IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009582
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】繊維製品処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 23/12 20060101AFI20240116BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240116BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20240116BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
D06M23/12
D06M15/53
D06M11/79
D06M13/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111216
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】市村 真一
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AB31
4L031BA20
4L031BA31
4L031DA13
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA00
4L033BA11
4L033BA14
4L033BA16
4L033BA21
4L033BA86
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】製造、及び保存過程でマイクロカプセルが崩壊せず、処理した繊維製品に所望の効果を提供できる繊維製品処理剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:シェルと、該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル 0.1質量%以上10質量%以下(ただし(a)成分が含む香料化合物として)
(b)成分:数平均分子量が2000以上13000以下のポリエチレングリコール 40質量%以上95質量%以下
(c)成分:脂肪酸、アルコール、エステル油、エーテル油、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の、30℃で液体の化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:シェルと、該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル 0.1質量%以上10質量%以下(ただし(a)成分が含む香料化合物として)
(b)成分:数平均分子量が2000以上13000以下のポリエチレングリコール 40質量%以上95質量%以下
(c)成分:脂肪酸、アルコール、エステル油、エーテル油、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の、30℃で液体の化合物
【請求項2】
(a)成分のシェルがシリカを含む、請求項1に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
(a)成分のメジアン径D50が、0.1μm以上100μm以下である、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
(a)成分が、前記コアを包接する20nm以下の平均厚さを有する第一シェルと、第一シェルを包接する100nm以下の平均厚さを有する第二シェルとを有するマイクロカプセルである、請求項1~3の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
(d)成分として、(a)成分に内包されている香料化合物以外の香料化合物を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
(e)成分として、水溶性カチオン性ポリマーを含有する、請求項1~5の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
複数の粒子により構成され、前記粒子の平均粒径が100mm以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣類の洗濯時及び衣類を着用する時に香りを楽しみたいという人は増加している。これまで、一般的には液体洗剤や液体柔軟剤が洗濯時の衣類への賦香手段として用いられてきたが、近年では更に香りのバリエーションや強弱を調節するために香りつけ剤を併用する傾向が見られている。
【0003】
香りづけを目的とした技術としては、例えば特許文献1に洗浄用製品と香料含有製品を別々に提供する方法、特許文献2に香料をポリエチレングリコールに含浸させた香錠剤を洗濯工程でいれることで香り強度の調整できる方法、特許文献3において無香性/微香性の柔軟剤と香料含有製品との組み合わせからなる繊維処理物品を提供する方法が提案されている。
【0004】
一般的に液体柔軟剤に賦香された香料は洗い工程後のすすぎ工程で水を介して繊維製品に処理される。一方で液体洗剤や洗い工程で投入する香りつけ剤は洗い工程で香料が繊維製品に処理された後にすすぎ工程で水にさらされることになる。そのため、繊維への香料の付着が不十分になり、十分な着香感を得ることが難しくなっている。このような問題に対応するために種々の技術が提案されている。
【0005】
着用時の残香性の向上をもたらす従来技術として、香料をマイクロカプセル化して配合する試みがなされている。特許文献4には、芯物質として引火点が50~130℃の範囲内の香料組成物を含有するカプセル化香料が記載されている。また、特許文献5にはコアーシェル法で製造した香料を内包するマイクロカプセルを用いることで残香性が向上することが記載されている。また、特許文献6には香料を内包するマイクロカプセルと特定のアミンを含有するポリマーを併用することで複数の異なる表面に対して高濃度で均一に香料を付着できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1 特開2000-169898号公報
特許文献2 特表2013-509508号公報
特許文献3 特開2020-23776号公報
特許文献4 特開2006-249326号公報
特許文献5 特表2011-517323号公報
特許文献6 特開2018-172687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
香りの実効感の向上手段として香料のマイクロカプセル化が有用であり、衣類の洗濯及び衣類を着用する過程において消費者が所望のタイミングで香りを実感するためにはマイクロカプセルの強度や崩壊タイミングの調整が不可欠である。しかし、低強度のマイクロカプセルは衣類着用中の香り実効感に優れた効果を示す一方で繊維製品処理剤組成物の製造から保存の過程で崩壊してしまう課題がある。そのような崩壊が生じると、設計通りの賦香がされにくくなる。
【0008】
本発明は、製造過程や保存過程などでマイクロカプセルが崩壊せず、処理した繊維製品に所望の効果を提供できる繊維製品処理剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、低機械力で崩壊しやすいカプセルと常温固体の水溶性担体と常温液体の基剤を用いることで、製造から保存の過程においてカプセルが崩壊することなく香料を保持できる繊維製品処理剤組成物を見出した。
【0010】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物に関する。
(a)成分:シェルと、該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル 0.1質量%以上10質量%以下
(b)成分:数平均分子量が2000以上13000以下のポリエチレングリコール 40質量%以上95質量%以下
(c)成分:脂肪酸、アルコール、エステル油、エーテル油、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の、30℃で液体の化合物
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造過程や保存過程などでカプセルが崩壊することなく、香料を保持できる繊維製品処理剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<繊維製品処理剤組成物>
