(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095830
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】外装構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20240703BHJP
E04D 1/34 20060101ALI20240703BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E04D3/36 Q
E04D1/34 E
E04F13/14 103F
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067397
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2020179319の分割
【原出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【テーマコード(参考)】
2E108
2E110
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AZ01
2E108BB01
2E108BN01
2E108CC00
2E108CV09
2E108ER08
2E108FF16
2E108GG20
2E110AA52
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BD03
2E110BD14
2E110CA09
2E110CA13
2E110CA17
2E110DA09
2E110DB14
2E110DB22
2E110DC02
2E110DC03
2E110DD15
2E110GA15Z
2E110GB01Z
2E110GB28W
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボード状の平板状外装材を支持部材に、保持具を用いて取り付ける外装構造であって、暴風雨等の特殊環境に対し、その一部の平板状外装材が破損したとしても、容易に新たな平板状外装材と交換できる外装構造を提供する。
【解決手段】流れ方向に配設する複数の平板状外装材を、流れ方向に直交するように配した支持部材に、保持具を用いて取り付けられ、保持具は、平板状外装材の水下端に係合させる係合部と、平板状外装材の左右何れかの側端に係止させる係止部と、支持部材に受支させる取付部と、を有して、支持部材は、水下側が開放する係合溝と、取付部を受支状に取り付けられる受支部と、を備え、係合溝内には弾性材が配設され、各平板状外装材は、水下端が保持具の係合部に係合され、水上端が係合溝内にて圧縮された弾性材にて水下側へ弾性付勢されて取り付けられ、保持具は、取付部の側端同士が対向状に配されて目地を形成していることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ方向に配設する複数の平板状外装材を、流れ方向に直交するように配した支持部材に、前記平板状外装材の水下端に係合させる保持具を用いて取り付けられる外装構造であって、
前記保持具は、前記平板状外装材の水下端に係合させる係合部と、前記平板状外装材の左右何れかの側端に係止させる係止部と、前記支持部材に受支させる取付部と、を有して前記平板状外装材一枚当たり左右一対を用いる部材であり、
前記支持部材は、水下側が開放する係合溝と、前記保持具の取付部を受支状に取り付けられる受支部と、を備え、前記係合溝内には弾性材が配設され、
前記各平板状外装材は、その水下端が前記保持具の係合部に係合され、その水上端が前記支持部材の前記係合溝内にて圧縮された弾性材にて水下側へ弾性付勢されて取り付けられ、
隣り合う平板状外装材に取り付けられている前記保持具は、前記取付部の側端同士が対向状に配されて目地を形成していることを特徴とする外装構造。
【請求項2】
