波数F0cと、特定のより低い周波数FICmaxとの間を連続的に変化する
ことができることが分かる。より高い周波数FSCmaxおよびより低い周波数FICm
axは、理論的に容易に計算できる値でない。それらは、各計時器について実際に決定さ
れなければならない。この情報は、関心の対象ではあるが本質的ではないことが分かる。
重要なことは、制動周波数が選択され、利用可能な制動トルクが、各補正期間中に、好ま
しくは非常に迅速に、同期フェーズを発生させるのに適切なことであり、同期フェーズ中
に、機械式共振器は、その振動が停止することなく、上述した数学的方程式により提供さ
れる補正周波数にて振動することができる(すなわち、共振器は、停止位置から再スター
トできないようには停止してはならない。そうすると、表示器の駆動機構は停止すること
になる)。
【0057】
図6は、安全角度θ
Secを示し、絶対値の形で、それ以下では、機械式共振器は停止
することが防止され(すなわち、-θ
Sec~θ
Sec)、したがって、それを超えると
、絶対値の形で振幅は、同期フェーズ中は、少なくとも安定化フェーズ後に事実上は維持
されなければならない。有益には、機械式共振器の動作にとって、角度θ
Secは、角度
θ
ZI(
図10を参照)に等しいか、または好ましくは角度θ
ZIよりも大きく、角度θ
ZIは、共振器と、それに関連付けられた脱進機との間の、共振器の中立位置の両側にお
ける結合角度に対応し、共振器がその静止位置にあるか、またはその静止位置を通過する
時に、バランスのプレートによって支持される結合ピンの角度位置によって定められる。
制動パルスの間に機械式共振器を停止させるために、機械式共振器の、脱進機との結合ゾ
ーン(-θ
ZI~θ
ZI)は、したがって、「禁止ゾーン」と宣言される(過渡フェーズ
中ではこの禁止ゾーンにおいて制動は可能であるが、共振器はこの禁止ゾーンにおいて停
止することは防止されることが分かる)。共振器の使用可能な実施範囲において、脱進機
の正しい動作を維持し、特にロック解除フェーズを保証するために、安全角度θ
Secは
結合角度θ
ZIよりも大きい必要があり得ることに留意すべきである。当業者は、第1の
実施形態による補正デバイスに関連付けられた各機械式ムーブメントについて、安全角度
θ
Secに対する値を決定することが可能であろう。結合角度θ
ZIは、機械式ムーブメ
ントによって、特に22°~28°で変化する場合がある。
【0058】
遅れ補正期間中に、角度安全ゾーンにおいて共振器を遮断しないという条件が重要であ
る。なぜなら、この遅れ補正期間中には、脱進機(すなわち、時間表示器の駆動機構の動
作のタイミング)を介して通過時間を計数し続けなければならないからである。したがっ
て、非常に有利な形では、前述の周波数FSUP、および周期的制動パルスの持続時間は
、第1の遅れ補正モードの範囲内における補正期間の前述の同期フェーズの間に、周期的
制動パルスの各々が、振動する機械式共振器の、脱進機との結合ゾーンの外側で、好まし
くは機械式ムーブメントに対して定められた安全ゾーンの外側で生じるように選択される
。これは、第1の進み補正モードの範囲内において、前述の周波数FSUP、および周期
的制動パルスの持続時間を選択する場合にも適用される。
【0059】
補正周波数および対応する制動周波数の選択に関して、当業者を方向付けるために、機
械式発振器の運動方程式に基づいて数学モデルが作成された。最大の正および負の補正を
決定するために、共振器は、同期かつ安定なフェーズにあると想定する。更には、脱進機
を介してエネルギー源によって共振器に印加され、cos(ωt)のタイプと想定される
維持力に関して、簡略化を導入する。この簡略化は、共振器に供給されるエネルギーの全
てが上記で定められた禁止ゾーンθZIで起こる実際のケースと比較して、最大値を低減
させるので、実用的である点に留意すべきである。最後に、以下で与えられる運動方程式
において、式FCor=N・FBra/2で選択される数Nに対応する、1/2半周期に
おける安全角度θSecに共振器が到達する時間の値TSecの逆数として、制動周波数
FBraを定めることにより、制動パルスの持続時間は非常に小さく、したがって分離さ
れていると想定される。
【0060】
補正すべき時間誤差が負(遅れ)であるか正(進み)であるかに応じて、最大の補正、
したがって最小期間または最大期間を決定するために、制動パルスによって時間t=0が
与えられ、制動パルスの間に発振器は安全角度θSecにて停止される。更には、安定し
た同期フェーズでは、共振器は、値Nによって、および遅れまたは進みを補正するために
、補正周波数が設定点周波数F0cよりも大きいようにまたは設定点周波数F0cよりも
小さいように提供されるという事実によって与えられる時間範囲における安全角度(-1
N)・θSecにて、引き続く制動パルスをできるだけ早く、またはできるだけ遅く停止
させなければならない。
【0061】
そのような場合、運動方程式は、以下によって与えられる:
【0062】
【0063】
ここで、τ=Q・T0/πであり、T0は、自由振動周期(計算では、T0c=1/F
0cに等しい想定)であり、θ0は自由振動の振幅である。
【0064】
したがって、機械式共振器の品質係数Qは、運動方程式に含まれることが理解できる。
【0065】
設定点周波数F0cより大きい補正周波数FSCorを得るために、TSecは、共振
器がその中立/静止位置を通過した後の半周期で起こらなければならない。したがって、
所与のNについて以下が得られる:
θ(TSec)=-1NθSec
ここで、
【0066】
【0067】
である。
【0068】
最大制動周波数はFSBmax(N)=1/TSec、および最大補正周波数はFSC
max(N)=N・FSBmax/2である。
【0069】
設定点周波数F0c未満である補正周波数FICorを得るために、TSecは、共振
器がその中立/静止位置を通過する前の半周期で起こらなければならない。したがって、
所与のNについて以下が得られる:
θ(TSec)=-1NθSec
ここで、
【0070】
【0071】
である。
【0072】
最小制動周波数はFIBmin(N)=1/TSec、および最小補正周波数はFIC
min=N・FIBmin/2である。
【0073】
図7Aおよび
図7Bは、RS
max(N=1)=FSC
max(N=1)/F0c、お
よびRS
max(N=2)=FSC
max(N=2)/F0cの曲線を、機械式共振器の
自由振動の振幅θ
0の関数として、この機械式共振器の様々な品質係数Qに対して示す。
品質係数が小さいほど、比率RS
max(N)は大きいことが分かる。
【0074】
図8は、品質係数Q=100、自由振幅θ
0=300°、および安全角度θ
Sec=2
5°を有する共振器について、第1の遅れ補正モードの範囲内であると考えることができ
る設定点周波数F0cおよび様々な対応するNの値に対する、補正周波数がより大きい範
囲において、値「1」とRS
max(N)との間に広がる比率RS=FS
Cor/F0c
を示す。
【0075】
図9は、品質係数Q=100、自由振幅θ
0=300°、および安全角度θ
Sec=2
5°を有する共振器について、第1の進み補正モードの範囲内であると考えることができ
る設定点周波数F0cおよび様々な対応するNの値に対する、補正周波数がより小さい範
囲において、RI
max(N)と値「1」との間に広がる比率RI=FI
Cor/F0c
示す。
【0076】
上述したように、
図8および
図9で与えられる範囲は簡略化した理論モデルの結果であ
る。最大補正周波数、および対応する最小補正周波数は、複数のパラメータに依存するこ
とが分かる。これらの図は、適切に標準的な特性を有する機械式ムーブメントについての
現実を良好に示す。しかしながら、所与の機械式ムーブメント毎に、比較的短い補正期間
で大きな補正を行うために制限値に接近しようとする場合、制限値を定めなければならな
い。
【0077】
計時器によって表示される時間の遅れを補正するための、本発明による計時器の第1の
実施形態の電子制御ユニットの構成と補正デバイスの動作について詳細に説明した後で、
第2の進み補正モードによる、表示される時間の進みを補正するための、この第1の実施
形態による電子制御ユニットの構成について、ここで説明する。
【0078】
第2の進み補正モードを実装することを可能にするために、計時器は、機械式共振器を
遮断するためのデバイスを備える。一般に、第2の進み補正モードの範囲内において、電
子制御ユニットは次いで、受信ユニットによって受信された外部補正信号が、補正すべき
表示される時間進みに対応する場合に、遮断デバイスに制御信号を供給することができる
ように構成され、制御信号は、遮断デバイスが補正期間中に機械式共振器の振動を遮断す
るように、この遮断デバイスを起動させ、補正期間は、この補正期間中に前述の駆動機構
の動作を停止させるために、補正すべき進みによって決定される。
【0079】
図1~
図2を参照して説明される第1の実施形態では、計時器2は、第1の遅れ補正モ
ードを実装するためにも使用される制動デバイス22によって、特に圧電アクチュエータ
22Aによって形成される遮断デバイスを備える。受信機ユニット30によって受信した
外部補正信号S
Extが、補正すべき表示される時間における進みに対応する場合、電子
制御ユニット28A(
図2)の論理回路60は、プログラム可能なタイマー70に、制御
信号S
Aを提供する。したがって、このタイマー70は、「OR」ゲート66または他の
スイッチを介して補正期間PA
Corにわたって制動デバイス22を起動させるための信
号S
C2を発生させ、その信号の持続時間は、補正すべき対応する進みT
Errに実質的
に等しい。したがって、周期的起動信号S
C2は、制御信号S
Cmdを形成する。起動信
号S
C2は、比較的長時間にわたって、すなわち実質的に全補正期間PA
Cor=T
Er
rの間、機械式共振器の遮断モードにおいて制動デバイス22を制御することが分かる。
この目的のために、圧電ストリップ24の2つの電極の間に電力供給回路26によって供
給される電圧は、したがって、遅れを補正するために周期的制動パルスを発生させるため
に提供される電圧とは異なり得る。この電圧は、機械式共振器に印加される制動力が、機
械式共振器を、好ましくは非常に急速に、停止させ、引き続き補正期間が終了するまで機
械式共振器を遮断することができるように選択される。
【0080】
代替的実施形態では、圧電ストリップ24に印加される電圧は、補正期間中は可変であ
る。例えば、補正期間の始まりには、より高い電圧を提供することができ、この電圧は、
特に、補正期間が開始する、この共振器の振動の半周期の間に、共振器を急速に停止させ
るために選択され、引き続き、電圧を、より低い値ではあるものの共振器を停止させたま
まにするには十分な値に低減させることができる。有利には、電圧は、結果として生じる
制動力が、上述した禁止角度ゾーン(-θZI~θZI)において機械式共振器を停止さ
せることができないように選択される。この目的のため、制動トルクは、共振器を停止さ
せ、いかなる位置であれ角度停止位置で共振器を遮断させることができるほどに十分に強
く、かつ、この制動トルクが、禁止角度ゾーンにおいて共振器を停止させることを防止す
るほどに十分に弱くなるように選択される。好ましくは、共振器は、上述した角度安全ゾ
ーン(-θSec~θSec)において停止することが防止される。上述した条件は、共
振器が自己起動形ではない時に重要である。一般に、共振器は、補正期間の終了時に確実
に再開できれば十分である。
【0081】
共振器が上述した角度安全ゾーンの外側で確実に急速に停止する1つの特定の代替的実
施形態によれば、共振器が遮断される補正期間の前に生じる予備フェーズが提供される(
すなわち、補正期間の始めにおいて共振器が急速に停止された後に停止されたままである
所で)。予備フェーズ中に、第1の実施形態において利用可能な第1の遅れ補正モードが
使用される。本明細書にて上述した第1の補正モードの同期フェーズにおいて、各制動パ
ルスの間に最も遠い角度位置の通過が生じることは明らかである。したがって、制動パル
スは、その2つの最も端の角度位置のうちの1つを通る、機械式共振器の通過と同期し、
これら通過の各々が半周期の始まりを定める。これは、予備フェーズ中に周波数発生器6
2を起動させることによって活用することができ、予備フェーズは、比較的短い持続時間
を有するにもかかわらず、共振器が周波数FSCorに同期されている同期フェーズを確
立するには十分であるように意図されている。予備フェーズは、例えば最終制動パルスの
間に終わり、直後に補正期間が続いて、制動デバイスが遮断モードにて起動される。した
がって、共振器は、角度安全ゾーンの外側で遮断されることが分かる。予備フェーズに対
する制動トルクは、上述したような遅れを補正するために使用されるものとは異なり得る
。
【0082】
過渡フェーズ中の、周期的制動パルスのシリーズの始めにおける周波数の挙動は場合に
より変動し得るので、予備フェーズによって発生する誤差を決定することはほぼ不可能で
ある。しかしながら、最大誤差を見積もることができる。例えば、周波数FSUP=1.