〔(a)成分〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分として、シェルと、該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセルを含有する。
【0013】
<シェル>
(a)成分のシェルはシリカを含むことが好ましい。従って、本発明は、1つの実施形態として、(a)成分として、シリカを構成体として含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセルを含有する繊維製品処理剤組成物を提供する。シリカは二酸化ケイ素を構造単位とする物質である。以下、(a)成分のマイクロカプセルなどの、シリカを構成体として含むシェルを有するマイクロカプセルを、シリカカプセルともいう。香料化合物は、複数の香料化合物を含有する香料組成物としてシリカカプセルに配合することができる。
【0014】
本発明のシリカカプセルのシェルは、シリカを構成成分として含む。本発明のシリカカプセルのシェルは、シェルを構成している構造の一部または実質的全部がシリカを構成成分としてできていることを特徴とする。
本発明のシリカカプセルのシェルは、アルコキシシランを前駆体としたゾル-ゲル反応により形成されてなるものが好ましい。
本発明において「ゾル-ゲル反応」とは、アルコキシシランが加水分解及び重縮合反応により、ゾル及びゲル状態を経てシェルの構成成分であるシリカを形成する反応を意味する。具体的には、例えばテトラアルコキシシランが加水分解され、シラノール化合物が脱水縮合反応及び脱アルコール縮合反応によりシロキサンオリゴマーを生成し、更に脱水縮合反応が進行することによりシリカが形成される。
【0015】
また、本発明のシリカカプセルのシェルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ以外の無機ポリマーを構成成分として含んでもよい。本発明において無機ポリマーとは、無機元素を含むポリマーをいう。該無機ポリマーとしては、無機元素のみからなるポリマー、主鎖が無機元素のみから構成され側鎖又は置換基として有機基を有するポリマー等が挙げられる。
前記無機ポリマーは、好ましくは金属元素又は半金属元素を含む金属酸化物であり、更に好ましくは金属アルコキシド〔M(OR)x〕を前駆体として、前述のシリカのゾル-ゲル反応と同様の反応により形成されてなるポリマーである。ここで、Mは金属又は半金属元素であり、Rは炭化水素基である。
金属アルコキシドを構成する金属又は半金属元素としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
【0016】
前記アルコキシシランは、香料の内包率を高める観点並びにデリバリー性能を良好に発現させる観点から、好ましくはテトラアルコキシシランである。
前記テトラアルコキシシランとしては、ゾル-ゲル反応を促進する観点から、好ましくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するものであり、より好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトライソプロポキシシランから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはテトラエトキシシランである。
【0017】
(シリカカプセルの製造)
本発明のシリカカプセルのシェルは、香料化合物の内包率を高める観点、及び長期保持性を向上させる観点、並びに香料化合物のデリバリー性能を良好に発現させる観点から、ゾル-ゲル反応を2段階で行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含むことが好ましい。すなわち、本発明のシリカカプセルは、下記の工程1及び工程2を含む方法により製造することが好ましい。
工程1:カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料化合物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程
工程2:工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程
【0018】
〔工程1〕
工程1は、カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料化合物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程である。
【0019】
工程1におけるカチオン性界面活性剤として、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられる。アルキルアミン塩は、好ましくは第2級アミン又は第3級アミンの塩であり、より好ましくは第3級アミンの塩である。アルキルアミン塩及びアルキル第4級アンモニウム塩は、少なくとも1つの長鎖アルキル基を有し、任意に、好ましくは少なくとも1つの長鎖アルキル基、短鎖アルキル基及びベンジル基から選ばれる基を有する化合物が好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。短鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、そして、好ましくは4以下であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1、すなわちメチル基である。
アルキルアミン塩としては、長鎖アルキル基が前記炭素数の範囲である、長鎖モノアルキルモノメチル2級アミン塩、長鎖モノアルキルジメチル3級アミン塩等のアルキルアミン塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、長鎖アルキル基及び短鎖アルキル基がそれぞれ前記炭素数の範囲である、長鎖アルキルトリ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、長鎖アルキルベンジルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
アルキルアミン塩としては、ラウリルジメチルアミンアセテート、ステアリルジメチルアミンアセテート等のアルキルアミン酢酸塩が挙げられる。
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド等のアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド;ジステアリルジメチルアンモニウムブロマイド等のジアルキルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、これらの中でも、好ましくは第4級アンモニウム塩であり、より好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩であり、更に好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドであり、より更に好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはセチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
【0021】
工程1において、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン性界面活性剤に加えて、更に他の乳化剤を含んでもよい。他の乳化剤としては、高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0022】
工程1において水相成分中のカチオン性界面活性剤の含有量は、乳化滴の分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、乳化液の分散安定性に寄与しない余剰の乳化剤による乳化剤ミセルの形成を抑制し、カプセル化効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0023】
工程1で得られる乳化液の総量に対する油相成分の量は、製造効率の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、安定な乳化液を得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0024】
工程1におけるテトラアルコキシシランの添加量は、ゾル-ゲル反応を促進させ、十分に緻密なシェルを形成する観点から、工程1の香料化合物の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、そして、過剰のテトラアルコキシシランが香料化合物中に残存することを抑制する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
