(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095822
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】非常用設備及び消火器収納装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20240703BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20240703BHJP
A62C 13/78 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
A62C13/78 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066549
(22)【出願日】2024-04-17
(62)【分割の表示】P 2022180796の分割
【原出願日】2017-02-23
(31)【優先権主張番号】P 2016168670
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】道路側及び監視員通路側から消火器箱の扉を開いて簡単且つ容易に消火器の取出しを可能とする。
【解決手段】トンネルの道路面より上方にある監視員通路14の路面下に消火器50が収納された消火器箱20が埋込み設置される。消火器箱20は、道路15側に形成された前面扉開口と、監視員通路14の路面側に形成された上面扉開口と、前面扉開口を開閉する前扉30と、上面扉開口を開閉する上扉32を備え、前扉30及び上扉32が開放状態のときに形成される、前面扉開口から上面扉開口にかけて一連をなす開口部を介して、道路15側及び監視員通路14の路面上側から、消火器箱20内に収納された消火器50が外部へ取出される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの道路面より上方にある監視員通路の路面下に埋込まれて配置され、消火器が収納された消火器収納部を備えた非常用設備であって、
前記消火器収納部は、
設置状態で前記トンネルの道路側に形成された前面扉開口と、
設置状態で前記監視員通路の路面側に形成された上面扉開口と、
前記前面扉開口を開閉する前扉と、
前記上面扉開口を開閉する上扉と、
を備え、
前記前扉及び前記上扉が開放状態のときに形成される、前記前面扉開口から前記上面扉開口にかけて一連をなす開口部を介して、道路側及び監視員通路の路面上側から、前記消火器収納部内に収納された前記消火器が外部へ取出し可能であることを特徴とする非常用設備。
【請求項2】
トンネルの道路面より上方にある監視員通路の路面下に埋込まれて配置され、消火器が収納された消火器収納部を備えた消火器収納装置であって、
前記消火器収納部は、
設置状態で前記トンネルの道路側に形成された前面扉開口と、
設置状態で前記監視員通路の路面側に形成された上面扉開口と、
前記前面扉開口を開閉する前扉と、
前記上面扉開口を開閉する上扉と、
を備え、
前記前扉及び前記上扉が開放状態のときに形成される、前記前面扉開口から前記上面扉開口にかけて一連をなす開口部を介して、道路側及び監視員通路の路面上側から、前記消火器収納部内に収納された前記消火器が外部へ取出し可能であることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項3】
前記上面扉開口は、前記消火器収納部の背面部から前面部にかけて前記前面扉開口と同じ横幅に形成され、
前記上扉は、前記上面扉開口の全面を開口することを特徴とする請求項1記載のトンネル非常用設備又は請求項2記載の消火器収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視員通路に埋込み設置されて消火器が取り出し自在に収納された非常用設備及び消火器収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道などのトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。
【0003】
このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器、手動通報装置及び非常電話が設けられ、また火災の消火や延焼防止のために消火栓装置及び消火器箱が設けられ、更にトンネル躯体を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧設備などが設置され、非常用設備の設備機器を監視センターに設けられた防災受信盤からの伝送回線に接続して監視制御が行われている。
【0004】
例えば消火栓装置は、トンネル内に設けた監視員通路に面した側壁に沿って50メートル間隔で設置され、開放自在な消火栓扉を備えた筐体に、先端にノズルを装着したホースとバルブ類が収納されている。
【0005】
また、消火器箱は、消火栓装置と一体に設けられるか、あるいは消火器箱単独で設けられ、トンネル内に設けた監視員通路に面した側壁に沿って例えば50メートル間隔で設置されている。
【0006】
監視員通路は路面に対し1メートル程度高くした側壁通路として設けられており、トンネル内の車両通行を妨げることなく且つ安全にトンネル内に設置している消火器箱を含む各種の機器の点検を行うことを可能としている。
【0007】
火災を伴う車両事故が発生した場合には、事故車両の運転者等の利用者は、消火器箱の消火器扉を開いて消火器を取出して消火作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-181057号公報
【特許文献2】特開2008-055024号公報
【特許文献3】特開2009-285126号公報
【特許文献4】特開2017-202232号公報
【特許文献5】特開2017-209145号公報
【特許文献6】特開2016-059790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、シールド工法等により作られた都市型トンネルにあっては、トンネル壁面に消火器箱を埋込み設置できない構造であり、監視員通路側面(壁面)に消火器箱を埋込み設置する必要がある。
【0010】
しかしながら、従来のように扉を前開きする消火器箱を監視員通路に設置した場合には、消火器扉が開くと建築限界を超えて道路側に飛び出す問題がある。
【0011】