平板状外装材の裏面側に、近接状に配される補強材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の外装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボード状の平板状外装材を支持部材(横桟)に、保持具を用いて取り付ける外装構造であって、暴風雨等の特殊環境(突発的な自然災害)に対し、その一部の平板状外装材が破損したとしても、容易に新たな平板状外装材と交換することができる外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、瓦やルーフタイル等の板状屋根材は、耐食性や耐火性、また質感、伝統美といった特徴を有し、主に一般住宅や比較的低層の建築物の屋根として広く普及しているが、固定方法が簡易なため、使用(敷設)箇所に制限を受けるといった問題が指摘されている。例えば建築物の立地、屋根の勾配、高さ等に制限を受け、どのような建築物に採用できるものではなかった。これらの問題はこの種の板状屋根材の固定構造に起因する部分が多く、横桟に瓦の棟端のみを係止するだけとか、釘や銅線を併用するといった固定(保持)構造では、前述の問題を解決することができないため、確実な保持ができる構造が求められている。
【0003】
例えば本願出願人が提案した特許文献1には、左右に並列状の金属性垂木に対する桟の固定作業性を改善することを目的とし、裏面側の水下側に係止部を設けた平瓦タイプの屋根材を桁行き方向に配された桟(横桟)にて下地(垂木)に固定する例や、裏面側の水上側先端に係止部を設けた和瓦タイプの屋根材を桟にて下地に固定する例が示されている。この外装構造では、「板状外装材」が用いられているが、平瓦タイプか和瓦タイプの屋根材が使用され、何れも裏面側にL字状に突出する係止部が設けられた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1などでは、突発的な自然災害に対して十分な強度を備えるものではなかった。即ち屋根材は係止部の一箇所のみの係合であるため、決して安定性が高いとは言えず、前述の使用(敷設)箇所に制限を受けるという問題を解消するものでもなかった。
特に屋根材に割れが発生した場合には、一箇所のみの係止では、バタつき等にて割れが大きくなり易く、割れが発生したまま放置しておくと、破損した欠片等が屋根面から落下する事故を生じ、特に屋根勾配の急な施工面においては落下衝撃も大きく、近隣に多大な迷惑をかけたり、重大な二次災害を引き起こしたりするおそれがあった。
さらに、この外装構造には、前述のように裏面側の水下側に係止部を設けた形状の屋根材が用いられているが、その一部に割れが発生した際に備え、新たな屋根材を常に準備しておく必要があり、係止部を備える特殊な形状であるため、その作製、管理、保管にもコストを要するものであった。
【0006】
そこで、本発明は、ボード状の平板状外装材を支持部材(横桟)に、保持具を用いて取り付ける外装構造であって、暴風雨等の特殊環境(突発的な自然災害)に対し、その一部の平板状外装材が破損したとしても、容易に新たな平板状外装材と交換することができる外装構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、流れ方向に配設する複数の平板状外装材を、流れ方向に直交するように配した支持部材に、前記平板状外装材の水下端に係合させる保持具を用いて取り付けらける外装構造であって、前記保持具は、前記平板状外装材の水下端に係合させる係合部と、前記外装材の左右何れかの側端に係止させる係止部と、前記支持部材に受支させる取付部と、を有して前記平板状外装材一枚当たり左右一対を用いる部材であり、前記支持部材は、水下側が開放する係合溝と、前記保持具の取付部を受支状に取り付けられる受支部と、を備え、前記係合溝内には弾性材が配設され、前記各平板状外装材は、その水下端が前記保持具の係合部に係合され、その水上端が前記支持部材の前記係合溝内にて圧縮された弾性材にて水下側へ弾性付勢されて取り付けられ、隣り合う平板状外装材に取り付けられている前記保持具は、前記取付部の側端同士が対向状に配されて目地を形成していることを特徴とする外装構造に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記板状外装材を用いた外装構造において、平板状外装材の裏面側に、近接状に配される補強材が設けられていることを特徴とする外装構造をも提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外装構造は、それぞれ簡易な構成の平板状外装材、支持部材、二種の保持具、及び弾性材からなり、特に平板状外装材はボード状であるため、その作製、管理や保管についてもコストを要することがないため、デザイン等についても各種のものを適用できるものである。また、二種の保持具についても、簡易な左右対称の部材とできるため、その作製が容易である。