05・F0c(10分間で30秒の補正)であり、予備フェーズの持続時間が10秒の場
合(選択された持続時間は、発生し得る過渡フェーズの持続時間よりも大きい)、最大誤
差は0.5秒(1秒の半分)に等しいと推定され得る。機械式ムーブメントにとって、そ
のような誤差は無視できないが、従来の機械式ムーブメントが一般に0および5~10秒
の範囲の日差を有するので、この誤差は比較的小さい。
【0083】
図10を参照して、本発明による計時器の第2の実施形態について説明するが、これは
、第1の実施形態とは遮断デバイスの構成が異なり、それにより、有利には、計時器の機
械式ムーブメントに関連付けられた時間表示器における進みを補正するために第2のモー
ドを実装することが可能である。この機械式ムーブメント92は、パレットホイール95
と、2本のペグ95の間で振動することができるパレットレバー96とによって形成され
る従来の脱進機94を備える。パレットレバーは、ホーンの間にフォーク97を備え、そ
れが通常は半周期毎に挿入され、ピン98も脱進機を形成し、プレート100によって支
持され、プレート100は、機械式共振器のバランス104(部分的に示す)のスタッフ
102と一体であるか、またはこのスタッフと一体として形成されている(すなわち、ス
タッフは長手方向輪郭を有するように機械加工されてプレートを定めている)。プレート
100は円形であり、バランス104の回転軸を定める、スタッフ102の中心軸を中心
としている。
【0084】
計時器は、遅れを補正するために使用される制動デバイス22A(
図1)とは別個であ
る遮断デバイス106を備える。したがって、この遮断デバイスは、第2の進み補正モー
ドを実装することに専念する。遮断デバイスは、電気機械式アクチュエータによって、具
体的には、
図1を参照して説明したものと同じタイプの圧電アクチュエータによって形成
される。示される代替的実施形態によれば、アクチュエータは可撓性の圧電ストリップ2
4Aを備え、その2本の電極に電圧が電力供給回路26Aによって供給される。ストリッ
プ24Aは、その自由端に、スタッドを形成する突出部107を有し、それはプレート1
00側に位置している。ストリップは、プレートの円周の接線に平行な方向に、この円形
である円周から近距離で延びている。プレートは、プレートの周辺から半径方向に開放さ
れた貫通空洞108を有し、プレートの全体的な平面におけるその輪郭は、スタッド10
7がこの空洞に対して角度方向に面して位置している時に、かつ圧電アクチュエータ10
6が起動されている時に、スタッド107がその中に収容されることが可能なように提供
されている。示される代替的実施形態によれば、空洞108は、直径に沿ってピン98の
反対側にあり、スタッドはピンのゼロ位置(すなわち、共振器が静止している時、または
その中立位置を通過する時のピンの角度位置)において角度方向に位置している。ピンの
このゼロ角度位置は通常、機械式ムーブメント92に対する、およびバランスの回転軸を
中心とする、固定角度座標系において、バランス104の、したがって機械式共振器のゼ
ロ角度位置を定める。
【0085】
等価な代替的実施形態では、空洞を、ピンに対して別の角度で、例えば90°で構成す
ることができ、したがって、共振器が静止している時にスタッド107が直径に沿って空
洞の反対側にあるように、アクチュエータ106はプレートの周辺に位置付けられる。し
たがって、圧電アクチュエータが起動している場合、半周期および角度位置に関係なく、
共振器が、絶対値の形で実質的に180°に等しい角度位置にある時に、スタッドは空洞
に入ることになる(これは、バランスの位相が合っている場合に、すなわち、共振器が静
止している時にピンがバランスの、およびパレットレバーのそれぞれの回転中心と整列し
ている場合に厳密に該当する)。180°という値は明らかに安全ゾーンの外側にあり(
上記にて定義された安全角度よりも大きい)、その値は通常、その使用可能な動作範囲に
対応する、機械式共振器の振幅の範囲よりも小さい。
【0086】
更には、
図10に示す有利な代替的実施形態によれば、空洞108の側壁は、空洞の中
心を通過する半径、およびバランスの回転軸に平行である。等価な代替的実施形態では、
これらの側壁は、放射状である。同様に、スタッド107は、プレートの主平面に対して
垂直な2つの側壁を有し、側壁はバランスの中心を通過する半径およびバランスの回転軸
に平行である、または等価な代替的実施形態では、回転軸に対して実質的に放射状である
。この構成のおかげで、スタッド107が空洞108の中に挿入され、したがって空洞が
スタッドのためのハウジングとして機能する時、このスタッドは、実質的に接線方向の力
によって、プレート100の、したがってバランス104の回転を遮断し、その力の方向
は、圧電ストリップ24Aの全体的な長手方向に実質的に平行である。アクチュエータ1
06が起動している時、スタッド107を保持するストリップの端部は、バランスの回転
軸に対して実質的に半径方向の変位を受け、したがって、スタッドは、この時点で、バラ
ンスの角度位置の関数として、プレート100の円形の外側面に本質的に半径方向力を加
えるか、または少なくとも部分的に空洞108に入るかの、いずれかが可能である。アク
チュエータは、このアクチュエータが起動された場合、実質的にスタッドの角度位置に対
応する角度位置に空洞が配置された場合に、スタッドが空洞の中に挿入されるのに十分な
変位を、スタッドが受けることができるように構成されるだけでよい(スタッドに対して
固定された角座標系において)。
【0087】
スタッドの近位面がプレートの円形である円周に到達した時に空洞がスタッドに面して
いない場合、補正期間の開始時に、すなわちアクチュエータの起動後に、スタッドがプレ
ートの円形の外側面に当接するようになった時に比較的小さい摩擦力が与えられ得る。し
たがって、この円形の外側面に対してスタッドが半径方向力を加えることによって生じる
初期的な制動中に、共振器の振幅があまり減少しないことを保証することができる。更に
は、空洞がスタッドに面して配置されている間に、スタッドが空洞の中に挿入される場合
、圧電ストリップによってプレートに加えられる半径方向力は非常に小さいか、またはゼ
ロであり得る。したがって、補正期間中に共振器を遮断するのに必要な電気エネルギーは
比較的小さく、第1の実施形態の場合よりも遥かに小さい場合がある。
【0088】
計時器の補正デバイスが、時間の表示器内で検出された進みの補正に対応する外部補正
信号を受信した場合、その制御論理回路は、第1の実施形態の範囲内で上述したものと同
様に補正すべき時間誤差に実質的に等しい期間にわたって制御信号SC2を制動デバイス
に提供することにより、第1の実施形態の動作方法と同様に遮断デバイス106を起動さ
せる。共振器の回転軸を中心とする円形プレートにある空洞と、対応部分を有するが好ま
しくは空洞よりも狭いアクチュエータであって、本明細書に記載される代替的実施形態に
おける、アクチュエータによって供給されない状態に対応する相互作用しない位置と、ア
クチュエータによって供給される状態に対応する、共振器のバランスと相互作用する位置
との間で、実質的に半径方向の移動を受けることができるように構成されたアクチュエー
タと、の構成のおかげで、遮断デバイス106の起動の開始は、共振器の角度位置に関わ
らず、かつ振動運動の方向に関わらず、いつでも起こることができる(したがって、各振
動周期を形成する2つの半周期のうちの現行の半周期に依存せずに)。これは、非常に有
利である。
【0089】
最後に第2の実施形態に関して、電気機械式アクチュエータは、
図10に示すものとは
異なるタイプであり得る。例えば、代替的実施形態では、アクチュエータは、コイルによ
って生成される磁場の効果で変位し得る強磁性コアまたは磁化されたコアを備え得る。特
に、このコアはコイルと同一直線上にあり、アクチュエータが起動した時に、少なくとも
コイルから出る端部を備え、この端部は、プレートの空洞の中に挿入できるように構成さ
れたフィンガを形成し、このフィンガは特に、スタッド107の形の末端部を有する。好
ましい代替的実施形態では、アクチュエータは、双安定アクチュエータである。アクチュ
エータの供給は、有利には、アクチュエータが起動している間は維持されて、スタッドが
少なくとも部分的に空洞108の中に入るまで、相互作用しない位置から相互作用する位
置へと移動する。アクチュエータは、提供される相互作用しない位置と相互作用する位置
にそれぞれ対応する、アクチュエータの2つの安定位置において、共振器のバランスの要
素に半径方向の圧力を印加することによる何らかの遮断力を加えてはいけないので、この
ような代替的実施形態は特に関心の対象である。この好ましい代替的実施形態では、補正
期間の持続時間に関係なく、電力消費は非常に小さい場合があり、これは非常に有利であ
る。
【0090】
図11を参照して、本発明による計時器の第3の実施形態について説明するが、これは
、計時器の機械式ムーブメントに関連付けられた時間表示器における進みを補正するため
の第2のモードを実装することを有利にも可能にする遮断デバイスの構成によって、第1
の実施形態とは本質的に異なる。
図1および
図2を参照して既に記載された参照は、再び
ここで詳細に記載しない。第2の実施形態と同様に、第3の実施形態による計時器112
は、遅れを補正するために使用する制動デバイス22Bと別個である遮断デバイス114
を備える。制動デバイス22Bは、上述した制動デバイス22Aと同様であり、同様に動
作する、すなわち、制動デバイス22Bは、詳細に上述したように、第1の遅れ補正モー
ドを実装するように適合されている。この制動デバイス22Bは、電力供給部26Bを備
え、電力供給部26Bは、遮断デバイス114の電力供給と部分的に共用され、制御信号
S
C1を受信する。この場合、計時器は、ブラケット形状部内に圧電ストリップ24Bを
備え、この形状部は、ここでは可能な代替形態として、遮断デバイスを形成する圧電スト
リップ24B及び圧電ストリップ25を、共用電力供給部26Bの支持体の同じ表面上に
、より容易に配置可能にするように設けられる。しかし、他の代替的実施形態は、特に、
電力供給回路が遮断デバイスの電力供給回路と完全に別個である
