(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095808
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】呼吸空気浄化器具
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A62B18/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065047
(22)【出願日】2024-04-13
(62)【分割の表示】P 2020177304の分割
【原出願日】2020-10-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】709003492
【氏名又は名称】特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄作
(72)【発明者】
【氏名】橋本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】田北 啓洋
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA05
2E185CA03
2E185CB07
2E185CB09
2E185DA02
2E185DA12
(57)【要約】
【課題】
呼吸空気浄化器具のヘルメット内の呼気に含まれる二酸化炭素を,効率良く排出し,二酸化炭素の滞留を低減することを課題とする.
【解決手段】
ポンプ給気機能付きマスクにおいて,装着の呼吸に合わせて,呼気時には流入量目標値・設定値を小さく,および/または,内圧目標量を小さくし,吸気時には流入量目標値を大きく,および/または,内圧目標値・設定値を大きくすることを特徴とする,呼吸空気浄化器具とする.
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ給気機能付きマスクにおいて,装着の呼吸に合わせて,呼気時には流入量目標値を小さく,および/または,内圧目標値を小さくし,吸気時には流入量目標値を大きく,および/または,内圧目標値を大きくすることを特徴とする,呼吸空気浄化器具.
【請求項2】
給気ポンプ一つとヘルメット装着の流量センサ,圧力センサ,CO2センサを用いた制御により,流量,圧力,CO2濃度の設定条件を満たすことを特徴とする,ポンプ給気機能付き呼吸空気浄化器具.
【請求項3】
ポンプの流量Qが印加電圧Vと外部と内部の差圧Pの関数Q(V,P)となることを利用し,流量センサを用いずにその推定値により流量,圧力,CO2濃度の設定条件を満たすことを特徴とする,請求項2に記載のポンプ給気機能付き呼吸空気浄化器具.
【請求項4】
CO2濃度が設定値を超えた場合,流量の設定値を上げ,かつ警報(音,光など)を出すことを特徴とする,呼吸空気浄化器具.
【請求項5】
非常時に装置表面のつまみを引くことにより呼吸のための開口を開くことを特徴とする,請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項6】
非常時に口付近の排気フィルタのつまみを引くことにより呼吸のための開口を開くことを特徴とする,請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項7】
非常時に自動的に呼吸のための開口を開くことを特徴とする,請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項8】
内部にマイク及び/またはスピーカと,外部にマイク及び/またはスピーカを持ち,呼吸空気浄化器具外部の音を装着者に聞こえやすくし,及び/または,装着者の音声を外部に拡声して伝える事を特徴とする,請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項9】
マイクおよびスピーカを持ち,他の感染防護器具と無線通信により音声データを送受信して会話する機能を持ち,通話対象及び範囲を設定可能で,通話状況を視覚的に表示する機能を持つ事を特徴とする,請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項10】
GPSにより位置を,磁気センサにより方位を測定し,位置,発信者の向き,声の大きさに応じて音声の伝達範囲を自動的に設定する事を特徴とする,請求項9に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項11】
センサ(マイク,圧力センサ,流量センサ,二酸化炭素センサおよび脳波センサ)を用いて,装着者の健康状態をモニタする事を特徴とする,請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項12】
感染防護器具内部にあるセンサ(マイク,圧力センサ,流量センサ,二酸化炭素センサおよび脳波センサ)を用いて装着者の健康状態をモニタし,アロマディフューザとスピーカを用いて状況に合わせた香りと環境音を発生させる事を特徴とする,請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【請求項13】
オゾン発生装置を有し,器具内部の殺菌消臭を行うことを特徴とする,請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,マスク装着状況や他者との接触状況の管理方法,および,管理システムに関するものである.より具体的には,「呼吸空気浄化器具」の機種,微粒子や飛沫やウイルス等の遮蔽率,装着の有無などの装着状態を,時刻や位置情報などと共に,記録装置に記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムに関するものである.ここで,「呼吸空気浄化器具」とは,マスクなど,呼吸する空気の浄化を行う器具である.詳しく説明すると,吸気(体内に吸い込まれる空気)をフィルタ,ウイルス死滅装置等を通して浄化したのちに器具の中に導入する機能,および/または,呼気(体内から吐き出される空気)をフィルタ,ウイルス死滅装置等を通して浄化したのちに,器具の外に排出する機能,を有する器具である.「呼吸空気浄化器具」としては,「不織布フィルタを用いる一般のマスク」,「医療用マスク」,「ポンプ給気機能付きマスク」,「自由外出マスク(Distancing-Free Mask)」,「フェイスシールド」,「感染防護服」などが挙げられる.「ポンプ給気機能付きマスク」が挙げられる.「ポンプ給気機能付きマスク」の一形態であり,圧力と流量を制御することを特徴とする「自由外出マスク(Distancing-Free Mask)」についての詳しい説明は,後述している.「給気」と「排気」をまとめて表す用語として,「給排気」を使う.また,後述の説明では, 「自由外出マスク」を含む「呼吸空気浄化器具」を,簡略化のために,単に「マスク」と称することがある.