また、この外装構造における平板状外装材は、少なくとも水上端と水下端との二箇所が支持部材と保持具に係合し、且つ弾性材にて水下側へ弾性付勢される状態で安定に取り付けられている。即ち複数箇所を係合すること、弾性材を用いることで、平板状外装材と下地の係合強度を高め、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する平板状外装材の自由度を高めている。
さらに、本発明では、破損した平板状外装材を新たな平板状外装材と交換する際に、隣り合う平板状外装材に殆ど影響を与えることがなく、破損した平板状外装材のみを容易に取り外すことができ、新たな平板状外装材も容易に取り付けることができるので、補修工事に要する費用と時間を大幅に削減することができる。
しかも、隣り合う平板状外装材に取り付けられている保持具が、その取付部の側端同士が対向状に配されて目地を形成しているので、隣り合う平板状外装材の側端面同士がぶつかることがないため、破損等の事故を防止できる。
【0010】
また、平板状外装材の裏面側に、近接状に配される補強材が設けられている場合、平板状外装材の表面に、外部から衝撃が加わった際に裏面側に配した補強材に平板状外装材の裏面が当接するので、平板状外装材の割れ、並びに該割れに起因する落下や飛散等の事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)実施例1の外装構造を示す正面図、(b)実施例1の外装構造を水下側から見た下面図、(c)実施例1の外装構造を右方側から見た側面図、(d)要部の拡大側面図である。
【
図2】(a)実施例1の外装構造を模式的に示す正面図(点線で囲ったC部は、隣り合う二種の保持具を示し、点線で囲ったD部は、右側の水下端を示す)、(b)D部の拡大正面図、(c)C部の拡大正面図、(d)実施例1の外装構造を上方から見下ろした斜視図(点線で囲ったB部は、右側の水下端を示す)、(e)B部の拡大斜視図、(f)実施例1の外装構造を下方から見上げた斜視図(点線で囲ったA部は、右側の水下端を示す)、(g)A部の拡大斜視図である。
【
図3】(a)参考例の外装構造を模式的に示す正面図(点線で囲ったC部は、隣り合う二種の保持具を示し、点線で囲ったD部は、右側の水下端を示す)、(b)D部の拡大正面図、(c)C部の拡大正面図、(d)第2実施例の外装構造を上方から見下ろした斜視図(点線で囲ったB部は、右側の水下端を示す)、(e)B部の拡大斜視図、(f)参考例の外装構造を下方から見上げた斜視図(点線で囲ったA部は、右側の水下端を示す)、(g)A部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の外装構造は、流れ方向に配設する複数の平板状外装材を、流れ方向に直交するように配した支持部材に、前記平板状外装材の水下端に係合させる保持具を用いて取り付けられることを特徴とする。
【0013】
本発明に用いる平板状外装材は、その水下端が保持具の係合部に係合され、その水上端が支持部材の係合溝内に取り付けられるものであるが、屋根や壁に用いられるボード状の外装材であって、窯業系等の素材を問うものではなく、表面側にも裏面側にも特殊な形状を必要とするものではない。そのため、例えばデザインされた凹凸形状を有する化粧面をその表面側に有するものでもよいし、強度を補足する凹凸形状を表裏面の何れか或いは両方に形成したものでもよい。
なお、本発明の説明において、水上端と水下端という文言が必然的に多用されるが、水上側の平板状外装材に関しては上段側の平板状外装材(又は上段側外装材)と記し、水下側の平板状外装材に関しては下段側の平板状外装材(又は下段側外装材)と記す。
【0014】
本発明に用いる保持具は、前記平板状外装材一枚当たり左右一対、即ち二つずつ配される部材であって、前記平板状外装材の水下端に係合させる係合部と、前記平板状外装材の左右何れかの側端に係止させる係止部と、支持部材に受支させる取付部と、を有する。