図1に示すものと同一の
制動デバイスを提供し得る。
【0091】
遮断デバイス114は、少なくとも2つの理由で注目に値する。第1に、何らかの変更
も必要とせずに、特に、第2の実施形態とは異なり何らかの特定の機械加工を必要とせず
に、遮断デバイスは従来の機械式共振器14に作用する。更には、遮断デバイスは双安定
要素である。すなわち遮断要素は2つの安定位置を有し、この場合、遮断要素はレバー1
15である。遮断デバイスは、レバーの2つの安定位置のうちの第1の位置が、バランス
16と相互作用しない位置に対応し、一方、これら2つの安定位置のうちの第2の位置が
、レバー115を形成するストリップ116によってバランスの外縁20に加えられる半
径方向力を介して共振器をロックする位置に対応するように構成されている。ストリップ
116は、機械式ムーブメント4Aにて構成される軸を中心として旋回する(別の代替的
実施形態では、レバーは、その旋回軸が機械式ムーブメントと別個であって補正モジュー
ルに属する支持体上に構成されている)。代替的実施形態では、この軸は固定ペグによっ
て形成され、固定ペグの周りにストリップ116の環状末端部が取り付けられている。こ
のストリップは剛性または半剛性であり、軽度の可撓性が有利であり得る。
【0092】
ストリップ116は、レバー115の、したがって遮断デバイス114の双安定の性質
をもたらす特定の磁気システムに関連付けられている。磁気システムは、ストリップによ
って支持され、したがってこのストリップに固定されて共に回転する第1の磁石118と
、機械式ムーブメントの内部または機械式ムーブメントに対して固定して構成された第2
の磁石119と、第1の磁石と第2の磁石との間で第2の磁石119から固定短距離にて
、または第2の磁石119に抗して構成された小さな強磁性プレート120と、を備える
(例えば、小さなプレートはこの磁石に接合され、したがって、接着剤層のみが磁石を小
さなプレートから分離している)。
【0093】
第1の磁石118と第2の磁石119は逆の磁気極性を有し、それらの各々の磁気軸は
実質的に整列している。したがって、小さな強磁性プレートがない場合、これらの2個の
磁石は常に互いに反発力を加えることになり、磁気システムの外部に力がない場合、レバ
ーは、ストリップがペグ124に対して当接してその回転が制限される位置に留まるか、
またはその位置に常に戻ることになる。しかしながら、小さな強磁性プレートの構成のお
かげで、2つの磁石の間に加わる磁力は反転している。より具体的には、移動磁石118
が、その遠隔位置から、より近くに移動する場合(
図11に示す)、移動磁石が移動して
小さな強磁性プレートに接近すると反発力は減少し、その後相殺されて最終的に逆転する
。したがって、移動磁石118が小さな強磁性プレート120に非常に接近して、または
それに対向して位置すると、この移動磁石は磁気吸引力に曝される。この驚くべき物理的
現象はスイス特許出願公開第711889号(特許文献2)において詳述されており、こ
れは時計学のいくつかの応用を更に含む。
【0094】
レバー114は、遮断デバイスの磁気システムの外部の力がない場合に、2つの安定位
置をとるように構成されている。第1の安定位置は相互作用しない位置であり、ストリッ
プ116はペグ124に対して当接しており、したがって、移動磁石118は、磁気反発
力に曝されており、この磁気反発力がレバーをこのペグに対して維持している。第2の安
定位置は相互作用する位置であり、ストリップ116はバランス16の外縁20に対して
当接しており、したがって、移動磁石118は、磁気反発力に曝されており、この磁気反
発力がレバーをこの外縁に対して維持している。小さい強磁性プレート120は、レバー
がその第2の安定位置にある時に、ストリップがバランス16を、したがって共振器14
を遮断する半径方向力を加えるように構成されている。ストリップが外縁20の外側面に
対して遮断力を加えるためには、移動磁石118に面して位置する小さなプレート120
の表面は、ストリップ116が外縁と接触する時に、この移動磁石の近位表面に対して僅
かに後退していなければならない。ストリップが半剛性であり、したがって一定の可撓性
を有する場合、移動磁石は小さな強磁性プレートの近位表面に対して最終的に当接するこ
とができるが、この場合、ストリップは曲がった状態である。
【0095】
双安定レバー115を、その2つの安定位置の間で両方向に変位させるために、遮断デ
バイスは、このレバーを作動させるためのデバイスを備える。この作動デバイス126は
、その電力供給回路を介して電子制御ユニットの論理回路によって制御され、電子制御ユ
ニットは制御信号SC2を受信する。遮断デバイスによって加えられる遮断力は、この遮
断デバイスへの電力供給部に由来するのではなく、遮断デバイスを形成している磁気シス
テムに由来することが、この実施形態では注目に値する。したがって、遮断デバイスは、
第2の進み補正モードについては、双安定レバーをその2つの安定状態の間で切り替える
間の、遮断期間の開始時と終了時に電力を必要とするだけである。
【0096】
例示のみの目的で、作動デバイス126は、圧電ストリップ25を備える圧電デバイス
によって形成され、圧電ストリップ25は、電力供給回路26Bによって供給される電圧
を印加することによって、正の電気極性および負の電気極性をそれぞれ有する2つの電極
の間で、圧電ストリップ25の静止位置(非起動位置)から両方向に屈曲し得る。レバー
115は、空洞を画定するフォーク122を備え、空洞の内部に、圧電ストリップ25の
自由端が収容される。空洞の幅は、好ましくは、空洞の幅がストリップ25の自由端より
も大きいように設けられ、このストリップは、双安定レバーが第1の安定位置にある際に
ストリップが空洞の第1の側壁に接し、双安定レバーが第2の安定位置にある際にこの空
洞の第2の側壁に接するように構成される。空洞の幅を調節することによって、圧電スト
リップ25は、実質的にまっすぐに作製することができる、すなわち、レバーの2つの安
定位置において屈曲しない。しかし、圧電ストリップの端部が辿る経路を考慮に入れると
、図示のように、電力供給部によって印加される電圧の不在下、わずかに屈曲を残すこと
ができ、有利であり得る。
【0097】
1つの有利な代替的実施形態では、レバーの作動デバイスは、電磁石-コイルシステム
によって形成され、磁石は、特に、レバーに締結され、コイルは、磁石と実質的に整列す
る状態でレバー支持体に締結される。コイルに印加される電圧の極性に応じて、レバーは
、磁気引力または反発力を受けるため、2つの安定位置の一方から他方に、両方向でレバ
ーを容易に通すことを可能にする。
【0098】
同じ物理的現象、したがって同じ必要とされる効果をもたらす別の代替的実施形態では
、小さい強磁性プレート120が、移動磁石118に堅固に接続されて構成されている。
最後に、別の代替的実施形態は、第2および第3の実施形態の組み合わせを提供する。こ
の目的のため、レバーのストリップは、外縁20との接触がなされる領域において、この
外縁に向かって突出するスタッドを備え、外縁は、その全体的に円形である円周に沿って
空洞を有する。当業者であれば、遮断デバイスを構成して、その結果、遮断デバイスの第
1の安定位置が相互作用しない位置であり、その第2の安定位置が相互作用する位置であ
り、スタッドが少なくとも部分的に空洞の中に挿入され、レバーが作動デバイスによって
作動された時にこのスタッドが外縁の外側面に対して初期的に動的な乾燥摩擦を全体的に
加え、空洞を貫通する前、バランスの振動中に空洞がスタッドに面して存在する時に、進
み補正期間の始めに、その第1の安定位置からその第2の安定位置へと移動するようにす
る方法を知ることになる。
【0099】
計時器の第4の実施形態が、
図1および
図12を参照して以下に記載されている。この
第4の実施形態は、実質的にその進み補正モードの結果として第1の実施形態とは異なる
好ましい実施形態、ならびに補正デバイス132のいくつかのユニットに対するいくつか
の拡張形態および代替形態である。
【0100】
まず、補正デバイスの受信機ユニット30Bは、BLE(Bluetooth Low
Energy)ユニットである。次に、補正デバイスへの電力供給部130は、第1の
実施形態(
図2)に示す代替形態よりも進化している。エナジーハーベスターは、太陽電
池54Aであり、具体的にはダイヤル、またはダイヤルを保護するガラスを保持するベゼ
ル、に配置される。このダイヤルは、全体的に時間表示器の一部をなす。更には、フォト
ダイオード136が提供され、フォトダイオード136は、外部電子デバイスが供給する
外部補正信号S
Extに基づき、表示される時間を補正するサイクルを計時器において始
動/開始させるように、外部電子デバイス、特に携帯電話40によって供給される、補正
デバイスを起動するための光信号を受信する(換言すれば、補正デバイス132内部に実
装された、表示される時間を補正するための方法を始める)。
【0101】
電力供給部130は、補正デバイス132への電力供給を管理するための回路134を
備える。この回路は電気アキュムレータ56から様々な情報を受け取ることができ、この
回路は、フォトダイオード136が特定の光信号を携帯電話40から受信した際にウェー
クアップ信号SW-UPをフォトダイオード136から受信する。フォトダイオードが不
要なウェークアップ信号を補正デバイスに送信しないようにするため、当業者に公知の様
々な方策を取ることができる。特に、特定の狭周波数帯域を選択し得る。更には、特に光
の強度を変調することによって、光信号をコード化することができ、したがって、フォト
ダイオード136または管理回路134は、この変調に対応する論理コードが意図される
ウェークアップ信号に実際に関連するかどうかを決定できるように構成される。いったん
管理回路134が有効なウェークアップ信号を受信すると、管理回路はアキュムレータ5
6において利用可能なエネルギーレベルを検出する。第1の実施形態と同様に、補正方法
を完了させるにはエネルギーレベルが不十分な場合、管理回路は様々な方法で対処するこ
とができる。特に、管理回路は、BLEユニットを起動し、BLEユニットを介してメッ