【背景技術】
【0002】
発明者らは,ウイルスの侵入,漏洩をほぼ完全に遮蔽でき,既存の技術で製作可能なマスク「自由外出マスク(Distancing-Free Mask)」を提案している.(特許文献1,参考文献1)これが開発され,全国民に配布されれば,ロックダウンは不要となる.「自由外出マスク装着者」は,抗体保有者と同様に,マスク装着者がウイルスに感染することもなければ,他者にウイルスを感染させることもない.当初の予測が外れ,感染拡大の歯止めが利かなくなった場合でも,「自由外出マスク」を全国民一斉装着すれば,速やかに,簡単・確実に感染収束となる.すなわち,「自由外出マスクを市民一人一人に持たせること」は,ロックダウン無しで,「感染拡大・収束を迅速・確実に制御する手段」を持つことを意味する.
【0003】
【特許文献1】特願2020-113097[参考文献] 藤井雄作,田北啓洋,橋本誠司,“ウイルスをほぼ完全に遮蔽できるマスクの開発,および,ロックダウンを不要化する社会基盤の提案”, 社会安全とプライバシー, Vol.4, No.1, pp.6-10, 2020.
【0004】
現在,コロナ感染症(COVID-19)により,世界全体が,「新しい生活様式」と「ロックダウン(=外出自粛,営業自粛を含む,行動規制,経済規制)」を併用した対策を取っているが,突然変異を繰り返すコロナウイルス(SARS-CoV2)に対するワクチン,治療法の迅速な開発・普及の目途が立たない中,ロックダウン断続状態から脱却する目途は,立っていない.
【0005】
「自由外出マスク」を各国民に一人一台ずつ配布することは,いつでも,簡単・確実に感染を収束させる「決め手」を持つことを意味する.また,最悪な感染拡大状況下でも,「自由外出マスク」を着用さえすれば,外出は自由にできるので,あらゆる業種において,各事業者は,「状況により,自由外出マスク着用義務付けが有り得る」を想定し,対策を用意しておけば,事業の停止をする必要は無くなる.
【0006】
ウイルスの侵入,漏洩をほぼ完全に遮蔽するマスクとして,「自由外出マスク」を提案する.「自由外出マスク」は,様々な形態が考えられるが,最も,簡単に実現できる形態として,気密ヘルメット部と,清浄化された空気の給気,排気を行う機械部が納められたウエストパック部からなる形態を提案する.「自由外出マスク」の基本的な仕様は,以下の3点である.
【0007】
[1] 気密ヘルメット内を,僅かな陽圧に制御することにより,首のシール部からの外気侵入を完全遮断でき,ウイルスの侵入は完全遮蔽できる.ウイルスの外部漏洩は,首シール部の気密程度に依存するが,高いレベルで抑止できる.
【0008】
[2] 一定流量に制御された吸気により,ヘルメット内に,常に新鮮な空気の流れを作る.これにより,肺へ余分な負荷を加えることなく,新鮮な空気を呼吸することができる.
【0009】
[3] ウエストパック部に納めたポンプによる強制給気,強制排気により,流れ抵抗が非常に大きな高性能フィルタを挿入することができる.これにより,通常の不織布マスク着用時のような息苦しさが無い状態を作ることができる.さらに,ウイルス侵入・漏洩の遮蔽をより高いレベルで100%に近づけたい場合は,ウイルス死滅装置(紫外線照射器,プラズマクラスター発生器など)を挿入することが好適である.また,快適性の向上のため,温湿度調整装置,空気組成調整器(酸素濃縮器,二酸化炭素吸着器,など)を挿入することもできる.
【0010】
機械部の小型軽量化により,ウエストパック部は,ヘルメット部と一体化することもできる.ヘルメット部は,柔らかいフィルム素材で作ることが好適である.現在の科学技術をもってすれば,上記のような機能を有する「自由外出マスク」の開発・大量生産は容易であろう.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように,かなり凶悪なウイルスの場合でも,遮蔽率100%の「呼吸空気浄化器具」を常時(100%)装着しなくてはならない状況は,ほとんど有り得ない.多くの場合,社会全体として感染を収束させる上では,市民一人一人が,ある一定の装着率で「呼吸空気浄化器具」を装着すれば,それ以外の場面では,「呼吸空気浄化器具」をする必要性は無い.市民一人一人が,感染を収束させるために義務付けられる「呼吸空気浄化器具」の装着率の達成を知るためには,装着率の計測・記録が必要となる.同様に,市民一人一人が,感染を収束させるために義務付けられる「呼吸空気浄化器具」の装着率の達成した上で,装着せずに行動する自由を得るためには,装着率の計測・記録が必要となる.このように,社会全体として感染を収束させつつ,同時に,市民一人一人に最大限の自由を保障するためには,各人の装着率の計測・記録が必要となる.本発明は,自身,および/または,自身の周りの他者について,「呼吸空気浄化器具」の装着状態を記録する装置を提供することを課題とする.
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために,「呼吸空気浄化器具」の微粒子・飛沫・ウイルス等の遮蔽率,装着の有無などの装着状態を,時刻と共に,記録装置に記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
「呼吸空気浄化器具」が「ポンプ給気機能付きマスク」であることを特徴とする,請求項1に記載の呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0013】
「呼吸空気浄化器具」が「スマートフォン」と通信を行い,「スマートフォン」のソフトウェアにより「呼吸空気浄化器具」の装着状態を,時刻と共に記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0014】
「呼吸空気浄化器具」の漏れ率などの装着状態を,ヘルメット内の内圧,および/または,ポンプ出力から推定することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0015】
近隣の他者の存在,および/または,近隣の他者との距離,および/または,近隣の他者の「呼吸空気浄化器具」の装着状態を,ブルートゥースなどの無線通信手段で検知し,記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.ブルートゥースは登録商標であるが,広く利活用されており,本発明の説明においても,好適な通信手段の一つとして挙げる必要がある.