前記係合部は、前記平板状外装材の水下端に係合できるものであればよく、後述する図示実施例のように平板状外装材のボード状の水下端を、嵌合できる水上側が開放する溝状(U字状)に形成されたものでもよい。
また、前記取付部は、支持部材に受支させるものであればよく、後述する図示実施例のように支持部材の上向き片状の受支部に対し、それに受支できる水下側が開放する溝状に形成されたものでもよい。
さらに、前記係止部は、前記平板状外装材の左右何れかの側端に係止できるものであればよく、後述する図示実施例のように前記係合部を形成する裏側縦面の側端の一部を外方へ延在させると共に表面側に折り曲げて形成されたものでもよい。
【0015】
ここで、本説明にて左右は、正面から見て左側を左とし、正面から見て右側を右とするものであって、平板状外装材からの表記とは逆になる。
なお、平板状外装材の左側端近くに配設する保持具の係止部は、前記平板状外装材の左側端に係止されるものであり、後述する図示実施例の係止部は、前記係合部を形成する裏側縦面の側端の一部を左外方へ延在させると共に表面側に折り曲げて形成されたものである。
また、平板状外装材の右側端近くに配設する保持具の係止部は、前記平板状外装材の右側端に係止されるものであり、後述する図示実施例の係止部は、前記係合部を形成する裏側縦面の側端の一部を右外方へ延在させると共に表面側に折り曲げて形成されたものである。
このような保持具は、左右一対の対称状に形成することにより、隣り合う平板状外装材の側端面同士が当接することを防止する役割(=目地が自動的に形成される)をも果たすため、仮に平板状外装材を取り換える(交換する)必要が生じても、形成される目地により、容易に交換することができる。
【0016】
本発明に用いる支持部材は、流れ方向に直交するように配設される横桟(通し材)であって、前記平板状外装材の水上端が取り付けられる係合溝と、前記保持具の取付部を受支状に取り付けられる受支部と、を備える。
前記係合溝は、前記平板状外装材の水上端に係合できるものであればよく、後述する図示実施例にように平板状外装材のボード状の水上端を嵌合できる、水下側が開放する溝状(逆U字状)に形成されたものでもよい。
また、前記受支部は、前記保持具の取付部を受支状に取り付けることができるものであればよく、後述する図示実施例のように保持具の水下側が開放する溝状の取付部に対し、それを受支できる上向き片状に形成されたものでもよい。
【0017】
さらに、この支持部材の係合溝内には、弾性材が取り付けられている。
この弾性材は、平板状外装材の水上端が当接するように配されるものであって、平板状外装材を水上側から弾性付勢するものであれば、特にその素材(材質)等を限定するものではない。例えば円柱状又は円管(パイプ)状の弾性体で形成されるものでも、バネ弾性を有する成形体でもよい。
この弾性材が、支持部材に一体的に取り付けられていると、取付安定性に優れ、それによって平板状外装材の敷設安定性も向上するので望ましい。
【0018】
また、この支持部材には、下地へ固定するための固定部が設けられるが、下地として、例えば後述する図示実施例のように流れ勾配を備える屋根面や壁面である下地面上に、流れ方向に連続するタルキ部材を配設している場合には、該タルキ部材への取付部分が固定部となっている。この固定部は、図示実施例のように下地の構成により、適宜に選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0019】
なお、前記保持具の取付部と、前記支持部材の受支部については、本説明では前者を水下側が開放する溝状、後者を上向き片状と説明しているが、前者を下向き片状、後者を水上側が開放する溝状と説明することもできる。
【0020】
また、前記平板状外装材の裏面側には、近接状に臨むように補強材が配されていることが望ましい。この補強材は、外装面、即ち平板状外装材の表面に、外部から衝撃が加わった際に、平板状外装材の裏面が補強材の表面に当接するので、平板状外装材の割れ、並びに該割れに起因する落下や飛散等の事故を防止することができる。
そのため、このような割れ防止の観点から、縦長の平板状外装材を用いた場合には、横方向に延在する補強材を用いることが望ましく、横長の平板状外装材を用いた場合には、縦方向に延在する補強材を用いることが望ましい。