一方、この問題を解決できたとしても、消火栓器箱をトンネル内の道路に面した監視員通路壁面に沿って埋込設置した場合、車両火災が発生して消火器扉の前に車両が停止すると、停止車両が邪魔になって、消火器扉を開けて消火器を取り出すことができない場合がある。更に、仮に監視員通路上から操作できる場合でも、監視員通路から消火器扉を開くには、体をかがめて手を伸ばす必要があり、消火器箱からの消火器の取出しに手間取ってしまう場合もある。
【0012】
本発明は、道路側及び監視員通路側から消火器箱の扉を開けて簡単且つ容易に消火器の取出しを可能とする非常用設備及び消火器収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(非常用設備)
本発明は、トンネルの道路面より上方にある監視員通路の路面下に埋込まれて配置され、消火器が収納された消火器収納部を備えた非常用設備であって、
消火器収納部は、
設置状態でトンネルの道路側に形成された前面扉開口と、
設置状態で監視員通路の路面側に形成された上面扉開口と、
前面扉開口を開閉する前扉と、
上面扉開口を開閉する上扉と、
を備え、
前扉及び上扉が開放状態のときに形成される、前面扉開口から上面扉開口にかけて一連をなす開口部を介して、道路側及び監視員通路の路面上側から、消火器収納部内に収納された消火器が外部へ取出し可能であることを特徴とする。
【0014】
(消火器収納装置)
本発明は、トンネルの道路面より上方にある監視員通路の路面下に埋込まれて配置され、消火器が収納された消火器収納部を備えた消火器収納装置であって、
消火器収納部は、
設置状態でトンネルの道路側に形成された前面扉開口と、
設置状態で監視員通路の路面側に形成された上面扉開口と、
前面扉開口を開閉する前扉と、
上面扉開口を開閉する上扉と、
を備え、
前扉及び上扉が開放状態のときに形成される、前面扉開口から上面扉開口にかけて一連をなす開口部を介して、道路側及び監視員通路の路面上側から、消火器収納部内に収納された消火器が外部へ取出し可能であることを特徴とする。
【0015】
(上面扉開口)
上面扉開口は、消火器収納部の背面部から前面部にかけて前面扉開口と同じ横幅に形成され、
上扉は、上面扉開口の全面を開口する。
【発明の効果】
【0016】
(基本的な効果)
本発明は、トンネル内消火器箱に於いて、トンネル壁面に沿った監視員通路に埋込み設置され、消火器が収納された筐体と、道路側となる筐体の前面扉開口に、下側に固定された固定扉と上側に上下方向にスライド開閉自在に配置された複数枚のスライド扉とを備えた前扉と、監視員通路面側となる筐体の扉開口に、前開き及び後開き自在に配置された上扉とが設けられ、前開き自在な配置として、上扉の後縁部を軸として開閉自在に配置され、後開き自在な配置として、上扉の前縁部を軸として開閉自在に配置されるため、車両事故による火災の発生時に、利用者は、道路に面した前扉をスライド開放させると共に上扉を奥行方向に開く前開きとすることで、消火器箱の前面上部及び上面が大きく開口され、筐体内に収納されている消火器を簡単且つ容易に取出して消火を行うことができる。
【0017】
また、前扉は、固定扉と少なくとも2枚のスライド扉の3枚で構成されており、スライド扉をスライド落下させて開放した場合、固定扉の上側の2/3の領域が開放され、筐体内に収納された消火器の上側の半分程度が露出され、十分な扉開放面積が確保されることで、道路側からの消火器の取出しを容易に行うことを可能とする。
【0018】
また、消火器箱の前に車両が停止して利用者が道路側からの操作ができない場合には、利用者は監視員通路に登り、かがみこんで上扉を道路側に開く後開き操作を行うことで、停止車両に妨げられることなく、筐体内から消火器を簡単且つ容易に取出して消火を行うことができる。
【0019】
また、上扉が道路側に開いた場合にフェンスとして機能するため、上部開口から消火器を取り出す場合に、利用者が道路側に落ちるような危険が回避され、また、内部から取り出した消火器を道路側に落としてしまうようなことも防止可能となる。
【0020】
(前開き機構と後開き機構による効果)
また、上扉は、前開きハンドルにより操作される前開き機構と、後開きハンドルにより操作される後開き機構とを備え、前開き機構は、上扉が閉鎖位置にある場合に、前扉の上部を係止して閉鎖位置に保持しており、前開きハンドルを操作した場合に、前扉の係止解除によりスライド落下させて前面を開口させると共に上扉の前開き操作による上面の開口を可能とし、後開き機構は、上扉が閉鎖位置にある場合に、筐体側に係止して閉鎖位置に保持しており、上扉の閉鎖位置で後開きハンドルを操作した場合に、筐体側との係止を解
除して上扉の後ろ開き操作による上面の開口を可能とするようにしたため、道路側から操作する場合は、道路から操作可能な位置にある前開きハンドルをリフトアップすることで、前扉がスライド開放すると共に上扉を前開きすることができ、また、監視員通路側から操作する場合は、監視員通路から操作可能な位置にある後開きハンドルをリフトアップすることで、上扉を後開きすることができ、車両事故による火災の発生時に、利用者は、消火器箱の設置場所の状況に応じたハンドル操作により簡単且つ確実に前扉及び又は上扉を開き、消火器を取り出して消火を行うことができる。
【0021】
(前開き機構と後開き機構の詳細構造による効果)
また、前開き機構は、上扉の前部に配置され、前開きハンドルの非操作でハンドル本体の両側に取り出された第1軸部材を前扉の裏面軸穴に挿入して前扉を係止させ、前開きハンドルの操作で第1軸部材を裏面軸穴から引き外して上扉の係止を解除させる第1扉開閉機構と、上扉の前部両端の下面に支持された第2軸部材を、筐体側に配置されたボールキャッチ機構又は半円筒状の軸受部により上方に着脱自在に軸支させる第2扉開閉機構とを備え、後開き機構は、前開きハンドルの非操作でハンドル本体の両側に取り出された第3軸部材を筐体側軸穴に挿入して上扉を閉鎖位置に係止させ、後開きハンドルの操作で第3軸部材を筐体の軸穴から引き外して上扉の係止を解除し、第2扉開閉機構の第2軸部材を中心に後開き可能とする第3扉開閉機構を備えたため、第1及び第3扉開閉機構は、ハンドル操作により軸部材を固定側の軸穴に着脱させることで、扉を閉鎖位置に係止する閉鎖保持機能と、上扉の回転させる回転軸としての機能を一つの構造で実現しており、機構構造が簡単となる。
【0022】
また、第2扉開閉機構も上扉を閉じた場合に閉鎖位置に係止させる閉鎖保持機能と、上扉を後開きする場合の回転軸としての機能を一つの構造で実現しており、機構構造が簡単となる。
【0023】
(固定扉の後側にスライド扉を配置した前扉の効果)
また、前扉は、固定扉の後側に複数枚のスライド扉が上下方向にスライド開閉自在に配置されたため、前扉のスライド扉は固定扉の内側にスライド落下して開放され、落下するスライド扉により道路利用者が足先を挟まれることがなく、安全に前扉を開放可能とする。
【0024】