【0025】
工程1は、好ましくは下記の工程1-1~1-4を含む。
工程1-1:カチオン活性剤を含む水相成分を調製する工程
工程1-2:香料とテトラアルコキシシランを混合し、油相成分を調製する工程
工程1-3:工程1-1で得られた水相成分と工程1-2で得られた油相成分とを混合及び乳化し、乳化液を得る工程
工程1-4:工程1-3で得られた乳化液を、1段階目のゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセルを形成する工程
【0026】
前記乳化液の調製に用いられる撹拌手段は特に限定されないが、強い剪断力を有するホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等を使用することができる。また、ホモミキサー、「ディスパー」(商品名、プライミクス株式会社製)、「クレアミックス」(商品名、エムテクニック株式会社製)、「キャビトロン」(商品名、大平洋機工株式会社製)等を使用することもできる。
【0027】
工程1の乳化液における乳化滴のメジアン径D50は、シリカカプセル外環境に対する比表面積を少なくし、長期保持性を高める観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下、より更に好ましくは5μm以下、より更に好ましくは3μm以下である。
乳化滴のメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
工程1におけるゾル-ゲル反応の初期pHは、テトラアルコキシシランの加水分解反応と縮合反応のバランスを保つ観点、及び親水性の高いゾルの生成を抑制し、カプセル化の進行を促進する観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上であり、更に好ましくは3.5以上であり、そして、シリカシェルの形成と乳化滴の凝集の併発を抑制し、緻密なシェルを有するシリカカプセルを得る観点から、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.3以下、更に好ましくは4.1以下である。
【0029】
香料化合物を含む油相成分の酸性、アルカリ性の強さに応じて、所望の初期pHに調整する観点から、任意の酸性又はアルカリ性のpH調整剤を用いてもよい。
前記乳化液のpHが所望の値以下となることもある。その場合には、後述するアルカリ性のpH調整剤を用いて調整することが好ましい。
すなわち、工程1-4は、好ましくは、下記の工程1-4’であってもよい。
工程1-4’:工程1-3で得られた乳化液のpHを、pH調整剤を用いて調整し、1段階目のゾル-ゲル反応を行い、コアと第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程
【0030】
酸性のpH調整剤として、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液などが挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸である。
アルカリ性のpH調整剤として、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムである。
【0031】
工程1におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、水相として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意の値を選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、温度を一定範囲にするのが好ましい。該範囲としては、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0032】
〔工程2〕
工程2は、工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程である。
【0033】
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加量は、第一シェルを包接した第二シェルを形成する観点から、工程1の香料化合物に対して、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、水相に分散するシリカゾルの生成を抑制し、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは170質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。
【0034】
工程2において、工程1で得られるシリカカプセル(1)を含有する水分散体に添加するテトラアルコキシシランは、全量を一括で添加してもよく、間欠的に分割して添加してもよく、連続的に添加してもよいが、緻密性の高い第二シェルを形成する観点から、連続的に滴下して添加することが好ましい。
テトラアルコキシシランを連続的に滴下して添加する場合、その滴下時間は製造の規模に応じて適宜設定することができるが、添加するテトラアルコキシシランと水分散体との分離を抑制する観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは1200分以下、より好ましくは1000分以下、更に好ましくは500分以下である。
【0035】
本発明において、テトラアルコキシシランの添加総量、すなわち工程1及び工程2で用いられるテトラアルコキシシランの合計添加量は、工程1の香料化合物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは250質量%以下、より好ましくは200質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。テトラアルコキシシランの添加総量を上記範囲にすることにより、内包する香料化合物を長期間保持することができる。
【0036】
本発明において、工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対して、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、香料化合物の長期保持性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下であり、そして、生産効率の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量の調整は、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの量と工程1で得られる水分散体の総量とが上記範囲となるように工程1を行ってもよく、工程1で得られた水分散体に更に水を添加して希釈することにより行ってもよい。
【0037】
本発明は、生産効率の観点から、工程2において、テトラアルコキシシランの添加前に、工程1で得られた水分散体を水で希釈してもよい。工程1で得られた水分散体の希釈前の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
希釈倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、そして、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。
【0038】
工程2におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、分散媒として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意に選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃である。工程1のゾル-ゲル反応と工程2のゾル-ゲル反応とで異なる反応温度で実施しても良い。
【0039】
本発明は、工程2において、工程1で得られた水分散体に、更に有機ポリマーを水分散体を安定させ凝集を抑制する目的で添加してもよい。ここで、有機ポリマーとは重量平均分子量5,000以上の化合物を意味する。
前記有機ポリマーとしては、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーが挙げられる。
前記ノニオン性ポリマーは、水中で電荷を有しない水溶性ポリマーを意味する。ノニオン性ポリマーを用いることにより、シリカカプセルの用途に応じた機能を該シリカカプセルに付与させることができる。
前記有機ポリマーとしてノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又はアニオン性ポリマーを用いる場合、例えば本発明に係るシリカカプセルを柔軟剤組成物等の繊維処理剤組成物に用いる際には、シリカカプセルの繊維への吸着性の向上が期待できる。