【0021】
また、隣り合う平板状外装材に取り付けられている保持具が、その取付部の側端同士が対向状に配されて目地を形成している場合には、隣り合う平板状外装材の側端同士がぶつかることがないため、破損等の事故を防止できる。なお、ここでは、後述する実施例1のように取付部の側端が平板状外装材の端面や保持具の係止部より外側へ突出状に形成されているため、取付部の側端が平板状外装材の側端面と同程度に形成されている参考例に比べて、平板状外装材の端面同士のぶつかり(衝突)がなく、破損等の事故を防止できる。
【0022】
本発明の外装構造は、このように極めて簡易な構成の平板状外装材、支持部材、二種の保持具、及び弾性材からなり、特に平板状外装材はボード状であるため、その作製、管理や保管についてもコストを要することがないため、デザイン等についても各種のものを適用できるものである。例えばデザインされた凹凸形状を有する化粧面をその表面側に有する化粧ボードでもよいし、強度を補足する凹凸形状を表裏面の何れか或いは両方に形成した化粧ボードでもよい。また、二種の保持具についても、簡易な左右対称の部材とできるため、その作製が容易である。さらに、平板状外装材は、2箇所の水下端がそれぞれ左右に配する保持具の係合部に係合され、且つ支持部材の係合溝に配した弾性材にて水下側へ弾性付勢されているので、平板状外装材と下地の係合強度を高め、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する平板状外装材の自由度を高めている。
【0023】
また、暴風雨等にて万が一その一部の平板状外装材が完全に中央付近にて分断するような破損が生じたとしても、水上側の破損部分も水下側の破損部分も継続的に支持部材に係止した状態で保持されるため、重大な落下事故を引き起こすことがない。即ち落下や飛散の事故を減らし、事後のメンテナンスを容易に行うことができる。
さらに、破損した平板状外装材を新たな平板状外装材と交換するに際し、隣り合う平板状外装材に殆ど影響を与えることがなく、破損した平板状外装材のみを容易に取り外すことができ、新たな平板状外装材も容易に取り付けることができるので、補修工事に要する費用と時間を大幅に削減することができる。
【実施例0024】
本発明の外装構造は、
図1(a)~(d)及び
図2(a)~(g)に示す実施例1、
図3(a)~(g)に示す参考例のように窯業系の焼き付け等により製造された平板状外装材1と、支持部材2と、保持具3A,3B,3A',3B'と、弾性材4、とからなり、各平板状外装材1は、その水下端12が保持具3A,3B,3A',3B'の係合部31a,31b,31a',31b'に係合され、その水上端11が支持部材2の係合溝21内にて圧縮された弾性材4にて水下側へ弾性付勢されて取り付けられているが、実施例1では、支持部材2に受支させる取付部42の側端同士が対向状に配されて目地7を形成していることを特徴とする。
【0025】
実施例1及び参考例に用いられる平板状外装材1は、その水下端12が保持具3A,3B,3A',3B'の係合部31a,31b,31a',31b'に係合され、その水上端11が支持部材2の係合溝21内に取り付けられるものであるが、窯業系の焼き付け等により製造されたもので、表面側にも裏面側にも特殊な形状を必要とするものではないボード状である。
【0026】
実施例1及び参考例に用いられる支持部材2は、流れ方向に直交するように配設される横桟(通し材)であって、平板状外装材1の水上端11が取り付けられる係合溝21と、保持具3A,3B,3A',3B'の取付部32を受支状に取り付けられる受支部22と、を備え、
図1(c)に示すように下地5へ固定するための固定部23a,23bが設けられている。
前記係合溝21は、水下側が開放する溝状(逆U字状)に形成され、前記平板状外装材1の水上端11を嵌合(係合)できるものである。
また、前記受支部22は、上向き片状に形成され、保持具3A,3B,3A',3B'の取付部32を受支状に取り付けることができる。
さらに、前記固定部23a,23bは、水下側の縦片24bの下端を水下側へ延在させた水下側固定部23bと、水上側の縦片24aの下端を水上側へ延在させた水上側固定部23aの二か所であり、下地5であるハット状のタルキ部材の上面51に沿わせて固定している部分を指す。