(固定扉の前側にスライド扉を配置した前扉の効果)
また、前扉は、固定扉の前側に複数枚のスライド扉が上下方向にスライド開閉自在に配置され、この場合、スライド扉の落下による衝撃を吸収する緩衝装置が設けられたため、落下したスライド扉に道路利用者の足先が挟まれることを防止する。
【0025】
(固定扉の中に収納されるスライド扉を配置した前扉の効果)
また、複数枚のスライド扉を備えた前扉は、固定扉の内部にその上に位置するスライド扉が収納され、スライド扉の内部にその上に位置する他のスライド扉が収納されるように、上下方向にスライド開閉自在に配置されるようにしたため、落下するスライド扉により道路利用者が足先をスライド落下するスライド扉に挟まれることがなく、安全に前扉を開放可能とする。
【0026】
また、固定扉及びスライド扉の内部の左右両側にガイド支柱が起立され、ガイド支柱の先端は、閉鎖状態にある上扉の裏面に当接して支承する位置に配置されたため、固定扉の内部に上側に位置する複数枚のスライド扉を滑らかにスライド開閉できる。また、ガイド支柱の先端で上扉を支えることにより、上扉に人が乗っても確実に支持可能とする。
【0027】
(スライド扉の引き上げ連結による効果)
また、複数枚のスライド扉は、上側に位置するスライド扉を上方に引き上げた場合に、下側に位置するスライド扉を連結して引き上げる扉連結構造が設けられたため、開放した上扉を閉鎖する場合、上側に位置するスライド扉を引き上げることで、下側に位置するスライド扉を扉連結構造により芋づる式に引き上げて閉鎖位置に保持させることを可能とする。
【0028】
(消火器箱前扉の分割銘板による効果)
また、前扉を構成する上下方向に分割された複数枚のスライド扉の表面に、消火器を示す文字及び又は図形が縦書きに分割して配置されたため、消火器を示す銘板文字を明確に視認可能な十分に大きな文字サイズにより配置できる。これは前扉を構成する複数枚のスライド扉を落下させて開放した場合の開口面積を大きくして消火器を容易に取り出すためには、スライド扉の分割枚数を例えば5枚というように増やす必要がある。しかし、分割数が増加するとスライド扉の縦方向の幅が狭くなり、「消火器」を示す銘板文字を横書きで1枚のスライド板に配置すると文字サイズが小さくなる問題がある。そこで、複数枚のスライド扉の表面に、消火器を示す銘板文字を縦書きに分割して配置させることで、分割数の増加によりスライド扉の縦方向の幅が狭くなっても、これに影響されることなく、必要とする十分に大きな文字サイズをも銘板文字を配置することができ、更に、「消火器」の銘板文字に加えて消火器を示すピクトグラムを含めた十分なサイズの銘板文字の配置が可能となる。
【0029】
(消火器の取出し構造による効果)
本発明の別の形態にあっては、トンネル内消火器箱に於いて、トンネル壁面に沿った監視員通路に埋込み設置され、消火器が収納された筐体と、道路側となる筐体の前面扉開口に、下側に固定された固定扉と上側に上下方向にスライド開閉自在に配置された複数枚のスライド扉とを備えた前扉と、監視員通路面側となる筐体の扉開口に、前開き及び後開き自在に配置された上扉と、前扉及び上扉が開放された状態で、筐体内に収納されている消火器を斜め上の前方に傾斜させて取出し可能とする消火器取出し構造とが設けられたため、消火器は10キログラム程度と重いが、開放した前扉から消火器を取り出す場合、前方に消火器を傾け、この状態で引き出すことができ、道路利用者は重い消火器を直接持ち上げて取り出す必要がないことから、筐体内から消火器を簡単且つ容易に取り出すことを可能とする。
【0030】
(ガイドローラによる消火器取出し構造による効果)
また、消火器取出し構造は、前扉を構成する最上部のスライド扉が開放された状態で、内側に位置するスライド扉の内側上縁にガイドローラが配置されるようにしたため、消火器を前方に傾けて引き出す場合、消火器をガイドローラに当てながら引き出すことで、筐体内から消火器を簡単且つ容易に取り出すことを可能とする。
【0031】
(2本の中空パイプによる消火器取出し構造の効果)
また、消火器取出し構造は、前扉を構成する複数枚のスライド扉が開放された状態で、内側に位置するスライド扉の下部内側に大径の中空パイプが配置されると共に上部内側に小径の中空パイプが配置されるようにしたため、前扉を構成する複数枚のスライド扉が開放した状態で消火器を前方に引き出す場合、扉下側の大径中空パイプと扉上側の小径中空パイプに消火器が当たることで斜めに傾き、傾いたまま大径中空パイプと上側の小径ガイドパイプに沿って消火器を引き出すことで、筐体内から消火器を簡単且つ容易に取り出すことを可能とする。
【0032】
(円筒台座による消火器取出し構造の効果)
また、消火器取出し構造は、消火器を収納させる円筒台座と、円筒台座の底部に設けられ、円筒台座を前後方向に回動させる回動軸と、円筒台座の内部円周方向に配列されたガイドローラとが設けられたため、筐体内から消火器を取り出す場合に、回動軸で支持された円筒台座に消火器が収納されていることから、簡単に消火器を前方に傾けることができ、また、円筒台座の内部円周方向にガイドローラが配列されていることから、円筒台座から簡単に消火器を抜き出すことを可能とする。
【0033】
また、前扉及び上扉が閉鎖している通常状態で、円筒台座に収納された消火器は、円筒台座の底部を回動軸で支持していることで、筐体内で背面側に傾いた状態で収納されており、前方に倒れることがないため、前扉を構成している複数枚のスライド扉の自重落下による開放が消火器の前方への傾きで妨げられることがない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】シールドトンネル内に設置した消火器箱を含むトンネル非常用設備を示した説明図
【
図2】消火器箱の外観を消火栓収納箱と共に示した図
【
図3】上扉を前開きし前扉をスライド落下して開放させた消火器箱を示した説明図
【
図6】消火器箱の前扉側を内部から見て示した説明図
【
図7】上扉を前開きして前扉をスライド開放させる第1扉開閉機構の機能構成を示した説明図
【
図8】上扉を閉鎖位置に係止すると共に上扉を後開きさせる第2扉開閉機構を横断面で示した説明図
【
図9】固定扉の裏側でスライド扉をスライド開閉させる前扉の開閉構造を示した説明図
【
図10】固定扉の前側でスライド扉をスライド開閉させる前扉の開閉構造を示した説明図
【
図11】固定扉の中にスライド扉を収納するようにスライド開閉させる前扉の開閉構造を示した説明図
【
図12】スライド扉のガイドローラにより消火器を道路側に傾斜させて取り出す消火器取出し構造を示した説明図
【
図13】大径ガイドローラと小径ガイドローラにより消火器を道路側に傾斜させて取り出す消火器取出し構造を示した説明図