【0016】
近隣の他者の存在,および/または,近隣の他者との距離,および/または,近隣の他者の「呼吸空気浄化器具」の装着状態を,通常のカメラや赤外線カメラなどで撮影されたカメラ画像を画像解析することで検知し,記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0017】
ウイルスの遮蔽率を,「呼吸空気浄化器具」の外部から内部への侵入に対する遮蔽率と,「呼吸空気浄化器具」の内部から外部への漏洩に対する遮蔽率とに分離して取り扱うことを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0018】
請求項1に関わる発明は,ポンプ給気機能付きマスクにおいて,装着の呼吸に合わせて,呼気時には流入量目標値を小さく,および/または,内圧目標値を小さくし,吸気時には流入量目標値を大きく,および/または,内圧目標値を大きくすることを特徴とする,呼吸空気浄化器具である.
【0019】
請求項2に関わる発明は,給気ポンプ一つとヘルメット装着の流量センサ,圧力センサ,CO2センサを用いた制御により,流量,圧力,CO2濃度の設定条件を満たすことを特徴とする,ポンプ給気機能付き呼吸空気浄化器具である.
【0020】
請求項3に関わる発明は,ポンプの流量Qが印加電圧Vと外部と内部の差圧Pの関数Q(V,P)となることを利用し,流量センサを用いずにその推定値により流量,圧力,CO2濃度の設定条件を満たすことを特徴とする,請求項2に記載のポンプ給気機能付き呼吸空気浄化器具である.
【0021】
請求項4に関わる発明は,CO2濃度が設定値を超えた場合,流量の設定値を上げ,かつ警報(音,光など)を出すことを特徴とする,呼吸空気浄化器具である.
【0022】
請求項5に関わる発明は,非常時に装置表面のつまみを引くことにより呼吸のための開口を開くことを特徴とする,請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0023】
請求項6に関わる発明は,非常時に口付近の排気フィルタのつまみを引くことにより呼吸のための開口を開くことを特徴とする,請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0024】
請求項7に関わる発明は,非常時に自動的に呼吸のための開口を開くことを特徴とする,請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0025】
周囲の他者の装着している感染防護器具装着状況の記録・管理システムと通信し,周囲の人のマスク着用状況と感染予防指数を表示することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0026】
感染者の移動経路をサーバに問合せ,表示装置内の地図や装着者の視野に感染の危険度を色分けして表示することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0027】
感染防護器具のカメラを利用して,周囲の映像と音声を記録し,後に再生する機能と,再生権は装着者本人のみが所有し,警察等の捜査依頼に関して一時的に再生権を委譲できることを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0028】
スマートフォンのアプリを用いて感染防護器具を装着した写真を撮影することにより,画像解析にて装着されている感染防護器具の種類を判定する機能を有し,さらに複数の角度から撮影された写真から装着方法の正誤を判定し,正しい装着方法を教示する機能を有する事を特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムとしてもよい.
【0029】
請求項8に関わる発明は,内部にマイク及び/またはスピーカと,外部にマイク及び/またはスピーカを持ち,呼吸空気浄化器具外部の音を装着者に聞こえやすくし,及び/または,装着者の音声を外部に拡声して伝える事を特徴とする,請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0030】
請求項9に関わる発明は,マイクおよびスピーカを持ち,他の感染防護器具と無線通信により音声データを送受信して会話する機能を持ち,通話対象及び範囲を設定可能で,通話状況を視覚的に表示する機能を持つ事を特徴とする,請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0031】
請求項10に関わる発明は,GPSにより位置を,磁気センサにより方位を測定し,位置,発信者の向き,声の大きさに応じて音声の伝達範囲を自動的に設定する事を特徴とする,請求項9に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0032】
請求項11に関わる発明は,センサ(マイク,圧力センサ,流量センサ,二酸化炭素センサおよび脳波センサ)を用いて,装着者の健康状態をモニタする事を特徴とする,請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0033】
請求項12に関わる発明は,感染防護器具内部にあるセンサ(マイク,圧力センサ,流量センサ,二酸化炭素センサおよび脳波センサ)を用いて装着者の健康状態をモニタし,アロマディフューザとスピーカを用いて状況に合わせた香りと環境音を発生させる事を特徴とする,請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【0034】
請求項13に関わる発明は,オゾン発生装置を有し,器具内部の殺菌消臭を行うことを特徴とする,請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の呼吸空気浄化器具である.
【発明の効果】
【0035】
以下に,「自由外出マスク」などの「呼吸空気浄化器具」による“疑似”集団免疫の獲得について,説明する.
【0036】
基本再生産数R0は,感染症に感染した1人の感染者が,誰も免疫を持たない集団(社会)に加わったとき,感染期間中に直接感染させる平均人数として定義される.定義から,“周りに感染者が殆どいない状態”においては,当該集団(社会)についてR0=1なら定常状態,R0<1なら収束,R0>1なら拡大,ということになる.R0は,ウイルスの性質だけでなく,当該集団の性質(人種的体質,状態,公衆衛生の状態,各人の健康状態,など)にも依存する.公衆衛生を向上させることにより,あらゆるウイルスに対してR0を低減できる.