セージを携帯電話に送信し、この外部デバイスが、電子表示器を介してこの情報をユーザ
に与えるようにする。この場合、管理回路は、太陽電池、またはやはり提供される他のエ
ネルギーハーベスティングを介して、電気的エネルギーの供給を受けるためにスタンバイ
状態を維持するか、または利用可能なエネルギーが不十分であることに起因してサイクル
を正確に完了できないリスクがあることを知りながら、可能な限り補正サイクルを開始す
る、ことができる。
【0102】
利用可能なエネルギーレベルが補正サイクルにとって十分な場合、管理回路134は、
第1の代替的実施形態では、まず、外部補正信号SExtを保留にしているBLEユニッ
トを起動させる。BLEユニットは、典型的には、正確な周波数で受信した外部信号が、
規格フォーマットであるかどうかを確認するためのリソースを有するが、信号が正確な周
波数で受信され、正確なフォーマットを有するかどうか、BLEユニットが受信した信号
を分析するため、制御論理回路60Aを起動する必要がある場合がある。この場合、分析
は、デジタル補正信号SCorに対する分析であり、デジタル補正信号SCorは、必要
な場合、受信した信号が適切ではない、または不完全であることを示す。したがって、第
2の代替的実施形態では、管理回路は、BLEユニットおよび制御論理回路を直接起動す
るが、好ましくは、補正デバイスの他の要素を起動しない。補正信号を受信しないまたは
正しく受信しない場合、管理回路134は、代替的実施形態では、(直接または制御論理
回路60Aを介して)携帯電話にこのことを通知し(したがって、制御論理回路60Aは
、通知のために起動させる必要がある)、更なる時間期間内で新たな外部補正信号を待機
するか、または新たなウェークアップ信号を保留にする「スタンバイ」モードに戻ること
ができる。計時器が、ユーザに見える信号を与える電子または電気機械手段を備える別の
代替的実施形態では、管理回路134は、この手段を使用し、管理回路134が外部補正
信号を受信していないかまたは正しく受信していないために補正を実行できないことをユ
ーザに通知し得る。
【0103】
上述した第1の代替的実施形態では、BLEユニットが外部補正信号SExtを正確な
周波数で、正確なフォーマットで受信した場合、BLEユニットは、少なくとも1つの制
御論理回路60Aを起動し、補正サイクルの分析および継続のためにデジタル補正信号を
制御論理回路60Aに供給する。デジタル信号SCorが予期される時間情報、特に補正
すべき時間誤差TErr、および遅れまたは進みを補正すべきかどうかを示す数学記号「
+/-」(この最後の情報は二元的であるため、この目的で単一ビットを提供し得る)を
含む場合、管理回路134は、補正デバイス全体および制動デバイスの電力供給回路26
Cを起動する。
【0104】
第4の実施形態は、第1の実施形態に類似した第1の遅れ補正モードの実装形態によっ
て、および上述したが第1の実施形態には実装されていない第1の進み補正モードの実装
形態によって特徴付けられるため、本明細書に提供されるいかなる補正も、補正期間中に
周期的制動パルスのシリーズによって実行される。1つの主な代替的実施形態が、同じ持
続時間Tpを有する制動パルスの全てを提供する。したがって、制動パルスの持続時間を
決定するために1つのタイマー64だけが必要であり、このタイマーは、
図12に示す代
替的実施形態では、電力供給回路26C内に構成される。このタイマーは、電圧源140
と、バランスに作用する制動部材24Cとの間に置かれたスイッチ138に起動/作動信
号S
Actを提供する。制動部材24Cは、例えば、第1の実施形態に対して示した他の
実施形態の圧電ストリップ(
図1)に類似している。したがって、スイッチ138は、制
動デバイスを形成するアクチュエータへの電力供給を制御する。タイマー64は、スイッ
チングデバイス66Aから第1の制御信号S1
Cmdを受け取り、スイッチングデバイス
は、論理回路60Aによって制御され、その結果、第1の制御信号は、3つの異なる周波
数F
SUP、F
INF、およびF0cをそれぞれ有する、提供される3つの周期的デジタ
ル信号S
FS、S
FI、およびS
F0cのうちの1つの周期的デジタル信号によって選択
的に形成される。周期的デジタル信号は周期的にタイマーを選択された周波数にリセット
し、それに応答して、このタイマーは、スイッチ138を瞬間的に導通させて、この選択
された周波数における周期的制動パルスのシリーズを生成させることにより、アクチュエ
ータを持続時間Tpにわたり周期的に起動させる。
【0105】
デジタル補正信号が、時間誤差が補正すべき遅れに対応することを示す場合、または制
御論理回路自体が外部補正信号内に含まれる情報に基づきそのような補正すべき時間誤差
を決定したことを示す場合、論理回路60Aは、選択された周波数FSUPの関数として
、対応する補正期間PRCorを、または現在の補正サイクル中に周波数FSUPにて生
成される周期的制動パルスの数を決定する。これを実現するために、論理回路は、この計
算に関して、上述した式を使用する。設定点周波数より大きい補正周波数FSCorをも
たらす周波数FSUPにて制動パルスのシリーズを適用するために、論理回路は、上述し
た周波数発生器62を使用して、この目的のために制御論理回路によって制御されるスイ
ッチ66Aを介して、周期的デジタル信号SFSを周波数FSUPにてタイマー64に提
供する。
【0106】
デジタル補正信号が、時間誤差が補正すべき進みに対応することを示す場合、または制
御論理回路自体が、外部補正信号内に含まれる情報に基づきそのような補正すべき時間誤
差を決定したことを示す場合、論理回路60Aは、選択された周波数FINFの関数とし
て、対応する補正期間PACorを、または現在の補正サイクル中に、上記にて定義され
た周波数FINFにて生成される周期的制動パルスの数を決定する。これを実現するため
に、論理回路は、この計算に関して、上述した式を使用する。設定点周波数より小さい補
正周波数FICorをもたらす周波数FINFにて制動パルスのシリーズを適用するため
に、論理回路は、周波数発生器142を使用して、この目的のために制御論理回路によっ
て制御されるスイッチ66Aを介して、周期的デジタル信号SFIを周波数FINFにて
タイマー64に提供する。
【0107】
一般に、第1の進み補正モードの実装を可能にするために、電子制御ユニット28Bは
、受信機ユニットによって受信された外部補正信号が、補正すべき表示された時間進みに
対応する場合に、周波数発生器によって周波数FINFにて提供される周期的デジタル信
号から導かれた制御信号を、補正期間中に制動デバイスに提供して、制動デバイスを起動
させて、制動デバイスに、機械式共振器に適用される周期的制動パルスのシリーズを周波
数FINFにて発生させることができる、ように構成されている。周波数FINFにおけ
る周期的制動パルスのシリーズが、補正期間中に同期フェーズをもたらすことができ、機
械式共振器の振動が、機械式共振器に提供される設定点周波数F0cよりも小さい補正周
波数FICorに同期するように、この周波数FINFが提供され、制動デバイスが構成
される。補正期間(の持続時間)、したがって前述の周期的制動パルスのシリーズにおけ
る周期的制動パルスの数は、補正すべき進みによって決定される。
【0108】
第4の実施形態の補正デバイスは、機械式共振器を、補正期間の始めの制動パルスの間
に、脱進機との、共振器の角度結合ゾーン内で、または一般には上述した角度安全ゾーン
内で停止させることにより、機械式共振器を持続的に停止させるリスクなしで、実行され
る補正の精度を上げ、更に比較的大きい制動トルクを印加することを可能にするための強
化を、特に、設定点周波数から比較的離れた周波数での補正に対して含む。この強化によ
れば、計時器は、少なくとも1つの特定の位置を通る、振動する機械式共振器の通過を決
定するためのデバイスを備え、このデバイスは、機械式共振器の特定の位置を決定して、
振動する機械式共振器が前述の特定の位置にある特定の瞬間を電子制御ユニットが決定す
ること、したがって共振器のフェーズを決定することを可能にする。更には、電子制御ユ
ニットは、補正期間の開始時に生じて、この制動デバイスと機械式共振器の間の第1の相
互作用を生成する、制動デバイスの第1の起動が、前述の特定の瞬間の関数として始動さ
れるように構成されている。
【0109】
上述した強化の有利な代替的実施形態によれば、そして
図12を参照すると、補正デバ
イスは周波数発生器144を更に備え、周波数発生器は、周期的デジタル信号S
F0cを
、共振器のために提供される設定点周波数F0cにて発生させることができるように構成
されている。電子制御ユニット28Bは、周期的デジタル信号S
F0cから導かれた制御
信号を、補正期間の直前の予備期間中に、制動デバイスに提供して制動デバイスを起動さ
せ、その結果、制動デバイスが周期的制動パルスの予備的シリーズを生成させ、それが設
定点周波数F0cにて機械式共振器に適用され得るように構成されている。この目的のた
めに、制御論理回路60Aは、発生器144に制御信号S
PPを供給する。周期的制動パ
ルスの予備的シリーズの間の、周期的制動パルスの持続時間Tpおよび振動する共振器に
印加される制動力は、この振動する共振器とそれに関連付けられた脱進機との結合ゾーン
に(θ
ZIとθ
ZIとの間)おいて、または好ましくは、結合ゾーンをカバーする既定の
安全ゾーン(θ
Secとθ
Secとの間)において、これら制動パルスのいずれも、振動
する共振器を停止させることができないように提供される(これらゾーンは上述されてい
る)。
【0110】
更には、周期的制動パルスの予備的シリーズの間の、周期的制動パルスの持続時間およ
び振動する共振器に印加される制動力は、少なくとも予備期間の終了時に、予備的同期フ
ェーズを生成するように提供され、機械式共振器の振動は(平均で)設定点周波数F0c
に同期されている。示される代替的実施形態では、電圧源140は可変であり、論理回路
60Aによって制御され、論理回路は電圧源に制御信号S2Cmdを提供し、その結果、
制動力を変化させるために、制動部材24Cに印加される電圧レベルを変化させることが
できる。したがって、予備期間中に、その後の補正期間中に印加されるものよりも弱い制