本明細書において「水溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が1mg以上であるポリマーをいう。
【0040】
ノニオン性ポリマーとしては、ノニオン性モノマー由来の構成単位を有するポリマー、水溶性多糖類(セルロース系、ガム系、スターチ系等)及びその誘導体等が挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;スチレン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。同様に、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルの意味である。
【0041】
カチオン性ポリマーとしては、四級アンモニウム塩基を含有するポリマーの他、窒素系のカチオン基を有するポリマー、pH調整によりカチオン性を帯びることがあるポリマー等が挙げられる。カチオン性ポリマーを用いることにより、工程1で得られるシリカカプセル(1)が水分散体中で凝集しやすい状況を緩和することができ、続く工程2において粗大粒子等の生成を抑制できる。
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びそのコポリマー、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びそのコポリマーが好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が更に好ましい。
【0042】
カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、シリカカプセル(1)の分散性の観点及び粗大粒子の生成を抑制する観点、並びに長期保持性を向上させる観点から、好ましくは1meq/g以上、より好ましくは3meq/g以上、更に好ましくは4.5meq/g以上であり、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下である。カチオン性ポリマーにアニオン基が含まれてもよいが、その場合、カチオン性ポリマーに含まれるアニオン基当量は、好ましくは3.5meq/g以下、より好ましくは2meq/g以下、更に好ましくは1meq/g以下である。なお、本発明において、カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、モノマー組成に基づいた計算により算出したものを用いる。
【0043】
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー単位を含有するポリマーの他、スルホン酸基を有するモノマー単位を含有するポリマー、pH調整によりアニオン性を帯びるポリマー等が挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)(アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-無水マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-イソブチレン)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-スチレン)、ポリ(イソブチレン-co-マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
【0044】
有機ポリマーの添加量は、工程1で得られた水分散体に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0045】
工程2により得られるシリカカプセルは、水中に分散した状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、場合によっては、シリカカプセルを分離して使用する。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
【0046】
<コア>
本発明に係るシリカカプセルのコアは香料化合物を含む。
本発明では、繊維が発汗等の水分で湿潤した際の香り立ちの観点から、香料化合物の全量中、logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01以上8.00以下である香料化合物の割合が25質量%以上であることが好ましい。
【0047】
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、“計算logP(ClogPという場合がある)”の値が広く用いられており、本発明においても、化合物の選択に際して、ClogPの値を用いる。
【0048】
本発明においては、ClogPの値として、米国環境保護庁とSyracuse社が共同開発したソフトウェアEPI Suite(登録商標;The EstimationsProgramsInterface for Windows version 4.11)を用いて算出された値を用いる。
【0049】
本発明において、25℃における蒸気圧とは、実測値又は沸点からの蒸気圧推定によって求めたものであり、化学物質が室温で固体である場合には融点から推定される。蒸気圧は、幾つかの公知の方法(Antoine法、Modified Grain法、Mackay法等)によって推定されるが、本発明においては、米国環境保護庁(EPA)から入手できる、EPI suiteに組み込まれているMPBPWINを用いて算出した値であって、Antoine法によって算出される値とGrain法によって算出される値の平均値が、「選択されている値(Selected VP)」として算出結果に表示されている場合は、その平均値を、特に「選択されている値(Selected VP)」としての表示がない場合は、Modified Grain法によって算出された値を用いる。
【0050】
logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01以上8.00以下である香料化合物として、例えば、γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート(フルーテート)、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート(酢酸トリシクロデセニル)、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシロキシ)-2-ブタノール、シトロネリロキシアセトアルデヒド、インドール、4-メチル-3-デセン-5-オール、パラ-メンタン-8-チオール-3-オン、3-(パラ-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチルシンナメート、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、メチルアンスラニレート、ターピネオール、β-カリオフィレン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、テトラヒドロゲラニオール、2-イソブチル-4ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノール(フロローサ)、α-ダイナスコン、シスジャスモン、ビシクロ〔3.2.1〕オクタン-8-オン-1,5-ジメチル-オキシム、2,4-ジメチル-4,4α,5,9β-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、3-(パラ-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、エチル-2-tert-ブチルシクロヘキシル-カーボネート、安息香酸ヘキシル、4-アセトキシ-3-アミルテトラヒドロピラン、ドデシルアルデヒド、ジヒドロ-β-イオノン、メチルシクロオクチルカーボネート、メチルフェニルグリシド酸エチル、イソオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、チモール、ネロリンブロメリア、5,6-ジメチル-8-イソプロペニル、ビシクロ「4,4,0]-1-デセン-3-オン、3-(4-イソプロピルフェニル)-プロパナール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、メチルアンスラニル酸メチル、ドデカンニトリル3-ドデセナールが挙げられる。
【0051】