【
図14】消火器を収納した円筒台座により消火器を道路側に傾斜させて取り出す消火器取出し構造を示した説明図
【
図15】消火器箱の他の実施形態における外観を通報装置扉側と共に示した説明図
【
図16】前扉をスライド落下して開放させた
図15の消火器箱を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
[トンネル非常用設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火器箱を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。
図1に示すように、シールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版17により仕切られることで道路15が設けられており、この例にあっては、道路15は1方向2車線としている。
【0036】
床版17で仕切られた道路15の左側のトンネル壁面12に沿って監視員通路14が設けられ、監視員通路14の下側の内部空間はダクト22として利用され、電線管等が敷設される。監視員通路14は例えば高さが90センチメートル、横幅が70センチメートルといった大きさをもつ。
【0037】
道路15が形成された床版17の下側はトンネル横方向に複数の区画に仕切られており、例えば、監視員通路14の下に位置する区画は、管理用通路23として使用され、また、管理用通路23はトンネル内での火災発生時には、緊急避難通路として使用される。管理用通路23には給水本管24が敷設されている。
【0038】
トンネル10の長手方向の50メートルおきには、消火栓設備16が設置され、消火栓設備16はホースが収納された消火栓収納箱18と例えば2本の消火器を収納した消火器箱20が配置され、消火栓収納箱18に対し放水制御機構収納部25が管理用通路23に分離して設置されている。
【0039】
消火器箱20及び消火栓収納箱18は、監視員通路14の路面及び道路15側の壁面にかけて箱形に刳り貫かれた消火栓埋込部に配置されている。なお、消火器箱20は消火器収納箱18から分離して配置される場合もあるが、以下の説明は、消火栓収納箱18と一体に設けた場合を例にとっている。
【0040】
[消火栓設備]
(消火栓収納箱の外観構造)
図2は消火器箱を消火栓収納箱と共に示した説明図、
図3は上扉を前開きして前扉をスライド落下して開放させた消火器箱を示した説明図、
図4は上扉を後開きした消火器箱を示した説明図である。
【0041】
図2に示すように、消火器箱20は、監視員通路14の路面下の内部空間に埋込み設置されている。消火器箱20は、筐体31の前面中央に前扉30が設けられ、前扉30は、下側に固定扉35が配置され、その上に2枚のスライド扉36a,36bが上下方向にスライド開閉自在に配置されている。
【0042】
また、消火器箱20の監視員通路14の路面側となる上面には、前扉30と同じ横幅の上扉32が配置されている。上扉32は、
図3に示す前開きと、
図4に示す後開きができる。
【0043】
ここで、上扉32で示す前開きとは、
図3に示すように、上扉32の奥行側の後縁部を軸として上向き回りに開閉されることを意味し、また、上扉32の後開きとは、
図4に示すように、上扉32の手前の前縁部を軸として上向き回りに開閉されることを意味する。
【0044】
図2に示すように、通常状態では、前扉30の最上部のスライド扉36aは閉鎖状態にある上扉32により閉鎖状態に係止されており、利用者が道路15側から操作する場合には、前開きハンドル34を開操作すると、上扉32に対するスライド扉36aの係止が解除され、
図3に示すように、スライド扉36a,36bは自重により固定扉35の裏側に落下して消火器箱20の前面扉開口を開放させ、また、上扉32を前開きすることで、消火器箱20の上面扉開口を開放させる。
【0045】
前扉30の開放は、固定扉35の裏側に2枚のスライド扉36a,36bが落下して開放されるため、固定扉35及びスライド扉36a,36bの高かを同じとすると、前扉30の上側の2/3が開放されることとなり、前扉30の開口領域を大きくすることで、筐体31内に収納している消火器の道路15側からの取出しをより行い易くしている。
【0046】
なお、本実施形態では、前扉30を固定扉35と2枚のスライド扉36a,36の合計3枚の扉により3分割しているが、分割数を更に増やすことで、前扉30を開放した場合の開口領域を更に大きくして、筐体31内に収納している消火器の道路15側からの取出しをより行い易くできる。
【0047】
また、利用者が監視員通路14側から操作する場合には、後開きハンドル38を開操作すると、筐体31に対する上扉32の係止が解除され、
図4に示すように、上扉32を後開きすることで、消火器箱20の上面扉開口を開放させる。
【0048】
図2に示すように、消火器箱20の前面右側には通報装置パネル扉42が設けられる。通報装置パネル扉42には、赤色表示灯44、発信機45、電話ジャック46及び応答ランプ48が設けられている。赤色表示灯44は常時点灯し、消火栓設備の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機45を押して押し釦スイッチをオンすると、発信信号が監視室の火災受信機に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が火災受信機から送られて、応答ランプ48が点灯され、更に、赤色表示灯44が点滅される。
【0049】
[前扉及び上扉の開閉機構]
図5は前扉及び上扉を閉鎖した消火器箱を正面及び平面から示した説明図、
図6は消火器箱の前扉側を内部から見て示した説明図、
図7は上扉との係止を解除して前扉をスライド開放させる第1扉開閉機構の機能構成を示した説明図、
図8は上扉を閉鎖位置に係止すると共に上扉を後開きさせる第2扉開閉機構を横断面で示した説明図である。
【0050】
(前開き機構と後ろ開き機構)
図5乃至
図6に示すように、消火器箱20の上面扉開口に配置された上扉32は、前開きハンドル34により操作される前開き機構と、後開きハンドル38により操作される後開き機構を備える。
【0051】
上扉32の前開き機構は、上扉32が図示の閉鎖位置にある場合に、前扉30の中の最上部に位置するスライド扉36aの上部を第1扉開閉機構60により係止して閉鎖位置に保持しており、上扉32の前縁に下向きに配置されている前開きハンドル34をリフトアップ(開操作)した場合に、上扉32に対するスライド扉36aの係止解除により2枚のスライド扉36a,36bを固定扉35の裏側にスライド落下させ、2枚のスライド扉36a,36bで閉鎖していた前面扉開口を開放させる。