動力を印加することができる。制動力はまた、予備期間および/または補正期間の間に変
化させることができる。
【0111】
進みまたは遅れの補正を意図する補正期間は、予備期間に直接続く。より具体的には、
表示される時間を補正するための期間の始めにおける、周波数FINFまたはFSUPで
の第1の制動パルスの始動は、この第1の制動パルスが、前述した結合ゾーンをカバーす
る既定の安全ゾーンの外側で生じるように、予備期間の最後の制動パルスが始まった瞬間
に対して決定された時間間隔の後に生じる。この条件は容易に満足される。なぜなら、共
振器は、少なくとも予備期間の終了時には同期フェーズにあり、このことは、この予備期
間の最後の制動パルスの間に共振器が停止することを意味するからである。したがって、
回転方向の逆転は前述の最後の制動パルスの間に生じ、その結果、共振器の振動の新たな
半周期の始まりは、この最後の制動パルスの間に生じる。したがって、補正デバイスは、
振動フェーズをTp/2の精度で知ることができる(例えば3msの精度)。その結果、
前述の最後の制動パルス以降に、決定された時間間隔が経過した後であって、第1の制動
パルスが既定の安全ゾーンの外側にあることが確実な場合に、必要な補正に応じて周波数
発生器62または142を起動させることにより、前述した条件を満足する第1の制動パ
ルスを始動させる初期的な瞬間を制御論理回路が決定できるように、電子制御ユニットを
構成することができる。
【0112】
その上、前述の制動パルスが始動された瞬間と、この第1のパルスの間に、そして引き
続き、その後の補正期間中の周期的制動パルスの間に、振動する共振器に印加される制動
力は、補正周波数FI
CorまたはFS
Corにおける同期フェーズが好ましくは、第1
の制動パルスが印加されると直ぐに、または、第1の制動パルスが共振器を停止させよう
とせずに振動の振幅を低減させるように意図されている場合は第2の制動パルスが印加さ
れると直ぐに開始され、それにより、この同期フェーズが補正期間の持続時間の全体にわ
たって持続するように提供される。特定の代替的実施形態では、補正期間の第1の制動パ
ルスは、予備期間の最後の制動パルスが生じた瞬間の後に、必要な補正に応じて周波数F
SUPまたはF
INFの逆数に対応する時間間隔の後に生じる。別の特定の代替的実施形
態では、前述の時間間隔は、必要な補正に応じて、補正周波数FS
CorまたはFI
Co
rの2倍の逆数に、または、この周波数FS
CorまたはFI
Corの逆数に等しいよう
に選択される。共振器の振動フェーズを決定するために、利用可能なリソースを、具体的
には必要な補正を実行するために提供される制動デバイスを使用するという点で、上述し
た強化点は注目に値する。このフェーズを決定するために特定のセンサは必要ない。その
上、予備期間(一般に最大でT0c/4)によって有意な時間ドリフトが誘因されること
はない。
図12では、様々な周波数の発生器が別々に示されているが、単一のプログラム
可能な周波数発生デバイスを使用できることが分かる。
【0113】
図13~
図15を参照しながら、本発明による組立体150の第2の実施形態を以下で
説明する。組立体150は、第5の実施形態による計時器154と、本発明による組立体
の第2の実施形態による外部デバイス152と、を備える。計時器は、腕時計(以下、時
計と呼ぶ)であり、外部デバイスは、時計を所与の位置で受け入れるための凹部を備える
筐体を形成する。筐体152は、写真デバイス156を備え、写真デバイス156は、計
時器154が凹部内に正確に置かれた状態で蓋を閉鎖した際に計時器の表示全体の画像を
捕捉できるように、筐体の蓋内に配置される。
【0114】
筐体152は、様々な電子回路およびユニットを備える。この筐体は、
-光検出器のアレイによって形成される写真センサを備える写真デバイスと、
-写真デバイスによって捕捉された画像において、計時器の表示器の少なくとも1つの
決定された針の位置を決定できるように構成された画像処理アルゴリズム(このアルゴリ
ズムは、筐体と通信する外部サーバ内で処理し得ることを留意されたい)と、
-正確な実際時間を供給できる時間ベースと、
-第1の時間データと第2の時間データとの間の時間誤差を計算するためのアルゴリズ
ムであって、第1の時間データは、時間ベースによって実質的に前記所与の時間の瞬間で
供給される所与の時間の瞬間で表示器によって示され、写真センサおよび画像処理アルゴ
リズムを介して外部デバイスによって検出され、第2の時間データは、第1の時間データ
に対応する、アルゴリズムと、
-前記時間誤差に関係する情報を含む外部補正信号を送信する送信機と、
を備え、送信機は、図示する代替的実施形態では、BLEユニットによって形成される。
【0115】
筐体152は、電子表示器153と、正確な実際時間を定期的にまたは要求に応じて受
信できるようにする中央制御ユニットと、この目的(無線同期)のために設けられたアン
テナを介して正確な実際時間を受信可能な通信ユニット(RFユニット)、またはインタ
ーネットを介して正確な実際時間を受信するためのWIFIユニット、またはGPSユニ
ットと、を更に備える。筐体は、USB型プラグ又は他のプラグを介して電力供給または
充電し得る電源を更に備える。最後に、筐体は、特にフィットネスモジュールを備える時
計154のためのワイヤレス磁気誘導充電ユニットを備える。このワイヤレス充電ユニッ
トは、好ましくは、特に時計の電池56Aを充電可能にするため、時計を筐体内に置いた
際に時計に近く、時計の下にあるように、筐体の凹部に挿入される支持体内に配置される
。
【0116】
時計154は、様々な電子回路および要素を備える。上記で既に言及したことは、ここ
では再度詳細に説明しない。この時計は、特に時計が表示する時間を補正するための信号
を含め、様々な信号を受信するためのBLEユニット30Bと、制動デバイス22Cと、
を備える。以下で説明する電子制御ユニットから起動信号SActを受信する制動デバイ
ス22Cの構成要素は、上記で既に説明してある。この場合、時計154は、好ましくは
、磁気誘導によって(非接触手段によって)再充電される再充電可能な電池56Aと、図
12の時計を参照して上記で説明したものと同様の電力管理回路134Aと、を備える。
任意選択で、時計は、フィットネスモジュール156と、特にフィットネスモジュールに
関連付けられた電子表示器158と、を更に備え、電子表示器158は、時計外部の電子
デバイス、特に筐体152、携帯電話、またはあらゆる他の適切な電子デバイス、例えば
、コンピュータと通信するため、BLEユニットを使用し得る。
【0117】
時計154の電子制御ユニット28Cは、強化した代替的実施形態によれば、第1の遅
れ補正モードを実施可能であり、上記した第1の補正モードまたは第2の補正モードに従
って進みを補正可能であるように構成される。したがって、この電子制御ユニットは、制
御論理回路60Bを備え、制御論理回路60Bは、周波数F0c、FINF、ならびにF
1SUP及びF2SUPで周波数発生デバイスと共にスイッチングデバイス66Bを制御
する。F1SUP及びF2SUPは、上記で定義した周波数FSUPのために選択される
2つの異なる値を有する。この周波数発生デバイスは、本発明の計時器の第4の実施形態
の範囲内で既に説明した予備期間を実施するための周波数F0cにおける発生器144、
第4の実施形態の範囲内で同様に説明した周波数FINFにおける発生器142、ならび
にそれぞれの周波数F1SUP及びF2SUPを有する2つの周期的デジタル信号SFS
1およびSFS2を供給する2つの発生器62Aおよび62Bのそれぞれから構成される
。言い換えると、周波数発生デバイスは、表示された時間の遅れを補正するように、周波
数F1SUP及びF2SUPで周期的デジタル信号を選択的に発生させ、制動デバイスを
制御可能であるように構成される。周波数F1SUP及びF2SUPは、第1の補正モー
ドにより遅れを補正するための補正周波数FSCorが、それぞれ、2つの周波数F1S
UP及びF2SUPに対して、2つの異なる値F1CorおよびF2Corを取ることが
できるように提供され、補正周波数F2Corは、補正周波数F1Corよりも高い。
【0118】
周波数F1SUPは、有利には、補正すべき遅れが、絶対値の形で所与の値よりも低い
場合に選択される一方で、周波数F2SUPは、この遅れが、この所与の値以上である場
合に選択される。したがって、周波数FSUPは、補正すべき遅れの値の関数として少な
くとも2つの異なる値F1SUPおよびF2SUPを取ることができる。発生器の起動に
応じて、制御信号S1Cmdは、周期的デジタル信号SF0c、SFI、SFS1および
SFS2の1つによって形成される。この信号S1Cmd自体は、起動信号SActを直
接形成する。タイマーは、制動パルスの持続時間を決定するために提供されないことが分
かる。というのは、この代替的実施形態では、周期的デジタル信号SF0c、SFI、S
FS1およびSFS2は、論理-高(「1」)と論理-低(「0」)との間で決定された
デューティーサイクルによってこの持続期間を定義することが意図されるためである。し
たがって、例えば、論理-高の持続時間は、各制動パルスの持続時間を決定し、スイッチ
138は、供給される周期的デジタル信号の立ち上がりエッジで閉鎖され(トランジスタ
がオンになる)、この周期的デジタル信号の立ち下がりエッジで開放される(トランジス
タがオフになる)。
【0119】
更には、電子制御ユニット28Cは、
図2を参照して説明したものと同様のタイマー7
0を備え、本発明による時計の第1の実施形態で既に説明した第2の補正モードの実施を
可能にする。このタイマー70は、制御信号S1
Cmdを更に受信する「OR」論理ゲー
ト166を介して制動デバイスを起動する制御信号S3
Cmdを供給する(論理ゲートに
よって動作されるスイッチは、スイッチ66Bに組み込むことができ、第1の補正モード
と第2の補正モードとの間を区別するのに
図15の図に組み込まれたこの論理ゲートを不
必要にすることが分かる)。したがって、第1の補正モードまたは第2の補正モードのい
ずれかを、進みを補正するために選択し得る。
【0120】
補正すべき進みが所与の値未満である場合、第1の補正モードの選択が有利である一方