【0037】
基本再生産数R0は,模式的に次式で表せる.
R0 = β× k × D
β:一回の接触当たりの感染確率
k:単位時間あたりに一人の人間が集団内で他者(=未感染者)と接触する平均回数
D:平均感染期間
【0038】
すなわち,基本再生産数R0を低減する上では,以下が有効.
βの低減: 個人免疫力の向上,マスク着用,手洗い励行,社会的距離の確保.
kの低減: 在宅勤務・在宅学習の導入,営業規制,外出規制.
「新しい生活様式」は,β,kを低減させた状態,「ロックダウン」はkを極端に低減させた状態,と言える.
【0039】
「呼吸空気浄化器具」着用者の割合Wrにより,基本再生産数R0は修正され,修正基本再生産数R0mとなる.
【0040】
未感染者がWrの割合で「呼吸空気浄化器具」を装着すると,感染し難くなる未感染者の割合がWrとなり,感染し易いままの未感染者の割合は(1-Wr)となる.「呼吸空気浄化器具」のウイルス遮蔽率をSrとしたとき,マスク装着者の感染確率は,マスク非着用者のそれの(1-Sr)倍になると考えられる.以上より,近似的に以下の関係式が導かれる.
R0m = [(1-Wr)+Wr(1-Sr)]R0
=(1-WrSr)R0
Wr = [1-R0m/R0] /Sr
例: R0=5のときに, R0m=1 とするのに必要な「呼吸空気浄化器具(Sr=1)」着用者の割合は,Wr =1-1/5=0.8 (80%)となる.これにより,感染拡大は止まり,定常状態に落ち着くことになる.なお,上記の計算式では,マスク装着者の割合,感染拡大の状況が変化しても,個々人の移動や接触の様態は変化しないことを仮定している点で,少し無理があるので,参考程度として考えるべきである.
【0041】
さらに上記に加えて,感染者もWrの割合で「呼吸空気浄化器具」を装着すると,感染させ難くなる感染者の割合がWrとなり,感染させ易いままの感染者の割合は(1-Wr)となる.「呼吸空気浄化器具」のウイルス遮蔽率をSrとしたとき,マスク装着感染者の感染能力は,マスク非着用感染者のそれの(1-Sr)倍になると考えられる.以上より,近似的に以下の関係式が導かれる.
R0m = (1- WrSr)2 R0
Wr = [1 – (R0m/R0)0.5]/ Sr
【0042】
図1に,基本再生産数R0を修正基本再生産数R0m=0.5,または,1.0に修正するために必要な「呼吸空気浄化器具(Sr=1)」の着用必要割合Wr_targetを示す.未感染者のみが着用するとした場合,及び,未感染者と感染者の両方が着用するとした場合,それぞれについて示す.
図1に示す例は,全ての国民,または,当該集団の全ての構成員が,同一の遮蔽率(Sr=1)の呼吸空気浄化器具を使用する場合である.
【0043】
例えば,当該ウイルスの社会に対する基本再生産数R0=5の時は,修正再生産数を1として感染定常化を図るために必要な「呼吸空気浄化器具(Sr=1)」着用者の割合Wrは,未感染者のみが着用することを考慮するとWr_target = 0.8(80%)となり,未感染者に加えて感染者もマスク着用することを考慮するとWr_target = 0.55(55%)となる.すなわち,それぞれの場合において,全国民が,接触人数の80%以上,あるいは,55%以上,に対して「呼吸空気浄化器具(Sr=1)」を着用して接触すれば感染は収束に向かう. なお,これまでに,COVID-19の基本再生産数R0として報告されている数値は,概ね5程度以下であるので,上記の議論は現実的である.
【0044】
「呼吸空気浄化器具」におけるウイルス遮蔽率Srが1(100%)ではない場合,マスク着用必要割合Wr_targetとしては,「Sr=1とした
図1で読み取れるWr_target」をSrで割った値を用いれば良い.なお,前述の自由外出マスクなど,概ねSr≧0.8とSr値が高い「呼吸空気浄化器具」を「呼吸空気浄化器具(高Sr)」と称することとする.
【0045】
低コストで製造し,配布・普及させる上では,最低限の性能を見極めることも重要である.個々の「呼吸空気浄化器具」について,ウイルス遮蔽率Srを推定することにより,様々な種類のマスクについて,上記の議論を適用することが可能となる.なお,市販の不織布マスクは,通常の装着状態では,大部分の空気はフィルタ部(不織布)を透過せずに,回りの隙間を流れていることが示されている.このことは,市販の不織布マスクなど「隙間が出来やすいマスク」については,フィルタ部そのものの遮蔽率ではなく,装着時の隙間の影響を含めた遮蔽率を見積もることが重要となってくることを示唆している.
【0046】
上記の議論において,ウイルス遮蔽率をSrを,ヘルメット外部から内部への侵入に対する遮蔽率をSr_in,ヘルメット内部から外部への漏洩に対する遮蔽率をSr_outと分離して考えると,近似的に以下の関係式が導かれる.
R0m = (1- Wr Sr_in) (1- Wr Sr_out) R0
上記を,R0m,R0,Sr_in,Sr_outを定数, Wrを未知数としたWrの二次方程式として解くことにより,自由外出マスク着用必要割合Wr_targetを求めることができる.0≦Sr_in≦1,0≦Sr_out≦1より,解は,以下となる.