【0052】
また、上扉32を奥行方向に開く前開き操作に対し、第2扉開閉機構62による筐体31側との係止を解除し、上扉32の奥行側に配置された第3扉開閉機構64の軸中心線85を回転軸として上扉32を前開きすることで、上面を開口させる。
【0053】
上扉32の後開き機構は、上扉32が閉鎖位置にある場合に、第3扉開閉機構64により上扉32を筐体31側に係止して閉鎖位置に保持しており、上扉32の後縁側に設けられた後開きハンドル38を操作した場合に、筐体31側との係止が解除され、上扉32の前縁側に配置された第1扉開閉機構60及び第2扉開閉機構62の軸中心線75を回転軸として、上扉32の後開きすることで、上面を開口させる。
【0054】
(第1扉開閉機構)
図4乃至
図7に示すように、前扉30における最上部のスライド扉36aの上部中央と上扉32の前縁中央に配置された第1扉開閉機構60は、前開きハンドル34の裏側のハンドル本体34aから両側に軸部材(第1軸部材)66を突出させており、軸部材66の先端は、スライド扉36aの裏面に固定された軸受部68の軸穴に挿入されており、これによる上扉32にスライド扉36aを係止させて閉鎖位置に保持させている。
【0055】
スライド扉36aの下側に位置するスライド扉36bは、スライド扉36aが上扉32に係止されて閉鎖位置に保持されると、スライド扉36aの裏側で吊り下げられるように連結されることで、閉鎖位置に保持される。
【0056】
ハンドル本体34aの軸部材66は前開きハンドル34をリフトアップすると、内側に引き込まれ、軸受部68の軸穴から抜けることで、スライド扉36aの係止が解除され、スライド扉36a,36bは自重によりスライドしながら固定扉35の裏側に落下して前面上部を開口させる。
【0057】
第1扉開閉機構60の詳細は、
図7(A)に示すように、ハンドル本体34a内に、一対の屈曲したリンク78の一端が移動支点80で連結され、リンク78の屈曲位置が固定支点82としてハンドル本体34a側に固定され、リンク78の他端はスライド支点84として、軸部材66の軸端の支点86に連結されており、更に、移動支点80はスプリング88により図示で上方向に付勢されている。
【0058】
前開きハンドル34を操作していない場合、スプリング88の力を受けて、リンク78は外側に回動することで、軸部材66を軸受部68の軸穴に嵌め入れ、上扉32にスライド扉36aを係止させている。
【0059】
前開きンドル34をリフトアップすると、
図7(B)に示すように、図示しないリンク機構を介して移動支点80がスプリング88に抗して下側に移動し、これによりリンク78は内側に回動し、軸部材66を内側に引き込むことで、軸受部68の軸穴から軸部材66の先端を引き外し、スライド扉36aの係止が解除され、スライド扉36aはスライド扉36bと共に自重によりスライドしながら落下して前面扉開口を開放させる。
【0060】
なお、第1扉開閉機構60は
図7のリンク機構に限定されず、前開きハンドル34をリフトアップにより軸部材66を内側に引き込んで軸受部68の軸穴から引き外す適宜のリンク機構が含まれる。
【0061】
(第2扉開閉機構)
図5及び
図6に示すように、上扉32の前縁両端に配置された第2扉開閉機構62は、上扉32の内側に軸部材(第2軸部材)72を扉裏面から浮かせた状態で片持ち支持させており、筐体31側に固定された軸受部70に対し、上方から着脱自在に配置されている。
【0062】
第2扉開閉機構62は第1扉開閉機構60と同じ軸中心線75に配置されており、軸中心線75は上扉32を後開きする場合の回転中心となる。
【0063】
第2扉開閉機構62の詳細は
図8に取り出して示すように、上扉32の内側に支持部材73により軸部材72は片持ち支持されており、上扉32の閉鎖状態で筐体31側に固定された軸受部70に回転自在に嵌め込まれている。
【0064】
軸受部70には、上向きに開いた半円筒形の開口軸受部材71が設けられ、開口軸受部材71の上側にはゴム等の弾性材料で作られた一対のボールキャッチ77が配置され、開口軸受部材71に対し軸部材72を上方から着脱自在に支持させるボールキャッチ機構が構成されている。
【0065】
また、スライド扉36aの上端にはスリット79が形成され、上扉32を後開きさせる場合に、軸部材70を支持している支持部材73の回動を可能とする隙間が形成されている。
【0066】
なお、軸受部70には、ボールキャッチ77を設けずに、上向きに開いた半円筒形の開口軸受部材71を設け、開口軸受部材71により軸部材72を上方から着脱自在に受けて、回転自在に軸支するようにしても良い。
【0067】
(第3扉開閉機構)
図5(B)に示すように、上扉32の後縁中央に配置された第3扉開閉機構64は、後開きハンドル38の裏側のハンドル本体38aから両側に軸部材(第3軸部材)74を突出させており、軸部材74の先端は、筐体31の背面内面に固定された軸受部76の軸穴に挿入されており、上扉32の後縁側を筐体31側に係止させて閉鎖位置に保持させている。
【0068】
軸部材74は後開きハンドル38をリフトアップ(開操作)すると、内側に引き込まれ、軸受部76の軸穴から抜けることで、上扉32の後縁側の係止が解除され、上扉32の前縁側に配置された第1扉開閉機構60と第2扉開閉機構62による軸中心線75(
図6参照)を中心に、後開きすることができ、これにより上部扉開口を開放させる。
【0069】
後開きハンドル38のリフトアップにより上扉32の係止を解除させる第3扉開閉機構64の機構構造は、
図7に示した、第1扉開閉機構60と同じ機構構造となる。
【0070】
[道路側から上扉及び前扉を開放させる操作]
図3に示すように、道路利用者が前開きハンドル34をリフトアップすると、前扉30における最上部のスライド扉36aの係止が解除され、スライド扉36aはスライド扉36bと共に自重によりスライド落下して固定扉35の裏側に収納され、前扉30が開放される。
【0071】
続いて、道路利用者が上扉32を奥行方向に開く前開き操作を行うと、上扉32の前縁両側に配置されている軸部材66が軸受部68から抜き出され、筐体31側に対する前縁側の係止が解除され、奥行側に配置された第3扉開閉機構64による軸中心線を中心に、上扉32は前開きされ、上部扉開口が開放される。
【0072】
このとき筐体31内に収納している消火器50の上側の略半分以上が露出した状態となり、道路15側から手を伸ばして消火器50を前方に傾け、この状態で斜め前方に引き出すことで、10キログラムといった重い消火器50を直接、持ち上げる必要がなく、簡単且つ容易に取り出すことができる。
【0073】
[監視員通路側から上扉を開放させる操作]