【0027】
前記支持部材2を固定する下地5は、垂直状の縦壁面である下地面6上に、
図1(b)に示すように左右方向には所定間隔で、
図1(c)に示すように流れ方向に連続するように配設されるタルキ部材にて形成されている。
このタルキ部材5は、下地面5上に沿わせて固定するフランジ状の固着部52,53を備え、ハット状の上面51を切り起こして水下側が開放する取付溝51aと、支持部材2の配設後に被覆状に沿わせる取付カバー51bと、を設けた構成であり、支持部材2の水上固定部23aを取付溝51aに装着(水下側から挿着)した状態で水下固定部23bに取付カバー51をオーバーハング状に沿わせ、固定ビス5bにて一体的に固定している。
【0028】
実施例1に用いられる保持具3A,3Bは、
図2(a)に示すように前記平板状外装材1の一枚当たり左右一対、即ち二つずつ配される左右一対の対称状の金属成形品であって、前記平板状外装材1の水下端12に係合させる係合部31a,31bと、前記平板状外装材1の左右何れかの側端13a,13bに係止させる係止部33a,33bと、前記支持部材2(の受支部22)に受支させる取付部32a,32bと、を有する。
前記係合部31a,31bは、水上側が開放する溝状(U字状)に形成され、前記平板状外装材1の水下端12を係合(嵌合)できるものである。
また、前記取付部32a,32bは、水下側が開放する溝状に形成され、前記支持部材2の上向き片状の受支部22に受支できるものである。なお、この取付部32a,32bの側端は、平板状外装材1の側端面13a,13bや保持具3の係止部33a,33bより外側へ、即ち平板状外装材1の左側端に配する保持具3Aでは左側へ、平板状外装材1の右側端に配する保持具3Bでは右側へ、突出するように形成され、保持具3Aに形成される取付部32aと保持具3Bに形成される取付部32bとは対称状に形成されている。
さらに、前記平板状外装材1の左側端近くに配設する保持具3Aの係止部33aは、前記係合部31a,31bを形成する裏側縦面の側端の一部を左外方へ延在させると共に表面側に折り曲げて形成され前記平板状外装材1の左側端13aに係止される。
また、前記平板状外装材1の右側端近くに配設する保持具3Bの係止部33bは、前記係合部31a,31bを形成する裏側縦面の側端の一部を右外方へ延在させると共に表面側に折り曲げて形成され、前記平板状外装材1の右側端13bに係止される。これらの保持具3Aに形成される係止部33aと保持具3Bに形成される係止部33bとは対称状に形成されている。
【0029】
このような保持具3A,3Bは、前述のように左右一対の対称状に形成され、係合部31a,31bの背面部分(311a,311b)が突出するように形成されているので、該係合部31a,31bが平板状外装材1の水下端12を係合(嵌合)することができ、隣り合う平板状外装材1,1の側端面13a,13b同士が当接することを確実に防止する役割(=目地7が自動的に形成される)をも果たすため、仮に平板状外装材1交換する必要が生じても、形成される目地7により、破損等を生ずることなく容易に交換することができる。
【0030】
図2(a)は、この実施例1の外装構造を模式的に示し、点線で囲ったC部は、隣り合う平板状外装材1,1の水下端にて隣り合う二種の保持具3A,3Bを示し、D部は、右側の水下端に配した保持具3Bを示す。
また、
図2(b)は、D部を拡大して示し、
図2(c)は、C部を拡大して示す。
さらに、
図2(d)は、この実施例1の外装構造を上方から見下ろした斜視図であって、点線で囲ったB部は、右側の水下端に配した保持具3Bを示し、
図2(e)は、そのB部の拡大斜視図である。
また、
図2(f)は、この実施例1の外装構造を下方から見上げた斜視図であって、点線で囲ったA部は、右側の水下端に配した保持具3Bを示し、
図2(g)は、そのA部の拡大斜視図である。
【0031】
参考例に用いられる保持具3A',3B'も、前記平板状外装材1の一枚当たり左右一対、即ち二つずつ配される左右一対の対称状の部材であって、前記平板状外装材1の水下端12に係合させる係合部31a',31b'と、前記平板状外装材1の左右何れかの側端13a,13bに係止させる係止部33a,33bと、前記支持部材2(の受支部22)に受支させる取付部32a',32b'と、を有する。