また、(a)成分の香料化合物としては、logP値が2.0よりも低い香料化合物を用いることもできる。logP値が2.0よりも低い香料化合物として、例えば、クマリン(1.5)、フェニルエチルアルコール(1.6)、cis-3-ヘキセノール(1.6)、ラズベリーケトン(1.5)、ヘリオトロピン(1.8)などが挙げられる。なお( )内の数字はlogP値である。
【0052】
また、(a)成分の香料化合物としては、logP値が5.0よりも高い香料化合物を用いることもできる。logP値が5.0よりも高い香料化合物として、例えば、2-[2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル]シクロペンタノン(5.1)、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン(5.2)、アセチルセドレン(5.2)、ネロリドール(5.7)、ベンジルアルコール(7.1)、カリオフィレン(6.3)などが挙げられる。なお( )内の数字はlogP値である。
【0053】
また、(a)成分の香料化合物としては、蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物として、例えば、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン(0.0000585)、エチレンブラッシレート(0.0000585)などが挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である。
【0054】
また、(a)成分の香料化合物としては、蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物として、例えば、2-メチル酪酸エチル(1070)、エチル-2-メチルペンタノエート(384)、リモネン(193)、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル(19.7)、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド(46.9)、リナロール(11.1)、リナリルアセテート(17.5)、テトラヒドロリナロール(9.51)、1,8-シネオール(208)、イソボルニルアセテート(14.3)、オシメン(358)、シス-3-ヘキセノール(125)、トリプラール(46.9)、スチラリルアセテート(14.9)などが挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である。
【0055】
なお、(a)成分のマイクロカプセルは香料化合物の他に希釈剤、溶剤、及び固化剤から選ばれる1種以上を内包してもよい。希釈剤ないし溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができ、脂肪酸アルコール、脂肪酸の低級アルコールエステル、及び脂肪酸のグリセリンエステルを挙げることもできる。
【0056】
[シリカカプセル]
本発明のシリカカプセル、例えば前記の様に製造したシリカカプセルは、水媒体中で繊維製品に付着した後に繊維製品から水分が蒸発する過程の終盤で壊れ、内包物を繊維製品に浸透させることができる。
【0057】
本発明のシリカカプセルは、好ましくは、前記香料化合物を含むコアと、該コアを包接する第一シェルと、第一シェルを包接する第二シェルとを有するシリカカプセルである。
本発明のシリカカプセルの第一シェルは、コアを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは5nm以上20nm以下の平均厚さを有し、第二シェルは、第一シェルを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは10nm以上100nm以下の平均厚さを有する。
シリカカプセルの第一シェル及び第二シェルの平均厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。具体的には、透過型電子顕微鏡観察下で、第一シェル及び第二シェルの厚さを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから第一シェル及び第二シェルの平均厚さの分布を求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万倍以上10万倍以下であるが、シリカカプセルの大きさによって適宜調節される。ここで、透過型電子顕微鏡(TEM)として、例えば商品名「JEM-2100」(日本電子株式会社製)を用いることができる。
【0058】
(a)成分、更に本発明に係るシリカカプセルのメジアン径D50は、長期保持性を向上させ、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度を向上させ、長期保持性を向上させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは10μm以下である。
(a)成分、更にシリカカプセルのメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0059】
本発明に係るシリカカプセルは、繊維製品処理剤組成物を調製する際は、シリカカプセルスラリーとして配合することが好ましい。繊維製品処理剤組成物を調製するときに混合する成分へのシリカカプセルスラリーの分散性を向上させる観点から、シリカカプセルスラリーには、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選ばれる界面活性剤を添加してもよい。
【0060】
なお、(a)成分のシリカカプセルは香り立ちを損なわない程度に一部凝集していてもよい。
【0061】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、処理布への良好な香り立ち、及び残香性付与の観点から、(a)成分を、(a)成分が含む香料化合物として、本発明の繊維製品処理剤組成物中に、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、そして、保存安定性、具体的には密閉容器中における組成物粒子同士の融着抑制、高温保存時の組成物の融解抑制の観点から、10質量%以下、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下含有する。
【0062】
なお、本発明では、本発明のシリカカプセルなど(a)成分の製造過程で(a)成分に取り込まれた、ポリエチレングリコール、脂肪酸、アルコール、エステル油、エーテル油、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤は、(b)成分、(c)成分としては算入しないものとする。
【0063】
〔(b)成分〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(b)成分として、数平均分子量が2000以上13000以下のポリエチレングリコールを含有する。(b)成分は、(a)成分とは別に組成物に配合されている成分である。(b)成分は、(a)成分に内包されずに組成物中に存在するものを指す。
【0064】
(b)成分のポリエチレングリコールは、良好な造粒性、保存安定性、及び組成物使用時の水溶性の観点から、数平均分子量が2000以上、好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上、より更に好ましくは5000以上であり、洗濯浴中での溶解性の観点から、13000以下、好ましくは12000以下、より好ましくは11000以下、より更に好ましくは10000以下である。ここで、(b)成分の数平均分子量は、医薬部外品原料規格 ポリエチレングリコール 平均分子量試験に記載の方法により測定される値である。
【0065】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、良好な造粒性、及び保存安定性の観点から、(b)成分を、本発明の繊維製品処理剤組成物中に、40質量%以上、好ましくは60質量%以上、そして、同様の観点から、95質量%以下、好ましくは90質量%以下含有する。
【0066】
〔(c)成分〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(c)成分として、脂肪酸、アルコール、エステル油、エーテル油、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤から選ばれる、少なくとも1種の、30℃で液体の化合物を含む。(c)成分を(b)成分とともに用いると、製造過程や保存過程などでの(a)成分の崩壊を低減できる。(c)成分は、(a)成分とは別に組成物に配合されている成分である。(c)成分は、(a)成分に内包されずに組成物中に存在するものを指す。