図4に示すように、道路利用者が監視員通路14側から消火器箱20を操作する場合には、監視員通路14から体をかがめて後開きハンドル38をリフトアップすると、上扉32の後縁側の筐体31側に対する係止が解除され、
図5及び
図6に示した、前縁側に配置された第1扉開閉機構60及び第2扉開閉機構62による共通の軸中心線75を中心に、上扉32は後開きされ、上部開口が形成され、道路関係者は上部開口から手を入れて筐体31内に収納避けている消火器50を取り出すことができる。
【0074】
この場合、上扉32が道路側に開くことでフェンスとして機能し、上部開口から消火器50を取り出す場合に、道路利用者が道路側に落ちるような危険が回避され、また、内部から取り出した消火器50を道路側に落としてしまうようなことも防止可能となる。
【0075】
[前扉の開閉構造]
(固定扉の後側にスライド扉が配置された前扉の開閉構造)
図9は固定扉の裏側でスライド扉をスライド開閉させる開閉前扉の構造を示した説明図である。
【0076】
図9に示すように、本実施形態の前扉30の開閉構造は、上側に位置する2枚のスライド扉36a,36bが、下側に位置する固定扉35の裏側でスライド開閉するように配置されている。
【0077】
最上部のスライド扉36aは、扉両側の前部にT字端面のスライダ92が垂直方向に固定されており、スライダ92の下側に位置するスライド扉36bの裏面側に、裏面側に開いたガイドレール90が扉内の垂直方向に埋込み設置されており、スライダ92をガイドレール90に嵌め入れることで、スライド扉36bに対しスライド扉36aが上下方向にスライド自在に配置されている。
【0078】
中央のスライド扉36bと固定扉35の間も同様であり、スライド扉36bは、扉両側の前部にT字端面のスライダ92が垂直方向に固定されており、スライダ92の下側に位置する固定扉35の裏面側に、裏面側に開いたガイドレール90が扉内の垂直方向に埋込み設置されており、スライダ92をガイドレール90に嵌め入れることで、固定扉35に対しスライド扉36bが上下方向にスライド自在に配置されている。
【0079】
また、最上部のスライド扉36aを図示の閉鎖位置に引き上げることで、その下のスライド扉36bを連動して閉鎖位置に引き上げるための連結構造として、スライド扉36aの両側下端から横方向に連結片94が延在され、これに対応してその下に位置するスライド扉36bの両側上端から横方向に連結受け片96が延在されており、連結受け片96の下側に連結片94が入るようにスライド扉36a,36bが重ねられることで、スライド扉36aの下端にスライド扉36bの上端を吊り下げるように連結させ、スライド扉36aの引き上げにより、その下のスライド扉36bも引き上げて閉鎖位置に保持させることができる。
【0080】
この点はスライド扉36bと固定扉35についても同様であり、スライド扉36bの両側下端から横方向に連結片94が延在され、これに対応してその下に位置する固定扉35の両側上端から横方向に連結受け片96が延在されており、連結受け片96の下側に連結片94が入るようにスライド扉36bと固定扉35が重ねられることで、スライド扉36aによりスライド扉36bを引き上げた場合に、閉鎖位置を決めるストッパとして機能する。
【0081】
このような前扉30の開閉構造によれば、図示の前扉30の閉鎖状態で開放操作により上扉側に対するスライド扉36aの係止が解除されると、スライド扉36a,36bは自重によりスライド落下して固定扉35の裏側に収納される。
【0082】
このとき道路利用者が消火器箱20の前に立った状態で前扉30の開放操作が行われたとしても、スライド扉36a,36bが固定扉35の裏側にスライド落下して収納されるため、スライド落下するスライド扉36a,36bに足先が挟まれるといった危険がなく、安全に前扉30の開放操作ができる。
【0083】
また、開放状態にある前扉30を閉鎖させる場合には、一番奥にあるスライド扉36aを手にもって上方へ引き上げると、スライド扉36bも吊り下げられた連結状態で引き上げられ、スライド扉36aを上扉32側に係止させることで、閉鎖状態に保持できる。
【0084】
(固定扉の前側にスライド扉が配置された前扉の開閉構造)
図10は固定扉の前側で移動扉をスライド開閉させる前扉の開閉構造を示した説明図であり、
図10(A)に扉構造を示し、
図10(B)にガイド機構を取り出して示す。
【0085】
図10(A)に示すように、本実施形態の前扉30の開閉構造は、上側に位置する2枚のスライド扉36a,36bが、下側に位置する固定扉35の前側でスライド開閉するように配置されている。
【0086】
最上部のスライド扉36aは、扉両側の裏面上部の支持片104から下方にロッド102が支持されており、ロッド102の先端の扉下端を超えた位置にはダブル構造のピストン100が固定され、ピストン100は下側のスライド扉36bの内部に配置されたシリンダ98に摺動自在に嵌め込まれている。
【0087】
中央のスライド扉36bとその下の固定扉35の間も同様であり、スライド扉36bは、扉両側の裏面上部の支持片104から下方にロッド102が支持されており、ロッド102の先端の扉下端を超えた位置にはダブル構造のピストン100が固定され、ピストン100は下側の固定扉35の内部に配置されたシリンダ98に摺動自在に嵌め込まれている。また、シリンダ98内の下部にはダンパ106が組み込まれ、ダンパ106は受け板106aとスプリング106bで構成されている。
【0088】
図10(B)に示すように、シリンダ98の上部開口に抜止めカバー101が装着されており、抜止めカバー101の軸穴を通してロッド102を嵌めることで、ロッド102が引き上げられた場合に、ピストン100が抜止めカバー101に当たることで、扉同士を吊り下げ状態で連結させる連結構造を実現している。
【0089】
この前扉30の開閉機構にあっても、
図10(A)に示す前扉30の閉鎖状態で上扉側との係止を解除する開放操作が行われると、スライド扉36a,36bは自重によりスライド落下して固定扉35の前側に収納される。
【0090】
このときスライド扉36bのロッド先端に設けられた固定扉35のシリンダ98内を摺動するピストン100は、落下位置でダンパ106に当たって動きが抑制され、道路利用者が消火器箱20の前に立った状態で前扉30の開放操作が行われたとしても、スライド扉36a,36bの落下速度がダンパ106により抑えられ、スライド落下したスライド扉36a,36bに足先が挟まれるといった危険がなく、安全に前扉30の開放操作ができる。
【0091】
また、開放状態にある前扉30を閉鎖させる場合には、一番奥にあるスライド扉36aを手にもって上方へ引き上げると、スライド扉36bも吊り下げられた連結状態で引き上げられ、スライド扉36aを上扉32側に係止させることで、閉鎖状態に保持できる。