前記係合部31a',31b'は、水上側が開放する溝状(U字状)に形成され、前記平板状外装材1の水下端12を係合(嵌合)できる点では前記実施例1に用いられる保持具3A,3Bの係合部31a,31bと同様である。
また、前記取付部32a',32b'は、水下側が開放する溝状に形成され、前記支持部材2の上向き片状の受支部22に受支できる点では前記実施例1に用いられる保持具3A,3Bの取付部32a,32bと同様であるが、取付部32a',32b'の側端が平板状外装材1の側端面13a,13bと同程度に形成されている。
そのため、前記実施例1のように確実ではないが、この参考例の保持具3A',3B'も係止部33a,33bを備えて狭い目地7'が形成されるので、必要に応じて平板状外装材1を破損等を生ずることなく交換できる。
なお、係止部33a,33bについては、前記実施例1と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
図3(a)は、この参考例の外装構造を模式的に示し、点線で囲ったC部は、隣り合う平板状外装材1,1の水下端にて隣り合う二種の保持具3A',3B'を示し、D部は、右側の水下端に配した保持具3B'を示す。
また、
図3(b)は、D部を拡大して示し、
図3(c)は、C部を拡大して示す。
さらに、
図3(d)は、この実施例1の外装構造を上方から見下ろした斜視図であって、点線で囲ったB部は、右側の水下端に配した保持具3B'を示し、
図3(e)は、そのB部の拡大斜視図である。
また、
図3(f)は、この実施例1の外装構造を下方から見上げた斜視図であって、点線で囲ったA部は、右側の水下端に配した保持具3B'を示し、
図3(g)は、そのA部の拡大斜視図である。
【0033】
実施例1及び参考例に用いられる弾性材4は、
図1(c)に示すように中空状の弾性体、即ち敷設状態よりも大径の円管(パイプ)状弾性体で形成されている。
これらの弾性材4は、上方から嵌め込むように配設しているだけで、特別な固定手段を用いていないが、その施工状態において上段側の平板状外装材1が上方を覆うため、想定外の外れを生ずることは決してない。
【0034】
また、実施例1の前記平板状外装材1の裏面側には、
図1(c)に示すように近接状に臨むように補強材8が配されている。この補強材8は、外装面、即ち平板状外装材1の表面に、外部から衝撃が加わった際に、平板状外装材1の裏面が補強材8の表面に当接するので、平板状外装材1の割れ、並びに該割れに起因する落下や飛散等の事故を防止することができる。
この実施例1にて用いられた平板状外装材1は、縦長であるため、横方向に延在する補強材8を用いたが、仮に横長の平板状外装材を用いる場合には、縦方向に延在する補強材を用いることが望ましい。
【0035】
なお、この補強材8を取り付けるための構成として、
図1(c)に示すように前記支持部材2の取付構造と同様にタルキ部材5の上面51に、水下側が開放する取付溝を設け、固定ビス8bにてこのタルキ部材(下地5)に固定している。
【0036】
このような各部材より構成される実施例1の外装構造は、特にその施工手順を限定するものではないが、例えば以下のような手順にて、容易に施工できる。
まず、垂直状の縦壁面である下地面6上に、断面ハット状の前記タルキ部材を所定間隔にて流れ方向に配設(固着部52,53を固定)して下地5を形成する。このタルキ部材5の上面51には、前述のように予め水下側が開放する取付溝51aと、取付カバー51bとが切り起こし状に形成されている。
次に、前記下地5の上面51の表面側に前記構成の支持部材2を沿わせ、その水上固定部23aを取付溝51aに装着(水下側から挿着)した状態で水下固定部23bに取付カバー51をオーバーハング状に沿わせ、固定ビス5bにて支持部材2を流れ方向に直交する横桟状に一体的に固定する。
また、前記支持部材2と同様に前記構成の補強材8を沿わせ、固定ビス8bにて流れ方向に直交するように固定する。
続いて、固定した支持部材2の係合溝21に前記弾性材4を配すると共に、該弾性材4が圧縮されるように前記平板状外装材1の水上端11を水下側から臨ませると共にその水下端の左右には二種の前記構成の保持具3A,3Bを取り付ける。その際、二種の保持具3A,3Bは、その係合部31a,31bが前記平板状外装材1の水下端12に係合されると共に、その係止部33a,33bが前記平板状外装材1の側端面13a,13bに係止される状態で、その前記取付部32a,32bが、前記支持部材2の上向き片状の受支部22に受支されるように取り付ける。