で、補正すべき進みがこの所与の値以上である場合、第2の補正モードが選択される。第
1の進み補正モードは、電気機械式アクチュエータ型(例えば、
図1の圧電アクチュエー
タ22A)の制動デバイスが電力の不在下で単一の安定位置を有する第2の補正モードと
比較して、それほど電気エネルギーを消費しないことを可能にするため、第1の補正モー
ドまたは第2の補正モードの選択は、再充電可能な電池56Aのレベルにも依存し得る。
同様に、第1の遅れ補正モードは、先験的に、補正周波数と設定点周波数との間が比較的
高い比率の場合、より強大な制動トルクを必要とするため、発生器62Aまたは発生器6
2Bの選択も、再充電可能な電池のレベルに依存し得る。
【0121】
計時器の第5の実施形態は、振動する共振器の時間ドリフトまたは不正確な手動時間設
定動作からもたらされる、表示される時間誤差を補正する手段を備えるだけでなく、季節
時間変更の間、適切な瞬間で、表示される時間の変更(標準時間から夏時間への変更、ま
たは夏時間から標準時間への変更)を可能にする手段も備える。この目的で、時計154
は、内部クロック回路162と、プログラマブルカウンタ160と、を備える。外部デバ
イス(
図1の筐体152または携帯電話40)上にインストールされたアプリケーション
は、時計と通信し、時計の補正デバイスを起動可能にするために、「季節時間の変更」機
能を備え、時計154が、予定される時間変更の夜に1時間(もしくは適切な場合、半時
間)前進または1時間後退するように時計154をプログラムする。この目的で、外部デ
バイスは、時計と通信するために設けられた送信機を介して、季節時間の変更に関係する
補正信号をこの時計に送信できるように構成される。この補正信号は、予定される時間の
ジャンプおよびジャンプの方向(+/-時間)、ならびに時間変更が予定される夜及び時
間までの残り時間(例えば、15日、8時間および20分といった期間)の指示を含む。
したがって、外部デバイスは、正確な実際時間を知るのに必要なリソースだけでなく、日
付を知るのに必要なリソースも備える。「季節時間の変更」機能が起動される時間の瞬間
の日付に基づき、アプリケーションは、上述の残り時間を容易に計算する。
【0122】
時計154が、外部補正信号を受信し、この信号が、来たるべき時間変更に関係するこ
とを示す場合、制御論理回路60Bは、論理回路からのリセット信号の受信後、予定され
る時間変更までカウンタ160が残り時間を測定するようにカウンタ160をプログラム
する。代替的に、時間測定の開始は、カウンタがプログラムされた後、クロック回路16
2が起動されるとすぐに行われる。この起動は、外部補正信号の受信後、迅速に行われる
。予定される夜に季節時間の変更を実行するため、時計154は、筐体152内の充電ユ
ニットによって再充電し得る利点を利用し得る。より詳細には、時間変更は、典型的には
、真夜中すぎの夜に行われるように予定されるため、ユーザは、当該夜に時計を筐体内に
置き、時計電池の再充電を起動させることができる(この充電が自動で行われない場合)
。このことにより、時計が、比較的長時間の補正を行うのに十分なエネルギーを有するこ
とを保証する。そのような補正の場合、時計は、補正期間PACorがもたらされた後、
タイマー70を起動することによって第2の進み補正モードを選択するか、または「1時
間」のジャンプに対応する遅れのために計算された補正期間PRCorのために、発生器
F2SUPを起動することによって発生器F2SUPを選択する。例えば、比率RS=F
2Cor/F0cは、1.10超、好ましくは、1.15超であるように提供される。上
記で示したように、第1の遅れ補正モードは、例えば、6時間の補正期間内で1時間の補
正を可能にする。5時間内で1時間補正することさえ可能である。
【0123】
制動デバイスは、上記で説明したものとは異なる種類のアクチュエータ、特に、機械式
共振器を直接制動するように設けられた磁石-コイル結合システムを備える電磁型アクチ
ュエータによって形成することができ、少なくとも1つの磁石は、共振器のバランスまた
はバランスの支持体に締結され、少なくとも1つのコイルは、この支持体または共振器の
バランスによって支持されることを留意されたい。
【0124】
本発明による計時器の第6の実施形態を
図16~
図18を参照して以下で説明する。こ
の第6の実施形態は、本明細書でより詳細に説明されることになる第2の遅れ補正モード
に加えて、先行する実施形態において前述した第2の進み補正モードを実装することが可
能なように構成されている。
【0125】
第6の実施形態による計時器170を
図16に部分的に示し、ここでは機械式ムーブメ
ントの機械式共振器14Aのみを示す。表示される時間を補正するためのデバイスを除い
ては、計時器の他の要素は、
図1に示す要素に類似している。機械式共振器は、バランス
ばね15に関連付けられるバランス16Aを備える。バランスは、その周辺にて放射状に
延びる突出部190を有する外縁20Aを備える。バランスの他のいかなる要素も、突出
部190の端部の半径方向位置まで延びていない。
【0126】
バランスは、光学センサ192から生じる光に対して異なる光反射係数を有するか、ま
たは単にこの光に対して異なる反射を有する、非対称の連続する棒によって形成されたマ
ーク191を備え、連続する棒は、具体的には、異なる幅の連続する少なくとも2つの黒
い棒であって、白い棒によって分離され、2つの黒い棒のうちの一方の幅が、他方の黒い
棒と白い棒の幅の合計に等しい。したがって、棒は、マーク191の中央に遷移部を有す
る一種のコードを形成すると理解される。黒い棒と白い棒の代わりに、他の色を使用する
ことができる。代替的実施形態では、黒い棒は外縁の光沢のない区域に対応するが、白い
棒はこの外縁の光沢のある区域に対応する。黒い棒はまた、傾斜した面を有する、外縁内
の切欠きに対応し得る。したがって、複数の代替的実施形態が可能である。マーク191
は、その説明において、外縁の上部に示されているが、示される代替的実施形態では、光
学センサがバランス16Aの主平面上に構成されているので、マークは外縁の外側面に位
置していることに留意すべきである。別の代替的実施形態では、マークは、示されるよう
に外縁の上面または底面に位置し、したがってセンサは、このマークを照射するために9
0°旋回されている。
【0127】
光学センサ192は、振動する共振器がその中立位置(突出部190にとって角度位置
「0」に対応する)を通る通過を検出し、この中立位置を通る各通過の間に、バランスの
運動方向を判定するように構成されている。この光学センサは、外縁20Aに向かって光
線を放出するエミッタ193であって、共振器がその中立位置を通過する時に、マーク1
91を照射するように構成されている、エミッタ193と、マークにおいて外縁によって
反射された光線の少なくとも一部を受光するように構成された受光器194と、を備える
。したがって、光学センサは、バランスの特定の角度位置を検出するためのデバイスであ
って、振動する機械式共振器が特定の角度位置にある特定の瞬間を電子制御ユニットが決
定することを可能にするデバイスを形成し、更に振動する共振器が特定の角度位置を通っ
て通過する間に、バランスの運動方向を決定するためのデバイスをも形成する。共振器の
位置および運動方向を検出するための他のタイプの検出器、具体的には、容量検出器、検
出器、または誘導検出器が、他の代替的実施形態で提供され得る。
【0128】
更には、計時器170は、双安定の移動する当接部を有する電気機械式デバイス174
によって形成された、共振器を制動するためのデバイスを備える。代替的実施形態が、非
限定的実施例として
図16に提供される。電気機械式デバイス174は、寸法が小さい、
時計ステッピングモータータイプの電気機械モーター176を備え、電気機械モーター1
76は電力供給回路178によって給電され、電力供給回路178は制御回路を備え、電
力供給回路178が制御信号S4
Cmdを受け取った時に、3つの電気パルスのシリーズ
を生成するように構成され、電気パルスのシリーズはモーターのコイルに提供され、それ
により、モーターのローター177が電気パルス毎に1ステップずつ、すなわち半回転ず
つ前進する。3つの電気的パルスのシリーズは、ローターを連続的またはほぼ連続的な形
で急速に駆動するために提供される。ローターのピニオンは、中間歯車180と噛み合い
、中間歯車180は、ローターのピニオンの直径の3倍に等しい直径を有し第1の両極性
の永久磁石182を固定して保持する歯車と噛み合っている。前述のピニオンと、磁石1
82を保持する歯車との間の直径比率を想定すれば、3つの電気パルスのシリーズの間に
、歯車は半回転する。したがって、第1の磁石は、第1の静止位置と第2の静止位置とを
有し、第1の磁石は、第1の静止位置の磁気極性とは反対の磁気極性を有する(用語「静
止位置」は、モーター176が3つの電気的パルスのシリーズを命令された通りに実行し
た後に、そのローターが次いで回転を止めた後に、磁石182が置かれる位置を意味する
と理解される)。
【0129】
その上、アクチュエータ174は、機械式ムーブメントに締結された軸185を中心と
して旋回し、2本のペグ188および189によってその回転が制限されている、双安定
レバー184を備える。双安定レバーは、このレバーのヘッドを形成するその自由端部に
第2の両極性磁石186を備え、この磁石は移動することができ第1の磁石182と実質
的に整列することができ、これら2つの磁石の磁気軸は、第1の磁石がその2つの静止位
置のいずれかにある時に実質的に同一直線上にあるように設けられている。したがって、
第2の磁石186に対して、第1の磁石の第1の静止位置は磁気吸引の位置に対応し、第
1の磁石の第2の静止位置は磁気反発の位置に対応する。制御信号S4Cmdが、3つの
電気パルスのシリーズを実行するように電力供給回路を起動させる毎に、第1の磁石は半
回転し、レバーは、共振器のバランスと相互作用しない安定位置から、バランスと相互作
用する安定位置へと交互に通過し、このように、レバー184は、突出部190に対する
当接部を形成し、共振器が振動する時、およびインパクト時点におけるバランスの回転方