Wr_target = Wr = [[(Sr_in+Sr_out)-[(Sr_in+Sr_out)2-4(Sr_in)(Sr_out)(1-R0m/R0)]0.5] /[2(Sr_in)(Sr_out)]
【0047】
一般に,「呼吸空気浄化器具」は,実際の装着状態において,Sr_inとSr_outが大きく異なることがありえるので,上記のように,Sr_inとSr_outを分けて取り扱うことは,より精密に「呼吸空気浄化器具の着用必要割合Wr_target」を求める上で有効である.
【0048】
ここでは,遮蔽率Srは,0.1μmの微粒子が濾過された率として定義する.あるいは,呼吸器防護規格(NIOSH)に基づく,「エアロゾル化した塩化ナトリウム」の捕集効率として定義することも考えられる.様々な定義を使うことが考えられる.対象とするウイルスの感染経路,感染様態により,より実態に即した定義を模索し,決定することが好ましい.
【0049】
ここで,着目すべき点は,「呼吸空気浄化器具(高Sr)を全国民が保有する」は,「政府がロックダウンすることなく,感染拡大・収束を制御する手段を持つこと」を意味するという点である.現在のように,感染拡大に対して,過剰に怯える必要は無くなるという点である.
【0050】
図2に示すように,「現状」は,感染拡大懸念が増大する際には,ロックダウンの強度を上げるという対応をとっている.しかし,「将来」は感染拡大懸念が増大する際には,自由外出マスクなどの呼吸空気浄化器具の装着必要割合を上げてくだけで十分であり,ロックダウンは完全に不要となると予想している.
【0051】
コロナ時代の社会様態は,自由外出マスクなどの呼吸空気浄化器具(高Sr)の普及による新しい社会基盤の出現により,以下の3点に指摘するような状況になると予想している.
【0052】
[1] 全国民が一人一個の「呼吸空気浄化器具(高Sr)」を保有する.
【0053】
[2] 感染拡大の恐れが出た場合,政府は非常事態宣言を出し,外出時の「呼吸空気浄化器具(高Sr)」の着用必要割合Wr_target以上での着用を義務付ける.
【0054】
[3] ウイルス感染収束が確認された時点で,政府は非常事態宣言を解除し,外出時の「呼吸空気浄化器具(高Sr)」着用の義務は無くなる.
【0055】
上記[2]において,「呼吸空気浄化器具(高Sr)」着用を義務付ける際の数値目標の設定法について,以下に,いくつかの例を示す.以下の議論においては,特に指定しない限り,呼吸空気浄化器具の遮蔽率Sr= Sr_in=Sr_out=1とし,また,目標設定等については一日当たりを対象として,議論する.また,特に断りがない場合は,Srは,Sr_inとして定義される.マスクへ外部から導入される空気に対しるウイルス遮蔽率Sr_inと,マスクの内部から外部に排出される空気に対するウイルス遮蔽率Sr_outを,両方とも,等しく重視する場合,Srは,Sr_inとSr_outの平均値として定義される場合がある.
【0056】
[1] 呼吸空気浄化器具(高Sr)必要割合Wr_targetを,装着時間について数値目標として設定する例.
装着の有無のみを検出し,一日毎に,屋外での呼吸空気浄化器具の着用時間Tout_mask (秒),および,屋外での呼吸空気浄化器具の非着用時間Tout_nomask(秒)を計数して,呼吸空気浄化器具着用割合実績Wr_avd(秒)を次式により計算する.
Wr_avd = (Tout_mask)/(Tout_mask + Tout_nomask)
運用例として,国民一人一人は,自身の呼吸空気浄化器具着用割合実績Wr_avdが,政府が設定する呼吸空気浄化器具着用割合Wr以上になるように努力する義務を負うという仕組みが考えられる.達成割合(Wr_avd - Wr_target)に応じ,達成割合Wr_avd - Wr_target)がプラスの場合は報奨金が与えられ,達成割合Wr_avd - Wr_target)がマイナスの場合はマイナスの大きさに応じて,罰金などが科せられる仕組みも考えられる.
【0057】
[2]屋外での呼吸空気浄化器具(高Sr)の非着用時間Tout_nomaskの上限として,数値目標を設定する例.
装着の有無のみを検出し,自宅外での呼吸空気浄化器具の非着用時間Tout_nomaskを計数し,それが,政府が設定する上限値Tout_nomask_targetを超えないように努力する義務を負うという仕組みが考えられる.自宅外での呼吸空気浄化器具の非着用時間上限値Tout_nomask_targetの決定方法としては,市民の平均外出時間の推定値Tout_meanを用いて,次式で計算することが近似的に妥当であると考えられる.
Tout_nomask_target = (1- Wr) Tout_mean
達成割合(Tout_nomask_target - Tout_nomask)に応じ,達成割合(Tout_nomask_target - Tout_nomask)がプラスの場合は報奨金が与えられ,達成割合(Tout_nomask_target - Tout_nomask)がマイナスの場合は罰金などが科せられる仕組みも考えられる.
【0058】
[3] 呼吸空気浄化器具(高Sr)非装着で濃厚接触する人数Ncの上限として,数値目標を設定する例.