【0092】
(固定扉の内部にスライド扉を収納する前扉の開閉構造)
図11は固定扉の中に移動扉を収納するようにスライド開閉させる前扉の開閉構造を示した説明図である。
【0093】
図11に示すように、本実施形態の前扉30の開閉構造は、最下部に位置する固定扉35は、そのうえのスライド扉36bが収納可能な厚さをもち、また、スライド扉36bはその上のスライド扉36aが収納可能な厚さをもっている。
【0094】
固定扉35及びスライド扉36a,36bは、扉上部が開口しており、その中に、上に位置する扉を出し入れ自在としており、また、スライド扉36a,36bの下端は外側に折り曲げられ、スライド扉36b,固定扉35の上部開口は内側に折り曲げられ、扉を閉鎖状態に引き上げる場合の連結構造が実現されている。
【0095】
更に、固定扉35の内部からスライド扉36a,36b内を貫通してガイド支柱108が固定部110により扉両側に起立されており、ガイド支柱108の先端は上扉32の裏側に位置し、上扉32の裏側に配置した補強部材112がガイド支柱108の先端に当接させるようにしている。これにより上扉32の上に人が乗ることで荷重がかかっても、ガイド支柱108により上扉32を支えることで、上扉32の強度を高めることを可能とする。
【0096】
また、固定扉35内に起立されたガイド支柱108の底部にはダンパ106が設けられ、ダンパ106は受け板106aとスプリング106bで構成され、上扉32との係止を解除してスライド落下するスライド扉36a,36bの落下速度をダンパ106により緩めて衝撃を吸収させている。
【0097】
[消火器の取出し構造]
(扉ローラによる消火器取出し構造)
図12はスライド扉のガイドローラにより消火器を道路側に傾斜させて取り出すための消火器取出し構造を示した説明図であり、
図12(A)に消火器収納状態を示し、
図12(B)に消火器の取出し状態を示し、
図12(C)に消火器傾斜角度と扉の位置関係を示す。
【0098】
図12(A)に示すように、本実施形態の消火器取出し構造にあっては、前扉30の閉鎖状態で内側に位置するスライド扉36aの上部内側にガイドローラ118が扉幅方向に亘って配置されている。
【0099】
図12(B)に示すように、前扉30及び上扉32を開放して消火器50を取り出す場合には、消火器50を手前に倒すと、開放位置に落下しているスライド扉36aに設けられたガイドローラ118に当たる位置まで消火器50が傾斜する。
【0100】
ここで、
図12(C)に示すように、回動支点50aを中心に前方に回動した消火器50の外側のライン50bは、半径Rのガイドローラ118に当接して止まり、このときの傾斜角αは、回動支点50aからガイドローラ118までの水平距離をL、スライド扉36aの内側の延長線と消火器50の外側ライン50bとの交点120までの高さをH、ガイドローラ118の中心から交点120までの高さをH1とすると、消火器50の外側ライン50bがスライド扉36aに接触させないようにガイドローラ118を配置するためには、L,H,H1を定数とすると、
tanα=(L/H)<(R/H1)
となるように、ガイドローラ118の半径Rを設定すれば良い。
【0101】
この条件を満たすことで、スライド扉36aに傾けた消火器50をスライド扉36aに接触させることなく、傾斜角αを最大にして、消火器50を取り出し易くすることが可能となる。なお、ガイドローラ118の代わりに中空パイプを用いても良い。
【0102】
(2本の中空パイプによる消火器取出し構造)
図13は大径ガイドローラと小径ガイドローラにより消火器を道路側に傾斜させて取り出すための消火器取出し構造を示した説明図である。
【0103】
図13に示すように、本実施形態の消火器取出し構造は、前扉30の開放状態で最も内側に位置するスライド扉36aには、スライド扉36aの下部内側に大径中空パイプ122が扉幅方向に亘って配置され、スライド扉36aの上部内側に小径中空パイプ124が扉幅方向に亘って配置されている。
【0104】
本実施形態で前扉30及び上扉32を開放して消火器50を取り出す場合には、筐体31内に収納された消火器50を前方に傾けると、消火器50のボンベ外側が大径中空パイプ122と小径中空パイプ124の両方に当接した傾斜角となり、この状態で消火器50を斜め上の前方へ引き出すことで、消火器50を直接持ち上げる場合に比べ、簡単且つ容易に引き出すことができる。
【0105】
なお、大径中空パイプ122と小径中空パイプ124に代えて、大径ガイドローラと小径ガイドローラを配置しても良い。
【0106】
(円筒台座による消火器傾斜構造)
図14は消火器を収納した回動自在な円筒台座により消火器を道路側に傾斜させて取り出す消火器取出し構造を示した説明図であり、
図14(A)に消火器収納状態を示し、
図14(B)に消火器の取出し状態を示し、
図14(C)に円筒台座を取り出して示す。
【0107】
図14(A)に示すように、本実施形態の消火器取出し構造にあっては、筐体31の底部に配置された回動軸116により消火器50を収納する円筒台座114が前後方向に回動自在に配置されている。
【0108】
円筒台座114は
図14(C)に示すように、上方に開口した円筒体であり、円筒体の途中の円周方向にガイドローラ126が配列されており、また、円筒台座114の前方に位置する上端外側にはゴム等の弾性体で作られた当接部材128が設けられている。
【0109】
図14(A)に示すように、前扉30及び上扉32が閉鎖された通常状態では、円筒台座114に収納された消火器50は回動軸116を中心に、想像線の消火器50cに示すように、背面側に傾斜した状態で収納されている。このため、消火器50が前方に傾斜してスライド扉36a,36bのスライド落下による扉開放が妨げられることのないようにしている。
【0110】
図14(B)に示すように、前扉30及び上扉32を開放した場合には、消火器50を手前に引くことで、円筒台座114に収納された消火器50は回動軸116を中心に前方に回動して倒れ、閉鎖状態にあるスライド扉36aに当接部材128が当接して消火器50の傾斜角が決まり、この状態で消火器50を斜め上の前方へ引き出すことで、簡単かつ容易に取り出すことができる。
【0111】
また、円筒台座114の内側には円周方向にガイドローラ126が配列されているため、円筒台座114から消火器50を滑らかに抜き出すことができる。
【0112】
なお、
図12乃至
図14に示した消火器取出し構造は、
図9に示した複数枚のスライド扉を固定扉の後側にスライド落下させる前扉開閉構造を例にとっているが、
図10に示した固定扉の前側に複数枚のスライド扉をスライド落下させる前扉開閉構造についても、同様に適用できる。