向に関わらず突出部がこのヘッドに至った時に、このレバーのヘッドに対して突出部が当
接する。
【0130】
相互作用がない位置では、共振器がその使用可能な動作範囲にある振幅にて振動する時
に、移動するレバーは、突出部190が横切る空間の外側にある。しかしながら、相互作
用の位置では、移動するレバーは、突出部が交差するこの空間の内側に部分的に位置し、
したがって共振器に対する当接部を形成する。用語「安定位置」は、レバーをその2つの
安定位置の間で作動させるために使用されるモーター176からのいかなる電力供給もな
い状態において、レバーが両方向に維持される位置を意味すると理解される。したがって
、レバーは、共振器に対して双安定の移動する当接部を形成する。したがって、このレバ
ーは、共振器に対して格納式の停止部材を形成する。アクチュエータ174は、モーター
176への電力供給を維持せずに、相互作用しない位置および相互作用する位置にレバー
が留まることができるように構成されている。
【0131】
その相互作用する位置にある停止部材と、突出部とは、バランスの中立位置とは異なる
、振動する共振器のバランスに対する第1の角度停止位置θBを定め、共振器の各振動周
期の2つの半周期のうちの第1の決定された半周期の第2の1/2半周期の間に、共振器
の中立位置に対応するその角度位置「0」から突出部が到達した時に、この第1の角度停
止位置において突出部は停止部材に対して当接する。更には、θBは、振動する機械式共
振器の使用可能な稼働範囲における最小振幅未満となるように提供される。その上、上述
したように、角度θBは、振動する共振器が、振動する共振器と機械式ムーブメントの脱
進機との結合ゾーンの外側で停止部材によって停止されるように提供される。その相互作
用する位置にある停止部材と、突出部とは、各振動周期の2つの半周期のうちの第2の半
周期の第1の1/2半周期の間に、共振器の最も端の角度位置から突出部が到達した時に
、振動する共振器のバランスに対する、第1の角度停止位置に近いがそれよりも大きい第
2の角度停止位置を更に定める。この第2の角度停止位置もまた、振動する機械式共振器
の使用可能な稼働範囲における最小振幅未満となるように提供される。
【0132】
別の代替的実施形態では、突出部190が外縁からまたはバランスのアームの1つから
軸方向に延び、したがって、双安定の電気機械式デバイス174は、双安定レバーがバラ
ンスの回転軸と平行な平面内で運動するように構成されていることが分かる。この、他の
代替的実施形態では、2つの磁石182および186のそれぞれの磁化軸は軸方向であり
、実質的に同一直線上のままであり、したがって、磁石182はレバーのヘッドの下方に
構成されている。双安定の電気機械式デバイスのこのような構成に、外縁から半径方向に
延びる突出部を、示される代替的実施形態の範囲内で設けることもできることが分かる。
別の代替的実施形態では、共振器の突出部は、バランスのスタッフの周りで、特にこのス
タッフによって支持されたまたはスタッフと一体に形成されたプレートの周辺で構成され
得ることに留意すべきである。代替的実施形態では、そのようなプレートは、脱進機のピ
ンを保持するプレートである。
【0133】
最後に、計時器170は電子制御ユニット196を備え、制御ユニット196は光学セ
ンサ192に関連付けられ、電気機械式デバイスの電力供給回路178を制御するように
構成され、ユニット196は電力供給回路178に制御信号S4Cmdを提供する。電子
制御ユニットは、制御論理回路198と、アップダウンカウンタ200と、クロック回路
202とを備える。この制御ユニット、および外部補正信号SExtを受信する受信機2
04は、電気機械式デバイス174に関連付けられて、計時器の表示器によって表示され
る時間の遅れを補正するための後述する第2のモードに加えて、第2の進み補正モードを
実装することを可能にする。表示される時間の「進み」および「遅れ」は、本発明に特定
のアプリケーションを備える外部デバイスによって検出される誤差、および表示される時
間において前進または後退するジャンプの両方を意味すると理解されたい。このジャンプ
は、上記で説明した季節時間の変更に関するものであるか、計時器のユーザが一方の時間
帯からもう一方の時間帯に移動した際の時間帯の変更を実行するかにかかわらず、外部補
正信号SExtを介して外部デバイスによって計時器に供給することを必要とする。
【0134】
この第6の実施形態に実装された第2の補正モードを実装するために、電子制御ユニッ
ト196は、計時器によって表示される時間において補正されるのが遅れかまたは進みか
に応じて、停止部材(双安定レバー184)を選択的に作動させることができるように、
電気機械式デバイス(「アクチュエータ」または「電気機械式アクチュエータ」とも称さ
れる)を制御するように構成され、その結果、この停止部材は、それぞれ、突出部190
が、振動周期の前述の第1の半周期の前述の第2の1/2半周期中に前述の第1の角度停
止位置θBに到達する前に、および突出部190が、振動周期の前述の第2の半周期の前
述の第1の1/2半周期中に前述の第2の角度停止位置に到達する前に、その相互作用し
ない位置から、その相互作用する位置へと変位する。
【0135】
一般に、少なくとも部分的に進みを補正するために(正の時間誤差)、電気機械式デバ
イスは、停止部材が作動されて、第1の1/2半周期において機械式共振器を停止させる
場合、停止部材は、突出部がこの停止部材に当接した後に、この第1の1/2半周期に特
有の、固有振動運動を、機械式共振器が継続することを一瞬の間だけ防止し、それにより
、第1の1/2半周期におけるこの固有振動運動は一瞬の間だけ中断され、停止部材の後
退によって一定の遮断時間が終了した後に継続するように、構成されている。好ましくは
、上述したような双安定の電気機械式デバイスのケースは、本発明による計時器に供給さ
れる補正外部信号によって決定される正の時間誤差の実質的に全てを、補正すべき進みに
実質的に等しい補正期間を定める連続的遮断期間中に、補正することを提供する。この目
的のため、記載される代替的実施形態では、振動周期の前述の第2の半周期(共振器がそ
の中立位置を通過する前に突出部190がレバー184のヘッドに到達する半周期)の間
に、すなわち、その中立位置を通る共振器の通過の検出中に振動運動の方向を検出するよ
うに意図された構成のおかげで、光学センサ192によって検出されるこの第2の半周期
の間に、共振器がその中立位置を通過する瞬間の後に、電子制御ユニットは、時間T0c
/4が到達するまで待ち、アクチュエータがそのモーターを介して、レバー184を、そ
の相互作用しない安定位置から、その相互作用する安定位置へと駆動するように、アクチ
ュエータを起動させ、レバーのヘッドが突出部との当接部を形成する。例えば、90°~
120°の範囲にある角度停止位置の値に応じて、T0c/4未満の時間が、例えばT0
c/5が提供されて、3つの電気パルスのシリーズを始動させてモーター176の駆動を
可能にし、それにより、そのローターを1回転半だけ急速に回転させることができ、した
がって、磁石182によって発生された磁束の方向を逆転させることにより、レバーがそ
の2つの安定位置の間で旋回することを可能にする時間間隔が延長される。後者の場合、
補正期間中に共振器が遮断されることが意図されている第1の1/2半周期に先行する半
周期において、突出部が確実に角度停止位置を実際に超えていなければならない。
【0136】
一般に、少なくとも部分的に遅れ(負の時間誤差)を補正するために、振動周期の少な
くとも1つの前述の第1の半周期の第2の1/2半周期において(その半周期は、共振器
がその中立位置を通過した後に、突出部190がレバー184のヘッドに到達する半周期
である)、機械式共振器を停止させるために、停止部材が作動される場合、停止部材はし
たがって、共振器を遮断することなく、しかしこの共振器の振動運動の方向を反転させる
ことにより、この第2の1/2半周期を早期に終了させ、それにより、機械式共振器が、
突出部と停止部材との衝突により瞬時にまたはほぼ瞬時に停止された後に、引き続き半周
期を直ぐに開始するように、電気機械式デバイスが構成されている。したがって、第2の
遅れ補正モードの範囲において、共振器の位置および運動方向を検出するための検出器と
、電子制御ユニットとは、受信機ユニットによって受信した外部補正信号が、表示される
時間での遅れに対応する毎に、アクチュエータを起動させることができ、それにより、ア
クチュエータがその停止部材を作動させて、振動する共振器の突出部が、機械式共振器の
振動の複数の1/2半周期においてこの停止部材に対して当接して、機械式共振器を遮断
させることなくこれら1/2半周期の各々を早期に終了させるように、1/2半周期の各
々が、中立位置を通る共振器の通過に追従する、ように構成されている。前述の複数の1
/2半周期における1/2半周期の数は、補正される遅れによって決定される。
【0137】
図17および
図18に示す好ましい代替的実施形態では、電子制御ユニットおよびアク
チュエータは、少なくとも部分的に遅れを補正するために、振動する共振器が、角度停止
位置に対して、角度方向で中立位置の側に位置している時に、レバーがその相互作用しな
い位置からその相互作用する位置へと作動された後から、振動する機械式共振器の突出部
がレバーのヘッドに対して複数回、周期的に当接する補正期間であって、レバーがその相
互作用する位置に維持されている補正期間の持続時間は補正すべき遅れによって決定され
る、補正期間が終了するまで、レバーは、その相互作用する位置に維持される。レバーの
、その相互作用しない位置から、その相互作用する位置への旋回は、好ましくは、中立位
置を通る通過を検出した直後であって、よって突出部が停止角度θ
Bに到達する前に、レ
バーがその相互作用する位置に位置している(そこにおいて、突出部との衝突が生じるこ
とが意図され、この第1の半周期は、バランスの回転方向の検出により検出される)前述
の第1の半周期、または、中立位置を通る通過を検出した直後における、前述の第2の半
周期(やはり、バランスの回転方向の検出により検出される)であって、この第2の代替
的実施形態は、レバーを作動させるのに、より多くの時間を可能にし、レバーをその相互