呼吸空気浄化器具非装着で濃厚接触する人数Ncを計数し,それが,政府が設定する上限値Nc_targetを超えないように努力する義務を負うという仕組みが考えられる.
濃厚接触数としては,相手も呼吸空気浄化器具非装着の状態で,「1メートル以内で,会話を2-3往復」,または,「1メートル以内で,15分間以上にわたり接触」,または,「それと同様かそれ以上の濃厚な接触と考えられる状況」を以て,「濃厚接触1」とカウントする方法が考えられる.相手が,自由外出マスクなど,遮蔽率の大きなマスクを装着している場合は,濃厚接触としてはカウントしない.
近隣にいる他者の存在とマスク装着状態を確実に検知する必要がある.後述の,カメラ画像の画像処理による検知する方式,他者の持つマスク・スマートファンとの通信により通知してもらう方式などが考えられる.
Nc_targetの設定方法としては,市民が屋外で接触する人数の平均値の推定値Nc_meanを用いて,次式で計算することが近似的に妥当であると考えられる.
Nc_target = (1- Wr) Nc_mean
達成割合(Nc_target - Nc)に応じ,達成割合(Nc_target - Nc)がプラスの場合は報奨金が与えられ,達成割合(Nc_target - Nc)がマイナスの場合は罰金などが科せられる仕組みも考えられる.
【0059】
[4] 汚染環境との接触の総量Ecの上限値として,数値目標を設定する例.
汚染環境との接触の総量Ecを計数し,それが,政府が設定する上限値Ec_targetを超えないように努力する義務を負うという仕組みが考えられる.
汚染環境との接触の総量Ecは,各場所,各時刻について,次式で算出されるか,あるいは,適当に設定されているものとする.
Ec = ∫E(L, t)dt
ここで,E(L, t)は環境汚染係数を表し,Lは場所を表し,tは時刻を表す.
想定されるウイルスの濃度が高いほど,環境汚染係数E(L, t)は大きな値となる.
環境汚染係数E(L, t)は,人間のその場所での滞在の様態(マスク装着の有り無し,マスクの性能,活動内容,など),その場所の換気や空気清浄化の状態,などの履歴により,計算される.または,環境汚染係数E(L, t)は,適当な仮定に基づき設定された関数として与えられる.
【0060】
Ec_targetの設定方法としては,市民が経験する汚染環境との接触の総量の平均値の推定値Ec_meanを用いて,次式で計算することが近似的に妥当であると考えられる.
Ec_target = (1- Wr) Ec_mean
達成割合(Ec_target - Ec)に応じ,達成割合(Ec_target - Ec)がプラスの場合は報奨金が与えられ,達成割合(Ec_target - Ec)がマイナスの場合は罰金などが科せられる仕組みも考えられる.
【0061】
以上の議論においては,特に指定しない限り,呼吸空気浄化器具の遮蔽率Sr= Sr_in=Sr_out=1とし,また,目標設定等については一日当たりを対象として,議論した.
【0062】
原始人と異なり,現代人は,「川や水溜まりの水」でなく「浄化された水」を飲む.一方,「空気」は,ウイルス,PM2.5,花粉,ホコリを始めとする様々な汚染物質を含んでいるが,現代人は,原始人と同様に,周りに存在する「自然の空気」を呼吸している.「自由外出マスク」などの「呼吸空気浄化器具(高Sr)」の登場により,空気も「自然の空気」ではなく,「浄化された空気」を呼吸したいという強力な需要が顕在化してくることが予想される.すなわち,ウイルスの感染拡大の有無に拘わらず,また,政府による着用要請の有無に拘わらずに,多くの国民が外出時に,「呼吸空気浄化器具(高Sr)」を着用するようになることも予想される.そのような社会は,あらゆる感染症に対して,基本再生産数R0がゼロに近くなり,あらゆる感染症に対して極めて強靭な社会となる.
【0063】
人々は,外出時には,(足が汚れたり,ケガをしたりしないように)「靴」を履く.同じ様に,外出時には,(肺が汚れたり,ウイルス感染したりしないように)「自由外出マスク」を着用するようになることもあり得る.そうなると,多くの国民が,様々な種類の「靴」を所有するように,様々な種類の「呼吸空気浄化器具(高Sr)」を所有することになる.最低限の機能の「呼吸空気浄化器具(高Sr)」は市販価格2,000円程度を実現できると予想している.一方で,様々な機能が付加されたモデルも開発・生産され,市販価格で1万円,10万円,100万円の「呼吸空気浄化器具(高Sr)」も出てくると予想する.
【0064】
「呼吸空気浄化器具(高Sr)」,及び,その周辺システム(乗り物・施設におけるサービス給排気ポートの提供,家庭用消毒エアロックシステム,など)は,コロナ時代における,必要不可欠な社会基盤となると考えている.そして,快適さ,便利さ,機能性,デザインが,世界中の多くの企業による集中的な努力によって、急速かつ大幅に改良・向上されていくと予想している.
【0065】
図3に「呼吸空気浄化器具(高Sr)」の一例としての「自由外出マスク」のデザイン例を示す.
図4に試作機の外観写真を示す.
図4に示した試作機のサイズは,約38cm(幅)×約26cm(奥行)×約29cm(高さ)であり,バッテリ(約180g)を含む総重量は約664g (約0.7kg)であり,搭載バッテリによる連続駆動時間は約8時間である. 試作機の特長は,以下の3点である.