【0037】
このように施工された外装構造は、簡易な構成の平板状外装材1、支持部材2、二種の保持具3A,3B、及び弾性材4からなり、特に平板状外装材1はボード状であるため、その作製、管理や保管についてもコストを要することがないため、デザイン等についても各種のものを適用できるものである。
また、二種の保持具3A,3Bについても、簡易な左右対称の部材とできるため、その作製が容易である。この実施例1では金属成形品としたが、所定形状に型抜きした金属板材を、簡易な折り曲げ加工を繰り返して容易に作製することができる。
さらに、平板状外装材1は、2箇所の水下端12がそれぞれ左右に配する保持具3A,3Bの係合部31A,31Bに係合され、且つ支持部材2の係合溝21に配した弾性材4にて水下側へ弾性付勢されているので、平板状外装材1と下地5の係合強度を高め、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する平板状外装材1の自由度を高めている。
【0038】
しかも、この実施例1では、隣り合う平板状外装材1,1に取り付けられている保持具3A,3Bが、その係合部31a,31bの側端(背面部分311a,311b)同士が対向状に配されて目地7を形成しているので、隣り合う平板状外装材1,1の側端面13a,13b同士がぶつかることがないため、破損等の事故を防止できる。
また、この実施例1では、平板状外装材1の裏面側に、近接状に配される補強材8が設けられているので、平板状外装材1の表面に、外部から衝撃が加わった際に裏面側に配した補強材8に平板状外装材1の裏面が当接して衝撃を吸収するので、平板状外装材1の割れ、並びに該割れに起因する落下や飛散等の事故を防止することができる。
【0039】
また、参考例の外装構造も、極めて簡易な構成の平板状外装材1、二種の保持具3A',3B'、及び図示しない支持部材2と弾性材4とからなり、特に平板状外装材1はボード状であるため、その作製、管理や保管についてもコストを要することがないため、デザイン等についても各種のものを適用できるものである。また、二種の保持具3A',3B'についても、前記実施例とほぼ同様であるため、金属成形品とし、所定形状に型抜きした金属板材を、簡易な折り曲げ加工を繰り返して容易に作製することができる。
【0040】
一方、前記実施例1の外装構造では、例えば暴風雨等にて、その一部の平板状外装材1が破損した際に、当該平板状外装材1を新たな平板状外装材1に交換する手順を限定するものではないが、例えば以下のような手順にて、容易に交換できる。
当該平板状外装材1を取り外すには、当該平板状外装材1を水下側から押圧して水上側へずらし(摺動させ)、水上端11を弾性材4に当接させて圧縮させ、当該平板状外装材1に取り付けた保持具3A,3Bの取付部32a,32bを支持部材2の受支部22から離反させる。その際、左右の目地7間隔を利用して左右に傾けながら水上側へ摺動させることで、弾性材4を圧縮させ、容易に取付部32a,32bを受支部22から離反させることができる。より詳細には、左右に傾ける際に僅かに当該平板状外装材1を浮かせることで、係合部31a,31bの背面部分311a,311bや取付部32a,32bの突出部分を浮かせて隣り合う保持具3B,3Aとの当接を回避させ(上方にずらせ)、目地7間隔を前述のように利用することができる。
取り外した当該平板状外装材1から、保持具3A,3Bを回収して新たな平板状外装材1に取り付けた後、この新たな平板状外装材1を、外した平板状外装材1の位置に前記手順にて取り付ける。勿論、取り外した保持具3A,3Bが変形したり破損したりしている場合には新たな保持具3A,3Bに交換する必要があるが、原則的には繰り返して使用することができる。
【0041】
なお、前記参考例においても、その施工手順についてはほぼ同様であり、新たな平板状外装材1に交換する手順についても、狭い目地7'が形成されるので、前記実施例1ほどではないが、この参考例でも、平板状外装材1を破損等を生ずることなく交換できる。