【0067】
30℃で液体の脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。
【0068】
30℃で液体のアルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、デシルテトラデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
【0069】
30℃で液体のエステル油として、例えばイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、安息香酸アルキル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロバンジオール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、30℃で液体のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる
【0070】
30℃で液体のエーテル油として、例えば、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、セチルジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテルなどが挙げられる。
【0071】
30℃で液体のカチオン性界面活性剤として、例えばアルキル又はアルケニル4級アンモニウム塩、アルキル又はアルケニルアミンなどの化合物で30℃で液体の化合物が挙げられる。これらは、炭素数8以上、更に10以上、そして、22以下、更に18以下のアルキル基及び/又はアルケニル基を有するものであってよい。
【0072】
30℃で液体のノニオン性界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどの化合物で30℃で液体の化合物が挙げられる。
【0073】
本発明において、アニオン性界面活性剤としてはアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、などの化合物で30℃で液体の化合物が挙げられる。
【0074】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、製造過程や保存過程などでのマイクロカプセル崩壊抑制効果発現の観点から、(c)成分を、本発明の繊維製品処理剤組成物中に、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、そして、良好な造粒性、及び保存安定性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0075】
〔その他の成分、製造方法など〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分以外の成分を含有することができる。具体的には、下記(d)成分、(e)成分などを含有することができる。
【0076】
[(d)成分]
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(d)成分として、(a)成分に内包されている香料化合物以外の香料化合物を含有することができる。
本発明においては、(a)成分のマイクロカプセル中に内包されている香料化合物と同じ香料化合物であっても、(a)成分のマイクロカプセルに内包されていない香料化合物は(d)成分として扱う。つまり、(d)成分の香料化合物は繊維製品処理剤組成物中に分散させた香料化合物であり、これらの香料化合物を外香料という場合がある。
【0077】
(d)成分として用いることができる香料化合物に特に制限はなく、(a)成分に用いられる香料化合物と同じ香料化合物を用いてもよい。(d)成分は、複数の香料化合物を含有する香料組成物として本発明の繊維製品処理剤組成物に配合することができる。
(d)成分として用いることができる香料化合物としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料や特許文献等を通じて柔軟剤などに配合することが知られている香料化合物の他に、香料メーカーが独自に調製した香料成分又は調香した香料組成物そのものを使用することができる。
(d)成分としては、例えば、β-イオノン(4.4)、γ-ウンデカラクトン(3.1)、γ-ノナラクトン(2.1)、γ-メチルイオノン(4.8)、アンブロキサン(4.8)、イソEスーパー(5.2)、エチルバニリン(1.6)、エチレンブラッシレート(4.7)、オイゲノール(2.7)、カシュメラン(IFF社製)(4.5)、クマリン(1.5)、ゲラニオール(3.5)、酢酸o,t-ブチルシクロヘキシル(4.4)、酢酸シトロネリル(4.6)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(3.4)、サンダルマイソールコア(4.7)、ジヒドロジャスモン酸メチル(3.5)、ジヒドロミルセノール(3.5)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(2.9)、ジャバノール(ジボダン製)(4.7)、ネロリンヤラヤラ(3.3)、ハバノライド(フィルメニッヒ製)(4.9)、フルーテート(花王株式会社)(3.6)、ペオニル(ジボダン製)(4.3)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.8)、ヘリオトロピン(1.8)、メチルβ-ナフチルケトン(2.9)、メチルアンスラニレート(2.3)、ラズベリーケトン(1.5)、リモネン(4.8)、及びリリアール(4.4)を挙げることができる。なお( )内の数値はlogP値である。
【0078】
なお、本発明の繊維製品処理剤組成物は、香料化合物の希釈剤や保留剤を含有してもよい。希釈剤及び保留剤としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン、イソパラフィン、及び油脂等を挙げることができる。
希釈剤及び保留剤を用いる場合、(d)成分と希釈剤及び保留剤との合計に対する希釈剤及び保留剤の量は、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。なお、これら希釈剤及び保留剤は(a)成分のマイクロカプセルに内包された香料化合物にも用いることができる。
【0079】
(d)成分は、(a)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。したがって(d)成分を併用した本発明の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に処理を施した場合、例えば、フレッシュ且つリッチな香りを付与することができる。
【0080】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(d)成分を含有する場合、(d)成分由来の香り立ち担保の観点から、その含有量は、組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、繊維製品処理剤組成物の保存安定性及び(a)成分との香りのバランスの観点から、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更により好ましくは5質量%以下である。なお、繊維製品処理剤組成物中の(d)成分は、製品に合わせてその含有量を調整することができる。
【0081】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物が(d)成分を含有する場合において、(c)成分及び(d)成分の合計の含有量は、組成物中、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、そして、保存安定性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
【0082】
[(e)成分]
本発明の繊維製品処理剤組成物は(e)成分として水溶性カチオン性ポリマーを含むことができる。(e)成分は、本発明品を繊維製品に処理した際、(a)成分の繊維製品への吸着性を高める観点で、配合することが好ましい成分である。(e)成分は、(a)成分に内包されずに組成物中に存在するものを指す。
【0083】
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びそのコポリマー、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びそのコポリマーが好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0084】