作用する位置に安定した形で配置することを可能にする、第2の半周期(停止角度は定義
により180°以下である)、のいずれかで生じ得る。例えば、θ
B=120°であり、
共振器の自由振動の振幅がθ
L=270°である場合、第2の代替的実施形態では、レバ
ーのヘッドによって定義される回転軸に対する角度θ
Tが約10°に等しい場合、角度「
0」と、240°(360°-120°)を僅かに下回る角度、すなわち230°、との
間の回転に対応する時間間隔が確保されて、レバーの旋回が実行され(第2の半周期にお
いて、突出部の位置を越えることによりバランスを遮断することがないように)、一方、
第1の代替的実施形態では、角度「0」と120°との間の回転だけに対応する時間間隔
が得られる。θ
L<360°-θ
B-θ
Tであれば、第2の代替的実施形態では、レバー
の旋回のために、より多くの時間が利用可能であることが分かる。
【0138】
一般に、遅れ補正期間の持続時間を決定するために、電子制御ユニットは光学センサに
関連付けられた測定回路を備え、この測定回路は、所与の周波数にてクロック信号を提供
するクロック回路と、振動する共振器の時間ドリフトを、その設定点周波数に対して測定
することを可能にする比較器回路と、を備え、測定回路は、機械式共振器の時間ドリフト
に対応する、補正期間の始めからの時間間隔を測定できるように構成されている。電子制
御ユニットは、前述の時間間隔が、外部補正信号によってもたらされた時間誤差に等しく
なるか、またはそれよりも僅かに大きくなると直ぐに、補正期間を終えるように構成され
ている。
【0139】
図16に記載されている代替的実施形態では、測定回路は、周期的デジタル信号を周波
数F0c/2にて提供するクロック回路202と、アップダウンカウンタ200(リバー
シブルカウンタ)とを備える。このアップダウンカウンタは、その「-」入力において、
クロック回路の周期的信号(このカウンタを、設定点周期T0c=1/F0c毎に、2単
位ずつ減少させる)を受信し、その「+」入力において、共振器14Aがその中立位置「
0」を通って通過する毎に、パルスまたはロジック状態の変化を含む、光学センサ192
からのデジタル信号を受信する。そのような通過は、振動する共振器の半周期毎に生じる
ので、カウンタ200は振動周期毎に2単位ずつ増加する。したがって、カウンタ(整数
M
Cb)の状態は、クォーツ発振器の精度を有するクロック回路によって決定される設定
点周波数に対する、機械式共振器の時間ドリフトを表す。整数M
Cbは、設定点周波数で
の振動の場合に対して反転可能なカウンタがリセットされた初期的な瞬間からの、共振器
によって実行される追加の半周期の数に対応する。
【0140】
制御論理回路198は、共振器がその中立位置を通る通過と、これら通過の各々におけ
る振動運動の方向とを、この論理回路が決定することを可能にするデジタル信号を、光学
センサ192から受信する。所与の遅れを補正するために、共振器がその中立位置を通る
通過が、上述したように検出された後に、制御論理回路は、一方では、アクチュエータ1
74を起動させて、レバーをその相互作用する位置に作動させ、他方では、補正期間の始
まりを定めるクロック回路202およびアップダウンカウンタ200を起動させる。代替
的実施形態では、このリセットは、アクチュエータ174に電力を供給してレバーを旋回
させる前であるが、電子制御ユニット196および光学センサ192が起動された後に実
施され得ることに留意すべきである。代替的実施形態によれば、クロック回路のリセット
は、この目的でもたらされない。他の代替的実施形態では、光学センサは、他のタイプ、
例えば磁気タイプまたは容量タイプのセンサで置換される。特定の代替的実施形態では、
その中立位置を機械式共振器が通る通過を検出する検出器は、バランスのピンと、機械式
ムーブメントの脱進機を形成するパレット-レバーのフォークとの間のインパクトによっ
て発生する音響パルスを検出できる小型化された音響センサ(MEMSタイプのマイクロ
ホン)によって形成される。
【0141】
負の時間誤差TErr(所与の遅れ)の設定点周波数F0cでの半周期の数は-TEr
r・2・F0cに等しい。したがって、アップダウンカウンタの数MCbがこの値に達す
るか、またはこの値を僅かに超える(この値は、必ずしも整数であるとは限らないので)
と直ぐに、所与の遅れが修正され、表示される時間は再び正確である(したがって、実際
時間が精密に、具体的には1秒の精度で与えられる)。したがって、制御論理回路は、カ
ウンタの状態を値-TErr・2・F0cと比較することができるように、そして、数M
Cbがこの値以上であることを検出すると直ぐに、アクチュエータへの電力供給回路17
8を制御して、アクチュエータが、レバーを、その相互作用する安定位置から、その相互
作用しない安定位置へと作動させることにより、補正期間を終了させることができるよう
に構成されている。
【0142】
図17および
図18は、それぞれ、上述した好ましい代替的実施形態の2つの特定の極
端なケースについて、所与の遅れを補正するための期間の始めにおける、共振器14Aの
振動を示す。
図17は、共振器の運動エネルギーが、各インパクトの間に、バランスの突
出部と当接部のヘッドとの間で完全に吸収されるケースに関する。特に、自由振動210
は、引き続く第1の半周期において、共振器がその中立位置を通る通過の時点(突出部1
90の位置「0」)で時間t
0を検出する前に、第2の自由半周期A2
Lを有し、時間t
0は、所与の遅れを補正するための期間の開始を示す。レバーは、時間t
0の直後に、そ
の相互作用する位置に変位する。突出部とレバーとの間の第1のインパクトの後に、比較
的大きい正の位相差DP1が、架空自由振動211と振動212との間に得られる。その
時、安定フェーズが確立され、そこでは、振動212は、各振動周期の第1の半周期A1
の第2の1/2半周期において、停止部材による先行する共振器の停止により、架空自由
振動213に対して短縮され、したがって、その結果、DP1よりも小さい正の位相差D
P2が得られる。振動212の第2の半周期A2は、レバーによって損なわれることはな
い。
【0143】
図18は、突出部とレバーのヘッドとの間の強いインパクトまたは弾性衝突の特別な場
合に関する。この場合、インパクトの間に運動エネルギーの散逸がなく、振動運動の方向
の反転だけが存在すると想定すれば、共振器の運動エネルギーは、各インパクトの間は保
持される。したがって、補正周期中の振動216の振幅は、各振動周期に対して、自由振
動210の振幅と、したがって架空自由振動217の振幅と同一のままである。時間t
0
の後、T0/2よりも遥かに小さい持続時間T2を有する半周期A1*およびA2*を有
する安定な位相が確立されて、各振動周期において、比較的大きい正の位相差DP3が発
生する。弾性衝突を得るために、レバーは一定の弾性を有すると考えることができ、具体
的にはレバーの本体および/またはヘッドは、バランスの運動エネルギーを一瞬の間、吸
収し、振動運動が反転したすぐ後に、それを再分配するように、一定程度の圧縮に曝され
ることが可能な弾性材料によって形成される。そのような場合、振動216は停止角θ
B
を僅かに超えることになる。別のより精巧な代替的実施形態では、バランスの外縁上に弾
性的に取り付けられているのは突出部である。例えば、突出部は、外縁内に機械加工され
た円形の滑り面内に構成されたスライドを形成する基部を有し、突出部がその角度位置「
0」に位置する時には、弾性要素、具体的には小さい螺旋ばねが、スライダの背後に、す
なわち、突出部に対してレバーのヘッドとは反対側の滑り面内に構成されている。実際に
は、バランスの突出部と電気機械式デバイスの当接部との間のインパクトは、通常は、図
17および
図18に記載されている2つの極端な状況の間の物理的状況に対応する様式で
生じる。
【0144】
最後に、他の実施形態では、電気機械式デバイスは、単安定の電気機械式アクチュエー
タによって形成され、このアクチュエータは可動フィンガを備え、可動フィンガは、この
アクチュエータが起動されていない時(電力が与えられていない)、および起動されてい
る(すなわち電力が与えられている)時に、この可動フィンガがそれぞれ、第1の半径方
向位置と第2の半径方向位置との間を交互に変位することができるように構成されている
。フィンガの第1の半径方向位置は、振動する共振器のバランスと相互作用しない位置に
対応し、フィンガの第2の半径方向位置は、振動する共振器のバランスと相互作用する位
置に対応し、したがって、このフィンガは、レバー184のヘッドと同様に、振動するバ
ランスの突出部に対する当接部を形成する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-実際時間を表示するための表示器(12)と、
-前記表示器のための駆動機構(10)、および前記駆動機構に連結された機械式共振器(14;14A)であって、前記機械式共振器の振動が前記駆動機構の動作のタイミングを合わせる、機械式共振器を備える、機械式ムーブメント(4;4A;92)と、
-前記表示器によって表示される前記実際時間を補正するためのデバイスと、
を備える計時器(2;112;132;154;170)において、
-表示される前記実際時間を補正するための前記デバイスは、
-表示される前記実際時間を補正する外部補正信号(SExt)を受信するための受信機ユニット(30,30A;30B;204)、
-電子制御ユニット(28,28A;28B;196)、および
-前記機械式共振器を制動するための制動デバイス(22;22A;22A,106;22B,114;24C,26C;22C;174)
によって形成し、
前記電子制御ユニットは、前記外部補正信号内に含まれる情報を処理し、前記情報を関数として前記制動デバイスを制御し得るように構成し、前記実際時間を補正するための前記デバイスは、前記計時器によって受信した前記外部補正信号が、表示される前記実際時間の補正を必要とする際、前記制動デバイスが、補正期間の間に前記機械式共振器に作用し、前記駆動機構の動作を変更し、必要とされる前記補正の少なくとも1つの主要部分を実行し得るように構成することを特徴とする、計時器(2;112;132;154;170)。
【外国語明細書】