【0066】
[1] ポンプによる強制給気により,流れ抵抗が非常に大きな高性能フィルタを挿入できる.ウイルス死滅装置(紫外線照射器,プラズマクラスター発生器など),温湿度調整装置を給気側・排気側に挿入することも可能である.
不織布フィルタ(HEPA H13規格,0.3μmまでの粒子を99.97%吸着)を給気側,排気側に使用している.米国労働安全衛生研究所(NIOSH)による微粒子用マスクの規格の最高ランク(N100/R100/P100)である,「0.1~0.3μmの微粒子を99.97%以上除去できる性能」と同等の性能を有している.
【0067】
[2] ヘルメット内を,僅かな陽圧に制御することにより,首のシール部からの外気進入を完全遮断でき,ウイルスの侵入はほぼ完全に遮蔽できる.ウイルスの外部漏洩は,首シール部の気密程度に依存するが,ドライスーツ用の首回り気密シールなど,高性能な首回り気密シールを用いることにより,高いレベルでの気密保持が可能である.
【0068】
[3] 一定流量に制御された吸気により,フード内に,常に新鮮な空気の流れを作る.これにより,肺へ余分な負荷を加えることなく,新鮮な空気を呼吸できる.「通常形式マスク」着用時のような息苦しさが無い状態となる.
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は,R0m=0.5,1.0を達成する上で必要となる,呼吸空気浄化器具(Sr=1.0)の着用必要割合Wr(%)と,現時点での基本再生産数R0の関係を示すグラフである.
【
図2】
図2は,現状におけるロックダウンが選択肢としてあるコロナ対策と,本発明に基づいた社会基盤が構築され,ロックダウンが不要化したコロナ対策を模式的に示した図である.
【
図3】
図3は,呼吸空気浄化器具(高Sr,ヘルメット一体型)の実施例の模式図である.
【
図4】
図4は,呼吸空気浄化器具(高Sr,試作機)の外観写真である.
【
図5】
図5に示す実施例1は,本発明に基づく呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムの通常形式マスクをベースとした実施例である.
【
図6】
図6に示す実施例2は,「呼吸空気浄化器具」が「ポンプ給気機能付きマスク」である呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムの実施例である.
【0070】
【
図8】
図8に示す実施例3は,「呼吸空気浄化器具」が「スマートフォン」と通信を行い,「スマートフォン」のソフトウェアにより「呼吸空気浄化器具」の装着状態を,時刻,位置情報などと共に記録することを特徴とする呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムの実施例である.
【
図9】
図9は,実施例4におけるQin(ΔP,V)とQout(ΔP)の変化の様子を示した図である.Qinは,駆動電圧V=12,11,10(V)の3水準について示している.
【
図10】
図10に示す実施例5は,近隣の他者の存在,および/または,距離,および/または,「呼吸空気浄化器具」の装着状態を,ブルートゥースなどの無線通信手段で検知し,記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムの実施例である.
【
図11】
図11に示す実施例6は,近隣の他者の存在,および/または,距離,および/または,「呼吸空気浄化器具」の装着状態を,カメラ画像で検知し,記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムの実施例である.
【0071】
【
図12】
図12は,R0m=0.5,1.0を達成する上で必要となる,呼吸空気浄化器具(Sr,in=1.0,Sr,out=0.9)の着用必要割合Wr(%)と,現時点での基本再生産数R0の関係を示すグラフである.
【
図13】
図13は,実施例9における基本制御系のブロック図である.
【
図14】
図14は,実施例9におけるポンプ制御方法のイメージ図である.
【
図15】
図15は,実施例10における使用するポンプ単体での印加電圧に対する圧力-流量の特性を示している.
【
図16】
図16は,実施例10における電圧-傾き特性を示している.
【
図17】
図17は,実施例10における電圧-切片特性を示している.
【
図18】
図18は,実施例10における流量推定値Qを用いたポンプ給気機能付きマスクの制御ブロック図を示している.
【0072】
【
図19】
図19は,検出したCO2濃度が設定値を超えた場合,すばやく流量の設定値を増加させる制御法に対する実施例11を示している.
【
図20】
図20は,2つのポンプによる流量と圧力の個別の制御系において,検出したCO2濃度が閾値を超えた場合に,上記と同様に,CO2濃度制御器により流量の設定値Q*を増加させるとともに装着者に警報を促す,実施例11の
図19とは別の形態を示している.
【
図21】
図21は,実施例12におけるゴム栓式緊急換気口付きポンプ給気機能付きマスクの装着時の模式図とゴム栓部分の側面拡大図である.
【
図22】
図22は,実施例13における緊急時フィルタ取り外し式ポンプ給気機能付きマスクの装着時の模式図とフィルタ部分の側面拡大図である.
【
図23】
図23は,実施例13における二重フィルタの通常時と解放時の側面図である.
【0073】
【
図24】
図24は,実施例14における緊急時自動開放機構の通常時と解放時の側面図である.
【
図25】
図25は,実施例19における拡声・補聴機能を有するポンプ給気機能付きマスクの装着時の模式図である.
【
図26】
図26は,実施例21における発信者と受信者の位置関係を示した図である.
【
図27】
図27は,実施例22における健康モニタ機能を有するポンプ給気機能付きマスクの装着時の模式図である.