【0113】
[消火器箱の他の実施形態]
図15は消火器箱の他の実施形態における外観を通報装置扉側と共に示した説明図、
図16は前扉をスライド落下して開放させた
図15の消火器箱を示した説明図、
図17は上扉を後開きした
図15の消火器箱を示した説明図である。
【0114】
(消火栓収納箱の外観構造)
図15に示すように、消火器箱20は、筐体31の前面扉開口130に前扉30が設けられ、前扉30は、本実施形態にあっては、固定扉35の上に5枚のスライド扉36a~36eが上下方向にスライド開閉自在に配置されている。
【0115】
また、消火器箱20の監視員通路14の路面側となる上面には、前扉30と同じ横幅の上扉32が配置されている。本実施形態の上扉32は、
図4に示す後開きのみができる。
【0116】
図15に示すように、通常状態では、前扉30の最上部のスライド扉36aは前開きハンドル132のロック機構により筐体31側に係止されて前面扉開口130を閉鎖している。
【0117】
前扉30を構成する5枚のスライド扉36a~36eの前面及び筐体31の下側にかけて、「消火器」を示す銘板文字134が消火器ピクトグラム136と共に縦書きにより分割して配置されている。消火器ピクトグラム136は、赤色に塗装されたスライド扉36a~36e及び筐体31の前面に白色塗装により描かれており、消火器ヒストグラム136の白地のボンベ部分の中に、赤字の縦書きにより「消火器」の文字が描かれている。
【0118】
ここで、
図2に示したように、前扉30を構成するスライド扉36a,36bの分割数が2枚と少ない場合には、スライド扉36a,36bの縦方向の幅が十分あることから、1枚のスライド扉36bに「消火器」を示す銘板文字を横書きで配置できるが、
図15のように、前扉30を5枚のスライド扉36a~36eにより構成するように分割数を増加した場合には、スライド扉の縦方向の幅が狭くなり、十分な大きさの銘板文字を横書きに配置することができない。
【0119】
これに対し
図15に示した本実施形態にあっては、前扉30を構成する5枚のスライド扉36a~36eに、「消火器」を示す銘板文字134を縦書きにより分割して配置することで、遠方からも容易に確認可能な十分な大きさの文字サイズとすることができる。
【0120】
なお、銘板文字134及び消火器ピクトグラム136は、塗装によらず、銘板文字134及び消火器ピクトグラム136が表示されたシート部材を貼り付けるようにしても良い。
【0121】
消火器箱20の前面右側には通報装置パネル扉42が設けられ、赤色表示灯44、発信機45及び応答ランプ48が設けられている。なお、通報装置パネル扉42内には電話ジャックが設けられている。
【0122】
本実施形態の消火器箱20を利用者が道路15側から操作する場合には、前開きハンドル132を開操作すると、筐体31側の受け金具132aに対するスライド扉36aの係止が解除され、
図16に示すように、スライド扉36a~36eは自重により前面扉開口130の下側となる筐体31の裏側に落下して消火器箱20の前面扉開口130を開放させる。
【0123】
前扉30の開放は、5枚のスライド扉36a~36eが落下して開放されるため、スライド扉36a~36eの縦方向の幅を同じとすると、前扉30の上側の概ね4/5が開放されることとなり、前扉30の開口領域を大きくすることで、筐体31内に収納している消火器の道路15側からの取出しをより行い易くしている。
【0124】
本実施形態にあっては、
図16の実施形態に示すように、上扉32が開放せず、前扉30のみの開放となるが、前扉30をスライド扉36a~36eにより構成して分割数を増やしたことで、スライド扉36a~36eがスライド落下して開口した場合の開口領域を大きくすることができ、
図3に示すように、上扉32を前開きしなくとも、筐体31内から消火器を容易に取り出すことができる。
【0125】
また、利用者が監視員通路14側から操作する場合には、後開きハンドル138を持って上扉32を開操作すると、
図17に示すように、上扉32を後開きすることができ、消火器箱20の上面扉開口を開放させる。
【0126】
このように上扉32は後開きのみ可能とすることで、前開きと後開きを行う
図3の上扉32に比べ、上扉32及び前扉30の開閉機構を簡単にすることができる。
【0127】
[本発明の変形例]
(第1乃至第3扉開閉機構)
上記の実施形態に示した前扉及び上扉を開閉させる第1乃至第3扉開閉機構は一例であり、上扉の前開きに伴い前扉の係止を解除してスライド開放させ、また、前扉を閉鎖位置に保持したまま上扉を後ろ開きさせる機能であれば、適宜の機構が含まれる。
【0128】
(消火器箱の配置)
上記の実施形態は、消火栓収納箱の片側に、2本の消火器を収納する消火器箱を配置した場合を例にとっているが、消火栓収納箱の両側に、消火器1本を収納する消火器箱を設けるようにしても良い。
【0129】
(複数枚のスライド扉)
また、
図15乃至
図17の実施形態に示した複数枚のスライド扉により構成される扉構造は、消火器扉以外の扉にも適用可能である。
【0130】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0131】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:監視員通路
15:道路
16:消火栓設備
17:床版
18:消火栓収納箱
20:消火器箱
22:ダクト
23:管理用通路
24:給水本管
25:放水制御機構収納部
30:前扉
31:筐体
32:上扉
34,132:前開きハンドル
34a,38a:ハンドル本体
35:固定扉
36a~36e:スライド扉
38,138:後開きハンドル
42:通報装置パネル扉
44:赤色表示灯
45:発信器
48:応答ランプ
50:消火器
50a:回動支点
60:第1扉開閉機構
62:第2扉開閉機構
64:第3扉開閉機構
66,72,74:軸部材
68,70,76:軸受部
71:開口軸受部材
73:支持部材
75,85:軸中心線
77:ボールキャッチ
78:リンク
80:移動支点
82:固定支点
84:スライド支点
88:スプリング
90:ガイドレール
92:スライダ
94:連結片
96:連結受け片
98:シリンダ
100:ピストン
101:抜止めカバー
102:ロッド
104:支持片
106:ダンパ
106a:受け板
106b:スプリング
108:ガイド支柱
110:固定部
112:補強部材
114:円筒台座
116:回動軸
118,126:ガイドローラ
122:大径中空パイプ
124:小径中空パイプ
128:当接部材
130:前面扉開口
134:銘板文字
136:消火器ピクトグラム