(e)成分の重量平均分子量は、好ましくは1万以上、より好ましくは10万以上、そして、好ましくは1000万以下、より好ましくは500万以下である。ここで、(e)成分の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法などの手法により測定される。
【0085】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(e)成分を含有する場合、(a)成分の吸着性を担保する観点から、その含有量は、組成物中、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上であり、製剤性、及び洗剤の洗浄性能の阻害を防ぐ観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更により好ましくは0.1質量%以下である。
【0086】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分以外の油性成分や水溶性ポリマー、色素、染料等の成分を適宜含有してもよい。
【0087】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、形態が固体であることが好ましい。固体の形態は、例えば、粉末、顆粒、粒状、錠剤など、いずれでもよい。また、本発明の組成物は造粒物からなるものであってもよい。本発明の繊維製品用処理剤組成物は、例えば、複数の粒子により構成され、前記粒子の平均粒径が0.01mm以上、更に0.1mm以上、そして、100mm以下、更に10mm以下であってよい。なお、かかる平均粒径は、例えば乾式篩法などの手法により測定される。
【0088】
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、水の含有量が、例えば25質量%以下、更に15質量%以下、更に8質量%以下であってよい。
【0089】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を混合することで製造できる。混合順序は問わないが、例えば、溶融状態にある(b)成分に、(c)成分を添加して(c)成分を溶解させ、次いで(a)成分を添加して混合する方法が挙げられる。(d)成分や(e)成分などの任意成分はいずれで添加してもよいが、前記方法の場合は、(d)成分は(c)成分とともに、また、(e)成分は(a)成分とともに混合することが好ましい。
【0090】
本発明の繊維製品処理剤組成物を造粒物として製造する場合、液体の成分を用いつつ容易に造粒物を製造する観点から、溶融造粒法を用いるのが好ましい。得られる造粒物の平均粒径は、洗濯浴中における溶解度の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上、より更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下、更に好ましくは3mm以下、より更に好ましくは1.5mm以下である。なお、かかる平均粒径は、例えば乾式篩法などの手法により測定される。
【0091】
本発明により、本発明の繊維製品処理剤組成物及び水を混合して得た処理液を繊維製品と接触させる、繊維製品の処理方法が提供される。この処理方法には、本発明の繊維の処理方法には、本発明の繊維製品用処理剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。本発明の対象とする繊維製品としては、例えば、衣料、布帛、寝具、タオル等が挙げられる。
【0092】
本発明の繊維製品処理剤組成物の繊維製品1kgに対する単一1回容量は、繊維製品の良好な香り立ち、及び残香性を付与する観点から、好ましくは1g以上、より好ましくは3g以上、更に好ましくは4g以上であり、そして、過剰な香り強度付与抑制の観点から、好ましくは15g以下、より好ましくは12g以下、更に好ましくは10g以下である。
【実施例0093】
<(a)成分>
香料組成物として表1に記載した香料組成物(A-1)~(A-3)を調製した。これを下記合成例(a-1)に従って香料組成物(A-1)~(A-3)を包含するシリカカプセル(a-1)~(a-3)を調製した。
【0094】
【表1a】
【0095】
【表1b】
【0096】
〔合成例(a-1):シリカカプセル(a-1)の合成〕
(工程1)
0.91gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を224.13gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、60.03gの前記表1に示す配合割合の香料組成物(A)のうち(A-1)の香料組成物と15.10gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数9,000rpmで10分間混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴のメジアン径D50は1.3μmであった。
得られた乳化液のpHを1質量%硫酸水溶液を用いて3.7に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、24時間撹拌し、表1の香料組成物(A)からなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するシリカカプセルを含有する水分散体を得た。
【0097】
(工程2)
工程1で得られた水分散体280.0gに対し、8.4gのTEOSを420分かけて添加した。滴下後、更に17時間撹拌させて第一シェルを包接する第二シェルを形成し、表1の香料組成物(A)が非晶質シリカで内包されたシリカカプセル(a-1)を含有する水分散体を得た。シリカカプセル(a-1)のメジアン径D50は2.1μmであった。乳化滴及びシリカカプセル(a-1)のメジアン径D50は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40-0iに設定した。乳化液又はシリカカプセルを含む水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準でメジアン径D50を求めた。なお、シリカカプセル(a-1)の第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。
【0098】
合成例(a-1)において、香料組成物Aを(A-2)に代えてシリカカプセル(a-2)を、また、香料組成物Aを(A-3)に代えてシリカカプセル(a-3)を、それぞれ合成した。シリカカプセル(a-2)及び(a-3)のメジアン系D50、第一シェルの厚さ、第二シェルの厚さはどれもシリカカプセル(a-1)と同等であった。
【0099】
<(b)成分>
(b-1):K-PEG6000LA (花王(株)製)、ポリエチレングリコール、数平均分子量8500
【0100】
<(c)成分>
[(c-1):脂肪酸]
(c-1-1):ルナックО.V(花王(株)製、オレイン酸)
【0101】
[(c-2):アルコール]
(c-2-1):カルコール2098(花王(株)製、ラウリルアルコール)
【0102】
[(c-3):エステル油]
(c-3-1):エキセパールM-OL(花王(株)製、オレイン酸メチル)
【0103】
[(c-4):エーテル油]
(c-4-1):ペネトールGE-EH(花王(株)製、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル)
【0104】
[(c-5):カチオン性界面活性剤]
(c-5-1):下記合成例c-1で製造された4級アンモニウム塩化合物
<合成例c-1>:(c-5-1)の製造
トリエタノールアミンと、後述するRCOOHで表される組成の脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.87/1で、エステル化反応させ、エステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸(組成は後述の通り)が1質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。
【0105】