【
図28】
図28は,実施例23におけるQOL向上機能を有するポンプ給気機能付きマスクの装着時の模式図である.
【
図29】
図29は,実施例24におけるマスク殺菌消臭機能を有するポンプ給気機能付きマスクの外観図である.
【発明を実施するための形態】
【実施例0074】
図5に示す実施例1は,本発明に関連する実施例である.実施例1は,「呼吸空気浄化器具」の微粒子・飛沫・ウイルス等の遮蔽率,装着の有無などの装着状態を,時刻と共に,記録装置に記録することを特徴とする,呼吸空気浄化器具装着状況の記録・管理システムである.実施例1では,「呼吸空気浄化器具」は,不織布をフィルタとして用いた通常形態のマスクに,記録装置が取り付けられている形態となっている.記録装置は,マイクロプロセッサ,圧力センサ(差圧センサ,測定範囲:±200Pa,測定誤差:1Pa),メモリカードスロット,バッテリなどにより構成され,顎にフィットする湾曲した形状の樹脂製ケースに収められている.マスク生地には記録装置をスナップ式に固定(スナップフィット,snap-fit)するためのプレートが接着されており,記録装置とマスク生地は工具無しで簡単に構造となっている.圧力センサにより,マスクの内側と外側の圧力差を計測する.呼吸に伴う圧力変動に類似の圧力変動を検知している時間帯を,マスク装着時として判断し,GPSセンサからの位置情報とともに,記録する.記録内容は,メモリカードに記録し,メモリカードを抜き出すことで,外部機器に転送することができる.
【0075】
記録装置に,LEDとスピーカを付加して,次のような装着状態の確認・警報機能を与えてもよい.すなわち,圧力変動の振幅が基準よりも小さいときは,マスクと顔表面の隙間が大きいと判断し,LEDを赤色で点滅させるとともに,警報音を発する.圧力変動が基準の範囲内の時は,マスクと顔表面の隙間が十分に小さく,気密が保たれていると判断し,LEDを青色で点灯させる.
記録装置に,Bluetoothなどの通信機能などを付加して,記録内容を,スマートフォンや解析装置に転送できるようにすることは,利便性を高める上で有用である.
【0076】
記録装置に,GPSユニットを付加して位置情報を取得し,装着状態,時刻,場所をセットとして記録していくことは,濃厚接触者の特定や感染経路の特定などにおいて,特に,有効である.
【0077】
「呼吸空気浄化器具」の微粒子・飛沫・ウイルス等に対する遮蔽率Srは,機種毎に校正されている.遮蔽率は,適正に装着され,マスクと顔との間の気密が十分に確保され,マスクと顔の間の隙間からの空気の漏れ率が十分に小さい場合と,不適切に装着され漏れ率が大きい場合とでは,大きく異なる.遮蔽率は,装着状態での漏れ率の推定値により補正される.
【0078】
遮蔽率は,粒子の大きさの範囲毎に計測・校正することにより,「呼吸空気浄化器具(高Sr)」着用を義務付ける際の数値目標の設定・運用を,より精密に行うことが可能となる.例えば,以下のような分類が考えられる.
飛沫:粒子直径5μm以上
飛沫核:粒子直径1μm-5μm
微小エアロゾル:粒子直径:0.1μm-1μm
極小エアロゾル:粒子直径:0.01μm-0.1μm
粒子の大きさに応じて,空気中での動きの形態(気流にどの程度,沿って動くか?重力により落下速度,など),移動距離,滞在時間が決まってくるので,粒子の大きさに応じて,遮蔽率を計測することは,よりきめ細かい運用をする上で,有効である.
【0079】
圧力センサの代わりに皮膚との接触を検知する接触センサを記録装置,あるいは,マスク生地に内蔵させ,装着の有無の判断を,圧力センサの出力ではなく,接触センサの出力に基づいて行うことも考えられる.接触センサとしては,「マスク生地に対して着脱可能な生体電極」も好適である.
[1] ヘルメット内を,僅かな陽圧に制御することにより,首のシール部からの外気の進入を完全に遮断することができる.また,内圧をある程度高く保つことにより,ヘルメットドーム部を軽量な透明樹脂素材で製作することができる.ウイルスの侵入は100%遮蔽できる.ウイルスの外部への漏洩は,首シール部の気密程度に依存するが,高いレベルで抑止できる.
[2] 一定流量に制御された吸排気により,ヘルメット内に,常に新鮮な空気の流れを作る.これにより,肺へ余分な負荷を加えることなく,新鮮な空気を呼吸することができる.
[3] バックパックに納めたポンプ・圧力バッファ・電磁制御弁による強制給気,強制排気により,流れ抵抗が非常に大きな高性能フィルタを挿入することができる.これにより,マスク着用時のような息苦しさが一切無い状態を作ることができる.ウイルス死滅装置(紫外線照射器,プラズマクラスター発生器など)を給気側,排気側に装備することは,感染者が高密度に集められた病院等,ウイルスが空気に浮遊する密度が高い環境等において,ウイルスをより完全に排除する上で有効である.
実施例2では,温湿度調整装置を給気側に設置している.温度・湿度が調整された清浄な空気が,ヘルメット部に供給される.これにより,高温多湿な夏季,低温低湿な冬季などにおいても,快適な呼吸が実現されている.