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、(c)成分である(c-5-1)成分を66質量%、エタノール15質量%、未反応アミン塩(メチル硫酸塩として)17質量%、未反応脂肪酸1質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、このうち下記一般式(1)において、Rがアシル基であり、R及びRが水素原子であり、Rがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物が(c-5-1)成分中22質量%、下記一般式(1)において、R及びRがアシル基であり、Rが水素原子であり、Rがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物が(c-5-1)成分中58質量%、一般式(1)において、R、R及びRがアシル基であり、Rがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物が(c-5-1)成分中20質量%であった。また4級化率は80質量%であった。
【0106】
【化1】
【0107】
なお(c-5-1)を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
オレイン酸:80質量%
リノール酸:10質量%
リノレン酸:2質量%
ステアリン酸:2質量%
パルミチン酸:6質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお配合表の数値は(c-5-1)成分濃度に換算している。
【0108】
[(c-6):ノニオン性界面活性剤]
(c-6-1):エマルゲン106(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、アルキル基の炭素数12、エチレンオキシド平均付加モル数4.6、アルキル基の炭素数が12である直鎖第1級アルコールに、エチレンオキシドが平均で4.6付加した非イオン性界面活性剤)
(c-6-2):ソフタノール 33((株)日本触媒製、ポリオキシエチレンアルキル(sec-12~14)エーテル、エチレンオキシド平均付加モル数3、アルキル基の炭素数が12~14である第2級アルコールに、エチレンオキシドが平均で3モル付加した非イオン性界面活性剤)
(c-6-3):ソフタノール 70H((株)日本触媒製、ポリオキシエチレンアルキル(sec-12~14)エーテル、エチレンオキシド平均付加モル数7、アルキル基の炭素数が12~14である第2級アルコールに、エチレンオキシドが平均で7モル付加した非イオン性界面活性剤)
(c-6-4):レオドール SP-L10(花王(株)製、ソルビタンモノラウレート)
(c-6-5):レオドール TW-L106(花王(株)製、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)
(c-6-6):エマノーン 1112(花王(株)製、ポリエチレングリコールモノラウレート)
(c-6-7):アミート 105(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルアミン)
【0109】
[(c-7):アニオン性界面活性剤]
(c-7-1):エマール 270J(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩)
(c-7-2):ぺレックス TR(花王(株)製、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム)
【0110】
<(c’)成分:(c)成分の比較成分>
(c’-1-1):ルナックP-95(花王(株)製、ステアリン酸)
(c’-2-1):カルコール8098(花王(株)製、ステアリルアルコール)
(c’-6-1):レオドール SP-S10V(花王(株)製、ソルビタンモノステアレート)
(c’-6-2):エマノーン 3299VB(花王(株)製、ポリエチレングリコールジステアレート)
【0111】
<(d)成分>
(d)成分の香料組成物として、(d-1)の調合香料を調製した。香料組成物の詳細を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
<(e)成分>
(e-1):マーコート550(ルーブリゾール社、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウム塩のコポリマー;INCI名ポリクオタニウム-7)
(e-2):ポイズC-60H(花王(株)製、トリメチルアンモニウム置換エポキシドとヒドロキシエチルセルロースとの反応物の塩;INCI名ポリクオタニウム-10)
【0114】
[実施例及び比較例]
表3、4に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、繊維製品処理剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。なお、表中の組成の質量%は、有効分の質量%((a)成分は香料化合物としての質量%)である。
予め(b)成分を70℃で溶融した後、(c)成分及び(d)成分を加えて溶解し、均一に混合した。その後、(a)成分及び(e)成分を加えて均一に分散するまで混合した。次いで、これを15℃の平板に滴下し、平均粒径1.3mmの造粒物を得た。その後、該造粒物を、20℃、40%RHの部屋に開放系で4時間静置後、繊維製品処理剤組成物を得た。この繊維製品処理剤組成物を用い、下記方法に従って保存後内包率(%)を算出した
【0115】
<保存後内包率(%)>
500mLビーカーに、300mLの水道水と市販の弱アルカリ性洗剤(花王株式会社、アタック)270mg投入し、市販の撹拌スターラーを使用して1分間撹拌した。その後、上記方法で調製した繊維製品処理剤組成物を300mg投入して、30分間撹拌して溶解させた。撹拌後、減圧装置((株)アドバンテック)とメンブレンフィルター(0.45μm、メルク社製)を用いて500mLビーカー中の水道水を濾過して、香料組成物(A)が内包された状態の(a)成分(メンブレンフィルター)と崩壊した(a)成分から漏出した香料組成物(A)(濾液)を分離した。濾過後、メンブレンフィルターをガラス瓶に入れ、25mLのメタノールを加え、60分間超音波処理による抽出を行った(以下、サンプル(A)と表記)。ガスクロマトグラフィー(島津製作所)を用いて、サンプル(A)中のメチルジヒドロジャスモネートの量を算出した。この値を使用して、下記式(I)により保存後内包率を算出した。結果を表3、4に示す。
保存後内包率(%)=(サンプル(A)中の指標香料の量)/(投入した繊維製品処理剤組成物中の指標香料の量)×100・・・(I)
ここで、指標香料は、香料組成物(A)として、(A-1)と(A-2)を用いた場合はメチルジヒドロジャスモネートであり、(A-3)を用いた場合はテトラヒドロリナロールであった。
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
表3、4の結果の通り、実施例の繊維製品処理剤組成物は、保存後内包率が高く、配合された(a)成分の半数以上が香料組成物(A)を内包した状態で存在していることが分かる。一方、比較例の繊維製品処理剤組成物は、保存後内包率が低く、配合された(a)成分の大半が配合から保存の過程で崩壊して香料組成物(A)を内包できていないことが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:シェルと、該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル 0.1質量%以上10質量%以下(ただし(a)成分が含む香料化合物として)
(b)成分:数平均分子量が2000以上13000以下のポリエチレングリコール 40質量%以上95質量%以下
(c)成分:脂肪酸、アルコール、エステル油、エーテル油、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の、30℃で液体の化合物
【請求項2】
(a)成分のシェルがシリカを含む、請求項1に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
(a)成分のメジアン径D50が、0.1μm以上100μm以下である、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
(a)成分が、前記コアを包接する20nm以下の平均厚さを有する第一シェルと、第一シェルを包接する100nm以下の平均厚さを有する第二シェルとを有するマイクロカプセルである、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
(d)成分として、(a)成分に内包されている香料化合物以外の香料化合物を含有する、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
(e)成分として、水溶性カチオン性ポリマーを含有する、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
複数の粒子により構成され、前記粒子の平均粒径が100mm以下である、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。